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お正月なら餅を食え！

作者：外持雨

●『明けましておめでとう諸君。新年早々だが事件ダヨ！』
　ここ、サムライエンパイアの世界でも新年を迎え、住民の間ではお祝いムードが広がっている。だがしかし、平和の裏では悪が潜み企むというもの。一見何事もないかのように思えても、刻一刻と魔の手が忍び寄っていた......。

●『餅は凶器。この場合は狂気カナ？』
「さて諸君、お餅は好きカネ？」
　読んでいた本型のグリモアを閉じ、ふいにそんな質問を投げかける石動・レイン。今がお正月だからなのか？と猟兵たちは首を捻るもなぜそんなことを問われねばならないのかさっぱりわからない。そもそもここに呼ばれたのはレインが事件を予知したから、のはずなのだが......。
「手短に言うとダヨ、鏡餅が餅つきをしている場を襲い、人々を窒息させようとしているンダ」
　わけがわからないよ......と、一様に疑問符を浮かべる猟兵たち。
「とまあ、訳が分からないというそこの君に向けて説明するとダネ。今回出現するであろうオブリビオンは鏡餅デネ、自らの一部をもって人々を窒息させて殺し、配下に加えるという特性を持っている」
　餅の恐ろしさを知らぬ者はいないだろう。毎年何人もの人がのどに詰まらせ病院送りにされているのは周知の事実。しかしてお正月には欠かせないのもまた事実である。
「やつはまず、自分の配下に餅つき会場を襲わせ、人々を捕まえて強制的にのどに詰め込み窒息させようと企んでいる」
　なんともまあ恐ろしい、そう言って若干大げさに身を震わせるレイン。
「だから諸君らがすることは、餅つき会場を襲ってくる配下を蹴散らし、ボスの鏡餅を鏡開きにすることダヨ」
　なんか鏡開きの使い方が違うがまあいいだろう。
「せっかくのお正月だし、その後で餅つきに参加してもいいんじゃないカナ。自分たちを助けてくれた人達が参加する、となれば住民たちも喜ぶだろうサ」
　あ、そうそう。そう言ってレインは猟兵たちを送り出す前に一言付け加える。
「是非ともお土産を忘れないでくれヨ、それじゃあ行ってらっしゃい」
　そんな彼に見送られながら猟兵たちはゲートをくぐりっていく。

第1章 集団戦 『落武者』

POW   :    無情なる無念 自身に【すでに倒された他の落武者達の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。 SPD   :    欠落の決意 【武器や肉弾戦】による素早い一撃を放つ。また、【首や四肢が欠落する】等で身軽になれば、更に加速する。 WIZ   :    妄執の猛撃 【持っている武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●『落武者 VS 4人の美少女（ただし1人は男）』

「今日はたくさんお餅をつくぞ！」
「力仕事は男衆にまかせたよ！」
「わしは柔らかいのがええのう......」
　老若男女、皆が楽しそうに餅つきの準備を進める中、複数の異様な人影が近づいていく。生気のない瞳に血の気のない肌、足を引き摺り歩く様はまるで、というかゾンビそのもの。だが彼らはゾンビではなく落武者たち（死因：餅）である。なお落武者って別に死んでなくても落武者らしい。もっとこう、幽霊チックなものだと思ってました。
「な、なんじゃあ！？」
　落武者たちに気付いた男が驚いて腰を抜かし、あっさりと捕まってしまう。あゝなんと哀れなことか、この男も落武者達と同様に、のどに餅を詰め込まれ死ぬ運命が待ち受けているのか......。
「楽しい餅つきを台無しにするなんて許せない！」
　だがしかし、そんな悲惨なことは起こらない。落武者を蹴飛ばし男を助け出したのは小鳥遊・晶（人狼のビーストマスター・f05955）。彼女は落武者たちに怒りを向けながらもまずは住民を避難させようと動いていた。
「早く！ここはわたしたちが時間を稼いでいるから皆さんは逃げて！」
「わかった！嬢ちゃんたちも気を付けてな！」
　そう言って腰を抜かしたままの男を回収しながらも手際よく避難していく人々。なかなかどうして逞しい。
　人がいなくなったのを見計らい、攻撃に移る。これでもう自らの攻撃に巻き込む心配もない。
「ガァアアアア！！！」
　一斉に降り注ぐ刃を躱し吠える晶、人狼の咆哮が落武者たちを吹き飛ばしていく。

