地下迷宮エマノアを攻略せよ
#アルダワ魔法学園
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●スバルからの挑戦状
或る建築家は言った。
「一生は短い。だが人はそれでも退屈することがある」
建築家は渇望していた。人を殺すのは退屈だと信じて疑わなかった。
そんな時に出くわしたもの。それが脱出ゲームだった。
彼の人生にとっては転機にあたる。
謎を解き明かし出口を見つけた時のその快感。興奮止まない感覚に建築家は歓喜した。
いつしかその謎やパズルを自分で作るようになっており、どう攻略してもらうかを楽しむようになっていた。
骸の海より這い出た建築家―スバル―が、此度願うはたった一つ。
自分が命懸けで創った作品(こども)を探索者に攻略してもらうこと。
その願いを叶えるべくして、地下迷宮『アルダワ』にまた新たな迷宮が生まれる。
迷宮の名は『エマノア』
宇宙のように広大でどこまでも自由であって欲しい、そんな意味が込められている。
アルダワ魔法学園の地下には数知れず迷宮が点在している。
今日も今日とて学生達が探索や冒険にやって来ていた。
その一つ、飴色と乳白色の鉱石が交互に並んだ、正方形で象られた遺跡迷宮に挑戦している少年がいた。
「げ、暗号マスに止まっちゃった。えーと、『この鳥の正体は何か? 8.9999999999』だって。えぇ、意味が分からないんだけど!」
少年は悩みに悩んだ挙句、答えを告げた。
その瞬間、ゴゴゴと物凄い音が背後から近づいてくる。振り返れば大岩がゴロゴロと少年へ向かって転がってきてるではないか。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
少年は叫ぶ。必死に逃げて逃げて、大岩と共に姿を消した。
そんな様子を何処からかスバルは眺めていた。
「そんなに難しかったかね。あの謎は難易度的には低い方なんだがなぁ」
顎鬚に触り、ふむ、と考えるポーズを取る。しかし愛する作品(こども)に妥協などあってはならない。許されない。
この迷宮を攻略して、自分のところにまで辿り着く猛者をひたすらに待ち侘びる。
「さぁ、もっともっと楽しんでくれたまえ。吾輩の迷宮を!」
探索者達がエマノアをどう攻略していくのか、楽しみで楽しみで仕方がないといった様子だった。
●華水晶は予知を見る
「マリアが見た光景は以上となるのだわ」
最近、グリモアに目覚めたマリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)は、集まった猟兵達に見たままを告げる。
「災魔が創った『エマノア』という迷宮を打破して、災魔を退治しに行ってもらいたいのよ」
マリアドールは説明を続ける。
最初の迷宮は所謂、すごろくのような遺跡迷宮となる。
一本道で迷うことはないが、不思議な力に苛まれ、移動を制限されている。
猟兵達は上空から降ってきたサイコロを振り、出た目のマスにしか移動できない。
「止まるマスによって何が起こるか分からないのよ。罠や暗号があるらしいのだけれど……でもアイテムがもらえるマスもあるみたい!ちょっとだけ、楽しそうなのだわ」
当たりマスね、と花が咲くような笑み覗かせてマリアドールは述べる。
「この遺跡を抜けた先は何が待ち受けているのか、マリアも詳しく予知できなかったの。別の遺跡が見えたのは確認できたわ。そして最奥に災魔がいるのは間違いないのよ」
神妙な面持ちで猟兵達を見回し、言葉を区切る。
グリモア猟兵は予知ができても、現場へ赴くことは不可能だ。
ならば、猟兵達を信じて、迷宮前まで無事に送り届けて祈るのみ。
「気をつけて。無事に帰ってこれますように」
茉莉花の祈りを猟兵達へ授け、マリアドールは赤い蕾の白硝子ジャスミン型のグリモアを起動させた。
紅玉だま
●初めに
新人の紅玉だまと申します。
まずはこの依頼に目をとめて下さり、有難うございます。
楽しい愉しいラビリンスへ皆様をご招待します!
本シナリオの舞台は『アルダワ魔法学園』
迷宮奥にいるオブリビオンを退治することが目的となります。
●第一章
『双六大迷宮』ミリア・プレスティール(f16609)様より
猟兵達は必ずどこかのマスに止まります。
罠を掻い潜ったり暗号を解いたり、アイテムを得たりします。敵は出てきません。
槍や落とし穴などの物理的な罠から魔法による攻撃や状態異常魔法など、様々な類の罠があるようです。
暗号は不正解だと後ろから大岩が転がってくるので、一気に出口まで駆け抜けて下さい。
当たりマスに止まると、何かアイテムが降ってきます。
プレイングには上記以外の罠を書いて下さっても大丈夫です。あまりにも公序良俗に反するものはNGです。
アイテム発行はありませんが、欲しいアイテムなど好きに考えてもらってOKです。
やりたいこと盛り沢山でどうぞ。
●第二章
『何々しないと脱出できない部屋』村雨・ベル(f03157)様より
鬱蒼と生えた樹々に囲まれた遺跡に各々入って行った猟兵達は閉じ込められます。
そこに書いてある謎を解いて下さい。正解すると鍵が手に入り脱出できます。
謎が解けない場合や不正解だった場合は、食虫植物に襲われます(確定事項)
何とか倒して食虫植物が持っている鍵を手に入れて下さい。
謎が解けなくてもわざと間違えてもOKです。ちょっとうねうね襲われるだけです!
●第三章
ボス戦『建築家・スバル』リダン・ムグルエギ(f03694)様の宿敵
この地下迷宮を創った張本人です。
自分のところにまで辿り着いた猟兵達には、少なからず敬意を表しており友好的な態度を取っています。ですが油断は禁物です。
作品(こども)について感想を求めてきたりすることもあります。
●その他
お好きな章だけでも、通しで参加していただいても大丈夫です。
同行者様がいらっしゃる場合は【PC様のお名前(ID)】か【団体名】をプレイング冒頭に入れて頂けますと、迷子防止になりますのでご利用下さい。
第1章 冒険
『双六大迷宮』
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POW : 罠を気にせず出たとこ勝負!
SPD : 出来るだけ止まらずに一気に駆け抜ける!
WIZ : 安全地帯を見極めて罠を回避!
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナーシャ・シャワーズ
ほーお、ゲームと来たか。
これでも宇宙海賊、魔法の類はともかく暗号や罠を突破するのはお手の物ってね。
それじゃあダイスの導くままに、といこうか。運は良い方なんだ。
さてはて、どんな謎が待っているのか。
ところで私の船、スラッグ号のデータベースには古今東西あらゆる知識が詰め込まれていてね。
猟兵稼業に合わせていろいろアップデートしてるんだ。
いやあ、だからどうっていう話じゃあないが、これぐらいの謎で私を止められると思ってもらっちゃあ困るな。
とはいえハプニングなしというのも面白くはない。
飛び交う矢を潜り抜け、大穴を飛び越え、大岩よりも早く駆け抜ける。
せっかくのおもてなしだ。それくらい楽しんでやらなくちゃあね。
赤嶺・ふたば
さてと、明らかにワナとわかるものは避けて通って箱とか何か入っていそうなのがあれば調べてみようかな。金目の物とかあるかもしれないし。
・・・なぜに迷宮にクーラーボックスあるんだ、とりあえず調べてみようかな。・・・おお、料理が結構入っているな、お腹空いていたし食べていくか、それにしても妙にきのこを使った料理が多いような・・・。まぁいいか。
あれ?なんか身体が変だな・・・まさかキノコの毒にあたった!?って身体ががキノコに変わっている!マズイな・・・一応身体を跳ねて移動することができるみたいだからこのまま移動するしかないな・・・
(アドリブ、絡みOKです)
●宇宙海賊と傭兵魔術師
「ほーお、まるでゲームのような迷宮じゃあないかい」
ぐるりと鉱石でできた遺跡を見渡すのは、白金から翡翠の色鮮やかなグラデーションの髪を揺らし、愛用のパイレーツコートに身を包むナーシャ・シャワーズ(復活の宇宙海賊【スペースパイレーツ】・f00252)だった。
心を燃え滾らせてくれるような冒険、浪漫をこよなく愛し、己が思うままに意気揚々とこの迷宮へと足を運んでいた。ナーシャは未知を切り拓くこの感覚が嫌いではない。むしろ、これからどんな謎が自分の前に立ちはだかるのか、少しわくわくしていた。
その経験こそがナーシャの血肉となると知っているからだ。
「うぅ……敵はいなさそうだけど、油断はできないな」
対して、FCS機能を搭載し鳩羽色に藍を染めた魔女帽子に、緑青色の長髪の小柄な少女、赤嶺・ふたば(銃と魔法が好きな傭兵魔術師・f15765)は、不安げな面持ちだ。
元が男性とは思えない上に幼い容姿をしているが、ナーシャよりも年を重ねている立派な成人女性である。そして見た目にそぐわず傭兵魔術師の肩書を持ち、驚くべき魔力なども有している。が、傍から見ればただのか弱い美少女だ。
「大丈夫かい、ふたば?まぁ、私はこれでも宇宙海賊を名乗っているからね。暗号や罠を突破するのはお手の物さ。運も良い方なんだ」
「そうなのか……?自分もワナとわかるものは避けて通りたいと思っていたから助かるな」
「いざとなれば、私の船もあるからね。使わないに越したことはないが」
「ありがとう、ナーシャさん。頼りにしてる」
ナーシャのような頼もしい猟兵と一緒にこの遺跡迷宮を攻略できそうな現状に、ふたばの表情も和らぐ。
「それじゃあ、私から賽を振らせてもらおうか」
タイミングよく上空から降ってきたサイコロを軽やかにキャッチし、ナーシャはそのサイコロを転がして賽の目を出した。
すると自分達の意志に反して、出した目の場所まで勝手に体が移動したではないか。
ナーシャは面白そうに感嘆の息を洩らして、止まったマスを見る。
そのマスはどうやら当たりマスのようだった。
「ほらね。やっぱりツいてるよ」
「すごいな、ナーシャさん。いきなり引き当てるなんて……!」
得意げに笑み浮かべるナーシャへ、目を輝かせてふたばは賞賛の眼差しを送る。
二人が止まったマスには水色の箱が置いてあった。念のため、その箱に恐る恐るナーシャが手を触れてみるも、特に異変はなく何かが飛び出す気配もない。
「実は当たりじゃなくてダミーという可能性もあり得るから、慎重に調べてみようか」
ナーシャ達は顔を見合わせて頷いた後、ゆっくりと箱を開けていく。
中を覗いてみると、そこには茸をふんだんに使った料理が並べられていた。
今まで箱によって封じられていた茸料理の良い匂いが二人の鼻腔をくすぐり、迷宮内に立ち込める。
「「……」」
思わず無言になるナーシャとふたば。
「これには驚いた。なぜ、こんなところにキノコ料理が?」
「さぁ……でもちょうどお腹空いてたんだよな。食べていっていいかな?」
「なんだって!?」
「だって、おいしそうじゃない?」
「そうかもしれないが……なかなかチャレンジャーだね、ふたば。……どうしても食べるというのなら、私には止められないがね」
見た目や香りは普通でもこの迷宮の中にあった料理だ。明らかに怪しい。
ナーシャの中の第六感は食すのは危険だと警鐘を鳴らしていたが、ふたばは迷宮内の料理に対する好奇心、そして空腹には勝てなかった。
茸料理を一口、また一口とその場で食べ始める。
黙ってその様子を観察するナーシャ。
このシーンだけ切り取って見てしまうと迷宮の中だと忘れてしまいそうになるが、忘れないで欲しい。ここは罠や謎が蔓延る地下迷宮エマノアの内部だ。
「待たせたかな。じゃあ次に進もうか」
「……本当に、何でもないかい?体に異変とか」
「大丈夫だと思う。味もおいしかったし」
満足するまで食事を堪能したふたばを訝しげに見遣るナーシャだったが、何事もなかった顔でふたばは話を続ける。
「ならいいんだよ。私の杞憂だったかね。じゃあ今度はふたばが賽を振っておくれよ」
「そうさせてもらおうかな。えいっ!」
ナーシャに促されるままにふたばはサイコロを振る。と、同時にドクリ、と体に違和感を覚えた。
「あれ……マズイな、なんだか身体が」
「ふたば……!やっぱりちゃんと止めるべきだったよ……!」
次のマスに着くと同時にふたばの体は可愛らしい茸の姿に変わっていた。頭にちょこんと乗っかったままの魔女帽子もキュートさを醸し出している。ふたばキノコは喋ることは可能だが、行動にかなりの制限がついている。
ナーシャは眉間に手を当て数分前の自分の行動を悔やむも、なってしまったものは仕方ない。実際に後悔する時間は与えられなかった。
止まったマスは罠が仕掛けられていた場所であり、標的の二人の元へ容赦なく矢が飛び交う。
「わわわっ……!」
「くっ!」
混乱気味にぴょんぴょん跳びはねているふたばキノコを、ちょいっと失礼するよ、とお米様抱っこでひょいっと抱えるナーシャ。
「来い、スラッグ号!この矢を全て蹴散らして、その力を見せつけてやりな!」
ナーシャの号令とともに、召喚された宇宙船に備わっていた大砲で的確に矢を撃ち落とす。あっという間の出来事で一瞬にして矢は地に堕ちた。
すぐさま間髪入れずに、ナーシャは片手でサイコロを振る。
だが、そこで待ち受けていたものも罠。大きな穴が二人を阻む。
「……ふ、これぐらいで私を止められると思ってもらっちゃあ困るな」
「ナーシャさん……?」
「冒険にハプニングはつきものさ」
余裕たれ。冷静であれ。
この程度、ナーシャの前では障害にもならない。宇宙海賊の名は伊達ではない。
「さぁ、最後まで駆け抜けるよ!振り落とされないようにしっかり掴まって……おっと、キノコだから無理だったか」
「足引っ張ってごめんな……」
「なぁに、これも一興。スリルがあって楽しいじゃあないか!」
気のせいか萎んでいるように見えるふたばキノコであったが、どこ吹く風といった様子でナーシャは笑みを携えて飄々と穴を飛び越える。
宇宙海賊は、止まらない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
因みにこの茸の効能はこの迷宮内でのみ持続するものだった。
ナーシャとふたばが無事に遺跡迷宮を出た瞬間、ふたばの体は元の少女の姿へと戻っていた。
五百雀・斗真
マリアさんの話だと、遺跡はすごろくのような所で
サイコロも振るらしいけれど…だ、大丈夫かな…
僕、そんなに運がいい方じゃないと思うし
どんなマスに止まるだろう…心配だな…
い、いやいや。ここで迷ってても前に進めないよね
覚悟を決めてサイコロを振ろう
せーの、えいやっと(コロコロ
>暗号
ヒントがあればそれを見ながら必死に考える
ヒントがなければ、アナグラム、縦読み等をやってみる
>大岩
全速力で駆けていく
どうしても間に合わなかったら
【憩いの森】で緑豊かな森に避難し回避できないか試す
>罠
UDCの大田さんの触手で盾受けやなぎ払いで対処
落とし穴も、落ちる瞬間に何かにしがみついたり
触手でどこかを掴んで落ちないようにしたい
◎
レイ・キャスケット
創った相手が災魔じゃなきゃ学生にもお勧めする楽しくてちょっとスパイシーな体験型アトラクションなんだろうけどね
結果的に殺しに来てるような罠は頂けないねぇ
魔法攻撃や物理系の罠は高速詠唱見てからカウンター属性攻撃余裕ですの精神
状態異常系のトラップは、物理魔法では防げないようなものは≪付与の羽衣≫で異常耐性を付与して乗り切ろうかな
さて、肝心の謎解きは閃き力がモノを言いそうだね?
