ポンコツレジスタンス見守り道中記
●グリモアベースにて
「ダークセイヴァーには、小さいながらも人間たちの反抗の兆しが見え始めている。これはあの世界のためにも絶やしてはならん光だろう」
グリモアを通してダークセイヴァーの情景を眺めていたプルート・アイスマインドが、顔を上げて猟兵たちに目を向けた。
あの世界において、ヴァンパイアの圧政に人々が抵抗することなど殆どなかった。いくら理不尽を強いられ、苦痛を与えられ、命さえ搾取されようと、厳然と築かれた支配体制の前に彼らは絶望するしかなかったからだ。
しかし、猟兵の存在がそれを変えた。
支配者を、オブリビオンを倒す猟兵たちの姿が、人々に希望を与えたのだ。
「弱々しく小さな秘密組織に過ぎない。だが彼らは確かにダークセイヴァーに現れ始めたのだ。領主たちの目が届きにくい洞窟や樹海、あるいは地下に拠点を置いて、密かに苦しむ民衆を助ける活動を行っている」
その名も――『闇の救済者(ダークセイヴァー)』。
彼らは自分たちをそう自称しているらしい。
奇しくもそれは猟兵たちが使うあの世界の呼び名。
だが同時に、あの世界の人々が猟兵という光に与えた称号でもある。
『闇の救済者』とは、ダークセイヴァーにおいてもはや単なる言葉ではない。
それ自体が、希望なのだ。
「今は小さな勢力だが、しかしその火はいずれ大きな力を生むかもしれん。だからおまえたちには、その『闇の救済者』のひとつを支援してきてもらいたい」
人知れず新たに決起した少数組織の情報を、プルートはキャッチしていた。
その新たな『闇の救済者』は、領主の暴政下にある村の解放を計画しているらしい。しかし彼らは意志は強くとも力は弱い。そのままでは全滅は必至である。
ゆえに、プルートは猟兵に頭を下げた。
「彼らに同行し、村の解放に手を貸してやってほしい。幸い、目標となる村には強力なオブリビオンはいないから、それほど難しい仕事にはならないはずだ」
小さな光が潰えぬように、見守る。
簡単に言ってしまえば、それがプルートからの依頼だった。
気を付けるべきは村への道中、そして村での戦闘ぐらいだろう。その後は『闇の救済者』といくらか交流してもいいかもしれない。何か手を貸せることがあるはずだ。
説明を聞き終えた猟兵たちが承諾を示すと、プルートはひとつ小さく頷いて、一同を転移させるべくグリモアをかざした。
「ダークセイヴァーの未来のために、頼んだぞ」
●悪いな。シリアスはこの章の後半までだ。
薄靄のかかったような視界は、長い道程を行くには好ましくない。
だが今まさに圧政に苦しむ村を助けに行こうとする闇の救済者――『夜明けの剣』の面々にとっては好都合だった。ヴァンパイアの目から逃れることができるからだ。
「このまま靄に紛れて、行軍するぞ」
「ああ、了解だ。ライノス」
「一気に行っちゃいましょう」
辺りを警戒しつつ先頭を進む精悍な男『ライノス』に、仲間たちが静かに頷く。
ライノスはこの闇の救済者たちのリーダーだった。彼を中心として結成された組織は、彼が剣術を扱えることから、その剣で闇を切り裂くという決意を込めて『夜明けの剣』を組織名とした。
重い曇天を見上げて、ライノスは腰に括りつけた剣の柄を握る。
「変えるんだ。この世界を俺たちの手で……」
「お、おい! ライノス!」
「どうした? パトル!」
隣を歩いていた副リーダー『パトル』の声に、反射的に剣を抜くライノス。
パトルを見ると、彼はその額に汗を流し、恐る恐る前方を指差していた。
ライノスの視線がそちらへ走る。
するとそこには――。
ぽいんぽいん。
むいんむいん。
ぽにょんぽにょん。
という擬音が似合いそうなピンク色のスライムが、愉快そうに上下していた。
むにむに上下しつつ、一行の進路をがっつり塞いでいた。
ライノスはハッと目を見開く。
「あ、あれはピンクスライム!」
「知っているのか、ライノス!」
「ああ! ケイケンチとかいうのが高いとどっかのオヤジが言っていた!」
「情報と情報源が雑!」
「ていうか待って? スライムって俺の剣、効かなくね?」
「ライノス! 諦めたら試合終了だぞ!!」
うわああああ、となんかわちゃわちゃしだす『夜明けの剣』。
そんな彼らを包囲せんと、ぷにゅぷにゅ近づいてくるピンクスライム群。
ちなみに百体ぐらいいる。
しかも全部2m級。
これは夜明けが来る前に落日するかもしれませんね。
星垣えん
ダークセイヴァーがダークセイヴァーでダークセイヴァーが何だって!?
というわけで、シナリオの流れは以下!
1章:ピンクスライム
村へ行くまでの道程で、怪しいピンクスライムに遭遇しました。
ほっといたら闇の救済者たちがヌトヌトになるので何とかしてあげましょう。
本シナリオのネタ化の原因。
2章:集団戦
村に到着したら、領主の配下たちが村民を苦しめていました。
すべて撃破して、村を圧政から解放しましょう。
3章:拠点に帰還したら……
闇の救済者たちの拠点にて、交流とかお手伝いとか。
集団戦があるけど、まあだいたい軽いノリになりそうですね!
それでは、皆様からのプレイングお待ちしております!
第1章 冒険
『スライムに出会っちゃった。』
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POW : 正面から攻撃する。
SPD : 罠を仕掛ける。
WIZ : 遠距離から攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
レパル・リオン
レジスタンス誕生ですって!?
あの暗くて、辛くて、シリアスなダークセイヴァーに希望の星が現れたのね…!
こうしちゃいられないわ!あたしも平和のために戦わなきゃ!
いざ出陣っ!とうっ!(転移)
…ええー……(スライムを見て引く)
…がんばるわ。
んー、とりあえず…【トリニティ・エンハンス】!風属性マシマシモードで行くわよ!
って、力を溜めてる間にスライムがあたしに覆い被さって来た!?
きゃーっ!このままじゃあたし、イヤーンな事になっちゃうー!
…とでも思ったかー!風の力を纏って、あたし自身が竜巻のように大回転!そのまま戦場を駆け巡り、スライムを吹き飛ばすわよー!
レジスタンスのみんな、大丈夫!?
じゃ、行こっか。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
正直なところ、普通の「スライム」では無く「ピンク」というあたり、「そういうスライム」な気がしますぅ(ぷるぷる)。
周囲に『熱線』に設定した『FRS』『FSS』を展開、【指定UC】を使用した[範囲攻撃]で『夜明けの剣』の方々と接敵していないスライムを焼払いましょう。
難しいのは、既に『夜明けの剣』と接敵している個体ですねぇ。
下手に焼くと、延焼に巻き込んでしまう可能性が高いですぅ。
可能な限り『刀』で斬りつつ引き剥がし、そこに『熱線』を撃つ形が良さそうですが、その場合、私もまず確実に巻き込まれますねぇ。
一応着替えは有りますから、ぬとぬとにされるだけで済めば良いのですが(ふらぐ)。
「……ええー……」
転移してきて一秒。
レパル・リオンはしょんぼりとピンクのケモ耳を萎えさせていた。
しかしそれは無理もないことである。
『あの暗くて、辛くて、シリアスなダークセイヴァーに希望の星が現れたのね……!』
と、レジスタンス誕生を心から喜び、勇んで空間を渡ってきたら御覧の有様である。
悲鳴をあげる男たちに群がるピンクスライム(以下ピンスラ)である。
夢ヶ枝・るこるは(5歳下の)レパルにひっつき、ぷるぷると震えた。
「正直なところ、普通のスライムでは無く『ピンク』というあたり、そういうスライムな気がしますぅ」
「そうね、嫌な予感よね……」
引いている。
二人とも明らかに及び腰になっている。
その間も「うわあああ」とか叫ぶ『夜明けの剣』。
「って、そうも言ってられない!」
「……そ、そうですね。私も頑張りますぅ」
これ以上の景観の悪化を防ぐべくレパルが蠢くピンスラへと走りだし、るこるも8台の浮遊砲台と4枚のビームシールドといういつもの兵装を展開する。
「一斉発射ですぅ」
浮遊砲台『FRS』とビームシールド『FSS』から放たれた高熱のビームが、辺りにぽよぽよしていたピンスラを焼き払う。
一方――。
「トリニティ・エンハンス! 風属性マシマシモードで……って、きゃーっ!?」
ユーベルコードを発動して風の魔力をまとったレパルが、悲鳴をあげた。
ピンスラがマッハで振り向き、彼女に覆いかぶさらんと変形したのだ。
このままでは幼気なキマイラ魔法少女が放送ギリギリの状態に――。
「……とでも思ったかー!」
まとわりつこうとしたピンスラが、レパルの全身を逆巻く風によって散り散りに飛ばされる。そのまま地を駆ける竜巻と化して、ピンスラたちを上空へ打ち上げまくるレパル。
「す、すごい!」
「あのピンクスライムを一瞬で!」
ピンスラを蹴散らしてゆく救世主の姿に目を輝かす『夜明けの剣』。
だが、未だ彼らに安息が訪れたわけではない。
今度は別方向からピンスラたちが近づいてきたのだ。
「くっ、数が多い!」
「このままではヌルヌルの状態で村に着くことに!」
「落ち着けライノス! その前に死ぬ!」
敵の攻勢のおかげで混乱がひどい『夜明けの剣』。
しかしそこへ、るこるが刀を引っ提げて飛びこんできた。
「それっ、ですぅ」
男たちに引っ付こうとしていたピンスラを霊刀『純夢天』で切り離し、熱線を撃ちこむるこる。スライムは瞬く間に爆発四散した。
「皆さん、ご無事ですねぇ」
「た、助かった!」
「恩に着るぜ! 胸のでかいお嬢さ――」
言いかけて止まるライノス。
先ほどピンスラが爆発したのを覚えておいでだろうか。そうなるとスライムは飛び散るわけである。飛び散ってあちこち付着したりするのが法則ってものである。
その結果、爆心地に近かったるこるさんはヌトヌトになっていた。
全身ピンスラまみれでスケスケで良い匂いがしていて、何だかとても――。
「いかがわしいな」
「ああ、いかがわしい」
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないですぅ……!」
鼻の下を伸ばす『夜明けの剣』からサッと体を背けるるこる。
着替えを用意していて、よかったと思いました。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
「ようし、ボクもみんなを助けながらケイケンチ稼ぎしちゃうぞー☆」
あ、あとケイケンチ以外にもダブリューピーってのも手に入るんだよね♪ボク知ってるよ!
