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邪神牧場

#UDCアース

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#UDCアース


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「先日は本当にお疲れ様。大変な戦いだったけど、皆のお陰で何とか事件を解決出来た」
 ありがとう、と虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)が話を続けた。ここはグリモアベースの会議室。長机とパイプ椅子の殺風景なセットが、非常事態の急拵え感を強調する。スクリーンには話にあった事件の概要が雑にまとめられた報告書が映されていた。

 事件とは先日起こったとある屋敷での殺人事件。その犯人が『黄昏秘密倶楽部』なる邪神信奉集団だった。事件の主犯はオブリビオン。討伐後に厳重に収容された筈だった。
「あの後坂東家――屋敷の住人の取り調べをしたんだけどな、まあ色々出るわ出るわ」
 当事者らへの取り調べを行った所、事の発端は事件が起こった屋敷の主が雇い入れたメイドが、屋敷の住人をオブリビオンに変えようとしたものだった。最初に殺害された被害者は、どうやらそのオブリビオンに誤って殺害されたらしい。それによってこの計画が明るみに出た訳だが、兎も角殺害された屋敷の長男も、ろくでもない事を企んでいた模様だった。殺害方法が溺死だったのも、何かに溺れたんだろうよと、志郎は続けた。
「で、その『黄昏秘密倶楽部』の目的は救済の名の元に戦力を整えて」
 その屋敷だけではなく、色々な所に手を伸ばしていたという。メイドを派遣していた家政婦事務所もダミーで、既に消息がつかめないらしい。志郎は溜め息をつくと、本題に入った。
「……戦力を整えて大規模テロを起こし、東京の制圧を行う事が目的だったそうだ」

 スクリーンに映る【黄昏への導き】なる一枚の布。ただの人でもオブリビオンに変えられる狂気物品、それを以って東京都民を須らく救済してやろうというのが『黄昏秘密倶楽部』の一部が企んでいた計画だったそうだ。
「だがまあ、こうやってテロは未然に防がれつつある。でだ」
 一つ咳払いをして、志郎は言った。最早やられてばかりではない。
「今回はこちらから敵のアジトを叩きに行く……これもまあ、この前の続きで」
 スクリーンに青髪の修道女が映る。収容されたオブリビオン【祈谷・希】だ。その死骸が突然姿を消した。だがこんな事もあろうと予め想定していたUDCの手によって、それには巧妙に発信機が付けられていた。UDCにはUDC、イカれたテクノロジーの産物らしい。
「そういうわけで、奴等の居場所は特定されている」
 場所は湾岸エリアの廃倉庫。がらんとした建物内には集められた【黄昏の信徒】達がわらわらといる。そして倉庫のどこかには消えたはずの【祈谷・希】がいる筈だ。UDCの手により作戦当日の人払いは完璧に行われる為、猟兵達は存分に力を振るう事が出来る。

「目的は敵勢力の殲滅だ。今度こそ終わらせたい。正面から全力でブン殴ってきてくれ」
 掌に拳を打ち付け発破を掛ける志郎。そしてニヤリと笑い、言葉を続けた。
「終わったら飯でも行こう。他人の金で食う焼肉は美味いぞ?」
 それじゃ、よろしく頼むと志郎は頭を下げた。


ブラツ
 日頃お世話になっております。ブラツです。
 今回は集団戦→ボス戦→焼肉戦の三段階になります。
 信者はだぁれ?(id=1000)の続編になりますが、
 前回の話を知っておく必要は全くありません。
 今回、敵方に一般人は既にいない状況からの開始となりますので、
 避難やら探索やらは必要ありません。
 小細工は一切ありませんので存分に力を振るって頂ければ幸いです。
 プレイングは幾つかまとめてお返しする形が多くなると思いますので、
 単独での行動を希望される方はご一筆頂ければ幸いです。
 よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『黄昏の信徒』

POW   :    堕ちる星の一撃
単純で重い【モーニングスター】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    神による救済の歌声
自身に【邪神の寵愛による耳障りな歌声】をまとい、高速移動と【聞いた者の精神を掻き毟る甲高い悲鳴】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    黄昏への導き
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自身と全く同じ『黄昏の信徒』】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 廃倉庫とはいえ3階建てのかなり巨大な建造物だ。外の非常階段は朽ち果てて使い物にならず、屋上から降下する事も可能であろうが、下手にヘリコプターなどで近付けば降下中に攻撃を受ける可能性もある。
 正面シャッターは閉じており、その横に人一人が入れる程度の通用口が。窓は無く、中は完全に見えない状態。蔦状の植物がびっしりと壁面を覆い、入り口近くの駐車場も雑草まみれで車両をまともに止められる様な場所は無い。
 傍目からはどう見ても無人の廃墟であるが、何故か空調だけは生きている。エアダクトから止めどなく廃棄されているのだ。つまり電気は通り、内部の空調が生きている環境である事が推察される。

 この中に黄昏の信徒が所狭しといるのであれば、どれほどの悍ましい状況だろうか。
シズホ・トヒソズマ
使用技能【挑発1誘惑1目立たない1カウンター1武器受け1】
テロなどとはヒーローとして決して見過ごすことはできませんね!
ここで一網打尽にし、未然に防がねば!

今回もUDC職員の方から着用者を募ってから参加ですね。

敵集団前に飛び出て、【挑発1・誘惑1】で誘い込みからくり糸を自身に巻きつけたまま【武器受け1】しつつ無敵城塞を発動し、敵の滅多打ちを受け続けます

「あっ、ボコボコにされるのもまたなんとも……なんて、ね。生憎ここで時間を弄してもいられないのです」
集まっていた敵達を、【目立たない1】で潜伏させていたアイアンメイデン人形で【カウンター1】し、トゲだらけの蓋で一気に挟みこみます



●黄昏の信徒を倒せ

 UDC職員の瑞穂・仁美は何の変哲も無い、無力な人間である。しかしいつかは亡くした家族の仇を取る為、猟兵の様にUDCを自らの手で葬りたいと願っていた。その願いは今、叶えられる事となる。
「力が欲しければ、差し上げますわ」
 紫色が誘惑する。力を授ける為に。
「大丈夫、痛みは一瞬でちょっとくすぐったいだけですから」
 仁美は承諾する。力を得る為に。

 倉庫内には生気を失った顔色の悪い沢山の人間がフラフラと歩いている。特に施設で何かをしている風でもなく、全員が奇怪な文様の入った大きな布切れを外套の様に肩から掛けていた。この者達が恐らく『黄昏秘密倶楽部』信徒だろう。
 ばぁんと突如開け放たれる入り口。一斉に振り返る信徒達の前に、白い光を背後に紫のボディスーツを纏った一人の女が飛び込んだ。
「テロなどとはヒーローとして決して見過ごすことはできませんね!」
 シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)、紫の力を手にした仁美の姿だった。何故か全身を糸で巻き付け自身を拘束している。
「あなた達の教義は羨まし……いえ、悍ましい所業です!」
 ビシィ! と名乗り口上を告げ、あたかも信徒の様な事を口走りそうになるが、そこはヒーロー、何とか持ちこたえる(心が)。その姿を見た信徒達がぞろぞろと、奥の方から入口へと集まってきた。
「え……ちょ、こんなに一杯」
 奇怪な外套を頭から被ると、その姿が変容していく。薄汚れたぼろ切れを纏い、無表情の仮面を被る。手には歪な鉄球が。『黄昏の信徒』達が真の姿を現した。

 信徒達はシズホを囲む様に近づく。そして手にした鉄球を無言で打ち続けた。続けざまの攻撃で入り口は塹壕めいた大穴だらけになる。その一撃は到底人間が耐えられるようなモノでは無かった。そう、人間であれば。
「あっ、ボコボコにされるのもまたなんとも……なんて、ね」
 シズホは絶え間なく打ち続けられる鉄球を全て受け切った。【無敵城塞】……己の自由と引き換えに、超常の防御力を手に入れるその力は、信徒の怪力すら無効とした。
「その悪しき行いに、裁きの鉄槌を」
 簀巻きの様に拘束されたシズホが指先だけをクイと動かすと、信徒の頭上から巨大な拷問器具が、振り子の様に物凄い勢いで襲い掛かる。突入時に隠していたアイアンメイデンと呼ばれる人形型拷問器具だ。棺のような形状に人間の頭部を模した顔飾りが付く。正面の蓋の中には鋭利な凶器がそこかしこにあり、それが信徒達を次々と飲み込んだ。
「生憎ここで時間を弄してもいられないのです」
 しゅるりと己を拘束していた糸を解く。手を上げると、無残にもアイアンメイデンの中から解体された信徒だったものが姿を現した。

成功 🔵​🔵​🔴​

最上・空
【WIZ】
さすらいの美幼女参上です!
他人のお金で高級肉やA5和牛を食べ放題と聞いて飛んで来ましたよ!

空は倉庫の入口に陣取り、「高速詠唱1」で【ウィザ-ド・ミサイル】を片っ端から連射して一気に頭数を減らし、倒れた敵を操る暇など与えませんよ!
ちなみに他に参加者が居る場合は誤射に用心しますよ!