知らないと絶対答えられない知識系よりこっちの方が得意なボクは頭柔らかくして答えるよ
当たりのマスで出た箱の中身は…10面ダイスが二つ?と色んなボードゲームのセット…
いやぁ、とことん遊戯が好きみたいだね?この先に待ってる災魔は
●スプレーアーティストと魔法剣士の卵
(マリアさんの話だと、この迷宮はすごろくのような所らしいけど……それに実際サイコロも振るみたいだし。だ、大丈夫かな……)
乳白色の鉱石の床を踏み鳴らす靴音が迷宮内へ響くが、すぐに音は止む。正確にはこれ以上、進むことは叶わなかったのだ。
サイコロを振らなければ先に進めないことを身をもって体験し、少し体が強張る。
憂虞に揺れ動く蝋色の瞳の持ち主、五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)は、サイコロを振るのを躊躇して未だ動けずにいた。
そんな斗真の肩を叩く一人の少女が現れる。
斗真が振り向くとそこにいたのは、人懐っこい笑みを浮かべた深緋色の瞳の少女、レイ・キャスケット(一家に一台便利なレイちゃん・f09183)だ。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、お兄さん」
「ええと、君は……」
「あっごめんね!ボクはレイ。よかったら一緒にこのすごろく迷宮のクリアを目指さない?」
「それは僕の方こそお願いしたいな。僕は五百雀・斗真、よろしくね。好きに呼んでくれると嬉しいよ」
レイの申し出を快く承諾する斗真。そして斗真の苗字を聞いて、レイは少し目を丸くする。
「いおじゃく?へぇ、珍しい苗字だねぇ。初めて聞いたかも!」
「よく言われるよ。分かり難い苗字でよく間違われるんだけど……」
斗真は頬をぽりぽり掻きながら、眉根を下げて微笑む。
「じゃあボクは間違えないようにするね、五百雀さん。じゃあそろそろ行こっか!ボクからダイス振ってもいいかな?」
レイは降ってきたサイコロを掴み、斗真へ尋ねる。もちろん、と斗真からの返事をもらったところで、レイはころころとサイコロを転がした。
賽の目にならって自分の意志とは関係なく体が動き出し、レイはちょっとしたアトラクション感覚で楽しんでいた。
しかしそれも束の間の出来事。止まったマスには罠が待ち構えていた。
二人が止まった瞬間、暴雨のように毒針が一斉に降り注ぐ。
反射的に主である斗真を護ろうと斗真の服から何かが這い出る前に動いたのはレイだった。
脚に装着したホルダーから愛用のブランクソードを取り出し、呪文を素早く唱える。
「『集めて集めてその身に纏え』…――魔風の精よ、蒐めた力を我が身に宿せ!」
発動した『付与の羽衣』によりレイの体は強化される。その状態で魔剣の刃を指でなぞり、一気に風圧で毒針を吹き飛ばす。続けて極め抜かれた剣術で一刀両断にしていく。
「加勢するよ!……大田さん!」
斗真の声に応え、薄墨色の触手が蠢く。飛んでくる毒針を容赦なく薙ぎ払い、地面へと叩きつける。
全ての毒針が無効化できた。そう思った時だった。
鉱石の床に大きな穴が生まれ、二人は浮遊感と同時に底が見えない暗闇へと落下していく。
そのマスは二重に罠が施されている場所だった。
「わぁっ……!」
「っ……!」
咄嗟に大田さんの触手が穴の縁まで伸び、一命を取り留める。
穴の底へ落ちそうになったレイと斗真を、別の触手でしゅるんと巻き取りながら地上へと引き戻していく。
「ありがとう、五百雀さん……助かっちゃった。その触手、すごいねぇ?」
ブランクソードをホルダーに仕舞いながら、レイはまじまじと大田さんを凝視する。
その視線に耐えかねたのか、気恥ずかしそうに斗真の背後へと小さく隠れる大田さん。
「ううん。僕の方こそ。僕がそんなに運がいい方じゃないから、レイさんにまで迷惑をかけてしまったようで……」
「そんなことないよ!きっとその分、次はいいことあると思うし。今度は五百雀さんがダイスを振ってみて?」
言われるがままに斗真がサイコロを振ってみると、どうやら当たりマスのようだった。
そのマスには古びた木箱が置いてあった。
「わぁ、何のアイテム入ってるんだろ?」
「開けてからのお楽しみだね」
ゆっくりと箱を開けてみると、そこに入っていたのは10面ダイスが二つ。そしてさまざまな種類のボードゲームのセットが詰め込まれている。
「ここの災魔はとことん遊戯が好きみたいだねぇ」
「そうだね。でも面白そうだな、このゲーム……」
レイは肩を竦めて小さく溜息をつき、斗真はパッケージを見て気になるボードゲームに手を伸ばす。
「これ持って帰りたいけど、まだ当分はここから出られないよね。どうしよう……」
「あ、それなら」
と、斗真のユーベルコード『憩いの森』で青灰色の輝石の指輪をダイスやボードゲームへ当てていくと、今まで目の前にあったアイテムが忽然と姿を消した。正確には森へ一旦預けた形になる。
「収納できちゃうんだ!」
「こういう使い方はしたことなかったけど、上手くいってよかった。ここから出れたらレイさんに渡すね」
「ありがと!五百雀さんとあとで山分けしよっか。そしたらまたボクがダイス振るね」
レイがサイコロを転がすと、そのマスには暗号が書かれていた。
「さて、ついに暗号マスにやってきたわけだねぇ。なになに、『この鳥の正体は何か? 8.9999999999』だって。ふむ……」
「9が10個並んでいるね……その前に8が一つ」
斗真が口に出して情報を整理して答えを導き出そうとする中、あっ!と手を叩きレイが大きな声を上げる。
「ん?もしかしてレイさん、もう答えがわかっちゃったとか?」
「うん、閃いちゃったかも!この『8.9999999999』の9の数は大して問題じゃなくて、限りなく9に近い、と考えるといいんだと思う」
「あぁ……8.9……うーん、きゅう、ちか、きゅう……く……?」
首を捻りながら考える斗真。
「最初は九官鳥かなって思ったんだけど、ピンと来なくて。約9、9弱……と連想させたら分かっちゃった。きっと答えは『くじゃく』だよ!」
「あっなるほど……!」
レイが答えを言った瞬間、正解の鐘が鳴り響き、前方にあった鉱石の扉がゴゴゴと重い音を立てて開かれた。
「やった、一つ目の迷宮クリアだね!」
「ありがとう、レイさん。おかげで助かった」
「ボクも落とし穴の時に助けてもらったから、おあいこだよ?」
両手を後ろに回し、へらっと笑うレイにつられて斗真も笑みを返す。
まだ気は抜けない。完全に迷宮は攻略できていないのだから。
けれど、少しの間だけ喜びの余韻に浸る二人であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルネ・プロスト
◎
攻略させるための迷宮
……うん、面白そうだね
アイテムとかは興味ないかな
ぬいぐるみ(お友達)が増えれば、まぁ
……嬉しいけど
探索は罠を発見・回避する方針で
人形たちは死霊を憑依させて基本的に自律行動させるよ
『森の友達』は迷宮の仕掛けについて【情報収集】
『道化師団』は見つけた罠に【破壊工作】して罠を解体
『駒盤遊戯』は万一罠が発動した時に備えさておく
防げるものはルークの【盾受け】やビショップの【オーラ防御】で弾く
防げないものはナイトに【騎乗、ダッシュ、逃げ足】して安全圏まで退避
他の人形たちも忘れず連れてくよ
いらないとは思うけど
ルークには他の人を【かばう】準備もさせとく
ルークの見せ場は大切にしないと、ね
桜雨・カイ
◎
双六…主がやっているのを見た事がありますが、こんな大きなものもあるんですね(あたりを見渡しながら)
サイコロの出た目…ここですね。まずは罠か暗号か…?何か物音が…。
えっ岩!?誤答どころか、まだ暗号何も答えてもないんですがっ
とにかく逃げるしかなさそうです!
逃げ切れそうになければ【錬成カミヤドリ】で岩を破壊するしかありません
この勢いの岩を錬成体で対応出来るか分かりませんが、覚悟を決めてやるしかありません!
寸前で、止まった……?そして何かのアイテムが……。
もしかしてさっきのは当たりマスだったんですか?
あ、あの前振りが長すぎます…。
銀山・昭平
双六なんていつぶりだべな……ただこれだけ厄介なマスが並んでるところを見ると、なかなかゴールにたどり着くのは難しそうだべ
◆行動
できるだけ早めに抜けちまうのが良さそうだが、焦ったら負けだと思うべな。というわけで【銀山流即席絡繰術・弐式】でサイコロランチャーを作ってサイコロを振って振って振りまくるべ!
……さて、サイコロの結果は……うわっと!? 槍が飛んできたべ。
気を取り直して次の結果は……ぶへぇっ(大量の蝋に降られて上半身がガチガチに固められ蝋人形に)
他にも色々と厄介なトラップに塗れながらもなんとか進んでいくべな!
※共闘描写・アドリブ歓迎です!
●二人の人形遣いと絡繰りを愛する者
次にこの迷宮の門を潜ったのは、三人の猟兵と二人の猟兵が率いるさまざまな人形達だ。
「双六なんていつぶりだべな……これだけ厄介なマスが並んでるところを見ると、なかなかゴールにたどり着くのは難しそうだべ」
額に手を翳し、鉛色の丸ゴーグルからあますことなく遺跡内を注視するのは、白髪交じりの髭が特徴の中年男性のドワーフ、銀山・昭平(田舎っぺからくり親父・f01103)だ。
しかし昭平の意識は迷宮よりも、どちらかと言えばその隣にいる人形達へと注がれていた。
そこには、紅と白のコントラストが映える和服を身に纏い、狐面で顔を隠しているからくり人形と、猟犬や猿からチェスの駒を彷彿とさせる人形一団がずらりと大集合していた。
「このわんころはカラクリとはちぃっと違うべな。どういう仕組みだか、おら興味あんべ」
興味津々な様子でもじゃもじゃの顎髭を触り、昭平が犬の人形をじっくり調べようと近づいて屈む。
すると、ナイトの駒がすっと犬の人形を庇うように前へ動き出したではないか。誰の合図も無く、まるで意志を持つが如く。
ナイトから感じる無言の圧力。昭平は危害を加えるつもりは毛頭なく、少し触って確かめてみたかっただけなのだが、ナイトはそう捉えなかったらしい。
「ナイト。その人は敵じゃないよ」
物悲しいオーラが昭平から滲み出ていたのだろう。それを察するように少女が声を掛ける。
少女の声が鶴の一声となり、ナイトは元の場所へと歩を下げた。
少女の名は、このナイトや犬の人形の主であり、死者の魂を器に灯し知性を有した異端のミレナリィドール、ルネ・プロスト(人形王国・f21741)である。
「いんや、おらが不用心に近づいたのが悪いべ。すまねえなあ」
「……ルネの人形たちがそんなに気になる?」
「そらそうだべ。おらは珍しい機械やカラクリが三度の飯とおんなじぐらい好きなんだべ」
即答する昭平に、ルネは嬉しそうに小さく微笑む。
「基となっているものを教えたらきっと驚くだろうね。今は秘密」
「うおぉ、そう言われるとなおさら気になるべな!気になるといやぁ、そっちのカラクリ人形にもおら興味あんべ」
目を移した先は狐面の絡繰人形。それに気付いた青年が、狐面のからくり人形を動かし、狐面の小首をかしげる所作を取る。
「おめぇのカラクリだべか?」
「ええ。このからくり人形は『私』そのものなんです」
「ほうほう。おめぇ自身っつうと……ああ!ヤドリガミのボウズだべか?」
「そのとおりです」
自分の器物であるからくり人形を操るヤドリガミの青年、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は、糸を器用に操り、こくこくと「カイ」で応える。
「それにしてもここに偶然集ったメンバーが、私と同じ人形遣いにからくりが好きな方とは。妙な奇縁を感じますね」
「ルネも思った。一緒にこの迷宮攻略……できたら、まぁ、嬉しいけど……」
「私も同じことを思ってました。こちらこそどうぞよろしくお願いしますね」
「……うん」
扱う人形の種類や成り立ちは違えど、惹かれる何かがあるのだろうか。
ルネとカイが顔を見合わせたところで、ルネは猟犬や猿の人形達へ迷宮の仕掛けについて調査してくるように命令を下す。どうやら人形達は迷宮の『駒』としては認識されていないのか、サイコロを振らなくても自由に行き来が可能であった。
その間に三人は簡単な自己紹介を済ませる。
互いの名前を知ったところで、ちょうど調査に赴いていた犬の人形達が戻ってきた。
この遺跡迷宮はやはり事前にも情報があったとおり、さまざまな罠が張り巡らされていた。罠の種類や暗号は毎回ランダムで、前の探索者と同じマスに止まっても別の罠が発動したり、当たりマスになっていたりする。
ゴールは一つ。鉱石で出来た扉まで辿り着くこと。そうすればこのすごろく迷宮は攻略完了となる。
結局のところ、サイコロを振って前へ進まなければ何も始まらないのである。
「んだべ、サイコロ振って振って振りまくるべ!」
「攻略させるための迷宮、だもんね……面白そう」
「私も主がやっているのを見た事はありますが、こんな大きなすごろくを見るのは初めてで……不謹慎かもしれませんが、少しわくわくしてます」
「……同じだね。何かあった時のために、ルークには常にルネたちの傍を離れないようにしておく」
「ありがとうございます。では行きましょう!」
カイの掛け声とともに昭平のユーベルコード『銀山流即席絡繰術・弐式』が発動。
サイコロランチャーを作り、上空から降ってきたサイコロをセットして派手に一発目をぶっ放す。
三人の体は勝手に賽の目が出たマスのところへ進む。初手からどうやら罠のマスを踏んでしまったらしい。
大量の槍の洗礼に、三人はすぐさま臨戦態勢を取る。
ルネが死霊を憑依させた人形団の一つ、ビショップが木の杖で的確に槍を叩き落としていく。
討ち漏らした槍はしっかりカイがフォロー。からくり人形を操り、回し蹴りで槍を払い除ける。
初対面とは思えない人形遣い同士の人形連携プレーを目の当たりにした昭平の心も躍る。
二人の人形遣いにより、槍の鎮静にそう時間は掛からなかった。
三人とも無傷のまま、続けて昭平のサイコロランチャーによってサイコロが放たれる。
そのマスに止まった途端、今度は白い液体が三人へと無遠慮に降り注ぐ。
ただの液体ではなかった。それは蝋。それも瞬間的に固着を開始するため、触れてしまえば最後。この迷宮を抜け出すまではそのままだ。
「ぶへぇっ!こりゃああかんべ!」
「っわ……!ルーク、ビショップ!」
待機させていたルークの盾とビショップが纏う守護のオーラで食い止めてはいるものの、蝋の量がそれを上回るほどに多い。
