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火を恐れよ

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「――火」
 ゆらゆらと揺らめく火があった。火が燃える音、炙られた木が爆ぜる音が聞こえて来る。木や布が燃えて焦げた臭いが辺りに漂っていた。
 ああ、こんな火でも暖炉の火と同じ臭いがするんだ。
 けれど、この火は暖炉の火じゃない。暖炉の火のような頼もしさも、暖かさも無い。熱くて、貪欲で、暴力的な火だ。
 周囲を取り巻く火は、全てを燃やし尽くすための火だ。
 何かが爆ぜる音がした。柱がへし折れ、何かが崩れる音がした。それから、悲鳴が遅れて聞こえてきた。
 振り向くと、妹が柱の下敷きになっていた。焼かれて、炎に包まれながらも助けて、助けてと少年に手を伸ばす。
 少年は妹に重く伸し掛かる柱へと手を伸ばす。炎の舌に舐められて、肉の焦げる臭いがした。神経すら焼き切らんとする炎の熱さに、今まで経験もしなかったほどの激痛に涙を浮かべながらも柱を持ち上げようとする。けれど非力なその腕では到底柱は持ち上がらず、大切な妹を助け出すことも叶わない。流れる涙すらも、すべて炎に飲み込まれた。
「ヴァンパイア様に逆らってないのに、良い子にしていたのに……」
 なぜ、と問いかける。答えは無い。ただ火の揺らめく音と、爆ぜる音が返って来る。
 妹と自分が焦げる悪臭が漂う。いつの間にかに、妹はもう何も言わず、泣き声すら上げなくなっていた。
 ああ、死んだんだ。変わり果てた黒い炭を見ながら少年は理解する。そして、自分もまた妹のように誰なのかわからないほどに黒く醜くなって死ぬんだ。
「――嫌だ」
 絶望と炎の中で、少年は死を迎えた。



「……胸糞の悪い話だ」
 予知した内容を語り終えた石動・劒が渋面する。
「今話した通り、ダークセイヴァー世界のとある村が焼き討ちに遭う。下手人はわからねえが、それでも今から行けばまだ間に合う。俺たちはまだ、村人たちを救える」
 村の規模は比較的大きめだ。十数戸の家屋が一面の麦畑に囲まれた村だ。建材は木製が中心で、燃えやすい。
 麦畑は灌漑されており、水路があるがそれだけでは消火には足りないだろう。麦畑の東側にある、村の水源たる川ならば消火に使えるだろうか。
 劒が簡易的な図を広げる。中央に村があり、それを囲むように麦畑があり、その東側に川がある。恐らく、避難先はこの東側の河原となるだろう。
「どうやら火はこの麦畑に、四方から着火されたらしい。風向きは西から東へ。……つまり、川へ向かって火は延びて行くだろう。幸い風向きは一日中変わらないと予知できた」
 西側の火勢を防げば村への被害を抑えることもできて、村人たちの救助できる時間を作り出したり状況の悪化を防ぐことができるだろう。
 東側の火勢を防げば避難所となった河原への被害を防ぎ、退路とすることもできるだろう。
「問題は村だ。俺たちが到着する頃にはもう火が付き始めている。そこでいかに迅速に村人を救助できるかだ」
 四方を囲んだ麦畑が丸々炎の檻になっている。何らかの炎対策をして、救助へ向かい、避難場所である河原へと向かわせたい。
「今回の作戦は人命が第一だ。家財や穀物庫は二の次になる。だが、もし万が一余裕があれば、難しいだろうが守ってやって欲しい。……全部燃え尽きて、助かったは良いが明日も知れぬ身ってのは、辛いものだからな」
 助け出された村人の中には、猟兵たちへ協力を申し出る者もいるだろう。火への恐怖を鼓舞や励ましによって消すことができれば、人手はもっと増やせる。
「救助に避難、消火や延焼対策、治療……やることは多い。だが、俺たちなら救い出せる。俺たちならこの胸糞悪い結末を変えられるんだ」
 だから。
「食い止めようぜ、この悲劇を」


三味なずな
 新年明けましておめでとうございます。今年も三味なずなをよろしくお願いします。
 今回はヴァンパイアの勢力下で焼き討ちに遭う村を救うシリアスシナリオです。

「焼かれている村から人々を河原へと逃がす」ことが基本となります。

 それらの補助として村を中心とした時、
 西側で火勢を食い止めれば延焼がなくなり、村の救助時間が延びて助けやすくなるでしょう。
 東側で火勢を食い止めれば避難の際に退路が確保できて、スムーズに村人を救助することができて救助可能回数が増えるでしょう。
 河原で避難者たちの怪我の治療や鼓舞、激励ができれば、猟兵たちの行動にプラスの補正がかかります。が、避難者の数が少ないほど効果は薄くなります。
 家財や穀物庫の保護もできますが、こちらは優先度が低いです。ですが、もしも守ることができたなら、それらは明日を自立して生きる希望となります。穀物庫は家屋よりも離れた東側寄りにあります。焼けるとしたらきっと最後でしょう。

 グリモア猟兵は消火器具を個人用のもの程度であれば用意し、持ち込むことができるでしょう。個人の手には余るような巨大なものなどは難しいです。

 この他にも、選択肢は無数に存在します。皆さんの長所を活かし、村人たちの救助に当たって頂ければと思います。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『炎からの救出』

POW   :    力づくで人を救助、避難させる

SPD   :    走り回って避難を助けたり、安全な場所を探す

WIZ   :    知恵や魔法を使い、火災の犯人の手がかりを捜す

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
Wilco.
任務受諾、救援活動を開始する。

(ザザッ)
【SPD】
迅速に消火活動を行う。
使用UC:『Craft: Bomb』。
『消火弾』を投擲弾として生成する。
一つ辺りの消化力は小さいが、
無数に放てばそれなりの消火力が期待できると推察。
『早業』にて消火弾生成速度向上、『武器改造』にて右腕をスロウアーとして改造。
『スナイパー』『範囲攻撃』『一斉発射』『なぎ払い』『二回攻撃』併用。
一度に大量の消火弾を正確に掃射、薙ぎ払う様に広範囲の鎮火・消火を図る。

上記を繰り返す事で火の侵攻の抑制・鎮圧を目指す。

本機の行動指針は以上、実行に移る。オーヴァ。
(ザザッ)



異形の戦士がいた。豹を意匠した機械鎧の彼は、その右腕だけが異様に大きい。
「Wilco.(受信内容を了解)任務受諾、これより本機は救援活動を開始する」
 ざらざらとした砂嵐のような声で彼――ジャガーノート・ジャックは応答する。
 彼は今、炎を前にしている。燃え盛る焔は狂喜するように踊り狂い、陽炎が揺らめき、「お前も飲み込んでやる」と言わんばかりに熱気の舌を伸ばしてくる。
 だが、彼は火を恐れなかった。豹を意匠としながらも彼は獣ではない。彼は人ではない。彼は暴力装置であり、怪物だった。装置も怪物も、火を恐れない。
「――生成完了」
 異形の右腕にある投擲機構へとユーベルコードで生成した数多の消火弾を装填する。到着までに手早く投擲機構を追加する形で改造しておいたのだ。
 左手を右腕に添えるようにして構える。陽炎で炎の中は揺れ動いて見えたが――彼の赤い瞳はその程度では誤魔化されなかった。複数の火元へと消火弾がまるで散弾銃のように次々に射出される。
「弾着。ポイントアルファの鎮火を確認。ポイントブラボーの消火へ向かう」
 状況確認に努めながらも、彼は生成した端から機構へと消火弾を装填していく。
 彼は暴力装置を自認している。決して消防士などではない。
 しかし炎渦が有象無象の敵だとするならば――ジャガーノートは炎を破壊する。
「これより本機は殲滅戦に移行する。オーヴァ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
この世界ではよくあること、ではありますが……何度見ても、これは……!
少しでも…一人でも多く、助け出さないと…!

東側メインで行きます。
氷結弾を持ち込んでいきましょう。
本来は敵を凍らせるものですが、上手くいけば炎を封じ込めるくらいはできるかもしれません。
属性攻撃、時間稼ぎあたりの技能が役に立つと良いのですが。
上手くいってもいかなくても、あとは体力勝負です。
怪力技能込みで、重いものをどかせたり道を強引に開いたりで、体力の続く限り、です!

ギリギリまで諦めませんからね、私は…っ!


都築・藍火
火を止めるに水が使えぬとなれば、行うべきは打ち壊しでござる。されど今回対象は麦畑。されど、そもそも麦畑が激しく燃えるのは、麦が立っていて適度な空間があるからでござる。であればどうするべきか。先に刈り取り、延焼の速度を遅くするのでござる。
砕天號を使用して、太刀、或いは鎖鎌の鎌の部分で西側の麦畑の刈り取りを行い、川への退路の確保を行うでござる。最優先は麦の刈り取り、次いで刈り取った麦を脇にどけ、道の安全度を向上させるのでござる。火が付いた麦であろうとも、脇に丸ごとどけてしまえば後に残るは土の道でござる



「この世界では、よくあることです」
 エンハンスドライフルに氷結術式が刻印された弾丸を装填しながら、シャルロット・クリスティアは呟く。
 彼女の出身世界はここダークセイヴァーだった。どこの村が壊滅しただとか、粛清されただとか。悪い噂はよく耳にするし、機会に恵まれてしまえば目にすることさえもある。シャルロットの両親が反ヴァンパイアの抵抗運動に加わっていたのなら、尚更。
「けれど、何度見てもこの光景は……!」
 ギリ、と奥歯が軋んだ。何度この光景を見たとしても、心が麻痺して慣れることはない。許すことはない。
「少しでも……一人でも多く、助け出さないと……!」
 そのためには、まず退路を確保する。そうしなければ、救助に向かった彼らまで犠牲になりかねないのだから。
 青い瞳に決意を宿し、シャルロットは銃を構える。
 東側の麦畑の火勢は燃え盛る一歩手前。最早一刻の猶予もない。シャルロットのエンハンスドライフルに刻印されたルーン文字が輝いた。
 銃声。氷結術式弾が射出され、空中で術式が展開される。瞬間冷凍弾は火元に着弾し、魔力でできた氷が炸裂。氷は火によって溶かされて水になり、火への酸素供給を断つ。
「……っ、タイムラグがありますね」
 次の氷結弾を装填しながら顔を顰める。氷が水になる間に、他に燃え移って新しい火元を作ってしまえば時間稼ぎにはなるがイタチごっこでしかない。
「然らば御免。拙者が推して参るでござる」
 河原からやって来たのは、浮遊する巨大な鎧武者を従えた女侍――都築・藍火だった。
「拙者が麦を刈り取り、安全地帯を形成するでござる。貴殿には援護を頼みたく」
「わ、わかりました!」
 シャルロットへ感謝するように軽く藍火が頭を下げると、侍は前へ出た。
「食事の時間でござるよ、『無駄飯喰らい』!」
 腰に佩いた『無駄飯喰らい』の銘を持つ刀を横へ一閃。すると、従えていた鎧武者がその動きをなぞるように手に持った刀を薙ぎ払い、麦畑を斬って拓いた。
「次、あちらからお願いします!」
「応!」
 斬り拓けた場所をシャルロットが見渡して地形を把握し、最も効率的に道を拓くことができる場所へと氷結弾を撃ち込んで藍火の足場とする。その足場を利用して、藍火は麦畑を斬り開いて道を作る。
「さあ、斬った麦を脇に除けるでござるよ!」
「急ぎましょう、時間が惜しいです!」
 二人は斬り落とした麦をどかしに掛かる。
 炎渦に飲み込まれ一面の焼け跡になるはずだった麦畑。しかしそこは二人の連携と尽力によって、救助班が要救助者を連れて退路に向かう頃には広く安全な避難経路が形成されるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

亞東・霧亥
生きたまま人を焼こうなんて狂っている。
狂者の思い通りに等させん!

【POW】
レプリカクラフトで壁のレプリカを創る。10立方mまでなら創れるので、縦1m、横10m、高さ2mの壁を50枚創り出す。
中は空洞で軽いが、仕掛け罠ではないので造形は粗い。

東と西で25枚ずつ、250mの壁を横一列に並べ、炎とまだ無事な麦畑を分断し、延焼を防ごうと試みる。

完全に延焼を防げるとは思っていない。
壁の設置が完了次第、避難誘導に移る。
他の猟兵が既に避難誘導をしていたら、食糧を運ぶ。
フック付きワイヤーで食糧袋を縛り機械の力で引き摺る。

「全てを救うなど傲慢かもしれない。だが、その選択肢が1%でもあるなら、俺は命を諦めない!」


クラム・ライゼン
西と東、手が足りてなさそうな方に行く。
どっちもどっちだったり分かんなかったら西かな。

・行動
【WIS】
「さて、今日ばかりは無礼講!村人に被害が出ない程度にーー全力全霊、『唄え』!!」

〈高速詠唱6〉+〈全力魔法5〉+《エレメンタル・ファンタジア》
水乙女や霧雨蛙など水系の精霊に協力を要請し
暴走しないよう注意しながら『水』属性の『強雨』を発現させる。
火を完全に消すとまではいかなくとも
押し留めるくらいはできるんじゃないかな。

倒壊した家屋とかで身動きできない人が居たら猟兵や動ける村人と協力して助けたいとこ。


・持ち物
タオルとか簡易的な着替えを持ち込めるなら河原へ向かう猟兵か村人に渡しとく。


ヴィクティム・ウィンターミュート
ったく...火を点けるのはよくやるが、今回は消す側とはな。
仕方ねえ、やってやるさ。

自身を中心とした広範囲を消し飛ばすユーベルコードを使って、延焼の原因になる麦畑...つまり火種を消滅させる。
放っておけばどうせ燃えちまうんなら、消し飛ばしたところで変わりはしねえ。コラテラルダダメージだ。おっと、もちろん出来るだけ家屋や人を巻き込まないことが第一だ。