接近された場合は「属性攻撃4」&「衝撃波1」で炎の衝撃を飛ばして、敵を吹き飛ばしてみます。

「焼肉の為に奮闘する美幼女推参です!」
「ふっふっふ! 入口は抑えたのですよ! 袋の鼠です!」
「美幼女力全開です! 片っ端から爆散して下さいよ!」
「美幼女にはお触り厳禁ですよ! 吹き飛んで下さい!」


ティアリス・レイン
空を飛ぶ相棒の小竜に【騎乗】して両手斧を肩に担ぎます。
「ここにわるいひとがいるんだね?」
「よし!がんばろ、ユーちゃん♪」

あいてのこうげきは小柄なティアとユーちゃんの身軽さを活かして回避するよ!
「ユーちゃん、よけて!」
てきを同士討ちさせるように間を潜り抜けるよ!
「そんなにふりまわすと、みんなぶつかっちゃうよ?」

こっちからもおかえしとばかりに、【怪力】で戦斧を振るって【グラインドクラッシャー】をはなつよ!
「ごーらい、いっせん!」

あいてのこうげきがよけられないときはこっちも【捨て身の一撃】の【グランドクラッシャー】をぶつけるよ!
「ユーちゃん、ちょっとがまんしてね!」



「ふっふっふ! 入口は抑えたのですよ! 袋の鼠です!」
 穴だらけになった入り口に、一見場違いなブレザースタイルの幼女がスラリと現れる。腕には『美幼女』と書かれた腕章が。
「焼肉の為に奮闘する美幼女推参です!」
 最上・空(美幼女・f11851)が可愛らしく飾ったロッドを振りかざし、信徒に向かって雄々しく吼えた。

 ロッドと指輪が激しく輝き、周囲に魔力の弾丸が顕現する。【ウィザード・ミサイル】――炎を纏ったその威力は、振り下ろされたロッドに合わせて、わらわらと殺到する信徒達へと放たれた。
「美幼女力全開です! 片っ端から爆散して下さいよ!」
 吼える幼女、爆ぜる信徒。飛び交う無数の弾丸が辺りを更に地獄めいた様相に変えていく。幸い生きてる空調が徐々に煙を外へと吸い出していくが、今度は晴れた煙に合わせて信徒達が、炎を操る幼女へと殺到した。
「美幼女にはお触り厳禁ですよ! 吹き飛んで下さい!」
 事案になるぞと言わんばかりに、炎の猛威が信徒達を襲う。空の指輪から放たれる炎を纏った衝撃波に、吹き飛ばされた信徒は纏った『黄昏への導き』ごと燃やし尽くされる。
「さあ、お前らの罪状を並べたてるのです!」
 空は止まらない。焼肉の前に全ての悪を焼き尽くす。これだけ暴れれば入り口の先の警備も大分緩くはなるだろうと、全力の爆炎で並居る信徒を次々と消し炭に変えていく。
 弾丸と衝撃の二重奏が、あらゆる悪意を焼き払ったのだった。



「ここにわるいひとがいるんだね?」
 ティアリス・レイン(小竜に乗る妖精騎士・f12213)は入り口の喧騒をひっそりと抜け出し、相棒の竜槍たるユーちゃんに跨り、更に奥へと進んでいた。先程から湧いて出てくる異形の信徒に嫌悪感を覚えながらも、それを振り払わんと勇気を胸に、悪の根源を目指して進む。
「よし! がんばろ、ユーちゃん♪」
 ティアリスの励ましにこたえる様に、ユーちゃんは小さく吠える。幸い敵に見つかっておらず、しばらく続いた通路を抜けると、一際大きな間取りの部屋にたどり着いた。
「ここはおおきなおへやだね……なにかあるかも」
 小さな体躯を器用に使い、部屋の扉をそうっと開ける。少しだけ空いた隙間に、ユーちゃん共々ひっそりと忍び込んだ。

 庫内は狂っていた。
 何かの薬品を飲み倒れる人間達。
 倒れた人間に被される『黄昏への導き』
 導かれた人間は『黄昏の信徒』となる。
 オブリビオンによる浸食、最早人間の所業ではない。

 信徒はそのまま、奥のケージの様な区画へと押し込められていた。
 まるで異形の牧場みたいな、異様な光景だった。
 その中では信徒同士が奇声を上げ、殴り合っている。
 『黄昏秘密倶楽部』の教義の通り、お互いを赦しあっているのだ。

「こんなの……おかしいよ!」
 ティアリスは内に湧き上がる名状し難い衝動に突き動かされ、信徒の真っ只中へと飛び込んだ。不意に現れた妖精騎士に戸惑う信徒達を尻目に、ティアリスはその感情を思い切り威力にのせた。
「ごーらい、いっせん!」
 放たれる【グラウンドクラッシャー】――さながら急降下爆撃機の様に鋭い角度で落ちながら、手にした妖精の大斧は狂気の現場をぶち壊す暴風と化す。
 直撃した地形が原形を留めぬ程に破壊され、それに巻き込まれた信徒が無残にも息絶える。

「ユーちゃん、よけて!」
 仕事を邪魔され怒ったのか、信徒が手にした鉄球をティアリスに向かって投げつける。紙一重の機動で危うく回避するも、信徒の鉄球は間断無くティアリスを襲った。
「しつこいなぁ……ユーちゃん、ちょっとがまんしてね!」
 群れる信徒達の直上、ユーちゃんは再び飛翔する。空を裂く甲高い音が辺り一面に響き、その影に無数の鉄球が殺到する。
「そんなので、ぜったいにとまらない!」
 反転、再度の急降下。捨て身の突撃で迫る鉄球を避けつつ、二度目の【グラウンドクラッシャー】――轟雷一閃、真下の異形の一群はその一撃で跡形も無くなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ティアリス・レイン
・台詞や演出等のアドリブ歓迎!

戦いの中で、彼女の正義が、悪を憎む心が、真の姿への目覚めとなる。
体が光に包まれ10代後半の姿へと変化し、身長が人間と同サイズに巨大化する。
「もう手加減はなしだ。全力で潰させてもらうぞ」
相棒の竜をドラゴンランスへと変形させて構えます。

敵の攻撃は【見切り】【残像】で回避。
「遅いぞ」
囲まれたら妖精の羽で【空中戦】で飛び距離を置く。
「甘いぞ」
反撃に槍を【投擲】敵を【串刺し】にすると同時に【ドラゴニック・エンド】によるドラゴンブレスの炎【属性攻撃】で纏めて攻撃。
「纏めて、吹き飛べ」

槍を手放したあとはミーちゃんをロッド形態にして【全力魔法】の雷で纏めて薙ぎ払う。
「目障りだ」



 廃倉庫 2階――

 相棒のユーちゃんに跨り上へと進んだティアリス・レイン(小竜に乗る妖精騎士・f12213)の目の前には、先程とは異なる凄惨な現場が飛び込んできた。
 逆さ吊り、水責め、火炙り、針の筵、鞭打ち、爪剥ぎ……
 行為に及ぶ者も、受ける者も、共に恍惚の表情を浮かべる姿は、一様に喜びに溢れている様であった。

 最早声にもならない奇声が部屋中に響き渡る。階下まで聞こえなかったその音が嘘の様な、惨たらしい拷問。いや『赦し』の数々。
 ここで心身共に蹂躙された者達が、階下の薬物と狂気の布で『救われて』いたのだ。
 まるで恐怖を食み、狂気を育てる、邪神の治める狂った牧場。
 そして育てられた信徒達が、その狂気を胸に無辜の民を『救済』する未来があるという。

「こんな……こんなのって……」
 許される筈が無い。
 眼前の地獄に、ティアリスの正義が、悪を憎む心が、真の姿への目覚めとなる。
 眩い光が辺りを照らし、その輝きの中でティアリスの身体は人間の少女の姿へと変化した。ただ一つ違うのは、その背に輝く羽根がある事。
 突如放たれた閃光にどよめく信徒達。煌めく光が消えた中、正義の妖精騎士が顕現する。
「もう手加減はなしだ。全力で潰させてもらうぞ」
 勇敢な相棒は獰猛な竜槍へと姿を変え、ティアリスの手に。
 正義の体現者がその槍を構え、力強く前へ進んだ。

 狂気の体現者たる信徒達は己が身の外套を被ると、次々に『黄昏の信徒』へと姿を変える。言葉が通じぬのは最早分かり切った事。妖精騎士はそんな姿を一瞥すると、間近の敵へと駆け出した。
「纏めて、吹き飛べ」
 飛び交う鉄球を竜槍で払い飛ばし、返す刃で投げ放つ。その投擲で貫かれた『黄昏の信徒』が、ティアリスの言葉と共に爆発四散する。消え去った信徒の頭上には、呼び出されたドラゴンが。
「これが許しだ、悔い改めるといい!」
 轟音と爆炎。ドラゴンが放つ裁きの炎は、瞬く間に間近の信徒達を飲み込んだ。

 ひたりと背後から信徒が近寄る。その手には鉄球、槍を投げ放ったティアリスに一矢報わんと救済の手を伸ばす。しかしそれは届かない。潰した姿は残像、既に回り込まれた背後から大斧の一撃で頭をかち割られ、振り返り様に抜かれた魔剣が、取り囲んだ信徒達を薙ぎ倒す。
「目障りだ」
 冷たく言い放ち、大斧を足元に突立て飛翔する。そして取り出したるは雷を秘めた妖精の魔杖。
 離れて囲む信徒達を一睨みし、その杖を頭上へと掲げた。
「文字通り、黄昏に還してやる」
 轟雷一閃、視界に入る有象無象の信徒達は、妖精騎士の裁きを全身に浴び、今度こそ絶命した。

 幸い、教義執行の為に建物の作りが強化されていたらしい。これだけの戦闘でも終ぞフロア自体が崩れる事は無かった。
 人である事を捨てたオブリビオン、しかしその罪の禍根はここには無い。
 災厄の根源は何処か、ティアリスは頭上に感じる悪意を一瞥すると、再び前へと進み始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シズホ・トヒソズマ
使用技能【フェイント1操縦1】
大分数が減ってきましたね…では、引きつけぼこられ作戦はここまで!
ここからは一気に攻めに転じますよ!