全て庇いきれず昭平の腕や腹部付近が蝋で固められ、蝋人形の如く白く染まってしまう。
「うぉぉ、手がいうことをきかんべ!!」
「昭平さん……!くっ、これ以上の被害はなんとしてでもっ……!」
一体のからくり人形だけでは間に合わない。ならば。
カイは『錬成カミヤドリ』で自分の分身を50体召喚し、ルネとともに滝の如き蝋の嵐を防ぐ。
しばらくして蝋の波もおさまり、一命を取り留めた三人であったが、盾となった人形達は「人形」となり、身動き一つ取れない状態である。
「ルーク……ビショップ……」
「何とか事を終えましたが、昭平さんの体が……」
「だいじょぶだぁ。これぐれえ屁でもないべさ。それより……誰かこのサイコロランチャーで次のサイコロを打ってくれると助かるべ!」
意気消沈してしまった人形遣い達に向かって、ニカっと太陽のような笑みを浮かべる昭平。
昭平にとって何より怖いものは動けなくなることではない。空腹の恐怖に比べたら、この程度の障害は障害の内に入らないのだ。
「そう、ですね……ここで立ち止まっていても仕方ありません。ここから抜けることができれば、昭平さんの体やルネさんの人形もきっと元に戻るでしょうから」
「……うん、カイの言うとおりだね」
「では……私がランチャーをお借りしますね」
と、カイがサイコロランチャーでサイコロを宙へ向かって放つ。
次のマスにやって来ると、何も起こらない。
「おや?何も起きませんね」
「どうしたんだろ、故障かな」
空白の時間が生まれ、立ち往生している三人に、突如、地響きが迷宮内に広がる。
音がした方へ視線を向ければ、どこからともなく現れた石象の軍団がカイ達の方へと走ってくるではないか。
象の軍団で迷宮内は揺れに揺れ、乳白色や飴色の鉱石の床にヒビが入る。
「もう!前振りが、長すぎます……!」
「どっひゃぁ!逃げろ逃げろ!」
「で、でもルーク達が……!」
「私も運べる人形達は一緒に運びます!とにかく今は逃げましょう!」
カイは自分の本体とビショップを抱え、ルネを連れて迫り来る石象から逃れる。
先の蝋で無事だったナイトがルークをひょいっと持ち上げ、昭平と同様に出口まで一気に駆け抜ける。
「はぁ、はぁ……なんとか、ついたね」
「一時はどうなることだと思ったべ」
「まだ昭平さん達の蝋は溶けてないですからね。さっさと出ましょう」
「んだんだ」
「……ありがと。助かったよ」
「いえ、私の方こそルネさんには助けてもらったので、お礼を言わせて下さいね」
「おらも一人だったら、きっと抜け出せなかったべ!がはは!」
カイと昭平が次々に礼を返す様を見て、ルネは目を丸くする。
(……なんだか、嬉しいな)
初めて出会ってまだ間もないというのに。何故か胸の奥があたたかい。
まだ、きっとまだ「ぬいぐるみ」とは言えないけれど。
いつか増えればいいな、とルネは口許に緩い笑みを浮かべた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
セリオス・アリス
【双星】
◎
まあ運はいい方だからな※良いと悪いの両極端
調子よく順調に…
おっこのマスもお宝か?
…うわっぷ!何だこの煙!
酷い目にあったな
なあアレ …!?
小さいアレスだー!?
小さくなったアレスを抱き上げて
胸?そういやなんか声も変だな
まあいいどうせこんなのただの脂肪だ
それよか小さいアレスを堪能させろ
何だ戻っちまったのか
がっかりしながらサイコロ振って
次のマスは…どれか一本飲むのか
どうせ飲むなら甘いのがいいな
一番甘い匂いのするものを
男らしく飲み干す
※薬を飲んだ人物に好意がある程いい匂いだと感じるようになる薬
んーまあ、別に異常はねえか?
どうしたアレス変な顔して
ずいずい追いかけて
周りをうろちょろ
何だよ?風邪か?
アレクシス・ミラ
【双星】
◎
双六のようでも、油断できないね
罠は盾で防ぐかかわして
暗号にも真剣に推理して進んでいこう
…おや、同じマスだね。セリオス
ここでは何がーー…っ煙!?
…収まったか…え?
な、何故、僕が子供で…セリオスが女性に!!?
っ待て、抱きつくな!君は今の状況をもっと理解してくれ!!
先程のが一時的なものでよかった…
少しぐったりしながら進むと
…?何だ…?
セリオスから甘い香りが…妙に落ち着かない…?
近寄られた瞬間、心臓が高鳴り、頬が紅潮した事にさらに混乱しそうになるのを必死に落ち着かせ
い、いや…大丈夫だ
ほら、先に進むよ
(…何故だか知らないが…今、近寄られるのは…少し、危ないな…)
(その後、鋼の精神で耐え続けた)
●青星の黒鳥と赤星の聖騎士
「何だかゲームみたいで面白そうだな。少しぐらい遊んでもバチは当たらないんじゃねえか。なぁ、アレス?」
「セリオス……普通の双六のように見えても、此処は災魔が創った迷宮の中だ。油断しては……」
「分かってるって!アレスは心配性だな」
遺跡迷宮内に艶々と潤いを孕んだ上品な笑い声が響く。
黒曜石を星夜へ融かしたような長髪に、身に纏う夜の帳の胸元には藍の鉱石が嵌め込まれ、宵藍の星が輝いている見目麗しいダンピール、セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)は、隣にいる幼馴染へと視線を向ける。
これからこの迷宮で何が起ころうとも、隣にお前がいてくれるなら怖いものはない。そう訴えている。
双つ星は、決して堕ちることはないのだと。
やれやれ、と溜息をつく。
彼の「これ」はいつものことだ。
だからこそ僕は、君がずっと「君」でいられるように――今度こそ護りたい。
太陽の象徴ともいわれるシトリンを日の光で照らしたような髪に、銀のリボンが刺繍された夜明けの星を身に纏った美青年、アレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)は、セリオスの視線に無言で応える。そこに言葉は不要だった。
「よし。ちゃっちゃと先進もうぜ!あ、サイコロどっちから振るか?」
「僕はどちらでも構わないよ」
「じゃあ、じゃんけんで決めるか」
「えっ」
「じゃーんけーん、ぽい!」
じゃんけん?とアレクシスは提案したセリオスを見るも、既に掛け声が始まっているではないか。アレクシスは一瞬迷うも、チョキを出す。
それに対し、セリオスはグーを出していた。途端、満面の笑みを浮かべるセリオス。
「アレスはじゃんけん弱いなー!俺の勝ちだから俺からな!」
「……はいはい。ならセリオス、頼むよ」
(君こそ、譲らない時はグーを出す癖に)
最初からあってなかったような提案だとアレクシスは気付いていたが、何も言わずセリオスへサイコロを渡す。
勢いよくセリオスがサイコロを放り投げる。
出た賽の目まで勝手に体が移動し、そのマスに止まった瞬間、もくもくと白い煙が立ち込め二人を覆い隠す。
「うわっぷ!何だこの煙!?アレス、無事か!?」
「僕なら此処に居る。セリオスこそ平気かい……?」
「ああ。大丈夫だ」
煙はすぐに収まり、二人の姿が徐々に薄ぼんやりと見えてくる。
「酷い目にあったな。アレ……アレス!?」
「え……セリオス、君なのかい?」
完全に煙が消え、セリオスが煙をぱっぱと追い払い、再び対面すると、驚くことに二人の姿は変貌していた。
「小さいアレスだー!!」
「な、何故、セリオスが女性に……待ってくれ。僕は子供になっているだって!?」
「ん?女?そういや、なんか声も変だな」
アレクシスは中身はそのままで外見だけが少年、セリオスも中身は同様で外見だけが麗人になっていた。服は何故かその体にフィットしたものになっている。ご都合主義万歳。
因みにセリオスの服は胸元が開いていて、素足が見える黒のフリルミニスカートだ。元が美人なこともあり、女性になったことで一層、色香が漂っている風に見える。下着は想像にお任せします。
一方、アレクシスはミニベストに短パン、これは絶対に外せないであろうガーターソックスをはいており、美少年にさらに拍車をかけている。
互いに自分自身の体を触って確かめ、異変に気付く。
小さくなってしまったアレクシス少年は、天井が迷宮へ入った時よりも遠く感じる。
ミス・セリオスはあーあー、と喉に触れながら発声してみると、普段よりもソプラノに近い声色になっており、本来ならある筈のない胸がある。掌から少し零れるぐらいのふくよかな胸。ジャストサイズ!美乳おいしいです。
「まあいいや。どうせこんなの、ただの脂肪だ」
「良くない!それに今の僕の身長だとスカートの中……目のやり場に些か問題が……」
「まあいいじゃねえか。それよか小さいアレスを堪能させろ!」
「っ待て、抱きつくな!君は今の状況をもっと理解してくれ!!」
アレクシスの制止も聞かず、ミス・セリオスはアレクシス少年を抱き上げて、思うがままにぎゅーっと抱き締める。
頬にミス・セリオスの胸が思いっきり当たっており、このままではいろいろとマズいとアレクシス少年はじたばたもがく。
ニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべて、次は何してやろうかな、とふと思いついた悪巧みを決行しようとしたところで、先程と同じ煙が二人を包み込む。
「またこの煙か!」
どうやらこのマスはシークレットだったようだ。数分程度しか効果が適用されないらしい。
元に戻ってしまい心底残念がるセリオスと、ほっと胸を撫で下ろすも少しぐったり気味のアレクシス。
気を取り直し、今度はアレクシスがサイコロを振り、賽の目に従って移動すると、そこには赤、青、白、黒の液体が入ったフラスコのようなグラスが四本並んでいた。
『どれか一つを選んで飲め』
一言そう書かれた紙を見たセリオスは、グラスに近寄り、目で吟味する。
「決めた!これにする」
「……セリオスが飲むのかい?」
「まあ大丈夫だって。あ、もし俺に何かあったらその時はアレス、頼んだ」
「またそうやって君は……はぁ。引く気は、ないんだね」
セリオスは笑みを携えたまま、黙ってアレスを見つめた後、ぐっと男らしく赤の液体を飲み干した。
先程のような姿が変わるといった異常は見当たらない。はずなのだが。
(この甘い香り……セリオスから?妙に落ち着かない。何故……)
拍子抜けとばかりに肩を竦めるセリオスがアレクシスの方へ視線をやると、そこからまたふわっと良い香りが舞い込んでくる。
「どうしたアレス?変な顔して」
「……っ!!」
アレクシスの様子がおかしいと気付いたのか、上目遣いで顔を覗き込む。
セリオスに近寄られた瞬間、跳ねる心臓。高鳴る鼓動。アレクシスの頬が熱を帯びていくのが分かる。
顔を背けながら、思わずセリオスを押し退けてしまう。
「い、いや……大丈夫だ。ほら、先へ進もう。セリオス、振ってくれ」
(今、近寄られるのは……きっと宜しくない。危うく……危うく?僕は一体何を……)
頭の中がごちゃごちゃだ。それを洩らすまいと必死に我が身に言い聞かせ、セリオスへサイコロを渡す。
そんなアレクシスを見て腑に落ちない様子のセリオスだったが、言われるがままにサイコロを振る。
その後、罠に遭遇することもあったが、順調に進んでいき、出口へと向かう。
もしも、強靭な鋼の精神で抑えることができなければ――。
どくん、どくん。未だ、止まない心臓の音。
どうか彼に届かないように、とアレクシスは心の中で祈った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『何々しないと脱出できない部屋』
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POW : 謎なんか知るか、扉を破壊して脱出だ
SPD : 無理難題にも抜け道があるってものですよ
WIZ : 無理難題など私の頭脳にかかれば無問題
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
すごろくのような遺跡迷宮を進んだ先に猟兵達を待ち構えていたのは、鬱蒼と生い茂るジャングルに囲まれた遺跡だった。
各自、その遺跡へ足を踏み入れた途端、入ってきた鉱石の扉は消滅し、猟兵達はやむなく退路を断たれる。
すると、どこからともなく陽気な男性の声が遺跡内に響き渡った。
「やぁ、ようこそ!勇敢なる探索者諸君。待っていたよ。次なる迷宮はそこに書いてある謎を華麗に解いて、見事脱出を果たしてほしい」
声の主は本当に来訪者を歓迎している口ぶりで告げる。
そして男が「そこ」と指し示した場所には、木の看板が立て掛けられ、魔法の羽ペンが置いてある。
その隣には形容するならば、食虫植物だろうか。だが、特に猟兵達に危害を加える様子もなく、ただ静かに佇んでいるだけだ。一つ、気になる点を挙げるとするならば、顔がある。にっこりと可愛らしいデフォルメ笑顔を浮かべているではないか。逆に怖い。
猟兵達がその看板前まで近寄ってみると、何やら数字が書かれているのが見えた。
1/3 3/3 4/3 5/3=TREE
3/8 1/8 5/8=□□□
□□□に入る文字を答えよ
どうやら「□□□」に書かれた答えを導き出さなければならないらしい。
「なぁに、至極簡単さ。正しい答えを書けば『鍵』が手に入る。その鍵を手に入れた瞬間、扉が君達の目の前に現れるからね。でももし、不正解だったり、時間内に答えが分からなかったら……」
男は不意に言葉を区切る。代わりに今まで大人しく猟兵達を見ていた食虫植物の顔が変貌し、触腕に近い蔓を伸ばす。
「この子達の餌食になるから注意したまえ。けれど吾輩は鬼ではない。倒せば鍵は手に入れられることにしよう。答えを書けるのは一度きりだがね!」
男はさも愉し気に、くつくつと笑って口にする。
「君達に会えるのを心待ちにしているよ」
※プレイング受付は9/12(木)8時31分~9/15(日)8時半までで一旦区切ります。
もし成功人数まで達していなかった場合は、延長します。
執筆は13日(金)から開始予定です。
※大変申し訳ございません。
プレイング受付期間ですが、構成の関係上、14日(土)いっぱいで一度、区切る方向に変更いたします。
お手数おかけしますが、もしお目にとまりましたら宜しくお願いいたします。
五百雀・斗真
レイさんのおかげで最初の難関は突破できたけれど
…つ、次も暗号を解かないといけないのか
どうしよう、暗号ってすごく苦手なんだよね
この数字は何だろう?
