蒼天が明滅して、巨大な影が瞬いた。
空のヴェールが剥がれたように、そこに出現するのは天空城。
旧い時代を感じさせながら、同時にまだ何かが息づいているかのような不可思議な空気を湛えている。
否、そこにはたしかに何かがいた。
遥か天の彼方で、過去より還りし存在が。
城の奥部に鎮座して、戦乱を望むよう、その毒牙を研いでいる。
「アックス&ウィザーズの世界において、クラウドオベリスクを数多く破壊した事で、とある変化が見られたようです」
グリモアベース。
千堂・レオン(ダンピールの竜騎士・f10428)は集まった猟兵達に説明を始めていた。
曰く、世界のあちこちに、浮遊する「天空城」が出現したのだという。
これは帝竜ヴァルギリオスが世界に掛けていた、群竜大陸の所在地を隠す巨大幻術──「クラウドヴェール」が破れはじめたということらしい。
「天空城は浮遊する巨岩群と共にあり、各地で目撃されています」
それはまるで──世界に残る「かつて戦乱に明け暮れていた古代帝国が、魔力の暴走により天空に放逐された」というおとぎ話を裏付けるかのような出来事。
「この天空城の内部がどうなっているかは判りません。ただ、オブリビオンが居ることは確かなようです」
その敵を倒すことで、更に「クラウドヴェール」を破壊することにもつながる。
「そこで皆様には、天空城へと昇り──敵を撃破して頂きたく思います」
「まず皆様には、地上から城を目指して頂きます」
天空城はかなりの高度にある。
そこへたどり着くためには、浮遊する巨岩を渡って進む必要があるのだと言った。
「現場の地面は巨大な湖となっています。そこからある程度の高さにある岩に移り──次々に岩を渡る形で城のある高度にまで上がってください」
空を飛べば幾分楽だろう。だが、魔法の気流も渦巻いており、飛行能力も万能とは言えない。
「登攀のための能力や方法、飛行するとしても、魔法や属性の力に負けないだけの何かを考えておく必要はあるかも知れませんね」
城に近い高度までたどり着くと、城を護ろうとオブリビオンの集団がやってくるはずだ。
「城へ入るにはこの集団的を退ける必要があります」
現れる敵は、『ナーガクーガ』。どこか竜のような特徴も備えた獣で、縦横に岩を飛び回って襲ってくるだろう。
その脅威を突破できれば、城へ入ることが出来る。
内部には城の主たるオブリビオンが居る。それこそが最も脅威だと言った。
「それが『騎士竜アシド』──力を得るためひたすら強者に挑んだ騎士であったといいます」
正々堂々とした戦いを好み、その実力は高い。
だがこの敵を倒すことができれば、クラウドヴェールを更に破壊する事ができる。
「これらのオブリビオンが、また新たな凶行を企てないとも限りません」
故にこそ、世界の平和のためにも。
空に座する城を目指すことにいたしましょう、と。
レオンはグリモアを輝かせた。
崎田航輝
ご覧頂きありがとうございます。
アックス&ウィザーズの世界での天空城攻略シナリオとなります。
●現場状況
湖から空に続く巨岩群と、その先にある天空城。
●リプレイ
一章は冒険で、天空城を目指します。
湖から岩を伝って高所へ上がり、あとは浮遊する岩を何らかの方法で渡ります。
空には魔法の気流が吹き乱れています。防衛策など無しで飛行するだけでは上手く進めないでしょう。
気流はダメージは受けませんが、多彩な属性を持った魔法攻撃に似た効果があります。
二章は集団戦、敵は『ナーガクーガ』となります。
浮遊する岩を渡りながらの戦いとなります。
三章はボス戦、敵は『騎士竜アシド』です。
正々堂々を好む一方、逃げるものや卑怯者には冷徹な敵意を向ける性格を持っています。
第1章 冒険
『天空城をめざして』
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POW : 気合や体力で気流に耐え、巨岩を足場に進む
SPD : 素早く気流を切り抜け、巨岩を足場に進む
WIZ : 気流を見極め、回避したり利用したりしながら巨岩を足場に進む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アネット・レインフォール
▼心情
ふむ…天空城か。
伝承に残るかつての勇者達もこの場を訪れたんだろうか…?
浮遊原理など興味は尽きないが、先ずは慎重に進むとしよう。
▼POW
一応、空中戦には心得がある。
換装用刀剣を念動力で宙に浮かせ
それを足場にする事で岩々を渡って行こう。
また葬剣を無数の鋼糸状にし、
直前の岩に巻き付けてから進むことで命綱代わりに。
気流が穏やかな時や有事の際には
緋槍で【天帝ノ貫穿槍】を岩に向けて放ち
鎖を巻き上げる事で距離を稼ぐ。
疲れたら岩の上で休憩し水分補給。
この時、少し実験を。
付近の岩を霽刀で両断したり遠くへ投げたりして
浮遊状態がどうなるか確認。
…この後の戦闘で何かに使えるかもしれないからな。
▼他
アドリブ歓迎
畔にたどり着くと、不思議な風が髪をそよがせる。
それは空へと吹いている気流。まるで湖面から湧き上がっているような不思議な上向きの力が、歩むほどに前髪を撫ぜていた。
「ふむ……」
周囲とは明らかに違う気候の中に歩み入り、アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は天を仰いでいた。
周りの景色は自然の色深く、水面や木々や、小鳥の姿が垣間見られる。
それは一種平和な眺め。だが上を見れば──遥かな高度まで、点々と巨影が続いているのが判るのだ。
浮遊する巨岩群。
途方も無い高さまで続いているそれは、彼方のうっすらとしたシルエットまで伸びていることだけが確認できた。
「天空城、か」
伝承に残るかつての勇者達もこの場を訪れたのだろうか? だとすればその時彼らは何を思い、どんな冒険をしたのだろうが。
そしてこの岩は、天空城は、如何な原理で浮遊してるのか。
考えるほどに興味は尽きない。
けれど今は進まねばならないということだけは確かだから。
「行くか」
呟いて一歩踏み出し、換装用刀剣を取り出した。
アネットは剣術のスタイルを瞬時に切り替える戦法を得手としている。
故にこそ刀剣の扱いは慣れたもの。念動力を働かせることでその一振りを宙に浮かせて跳び乗って──まずは巨岩の一つに到達した。
それは文字通りの岩で、固くごつごつとした手触り。浮いてさえいなければ重量も相当のものであることが推測された。
とは言え一つ一つ伝っていく内に、必ずしもそれが安定していないことに気づく。
高度を増す程に徐々に気流も強くなってきて、比較的小さい岩などはそれに煽られ僅かに上下していた。
それでもアネットは焦りはしない。
美しき葬剣を携えると、それを無数の鋼糸状に変遷。岩を離れる前に足場に巻きつけてから進むことで命綱の代わりとしていた。
落ちる心配がなければ、昇る速度も落ちはしない。とん、とん、と素早く岩を伝い、いつしか高高度と言える位置にまで来ている。
「それでもまだ先は長い、か」
見上げると未だ道半ばと言った風情。
ただ、その場の気流が穏やからしいと知ると、一気に距離を稼げる好機と判断した。
その手に握るのは、鮮やかなる緋槍。
力を込めて、僅かに気迫を漲らせて。
【裏弐式】天帝ノ貫穿槍(テンテイノカンセンソウ)。剛速でその矛を放ち、十以上の岩を素通りする形で高所の巨岩に突き刺している。
槍とアネットは闘気の鎖で繋がれている。後はそれを巻き上げる要領で一気に上昇。長距離の移動を叶えていた。
「──見えてきたな」
仰げば、薄かったシルエットも明瞭になり、城の姿が確認できている。
戦いの時も近いと判断したアネットは、そこで水を飲み一息。
休憩を挟んでから岩を見回した。
「……試すだけ試してみるか」
呟いたのは、付近の岩が戦いに使えないかと思ってのこと。滄溟晶の刻まれた一振り──霽刀を抜くと、小さめの一つを両断していた。
するとその岩は重量が足りなくなったが故か、煽られて虚空に投げ出されていく。
一定の範囲を離れると、そのまま浮力を失って遥か下方の湖に落ちていった。
「重さがなくなれば動かすのは容易か」
ならば、遣りようによっては活用できるかも知れない。
それが判れば重畳と、アネットは登攀を再開する。
そこはもう、蒼穹の中だ。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
天空城…
正直ちょっと浪漫を感じるよね
ちょっと見学がてら行ってみようかな
まずは方法を考えなきゃね。
最初の方は『念動力』で浮きながら行けば良いかな
巨石を登るときは『クライミング』も使って頑張らなきゃね
問題は魔法の気流だよねー、さて浮いて行くにも限界があるし足場でも作りながら行こうか
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜剣
【神器複製】を使用して両剣の複製を精製
108本の複製を『念動力』で飛ばして巨石間を繋ぐ足場しながら素早く巨石間を移動していくよ
ちょっと揺れるかもしれないから、複製の一部にロープを結び付けて渡る巨石に突き刺しておこう
一応ザイル代わりだね
これならいけるかな?
アドリブ歓迎
それは空の遠方にあり、地上からでは全容を窺えない。
けれど淡い輪郭は畔からでも確認できるから、想像力を尚かき立てた。
「天空城……正直ちょっと浪漫を感じるよね」
木立を抜けて、草花の中を歩いて暫く。
開けた景色の中にある広大な湖畔へと月夜・玲(頂の探究者・f01605)は踏み入っていた。
紅の瞳を空に向けると、無数の岩が浮いているのが見える。
空の頂へ続く、それが唯一の道。
否、道とも言えぬ危険な飛び石。
或いは死地か。
それでも玲の顔には怖じ気の類は一切ない。今も瞳に垣間見えるのは、平素と変わらぬ気ままな色。
「ま、ちょっと見学がてら行ってみようかな」
呟くと、文字通り散歩でもするかのように、足取りは軽いものだった。
「まずは方法を考えなきゃね──とはいっても」
最初は浮きながら行けばいいかな、と。
とん、と地を蹴ると自身の体を念動力で制御。ふわりと浮遊して空中に昇り始めていた。
幸い目標は上に見えているし、岩が針路をガイドしてくれるから迷うこともない。
時折石を蹴って軽く加速して──視界を覆うほどの巨岩が現れれば、しかとクライミングシューズで踏みしめて着々と登攀していく。
そうして一つ二つと岩を越え、みるみる空へと進んでいった。
ただ、それもいつまでもは続かない。岩の間を縫って跳んでる最中、不意に体が風に煽られる感覚を得た。
単なる風ではない、それは──。
「魔法の気流か。これが問題だよねー」
吹き付ける透明の陽炎は、その範囲も明確には測れない。
ただ触れているだけでも微かに体力が奪われる感覚もあって、無視できぬことだけは確かだった。
けれど玲はここにあっても慌てない。
「ここからは浮いて行くにも限界があるかな」
ひらりと一つの岩に着地すると、少々周囲を観察。近場の岩の一つに目をつけると──二振りの刃を抜剣していた。
《RE》Incarnation、そしてBlue Bird。
I.S.T──模造神器を利用した兵器の一角。
それをゆらりと宙に浮かすと、エネルギーを奔らせ小さく明滅。複製を顕現させて、108本にまで増やしてみせる。
神器複製(コード・デュプリケート)。
その力で実体を得た刃を、玲は念動力を働かせて飛翔。大きな足場とすることで、あたりを付けていた岩へ素早く移動していた。
それでも宙の気流は強く吹き荒んでいて、不安定ではある。
けれどそれを見越していない玲ではなく。複製の一部にロープを結び付けて渡る巨石に突き刺しておいてあった。
これで安定性も安全性も不安はない。ならば後は岩から岩へと同じことを繰り返して登っていくだけだった。
「うん、いい感じだね」
止まること無く進んできた玲は、ちらりと下を見る。湖はもうずっと下方にあり、ここが既に天の只中であることを自覚させた。
それは何より、目的に近づいている証拠。
改めて真上を仰ぐと──。
「もうすぐかな」
地面にいたときとは違い、城と呼べる形が明確に見えていた。巨城、というほどではないが、艶のある石による建造物は紛れもない城塞だ。
「なら、そろそろ敵も出てくるね」
それでも尚、軽やかに。
玲は岩を跳んで、上を目指す。
大成功
🔵🔵🔵
バル・マスケレード
天空の城、ねえ。
人間は好きなんだろ、このテの伝説がよ。
……いや、わかんだよ。
宿主がウザってえぐらいワックワクしてんのが伝わってくるからな……。
さて、ともあれモノからモノを伝うとなりゃあ、【地形の利用】は容易。
『久遠の《棘》』を用いた【ロープワーク】の出番よ。
伸縮自在、伸ばして巻きつけ引き戻し、岩から岩へ飛び移っていくぜ。
気流の対策にゃユーベルコードを使う。
三種の魔力をもって「防御力重視」の強化……
身に纏う属性の鎧でもって気流の相殺を狙うって寸法よ
しかし乱れる気流の中を飛び交うのもスリルがあって悪かねェな!
宿主に迎合するようで癪だが、ちっとばかし高揚してくらァ。
ヒーッハハァ、待ってろや天空城!!
陽光が遮られて、畔に入ると少し暗くなったように思えた。
その感覚に空を仰ぐと──無数の巨岩が視界を覆う。そのずっと上方を覗き見ると、遥かな天頂に建造物の影が窺えた。
「天空の城、ねえ」
バル・マスケレード(エンドブリンガー・f10010)は不明瞭なそのシルエットを観察するよう仰ぐ。
そこに敵がいるというのなら、変わらぬ死地に違いない。
空に浮かぶ城とて特別な場所ではなく、戦場の一つ──バルにとってはそう思う部分もないではなかったかも知れない、けれど。
「人間は好きなんだろうな、このテの伝説がよ」
口にする言葉は強い実感の籠もったものだった。
なぜならその感情を、一番近くで感じるからだ。
(宿主がウザってえぐらいワックワクしてんのが伝わってくるからな……)
少し子供っぽいはしゃぎようが、今の状態でもありありと目に映るようだ。
それを甘んじて受けるかは別として。
「ま、来たからには登るだけ登らねェとな」
軽く見回すと、地表近くにも岩はある。まずは軽くそこに跳び乗って、上方向をよく見やった。
階段状、或いは蛇行した経路上に岩は点在している。
共通しているのはどれも多少距離が離れているということだ。無心に跳び移って行けないことはないだろうが、リスクは高いだろう。
無論、バルは最適な方法を考えている。
「モノからモノを伝うとなりゃあ、な」
呟き手を翳す。
すると濃密な程の魔力が揺蕩って、形を取り始めていた。
顕現するのは無数の棘を抱いた茨。
久遠の《棘》──オブリビオンにさえ慈悲無き効果を発揮するそれは、鋭利にして伸縮自在、ロープワークにはうってつけ。
斜め上方へと手を突き出すと、茨が長大に伸びて巨岩に巻き付く。同時に棘がしっかりと岩肌を咬んで、容易に外れない。
その長さを縮める要領でバルは跳躍。ものの一瞬でその巨岩へたどり着いていた。
「問題ねェな」
呟くバルには、宿主が既に楽しんでいるのが伝わってくる気がする。
だからというわけではないが、次の岩から岩へと間髪入れず跳躍。茨を駆使して高速で登り始めていた。
地面が遠くになるのも、すぐのこと。既に風は空に特有の澄んだものに変わりつつある。
だが、高空には風とは別のものも吹き荒んでいた。
「確かにこりゃ、魔力の塊だな」
感じるのは、渦巻く不思議な気流。
色こそ見えないが、場所によっては体を吹き飛ばすほどの強烈な気圧が感じられる。これこそ無策では通り抜けられまい、が。
バルはそれも対策済みだ。
炎、水、風。三種の魔力で自身を包むことで、属性の鎧とする。これによって、炎を含んだ風が吹いてくれば水が、あるいは風の属性が襲ってくれば水で護りつつ風で相殺し──気流を無視できる形にまで昇華した。
無論、高空であれば単純な暴風も吹く。けれどそれに煽られながら、バルは茨で旋回するように惑わず登攀を続けていた。
「こうやってを飛び交うのもスリルがあって悪かねェな!」
零れるのは、喜色を含んだ声音。
(迎合するようで癪だが──)
それでも確かにバル自身も高揚していた。
振り子の慣性を付けて、一息にいくつもの岩を越えていく。そうすれば、石造りの巨影が見えてくるのも程なくのこと。
「ヒーッハハァ、待ってろや天空城!!」
風を払い、空を踊り。
悠々、洋々。バルは天の頂きを目指していった。
大成功
🔵🔵🔵
ベイメリア・ミハイロフ
天空のお城…でございますか
中々に興味深いものでございますね
色々と探検したい気持ちではございますが、まずはなんとか辿り着き
オブリビオンをなんとかいたさねば…
【WIZ】
第六感、可能であれば絶望の福音にて気流による攻撃判定を予測しながら
見切り、回避もしくはオーラ防御にて防御しつつ参りたいと思います
火炎耐性・電撃耐性・氷結耐性は常に活性化しつつ
Signal of battleにて巨岩を飛び移りながら参りましょう
気流に乗って更に進むことができますれば利用したく
岩でよけられそうならばそれも利用したく存じます
※他のお仲間さまとの協力歓迎いたします
お仲間さまがピンチな場合は
オーラ防御しつつかばいながら参ります
フィオレッタ・アネリ
お空にお城が浮かんでるの?
すっごーい! おとぎ話みたいでステキ!
ねぇ、ゼフィールも行ってみたいよね、天空城っ!
高所へは《ファヴォーニオ》で風の障壁を纏って飛翔
風を泳ぐ竜、ゼフィールに先導してもらいながら
気流の切れ目を読んだり、魔法で気流を吹き飛ばして逸らしたり
属性攻撃で対属性の精霊力を放って打ち消したりしながら
スピード重視で飛んで切り抜けるね
浮遊岩はダッシュとジャンプで飛び移ったり
あと《メリアデス》の蔦を指先から伸ばして
フック付きロープみたいに使って渡っていくね
ショートカットできそうなところは《スカイステッパー》で
連続ジャンプっ!
そろそろお城に着きそうかな?
※アドリブ・連携 歓迎です!
