これは旅団シナリオです。
旅団「Dies」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです。
「元々イカした連中が日々おもしろおかしく暮らしていたキマイラフューチャーは、猟兵らによって平和が齎されて以降、心の底からハシャいでいる様に思う」
バトルオブフラワーズを経て、彼の惑星はクールカルチャーが磨かれた。
実に佳い事だ、と枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)が玲瓏の眸を細めるのは、未だ多くの世界がオブリビオンの支配下にある中、真の平和を手に入れた者達の命を謳歌する姿が眩しいからだ。
彼女は微笑を湛えた花唇から続く言を滑らせ、
「キマイラフューチャーの自由度を感じられるものと言えば、個人の移動に制限がない事だろう。住民はオブリビオンの支配や脅威に怯える事なく、何時でも行きたい所に行く」
SNS映えするホットスポットを求めて、或いは自ら動画を配信する為に。
彼等の自由気儘な精神と、其を叶えてくれる優れた技術や文明に支えられ、キマイラ達は今日も何処かへ、ぶらり足を運ぶ。
電車、自動車、バス、飛行機……斬新で先鋭的なカラーリングを施された乗物の中で、現在、一際の存在感を出しているのが『ドローンカー』だ。
「偵察や動画撮影に使われるドローンを、キマイラ達が乗降できるサイズにまで大きくしたドローンカーは、個人での航空移動を充実させている」
人工知能搭載でおまかせ操縦!!
エキサイティングな空の旅!!
実に楽しそうだと、電脳広告のポップでキャッチーなフレーズを喉元で反芻した帷は、馴染みのメンバーに声を掛けた。
「このドローンカーで空旅を楽しむに、夜が最も佳いように思うのだが、如何だろう?」
ネオン光が燦然と煌くサイバーシティの夜間飛行。
イカしたキマイラフューチャーでは、静かに星空を仰ぐより、煌めく光を眼下に敷いて飛ぶのが浪漫的だろうと、帷は漸う口角を持ち上げる。
「夜空はいつになく饒舌にさせるもの。普段とは違う話も出来そうじゃないか」
扨て、何を語ろうか――。
そう言を滑らせる帷はどこか愉しそうに繊指を弾いて、
「キマイラフューチャーにテレポートする。この世界ならではの秉燭夜遊に出掛けよう」
と、馴染みのメンバーを光に包んだ。
夕狩こあら
いつもお世話になっております。夕狩こあらです。
旅団「Dies」専用のシナリオをお届けします。
●シナリオの舞台
イカしたカルチャーが住民を魅了するキマイラフューチャー。
摩天楼の間を抜けて光を運ぶモノレール、闇に浮き上がる巨大斜張橋、夜空に突き刺さるような時計塔……ポップでクールな夜景を眼下に敷き、ドローンカーで夜間飛行を愉しみましょう。
●シナリオ描写について
ネオン光に浮き上がる街並みを見ながら、会話をメインに描写致します。
馴染みのメンバーならではの深いお話が出来ます。
どうぞ、特別な一日をお楽しみ下さい。
第1章 冒険
『ライブ!ライブ!ライブ!』
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POW : 肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!
SPD : 器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!
WIZ : 知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
既に人類は滅んだが、その遺構は夜も眠らない。
いや、紫紺の帳が天蓋を覆ってからこそ、儚き栄華の跡は本来の精彩を魅せようか――ポップでクール、そして幾分にもキャッチーなサイバーパンク都市は、闇黒のキャンバスに豊かな色彩を燈して世界を輝かせていた。
刻下、夜を彩るは燦然のネオン光。
天道を巡る星は、大地より溢れる光彩に遠慮がちに瞬いている。
蓋し星々が幾世と変わらず淡い咲みを零すのは、其処に新世代の瑞々しいエネルギーを感じるからだろうか――彼等は遺構の外殻を浮き立たせる不動の光と共に、明滅を繰り返して闇を泳ぐ赤色灯を見守っていた。
灯は。
其は、自律式垂直離着陸航空機『ドローンカー』の機外灯火。
日中はスカイスポーツでキマイラ達を熱狂の渦に巻き込んだ回転翅の複座機は、炎陽がビル群に隠れると共に役儀を変え、今は峰と聳立する摩天楼を光を連れて滑り抜ける。
宙空で颯と軌道を変えたのは、乗車信号を受信したからだろう。
赤色灯に加えて淡い青白光を明滅させた機体は、或る超高層マンションの最上階、ヘリポートを兼ねた庭に着陸し、間もなく跫を連れた影に対し開扉して搭乗を促す。
軽やかな電子音声が案内を始めると同時、機体は再び離陸して空へ、空へ――。
夜闇に吸い込まれる様な感覚は刹那に過ぎて、今は宝石を鏤めたような光輝燦然を足元に敷く――小気味佳い感覚。
摩天楼を潜るモノレールも。
街と街を結ぶ巨大斜張橋も。
夜空に尖塔の切先を突き刺す時計台も。
全ての精彩を視界に入れれば、この街を支配した様な気分になれる。
扨て今宵は漫ろ夜間飛行。
気儘な空の散歩に出掛けよう。
白斑・物九郎
この世界はホント平和っスね
一昨年の十月中旬
『ワイルドハント』『白斑・物九郎』
その語以外の記憶も無く、俺めはこの世界にいきなり居た
神隠し勢ですわな
誕生日は『九郎(9・6)』をもじってテキトーに自分で決めた
去年の五月頭
アルダワでエルを拾った
コイツも『なんも無い』みたいでしたし、仕えさせるコトにした
誕生日は、なんか数字の刻印があったトコで9/5って設定した
去年の十二月頭
猟兵稼業も慣れたトコで、エルが軍勢を築けと言い出した
ンで今
軍勢を築くや否や、戦争三度
……エルの先見だったんでしょうかや?
