我らは正義の使者である
●その日は雨が降っていた
冷たい、染みる、痛い。
暗い、怖い、苦しい。
ボクの角、目、皮、骨、血、どこ。
この世は不公平だ。
ボクはみんなの幸せの為に戦っていたのに、人類はボクを恐れて殺した。
ボクが死んで、みんなは幸せになった。
ボクが死んで、みんなは幸せになった?
みんなの中に、ボクは含まれていないよ。
この世は不公平だ。
ボクは何の為に生まれた?
もういいや。
みんな死んじゃえ。
みんなシんじゃえ。
みんな、し、シ、シ、死。
●ダニエルの情報
「悪いね、仕事帰りでさ。まぁ気にするなよ」
何処かの戦場に赴いていたのだろう。誰かの血が染みたボロボロの服装のまま、知念・ダニエル(黄昏冥土・f00007)は笑ってみせた。
「帰り際に予知が見えたものでね、ついでにグリモア猟兵の仕事も終わらせておこうかと思った訳さ。……嫌なものだね、これだけ戦闘準備が万端だって言うのに、戦場に行けないだなんて。……本当に残念だ」
片手を腰に当て、心底つまらなさそうに息を吐く。この人格は、そういう奴だ。
「さて、僕の代わりに行って貰う場所はダークセイヴァーだ。今回に限っては村だの何だのは関係ない。終始オブリビオンと遊んで貰うよ」
というのも、今回は特殊なケースに当たるという。
「ここ最近、『オブリビオンがオブリビオンを襲う』っていう面白い事が起きているようでね。そういう狂ったオブリビオンの事を『同族殺し』って呼んでいるよ」
同族殺しが何故狂い、何故同族を襲うのかは全くの不明である。分かっている事は、この理性を失いただ暴れるだけのオブリビオンが、同族が居座る領主館を次々に襲うという事案が所々で発生しているという事だ。
オブリビオン同士の争いに、猟兵や一般人は何一つ絡んではいない。ならば放っといてもいいではないかとも思うのだが。
「逆に都合が良いじゃないか。同族殺しを利用して領主を叩きのめし、それが終わったら同族殺しも片付ければいい。どさくさに紛れて僕達猟兵が勝ちを収めるのさ」
どうせ同族殺しに会話など通用しないのだ。ならば思う存分利用してやればいい。
「お前らの向かう場所は『死薔薇のモンストル』っていう少女が潜む領主館だ。強敵と呼ばれるうちの一人らしいけど、同族殺しが一緒なら太刀打ち出来るだろうね」
少女の住む館は薔薇の棘に囲まれた薔薇園である。さらに言えば館の周囲は年中曇っているという。館の入り口へ向かえば、その雲は集まり出し、猟兵達の邪魔をするだろう。
「視界を覆う雲すらオブリビオンって事だね。そいつらを駆除して奥へ進めば領主に会えると思うから、戦うと同時に、上手い具合に同族殺しを誘導させてやってよ」
今回は同族殺しが現れた事から遂行出来る任務である。逆を言えば、同族殺しがいなければこの戦いは困難となる。故に、領主を倒すまで同族殺しに手を出してはならない。
「何、同族殺しを後回しにする事にも理由はある。僕はただの戦闘狂じゃないんだ」
ダニエルは手に握るナイフの刃先を、自分の指に軽く押し当てる。
「暴れ狂う同族殺しとて限界はある。思う存分暴れた後は体力を消耗しているだろう。――そこをこうだ」
す、とナイフを動かした。表面の切れた指先から赤い血が溢れる。
「ま、逆にこうしなきゃ対処は難しいだろうしね。っていうか、わざわざ喧嘩売って強敵を二人も三人も増やして突っ込むだなんて、死にに行ってるようなものじゃん。僕達は頭を使って、確実に敵を減らしていかなきゃね」
ダニエルの笑顔は、何処か恐ろしげにも見える。
同族殺しを利用し、領主館へ向かう。領主を守る者と領主を討伐した後、同族殺しを倒す。今回の依頼の流れはそういったものだ。
「オブリビオンは悪だ。どういった経緯であれ、奴等の敵である僕達猟兵は勝ちに行かなければならない」
当たり前だよねぇ? とダニエルは猟兵達に言った。
「僕達の行いは、『正義』だ」
「あぁ、同族殺しはどういった奴かって?」
どうでもいいじゃないか、とダニエルは言ったものの。
「――『正義』になれなかった獣さ」
その一言だけを呟き、グリモアを輝かせた。
ののん
お世話になります、ののんです。
●状況
ダークセイヴァーが舞台となります。
『悪役よりも悪役の様に見える振る舞い』をしてみたい方はとことんダークな描写にしてやろうと思ってます。(ルールの範囲内で)思う存分暴れて下さい。
勿論、そうでなく普段通り任務を遂行したい方も大歓迎です。お気軽にどうぞ。
●プレイングについて
キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
同時に投稿して頂けると大変助かります。
申し訳ありませんがユーベルコードは基本的に【選択したもののみ】描写致します。
以上、皆様のご参加お待ちしております。
第1章 集団戦
『もく』
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POW : じめじめ、うつうつ
【闇】【湿気】【周囲の幸福】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : もくー
全身を【ふわふわとした雲】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ : おいしいー
【不安】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【自身の分体】から、高命中力の【幸福を喰らう雲】を飛ばす。
イラスト:lore
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
その日、館に静寂など存在しなかった。
踏み潰された薔薇が散らかる庭に、一匹の獣が吼え狂っていた。
ただひたすらに吼え、吼え、暴れる。
暴走する獣を取り押さえるように、もくもくと集まって来るのは幻のように浮かぶ雲のようなもの。
今の天候のようなじめじめとした空気を生みながら、侵入者を鎮めようとしている。
そこへ訪れたのは転送によって現れた猟兵達。
目の前には暴れる獣と浮かぶ雲。
獣は猟兵など視界に入っていない。
雲は侵入者を排除しようと、猟兵達に向かって来る。
イデアール・モラクス
クク…正義?私が?アーハッハッハ!
私は悪だよ、この退廃に満ちた闇の世界が愛おしくてたまらない、淫らで悪辣なオンナさ!
ゆえに獣の理由など知らぬ、オブリビオン共すらどうでもいい…ただ壊して!犯して!奪うのみ!
・行動
無論、暴れる獣を利用はさせてもらおう、ショーとしても楽しめそうだしなぁ?
という訳で私は獣の邪魔にならぬよう『空中戦』魔法で華麗に飛翔しつつ雲を散らして獣に道を作ってやる。
UC【七星覇天煌】を『全力魔法』と『属性攻撃』で威力を増した上で『高速詠唱』を用い一瞬で行使、膨大な魔力光線の『一斉射撃』による『範囲攻撃』で眼前の敵勢を跡形も無く『なぎ払い』消し去るのだ。
※アドリブ歓迎
じめじめとしたその日、ぐちゃぐちゃになった薔薇園に一人の魔女が降臨した。
孤高の魔女は争い合うオブリビオン同士の光景を見るなり、肩を震わせた。
それは恐怖で? いや、あまりにも滑稽で!