上野・修介
※アドリブ、絡み歓迎
「鍛錬でフリークライミングみたいなことはよくやるが、こんな地形は初めてだな」
正直、少しワクワクもする。
・準備
荷物は最小限。
栄養補給のための水と食料を少しと休憩時に身体を固定するためのアンカーとロープを用意。
・登頂
まず遠景から大まかなルートを選定。【視力+情報収集+見切り】
登りながら周囲の状況に合わせてルートを修正。【学習力】
湖の移動は小船を用いて移動し極力体力消耗を避ける。
途中で休憩を挟みつつ【ジャンプとクライミング】を用いて岩石群を登っていく。
ジャンプで渡れない場所は気流の流れを【見切り】、その風を利用して跳躍。【地形の利用】
落下と奇襲に備え、UCで防御強化しておく。
翠の深い木立を抜けると、それは唐突に現れる。
広大な湖畔と、彩り豊かな草花。
そして──碧天へと連なっていく巨岩群。永劫の高さにまで続くその先に小さく見える、自然のものではない輪郭。
深紅のシスター服を爽風に揺らし、小さな花園の前で立ち止まったベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)は、その雄大な眺めに静やかな声を零す。
「天空のお城……でございますか」
「本当にお空にお城が浮かんでるの? すっごーい!」
と、好対照に天衣無縫な笑顔を見せるのはフィオレッタ・アネリ(春の雛鳥・f18638)。
初秋にも仄かに春の香りを漂わせ、澄んだ瞳はいつもにまして好奇に輝いて。傍らの風竜に向ける声音は爛漫だった。
「おとぎ話みたいでステキ! ねぇ、ゼフィールも行ってみたいよね、天空城っ!」
風竜は同意を示すように鳴き声を返し、首を上げて空に向く。早く高空に行きたい、とでも言っているかのようだ。
「中々に興味深いものでございますね」
ベイメリアも少しばかり表情を和らげ、頷く。
清廉なおもての中にも、その好奇心は存在している。色々と探検してみたいというのもまた偽らざる気持ちだった。
「ですが、まずは辿り着き、オブリビオンをなんとかいたさねば……」
「ええ、そうですね」
と、歩みながら上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)も応える。
仰ぐのは一つ一つの岩。
巨岩とはいえ、浮いている以上安定している保証もない。だけでなく、支えも橋渡しとなるものも存在しなければ、端的に危険地帯と言っていいだろう。
自分もまたワクワクとした気持ちをを抱いている。
故にこそ。
「注意深く行きましょうか」
決して焦らず、まずは空を観察してルートの選定をした。
岩は大まかに、幾重かの円柱形に沿って配置されている形と言って良さそうだ。無論一つ一つの距離は離れているし、分布はまばらだけれど。
ただ階段状になっているところも多いので、そういった場所を伝いつつ、危険な跳躍の数を少なくしていくのがいいだろうと判断した。
決めるとまずは低い位置にある岩に登る。荷物は予め最小限にしてあるし、このくらいなら造作もなかった。
最初の高台に乗った修介は、ゆらゆらと髪を揺らす気流を感じながら見下ろした。
「既にある程度の気流はあるようです。移動には警戒を」
「ええ、そういたしますね」
「ありがと!」
地面のベイメリアとフィオレッタは、頷いて礼を言う。
そして自分達もまた、昇る準備を始めた。
空への道のりの、始まりだ。
「では、参りましょう」
ベイメリアは楚々とした声音で、一度瞳を閉じる。
すると光が明滅して、その身体を清らかなヴェールのように纏っていた。
聖なるオーラに端を発するそれは、言わば形にした祝福。少々の魔力ならはね退けてくれるだろう。
準備が整えば、そっと手を組んで祈りを上げて。
さらさらと、絹のような髪を靡かせ始める。
それは風でも気流のせいでもない。シスター服に力を通わせることで、ベイメリア自身の体を重力の軛から解き放つ能力によるもの。
Signal of battle(タタカイノアイズ)。
鮮やかな程に赤い花びらが舞うと、まるでそれに導かれるように──ベイメリアは空へと踊り出していた。
ゆるりと揺蕩って、この場の気流は耐えるに問題ないと判断すると、上昇。岩の上に立つと、そのまま飛翔して岩から岩へと移動し始める。
「なんだか楽しそう……!」
と、それを見上げるフィオレッタも少しだけ浮き立ったように。空中散歩、というわけではないけれどその様子に期待感。
勿論、出来る対策はしっかりと。
淡い碧の光を瞬かせ、精霊魔術《ファヴォーニオ》──風精を喚び出して優しい風を吹かせ始める。
それは徐々に濃密な渦へと変わりゆき、フィオレッタを風の障壁で覆う形となった。
「それじゃ、行くよっ!」
そのままふわ、と浮いたフィオレッタは、最初の岩にたどり着く。そこから起伏を利用し跳躍して移動を始めていた。
経路に迷わないのは、先導役をゼフィールが務めているからだ。
風を泳ぐ竜は空を進むことこそ本領というように、羽ばたいては滑らかに翔び、岩を避けてはスムーズに昇る。
フィオレッタはその後に続くよう、跳び移った先で速度を落とさずに疾走。その勢いを保ったまま軽々跳んで。こがねの髪をふわふわ靡かせ、まるで空に游ぶようにゼフィールの進路をたどっていった。
ベイメリアと同じ高度に達すると、軽く視線を向けて。
「そっちは大丈夫っ?」
「ええ、問題ございません」
揺蕩うベイメリアは、穏やかに応えている。
その二人の様子を一度仰ぎつつ、修介も登攀を始めることにしていた。
「さて、と」
軽く手と足で岩の感触を確認する。物自体は普通の岩石と変わらないと見ると、しかと足に力を込めてジャンプし、一段高い岩に乗り移った。
それからその天頂に着くために、腕を伸ばして少しずつ岩肌を登る。
「鍛錬でフリークライミングみたいなことはよくやるが、こんな地形は初めてだな」
その岩の頂から見回し、声を零す。
注意を欠かすつもりはないが、やはり好奇心は唆られる。
その心のままに、慎重且つ思い切りよく。
一つ一つの岩をしっかりと掴み、それでいて素早く。跳躍し、奔り、登り。確実に高度を上げていく。
「大分、高くまで来たな」
干し肉を小さく齧って、水を飲んで一息。
修介は眼下の湖が遠方に見える位置で短く休憩をとっていた。
この間も、油断はない。アンカーとロープを使って体と岩を結びつける形にして、不意の落下にも対策していた。
そしてこの後の事も余念はない。
想定したルートに従い移動しているが、状況に応じてリアルタイムに経路を修正してもいる。クロスチェックが功を奏し、岩が大きく途切れた部分に突き当たることは皆無だった。
「……とはいえ、気流の強さは本格化してきたか」
休みを終えて立ち上がると、既に体が煽られている感覚がある。
風とは違う魔力の気圧。
単純にこちらの体を撫でてくるばかりでははなく、時に肌を灼くように、時に冷たさで刺すように。体力も生命も、ほんの僅かずつだが削ってくる魔の風だ。
けれどそれも気流であることに違いはない。
しかとその圧力を感じ、強弱を見切り、その流れが進行方向を向いたときに修介は跳躍。上手く風を利用する形で跳び越えていた。
いくつか岩を渡り、同高度に見えるフィオレッタに声をかける。
「そちらはトラブルなどはありませんか」
「うん、平気だよ!」
ジャンプを繰り返すフィオレッタは頷く。
そこは複数の気流が渦巻く所ではあるが、先ゆくゼフィールが常にその切れ目を読んで進んでいた。
壁のように塞ぐ場所があれば──風の魔法を放ち、一時的に魔の風圧を四散させる。そうして素早く飛翔していくと、フィオレッタも続いて跳躍。
そのまま精霊魔術《メリアデス》──樹精の力で指先から蔦を発現。先にある岩を掴まえて、ロープ代わりに自身を引き寄せ速度を上げていた。
ショートカットできそうだと判断すれば、直上に翔ぶ風竜に導かれるままにスカイステッパー。宙を十回以上跳ねて、一気に高所の岩へ移っていく。
ベイメリアもまた苦戦はしていない。
絶望の福音をつぶさに行使することで、常に淡く未来を通して見ながら飛翔。抵抗を受ける気流がある場所を避け、常に追い風となる部分だけを通っていた。
そうすれば、魔の風も祝福に変わる。
ふわりと加速して、ベイメリアはまるでいざなわれるように上昇。時に岩のない空中を、時に岩の陰を的確に縫い──風に舞う花のように高空へたどり着いていた。
フィオレッタの隣に並ぶと、彼女は風竜と共に上を見つめている。
「そろそろお城に着きそうかな?」
見れば、宙に浮かぶ建造物が望める位置にまでやってきていた。
古き天空城。
見目には美しく洗練された城塞にも見える。けれど、そこには待ち構える存在があるのだ。
「気をつけて、参りましょう」
「うん」
頷くフィオレッタと共に、ベイメリアは上へ。
互いのために気流を退け、助力もしながら。修介とも手助けをし合って共に岩を登り──敵の気配のする一帯へと入っていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カーティス・コールリッジ
イリーツァおにいさん(f14324)と
機械にたよらずどうやってお城を浮かせているんだろう?
考えるだけでわくわくする!
Stingrayに騎乗しそらへ躍り出る
傍の竜を視界にとめれば、浮きたつ胸を隠せやしない
それぞれ翼をもつおれたちは岩々をすりぬけて飛べる
ヒツヨウなのは、風をよむこと!
ドローンを先行させ風を読みながら旋回交えて操縦
気流が行く手を阻むなら主砲を撃ち込み宙を切り裂こう
少しでも隙間が出来ればそこにおれが滑り込む
風の抵抗が減ればイリーツァおにいさんももっと自由に飛べるはず!
ふふふ!こんなかたちでイリーツァおにいさんと
そらのさんぽができるなんておもわなかった
うん!そらのはてまで、ひとっとびだ!
イリーツァ・ウーツェ
コールリッジ殿(f00455)と
見れば魔法によるものと理解るが、流石の規模だ
群竜大陸か。此れ以上の魔法が溢れているのだろうな
コールリッジ殿は自分の舟に乗ると言う
ならば私も、己の翼を使おう
化け物染みた真の姿を、彼は恐れないからな
UCを使用し、炎を纏い、翼で風を叩く
上がった反応速度で適宜気流を見分け、Stingrayの後を追う
主砲で抉じ開けられなければ、隙間を見切り
内の手に握った杖から水の刃を全力魔法で叩きつけ部位破壊
Stingrayが通る道を作る
楽しいですか、コールリッジ殿。
で、あれば。良かった。
行きましょう。未知が待っています。
(相手には敬語、独り言は不愛想)
大気の中であるのに、その巨岩はまるで海中にあるかのように浮かんでいる。
それらが時折気流に撫でられて揺らめくと、地面に落ちる影の形が変わって、木漏れ日のような光を作っていた。
その遥かな頂きには、城の影も垣間見えている。
だから畔にやってきたカーティス・コールリッジ(CC・f00455)は、その瞳をきらりと輝かせていた。
「あれが、天空城……!」
地面から見える輪郭は小さなもの。
けれどそれが一層、近くで見てみたいという気持ちを湧かせる。
「機械にたよらずどうやってお城を浮かせているんだろう?」
考えるだけでわくわくが止まらなくて。湖の近くまで奔って、大きな岩もものめずらしげに見つめていた。
それに続いて歩むイリーツァ・ウーツェ(盾の竜・f14324)も、一度景色を仰ぐ。
一種無機的に見えるその眼光の中にも、微かな驚嘆の心はあった。
見れば魔法によるものなのだろうと理解るが、それでも。
「流石の規模だ」
如何な剣と魔法の世界といえど、これほどの超常の眺めは容易に見られない。故にこそ、心は自然と思いを馳せる。
「群竜大陸か。此れ以上の魔法が溢れているのだろうな」
呟きながら、まずはこの空に浮かぶ城にまでたどり着くことを考えて。
「コールリッジ殿。行きましょう」
「うん!」
その声にカーティスはまた振り返って、頷いていた。
そして改めて見上げる。
普通に考えれば、岩を一つ一つ昇っていかなければいけないけれど──自分は空翔ぶ翼を持っている。
それこそが、カーティスの呼びかけに応じて降りてくる蒼影、Stingray。
側に付けてきたその愛機にひらりと乗り込んで、早速駆動。滑るように空に躍り出て、上昇を開始していた。
今日も勿論、Stingrayの調子は良好。傍の岩をまずはすり抜けて、雄大な蒼空へと飛び立っていく。
それを見上げるイリーツァも、自身の姿を解放すると決めていた。
「私も、己の翼を使おう」
化け物染みた真の姿を、彼は恐れないと知っているから。
静かに瞳を閉じると、ちり、ちり、と青い炎が明滅する。それが光のように体を包むと、顕れるのは真の姿。
黒き鱗、渦巻く陽炎。
鋭い牙の間から微かな呼気を零し、羽撃かせるは鋭い翼。
竜としての形を得たイリーツァは黄泉平坂・押送脚──青の焔を全身に渦巻かせ、風をも巻き込むように苛烈な程の飛翔能力を得る。
瞬間、翼で風を叩いて翔け出し、空へ昇り始めた。
高速戦闘機へと宙で並ぶのはすぐのこと。
その姿をスクリーンから視界にとめたカーティスは、浮き立つ胸を隠せやしない。自分達は翼を持っていて、巨岩に頼らず飛んでいけるのだから。
だから蒼い世界へ舞い上がっていく。
勿論、ただそれだけじゃ突破は出来ないとも判っている。
(ヒツヨウなのは、風をよむこと!)