「ミラの好きなお餅の中でも特に好きな鏡餅で悪さをするやつは許さないデス！」
　憤慨するのはミラ・グリンネル（妖狐の精霊術士・f05737）。フードファイターなだけあって食べ物を悪事に使う者が特に許せないようだ。この場合悪事を働かんとしているのは食べ物の方なのだが......。
「流石ミラさん、燃えてますねぇ......」
　そんなミラと一緒に来た彩波・いちご（ないしょの土地神様・f00301）。なおさきほど嬢ちゃんたちと言われたが、いちごは男である。見た目は可憐な狐耳の男の娘だ。実に良いと思わんかね？
「お餅をのどに詰めて窒息だなんてほんと危ないんですから。お餅を悪用する人たちにお仕置きしちゃいましょう！」
　だから悪いのは鏡餅の方なんだってば......。
「「フォックスファイア」」
　とはいえ今は落武者たちの対処が先である。互いに背中を預けた二人は一糸乱れぬ連携で狐火を放っていく。乱れ舞う炎が次々と落武者たちをこんがりと焼いていく。
「アハハハ！どんどんミラに向かってくるが良いデス！ミラの鏡餅パワーを味わうデスネ！」
　興奮したのか耳と尻尾がぴょこんと飛び出すミラ。というか興奮しすぎて周りへの注意が疎かになっている。
「そもそも鏡餅で窒息させるとか意味不明デス。どうやって窒息させるデスカ？ミラの鏡餅で逆に窒息させマスカ？」
　そう言って二つのたわわを持ち上げるミラだが、
「危ないっ！」
　そこに飛び込んでくるいちご。ミラの死角にいた敵の攻撃から庇ったのだが、はずなのだが、勢い余って胸の中に飛び込んでいく形となってしまった。
「......？！」
「なんでイチゴが飛び込んでくるデス？甘えたいデスカ？」
　そのまま力強く抱きしめるミラ。うらやまけしからんもっとやれ。だがそんなことをすれば埋もれたままのいちごは当然、
「............」
　息ができないわけである。南無南無。（死んでません）

「餅をのどに詰まらせて......落武者というか餅武者？」
　そう呟いてエグゼ・エクスマキナ（エクスターミネーターソード・f00125）は彼女の持つ巨大な得物を振りかぶり、
「もう一層そのまま餅になれ。コード開放！エクスターミネーターソード！！」
　そのままメイス（モンキーレンチ）を振り下ろす。まるで餅つきの杵の如し、ただしどう頑張ってもできるのは餅ではなくミンチでしかない。あとソードって言ってるけど剣じゃないのね。
　落武者の胴体に首がめり込むまで無心に巨大なメイス（モンキーレンチ）を振り下ろし叩き潰すエグゼ、惨い。
　そんな彼女に近づいては敵わないとでも思ったか、距離を取り、弓を持つ落武者たちが矢を射かけるも、
「ふん！」
　エグゼは己の得物、巨大なメイス（モンキーレンチ）のエグゼ・ザ・ヴァリアブルメイスを盾にして近づき横一閃に振るうだけ。バラバラに砕け散ってしまえば落武者もただの動けない肉塊と化す。

　4人の活躍によって落武者たちは、まだ残りがいるものの、その数を減らしていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●『落武者討ち取ったり、ということは落武者狩りなのカナ？』

