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救済者へ、願う。(作者 KS
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●予知夢
 母親は、子供を抱えて走る。
 蟲の餌食にしてなるものかと、栄養も力も無い足で、子供を護りながら駆ける。
 駆ける。
 やがて背の肉が、足の肉が、腱が断たれて、それでも羽音は鳴りやまない。
 ぞうぞうごうごうどうどうと。
 食わせてなるものか!なるものか。
 大丈夫よ。と母は笑む。泣き止まぬ子を励ます様に。
 抱えて、離さぬ肉の壁。
 この子だけは。
 祈りながら丸くなる。
 その細い身体を、蟲の群れが覆い隠す。
 どうどうごうごうぞうぞうと。
 全てを飲み込む蟲の群れ。
 それは土砂が滑る様に流れ行く。
 全てを喰らう蟲の群れ。
 それはノイズを幾重にしたかも分からぬ轟音で、存在足り得る存在を、蹂躙し尽くし進む。
 進む。
 蟲の時速、約40。
 村を一つ飲み込む速度、凡そ半時。
 第一の村に到着するまでの間、一時間。
 飲み込まれる村の数、3。
 村に住む者達、それぞれに百、足らず。
 空腹湛えた蟲の群れ、空を覆い隠す程。
 それらが過ぎ去り残るのは、土ばかり。
 骨、ばかり。

●グリモアベースにて。
「少し、面倒な依頼になるんだが、聞いて欲しい。」
 そう切り出し、夢の内容を説明しながらダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)は、板に掲示された地図を指す。
「この村が在るのは、ダークセイヴァー。そして、この村は、闇の救済者達が居る場所でもある。」
 闇の救済者(ダークセイヴァー)とは、長い圧政の中、猟兵達が残した僅かな光を糧として立ち上がり始めた、ヴァンパイアへの対抗しようと動く者、あるいは圧政に苦しむ弱者を護ろうと動いている者、そんな一般人達が自称する名だ。
 彼らは猟兵達の事を認知し、信じ、尊敬している。
 『闇の救済者』とは、猟兵を讃えた称号でもあり、闇の世界に生きる弱者の、希望を象徴する言葉でもあるのだ。
「他の依頼で大きなヴァンパイアが倒されたんだろうな。逃げた者達が寄り集まり、力を合わせて暮らしている平和な村だ。そして、希望の有る村だ。」
 食べ物はギリギリだが、いつか来る奇跡を信じて、手を取り合いながら強く生きている。そして逃げ延びた他の者達の寄る辺になろうと、それぞれの村が、出来る限りの事をしている。

 そんな場所が、虫の空腹で更地にされる。
 案外、よくある光景なのかもしれない。この、光など無い世界では。
「……この依頼の初手で猟兵が出来る事は、三種になる。」
 とん、とそれぞれの村を叩きながら説明は続く。
「速度を活かし、何よりも速く第一の村へと辿り着き、村人の避難と誘導をする事。
 智略を活かし、二番目の村にて災禍を阻み、数を大きく滅する罠を張る事。
 力を活かし、三番目の村を襲うに至った蟲の嵐をさらに阻み、止める事。」
 そこまで言って、一度息を吐く。
「これだけだ。これだけだからこそ、上手く分かれて事に当たって欲しい。」
 地図には、村三つと周囲の様子が描かれている。
 三つ目の村から少し横に逸れた場所が赤い丸で囲まれており、そこを避難場所、そして猟兵の出発点とするらしい。

「これらが上手く行って、それでようやく、群れはただの群れへと成り果て、猟兵が掃える姿へと変わるだろう。
 それを、集まった猟兵全ての力でもって、叩き潰す。」
 決戦の場は第三の村。
 それぞれが全力で事に当たった後の戦闘である為、苦戦を強いられる事になるだろう。