こんだけ消化と救助に当たってくれてんなら、俺は家財と穀物庫の保護を狙う。救助の人手が足りてないなら、西側の火種消しと人命救助にシフトだ。

弱者はいつだって強者の食い物だ。...ああ、ムカつくぜ。
これは正義感でやってんじゃねえ。個人的にムカつくから、だ。



「狂人め、生きたまま人を焼こうだなどと……」
 炎の燃え広がり始める村を駆け抜けながら、亞東・霧亥は苦々しげに呟く。人を殺すのは簡単だ。力の支配下にある村であれば尚更簡単だろう。それをわざわざ逃げられない火攻めという手段を取るのは、正常な思考での選択肢だと思えない。
「狂者の思い通りになどさせん!」
「だからって炎の真っ只中突っ切ってくのはどうなんすかねえ!?」
 まだ見ぬ敵へと息巻きながら走る霧亥に対して、クラム・ライゼンが周囲の炎にビビりながらも抗議するように声を上げる。
「お前が川岸に支援物資を運び込んでいた時間を最短距離で補う! 一刻の猶予も惜しい!」
「西側消火するって聞いたから付いて来たけど、組む相手間違えたかなぁ……!?」
 実際はクラムにもある程度火への対処の心得はあるのだが、熱いものは熱いし痛いものは痛いし焼けて焦げればそれだけ困る。使命感に任せて最短ルートを選択する霧亥ほどに肝は座ってなかった。
「あんまり騒いでっと要救助者にまで笑われっぞ!」
 並走するヴィクティム・ウィンターミュートがクラムを顔を見上げながら言うと、「それは嫌かなぁ!」とクラムの引きつった笑みに苦味が加わる。
「到着だ! 俺は北西からやる、南西は任せた!」
「アイ・コピー(了解)!」
 村を突き抜けると、霧亥は北西へ、ヴィクティムは南西へと向かっていく。
「坊主、時間稼ぎは任せたぞ!」
「はいはい了解っすよ! さぁて今日ばかりは無礼講! 村人に被害が出ない程度に――」
 クラムが素早く詠唱すると、バクのような精霊がふわりと浮かび上がって鳴く。それに応えるように、東の川からウンディーネや霧雨蛙などの水を司る精霊たちがやって来る。
 精霊たちが空へと手をかざして火炎から吹き上がる黒煙たちが一箇所に集めると、それは瞬く間に黒雲へ変じる。
「――全力全霊で、『唄え』!!」
 クラムの号令一下、精霊たちの力によってざぁ、と局地的な雨が降り始めた。
 雨は精霊たちの助けもあってその勢いはなかなかのものだが、消火には至らず火勢を弱めるだけに留まっている。
「さっすがに制御できる範囲内での全力ってなるとこんなもんかぁ……」
「チル、チューマ(いい感じだ、ダチ公)! それだけ時間が稼げれば後はこっちの役目だ!」
 ヴィクティムは右腕のフェアライト・チャリオットを操作し、あるプログラムを呼び出す。励起されたプログラムはヴィクティムを中心とする円形に領域を広げる。
「悪いな、これもコラテラルダメージってやつだ。――NO.008ヴォイド、フューミゲイション!」
 実行コマンドと同時に広げられた領域内の麦たちが0と1へと変換され、一瞬の後にそれらは光の粒子となって散乱し、霧散した。
 燃え移る先の火種を失った炎はヴィクティムの前でゆらゆらと炎の壁を形成するだけだ。
「消火完了っと。へっ、これで下手人に一泡吹かせてやれるぜ」
 ニヤリとヴィクティムは口元に笑みを浮かべる。
 弱者はいつだって強者の食い物。それはどの世界だって同じことだ。それがヴィクティムを苛立たせる。
「やるなあ坊主、正義のヒーローだ!」
 南西へ向かった霧亥がヴィクティムへと声を掛ける。だが、ヴィクティムは方を竦めて頭を振った。
「生憎と俺は正義感でやってんじゃねえ。――個人的にムカつくからだ」
「動機はどうあれ、成し遂げたことは間違いなく善行だ」
 霧亥はユーベルコードで分厚い防火壁のレプリカを次々に創り出し、地面に建てていく。作りとしては粗雑ではあるものの、延焼を防ぐ防火壁としては十分だろう。
 結果として、クラムの降雨によって火勢が弱まっている内に霧亥とヴィクティムの延焼防止策によって、村への延焼拡大はほぼ防がれた。
「さあ、次は家財と穀物庫だ!」
「避難誘導は良いんすか?」
「相当数の猟兵が向かった、恐らく人手は足りてるだろう」
 防火できたと見るや否や、穀物庫のある東側へと足を向ける霧亥。クラムは心配そうに村の方を見遣る。
「人命も救助する。村人の生命線たる食糧も守り切る。全てを救うなど傲慢かもしれない。だが、その選択肢が1%でもあるなら、俺は命を諦めない!」
「決めてやろうぜ、パーフェクトゲーム。全部ひっくり返せばやっこさんの吠え面が拝める」
 そして、彼らは次なる目標となる穀物庫や家財の保護へと動くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アストリーゼ・レギンレイヴ
胸糞の悪い話、……同意だわ
そう言うの、聞いちゃうと黙っていられないのよね

【POW】
力づくって言っても乱暴にはしないわよ?
逃げ遅れている人を見つけたら、まずはちゃんと目線を合わせて声をかける
瓦礫の下敷きになっているようならもちろん、助け出してからよ

大丈夫よ、心配しないで
あたしたちはあなたたちを、助けに来たの
誰の命も犠牲にしない
この村の命運も終わらせない
必ず助けるわ
……信じて

自力で動ける相手ならば、他の猟兵の指示に従って避難するように伝える
怪我をしていたり、幼い子・老人など、一人で動けない人は
担いだり、抱き上げたりして一緒に避難しましょう

今かけてあけられるのは言葉だけ
それなら、それを尽くすだけだわ



「本当に胸糞の悪い話ね」
 村で燃え盛る炎を見ながら、アストリーゼ・レギンレイヴは厭わしげに呟く。
 恐怖を教え込むような火攻め。それでいて、恐怖を芯まで植え付けておきながら生かすでもなく残らず殺そうとするその性根の悪さ。いずれもアストリーゼが放っては置けないと動き出す理由に足るものだった。
 防火対策は最低限に。既に炎によって倒壊しつつある家へと向かう。迅速に動いたのが幸いしたのか、倒壊した家屋から泣き声が聞こえてきた。そちらへ駆け寄っていくと、啜り泣く女の子が柱に足を挟まれて逃げ遅れていたのを見つける。少女の手の先にある床は引っ掻き傷で醜くえぐり取られ、手指の爪は痛々しく剥げて赤い血を流していた。
「お姉ちゃん、助けに来てくれたの……?」
「ええ。あたしたちはあなたたちを助けに来たの。だからもう大丈夫よ」
 床に伏せる少女と目線を合わせるようにアストリーゼは努めて微笑みかける。泣き腫らしてすっかり憔悴した少女の顔に安堵と希望の色が広がった。
「少しだけ我慢しててね」
 少女の足を挟んでいた柱へと手を掛ける。火事で炙られた柱は熱を孕んでいて、アストリーゼの白い肌を焼き付ける。顔をしかめながらも、それでもアストリーゼは手を話さなかった。
 身に纏う鎧装の焔が揺れるように見えるのは、陽炎のせいか、あるいは――アストリーゼの胸中に秘める「奪う者」への憎悪の炎ゆえにか。
「――――ッ!」
 力を溜めて、裂帛の気迫と共に柱を持ち上げる。ガタン、と家屋の別のどこかが崩れる音がした。
「今の内に、早く!」
 アストリーゼに促されて、少女が柱から這い出る。その細脚に柱がのしかかっていた部分は黒紫色に痛々しく変色していた。骨折している。
「さあ、逃げるわよ」
「村のみんなは……?」
 持ち上げていた柱を下ろし、少女を抱き上げる。不安そうに顔を見上げてくる少女へと、アストリーゼは微笑みかけた。
「心配しないで。誰の命も犠牲にしない。この村の命運も終わらせない。――必ず助けるわ。だから、信じて」
「……うんっ」
 きっと、この人ならみんなを助けられる。そう信じた少女が頷きを返す。
 アストリーゼが救助した少女をおぶさったまま出ると、炎に包まれた家屋が断末魔の悲鳴を上げて崩れた音が聞こえてきた。
 ――奪わせてはなるものか。アストリーゼの右の黄金瞳が、揺れ動いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蒐集院・閉
火事は、嫌いです

【POW】による救助、避難を行います。(「救助活動」)
火には慣れておりますので、問題ありません。(「激痛耐性」「火炎耐性」)
鉄塊と黒剣で東側より火元となっている場所へ向かい、速やかに破壊、鎮火し延焼を防ぎます。(「怪力」「鎧砕き」「掃除」)
救助へ向かった方の退路を確保します。

村と避難所を往復し、救助者を積極的に運びましょう。
医術の心得もほんの少しあります。治療の手が足りないのであれば、そちらに向かいましょう。(「医術」「優しさ」)

決して誰一人と見捨てません。ええ、決して。なので諦めないで下さい。
命があれば続きます。明日へと進むことが出来ます。
それを守るために、ここに来たのです。



「……火事は、嫌いです」
 めらめらと燃え盛る炎を黒い瞳が映し出す。
 錠前をチョーカーから下げたヤドリガミ、蒐集院・閉は鉄塊剣と黒剣を手に、焼ける村を歩いていた。
 いかなる盗人であれ、頑丈な扉と錠前があってこそ蔵の内容は守られる。ゆえにこそ、いかに頑丈な鉄扉であろうとも、いかに高く厚い壁であろうとも、そしていかに複雑精緻を極めた錠前であろうとも、大事に守っていたものを全て燃やし尽くして奪い去っていく火事はいかにも閉にとって厭わしいものだろう。
「生きている方はいらっしゃいますか?」
 焼ける家屋へおもむろに入って行く閉。歓迎しようとばかりに燃え盛る炎が閉を襲う。しかし彼女は余人であれば赤熱に手を引いてしまう炎の熱も、焼けて肌を焦がされる激痛もその表情に表わさない。それは錠前のヤドリガミという特性ゆえにか、あるいは彼女の徹底した献身の精神ゆえか。
「こっちだ! こっちに来てくれ!」
 果たして彼女の救いの手を差し伸べるための呼び声は、それを必要とする者へと届いた。倒れたタンスや柱などの家具や家だったものが重なり合って障害物になっていて、声はその向こう側から聞こえるようだった。
「今、そちらへ」
 向かいます、と閉は鉄塊剣を横薙ぎに振るう。いともたやすく、まるで麦藁のように障害物だったものはその怪力でもって砕かれ、通路にされた。
 障害物の先には、大きな家具や幾重にも重なった建材に挟まれた女性と、それをなんとか助け出そうと懸命に持ち上げる男性がいた。きっと彼らは夫婦で、妻を守るために夫が助けようとしている間に逃げ場を失っていたのだろう。
「ああ、良かった、助けに来てくれたのか……!」
「ええ。閉はあなたがたを守るために来ました。今お助け致しますから。しばしご辛抱下さいませ」
 黒剣で家具にのしかかっていた家だった物を横薙ぎに一閃。落ちた天井との間に空間を作ると家具に鉄塊剣を差し込んで隙間を拡大する。そこへ手を差し入れて、閉はその細腕からは想像できないほどの膂力でもって持ち上げた。
「さあ、今です」
「ありがとう、猟兵の娘さん」
 夫は礼を述べると妻を助け出す。幸い夫の方に怪我はなかったのか、妻の両肩を支える形で救助は成った。
「それでは、東の河原へ向かいましょう。閉にも医術の心得がありますので、そこで奥方様の治療をします」
「何からなにまでありがとうございます。……ですが、他の村のみんなは……」
「ご心配には及びません。仲間が救助に向かっております。なので決して、誰一人として見捨てません」
 妻の言葉に、淡々と閉は返答する。
「ですから不安そうな顔をなさらずに、ご安心下さい。諦めず、命があれば続きます。明日へと進むことができます」
 ええ、と涙ながらに夫婦は頷きを返す。
 絶望の火災の中にあってなお、希望の灯火は穏やかについていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリア・ティアラリード
シェラフィール・ディー(f03454)と合同

妹のシェフィちゃんと村人救助にやってきました
火勢を弱めるのは他の猟兵さんにやってもらいましょう
私達ができることはまず村人の避難誘導です!

そして火に囲まれ逃げ遅れた村人…
特に子供や老人が取り残されてないかシェフィちゃんの触手で捜索してもらいます
発見したら頭から桶の水をザブッと被って救出開始
え、下着が透けて目の毒?
気にしてる場合じゃありません【恥ずかしさ耐性】!
燃え盛る炎の中に【覚悟】を決め飛び込みます

もし火勢が強まり行く手を塞がれれば『全力妹愛大根斬』!
何もかも【衝撃波】で吹き飛ばし避難ルートを切り開きます
お姉ちゃん頑張るから!見ててねシェフィちゃん!


シェラフィール・ディー
アリア・ティアラリード(f04271)と合同

「さあさ、お逃げ下さいまし」

悲劇の予知を現実とさせるわけにはいきません
猶予は無し。ここは人命優先。急ぐと致しましょう。


【刻印呪眼:狂瀾庭園】触手を召喚し、西から東へ誘導するように怒涛押し流して参りましょう
触手から逃げてくれればそれで良し。仮に逃げられない人がいましたら救助して
それでも間に合わない際には力自慢のアリアお嬢様にお任せ致します
炎でやられる触手も出るでしょうが、そこは何度も召喚して…消耗は今は仕方ありません…

他の猟兵の方や、不本意ですが力自慢のゴリr…アリアお嬢様もおられる事です
なんとしても被害が最小限に抑えましょう…



「贄刻印、限定解放……顕れ従え、不浄の混沌」
 火災によって明るく照らされたそこに、メイド服の女が立っていた。
 シェラフィール・ディーというそのメイドが詠唱すると、瑪瑙の瞳が妖しく輝き、地面から12本と8本、計20本の触手がずるりと現れた。
「さあさ、お逃げ下さいまし。避難所は東の河原。そちらであれば火の手は及んでおりません」
 シェラフィールの指示に従い、現れた触手たちは村の西側から東側へと向かって這い始める。一見してまるで敵の侵略のようにも見えるが、それぐらいの方が一気に
「シェフィちゃん大丈夫? 火強くない? 暑くない? 服脱ぐ?」
「チッ……申し訳ございませんがアリアお嬢様、少しお静かにお願いします」
 真剣な表情で触手を操るシェラフィールをやたら気に掛けるのはアリア・ティアラリードだ。あまりの鬱陶しさに思わず舌打ちを漏らすシェラフィールだが、それでも笑顔を作って応対するのはメイドとしての挟持か、それとも外聞か。
「でもでも、もしシェフィちゃんのお肌やおぐしが焦げでもしたら……」
「今は人命優先です。急いで捜索しないと……あら?」
 焼けて消えてしまった分の触手を再召喚していると、捜索していた触手の一本が戻って来た。
「アリアお嬢様、要救助者を発見しました」
「それならここはお姉ちゃんの出番ね!」
 言うや否や、アリアは地面に置いていた木桶の水を頭から被った。長い金髪と上等な服がしとどに濡れる。
「それじゃあお姉ちゃん頑張ってくるからっ!」
「ちょっっっっとお待ち下さいアリアお嬢様。まさかその破廉恥な格好のまま救助へ……?」
 半目になるシェラフィールの視線の先は、濡れそぼって肌色を浮き出す白のブラウスだ。しかし当のアリアは首を横に振る。
「良い、シェフィ? ――恥ずかしいと思うから恥ずかしいのよ」
「いえそんなさもこの世の真理のように当たり前のことを言われましても。とにかくアリアお嬢様がどうこうではなく周囲からの目という意味でもその格好は……」
「じゃあお姉ちゃんの活躍しっかり見ててねシェフィちゃーん!!」
「あっお待ちなさい! せめて上着を!!」
 シェラフィールの言葉を待たずに駆け出すアリア。せめて要救助者の情報はもう少ししてから伝えれば良かったとメイドは嘆息する。あのお人好しが助けを必要とする者がいると聞いてその場に留まっているはずがなかったのだ。
「様子、見に行きますか……」
 はあ、と溜息をついて、触手たちを捜索に向かわせたままアリアの向かった先へと歩き始める。今はメイドとして身をやつしているが、元をたどればアリアとは腹違いの姉妹。もしかするとこの火災でアリアが不慮の事故死を遂げれば家督がこっちに転がり込んでくるんじゃないか、などと彼女は腹黒い算段を立てていた。
「……まあ、あの力自慢ゴリラが万に一つもこれしきのことで死ぬようなことは無いのでしょうけど」



 果たしてシェラフィールの予想は正しかった。
「見ててねシェフィちゃーん!! ――トータル・エグゼクター!」
 アリアが藍色のフォースセイバーの銘を叫ぶと共に、全長2mにもなるほどの大剣を雑に横へ薙ぐ。そこから放たれた衝撃波によって倒壊していた家屋の屋根部分が横へ吹っ飛んだ。すっかり青天井になってしまった家屋跡にはぽかんとした顔の老人がへたりこんでいた。
「煙を吸わないようにして待ってて下さい!」
 衝撃波で障害物や火を多少取り除いたとはいえ、それはあくまで道を作れただけのこと。アリアは果敢に未だに燃える家屋の残骸へと飛び込んで、老人を背負う。
 アリアが燃える家屋から老人を担いで出て行くと、そこにはシェラフィールが待っていた。
「ご無事でしたか。チッ……」
「妹愛の為せる技よ!」
シェラフィールが笑顔で舌打ちしながら迎えるが、気にした様子もなくアリアはからりと笑った。
「ともかく、新しく要救助者が見つかりましたので次はそちらを」
「ええ、わかったわ。……お爺ちゃん、歩けますか? ここから東に行けば安全なところがあるから、口元を覆いながら向かって下さい」
「ありがとう、ありがとう、お若いの……」
 幸い目立った外傷は無かったのか、老人はやや怪しくはあるがしっかりとした足取りで避難場所へと歩いて行く。途中、何度かこちらを見ていたが……その視線はアリアの濡れて透けた胸元へと向かっていた。
「……やはり上着は着せるべきですね」
 はぁ、とメイドは首を傾げるお嬢様へと上着を押し付けると、案内するように次の救助現場へと向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

立花・乖梨
「どうしてこんな火が…いえ、考えるのは後です」
「急ぎましょう、助けられる命があるのなら、私はそれを優先するのです」

ユーベルコード【オルタナティブ・ダブル】を使用。
技能:武器改造、激痛耐性、ダッシュ、かばう。

私と〈私〉、二人で、救助活動に回ります。
拷問器具「デッドエンド・メモリーズ」を
鉄球へと武器改造、火の回った建物は潰してしまいましょう。
――柱などの下敷きになっているのなら、
それを吹き飛ばして救出しましょう。