とりゃーっとレイピアを構えてスライムに突撃して風穴を開けちゃうぞ!
『夜明けの剣』の人達がおおすごい!と驚嘆してくれるけど、すぐに穴が塞がってやっぱり剣じゃだめだー!て上げて落としちゃった!?
むむむー、剣がダメならビームを出せばいいんだよって【お姫様ビーム】でどかんと蒸発させちゃうよ!
いっぱいやっつけて余裕が出てきたら、メタルなヤツはもっとケイケンチいっぱいなんだよね?とレアもの探しちゃうぞ☆
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
ルパート・ブラックスミス
…来る場所間違えた?ここダークセイヴァー?アルダワだったりしない?
セクシー系の依頼は諸兄の期待に応えられないしNGって背g…そんなことない?そうか。
青く燃える鉛の翼展開。
【空中浮遊】しライノス殿達の下へ着地。
彼らの【鼓舞】と【救助活動】を優先し突破口を開く。
UC【燃ゆる貴き血鉛】起動。
大剣の斬撃で【なぎ払い】、併せて纏わせた燃える鉛を撒いてスライムたちを火の海に呑みこむ。
剣に覚えがあるからといってそれだけに頼るな!
炎や投擲、原始的な手段こそ有効な時は多々ある!
常に冷静に己のできることを遂行せよ!
それと、自分の【情報収集】によればケイケンチとやらが高いスライムはメタル系だ!
【絡み・アドリブ歓迎】
「待たせたな! 大丈夫か!」
青く燃え立つ鉛の翼をはばたかせ、ルパート・ブラックスミスはその重々しい鎧の体をライノスたちのもとへ降り立たせた。
「あんたも援軍か!」
「どこの誰だか知らないが……頼もしいぜ!」
「自分たちが必ず活路をひらく。それまで自分の命を守ってくれ!」
ニヤリと笑う『夜明けの剣』の面々と、背中合わせに身構えるルパート。
ここだけ切り取ると格好いいシーンである。
しかしルパートの視界には映っていた――むにむに上下するピンスラが。
打ち上げられたり、爆発したりして、そこかしこでビチビチと湿っぽい音を立てる怪しいスライムたちの姿が。
「……来る場所間違えた? ここダークセイヴァー? アルダワだったりしない?」
ルパートさん、カメラのほう見ないで下さい。
「セクシー系の依頼は諸兄の期待に応えられないからNGって背後が……」
言ってないそうです。受け入れて下さい。
「そうか」
諦めて前を向くルパートは、さすが潔い騎士である。
と、そこへ――。
「ようし、ボクもみんなを助けながらケイケンチ稼ぎしちゃうぞー☆」
「ん?」
遠くのほうから聞こえた楽しげな声に、ルパートが目線を向ける。
やってくるのは小さな妖精。
「ケイケンチ以外にもダブリューピーってのも手に入るんだよね♪ ボク知ってるよ!」
およそ戦場を訪れたとは思えないテンションで、ティエル・ティエリエルがレイピア片手に突っこんできていた。
レイピアをぐっと突き出したティエルはそのままピンスラに特攻。
「ボクのレイピアで風穴を開けちゃうぞー!」
「お、おお!」
「あの小さな体で……ピンクスライムを貫いた!?」
飛んできた勢いそのままにレイピアでピンスラを切り裂き、その中を突き抜けたティエルに感嘆の声をあげるライノスたち。褒められて嬉しいティエルはその喜びを隠そうともせず胸を張った。
だがしかし。
ピンスラに開いた穴は、すぐにむにゅむにゅと埋まってしまった。
「き、効いていない!!」
「やっぱりスライムに剣はアカンかったんや……!」
「ちょっ、起きろライノス!」
愕然とする『夜明けの剣』。特にライノスは土下寝するほど落胆していた。
パタパタと飛んで戻ってきたティエルは、はっと口に手を当てる。
「逆に落としちゃった!?」
「凄まじいテンションの落差だな」
淡々と告げるルパート。その横でティエルは「むむむー」と頭を悩ます。
で。
「じゃあ剣がダメならビームを出せばいいんだよ☆」
「えっ」
ライノスが顔を上げた瞬間、ティエルがかざしたレイピアから眩い閃光が放たれた。
刹那――ピンスラがちゅどーんと爆発する。
圧倒的火力。
「ね、みんなもビーム出そうよ☆」
「出せるかぁぁぁ!!!」
「そんなん出来れば苦労しないわい!」
「って、ちょっ! 後ろ後ろー!」
「え? あぁぁ近い近い近い!?」
ウインクしたティエルに、当然ながら総出でツッコむ『夜明けの剣』。その間にもピンスラはうようよと接近していて、ライノスが今にも取りこまれそうになる。
が、その寸前で、ルパートの振るった大剣がピンスラを薙ぎ払った。滴る鉛が青く燃え立ち、それを取りこんだピンスラたちを内側から焼き尽くす。
「す、すげえ……」
「剣に覚えがあるからといってそれだけに頼るな! 炎や投擲、原始的な手段こそ有効な時は多々ある! 常に冷静に己のできることを遂行せよ!」
ライノスたちの前に庇い立ち、背中で彼らを叱咤するルパート。
するとライノスたちも戦意を取り戻し、手に武具を取って戦士の目で構えなおす。
その表情を見て、フッと笑うルパート。
「それと、自分の情報によればケイケンチとやらが高いスライムはメタル系だ!」
「な、なに!?」
「オヤジぃ! ガセ教えやがったか!!」
「メタルなヤツはもっとケイケンチいっぱい? よーしじゃあレアもの探しちゃうぞ☆」
無用な情報だった。
しかしそれで憤ったライノスたちはそれなりに奮闘したし、ティエルもティエルでメタルを求めてどかどかビームを撃ちまくったので、あながち役に立たなかったわけでもなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
モリオン・ヴァレー
さっきまでのシリアスな空気は何処へ……
しかも無駄にあのスライム達のサイズも大きいし数も数だし
どうしてああなったのかしらね……
まあ、とりあえず放っておく訳にもいかないわよね
左手で腰から取り出す片手銃へ霊力を集中させ
【パイロ・ブラスト】発動
<情報収集><暗視>
右眼帯を取り霊力による視界を確保
<早業><クイックドロウ><属性攻撃><援護射撃>
スライム目がけて火炎の弾幕を
何気にこういう柔らかい敵って、あたしの得意な針も糸もあまり効かないのよね……まあ、それならそれでこうしてキツイお灸を据えるまでよ
そこでスライム塗れ寸前なあなた達
今の内に逃げた方がいいわよ
そんな近くだと流れ弾が飛び火しても知らないわよ
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
ふっふっふ、お困りのようだね
私が来たからにはもう大丈夫。ケイケンチは私がいただ…おっと、夜明けの剣のみんなの手助けしにきたよ!