カーティスはドローンを射出。Stingrayの色味にも似た綺麗な蒼の小型機を先行させるように飛ばしていた。
それらにリアルタイムに気圧と風向、魔力をモニタリングさせることで情報収集。詳細に風を読むことを可能にする。
そうして傍に気流の柱があるのだと判れば──。
「さあ、曲がるよ!」
速度と小回りを兼ねた軌道で回避。回り込む形で進み、止まりはしなかった。
すぐ近くを翔ぶイリーツァも、気流を的確に見分けて上昇している。その上でカーティスが適切な経路を導いてくれれば、その後を追うようにして速度を落とさなかった。
ただ、気流も避けられるほど小さな物ばかりではない。
「イリーツァおにいさん、気流が壁になってるみたい!」
「確かに。そのようです」
先ゆくStingrayが一瞬ホバリングするのを見て、イリーツァも速度を緩める。
まるで風の滝のような魔の気流が、丁度進路を塞ぐように立ち塞がっていた。
迂回することでも出来るが、そうするとまた気流のある地点へ戻らねばならない。そうなると時間もリスクも無視できなかった。
そんなときこそ、カーティスは迷わない。下がらずStingrayの機体を真っ直ぐに向けると、気流に主砲の狙いを定めた。
僅かな低周波が奔った後、エネルギーを収束。眩い光球を生成するように輝かせ──発射。弾ける塊を撃ち出して宙を斬り裂いていく。
その圧力に耐えきれずに、気流は一瞬だけトンネルのような大穴をあけた。その隙に加速したカーティスは、一気にそこへ滑り込んでいく。
イリーツァもそこに追随して、気流に触れずに通り抜けた。
ただ、その前方もまた更に気流の壁があると見れば──。
「私が、対処しましょう」
内の手に魔杖“竜宮”を握り、イリーツァがそこへ膨大なる魔力を込める。
顕現されるのは蒼に揺蕩う水の刃。巨大にして鋭利なそれを、狙いを研ぎ澄ませて叩きつけることで気流もろとも四散。しかと通る道を作ってみせた。
「ありがとう!」
明朗な声音を聞かせて通り抜けるカーティスは、風の緩やかな高空へとたどり着いている。
上方を操縦席に拡大投影して見れば、その城の姿が遠くないことにも気づいた。思わず、朗らかな声音が零れる。
「お城も、もうすぐだ……!」
「楽しいですか、コールリッジ殿」
と、ふわりと翼で風を切るイリーツァが、その隣にやってくる。透明状態の窓から見えるカーティスの笑顔に、ちらりと目をやりながら。
カーティスはふふふ! とまた笑みを含む。
それから頷いた。
「こんなかたちで、イリーツァおにいさんとそらのさんぽができるなんておもわなかったから。それにお城も、楽しみだし!」
「そうですか。で、あれば。良かった」
イリーツァの表情は、あくまで朴訥としたもののまま。
それでも少年の言葉に頷きを返すと、その瞳を空に向けた。
「行きましょう。未知が待っています」
「うん! そらのはてまで、ひとっとびだ!」
飛んで、昇って、その頂きの探しているものはある。カーティスが加速してそこへと向かい始めると、イリーツァも風を掃いて高速を得た。
ぐんぐんと、それは近づいてくる。
気流も風も、何者も二人を遮らず──その心が遥かな天へと導いていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
天空に浮かぶ魔城…御伽噺そのものですね
SSWの技術でも再現するのにどれ程の手間が必要かを考えると、魔法という物に驚嘆の念を感じざるを得ません
ですが、騎士と振舞うものとして気圧される訳にはいきません
群竜大陸発見の為、攻略を完了させましょう
●防具改造で武装を背中に背負い、巨岩を登攀しましょう
各種センサーでの●情報収集で空気の振動から気流の流れ、勢いの増減のタイミングを●見切りつつ、UCのワイヤ制御隠し腕での●ロープワークで渡ったり、超重フレームの指先の鉄爪を展開。●怪力で岩にしがみつき、●串刺しするかのように食い込ませて登攀中の落下を防止
…冒険譚のようで不謹慎ですが少し興奮してしまいますね…
重力の働く世界で、それは不思議な威容を誇っている。
まるでそこだけが物理法則から解き放たれたかのように。或いはそこだけが宇宙になってしまったかのように。
巨大な質量が留まって、揺蕩って、地に影を落としていた。
点々と連なる岩の路と、その上方にある空の城。
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそれを仰いで、微かな畏怖に似たものすら感じている。
「天空に浮かぶ魔城……御伽噺そのものですね」
荒唐無稽とも言えるその景色。
まさしく伝説と言える超常的な眺め。
自身を生んだあの宇宙の技術でも、再現するのにどれ程の手間が必要か。それを思えば一層、驚嘆の念を禁じ得ない。
「──ですが」
トリテレイアはそれに凛然として退かない。
騎士と振舞うものとして気圧される訳にはいかないのだから。
「群竜大陸発見の為、攻略を完了させましょう」
かしゃりと一歩踏み出すと、近場にある地面付近の巨岩を見上げた。
それから体を覆う超重フレームのうち指先の機巧を動かし鉄爪を展開。岩にしがみつく形で食い込ませ、登攀を始めた。
最初の一つの岩にすぐに登ってみせると──僅かに高い位置にある別の岩を見つめる。
そこからは常に、空中を渡ることになる。けれど無論、トリテレイアの武装は如何な状況とて対応する術を備えていた。
腰部稼働装甲格納型隠し腕──ワイヤ制御のそれを撃ち出して、対面の岩を違わず捕らえてみせる。
そこからはロープワークをするように自身の体を引き寄せて移動。
跳び乗るようにすると、そのまま鉄爪を突き立て固定。そこから少しずつ登攀して岩の頂上へ登った。
怪力を活かせば、決して岩から離れはしない。後はそれを繰り返す形で次の岩からまたその先の岩と淀みなく移っていく。
「現在地上から百メートル……それなりの高度へきましたね」
高度計が正確な距離を弾き出す中、見下ろすとその視覚でも高さを実感できる。段々と風は吹き付けるようになってきて、気温も幾分下がってきた。
何よりも大きな変化は、気流が強くなってきたこと。
属性を持ったゆらぎとして顕れるそれは、只中に飛び込んでしまえば如何な強風よりも体力を削ってくるだろう。
単純に勢いも強く、それこそ尋常のものであらば突破は困難。
だがトリテレイアにしてみればそれも想定された状況に過ぎない。
センサーを働かせることで空気の振動から気流の流れ、勢いの増減などを把握して。
瞬間、最もそれが弱くなったタイミングで跳躍。隠し腕を放って素早く前の岩に接触し、一瞬の内に切り抜けていた。
緊張の連続という場面でも、トリテレイアは呑まれない。
「……冒険譚のようで不謹慎ですが少し興奮してしまいますね……」
そんな気持ちだってあるから、寧ろ期待感すら含んでみるように。徐々に見え始めてきた城へと、確実に近づいていった。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
判定:【WIZ】
へぇ、岩が浮島みてぇ……つーか、本当に宙に浮いてんだな。面白ぇ。
ここを巧く渡って上に行かないといけねえわけか。不謹慎かもしれねーけど、ちょっと楽しそう。
基本的には風が弱まるタイミングを観察したり〈第六感〉で察知したりしつつ、安全に渡れそうなルートを見極めて進んでいく。
難所っぽくて、どうしても風が邪魔になりそうな場面になったら、《幻想虚構・星霊顕現》の出番だ。上手く風をコントロールして、弱めるなり追い風にするなりして、制御が利いてるうちに素早く切り抜ける。
もし、近くに難儀してる仲間がいるんなら、そいつを助ける目的でも《幻想虚構・星霊顕現》を使用するぞ。
琥珀色の瞳に映るのは無限の空だけではなく。
そこに揺蕩う巨岩群と、彼方の天頂にある城の影。
それが何より好奇心を惹くから、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は小さく感嘆の息を零していた。
「へぇ、岩が浮島みてぇ……つーか、本当に宙に浮いてんだな。面白ぇ」
畔に入ってから歩み進むと、すぐに高度の低い岩の姿が見える。そこから視線を上げるとそれが何処までも続くのが判った。
「ここを巧く渡って上に行かないといけねえわけか。……不謹慎かもしれねーけど、ちょっと楽しそうだな」
如何な危険地帯でも、そんな心は湧いてくる。
だから抱くのは早く登ってみたいという、そんな気持ちでもあった。
巨岩の傍まで来ると早速跳躍し、それに組み付く形でよじ登る。
大きさのある岩は少なくとも低地では安定していて、振り落とされるようなこともない。問題なく最初の岩の上に到達すると、あとは勢いをつけて跳躍。二つ目の岩にも難なくたどり着いていた。
「しかし、ここだけでも十分に高いな」
普通の人間であるなら、既に落下すれば危険な高さだ。
猟兵であるがゆえに、まだまだそこは安全域と言っていいが──それも少しの間だけ。程なく地面も段々と遠くになり始め、如何な超人でも落ちれば只ではすまぬという位置にまでやってきている。
「気をつけていかないとな……」
ふと気づくと、来ているポンチョも揺れていた。
このあたりから、気流も明らかに強くなってくる。考えなしに飛び込めば、体力を取られるばかりでなく煽られて地面へ一直線だろう。
故に嵐は、そこばかりは慎重に。
観察して風が弱まるタイミング把握し、その上で第六感を働かせて。僅かに風で加速したように高い岩へと着地していた。
「いい感じだな──と」
嵐はそれでも微かにだけ目を細める。
その先にある気流は激しく吹き荒んでいて──風が厚い壁を作っているようだったからだ。
単純に機を計るだけでは進めない。
だが、嵐はそれを突破する方法も持っていた。
真っ直ぐ手をかざすと、そこに風の属性を含んだ魔力を湛え始める。すると放たれるそれが気流の魔力にも作用して、風の勢いが変化し始めた。
幻想虚構・星霊顕現(ガーディアンズ・ファンタズム)。
自然現象を巻き起こす力を持つそれは、気流をコントロールして自身の追い風に変える。そのまま跳躍した嵐は、一気にいくつもの岩を飛び越える形で高い岩にたどり着いていた。
「ここまで来れば、あと少しだな」
果てしないと思われていた空の道中も、その先が見えつつある。
仰ぐと視界に映るのは城の姿。まだまだ距離はあるが、確かに空に浮くそれがはっきりと見えていた。
ここまでの道のりは悪くなかった。危険でもあったが、楽しい部分もあったから。
この先は、どうなるか。
嵐は少しだけ考えて──今はただひたすら、上を目指した。
大成功
🔵🔵🔵
ユノ・フィリーゼ
天の彼方に座する旧き時の城
其処には一体何があるのだろう
湖の畔で予め花や葉を幾らか摘んで
吹く風を感じながら
跳ねて、飛んで一歩ずつ慎重に
空中浮遊とジャンプを使い空への道を進む
浮遊する岩場では
新たな足場に着く度、花や葉を空へと流し
自分の目と経験則、第六感も働かせ
ある程度風の流れを読む
他より穏やかな箇所があればそこを通り
何処も激しい様なら、
衝撃波で一時的に風の流れを変えられないか試してみよう
危ない時には深風の祈誓を使い
纏った風で近くの足場まで一気に移動
翼無き者が空を歩むのだもの
多少の危険はスパイスにしかならないわ
覚悟は元より出来ているし、ね
助けの必要な仲間が居れば手を貸し
共に空の城を目指すよ
ふわりと宙に舞うように、木立を越えて畔に向かう。
そのときにはもう、頭上に続く巨大な岩と、その更に先にある影が視界に入っていた。
ひらりと体を翻して湖の前に立った空色の少女──ユノ・フィリーゼ(碧霄・f01409)はその遠大な景色に、心が誘われるようだ。
天の彼方に座する旧き時の城。
其処には一体何があるのだろう、と。
幻想画のような眺めは、ただ立って眺めていたくなる光景でもある。故にこそ、その頂きをこの目で見てみたくなった。
ユノは先ず、野の花と葉を幾らか詰んで準備とする。
それから低い巨岩に目をやって。
「──行きましょうか」
吹く風を感じながら、一つ跳ねる。
するとまるで綿毛が飛ぶよう、軽やかに岩の上に到達していた。
元より、風を掴まえて空へ跳ぶ力に問題はない。ユノの跳躍力があれば、十二分に岩を伝っていくだけのことは可能だった。
ただ、不安と言える要素もある。
(風が、変わり始めた──)
髪を揺らし肌を撫ぜていた空気。それが不可思議な温度を湛え、肌を刺すものになりつつあった。
魔力を含んだ気流だ。
一つ二つと岩を跳び、高さを増すにつれて如実に感じるそれは、風より強く吹き荒んでいる。
ただ、ユノもそれは予想済みだ。
だから新たな足場に着く度に、指先からそっと花と葉を空へ流し──その動きから気流を読み取っていたのだ。
魔の風は自然の風とは違い、優しくない。けれどつぶさに観察することで、しかとその全容を理解するだけの経験と勘を、ユノは持っていた。
そうして気流が比較的穏やかな場所があれば、たん、と。岩を蹴って浮遊し、その上を飛び越えて別の岩へと渡ってゆく。
蒼い空が濃くなって、高みまで到達すると──気流も更に激しい。巨大な壁のように吹きつけて、完全に行く手を阻む箇所すらあった。
けれどユノそんな時、本物の風を味方につける。
深風の祈誓(ミカゼノキセイ)。風の祝福を纏い、高速で移動。同時に衝撃波を放ち気流の流れを変え、道を切り開いた。
決して退きはしない。
──多少の危険はスパイスにしかならないわ。
覚悟も元より出来ているのだから。
宙を踊り、滑り、跳び。ユノは岩の間を軽やかに渡っていく。
城が見えてくるのは、程なくのことだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ナーガクーガ』
|
POW : 飛びかかる影
【不意打ちの飛びかかり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【輝く牙による食い千切り攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 激昂
【怒りの咆哮を上げて威嚇する】事で【興奮状態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 集団防衛
【強敵の出現を知らせる警戒の咆哮】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
イラスト:傘魚
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●空舞う闘争
巨岩を渡り、登ってきた高空。
その上方に見えるのは紛れもない城塞の姿だった。
石造りの外壁、尖塔、屋根。
古くも美しい造形の建造物。
そこには一体何があるかと、思わされずにいられぬ景色。
けれどそこにたどり着くよりも先に、城の周囲より現れる影があった。
鱗を持つ獰猛なる獣──ナーガクーガ。
集団で現れたその敵は、岩から岩へと容易に飛び移る跳躍力を持っていた。
時に気流すら利用してみせるように縦横に飛び交い、それでいて驚異的な速度と研ぎ澄ませた牙を有している。
眼光は、城には近づけさせぬとでも言っているかのよう。
上方から降りてくるその獣は、猟兵達へ狙いを定めると──高速で飛びかかってきた。
月夜・玲
さてと天空城まであと少し
随分と高い所まで来たもんだ
絶景絶景
せっかく景色を楽しんでるんだから、邪魔はしないでよね
●戦闘
【I.S.T.起動】を発動し《RE》IncarnationとBlue Bird以外の装備をパージ
身軽になって敵の攻撃に素早く対応できるようにするよ
とはいえ此処で追いかけるのは不利かな
安定した足場でナーガクーガを待ち受けて、【カウンター】で斬り付けよう
ザイルを打ち付けておいて、落下対策を念の為しておこうか
【カウンター】をする時には、相手が別の岩に着地出来ないような場所に弾き返すようになるべく攻撃しようかな
そのまま落ちてくれればラッキーだしね
さあおいで、遊んであげるよ
●アドリブ等歓迎
蒼天では全てが蒼色に染まる。
風も、遠方の景色も、遥か下方に見える地面も。眺めるとうっすらと蒼のベールが掛かっているかのようで、清廉な爽やかさを感じさせた。
「さてと。天空城まであと少し……随分と高い所まで来たもんだ」
玲はほんの少し伸びをして、肌に当たる空気の冷たさに高度を感じる。
見渡せば幻想世界の森や海、雄大な自然が地平にまで広がって見える。それこそ宇宙にはない眺めで、見ていると新鮮な心持ちになった。
「絶景絶景。せっかく景色を楽しんでるんだから──邪魔はしないでよね」
と、そこで視線を上げて言葉をかける。
見つめる先にいるのは──岩々を伝って降りてくる鱗の猛獣。
竜の属性の一端をその身に宿す四足獣、ナーガクーガ。
まるで空は我がものというように、足場から足場へ、軽々と飛んではこちらへと距離を詰めてきていた。
元より話し合いが通じる相手ではないとは判っている。故に玲もまた、既に戦いの準備を始めていた。
「Imitation sacred treasure──」
I.S.T.起動により武装の光を僅かに明滅。《RE》IncarnationとBlue Birdの二振りを除く装備をパージし、敏捷性に重きを置く格好を取る。
それから視線を奔らせて周囲と敵の位置を観察。優位を取れる場所を探した。
(こっちも身軽になった、とはいえ一体一体を追いかけるのは不利かな)
単純な機動性で、地の利のある敵の上を行くのは難しいだろう。それを悟った玲は二段程岩を下って、中でも巨大で安定した足場に降り立った。
そう、敵から襲ってきてくれるならそれを利用すればいい話。
こちらから追わずとも、しかと力を発揮できる場所で迎え撃てばいいのだ。
ザイルを打ち付けて落下の対策もとると、ひゅるりと二振りの刃を揺蕩わす。これで態勢は万全。
「さあおいで、遊んであげるよ」
ふわりと、風に蒼い髪の一房が揺れる。
その瞬間、声にいざなわれるように二体ほどのナーガクーガが上方から飛び降りてきた。
速度はやはり疾い。
だが上から降ってくると判っていれば警戒もできようもの。
前方に着地して駆けてきた一体を、玲は《RE》Incarnationで一閃。薙ぎ払うように斬りつけてみせた。
鱗はかなり堅い感触がある。だが斬って斬れぬ程ではない。間髪を入れずBlue Birdを奔らせて斬撃を見舞うことで、両断して消滅させた。
「けどやっぱり、やわじゃないね」
おそらく集団で囲まれれば苦戦するだろう。
だがこちらにしても、一体一体をわざわざ丁寧に相手することもない。
もう一体の獣は咆哮を上げて一層の素早さを得るが──そのまま突撃してくるその個体を、玲は横へ逸らすように弾いた。
するとその敵は衝撃に煽られるように宙へ。そのまま地面へと落下していった。
さしもの猛獣とて、この高度からの落下には耐えられまい。後は地に衝突し、独りでに消えてなくなるだろう。
更に三体程が降りてきても、玲は同じ戦法をとるまで。
がむしゃらに突き進んでくる個体がいれば、無理に抗戦しようとせずに真横へ払い、宙へ投げ飛ばす。正面から突進されても上手く刃で防御。ザイルで事なきを得ると──反撃に横一閃の斬撃を叩き込み、真っ直ぐに後退させて岩の外へ落とした。
敵の速度にも慣れてくれば、残る一体にも苦戦はしない。
突進を避けると素早く振り向いて、二連の斬撃で鱗を刻む。そのまま更に返す刀で二撃を与え絶命させていた。
「もう少し、上がってみようかな」
視界にいた個体が粗方片付くと、玲は移動を再開。爽風の中を再び登り始めていく。
大成功
🔵🔵🔵
ベイメリア・ミハイロフ
さしずめ、城を守る兵、といった所でしょうか
申し訳ないのですが、こちら、通させていただきます…!