加速同調・疾走人形でからくり人形をバイク型に変形し騎乗、
【操縦1】で巧みに操り、圧倒的機動力で敵にぶつかったり撥ねたりしていきます!【フェイント1】により、急加速や急転換で敵を翻弄

「このバイクの元はアイアンメイデン。ならば、このような武装もあります!」
サイドを展開し、トゲだらけの蓋から敵群目がけてトゲのミサイルを一斉発射し、一網打尽にします

「あぁ、座る所にもちょっとトゲが来てしまうのが良……こほん、難点ですがね。さあ、このままかっとばしていきますよ!」



廃倉庫 3階――

 顔面の様なレリーフを正面に掲げ、猛獣の爪の様に鋭く伸びたカウル、その周りには刺々しいスパイクが無造作に生えていた。正に走る処刑装置と言わんばかりの威容。獰猛な排気音を響かせてシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は一足早く、【加速同調・疾走人形】で姿を変えた愛用のからくり人形に跨り、シートに少々の喜びを感じながら3階に到着した。
 まず目に飛び込んできたのは、凄惨な2階とは打って変わって、中央に鎮座する瀟洒な造りの神殿めいた小部屋だった。その周囲にはこれまでと同じく、仮面を被った『黄昏の信徒』達。
「大分数が減ってきましたね……」
 明らかに下の階より人数が少ない。ならば、ここからは攻めに転じる。シズホはフルスロットルで眼前の信徒達を轢き飛ばす。ぐちゃりと姿を変え、息絶える信徒。最高速に達したマシンは壁際で急制動、そしてターン。フロアに黒い円弧が刻まれ、暴力的な排気音を響かせながら、マシンは再び全力で疾走する。処刑装置たるアイアンメイデンはその姿を変えても、本分を果たさんとフロアを駆け続けた。
 余りにも凶悪なそのライダーに信徒達は距離を取る。同時に悍ましい奇声を畳みかける様に放ち、その怪音はシズホのマシンを蝕んでいった。
「ああっ! もう少し浴びていたい所ですが、正義の執行の為には止むを得ません」
 嬌声を上げるシズホは名残惜しそうに、レバー上の禁断のボタンに指を掛ける。
「このバイクの元はアイアンメイデン。ならば、このような武装もあります!」
 カチリとスイッチが入る。瞬間、サイドのカウルが跳ね上がり、中から無尽蔵の痛々しい棘状誘導弾が一斉に発射された。その棘は距離を取って逃げる信徒を片っ端から追い詰め、一人、また一人と拷問の餌食としていく。顔面を抉る様に、腹部を貫く様に、走ろうが加賀網がお構いなく、無慈悲な処刑装置は逃げる異形を一人残らず片づけた。
「これで終わりですね。では、あの神殿の中を……」
 ひたりと悪寒がシズホの背を走る。否、これは快感か。
「まだいらっしゃるので……え」
 頭上を見上げたシズホの瞳には、逆さになって蠢く信徒の群れが、天井を埋め尽くす様を映し出していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アララギ・イチイ
依頼内容は……きゃはぁ、皆殺しねぇ
何人殺せるかしら、何人喰らえるかしらぁ♪

UCの香名・狂悖暴戻の香りを漂わせながら内部に侵入するわぁ
この香りを嗅いだ連中の効果対象にならない様にゆっくり歩く様にしてねぇ
私自身は事前に(毒使い)の能力で効果対象にならない様に解毒剤の服用、遠くまで香りが伝わる様に香りの濃度は濃い目にしてねぇ
香りを嗅いだ連中の楽しい出来事(仲間内での惨劇)が途中で見学出来る様なら動かず見学、全ての事が終わったなら正気に戻してカタナでバッサリよぉ

反撃や奇襲は警戒、(見切り)やシールドビットでの(盾受け)対応出来る様にしておくわぁ
美味しそうな信者なら喰らってしまいましょうかぁ(


ティアリス・レイン
・台詞や演出のアドリブ歓迎です!

真の姿である大人の状態のまま、次の敵を探して【空中戦】を挑む。
「これで最後、だといいんだがな」
苛立つように【竜装天鎧】を使用します。
「……いくぞ、二人とも」
ドラゴンランスとエレメンタルロッドが変化し、それぞれ鎧とドレスとなり体に装備され、まさしく戦乙女のような姿になります。
「安心しろ」
魔剣を封印の鞘から抜き、静かに構えます。
「すぐに終わる」

敵の攻撃を【見切り】【怪力】と魔剣で【武器受け】し、そのまま炎と雷を纏った【属性攻撃】の刃で【捨て身の一撃】【鎧砕き】敵群を【なぎ払い】ます。
「邪魔だ」「避けるまでもない」
最後の敵を【突き刺し】
「すまない。遅くなってしまった」



 頭上を埋め尽くす異形の群はじっくりと得物を品定めする様に、鎌首をもたげて奇声を上げる。その姿は悍ましい虫箱の中身の様。
 ぎちぎち、けたけたと不快な音を響かせながら、それらが地面に降り立とうとした刹那、一陣の風が天井を吹き抜けた。
 血飛沫を噴き上げながら、ぼとり、ぼとりと落下していく信徒ら。
「すまない。遅くなってしまった」
 ぱしん、と。風を纏った槍が主の手元へ。宙を舞うティアリス・レイン(小竜に乗る妖精騎士・f12213)が双眸に怒りを灯し、ふわりと裁定の間に降り立った。

「これで最後、だといいんだがな」
 ティアリスが天井を眺め呟く。未だ蠢く信徒達は、一人一人、天井から器用にも細長い両手両足を使って潰れた蛙の様に着地する。立ち上がり手にするは、じゃらりと伸ばした異形の鉄球。
「……フン。いくぞ、二人とも」
 一瞥し、呪文を唱えるティアリス。合わせて手にした槍と魔杖が再びその姿を変化させた。【竜装天鎧】――竜の力が顕現した力ある鎧と、精霊の力が顕現した慈愛の衣。
 二つを纏いしその姿は金髪の戦乙女、白磁の様な美しき神話の姫騎士たる絢爛武闘。煌々とティアリスから放たれる眩い輝きが、荒ぶる信徒達を怯ませた。
「邪魔だ」
 スラリと腰の魔剣を抜く。先程の様な居合抜きではない、精神を蝕み続ける凄まじき魔剣を片手に、ティアリスは異形の群れへと吶喊した。

 異変はその頃から、あるいはもっと前から起こっていた。
 異形は仮面の中からどす黒い体液を噴出させながら、ティアリスを迎え撃つ。その一撃一撃が、これまでとは比べ物にはならない重い威力を持っていた。
(奴等が変異しているとでも……)
「まあいい」
 すれ違い様に胴を抜かれた信徒が真っ二つに両断される。手にした鉄球は轟音を響かせあらぬ方向へ。その一つが、突如爆ぜた。
「あはは、何か面白い事になってるぅ……!」
 毒の香りを纏わせて、ゆらりとアララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)が姿を現した。爛々と金の瞳を輝かせながら、ティアリスとそれに群がる信徒を眺める。【香名・狂悖暴戻】――嗅いだものの正気を狂気に、暴走と凄まじき力を付与する禁断の業。怒れる姫騎士と逝かれる信徒、飛び散る暴力の破片はアララギにも降り注ぐが、それらを身の回りに浮かばせた砲台で、さも面倒くさそうに払っていた。
「所でさ、あなたはどうしてそんなに普通でいられるのかしらぁ?」
 香気で盛る信徒を捌き、断ち、払うティアリスに、珍しいモノを見る様に質問する。
「私の香りが届いてない訳じゃないでしょお?」
 鉄球、血飛沫、肉片、仮面……暴力の渦中に身を置く事も無く、腕を組んで睥睨するアララギ。全身の浮遊する銃火器は、戦地を蹂躙するガンシップの如く、飛び掛かる火の粉を倍の火力で焼き尽くす。
「香りだと……ああ、これか」
 駆動するモーター音が奇声をかき消し、炎と雷を纏った神速の魔剣が血の海を深くする。
「三つ目の戦場だぞ。とうに咽る血の匂いで、十分に滾っているわ」
 制御された暴走、ティアリスの五体は既に度重なる戦いで十分に威力を漲らせている。それは最早、これ以上の魔法の力を借りるまでも無い。
 邪魔だ、と言わんばかりに殺到する異形の群れを薙ぎ払い、届かぬ敵には魔力の剣風をぶち当てる。
「あはは、別に不感症じゃあないのね! 凄いわ! 凄い!」
 アララギが嬌声を上げる。そうか、私とは別の意味で、私と同じだ! と。
「あー……もう十分。何か痩せぎすで不味そうだし、もういっか」
 ティアリスの雄姿に満足し、アララギはぱちんと両手を鳴らした。途端に、血気に逸った信徒達が突如その動きを止める。呆然自失、威勢よく振り回された鉄球は地面に落ち、夥しい奇声の合唱も聞こえない。力なく項垂れる信徒を前に、アララギの周りに全ての武装が展開する。
「おしまい」
 言うが早く、アララギの機関砲が、連装砲が、擲弾銃が、大剣が、攻撃端末が、その場の残りの信徒を全て、赤黒い染みへと変えていった。