避難者が自力で逃げられないのであれば抱えてダッシュ。
新たな怪我人が出ないように、危険があれば庇います。
痛みには慣れてますから、私のことは気にしないで。



「どうしてこんな火が……」
 赤混じりの灰色髪に、炎のオレンジが照らされた立花・乖梨が火災現場を真っ黒な瞳に映す。
 だが、彼女はすぐにその疑念を一旦脇に置くように首を振った。
「……いえ、今は考えるのは後にしましょう。急げば、まだ助けられる命があるかも……」
 助けられる命があるのならば、それを優先しない理由は無い。
 彼女がユーベルコードを使うと、どこからともなく乖梨にそっくりな女が現れる。二人は一人。それが多重人格者だ。
「まずは火が燃え移らないように打ちこわしをしないと」
 フレイルのように改造された拷問器具を手に、西側の火事の最前線へ向けて乖梨たちは走り出す。そこでちょうど、火の回り始めた家から慌てた様子の家族が飛び出して来たところに出くわした。
「中に人はいますか?」
 近付いて話し掛けると、一瞬驚いたような表情をしてから家主らしき男が首を縦に振る。
「まだ、子供が……」
「待っていて下さい」
 言い残して、男からの返答を待つこともなく乖梨は火中へと飛び込んで行く。
 サウナとは違った、まるで身体を炙られているような熱さを肌で感じながらも、障害となる火や倒れた家具を武器で払い除けつつ中に押し入って行く。
「聞こえますか!」
 燃える炎の音に負けはすまいとばかりに二人で声を張り上げる。返事はない。だから、何度も呼びかける。部屋から部屋を回っては、何度も何度も声を上げる。
 焦れるように、乖梨は奥歯を噛む。もう死んでしまっているのでは。そんな嫌な予想が脳裏をよぎった。痛みには慣れているが、火傷や一酸化炭素中毒ばかりはどうにもならない。
 引くべきか、諦めるべきか。迷って、歩く足が止まりそうになる。救える命ならば、救いたい。だが、自分が死んでしまったならば――。
「――いいえ」
 否定する。止まりそうになった足を再び動かす。助けられるのかもしれないのなら、諦めない。諦める余地は無い。
 ――ふと、か細い泣き声が聞こえてきた。振り向き、乖梨たちはそちらへ走る。
 果たしてそこには赤ん坊が横になっていた。まだ生きている、その事実に安堵を覚えながらも、乖梨は赤ん坊を抱き上げる。赤ん坊はあまりにも小さく、あまりにも軽かった。
 軋む音がした。がたんと何かが倒れて来る音も。咄嗟に、赤ん坊を抱える乖梨をもうひとりの乖梨が庇う。甲高い声で赤ん坊が泣いた。
「大丈夫、大丈夫だから。痛みには慣れているから、<私>のことは心配しないで……」
 なだめながらも赤ん坊を抱えて家を脱出する。捜索に時間を費やしたせいで随分と火が回ってしまっていた。家屋を打ち壊して脱出路を確保しながら、乖梨はなんとか脱出することに成功した。屋外で待っていた家族へと、赤ん坊を受け渡す。
 幸いなことに、わずかながら隣家へと燃え移るにはまだ猶予はあったようだ。乖梨はフレイルを振って、崩れかけて空へと炎の舌を伸ばしていた家屋を上から叩き潰す。音を立ててそれは崩れ去り、天まで届かんとしていた火の手が地に伏す。
 ふと、乖梨は家族の方へ振り返る。致し方ないこととはいえ、思い入れのあるだろう家屋を目の前で壊してしまったのだ。怒鳴られる覚悟はできていた。
「子供助けてくださり、ありがとうございます……」
「えっ、あっ……」
 だが、予想に反して家族は乖梨に頭を下げた。乖梨はしばし困惑してしまい、少しばかり時間をかけて、なんとか笑顔を形作って口を動かす。
「――どういたしまして」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジン・エラー
ぶハ、イェハハハハ!!
救いに来たぜェ!一人残らずなァ!!
生きてェヤツから前に出なァ!!

あァ?炎が怖ェだァ??
そンじゃ見てろ、あンな炎より、
オレの【光】の方がウン万倍も怖ェぞ?
目ェ潰れねェように気ィつけなァ!!!

な?オレの光、ビビるぐらい効くだろ?
そンじゃ、さっさと立ちな
お前らの救いたいモン救いに行くぞ
自分らの世話ぐらい、自分でしたいだろ?

それともお前、猟兵サマに助けてくだちゃい〜って泣いてるだけか?
タマ無しだなァ??おォ???



「ぶハっ、イェハハハハハ!」
 河原で、燃え上がる炎を背にジン・エラーは歩いて来た。棺桶のような大きな箱を担いだ彼は、さも愉快そうに避難者たちを見て哄笑する。
「救いに来たぜぇ! 一人残らずなァ!!」
 どすんと、巨大な箱を置いてジンは怪我人たちを睥睨する。彼らは一様に、黒い肌に笑顔のマスクを付けたジンへと何か不気味がるように一歩引いた。
「生きてェヤツから俺のところに来なァ! 俺が全部なンとかしてやらァ!!」
 治療してやると、そう言ってジンは座り込む避難者たちを見る。だが、彼らは動かない。怪我をしていて、ひどい火傷を負った者もいた。それでも彼らは動かなかった。
「あァ……?」
 違和感を覚えた。避難者たちはジンを見て恐れているのではなかった。視線はもっと後ろに向いている。
 振り返ると、そこには火事で燃える村があった。彼らは火事の炎への恐怖で水のある川へと引いていたのだ。
「ク、クハハハッ、ギャハハハハッ! お前らあンな炎が怖ェのかよォ!!」
 それに気付いたジンは大笑いした。傑作だとばかりに手を叩き、腹を抱えて人々が恐怖するものを取るに足らぬとばかりにあざ笑う。
 大笑する彼はおもむろに歩きだす。
「そンじゃ見てろ、あンな炎より、オレの光の方がウン万倍も怖ェぞ?」
 歩く先は、きっと炎に焼かれる中で救助されたであろう少年だった。左腕に酷い負傷を負っている彼の前で、ジンは立ち止まる。
「目ェ潰さねェように気ィ付けながら拝んどけェ!!」
 ジンの身体から溢れんばかりの光が溢れ出し、爆発するかのようにその場を包み込んだ。カッ、と火事の炎にばかり照らされていた河原に新しい光が灯る。
 何が起きているのかもわからず、誰もがその眩い光に目を覆う。数秒の後にジンの発していた光は収まった。
「今のは……?」
 火傷をしていた少年は顔を庇っていた左腕をどけて、まだ眩んでいる目をジンへと向け――そこで気付いた。火傷が治っている。
「な? オレの光、ビビるぐらい効くだろ?」
 ギャハハハ、とまた笑うジン。何が起きたのかもわからず、地に座り込んだまま少年は唖然とした表情でジンを見上げるだけだった。
「そンじゃ、さっさと立ちな」
 促されるままに少年は立ち上がる。――見れば、周囲の怪我人たちの傷までもが全て治っていた。
「猟兵サマ助けてくだちゃい~なァンて泣いてるタマ無しはここに残っとけ! テメェのケツをテメェで拭きてェ野郎だけ付いて来い!! ――お前らの救いたいモン救いに行くぞォ!!!」
 哄笑しながらジンはまた燃える村へと棺桶のような箱を担いで歩き出す。
 避難者たちは顔を見合わせ――我も、また我もと立ち上がっては彼を追って炎の燃え盛る場所へと向かっていく。
 一人の男がもたらした光によって、村人たちはただ救われるだけの存在ではなくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルエット・ブラン
【SPD】

東側で火を消す、ね…助けた人、安全に逃がすことを優先で…
特に、逃げ道を塞ぎそうな建物なんかは、どうしても邪魔になるなら壊すね…
一番は、安全な道の確保、だから…
障害を壊すときは、糸でひっぱって、どけるね
それと、もし人が障害物に挟まってたら…糸で引っ張るか、障害物をつるし上げるね…
人狼、だから匂いで人が分かるかもしれないし…できれば逃げ道を確保、しながら…一人でも助けたいから…



「…………」
 青い瞳が揺らめく赤を捉えていた。
 燃える村を見て、アルエット・ブランは異端者たちの村を思い出す。異端信仰を行っていた異端者どもは村ごと焼かれて死んでいた。つまり、ヴァンパイアにとってこの村は異端者のようなものだったのだろうか。幼いながらもアルエットはそのように村を捉える。
「でも、この村は私たちにとっての異端じゃない……」
 信仰する宗教は異教かもしれないし、同じかもしれない。だが、少なくともきっと異端ではないだろう。そうだとするならば、これも神の思し召し。神の恩寵に賜るに相応しく、庇護の対象足り得る。異教徒であれば、改宗の余地もあるのだ。――アルエットならばそのように考えただろうか。その無表情では、余人から推し量ることも叶わない。
「ん……」
 すん、と鼻を鳴らしてアルエットは顔をしかめる。物が焼ける臭いばかりが鼻につく。しかし、それとは異なる臭いも確かに混じっていた。
 彼女は燃える家屋の一つへとその白い手を振った。炎の燃える音や悲鳴、怒号に混じって、ひゅ、と小さく澄んだ音が混じる。次の瞬間、燃え盛る家屋はばらりとその姿を崩し、瓦礫へと変じた。アルエットの操る鋼糸による解体だ。
 だが、一部屋だけがその解体から免れて、天井だけが糸で吊り上げられていた。
「おいで……」
 アルエットが残された部屋へともう片手を振ると、しなやかで柔らかい鋼糸が伸びていき、何かに行き着いた。くん、と指で糸を操り、それを絡め取って腕で引く。炎の上を放物線を描いて飛んできたのは、まだ小さな子どもだった。空をかき混ぜるように手を振り、空中で糸をネット状にして受け止める。
「大丈夫……?」
「だ、大丈夫、です……」
 目を白黒させながらも答える子どもを、網から下ろす。
「東に逃げて……。神のご加護のあらんことを……」
 東側を指し、そう言い残すと次の家屋へとアルエットは向かっていく。
 糸を伸ばして突き動かされるように救助活動をするアルエットはまるで人形のようで。けれど、一人でも助けたいと願う心は紛れもなくアルエット・ブランのものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜庭・英治
誰が焼いた!
誰がやったんだ!

火をつけた奴を捕まえてやりたいけど何よりも避難救助だ
村中を駆け回りながら大声で誘導するぞ
火が出てるのは西側、逃げるなら東側だってな
河原が避難場所になるから、みんなそっちへ行ってくれ

ああ待って、あんた元気そうだな
一緒に見回り手伝ってくれ、崩れた家の下敷きになってる人がいたら一緒に助けるぞ
歩けない人がいれば背負ってやる、あんたも背負ってくれ頼んだ
いいか、誰も見捨てるなよ!
俺たちは助かる、全員で助かるんだ!

村人へ避難を呼びかけながら『鼓舞』していき、『コミュ力』で救助や避難の協力を呼びかけます
救助の必要があれば『怪力』と『念動力』を使用し燃えているものや瓦礫を撤去します



「誰が焼いたんだ、誰がやったんだ!」
 村の惨状を見て、桜庭・英治は怒りに任せて吼える。
 理不尽だった。逃げ場を封じて村ごと生きたまま焼いてしまおうなど、考えるだに恐ろしい、まさに悪魔の考えるようなことだ。英治にとってそれは耐えがたいほどに受け入れられなかった。
 ぎり、と歯を食いしばる。今すぐこの理不尽の元凶を探し出して捕まえてやりたいというのが英治の本音だったが、それよりも今は他にやるべきことがある。
「ぜってぇ助け出す……!」
 自らに誓うように、あるいは放火犯に宣言するように呟く。人命救助。ここで救える命を見捨てて、犯人探しに出たところで相手の思う壺だろう。犯人の狙いは村人たちを焼き殺すことなのだから。
「逃げろ、逃げろ! 東の川へ向かえ! そこなら火が回っていない!」
 声を張り上げ、避難誘導をしながら英治は火事現場を見渡す。
 ――英治は超能力者だ。とはいえ、その能力はそう強いものではない。精々が生活の中にあれば多少便利な程度で、他の猟兵たちのように大きな柱を持ち上げたり、打ち壊しに使ったり、人を癒したり。そんな大それたことはできない。
 彼は人を一人救うのにも苦労するような猟兵だった。
 だから、彼は声を張り上げる。
「そこのあんた、待ってくれ!」
 火事から逃れてきたのだろう。男が着の身着のまま、東へと逃れようとしているところを呼び止める。
「あんた元気そうだな、手伝ってくれ!」
「お、俺が……?」
 呼び止められた男が、自分を指して困惑したような声を上げる。そうだ、と英治は頷いた。
「人手が足りないんだ、崩れた家の下敷きになったやつを助け出したり、怪我をしたやつを背負って川まで運びたい」
「だ、だけどよ、あの火事に、また……」
「バカ野郎!」
 来た道を振り返り、火事現場を見て恐怖で震え上がる男へと英治は怒鳴る。
「火事は怖ぇだろうさ、ああ、俺も怖ぇ! でもな、あんたよりも小さな子がまだ取り残されてるのかもしれねえんだ。俺たちと同じく火事で怖いって思いをして、助けて欲しいって思ってるんだ、お前と同じように!」
 英治はたじろぐ男を指差す。
「同じ恐怖を知っていて、同じように『助けて欲しい』って助けを求めているやつがいる。だったら俺たちがそれを助けなくっちゃならねえ! まず助かった俺達がこの恐怖に打ち克たなきゃいけねえんだ!」
 言い切って、英治は肩で息をする。これでダメなら、本当にこの男は手伝ってくれないだろう。
 頼む、と祈りながら、英治は男の顔を見上げる。恐怖に負けずに立ち上がってくれと、願いながら。
「――俺が間違っていた」
 見上げようと顔をあげた先には、男の手が差し出されていた。
「俺にも手伝わせてくれ。まず何をすればいい?」
「――ありがとう。最初は避難誘導、それと使えそうなやつがいたら手伝わせる」
 わかった、と男は頷いて、英治に倣って避難誘導を始める。
 避難誘導の途中、手伝ってくれる仲間を見つけ、火の消火に努め、時には力を合わせて取り残された子どもや老人を助け出した。川の方から、怪我を治して来た男手も協力して、いつしか一丸となってこの火災に立ち向かっていた。

 ――桜庭・英治は人一人を救うのにも苦労するような猟兵だ。
 ――だから、彼は人の力を信じて、人の力を合わせて困難に立ち向かう。
 ――そうすれば、きっとどんな困難でも乗り越えられるだろうと、信じて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュシカ・シュテーイン
これでも一応農家の娘だった身ですのでぇ
こういった事態はぁ、見逃せんませんねぇ、いけませんねぇ
明日への希望とぉ、それとここで助ければ新たにお客様もぉ……
おっとぉ、今は集中ぅ、ですねぇ

【WIZ】
残念ながら手持ちの法石ではぁ、火をどうにかすることはできなさそうですねぇ
私はゴーレム精製のルーンを【高速詠唱】で手持ちの鉄鉱石に刻みぃ、犯人の手がかりを探し【情報収集】を行いましょうかぁ
このルーンはぁ、一つ使ったら辺りにルーンが分散するからぁ、コストも詠唱も楽なんですよねぇ