●そういや誕生日か
軍勢、築いて正解でしたわな
【19・9・5_23:59:59】
褒めて遣わす(プレゼントはこの言葉)
エル・クーゴー
当機はアルダワ深部に於いてスリープ状態にある所を拾得されました
火器運用マニュアル及び僚機プログラム『マネギ』の他、全メモリー焼損
当該世界に似つかわしくない無重力下に於ける機動及び兵器運用適性
当機もまた『神隠し』による漂流者と高確率で推察されます
マスターとの酷似が、認められます
排他的な癖に寂しがり
うるさがりの癖に盛り場好き
マスターはひねています
よって当機は、孤独な王を王にすべく、軍勢の構築を提案しました
そもワイルドハントとは軍勢であるべき名称です
●そういえば誕生日だ
【19・9・6_00:00:01】
管理者権限の付与期間を更新します(プレゼントはこの言葉)
また来年
当機――“私”と、貴方の、二人で
【19・9・5_22:00:00】
定刻に離陸した機体が規矩軌道に乗る。
ネオン煌めく光の波濤を足元に敷く中、犀利な金瞳が先ず捉えたのは、巨大液晶広告に映されたエイプモンキーの嗤笑だったろうか。
「――この世界はホント平和っスね」
未だ不敵な笑みを浮かべて街を彩る怪人も、其を壊そうとはせぬ住民達も逞しい。
白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)の唇を擦り抜けた嘆声は、四翅の旋回音に掻き消されそうな程だったが、彼に隣するエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)がその囁(つつや)きを拾う。
「キマイラフューチャーに到って最初に見たモニュメントと記録してあります」
ぴしり姿勢を正して座るドールが、電脳ゴーグルに燐光を疾らせて記録を辿る。
肉声と変わらぬ電子女声に過去の記憶を紐解かれた物九郎は、ああ、という声を咽喉に押し込み、依然変わらぬ炯眼を夜景に投げた。
「一昨年の十月中旬、でしたかよ」
――『ワイルドハント』、『白斑・物九郎』。
この二語以外の記憶も無く、「俺め」の存在はこの世界でいきなり始まった。
その不条理に憮然も慷慨も無かったとは、然して色を変えぬ音吐でも判ろう。
物九郎は事実だけを淡々と告げて、
「それから、――去年の五月頭」
「当機はアルダワ深部に於いてスリープ状態にある所を拾得されました」
然う、「拾った」。
蒸気機械と魔法で創造された地下大迷宮の深層で見つけた銀髪の少女は、自身と同じく『なんも無い』状態で目覚めた。
火器運用マニュアル及び僚機プログラム『マネギ』の他、全メモリー焼損。
当該世界に不適合と思われる無重力下に於ける機動及び兵器運用適性。
「当機もまた『神隠し』による漂流者と高確率で推察されます」
「神隠し、なァ……」
「マスターとの酷似が、認められます」
「――ですわな」
何も持たぬ同士、一人は身を預り、一人は仕えた。
全てが手探りの漂流者達が道標を得たのは、猟兵として動き出した時分からだろう。
物九郎は様々な怪人と闘り合った嘗ての「狩場」を俯瞰しつつ、窓際に頬杖をつき乍ら言を滑らせる。
「猟兵稼業も慣れたトコで、軍勢を築けと言い出したんスよ。おたく」
憶えている。去年の十二月頭だ。
エルに記録を洗わせる事もないと、下駄を脱いだ脚をシートに乗せた物九郎は、刻下、美し周波数スペクトルを描く聲に夜色の猫毛を撫でられた。
「排他的な癖に寂しがり」
「ンン?」
「うるさがりの癖に盛り場好き」
「ァ?」
「マスターはひねています」
「ァア!?」
紅黒模様の猫耳一対がピンと立ち、ぐるり首を巡らせて睨める。