「亡霊を鎮めるのもまた巫女のお仕事ですが、お餅を持って襲ってくる落武者の亡霊は初めて見ますね......遠つ御祖の神、御照覧ましませ」
　戸惑いながらも破魔の矢をつがえては放ち、落武者たちをまとめて射抜いていく加賀・琴（羅刹の戦巫女・f02819）。落武者たちはすでに死した身、破魔の力が込められた矢はただでさえ毒なのにそれが何十にも分裂してくるものだから彼らもうかつには近寄れずにいた。
　同じく弓矢で対抗しようとした落武者もいたが、矢をつがえる間もなく、琴の放つ矢に射抜かれていく。
「本当に何と言ったらいいのかわかりませんが、お正月のお祝いを穢させるわけにはいきませんね」
　だからといって近寄ればどうにかなるというものでもない。屋根の上からダイブして奇襲を仕掛けようと企んだ落武者もいたが、今度は無造作に振るわれる薙刀がうなりを上げる。無謀な落武者たちは碌に戦果を挙げることもかなわず、空中で捌かれ、地面に落ちるころには指一つ動かすことできない躯へとなっていた。
「これでも羅刹ですから。私、近づかれたら無力というわけではないですよ？」
　そう言って微笑み、また弓を手に取る琴。鬼の面に浮かぶ慈愛の笑み、なんともおっかない。

「助けに来たよ......って、いちごさんは何をやってるのやら......」
　恋華荘から助っ人参上。結城・蓮（チキチータ・マジシャン・REN・f10083）は颯爽と登場するも、見知った二人が何やら大変なことになっているのを見てあきれている。
「ま、あの二人に限って言えば日常茶飯事みたいだし、気にしないことにしよう。うん」
　どうやらアレはチャメシ＝インシデントらしい。なにそれちょっと詳しく。
「さて、落武者諸君。災難だったねぇ。ところで新年の名物といえばいろいろあると思うけど......隠し芸大会なるものが昔あったそうじゃないか」
　そう言って懐からトランプの束を取り出し、空にばらまく蓮。
「というわけで、新年早々のマジックショーと行こうじゃないか。まあボクの場合は隠し芸でもなんでもなく本業なんだけどね」
　ばらまかれたトランプはそのまま宙に浮いたかと思うと、炎を纏った炎弾となり、落武者たちに撃ち込まれる。
「タネも仕掛けもございません、ってね」
　何処へともなく一礼する蓮。そうしている間にも周囲にいるのだけではなく、ミラといちごに向かっていく落武者にも燃え盛るトランプは襲い掛かる。

　猟兵たちの攻勢に数を減らし残るはわずかな落武者たち。どうしたものかと悩むところに今度はナイフが飛んでくる。
　立花・桜華（羅刹のシーフ・f05787）の投げたナイフは落武者のうち一体を掠めたかと思うと、落武者はその場に倒れ痙攣しだす。どうやら毒が塗られていたようだが、その奇怪な光景に他の落武者たちの動きは止まる。止めてしまう。
「羅刹の力、見せてあげる！鬼の一歩は大地を踏み砕く！」
　桜華は、落武者たちの気がそれているうちに、残像を生じるほどの速さで一気に懐に飛び込むと、鬼震脚を放つ。重い一撃は単純ながらも地面を陥没させ、敵を砕いていく。ここ、餅つき会場だってば、あとで餅つきするのでできれば地形破壊は少な目に......
「あれ？ちょっと残っちゃったね。じゃあどんどん行くよ」
　獰猛な笑みを浮かべ拳を握る桜華。対する落武者たちは崩れた足場では高速で移動することもできず、攻撃しようとするも第六感に野生の勘を合わせて使う桜華には当たらない。
「これで、最後！」
　最後の落武者を笑顔のまま回し蹴りで粉砕すると、ふぅ、と一息つく桜華。

　猟兵たちの力でまずは先兵たる落武者たちは見事討ち取られた。となれば次はボス戦。つまり、『鏡餅』がやってくる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第2章 ボス戦 『野生の鏡餅』

POW   :    お年玉（餅） 【投げた紅白餅】が命中した対象に対し、高威力高命中の【巨大鏡餅落下攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。 SPD   :    もち肌 自身の肉体を【柔らかいお餅】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。 WIZ   :    今年の運勢 対象の攻撃を軽減する【おみくじ体】に変身しつつ、【今年の運勢が書かれたみくじ紙】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。 👑17 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

●『鏡餅、襲来』

　落武者たちを討伐した猟兵たちが安心したのもつかの間のこと。ドスン、ドスン、と何か重いものが歩いているような音が辺りに響く。
　そしてそれは徐々に大きくなっていくのであった......