分数…じゃない気がするな
計算をする感じでもないし
TREEという言葉にするにはどう解くんだろう
うーん…何となく数字の英単語が絡んでるんじゃ…と
そこまでが分かったけれどわかんなくなってきた
このままだと時間切れになりそうだね
悔しいけれど、UDCの大田さんと戦う準備をしよう
蔓が絡んでくるのは厄介だな
大田さんの触手でなぎ払ったり、盾受けで防いで貰って
僕も【グラフィティスプラッシュ】で頑張ろう
暗号を考える人も解ける人もすごいな…
僕もすんなり解けるようになりたいよ
◎
桜雨・カイ
会えるのを心待ちにしているのに、どうして植物をけしかけてくるのか謎ですが、頑張って解いてみましょう…えっとこれがTでこれがRで…あれ?同じEなのに数字が違う?
……わかりません(しょぼん)
どなたかの力を借りないと難しいようです。
他の人が解くか一緒に突破するか協力して、ここを突破しましょう。
【錬成カミヤドリ】発動。錬成体で触手を攻撃します。
(他の人も含めて)絡め取られそうな時は盾代わりとします。
うねうね……見なかった事にしましょう。
触手相手はキリがなさそうなので、大本(茎)の部分を狙います。数体を囮にして触手と戦ってる間に敵の懐に飛び込んで攻撃します。
ルネ・プロスト
◎
とりあえず
クイーンの炎魔法の熱で蝋塗れのルークとビショップを助けるね……
……面白い仕掛けなのは認めるけど
ルネのルークを蝋塗れにした報いは受けてもらうから
そのためにもまずは謎解き、だね
……人形たちを使った諜報は得意だけど
こういうのはいまいち……
何らかの法則性はあるはずだし、理詰めでいけないかな?
ダメだった場合
引き続き人形達は死霊憑依&自律行動
ポーン8体で牽制【援護射撃、フェイント】
ルーク2体で味方の護衛【盾受け、かばう】
ビショップ2体は雷撃魔法で攻撃【属性攻撃、マヒ攻撃】
UCは迷宮・植物に怨み持つ霊を集めて隙見て打ち込み
力業なのは不本意ではあるけど
……迷宮の主もOKて言ってるし
妥協も必要、かな
●Case1:嵐の前の静けさ
無事に第一の迷宮を突破し、しばらくレイと第二の迷宮前で休んでいた五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)が、意を決して次の迷宮へと足を踏み入れれば、背後の鉱石の扉は跡形も無く姿を消す。
(前回はレイさんのおかげで最初の難関は突破できたけれど…つ、次も暗号を解かないといけないのか)
暗号はどちらかといえば不得意分野である斗真の表情は暗い。
しかし、この第二の迷宮を互いにクリアして、再び最後の迷宮で落ち合おう。暗号解読が苦手ゆえにこれ以上レイの足を引っ張りたくない、その一心でこの迷宮では別々に行こうと告げていた斗真は、弱気になる心を無理矢理押し込めて気持ちを駆り立てる。
(預かってるボードゲームを渡す約束をレイさんとしたから)
必ずここから脱出する。
改めて決意を固くした斗真は、ジャングルに囲まれた遺跡内にある看板前へと歩を進めていった。
時は少し数分前に遡る。
「ママの魔法で溶かしたから……これで、もう大丈夫」
「ルネさんのルークとビショップが無事で何よりです」
すごろく迷宮を出てから、ルネ・プロスト(人形王国・f21741)は迷宮内へと連れ込んでいた人形一団の一体、女帝を司るクイーンの力を使い、ルークとビショップの蝋を溶かしていた。
ルーク達を傷つけることなく、陽だまりのような優しい炎の魔法に包まれて、蝋はゆっくりと溶けていき、完全に動けるようになっていた。
膝をつきながらクイーンへ礼を述べるように首を垂れるルークとビショップに、クイーンはルーク達の肩に手を置き、ただ穏やかに彼らを見つめている。それは己の身に代えても、主を守護する行動を褒め讃えているように見えた。
そんなルネの人形達の様子を見て、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)はふっと表情を緩める。
それに対し、ルネの表情には静かな怒りが含まれていた。
「……面白い仕掛けなのは認めるけど、ルネの大事なルークたちを蝋塗れにした報いは……絶対に受けてもらう」
「ええ、そうですね。この迷宮を創った災魔を倒すために、私もここへ来ましたから。会えるのを心待ちにしているのに、植物をけしかけてくるのかはさておき……」
「自分が創った迷宮で遊んでもらうのが本当に好き、なのかも。その度合いは行き過ぎてるけど」
「確かに。私達は試されているのかもしれませんね。では……お灸をすえるためにも、次の迷宮を確実に抜けましょう」
「うん。行こうか」
この二人も暗号を解くのは苦手な部類。ルネ、カイ、昭平の三人の中ならば、昭平が一番閃き力が高そうではあり、また協力して進むのでも良かったのだが、ここは敢えて別の道を往く。
二人の人形遣いならば、きっと謎が解けなくても対処できるであろう。そして再び出会った暁には共に戦おうと、三人は拳を軽く当てる。二人の力を信じた昭平に見送られ、ルネとカイが先行して次の遺跡へ潜る。
「おや?あなたは……」
「あ、俺達のあとにすごろく迷宮を抜けた人達だね」
生い茂る草木を掻き分ける音がした方へ斗真が視線を向けると、そこにはルネとカイの姿が見える。
「……君、一人?」
首を傾げるルネに、バツが悪そうな顔で斗真は答える。
「ああ……実は僕、暗号ってすごく苦手で……さっきまで一緒にいた人にこれ以上迷惑かけたくないから、今回は一人で挑もうと入ったんだ」
「そうだったんですか。生憎、私も暗号は得意ではないので、あまりお役に立てなさそうなのが申し訳ないのですが……」
「ルネも人形たちを使った諜報は得意だけど、こういうのはいまいち……」
「謎は解けなくてもあそこにいる食虫植物を倒せば鍵は手に入るらしいし、楽観視しているわけじゃないけど何とかなると、思うんだ」
斗真が指差した先には看板横に沈黙を貫いたまま、不気味に微笑む食虫植物が見える。鍵の所在は不明だが、きっとどこかに隠し持っているのだろう。
「正直に言うと、一人だと心細かったのは否めないから……君達がいるなら大分、心強いよ」
元より、一人で挑むつもりだった斗真からすれば、ルネやカイの存在はとても大きい。斗真の言葉を受け、カイも俄然気合いが入る。
「そう言ってもらえると助かります。何かあった時は、私も力になれると思うので」
「こちらこそありがとう。そしたら、まずは謎解きを頑張ってみよう」
ルネ達が看板前へとやってきて、書かれている謎に目を向ける。
「この数字は何だろう?分数……じゃない気がするな。計算をする感じでもないし」
最初の文章を指で辿りながら、斗真を必死に頭をフル回転して真剣に謎解きに取り組む。
「えっと。1/3がTで、こっちがRで……あれ?同じEなのに数字が違うのは何故でしょう……」
「4/3も5/3も両方E……どういう法則なんだろう」
カイやルネも首を捻りながら、謎と睨めっこしている。
「TREEという言葉にするにはどう解けば……うーん、何となく数字の英単語が絡んでる気がするけど、わかんなくなってきた」
「私もさっぱりです。ヒントが欲しいところですが……ないんですよね」
「答えは一度きりしか書けない。そう言ってた。……ルネもお手上げ」
「とりあえず、直感で埋めるだけ埋めてもいいかな?」
「うん。力業になっちゃうのは不本意ではあるけど……妥協も必要、かな」
斗真の提案にカイとルネは頷く。そして何が起こってもいいように、臨戦態勢を取っておく。
斗真も大田さんへ呼び掛けていつでも戦えるように態勢を整える。
突然、斗真の背後から現れた大田さんを見て驚き、わ!と小さく声を上げる二人に対し、大田さんは驚かせてしまってごめんなさいとばかりにひょこひょこ触手を上下に動かす。その仕草が妙に可愛らしく、緊迫した空気が少し弛んだ気がした。
「気を取り直して、えっと……安直だけど、二番目の迷宮だから『TWO』で」
斗真が魔法の羽ペンで四角に入る部分にアルファベットを綴ると、これまで微動だにしなかった食虫植物がのっそりと這いつくばり、答えを覗きに来ているではないか。
ピンと辺りの空気が張り詰める。
食虫植物は答えを見た後、顔の部分だけをくるりと半回転させ、三人へデフォルメ笑顔を向ける。刹那、極悪な顔へと変貌し、凶暴で悪逆な性質が全面に表れた。
当然、答えは不正解。三人もその顛末は読んでいる。
食虫植物が今まで三人へ見せていた姿は仮の姿。顔があったところから切れ目が入り、植物の表皮が四方に枝分かれしたと思えば、開かれた部分から何体もの食虫植物がぼこんぼこん、と生々しく産まれ出て一気に三人へと襲い掛かった。
見かけによらず俊敏な蔓の動きに、まずルネのポーン8体が動く。死霊を憑依したルネの人形達は、手に持った銃剣を操りフェイントも交えながら、食虫植物へ牽制攻撃を仕掛ける。
ポーンの牽制に怯むかと思いきや、より一層激しく、激しく、蔓が絡みつく。蔓は切られても別の茎から蔓を伸ばして、一番小柄なルネへと触腕をうねらせる。ルークが咄嗟に主を護衛しようと前へ出るも、別の食虫植物が二体のルークを蔓で拘束しルネから引き剥がす。
「ルーク……!」
蔓がルネの手首に巻きつこうとするのがわかり、反射的にルネの体が強張る。あと数センチ。新緑色の触手が少女へと狙いを定めて距離を縮めたとき、薄墨色の触手がそれを阻止する。大田さんだ。蔓を締め付けながら引き千切り、地面へと薙ぎ払う。
「大丈夫?」
「ルネなら平気。ありがとう……」
斗真はルネの元へと駆け寄って声を掛ける。ルネは気遣いに感謝しつつ、再び食虫植物へ向き直る。
別の食虫植物達は、カイが錬成したからくり人形達が押しとどめている。食虫植物の数はさほど多くはない。だが、蔓の再生スピードが異常に速いのだ。
「くっ、キリが、ないですね……!
盾となっている大量のカイのからくり人形達の服の中に侵攻していき体をまさぐる様は、人形とはいえなかなか卑猥な光景に見えなくもなかったが、蔓の猛攻撃を鈍らせたのはビショップの雷撃魔法だ。カイの人形を避けて、的確に雷を落とす。その影響で触腕が麻痺したように一部動かなくなる。
「助かりました、ルネさん……!」
「まだ、全部片付いてないから」
敵の勢いは衰えず、半数は健在だ。
「これは、回復される前に一気に畳み掛ける方が良さそうだね」
「……うん。ルネもやるよ」
斗真とルネが顔を見合わせて、こくりと頷く。
「――残らず、塗り潰せ」
「全部全部、ルネに委ねて。君たちの未練、ルネが晴らしてあげるから」
斗真の色鮮やかなピンクと黄が混じった塗料の飛沫が飛び散り、蔓が苦しそうに萎れていく。続けざま、ルネが放った怨念が封じられた煉炎が一斉に食虫植物へ降りかかる。
焔に焼かれた部分を蔓で掻き毟りもがく食虫植物を横目に、カイは一目散に一体の食虫植物へ駆ける。最初に看板の横にいた食虫植物だ。
他の食虫植物の影に上手く身を隠しているのを、カイは見逃してはいなかった。
「そろそろ鍵を渡してもらいます……!」
「カイ」を糸で操作し、開いた切口から大本の茎の部分まで一気に抉る取るように貫いた。
カイの攻撃により完全に動かなくなった食虫植物達を見て、三人はほっと胸を撫で下ろす。
「ふぅ……なんとか、なった」
「うねうねしてて気持ち悪かったけど、これで鍵は手に入りそうかな……?」
「ええ。鍵はここに」
カイが最初の食虫植物を仕留めた時に、鍵を見つけてその手に掴んでいたのだ。
すると、今までなかった扉が三人の目の前に現れ、ゆっくりと開かれる。
「ようやく、ここの迷宮を創った本人へ会えますね」
「そうだね。あとは他の皆が無事に攻略できるのを祈ろう」
三人は互いの健闘を称えながら、扉を潜っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杜鬼・カイト
◎
面白そうな迷宮だなって思ってきてみたけど、「謎を解け」?
……えー、面倒だな
そこにいるうねうね倒せば、それでいいんでしょ?
でも体力は温存しておきたい気もするし…
仕方ない。謎とやらを解こうか
ふむふむ
1/3=T
3/3=R
4/3=E
5/3=E
ってのは間違いないはず
同じEなのに4/3と5/3なの気になるな
む、そういえば全部分母が「3」なんだ
ってことは「3の1」「3の3」……なるほど閃いた!
3、つまり「THREE」だね
で、数字の示す文字をとると…ってわけだ
ってことは
8は「EIGHT」
3/8=G
1/8=E
5/8=T
答えは「GET」
真面目に解いてよかったのかな?
ま、いいや。早く鍵くれないと、迷宮ぶっ壊すよ?