ならぁ……さぁ、行ってくださいぃ、皆さぁん
私もぉ、【視力】はいい方なのでぇ、ゴーレムと共に麦畑の近くを走りながらぁ、捜索を行いましょうぅ



「燃えてますねぇ」
 燃え盛る炎が眼鏡のレンズと緑眼の中で揺れる。スリングを杖代わりに、リュシカ・シュテーインは麦畑から少し離れた場所を歩いていた。
 口調こそおっとりしている彼女だが、元の世界では農家の娘だった身だ。農家において火事は致命的な打撃であり、こうして燃える麦畑を見るだけでも他人事ながらに肝が冷える。一体いくらの損失が生じたのだろうか。これの補填を何年でできるだろうか。次の収入までのやりくりは――。
「……嫌な想像はここまでにしておきましょうかぁ」
 なにはともあれ、決して他人事とは思えない窮地に違いなく。それはリュシカにとって見過ごすことはできなかった。
「明日への希望をお売りすれば、新規顧客も開拓できるかもしれませんしぃ、ねぇ」
 法石商としては取り扱わない品目だが、雨で立ち往生している者に傘を差し出してやるのがロイヤリティのある新規顧客獲得の秘訣だ。打って付けの投資と言えよう。
 彼女はごそごそと法石鞄からいくつかの鉄鉱石を取り出すと、空色のガラスペンでその表面へとルーン文字を書き出す。素早く詠唱を済ませると、ルーン文字を描いた鉱石はゴーレムへと変じた。
「それではぁ、お任せしましたねぇ」
 小型のゴーレムは応じるようにぴょんと飛び跳ねると、とことこと歩いていく。歩いていく途中、路傍の石にルーン文字が転写されて次々にゴーレムへと変じ、同じように歩いていく。そして転写されたゴーレムからまた石へと転写され……ゴーレムはねずみ講式に増えていった。
「さてぇ、私も探してみましょうかぁ」
 ゴーレムを見送ると、自分もまた足を動かし始める。
 探すべきは――この放火犯の足取りだ。
 しばらく捜索に時間をかけていると、ゴーレムの一体がぴょんぴょんと跳ねながらこちらにアピールしているのが見えた。
「何か見つかりましたかぁ?」
 そちらへ駆け寄って見ると、ゴーレムの場所には――無数の足跡が残っているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちを中心とした懸命な救助活動、消火活動によって村の火事はすっかりと収まっていた。
 村人たちの協力を得られたこともあって、猟兵たちの活躍のおかげで負傷者多数なれど死者ゼロ人という奇跡的な結果で火事は終わった。何人かの猟兵たちの働きによって、いくつかの家財や穀物庫が守られたのは村人たちに大きな希望を与えていた。困難にあっても、これで明日を絶望せずに生きていけると彼らは涙を流しながら喜び合っていた。
「みんな、聞いてくれ!」
 ――だが、猟兵たちにとってこの事件はまだ終わってはいない。
「有志の調査によって、放火犯の足取りが掴めた! 結論から言って、放火犯はこの地域を治めるヴァンパイアの配下である亡者たちだった!」
 劒が集まった猟兵たちに説明を始める。
 亡者は深くローブを身にまとい、大きな杖のような篝火を持ったオブリビオンだ。攻撃手段はその杖の篝火を飛ばすという単純極まりないものであり、動きは老人のような外見に反して機敏だが、その一方で目が悪い。彼らは戦闘中、その手に持った篝火の光によって作られた影に触れたものを感知して、回避行動を行う。つまり、障害物を頼りにしていると敵に行動を丸々悟られてしまうということだ。ゆえに、彼らの持つ杖の篝火か、篝火の放つ光をどうにかするか、あるいは篝火によって生み出された影に触れないようにしながら攻撃をするような工夫をしなければならない。
「それから、やつらは戦闘中、死んだやつや気絶したやつを自分たちと同じ姿に変えて、仲間として戦わせるっつうゾンビみてえな戦法を取ってくる。もちろん、これはやつらの死体にも適用されることだ。だもんだから、復活させられても困らねえように、両手か両足を潰して撃破することを推奨しておくぜ」
 相手の数は多く、その性質は非常に厄介極まりないものだ。
 だが、その程度では猟兵たちは負けない。
「時刻は夜。月光りの無い新月だ。戦場は荒地で、身の丈以上の大岩やら枯れ木やらがある。灯りを持ったあいつらなら、すぐに見つけられるだろうな」
 そこを一気に叩く、と劒は拳を手のひらに打ち付けた。
「やつらを倒せば、恐らく放火の首謀者とまではいかねえまでも、指揮者を叩けるようになる。それまで、全力で亡者どもを倒すぞ!」
リュシカ・シュテーイン
犯人さんが見つかったようですねぇ
出費は少し気になりますがぁ、嘆いても仕方ないですからねぇ

私は後方からの援護ですねぇ
まずは【スナイパー】【援護射撃】を用いてぇ、追尾のルーンが刻まれた石を目標が篝火を持つ手の方に位置を取り命中を狙いましょうぅ
これならば、影に当たることも少しはマシになりそうですしねぇ

追尾のルーン石が命中したらぁ、ちょぉっとぉ値が張るので使うのを少ぉしぃ、ためらいますが雷のルーンを刻んだアングレサイトの法石をぉ、天へと射出しぃ、高度からマーキングした敵に裁きの雷を堕としましょうかぁ
石よりジュエルの方が威力が高くなるので仕方ないのですがぁ……UDCアースであれば数万円の出費……ですかぁ


夷洞・みさき
村の人達は無事だったようで、それは良かった。
普通に生きて、火刑なんて釣り合わないしね。
でも、焼き殺そうとしたり放火しようとした者達はその限りではないよね。
そんな咎人は、相応の罰を受けて海に還ると良いよ。
彼らもただ使われている身なんだろうけどね。

WIZ
炎はちょっと苦手だから、火の勢いは抑えさせてもらうね。

注意すべきは敵の蘇生と、戦場での無差別の放火
UBにて戦場で引火しそうな物全てを海水浸しにする
こうも濡れたら燃やすのも一苦労じゃないかい?
水面で影が歪めばいいけど、それは望み過ぎかな。
でも水を得たなら多少の無茶は利くからね。

戦闘不能になった敵は【傷をえぐり】【踏みつけ】蘇生しても無意味な状態に。





 大きな金色の瞳がいくつもの炎を映し出していた。
「結構な数がいるなあ」
 キマイラの夷洞・みさきは青褪めた頬を歪めて、へらりとした笑みを浮かべる。亡者たちの持つ篝火は煌々と夜闇の中で照り光っていて、開けた荒野の上では嫌でも見つけられようものだった。
「あの篝火で、村を焼いたんだね」
 すぅ、と目が細まる。
 善良な村人たちに火刑は釣り合わない。海老で鯛を釣るような不等価交換だ。だが、放火して村人たちを焼き殺そうとしていたあの亡者どもは、その不均衡の限りではない。
「亡者だしね。――君たちには相応しい罰があるよ」
 両耳に手を当てる。潮騒の音が聞こえて来た。ここではないどこか。遥か遠くの潮騒が。潮騒の音は次第に幾重にも重なっていく。
「彼方より響け、此方へと至れ、光差さぬ水底に揺蕩う幽かな呪いよ」
 みさきが呟くように、呼びかけるように詠唱すると、亡者どもの足元に潮騒が流れ始める。潮騒は潮風となり、潮風は荒野を海水で浸食する。
「■■■■――ッ!?」
 感覚器官に難のある亡者たちも異変にはすぐに気付いた。妙な音が聞こえたかと思ったら、足元が澱んだ海水で浸されていたのだ。彼らは手に持った篝火を振り上げ、振り回し、元凶を探し始める。
「我は祭祀と成りて、その咎を禊落とそう」
 澱んだ海水――光も差さぬほどの水底より呼び出された呪詛を含んだそれらは、まるで蛇のような形になって亡者たちの身体を貫く。
「死んだ君たちには水葬こそが相応しい。相応の罰として受け入れて、海に還ると良いよ」
 敵の攻撃だと気付くや否や、亡者たちはその奇襲に慌てふためく。篝火を掲げてなおも攻撃手を探す者、狂乱したように篝火から炎を打ち出す者、その場から逃げ出す者――。
「しまった、逃げられちゃうのは考えてなかったな」
 外見に反した機敏な動きでぬかるんだ地面を蹴立てて亡者が逃げていく。そこへ更に呪詛混じりの海水を呼び込もうとしたが、それは大きな杖のようなもので遮られた。
「このままでぇ、お願いしますぅ」
 杖のようなものは、巨大なスリングだった。おっとりした口調でリュシカ・シュテーインは言葉を続ける。
「群れは小分けにできた方がぁ、敵の復帰を妨げることができますからぁ」
 分断と各個撃破は戦術の基本だ。ゆえに彼女は敢えて逃すことで散り散りになった敵を撃破しやすくした方が結果的に手間が少なく済むと言う。
「それはそれとしてぇ、一網打尽というのもぉ、濡れ手に粟みたいで素敵ですけどぉ」
 言いながら、リュシカはスリングを構える。スリングのゴムにかけるのは追尾のルーンが刻まれた石だ。
 きらりと彼女の眼鏡が炎の光を反射したかと思えば、石はスリングで射出されていた。石は水浸しになった範囲のちょうど中心の辺りにいた亡者の篝火に当たる。
「UDCアースの通貨にして数万円の出費ですがぁ……外敵は派手に散らした方が売り込みやすいですからぁ」
 法石鞄からややためらいがちにリュシカが取り出したのは、黄色く輝く宝石。アングレサイトと呼ばれる非常に脆い石だ。それを彼女はスリングに装填し、先程の敵の頭上、空高くへと打ち上げる。
 炎の光を孕んでアングレサイトがぴかりと光ったかと思うと、その宝石の表面に描かれた雷のルーンが輝き、真下にある追尾のルーン石目掛けて巨大な雷を落とした。
 裁きの雷とも言うべきそれは、雷の轟音と共に荒野へと降り注いで辺りへと散った海水を伝って周囲の亡者たちまで感電させてしまう。
「あなたの海水をぉ、少々お借りしましたぁ」
「わあ、電気ショック漁法みたい……」
 にこりと営業スマイルを浮かべるリュシカを見て、みさきのキマイラとして混じった魚の部分が震えた。
「相当な数を逃してしまいましたがぁ、散り散りになって各個撃破しやすくなりましたしぃ、一気に倒せたので戦果としては上々、ですねえ」
「そうだね。他の猟兵たちに全部掻っ攫われてしまわない内に、僕たちも追撃に行きたいけどその前に、っと……」
 呪われた海水による攻撃と、雷霆による感電によって動けなくなった亡者たちにみさきは歩み寄り、その足で踏みつけて亡者たちの手足を壊していく。
「……ああ、敵の復活対策でしょうかぁ?」
 亡者は手足を破壊しておかないと、他の個体によって復活させられてしまう。その対策だろうとリュシカは納得し、みさきもそれに首肯する。
「うん、それもあるね。あとはほら――次は手足も炎もいらない、魚に生まれ変われると良いね、って」
 一陣の風と共に、磯の香りが辺りに漂った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

亞東・霧亥
邪魔な篝火を消してしまおう。
俺と共闘する仲間にも、その旨を伝える。

あらゆる手段を用いて、篝火を消火もしくは破壊した後撃破。

【レプリカクラフト】
消火砂を使用した【仕掛け罠】の極めて精巧な俺を創る。
身長1.8mなら10立方mまでで・・・物凄い数出来るだろ。

【仕掛け罠】
敵の風上に設置。
攻撃されると破裂して消火砂を撒き散らす。
残った罠は自分で攻撃し作動。

風に乗った消火砂は、そのまま煙幕にもなるはず。
まだ消えてない篝火があれば、
岩の上で腹這いになり安定性を高めた後、ブラスターで『スナイパー』を行使、武器を破壊する。

篝火を消せば烏合の衆。
闇を利用し『忍び足』で近付き『暗殺』する。

「火遊びの罰は死で償え。」





 亡者が荒野を逃げ走っている。
 暗視ゴーグルを付けた亞東・霧亥は、大岩の上で腹這いになって熱線銃を構えた状態でそれを見ていた。ブラスターガンのトリガーを引きそうになって、指を離す。まだその時ではない。
「――気付いたか」
 スコープ越しに見える亡者たちが立ち止まってその篝火を構え始める。彼らの視線の先にあるものは、いくつもの人影だ。
 篝火から火球が放たれた。人影たちに命中すると、それは破裂して白い砂のようなものを空中に散布し始める。
 ユーベルコード【レプリカクラフト】によって作られた仕掛け罠だ。きめの細かい消火砂を大量に内包した、極めて精巧な人形である。破裂した人形の仕掛け罠は消火砂を風下へと撒き散らし、亡者たちの篝火を消してしまう。
「せっかく作ったんだ、おまけも持ってけ」
 熱線銃の引き金を引くのは今このタイミングにおいて他になかった。Sacrificeと銘打たれたその銃は篝火とは違った一条の光を放ち、人形を貫く。消火砂が風で運ばれ、辺りに散って煙幕のように亡者たちを覆った。
 篝火を消された亡者どもは鋭敏な感覚器官を失って右往左往する。まだ無事な篝火を持った亡者が火を移そうとするが、しかし霧亥がそれを許さない。熱線銃で正確に、無事な篝火を破壊する。
「篝火さえ消せば烏合の衆だな」
 火の光が届かない距離にある大岩の上から身を起こして、素早く静かな足取りで消火砂の煙幕の中へと突入していく。
「火遊びの罰は死で償え」
 完全に火の絶えたその闇の中で、霧亥は亡者どもの心臓を貫いていく。暗殺者のに素早く、正確に急所を狙い、絶命させていく。
 ――煙幕がすっかり荒野から霧散した後に立っていたのは、霧亥だけだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・クリスティア
敵の性質がわかるのであれば、恐れることはありません。
敵を知り己を知れば、百戦危うからず、です。

相手が影を頼りに動くのであれば、影に気付かないような遠距離からの攻撃が有効……つまり、狙撃です。
視力自体が悪いのであれば、そう目立たない位置にいる程度で位置取りは十分でしょうか。極力隠れますが。
あとは、他の仲間に気を取られている個体や攻撃態勢に入っている個体を優先して、仲間の援護とさせていただきましょう。
復活対策は銃では手間ですので、前衛さんにお任せして、私は動きを止めるのを最優先。

せめて苦しまないように撃ち抜きますから…許してくださいよっ!


桜庭・英治
見つけた
会いたかったぜ、お前ら
お前らの付けた火でどれだけ焼けたと思ってる
亡者に怒りをぶつけたってしょうがないことはわかってるけどよ!

亡者から離れた場所に立って的になるぜ
篝火から炎を出すんだろ?
俺のパイロキネシスと早撃ち勝負だ
お前が炎を飛ばす前にその篝火を焼き尽くしてやる!

勝負に勝ったらそのまま亡者も燃やしてやる
もう立ち上がるんじゃねぇぞ





「見つけた」
 桜庭・英治が口元を歪めながら呟く。逃げ行く亡者どもの火の光を彼は視界に捉える。
「会いたかったぜ。お前らの放火で色んな物が焼けちまった」
 亡者どもの篝火によってその身が照らされる場所まで彼は歩み寄る。亡者どもは即座にそれを鋭敏に察知して、振り向いた。
 だが遅い。気付いて、構えて、火を放つ。亡者どもが攻撃工程を経る前に、英治はその超能力【パイロキネシス】によって篝火自体を燃やす。
「炎って熱いよなぁ」
 サイキックエナジーによって発火した篝火を取り落とす亡者たち。それを冷めた目で英治は見下ろす。
「その炎でお前たちは村を焼いたんだ。何人もが火を見て怯えるようになったんだ」
 彼は続けて亡者のローブへとサイキックエナジーを集中させて火をつける。燃え上がる亡者。篝火という武器を失った亡者は地を転げ、声にならない絶叫を上げながら火に包まれていく。
 あの火事で自分たちが村人を助けなかったらこうなっていたのかもしれない。それを想像するだに腹の中の怒りがさらに煮え滾る。亡者に怒りをぶつけたとて仕方のないことだとわかっていても、英治には怒りを収められなかった。

 ――だからだろう。英治は後ろから篝火によって照らされたことに気付かなかった。



 亡者は確かに厄介な性質を持っている。その機敏な動きと特殊な知覚方法は白兵戦を挑む者たちにとっては鬼門と言えよう。物陰に隠れて銃撃戦を行う者たちにとっても厄介な性質だ。
 だが、その性質さえ知ってしまえば恐れることはない。シャルロット・クリスティアはエンハンスドライフルに銃弾を込めながらその照準器を亡者たちに合わせる。光は届かず、しかし銃撃にはそう難しくはない距離。つまりは遠距離からの狙撃ならば亡者を倒すだけなら簡単な話だ。
「……よし!」
 ゆっくりと息を吐く。肩の力を抜く。そうすれば狙撃は当たる。アルダワの戦闘訓練で何度も繰り返してきた工程だ。
 撃ち抜く。そう決意して引き金に指をかけた瞬間のことだった。不意に亡者たちがあらぬ方向を向いた。その方向には一人の少年――英治が立っていた。
 すぐに英治と亡者は戦闘に入る。篝火が燃やされ、亡者が燃やされる。
「狙撃の準備に時間使い過ぎちゃったかな」
 獲物を取られてしまった。シャルロットが吐息して、照準器から目を離そうとしたその時だった。別の亡者たちが歩いて来て、その掲げる篝火の範囲に英治が入った。
「――っ!」
 危ないと警告したのでは遅い。照準器を覗き込み、今まさに篝火を掲げて火球を放たんとする亡者へと銃口を向ける。トリガー。銃声とともに銃弾はまるで吸い込まれるように篝火を掲げていた亡者の頭を正確に撃ち抜く。
 その音で英治も振り向いて、後ろから別の亡者たちが来ていることに気付いたようだ。火球が飛び、発火する。火による戦いが始まっていた。
 だが火力と手数で言えば圧倒的に亡者どもの方が多い。それを補うのがシャルロットの狙撃だった。
 装填。照準。脱力。狙撃。英治を狙う亡者たちの頭を次々に撃ち抜く。戦闘不能になった亡者も、別の亡者によって戦線に復帰させられるが、その間少なくとも2人分の戦力が減る。それに仲間を助けようとする亡者ほど狙いやすいものもない。いわゆる友釣りだ。
 シャルロットが狙撃して戦闘不能な亡者を増やし、英治がそれを焼いて再起不能に追い込む。同じ獲物を狙った同士で共闘関係ができていた。戦闘不能と復活を繰り返しながらも、亡者はその数を減らしていき、英治の炎が燃え尽きる頃には全ての亡者が地に伏していた。