「とまあ、次は此度の諸悪の根源、鏡餅の登場ダネ。」
　「本」を読みながら落武者狩りに出遅れた猟兵たちに説明をするレイン。
「この鏡餅、なんだがネ......まあ攻撃も餅らしいというかなんというか、餅を投げつけたりもち肌になったりと、そこまでやっかな相手でもなさそうだし、ちゃっちゃと倒しておくれヨ」
　普通に戦えば苦戦することなく倒せるはずだと、そう告げる。
「まあ、それでも油断大敵、無事終わらせて餅つきを楽しんでくるといいヨ」


●『野生の鏡餅が現れた！』

　地響きを轟かせ、のっそりと現れたるは三方を含めて３ｍはあろうかという巨大な鏡餅。そんな鏡餅に真っ先に仕掛けたのは立花・桜華（羅刹のシーフ・f05787）だった。
「野生の鏡餅......野生ってなんだろう？でも餅は美味しいけど気をつけて食べないと危ないよね」
　まっとうな疑問を抱きつつ、加速してダガーで斬りつける桜華。野生の鏡餅は野生の鏡餅なんだよお。
「目ってみかんのところでいいのかな？どうなんだろう？」
　そう言って上着をみかんに投げつけ、その上からさらにナイフを投げつける桜華。それだけでなく、脱いだ上着の分だけ身軽になり、より速度を増した動きで鏡餅を翻弄していく。
　とはいえ相手も相手、お餅である。そのもち肌にナイフははいまいち効かず、目潰しと思い投げた上着も意味をなさないまま、桜華めがけて紅白餅を飛ばしてくる。
「ほんとっ、どうなってるのかなっ！？」
　襲い来る紅白餅を第六感と野生の勘を駆使することで躱していく。しかし、躱し損ねた紅白餅が桜華の動きを止める。あと鏡餅の仕組みなんてよくわかりません。わからないけどオブリビオンだし仕方ないよね。
　ほんの少しの隙であろうとも鏡餅にとっては十分。空高く舞い上がったかと思うと、動きを止めた桜華に落下していく。これぞ餅神拳・巨大鏡餅落下攻撃なり。
「引っかかったね、残像だよ！」
　だがしかし、鏡餅の攻撃は空振りに終わる。そもそも紅白餅が当たったと思っていたのが残像なのだから。そして今度は鏡餅のほうが隙をさらすこととなってしまった。
「さっきはダメだったけど、これならどうかな？」
　羅刹の怪力による重い斬撃、それも返す刀で2重に、ともなれば如何にもち肌があろうとも傷つくことは避けられない。桜華の攻撃は、鏡餅に確かな傷を与えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●『まだまだ続くヨ、鏡餅戦』