岩と岩とを渡る際には変わらずSignal of battleを使用
(ジャンプで渡れる程の距離であれば使用なし)
絶望の福音、不可であれば第六感・見切りを活用し
敵の攻撃を先見して、特に不意打ちは気をつけて
岩影も利用し回避したく存じます
回避不可能であれば、オーラ防御又は武器受けを
攻撃はできればマヒ攻撃も乗せて
複数体を巻き込める際にはRed typhoonを
撃破可能な個体がいますればジャッジメント・クルセイドをと
使い分けいたします
咆哮のできぬよう、喉を狙ってみたく
可能なら早業・高速詠唱からの2回攻撃を図ります
物理的な距離は長くなくとも、城との間にはまだまだ無数の巨岩がある。
その全てが塞がれたと言っていいほど──その敵影の数は多かった。
竜鱗の獣ナーガクーガ。
一見するだけで数十体を確認できながら、そのどれもが一箇所に留まらず飛び交い、こちらの目を泳がせる。
さりとてその間を縫っていくこともまた困難と思わせる統制も感じられた。
「さしずめ、城を守る兵、といった所でしょうか」
ベイメリアは頭上を仰ぎながら呟く。
高空に吹く風は強く、豊かな金髪を大きく靡かせていた。そんな環境でも敵はまるで空を自由に舞っているかのようだ。
けれど、ベイメリアも空中戦で負けるつもりはない。
何より目的が目に見える場所にあるのならば。
「申し訳ないのですが、こちら、通させていただきます……!」
舞う花びらと共に、再び空に踊り出たベイメリアは──そのまま敵にも劣らぬ速度で蒼空を飛び始めた。
岩の間を抜けて急上昇するベイメリアの姿に、ナーガクーガは驚きも感じたろうか。僅かに喉の奥を鳴らしながら、それでも直上から飛びかかろうとしてきた。
が、その動きを既にベイメリアは予見している。
一瞬前に行使していた、絶望の福音。
その力が意識の中でだけ時間を未来へ進めて、そのまま自分が上昇すれば敵と衝突するという事実を知らせていたのだ。
故に、敵が岩を蹴るのと同時にベイメリアは岩の陰へと入り込み、回避を成功させていた。
直後に岩を軽く押し返す形で方向転換。下方の岩に落ちていたその一体の頭上を取り、そっと腕を翳す。
「──光よ」
刹那、静かな祈りが耀く光を招来した。
邪の存在を裁く煌めきは、天から注いで獣へ直撃。眩さの中に飲み込むように蒸発させていく。
そのままベイメリアは留まらず、水平方向に移動して上方からの敵の強襲を避けた。
同高度に降りる形となったナーガクーガ達は、すぐに狙いを定め直し、こちらへ一斉に踊りかかってくるが──。
複数でかかってくるのなら、それは一気に攻撃に巻き込む好機でもある。
ベイメリアは惑わず、たおやかに。
一片、二片。風に深紅の薔薇の花びらを交えていた。
その内に無数となった鮮烈な紅は、美しくも鋭い花嵐となって吹き荒ぶ。
Red typhoon。その花弁の一つ一つが獣の鱗を裂き、膚を破り、血潮を散らせていった。
苦悶するナーガクーガは、それでも咆哮を上げて自身の速度を増そうとする。
が、声は掠れて響かない。ベイメリアの狙いによって、花弁がその喉を深く斬り裂いていたからだ。
慈悲のない攻撃。
否。この敵が世界にとって招かれざるものであるならば、ここで討ち果たすことこそが、一つの慈悲。
「終わらせていただきます」
ベイメリアは間を置かずに二連で花を舞わせた。
鮮麗な花風は獣達を跡形もなく四散させて、過去の時間へと還していく。道が拓けると、ベイメリアは再び空へと上がっていった。
大成功
🔵🔵🔵
アネット・レインフォール
▼心情
獣とは言え、地の利は向こうが上と見るべきか。
だが…今回は集団戦。
足場の少ない状況では敵も一斉に動きづらいように思える。
そして、地形利用出来るのはこちらも同じ。
ならば乗るしかない、このビッグウェーブに――。
▼POW
引続き刀剣を念動力で浮かせて足場に。
遠近問わず【雷帝ノ太刀】による居合で一閃していく。
回避時は斬撃を曲げたり追尾させて戦況に対応するが、
霽刀を振るいつつ敵の動きや間合いは冷静に分析。
複数を巻き込めそうなら足場の岩を狙い
そのまま下の湖に叩き落とす事も検討する。
良い気流が吹いていれば皎剣の上に乗り宙へ。
サーフィンの要領で風に乗りながら攻撃を行い
城までの距離も同時に稼ごう。
アドリブ歓迎
蒼穹の巨岩を獣達が闊歩する。
城を護るように現れた獣達を、アネットは岩場の一端から見上げていた。
「数は……数え切れないほど、としか言えないか」
飛び交う無数の影は、その全容を把握する事もできない。
獣とは言え環境に適応しているのか、身軽に動き回ってもいて、いつ跳んでくるのか予想もしにくかった。
端的に、高所では出遭いたくない類の敵。
(……とはいえ)
アネットはあくまで冷静な観察眼を持っている。
確かに地の利は向こうにあると見るべきだろう。だが集団であることも敵の有利に働くかというと、必ずしもそうではなかった。
足場の少ない状況では、敵も完全な自由とはいかない。事実、一度に一つの足場に乗ることの出来る数は限られていて──大勢での一斉行動は出来ていなかった。
そして地形を利用できるのはこちらも同じ。
ならば付け入る隙は決して零ではない。
アネットは刀剣を再び浮遊させ、巨岩の間へ。
挟み撃ちをされないような狭い場所へ移動すると、まずは上方から降り掛かってくる獣に狙いを定めていた。
この場に一度に降りてくるのは一体のみ。そこへ居合の構えを取ると、ばちりと耀く雷光を鞘に奔らせる。
刹那、刃を抜き放つと共に稲妻を纏った斬閃を飛ばし、煌めきの流線を宙に描いた。
【参式】雷帝ノ太刀。
飛翔した斬撃を意のままに操ることの出来るその異能は、狙い違わず空中のナーガクーガを捕らえ、鋭き切れ味でその体を両断していく。
続いて一体、更にもう一体。
空から襲ってくる獣を断ち切ると、ある程度近場の敵数が減ったところで上方へ。そのまま刀剣を使っていくつかの岩を移動した。
すると広い岩にいる三体がこちらに狙いをつけていたが──アネットも既にそれには気づいている。
「来させはしない」
瞬間、敵が飛びかかってくる前に雷を放ち、一体を寸断。距離を取ろうとした別の一体もまた、追尾する斬撃を飛ばすことで逃さない。
残る一体は正面から突撃してきたが──近距離こそ刀本来の間合い。アネットは返す刀で連撃を見舞うことで、直接その一体を斬り伏せた。
間を置かず、近くの岩に更に複数体が乗っているのを見つけたが──アネットは惑わない。敵ではなく、岩自体へ斬撃を飛ばして破壊。乗っている敵諸共遥かな地面へ落下させていった。
「ここは風の状態も良さそうだな」
と、良い気流が吹いていると見れば、皎剣【忍冬白焔】へと乗って宙へ。サーフィンの要領で気流に乗り、一気に飛び上がっていく。
念と足の力の使い方で上手くバランスを取り、滑るように移動。大空で波乗りを行って城への距離を稼いでいく。
そんなアネットへと飛び込んでくる敵もいたが──アネットはそれこそ波の上を畝るように回避。横に回転しながら剣撃を繰り出して断ち切った。
遠方の敵も、見つければ居合を飛ばして撃破して。素早くその場の敵を退けながら上へ上へと昇っていく。
「もうすぐだな」
城はもう、目と鼻の先。それでいて油断もなく、アネットは次々と獣を斬っていった。
大成功
🔵🔵🔵
カーティス・コールリッジ
イリーツァおにいさん(f14324)と
おしろの中まではStingrayは入らないからここからは白兵戦
だいじょうぶ、こわいものなんてない
だっておれには――とってもかっこいい竜がついてるんだから!
被験体XX、目標を補足しました
イリーツァおにいさん、いこう!
後衛
激昂するナーガクーガの顎を狙って撃ち抜こう
吠える暇もないくらいに熱線の雨を降らせたなら
きっとあっちは戦いにくくなる
イリーツァおにいさんに飛び掛かろうとする個体には
比較的柔そうな腹部を狙撃して妨害
イリーツァおにいさんがたたかうすがたを見るのははじめて
まもられているのがわかる
だからこそ、おれはかれに示さなくちゃならない
じぶんのちからを、ゆうきを!
イリーツァ・ウーツェ
コールリッジ殿(f00455)と
ひとまず人の形に戻る
戦闘か、得意分野だ
ヒケンタイという単語を私は知らない
だが、きっと彼を示す言葉だろう
行きましょう、コールリッジ殿
前衛
使用UCは【竜翼衛巣・雛守】
飛びかかりを見切り、顎を、頭を竜宮で殴り砕く
水の槍を作りだし、全力魔法で量を増やして複数を同時攻撃
杖が届かなければ銃撃
此の身を全てを使ってでも後衛への攻撃は通さない
此方から群れへ飛び込むのではなく、攻めてくる個体を片付ける
(女性の霊も子供には甘いため、後衛へ近付く敵を強力な呪詛で攻撃します)
彼は雛(幼い子供)で、私は成竜
成体は雛を守るものだ、種族等関係ない
未来を託せる雛であれば尚更だ
風の音色を遮る、凶暴な鳴き声が聞こえる。
仰ぐと、澄んだ碧天に立ち塞がる無数の影があった。
天空に浮かぶ城が、手の届きそうな場所にある高空。その道を通さぬようにと、喉を鳴らして獲物を探す獰猛なる獣。
「敵が、あんなにたくさん──」
縦横に飛び交うナーガクーガ。その大軍を見つめながら、カーティスはそこが紛れもない戦場なのだと改めて意識していた。
判っていたことだけれど、城は近くて、まだ遠い。
それでも少年の瞳は真っ直ぐだ。
──だいじょうぶ、こわいものなんてない。
(だっておれには──とってもかっこいい竜がついてるんだから!)
隣を見れば、そこにはイリーツァの姿がある。
イリーツァは怜悧な表情と冷静な瞳で、惑わず上方を見上げていた。
「戦闘か」
ならば得意分野だ、と。
高高度の環境にも動じるところは無く、心は既に戦闘に向いている。
それが心強いから、カーティスもまた不安はなかった。
城の中まではStingrayは入らない、故にここからは白兵戦となっていくだろう。それでもイリーツァと共にあれば切り抜けられるに違いないから。
獰猛なる獣達をしかと見据えてみせながら。
「──被験体XX、目標を補足しました。……イリーツァおにいさん、いこう!」
ええ、と、イリーツァも一度隣を見て応える。
ヒケンタイという単語を、イリーツァは知らない。けれどそれがカーティス自身を示す言葉であることは判った。
彼は彼の道を辿り、思いを抱き、戦いにやってきている。
それは自分も同じと言えるだろう。それがここでこうして交わったのならば、やるべきことは負けずに勝利を手にすることだ。
「行きましょう、コールリッジ殿」
人の形へと戻り、岩場の一端に着いていたイリーツァは──深い呼吸をし、体を巡る全ての知覚を研ぎ澄ませていた。
すると風の冷たさすら鈍らせる感覚が全身を覆う。
竜翼衛巣・雛守。
それは護るための力。魔力に対しても物理的な衝撃に対しても、およそ考えうる攻撃に対して劇的に守りを高める術技。
これで存分に前線を張ることが出来ると。
少年をしかと後ろに守る形で布陣すると、イリーツァは魔杖を握り上方に視線を定めた。
岩を飛び交って降りてくるナーガクーガは、そのままイリーツァへと飛び込んで牙を鈍く輝かす。
だが待ち伏せていたイリーツァは動きを見切り、体をずらすことで回避。側に落ちたその一体の顎を杖先で殴り砕いた。
吹き飛ばされた獣が宙へ落ちてゆくと、続いて襲ってくる一体もバックステップで避けて即座にカウンター。脳天を容赦なく叩き割る。
ぐる、と喉を鳴らす獣達は、単独では勝てぬと判断したのだろう。一段高い岩場から、二体同時に飛びかかろうとしてきた、が。
「させないよ!」
カーティスがそれを見逃さず。ブラスターから陽光の如き熱線を生み出して、雨のように注がせていた。
顎を焼き払われたナーガクーガは、吠える暇も無い。どころか岩から跳ぶのも容易ではなく、一体はそのまま熱に貫かれて斃れていった。
もう一体は無理矢理に跳躍してくるが、弱った個体に苦戦するイリーツァではなく。敵が迫ってくると同時に杖を突き出し、敵の速度までもを利用して打ち砕いてみせる。
僅かな間隙が出来れば、一度振り返ってカーティスの無傷を確認して。それから再び向き直り、次に備えた。
自身から敵の群れに飛び込みはしない。
護りに重きを置くなら、立ち位置を確保した上で迎撃に専念するべきと判断したからだ。
そしてそれはこの状況下では有用な戦法。敵は遠距離攻撃の手段を持たず、自身からこちらの間合いにやってくるしか無いのだから。
五体の集団が見えると、イリーツァは接近される前から魔力を揺蕩わせた。
妖魔を封じた戦杖は、水を作り出して自由に操作する力を持つ。それを槍へと形作り一斉発射。三体ほどを貫いてみせる。
残る二体は岩を蹴って跳ぼうとしていたが──そこにはカーティスが狙いをつけていた。
飛来する眩き熱線は、獣の腹を穿つ。鱗よりも柔らかな表皮が、その衝撃をダイレクトに体内まで伝えて深いダメージを生んだ。
その一体が倒れると、もう片方の一体は既に跳んできていたが──イリーツァも迎撃態勢に入っている。
「やられは、しない」
厳然と事実を突きつけるように。
水の槍で真正面から獣の喉物を破り、絶命させていった。
敵の数も減り始め、そこで一瞬の無音が訪れるが──それは嵐の前の静けさ。
敵も少数では敵わぬと悟ったろう、少しの後には、幾つかの巨岩を満たす程の集団のナーガクーガが此方を見下ろしていた。
けれど、その程度の軍勢を予想していないイリーツァではない。
「コールリッジ殿。前に出過ぎぬよう、注意を」
それだけ言うと、退く様子も見せずに向き直り。一番近いと判断した岩の敵へ、まずはありったけの水の槍を放つ。
その衝撃に数体が絶え、さらに数体が衝撃で後退すると、その間にイリーツァは視線を遠方の敵にやっている。
そちらの集団が近づいてくる前に、銃撃で二、三体を倒しつつ牽制。
正面側にいる敵には対処が行き届いていないが、それでも突っ込んでくれば此の身の全てを使ってでも受け止めるつもりだった。
全てはカーティスを護るため。
彼は幼い子供、即ち雛。そして自分は成竜、ならば。
(成体は雛を守るものだ)
種族の違いは関係ない。
未来を託せる雛であれば尚更──護り通すつもりだった。
ただ、正面の獣全てがイリーツァに到達するわけではなかった。熱線が光の嵐の如く吹き付けて、滝のように数体を流してしまっていたからだ。
それは無論カーティスの攻撃。
「おれは、だいじょうぶ。だからイリーツァおにいさんも気をつけて!」
カーティスは敵を撃ちながら言ってみせる。
イリーツァの戦う姿を見るのは初めてだった。
けれど自分が守られていることはよく判る。
だからこそ示さなくちゃならないと思ったのだ。
(じぶんのちからを、ゆうきを!)
撃つ程に狙いは研ぎ澄まされて、確実に敵の数を減らしていく。目の前の敵がいなくなれば、遠方の敵だって灼いてみせた。
そこに確かな意志の強さも感じたろう、イリーツァは一つ頷き戦いを続けた。無論、守りの態勢は強固なままで。
それでも通り抜けようとする敵はいたが、ふとその一体が苦悶するように喘いだ。
イリーツァの傍らに揺蕩う女性の霊の仕業。
悪霊と化した存在でも、子供を守るべきとは思っていたのだろうか。イリーツァが意識するまでもなく、後ろに近づこうとする敵を呪詛で蝕み斃している。
気づけば、その周囲の敵影はいなくなっていた。
風音だけが響く中、カーティスはイリーツァの側へ。
「イリーツァおにいさん、怪我はない?」
「ええ。コールリッジ殿も、無事ですね」
であれば良かったです、と。
表情は朴訥としたまま、それでもイリーツァは心から応えていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
地の利はあちらにある以上、浮遊する岩場で重量のある私が下手に動くのは不利ですね
幸いあちらには遠距離攻撃手段が無いようですので、防御を固め迎撃に重点を置きます
岩を●踏みつけ、内蔵したワイヤーアンカーや姿勢制御用の脚部パイルでの●串刺し等で姿勢を安定
ナーガクーガを●スナイパー技能を用いた格納銃器で撃ち落とします
動かない以上包囲され死角から攻撃されるでしょうが、各部センサーでの●情報収集で敵の位置や移動を●見切れば迎撃可能
頭部、両肩、両腕、合わせて5門の銃器
●怪力で振るう剣の●武器受けと●盾受けでの●シールドバッシュ
これで突破はさせません
…卑怯を許さぬ騎士竜は今の私を見てどう形容するのでしょうね…
機械の戦士は、強風吹き荒ぶ高空でも決してふらつかない。
だけに、上方を飛び交う獣達の群れを己とは真逆の存在だとすぐに理解していた。
「体は軽く、俊敏性のある移動が得意──といったところですか」
文字踊りの縦横無尽ですね、と。
ナーガクーガ達を見たトリテレイアはそんな感想を抱いている。
敵の様子を見るに、地の利はあちらにあると断定していいだろう、と。
「であれば、重量のある私が下手に動くのは不利ですね」
場合によっては落下、ということもありえない話ではない。
数も多い分、厄介な敵と言ってよかった。
それでも、幾度も戦いを重ねてきたトリテレイアには──この状況を打開する策もまた見えている。
今いる足場が安定した巨岩だと確認すると、その地面を踏みつける。そのまま姿勢制御用の脚部パイルを撃ち出して岩の内部にまで突き刺していた。
同時にワイヤーアンカーで自身と岩を繋がった状態を保ち、姿勢を完全に安定させる。
これで、万が一にも落下の可能性はなくなった。
後は防御を固めて迎撃に重点を置けばいい。
そう、身軽さが敵の長所だとしても、こちらがそれに付き合う必要はない。今いる場所を橋頭堡として敵から来てもらえばいいのだ。
準備が済めば、腕を上方へ向けて格納武器から砲火。ぼっ、と重い音を響かせて弾丸を放ち、ナーガクーガを撃ち落とし始めた。
その強烈な火力に、二、三の個体が散っていきながら──その内に生き延びた三体ほどが近くの岩の上に着地する。
無論、その個体はトリテレイアへ飛びかかってくるが、それこそ待ち受けていたもの。
トリテレイアは吠え声を上げる獣へ一切怯むこと無く。
腕部だけでなく肩、そして頭部からも銃器を突き出し一斉発射。凄まじい威力の弾幕を張って三体を塵にした。
その内に次々と敵が降り始めてくる。その個体のどれもが、不用意に攻めれば火力の餌食と学んだらしく、包囲するように位置取っていた。
けれどトリテレイアは泰然としている。
「おおよそ、予測どおりですね」
元より敵の動きは不可視光のセンサーと音響のレーダーを使って把握していた。こちらを囲む前から狙いを推測できていれば、惑うことはない。
左右から数体が挟撃を仕掛けてきたが──トリテレイアは片側に上半身を向けて銃撃を浴びせると、その姿勢を揺り戻す勢いのまま、怪力を生かして剣を振るう。
暴風の如き斬撃に反対側の個体が薙ぎ払われると、また逆を向いて火器で残りを始末した。
その間に正面からも二体ほどが突撃してきたが──トリテレイアはもう片腕に、既に大型盾を装備していた。
「突破はさせませんよ」
豪腕を前面に突き出しシールドバッシュ。
敵自身の速度も威力に変えるように、壁そのものが迫るが如き一撃を繰り出して、正面の敵を纏めて打ち砕いていく。
敵を薙ぎ払い、撃ち抜き、斬り裂いて。
少しの後にはそこに静寂が訪れていた。
そうなればまた少し上へと移動して、再び待ち伏せの戦法をとるだけだ。
相手の得意なフィールドにはおびき寄せられず、常に自分の優位を保って戦う。それこそ文字通りの、機械騎士の二重規範(ダブルスタンダード)。
トリテレイアは、天空城にいるという敵のことをふと思った。
「……卑怯を許さぬ騎士竜は今の私を見てどう形容するのでしょうね……」
城の方を仰ぎ、そこからの視線にも似た気配も感じながら。
それでも残る敵の迎撃の為に万全の態勢を築いていた。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
判定:【WIZ】
さながらあの城の番犬……ってやつか。
怖ぇけど……こっちだってここまで来たからには、まだ帰るわけにはいかねえよな……!