銀山・昭平
パズルを無視して無理に押し通るのは流石に迷宮の作者に申し訳ないべな。
それに(たぶん)学はあまり無いようなおらでも解けるくらいには難しくないべ。
◆問題の答え
サムライエンパイアに住んでるおらは日常的には使わないがこの文字はUDCアースやヒーローズアース、キマイラフューチャーとかでも見かけたべな。
例題の方の分母の「3」は英語で「THREE」、分子の「1」文字目、「3」文字目、「4」文字目、「5」文字目を取れば「TREE」になるべ。
って事は「8」は英語で「EIGHT」、3文字目は「G」、1文字目は「E」、5文字目は「T」
つまり答えは『GET』だべ! ……ひっかけだったらその時はその時だべ。
レイ・キャスケット
最悪答えられなくても食人植物を倒せば通行可能と
襲ってくる前に先に畳みかければ完封できそうなんだけど、大丈夫?
あぁ、でもそういう力業も含めて『攻略』なのかもね、どっちにしろ建築家の満足に貢献と
でもせっかくだから謎は解いて先に進みたいよね
分数?の数と文字の数が一致するのを見ると一つの数に一つの文字なの間違いないね
約分…掛け算…日付…いや、キーボード配列やスマホの文字入力?
だいたい4/3と5/3が両方ともEってのがどういうことなの?
あぁ、ひょっとして、3(three)の1.3.4.5番目の文字を使ってTREE?
ということは8(eight)の3.1.5番目を使えば…… 答えは『get』!これでどうだ!
ナーシャ・シャワーズ
ほーん、なるほどね。暗号ときたか。
ふむ、どっちも数字だ。
2/3はHってところか。
さすがにこれでも宇宙海賊としてならした身だ。
この程度で引っかかってやる訳にはいかないな。
じゃ、まずはお望み通り鍵をGET、といかせてもらおうか。
しっかし、鍵を手に入れた瞬間に扉が現れるとは……
自慢の迷宮とやらを見せつけなくていいのかい?
……おや、この扉、鍵穴がないな。
この鍵の使いどころも謎ってわけかい?
ま、確かに鍵が手に入るとしか言ってなかったしね。
いいだろう、その挑戦受けてやる。
だが、多少難易度をあげたくらいで
私を楽しませられるとは思っちゃあいないだろうな?
過去の存在たるオブリビオンが私の上を行けるとは思うなよ。
●Case2:両手に花
「面白そうな迷宮だなって思ってきてみたけど……謎を解け?えー面倒だな」
次にジャングルに囲まれた遺跡に億劫そうに足を踏み入れたのは、黒のセーラー服を着こなし、菫青と赤珊瑚の瞳で辺りを見渡す一見すればただの美少女――否、正しくは少年なのだが、傍から見れば可愛らしい少女にしか見えない風貌の杜鬼・カイト(アイビーの蔦・f12063)だ。
射干玉の黒髪を指で弄りながら、口を尖らせて面白くない表情を浮かべる。
服装も相まってか、その仕草一つ取っても男性とは思えない雰囲気を纏っている。
「それに、謎を解く前にそこにいるうねうねを倒せば、鍵が手に入っちゃうんじゃない?」
髪に絡まった葉を払いながら、謎が書いてある看板前にやって来たカイトは、その横にいるデフォルメ笑顔を張り付けた食虫植物を見遣る。食虫植物はカイトを凝視するのみで、危害を加える素振りは今のところ一切ないようだ。
「もしかしたら兄さまもこの迷宮に来てるかと思ったけどいないし。兄さまと一緒だったら、謎解きしないでここでしばらく閉じ込められててもよかったんだけど」
今のカイトは年相応の快活な少年であり、特段変わったところはない。が、カイトをカイトでいさせてくれる、妹という存在でいられる「精神安定剤」に近しき人物を前にした場合は別だ。邪険に扱われようが謗られようが、彼――最愛にして盲目的なまでに心酔する兄が永遠に傍に居てくれればそんな些細なことは気にならない。
しかし今回は珍しく当てが外れたようで、小さく息をついて謎に目を落とす。
「ここで体力を使うのもなんだしね。まずは謎とやらをさくっと解いて、災魔のところに行こっかな」
そしてカイトはスカートのポケットの中から紫陽花色の金平糖が入った小瓶を取り出す。それを一口含めば、頭が冴え渡ってくるような気がしてくる。
(恭介くん、力借りるね)
すっきりと気持ちを切り替えたところで、カイトは謎へと意識を向けるのであった。
時は少し遡る。
カイトと同じようなことを考えた者がもう一人いた。
レイ・キャスケット(一家に一台便利なレイちゃん・f09183)だ。
斗真に謎解きでこれ以上迷惑をかけたくないから、この迷宮を創った災魔がいるところで再び会おうと告げられ、レイは迷惑だとは思っていなかったものの斗真の意志を尊重し見送っていた。その間、ふと思う。
(最悪、答えられなくても食虫植物を倒せば通行可能じゃない?襲ってくる前に先に畳みかければ、完封できそうなんだけど)
そろそろ自分も第二の迷宮へ赴こうと鬱蒼と生い茂る草木の中へ足を踏み入れ、看板前とやって来ていた。
看板横には災魔が言っていたとおり、食虫植物が静かに微笑んで佇んでいる。全く微動だにしておらず、ただレイを見つめているだけだ。
(……倒しちゃう?)
ホルダーに仕舞われた魔剣の柄に手を掛けようとして、ハっと殺気に気付く。すぐさま食虫植物に鋭い視線を送るも、ここへ来た時と変わらず食虫植物はにっこりと笑ったままだ。けれど、先程と違うところが一点だけ。やれるものならやってみろとでも言わんばかりの脅迫めいたオーラを纏っている。
じっと、じっと動かずレイを見ているだけなのだが、レイはそれを見て大きく息を吐いた。
「……うん、やめておこう。それで鍵が手に入らなかったら困るし、謎解きも含めて『攻略』なのかもね」
どっちにしろ建築家の満足に貢献しておいて損はない。剣から手を離し、看板に書かれた謎を見る。
「せっかくだから、謎は解いて先に進みたいし。頑張ってみよっと」
時同じくして。
レイの後に続いて、銀山・昭平(田舎っぺからくり親父・f01103)とナーシャ・シャワーズ(復活の宇宙海賊【スペースパイレーツ】・f00252)も次の迷宮へ歩を進める。
「パズルを無視して無理に押し通るのは、流石に……迷宮の作者に申し訳ないべな。それに、学があまり無いようなおらでも解けるくらいには難しくないべ。きっと」
「そうだね。まぁ、私も宇宙海賊として、これまでいろんな暗号を突破してきてならした身だ。この程度で引っかかってやる訳にはいかないってもんだよ」
数分前に先行したカイやルネを見送った後にナーシャと合流し、軽く会話を交えながら生い茂る草木を掻き分けて進んでいく。ナーシャの力強い言葉に、昭平もゆとりを持った心持で挑んでいた。
「頼りになるべな」
「私の船……スラッグ号というんだが、そこにあるデータベースには古今東西、あらゆる知識が詰め込まれていてね。猟兵稼業に合わせてアップデートしているんだ。ゆえに、これしきで止まる私じゃあないんだよ」
「船にデータが蓄積されてるだべ?ほうほう、その船におら興味があんべ。今は問題を解くのが先だが、いつかじっくりと見せてもらいたいべな」
「おっと、興味があるかい?なら、いずれ機会があれば昭平にも披露しようかね」
海賊船はなかなかお目にかかれない貴重な体験だ。昭平が興味を惹かれるのも無理はなかった。そんな昭平の様子にナーシャの気分も悪くない。
「おっと、そうこうしてる内に例の看板前まで来たべな」
昭平達が看板前へやって来ると、既に誰かが謎解きに挑戦中のようだった。
「分数?の数と文字の数が一致するのを見ると、一つの数に一つの文字なの間違いないよね」
「うん。1/3=T、3/3=R、4/3=E、5/3=Eってのは間違いないはず」
「約分……掛け算?日付……いや、キーボード配列やスマホの文字入力?うーん」
先に来ていたレイとカイトが協力して謎を解いている最中だった。
「おら達も考えてみるべ」
隣にいる食虫植物には脇目もふらず、謎に集中し始める昭平。ゴーグルをとんとんと指で叩きながら謎を読み解く。
「サムライエンパイアに住んでるおらは日常的には使わないが、この文字はUDCアースやヒーローズアース、キマイラフューチャーとかでも見かけたべな。ふむ……」
「だいたい、4/3と5/3が両方ともEってのがどういうことなの?」
「それ、オレも同じことを思ってたよ。気になるな」
「分数とそれに対するアルファベット……法則性がわかれば一発なんだがね」
一行目の最後の分数をカイトは指差し、レイと一緒に頭を捻り、ナーシャも頭の中で謎を整理しながら呟く。
「あ」
すると、昭平があることに気付き、声を上げる。ナーシャの言葉がヒントになったのだろう。
「この分母の3。英語に直すと『THREE』ってなるべか?」
「そういえば全部分母が『3』だっけ。ってことは……あぁなるほどね。数字の示す文字をとると……ってわけか」
「その法則性にならうなら、2/3はHってところか」
カイトが昭平の英単語にピンと来て、一行目の分母の数字を確認する。
ナーシャも伊達に今まで謎を解いてきた訳ではない。ぽんと手を叩き、すぐに法則性を理解する。
「そういうことだべ」
「ということは、二行目の数字。分母が8だから『eight』ってなるね!それを使えば……」
出揃ったピースを繋ぎ合わせ、レイが二行目に目を移す。
「あとは簡単だべな」
「オレもわかったよ。じゃあ答え合わせといこうか。オレが答え書いていい?」
「私は構わないよ」
ここにいる全員の答えは一致した。
代表してカイトが答えを書くのに名乗りを挙げる。それに対し、ナーシャやレイ、昭平もこくりと頷く。
「答えは『get』っと」
カイトが魔法の羽ペンですらすらと答えを埋めていくと、今まで動きを見せなかった食虫植物がのっそりと地面を這って、答えを覗き込む。
(……ひっかけだったら、その時はその時だべ)
緊張した空気が流れる。
昭平が固唾を呑んで見守っていると、くるりと食虫植物が顔だけを半回転させ、猟兵達を見つめる。
そして。元々、笑顔だった顔が更に破顔する。ゆっくりと蔓を猟兵達へ伸ばす。そこにはこの迷宮の扉を開くための鍵が握られていた。
取れ、ということなのだろう。無言で猟兵達へと鍵を差し出す。
「……これでクリアだとは思うけど、鍵を取ったらボクたちにいきなり襲いかかる、なんてことはないよね」
「大丈夫なんじゃない。くれなかったら、この迷宮壊すつもりだったけど」
「そ、それはあかんべ!」
「女は度胸ってね。そしたらここは私が取ろう」
ここの迷宮を作った災魔が嘘をついているとは思えなかったが、用心に越したことはない。
食虫植物に警戒するレイを見かねて、ナーシャが食虫植物から鍵を受け取る。
……何も起こらない。それどころか、食虫植物は蔓を左右に振って、猟兵達を笑顔で見送っているではないか。
「……なんだ。拍子抜けだったね」
「でも何事もなくてよかったかも!ここの迷宮もクリアだ!」
「無事に謎が解けてよかったべ」
喜ぶ三人を余所目に、ナーシャが鍵を手に入れた瞬間、四人の前へ突如現れた扉に見入ったまま黙り込むナーシャ。
そんなナーシャに気付いた昭平が首をかしげる。
「おめぇ、どうした?」
「……この扉、どうも鍵穴が見当たらないようなんだが」
「「「えっ?」」」
一体、どういうことなのだろうか。
鍵を手に入れれば、攻略完了だと思っていた三人は面食らう。
ここで建築家の言葉を思い返してみよう。
『次なる迷宮はそこに書いてある謎を華麗に解いて、見事脱出を果たしてほしい』
『正しい答えを書けば『鍵』が手に入る。その鍵を手に入れた瞬間、扉が君達の目の前に現れるからね』
「確かに謎の答えが正解なら鍵が手に入ることも、扉が現れるとも言っていた。でも鍵の使いどころについては触れてなかったね」
「も、盲点だったべ……!」
「そんなぁ。じゃあボクたちまだ……」
「いいだろう、その挑戦受けてやろうじゃあないか」
「ナーシャ……?おめぇ……」
昭平が恐る恐るナーシャの顔を覗き込むと、そこには俄然やる気のナーシャの姿がそこにある。
「多少難易度をあげたくらいで、私を楽しませられるとは思っちゃあいないだろうな?過去の存在たるオブリビオンが、私の上を行けるとは思うなよ!」
宇宙海賊は、止められない。
大成功
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因みに「鍵穴」は見つからなかった。
正確にいうと、扉そのものが「鍵穴」だったため、単純にそこへ鍵を差せば、自ずと扉は開かれるといった至極単純な仕掛けだった。
それに気付くまでに要した時間は……ご想像にお任せする。
セリオス・アリス
【双星】
◎
…なるほどアイツを倒せば鍵が手にはいるんだな?
そんならやることは1つだろ
簡単な問題だ
ノータイムで記入
『アレス』…っと!
なんだよアレス
こっちの方が手っ取り早いだろ
だって3文字って言えばアレスじゃん
俺とお前がいればすぐだ…って、うわっ!?
あ、…くっそ!
じゃま…すんな…っ!きもちわりぃ…!
触腕を燃やそうにも歌う余裕もなくて
…悪いアレス!
アレスのお陰でなんとか脱出
腕の中アレスの様子を覗きみて
…怒ってんな
いや~…うん
信じてたぜ♡って言って誤魔化されてくんねぇかな
またちょっかいかけてきても今は修羅と対面するかの瀬戸際だ
それどころじゃねえんだよ!
【君との約束】光の剣で貫く
さっさと鍵を寄越しやがれ!
アレクシス・ミラ
【双星】
◎
…うん、大分落ち着いた
今度は謎解きだね…って、また君は勝手に!少しは慎重に行動すべきだといつもーー…
セリオス!!!(不覚にも赤面)
だからって何故僕の名前を…!
全く君って奴は…、…っ!?セリオス!?
…襲われてるセリオスを前にして…
落ち着いていられるか!!