「村は恐らく、再興が不可能なレベルで食い荒らされる。
 故に避難して来た者達は、新たに村を起こす必要がある。
 だから貴殿らには最後、その凡そ三百人が暮らしていけるだろう新たな村造りと、その整備を、手伝って頂きたい。
 勿論、直ぐに帰っても構わない。残ると言うなら一週間でも、一月でも、共に居よう。」
 全ての行程で猟兵がどれほど上手くやれたか。それによって彼らの今後の生活は決まっていく。
「上手く行けば、この村で救った闇の救済者の面々が、これから救われるかもしれない面々が、いつか来る戦争での大きな助力になる……かもしれない。」
 そうでなくとも、救ってくれそうな猟兵ばかりでは、あるけれど。

「なぁ……小さな子供が泣いている時、あるいは道端で迷う人間が居た時、何かしようと、思うか?あるいは、立ち止まり、その無事を願えるか?」
 そうなら、きっとうまく行くさと、太陽は柔らかに笑う。
 勿論、甘さだけでどうにか出来る問題では無いのだが。
「どうか、一人でも多くの者が希望と共に在れる様、彼らに力を貸して欲しい。」
 聖なる光を讃えたグリモアを展開させ、彼は祈る様に頭を下げた。
「武運を。そして、光を。」





第3章 日常 『明日を生き抜くために』

POW資材や物品の搬入や購入物資の運搬を行う
SPD我先にと購入しようごった返す人々の整理を手伝う
WIZ貧困に苦しむ人達のために少しばかり値切るか差額を払う
👑5 🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●そして弱者は、明日の朝日に夢を見る


戻って来た君たちは、きっときょとんとしただろう。

避難場所としていた場所は、何故か開拓が進んでいる。

木は伐り倒され、土は整備され、道は無くとも人が通り座れる場所があちらこちらに作られている。
火が灯り、その周囲で人々が休み、あるいは残っていた猟兵から指示を得ている。
被災したばかりだと言うのに、そこには活気があった。

最初の一歩は、此処を護っていた猟兵の行動だったのかもしれない。
このままでは、人々が落ち着いて眠れないからという。

けれど、それに続いたのは間違いなく、彼等だ。

それは切り替えの速さだったのだろうか。
それとも、何かしなければ変わらないのだと知っているからこそ動くのか。
なんにしろ、これが絶望の中でも足掻き続けていられた弱者の、強さだったのかもしれない。


戻って来た猟兵達の姿を見て、村人が仕事を放り出して駆け寄って来る。

「救済者様!救済者様!ご無事でしたか!!」

そこから先は早かった。
先ずは全員で、300人程が眠れる場所の確保をする為に、地面を整備した。
次の日には水を引く為に村人と怪力を連れて移動する組みと、家を造る為に木々を倒しバラす作業をする者とに分かれた。
勿論そこには、怪我をした者、心に傷を残した者、その痛みを癒す為に尽力する者の姿も見られた事だろう。

猟兵と『闇の救済者』を名乗る一般人には、街を造る為に必要な地図が二枚ずつ渡された。

一枚は、新しい村の図面だった。
ここから大きく逸れるつもりが無ければ、大体何をしても上手く村は動くだろう。

もう一枚は、周囲が描かれたマップだった。
材料や食物の確保に使えそうな場所、水や田畑を整備する箇所が、そこからはきっと読み取れるだろう。

まぁ、つまりは、猟兵達はしたいようにすればいい。
そのバックアップは、人々か、あるいは慣れた者がする。

ただそこに、彼らを助けたいと、救いたいと思う気持ちがあれば、最良かもしれない。



(※プレイングに記載してもらうと嬉しい事。①滞在期間。あるいは来る頻度。②ぼんやとした、したい事や行動指針(無ければ案内人が勝手に仕事を割り振ります。③この村に対する心情)

(以上の事は、書いてあってもなくても大丈夫ですし、どっちにしろアドリブは多くなります。)
(また、呼んで頂ければグリモアベースに立ってた金髪も出ます。愚痴や相談、ちょっと筋肉やギャグが足りねえ等、お好きにご活用ください。)
フルム・コラルト
【まるっと1年半ほど滞在】アドリブ・連携歓迎
生活を軌道に乗せられるよう手助け。