「……クク……正義? 私が?」
イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)は高らかに笑ってみせた。今から自分があの中に加わる事を考えると、気持ちの高ぶりと笑いが止まらない。
自分は争いを止める為に間に入る訳でもなければ、仲間割れしている敵達を正義の力を持って打ち倒す訳でもない。全ては己の快楽の為だ。
「私は悪だよ、この退廃に満ちた闇の世界が愛おしくてたまらない、淫らで悪辣なオンナさ!」
彼女は言う。故に獣の理由など知らぬ。更に言えばオブリビオン共すらどうでもいい、と。
「……ただ壊して! 犯して! 奪うのみ!」
強大な魔力が何処かへ集まっていく感覚を感じ取った。新たな侵入者だと認識した雲達はふわふわと獣から離れていく。
腕を広げるイデアールに向かって、闇色をした雲達は不安を煽ろうと集団で彼女を包み込もうとするのだが。
「こんなもので脅してるつもりか? 冗談にも程がある!」
彼女に不安などという感情は存在しない。そして雲達が奪えるような幸福なども存在しない。ここにあるのは破壊と色欲のみ。
「ふん、前菜にもなりゃしない。呆れたな」
イデアールはがっかりした。もう少し歯応えのある相手が現れるかと思えば、もくもくと視界を曇らされるだけなのだ。痛くも痒くも何も起こらない。ただただ邪魔なだけだ。
「もういい」
その声は普段よりも一層低く小さい。そして巨大に膨れ上がった魔力は腕から溢れ出る。
「……究極の魔術を見せてやろう、スーパーイデアールレーザー!」
その魔法は突然発動された。イデアールの背後から発射された7属性の無数の光線が雲達を貫く。色とりどりの光線が降り注いだ直後、彼女の腕から収束された巨大なレーザーが追い打ちを掛けるように発射された。
ずん、と低く大きな音を立て、雲の集団だけでなく荒れた薔薇園までも抉り、全てを無へと還した。
「さぁ獣よ。道は作ってやった、堂々と進むが良い」
イデアールの興味は既に獣にしか向いていない。否、つまらなかった門番の雲など記憶にすら残っていない。
獣は狂い暴れながらも抉れた道に踊り出で、何かを叫びながら館を目指して進む。
「クク……私にどんなショーを見せてくれるんだ?」
それは私の身も心も全て満足させてくれるのか?
大成功
🔵🔵🔵
緋月・透乃
『同属殺し』とは、活きのいい奴がいるんだね。戦う相手としては楽しそうだね!
はやく戦いたいところだけれど、態々不利になることもないし、お楽しみは後でってことで、まずは館のほうをなんとかしよう。
敵は雲?こんなのもオブリビオンになるんだねー。
武器はもぐもぐ欲張りスプーンを使うよ。
雲だから打撃には強そうだけれど、とりあいず武器で殴ってみよう。
打撃がいまいちな感じだったり、敵がユーベルコードで強くなったりしたら、燃えて蒸発してしまえってことで火迅滅墜衝を食らわせていくよ!
同属殺しには近づかなければ大丈夫、だよね。
緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)は胸の鼓動の高まりを抑えきれずにいた。目の前で暴れ狂う同族殺しにとても興味を惹かれるからだ。
あの相手と戦う事となればさぞかし楽しいだろう。しかし、早まってはいけない。
「態々不利になることもないし、お楽しみは後でってことで」
まずは館のほうをなんとかしよう。うんうんと頷き、自分の方へ向かって来る雲に顔を向ける。
「へー、こんなのもオブリビオンになるんだねー」
不思議そうにまじまじと見つめていると、雲はじめじめとした湿気を周囲に発生させながら闇色へと染まっていく。
「あ……黒くなっちゃった。綿あめみたいだなぁって思ってたのに」
残念だなぁと呟きつつ、巨大なスプーンを構えた透乃は雲に向かって武器を一振り。
スプーンの背面が雲に直撃するが、ぽふんとした柔らかな感触が伝わって来るだけでダメージが入った様子は見受けられない。
……というのも、雲は透乃の『戦いによる幸福』を吸収し、防御力を上げているようだ。彼女の言った通り、綿あめのように柔らかくなった雲はどんな物理攻撃も吸収してしまうだろう。
武器での打撃は効きにくい。しかしそれくらいの事で退く彼女ではない。いや、彼女はオブリビオンとの戦闘を楽しむ者だ。
「うーん、そうだよね。それなら次はこれ!」
攻撃が通らない場合の事も想定済みだ。武器が効かないならばユーベルコードの出番である。
「雲なら、燃えて発情してしまえ!」
スプーンの頭が桃色の炎によって包まれる。自分を取り囲む闇色の雲達に向かって、透乃は自分の体を回転させながらスプーンを振り回した。
「燃え上がれ私の魂! あいつの全てを焼き尽くせー! 桃火の一撃、火迅滅墜衝!!」
炎の線を残しながら灼熱のスプーンが暴れ狂う。透乃の周囲の気温が一気に上昇し始める。じめじめとした空気など何処にも存在する事は出来ない。雲の姿は次第に溶けるように薄れていく。
「うんうん、どんよりした空気なんて元気出ないもんね」
心も魂も空気も、燃えるように熱く。同族殺しから距離を離しつつ、彼女は桃色の炎を次々に放っていった。
成功
🔵🔵🔴
ディスターブ・オフィディアン
第一人格で行動
「善だ悪だと下らん話だ。どこかの誰かの価値観になぜ従わねばならん」
この世界には未知が無数にあり、それを知り尽くすまでは滅びてもらっては困る。この行いが正義と呼ばれようが悪と呼ばれようが、どうでもいい
何にせよ、まずはこのうっとうしい連中からか
「ま、雲には風と相場が決まっているからな」
エレメンタルミサイルを風属性で発動、合成強化し巨大な竜巻を生み出し、吹き飛ばしてやる。全力魔法と属性攻撃で威力を上げておこう
「二虎競食の一手、悪くない。叶うなら、同族殺しが狂った理由も知りたいところだ」
他のオブリビオンを同じように狂わせて同士討ちを仕掛けられれば、より強力な敵も骸の海へ叩き返せるしな
下らん話だ。そうディスターブ・オフィディアン(真実を 暴く/葬る モノ・f00053)は吐き捨てた。
「善だ悪だと下らん話だ。どこかの誰かの価値観になぜ従わねばならん」
それは例え唱えた相手が猟兵だろうがオブリビオンだろうが一般人だろうが関係無い。彼は同じ事を思うだろう。
これから行う己の行動が正義なのか悪なのか。そんなものに興味などない。ただただ全うするだけだ。
「……何にせよ、まずはこの鬱陶しい連中からか」
じめじめとした空気が更に強まっていく。ふわふわと浮かぶ闇色の雲が群れを成してディスターブの元へ集まって来る。雲達はもくもくと体を大きく見せ、相手を包み込もうとするのだが。
「……まさか、それで脅している訳じゃあないだろうな?」
不安を煽り幸福を喰らう攻撃。食した所でこの雲にオレの幸福の味が理解出来るのか? いや、それ以前に不安とは何なのだ? この雲に幸福を喰われる事を恐れる事か? あらゆる真実を暴けなくなる事か?
否、そんな事など起こり得るはずがない。やはり下らない。
「考えた所で時間を無駄にするだけか」
このような場所で自ら足止めをする訳にはいかない。より興味深い場所まで向かわなくては。
「さて」
ディスターブは魔力を集中させた。取り巻く風が魚の群れの様に渦巻き、巨大化していく。
「ま、雲には風と相場が決まっているからな。これでも食らえ」
指先を雲達の方へ向けると、渦巻く風の魔法――巨大な竜巻は雲達へ向けて前進する。為す術なく竜巻に吸い込まれ、力強く渦巻く風の刃に切り刻まれていく雲達。空が晴れる事はなかったが、重苦しい湿気を纏った空気は少し薄れた気がする。
「薔薇園の潤いを保つ為の湿気だったか? 今はもう役目は終えたが、な」
朽ちた薔薇の道を踏みながらディスターブは竜巻を操り館へ向かう。狂える獣を横目で見つめるが、その視線に哀れみなど含まれていない。
「二虎競食の一手、悪くない。叶うなら、同族殺しが狂った理由も知りたいところだ」
この世界には未知が無数に存在する。故にそれを知り尽くすまで、この世界に滅びて貰っては困る。だから彼は利用する。
「……他のオブリビオンを同じように狂わせて同士討ちを仕掛けられれば、より強力な敵も骸の海へ叩き返せるしな」
真実へと近付けるならば、利用出来るものは利用してやる。それが何と呼ばれようとも。
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
あー、よく聞くお約束のアレか、活動の方向性の違いというヤツであろう!