【君との約束】を攻撃重視に
拘束される前に光属性で焼き切り
セリオスを襲う蔦を断ち切るべく、盾の尖ってる方を植物に向けて全力で投擲
彼が脱出した瞬間に受け止めに走る
大丈夫そうな様子に安堵した…だが、
…セリオス…
僕が何を言いたいかは分かるね
また危ない目に合って…
誤魔化すな、と抱えたまま
まだ植物が蔦を伸ばしてくるなら剣で突き刺す
…今は取り込み中だ
●Case3:おや……?雲行きが
「……セリオス」
「……どうした、アレス。そんな顔して」
「僕が何を言いたいかは、分かるね」
「いや~……うん」
(……完全に、怒ってんな)
「何に対して僕が怒っているのかも、分かっているね?」
「あー……それは、まあ」
開幕、修羅場にて失礼。
食虫植物が最期に見せつけられた光景があまりにも自分が蚊帳の外だったので、腹いせも込めて最初からクライマックスでお届けしている。
何故、幼馴染の二人がこのような険悪なムードになってしまったのか。
順を追って経緯を説明しよう。
すごろく迷宮を攻略したセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)とアレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)は、次なる迷宮へと歩みを進めていた。
先の迷宮の効果がようやく切れて、アレクシスは内心胸を撫で下ろす。
セリオスへ近づいても先程のように甘い香りで満たされることもない。
(よかった。あのままではこの先の戦闘にも支障が出ていたかもしれないからね。本当に……よかった、んだよな)
「アレス?何してんだ、おいてくぞ」
「あ、あぁ。今行くよ」
感じた小さなわだかまりはセリオスの呼び掛けですぐに消え去る。
大分、落ち着きを取り戻したアレクシスは、セリオスとともに迷宮を進み看板前へとやって来ていた。
「なるほど……最終的に、コイツを倒せば鍵が手に入るんだな?」
看板横に待機している食虫植物に目をとめたセリオスは、顔と呼称される部分を指でつんつんと突く。そんな様子を見たアレクシスは思わず声を上げる。
「セリオス!不用心に近づくのは危険だと……」
「でも今のところ、何かしてくる気配はねえし。大丈夫だって」
セリオスに平然とした顔で言い退けられられてしまい、アレクシスはつい数分前のことを思い出してデジャヴを感じる。
アレクシスは大きく溜息をついて、それ以上は言及せずに謎が書かれている看板へと視線を移すが、セリオスがそれを制す。
「簡単だ。やることは、一つだろ」
「ん?もしかしてセリオス、君……」
謎が解けたのか……!と感心した様子でセリオスを見つめれば、セリオスは魔法の羽ペンを手に取り、得意げな顔で四角に答えを埋めていく。
『アレス』
「……!?セリオス!!!」
アレクシスが答えを見て驚愕すると同時に、不覚にも頬が赤みを帯びていくのがわかる。
「考えるだけ時間がもったいねえし、こっちの方が手っ取り早いだろ」
「だからって何故、僕の名前を……!」
「だって三文字って言えばアレスじゃん」
そういう問題ではないだろう……と思わず頭を抱えそうになるアレクシス。
あの時、妙に自信たっぷりのセリオスを見て察するべきだった。セリオスに元より、真面目に謎を解く気などなかったことを。
「全く君って奴は……」
「俺とお前がいればすぐだ……って、っな?!」
セリオス達の間で軽い言い合いが始まっている中、食虫植物はセリオスが記入した答えを覗き込んで確認していた。不正解な解答を見て、途端凶悪な顔に変貌し、その顔に生じた切れ目から別の食虫植物がわらわらと飛び出て、セリオスへと一直線に襲い掛かる。
何本もの蔓が蛇のように地を這いずり、口論中のセリオスの体に狙いを定めて触腕を伸ばす。異質な感触。ぬらりと艶めかしく緑の蔦がセリオスの服の上を滑り、無遠慮に蹂躙していく。
「ぁ……ッ、くっそ!邪魔……すんな!」
身の危険を感じたセリオスは咄嗟に青星の鞘に手をかけるも、蔓の進行はそれを優に上回る。手首に何重にも巻きつけられた蔓がそのまま袖の中から侵入し、セリオスの体にぴくんと衝撃が走る。込み上げる悪寒。しかしそれだけではない、欣快が入り混じるこの感覚……思い出したくもない。厭だ。嫌だ!
「……ぅ」
気持ち悪い。誰が?
穢らわしい。醜い。
セリオスの心中などお構いなしに蔓の触手は、腹部やセリオスの一番の生命線といっても過言ではない喉へ伸びていき蠢く。うねりは増すばかりだ。
声が出ない。息が苦しい。
早く、早く灼き切らなきゃいけないのに。
(誰か……俺の、――)
「セリオスッ!」
「!」
ああ、そうだ。俺には、俺の隣には――。
光が指し示す方へ、薄れる意識の海を彷徨いながら、籠の鳥はもがく。
それに応えるように聖騎士の赤星に聖なる光が宿り、黒歌鳥を襲っていた蔓が浄化されていく。しかし蔓の回復スピードも負けてはいない。
「誓っただろう。……君を、絶対に守ると」
木鈴に宿る祈りと約束。奏でる音色がアレクシスの根源たる魔力を喚び起こす。
食虫植物は標的をアレクシスへと変えて襲撃する。だが今のアレクシスに敵などいない。触腕は早天の盾の凸の部分で切り裂き押し退けて、騎士剣で問答無用で全て叩き落とす。
蔓の猛攻がほぼ止み、セリオスを拘束していた蔓が緩む。倒れ込むセリオスをアレクシスはしっかりと受け止めた。
「……ん、あ。アレス……?」
「はぁ……よかった。君が無事で」
目を開けて真っ先に視界へと入ってきたアレクシスを見て、セリオスは少しバツが悪そうに視線を逸らす。
そして冒頭へと戻る。
「何に対して僕が怒っているのかも、分かっているね?」
「あー……それは、まあ」
「また危ない目に遭って……」
「でも、アレスならって信じてたぜ♡」
「それで僕が誤魔化されると思っているのかい?」
憤りを堰き止めているアレクシスの空の瞳が鋭くセリオスに突き刺さる。
「……悪い、アレス」
アレクシスの腕の中で気まずそうに一言、セリオスは洩らす。アレクシスは何も言わずに、セリオスを抱く腕に少し力を込める。
重苦しい空気の中、動く一つの影。
看板横にいた食虫植物だ。他の食虫植物に紛れて身を隠し、唯一無事だったのだが、自分をそっちのけで修羅場が発生してしまい困惑していた。
とりあえず役割を果たすべく、空気を読まず二人へと襲い掛かる。
案の定、結果は見えていた。
「……悪いが、取り込み中だ」
「今は修羅と対面するかの瀬戸際だ。お前に構ってる場合じゃねえんだよ!鍵は寄越しやがれ!」
ですよね!
アレクシスとセリオスの喝とともに、食虫植物は数多の光の刃に貫かれ、そこから鍵が転げ落ちる。
と、同時に二人の目の前に扉が現れたが、しばらく言い争いは続いたとかなんとか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『建築家・スバル』
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POW : トラップルームメーカー
【シャベルの一撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を一瞬で無数の穴と罠で埋め尽くし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : ゴートリック・チャンバー
いま戦っている対象に有効な【条件を満たさないと出られない密室】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : ダンジョンコンダクター 38
【地下迷宮アルダワの比較的安全なフロア】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【罠と暗号の詰まった死の危険のあるフロア】に変化させ、殺傷力を増す。
イラスト:いぬひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「リダン・ムグルエギ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
※断章追加後からプレイング受付開始となります。
三章は特にプレイング受付期限を設けません。送れなくなるまでと致します。
●
最後の迷宮へ猟兵達が足を踏み入れた途端、建物の両脇の蝋燭の炎がぼぅっと一斉に灯り、一番奥にある松明へ橙の炎が宿れば、迷宮内の全体が照らされる。
独特の模様に見えてしまう異国の言語が刻まれた大きな数本の柱がこの建物を支えており、黄金の岩石が積み重なり聳え立つ様は、まるで絢爛豪華な神殿のようだ。
この迷宮の敷地はとても広い。ここが戦場と化しても、一見して障害物といえるものはなく戦いやすいように思える。
ここが迷宮でなく、そして迷宮を創った災魔が罠や暗号などが好きでなければ、戦いだけに集中できたかもしれない。猟兵達は目の前の災魔だけでなく、この建物内に隠された罠の仕掛けをなるべく発動しないように注意が必要となる。
魔の地下迷宮エマノアの最終章。始まりの場所にして終わりの場所。
「いやはや、実にいいものを見せてもらった」
建物奥の石階段からゆっくりと降りて、猟兵達を拍手喝采で出迎えるのは、この迷宮の創造主――建築家、スバル。
「各々、思い思いのままにエマノアを攻略してくれて、吾輩は大変嬉しく思うよ。賞賛に値する。存分に楽しんでもらえたかね」
眼鏡の奥にある楊梅色の瞳を猟兵達へ向け、ただひたすらに賛美する。それは自分の元まで辿り着いた勇敢なる探索者へ、心の底からの賛辞と敬意が含まれている。
スバルは手を止めて、友好的な態度で話を続ける。
「最後のピースは、この迷宮を創った吾輩自身。吾輩の屍を越えることができれば、この迷宮は攻略完了となる」
本当はまだ自分の作品(こども)で遊んでもらいたかった。楽しんでもらいたかった。その探究心は未来永劫、不滅。
けれどゴールあっての迷宮。探索者達が謎や暗号を読み解き、苦難の末に迷宮を脱出する。その筋書きこそ己の悲願。
スバルの望みは、自分が命懸けで創った作品(こども)を探索者に攻略してもらうこと。これは生前変わらず、かねてからの願い(ゆめ)であったから。
「さぁ、吾輩と勝負だ。あぁ、もちろん一切手は抜かないよ。見事、吾輩に打ち勝ち華麗に脱出を果たしてくれたまえ!」
ルネ・プロスト
◎
感想は……まぁ
楽しかったよ?
謎解き解けなかったのはちょっと悔しかったけど
毎回仕掛けがランダムになるのはすごいと思ったし
……でもね
その度にルークが酷い目にあったのは許せないかな
じゃ、痛い目見ようか
人形達は引き続き死霊憑依&自律行動
開幕UC
ポーン8体は上空から味方に合わせて【援護射撃】で援護
災魔の攻撃・回避はタイミング合わせて【フェイント】で妨害
罠や密室も機動力を生かして回避
ルーク2体は味方の護衛【かばう、盾受け】
クイーンは魔法弾で攻撃【誘導弾】
ビショップ2体は雷撃魔法で災魔を攻撃【属性攻撃、マヒ攻撃】
適宜【オーラ防御】で防御支援も
穴や罠は森の友達、道化師団の【情報収集、破壊工作】で無力化するよ
桜雨・カイ
お灸をすえるためにここへ来たのですが、こんなに嬉しそうに語られると…複雑ですね。
でもあなたの望みが迷宮を超える事なら、その望み受けて立ちます。
【先制攻撃】で【錬成カミヤドリ】発動。錬成体の半分程はあえて罠にかからせる。
他の人が怪我をしないよう盾代わりに、そして彼がせっかく用意した仕掛けが使われないのはなんとなく可哀想な気もするので……ただしやり過ぎの仕掛けは避けます!さすがに石象や触手がまた出てきたら危険なので!(【第六感】【野生の勘】で味方に迷惑がかかりそうな大がかりな罠は避ける)
もちろん目的は攻略です。残りの錬成体は【フェイント】をかけつつ攻撃に回します。
…満足、してくれましたか?
銀山・昭平
迷宮はいろんな仕掛けがあって楽しかったべな!
だがオブリビオン相手だ、おらも手加減しないべ!