　さて一方でこちら、恋華荘の三人、ミラ・グリンネル（妖狐の精霊術士・f05737）、彩波・いちご（ないしょの土地神様・f00301）、結城・蓮（チキチータ・マジシャン・REN・f10083）たちだが......
「イチゴ、大丈夫デスカ？」
「......」
　ようやくいちごを谷間から解放し、心配するミラ。対して顔を赤くしたまま深呼吸をするいちご。そして二人に何やってんだと呆れた視線を向ける蓮。ほら、もうそこに鏡餅来てるから。
　「ほら、いちごさんしっかり。ミラさんも大丈夫？......幸せそうな顔してるね？まあいいけど」
「と、とにかく、あれが今回の元凶みたいです。倒しますよ！」
　呆れたままの蓮と彼女の視線から顔を背け、鏡餅を指さし誤魔化そうとするいちご。
「ふんぐるいふんぐるい......、星海の館にて微睡む我が眷属よ！」
　【異界の抱擁（テンタクルス・スタンピード）】でいちごの影より呼び出された大量の触手が鏡餅を拘束する。
「今です、ミラさん、蓮さん、攻撃を......って、え？」
「了解だよ、「さあ、ショウタイムの始まりだ！」」
　【泡沫の鏡像（エフェメラル・ミラーリング）】で鏡像を生み出し、いちごの拘束した鏡餅に死角からだまし討ちを仕掛ける蓮。鏡餅の死角とは。
　蓮はいちごの呼びかけに応えたが、ミラの方は反応がない。それもそのはず、そのころ彼女は......
「なんとも神々しい鏡餅ではないデスカ！」
　鏡餅に目を奪われ、トリップしていた。
「しっかりしてくだ......にゃぁっ？！」
　そんなミラに近づこうとしておみくじの紙を踏み、足を滑らせるいちご。そのままダイブしてミラのお餅を鷲掴みにする。なんかさっきも見たぞこれ。
「んっ！」
　胸に違和感を感じたミラが視線を向けるとあら不思議、気がつけばいちごが己の鏡餅をフニフニしている。
「ミラの鏡餅がベストということデスネ！分かりマシタ！」
「あ、えーっと......」
　とりあえずミラが正気に戻ったようで良しとするいちご。でもなんか戻ってない気がする。
「じゃれてるのは別にいいけど、終わってからにしなよ......っと！」
　飛んできた紅白餅を打ち払い、戦ってる最中だというのにじゃれ合う二人を見てふつふつと怒りが湧いてくる蓮。二人に向ける視線は高まる怒りに反比例して極寒のシベリアの如し。
「さて、鏡開きの時間デス。覚悟はいいデスカ？」
「さあ、丸焼きにしてあげる！」
　蓮に目配せして【フォックスファイア】を放つミラ。それに合わせて反対側から炎熱の手札を放つ蓮。どうやら怒りは鏡餅に向けることにしたようだ。これがほんとのやきもち、焼き餅だけに。
「煩いよ馬鹿」
　はいすみません。
「お前なんか！焼いて焼いて、からみ餅にして美味しくいただいてやるデス！」
　説明しよう、からみ餅とは餅に大根おろし、醤油をかけたものである。トッピングにネギや青のり、鰹節、柚子、唐辛子をつけることもある。おろし餅とも知られている。
「甘くないから人気ないデスカ......そうデスカ......」
　確かに甘くないけどさっぱりして美味しいので、お正月のお餅の消費に困った人は是非。

「ついに真打ち登場だね！」　
　召喚した黄金のライオンに跨り、小鳥遊・晶（緋眼の黒狼・f05955）は戦場を軽やかに駆ける。
　鏡餅も彼女を止めようと、必死に紅白餅を飛ばすがすべて躱されていく。
「それ！」
　すれ違いざまにルーンソードで斬りつける晶。鏡餅とて、もち肌で防ごうとするも、先の戦闘で焼かれていたのが堪えたのか、少しの抵抗のみで容易く斬られてしまう。
　ならば、とさらに紅白餅を飛ばす鏡餅。
「ここは深追いは禁物だよね」
　勢いを増す紅白餅を避けながら、安全第一と距離を取るライオンと晶。そのままその距離を保ちながら鏡餅の周囲を駆けまわり、攻撃の手が緩むのを待つ。
「安全は大事だけど、積極的な攻撃も大事だよね！」
　紅白餅の攻撃がやんだ一瞬の隙を突き、ライオンの牙が、爪が、鏡餅を削っていく。

　猟兵たちの猛攻に反撃しながらも、鏡餅の負う傷は次第にその数を増し、ひび割れていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●『鏡開きの時間ダヨ』