メタルじゃないのが残念だけど
というわけで、【芋煮ビット】で芋煮だばぁするよ。
熱いし体に混ざるしでバッチリ足が止まるはず。
さぁ夜明けの剣の皆、熱々の芋煮が混じってしまった今がチャンス。倒すなり食べるなり好きにしていいよ!
それにしても、美味しい芋煮とスライムが混じることによって新たな芋煮の可能性を見出してしまったね……
そのうち芋煮スライムとかも出てくるかもしれない。出たら捕まえにこよう。
「押せー! 押し返せー!」
「くおおおおっ!!」
『夜明けの剣』の一行は、ピンスラたちに包囲されながらも戦線を保っていた。剣戟での戦闘から石や岩を投げる戦法に切り替えたのが奏功したのだろう。
が、それでも逆転には至らない。
たとえ一匹追い払ってもピンスラの波は続々と押し寄せるからだ。
次第に疲弊する『夜明けの剣』。
ルエリラ・ルエラがぬるっと彼らの背後に現れたのは、そんなときだった。
「ふっふっふ、お困りのようだね。私が来たからにはもう大丈夫」
「おわっ!?」
「びっくりした……」
投擲を繰り返しつつ振り向いた一同の間を抜け、ピンスラ群の前に立つルエリラ。
「ケイケンチは私がいただ……おっと、みんなの手助けしにきたよ!」
「いま明らかにケイケンチって……」
「メタルじゃないのが残念!」
「隠す気がない!?」
堂々と泥棒宣言をしてくれやがったルエリラが天に手をかざし、魔力のうねりでもって空間に歪みを生み出す。そして徐々に開く空間の狭間から現出したのは――。
「こういうときは芋煮に限る」
芋煮だった。
ほかほかと湯気を立てる温かな芋煮が、炊き出しよろしく底深の紙皿によそわれた状態でピンスラと正面衝突していた。
汁、そして具材が混じってしまったピンスラたちがピタリと止まる。
「さぁ夜明けの剣のみんな、熱々の芋煮が混じってしまった今がチャンス。倒すなり食べるなり好きにしていいよ!」
「倒すはともかく食べるって……」
「腹を壊す気しかしないんだが……」
「それにしても、美味しい芋煮とスライムが混じることによって新たな芋煮の可能性を見出してしまったね……そのうち芋煮スライムとかも出てくるかもしれない。出たら捕まえにこよう」
「聞いていない!?」
生態系の乱れを狙うルエリラさんに驚愕する『夜明けの剣』。ピンスラたちを一手で止めた彼女の技は尊敬されてもおかしくはない。だが里芋とかが混入したピンスラを見るととてもそんな気にはなれない一同であった。
そしてそれは、一歩離れた場所で様子を窺っていたモリオン・ヴァレーも同じ。
「さっきまでのシリアスな空気は何処へ……」
芋煮の茶色っぽさが混じって美味そうになったピンスラを見て、天を仰ぐモリオン。
他の猟兵によって水揚げされた魚のようになっているスライムの破片が、ピチピチと彼女の耳を打つ。聞いてた話とちゃうやんと言うしかない状況である。
だが今さら文句を言ってもどうしようもない。
頑張って気を取り直したモリオンは、前方に視線を戻す。
2m級のピンスラは依然として、ライノスたちの周囲で元気にポヨっとった。
「無駄にサイズも大きいし数も数だし、どうしてああなったのかしらね……」
やや気だるげに零しつつ、モリオンの左手が腰の銃を抜く。
集中させた霊力が、銃口に火炎を灯した。
「何気にこういう柔らかい敵って、あたしの得意な針も糸もあまり効かないのよね……まあ、それならそれでこうしてキツイお灸を据えるまでよ」
右眼の眼帯を外したモリオンが、引き金を引く。
――途端、銃口から業火が迸った。もはや切れ目すらわからぬ炎弾の連射が、空間を赤く染め、ピンスラたちを灼熱の牢獄に閉じこめる。
水分を失って縮んでゆくピンスラを、ライノスたちは呆けた目で眺めていた。
「こんな炎、どうやって……」
「すげえな……って熱ッ!?」
「そこのあなた達。大人しくしていた方がいいわよ。流れ弾が飛び火しても知らないからね」
『は、はいぃ……』
横目に送られたモリオンからの警告に、背中を丸めて頷く『夜明けの剣』。
そうして、ピンクスライムの大群は猟兵たちの手で粛々と消えていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『女騎士の躯』
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POW : おぞましき呪い
【凄まじき苦痛を伴う呪いを流し込まれ狂戦士】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 死して尚衰えぬ技の冴え
【錆びて穢れた騎士剣による渾身の斬撃】が命中した対象を切断する。
WIZ : 不撓不屈の闘志の顕現
自身に【死して尚潰えぬ闘志が可視化したオーラ】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
イラスト:すねいる
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「いやしかし助かったな」
「まさか本物の『闇の救済者』に会えるとは……!」
ピンクスライムという難関(?)を越えた『夜明けの剣』は、目的地たる村へ向かう間、そんな調子でずっと浮かれていた。
彼らが胸に抱く希望の火。それを灯してくれた存在が目の前にいる。
憧憬を抑えきることができず、ライノスたちの口はいつまでも回っていた。
その中で、猟兵たちはこれから向かう村の現状も把握できた。
重税に苦しんでいたその村は、とうとう領主の求めるだけのものを納めることができなくなり、代わりに『戯れ』として定期的な住人の間引きが行われているらしい。
話しながら、『夜明けの剣』の面々はぎゅっと拳を握りこんだ。
「俺たちの生まれた村だって大概そんな感じだった。だから許せないんだよ……テメェの都合で殺し、弄ぶ領主が。絶対にな」
ライノスたちの顔に暗い陰が差す。
彼らもまた奪われ、虐げられた者たちなのだと、立つべくして立ち上がった者たちなのだと、猟兵たちは彼らが伏せた眼差しから感じ取ることができた。
ただピンスラ相手にヌトヌトになりかけてただけの人間ではなかったのだ。
剣が効かないだのケイケンチがどうだのと騒いでいただけの人間ではなかったのだ。
そう、猟兵たちが思いを改めたときだった。
「やめ……やめてくれぇぇ!!」
「どうか、どうかその人の命だけは……!」
「関係ない。領主様の命令は絶対……」
聞こえたのは村人たちの悲鳴。猟兵が『夜明けの剣』の一行とともに足を速めると、ちょうど領主の遣わしたと思しき女たち――動く屍たちが、数人ばかりの村人たちを一所に包囲しているところだった。
おそらく村人はそれで全員なのだろう。そう確信できるほど村は寂れていた。土地は痩せこけ、まともに風雨を凌げそうな家は2つか3つといったところだ。
「税を納めろ。納めぬなら……」
「ひいいぃ……!!」
怯え竦む老人の傍らで、躯の女が錆びた剣を振りかぶる。
「やめやがれぇ!!」
「好き勝手させるかよ!!」
剣を振り上げたライノスを先頭にして、『夜明けの剣』が躯たちに斬りかかる。
これ以上の悲劇は生み出さない――そんな決意を胸に燃やして。
……だが世の中、特にこのダークセイヴァー、心意気だけで何とかなるほど甘くはないのである。
「邪魔だ」
「ぎゃあああーー!?」
「リーダァァーー!?」
「おのれよくもライノスをぉぉ!」
「邪魔だ」
「ぎゃあああーー!?」
「パトルゥーーー!?」
ぺしっ、と躯の女たちに一蹴されるリーダー&副リーダー。
3秒で頭を失ったレジスタンスは一瞬で包囲殲滅陣の只中であった。
このままではホクホクにフカした芋のようにオブリビオンたちに潰されるのは必至!
猟兵よ、救えるのは君たちだけだ!
なおライノスとパトルはぶっ飛ばされただけでまだ死んでない!
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
あっけなさすぎる…
シリアス成分多かったら死んでたかもしれないね。セーフ。
でもライノスは死なないだろうって安心感あるよね。
それじゃ、あとは任されたよ。
好き勝手やった報いは受けてもらおう。
接近戦がちょっと厄介みたいだけれど、要は接近戦に持ち込まれなければいいんだから私の勝利。
【フィーア】で矢の雨を降らして一帯を制圧しよう。
味方がいるなら合間合間に『援護射撃』しつつ、確実に仕留めていこう。
接近されちゃったら?