「今回の依頼は皆殺しぃ。これにて一件落着……」
「じゃないわ」
 ニコニコと手を叩くアララギの背後から飛び掛かる最後の信徒を、逆手に持った魔剣で突き刺す。
 すれ違い様の影からティアリスに迫る最後の信徒を、居合抜きで両断する。
 語るまでも無い見事な連携。お互いの背後の敵を、それぞれの剣が切り伏せた。
「皆殺しなら、まだ一人」
 絶命を確認、血振りして納刀する二人。その視線の先には神殿めいた小部屋が。
「しみったれた焼肉屋ねぇ」
 アララギは最後の獲物を食らわんと、べろりと舌なめずりした。

 そして、神殿の扉が開かれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『黄昏色の啓蒙』祈谷・希』

POW   :    苦痛を受けよ、精神を死へと返せ。救済の日は近い
自身が装備する【『黄昏の救済』への信仰を喚起させる肉輪 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    黄昏を讃えよ、救済を待ち侘びよ
【紡ぐ言葉全てが、聴衆に狂気を齎す状態 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    痛みと苦しみが、やがて来る救済の贄となる
【瞳から物体を切断する夕日色の怪光線 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は火奈本・火花です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 【祈谷・希】
 数十年前の失踪後に不明な手段で自らを『黄昏の救済』の眷属化した可能性。
 狂気性と神格を備え、儀式の陣頭指揮を執っていた記録。
 オブリビオンによる再現、儀式の実行、黄昏の救済。
 嗚呼、これだけの魂が救われた、赦された、であれば――



 神殿めいた小部屋から青髪の修道女が現れる。
『こんなにも沢山、救済は為されました』
 するりと、身に纏う衣服を地に落とす。その中身は乙女の柔肌などでは無い。
 凄惨な拷問の跡、最早原形を留めぬ何か。嗚呼、これが『黄昏の救済』
『では続きは私が――』
 空間が軋む、色が無くなる、形が失われる。
『アナタ方を救済致しましょう』
 声と共に現れたのは、顔と首一つと化した、醜悪なオブリビオンだった。
シズホ・トヒソズマ
「ある種、深い所では私達は似た者なのかもしれませんね。ですが、テロを為すなら決して相容れません。それによって奪われた物、もたらされて失う人々、その想いを私達は背負って戦っているのですから。今私と共にいる方もそうと聞きました。ですから、貴方がこれ以上奪う前に、ここで貴方を倒します!」

【挑発1・誘惑1】で攻撃を誘導、もしく敵がSPDユーベルで早く動く物に無差別攻撃の状態になったら素早く動き攻撃を誘導、オペラツィオン・マカブルで受け、攻撃をユングフラウから折谷に返します

「因果応報。これまで与えた痛み、そして与えようとした痛み、幾分かでも味わえましたか?」


美星・アイナ
※アドリブ、他PCとの連携歓迎

おいでなさったね、元凶
アンタに救済される覚えは無いんでね
可及的速やかに退場願いましょうか(不敵な笑み浮かべ)

ペンダントに触れてシフトする人格は
法の目掻い潜る闇を狩る執行者
『人はそれを救済と呼ばねぇ・・・救済の名を借りた虐殺、今ここで終わらせてやるよ』

レガリアスシューズで【2回攻撃】の【踏みつけ】
【地形の利用】を駆使して縦横無尽に動きながら黒剣で斬撃

同時にユーベルコード詠唱開始
詠唱完了に合わせて黒剣を大鎌形態に変形
青玉の矢の軌道を追うように飛び出し、全力で横薙ぎに【なぎ払い】

青玉の雨と死を告げる刃のコラボレーション
感想はアンタの死に様で聞かせて貰うとしましょうか



「ある種、深い所では私達は似た者なのかもしれませんね。ですが」
 シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)の瞳に、先程までの恍惚は無い。あるのは怒りと、悲しみ。
「テロを為すなら決して相容れません。それによって奪われた物、もたらされて失う人々、その想いを私達は背負って戦っているのですから」
 痛みとは生きる事を再認識させる。それは喜び、生命賛歌。しかしシズホと祈谷の間では、絶対に相容れぬ境界があった。
「今私と共にいる方もそうと聞きました。ですから、貴方がこれ以上奪う前に」
 生命を感じる事と生命を辱める事は同義ではない。そうあってはならない。
「ここで貴方を倒します!」
 仮面の戦士は己が生命を賭し、歪んだ教義を正すべく、先陣を切る。

「おいでなさったね、元凶」
 美星・アイナ(インフィニティアンロック・f01943)の純粋な憤怒は、彼女と彼女達のモノ。
「アンタに救済される覚えは無いんでね。可及的速やかに退場願いましょうか」
 そっとペンダントに触れる儀式。私と私が入れ替わる。熱い戦士は冷酷な執行者に。
「人はそれを救済と呼ばねぇ……救済の名を借りた虐殺、今ここで終わらせてやるよ」
 静かに放たれたその殺意が空間に染み渡った時、戦端は開かれた。

 これで全て終わりにしましょう。全てを、救いましょう。
 祈谷の紡ぐ悍ましい祝詞と共に、その双眸から夕日色の破壊光線が放たれた。その光条が触れる物は一切合切容赦無く、救済の名の元に破壊される。
 アイナはそれを紙一重で回避した。同時に、自身が立っていたフロアが文字通り底抜けとなり、階下の漆黒に瓦礫が飲み込まれていく。
「大したもんじゃねえか……だがな!」
 光線を飛び越え、Shadow Dancerが放つ星の煌めきが空間を彩る。その先には祈谷の醜悪な顔面が。一撃、二撃と暴風の如き踏み付けが頭上を砕く。
 しかしそれすらも意にも介さず、頭を振ってアイナを振り落とした。
「ハッ! 中々ノリはいいようだな!」
『アナタ方は救われなければなりません』
 冗談……! 手にしたDeathBladeを長く撓らせ、祈谷を追撃する。顔面を舐める様に削りながら、アイナは崩れた瓦礫に身を隠しつつ、致命の機会を伺った。

 それに合わせる様に、シズホが渦中へ舞い降りる。手にしたバスタードソードを祈谷へ向けて投げつけ、攻撃を己に向ける様に堂々と口上を述べた。
「祈谷・希、貴女の救済は救済に非ず。人は一人一人違うもの、それを纏めて一括りに同じ赦しだなんて、救いとは呼べません!」
『いいえ、救いです。個が全へ集合する、その過程の教義の実践こそが私の務め』
 己の教義を証明せんと、祈谷は再び新たな悍ましい祝詞を上げる。
 ぐるぅ ふつら いぐぅあ えあ!
 ぐるぅ ふつら いぐぅあ えあ!
 狂気の教義に合わせて、信徒だった肉塊の群れがふわりと、そして疾風の様にシズホへ殺到した。
 シズホは更に加速し、襲来する肉塊を避け続ける。しかしそれこそが狙い。
 ふと、その場で力を失ったように倒れる。好機とばかり、肉塊はシズホを押しつぶさんとその数を更に増やす。だが、その圧は処刑人形が一飲みにする。
「機は熟した、行きますよ」

 懸糸傀儡処刑人形、ユングフラウ。シズホは鋼鉄の乙女を、その手から放たれる無数の糸で自在に操り、祈谷の眼前へくるりと放った。
 その動きに同調し、今度はアイナがシズホに合わせる。致命の機会、ユーベルコードの詠唱は既に済んだ。後は威力を放つだけ。
 瓦礫の中から姿を現し、祈谷に相対する。お前の音痴は聴くに堪えない、私の歌を聴け。
「悲しみの雫達よ、蒼穹に集え!汝らの振り積むその想い、我が冷たく蒼い雨に変えて闇に放とう……さあ、蒼の雨の中で貴様の罪を数えな!」
 【罪を穿つ青玉の雨】――ふわりと巻き起こる幾千もの青玉の矢が祈谷へ放たれる。同時に手にしたDeathBladeを大鎌に変え、突進。
 そして殺到する数の暴力と挟み込むように、ふわりと反対へユングフラウが舞い降りる。その蓋が開かれた時、先程の地獄が再び姿を現した。