「……もう動けねえ」
「前衛お疲れ様です」
 最後の一匹に着火して、荒野の地面にどさりと尻もちをつくように座り込む英治。狙撃を終えたシャルロットがライフルを担いだまま英治へと手を差し伸べる。
「お前が援護射撃してくれてたやつ?」
「ええ。小さくって意外でしたか?」
「いやぁそんなことは……」
 曖昧に笑いながら英治が手を掴む。案の定と言うべきか、シャルロットの小柄な身体では引き上げるのにも苦労したのか、両手両足で踏ん張るように立ち上がらせた。
「さあ、戻りましょう。みんなに合流しませんと」
「まったく今日は走り回ってばっかだ……」
 二人して他の猟兵たちと合流するために歩いていく。
 ぱちぱちと燃えていたサイキックエナジーの炎が燃え尽きる。荒野の夜が、闇を取り戻した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

松本・るり遥
『腑抜け』の出番は無さそうだ。『優しくない』俺が紡げばいい。
射程ギリギリの後列より、言葉を高らかに発し、この視界に映る限りの炎を視る。

『消し止められてご立腹か?たかだか放火犯風情、随分立派なご身分だな。火の粉にも満たないそんな命で、俺たちの命を焼き尽くせる筈も無いのにな!小さい卑しい愚かしい。藁程も燃えやすいと思った命が、藁にも縋り生き残った。次に焼かれるのはその枯れた体だな。等しく灰に還れよゾンビ共!!!』

否定の言葉を紡ぐ限り、この目が定めた目標ーー炯々と目立つ篝火を、次々消し潰していく。
全体を見渡し、危険な仲間がいればそちらの火を優先。俺の身体に酸素と視野がある限り、自由は無いと思う事だ。


ジン・エラー
あァ〜〜〜
つまりお前らが実行犯ってことだァな?
オーケーオーケー、その火が分かりやすくて結構結構

楽には死なせてやらねェーけどな

こンだけ数がいやがるンだ
【光】で対多数がお得意なお味方サン助けた方が効率いいと思わねェーか?

それに、俺の【光】は影を消すぐらい余裕なンでな
生きてようが死ンでようが、オレが【拘束具】で縛っちまえばいいンだろ?

おっとそこの雑魚
今死のうとしたな?
ざァ〜ンねェ〜〜ン!
オレの【光】で致命傷は治しちまった!
お前はそこで縛られてることしか出来ねェーンだわ
モチロン杖は没収ゥ〜
指でも咥えて見てるンだな!

こンなクソ種火
オレに敵うと思ってンのか





「あァ~~~~……」
 煌めく黄金瞳と清澄な桃色瞳で、夜闇の中に浮かぶ火の群れを見ながらジン・エラーが呟く。
「つまりあいつらが実行犯ってことだァな?」
「それ以外に何だってんだよ」
 松本・るり遥が睨むような半目を向けると、「なンもねェな」とジンが肩を揺らして笑う。
「オーケーオーケー、わざわざわかりやすく火ィ目印にしてくれてて大変結構」
「んで、どうするんだ?」
「どうもこうも、決まってンだろ」
 どすんと棺にも似た箱を置いて、そこからいくつもの道具を取り出す。笑顔のマスクの中で、ジンの口元が歪んだ気配をるり遥は察した。
「全員死なせてやらねェ~~~~」
「だろうと思ったよ」 
 嘆息するるり遥と箱を置いて、ジンは亡者どもへと歩いていく。まるで散歩に行くかのような気軽な足取り。亡者どもの光に照らされる範囲に足を踏み入れるが、彼はまったくそのことを気にも止めない。なぜなら――。
「そンなクソザコ種火の炎より、俺の光の方が何億倍も強ェに決まってンだろォがァ!!」
 彼の身体が強烈な光を放つ。村の避難者たちの傷を治療していたあの光でもって、亡者たちの篝火の光を全て上書きする。「恐れよ」と掲げられた篝火を「取るに足らない」「俺が中心だ」とばかり照り返し、影という影、闇という闇を昼間の如き鮮烈な光でもって駆逐した。
 自らが光源となるというまったくの力技によって、亡者たちはその主たる感覚器官を失い前後不覚に陥る。敵の声はすれど、どこにいるのかまったくわからず。いるであろう方向に火球を撃つもそれらはジンからしてみればてんでんばらばら的外れ。眩しすぎて腕を盾にしているるり遥に流れ弾が飛びやしないかとむしろ少し心配できる余裕さえあった。もっとも彼は流れ弾が飛んだとしてもそのまま捨て置いて、当たったらそのまま光で癒してしまうのだが。
「お前後で覚えておけよッ!!」
 本当に当たったらしい。るり遥の怒声にへいへいとジンは振り返ることもせずに適当に手を振るが、果たして目を覆うるり遥にそれは見えているのだろうか。
「さァて、こっからがお楽しみタイムだぜェ~」
 箱から取り出した道具――拘束具を取り出して、ジンは亡者へと取り付けていく。亡者は当然暴れ回るがそんなことはお構いなしだ。手足を振り回し、爪を立てて抵抗するも、全て、全て傷はその光でもって癒やされてしまい抵抗の痕跡すら消してしまう。
 しかしその一方的な時間にも制限時間があった。スーパーなスターを取っても無敵のキャンディを取っても、無敵時間というものにはタイムリミットがつきものだ。それは彼のユーベルコードにも言えること。使用し続ければそれだけ疲労する。疲労すればそれだけ光は弱まっていく。
 光が弱まってジンの光と亡者たちの篝火の力関係が逆転すると、その場の中心が変わる。まだ拘束されていない亡者たちが、反撃とばかりに篝火を掲げてジンに向けて火球を放つ。
『誰がやらせるかってんだそんなチンケな攻撃!』
 るり遥の言葉が荒野に響き、彼の視界からジンへと飛来する火球が消し去られ、次に火球を放った篝火の炎が消えた。まるでそれらがまったくのナンセンスなものだと否定されたかのように。そんなものは不要だと打ち消されたかのように。
 当然、その声を聞いた亡者たちの何人かがるり遥の方へと視線を向ける。
『消し止められてご立腹か? たかだか放火犯風情、随分立派なご身分だな。火の粉にも満たないそんな命で、俺たちの命を焼き尽くせる筈も無いのにな!』
 罵倒する。嘲笑する。侮蔑する。次から次へとるり遥は言葉を紡ぐ。言葉を唄う。強い感情と共に魔力の乗った声がユーベルコードのトリガーになる。視界の中で、ジン以外の光が一つ、また一つと打ち消される。ジンのユーベルコードが主導権を奪うものだとするならば、るり遥のユーベルコードは反抗するもの。「中心は俺じゃないがお前でも絶対無い」と拒絶し否認するものだ。
「ギャハハハハッ! なんだよ戦闘中に守ってくれるだなンて“優しい”じゃァねェか!」
「うるさい黙れよ騒がしい」
 るり遥は鬱陶しそうに顔をしかめてただの言葉をジンへと返す。知ってて言っているなら嫌な性格だ。今のるり遥の人格は戦闘用に「優しさ」が欠落している。残忍、冷酷、無慈悲で薄情。だからジンへの攻撃を防いでやったのも優しさなんかではなくて、単に「亡者どもの相手をする者がいなくなると困る」という合理的な判断と、そして今のるり遥の役目が「そういうものだ」と決められていたからに過ぎない。
 一瞬のユーベルコードの隙を突いて亡者がまた火球を出すが、それを許するり遥ではない。即座にそれを打ち消してしまう。
『小さい卑しい愚かしい。藁程も燃えやすいと思った命が、藁にも縋り生き残った。ゾンビ如きがまだ生きられると思い上がってるなんてお笑い草だ傑作だ! 生きたきゃ生きてろだがその代わり――』
「楽には死なせてやらねェーからよ!」
 ガチャン。ガチャン。篝火を失い杖も取られ、完全に無力化された亡者どもは手足を縛り猿轡を噛まされ、まるで芋虫のような拘束姿で地面に転がされた。
「ざァ~~~~ンねェ~~~~ン! 篝火も杖も失ったお前らはもう縛られてることしかできねェーンだよォ!!」
 イハハグギャハハハハ、と独特な笑い方でジンは亡者たちを指差して笑い転げる。
「お前らは村のヤツらを焼き殺そうとしていた! けどお生憎様残らずぜェ~ンぶ怪我人は俺が治しちまったァ! ――殺すのはいつだって俺だけだった! その俺が生かしてェって思ったら、村のヤツらもお前らも、全部全員生き残るに決まってんだろブゥァ~~~~カッ!」
 要するに、どちらの方が格上か。つまりはそれに帰結する。そしてジンは亡者よりも遥かに格上で、生かすも殺すも自由自在。生殺与奪権を握った彼は普通の猟兵なら面倒がって殺すところを「そうしたいから」生かすことに決めたのだ。
 ユーベルコードの使用のために嘲笑い、蔑むるり遥よりもともすれば過激に煽りまくるジンを見て、彼は溜息をつく他なかった。
「……行こう、ここはもう終わった」
「あァ、次に行こうぜ。――そンじゃァ、アデュー! “余生”楽しンでくれよなァ! イハハハハッ!!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蒐集院・閉
火には火を以て対抗を。

鉄塊、黒剣、2つを用い、敵へ近づき攻撃を行います。(「激痛耐性」「火炎耐性」「怪力」「捨て身の一撃」「生命力吸収」)
【灼熱地獄】を解き放ち、地獄の炎で篝火からの炎を撃ち落とします。(「見切り」「カウンター」)
影へは、身から出る炎の明かりで影を打ち消し、対策とします。

確実に一人づつ、念入りに焼きましょう。
貴方方が逝くべき地獄です。逃しません。





 目には目を、歯には歯を。古くより伝わる法典の言葉に則るならば、それはまさしく「火には火を」と表現する他にない。
 鉄塊剣と黒剣を手にした蒐集院・閉は駆けていた。向かう先は火の群れ、亡者の集団だ。普通であれば、その篝火が生み出した影を踏んで即座に迎撃されるだろう。
 けれどおよそ、閉という女は普通ではない。
 彼女は眉一つ動かさずに己の身体を引き裂いた。拘束具が破け、肉が露出し、血が流れる代わりに地獄の炎が溢れるように吹き出し始める。羽織と同じ鮮やかな茜色が篝火の光を逆に照り返し、閉が踏むはずだった影を掻き消す。
「お覚悟、どうぞ」
 傷口から吹き荒れた地獄の炎がまるで蛇のように動き出し、篝火の灯った杖へと食らい付く。
「一つ」
 カウントと同時に、亡者の一体の両手が鉄塊剣によって潰され、黒剣によって断ち切られる。
「二つ」
 杖を飲み込んだだけでは飽きたらぬとばかりに閉の炎蛇が亡者を頭から飲み込み、そのみすぼらしい身体を丸ごと炎で焼いてしまう。
 それはまるで死の舞踏。閉が一舞い茜羽織を揺らすたび、亡者の手が切れ足が飛ぶ。
 亡者も音を頼りに火球を放つが大半は外れ、そして当たったとしても閉にとっては己の傷口から燃え上がる地獄の炎ほどにも熱くはない。彼女の胸の内に燃え上がる焔と比べれば、なんともぬるいの一言に尽きる。
 であれば残るはワンサイドゲーム。耐性のままに火球を突き抜け閉が武器を振るえば亡者たちは再起不能の致命傷を負う。
「灼熱の火、復讐の炎」
 亡者を茜色に燃やす地獄の炎が揺れ動く。
「――あなた方が逝くべき地獄です。逃しはしません」

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
ハッ!ようやく下手人が見つかったか。陰気なウィルソン(クソ野郎)達に落とし前をつけさせてやる。篝火ごと吹っ飛ばしてやるよ。__消火は得意なんだ。

影に触れなきゃいいんだろ?なら簡単だ。知覚の外から攻撃してやりゃいい。目が悪ィんなら、自爆ドローンの内数体を囮に使用して目線の高さで飛ばしながら、奴らの注意を引く。その間に【早業】で残り全部を上空に展開して、展開しきったら【だまし討ち】で空爆よろしくドローンを急降下させて爆撃だ。篝火を壊して、死体も吹っ飛ばしておきてえな。なーに、【破壊工作】が得意な俺には造作もねーよ

消火しに来たぜ。篝火?あぁ、違う違う。
テメエらの命の火さ。おっと、もう死んでたっけな!


クラム・ライゼン
「亡者…ってお化けじゃん……!?
いやオブリビオンだし当たり前なんすけど…」
「頼むぜ、ディア、ルフェ。
火遊びが過ぎるお化け共にお仕置きの時間だ!」

・戦闘/ユーベルコード
【WIS】
「要するに篝火が造る影を消しちまえばいいんすよね。……上手くいくと…いいな!」
《エレメンタル・ファンタジア》
『光』属性の『霧』を篝火付近または地表スレスレに発生させる。
篝火の影を消すことができれば続けるが
目論見が外れた場合は即消去。

・戦闘
攻撃では主にディア(ドラゴンランス)を使用。
超近接間合いに持ち込まれた場合は
ルフェ(短剣型のロッド)に持ち替え。

機動力を奪うために〈なぎ払い〉中心に脚狙い。
奪えた場合は腕狙いにシフト





「ハッ! ようやく下手人が見つかったか!」
 暗視機能付きサイバーアイのサーマルビジョンで揺れ動く亡者どもの炎を見ながら、ヴィクティム・ウィンターミュートが口の端を吊り上げる。
「陰気なウィルソン(クソ野郎)どもに落とし前をつけさせてやる……!」
「で、でも亡者ってお化けっすよね……?」
 対して、少し腰の引けた様子でクラム・ライゼンが引きつった笑みを浮かべる。
「焼いて来るって意味じゃ火事とそう変わらねえよ」
「その割り切り方はちょっとできないっすねえ!」
 B級パニックホラームービーみたいなもんだと手をひらひらと振るヴィクティムに対して、クラムが悲鳴のような声を上げる。
「明確に弱点があるって意味じゃ火事よか安全に対処できるから安心しろよ。ほら、仕事しようぜ」
「わかった、わかったっすよ……。頼むぜ、ディア、ルフェ」
 小さなバクの精霊と赤竜がふわりと浮いて、クラムの精霊術を補助する。手を振ると、きらきらとしたものが亡者たちの足元に出現して、それは光を帯び始める。言うなれば光る霧。それらは淡い光でもって篝火の作る影を消し去る。
「弱点って要するに、篝火が作る影を消しちまえば良いんすよね」
 当然、以上に気付いた亡者どもは浮足立つ。彼らにとって篝火で作られた影とは感覚器官そのものだ。だが、異常を察知してもどこに何があるか把握できていない以上は動くことすらままならず。――それは致命的な隙を創り出してしまう。
 亡者たちの対処方法で、最も簡便なものが遠距離狙撃だ。だが、その他にも効果的な戦術というものはある。
「消灯時間だ、篝火ごと消し飛ばしてやるよ。――消火は得意になったんだ」
 ヴィクティムは空を見上げる。そこには合計100機近い小型自爆ドローンが展開されていた。
 空襲(エアレイド)だ。
 ヴィクティムの操作に従い、いくつもの自爆ドローンが光の霧によって影を落とすこともなく一斉に降下する。
「全機信号ブラックアウト。飽和爆撃――完了!」
 幾重にも重なった爆音が響き、光の霧と篝火以外に爆発の光がその場に加わった。砂埃と、光の霧と、肉片とボロ切れが辺りに舞う。だがそれでも、身体に負傷を置いながらも篝火の炎を守りきった亡者がいる。
「撃ち漏らした、後は頼む」
「結局接近戦になるよね。――ディア、ルフェ!」
 駆け出すと同時にクラムが呼びかけると、バクの精霊と赤竜はそれぞれ短剣と槍に姿を変えた。光の霧の中に突入し、今まさに倒れた者を戦線に復帰させようとしている亡者に肉薄する。
「火葬はできないけど、成仏してくれよ!」
 敵の足元目掛けてランスを横に薙ぎ払う。布と肉、骨を両断する感覚が腕に帰って来た。
 痛みで醜い叫び声を上げながら、亡者が腕を振り回す。クラムはそれを短剣でもって切り払い、切断する。
「……はぁ、終わったぁー」
 大きな溜息一つ。元の赤竜とバクの姿に戻ったディアとルフェの頭を軽くなでて労をねぎらってやる。
「消火完了ってな。お疲れさん」
「消火活動はもう村で散々やったっすよ」
 これ以上はもう勘弁してくれとばかりに手を横に振るクラム。だがヴィクティムは指を横に振る。
「なってねえな。消火のキホンは火元から、だぜ。――こいつらの命の火を消してこその消火だ」
「……なるほど」
 一切の灯りが無くなって悪臭と戦いの跡だけが残ったそこを二人は後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アストリーゼ・レギンレイヴ
さあて、あの胸の悪い事件を起こした奴をぶちのめすには
まずお前たちから、というわけね