攻撃が命中したら切断されるっていうし怖いから逃げるよ。私の『逃げ足』なら余裕余裕。
いざとなればブーツを使って飛んで空中から『スナイパー』のように撃っていけばいいしね。
モリオン・ヴァレー
馬鹿正直に正面から行ったらそうなるって……
気合だけでどうにかなるなら、とっくの昔に世界は変わってるわよ
【アクセラレイタ】発動
<暗視><情報収集>右義眼の霊力視界はそのままに
<オーラ防御><目立たない><忍び足><ダッシュ>
音も無く、迅速に相手の背後へ回り込み拘束し
<暗殺><殺気><早業><鎧砕き><傷口をえぐる><毒使い><マヒ攻撃>同じく重力のオーラを纏い硬化した、鎧すら穿つ毒針による必殺の刺突を
<敵を盾にする>相手からの攻撃は拘束している『盾』に代わりに受けてもらうわ。それで『盾』が無くなったら、また新しいのを捕らえて現地調達するわ
『気合だけでどうにかなるなら』……それはあなた達も同じ事よ
ミフェット・マザーグース
ケイケンチ、をもらいにいったティエルを追ってきたけれど
ホウイセンメツジン、のまっさいちゅう!
ティエルもがんばって戦ってるし・・・みんな助けなきゃ!
ティエル(f01244)と行動!
「もーっ、ティエルだって、ちっちゃいのにあんなにがんばってるんだから!」
「逃げ回ったりしないで、勇気をふりしぼってがんばるの!」
一緒に動いてくれそうな人がいたら、他のみんなとも協力するね
UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
「楽器演奏」でリュートを奏でて「歌唱」でみんなを「鼓舞」して強化するよ
♪
まっくらやみの世界に ちいさな希望の灯り
立ち上がる意志あるかぎり そのかがやきは 消えない 消せない
それは みんなの中にあるものだから
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
ミフェット(f09867)と一緒
「むむむー、させないぞー☆」
包囲殲滅陣の中に飛び込んで『夜明けの剣』の人たちと一緒に陣の内側から戦うぞー!
背中の翅で羽ばたいて空中から動く屍と相対していたら聞き覚えのある歌が聞こえてきたよ!
ほらっ!ライノスもパトルも起きる起きるーと二人の上で飛び回って【小さな妖精の輪舞】で回復してあげるね♪
二人が起き上がったら、ようしボクに続けーと包囲の薄そうな場所目掛けて突撃だよ☆
ミフェットのお歌の効果でパワーアップしたみんなで、あいつらにも目にもの見せちゃえー♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
レパル・リオン
キャーっ!ライノスちゃん、パトルちゃん!
…そこまでよ、ゾンビ怪人!
【変身】!とおっ!(カッコよく見せつけるように魔法少女に変身)
あたしは光の化身!希望の灯火が心を燃やす!
魔法猟兵イェーガー・レパル、ただいま参上!
相手のユーベルコードの「速い物を追いかける」性質を利用するわ!
ダッシュで切り込んで突貫!と見せかけて、戦いながら村から離れるわ!
あたしが速く動く事で村人から怪人を引き離す作戦よ!
そのままあたしが怪人を引き付けて、他の猟兵のみんなが攻撃する隙を作るわ!
あたし自身も、あたしの爪で怪人を切り裂いてやるわ!
新ユーベルコード、【閃虎爪】をくらえー!
2人のカタキは…あたしが討つ!
ルパート・ブラックスミス
気概は認めるが…よく今まで生き延びられたな貴殿ら。本当に。
『夜明けの剣』と村人の【鼓舞】と【救助活動】しつつ迎撃。
UC【錬成カミヤドリ】、50騎超えの複数鎧を展開。
味方を【かばう】為と敵を攻撃し易い位置に【おびき寄せ】る為に運用。
複製鎧で敵を【グラップル】で拘束できれば最良、諸共に大剣で【なぎ払い】だ。
忘れてはならない鉄則がある!
『戦いは数』だ!規模こそ違えど、猟兵ですらそれは無視できない!
死ぬな!生かせ!他者と連携し多数を確保し、少数に対処しろ!
ライノスとパトルはさっさと起きろ!
貴様らの務めは最後まで指揮をとり士気を保ち続けること!
真っ先に倒れてどうする、戯け共!
【共闘・アドリブ歓迎】
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
ま、まあ、心意気は良いと思いますぅ。
とは言え、放っておくわけにもいきませんねぇ。
【白翼衣】を使用、速度と飛行能力を生かし、上から『包囲』の中に入りますねぇ。
『FSS』は「村人」や『夜明けの剣』の方々を[かばう]形を中心に、『刀』と『FRS』を攻撃主体にそれぞれ使いますぅ。
以降「村人」や『夜明けの剣』の方々を狙う方を【白翼衣】で間合いを詰め優先的に、且つ[範囲攻撃][2回攻撃]を重ねて出来るだけ多くの相手を仕留められる様に動きましょう。
相手の装備の中に「使えそう/直せそうな物」が有りましたら、今後『夜明けの剣』の方々で使える可能性が有りますし、出来るだけ回収したいですぅ。
「キャーっ! ライノスちゃん、パトルちゃん!」
ド頭から窮地に陥った『夜明けの剣』を目撃し、レパルが顔を押さえて慌てる。勇姿を示したライノスたちは伸びてぐったりしてるからね、そりゃ慌てるってもんよ。
モリオンとルエリラは、何とも言えない顔をしていた。
「馬鹿正直に正面から行ったらそうなるって……」
「シリアス成分多かったら死んでたかもしれないね。セーフ」
眉間を揉みさえするモリオンの横で、こっち向いてピースするルエリラ。ライノスたちがギャグ補正でタフそうだからって余裕でカメラ目線である。
「くっ、まずいぞ!」
「このままでは全滅不可避!」
躯の女たちの向こうから聞こえる男たちの焦燥。
ルパートは長い長い息をついた。
「気概は認めるが……よく今まで生き延びられたな。本当に」
兜の隙間から覗く青い炎は、ちろちろと弱々しい。呆れるとこんなんなるんやね。
「ま、まあ、心意気は良いと思いますぅ」
「気合だけでどうにかなるなら、とっくの昔に世界は変わってるわよ」
フォローするように笑うるこるに、モリオンはため息交じりの苦言を呈する。当たり前だけどるこるは何も弁護できなかった。
が、沈黙が許されるのはそこまでだった。
「ぎゃあああーー!?」
「死ぬ死ぬぅーーー!!」
再度巻き起こる男たちの悲鳴。
いよいよマジやべぇ事態らしい、と空気が引き締まる。
「むむむー、させないぞー☆」
「あっ、私も同行しますぅ」
救援の口火を切ったのはパタパタと空を飛んでいたティエルだった。高く浮いて上空から包囲陣の中に突っこむと、続いてるこるも乳白色のオーラを纏って飛翔し、追随。
2人の姿が見えると『夜明けの剣』は情けなくも安堵の声をあげる。
「た、助かったぁ……!」
「命拾い! 命拾いした……って何だこれ?」
「皆さんと村の方々をお守りする盾ですぅ。なるべくその内側にいて下さいねぇ」
己を守護するように浮かぶビームシールドをしげしげと見つめる男に、るこるはニコリと笑って釘を刺した。四方をシールドで囲まれた人々はこれで幾分か安全になるはずだ。
であれば今度は攻め返す番――るこるは8台の浮遊砲台と刀を構え、その隣に獣奏器『風鳴りのレイピア』を構えたティエルがすーっと降りてくる。
「それでは応戦開始ですぅ」
「いっくぞー!」
「数が増えようとも我らの任に変わりはない……」
「領主様に従わぬ者に相応の苦しみを……!」
「ガアアァァァァァァァァ!!!!」
躯たちが獣じみた咆哮をあげた。苦痛とともに流れこむ呪いにより狂暴化した彼女らは、もはや自我すらも失って獰猛に2人に襲いかかる。