 両側からの暴力に圧倒された祈谷は、その耳障りな祝詞を止める。仕上げと言わんばかりに、アイナの大鎌がそのヴェールを切り裂いた。
「因果応報。これまで与えた痛み、そして与えようとした痛み、幾分かでも味わえましたか?」
 ユングフラウを手元に戻し、シズホが祈谷を弾劾する。
 我らはその手を緩めるつもりはないと、強い意志を現しながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アララギ・イチイ
うーん、これ(ボス)喰えるのかしらぁ?
見た目は珍味ぽい感じぃ

面倒な言葉を紡ぐみたいだから、(毒使い)の毒で自分の聴力に(マヒ攻撃)しておくわ、難聴気味?になるから周囲はいつも以上に警戒よぉ
念の為、シールドビットで即座に(盾受け)出来る様にしておくわぁ

装備は(武器改造)の技能で砲身+砲機関部+動力炉を合体させた武器を使用するわぁ(名称は重魔力砲
(早業、高速詠唱)の技能で動力炉を高速チャージ(力溜め)して、砲身から連続砲撃(2回攻撃・援護射撃)よぉ

砲戦距離を維持する様に移動しつつ、主砲・集束砲撃の方もチャージ開始ぃ
こちらは今回は発砲せず、限界までチャージよぉ(次のプレで発砲予定、機会があれば、だが


霑国・永一
やぁ麗しい修道女さん。この世界らしく狂っていて何よりだよ。

さてSPD重視でオルタナティブ・ダブルを使うとしようか
別々の方向から分身とタイミング合わせ、時にずらしてダガーで刺していこうかな。
相手が理性失ったのを確認したら手持ちの石ころとかを自分と分身とは別の方向に素早く投擲して、敵が其方に意識を割いたらダガーで刺してヒット&アウェイ繰り返そう。【だまし討ち】【暗殺】も駆使しつつね。
他の猟兵が居るなら仲間の危険時に意識逸らすために投擲する以外では投げずに隙見て刺してく感じで。
攻撃時に相手が武器扱ってるなら【盗み攻撃】【盗み】駆使して奪っておこう。そのまま外か自分より遠くにぽい。隙晒すなら追撃するよ



「うーん、これ喰えるのかしらぁ?」
 アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)は眼前の狂気を前に、独り言ちる。
 彼女にしてみれば、この狂気が己が糧に相応しいか否か、その品定めの時だ。
「やぁ麗しい修道女さん。この世界らしく狂っていて何よりだよ」
 ゆらりと、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)が現れる。
 彼も同じく、獲物を狙う流浪の盗人。そしてギラリと光る眼の奥には、深淵にも等しい狂気を内包していた。
「何あなた、後から来て私の獲物を横取りする気ぃ?」
「違うそうじゃない。俺が欲しいのは魂じゃなくて、アイツの大事なモノなわけで」
 軽薄に追及を躱す永一、アララギはその様子を訝しみながら、先手を打つ。
「それじゃあ私が何をしようと、文句は無いわねぇ?」
 ひゅん、と。アララギは影も残さず疾駆した。
「忙しないね。それじゃ俺達も行こうか」
 応と、内なる声が答える。永一もダガーを片手に、眼前の渦中へと飛び込んだ。

 先程までの攻撃を受けて、祈谷の全体は幾分かくたびれた様子を見せていた。しかしその猛威は変わらず、多少砕けた頭上と裂けたヴェールを気にも留めずに、猟兵達へ次の威力を放とうとしていた。
「そんな怖い顔しないでさぁ、一緒に遊びましょう……よぉ!」
 神速で飛び出したアララギの周囲には、己が装備する銃火器がふわりと浮かんでいる。だがそれらが火を噴くわけでもなく、パズルの様にそれぞれが組み合わさっている最中だった。
『わざわざお越し頂きありがとうございます。それでは、こちらを差し上げましょう』
 祈谷は忌々しい口調で、己の内より出でし肉塊の輪を、アララギに向けて散弾の様に放った。
「そんだけぇ? もっと頂戴よ、もっと!」
 そんな攻撃はアララギが配置していたシールドビットに防がれる。どんな方位から迫ろうと、その程度で彼女の強靭は砕けない。
 無力化された肉塊を見やり、祈谷は続いて狂人めいた奇声を発する。途端に、信徒だった肉塊が再び浮上し迫りくる。
 だがその肉塊すらも、新たな猟兵の登場により無力化される。祈谷の攻撃は【速く動く物を無差別攻撃し続ける】からだ。

 永一は既に【オルタナティブ・ダブル】で、もう一人の自分を呼び出していた。彼の者はここにいる何者よりも早く、手にした刃を突き立てんと祈谷に向けて疾走していた。
 故に、肉塊は【もう一人の永一】を率先して狙う。返す刃で肉塊を退けるが、その動きが次の、その次の肉塊を際限無く呼び立てるのだった。
「……って、ちょっと待て、どうして俺様が肉塊とひたすら壁打ちしなきゃならねえんだ!」
「大丈夫だよ、かっこいいから。もうちょっと頑張れ」
 永一は奮闘するもう一人を尻目に、ひっそりと祈谷へ近づく。その手には拾った瓦礫が二つ、三つ。
 不意にその手の瓦礫を遠くへ投げ放った。今度は空を裂いたその物体に、肉塊が殺到する。
 刹那、語るまでも無く二つの影が交錯した。一足で詰められる間合い、それさえあれば、あんな能無しを捌く方法など幾らでもある。
 踏込みと陽動を交互に、それだけで攻略出来る容易い代物。交わる刃は徐々に、祈谷の本体を蝕んでいった。

 祈谷は自身に何が起こっているのか、把握すら出来なかった。己の左右から踏み込む影が消える事は無く、信徒の肉塊は瓦礫を追いかけいつまでも本分を果たさない。
 空間と知覚さえ支配すればこんなものだと、永一達はその手を休めない。
 このままでは埒が明かない。翻って祈谷は再び己が身から肉塊の輪を周囲にばら撒く。だが、その瞬間こそが永一達の狙いだった。
「射線は開けたぞ、エスコートは不要だな」
「なぁに、いじわるねぇ」
 永一達はアララギの方を確認すると、即座にその場を大きく離れた。この先に巻き込まれてはかなわんと、本能で察したのだ。
 アララギは組み終わり、チャージが完了した改造魔導兵器、重魔力砲を祈谷に向けて放ち続ける。極彩色の暴力の奔流は、祈谷の全身を間断無く飲み込み続ける。それは救済とか暴力とは別の、破壊。
「焦らなくても、すぐには終わらないわよぉ」
 やけに大きな声で叫ぶ。アララギは祈谷の奇声対策に己の耳を幾分か使えぬ形にしたからだった。
 そして最大まで溜め込んだ魔力を吐き終わる頃には、祈谷の姿はこれまでとは比較にならぬ位、まるで廃墟の石像じみたぼろぼろの姿となっていた。
 しかし、それでも尚祈谷はその動きを止めたりはしない。ぐらぐらと揺れながら、未だ怨嗟の声を放ち続ける。

「うふふ……やっぱりまだ動くのね。楽しみだわぁ」
 止めを刺すのが。
 瓦礫の影には、鈍い光を放つ砲口が、その牙を静かに研いでいるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティアリス・レイン
「ほざけ、今まで見て来た光景のどこが救済だ……」
【竜装天鎧】を維持したまま、手に持つ魔剣を静かに構える。
「救済されるのは、貴様の方だ」

肉輪の動きを【視力】【見切り】ながら、刃に纏う激しい雷と炎の【属性攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】で【2回攻撃】【なぎ払い】ます。
「目障りだ」
【時間稼ぎ】に敵の数を減らしたら、敵の攻撃を【敵を盾にする】や【残像】【空中戦】で回避しながら、本体に接近し【力溜め】【全力魔法】【怪力】【鎧砕き】【気絶攻撃】の雷撃を纏う一撃を放つ。
「終わりにしてやる……轟雷一閃!」

避けられない攻撃は【武器受け】します。
「小賢しいな」
狂気や狂化を与える攻撃には【呪詛耐性】を
「耳障りな音だな」


ニコ・ベルクシュタイン
遅参失礼、及ばずながら助力しよう。
…しかし、人が求める『救い』とは
斯くも醜悪なものなのか。其れとも此れは例外なのか。
人の身を得て日が浅い俺には理解しかねるな。

共に戦う味方が居る場合は可能な限り連携を心掛けるが
敵の反撃に備えて事前に自分の攻撃手段は伝えておく
【時計の針は無慈悲に刻む】にて攻撃、双剣の切っ先を向け
狙いを良く定めて連撃を叩き込む

無差別攻撃による反撃に対しては「オーラ防御」で
出来るだけ多くの怪光線を受け止め、味方への飛び火を防ぎたい

人は自分自身によってのみ救われる、俺でさえ知っている事だ
お前はどうだ、最早死によってのみ救われる存在に成り下がったか?