◆戦闘
相手はとにかく罠や密室を作り出して戦うという感じだべな。本当ならばもっと楽しみたいところだが、手加減しねぇと言った以上覆す気は無いべ。
【銀山流即席絡繰術・弐式】でドリルとツルハシの絡繰を持ち、【トンネル掘り】の技術も合わせて密室や罠を多少乱暴にでも解除していくべ。
接近戦はこれだけ派手に動いたら【存在感】でおらに視線を縛り付ける方が良いべな。その間手裏剣に麻痺毒を塗っての【マヒ攻撃】による【時間稼ぎ】も用いながら他の猟兵たちにつなげるべ。
※共闘・アドリブ歓迎です
●それぞれの思い
「二人とも大丈夫だったべか?」
第二の迷宮から出てきたルネやカイに真っ先に声を掛けたのは昭平だ。
「えぇ、何とか。謎は解けませんでしたが、ちゃんと鍵を手に入れてここまで来ましたから」
「謎解き解けなかったのはルネ、ちょっと悔しかったけど……」
確かに二人を見る限り外傷は見当たらず、昭平は安堵の息を洩らす。
「昭平さんは……謎を解いて攻略したって顔してますね」
「当たりだべ」
「……答えが気になるところだけど、今は目の前のボスに集中しようか。全て終わった後に、教えて」
「了解だべ!」
「話し合いは、済んだかね?」
ルネ、カイ、昭平が見つめる先は同じ一点のみ。地下迷宮エマノアの作者にして建築家、スバル。
三人の再会を黙って見守っていたスバルは弧を描くように笑みを作り、頃合いと言わんばかり持っていた迷宮の設計図らしきものを手でくるんと丸める。すると眩きに包まれ一瞬の間に手元から消す。
それはラストダンジョンの攻略の火蓋が切って落とされた合図。開幕の狼煙。
スバルの迷宮(こども)の一部を犠牲にする前に風を切って飛び出していったのはルネの人形一味。
ポーン
「……真の姿を見せることを許すよ、軽装歩兵。――さぁ、変身”プロモーション”だ!存分に暴れておいで」
『人形王国・駒盤遊戯・軽装姫兵』
主”ルネ”につき従う人形達”ドールズ”は喚び声に応じ、主のための王国を築き上げる。
只の歩兵と侮るなかれ。散在した八体のポーンに光の亀裂がめりめりと入り込み、声無き産声をあげる。覚醒。露わになるのは凛々しい麗しの姫騎士達。全身から溢れる膨大な魔力で黄金の神殿を背に宙を駆ける様は、さながら神話に出てくるフィアナを彷彿とさせる。
女帝クイーンが持つ宝杖から放たれた白の魔弾とともに、姫騎士達は銃弾の暴雨をスバルへと容赦なく降らす。スバルも銃の軌道を見切り守護の呪いを宿した半魚の尾鰭で魔法弾を跳ね返していたものの流石に無傷とはいかない。腕を抑えて唸る。
「ぐぅ……ッ!」
「迷宮を進む度に酷い目にあったルークと同じぐらい、痛い目見てもらう」
信頼を寄せている大事なルークを傷つけられたルネの恨みは深い。このユーベルコードを放ったのもその思いあってこそ。攻撃にも迷いはなく狙いも的確だ。しかしながらスバルの顔に陰りはない。
「吾輩の子供、が君の大事なお友達に失礼を働いたようで。少々、小さなお嬢さんには刺激が強かったかね」
「……毎回、仕掛けがランダムになるのはすごいと思ったし、まぁ……楽しかったよ。でもね」
友達を痛めつけられて許せるほど、ルネはお優しくない。
表面上では淡々と並べられた言葉の裏には人形や死霊達への慈しみに満ちている。
「そうかね?吾輩としては、そう言わずにもう少し遊んでもらいたいのだが、ねッ!」
姫騎士”ポーン”達や道化師団が間髪入れずにスバルへ畳み掛けようと距離を縮めたその時。待ち構えていたとばかりにスバルは口角をあげて不気味に嗤う。
「……!」
ルネよりも早く森の友達が異変を察知し、それに気付いたルネが他の人形達へ号令を下す。次々と飛んでくる炎の矢による攻撃に、建物内に不意に出来る穴の数々。元よりあった穴よりもかなり無効化出来ているのは道化師達のお陰だ。
主の意思に沿うように姫騎士達が矢羽や箆を魔を司る刃で一閃。ルネに火の粉が掛からないようルークがしっかりと大盾で護衛している。
「大分、おら達が優勢だべ」
「ルネさんに負けていられませんね」
ルネの人形達がスバルを圧殺している中、カイや昭平も乗じて動く。
昭平がスバルの動きを封じようと手裏剣を投げるも、スバルもそう容易く猟兵達に勝ちは譲らない。スバルの尾を微かに掠めるに留まり、致命傷は与えられなかった。
「おっと、いけないな。ならば、もっと難易度を上げていこうか」
このままでは不利な状況を覆せず、苦戦を強いられ好機を見出せない。太刀打ちできずに攻略されてしまっては建築家の名折れだ。こちらにも矜持がある。
迫り来るカイと昭平へ負傷していない左腕を向ければ、ルークの護衛が一歩間に合わず二人を取り囲むようにたちまち建物の風景が変わる。そこは分厚いコンクリートの壁で覆われており、現状、出口が全く見えない。
「んな!また閉じ込められちまったべか?」
「どうやらその様子ですね……でもこれなら壁を壊せば」
カイが拳でコツコツと壁に手を当てる。音の反響を確かめ、壊せない壁ではないと判断した時に、上から轟音が響き渡る。
二人が何事かと上空を見上げれば棘の壁が自分達を押し潰そうとじわじわ降りてきているではないか。
「うお!?最後にじっくり密室を楽しみたいところだったが、悠長に壁壊してる場合ではなさそうだべ!」
「そのようです。昭平さん、壁の破壊はお願いできますか!私は上の棘をなんとか食い止めます!」
「合点承知の助だべ!」
二人まとめて部屋に閉じ込めたのはスバルの唯一の落ち度だった。この迷宮内で出会ったばかりの二人だが、短いやり取りの中で何が最善か、互いの得意分野を活かせるのはどれに対してなのか、瞬時に見極め動き出す。
カイのからくり人形達が四散し、棘の進行を少しでも遅らせようと上へ押し上げる。服が破け人形の腕や脚に棘が食い込み壊れようとも、主やその仲間を護る。そこには紛れもなく強い意思が宿っている。
カイや人形達が時間を稼いでる中、昭平は『銀山流即席絡繰術・弐式』でドリルやツルハシの絡繰を持ち、自分達が帰るための道を作る。
ガガガ、ガガガ。抉じ開けた先に待っているルネやスバルの元へ戻るために、一心不乱に壁を破壊していく。
「ぐ……」
「あと、あともうちょっとだべ!!もう少し……!」
棘はカイのからくり人形達が堰き止めているが、それにも限度がある。既に何体か壊され無残にも残骸が床に落ちており、冷や汗が一滴、カイの頬を伝う。
カイの片膝が地面につき絶体絶命と思われた。
ガラララ。壁が崩れる音とともに二人に差し込む一筋の光。
「いけたべな!!おめぇが先に行くべ!」
間一髪。昭平のドリルが壁を貫通し拓けた一本道に、言われるがままにカイが器物を持って先行し、昭平がその後を追う。
「……!二人とも、無事でよかった……!」
二人が密室に閉じ込められている中、ルネが一人、懸命にスバルと対峙していた。なかでも盾として働いていたルークが既に半壊状態となっており、相当均衡していた様子が窺える。カイ達の姿を再び見つけた途端、僅かばかりルネの表情筋が緩んだ。
「ううむ、脱出……されてしまったか。実に残念残念」
スバルはといえば、改良の予知ありだなぁと戦いの最中、頭の中にある迷宮の設計図に楽しそうにインプットしていく。それなりに傷を負い少し足元がふらついていてもあくなき探究心は健在だ。
「随分と、余裕だべな」
「こんなに嬉しそうに言われると……複雑ですね。けれど、あなたにお灸をすえるためにここまで来たのですから」
「だべな。迷宮はいろんな仕掛けがあって楽しかったが、おらも手加減しないべ!」
「あなたの望みが迷宮を超える事なら、私達が、その望み受けて立ちます……!」
「吾輩は生憎と満足していないのでね。まだ終われないのだよッ」
新たに脳内で組み立てられた迷宮の設計に終止符がついたのだろう。それを境にスバルの尾がぐるんと回転を増したかと思えば、そのまま三人まとめて薙ぎ払おうとする。が、何故かその勢いは急激にがくんと落ちる。
「何……!?」
密室に閉じ込められる前に擲った昭平の手裏剣。実はそれには麻痺毒が塗られており、その毒がゆっくりとスバルの体を蝕んでいっていたのだ。体が痺れていうことを効かず、スバルの動きが完全に止まる。
「ッ……く!」
「おめぇたち!今のうちに、頼むべ!!」
「任されました!」
「ビショップッ!」
昭平が作ったチャンスをルネとカイが繋ぐ。
カイが操る”カイ”がスバルの脇腹に強烈な一撃を叩き込み、二体の僧正人形の青白い稲妻がスバル目掛けて落とされた。
トリプルコンビネーション。ここに極まれり。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】
◎
勝負だなんだとうるせえ!
俺はただあの植物の分の怒りをお前にぶつける!
あのあとアレスにめちゃくちゃ怒られたんだからな!
歌で身体強化
靴に風の属性の魔力を込め
足元で旋風を炸裂
ダッシュで敵に若干理不尽な怒りをぶつける
攻撃を見切り避け
2回連続で斬りつけて
落とし穴は第六感で回避
つって足場が悪いのはやりづれぇな
…ッ!?
穴に落ちかけ一瞬感じた浮遊感は
しかし馴染む体温にぶつかり消えた
アレス!助かった
ああそうだな飛べば早い
アレスの腕の中真の姿を解放して
このまま頼むぜアレス!
投げて貰って
自身の羽ばたきだけでは及ばないスピードで敵を追い詰めてやる
その速度ものせて【星球撃】
力いっぱい撃ちあげて
いったぜアレス!
アレクシス・ミラ
【双星】
◎
真の姿:薄明纏う純白の全身鎧、暁と朝空の四枚光翼
…食虫植物の件はまだ少し怒っているんでね(あの後、説教していた)
本気でいかせてもらうよ
セリオスの援護兼先程の少しの怒りを込め
雷を纏わせた剣から雷を奔らせ範囲攻撃
攻撃は盾で受け流し
穴と罠は見切りで回避か、最小限に抑える
だが、これでは近寄れないな…
っ!?セリオス!!
穴が、罠があろうとも、セリオスを救う為に駆け出す
…真の姿、解放
光翼で羽撃き、落ちそうな彼を抱き抱える
無事か!?…よかった
…このまま飛ぶよ
しっかり掴まっていて
抱えたまま、敵の元まで翔ぶ
任せて!
彼を後押しするように投げる
ああ…これで終わらせよう!
打ち上がった敵に向かって【天空一閃】!
●中天の光翼
燦たる神殿へ現れた二人は、この迷宮に負けず劣らず耀きを持つ双星の赤と青。
ただ、どこか苛立った様子で、その身に隠せないほどの傷を負った建築家を見遣る。
「次は君達が吾輩と勝負をしてくれるのかね」
「勝負だなんだとうるせえ!」
出会い頭にセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)はスバルへ吠える。
「あのあと、アレスにめちゃくちゃ怒られたんだからな!」
行き場のない怒りは第二の迷宮にて生じた。結果としてみれば、セリオスは大事に至らず、食虫植物を退治し鍵を入手できた。だが、あくまでそれはセリオスが無事だったから良しとされたもの。
安易に不正解の答えを書き、自身を危険に晒す行為……加えてそれが幼馴染の目の前だったというのも問題だったであろう。説教はセリオスの体感的に小一時間は続いていた。
(君が『そう』なのは、分かってはいる……けれども、だから、僕は――)
沸々と怒りの感情を溜めているセリオスの横顔を、アレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)は一瞥する。
自分をあまりにも省みず希薄に思う節があり、自分の存在は二も三も次。セリオスが思っている以上に、アレクシスの中で占める彼(ほし)の存在は大きいはずなのに。気付いているのか否か――。
その危うい行動に幾度となく頭を悩ましてきたが、それこそがセリオス・アリスという所以なのだろうとも、アレクシスは理解している。
(だから僕は……その度に、糺すよ)
それが過ち(まちがい)なら、言葉にして伝える。大事な片割れ(とも)を心配するまっすぐな気持ちのままに。『本当に』理解されていなくても、何度も、何度だって。
今は、隣にいる。伝えることが出来るのだから。
「それは言いがかりというものなのではないのかな」
「そんなの俺が知ったことか!俺はただ、あの植物の分の怒りを!お前にぶつけるだけだ」
敵にしては正論すぎる言論に、余計に虫の居所が悪くなるセリオスが食ってかかる。
「それに関してはセリオスにも見直してもらいたいところがあるが、差し引きにしても、僕も食虫植物に対してまだ少し怒っているんでね」
食虫植物は番人の役目を果たしただけで、彼らにとっては正しい行動だった。これ以上言うと更にセリオスが逆上しかねないので、ここで留めておくが。
アレクシスも同様に、冷静でいるようで幽憤の情を抑え込んでいた。
「……本気でいかせてもらうよ」
「やれやれ。逆恨みとは」
困った探索者達だ、と肩を竦めて口の端を吊り上げながらスバルは二人の様子を見る。
刹那、空気が一変。
スバルの手から突如錬成された鋼の円匙が、丸を描くように尖端で床を削る。これが引き金となり、凛冽な雰囲気がセリオス達に突き刺さる。互いに武器を構えた二人へスバルが駆けた。
シャベルの軸部を握り締め、セリオスの肩部から斜めに叩き込もうと振り下ろす。
「ぬるいな!」
囀る鳥の深淵の旋律。奏でるは心。魂の歌。響き渡る声が呼応し共鳴する。
根源たる力が直接セリオスの体を巡り、セリオスの深紫色の長い髪が一層煌きを増す。
そのまま流れるようにエールスーリエに魔風の力を宿し、旋風を巻き起こす。
トンッ。地を一度蹴り、一瞬にして自由に空へと羽搏いてスバルへと一直線に加速。
スバルとて宙へ舞うセリオスを確り目で追い、円匙のさじ部で再び抉ろうと試みる。が、迫りくる円匙をセリオスは疾風の如き速さで脚で蹴り落し、理不尽とも取れる憤りとともに純白の剣でスバルの体躯を八つ裂きに斬り付ける。
「ガッ……ぐは!」
セリオスに追翔するのはアレクシス。先程の怒りは今は息を潜め、戦闘のみに集中している。セリオスの攻撃の反動でぐらりと揺れたスバルへ、白銀の剣から雷光をばちばちと奔らせ疾雷を遠慮なくお見舞いする。
目まぐるしい怒涛の連撃。スバルの体にバチっと電光の名残が光り、焦げた匂いが充満する。二人の華麗な連係の前に、スバルの息はぜえぜえと上がったままだ。
態勢を整えさせる前に更なる打撃を繰り出そうと二人が動いたその時、不規則に埋まり尽くされる無数の穴。穴の底は奈落。一度落ちればきっと上っては来れないだろう。
スバルはこの間に少しでも体力を回復させようと、シャベルに寄り掛かりながら息を整えている。
「くっ、足場が悪いのはやりづれぇな!」
「確かに、これでは近寄れないな……」
落とし穴は不定期に生まれるため、セリオスは持ち前の第六感を活かし何とか回避を試みる。アレクシスは上空から振り子のように下りてくる大きな鎌や斧をスレスレで避け、首を刈り取る魔の手からセリオスと我が身を早天の盾で護る。
二人の意識が斧の攻撃に向いていた。その瞬間、セリオスが立っている床に穴が開く。
「……ッ!?」
ふわりとセリオスの身を浮遊感が包む。
(っ……これは、まず……)
避ける間もなく外套が穴に吸い込まれるように靡き、セリオスの体を奈落へ誘う。
「セリオス!!」
咄嗟に手を伸ばすも指先が空を切る。間に合わない。万事休す。
(僕は、僕は君へ誓っただろう――)
「必ず、護ると」
――真の姿、解放”release”。
友を助けるために。前を往く彼に追い付けるように。どこまでも、遠く、遠くへ!
外された枷により放たれたアレクシスの真の姿。薄明を纏う純白の鎧が神々しく、中天に舞う暁と朝空の光翼が眩い。その光翼で羽撃き、アレクシスもセリオスが落ちた穴へと迷わず飛び込む。
「セリオス!」
「……!アレス……!」
――嗚呼、綺麗だ。
風光明媚。セリオスの蒼穹の眼はそう、彼の姿を映す。
穴の中の暗闇で光輝くアレクシスの翼は、セリオスの視界いっぱいに広がる。
戦いの真っ最中なのにも関わらず、セリオスは思わず見惚れてしまう。
(やっぱり、お前は……俺の一等星”ひかり”だ)
ふっと微笑を浮かべ、アレクシスに向かって両手を差し述べる。
その腕を手繰り寄せ、セリオスを抱える。ほんの少し離れていただけなのに、何故かとても懐かしい温もりに感じて、セリオスの目元が緩む。
「……助かった、アレス」
「君が無事で何よりだ。……このまま飛ぶよ」
「ああそうだな、飛べば早い。このまま頼むぜ!」
「任せてくれ。しっかり掴まっていて」
バサリ。アレクシスが燿る羽を擡げて穴から脱出した先には、回復に専念していたスバルが待ち構えていた。本調子とまではいかずとも十分に動けるまでに至っている。
アレクシスは光翼の羽搏きで建物内を翔け、スバルとの距離を縮める。
二人の姿を捉えてすかさずスバルの尾鰭がセリオス達へと振り下ろされるも、光の速さで潜り抜けその勢いを乗せて、セリオスはアレクシスから飛び立つ。
「武器が剣だけだと思うなよッ!」
天駆けたセリオスの渾身の星球撃が見事にスバルの鳩尾に決まる。ゴギィィ!鈍い音が響き、口から血を吐きながら、スバルの体が打ち上げられる。
「ぐぅあぁぁぁ……!!」
「いったぜアレス!」
「ああ!」
セリオスの繋げてくれた勝機、みすみす逃したりはしない。
「この剣で、運命を切り開く!」
天空一閃!刃に光粒を凝縮させて放つ斬撃と衝撃波がスバルの胸部を穿ち、十字を斬り描く。
天を貫く咆哮とともにアレクシスの鉄槌が下された。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ナーシャ・シャワーズ
ま、迷宮にはボスがいるもんだからね。
せっかくのおもてなしだ。
ここまで楽しませてもらった礼も兼ねて、骸の海へと還してやろう。
お前さんの言う通り、迷宮は突破されてこそだぜ。
さて、ラストバトルは盛り上げていこうじゃないか。
罠と謎だらけの迷宮のボスなんだ、それらしい戦い方をするもんだろう?