……いいわ、すべて骸の海に還してあげる
加減など期待しないことね

開けた場所で相手取りましょう
17m以内まで近づいた出会い頭に
【茨の刃影】で視認できる全てへ攻撃を仕掛ける
一撃では落とせないでしょうけど勢いを削ぎたいわ

接敵されれば武具で応戦
生まれる影に触れてはいけないのなら
相手の影にも注意が必要ね
大剣の振り下ろしはヒットアンドアウェイで
影に接触する時間を短く
影を踏まずに近づけぬようなら
引き抜いた【夜茨】で遠隔攻撃

ある程度の被弾は気にしないわ
幾ら起き上がろうとも、それも構わない
お前たちの全てが潰えるまで繰り返し屠るだけよ


都築・藍火
拙者が狙うは奴の杖でござる。
おそらく、誰かしら光を放つなり何なりをし、奴の篝火の影を無効化するはずでござる。その隙に一気に近づき、奴の篝火を剣刃一閃で切断するのでござる。
もしもそれが難しい場合は、拙者の得意な跳躍で奴の上から飛びかかり、篝火の切断を狙うのでござる。
上には障害物も何も存在し得ないでござるからな。
奴の松明を処理したら、後は奴の四肢を切り払い倒すのでござる。拙者、暗視ができる故、多少暗くなってもしくじることは無いでござろう


三岐・未夜
……亡者の火なんてごめんだね。
わかってないなあ、火はいつだって僕の味方だよ。

【属性攻撃】と【操縦】と【誘導弾】と【破魔】を遺憾無く発揮して、敵の篝火を持つ腕と歩く足を狙って行くよ。そのままで火力が足りなきゃ融合して強化する。
はっきり言ってこいつら邪魔だよね、気味悪いし。
それに、これだけ僕の狐火で煌々と明るければ、回避行動もしづらいでしょ。
ほらほら、狙っておいでよ。火の扱いならそう簡単には負けないよ。

……僕、ちょっと怒ってるんだよね。普段ならひとりで依頼とか行きたくないけど!

【誘惑】と【催眠術】と【時間稼ぎ】で敵に囮の狐火を狙わせたりもしてみようか。少なくとも、他の猟兵の助けにはなるよね。





 その戦域は暴威が吹き荒れていた。
 亡者の群れの中で大剣・月闇を振るうのはアストリーゼ・レギンレイヴだ。彼女は亡者どもに白兵戦を挑んでいた。
「――徒花のように潰えなさい」
 言葉に応じるかのように、彼女を中心とした地面から、無数の茨が現れて亡者どもを貫き殺す。すれ違いざまに茨の棘の一本を地面から引き抜けば、力任せにそれを亡者に投擲する。
 多勢に無勢を相手取る時の基本。常に機動力で撹乱、分断して各個撃破で相手の戦力を漸減する。普通の敵であれば無論それで問題はない。だが、亡者たちは雑魚にしては少々特殊な性質で、スペック上では勝っているアストリーゼと相性差で互角に渡り合っている。
「構わないわ」
 大剣を振るい、べっとりと刃の上に塗れた血を、新たな血でもって洗い流しながらアストリーゼは言う。影に接触する時間を最小限に、何度も攻撃を仕掛ければ当たる。茨の棘を投げれば殺せる。
「何度起き上がろうとも構わない。いくら抵抗しようとも捩じ伏せる」
 ――なぜならこれは、村人たちから奪おうとしていたあなたたちへの“復讐”だから。
 アストリーゼであれば、そう続けただろうか。けれど彼女は続けはしない。亡者が人の言葉を解す道理もなし、亡者が人語を話すでもなし。彼らはすでに死んでいる以上、死人に口なしであることに変わりはないのだ。
 だからこそ、彼女は宣言する。
「――お前たちの全てが潰えるまで繰り返し屠るのみ。すべて骸の海に還してあげるわ」
 攻撃してきたところを殺す。防ごうとしたところを殺す。逃げようとしたところを殺す。蘇生しようとしたところを殺し仲間を助けようとしたところを殺す。何度も、何度も。何度も何度も何度も殺す。衝き動かされるままに殺し続ける。
 胸の内に湧き上がる復讐の炎は、それでもなお尽きない。むしろもっと殺せとその身を焦がさんばかりに燃え盛る。
 ――どれほどの時間、そうして戦い続けてきただろうか。
 それでも、限界は訪れる。もっと殺せといくら心が煽り立てようとも、身体が動かねばそれはできない。時間が経てば経つほど、大剣を振る動きも精彩を欠いていく。
「――それはちょっと無茶が過ぎるんじゃないか」
 男の声がすると同時に、揺れる炎の光に黄昏色が混じった。アストリーゼを狙った火球が、その横の空間を通り過ぎていく。
「誰?」
 浮足立った亡者を斬って捨て、誰何する。狐火と共に現れたのは、20代ほどに見える妖狐の男――三岐・未夜だ。
「助太刀。影の接触を減らして攻撃、さもなくば遠距離で攻撃なんて無茶な戦い方をしていたから。結構避けられてただろう?」
「……見られちゃってた?」
 失敗したな、とアストリーゼの口元が僅かに苦笑で歪む。事実、いくら影の接触を減らしたとて避けられることのの方が多かった。遠距離で攻撃しようにも、外れるかさもなくば影に接触して回避されてしまうことも多かった。それら全てをアストリーゼは継戦時間と手数によって補い、横車を押すかの如き力押しで亡者どもを屠っていたのだ。
「誰かと一緒に行けば力を貸してくれただろうに」
「下手人を知ったら、いてもたってもいられなくなっちゃって……」
 疲労を滲ませながらも苦笑を浮かべるアストリーゼ。半分は本当で、半分は嘘だった。
「ふぅん。まあ気持ちはわかるよ。僕もちょっと怒ってるし。……普段なら一人でこんな仕事行きたくないのに、いつの間にかにこんな荒野まで来てた」
 彼はそう言いながら、狐火を操る。二人の話し声を頼りにしたのかいくつか火球が飛んでくるが、いずれも狙いもへったくれもない的外れな攻撃ばかり。それらを狐火に吸収させる。
「……嫌な火だ。亡者の火。こいつらてんで火の扱いをわかっちゃいない。――火はいつだって僕の味方なんだ」
 黄昏色の狐火を亡者へ放つ。狙い過たず未夜の火は亡者に命中し、その腕を焼いて篝火を取り落とさせた。
「うん、戦果は上々。そっちはどう?」
「ええ。もう十分休憩はできたわ」
「じゃ、面倒事は効率よく済ませちゃおうか」
 アストリーゼが大剣を構え直すと、未夜は人懐っこく笑みを浮かべた。奇妙な共同戦線ができていた。
「あいや待たれよ、拙者も推して参るでござる」
 女の声がしたが、姿は見えず。その直後に、何かが着地する音と共にざん、と亡者が両断された。そこに立っていたのは女の侍、都築・藍火だ。彼女は跳躍によって跳び、影の届かぬ空中から亡者たちに奇襲を仕掛けたのだ。
「手早くとなれば人手が多いほどに有利。拙者が助太刀するでござるよ」
「あら、それは頼もしいわ、ね!」
 無闇矢鱈に放たれた火球を大剣で防ぎ、アストリーゼはそのまま突撃する。
「援護するよ。合わせて」
「合点承知でござる!」
 未夜の左顔を覆う魔術紋様が鈍く痛みを発すると、まるで惹き付けられるかのように亡者たちが狐火目掛けて火球を放つ。その隙に、影を消されたアストリーゼと藍火が亡者の手を切り、足を切る。
「――これで、最後にござる!」
 最後の一体を藍火が切り伏せる。とうに篝火の炎はその場にはなく。狐火の黄昏色がその場を照らしていた。
「……驚いたわ、もっとかかると思ってたのに」
「三人掛かりでござったからな。楽勝にござる」
「やっぱり人数がいた方が面倒事が少なく済んで良いね」
 アストリーゼが目を丸くする一方で、藍火が勝ち誇るようにVサインを作り、未夜はあくびをする。
「さ、行こうか。みんな心配してそうだ」
 狐火を消して、未夜が歩く。二人はそれに続いて行った。
 その場にはもう、一つとして炎は無くなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アリア・ティアラリード
アルエット、シェラフィールと連携

「この閃光で篝火の火を打ち消します!行きなさいっ《虹色飛翔七連剣》!」

彼女の声に合わせ召喚される七本のフォースセイバー
虹の七色に輝く…しかもいつもより数段眩く煌めき、鮮やかな軌跡が闇夜を引き裂き
宙空を疾るフォースセイバー
照明弾のような強烈な閃光は篝火の灯りを、陰を打ち消し
その下を駆けるアルエットとシェフィの姿を亡者たちは気付けるでしょうか?

そして役目を終えた光剣は一際大きく輝き宙に舞い上がると
2人を襲おうとする亡者達に突き立って!

「もう少しっ! ここからはお姉ちゃん達にまかせてっ!」

これでもかとたわわな胸を、乳房を張り【気合い】十分
周囲を【鼓舞】して追撃開始です


アルエット・ブラン
アリアとシェフィと一緒

ん、知り合いと一緒にだから…連携でいく…ね?

「…」
火をつけた敵は許せない、だから…絶対に、倒す…ね…
一番小柄だから《目立たない》を使ってシェフィの背後に隠れて進むね?
狙いは、死角からの一撃…《暗殺》《だまし討ち》《フェイント》で糸で相手の四肢を縛る…
その後引っ張って殺すね?
速度、増すために…外套は脱ぐ、下はレオタード…だから、恥ずかしくない、もん…

「火を、こんな事に使わない…」
攻撃終わったら…外套をかぶりなおして周りを警戒、するね…
アリアも、シェフィも怪我しないように…頑張る、から…

「二人とも、怪我…ない…?」
戦闘が終わったら二人に寄り添うね、怪我なかったら良いんだけど…


シェラフィール・ディー
アリア、アルエットと連携

「その篝火、斬り飛ばします」

【胡蝶剣】
アリアお嬢様のフォースセイバーによるめくらましを背に疾走
[残像]を残す高速移動から、速度を乗せ確実な命中を重視した居合抜き
速度を鞘走りにそのまま乗せ、すれ違いざまにまずは篝火を燃やす杖
それを破壊を狙い一太刀。杖をはじき飛ばし、そのUCの発動を妨害致します
仮に仕損じたとしても…続くアルエットをその背中の影。死角にギリギリまで隠しておきましょう

「油断は、ありません。後を任せる程度の……そのぐらいの信頼は御座いますので」





「《ラ・アルカンシェル》!」
 その戦場での戦端は、アリア・ティアラリードの号令から始まった。
 まず最初に動いたのは七色七本のフォースセイバーだ。光の剣が宙空を駆り、夜闇に七色の軌跡を残す。その輝きはこころなしか常よりも一際眩い。
 そしてフォースセイバーの淡い光の下を疾走するのは大太刀を持ったシェラフィール・ディーと、その背後にぴったりと追随するアルエット・ブランだ。
 前方には亡者の集団。彼らの篝火が煌々と照らす範囲に二人が入るが、気付く亡者はいない。二人の周囲の影はフォースセイバーの放つ七色の光で掻き消されていた。
「その篝火、斬り飛ばします」
 フェラフィールが突撃し、鞘を引きながら刀を抜いた勢いのままに身の丈の半分以上もある大太刀を振るう。鉄が空気を切り裂く音。篝火が宙を舞い、地に落ちる。
 襲撃に気付いた後方の亡者たちは即応した。篝火を掲げ、火球を放とうとする。
「お姉ちゃんに任せなさい!」
 それを見て取ったアリアがフォースセイバーの数本を操り、攻撃しようとする亡者に突き立つ。
「アリアお嬢様にしては良い援護です」
 篝火を無力化し、更に敵の密集する中心へと返す刀で斬り込むシェラフィール。そこには亡者が待ち受けていて、火球がダメならばとばかりに杖を振ってくる。
「油断ではありません。――アルエット様!」
「わかってる……」
 背後に隠れているアルエットに呼びかけた。アルエットが手を広げ五指を動かすと闇の中を糸が走る。まったくの死角から放たれたその糸によって、何体もの亡者の四肢が輪切りにされる。外套を脱いでレオタードのみの姿となった今、アルエットの糸繰りの速度は火事救出の時の比ではない。
「後を任せる程度の信頼は、ございますので」
「ん。任されてる……」
 シェラフィールが斬り込み、アリアが援護し、アルエットがとどめを刺す。気心の知れた三人であればこその連携だった。
 察知能力を喪失させられ、攻撃手段も連携によって封じられた亡者どもに為す術はなく。後に残るのはただの死体ばかりになる。
 残心の構えでまだ亡者たちに生き残りがいないか、他の集団からの襲撃が無いかとシェラフィールが周囲警戒をしていると、アリアが駆け寄ってきた。
「シェフィー! 大丈夫だったー? お洋服焦がしてない? ……あっ、お尻焼かれてまた大きくなってないかしら!?」
「……ブチ転がしますよアリアお嬢様」
 鞘へと大太刀を納めながらアリアへと半目を送る。最近胸もそうだが尻も大きくなってきて、だらしがないんじゃないかと悩もうものだ。
「二人とも、怪我……ない……?」
「ええ、私は後衛でしたし」
「……不本意ながらアリアお嬢様の援護があったおかげで無傷です」
 それは良かった、と言うように二人の無事に安心したようにアルエットは頷いて、二人に寄り添う。
「可愛いシェフィちゃんとアルエットちゃんのためだもの。お姉ちゃん頑張った!頑張ったでしょう!? 褒めてくれても良いのよ!」
「アリア、頑張った……」
「チッ、次からはアリアお嬢様を肉盾にする作戦にしますか……」
 褒めろ褒めろとばかりに豊かな胸を張って二重の意味で自己主張するアリアを、アルエットは不器用に褒め、シェラフィールは鬱陶しそうな顔をする。
 三人はアリアを戦闘に、意気揚々と次の敵集団を探して歩いて行くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『異端の騎士』