そういう裏事情は秘密にしておかんと、物凄くカッコ悪いぞ?
まあ双方平等にボコるので、結局意味は無いのであるがな!!
右手で、眼前の空間をコンコンコンっと
はーっはっはっは! ようこそ妾の統べる世界へ!
カラリと晴れて爽快なのも良いが、ジメっとダークげな花畑というのも、趣があって素晴らしい!
さあ、お主らはこのエモい場でバトれる妾の幸福を、好きなだけ糧とするがよい!
雲であろうと容赦はせんよ
妾の左腕は曖昧模糊すら容易くブン殴れる! なにせ妾であるからな!
撮れ高が残念なビジュアルの相手は巻き進行よ、攻撃力を上げて一気に蹴散らしてくれよう!
暴れる獣とそれを取り囲む雲達の争いを見るなり、あー、と御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は声を漏らした。
「よく聞くお約束のアレか、活動の方向性の違いというヤツであろう! そういう裏事情は秘密にしておかんと、物凄くカッコ悪いぞ?」
乱闘は問題しか残らんぞ、と注意してもいいが、どちらも言葉の通じる相手ではない事は大いに分かる。
「……まあ双方平等にボコるので、結局意味は無いのであるがな!!」
そう、妾は邪神、この世界を含めたあらゆる世界の主である!
さて、そんな世界の民に見せつける為の動画を今日も映すとしよう。菘は右手を握り締め、目の前をコンコンコンとする。
直後、空間は歪み出し、荒れ果てた薔薇園の姿が変わっていく。
「はーっはっはっは! ようこそ妾の統べる世界へ!」
暗い空は相変わらずだが、がらりと変わったものは戦場である。
潰れ、引き裂かれ、死んでいった薔薇を看取るかのように咲き誇るのは彼岸花。しかし彼らは哀れな薔薇の為に咲いたのではない。はてさて誰を迎えに来たのだろうか。
「ふむ、カラリと晴れて爽快なのも良いが、ジメっとダークげな花畑というのも、趣があって素晴らしい! 元の世界観を崩さぬまま表現されたこの空間、実に悪くない!」
自身のユーベルコードによる演出に感動する菘。エモい空間にやる気も気分も上々だ!
「さあ、お主らはこのエモい場でバトれる妾の幸福を、好きなだけ糧とするがよい!」
周囲の幸福を糧とする雲に、彼女は敢えて幸福を与える。何せ今は調子に乗って……否、気分が良いのだ。
闇色に染まる雲達はじめじめとした空気を生みながら、もくもくと大きく育っていく。……のだが、それをじっと待つほど邪神は優しくない。そう、『好きなだけ』とは言ったが『待つ』とは言っていない。
「忘れたか、ここは妾の統べる世界であるぞ!」
巨大な左手が雲を襲う。雲を覆い隠す掌が上から振り落とされ、ぎらりと輝く強靭な爪が周囲の雲を引き裂き掻き消す。
柔らかくなり防御力を上げた雲達など、邪神の世界、邪神の前では無意味に等しい。
「妾の左腕は曖昧模糊すら容易くブン殴れる! なにせ妾であるからな!」
彼女の世界に出来ない事などない。雲達はあっけなく薄れていき、その存在を失っていく。
「ふん、これでは妾が準備体操をしているだけではないか。やはり形のあるものが映えるな。撮れ高が残念なビジュアルの相手は巻き進行よ」
煙を振り払うかのように菘は腕を振るい続ける。雲は薄れゆき風と一体と化し、彼岸花と共に宙を舞う。
成功
🔵🔵🔴
花盛・乙女
正義になれなかった、か。
…まぁ良い。心を砕いても詮無き事。
人に害なすならば斬る、それだけだ。
花盛乙女、推して参る。
さて…一先ずはあの面妖な雲を討たねばならんわけだな。
数が多いのであれば遣りようはある。
【黒椿】と【乙女】の二振りを構え、放つ剣技は『鬼吹雪』。
私の視界全てを間合いと化す羅刹女の剣。
実体なき雲であろうとも、霧散させるほどの剣の嵐を吹かせてやろう。
なに、我が「怪力」を持ってすればいくら硬度を増そうとも沢庵でも切るようなものさ。
しかし、同族殺しか。
どれほどの猛威か、味見の一つもしてみたいところだな。
…おっと、いかんな。遊びが過ぎては他の皆に迷惑か。
まぁ、精々頑張ってもらうとしよう。
正義になれなかった、とは何を意味するものなのか。
それを深く考えた所で先が見える事などないのだろう。
戦場にて彼女の行うべき事はただ一つ。『人に害なすならば斬る』。それだけ。
彼女は腰を低く落とすと、二振りの刀を構え、呟いた。
「……花盛乙女、推して参る」
花盛・乙女(羅刹女・f00399)は戦術に長けた誇り高き刀剣士である。故に戦場にて討つ相手の事情など深く考える事はない。
「(さて)」
一先ず今は、周囲を囲む面妖な雲を討たねばならない。これらさえ消し去れば獣と共に次の戦場へ赴ける。
「(実体がない故、個体の境目も、数も分からぬか)」
雲によって次第に視界が闇色に覆われていくが、何、染まる前に動けばどうという事はない。
「(いざ)」
脚に力を込め、地面を力強く蹴る。
闇の中を跳ぶように駆ける乙女。腕を振るうってもいないのに、無数の一閃が雲達を掻き消していく。否、振るう腕が見えず、知らず知らずのうちに雲が斬られているのだ。
刃の嵐の中、乙女は舞うように戦場を駆け抜けた。気付けば闇色など何処にも存在していない。
「――花盛流剣技【鬼吹雪】。我が怪力を持ってすれば、いくら硬度を増そうとも沢庵でも切るようなものさ」
所詮は雲。元々触れる事など出来ないものがどんなに硬くなろうとも、彼女の腕力にその違いなど分かる事はないだろう。
何処かで大きな音が響いた。乙女達猟兵はその場所へ目を向けると、そこには館の扉を突き破り吼える獣の姿が見えた。
どうやら獣は、雲の防壁を突破したようだ。
「……しかし、同族殺しか」
愛刀を一度鞘へ収める乙女は、遠くに存在する獣の背を見つめながら呟く。
「どれほどの猛威か、味見の一つもしてみたいところだな」
強さの根源など何でも構わない。同族殺しが強敵であるというならば、それなりの力を持っているはず。一度そのまま刀を交えてみたいものだ。
そう考えたのも束の間。おっと、いかんな。と思考を切り替え。
「まぁ、精々頑張ってもらうとしよう。思う存分暴れると良い」
そのまま朽ち果てられても困るがな。……肩透かしを喰らった気分になるのは御免だ。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『死薔薇のモンストル』
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POW : 食事にしましょう
自身の装備武器に【触れたものの体力を吸う茨】を搭載し、破壊力を増加する。
SPD : なんでしたっけ、これ
自身の【つけているリボン】を代償に、【巨大な動く薔薇】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【猛毒の花粉、茨の鞭】で戦う。
WIZ : 刈り取りましょうね
【種子の弾丸】が命中した対象に対し、高威力高命中の【発芽した茨による拘束を行い、更に鎌の斬撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
イラスト:kae
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠アリエル・ポラリス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
狂う獣は次々と館の中を破壊していった。
何かを探すように、何かを憎むように。何もかも、何もかも。
「……うるさいです」
そこへ小さな少女がふわりと現れた。少女は不機嫌そうに獣を眺め、その次に猟兵達に目を向けた。
「……成る程、そうですか」
少女はゆっくりと頷いた。
「そうやって仕向けたのですね、貴方達が。何を吹き込んだのかは知りませんが、同士討ちを狙おうだなんて、無駄ですよ」
少女がそう語り掛ける間も獣は暴れ続け、彼女を狙った。彼女はひらりひらりと避けていく。
「人は相手の心を動かす、そう聞きました。私にも教えて頂けますか、どうやってあの獣を動かし、狂わせたのか、その術を」
大鎌を構え、少女は猟兵達に向けて悲し気に微笑む。
「お水をあげていたもく達はいなくなった。貴方達は私の死んだ仲間達に見向きもしない。……やはり人とは、醜いです」
彼女は『死薔薇のモンストル』。誰かが育てていた薔薇が、人間の少女を模したもの。
緋月・透乃
うーん、猟兵が同族殺しをけしかけたと思っていたり、
人は醜いと言いながら人の姿を模していたりとかよくわからないねぇ。まぁ、これから倒す相手のこととかどうでもいっか!私が気になるのは戦って楽しめるかどうかだけだよ!