陣の外側にいた猟兵たちは互いの顔を見やった。
「始まったね」
「じゃあ、あたしたちも始めましょうか」
「ああ、そうだな」
頷きあったのはルエリラとモリオン、ルパートだ。オブリビオンたちは腹中にるこるとティエルを抱え込んだ。そこに外から攻撃すれば挟撃の形になる。
「一斉に仕掛けよう」
先頭を切る――にはやや呑気な声とともに、ルエリラがお手製の弓を引き絞る。
番えられた矢はなく、代わりに魔力が矢を形作る。青き光矢を目いっぱいに引くと、ルエリラはその張りつめた鏃を天にかざした。
「それ」
解放された魔力の矢が一直線に天上へ撃ちあがり、拡散する。一塊だった魔力は無数の小さな矢に姿を変え、今度は辺り一帯へと降りそそいだ。
見渡す限りの矢の雨が、躯たちの四肢に小さな風穴を開ける。
「外から敵襲……ガッ!?」
「人員を回すぞ……!」
仲間が倒れてゆく中、躯たちが錆びついた騎士剣を握って外に打って出た。
分けた戦力は半数。それだけあれば敵が何人だろうとも押しつぶせる。
そう、躯たちは思っていた。
だがその考えは、二歩三歩と足を進めたところで覆る。
「それしきの数で足りるか?」
怜悧な響きを感じさせた声は、ルパートだ。
己の燃える鉛を纏った大剣をかざす彼の背後には――50を超える騎士鎧が立ち並び、壮観な陣形を生み出していた。
その一つひとつが、大剣を構える。
「いくぞ」
ルパートの号令が終わるのを待たずして、鎧たちが進軍した。剣を構えた躯たちと衝突すると、そのまま入り乱れての乱戦を繰りひろげる。
じわじわと、躯たちの連携が崩れる。ルパートの複製した鎧たちは彼の巧みな念力操作で押し引きを繰り返し、そうと意識させぬうちに陣形を乱していた。
その生じた間隙へ、モリオンが疾走する。
「あたしはあたしの仕事をするまで、ね」
ユーベルコード『アクセラレイタ』――重力のオーラで包みこまれたモリオンの体は極限まで摩擦抵抗が抑えられ、まるで氷上を行くように高速で地を滑る。
おまけに、その移動は何の音も発さなかった。ゆえにルパートの鎧たちと戦う躯たちが彼女の接近に気づけるわけもなく、その存在に感づいたときには――。
「大人しく眠りなさい」
「っっがっ!!?」
『アクセラレイタ』によって硬化した得物、鋼針ギべオンが背中を貫いていた。剥き出しの肌に穿たれた毒針は躯の胸を飛び出し、たちまち仮初の命を断ち切る。
モリオンは針を引き抜くと、そのまま縦横無尽に戦場を駆け抜けた。
「かっ、は……!」
「うぐっ……!」
「いつの……間に……」
「『気合だけでどうにかなるなら』……それはあなた達も同じ事よ」
糸の切れた人形と化す躯たちを見下ろし、目を細めるモリオン。
その横で、ルパートは鎧たちが組み付いた躯を大剣で薙ぎ払い、とうとう包囲陣の外縁に斬りこんでいた。
「突破を許したか……!」
「聞け! 貴殿らに忘れてはならない鉄則を教える!」
迎撃に来た躯と打ち合いながら、ルパートが大音声を響かせる。
「『戦いは数』だ! 規模こそ違えど、猟兵ですらそれは無視できない! 死ぬな! 生かせ! 他者と連携し多数を確保し、少数に対処しろ!」
言いながら、ルパートは正対した躯を斬り伏せ、そして――。
「というかどこかに倒れてるライノスとパトルはさっさと起きろ! 貴様らの務めは最後まで指揮をとり士気を保ち続けること! 真っ先に倒れてどうする、戯け共!」
ドモォ、ドモォ……と響き渡る喝。
なおその間、ライノスたちは鼻提灯を膨らませていたとかいう噂がある。
「な、なんだか騎士様の声が聞こえた!?」
「ああ、あれは確かに鎧の騎士様!」
「なんか怒ってね?」
「外側で戦ってくれてるんだよ! みんなも頑張って持ちこたえよう!」
躯たちの攻勢を何とか凌いでいた『夜明けの剣』の面々が、きょろきょろと周りを見回す。そこへティエルは励ましの言葉をかけ、手を伸ばしてきた躯の頭をチクッとレイピアで突き刺したりした。
言うまでもないだろうが、ティエルもるこるも無事である。殺到する躯たちから『夜明けの剣』を守りながら、少しずつ敵の数を減らしていた。
しかし『夜明けの剣』の顔には疲れが見える。オブリビオンとの戦いはやはり相当無理があるらしく、肩で息をする者ばかりだ。
これは自分が頑張らなきゃ――と、ティエルが静かに発奮したときだった。
「まっくらやみの世界に ちいさな希望の灯り♪
立ち上がる意志あるかぎり そのかがやきは 消えない 消せない♪
それは みんなの中にあるものだから♪」
戦場には不似合いな、澄んだ歌声が聞こえた。
その音は小さいながらも不思議と聴く者の体に染み入り、力を湧き上がらせる。疲弊していた『夜明けの剣』の面々の顔に、みるみる活気が戻ってきた。
ティエルの尖り耳がピクッと跳ねあがる。
「この歌、ミフェットだー!」
パッと顔を明るませた妖精が、逸るままに羽ばたいて上昇する。
敵群の包囲から飛び出した上から見えたものは――やはり予想に反さず、仲良しブラックタールっ娘のミフェット・マザーグースだった。
「ミフェット、ボクはこっちだよー☆」
ティエルが手を振ると、背伸びして周りをきょろきょろ見渡していたミフェットも笑顔で手を振り返す。
「よかった、見つかった追いついた……。ティエル、だいじょうぶ?」
「だいじょーぶ! ミフェットの歌で元気が出たよ!」
心配そうな目をするミフェットに、レイピア持った手をぶんぶんと振るティエル。この会話が敵群の頭越しに行われているだなんて信じられないよね。
ミフェットは、躯たちの隙間に『夜明けの剣』の人々を見つけると、口元に手を添えて声を届ける。
「ティエルだって、ちっちゃいのにがんばってるんだから! みんなも、勇気をふりしぼってがんばって!」
「ああ、任せろォ!」
「お嬢ちゃんの歌で俺たちもやる気が出たぜ!」
エールを受けた男たちが俄然みなぎり、武器を握る手に力をこめる。
それを見て今こそ好機と捉えたティエルは、絶賛気絶中のライノスとパトルの上を飛び回り、その翅から癒しの粉を振り落とした。
「ほらっ! ライノスもパトルも起きる起きるー」
「ん……んあっ!?」
「俺はいったい……ってやばい!?」
傷を癒したライノスたちが頭を押さえつつ目覚める。少しぼうっと呆けていたが、周りにいる躯たちを見てたちまちガバッと立ち上がった。
「ようしボクに続けー! 一気に突破だよ!」
「「「おぉーー!!」」」
「逃がしはしない……」
万全の態勢となった『夜明けの剣』を率いて、ティエルが躯の一団に突っこむ。躯たちは不屈の闘志を燃やし一同を封じこめにかかるが、勢いに押されてジリジリと後退してゆく。
包囲陣がぐにゃりと歪みはじめた――そこへ!
中空に炎の輪がいつの間にか!
「そこまでよ、ゾンビ怪人! とおっ!」
唐突にニチアサばりの大ジャンプ宙返りでその輪を抜けたのは、レパル!
そのキレッキレのアクションで躯たちの視線を集めると、レパルの全身が眩く煌びやかな光の奔流に包まれる。そしてその光が晴れたとき――。
「あたしは光の化身! 希望の灯火が心を燃やす! 魔法猟兵イェーガー・レパル、ただいま参上!」
ててーん。
ひらりとマントを翻し、魔法のステッキ(棘付き鉄球が付属)を持ったレパルが爆誕していた。爆誕していました。
「何だあれは……」
「敵なのか……?」
「敵ならば、屠るのみ……!!」
突然の魔法少女にざわつきつつも、呪いを発動させて躯たちが狂戦士化。おぞましく隆起させた筋肉でもってレパルに襲いかかる。
「レパル、突貫!」
対するレパルは全速全開。躯たちに単身、突撃した。
引かれた一条の輝きが、躯の陣形の中を突き進み、分断する!