POW   :    ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「まずは亡者たちの掃討、お疲れ様だ」
 石動・劒が荒野に集まった猟兵たちを見渡す。各猟兵たちによる弱点を突いた効果的な戦術により、迅速な殲滅が成った。敵を討ち漏らさず、なおかつ比較的短い時間に撃滅できたのは掃討戦に参加してきた猟兵たちの優秀さの表れだろう。
「みんなが亡者たちと戦っている間、今回仕掛けてきた敵の指揮官格の所在とその主たる能力を調査しておいた。敵の首魁は――異端の騎士だ」
 あるいはここにダークセイヴァー世界の出身者がいれば、顔をしかめただろうか。異端の騎士は元は人類を守るための騎士だった者だ。彼らは生きるため、力を得るためにヴァンパイアに忠誠を誓うことでその身を外法に浸し、オブリビオンへと変じた。今や異端騎士とはヴァンパイアの命令に忠実に従って人類に仇なす敵であり、すでにもう完全に人類ではなくなっている。
「異端騎士は現在作戦失敗を悟って単身で撤退中のようだ。俺たちはその撤退ルート上の平原で待ち構えて、異端騎士を討つ」
 時刻としては夜明け。空が白み始め、日が昇る頃が作戦実行時間だ。周囲に障害物はなく、明かりも十分。つまりは地力でのぶつかり合いとなる。
「この異端騎士は……まだ人間だった頃の資料によると、頭脳も武力も優秀な騎士だったが、とにかく生き汚い。生への執着心が強かったことがよく知られていたようだな。とにかく自分の生きることを最優先し、そのためには何でもやるし何でも利用する。そういうヤツだったそうだ。恐らく、ヴァンパイアへ恭順したのもそれが理由だろうな」
 頭も回り、武に優れ、しかして手段を選ばず自分の生存を最優先する。騎士としてあるまじき利己主義だが、敵としてはこの上なく厄介な存在だ。元が人間ゆえに戦術というものを理解しており、明確な脅威でなければ囮は捨て置き、一人ずつ各個撃破していくような戦術を取って来る。
 ――非常に優秀な働きを見せてきた猟兵たちと言えども、苦戦は免れ得ないものとなだろう。
「基本的な戦闘技能の他に、ヴァンパイアから授かった能力でも攻撃や自己強化をしてくるものと予想できている」
 猟兵たちの血を糧にして殺傷力を増させる。乗騎を召喚して機動力を得る。そして最も厄介なのが、バラの花びらによる半径30mの周囲無差別攻撃だ。無差別攻撃は連発できるものではなく、また使用時にかなり負担がかかる大技だ。退路もなく進退窮まった状態などでの逆転の一手として使って来ると思われるが、そこさえ耐え凌げば大きな攻撃のチャンスとなるだろう。
 異端騎士がどんな状態の時に、どんな攻撃をするのか。どうやって敵の攻撃を凌ぎ切るか。想定するべき点の多い戦いで、楽ではない。全てを一人でカバーするのではなく、要所を押さえながら仲間の行動を信じて補い合えると良いだろう。
「奴は忠誠を示すためにヴァンパイア好みの村の滅ぼし方をしようとした。己が利益欲しさに無辜の民たちを犠牲にするような腐れ外道だ。ここで必ず仕留めないとならねえ。……みんな、頼んだぞ」
松本・るり遥
【没了】
(冴えるような瑠璃青と金の瞳)
(己の射程圏内から外れぬ程度の遠方。接近戦に絡まれているなら【目立たない】俺を見つける余裕は少なかろう)
(主導権は、『非情』)

は。ジンもまりあも無茶苦茶だ。 好きなだけ暴れろよ。
俺は此処から、今はまだ『視る』。出番が来れば、『引っ込む』さ。
見ろ、『腑抜け』
お前の出番も時期に来る。

ああ、先に死なれちゃ困る。『臆病者が、滑稽だな』ーー呟くナンセンスで、随時妨害スナイプを。どこから攻撃が来たか。さぁて気付けるかよ。

見たか?見たな。脅えはお前の仕事だ、返すぜ。
「っクソ急!何のための人格だよ、やっべBAN文句思いつかな、『俺の仲間が痛そうだろが止めやがれ!!!!!』


戒原・まりあ
【没了】

【ジン】さんの光と救いに目の眩んだ隙をついて
【オルタナティブ・ダブル】
私は【衝撃波】、まりあは短剣で接近戦、ね。

おっけーまりあ、まっかせといて!
【るり遥】さんの聲が助けてくれてる
生命力共有してるの?軍馬の方が鎧のない分傷つけやすそうかな
生きるために授かった筈の力なのに
自分じゃないものが傷つけられて死にそうになるの、どんな気持ち?
ねえねえ騎士サマ、生きたい?生きたい?
じゃあ戦わなくちゃ!あは!
ほらあるじゃん、生きる事は戦いだってやつ?
生まれてくるのだって難しいのに皆えらいよねー
まあその話は置いといて。ねえ、
出せるんでしょ?アレ。それとももうへばった?
――私、とびきり綺麗な薔薇が見たいの!


ジン・エラー
【没了】
おうおうおうおう
優秀な頭ァしてる騎士サマがどこに行こうってンだ?

おっとそンな怖い顔すンなよ
こっちは”話し合い”に来たのさ
なンなら証拠に、オレの【光】で助けてやってもいいンだぜ?

なに?噂によっちゃお前、生きるためになンでもするンだってな??
おォ、それじゃァオレら、仲良くなれるぜ?
なンたってオレは

救うためならなンでもする聖者だからよ

そォーそォー!お前も救ってやるよ!!
【オレの救い】、欲しいだろ?
…あァ、目は閉じとけ?さっきの【光】よりすげェーからな


救ってやるよ
その生の呪縛からな

なァ?【まりあ】。綺麗な薔薇でも見せてくれよ

おォ、【るり遥】。お前の聲は、よく響くなァ





 太陽も地平線から登り切らぬような未明。
 平原の上で漆黒の軍馬が疾走していた。その上には一人、夜闇に紛れるかのような同じく黒い鎧の異端騎士が乗っている。
 ふと、異端騎士が手綱を引いて馬を止めた。明るくなり始めた平原の上、彼の逃げ行く先に一人の男が立っていた。
「おうおうおうおう、優秀な騎士サマがどこ行こうってンだ?」
 棺のような黒の箱を担いだ男は、ジン・エラーだ。彼は行く手を遮るように異端騎士の前に立つ。
「猟兵か、お仲間はどうした?」
「おいおいそンな怖い顔すンなよ」
 見下ろす異端騎士は緊迫した雰囲気を隠そうともせず。見上げるジンはおどけたような様子で余裕さえ見せている。
「こっちは“話し合い”に来たのさ」
「……話し合い?」
 猜疑する目を向けながらも、ともあれ敵意は無いようだと異端騎士は腰の剣へ伸ばす手を降ろす。
「噂によっちゃお前、生きるためになンでもするンだってな?」
「だとしたら、どうした?」
「救ってやるよ。お前を」
 まるで自分の茶を淹れるついでに一杯お前もどうだ、と問いかけるような気軽さでジンは言い放つ。不気味な笑顔のマスクで一見して嘲笑しているかのようにも見える彼だが、しかし救うと口にするその金色と桃色の目だけは傲岸不遜でありながらも本気のものに見えた。
「オレは救うためならなンでもする聖者だからよ、お前のことも救ってやりてェ。哀れじゃァねェか、生きるためにいじましくヴァンパイアに仕えてる騎士サマなンてよ」
 言葉を紡ぎながら、ジンは異端騎士を見る。甲冑に包まれ表情すら見て取ることは不可能だが、間違いない。彼は葛藤し、迷っていた。今まで自分以外の味方というものがなく、救いを求めながらも救われたことがない者と同じ気配を漂わせている。ああ、ジンはかつて何度も同じものを見てきたがゆえにわかる。異端騎士はオブリビオンでありながらも本気で救いを求めていて、助かりたがっていて、そして何よりも生き続けたいと希っている。
「どうせ呪いの一つや二つ掛けられてるンだろ? じゃァオレがそれを解呪してやるよ。聖者のオレなら、お前を救える」
 異端騎士の逡巡、沈黙。敵の策略かも知れないという猜疑心と、今この場で救われればヴァンパイアに見つからず逃げられるという希望的な打算が渦巻いているのが手に取るようにジンにはわかる。そして大概、こういう場合は自重で傾いていくものだ。
「……ならばやってみせろ。今、この場で」
 オブリビオンに変じたとて元は人間。いくら武勇や知略に優れようとも心の弱さは変わらない。
「あァ。今、オレが救ってやるよ」
 一歩、踏み出し。彼は眩いほどの光を放った。全てを救うという驕慢による聖者の光は第二の太陽のように地上で輝きを放ち、異端騎士を包み込む。

「救われてくれや。――その生の呪縛から」

 閃光によって異端騎士の目が眩んだ一瞬の隙を突くかのように、平原に伏せていた一つの影が飛び起きて、二つの影に分かれ異端騎士を急襲する。
「行くよ、まりあ! さっき言った通りに!」
「おっけーまりあ、まっかせといて!」
 飛び出したのは戒原・まりあと彼女から分かたれた第二人格、薔薇原・まりあだ。戒原は衝撃波でもって軍馬を攻撃し、薔薇原は手にした短剣で斬り掛かる。
「よォ、まりあ。綺麗な薔薇でも見せてくれよ」
「それじゃあうんと頑張らなくちゃね、まりあ」
「そうね、まりあ。騎士さんを追い詰めて、たくさんたくさん薔薇の花びらを出させるの」
 ジンの言葉で、黒騎士を両脇から挟み込む二人のまりあが微笑みを浮かべる。
「――ッ、謀ったな!?」
「ィヒッ、お前にかかった一等厄介な呪いはその生への執着心だ。それを解呪してやるって言ってンだから感謝して欲しいぐらいだぜ! ヒハッ、グヒィァハハハハァ!」
 得物の剣でまりあたちの攻撃を防ぎながら叫ぶ異端騎士を、ジンが嘲笑う。
「ほらほら、お話してる暇があるの?」
「生きたいんでしょう? それならほら、お馬さんも守ってあげなきゃ!」
「自分じゃないのにお馬さんが傷つけられると騎士サマも死にそうになっちゃうだなんてかわいそう」
「ねえ今どんな気持ち? 生き延びるために授かったその力で追い込まれるのってどんな気持ち?」
「黙れェッ!」
 横に一閃、異端騎士が剣を薙ぎ払う。パッと薔薇原から血が咲いた。散った血が禍々しいオーラと共に霧のようなものへと変じて異端騎士の剣へと吸収されていく。
「あは! そうでなくちゃ!」
「やっぱり戦わないと。ほらあるじゃん、『生きることは戦うこと』だとかなんとか?」
「ならば貴様らを殺して俺は生きるッ!」
 血霧を吸った剣が、長大かつ刺々しい姿へと徐々に変貌していく。
「えらいね、生まれてくるのだって難しいのに」
「生まれた上に戦おうなんて!」
 衝撃波を防がせてから短剣で切り裂き、短剣を防がせる間に衝撃波でダメージを与え。多重人格ならではの自分と自分のコンビネーションで異端騎士と生命力を共有する軍馬へとダメージを蓄積さえていく。更にそこに加えてジンの援護も加われば、三方からの攻撃を異端騎士が全て対処するのは至難を極めた。
「隙ありッ!」
 薔薇原が短剣で刺突する。異形の剣を掻い潜り、深々と軍馬の脇腹へと短剣が突き刺さる。――突き刺さってしまう。そしてそれは致命的な隙となった。
「隙だらけだ」
 剣が空気を裂く音。しかしそれは途中で弾かれるような音と共に中断された。
「……おォ、るり遥。お前の聲はよく響くなァ」
 不気味な笑顔の中で、ジンが小さく笑った。
 

『臆病者が、滑稽だな』
 ――まりあと異端騎士が渡り合うのを松本・るり遥は瑠璃色と金色の瞳で眺めていた。口にしたのは侮蔑の言葉。言葉の銃弾が飛ぶように、視界の先、異形騎士の剣先を弾いたのだ。
「は。ジンもまりあも滅茶苦茶だ。好きなだけ暴れろよ」
 わざわざまだるっこい段取りまで決めての奇襲戦。敵の動揺を誘っての時間制限付きの優位。最初に畳み掛けて相手の余裕を削り取るこの作戦は確かにうまくいったが、所詮はうまくいったに過ぎない。あるいは、腑抜けのるり遥であれば「良かった」と仲間の立てた作戦の成功に喜び胸を撫で下ろすだろうが、今の非情なるり遥はあくまで冷静に判断してしまう。
 あれでは足りない。追い詰めきる前に優位性が消えて形勢逆転が目に見えている。
 かと言って、非情なるり遥に二人を助ける気は無い。確かに二人に死なれでもしたら彼は困るだろうが、裏を返せばそれは「死ななければそれで良い」とも言えるのだ。
「あ」
 薔薇原が倒れ伏し、異端騎士の剣で致命打を与えられんとしているのが見えた。
「見たか? 見たな。じゃあ後はお前の仕事だ。返すぜ」
 判断は一瞬。返答も待たずにるり遥は人格をスイッチする。『非情』に代わって表に出てきたのは『腑抜け』だ。
「ッ、クッソ急に!」
 何のための多重人格なんだと他人格に悪態をつきながらも、必死になって敵に向ける言葉を探す。嫌だ、仲間が傷付くのは自分が傷つくのと同じぐらいに心が痛む。
『ーーッ、俺の仲間が痛そうだろうがやめやがれ!!!!!』
 だから口を突いて出てきた言葉は、敵に立ち向かう怯えよりも仲間が傷付くことへの恐怖が勝った。仲間を庇うその舌峰は鋭く異端騎士を貫く。
「貴様か……!」
 叫びによって妨害された異端騎士がるり遥の存在に気づき、振り向きざまに剣を振って衝撃波を飛ばす。
『遅えよ来るな! ノロマめトンマ!』
 身の危険をその臆病さで敏感に感じ取ったるり遥は回避に身を翻しながら口撃の連続でもって衝撃波を迎撃する。
 しかし所詮は言葉は言葉。異端騎士の衝撃波をわずかに遅らせるだけで、その回避には間に合わない。
 失敗したな、と腑抜けのるり遥がどこか他人事のように胸中で呟く。慣れないことはするものじゃない。自分は腑抜けで、仲間を庇うために自分の位置を露見させるだなんてらしくない。だからきっとこれは因果応報、当然の帰結。分不相応の行いをした致命的な罰だ。
 諦めるように、受け入れるように目を閉じると衝撃が身体に来て、身体が宙にわずかに浮いてから地へと叩き付けられ。
 けれど、るり遥は意識を失っていなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

蒐集院・閉
とじには理解できませぬ。他者を犠牲にしてまでも自らが生き残るなど。
とじはヤドリガミ。人に使われ、役立つ事こそが喜びの道具であれば。
…あなたの行為は、許せません。

真の姿を開放し、私は炎を纏います
流す血は炎で乾かし、敵に利用させません(「火炎耐性」)

鉄塊と黒剣を用い、敵の攻撃を受け止めながら反撃を繰り返します。(「怪力」「武器受け」「鎧砕き」「見切り」「カウンター」「激痛耐性」「時間稼ぎ」)
それでも受けきれない攻撃が来ると判断した場合、【氷結牢獄】で守ります。それが敵の直接攻撃であればそのまま部位を凍結させ、敵の弱体化も狙います


ヴィクティム・ウィンターミュート
ハッ!生に執着!いいねぇ、分かるぜその気持ち。俺も生きるために色んなことをやった...。

だが、テメエと決定的に違うところがある。
教えてやるよ、三流。真の悪党は誰にも従わない。くだらねえヒエラルキーに巻かれてるテメエと俺じゃ、誇りの質が違ェのさ!

俺は異端の騎士と戦ったことがある。そのデータを元に、味方に的確に指示を飛ばそう。
一人ずつ狙うならちょうどいい。味方を回復させ続けて戦線を維持する。脅威と認識されたら【ダッシュ】【見切り】で捌く。

範囲攻撃は予備動作を【見切って】、ダメージを相殺するように全体に最大出力回復だ。
疲労?そんなもん度外視だ。

行ってこい英雄。名脇役が、きっちり膳立てしてやるからよ。


亞東・霧亥
【SPD】

【レプリカクラフト】
【仕掛け罠】
10立方m内で、高さ10m、縦横5mの落とし穴を4つ創る。
落とし穴の表面は、肉眼では地肌と罠の区別がつかない程に精巧で、逃走ルートに設置。

撤退中の異端騎士を『スナイパー』で狙撃。
落とし穴に誘導するための威嚇射撃なので、特に命中は考慮しないが、罠を警戒する余裕は与えない。

10mの高さから落ちた場合、如何に強靱な馬でも、自重で足は破壊されるだろう。
後は異端騎士共々、好きな方法で念入りに殺してやれば良い。

(異端騎士を見下しながら、ブラスターを構え)
「懺悔は済ませたか?オブリビオンにお祈りは?穴の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?」

トリガーを引く。


アストリーゼ・レギンレイヴ
闇に身を窶したというならば殺すだけよ
誇りと矜持を捨てた騎士などに負ける道理はない

味方と連携をして動きましょう
……そうね、一人では限界があるの
わかっているのよ

【黒風鎧装】で武装して前へ
詠唱中や攻撃動作前の味方を【かばう】でカバーするわ
武器を駆使して相手の攻撃はしっかり受け流す
ちょっと血が足りないのよね、悪いけどこれ以上はあげられないわ
分が悪いかもしれないし、力量が足りないかもしれないけど
ええ、いいのよ、
――この背に庇った誰かの一撃がお前を殺せたならば
それで、あたしの勝ちだもの

お前が保身のために切り捨てようとした命
奪おうとした未来の分だけ報いを受けなさい


複数連携可
アドリブ歓迎


都築・藍火
こと此処に到れれば後は真正面からの戦いでござろう。
拙者は砕天號を前面に配置し、肉弾戦闘を挑むでござる。砕天號を壁にすることで、拙者自身の出血を抑えるのでござる。
ブラッドサッカー発動前は、砕天號は攻撃よりも防御。特に味方の出血を抑えるべく味方の壁として動かすでござる。最悪砕天號が味方の代わりに砕ける事も許容しようでござる。
ブラッドサッカー発動後は、槍を用いて【二回攻撃】とかで全力で攻撃に移るでござる。
馬の機動力に追いつけぬ事も有ると思われる故、その場合は弓での【援護射撃】に移行するでござる。
フォーリングローゼスの発動の兆候を見た場合は、砕天號の腕で拙者を覆い、全力で守りに入るで御座る
アドリブ歓迎


逢魔・優希
よお、劒。借りの一部を返しに来たぜ。
ちょいと遅れたみたいだが、呵呵ッ。どうせ俺にできるのは殴ることだけだ、都合がいい。
盾でも囮でも好きに使え。使い潰せる駒は貴重だぜ?ハッ、心配すんな。命まで捨てる気はねえよ。
んじゃまあ、逢魔が優希!推して参ろうかァ!