武器は重戦斧【緋月】を使うよ。
接近戦を仕掛けたいところだけれど、敵のユーベルコードを考えるとあまり近付きっぱなしも危なそうだね。
身を守るように武器を構えつつ様子を伺い、同族殺しの攻撃に合わせて、接近からの罷迅滅追昇を繰り出しすぐ離れて再びチャンスを伺う、といった戦い方でいくよ。
敵が攻撃してきたら回避なり防御なりで粘って、同族殺しの割り込みを期待してみよう。
うーん、と緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)は首を傾げた。
「思い込みが激しかったり、人は醜いと言いながら人の姿を模していたりとか、よく分からないねぇ」
「この子は一人孤独に死んでいきました。死んだこの子も醜い、見捨てた人も醜い。だから、この子の無念を私が代わりに晴らそうとしてあげてるのです」
「……難しい事を言うなぁ」
会話してもよく分からないや、と頬を膨らませたくもなるが、分からない事でストレスを溜めるなんて自分らしくない。
「……まぁ、これから倒す相手のこととかどうでもいっか! 私が気になるのは戦って楽しめるかどうかだけだよ!」
にぱっと明るく純粋な笑顔。そう、これがいつもの自分。いつも通りに戦って満足出来るかどうか、その結果だけを求められれば良いのだ。
「野蛮な人」
重戦斧を構えた透乃を見るなり、モンストルは再び嫌そうな表情を浮かべるが、直後、腹部を擦るような仕草を見せる。
「……そう言えば、今日は食事がまだでした。貴方、私のご飯になって下さい」
透乃の豊満そうな身体に興味を持ったのだろうか。それはもはや食品としか見ていないような口ぶりだった。大鎌に茨を絡み付け、殺傷能力を増した武器を振るい、透乃の身体を切り刻もうとする。
「わわっ、食べるのは好きでも食べられる方は……」
「一撃で楽にしようとしているのですが、何故避けるのですか?」
「……食べ物として見られてるみたい」
身が多い上に魚のように活きが良いという事なのだろうか。一応スタイルには自信を持っているものの、果たして喜んでいいものかどうなのか。少し複雑だ。
調理を行うが如く大鎌は透乃へ立て続けに襲い掛かる。ずっしりと重い斧とは相性がやや悪く、重い一撃を与えるタイミングがなかなか掴めず防御を続ける。
さてどうするか、とモンストルの動きを窺っていたその時。
「……!!」
「わっ!!」
二人の間に、ずん、と巨大な尾が落ちて来る。咄嗟に距離を取り避ける透乃とモンストル。巨大な尾の正体は館を破壊し暴れる同族殺しの振り回したものだ。
「……! そうだね、危ないけど今は一時共闘って事で!」
間が空いたチャンスだと言わんばかりに透乃は獣の影に隠れ、そこからモンストルに向けて奇襲を試みる事にした。
「くたばれ、消え去れ、あの世の果てまで飛んでいけー!」
モンストルが自分を見失ったその一瞬を狙い、透乃は強烈なタックルを仕掛けた。どん、とモンストルの軽い体を宙に浮かばせると、重い斧を力いっぱい振り上げる。
「罷迅滅追昇!!」
怪力自慢の彼女の一撃に耐えられる者などいない。モンストルの防御も虚しく、彼女は天井に強く叩き付けられた。
成功
🔵🔵🔴
花盛・乙女
…正々堂々、とは言い難い状況ゆえ貴様の言葉も甘んじて飲み込もう。
気兼ねなく言葉を浴びせるがいい。
あの茨と鎌には警戒を怠らない。
【黒椿】と【乙女】を構え「武器受け」にて直接の接触は避ける。
「戦闘知識」「第六感」を駆使して懐に入り込み、「グラップル」による柔にて主導を取り一閃。
あるいは後の先、「カウンター」にて一閃をくれてやろう。
一太刀の先には二撃、【雀蜂】にて一撃を。
同族殺しには構わない。
私に襲い掛かることがあれば反撃するが、その程度だ。
探し物の邪魔をするほど無粋ではないさ。
人の醜さを語るか。
この羅刹女の心を惑わせるなどとは思ってくれるな。
私は猟兵で、貴様はオブリビオン。理由はそれだけで充分だ。
いざ、正々堂々と。刀剣士としてそれを告げたかったのだが、今回はこの状況だ。それを口にする事は出来ない。
花盛・乙女(羅刹女・f00399)はただ黙り込み、モンストルの言葉を聞いていた。
何を言うのも自由だ。自由だが、それを全て受け入れ大人しくしている自分ではない。
「(嗚呼、気兼ねなく言葉を浴びせるがいい。……だが)」
それなりの見返りを受ける覚悟は出来ている、という事で良いだろうか。
「いいわ、貴方も私の糧となって下さい。食事の時間ですから」
彼女が握る、茨の絡み付いた大鎌が生命を求め襲い掛かる。乙女は二刀の太刀で滑らせるように攻撃を受け流すのだが、茨がこちらの太刀にも絡み付いてくる。振り払うのは簡単なのだが、やはり普通に避けるより手間が掛かる。
なんとも接近し辛い相手だ。さて、どうやって一撃を与えようか。相手の隙を探ろうと後方へ下がると。
「……!」
荒々しい足音と咆哮が耳に入り、乙女は腰を低く落としながら柱の影へと向かった。
音の正体は狂える獣だった。あらゆるものを破壊する獣は、モンストルも猟兵も巻き込み無差別に狂い続ける。
今、巨大なシャンデリアがじゃらりと揺れ、戦場へと落下した。モンストルは軽々と回避を成功させたのだが、攻撃はそれだけでは終わらない。すぐさま獣の巨大な体が突進を仕掛けてきた。
「貴方はもっと、静かにして頂けませんか」
獣の行いにモンストルも少々苛ついた様子。茨を伸ばし獣の足に絡ませると、大鎌を大きく横へ振った。足を引かれた獣はぐらりとバランスを崩し、ずしんと横へ倒れ壁に叩き付けられた。
自分の住処をこれだけ荒らされてしまったのだ。被害を最小限に抑えようと彼女も既に思っていないのだろう。砂埃や瓦礫や地響きなど、もはや顔色一つ変えない。
「奴が五月蝿い事だけは、同意しよう」
そんな声が聞こえたのは、一息つく間もない、そんな瞬間だった。
倒れた獣が破壊した柱の瓦礫から、砂埃と共に現れたのは乙女。大鎌を大きく振った直後の彼女に防御の術はない。
モンストルの懐に入り込めた乙女は左手に持つ極悪刀を一振り。深く斬る事は出来なかったが、それで十分だ。
「良いか、一撃を避けぬ者には二撃が待つ、覚えておくが良い!」
ざ、と更に前へ踏み込む一歩。流れるように右手の小太刀を逆手に構え、少女の腹部に更なる一撃を与える。しかし与えたのは二度目の斬撃ではない。硬い握り拳だ。
モンストルの軽く小さな体は大きく吹き飛び、床を抉りながら遠くへと転がっていく。
「これでもまだ人の醜さを語るか? この羅刹女の心を惑わせるなどとは思ってくれるな」
何を言おうが、貴様とは和解出来ないだろう。
私は猟兵で、貴様はオブリビオン。相容れぬ理由など……それだけで充分だ。
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
さて何のことやら、妾にはさっぱり分からんの~
皆をドキドキワクワク、笑顔にさせることが正に妾の権能、得意分野であるがな!