他の味方が近くにいるなら〈援護射撃〉〈鼓舞〉で支援しつつ、自分も隙を突いて〈目潰し〉や〈フェイント〉で敵の妨害。
おれ一人しかいねえなら〈第六感〉を働かせて攻撃を〈見切り〉、相手の頭数を減らすように攻撃を加えていく。状況によっては〈敵を盾にする〉ことも視野に入れながら動いて、ダメージを極力受けねえように努める。
相手が自己強化を図ってきたら、《逆転結界・魔鏡幻像》でその効果を打ち消して、不利な状況にならねえようにする。
空の中は屋根もないのに不思議な音響を持っているようだ。
獣の鳴き声は反響して木霊し、鋭い牙の音も風の音にかき消されずよく通る。
だからこそ、その獣の大軍の存在は間近に感じられた。
「さながらあの城の番犬……ってやつか」
嵐は高所に見えるナーガクーガ達の姿に、呟いている。
獰猛な鳴き声は、まるで近づくものは全て取って喰らうと言っているかのよう。
否、文字通りそうなのだろう。骸の海から還った魔物達が、殺戮に容赦するはずもないのだから。
だからだろうか、嵐は僅かにだけ手元が震えるのを自覚した。
逃げ場の無い高空は、壁のない監獄だ。
でも、だからこそ戦う以外に選択肢はないのだ。
「怖ぇけど……こっちだってここまで来たからには、まだ帰るわけにはいかねえよな……!」
やってやる、と。
強く拳を握り込んで震えを断ちながら。
しかと空の大地を踏みしめて、嵐はその戦場に心を向けた。
まずは、空を飛べる仲間達が上方で交戦し始めたのを見ると──嵐は傍観せず、手製のスリングショットを握る。
弾となる小石や礫なら事欠かない環境だ。その一つを引っ掛けて紐を引き絞ると、狙いを定めて発射。ただの石に剛速と弾丸の如き威力を宿させて、空中へ跳んでいる一体を的確に貫いてみせた。
そのまま数発、仲間の援護をするように高い位置の敵を穿っていく。
すると敵がこちらの存在に気づき始めたか、一体、また一体と岩を下って近づいてきた。
嵐は第六感に従って、囲まれぬように先んじて移動。敢えて真上が別の巨岩で塞がっている環境を選び、空からの不意打ちに対策する。
そうして正面側から現れるナーガクーガを確認すると──まずは一体が跳んできた瞬間に、狙いを定めて一発。礫を放ってその脳天を砕いてみせた。
すかさず新たな石を握り、二発三発。
後続の個体の足下を貫いて宙へと落下させ、次の一体は口腔を貫通して斃していく。
「……っと、そろそろ移動するか」
留まっていれば、そのうち集団でかかられてしまう。それを警戒して、位置を固定しないように動きながら敵を撃ち抜いていった。
ただ、獣達も嵐が強力な遠距離攻撃を持っていると意識し始めたか。こちらに近づきすぎる前から、警戒の咆哮を上げて自己強化を図ってくる。
呼応して何体かの敵も吼え声を返し、自分達の力を高めていた。
その集団に襲われれば、流石に危ないと嵐にも判る。
だからこそ、対策は既に考えてあった。
「そっくりそのまま、打ち消させて貰うぜ」
言いながら顕現するのは、淡い陽炎の中から形をとった巨大な鏡。
逆転結界・魔鏡幻像(アナザー・イン・ザ・ミラー)。
映したものと逆の力を放つことの出来るその魔鏡は──敵の声と全く逆位相の咆哮を響かせている。
大空は不思議と、音がよく響く。
それを聞いた敵は、強化した分と同じだけ弱体化されて──咆哮を完全に無意味なものとされていた。
そうなれば、嵐は同じように狙撃していくだけ。
岩を登り、敵を撃ち。敵がいなくなればまた登り。
一歩一歩、確かに城へと近づいていった。
大成功
🔵🔵🔵
バル・マスケレード
ハッ、獣どもがごたいそうな歓迎じゃねェか!
ちょうど運動も足りなかったトコだ。
《終焉》が欲しいなら、〝俺達〟がくれてやる――!
奴らが不意打ちしようがスピードを上げようが関係ねェ。
UCの未来視によって動きを【見切り】さえすりゃ回避は容易。
そしてまず狙うべきは、牙を使った攻撃で狙ってくる個体。
【武器受け】技術によって剣を噛ませてから、
『久遠の《棘》』を巻きつけて拘束。
【敵を盾にする】ことで同士討ちさせつつ、
盾によって俺達を直接狙う角度を限定……未来視からの反撃もやりやすくなるって寸法よ。
「盾」が邪魔になってきたなら、棘を巻きつけたまま力任せにブン回し
寄ってきた奴らを蹴散らす【範囲攻撃】にしてやらァ!
その魔獣はこの世の動物とは違うとひと目で判った。
俊敏さも、垣間見える牙の鋭さも、そして殺意も、全てが一線を画している。
耳朶を打つ鳴き声は鋭利な敵意の現れ。牙を噛み合わす音は、命を削ぐために刀を研いでいるかのよう。
それは紛れもなく、世界の理から外れた魔獣だ。
「ハッ、獣どもがごたいそうな歓迎じゃねェか!」
バルはその敵影に、しかし怖じ気をみせるでもなく。寧ろ歓迎してでもいるかのように両腕を広げてみせている。
如何な敵でもかかってこいよ、と。
「こっちもちょうど運動も足りなかったトコだ」
空の散歩も悪くはなかった。アスレチックとしても上等だ。だがここが紛れもない戦場だというのであれば。
「《終焉》が欲しいなら、〝俺達〟がくれてやる──!」
言って握りしめるのは魔法の剣。これが敵を穿つ牙の一つとなるだろう。
勇烈なまでの戦意に、竜鱗の獣ナーガクーガ達は、自身もまた兇猛な声を上げながら岩を蹴って降りてきた。
そうしてまずは一体が、牙を立ててこちらの命を咬み切ろうとしてくる、が。
「遅ェよ」
自らの姿を真正面から晒してきた敵へ、バルが慈悲を与えるはずも無く。見切りすら必要のない相手には即座に刺突して喉物を貫いてみせる。
そうして一体を撃破すると、上方の敵達はバルが強者だと理解したことだろう。不用意に近づかず、周囲の岩を蹴って飛び交い不意を突こうとしてくる──けれど。
「関係ねェんだよ」
なァ、そうだろ、と。
語りかけるように。バルは宿主が持つ異能を行使していた。
《終焉》の終焉(エンディングブレイク)。
それは紛れもない未来視の力。
垣間見える視界の中でだけ、時間が先に進むと──後方から敵が強襲してくる未来を見て取っている。
一瞬後、それは現実の出来事となって訪れた。
バルは悠々と振り返ってその獣と相対すると、その牙に剣を噛ませて受け止めてみせる。
直後、そのまま離さずに茨を波打たせた。
久遠の《棘》。素早く敵の体を巻きつけて拘束すると、その一体の自由を奪っていく。そのままそれを盾とすることで──次に踊りかかってきた敵に同士討ちさせた。
盾となった敵が息絶えると、襲ってきたその一体は方向を変えてバルを襲おうとする。だがそれこそバルの狙い通り。
敵が狙ってくる角度が限定されれば、反撃がやりやすくなるだけなのだと。飛びかかってきたその一体を容赦なく斬り伏せた。
その一体をもまた新たな盾とすることで、同士討ちは加速し、敵が攻めることの出来る隙間は減っていく。
亡骸が増えて同士討ちが成り立たなくなってくれば──バルは棘を巻きつけたままそれを力任せに振り回し、寄ってくる後続の敵へぶつける。
巨大な分銅鎖のように大振りに暴れさせることで、強力な範囲攻撃として。奇襲を狙っていた敵も纏めて薙ぎ払い蹴散らしていった。
「他愛もねェぜ」
俺達の力にかかればな、と。
バルは呟いて移動を再開する。岩から岩へと跳び、城へ近づきながら──そこに何がいるだろうかと仰いでいた。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※連携、アドリブ歓迎
「番犬、といったところか」
やや浮ついていた気分を引き締め直す。
腹を据えて【覚悟+勇気+激痛耐性】推して参る。
調息、脱力、再度戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
まずは敵の総数と配置、周囲の地形を確認。
得物は素手喧嘩【グラップル】
UCは攻撃力強化。
ヒット&アウェー重視【ダッシュ+逃げ足+ジャンプ】
半端な間合いに居つかず、極力接触時間を減らし、敵の懐に飛び込み、一対づつ確実に仕留める。
囲まれそうになれば迷わず退き仕切り直す。
この地形での戦闘は相手に一日の長がある。
気流の流れ利用してくるならそれを逆手にとり、気流の流れから敵の攻撃を予測し【カウンター】を叩き込む。
フィオレッタ・アネリ
跳躍力と気流…
そっか、ジャンプと風の魔法を合わせれば
わたしも同じように動けるはず!
まず《花導》で花精を召喚
ナーガクーガの行動を全て読んで、岩から岩へと飛び移って
攻撃を躱しながら、存在感を消して目立たないようにした
《メリアデス》の細い蔦を、網の目のように岩の間に張り巡らせるね
うまく張り巡らせてチャンスが来たら
岩の上でわざと隙をみせ、正面からの攻撃を誘って
蔦の網で受け止めちゃう
興奮状態ならきっと気づかれないはず…!
網に掛かったら全力魔法を込め、罠のように網を縮めて
ナーガクーガを縛り上げて身動きできないようにするよ
トドメはゼフィールの援護射撃や他の猟兵さんたちにおまかせ!
※アドリブ・連携 歓迎です!
岩ではなく、雲でもなく。
空を動く無数の影が、蒼空を翳らせている。
それは鱗の猛獣──ナーガクーガ。大軍で流動しながら、それでも城への隙間一つ作らない様は、まるで魔物の壁だった。
「番犬、といったところか」
修介は陽光を塞ぐその敵影を仰ぎ見ながら呟く。
ここまでの道のりは僅かばかり心が踊るものでもあった。いや、天空城の姿が近いとあれば、今もその気持ちは残っている。
けれどここが間違いなく死地になりうる場所であるならば。
やや浮ついていた気分を、修介は一瞬で引き締め直して心を戦いに臨ませた。
「あの敵、とっても自由に動いてるみたいだね?」
と、フィオレッタは春色のワンピースを風がたなびかすのを感じながら、獣達を観察している。
この強風の中では、普通であれば立っているのもやっとなほど。その中でまるで踊るよう行き交うナーガクーガが不思議に思えたのだ。
ただ、そのからくりもすぐに判る。
「跳躍力と気流……そっか」
蒼の瞳をくり、と動かして。
動きを目で追っている内に、あの獣達が上手く気流に乗って跳躍していることに気づいていた。あの自由な挙動と速度は、自身達の跳躍力を殺さないように、最大限風を味方にしていたからだろう、と。
それは同時に、この戦いを上手く運ぶためのヒントでもあった。
「ジャンプと風の魔法を合わせれば、わたしも同じように動けるはず……!」
「上に移動しますか?」
と、修介が尋ねるとフィオレッタはうんと頷いて。
風精を喚んで風を生んでもらい、自分の足元から上方向への気流を作り出す。
そしてその方向の勢いに乗るようにジャンプ。
するとふわりと軽く、同時に強く加速して。
踊るように、奔るように。岩の間を跳びながら、つぶさにその方向への風力を生み出すことで敵にも劣らぬ速度を手に入れていた。
「うん、良さそう!」
そのまま風に仄かな花の芳香を薫らせて。フィオレッタは素早く戦いやすい位置まで移動していく。
その下方では、修介も腹を据えて調息。
覚悟と勇気、戦いに必要な心を確かに内在させながら、同時に脱力して余分な緊張を拭い去っていた。
そして大きな岩へと移動しながら、敵の配置と数を見て取る。
(総数は数え切れない程、だが間合いに一度に入るのは多くて十数体だろう)
それは足場が浮遊する岩だからこそ。敵もひとところに大軍で押し寄せることが出来ないのは、こちらにとって有利な点でもあった。
それ故に敵の配置はリアルタイムに変わるが、それも完全に予測できないわけではない。敵は必ず岩から岩へ跳ぶ。よって周囲の環境をつぶさに観察していれば、完全にとはいかずとも敵の動線も推測できると感じた。
後は気合いを入れて、自身の膂力を強化して。
「──推して参る」
拳を握り込み、丁度上方から跳んできたナーガクーガに目を留めていた。
その一体は同じ岩の少し離れた位置へ着地して、こちらへ踊りかかってこようとしている。修介はその瞬間、疾駆して接近。敵が地を蹴る暇も与えずに、その拳で鼻先を潰していた。
この肉体こそが、何よりの武器。
さりとて深追いせずにヒット&アウェーを重視して。すぐに後方へと翻って敵の反撃を躱していく。
そうして敵に隙が生まれれば、再度近寄り殴り上げ。顎を砕いて命を絶った。
囲まれれば当然、易い相手ではない。ならば可能な限りそれを避けて、一対一の実力勝負に持ち込む。
これが修介の戦法。
左右から複数のナーガクーガが攻め立ててくると見れば、迷わずに下がって。敢えて小さな岩々を伝うように後退し、少数ずつしか通れない場所に位置取った。
そうして一体、多くても二体を相手取るように意識し、拳で撃破しては下がって確実に数を減らしていく。
それでも、気流を利用して遠方から跳んでくる個体もいたが──それこそ予測済みだ。
この地形での戦闘は相手に一日の長がある。
ならばそれを限界まで生かしてくるのは判っていたこと。既に気流の方向を把握していた修介は、しかと足を踏みしめて迎撃。敵の牙を僅かに回避して、クロスカウンターを決めるように拳を抉りこませていた。
強烈な速度と打力を受けたその一体は、吹っ飛ばされ絶命。塵となっていく。
下方の戦いも目にしながら、フィオレッタは軽やかに移動していた。
既にナーガクーガの群れからもその存在は察知されているだろう。けれどフィオレッタに憂いはない。
「──花よ、おしえて」
そっと囁くと、《花導》(ナヴィガトーレ)を行使。
清らかな花精を召喚し、数瞬先の予兆をその聲に聞いていた。心に響く囁きは、確かに敵の動きを正確に伝えて回避を助けてくれる。
だから風に揺れる花のように、フィオレッタは柔らかな軌道で跳び、跳ねて。牙を決して自身に触れさせなかった。
「捕まらないよ!」
そのまま、たんぽぽの綿毛の如く掴みどころなく。気流を作って右、左。鮮やかに、洋々と敵の間を縫っていく。
とはいえその間に、敵へ致命の攻撃を与えているわけではない。
敵から見れば、蒼空に春が匂うばかりで──攻撃は躱されるものの、フィオレッタのことを大きな脅威には思わなかったろう。
けれどフィオレッタは香気ばかりではなく、翠も張り巡らせていた。
移動する度に、精霊魔術《メリアデス》によって樹精を喚び、細い蔦を顕現させる。そしてその存在感を消しながら岩の間に伸ばしていた。
細く視認のしにくいそれは、いつしか網の目の様になっている。
それに気づかぬ獣達は、如何にフィオレッタを追い詰めようかと躍起になるばかり。
けれど咆哮を上げて飛びかかっても、同等の疾さを持つフィオレッタは簡単には捕まらず。フィオレッタの思うままに誘導されるばかりだった。
「そろそろ、いいかな?」
呟く春の女神は、一つの岩の上へ。
風の後押しを受けてすべらかに着地すると、振り返ってその場で立ち止まる。
意図的に作った隙。
正面から攻撃をいざなう誘い水。
だが敵にとってはようやく訪れた好機。この瞬間を逃すまいと、群れで迫ってきていた。
その瞬間こそ、フィオレッタのにとっての最大の好機。張っていた網を跳ね上げるようにして、敵の群れを全て受け止める。
そのまま魔力を込めて、網を縮めて中を縛り上げて自由を奪った。
「後はお願い!」
フィオレッタが言えば、ゼフィールが烈風の吐息を放ち、敵を確実に討ち果たしていく。
別方向からの敵も、同時に仕掛けてあった網で捕らえてある。
「おまかせしてもいい?」
「ええ、仕留めましょう」
と、応えるのは一段下にいる修介だ。
網へと近づくと、その膂力を以て一撃。敵が無防備な状態であれば全力も出せると、強烈なまでの威力で中の敵を四散させていた。
陽光が少しだけ明るくなった気がして、フィオレッタは仰ぐ。敵の数もかなり減って、空への道が拓け始めていた。
「もうすぐだね!」
フィオレッタはすぐ近くにまで来ていた城を見つめる。
そこには敵がいるだろう。けれど期待の心もあるから──空へと跳んでいく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユノ・フィリーゼ
天高き城の住人は翼在る者達だけじゃないのね
黒の守人に少し心を高鳴らせ
空中浮遊やジャンプ、ダッシュを使い、
相手が足場に出来ぬ宙をも利用し
恐れず黒鱗の獣へと近付き刃を振るう
距離があれば銀剣での衝撃波
近ければ蒼刃での一撃を
貴方達も恐れないのね
この空と、風を
はばたく翼はなくとも
自由に空を歩む彼等が
何処か自分と似て見えて。ふと笑顔が零れる
きっと、彼等は怒りを露わにするだろうけど
心は揺るがない
この歩みも、止められはしないわ
だって私。今とても楽しいのだもの!
風の祝福を纏い今一度
飛んで、跳ねて、踊る様に
刃を舞い、重ねる
天空での舞踏会、もう少し楽しみましょう?