【滞在中UCで召喚したまま】
ひとつ、小さな傷から大きな怪我を含め、病魔に侵された人達の治療。ふたつ、住み慣れた村を離れざるを得なかった嘆きはあるけど、泣いたり笑ったりするのも大事。ごちそうを食べて力をつけるの。みっつ、不衛生なとこじゃ、気分も落ち込んじゃう。身近なとこから綺麗にするの。死骸なんかは危ないから、こっちで受け持つの。

【村での生活】
畑を耕したり、狩りをして日々の恵みを得る苦労を分かち合う。子供たちと駆けっこしたりかくれんぼ。小難しい事より遊びを通した方が生きる術が身に付きそうという考えがあったりなかったり。


「へ?救済者様は1年と半年も居て下さるんですか!?」

闇の救済者である村人の言葉に、こくり、とフルムは頷いた。
「みんなの生活が、うまく行くようになるまで、手助けするの」
けれど、闇の救済者の青年は問う。
「それは、我々としては大変嬉しいですが……」
周囲を見渡す。
此処には、何も無い。
いや、貧困はあるかもしれない。
娯楽は少なく、苦労は多い。
光は差し込まず、闇が覆う世界だ。
「救済者様にも、生活はあるでしょう?救うべき者も、居るのでは……」
この場所に、そこまで時間をかけてしまっていいのかと、青年は問う。

「いいの」
そんな青年の心配をよそに、フルムはまた頷いた。
「わたしは、みんなと過ごしたいの。」
静かな決意は揺らがない。
彼女の意志が強い事は、戦場を共にした青年にはよく解る。

数十秒の沈黙。
「……わかりました。」
青年は、頷き、でも、と言い難そうに言葉を足した。
「1年経ったら、猟兵としての力を使う事は、控えて下さい……我々が、その力に依存する事の無い様に。」
我々が、貴女の存在を同列と、決して見ない様に。

拒絶とも取れるその言葉に、フルムは少し考えた。
「……わかったの。でも、1年は、なにがなんでも全力で、サポートするの。それなら、いい?」
こて、と首を傾げて訊ねれば、青年は泣きそうな顔で、笑いながらその小さな手を取った。
「ええ、ええ!是非に!」
どうか我々を助けて欲しいと願われれば、答えは一つだ。

「もちろんなの。みんなで、わらうの」

さて、そうと決まれば人手が必要だ。
フルムは青年から離れると、限界まで息を吸い込んで、笛を思いっきり長く、長く吹き鳴らした。
高くどこまでも通る音が周囲に響く。
しばらくすれば、がさがさと草や枝が揺れ始める。

ひょこ、と白い耳が揺れる草の向こうに現れた。
「るぅ!」
「ぁおん!」
リーダーの笛に応じ現れた彼女らは、灰狼卿の信奉者、つまりはフルムの仲間達だ。

手に手に薬の入った壺や、鍋や箒、スコップなんかを携えて44もの仲間が集まった。
「この子たちも、一緒に、がんばるの」
ふんす、と胸を張る。

だから大丈夫よ。と
ここに光はあるのと、伝える様に。

「あぁ……ありがとうございます……救済者様、本当に、本当に……」
「ん」

すぐにはどうにもならないだろう。
世界は一日で造られた訳では無い。
全知全能な神様だって、穴だらけの彼の世界を造るのに、なんと七日もかかったのだ。

全知全能に程遠い、無力に近い生き物が集まって、新しい世界を作るのだ。
そりゃもう途方もない事なのだ。

「だからまずは、怪我した人や、病気の人を治すの。それから、ごちそうを食べて、力をつけて……周りを綺麗にして、みんなが元気に、明日を迎えるの。」
行く行くは一緒に畑を耕したり、狩りをしたり、子供達と遊んだり、そういう所から何かを一緒に学んだり、したい。
色々な事を、彼等と分かち合って、笑い合って、すごせる様になりたい。

けれど今は、出来る事からしよう。
それしかない。
最初の一歩は、いつだって小さいのだから。

「わたしは、フルム。フルム・コラルト」
救済者様、と呼び続ける彼らに名乗る。
これが、自分の名前だと。

「これから、よろしくお願いします。なの」

未だ少女である小さな狼は、そう言って新しい仲間に、ぺこりと頭を下げるのだった。
大成功 🔵🔵🔵