そもそも、お主の事情など実にどーでもよい!
今は、薔薇の精?のような素敵ビジュアルなキャラと派手にバトるシーンよ!
体力を吸われようが関係ない!
ダメージを与えて、差し引きで勝れば問題ないのでな!
それとあまり関係ないが、得物が大鎌とはポイントが高いと思うぞ!
高く跳び上がり、翼で滑空して位置調整をして……ブッ潰れろ、楽土裁断!
そのまま接近戦にもつれ込むぞ
目を離して跳ばせたらマズいと思わせる!
挑発トークも含め、妾の役割は相手の注意を引きつける陽動よ
そして、生まれた隙を逃す皆ではあるまい?
はぁ、と御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は少女の主張を聞いては頷いていた。しかし。
「さて何のことやら、妾にはさっぱり分からんの~」
最後にはけらりと笑ってみせた。
「そもそも、お主の事情など実にどーでもよい!」
そう、今は撮れ高がどれだけになるかが重要だ。まさか言うだけ言って先程と同じ『巻き対象』になるなんて事はないはずだ。なってしまったらがっかりせざるを得ない。
「さて、今は薔薇の精のような素敵ビジュアルなキャラと派手にバトるシーンよ!」
活躍を見ている皆にドキドキとワクワク、そして笑顔を届ける。それが妾の権能、そして得意分野よ!
「ちなみに薔薇の精である上に特物が大鎌とは、ポイントが高いと思うぞ! さぁ妾を楽しませろ! そして派手に散ると良い!」
両腕を広げ高笑いを見せ付ける菘。もはやどちらが悪役なのか、外見だけでは見分けもつかない。
「貴方の言っている事、理解出来ません。……食べても硬くて美味しくなさそうですが、まぁいいでしょう」
少女モンストルは茨の絡み付いた大鎌を構えると、菘の大蛇のような下半身を狙い刃を振るった。長い尾は菘が飛び上がっても暫く残り続け、結果的にモンストルの刃がそこへ掠めてしまったのだが、まぁそんなものは何の問題にもならない。
「何、差し引きで勝てば良いのだ。そんな傷で落ちる妾ではないわ!」
高く飛び上がり翼を広げた姿は正に邪神そのもの。シルエットは大蛇にも龍にも見える。
「次は妾のターンよ。浅墓で身勝手な正義と希望をその身に抱いたまま、蛇神の裁きの下に潰れて果てるが良い!」
ぐるりと体を捻らせながら菘はモンストルの真上を狙い急降下を始める。波打つ蛇の太い尾がモンストルを囲い動きを封じ込めながら強烈な一撃を叩き込む。武器で防御していたものの、その思い一撃の前では無意味にも等しかった。
「どうした。あれだけイキっていたが、もうお主のフェイズは終わりか? 見た目と強さが見合っていないのはマイナス点であるぞー」
床に叩き付けられ意識が朦朧としているのだろうか。起き上がろうにも上手く動けていない様子のモンストルを体で締め付けながら、菘はわざとらしく貶してやった。
――ま、この後どう動かれようが構わぬよ。妾が再度攻撃してやっても良いし、万が一逃げられた所で……怒り狂う敵の隙を逃す皆ではあるまい?
成功
🔵🔵🔴
イデアール・モラクス
よく喋る女だ、獣を操る術など簡単な事だろうに。
・行動
「薔薇とては今はオンナ…刺を避ける術もあろう!」
UC【色欲の触手】を『全力魔法』で数を無数に増やした上で『高速詠唱』を用いて素早く召喚、『範囲攻撃』で同時に多方向より『一斉射撃』し対象を絡めて縛り快楽漬けにする。
「嗚呼、たまらんなァ…私が直に味わってヤりたいくらいだよ」
拘束したら触手で穴という穴を『串刺し』にして『属性攻撃』を用いて先端から電撃を流し体内から焼き痺れさせ動きを止め、獣を嗾ける。
「だが今の私はただ道を作り、生贄を縛り上げて捧げるのさ…綺麗に散らせてもらえよ、オンナァ!」
※アドリブ歓迎
――全く。よく喋る女だ、獣を操る術など簡単な事だろうに。
魔女、イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)は哀れだと笑ってみせた。
何とでも吼えるが良い。吼えるだけ吼えて、泣くのはどちらなのか思い知らせてやろうではないか。
「快楽の海に呑まれ痴態を晒すがいい」
ぱちん、と指を鳴らした。
「ヤれ! 色欲の触手!」
その声と同時に、モンストルを囲むように無数の魔法陣が現れた。怪しく輝く魔法陣から姿を現したものは、ぬるりぬるりと動く無数の触手の群れ。『生』を求めてモンストルを目指して伸び行く。
「こんなもの、刈り取ってあげます」
モンストルは周囲の触手に向かって種子の弾丸を撃ち込んだ。撃ち込まれた場所からは急成長した茨が触手に絡み付き、その動きを鈍らせた。
襲い掛かる触手を次々と大鎌で薙ぎ払っていくモンストル。しかし、その抵抗も長くは続かなかった。
ぬるり。触手が一本でも体に触れれば、それは『終わり』と『始まり』を意味する。
一本の触手が大鎌の薙ぎ払いを避け、モンストルの足に絡み付いた直後、流れるように無数の触手は彼女を飲み込んだ。いくら刈り取っても魔法陣は消える事はない。抵抗など最初から無意味だったのだ。
「やめ……ッ!!」
もはや叫ぶ事すら許されない。四肢も目も口も全てを封じられた。今はただただ、ぬるりとした感触に全身を支配されている事だけしか分からない。
攻撃が出来ずとも抵抗は出来る筈だ。しかし何故かそれが出来ない。意識が遠のいて体が言う事をきかない。……何なのだろうか、心と腹がむず痒くなる、この高ぶる気持ちは。
「嗚呼、たまらんなァ……私が直に味わってヤりたいくらいだよ」
触手に飲まれた少女の姿を、イデアールは恍惚の表情で眺めた。
「人は醜いと言ったな。……しかし良かったではないか、その醜い人間の姿で居た事で、覚えてしまったようだな」
そう、快楽というものを。
「存分に楽しんで貰いたい所だが……非常に残念だ。今の私はただ道を作り、生贄を縛り上げて捧げるのさ……」
ぱちん。再び鳴らされる指。それと同時に触手の動きが更に激しくなり、先端が発光し始める。しかしモンストルの意識はそれどころではなく、今起きている状況に追い付く事など出来ない。
「綺麗に散らせてもらえよ、オンナァ!」
巨大な音が鳴り響き、触手の先端から電撃が走った。モンストルの体はびくんと大きく跳ね上がり、湿っていた服は一瞬にして焼け焦げた。
それと同時に遠くから咆哮が聞こえた。彼女の代弁……という訳ではなさそうだ。ばちん、と鞭のように動く触手の電撃に嗾けられた獣が、暴れる牛のように少女の方へと走り向かっているではないか。
「このまま生きたとするならば……立派に堕ちていただろうにな」
触手に弄ばれ、ボロ人形のように獣に突き飛ばされる少女の末路に、惜しい事をしたものだと魔女はほくそ笑んだ。
成功
🔵🔵🔴
ディスターブ・オフィディアン
第一人格で行動
「醜い? そんな言葉は鏡に向けて言え。――それとも貴様は今まで殺めた人々に墓の一つでも立てたことがあるのか?」
「まあオレは墓なぞいらん。代わりに貴様の命を貰おうか」
属性攻撃によりな炎の矢を生成し、敵の攻撃や回避を妨害するように援護射撃。援護の対象は他の猟兵と例の『獣』だ
ある程度被弾したところで本命のUCを発動
「――答えよ、あの『獣』は一体なんだ? 謀れば貴様の命はないぞ」
問いかけと共に鬼火を放つ。嘘をつけば死ぬ程度にダメージを受けたタイミングを狙う
「なるほど、それが全てか。では死ね」
全力魔法で火の玉を生成、叩きつける
「謀れば殺すとは言ったが、真実なら助けるとは言っていない」
人を醜いと言った者が人の姿をしている。なんと滑稽か。なんと矛盾した事か。
「醜い? そんな言葉は鏡に向けて言え。――それとも貴様は今まで殺めた人々に墓の一つでも立てたことがあるのか?」