そして、貴方達が守るその先に在るものを
私にもみせて
蒼一色の空間から吹く風は爽やかで、透明で。
混じりけのない空の匂いがする。
人が来るには適さない筈の場所だけれど、ユノはそんな空間にとても居心地の良さを感じて。
それは多分、空と風が生き生きと感じられる場所だからだろうと、そう思った。
けれどユノでもなく、風でもなく。
この宙を闊達に奔る者達が、また別にいる。
「天高き城の住人は──翼在る者達だけじゃないのね」
ユノはそれを見上げて少しだけ心を高鳴らせていた。
黒の守人。
その鱗は深い色を湛えて、夜のよう。けれど絹のような艶やかさが蒼空を反射して、不思議な藍色に体を彩っていた。
のびる四肢は無骨だけれど靭やかで、空へ跳ぶだけの力あることを感じさせる。
事実、ユノのずっと上の足場を、その獣達は今も軽く蹴っては飛び交っていた。自分達が討つべきものを見つけたら、遠慮なく宙へ踊ってその牙を立てるだろう。
獰猛にして美しく。
番人して狩人。
ならばユノだって負けてはいなかった。
「始めましょう」
少しだけずらした脚で、緩く膝を曲げて。微かに作った勢いで、たん、と。その場から宙へと跳躍を始めていた。
足下が地から離れると、高空に相応しい風圧が蒼空色の髪を靡かせる。
けれどユノにとってはそれも道標。
流れをそのまま活かすように速度を上げて、岩から次の岩へ。側面を軽くステップするように踏むと更に上へと跳んでいた。
そんなユノの姿を、獣達が捉えるのもすぐのこと。
蒼穹を泳いでいくユノへまるで負けじとするように岩から離れ、その姿を捕らえようとして牙をのばしてくる。
ユノはそんな黒鱗の獣達へと、恐れず近づき銀剣を手にとっていた。
渦巻く風に逆らわぬように、横方向に一回転。氷上で滑るように廻りながらその刃を振るい、銀色を宿した鋭い衝撃波を飛ばす。
その突風で鱗を裂いて獣達を退けていくと、直ぐ側の敵へは蒼刃を握って。蒼空に空の色を重ね塗りするよう、剣閃を描いて一撃を見舞った。
そんな攻撃を受けぬようにと、正面ではなく後方から迫ろうとする狩人もいた。
けれどユノは風に乗って、蒼空を奔って──相手が決して足場に出来ぬ空中にも足をかけて。弧を描くようにして逆に背後を取り、剣撃を返す。
そうしてその獣を落としてしまうと、ユノはまた周りに目を向けた。
守人達はまだまだ、折れ線を描くように岩を跳ねている。
ユノはそれを見て柔らかく瞳を細めた。
「貴方達も恐れないのね。この空と、風を」
はばたく翼はなくとも、自由に空を歩む者達。
その姿が何処か自分と似て見えて。
空の少女からふと笑顔が零れる。
獣達は、低く喉を鳴らして怒りを露わにするばかりだけれど──ユノの心は揺るがない。
「この歩みだって、止められはしないわ」
──だって私。今とても楽しいのだもの!
その身に風の祝福を纏い、今一度飛んでくるりと翻り。
跳ねて獣達を圧倒して。
踊るように刃を舞わせて、重ねて、狩人達を斃していった。
多くの獣達が押し寄せても、ユノは焦らない。
急ぐ相手は上手くあしらって、空のワルツはひとりずつ。
「天空での舞踏会、もう少し楽しみましょう?」
──そして、貴方達が守るその先に在るものを、私にもみせて。
いつしか天空に座していた城はすぐ傍にあって、触れられそうなほど。
だから皆を刃で倒しながら──まるでエスコートの終わりを示すように、最後の獣を刃で退けると。
ユノはそっと入口に降り立って、天空城を目の前にしていた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『騎士竜アシド』
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POW : ネイル・ジャベリン
【右腕】から【無限に出現する槍】を放ち、【磔にする事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : ナイツ・サンクチュアリ
【強制的に1対1の戦闘にする結界】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ビハインド・キック
【背中】を向けた対象に、【後ろ脚からの蹴り】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:朝梟
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アルト・カントリック」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●天空の果て
巨岩地帯を抜けた天頂にあるのは石造りの古城。
僅かに残った大地には緑も生えていて、まるで時間が止まっているかのようだ。
跳ね橋を渡りホールから回廊へと入ると、城の造りは美しい。
不揃いながらも精緻な幾何学模様のレリーフが目を惹き、艷やかな石材がやわく光を反射して。古代の趣を感じさせる不思議な風合いを見せていた。
けれど、そこに進行形の栄華はない。
造りは美しくとも、内部は崩れている箇所も多かった。
何かの破片やくすんだ染みと、垣間見えるのは争いの跡。歩むほどに戦乱の残り香が感じられるばかり。
それはおとぎ話の通りなのだろう。
争いの果てに、魔力の暴走で放逐された城。その形がそのまま残っているに過ぎないのだ。
命の残滓はとうにない。
眠っているのはおそらく、古代の武具や幾ばくかの金銀。
そこにどれだけの価値を見出すかは訪れた者次第だけれど──確かなのは、ここを骸の海から還った者の住処にしてはならぬということ。
故に猟兵達は広間に踏み込み──たったひとりの住人の元へたどり着いていた。
「正面から攻め込んでくるとは、いい気概を持っている」
天井の半分が崩れたそこは、緋色の絨毯に陽光が燦々と差し込む空間。
そこでゆっくりと振り返ったのは、竜。
凛然とした眼光を湛え、猟兵に相対する騎士だった。
「こうしてやって来たのだ、戦いでも卑怯な真似はするまいな」
言うと彼は、戦闘の姿勢を取って。
「この城にはもう何者もいない。だが私はひとりでも、栄光を取り戻せると信じている」
そのために強者を倒し糧としよう、と。
真正面から迫る者には堂々と。
背を向けるものには苛烈に。
騎士竜アシドは猟兵達へと攻めかかってくる。
月夜・玲
やーっと着いた。
苦労して此処まで登って来たんだよ?
楽しませてよね、騎士竜くん?
良い実戦データが収集できそうで楽しみだよ
さあ、始めようか
●戦闘
《RE》IncarnationとBlue Birdを続けて使用
【雷鳴・解放】を発動
雷の疑似UDCの力を身に宿して、高速戦闘でのヒット&アウェイで攻撃していくよ
武器には雷を纏わせて斬撃を飛ばすよ
1対1でしょ、じゃあどっちが早いか勝負といこうじゃない!
視覚と聴覚、そして【第六感】で敵の攻撃を回避しよう
回避出来たら隙を突いて連続攻撃だ
回避が難しいようであれば、【オーラ防御】でオーラの盾を多重展開
更に【武器受け】して攻撃を受け流していこう
●アドリブ等歓迎
崩れた天井から冷たい風が差し込んで、そこが天の果てだと自覚させる。
スポットライトのように広間を照らす陽光も、地面で浴びるものより距離が近くまばゆく感じられた。
「やーっと着いた。ここが最奥って感じだね」
玲は長髪を仄かに揺らめかせ、見回す。
天空城の回廊の奥。行き止まりとなったこの場所が長い旅路の終着点だった。
そう意識すると、玲から零れるのはゆるい吐息だった。
声音は尚気儘なままで。
仰ぐ程の体躯を誇る騎士竜を眼前にしても、衒うところはない。
寧ろ、いざなうような笑みすら浮かべてみせると。
「さて、苦労して此処まで登って来たんだよ?」
──楽しませてよね、騎士竜くん?
《RE》Incarnation、Blue Bird。
機能美と造形美を兼ねた模造神器の二振りをゆらりと浮かせ。逃げも隠れもせずに、半ば好戦的な声音で言ってみせていた。
騎士竜アシドは、それに微かな喜色を見せる。
「力を糧とするに十分すぎるほどの強者と見える」
ならばその力、とくと拝見させてもらおう、と。
声音に期待感を滲ませながら、透明色の円陣を広げていた。
それは他者の介入できない結界。強制的に玲と一対一の戦場を作り上げる異能だ。
玲はなるほど、と軽く視線を奔らせる。
他者の助けの入らない空間、それでも。
「良い実戦データが収集できそうで楽しみだよ」
遠慮しなくてもいいのなら都合がいいのはこちらも同じ。
だから──さあ、始めようか。
刹那、構えた刃をばちりと光を明滅させていた。
時折陽光をも凌ぐ眩さを得るそれは雷の光。
UDCの力を限定的に再現することで、刃だけでなく手元、足元、そしてその身の全てに雷を纏う──雷鳴・解放(ライトニング・リリース)。
瞬間、玲は片足の接地点で雷片を弾けさせると爆発的な加速。一瞬でアシドの横を取ってBlue Birdで一閃、雷の斬撃を飛ばしていた。
そのあまりの速度にアシドは回避が遅れて肌を切り裂かれる。一瞬後には相対速度を殺して深手を免れていたが、それでも数滴の血が垂れた。
足で絨毯を咬んで止まりながら、アシドは感嘆にも似た息を零している。
「想像以上の速度だ。……尤も、私も負けはせぬが」
「そう?」
敵の言葉に、玲は刃を突きつけて。
「折角の一対一でしょ。なら、どっちが速いか勝負といこうじゃない!」
「いいだろう」
アシドは言うが早いか、強靭な脚を突っ張って疾駆。猛烈な加速で正面に迫ってきていた。
けれど玲も、既に反応している。
見てから考えていたらとても間に合わないが、視覚と聴覚で前兆を感じ取り、第六感にその補佐をさせれば動きの推測はできる。
だからアシドが跳ぶのとほぼ同時に、玲は直角方向に回避していた。
部屋の中だと言うのに強風を感じるほどの速度で、相手の斜め後方を捉えると──勢いのままに廻転し、《RE》Incarnationから雷撃を飛ばす。
背を撃たれた形となったアシドは、自身の速度も制動できない。
その隙を逃さず玲は連続攻撃。もう一振りからも斬閃を飛ばして、狙い違わず傷を刻み込んでいった。
「今の所、私の一歩リードかな?」
「──次は譲らぬ」
自身の不覚を認めながら、それでも騎士竜は体勢を直して振り返っている。
そこには玲の強さを確かに称賛しながら、それを越えようという気概が滲んでいた。瞬間、微かに蛇行しながら進行することで狙いを定めにくくしてくる。
玲は一瞬で、躱しきることは難しいと悟った。
だがそれなら敢えて避けなければいい話。
直後、二振りを十字に交差させて盾とし、そこにオーラを重ねてアシドの刺突を受け流していく。
「……!」
「打ち合いでも負けるつもりはないよ」
そのまま敵の矛先を払った勢いで、二刀。雷を乗せた斬撃を直撃させ、深々とその肉体を抉ってみせた。
大成功
🔵🔵🔵
徒梅木・とわ(サポート)
『くふふ、キミの話を聞かせてくれたまえよ』
妖狐の陰陽師 × 死霊術士
年齢 17歳 女
外見 149.8cm ピンクの瞳 白い髪 色白の肌
特徴 自信に溢れた表情 自信家 知識欲が強い 実は勤勉 実は負けず嫌い
口調 歯に衣着せぬ(自分の名前、キミ、だ、だね、だろう、だよね?)
気にいったら 直言居士(自分の名前、~くん、~ちゃん、だね、だよ、~かい?)
剣戟の余波が僅かに空間を震動させていた。
天空城奥部のこの広間は、元は静謐の空間であったことだろう。
崩落した天井が外と城内を地続きにさせて、空気の薄さを感じさせる。風以外の環境音のないそこは、過去の争いを偲ばせる旧い建造物以外の何物でもなかったはずだ。
「それもオブリビオンがいなければ、という話か」
徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)は差し込む風に淡紅梅の髪を棚引かせ、戦いに視線を戻す。
おとぎ話となる程の時代の遺物は、今新たな戦場となっていた。
猟兵と、骸の海より蘇りし騎士の闘争。ともすれば、古代にも劣らぬ争いになるだろう。
だが、妖狐はくふふと笑って怖気を抱かない。
自身にとって未知の戦場であるならば、それだけ見聞が広がるということ。
増して世界から隠れていた帝国の一部だというのなら、旧き魔術書の一つでも眠っているかも知れないのだから。
豊かな尻尾を仄かに動かして、そこに溢れる知識欲の一端を顕す。
故にこそ、退くつもりはなかった。
「始めるとしようか」
ゆらりと羽衣を揺蕩わせ、濃密な術力を溢れさす。
騎士竜アシドはこちらに目を向け──脚に強く力を込めていた。
「魔術使いか。だが私の遣ることは変わらぬ」
瞬間、言うと同時に床を蹴り、高速で肉迫してくる。
ただ、とわも既にその指に護符を挟んでいた。しゃらりと数枚広げると、それを即座に投擲して──。
「こちらとて、対抗策の一つや二つ持っているさ」
脚に命中した瞬間に、符に内在した術力が激しく巡り、明滅する陽炎と共にアシドの体を捕縛する。
「……これは」
「長くはもたないがね」
けれどそれで十分さ、と。
とわは周囲に漂わせていた術力を狐火に昇華。滾る焔の雨として注がせた。
「知識、魔術、策戦。どれも時に、単純な力量を凌駕するものだよ」
轟炎に包まれる騎士竜に、とわは自信に満ちた声音を聞かせていた。
成功
🔵🔵🔴
アネット・レインフォール
▼心情
実物を見ると益々、興味深い造形だな…。
勇者達の痕跡は難しそうだが、後で写真に収めておこう。
…しかし結界か。
だが、他者の目が少ない状況は寧ろ都合がいい。
技の研磨も兼ねて、鍛錬に付き合って貰うぞ!
▼SPD
優先度は「回避>受流し・相殺>武器受け」
先ずは技無し&一刀流で何処まで肉薄出来るか挑む。
予め葬剣を無数の鋼糸状に展開しておき
絡める等して攻撃の時間差を作る。
鋼糸は空中戦の足場にも使用。
刀剣を念動力で束ねて盾としたり射出しながら一閃していく。
不利・負傷時は【剣聖覚醒】を発動。
霽刀と式刀の二刀流に切換え高速連戟を行うが
隙があれば脚や尻尾を狙い、速度能力を削ぐ。
結界終了時は此方も解除。
アドリブ歓迎
旧き時代の遺物の中に立っているというのは、不思議な感覚だった。
それが天の頂にあるものだと思えば尚更だが──。
「実物を見ると益々、興味深い造形だな……」
アネットは好奇心を刺激され、周囲に視線を巡らす。
剣と魔法の世界では理に外れたことが多く起こる。この城はその中でも一層常識の埒外にあるという気がした。
(勇者達の痕跡は難しそうだが……)
それでも後で写真に収めておこうとアネットは決める。それだけの価値はあるのだと、此処まで歩んできた道を思い実感していた。
「……しかし」
と、正面へ向き直る。
城の主たる騎士竜──アシドは今なお烈戦を繰り広げているが。
「結界、か」
淡い光のように広がる壁は、全く他者を寄せ付けず。それが展開されれば外部から攻撃を届かせることは容易ではなさそうだった。
「厄介なものだな」
「──これこそ互いの実力を発揮できる最良の舞台であろう」
呟きに声を返したのは、騎士竜だった。
アネットは見回す。一瞬前まで他者を覆っていた結界が、今は自分と敵だけを囲い込んでいた。
「次は俺と勝負をするのか」
「闘争をしに来たのなら、拒むまい」
広間の音も、景色も、不思議と薄まった空間の中でアシドは言った。
決して広くはない場所。この結界の中にいる限り助けは簡単には望めない。
それでもアネットは頷いてみせる。
他者の目が少ない状況は寧ろ都合がいい、と。
「存分に戦えるのがいい機会なのは、こっちも同じだ。技の研磨も兼ねて、鍛錬に付き合って貰うぞ!」
その手に握るのは一振りの刀。
刹那、地を蹴って疾駆し真っ直ぐにアシドへと距離を詰め始めた。
技に頼らず攻め込むのは蛮勇ではなく、敵の実力をしかと計る意味もある。無論、それで断ち切る事ができれば重畳だったが──。
アネットが振るった一閃を、騎士竜は微かに掠めるに留めて回避していた。
「流石に疾いか」
けれど此処までは予想済み。
相手が横合いから反撃しようとしてくれば──アネットは予め鋼糸状にしていた葬剣を操り、敵の腕を絡めるようにして速度を鈍らせる。
同時に束ねた刀剣を前面に出すことで盾とし、しかと敵の刺突を受け止めていた。
「刀剣を自在に操るか」
「ああ、斬るだけが刀の使い方じゃないからな」
目を見開く敵にそう応えながら、アネットは宙に伸ばした鋼糸を繰って空中移動。騎士竜の上方を取って、頭上から一閃を加えていく。
血煙を零しながらも、アシドはその瞳に賛嘆を浮かべていた。
「武器の強さは使い手次第、か」
見事なり、と。
言いながら自身も鼓舞されたかのように、高速で振り返り槍を突き出してくる。
刀剣の壁で受けつつも、このままでは力押しされると踏んだアネットは──精神を集中させ、淡き光を一瞬だけ纏った。
瞬間、その機動力と反応速度が爆発的に増大する。
──【零式】剣聖覚醒。
余りに重い反動で髪を白く、瞳を緋色へと変貌させながら──手に入れた疾さは熾烈。
刹那、防御状態からすり抜けて高速で回避したアネットは、そのまま霽刀、さらに大太刀である式刀【阿修羅道】も抜き放ち二刀流。斬撃を踊らせて騎士竜の足元を斬り裂いてみせた。
その神速に、アシドは驚愕を見せる。
「この疾さは──」
「命を削った分の、速度だ」
アネットは即座に逆側に回り込んでいた。無論、アシドもそれに追い縋るだけの速度を持っているが──足元を裂かれたことで僅かに軌道がぶれる。
それを逃すアネットではなく。
視認も出来ぬ程の連続の斬閃。脚、尾、胴体。無数の傷を刻み鮮血を溢れさせていく。
大成功
🔵🔵🔵
ベイメリア・ミハイロフ
この堂々とした佇まい…
このお城の、真の守護神、とお見受けいたしました
神に対し、どうして背を向けられましょうか
ベイメリア、いざ、参ります…!