「ニコ・ベルクシュタインだ。遅参失礼、及ばずながら助力しよう」
 ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)はあくまでも丁寧に、紳士然として現れた。
「……しかし、人が求める『救い』とは斯くも醜悪なものなのか。其れとも此れは例外なのか」
 そのオブリビオンを目の当たりにし、ニコは疑問を口にする。自分が知っている人間とは、どうにも相容れぬ存在にしか見えない。
「これが救いなものか、今まで見て来た光景のどこが救済だ……」
 ティアリス・レイン(小竜に乗る妖精騎士・f12213)がその疑問に回答する。これは断じて救いなのではない、と。
「人の身を得て日が浅い俺には理解しかねる、が」
 ティアリスの言葉に、ニコは己がやるべき事を定める。大小二振りの時刻みの双剣を手に、眼前の脅威と対峙した。
「少なくともこれは、救いではないのだな。ならば……」
「救済されるのは、貴様の方だ。覚悟しろ、祈谷・希」
 【竜装天鎧】を維持したまま、ティアリスは魔剣の切先を祈谷に向けて凛々しく構えた。

『アナタ方は、よくここまでの赦しを施してくださいました』
 鋒鋩の体の祈谷は、その苛烈なダメージすら己への救いと置き換える。
 悔い改めるとは程遠い、完璧な自己正当化。故に、叩いて砕く以外の選択肢など、有りはしないのだ。
「ふん……目障りだ」
 この者を生かしておけば、無辜の民草が狂気の救済に巻き込まれる。世界は黄昏の時代を迎えてしまう。
 そんな事は許さない……絶対に。既にこれまでの戦いで負ったダメージが、ティアリスのそこかしこを蝕んでいる。それでも、負けるわけにはいかない。
『今度は私からアナタ方を、今一度、救って差し上げます』
 凝りもせずに祈谷は肉塊の輪を猟兵達へ投げつける。しかし今更そんなものはティアリスに通じない。
 動きはとうに見切られ、避けきれなければ雷と炎を纏った魔剣が、その尽くを薙ぎ払う。
「小賢しい……!」
 間断無く放たれる肉塊の輪に鬱陶しさを隠せないティアリス。だがその前に、もう一人の猟兵が立ち向かった。

「人は自分自身によってのみ救われる、俺でさえ知っている事だ」
 時刻みの双剣を正面で交差させ、迫る肉塊の輪に備える。
「お前はどうだ、最早死によってのみ救われる存在に成り下がったか?」
 ヤドリガミの猟兵は問う。刹那の剣戟は祈谷の救済を強く否定し、返す刃が鋭くその顔面を抉った。
【時計の針は無慈悲に刻む】――続く目にも止まらぬ神速の連撃が、凄まじき速度で祈谷の形状を変えていった。
 異様ではあったが整った顔立ちは、無数の擦過傷で歪な縞模様と化している。
 ヴェールは既に剥がれ落ち、歪んだ脊椎じみた本体がその姿を顕わにしている。
『人ですらないアナタには、この赦しは理解出来ないでしょう』
 ですが……続く言葉を威力に変えて、祈谷は再び双眸から破壊光線を放つ。同時に肉塊の輪も止まる事無く。
 光線と肉塊が乱舞する狂った空間、かろうじで光線を跳ねのけたニコだが、残る肉塊の輪がティアリスに向けて殺到した。

「ありがとう、ニコ」
 しかしティアリスは、敢然と正面からその攻撃を受けて立った。
「時間は稼げた。だからもう、大丈夫」
 ふわりと手を頭上に掲げる。轟くは天の雷鳴、その瞬間に天井より落ちる無数の雷撃が、迫る肉塊の全てを焼き尽くす。
 もう十二分に力は溜まった。後は全力で放つだけ。
『救いも赦しも、どうしても拒むというのですか』
「くどい。最早語るに値せず!」
 駆け抜けるティアリスを狙う祈谷の攻撃。しかしその尽くが残像、神速の縮地は最早生中な攻撃では触れる事すら許されない。
「終わりにしてやる……轟雷一閃!」
 顔面の眼前で下段から一気に、ティアリスは最大の一撃を振り抜いた。



 その一撃は顔面を逆袈裟に両断した様に見えた。
 しかし面の皮一枚、祈谷はギリギリの所で耐え切った。
 そこで初めて、祈谷の顔に憎悪の表情が浮かび上がる。
 決着の時は近い。
『これ以上は……赦さない、猟兵ッ!』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

美星・アイナ
遂に本性現したか
なら彼女の出番のようだ、ね

ペンダントに触れ真の姿を解放
その人格は罪人に死を告げる天の御使い

地面を一蹴り後【地形の利用】で壁や瓦礫等を足場に使って移動
鋼糸を鞭のようにしならせ、身体に巻き付け動きを抑える
移動と同時にユーベルコード詠唱開始

赤水晶の欠片を【だまし討ち】として一斉掃射
その間に後方へ回りこみ大鎌状態の黒剣を振るい
【なぎ払い】で【2回攻撃】

赤水晶の欠片を集め錬成するのは炎熱を纏った剣
剣形態に戻した黒剣で袈裟斬りにすると同時に逆袈裟に

『貴方の居場所は十万世界のどこにも無い、永遠に冥府の底で足掻きなさい』
死の宣告は熱く冷たく

※真の姿:三対の白き翼に純白の甲冑を纏った赤髪の戦乙女


アララギ・イチイ
(前回、集束砲撃を発射した様なので、プレに記載はしておりません)

そろそろ食べ頃かしらぁ?
鮮度の良い邪神の肉の味堪能させてもらうわねぇ♪

大型シールドの推進装置を点火ぁ
(誘導弾)の補正を入れて、(怪力)を活かした(投擲)するわぁ
先端部の衝角で(串刺し)&推進装置を起爆させて(範囲攻撃)って感じの牽制攻撃ねぇ

その後、(残像・フェイント)を交えて(ダッシュ)で急接近よぉ

魔術刻印の装備で自分の爪や牙で相手の肉を引き千切り、咀嚼して一撃離脱の攻撃をするわぁ
面の皮が厚いみたいだし、(捨て身の一撃)で飛び込んで一撃・禍爪で皮を剥してもいいかもぉ

あと、(毒使い)の能力で自分の痛覚に対して(マヒ攻撃)しておくわぁ



 瓦礫の影で静かにその牙を研ぐ一門の重砲。
 眼前の狂気を裁かんと型破りは秘中の秘を曝け出す。
 その狂気は抑圧された心の刃を剥き出しにして。
 交錯する執念がその切先を交えた時、終焉の鐘が鳴る。



●猟兵対黄昏の決闘

 最初に放たれた威力はそもそもが囮だった。
 アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)の本命、集束砲撃は未だ放たれていない。
「そろそろ食べ頃かしらぁ?」
 手にした大型シールドのスラスターが火を噴く。その威力を怪力で抑え込み、ターゲットの祈谷を正面に捉えた。
「フフ……鮮度の良い邪神の肉の味、堪能させてもらうわねぇ♪」
 瞬間、シールドを構えて突進すると思いきや、手にした大質量の塊を間髪入れずに投げつけた。
 みしり、と崩れそうなフロアに更にひびが入り、その超質量が如何なものかを静かに語る。スラスターが点火しているシールドは空飛ぶ大鉄塊、その直撃を貰えば狂気のオブリビオンと言えどもただでは済まないだろう。だが。
『そんな児戯で私を墜とそうなどと、舐められたものね』
 祈谷はそう嘲ると、三度肉塊の輪を周囲に展開する。無数の肉塊は群れを成し、超質量のシールドへ次々と突進した。衝撃と共にミンチの様に爆ぜる肉塊、それでも尚、勢いを削ぐ事には成功した。
 突進するシールドは祈谷への直撃を避けた。だがそれこそがアララギの狙い。避けられたシールドは辺りにぶつかると、その衝撃で木っ端みじんに吹き飛んだ。濛々と立ち込める噴煙の中、この機を逃さんと必殺の一撃が咆哮する。瓦礫から放たれる砲撃が今度こそ祈谷の顔面に直撃した。
『馬鹿、な……こんな事』
 有り得ない。直後、名状しがたい咆哮がエネルギーの奔流を相殺せんと放たれる。その姿は悪魔払いの一節の様。バチバチと空間にまき散らされた紫電が、脆弱になったフロアをバラバラに破壊する。落下する祈谷、そしてそれを追って二つの影が、今度こそその息の根を止めんと迫っていた。

「それが有り得ちゃうのよ、ねぇ!」
 アララギの一閃、対する祈谷の脊髄の様な尾がその一撃を抑えんと振り回された。空中でもがく異形、だがその一撃は宙を舞う。アララギの残像に振り回され、空振りに終わった一撃の代価。がら空きになった懐に強烈な暴力の塊が振り下ろされた。
「私の爪って、ちょっとだけ鋭いのよぉ」
 30㎝の爆弾【一撃・禍爪】――抉る様に放たれた一撃が、祈谷の顔面を完膚無きまで破砕する。先に直撃したエネルギーの奔流と合わさり、今度こそ息の根を止められたかに見えた。しかし。
『その汚い爪を、退かせぇッ!』
 祈谷はアララギの腕に噛み付き、その腕をもぎ取らんと最後の力を振り絞る。しかしアララギはそんな抵抗など意にも介さず、その口中から無理やり己の腕を振り戻し、その中身を抉り取っていた。
「ハァ……これが邪神の味ぃ」
 A5には程遠い、されど、鮮度が良い分それなりの味を楽しめる。抉った邪神の血肉をl空中で頬張り、アララギは妖しい笑みを浮かべる。
『グァ……ギ……ザマ……!』
 声にならない悲鳴のような規制を上げて、祈谷は下のフロアへ落着した。