ディスターブ・オフィディアン(真実を 暴く/葬る モノ・f00053)の問いに、モンストルは淡々と答える。
「食事をした後、食材それぞれに墓を立てなければいけないなどと、聞いた事はありません」
彼女にとって人とは、食材か障害物にしか見えていない。
「お腹が空いたので食べた。邪魔だったので退けた。それの何が悪いのでしょうか」
「……成程」
ディスターブはそう呟き、数秒ほど静寂を作った後、静かに溜め息を吐く。
「……まあオレは墓なぞいらん。代わりに貴様の命を貰おうか」
「おかしな方ですね」
モンストルはひらりと靡かせていた飾りのリボンをぶちりと千切り、それを握り締めると。
「……あれ、なんでしたっけ、これ。何か大事なものだったような……」
どうやら無意識で手に取ったようだ。このリボンで何をしようとしたのか、このリボンが何だったのか、少し前の記憶を呼び起こそうとするのだが。
「……まぁ良いでしょう」
手に握ったリボンを茨で包み込み、それを床に落とす。ざわざわと巨大化していく茨から生まれたものは巨大な薔薇。先程のリボンと同じ色をしているようにも見える。
「薔薇か。燃やすにはうってつけだ」
ディスターブの周囲に無数の火球が作り出される。それは鋭い矢の形へと変化すると、薔薇に向けて一斉射撃された。
「忘れるな。貴様の敵はオレ達だけではない」
味方とまでは言わないがな、と、暴れる獣に視線を向ける。炎の矢は直接的な攻撃をせず、薔薇の動きを封じるように茨を燃やし、攻撃を鈍らせていった。
獣は敵味方など認識しない。ディスターブは獣から離れながら炎の矢で誘導し、薔薇を踏み潰すよう操ってみせた。
獣は茨の棘や猛毒など気にもせず、ただただ踏み潰した。痛みなど感じない。否、そんな感覚など忘れてしまったのだ。
「さて」
薔薇の攻撃を封じたディスターブ。新たな炎を生み出すと、それをモンストルへ向かって放つ。彼女も大鎌で炎を掻き消すのだが、彼の『叡智の灯』はそんな簡単に消える事などない。
「――答えよ、あの『獣』は一体なんだ? 謀れば貴様の命はないぞ」
彼は問う。審判の鬼火に囲まれた少女は顔色一つ変えず、静かに答える。
「……あの子を狂わせた貴方達が、それを問うのですか?」
ぼう、と鬼火は成長する。
「答えよ」
「……」
少女は目を閉じ、そして口を開く事はなかった。
「それが全てか。では死ね」
鬼火は少女を火刑に処した。ディスターブの手のひらに浮かぶ巨大な火球も、最後の追い打ちと言わんばかりに放たれ、少女の体は完全に燃え尽きた。
真黒に焦げ付いた薔薇も枯れ果て、茨の絡み付いた獣の大きな足にぐしゃりと踏み潰された。
薔薇の館の主は燃え尽き、消え去った。しかし静寂は訪れない。
ここにはまだ、悲し気に吼え、狂い、破壊を続ける獣が残っている。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ノクト・ヴァニタス』
|
POW : (世界に選ばれた者?そうなんだ、すごいねえ)
単純で重い【尾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : (ボクの前で好きに動けると思ったんだ?)
【視界を奪う黒い霧】【呼吸を阻害する白い風】【抑えきれない怨念】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : (キミ達なんか、だいっきらい!)
【凝り固まった人類への不信感】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
イラスト:白狼印けい
👑8
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「サンディ・ノックス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
世界に選ばれた者? そうなんだ、すごいねえ。
じゃあ教死えて欲しいな。
今、キミ達の目の前には、嘗て無害だった獣が泣き叫死んでいる。
獣は人類に裏切られて死死死んだ。そんな人類の味方を、キミ達はしている訳だ。
さて、死どっちが死悪い奴死なのかな? 悪い奴は死死許さな死いんだ死よね?
正義とは一体、何なの?
嗚呼、こんな事、キミ達には、もう通じない、だろう、けど、ね。
イデアール・モラクス
残るは狂った獣だけ…か。
フン、見慣れた目をしている…恨み辛みの炎に身を焦がす者の目だ。
・行動
「貴様の恨む訳など知らぬ、興味も無い…だがイカレた獣を嬲る趣味もない」
魔導ビットの『乱れ撃ち』と魔剣ドミナンスによる『薙ぎ払い』の二種『武器受け』で攻撃を防ぎながら魔力を練り、UCを放つ。
「正義と信じ、見えぬ未来へと突き進むしかない定め…それが我らの愛しきこの世界、そして人間という生物。
解放してやる、全てから!」
【七星覇天煌】を『全力魔法』と『属性攻撃』で威力を増した上で『高速詠唱』を用い一瞬で行使、膨大な魔力光線の『一斉射撃・制圧射撃』による『範囲攻撃』で眼前の敵勢を跡形も無く消し去る。
※アドリブ歓迎
自らの身体の事など顧みず、見ず知らずの薔薇の園をぐちゃぐちゃに踏み潰し、見ず知らずの館の壁や柱を破壊し、最後には見ず知らずの主すら殺した。
猟兵達がこの戦場に降り立ち、最初に見た時よりも明らかに獣は疲れ果てていた。
しかし同情して憐む者など、ここには誰一人としていない。
「残るは狂った獣だけ……か」
やっとか、とイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)は獣に目を向け鼻で笑ってやった。
「フン、見慣れた目をしている……恨み辛みの炎に身を焦がす者の目だ」
いつ何処で獣が狂ったのかは知らない。だが魔女には見える。もはや憤怒の感情しか残されていない心が。
獣は吼えた。しかしその咆哮も覇気が薄れ、恐ろしさに欠けるものと化している。
それでも獣は吼え続け、傷付いた身体をミシミシと膨らませ巨大化していく。
「悲しいか? 苦しいか? いや、それ以前に見るもの聞くもの全てが五月蝿いか。良いだろう」
イデアールはパチンと指を鳴らした。彼女の背後の異空間から現れた魔導ビットの群れがすぐさま獣を取り囲み、光線を発車しようと光を溜める。
勿論の事、獣は尾を振り回し、爪で引き裂き、噛み付き、魔導ビットを破壊した。しかしその数は無限に近い。いくら破壊しても新たな魔導ビットが次々と現れ包囲していく。
「貴様の恨む訳など知らぬ、興味も無い……だがイカレた獣を嬲る趣味もない」
異空間から魔導ビットと共に紅き魔剣が現れた。吸い付くようにイデアールの元へ飛んで行く魔剣を掴み取ると、獣によって吹き飛ばされた魔導ビットを魔剣で振り払い叩き落とした。
「正義と信じ、見えぬ未来へと突き進むしかない定め……それが我らの愛しきこの世界、そして人間という生物」
ぎらりと輝く巨大な魔法陣が突如イデアールの背後に描かれる。そして魔剣の先には今にも爆発しそうな魔力が膨大に膨れ上がっている。
「喜ぶが良い。この私が解放してやる、全てから!」
魔剣が獣の方へと向くと同時に、背後から放たれる七色の光線。それは魔導ビットをも巻き込み獣に降り注ぐ。風穴を開けたそこへ、更に巨大なレーザーが追い討ちを掛けるように迫り来るのだが。
「……救えない程、愚かだ」
獣には『避ける』という概念など、とうの昔に消え去っていた。
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
邪神オーラよ、妾の血を吸い全力で活性化するがよい!