「野生の鏡餅がいるなんて不思議ね......でもお餅が食べ放題と考えると......野生の味なのかな？」
　目を細め狙いを定めつつ、そう呟いたのは鬼島・華月（氷刃・f10085）。他の猟兵たちと違い、彼女は遠方から狙撃を試みていた。あとそんな味のお餅は食べない方がいいと思います。
「いくら自慢のもち肌でも他の人がダメージを与えてくれたところなら射抜けるはず」
　そう言いながら矢を放ち続ける華月。
　鏡餅とてこれまでに負った傷を抉るように飛んで来る矢に気づかないわけがない。標的を華月に定めると、その巨体に見合わない速さで迫ってくる。だが、彼女も決してただ近づかれたら無力な弓兵ではない。
「そこっ、綺麗に斬り裂いてあげる！」
　鏡餅の突進を残像を残して華麗に回避し、お返しとばかりに手に持つ刀で【剣刃一閃】を叩き込み、華月はそのままその場から距離を取る。

「援護に来ましたわ！」
「りんごさん、来てくれたんですね」
　こちらは落武者たちを殲滅して一息ついていた加賀・琴（羅刹の戦巫女・f02819）と、彼女の援護にやってきた黒岩・りんご（禁断の果実・f00537）だが......
（恋華荘の人たちもいるけど......あちらはなにやらラブコメってますし、放っておいてもいいかしら？）
　琴の他にもどうやら見知った顔がいたらしいりんご。しかしこの場では無視することにしたようだ。
「さて、琴さん。鏡餅もだいぶんひびが入って、鏡開きも間近という感じですが、どういたしましょうか？」
「りんごさんが協力してくれるなら心強いですね。私が後方から弓矢で攻撃するので前衛をお願いします。」
　そう言葉を交わし、前衛と後衛に役割を分けた二人は鏡餅と対峙する。が、それはもはや鏡餅にあらず。これまでに多大なダメージを受けてきた鏡餅はおみくじ体へと変身する。
「正月ですしね、たまには巫女らしく【巫覡載霊の舞】お見せしましょう」
　だが相手がどのような姿になろうと動じることなく薙刀を構えるりんご。
「あー......普段通りの白衣じゃなくて、琴さんみたく巫女装束着て来ればよかったですわね......」
　そうぼやきつつもりんごの角や髪が白銀へと輝きだす。
　そんな彼女へ向かっておみくじを飛ばす鏡餅（おみくじ体）、
「祓え給い、清め給え、神ながら守り給い、幸え給え」
　だがそれらはすべて琴の放った矢に撃ち落とされてしまう。仮にもオブリビオンの攻撃であると知りつつ、それでもおみくじを破魔矢で撃つという行為に複雑な顔をする琴。
　だが、そんなことは気にしていられない。再度りんごに向かって飛んでいくおみくじをまた撃ち落とし、更に鏡餅にも矢を放つ。
「助かります、琴さん」
　礼を言ったりんごは白銀の髪をなびかせ、手にした薙刀を振るう。振るわれる度に薙刀からは衝撃波が放たれ、鏡餅の身体を削っていく。

　いよいよもって命の危機を悟ったのか、鏡餅は遁走しようと目くらましにおみくじをばらまく。
「っ......どこへ？！」
「りんごさん、避けて！」
　そのすべてを迎撃しようにも琴の矢では数が足りず、鏡餅が逃げるのを許してしまう......
「この一撃は外さないわ。射ち貫け！」
　だがそれでもそこは未だ華月の射程の内、彼女の放った渾身の一撃が、風前の灯であった鏡餅の命を吹き消す。
　ひび割れ、砕け、消えていく鏡餅。かくして鏡餅とその邪悪な企みはここに潰えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

第3章 日常 『餅つきしようぜ！』

POW   :    力いっぱい餅をつく！食べる！ SPD   :    素早く餅を返す！食べる！ WIZ   :    きな粉やあんこ等を用意する！食べる！ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●『そして始まる餅つき大会』

「と、まあ、ここに鏡餅破れたりなんだけどネ」
　いちおうバトルはこれで終わりダヨ、と告げるレイン。
「お正月だしこの後の餅つきに参加してくるといいヨ。薬味とかは自分で用意してもいいし、現地の人に分けてもらうのもありダヨ」
　そうそう、とついでに付け加える。
「前にも言ったけどネ、お土産も持って帰ってきてくれると嬉しいナ」