『マダダ……ゴゴニバ……』
 先の戦いで屠られた信徒だった肉塊、それらから滴る赤黒い液体を、祈谷は啜る様に、そして間もなく宙より吸い上げ始める。
『コノママデハ……終わりません……!』
「いいや、終わりだね」
 幾分か口調が回復した祈谷に向けて、頭上より美星・アイナ(インフィニティアンロック・f01943)が降り立った。
「人々にある無限大の可能性、それを辱め……あまつさえ己の血肉とする様な外道に、慈悲も許しも有りはしない!」
 その本性をアイナは決して許さない。己の中の無限大は、翻って誰にでもある可能性。それを貶めるオブリビオンなど、決して許せる訳が無かった。
 ここから先は彼女の出番――己のペンダントに触れて“罪人に死を告げる天の御使い”と入れ替わる。
 そしてその姿は、猟兵としての真の姿――三対の白き翼に純白の甲冑を纏った赤髪の戦乙女へと、転身した。
「貴方の居場所は十万世界のどこにも無い、永遠に冥府の底で足掻きなさい」
 翼をはためかせた赤色は、冷酷な死の宣告と共に、地を滑る様に駆けだした。

 落ちてきた2階フロアもこれまであった戦闘が如何に苛烈なものであったかを語る様に、その大部分が無残な事になっている。儀式で使われた調度品の数々が爆炎と轟雷に破壊し尽くされ、最早原形など分からない状態になっているのだ。それに加えて3階から続いている激しい攻防が、フロアを再び崩落させかねない衝撃を与え続けていた。
「地に落ちた血涙達、姿を変えて此処に集え……」
 彼女は詠唱しながら、左手の鋼糸――KillingWireを鞭の様に撓らせ、祈谷の本体に絡めつけようと接近する。対する祈谷はそれを払わんと、双眸から怪光線を放つ。だがその動きはとうに見切られていた。
「行き場のない哀しみと怒り、水晶の炎に変えてここに放たん!」
 瓦礫の上を軽やかにステップし、その尽くを躱す彼女。そして幾度か放たれた怪光線の発射後の隙を突き、殺しの鋼糸を雁字搦めに巻き付ける事に成功した。
「さあ、骸も遺さず焼き尽くせ!」
 詠唱完了、右手より放たれる炎を纏った赤水晶の欠片が、礫となって祈谷へ襲い掛かる。雁字搦めに縛られた祈谷は躱せず、されど最後の悪足掻きか、双眸の怪光線をスプレーの様に拡散し、近付く礫を空中で撃ち落とした。一瞬、爆ぜる礫が眼前の視界を奪う。しかしこれもアララギと同じ、本命への布石に過ぎない。
「残念だが、それは囮だ」
 祈谷が礫の相手をしている間、彼女は右手の黒剣――DeathBladeを大鎌に変え、祈谷の後ろへと回り込む。しっかりと縛られた祈谷は今度こそ逃げ場の無い一撃を……神速の連撃が袈裟斬りにその本体へ容赦の無い傷跡を刻み込んだ。
『この……許さない……私は、黄昏の……!』
「許さないのは、こちらの台詞だ」
 名状しがたい奇声に対し、観念しろと判決を下す。そして彼女が頭上に掲げた左手に、赤の礫が再び集う。集った礫はやがて炎を纏った剣となり、両手で握られたその剣は、縛られ、抉られ、刻まれた祈谷の最大の傷口をなぞる様に、左下段から逆袈裟斬りに一刀を入れた。

 その瞬間、空間が震えた。
 肉が焼ける臭いと共に、最後に聞こえたものは少女の悲鳴。
 果たしてそれはオブリビオンの悪足掻きだったのか、
 最後に祈谷・希が本心から哭いたものかは分からない。
 2階のフロアは幸いにして全てが崩れ去る事は無かった。
 そして、最大の敵の討伐も完了した。
 東京を狙った空前のテロリズムは、
 猟兵達の手によって未然に防がれたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『とりあえず焼き肉食べに行かない?』

POW   :    焼き肉を目一杯食べる

SPD   :    焼き肉って言ったら酒と一緒に。未成年はソフトドリンクとデザート食べ放題だ!

WIZ   :    みんなで談笑しながら美味しい焼き肉が最高だ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●焼肉GO!GO!GO!

 東京某所【焼肉 仗星家】

 皆、本当にお疲れ様。ここは円卓、上座も下座も無い焼肉だ。
 ここから先は飲み放題食い放題、なぁに請求は全部UDC持ちさ。
 テロの恐怖を未然に防いだんだ、堂々と肉を食べていい。
ティアリス・レイン
アドリブやアレンジ歓迎です!

真の姿から元の妖精の姿に戻り、小竜のユーちゃんと一緒に焼き肉やデザート、飲み物を【目立たない】でテーブルの下などに隠れて飲み食いしています。
「んぅ、おいしいね~♪ユーちゃん」
黒猫の姿でお皿のドリンクをペロペロ飲んでいるミーちゃんをみて
「いいな、ミーちゃんは。あんまり気にしてなくて」
「あ、でも……たしか、おみせでぺっとはきんしだったような?」
「い、いちおう、かくれててね?ミーちゃん」

猟兵はまわりからあやしまれないとは、いちおうきをつかうようにこうどうする!
「ほかのみんなはどうかな~?」
もぐもぐしながら、まわりをみて
「んぐっ、おいしい♪」



「んぅ、おいしいね~♪ ユーちゃん」
 ティアリス・レイン(小竜に乗る妖精騎士・f12213)は元の姿に戻り、相棒のユーちゃんとミーちゃんらと共に、こっそり座卓の下でくつろいでいた。UDCの職員らも参加しそこそこに盛り上がっている表のテーブルは、ちょっと恥ずかしい。
「いっぱいうごいたあとは、おにくがおいしいんだよね!」
 こっそりと隣の座卓から徴発した特上カルビを仔竜の姿のユーちゃんと分け合う。人間サイズの肉を食べるのに、大口を開けるのも如何なものかと思ったわけで。故に影でこっそりと食べているのだ。猟兵たるもの、周りに迷惑を掛けてはいけないと騎士らしく気を遣う。

「いいな、ミーちゃんは。あんまりきにしてなくて」
 ティアリスの目の前では、黒猫に姿を変えたミーちゃんが、いつの間にかお皿に注がれたドリンクをぺろぺろと舐めている。その姿は雷の精霊らしからぬ、自由気ままな本物の猫の様。
「あ、でも……たしか、おみせでぺっとはきんしだったような?」
 はっと気が付いたティアリスは、お皿を舐め終わり満足そうに喉を鳴らすミーちゃんを手招きする。んにゃ? と不思議そうに小首をかしげつつ、ティアリスの誘いに従って戸棚の下で丸くなった。
「い、いちおう、かくれててね? ミーちゃん」
 おみせのひとがびっくりしたら、どうしよう!?
 でも、だいじょうぶだよね……脳裏に不安は過ぎったが、ユーちゃんが器用にも徴発してきた特上タン塩の香りに、一旦考える事を止めた。

 それにしても美味しい。A5ランクってお肉は凄いなぁ。
 極上の味わいに感心するティアリス。そろそろくつろぎ飽きて、周りが気になりだした。
「ほかのみんなはどうかな~?」
 ひょっこりと座卓の影から顔を出す。皆、晴れやかな顔をしてテーブルを囲み、思い思いのお肉を食べているようだ。さっきまでは死線を跨ぐ一歩手前、だがこうやって、無事を喜びあい生を楽しむ事が出来る。その感慨はティアリスも一入だった。



 猟兵としてこれからも人々を守る。
 決意も新たに、ただ今だけは安らぎを共に。
 あ、あっちのおにくもおいしそうだね、ユーちゃん!
 隅の方で、恨めしそうにミーちゃんが鳴いている。
 それじゃあミーちゃんもいっしょに、むこうでたべようか!

大成功 🔵​🔵​🔵​

シズホ・トヒソズマ
よーし、打ち上げですよー!
私が食べた後仁美さんに交代したのだと満腹感やカロリーが心配なので、スプレッド・シンクロを使い仁美さんの意識がある分身体を作り出し、2人で一緒に焼肉食べます!