お相手からの攻撃は
第六感・絶望の福音にて何が来るかを先見し、
タイミングを合わせてオーラ防御を
ここは回避ではなく敢えて受けてみたい所でございます
激痛耐性を活用しつつ、決して背中は向けません
但しPOW攻撃に対しては、磔にされて動けないようでは
対峙することもままならないので
しっかりと見切り武器受け又はオーラ防御にて捌きたい所
そこから叶いますればカウンターを、
こちらからの攻撃は可能であれば早業・高速詠唱からの2回攻撃を狙って
渾身のジャッジメント・クルセイドを放ちます
蒼空から零れてくる風は爽やかなのに、どこか張り詰めた空気が漂っている。
差し込む陽光の温度も変わらないのに、その光はどこか壮麗に思えた。
ベイメリアは、その全ての原因が目の前の騎士竜なのだと判る。
凛然とした立ち居、壮健な躰。
そして弛まぬ戦意。
旧き城を、たったひとりで荘厳な戦場に変えるだけの力と格を、その存在が持っているのだと直感的に理解していた。
(この堂々とした佇まい……)
碧の瞳で見据え、聖女は騎士竜アシドへそっと口を開く。
「このお城の、真の守護神、とお見受けいたしました」
「──守護神、か」
そうかも知れぬな、と竜は呟く。
「私は嘗てはいち戦士であった。だが今はもう、元あった命とは別の存在になってしまったのだろう」
その自覚と共に、勇壮に騎士は槍を握っていた。
「だが城を護り、再び栄光を掴む掴むために永劫戦い続ける気概はある。それが城の守護神足りうる存在であるのならば、そうなのだろう」
「ええ」
と、ベイメリアはその言葉にそっと頷く。相対する騎士竜の威厳はやはり、神格にも及ぶものだと思えたから。
で、あるならば。
「神に対し、どうして背を向けられましょうか」
力の権化のような存在に対し、聖女は決して逃げるつもりはなかった。
真正面から相対することを望まれているならば。
「ベイメリア、いざ、参ります……!」
「──尋常に」
するとアシドも絨毯を蹴って、その矛先を向けてきていた。
それは業風の如き速度。まともに受ければ無事ではすむまいと、ベイメリアはその感覚で感じ取っている。
それでも、敢えて回避をしない。
絶望の福音の力と第六感を強く働かせることで攻撃の動線は判っていた。ならば聖なる力をオーラとして纏い、清廉なる輝きを宿して──正面から防御する。
瞬間、光が弾けて硝子のように四散した。
苛烈な衝撃が襲って、心臓を狙った一突きの痛みが深く躰を奔る、が。それでもベイメリアは耐え抜き、数歩後退するだけで踏みとどまっていた。
「──これを受けきるか」
「真っ向から立ち向かってこそ、意味がございますから」
ベイメリアは楚々としたおもてに強い意志を秘めて。
至近で相対したままの状態から、素早い詠唱により上方を輝かせていた。
刹那、閃くのは天からの捌きの光。
陽光を突き抜けて、眩い光の柱として注がれたそれは騎士竜の躰を深く穿つほどに苛烈。その衝撃が、肌を焦がして命を削ってゆく。
呻きを零した騎士竜は、よろけながらも槍を無数に出現させて抗おうとした。
けれどベイメリアはそれにも決して後ろ姿を見せない。メイスと自身に更に聖なる加護を纏うと、迫りくる矛の雨を弾いていた。
そしてまた、天を煌めかす。
『──』
驚愕の騎士へ、ベイメリアは廉潔なる祈りを響かせた。
守護神に、全霊の力で応えようと。
祈りを上げて降らせる二連の光が、煌々とアシドを貫いてゆく。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※アドリブ、絡み歓迎
「真っ向勝負か」
ならば、俺も真正面から。
この拳【グラップル】を以て推して参る。
得物は素手格闘【グラップル】
UCは攻撃力強化
呼吸を整え、無駄な力を抜き、敵を観【視力+第六感+情報取集】る。
体格・構え・体幹の動き・殺気と視線等から呼吸と間合いを量【学習力+戦闘知識】り、爪の軌道を【見切】る。
防御回避は最小限。ダメージを恐れず【勇気+激痛耐性】、【覚悟】を決めて最短距離を駆け【ダッシュ】懐に飛び込む。
そのまま常に動き回り至近を維持。
【フェイント】を掛けつつ細かく脚を攻め機動力を潰す。
脚を潰したら【挑発】し大振りを誘い【カウンター】による【捨て身の一撃】を叩き込む。
肌を刺すような戦意だと思った。
城の最奥に座する騎士は、過去の存在。
骸の海の底に沈み一度は世界から絶えた者。
だが、それ故に渇望にも似た戦いと力への欲望を感じる。それは確かにいち戦士として強大な存在なのだと、修介は感じ取っていた。
「その上で、真っ向勝負を望むか」
呟いて視線を向ければ、その竜が面前に立っているのが見える。
騎士竜アシドは不意を打つでもなく、ただ正面に対峙して言った。
「力でぶつかり合い、その上で相手を乗り越えてこそ、本当の実力だろう」
「……そうだな」
修介自身もそれを否定しない。
元より裏をかく攻撃を得手としているわけではない。
握る武器は、己が拳。頼る鎧は己が躰。
「ならば、真正面からやり合おう」
言って呼吸を整え、無駄な力を抜いてから真っ直ぐを見据える。
そして僅かな時間で敵を観て、可能な限りの上方を頭に叩き込んだ。
──体躯は俺より遥かに上か。
頑強な脚に、文字通り人の枠を越えた筋力。おそらくこちらが全てを力に注ぎ込み、漸く拮抗するか否かというところ。
だが、それ故に本気を賭せば決して渡り合えない程ではない。
──構えは、簡単に読みきれるものではなさそうだ。
体の作りがそもそも人と違えば、攻撃の動線を正確には読みづらい。
だが敵が卑怯な真似をする気がないことと、修介が戦ってきた異形達との経験、そして知識と勘。それを総動員すれば決して圧倒されることはないだろう。
殺気も隠されていないからこそ、挙動の推測も出来る。
総じて、こちらが気を抜きさえしなければ、相克するにいたるだろう。
であるならば、後は拳を合わすのみ。
「──推して参る」
刹那、床を蹴り抜いた修介は、最短距離を駆けて騎士の懐へ飛び込んでいた。
目を見開くアシドは、とっさに槍と刃を振るおうとする。だがそのリーチの長さが、修介を捕らえることに一瞬の瑕疵を生む。
既に間合いの内に入っていた修介は、止まらず一撃。全霊の力を拳に預け、竜の脚の一端を潰してみせた。
「……!」
その威力に、アシドは思わず間合いを取る。そのまま槍を以て反撃をしてくるが──修介は一瞬たりとも動きを止めていなかった。
フェイントを交え、円を描くように槍を逸れるとさらに連撃。細かい攻撃を繰り出して確実に脚の負傷を深めさせていく。
無論敵も防戦一方ではなく、後退しながら槍を振るうことでこちらを掠めていた。
しかし修介は、その程度の苦痛ならば耐えきるだけの覚悟を抱いてきている。
決して引かず、そのまま打突を繰り返し、敵の脚部から鈍い音を鳴らせた。
骨の一端が砕けたのだろう。敵の機動力が鈍ると、ここからが本懐。一度飛び退くように距離を取った修介は、挑発とも取れる声を投げている。
「その脚ならば十全な力は出せまい」
「……少々の傷など気にならないのは、私とて同じだ」
好戦的に言ってみせたアシドは、その誘いに乗るように加速してきていた。
それこそ修介の望み通り。
決して敵の意表を突くでもなく、隠し玉を用意するでもなく。
騎士竜が大振りに打撃を放ってくるところへ接近。捨て身の覚悟を以て、真正面からカウンターを放っていた。
熾烈なまでの拳の一撃が、竜の頬を砕く。その衝撃にとどまり切れず、アシドは大きく吹き飛ばされていた。
大成功
🔵🔵🔵
バル・マスケレード
チッ、武人肌か……苦手なタイプったらねェ。
1対1の結界に閉じ込められちゃあ、得意の縦横無尽な戦法も取れねェ。
だったらまずは初撃の回避に全力を尽くす。
UCで軌道を見極めたなら、
そのドデカい脚の間を【スライディング】で潜り抜けて背後を取る。
結界の中じゃあ【ロープワーク】利用できる地形は限られてるが……
なに、そこにあるじゃねェか。
鎧に武器、大量の取っ掛かりを纏ったデカブツがな!
奴の腰、首、何でもいい。久遠の《棘》を巻きつけ、奴の背に飛び乗る。
手綱代わりの棘を用い、
【騎乗】技術を活かして振り落とされねェよう堪えながら、
その背に腕に、所構わず剣を突き立てる。
さあ、我慢比べのロデオと洒落込もうじゃねェか!
高空の城の中は、僅かに底冷えを感じさせた。
過ぎた時間が温度を奪ったように、長い静謐が空気を水底に変えてしまったかのように。
けれど今、戦場は熱に滾っている。
傷ついても尚起き上がる騎士竜が、剣戟への喜びを見せるように。冷えた空気すら沸騰させるが如く、熱情の戦意を見せていた。
それでいて、威風堂々とした佇まいを崩さない。
「チッ、武人肌か……」
それを眼前にしたバルは微かに苦い声を零す。
──苦手なタイプったらねェ。
ただの卑怯者なら、ただの外道なら。何らの思うところ無く締め上げて縊り殺せる。
だがこういった手合はそう簡単ではない。
単に精神的な問題だけではなく、往々にして実力も伴っている場合が多いからだ。
「さあ、力を見せるがいい。私も命を懸けて相対しよう」
騎士竜アシドは言うと透明色の光を広げ、辺りを結界で包んだ。そうなれば逃げも隠れも出来ず、文字通りの一対一で戦うしか無い。
バルは軽く息をついて見回した。
(これじゃあ、縦横無尽に飛び回るってわけにもいかねェか)
得意の戦法を発揮できない状況に、不利を悟る。
だが無論、それで勝てないとは思っていなかった。
敵の攻撃を受ければ一撃だけでも危うくなるだろう。ならばまずは、その回避に全力を尽くす。
再び宿主の力を借りて未来視。一瞬の時間で、その後に展開される出来事を見取った。
(真正面から突撃か)
卑怯を好まぬ敵の付け入り易い点は、攻撃の動きが読みやすいことだ。未来が見えるならなおのこと、狙い通りに回避することも不可能ではない。
瞬間、バルは引かず前進しスライディング。後傾の体勢で絨毯の上を滑り、敵の脚の間を潜り抜けていた。
騎士竜の速度が疾いだけに、それは僅か一瞬の事。立ち上がったバルは、敵の背後を取る形となっている。
とは言えこの空間ではろくなロープワークも出来ないが──取っ掛かりが全く無いわけではない。
(そう、そこにあるじゃねェか)
視線を注ぐは敵そのもの。
鎧に武器、腰に腕。大量の取っ掛かりを持った巨体。
狙うはよりどりみどり。久遠の《棘》を剛速で放ったバルは、騎士竜の首元にそれを巻きつけて跳躍。その背に跳び乗っていた。
「足場は床ばかりじゃねェってな」
「──!」
アシドはとっさに体を左右に振るい、バルを落とそうとする。
だがバルは暴れ馬を乗りこなして見せるよう、騎乗の技術も存分に活かして決してその場を動かない。
「言われたとおり、手加減はしねェぜ!」
同時に魔法剣を握ると、容赦なくその背に突き立てた。
「さあ、我慢比べのロデオと洒落込もうじゃねェか!」
血潮が散って、騎士竜は苦痛に呻く。
全身で暴れるように、強烈な慣性を生み出してバルを壁に叩きつけようとするが──バルは壁と逆方向に体をずらし、逆にアシドの体だけを壁に打ち付けさせた。
その頃には、再び刃を振り上げている。
「コイツは格別だぜ」
刹那、振り下ろすのは属性の力も込めた一撃。
首元に深々と突き刺さった衝撃は滂沱の血を流させて、確実にその命を削り始めていた。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
判定:【WIZ】
おれは正直戦う時は怖くて余裕とか無ぇから、時間と損失を最小限にするなら手段はあまり選ばねーけど……なんだろう、こういう手合いは下手に卑怯な真似すると逆に痛い目を見るって予感がひしひしする。
まあ、こっちの方が数が多い時点で卑怯も何も無ぇけどな!
《二十五番目の錫の兵隊》を召喚して、直接相手をさせる。
(何か感じ入るものがあったのか、敵に対し敬礼する《錫の兵隊》)
おれは後ろから〈援護射撃〉や〈鼓舞〉を飛ばして支援を送る。1対2に見えるかもしれねえけど、この程度は構わねえだろ?
〈第六感〉で攻撃の予兆を感知しつつ《兵隊》に攻撃を回避させたり、〈オーラ防御〉でダメージを軽減したりもするぞ。
烈戦の続く戦場で、嵐は間合いを取って攻撃の機を窺う。
一対一の勝負に、勇壮な心と戦う姿。騎士竜アシドを目の当たりにしていると、切に感じられることがあった。
「高潔、ってやつなんだろうな──」
嵐自身は、戦うのが怖いと正直に思っている。
だから敵を倒す事以外を考えている余裕はないし、時間と損失を最小限にするなら手段はあまり選ぶつもりはない。
けれど、あの敵はそうではないと確かに実感する。
(……こういう手合いは下手に卑怯な真似すると逆に痛い目を見るな)
ひしひしと、肌がしびれるような敵の戦意を感じながら。
(まあ、こっちの方が数が多い時点で卑怯も何も無ぇけどな!)
ならば嵐には、今できることをやらぬ理由はなかった。
「さあ、出てきてくれ──!」
前方に手をかざし、床の一端を円陣の形に輝かす。
するとその中から揺らめきが生まれ、徐々に人型にも似た姿となり始めていた。
二十五番目の錫の兵隊(フェモテューヴェ)。
片脚が義足のその兵士は、銃剣で武装する頼れる仲間。嵐は自身は後方を保ち、兵士に前衛を任せることで戦陣とする。
すると錫の兵隊は、何か感じ入るものがあったのだろうか、騎士竜に対し一つ敬礼をして見せていた。
アシドは無為に攻め入らず、その敬礼を見届けてから自身も刃を構える。
「力と義を知る戦士のようだ」
「ま、一対二の形にはなるかもしれねえけど。この程度は構わねえだろ?」
嵐がスリングショットを構えると、騎士竜は否定をせずただ戦意を高めた。
「それが戦法だというのならば、私に否定をする理由はない」
「そっか、じゃ、行くぞ」
刹那、嵐が指示を出すと、兵士は疾駆。アシドへと距離を詰めて銃剣を突き出していく。
アシドはそれをしかと槍で受けとめ、刃で反撃の一閃を浴びせようとしてきた、が。
「真後ろに避けろ!」
嵐が即座に声を飛ばすと、兵士も呼応するようにバックステップ。紙一重で剣撃を回避していた。
兵士単体の力であれば直撃を喰らっていただろう。だが嵐が鋭敏な第六感を働かせたことで、一瞬速い機動を可能にしていたのだ。
これも二人であればこその強み。
無論兵士が下がった直後も敵を自由にはせず、嵐はスリングショットを引き絞っている。崩れた石材の破片を礫として、豪速で飛ばすことで、敵の腕元を尖く穿っていた。
数滴の血を零しながら、騎士竜はそれでもどこか喜色を浮かべてもいる。
「見事な連携だ」
「まだまだ、終わりじゃないぞ」
一秒でも早く、終わらせられるならばそれに越したことはない。故に嵐は間髪を入れず連射。敵の足元を撃ち、腕を貫き、強烈な射撃を加えていく。
その頃には兵士が敵へ再度肉迫し、剣撃。痛烈な斬線を刻んでいた。
「……ならば、諸共叩くまで」
苦渋を浮かべながら、それでも騎士竜は下がらず、兵士を力押しに後退させながら嵐にまで距離を縮めてきた。
そのまま二人を薙ぎ払わんばかりの殴打を放ってくる、が。
自身が攻撃されるのも、嵐は予想済み。避けられないと見ればしかとオーラで自身を覆い、その衝撃を抑えている。
そうなれば今度はこちらの番だ、と。
ゼロ距離から兵士が刃を突き刺せば、そこへ嵐も礫を全力で放ち追撃。分厚い鎧を貫いて、体を貫通させていた。
大成功
🔵🔵🔵
フィオレッタ・アネリ
そういえば…
正々堂々とした戦いって実はニガテかもしれない!
(人の姿を得て猟兵になってからの戦いを思い出し)
でもでもせっかくだし、1対1の戦いを受けて立つね
まず高速詠唱と範囲攻撃で
部屋一帯に《メリアデス》の蔦を立体的に張り巡らせ
連続攻撃へのレーダーにするね
蔦が切られた感覚で攻撃の方向とか分かるから!
それに第六感をあわせて攻撃を察知して
さっき掴んだ風に乗る跳躍で部屋の中を
縦横無尽にジャンプして回避するよ
あの攻撃、途中で止められないみたい
チャンスかな
ゼフィールを槍にして構え
《春の祝福》を乗せた《ファヴォーニオ》の吹き飛ばしで
自分を加速してそのままアシドさんに突撃!
どうかな
ちゃんと正々堂々と戦えてた?
隙間から吹き込む風を、激しい剣戟が嵐に変える。
猟兵と騎士竜の戦いを間近にしていたフィオレッタは、ほんの少しだけ考え込むように顎に指を触れさせていた。
「正々堂々、かぁ──」
人の姿を得て、こうして猟兵として戦いに赴くようになってからの短い時間を、ふと思い出した。
敵も環境も、戦いには千差万別の状況があった。けれどの中でもとりわけ──。
(そういう戦いって実はニガテかもしれない!)
そんな思いを感じたか、羽ばたいたゼフィールがそっと肩に触れてくる。
すると寄り添ってくれる風竜に対して、フィオレッタは花の笑みを咲かせていた。
大丈夫だよ、と。
床を踏む音がして視線を上げると、面前に騎士竜アシドの姿があった。
急襲をしかけるでもなく、ただこちらを窺いながら槍を凛然と構えている。
「私と、戦うか」
「うん」
フィオレッタは真っ直ぐに頷いてみせた。差し込む風の中でも春を薫らせ、明滅する外光の中でも春の陽のような柔らかさを感じさせる声音で。
「受けて立つよ、一対一」
「いいだろう。その気概を無駄にさせぬよう、全力を尽くそう」
応えたアシドは、風圧のない風を吹かせて広間に結界を広げる。
他者の立ち入れぬ、不可思議な空間。それによって二人を包むと──後はもう戦いの姿勢をとっていた。
そうなれば、フィオレッタも悠長にはしない。
高空の石造物の中にも春の翠を巡らせるように、伸ばすのは《メリアデス》の蔦。
光線によるレーダーを縦横無尽に張るが如く、立体的に展開して素早く部屋一帯に行き渡らせていた。
それ自体に殺傷能力は少なく、アシドは前進しながら難なく斬り捨てていく。
が、フィオレッタにとってはそれこそが意味のあること。
蔦が切られた感覚によって、敵の動作の一つ一つを確認するよりも遥かに早く攻撃の方向を感じ取る。そこに第六感による察知を合わせることで──。
「当たらないよ!」
ふわり。
風精による風を活かして跳躍し、敵の刺突を先んじて回避していた。
騎士竜は槍と刃を尚振り回すが、その全てを勘と蔦の感触が教えてくれる。
加えて、先刻掴んだ風に乗る感覚。それを十分に活かして高く、時に疾く。宙を自由に翔けるように跳ぶことで全方向からの攻撃を躱していた。
宙返りによって上下逆転した視界で、フィオレッタは速度を落として風に揺蕩う。
見ると、騎士竜は速度を落としきれず、間合いが開いた状態でも攻撃態勢を解くことができていなかった。
「あの攻撃、途中で止められないみたい」
おそらくは、速度の為に自身の制動性すら犠牲にする能力なのだろう。
「なら、チャンスかな」
その意思を読み取ったように、心繋いだ精霊竜は女神の手元へ滑り込んでくる。
淡く風色に光ったその身体は、一瞬後には流麗な槍へと変化していた。
フィオレッタはそれを構えて半回転すると──。
──花よ、森よ、風よ。
──春と豊穣の恵みあれ。
自身の神性を十全に発揮して、《春の祝福》(ベネディツィオーネ・プリマヴェリレ)。その恩寵により精霊魔術の力を増幅させていく。
同時、《ファヴォーニオ》により突風を吹かせることによって自身を加速。一瞬の内に騎士竜へと肉迫していた。
速度のままに突撃し、矛先でアシドの身体を穿つ。
「どうかな。ちゃんと正々堂々と戦えてる?」
「……無論だ」
血を流しながら、それでも騎士竜は言った。
「力を活かし、戦場から引かず、全霊で戦っている」
それを正々堂々と言わずなんとする、と。
ようやく動きを止めたアシドは、自身も反撃を狙って振り返る。
だがその頃にはフィオレッタが再び方向を変えて、加速していた。
「それなら、遠慮なく!」
春一番の如き清廉な風に乗ると、一撃。騎士竜の腹部を真っ直ぐに貫いていた。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
騎士竜様、貴方の考える「卑怯」とはなんですか?