それを乗り越えてこそってもんよ。
ほう、一瞬で罠を作り出すか。だがこういうのは得意分野なんだ。
私の全身にはここぞって時に役立つ道具が満載なのさ。
ワイヤーガンで空中を飛び回り、罠が発動しようともかわして見せよう。
こいつは私なりの敬意って奴だ。
ソウル・ガンはお前さんの魂を撃ち抜く……
次は安全性に配慮した迷宮を作るんだな。
杜鬼・カイト
◎
キミを倒して攻略完了、ね
シンプルでわかりやすくてオレは嫌いじゃないけど……
わざわざ創った迷宮を攻略してもらいたい、なんて変なの
遊びたいならずっと閉じ込めておけばいいのにって、オレは思うんだけど
……ま、オレは閉じ込められたとしても大好きな人がいないこんなところ、意地でも出ていくけどね!
というわけで……んじゃあ、まあ…思う存分壊すよ
薙刀を構えて戦闘モード
敵の攻撃や迷宮内の罠は見切りで回避しつつ、敵との距離を詰めていく
指輪を左手の小指に嵌めて【永遠の愛を誓え】を発動し、敵の動きを封じる
その隙に誰かに叩いてもらうか、誰もいなかったらオレがそのままなぎ払って壊す
●heart×hurt
先の戦闘によって、スバルの体に幾つもの癒えない傷痕を残す。スバルは口端についた血を乱暴に手の甲で拭う。
ダメージは大分蓄積されているも、この迷宮が完全に攻略できた訳ではない。
それはスバルと対峙するナーシャ・シャワーズ(復活の宇宙海賊【スペースパイレーツ】・f00252)、杜鬼・カイト(アイビーの蔦・f12063)も重々承知の上だ。
しかしカイトには一つ、どうしても腑に落ちないことがあった。
「わざわざ創った迷宮を攻略してもらいたい、なんて変なの。遊びたいならずっと閉じ込めておけばいいのにって、オレは思うんだけど」
カイトは負傷している建築家へ小首を傾げて問い掛ける。純粋な疑問。
(なんで手放しちゃうのかな。永遠にそこで終わらない謎を解いてもらった方が、キミの望みは叶う気がするんだけど)
その言葉の裏には、カイトに根付く在り方そのものが透けてみえた。
自分の拠り所でもある大事な人から離れるなんて考えられないカイトにとっては、攻略……それはとどのつまり『別離』。解放という意味と捉えた。故にスバルの描く理想(ゆめ)は理解しがたいものだった。
「……吾輩も謎が解けた時の快感は知っている。なればこそ。終わりなき攻略不可能なゲームは、吾輩が求めてる作品(こども)とはかけ離れているのでね。閉じてこそ、作品(こども)は完成するのだよ」
「ふぅん。オレにはわからないけど……ま、閉じ込められたとしても、大好きな人がいないこんなところ、意地でも出ていくけどね!」
「私は、お前さんの言ってることはなかなか的を得た話だと思うけどね。迷宮は突破されてこそだぜ」
「さて、与太話はこれぐらいにしようか。吾輩の愛する作品(こども)で全力でお相手しよう」
「ああ。ラストバトル、大いに盛り上げていこうじゃないか。それを乗り越えて私達は、往くよ」
「オレもキミを思う存分壊して、さっさとここから出るよ」
落ち窪んだ眼鏡の奥の双眸がギロリと二人を睨み据える。
開幕、迷宮の罠を始動させるスバル。
この迷宮の創造主なだけあり、このような芸当も可能なのだろう。黄金の岩石が積み重なる何の変哲ーもない小さなオブジェにも似た柱が眩きに包まれる。ゴゴゴと迷宮内に重低音が響いたと同時に、矛と盾を持った何体もの石像の兵隊が形容され、二人へ地響きを立てて猛攻していく。
それに紛れるかの如く、スバルは円匙を握り直しナーシャへ渾身の一撃を繰り出す。
「っ、ほう……一瞬で罠を。ならせっかくの『おもてなし』、とくと堪能させてもらおうか!」
ここぞという時に役立つ道具は、もちろん搭載されている。
身に着ける腕輪からワイヤーを射出し、器用に縦横無尽に迷宮の上空を舞う。その猟兵ナーシャへ迷い無く円匙の打撃が伸びる。スバルが持つ軸部は伸縮性の機能があり、まるで如意棒のように遠く離れた標的へも攻撃が届く。
容易に自分のテリトリーを侵されたナーシャだが、伊達に数々の場数を踏んできた訳ではない。戦場を有利に立ち回る技術、そして持ち前の戦闘センスが光る。シャベルを下ろす軌道を正確に読み切っていたナーシャは損傷を最小限に。狙った箇所へと当て”させる”。まさしく華麗なる誘導。
見事、左の義腕にして魂銃(ソウル・ガン)に着弾。ナーシャの左袖は破り捨てられ、多少精密部品の破片が欠けたものの、頑健な銃がこの程度の攻撃で完全にへし折れるはずもなく。
それでは、終わらない。終わらせない。
「私の本領発揮は、これからだ」
スバルの攻撃がナーシャへと向けられる中、カイトは石像の兵隊軍団へ得物のなぎなたを振り回す。
「邪魔くさいなあ。オレの前を塞がないでよ」
謂わば風神を思わせる太刀筋で、石像が持つ盾を目にも留まらぬ速さでど真ん中から勢いよく突き刺し粉砕する。盾の役割を果たせぬままに無残にも崩れた像は岩石へと戻る。
複数の矛の同時攻撃にも難色を示すこともなく。豪胆にそれでいて確実に石像の動きを止める。
カイトの周りにはいつしか岩山が集積されていった。
その岩山を足掛かりにし、最短距離でスバル達の元へと走る。そしてスバルに新たな死のフロアも形成される前に、ナーシャと対峙するスバルへと左手薬指の緑碧玉の指輪からアイビーの蔦を放つ。
「うろちょろされると目障りなんだよね」
(……また、兄さま以外に使う羽目になっちゃった)
億劫で気怠げな表情を浮かべるが、カイトの放った蔦は無造作にスバルに絡みつく。もがけばもがくほど蔓が体を締め付け、スバルの自由を奪う。
「このッ……!」
「あと、お願いできる?」
「任されようか。最後は、また力を貸してくれないかい?カイト」
「いいよ」
短い会話のやり取りの中でも決して隙は見せない。どんな敵であろうと、たった一つのミスが命取りになることを、誰よりも近くで見てきて今でも背中を追う兄がいつしか戦いの中で教えてくれたから。
その心構えはナーシャとて同じ。宇宙を渡り歩いていたナーシャにもしっかりと染み付いている。
カイトの指先と視線はスバルへと向けたまま、カイトの右手がナーシャの右手に触れる。バトンタッチ。攻撃手はナーシャへ。
「ここまで楽しませてもらった礼も兼ねて、骸の海へと還してやろう。――こいつは私なりの敬意って奴だ!」
漲る魂の力を借りて破壊の源を一弾へ。
込められた魂(こころ)は一つではない。未だ、スバルを食い止めるカイトの分まで。
まっすぐ、まっすぐ、スバルの心の像を撃ち抜いた。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「カイト!」
ナーシャの掛け声にアイビーの蔓を解除し、黒のセーラー服の少女……のように見える少年が、スカートを靡かせ地を駆け翔る。
ふた色の瞳が血の海に沈む建築家を射止めた時には既に。カイトの薙刀が縦にまっすぐ振り下ろされていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
五百雀・斗真
屍を越えることができれば攻略完了か
作品に対して、そこまで命を込められるのは
何だか羨ましいな
…って、こんな事を考えてたら
戦いに迷いが出ちゃうかもしれないよね
いけない、いけない
それは彼も望んではいないだろうから
僕なりの全力で最終戦に挑もう
あれ?攻撃が来るかと思ったら、急にフロアが…
そして、暗号再び…だね
困った…これも解けないかもしれない
だけど、ちゃんとギリギリまで考えて答えよう
たとえ不正解だったとしても
せめて彼が作った最高傑作の罠を
大田さんと一緒に攻略できるように頑張りたいな
危険なフロアを【グラフィティスプラッシュ】で塗り潰し
障害物が現れても、黒雫で強化した触手で
鎧砕きや串刺しで打ち砕いていこう
◎
●子は灰に帰す
(屍を越えることができれば、攻略完了か)
五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)が他の猟兵の後を追い、最後の迷宮の門を叩いた時には、スバルの有様は既に凄まじいものであった。
片方の腕がだらんと垂れ下がり、胸部から腹部を伝う血液の量が尋常ではない。立っていられるのがおかしいほどであった。
それでもまだ、現世にしがみついているのは――命懸けで創り上げた自分の作品(こども)を全力で攻略してもらう。そのために、立っている。休む暇などない。
ゴールが存在しない攻略は思い描く筋書きと異なる。あくまで攻略あってこそ作品(こども)は完成する。ゆえに。
「きちんと、終わらせようじゃあ……ないか」
円匙をガキィンと神殿の黄金岩の床へ突き刺し凭れながら、残った探索者を眼に見据える。
その光景を生涯忘れないように。最期の最後まで焼き付けて。
(作品に対して、そこまで命を込められるのは……何だか羨ましいな)
そんなスバルの様子を粛然と斗真は見つめて、耽る。
迷宮の創造主にしてラスボスを前に思うことではないのかもしれない。傍から見れば安全性に乏しい、一歩間違えれば命を落としかねない危険な迷宮であり、褒められるべき点などないのだと理解している。
けれど、ジャンルは違えど作品を創り出す共通点、そしてこのエマノアという迷宮の数々の罠や謎を実際に見てきた斗真だから出る感想であった。
(いけない、いけない。戦いに迷いが出ちゃうかもしれない。切り替えないと)
パン、と斗真は自分の両頬を叩き、喝を入れる。
(そんなことは彼も望んではいないだろうから)
「僕なりの全力で、あなたに挑む」
「構わんよ。そうでなくては……意味がないのだ」
最終局面、スバルの気迫と殺気はこれまで以上に増している。咄嗟に身構える斗真だったが、意に反した場所で微かに何かが崩れる音がする。音の方へと視線を向ければ、そこは元々扉があった所で斗真が第一、第二の迷宮と通ってきた方向であった。
スバルが所持する能力が発動。抗う術もないまま斗真は別のフロアへと閉じ込められる。
「ここにきても攻撃方法が暗号とは、どこまでも貫くつもりなんだね。彼は。なら……」
今度こそ解いてみせよう。そして、還そう。あなたがいるべき場所は、今(ここ)ではないのだから。
その一角に示しだされた時刻は、この部屋の時間制限を表しているのだろう。
一刻一刻と迫るタイムリミット。地面から溢れ出る水の勢いは止まることを知らず、早く脱出しなければその内、フロア全体が水で埋め尽くされる。
斗真の背中に冷たい汗が滴り落ちる。
「困った……これも、解けるか怪しい」
焦りで思考に乱れが出始める。頼れる仲間はこの場にいない。けれど、この部屋に入った時点でやれることは一つしかない。
(諦めず、ちゃんとギリギリまで考えて、答えよう)
あと少し、少しのところで答えに手が届くところまで来た。最後の欠片が見つかれば……。しかし無情にも水は斗真の首から上まで徐々に這い上がってゆく。
「っ……水が!」
絶体絶命。道筋は途絶えたかのように見えた。
「大田さん……!」
大田さんが地面から沸いてくる水の勢いを留めて、ほんの少しばかり勢いが弱まる。時間は過ぎてゆくが、それだけでも斗真の心に光明が差し込んだのは間違いない。
と、同時に照らされる道筋。
「あっ……!そういうことか、わかったよ」
カウントダウンが始まるも、斗真は冷静に答えを入力する。
あと3秒というところで時を刻む音に終止符が打たれ、斗真が閉じ込められていたフロアが音もなく崩れ去っていく。
「嗚呼、解かれてしまったか」
戻ってきた斗真を見て、嬉しそうでいて物悲しそうな掠れた声色でスバルは告げる。
「あなたの最高傑作を、全力で攻略すると決めていたから」
斗真はグラフィティスプラッシュで放出された塗料をスバルへではなく、わざと外す。そのまま迷宮に飛び散る蛍光色で塗られた箇所に足を踏み入れた。
漲る力を感じ、背後の大田さんに目配せし、建築家へ目を移す。
スバルは手に持っていたシャベルを斗真へ向かって伸ばす。一突きを食らわそうと試みるも、斗真だけでなく斗真に埋め込まれた魔石――黒雫によって強化された触手が円匙を捻り潰し、粉々に砕く。
「おのれ……!」
攻略されたい(されたくない)
そんな気持ちがひしめき合うが如く、スバルの尾鰭によるうなる打撃が斗真の頬や腕に直撃。重ねて鳩尾へと繰り出される攻撃は大田さんが確り盾となり庇う。
態勢が崩れてスバルに隙ができたのを斗真は見逃さなかった。斗真は一気に距離を縮める。
「これで、最後にしよう」
大田さんと一緒に打ち砕く。彼の理想(ゆめ)の実現のために。
ざん、ざん、ざん!蔓延る触手がスバルの肢体を貫き通し、断末魔と共に穿つ――。
災魔の討伐が果たされ、この迷宮も用済みになったのだろう。
ガラガラと音を立てて崩れていく。猟兵達は余韻に浸ることなく、足早に出口を目指す。
(またどこかで会うことがあれば……)
「ぬいぐるみ、増えればいいな」
「預かってるボードゲーム、渡したいな」
隣を駆ける同じ人形遣いとからくりを愛する者を見上げる一人の少女と、戦利品を得た一人の青年がいた。
「帰ったら私も早速スラッグ号をアップデートしなきゃね」
「オレも出たら兄さまに会いにいこっと」
二人の男女も三者三様の思いを抱きながら帰路へつく。
地下迷宮エマノア。攻略完了。
大成功
🔵🔵🔵