「いっけぇぇーー!!」
「ガアアッ!?」
「キ、サマァ……!!」
群れの中を突破したレパルが、ぐんぐんと速度を上げてみるみる戦域から離れてゆく。その速さたるや凄まじく、彼女しか目に入らなくなった躯たちはぞろぞろと後を追う。
計算通り――レパルは後ろを振り返り、仲間たちに叫んだ。
「今よ! あたしが引きつけている間にみんなを!」
敵の誘引、それがレパルの狙いだった。そして彼女の目論見どおり、『夜明けの剣』及び村人たちを包囲する躯の数は劇的に減っている。
「レパルさん、ありがとうございますぅ」
るこるはレパルにぺこりと会釈をすると、浮遊砲台『FRS』をすべて一方向に展開。全火力を注いだ熱線で躯たちを焼き払い、その先にぽっかりと、人々の活路を開く。
「皆さん、今のうちに脱出しましょうねぇ」
「あぁ! 急げ急げー!」
「動けない者は鎧に掴まれ!」
るこるの後に続き、ライノスたちが躯の包囲網を切り抜ける。憔悴した様子の村人たちはルパートの鎧に回収され、無事に全員が虎口を凌いで生還した。
「逃がすか……!」
「領主様の、命令だ……!」
猟兵に導かれて逃げてゆく人々を、死に物狂いで追ってくる躯たち。
だがその追撃は届かない。
彼女らの行く手に、モリオンとルエリラが立ち塞がったからだ。
「どけ……!!」
「そう言われてどくわけがないでしょう?」
躯たちが剣を振りかぶり、何本もの刃が二人に群がる。しかしモリオンは捕縛しておいた躯を盾にしてすり抜け、逆に毒針の刺突で瞬く間に二体を骸の海に還す。
「みんなここでストップだよ」
ルエリラもブーツに翼を生やして飛翔し、横薙ぎの斬撃を回避。そのまま頭上から光矢を降らせ、次々に躯たちをその場に討ち取ってゆく。
「これは……」
「旗色が悪い……!」
ただ仲間が散るばかりの状況に、足が退きはじめる躯たち。
――が、彼女らはもはや、退却すらも許されなかった。
「くらえー! 閃虎爪!!」
「っがあああっ!?」
「何だ!?」
「挟撃されている……!」
遠のいてから反転してきたレパルが、最後尾の躯をその爪で切り裂く。そして上がった断末魔で、オブリビオンたちは自らに逃げ場のないことに初めて気づいたのだ。
「2人のカタキは……あたしが討つ!」
後方に仁王立ちし、凄んでみせるレパル。
すでにライノスたちが復活し、脱出していたことに、まったく気づいていなかった。
錆びついた剣が、散乱している。
あれから猟兵たちは見事な手並みで躯たちを葬り去り、村は静かな時間を取り戻していた。
あとに残るのは躯の女たちが持っていた騎士剣ばかり。
それを、るこるは1本1本、状態を吟味して拾い集めていた。
「今後『夜明けの剣』の方々で使える可能性が有りますし、使えそうな物は拾っておきますねぇ」
わぁ、現実的ぃー。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『生き続けるために』
|
POW : 拠点近くにある木々や石材を片っ端から確保する。
SPD : 食糧や水など、生存に必要不可欠な物資を片っ端から確保する。
WIZ : ユーベルコードや知識によって効率的に資材や物資を確保する。
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
立ち並ぶのは、寂れた墓石の数々。
乾いた風が吹き、巻きあがった砂が霧のように視界を濁している――そんな気味悪い墓地の一角で、ライノスは大ぶりな墓石をずらし、その下に続く入り口を猟兵に見せた。
「歓待はできないが、まあ入ってくれ」
灯りを手にしたライノスに続き、内部へと入ってゆく猟兵たち。
死者の象徴ばかりであった地上と違い、地下には生者の営みがそこかしこに見えた。仕切られた空間には一つひとつに灯りが置かれ、寝床と思しき藁の束が設置されている。狭苦しいが、生活の一端が垣間見える情景だった。
村をオブリビオンの蹂躙から救った猟兵と『夜明けの剣』の一行は、すぐにその場を引き上げて彼らの拠点へ戻ることを決めた。
派遣されていた配下の質や量を考えれば、領主があの村を大して気にかけていなかっただろうことが猟兵にはわかった。だがそれでも長く留まるのはリスクが大きい。速やかに引き上げるのは当然の判断だった。
そして現在、『夜明けの剣』は無事に根城へと戻ることができた。
つまりは一件落着で、猟兵たちは成すべきを成したのだ。
――が、かと言って一同はさよならして帰れる状況でもなかった。
村を救ったことで、今度は別の問題が生じていたのだ。
「どうする、ライノス」
「うーん、どうするかね……」
ひとまず広めの部屋に通されていた猟兵たちの前で、ライノスとパトルが悩ましげな感じで密やか声を交わしている。
彼らが懸念するもの――それは助けた村人のことだった。
もっと具体的に言うならば、墓地までの帰還についてきた村人たちのことだった。
村人たちは『夜明けの剣』に合流することを決め、村を捨ててきたのだ。
『今日はひとまずの安寧を得たがそれが続く保証はない』
『情報を聞きつけた領主が今度はより多くの配下を差し向けてくるかもしれない』
そう思えば、村に残るという判断は彼らにはできなかった。元より村はほぼ壊滅状態に陥っていたという事実も彼らの背中を後押ししていたのだろう。
しかし『夜明けの剣』のほうも、簡単に合流を了承できぬ事情があった。
「それほど多くはない人数だが……受け入れる余裕はないぞ」
「食糧だってギリギリですし、居住スペースだってすぐには作れないですしね……」
「人数が増えるのは歓迎なんだけどな……くそっ、どうすりゃいいんだ……」
仲間と話し合っていたライノスが、むしゃくしゃして頭を掻く。
そう、『夜明けの剣』は資源・物資の不足という現実的な問題に直面していたのだ。
たとえば何かしらの設備を作るにも資材が要るし、人が働くにも食糧と水が要る。調理の火を熾すにも薪が要るし、拠点の防備を整えるにも石材が要るし、戦うための武器を作るにも鉄が必要だ。
つまり、現状はとんでもなく厳しい。
そこに新しい者を迎えるなどとても不可能だ。
しかし、だからといって迷える人々を見捨てることもできない。
ライノスたちは賢くない頭を抱え、熱暴走しそうなほどに考えこんだ。けれどそれでも良案、妙案は出てきてくれない……。
そんなときである。
彼らがようやく、残ってくれている猟兵たちに気が付いたのは。
「……なあ、さんざん助けてもらっておいて虫がよすぎるってのはわかってるんだが……ひとつ、もうひとつだけ頼まれてくれないか!?」
「そ、そうだな! あんたたちなら!」
「お願いします! この際ついでだと思って!!」
オール土下座で懇願してくる『夜明けの剣』。
どうやら帰る前にひと仕事できてしまったらしい、と猟兵たちは理解したのだった。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎
■行動
まあ、乗り掛かった舟ですし、このまま帰るわけにも行きませんねぇ。
一先ず「武器」は多少確保済ですぅ。
【饒僕】を召喚&使役、周囲の情報を集め「資材」として使えそうな品を探しましょう。
優先順位が高いのは「生存」に関連する「食料」と「水」ですが、他の資材も無駄には出来ません。
発見出来た品は回収、[怪力]で運びますねぇ。
必要、且つ可能であれば【豊饒現界([怪力]強化)】や【白翼衣】を使って効率的に運び、「食料」は[料理]で「保存食」に加工しますぅ。
後は、地下の居住空間を広げる際に出る「土」も「資材」として使えるでしょう。
此方も力仕事ですし、同様にお手伝いしますぅ。
レパル・リオン
…ここであたしが肉や素材を集めてくるのは難しくないわ
でも、それであたし達に頼るようになっちゃいけないわ!
幸い、レジスタンスのみんなは勇気は十分!だったら、その勇気を力に変えるのよ!
そんなわけであたしが教えるのは『ダッシュのコツ』よ!
足が速ければなんでもできる!
攻めるのも逃げるのも上手くなる!資材集めも素早くできるわ!
それと『ダンス』も教えたいわね。生きる為に、楽しいことは絶対必要だもの!体も鍛えられて一石二鳥よねっ!
1人で何でもできるようになんて、ならなくていいわ
みんなで力と心を合わせるのよ!