翼持つ竜が地を這うモノを襲うのは卑怯でしょうか?
単騎の騎兵を歩兵が囲んで戦うのは?
懐に潜ませた短剣を奥の手として繰り出すのは?
私は全て許容します
「紛い物」であるが故に
後衛の方を●かばいつつ
四脚の運動、機動性をセンサーで●情報収集
腕の動きから槍を●見切り●怪力での●武器受け●盾受けで弾きスラスターでの●スライディングで急速接近
超接近戦を敢行
間合いが近いと投擲に支障が出るUCの弱点を指摘
UCで動きを封じ、格納銃器の●だまし討ちと近接攻撃で追撃
私の「卑怯」とは戦う力と意思の無い方を戦場に連れ出し利用すること
その意味では貴方は立派な騎士だと言わせて頂きます
広間に微かな吐息が反響する。
それは傷ついた騎士竜の声だった。
未だ倒れるには至っていない。けれど頑強だった鎧も鱗も、大きく罅割れつつある。
無論、それでもアシドは退きもしていない。
「強者が相手だからこそ、卑怯な真似はできぬからな……」
「卑怯、ですか」
と、トリテレイアは敵の呟きにふと声を返していた。
「騎士竜様、貴方の考える「卑怯」とはなんですか?」
かしゃりと僅かな金属音を響かせて、一歩近づいて。
機械の音声を聞かせてみせる。
「翼持つ竜が地を這うモノを襲うのは卑怯でしょうか? 単騎の騎兵を歩兵が囲んで戦うのは? 懐に潜ませた短剣を奥の手として繰り出すのは?」
「──」
その言葉に、僅かにだけ騎士竜は瞑目した。
「自身の力を発揮することを責められはせぬ。だが時と場合によってはどれも、卑劣足りうるものとなるだろう」
「そうですか」
トリテレイアにとっては、半ば予想していた答えでもある。
この敵はこの敵としての矜持を持っているのだろう。
けれどそれはトリテレイアとは性質が違う、それだけのこと。
「私は全て許容します」
──「紛い物」であるが故に。
直後には盾を構えて戦いの体勢を取る。
同時に騎士竜もまた槍を放ってこようとするが──その動作はトリテレイアには既に予想できていた。
独自の体の作りによる運動、機動性、その全てをセンサーで分析し、数値化して関数化。汎用性のある予測機能と組み合わすことで非線形の短期未来を予知し、複数の槍の動きを全て見切っている。
刹那、剣も守りに使うことで、後衛の仲間にも攻撃が及ばぬよう、全ての槍を的確に弾いていた。
直後にスラスターを強烈に噴射して加速。床を滑るように敵へ急速接近していく。
アシドも全てが防がれるとは思っていなかったのだろう。動作が一瞬遅れ、次の行動に移れないでいる。
その間にトリテレイアは距離を詰め、超接近戦の間合いを取っていた。
「これだけ間合いが近ければ、投擲も上手くはいかないでしょう」
「──」
間近で言ってみせると、アシドが刃を握るよりも疾く、腰装甲からワイヤ制御の隠し腕を放っていた。
敵の胴体をしかと捕らえたそれは、強力な特殊電流を発生。弾ける衝撃とともに、巨体を静止させていく。
騎士竜は僅かに呻きつつも、こちらの剣に対して防御態勢を取ろうとした。
けれどトリテレイアの攻撃法は剣ばかりではない。
「私の「卑怯」とは戦う力と意思の無い方を戦場に連れ出し利用すること。その意味では貴方は立派な騎士だと言わせて頂きます」
その上で、自分は自分の戦いをする、と。
トリテレイアは格納武器をゼロ距離から発射。巨体を弾丸と砲弾で穿ち、だまし撃ちの要領で爆炎とともに騎士竜を後退させる。
そのまま更に距離を詰め、自重と速度を乗せたシールドバッシュ。爆発的な威力による物理攻撃で、騎士竜を壁へと叩きつけていた。
大成功
🔵🔵🔵
カーティス・コールリッジ
イリーツァおにいさん(f14324)と
ここはとってもすてきだから、きもちはわかるけれど
眠るタマシイがびっくりしちゃうよ
……わかった
それなら、堂々とたたかうだけだ!
後衛
イリーツァおにいさんの援護を
足を狙って重心を崩す
結界に閉じ込められたら銃身で槍を受け流し零距離射撃
引き剥がすに至れないなら――ヤ!それならこういうのはどうかな
制御装置を解除して雷撃を一斉発射だ
おれはひとりじゃない
手を差し伸べてくれるひとが
いっしょに戦ってくれている!
ね、イリーツァおにいさん
もうすこし探検していこう
おはなを添えたら眠っているみんなもよろこんでくれるかな
……わ!すごい、すごい!きれい!
えへへ
たすけてくれて、ありがとう!
イリーツァ・ウーツェ
コールリッジ殿(f00455)と
竜同士、言葉は必要あるまいよ
退く気は無いのだろう
ならばすることは決まっている
いざ、尋常に
前衛
UCを使用し、『竜宮』を盾と変えて槍を防ぎながら突貫
右腕がトリガーか
戦斧と変えた『竜宮』で右腕を落とす
防がれたなら武器を手放して直接引き千切る
怪力には自信がある
雛(コールリッジ)が閉じ込められたならば
怪力と全力魔法で結界を破壊する
何としても
何をしてでも
貴様の相手は、私だ
コールリッジ殿の周囲を警戒しながらついていく
献花、ですか?
良い案かと
では、私は虹をかけましょう
(杖で大気中の水を操り、虹をかける)
雛を守るのは、大人として当然
ですが、ええ
どういたしまして
ユノ・フィリーゼ
長い時を経ても尚
其処に在り続ける美しさ
栄えた嘗ての姿、一度見てみたかったわ
貴方は、ご存知なのでしょうけど
羨望の色が混じった言葉を零しつつ
確りと前を見据え宣誓を
これ以上この地を争いの色で染めたく無いから
だから、私は貴方を此処で討つ
お相手願うわ竜の君
風を纏い、烈風の刃を放ち
間合いを一気に詰めたなら、携えた刃で切りつける
聖域内では冷静に一撃を見極め、見切りと残像を利用し躱す
咄嗟の時には第六感と銀剣でいなして
騎士相手に真っ向勝負なんて利口じゃない
だけどその瞳に、刃に
宿る意思を、朽ちない心を、感じたから
だから私もそれに応えるだけ
この剣戟は貴方へ捧げる手向けの舞踏
気高き天空の騎士
ラストダンスはどうか私と
不意に吹き抜ける風が空の温度を肌に伝える。
冷たいけれど爽やかで、淡く差し込む陽光がほのかに温かい。僅かな崩れが空を意識させて、同時に旧い遺跡にも似た香りが趣を感じさせていた。
天の果ての城。
「ここはとってもすてきだから、きもちはわかるけれど」
と、見回すカーティスは、その空気を存分に感じるから──尚戦いを続ける騎士竜に言っていた。
「眠るタマシイがびっくりしちゃうよ」
嘗ての戦いの場だからこそ、そこでまた争うのは違うという気もするから。
けれど今の城の主たる騎士竜は槍を下げることをしない。
「過去の栄光があるからこそ、その再興を目指すのだ。そして──」
そうでなくとも一度握った矛を置くわけには行かないのだと、言ってみせた。
真っ直ぐに向けられる視線と、イリーツァは目が合う。
それだけでも敵の心中が手に取るように分かっていた。
竜同士、言葉は必要なくとも理解できると。
「最期まで退く気は無いのだろう」
ならばすることは決まっている、と。
イリーツァが魔杖『竜宮』を握り構えると、カーティスもその背を見て、そして敵を見て頷く。
敵は下がる気はない。ならばこっちも同じ事をするしかないのだと。
「……わかった。それなら、堂々とたたかうだけだ!」
「──いざ、尋常に」
と、イリーツァが小さく、しかし真っ向から言えば。騎士竜も頷いて床を蹴り、そのまま腕を突き出して無数の槍を放ってきた。
矛の嵐に、しかしイリーツァは惑わない。
握り込んだ竜宮へと莫大な魔力を流し込むことで大きく光を明滅させ、その形状を変貌。艷やかなる盾へと代えていた。
千変万戈・竜宮杖。それを前方へ向けることで飛んでくる槍を弾き返しながら、退くことなく寧ろ真っ直ぐに前進していた。
距離を詰めながら、同時に冷静な観察も欠かさない。
「右腕がトリガーか」
槍の出処を一瞬で特定してみせると、竜宮をさらに変化。
鋭利なる戦斧にして刃をきらめかすと一撃。横一閃に振るうこと騎士竜の手元を狙った。
騎士竜は僅かに腕を動かすことでその刃を槍でそらしてみせる。が、それも含めてイリーツァの予想通り。
瞬間、武器を手放して至近にまで迫ると、イリーツァは直接自身の腕で敵の腕を掴み──その怪力を以て手元を引きちぎって見せた。
「……!」
舞い散る血潮と共に声を零すアシドは、僅かによろめく。それでも逆の腕の刃を振り下ろしてこようとする、が。
狙いを定めていたカーティスが、半歩横にずれてしかと射線を確保。熱線銃の照準を騎士竜へ合わせていた。
「イリーツァおにいさんの、じゃまはさせないよ!」
弾ける光と共に光線が飛来する。
狙いは脚部。火花が散るとともに、強烈なまで高熱がその一端を貫いて。鱗をまばゆく蒸発させながら深い傷を負わせていった。
それによって巨体が傾ぐと、イリーツァも連撃。素早く竜宮を拾い直し、再び斧として斬線を刻んでいく。
たたらを踏んだ騎士竜は、それでも斃れず称賛の表情を見せる。
そうして一対一で戦うのはどうだと言うように。結界を広げて、まずはカーティスと自身をそこへ閉じ込めた。
カーティスとイリーツァを、順に退けていくつもりだろう。
後衛に徹していたカーティスにとっては、良いとは言えない状況変化。けれどアシドが迫ってきても逃げられないなら──立ち向かうだけだ。
騎士竜が高速で振り下ろしてくる刃を、カーティスは銃身で受け流すように弾く。そのまま即座に銃口を突きつけて引き金を引いていた。
痛烈なゼロ距離射撃に、閃光が瞬いて騎士竜の膚が焼けていく。だが、それでもアシドが離れず再度の攻撃を狙ってこようとすれば──。
「──ヤ! それならこういうのはどうかな」
カーティスもまた退かず、制御装置を解除。エネルギーを雷光へと変換し、間近から眩い雷撃を一斉発射していた。
Thunderstorm(アメアラレ)。
雷の雨となって注ぐそれは、爆破の如き衝撃と高熱、爆ぜる力によって騎士竜の全身を穿っていく。
それでも絶える様子はなかったが、一度間合いを取れればカーティスには十分。
その頃には、結界の一端に罅が生まれていた。
イリーツァが魔力を籠めた腕を刺し、その膂力を以て魔法の壁を破壊し始めていたのだ。
頑強な結界と言えど、破壊不可能な代物ではない。全霊の力で引き裂くことで、イリーツァはその全体を粉々に破砕していた。
──何としても、何をしてでも。
「貴様の相手は、私だ」
再び迫ってきていた騎士竜に対し、イリーツァは割り込むように肉迫。体で受け止め、逆に強力な斬撃を返していく。
「コールリッジ殿、怪我などは」
「だいじょうぶだよ。ありがとう!」
イリーツァの言葉と存在。
それが心強いから、カーティスは最後まで惑わなかった。
(おれはひとりじゃない。手を差し伸べてくれるひとが、いっしょに戦ってくれている!)
故にこそ自分もまた全力を尽くすのだと。
放つ雷撃の嵐で、騎士竜を光に包み込んでいく。
端々が朽ちても、優美さの残り香を覚える空間だった。
微かに反響する靴音。深い色の壁に柱、鮮やかな絨毯。
長い時を経ても尚、其処に在り続ける美しさ──ユノは吹き込むやわい風の中で、確かにそれを感じている。
「栄えた嘗ての姿、一度見てみたかったわ」
──貴方は、ご存知なのでしょうけど。
と、羨望の色が混じった言葉を零しつつ、見据える先は騎士の竜アシド。
「ああ」
と、彼は応えた。
その栄華も壮麗さも知っていると言いながら。
「それ故に、私はその栄光を再来させようとしているのだ」
「ええ」
そうなのでしょう、と。
ユノはスカイブルーの瞳を伏せて小さく声を紡ぐ。何かを真っ直ぐに求めているからこその、その高潔さなのだと理解できていたから。
ユノも典麗なダンスホールのようなこの場所をもう少し味わってもいたかったけれど。
「これ以上この地を争いの色で染めたく無いから。私は貴方を此処で討つ」
確りと前を見据え宣誓を紡いで。
「お相手願うわ竜の君」
こつりと一歩歩んで、最後の相手と相対していた。
騎士竜も決して拒まず刃を構える。
「命を懸けて、戦わせてもらおう」
そして言葉と同時に結界を広げ、透明のヴェールに覆われた剣戟の舞台を作り上げた。
そのまま騎士竜は脚を踏みしめ、こちらへ踊りかかってこようとする。けれど最初のステップはユノから。
刹那、風の祝福を纏いながら腕を靭やかに振り抜いて一閃。烈風の刃を放って騎士の掲げた腕を払ってみせると、そのまま前進していた。
突風の速度を得れば、彼我の距離は即座に零になる。ユノはそのままひらりと翻りながら刃を携えて、滑らせるように一刀。鱗に傷を描いてみせた。
「風に、乗るか」
その速度に驚嘆の声を零しながら、騎士竜も一度間合いをとって助走から突撃を繰り出してくる。
それこそ剛速、だがユノは既にゆるく廻転し、その動線を外れていた。
相手が真正面から攻めてくるなら見切るのも困難じゃない。それに肌に触れる風の変化から、騎士竜の動きを素早く感じ取っている。
故に、突進の相手は残像に任せて自身は側面に移動。相手の速度も活かしながら深く斬りつけてみせていた。
苦悶する騎士竜が、それでも正面から攻めてくれば──ユノはそれを銀剣でいなして、そのまま刃で反撃を与えていく。
強大な騎士相手に真っ向勝負なんて利口じゃない。
それは自分でも判っていることだった。
だけど彼の瞳に、刃に。
宿る意思を、朽ちない心を、感じたから。
(私もそれに応えるだけ)
アシドが刃を突き出す。するとユノは少しだけ横に逸れて、懐に入って剣戟を与える。
円弧の軌道で攻撃を仕掛けてくる。そうすればユノもまた曲線上を滑って渡り合った。
裂帛の剣闘を、ユノは最後まで拒まない。
──この剣戟は貴方へ捧げる手向けの舞踏。
だから、気高き天空の騎士。
ラストダンスはどうか私と。
既に騎士竜は片腕を断たれ、鱗は裂かれ、満身創痍だった。
それでもユノの意志に応えるかのように一切下がらず剣を振るうから、ユノも刃を打ち合わせた。
その内に、ユノの振るう一刀が騎士竜の剣も弾き飛ばす。
「最後にしましょう」
間を置かず、空の少女は至近に迫って刃を振り抜く。死する時まで真摯な戦いを見せた敵へ、自身も正面からの攻撃で終わらせるように。
終止符の一撃がアシドの命を切り裂く。ゆっくりと倒れた騎士竜は、その内に風に流れるように消滅していった。
天空城には静寂が戻っていた。
否、高空の風音と、草がさわさわと鳴る音。自然の音が遠くに響く心地よい空間だ。
「ね、イリーツァおにいさん。もうすこし探検していこう」
カーティスはイリーツァを誘って城内を見ていくことにした。
ええ、と頷くイリーツァは周囲を警戒しながらもついていく。
とは言え、敵はもう居ない。
備品庫や嘗ての食堂、がらんどうのホールで、旧い生活用品や装備を見つけるばかりだった。
ただ、それは確かにここに多くの命があった証左でもあろう。
だからカーティスは笑みを隣に向ける。
「おはなを添えたら眠っているみんなもよろこんでくれるかな」
「献花、ですか? 良い案かと。では、私は虹をかけましょう」
と、イリーツァは杖で大気中の水を操り、光の反射を生んだ。
淡く美しい七彩。
カーティスはそれを見て瞳をきらきらとさせる。
「……わ! すごい、すごい! きれい!」
そうしてその中で花を置き、またゆっくり眠ってねと声をかけた。
それからカーティスは笑う。
「えへへ。イリーツァおにいさん、たすけてくれて、ありがとう!」
イリーツァはそれにも、頷きを返した。
雛を守るのは、大人として当然だけれど。
「ええ。どういたしまして」
そして二人は城を後にする。
騎士が夢見た栄光は訪れずとも、この城にはきっと平和が満ちるだろう。思いとともに、皆も蒼天の果てから帰路へついていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