私は一応マスク年齢19才なのでウーロン茶で、仁美さんはご希望の飲み物をお持ちします!
肉は、焼きすぎない様に注意して返していきます
カルビなど脂の多い肉類は焼けやすいので早めに返します

一区切り付いたら仁美さんとお話
「今回はありがとうございました。これで少しでも救えた命があればいいのですが……もしもまた都合のいい時や近くで有事の際、協力お願いしても宜しいでしょうか?この格好が嫌とかでしたら別の方にお願いしますから大丈夫」



「よーし、打ち上げですよー!」
 激戦を終えシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は約束の地、焼肉屋へと到着した。早速席に着き――【眠りし朋よ、共に歩もう】もう一人の自分を、この体の持ち主である瑞穂・仁美を呼び出した。
「フフ……驚かせてゴメンナサイ。あなたを差し置いて私一人で食べるのは、違うと思いまして」
シズホは同じ姿の仁美に優しく語りかけ、注文を促した。
「私はウーロン茶で、仁美さんは?」
 こう見えて未成年、律義にこの世界の方を守るシズホにクスリと笑った仁美は、ハイボールを頼んだ。
 意外とお酒を飲まれるんですね? 質問したシズホに一杯目だけ、それに私を呼ぶ時は仁美でいいとおどける仁美。短い時間であったが、共に命を懸け、命を預けた仲間。いつの間にか目には見えない絆が結ばれていた。

「そう、仁美……あのね」
 運ばれてきたドリンクで乾杯し、目の前で次々と肉を焼き始めるシズホ。初めての戦い、それは想像以上に体への負担となったのだろう。仁美の食欲は止まらず、あるいはいつもそうなのか、いつの間にか目の前の大皿は10分も持たず空になった。食べながら、シズホは仁美にゆっくりと語りかける。
「今回はありがとうございました。これで少しでも救えた命があればいいのですが……」
 先程までの苛烈な戦士ではなく、しおらしい乙女の様子。そんなシズホに仁美は、私達は未来の命を沢山救う事が出来た。ありがとう、猟兵と礼を述べる。自分だけでは成し得なかった達成感と、相棒への信頼。意外に静かなのね、と仁美はシズホに笑って返した。



「フフ……いつもはこうなんですよ。それと、もしもまた都合のいい時や近くで有事の際、協力お願いしても宜しいでしょうか?」
 この格好が嫌とかでしたら別の方にお願いしますから大丈夫と、気を使い仁美に尋ねる。
そんなシズホに仁美は笑って答えた。
いつでも、待ってる。
ちょっと痛いのは怖いけど、貴女となら大丈夫だから、と――

大成功 🔵​🔵​🔵​

虚偽・うつろぎ
POW

焼き肉の匂いがしたので颯爽登場
肉を食べ尽くすのであるー

7本の腕で吸収するようにして食していく
ずぶぶぶっといった感じで溶け込んでいくように吸収される

とりあえずカルビと豚トロを大量に頼んでいくよ
タレも一緒に吸収しておけば結果的に那賀で混ざるはずだよ

箸は使わないので肉を取る度に腕から香ばしい臭いと煙が発生しているかもしれません
火炎耐性も激痛耐性もあるので問題なしです

あとは割と自由に動かしてもらえれば



 ふらりと、その黒い影は現れた。
「焼き肉の匂いがしたので颯爽登場」
 黒尽くめのスーツに双眸を隠し、流れる様に伸ばした髪を一つに纏めたその姿は、通りすがりのホストの存在感。妖しげなヴォイスを振りまき、カツカツとテーブルへ向かう。
 何者だ、とざわめく場内をベテランらしきUDC職員が一喝した。うろたえるな小僧ども。
 あの方はこれまでも数々のUDC案件を片付けてきたスペシャリスト、虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)さんだと。
 すとんと空いた座席に着き、一言。
「肉を食べ尽くすのであるー」
 瞬間、その姿は名状し難いフォントと化した。

「カルビと豚トロを大量に」
 当たり前のように注文をこなすフォント。これでも先程の戦い、裏方で場内のクリアリングに奔走していた。
 状況終了の報告を受けたとはいえ、万が一の取り逃がしがあっては危険だ。相手は眷属を増やす邪神の類、完全に安全を確保しなければ、状況検分も危険という判断からだ。
 故に、遅れて最後の現場へと到着したわけだった。

 数刻後、次々と大量に運ばれる肉の塊たち。ギラつくサシが余りにも眩い。
 そして次々と投下。蠢く七本の触手めいた腕は己の身体ごと肉の数々を焼き上げ、食べる。あらゆる耐性を備えた捨て身の一撃。ほんの僅か逸れる煙が不可視のフィールドの形成を物語る。まさに命懸けの戦い。しかし職員が気付いた。タレが掛かっていません!

「タレも一緒に吸収しておけば結果的に混ざるから大丈夫だよっ!」
 何故かアイドルめいた口調で返すフォント。この網焼きのセンターは吾輩だと言わんばかりに、手近なタレをにゅるりと取り込み、圧倒的な物量を次々と制していく。だがその姿は時折、何だか苦しそう。



 そう、こむら返りだ。
 己の力を高める為に、あえて死中に活を見出す。
 猟兵は何時如何なる時も全力なのだ。
 その生き様にUDC職員達は、ひたすら感心したという――

大成功 🔵​🔵​🔵​

青葉・颯夏
ルーナ(f01357)と同行

まったく、そういうことをどこで聞いてくるのかしら
いいわ、付き合ってあげる

ルーナの後に着いてお店へ
ロースとカルビを注文
あとはちょっと無理そう
ルーナ、あたしが食べないんじゃなくて、あなたが食べすぎるだけよ
その小さな身体のどこに、あたし以上に食べたものが入っていくのか
不思議で仕方ない
美味しそうに、残さずに全部食べてるからいいんだけど……って
まだデザートも食べる気なのね


ルーナ・リェナ
颯夏(f00027)と同行

ねえねえ颯夏
焼肉って美味しい?
それが食べ放題っていうちょっと耳より情報仕入れたから行ってみようよ

そーっと、一仕事終えた体で焼き肉屋さんへ
(仕事してきたけどここの世界じゃないのはないしょ)
メニューを見てもよくわからないから、とりあえず全種類注文
あ、颯夏はどれ食べる?
いっつも思うけど、それしか食べないでよく大丈夫だよなぁ

運ばれてきたお肉は颯夏に焼き方を訊いてしっかり食べる
んー、どれも美味しいなぁ
しっかり食べきったら甘いものも頼もっかな



「ねえねえ颯夏、焼肉って美味しい?」
「ええ、大体美味しいわよ。それがどうしたの?」
 ルーナ・リェナ(アルコイーリス・f01357)と青葉・颯夏(悪魔の申し子・f00027)はどこから聞きつけたか、邪神討伐大宴会の会場にふらりと姿を現した。焼肉、それはただ肉を焼くだけではない。作り手の腕次第で極上の美味にも名状しがたい悪夢にもなりかねる至高の娯楽。
「だったら美味しいんだね! それが食べ放題っていうちょっと耳より情報仕入れたから行ってみようよ!」
「まったく、そういうことをどこで聞いてくるのかしら。いいわ、付き合ってあげる」
 食べる事には目聡い相棒に連れられて、二人揃って魅惑のテーブルへと着く。お疲れ様ですと声を掛けられ、大きなメニューを渡された。

(仕事してきたけどここの世界じゃないのはないしょ)
「えーっと、ここに載っているの全部! あ、颯夏はどれ食べる?」
「……あたしはロースとカルビを」
 邪神も戦艦もオブリビオンに変わりはない。時空が歪むのはSFではよくある事象、ここは世界の果ての焼肉屋か、細かい事は気にしない。そして早速メニューを一刀両断する冒涜的なオーダーが放たれた。注文を受けた店員が厨房から次に出てくる時には、皿一杯に乗せられた【ありとあらゆる部位】が鈍く煌めき、二人の前に姿を現したのだった。

「いっつも思うけど、それしか食べないでよく大丈夫だよなぁ」
「ルーナ、あたしが食べないんじゃなくて、あなたが食べすぎるだけよ」
 颯夏にしっかりとアドバイスを受け、ルーナは丁寧かつ迅速に鉄板で肉を焼き上げる。そして食べる。フェアリーの小柄な体躯は、しかし自らの体躯を優に越えるであろう極上の美味を次々と制していった。その中身はよもやブラックホールかと思わんばかりの所業。しかして常人ならざる活躍をした後であれば、それくらいの大業を果たしても何ら不自然ではないだろう、多分。きっと。
 颯夏は目の前の相棒が豪快に食べる様を感心しつつ、自らも頼んだ肉を焼き上げる。焼き過ぎてはいけない、されど火は十分に通して。滴る肉汁がこれで良いと颯夏に無言で時機を伝え、それを逃さず最良の味を堪能する。自分のペースで美味しく食べられれば良いのだ。それに相棒が楽しそうに沢山食べる様子は、見ていて心地よい。
「んー、どれも美味しいなぁ」
 まあ、その小さな身体のどこに、あたし以上に食べたものが入っていくのか不思議で仕方ないのだけど。颯夏は自分の分をゆっくり食べながら、凄まじい勢いで消費される眼前の皿を見やり思った。美味しそうに、残さずに全部食べてるからいいんだけど……って。
「すいませーん、デザートください、全部」

「まだデザートも食べる気なのね?」
 呆れた風に颯夏は尋ねる。自分はもうお腹一杯だ。
「食べるわよ。颯夏は食べないの?」
 それにもし残っても、こっそりお持ち帰りしちゃうわ。悪戯っぽく舌を出して、ルーナは宴のフィナーレを待つ。
 色とりどりの季節のフルーツがもうすぐ、目の前に運ばれてくるのが横目に見えた。颯夏もそれをみて、ちょっと迷って、決断した。
「少しだけ頂戴」
「うーん……本当に本当に少しだけよ?」
 焼肉の焼き方を教えてくれたお礼に、妖精からの恩返し。
 テーブル彩る甘酸っぱい香気を挟んで、二人は最後まで美味しく頂きました。



 宴はやがて終わる。
 同じように、戦いもいつか必ず終わらせなければならない。
 明日への活力を養い、猟兵達は次の戦場へ向かって行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月09日


挿絵イラスト