宣言通り、前を張るとしようかね。血を見るのには慣れてるさ。
武具は少々厄介だが、懐に入りゃあ十全には振えまい。
花弁はさすがに俺一人で受けきれんが、何かしら対策する奴はいるだろ。できるだけ叩き落としはするがな。

囮と見抜かれて捨て置かれたならーー
今、俺を侮ったな?
弐撃、ぶちこんでやるだけだ。

強い奴に頭下げて、力貰って満足か?
ハッ、テメエはそれでも男かよ!


リュシカ・シュテーイン
さてぇ……これで仕上げぇ、ですかねぇ
ここで逃がしますとぉ、同じような事態が起こるやもしれませんのでぇ
これ以上の消費も抑えたいことですしぃ、大人しくしていただきましょうかぁ

30mがあちらの有効範囲というならぁ、私はそれ以上のぉ、範囲ギリギリまで離れて遠くから攻撃いたしましょうかぁ

さてぇ……流石にこれ以上ジュエルは使えませんしぃ、少々威力は先ほどよりは劣りますがぁ、この銅鉱石に炎上のルーンを刻んだ法石でぇ、範囲の外からスリングで攻撃しますよぉ
威力はファイアボールほどでしょうが、馬の足や敵の頭などを狙えば十分に援護は出来るでしょうかねぇ

……さぁ、火を恐れなさい
貴方はその火に滅されるのですから


九十九曲・継宗
保身のために敵に降っただけならいざ知らず、守るべき人々を虐げるとは言語道断
私も未熟で偉そうにできる立場ではありませんが、その凶行はここで止めてみせましょう

性根はともかく敵の腕は確か
ここで確実に倒すためにも油断なくいきましょう

『一迅』でまず狙うのは、呼び出した軍馬の脚
騎乗した相手に白兵戦を挑むのは骨が折れますし、なにより馬に乗って逃げられでもしたら大変ですから

姿勢は低く一気に加速して
敵の刃を潜り抜け斬ってみせましょう

【台詞アドリブ、参加者との連携歓迎】





「……っ、間一髪ってところかしら?」
 るり遥を庇ったのはアストリーゼ・レギンレイヴだ。彼女は身に漆黒の旋風を纏いながら、その鎧装でもって異端騎士の衝撃波へと飛び込んで身代わりとなったのだ。
 強力な攻撃によってアストリーゼとるり遥は吹き飛ばされたが、殺傷性の大半は防御性能で防げている。
 るり遥が目を白黒させる中で、アストリーゼは立ち上がって前衛へと向かう。
「回復の準備はいいわよね?」
「オーケー、プログラムの準備はできたぜ」
 アストリーゼの問いかけに、デバイスを展開したヴィクティム・ウィンターミュートが答える。彼がプログラムを実行すると、アストリーゼたちが負った傷口は0と1のデータへと変換され、それら負傷がデリートされることで高速治療されていく。
「チッ、増援か……」
「巨悪を打ち砕かんとする時は、囲んで棒で叩くが常道でござるがゆえに!」
「悪逆非道を尽くせばそれを憎む者が集まるのも当然のことですね」
 舌打ちする異端騎士の前に、二人の女が現れる。巨大鎧武者を従えた都築・藍火。そして真の姿を開放して炎を身に纏った蒐集院・閉だ。
「そういうわけで選手交代だ。戦果を独り占めってのはよくねえよな?」
「ここから一気に畳み掛けます。支援と援護をお願いしますね」
 そしてその反対側から逢魔・優希と九十九曲・継宗が異端騎士を挟み込む。異端騎士の退路は、ほぼ断たれていた。
 先遣隊となっていた3人が下がり、後続5人による包囲が徐々に縮小されていく。

「んじゃまあ、逢魔が優希! 推して参ろうかァ!」
 前衛5人の中で最も早くに動いたのは優希だった。彼は長い髪を揺らしながら異端騎士へと突撃する。当然その接近を異端騎士が許そうはずもなく牽制するように剣を振るわれるが、貧民街の出の彼は喧嘩に慣れている。接近に対しての牽制攻撃を読んで急停止、バックステップ。
 胸の前で剣が振り抜かれてからまた前方へと軽やかなステップを踏んで接近。剣の最大威力射程から外れ、徒手空拳でもって超近接戦に挑みかかる。狙うは当然異端騎士の騎乗する馬。その脇腹へと掌底を打ち込む。
「ハッ、さすがにタフみてえだな」
「貴様の打撃など取るに足らん」
 確かに骨を軋ませ内蔵を揺さぶる手応えが掌に帰って来た。が、軍馬に痛打が入ってよろめくも、異端騎士とは生命力を共有すれど痛覚とまではいかなかったようだ。続けて次の拳打へとつなげようとするも、異端騎士によって振るわれた剣の回避でそれも叶わず。
「貴様は後だ」
 言い捨て、異端騎士は馬を駆る。行く先は優希の突撃によって包囲の最も薄くなった部分。
「薄い部分から食い破り、突破するのが包囲された時の常道となる対処法」
 そこにいた継宗は腰に佩いた刀へと手を伸ばし、しかし抜刀にまでは至らない。まるで獲物の隙をうかがう肉食動物のように身を低くし――騎士の方向へと疾走した。
「それは私たちとて知るところです。ゆえに私はこう言いましょう。――かかりましたね」
 敵の刃を紙一重で掻い潜りながら継宗が牙を剥くのは一瞬。騎馬と侍が交錯したその時に、彼の腕は駆動した。鞘から刀を抜き放ち、横へ一閃。
 居合、一迅。
 彼の長い三つ編みが地に降りる時には、馬蹄の音は聞こえなくなっていた。
 馬の四脚ことごとくが、継宗の先の一閃によって両断されていたのだ。
「保身のために敵に降るだけならばともかく、かつての話であれ守るべきだった人々に手を掛けるなど言語道断。未だ侍ならざる私であっても、その行いは西洋の侍たる騎士の道に反するものだと容易にわかります」
 残心を取る継宗が、黒い影となって消え去る乗騎と、そこから落馬させられた異端騎士を見据えながら言う。「戈を止めると書いて武」と言ったのは誰であったか。人を殺すのが武力であったとしても、殺めるべきのみを殺め、さにあらずんば戈を収めるのが道理というものだ。異端騎士は戈を収めなかった。であらば異端騎士が振るうものは侍、騎士のような武人たちが振るう武力ではなく、それは単なる暴力だ。武力を用いることなく暴力を振るう彼はすでに騎士ではない。
「黙れ、知った風な口をきくなァッ!」
 異端騎士は生き残ることへの妄執を兜から覗くその目に宿し、剣を振り回す。剣先から出される衝撃波の強さはまるで彼の胸中で荒れ狂う感情の波濤のようだ。
「やらせはしない……!」
 優希と継宗を庇うように立ったのは、アストリーゼだ。彼女は大剣を盾に、衝撃波の数々をまたしても受け止め、あるいは受け流す。
「くぅっ……!」
「な、なんて無茶を……」
 継宗が庇い立ったアストリーゼを心配するように声を上げる。
「なお邪魔立てするか!」
「ええ、もちろん。――この背に庇った誰かの一撃がお前を殺せたならば、それであたしの勝ちだもの」
 アストリーゼの武技は異端騎士のものと比較すれば分が悪いようにも彼女自身思っていた。ゆえに彼女は盾の役目を務めることが最も効果的であると考えたのだ。
「一人では限界があるもの。仲間と連携しなくちゃね!」
「ああ、お前のその連携で確かに助かった」 
 声は優希のものだ。彼はするりとアストリーゼの脇をすり抜けて異端騎士へとその右拳で殴り掛かる。その右拳は鎧によって弾かれ、しかし彼の続く左拳は――。
「さっき、お前は俺を取るに足らねえっつって侮ったよな?」
 正確に、鎧をも打ち砕く一撃となって異端騎士の胸甲へと叩き込まれる。鉄が割れて、弾け飛ぶ。
「弐撃、ぶちこんだぜ。強いやつに頭下げて貰った力で満足して驕って知ったかぶりゃ、ざまぁねえってなもんだぜ」
 いくら力を与えられようとも、それが自力で会得して鍛え上げてきた力に敵う道理もない。強者に与えられた力で強くなったとしても、与えた強者以上に強くなれることなどないのだ。
「しからば続いて拙者たちが参るでござる!」
「援護を、お願いします」
 巨大鎧武者の上半身、砕天號を連れた藍火と、鉄塊剣と黒剣を手にした閉が突撃する。
 藍火の砕天號が手にした巨槍が異端騎士に突き込まれるが、剣によって受け流される。その隙に閉が二つの剣でもって飛び掛かり攻撃する。鎧が砕かれ、それは確かなダメージになる衝撃を異端騎士の身体へと与えることができた。
「次は貴様らかッ!」
「ええ。とじにはあなたの行為は許しがたいですから」
 振るわれる異形化した剣によって負傷を負いながらも、閉は確実に反撃でもって異端騎士の鎧を砕く。負傷しながらもその攻撃の手は緩まることはなく。身体から吹き出す炎は彼女の流す血をも燃やし尽くして異端騎士の剣へ吸収させない。
 閉はヤドリガミだ。道具であった彼女は人に使われ、人に利用されることに喜びを見出す。だからこそ、他者を利用し他者を犠牲にしてでも生き永らえようとする異端騎士の価値観を彼女は一片たりとも理解できず、また許容できなかった。
「剣によって立つ者、剣によって倒れる。貴殿も年貢の納め時でござる!」
 異端騎士と閉の丁々発止の切り結びに文字通り横槍を入れるのは藍火が操る砕天號だ。タイミングを見て援護するように目にも留まらぬ早業でもって鎧の剥がれた部分を槍で突く。それは効率良くダメージを与え、異端騎士の注意を分散させる。
 彼女は武士だ。武芸百般を目指す身としては異端騎士のような強敵は恰好の勝負相手である。だが、そんな彼女であるがゆえにどことなくこの戦闘を通して異端騎士に歪みのようなものを感じずにはいられなかった。
「生き残ることに心血を捧げるあまりに、それのみが目的となっているのでござるな」
 命を狙う者に対する殺意と、己へ向けられる攻撃への過敏な反応。これらはすべて生存への妄執によるものだと藍火は観た。あるいは狂気と言い換えても良いだろう。そしてこの狂気はもう誰にも止められるものではないことも、彼女は直感的ではあるにせよ理解できた。
「こうなれば……!」
 剣を交わしていた異端騎士が距離を置き、異形化した剣を天へと掲げる。
「……ッ、藍火様!」
「わかってござる!」
 閉が呼びかけ、その全身をユーベルコードによって氷結させることで防御とし、藍火は砕天號に自身を庇わせる。
 異形化した剣が崩れ。それらは血色の薔薇花弁となって、四方八方へと散った。
 ――【フォーリングローゼス】。異端騎士の奥の手だ。
 薔薇となった花弁はまさに花嵐のごとく舞い散り、その花弁の一枚一枚がその範囲に存在する者を執拗に鋭い切れ味でもって攻撃する。



 生き延びたいという気持ちは、ヴィクティム・ウィンターミュートにとって浅からず共感できることだった。彼もストリートの出であり、死に瀕するという経験を様々な形でそう少なくない数経験している。それゆえに彼も生に執着して生きるために色々なことをやってきた。
「けどありゃあ、俺とは違うな」
 花弁の嵐、【フォーリングローゼス】を巻き起こす異端騎士を遠目に観ながら、彼は呟く。あれは悪党としては三流だろう、と。
「くっだらねえヒエラルキーに巻かれやがって、誇りすらもドブに捨てて。真の悪党ってのは誰にも従わねえ」
 花嵐が収まると、前衛たちがそれぞれ防御状態を解く。それに合わせて、ヴィクティムはプログラムを走らせた。
「誇りがあるからこそ俺達は死なねえ、終われねえ、絶望しねえんだ……!」
 前衛たちの負傷がまたもや電脳上のデータとして置き換わり、削除されることで回復される。一気にヴィクティムの電脳へと削除した負傷のデータが流れ込んで来るが、彼はそれを歯を食いしばって全て適切な処理を施していく。処理能力を大きく上回る過剰な情報の濁流は彼の電脳を焼くが、彼はそれらを全て無視する。
「行ってこい英雄。名脇役が、きっちり膳立てしてやるからよ!」



 あるいは最後まで自分の出番はないものかと思ってはいたが。亞東・霧亥は吐息する。
 視線の先には、どこにそんな余力を隠していたのか、新たに召喚した軍馬に乗って今まさに逃走しようとしている異端騎士があった。
 進む方向はこちら側、異端騎士の本拠地へと向かうただ一つの道だ。恐らく、強行突破しようという魂胆であろうことは容易に想像がつく。
「手筈通りに、最後の詰めに入ろうか」
「そうですねぇ。これで仕上げに入りましょうかぁ」
 おっとりとした声でそれに応えるのは、リュシカ・シュテーインだ。
 二人はそれぞれ熱線銃と、巨大スリングを構える。
 射出。霧亥の熱線銃からビームが放たれ、リュシカのスリングから放たれた法石が炎上して火球と化す。
 生へしがみつく異端騎士は巧みに馬を操り、右へ避け、左に避ける。
 ――それが罠だとも知らずに。
 馬蹄が地面を踏み抜く。否、あれは地面ではなく――ユーベルコードによって巧妙に隠され仕掛けられた落とし穴だ。
 馬に乗ったまま、異端騎士は真っ逆さまに10mほどの深さにもなる穴へと落ちた。
「懺悔は済ませたか?」
 ブラスターを担ぎ、霧亥は穴へと歩いていく。
「親玉のヴァンパイアにお祈りは?」
 彼は落とし穴へ到着すると、それを覗き込む。あまりにも憐れなオブリビオンが、下から地上を見上げていた。
「穴の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?」
「た……助けてくれ、俺はただ、助かりたくて……」
 砕けた兜から涙目になりながらも哀れを装い媚びを売る彼は――あまりにも醜悪だった。
「いいや、駄目だね」
 霧亥はトリガーを引く。熱線銃のレーザーが、異端騎士を貫く。
「ええ、あなたは許されざる行為を積み重ね、生への執着に呪われすぎた。――ここで死ぬべきです」
 後に続いて、リュシカが穴の中の異端騎士を見下す。彼女の口調は常の間延びしたものではなく、はっきりとしたものになっていた。それほどに彼女にとって、この異端騎士は許せない存在なのだろう。
 彼女は法石鞄から新たにいくつか、爆炎の法石を取り出して、それを穴の中に放り込む。
 穴の中で爆発と、炎の音と、そして哀れな男の断末魔の叫びが上がった。
「……さぁ、火を恐れなさい。あなたはその火に滅されるのですから」

 ――生に執着し、本来守るべき無辜の民たちを焼き殺そうと企てた異端の騎士。
 ――彼の悪意はそのことごとくを猟兵たちによって防がれ。
 ――そして彼は民を焼こうとした炎でもって、しがみついた生を手放した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月15日


挿絵イラスト