右腕へと纏わりつき、左腕の如く巨大な手腕と化せ!
真正面から突っ込み、前脚の一点を狙いラッシュをブチかまそう
真の狙いは、体勢を崩させて下がってきた頭よ
はっはっは、頭が高いぞ!
渾身の右ストレートを叩き込む!
そもそも妾は右利き、左は大味な攻撃しかできんのだ
だから左腕と同等の力を右に持たせれば、威力は倍どころではない!
会話とは言葉のキャッチボール!
だがお主のは投げっぱなしのドッジボール(物理含む)!
どうせ妾が何をどう言っても無駄なのであろう?
故に、お主の言葉は効果音やBGM扱いよ
安心せい、動画視聴数が伸びれば、誰かがセリフを字幕化するかもしれんぞ!
会話が出来ない相手となれば、やる事など一つしかない。
そう、ボコってみる事だ。
「会話とは言葉のキャッチボール! だがお主のは投げっぱなしのドッジボール(物理含む)! 話にならん相手と無理に会話を試そうと思う程、妾は暇ではないのでな!」
御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)はけらりと笑う。
「それに、そんな見苦しいものなんぞ誰が見たがるのだ。(動画)時間は限られているのだ、有意義で面白いものを見せてやらねばな!」
そういう事だから早速だ、と菘は準備を始めた。バリ、と左腕の爪で軽く引っ掻き右腕から血を流す。直後、邪悪なオーラが右腕を纏い、禍々しい姿へと変形させていく。
「邪神オーラよ、妾の血を吸い全力で活性化するがよい! 右腕へと纏わりつき、左腕の如く巨大な手腕と化せ!」
人間のようなか細い右腕は全てを破壊する邪神の腕と化した。しかしそれを見て怯む獣ではない。いや、獣にそんな感情など既に存在しないのだ。
獣は太い尾を振り回しながら菘へと体当たりを仕掛ける。勿論だが喜んでいる訳ではない。そんな感情も何処にも存在しない。
太い尾は周囲の柱や壁を破壊し吹き飛ばす。地響きや瓦礫が菘にも飛来してくるのだが、それくらいで退く菘ではない。寧ろ真正面から突っ込んでいく。
「面と面を向けて激突するシーン程、燃えるものはないからな!」
邪神の右腕を振り上げると、菘が狙った場所は獣の足元。す、と前屈みになり前脚だけに狙いを定め強烈なラッシュを繰り出した。
よろりと体が傾く獣。しかし菘の攻撃フェイズはまだ終わってはいない。
「はっはっは、頭が高いぞ!」
硬く握った右腕の拳が、獣の頭部に向かって一直線に振り下ろされる。低く鈍い音が響くと同時に獣の頭部は地面に叩き付けられ、減り込み、周囲には破壊の衝撃波が広がっていく。
この破壊力も利き腕だからこそ為せるもの。盛大な一撃を見せ付ける事が出来て邪神も満足気だ。
「……いいか。妾の姿を無辜の民に魅せる為に、お主は居るのだ。言わば今のお主はエンターテイナーである。良かったではないか、そのうち誰かがお主の言葉を字幕化してくれるかもしれんぞ。それが話題になれば視聴数も上がるというものよ! いやはや、win-winであるな!」
お主の姿は皆に笑顔を与えるかもしれんぞ。――ま、思っていたのとは大分違うだろうがな。そんなもの知ったこっちゃあない!
大成功
🔵🔵🔵
ディスターブ・オフィディアン
第一人格で行動
UCを使用、ワイヤートラップで牽制しつつ、本命までおびき寄せる。敵からの攻撃は瓦礫にフック付きロープを引っかけ回避
「正義とは何か? 決まっている、非道をなす時の言い訳だ」
「例えば、自分達の為に戦った獣を裏切り殺す。それは下手人にとっては正義だったのだろう。この行いは正義である、正義のために仕方がない、とな」
「そして己にとって都合の悪い物を悪と断ずる。今のお前が裏切り者を邪悪と決めつけるように」
「哀れな獣よ。お前は己の正義のために戦い、誰かの正義のために死んだ――それだけの話だ」
本命の罠は杭を生やした落とし穴。連動して上から瓦礫が降り注ぐワイヤー付きだ
――ま、墓ぐらいは立ててやる
ボロボロの獣の体を様々なものが嵐のように吹き荒れ包んだ。視界を覆う黒い霧、息が止まりそうな凍った白い風、自らの溢れ出る怨念。渦巻くそういったものが徐々に範囲を広げ猟兵達にも近付いて来る。
ディスターブ・オフィディアン(真実を 暴く/葬る モノ・f00053)はフック付きのロープで素早く移動をしながら遠くから獣を観察した。
「かつてお前は正義を信じていたと聞く。いつまで嘆くつもりか」
ばらり。ディスターブはユーベルコードによって獣の周囲に向かって何かをばら撒いた。それらは作りの荒い偽物ではあったが、理性を失った獣には問題なく通用するだろう。
「誰かの不幸が誰かの幸せとなる……とは、よく言われるものだ」
果たしてそれは善なる言葉なのだろうか。
「例えば、自分達の為に戦った獣を裏切り殺す。それは下手人にとっては正義だったのだろう。この行いは正義である、正義のために仕方がない、とな」
ガチン。獣の足元で何かが鳴り響き、獣が進行方向を変える。複数のワイヤートラップが仕掛けられている事を獣は知らない。
「そして己にとって都合の悪い物を悪と断ずる。今のお前が裏切り者を邪悪と決めつけるように」
獣の向かう先を操る事など簡単だった。どたどたとした、決して綺麗ではない足音が徐々にディスターブに近付いて来る。
「否定したいか。しかし今のお前には、それは出来ない」
「……これで分かっただろう。正義とは何か? ――決まっている、非道をなす時の言い訳だ」
獣が負の怨念を撒き散らしながらディスターブを踏み抜こうとする。しかしディスターブはロープを引き、自分の体を後方へと引っ張り上げ高く飛び上がった。
獣の足元は地面を盛大に破壊した。いや、地面がそんなに脆いはずがない。これは罠である。
踏み抜いた地面の先にあるものは奈落。永遠に落ちるかと思われた底で待つものは鋭い杭。吸血鬼でもないのに串刺しにされていく。哀れみの雨の代わりに降り注ぐものは自らが破壊していったものの瓦礫だ。
「哀れな獣よ。お前は己の正義のために戦い、誰かの正義のために死んだ――それだけの話だ」
これは飾りではなく、事実を語ったまで。無垢なものほど眩しく、そして残酷なものはない。
……ま、せめてもの情けだ。墓ぐらいは立ててやる。
もし次があるのならば、世界の敵などにならぬよう正義を全うするがいい。
成功
🔵🔵🔴
緋月・透乃
よし、いよいよ残りは同族殺しだけだね!