吃、と片眉が蹴立てられたが、エルは変わらず電脳ゴーグルに燐光を往復させながら、桜唇に言を継いだ。
「よって当機は、孤独な王を王にすべく、軍勢の構築を提案しました」
当時に導いた唯一の解を再度、記録より持ち出す。
時を経た今、再計算が必要でないとは、電子媒体越しに見る彼の姿を答えと受け取れば明白。
「そもワイルドハントとは軍勢であるべき名称です」
……。
…………。
………………。
暫しの沈黙あって、物九郎が再び夜景に目を遣る。
今度は片脚を折り曲げ、膝に片肘を付いて頬杖した彼は、摩天楼の間を滑り抜けるモノレールを追いながら、つと言ちた。
「ンで今。軍勢を築くや否や、戦争三度……エルの先見だったんでしょうかや?」
視線は光に繋いだ儘、低音で囁く。
流眄を注がずとも、恐ろしく整った佳顔が視線を揃えている事は理解っていて――。
だからこそ物九郎は、間もなく近付いた燦然――凄まじい光量で存在感を際立たせる時計塔の文字盤を瞳に映し、長針がカチリと動く瞬間を捉えた。
【19・9・5_23:55:01】
(「――そういや誕生日か」)
何も持たぬ漂流者達は、己が生まれた本当の「時」を知らない。
物九郎は我が記憶にあった名前、『九郎(9・6)』をもじってテキトーに自分で決めた。
エルは首の透き通った肌理に痕された数字の刻印から、物九郎が9月5日と設定した。
もしか彼女の滑らかな鎖骨に触れ、その指に人間さながらの体温を受け取っていたなら――或いは運命も変わっていたかもしれないが、何も持たぬ彼等が手にした『軍勢』は、今、確かに彼等を突き動かしている。
其は時計が針を刻む様に、刻々と。
【19・9・5_23:57:40】
斯くして物九郎は眠らぬ街に言を降らせる。
「軍勢、築いて正解でしたわな」
己がこの世界で針を動かした瞬間に持っていた記憶の鍵、『ワイルドハント』。
エルの提案によって開扉された世界は、物語は、まだ厖大と残された冒険譚の序章を辿ったに過ぎぬかもしれぬが、少なくとも其は、己を飽きさせぬ程の刺激に満ちている。
視線は変わらず針を見た儘。
ネオンの精彩を組み敷き、耀ける純白の光を闇に浮き立たせた時計塔が、更にカチリと針を進めた――刹那。
何持たぬ漂流者から「王」となった男は、隣する者に言葉を贈った。
【19・9・5_23:59:59】
「褒めて遣わす」
其はエルの誕生日が終わる僅か1秒前。
抑揚のない低音ながら、慥かにそう告げた物九郎は、背を撫でる様な佳聲に振り返った須臾、己と同じく然して感情の乗らぬ科白を受け取った。
【19・9・6_00:00:01】
「管理者権限の付与期間を更新します」
其は物九郎の誕生日を刻み始めた1秒後。
目下、忙しなく眼部を往復する燐光が、データを更新しているのだろう。
小気味よいプレゼントを贈った玲瓏のドールは、淡く色付いた桜唇に言を足して、
「また来年、当機――“私”と、貴方の、二人で」
言い終えた後、初めて視線を夜景に投げる。
ずっと彼の見る方向へ視線を繋いでいたエルは、ここで漸く逆側の窓から燦然の世界を見下ろし、美し光の波濤を記録していく。
普段は余程見ぬ横顔を眺め見た物九郎は、整った鼻梁のラインを暴く逆光も悪くないと――引き結んだ唇に押し留めた。
それから二人は夜の散歩をどれだけ愉しんだろう。
星が瞬いて幾許かした頃、ドローンカーが機体を旋回し、帰路を辿り始める。
向かうは「ホーム」、ペントハウス。
二人は新しい日を、新しい一年を刻み始めた時計塔に見送られるように、その影を大地と星の間に隠して家路を辿った――。
大成功
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