●『そして始まる餅つき大会ダヨ』

　野生の鏡餅討伐も、怪我人を出すことなく無事終わり、住民たちも戻ってきて餅つき大会の再開である。
「野生のお餅の味も気になりましたが......皆さんと一緒に作るお餅も美味しそうですね。羅刹の力をお見せしましょう」
　そう言って杵を持ち、機械のように的確な動きで餅をつく鬼島・華月（氷刃・f10085）。合の手を入れている男も彼女の動きには驚嘆するばかりである。
「嬢ちゃん、よくまあそんな軽々と杵を振るえるもんだなぁ」
「......」
　極度に集中している彼女にその言葉は届かない。だがテンポよく振り下ろされる杵は途切れることなく、餅つきのリズムを刻んでいく。
（完成したお餅には何をつけて食べようかしら......まずはきな粉、次は餡子で良いかな？でものどに詰まらせないようにしないとね。それにもしのどに詰まらせた人がいたら救助もしないとね）
　餅をつきつつもすでに後のことやその他細々と考えている華月であったが、ありがたいことに餅をのどに詰まらせた人は出ていないようだ。

「わたしもお餅をつきたいんだよ！お土産の分もつくんだよ！」
　そう言って参戦する小鳥遊・晶（緋眼の黒狼・f05955）。彼女もまた猟兵、背は小さいながらも見かけによらず、しっかりとした動きで杵を振るう。危ないようならば止めようかと思い、見ていた人々も目を丸くする。
「おやまあ、ちっちゃいけれども随分と力持ちなんだねぇ」
「んだんだ、見かけによらんのう」
　そう言って微笑まし気に見守るサムライエンパイアの住民たちと見守られる中、笑顔で杵を振るう晶。
「そうそう、きな粉とかのほかにも美味しい食べ方ってあるかな？」
「そりゃ雑煮にしてもいい、磯部餅やぜんざいだってあるさ」
　杵を別の人に渡して交代し、現地の人にお餅の食べ方を聞く晶。目を輝かせると今度は食べる側に回る。
「自分でついたお餅も美味しいんだよ！」
　満面の笑みでお餅を頬張る彼女の手には様々な味付けのお餅がある。どれか選ぶなんてせず、すべて食べることにしたようだ。

　場面は変わり、まだ蒸しているもち米の前では、加賀・琴（羅刹の戦巫女・f02819）が大幣を手にお祓いをしていた。
（落武者や鏡餅の怪物に襲われて皆不安もあるでしょうから、それを和らげるためにも厄払いをしておきましょう。それと略式ですが新年の儀式を）
　そんな琴を見ている黒岩・りんご（禁断の果実・f00537）、彼女もまた戦巫女ではあるのだが......
（やっぱりわたくしも巫女装束で来れば良かったですねえ......）
　いつもの白衣で来たために、儀式の準備までは手伝うことができてもそれ以上は手伝えない自分を恨めしく思っていた。
（おや？あちらは何やら騒がしいようですわね？）
　ふと横を見ると、恋華荘の見知った面々がなにやら騒いでるのが目に入るが、どうせいつものことだから、とまたもや放っておくことにする。と思いきや、何やらいたずらを考えついたかのようにニヤリと笑う。そんなりんごの視線の先にいるのは儀式を終えたばかりの琴。
「これで厄払いは終わりです」
　高らかに宣言する琴。それから、と、お餅が安全であること示すためにも一ついただけないかと近くの人に尋ねる琴。
「琴さん、あーん」
　それを耳ざとく聞いたりんごがお餅を持ってくるなり食べさせようと、クスクス笑いながら琴の口元まで運ぶ。
「り、りんごさん！？」
　突然のあーん、に顔を赤くし、狼狽える琴とそれを見てより一層笑いを深めるりんご。新年早々仲睦まじいことこの上ない。そんな彼女たちを見る周囲の人々にも笑いが移っていく。彼女たちの行動は見事、人々から不安を拭い去っていくのだった。