「まあ、乗り掛かった舟ですしねぇ」
「いやあ、本当に助かるぜ……!」
探るように辺りに目を配るるこるに、並び歩く『夜明けの剣』の若者が頭を下げた。
二人は地下を出て、墓地の外を歩いていた。有用な物がないかを調査しているのである。
「あ、あちらに質の良い石があるみたいですぅ」
「少し遠くの林なら兎なども獲れるようですねぇ」
「へぇ、そこまでわかるのかぁ……」
どこからか飛んできた小動物を指に止め、若者へ方向を示するこる。その小動物は彼女がユーベルコードで召喚したもので、周囲の情報を逐一、報告してくれていた。
情報を掴めば、その場所を回って使えそうな物を回収する。石などもあるため重量も相当だったが、るこるは見目に似合わぬ怪力で易々と墓地まで運搬した。
あとは地下に運び入れるだけ――と、入り口の墓石の前に荷物を置いたときだ。
少し遠くから威勢の良い声が聞こえてきた。
「ここであたしが肉や素材を集めてくるのは難しくないわ。でも、それであたし達に頼るようになっちゃいけないわ!」
『はい! わかりましたぁ!』
「あれは……レパルさん?」
声のほうへ近づいたるこるが見たのは、整列した『夜明けの剣』の前で何やら熱く語っているレパルの姿である。
「向こうに線を引いたわ! みんな、こことその線の間を往復してみて!」
「往復ですね!」
「うおおお!!」
ピッ、とレパルが吹いた笛を合図に、男たちが猛然と走りはじめる。
脚が上がり、上体も立ち、腕も振れている――無駄に綺麗な走り姿だった。
「その調子よ! 足が速ければなんでもできる! 攻めるのも逃げるのも上手くなる! 資材集めも素早くできるわ! みんなの勇気を力に変えるのよ!」
『うおおおおおおお!!!』
笛を鳴らし続けるレパルに、野太い声たちが呼応する。
「皆さん、速いですねぇ」
「でしょ! これで生存力がアップしたはずよ!」
隣にやってきたるこるに対して、レパルは胸を張り、つんと鼻を天に向ける。
ダッシュのコツを教える――そう息巻いていたレパルの指導は、きっちり成功したようです。
「お肉を獲ってきたので、お腹がすいたら下りてきて下さいねぇ」
「わかったわ、ありがとう!」
ぶんぶん手を振るレパルに背を向け、るこるは地下拠点に戻る。
もう彼女が持ってきた物資は『夜明けの剣』が中に運んでくれていた。これなら仕事が早くなる、とるこるは和風メイド服の大きな袖をまくる。
「お肉は保存ができるように、水分を抜いて乾かしておきますねぇ。食糧が備蓄できれば外に出る危険も減りますぅ」
「おぉ、それは確かに!」
「保存が利くのは助かるぜ!」
色めき立つライノスたち。彼らの期待を一身に受けつつ、るこるは着々と肉の加工を済ませてゆく。
数十分もすれば、壁と壁に渡した紐には何十枚もの肉が吊るされていた。
「短時間でこんなに……」
「十分に乾かしたら下ろしてくださいねぇ……あ、あれは土ですねぇ」
「はい。この地下を掘りひろげるときに出たやつです」
拠点の空間の一角に目を止めたるこるに、若者が答える。その返事を聞くとるこるは簡単な手車を作り、そこに土を積みはじめた。
「土も資材として使えますぅ」
「なるほどー」
若者と二人でせっせと土を運びだするこる。墓地の一角にはみるみる土山が完成した。
「ひとまずここで保管ですぅ」
力仕事を終えた体をぐぐっと伸ばし、るこるはふぅと息を吐く。
すると、だ。
またレパルの声が聞こえてきた。今度はどこか……楽しげである。
興味を引かれて覗いてみるとそこには――。
「みんな! もっとステップ大きく! 全身で表現するのよ!」
『おおおおーーー!!』
一列に並んで軽快に踊る男たちと、その前でインストラクターよろしくステップ踏んでるレパルさんがいた。
輝かしい汗が、皆の体から弾ける!
「生きる為に、楽しいことは絶対必要だもの! 体も鍛えられて一石二鳥よねっ!」
『そーですね!!』
レパルの笑顔に、アハハハと爽やかに笑い返す男たち。
墓石の陰から眺めていたるこるは、くすっと笑った。
「何だか未来は明るそうですぅ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルパート・ブラックスミス
薪も食糧もいらん。
火が必要な作業、人手が必要な作業、運ぶ作業を教えろ。お前たちは頭脳労働だ。
UC【錬成カミヤドリ】の複製鎧たちを連れて必要な作業に従事。
主に【怪力】と【運搬】を活かす居住区拡張の土木作業になるか。火が必要なら燃える鉛の炎を使おう。
そもそも貴殿らは猪突猛進過ぎる。
こうして助けた後も考えていない。助かったのだから生きねばならんのだぞ?
…そう、ヴァンパイアに勝とうとも、その先の未来を生きなければ意味がない。
死ぬな。生かせ。その為に、貴殿らの決意と気概が必要なのだ。
一人でも多く、救いの…夜明けの日に導け。頼むぞ『夜明けの剣』。
【絡み・アドリブ歓迎】
ミフェット・マザーグース
みんなが水を飲めるように、井戸をほろう!
むずかしいけど、ちゃんと調べれば、ちゃんと水はあるはずだもん
村の人たちや、みんなが手伝ってくれるなら、見つかるはず
ティエルのアイデアを実現させるよ!
【WIZ】
「コミュ力」で村の人達からお話を聞かせてもらって、もうある井戸の場所、水源の場所を「情報収集」して、むかしに「学習」した井戸の作り方から地下水が出そうな場所をさがすよ
あたりをつけた場所を、ミフェットの髪をドリルに変えて、「怪力」「串刺し」「トンネル掘り」でどんどん穴を掘る!
ティエルに土砂を片付けてもらって、とにかく穴を掘ることに集中!
かたっぱしからあたりをつけた場所を掘って、みんなの井戸を作るよ!
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
ミフェット(f09867)と一緒
「ううーん!お水、お水……そうだ、秘密基地の中に井戸を掘っちゃえばいいんだよ!」
お外に汲みに行かなくていいから安心だよね♪
「コミュ力」「情報収集」を使って『夜明けの剣』の人や村人さんにお水の出そうな場所を考えてもらうよ!
場所が決まったらミフェットと一緒に協力してどんどん穴を掘っていくよ!
ボクはミフェットが掻き出した土砂を【フェアリーランド】に放り込んでお外まで捨ててくるね♪
井戸を掘っている間、村の人たちには井戸で使う滑車とか色々用意してもらうね☆
大丈夫、きっとお水は出てくるよ!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
拠点の拡張のために何ができるのか。
それをミフェットと一緒に考えこんでいたティエルは、ハッと顔を上げる。
「お水、お水……そうだ、秘密基地の中に井戸を掘っちゃえばいいんだよ!」
「あっ、それいいかも。井戸があれば、みんな水を飲めるね!」
「ね。お外に汲みに行かなくていいから安心だよね♪」
「うん。むずかしいけど、みんなでがんばれば、できるはず!」
これは名案、とばかりにキャッキャと手を合わせるティエルとミフェット。
そうと決まれば、まずやるべきは水源の探索だ。子供のようにはしゃぎはしたが、ただ地面を掘れば水が出てくるわけではないと二人もわかっている。
なので、その辺にいたパトルを捕まえてみた。
「井戸ねぇ……そういえば吸血鬼どもに埋められた井戸が近くにあった気がするな」
「それだー!」
「パトル、その場所、おしえてくれる?」
「ああ、もちろん」
快諾したパトルに連れられて二人は地下から外に出て、数分ばかり歩いた。
井戸はすぐに見つかった。縦穴は土で埋められてしまって井戸の機能を果たしてはいなかったが、むしろ人為的だからこそ、まだ水源が生きている可能性がある。
これを掘ってみよう。
ティエルとミフェットは目を合わせ、意思を確認した。
「よーし、それじゃこの井戸の下に繋がるように、地下を拡張だー☆」
「井戸掘りは、ミフェットががんばるね」
「うん、お願い! あ、地下の工事はあの人に手伝ってもらおー☆」
ブラックタールの髪の毛をドリルにしてぐるぐるさせるミフェットにウインクして、ティエルはポンと掌に拳を当てる。
果たして誰に手伝ってもらうのか――。
「いやあ、騎士様! 助かるぜ!」
「こうして火も熾してもらった上に、拡張工事まで……」
「構わん。別にお前たちに楽をさせようという話ではないからな。この拠点に何が必要かを考えろ、頭脳労働がお前たちの仕事だ」
青く燃える鉛の炎で調理を行っている『夜明けの剣』の者たちに、ルパートは例の複製鎧たちを引き連れて淡々と答えた。鎧たちは皆、岩の砕片や土袋を持っている。
ルパートは持ち前の力を活用して、地下の拡張工事に従事していた。拠点の改善案を考えることは住人たちに一任して、自身は複製鎧たちを使って作業を進めることが、最も効率が良いだろうという判断である。
おかげで、地下の居住区はみるみるその空間をひろげていた。
「これなら村人たちを受け入れる余裕はありそうだ……」