なんか可哀想な自分に酔ってるみたいだけれど、まあこれから戦って殺す相手だしどうでもいいね。
そんなことよりさっきあの薔薇のやつに向けていた力を今度はこっちに向けて、楽しませてもらいたいものだね!
今回も武器は重戦斧【緋月】を使うよ。
敵はでかいよね。下手に間合いを取るよりも思い切って接近したほうが良さそうだね。
ダッシュで突っ込み、一度間合いを詰めたらできるだけ離れないように敵の周りを動きつつ、攻撃をしていくよ。
敵の攻撃は気合いで見切るのみ!
ユーベルコードに対しては、こっちも怪力で繰り出す緋迅滅墜衝で真っ向勝負と行くよ!
緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)にとってはやっと訪れたお楽しみの時間だ。連戦による疲れなどないと言えば嘘になるかもしれないが、元気とやる気ならまだ十分に有り余っている。
「なんか可哀想な自分に酔ってるみたいだけれど、まあこれから戦って殺す相手だしどうでもいいね」
何処か悲しそうな悲鳴に似た咆哮が聞こえるが、彼女にとってはただの五月蝿い雑音だ。
「そんなことより、さっきあの薔薇のやつに向けていた力を今度はこっちに向けて、楽しませてもらいたいものだね!」
さっきはちゃんと相手をしてあげられなかったしね、と笑顔で重戦斧【緋月】を持ち上げる。
獣の体は満身創痍だったが、まだ相手も体力は十分に残っているようだ。いや、それくらい残っていなければ透乃がここに来た意味などなくなる上に満足も出来ない。
暴れる獣に透乃も勢いよく突っ込んでいく。重い斧を持っているはずだが、楽しそうに全身を弾ませて駆けていた。そんな彼女に向けて獣は大きな尾を振り上げ、重量の赴くがままに振り落とす。
「いいね! そういう感じ!」
透乃は足を止める事などしない。真っ向勝負で挑む。『これ』はそうでないと意味がない勝負なのだから。
両手で握る斧を思い切り横へ振り回すと、遠心力によって体が大きく横へ動く。ずん、と大きな音と地響きを立て、獣の尾は空気と地面を叩き砕くだけで終わってしまった。
吹き飛ぶように動いて避けた透乃は、斧を持つ腕を左手だけに変えると、そのままぐるぐると体を回転させながら力の限り斧を振り回した。
「力の限りぶっ壊せー! 必殺の左! 緋迅滅墜衝!!」
力任せとはいえ獣のそれとはものが違う。回転させながらも攻撃を当てる瞬間は足で踏ん張り、斧の刃先まで力を集中させ、確実に当てる。戦いを楽しむというのは、決してがむしゃらに暴れれば良い訳ではないのだ。
叩き付けられるような一撃に、獣の胸部には大きな切り傷が深く刻まれた。しかし血など枯れ果ててもう出ない。痛いと叫ぶ事も、泣く事も出来ない。
彼女はそれを待つか? 嘆くか?
否。そんな同情など生まれる訳がない。あるのは戦いを楽しむ心だけだ。
大成功
🔵🔵🔵
花盛・乙女
さて、待たせたな同族殺し。
花盛乙女、推して参る。
二本の刀を構え、正面から奴めと切り結ぼう。
強敵であれば、それは喜ばしい事だ。
骸の海より蘇り、同種同族を殺し、何を求めているのか。
力の晴らし場所が欲しいなら、私が受けてやろう。
強烈な尾の一撃を「怪力」による筋力の収縮と「激痛耐性」で受ける。
舐めるなよ、この羅刹女の膂力を。
受けてなお体が動けば、【雀蜂】にてその身を骸の海へと返してくれる。
正義のなり損ないと聞いた。
だが今は、人を憎むとも聞く。
他人に理由を求めるから、そうなったのだ。
己の中に信念を抱き、誰が為でなく己の為に振るう。それが正義。
…貴様を見ていると、私もいずれと思ってしまうが…いや、よそう。
更なる高みを極め、更なる強敵を求める者。花盛・乙女(羅刹女・f00399)もそんな猟兵の一人であった。
「さて、待たせたな同族殺し」
言葉が通じない事など分かっている。それでも相手の為に、自分の為に、この言葉を紡ぐのだ。
「花盛乙女、推して参る」
極悪刀【黒椿】と小太刀【乙女】は光る。今、この獣の命を切り捨てる、と。
獣は既に真っ直ぐと歩く力など失っていた。酔い痴れたかのように、壁や柱にぶつかりながら、あらゆるものを破壊して進む姿は、もはや救いようなどない。
瓦礫と共に乙女も破壊しようと、今にも千切れそうな尾を無造作に振り回す。
美しくない、と乙女は思う。しかし相手にそれ以上の何を求めようと言うのか?
「来い。力の晴らし場所が欲しいなら、私が受けてやろう」
刀を交差させ力強く足を踏ん張る。巨大な尾の軌道を読む事は容易かった。が、力を読む事は出来ない。
獣の尾は徐々に、徐々に大きくなり、目の前を覆い、そして強大な衝撃が刀を通じて乙女に襲い掛かる。
自分の足が地面に沈もうが、そのまま抉りながら後方へと押されようが、周囲が破壊されようが、決して自分だけは屈したりはしない。
――骸の海から這い上がった落ちぶれ者に、この私を蹴散らせると思うな。
獣の尾は減速し、ぴたりと止まった。恐れ慄いたのではない。『止められた』のだ。
「舐めるなよ、この羅刹女の膂力を」
尾の影から声がした。直後、二又に割かれた尾から一人の女が飛び出す。
正義のなり損ないと聞いた。
だが今は、人を憎むとも聞く。
他人に理由を求めるから、そうなったのだ。
己の中に信念を抱き、誰が為でなく己の為に振るう。
……それが正義。
尾から背を、腕を、首が割かれる。布でも切るかのように、刃の入った刀は一振りで全てを斬った。
飛び上がり、斬り、女が着地を目論んだ場所は獣の頭部。着地と同時に拳を叩き付ける。
小さくか細い腕のはずが、見事に巨大な獣の顔を歪め、ずしんと倒れさせた。
言葉を失い、理性も失い、感情も失った獣は、とうとう吼える声や猛進させる体も失った。永遠に破壊を続けるはずだった獣は、静かにその活動を停止させるのだった。
館は静かだった。何処かから空いたボロボロの天井から、ぽつり、ぽつりと水滴が落ちてくる。
どうやら外では本格的に雨が降って来たようだ。
何か被害が起きた訳でもなく、不穏な噂を耳にした訳でもない。本来なら縁がなかったであろう者達を、次々と倒していった猟兵達。
感謝をしてくれる者など誰もいない。それでも猟兵達はこの静寂の勝者となった。
赴く理由など一つで十分だ。
『オブリビオンがいる』。我々が戦う理由など、それだけで十分なのだ。
正義なんて言葉は――ただの飾りだ。
大成功
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