「もうミラのことは誰にも止められないデスヨ！ここはプロに任せるデス！」
「お任せしますね？」
　気合十分、といった風のミラ・グリンネル（妖狐の精霊術士・f05737）に杵を手渡す彩波・いちご（ないしょの土地神様・f00301）。
「......ミラさん、すごく気合入ってるね。合の手はボクが受け持つからいちごさんは出来上がりを待っててよ」
　脇目も振らず、一心不乱に餅をついていくミラ。そんな彼女に合わせ、合の手を入れる結城・蓮（チキチータ・マジシャン・REN・f10083）。
「お餅への愛情がお餅を次のステージへ導くのデス！」
　などと謎の言葉を放つミラ。お餅への愛もここまでくればもはや宗教である。
「あはは......ソウデスネ？」
　目をそらし、聞いているのか聞いていないのかあいまいな態度で返すいちご。なにせミラがつくたび、揺れるのである。その豊かなものが、ぶるんぶるんと、揺れるのである。
（先ほどはあれに......いえ、思い出すのはやめましょう）
　かぶりを振って忘れようとするいちご、そんな彼に突き刺さる、心なしか冷たい蓮の視線。
「いやあ......色々とすごいね、うん。お餅への愛情も、それも......」
　揺れ動く様を至近距離でまじまじと見せつけられる蓮。合の手は外さないものの段々と目から光が失われていく......
「柔らかいお餅はつきたての美味しいうちに食べてくださいネ。あんこ、きな粉、大根おろし、納豆、何にでも合うのがお餅のすばらしさデス」
　そう言いながらついた餅を手際よく丸めて準備していくミラ。
「ほら、イチゴ、食べさせてあげるデスヨ。はい、あーん！」
「って、ミ、ミラさん？！」
　気がつけば間合いを詰められ、お餅を口元まで突き出されているいちご。予期していなかったミラの行動に声が裏返ってしまう。
「ほら、イチゴ、あーんデスヨ。あーん。」
「......やあ、仲睦まじいのは良いことじゃないか、うん」
　いちごに微笑みながらあーん、を強要するミラ。そしてそれを眺め更に目が死んでいく蓮。
「うん、つきたてのお餅は美味しいなあ......」
　そしてその目は現実を直視することをやめ、何事もないかのようにお餅を食べ続けようと箸で器をつつく蓮。だがその器はもう既に空、お餅は入ってないぞ。
「レンもそこ見てないで食べマスカ？イチゴはなんで震えてるデスカ？」
　さりげなく蓮にとどめを刺し、さらにいちごに迫るミラ。
「わ、わかりました。わかりましたから」
　そう言って観念したいちごは、ミラによるあーん、を実行されるがまま。
「と、とても美味しいんですけど......あ、あの、ミラさん？近くないですか？」
「............」
「蓮さんも何か言ってください？！」
　先ほどよりも近づいてくるミラ、そしてそれを見つめる虚ろな蓮の瞳に耐え切れず、冷や汗を流すいちご。これではとてもではないが、お餅をのんびり味わっている余裕なんてない。
　だがしかし、
（ミラさんが幸せそうですし......）
　そう思い、流されることにしたようだ。なお約1名には心の平穏は訪れないようだが......
「お土産はミラ特性のきな粉餅にしまショウ。ミラのお餅みたくとっても柔らかくて美味しいと思いマス」
　小悪魔のような笑みを浮かべ、そう言いながら持ち帰り用の容器にお餅を入れていくミラ。その隣にはまだ若干顔が赤いままのいちごと表情筋まで死んでいる蓮。
　それぞれもまた餅つきを楽しめた......と思う。たぶん。

　かくして無事、鏡餅は討伐され、猟兵たちも参加した餅つき大会は、まあいろいろありながらも終了したのであった。
　これにて『お正月には餅を食え！』閉幕。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年01月07日