「彼らを外の世界に追い出さずに済むのはありがたい。本当に助かったぜ、騎士様」
ライノスをはじめとして、男たちがルパートに頭を下げる。
苦渋の決断を下さずに済む。その懸念が薄れた彼らの表情は、心なしか晴れやかだった。
が、ルパートは厳しい口調で、ライノスたちを諭す。
「そもそも貴殿らは猪突猛進過ぎる。助けた相手が生きるその後を考えるのも、助ける者の責務だぞ? ……そう、ヴァンパイアに勝とうとも、その先の未来がなければ意味がない」
「そ、それは返す言葉もない……」
「騎士様や、ほかの皆様がいなければどうなっていたか……」
恥じ入るように俯く『夜明けの剣』。
ルパートは、そんな彼らの肩をぐっと掴んだ。叱責するためではない。
「死ぬな。生かせ。その為に、貴殿らの決意と気概が必要なのだ。一人でも多く、救いの……夜明けの日に導け。頼むぞ『夜明けの剣』」
「騎士様……!」
「はい! わかりました!」
「それでいい」
力強く頷いた男たちへ、ルパートもまた小さく首を縦に沈める。
と、そこへ。
「いたー! ねぇ、ルパートー!」
「おねがいしたいことが、あるの」
「自分に? 何をだ?」
ティエルとミフェットが手を振って駆けてきたので、首を傾げるルパートだった。
数分後。
ルパートさんによるマッハ作業でティエルたちは井戸の下に来ていた。
「ここまででいいんだな?」
「やったー! 到着!」
「ありがとう、ルパート」
拠点から横穴を掘り進めたルパートをぺたぺた叩いてお礼をすると、そのまま井戸掘り作業に入る二人。
ミフェットは宣言どおり、髪の毛をニュッとドリルに変える。
「それじゃあ掘り進めるよ!」
「かきだした土はボクが片付けるよ!」
ぺちっとハイタッチを交わし、協力体制で井戸掘りに臨むミフェット&ティエル。
ズゴッと刺した髪ドリルを回せば土はぼろぼろ崩れ、すぐさま大量の土が室内に放り出される。ティエルはそれをフェアリーランドの壺に吸いこむと、パタパタと飛んで地上に捨てに行った。
「土が積まれてるからここにしよー☆」
ぽいっ、とすでに出来上がっていた簡易集積所に土を吐き出し、また地下に戻る。
そうして掘っては捨て、掘っては捨てを繰り返して――。
「やったーー!! 水だーー!!」
「よかったね、ティエル!」
二人は、潤沢に水が湧く井戸を蘇らせることに成功していた。埋められた井戸の水源はどうやらまだ生きていたようで、村人に作ってもらっていた桶や滑車を使えば、冷たくて美味しい湧き水を思うまま汲むことができた。
「おぉ、井戸が……!」
「綺麗な水が……!」
「ふふーん! これで安全に水汲みできるよね☆」
「水浴びもできるね。みんないっぱいつかってね」
「ああ、もちろんだとも!」
ティエルとミフェットに感謝をこめて、がしっとハグしてくるライノスたち一同。
これで、またひとつ、地下拠点は万全なものとなっただろう。
その後、とりあえず水で乾杯したのは言うまでもない。
大成功
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ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
まぁまぁ落ち着いて。
腹が減ってはいい考えも浮かばないよね。
ひとまずお腹いっぱいになってもらって私は探索しよう。
という事で芋煮を皆に配るよ。
ウェストポーチから私の芋煮を取り出して皆が食べれるように配給配給。
お腹いっぱいになってもらって場の空気を少しでも軽くしたところで、メカ・シャーク号に乗って周辺の水辺や動植物を探しに行ってみようかな。
周辺の安全性を確認しつつ、食べれそうな植物や動物を狩りながら記録をとって持ち帰ろう。
人手も増えたし、どこにどんな動物や植物が生息しているかわかれば、たぶんこれからもやっていけるよね?
他にもなにか手伝えたら手伝うけど、なにかあるかな?
モリオン・ヴァレー
味方が増える事はいい事だけれど、物資はどうしても必要よね
そういえば近くに、それなりに草木が生えていた道があったわよね……
【SPD】
<医術><情報収集>植物の中から医療用に使えそうなモノを集め、液状や粉末に加工してすぐに使える形にし、その加工法も伝えておくわ
戦いが起こるというのなら、当然怪我人も出る
あるいは、病に襲われるかもしれない
それに対抗する手段は持っておいた方がいいでしょう
<オーラ防御><ロープワーク>あとは……
あたしの指から伸ばす霊力の糸、それに重力の力を纏わせ振るえばしなる刃となるわ
手頃な樹を切って薪の確保もしておこうかしら
あえて辛い道を選んだあなた達だからこそ、頑張って貰いたいわね
鼻腔をくすぐるのは、温かな匂い。
『夜明けの剣』がいつも皆で食事を摂る、ちょっとした居間には、せっせと動き回っているルエリラの姿があった。
彼女が次々とウエストポーチから取り出すのは――芋煮。
「腹が減ってはいい考えも浮かばない。ということで芋煮だよ」
「こ、これは……!」
「イモ……ニ……??」
「そう、これは芋煮。世界一美味しい食べ物」
ぐっ、とサムズアップするルエリラ。
いきなりブッコミやがって……とは言いたくなるが、実際、芋煮は好評だった。一口食べた『夜明けの剣』は未体験の味に瞠目し、それから競うようにルエリラ特製の芋煮を口に運び続けたのだ。
そうして布教を終えたところで、ルエリラはメカ・シャーク号(1mほど浮くサメっぽい乗り物)に乗りこんで意気揚々と外に出た。
目指したのは水辺だ。
ふよふよと移動すること小一時間、見つけたのは小さな川だった。辺りにはいくらか草花が生えていて、闇の世界にあってもそこに確かな生命の営みがあるのだと感じられる。
ルエリラはメカ・シャーク号を下りると、その植物の一つひとつ撮影しはじめた。
「これは食べれるのかな……まあ、地元の人だったらわかるよね」
水辺を歩き回り、ぷちぷちと植物を採取するルエリラ。
どこにどんな植物が生息しているかがわかれば、『夜明けの剣』の人々のこれからにとって有用なはず。それが少女の考えだった。道程の安全性もきっちり確認してある。
「さてと。それじゃあ次は動物の調査を……ん?」
植物でポーチをいっぱいにしたルエリラが、ふとこちらに近づいてくる人影に気づく。
現れたのは――わりかしごつい宇宙バイク『マルカジット』に跨ったモリオンだった。
「あら、いたのねルエリラさん」
「まあね。モリオンはどうしてここに?」
「あたしは使えそうな植物を探しに」
採取した植物で満杯になっている籠を見せるモリオン。ルエリラはその中を覗いたが、そこに収まる植物たちの傾向は彼女のものとは違っていた。およそ食用とは思えない物もちらほらと見える。
「これは何の植物?」
「薬とか医療用に使えそうなモノよ。怪我や病……それに対抗できる手段はあったほうがいいものね」
「なるほど。それは大事だね」
こくっ、と頷くルエリラ。
それから二人は水辺の動植物をくまなく調査して、記録をとり、多くの収穫物とともに地下拠点に帰還した。外に出ている間に肉が干されてたり井戸水が湧いてたり空間がひろがってたり何人かが踊り狂ってたりしていて割と衝撃だった。
が、それはそれ。
ルエリラが記録と収穫を渡すと、ライノスはパッと顔を明るくした。
「こいつは助かる……! 俺たちにとっちゃ外に出るのも命がけだからな、いま周辺がどうなってるかもよくわからなかったんだよな……」
「これできっとやっていける」
ぽんぽんと肩を叩くルエリラ。
一方、モリオンは部屋の隅に大量の薪を置く。指から伸ばす霊力の糸を駆使し、樹木を伐採して当面の薪も確保しておいたのである。
「薪はありがたい。感謝するぜ、モリオンさん」
「いいのよ。人が増えれば、物資はどうしても必要よね」
頭を下げるライノスにくすりと吐息をこぼすと、モリオンは一緒に謎の液体や粉末も手渡す。
それらを両手に持ったまま、ライノスは首を傾げた。
「……これは何だ?」
「傷や病に使える薬よ。その辺りにある植物で賄ったわ」
「薬!!」
『夜明けの剣』の面々が色めき立つ。いつ誰が命を落とすとも知れないダークセイヴァーにあっては、薬という物はとにかく価値のある物だった。元よりそう思っての行動だったが、彼らの嬉しそうな顔を見てモリオンは改めてそれを知った。
「加工法もメモしておくわ。ルエリラの情報を参照してもらえれば、どこに生えているかもわかる。だから……頑張ってね、皆さん」
「ああ、もちろん! これだけ力を貸してもらったんだ!」
「この世界の夜が明けるまで、俺たちは負けないつもりだぜ!」
モリオンに笑いかける『夜明けの剣』の表情は、希望に満ちていた。
猟兵たちによってまた明日を生きる活力を得た彼らは、新たな仲間と一緒にきっとまた明日も生き抜くだろう。
世界を覆う重々しい闇が晴れ渡る、その日まで。
大成功
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