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アンタークティカ・アドベンチャー

#UDCアース #南極遺跡 #魚怪類 #サメ

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#南極遺跡
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●地球の果てへ
 ――南極大陸。
 場所によっては2000m以上の厚みを持つ氷の大陸である。その内陸部ともなれば、平均気温が零下50度を下回る事もあるとか。
 地球と呼ばれる星において、極寒の地域に数えられる1つだ。
「どうもね。そこにあるらしいんだ。UDC怪物が築いたと思しき『古代遺跡』が」
 集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は明らかに目を輝かせて話を切り出した。
「UDC――防衛組織の方から依頼が入ったのさ。専門の研究者を遺跡調査に南極へ派遣するから、護衛として同行して欲しいってね」
 怪物絡みの遺跡とあって、UDC組織は早速調査に乗り出した。
「いいじゃないか、古代遺跡。私も行きたいくらいだよ」
 どうやらこのエルフ、古代遺跡と言う単語に心躍ってるらしい。
 閑話休題。
 現地でやるべき事は、概ね3つだ。
 まずは研究者と共に古代遺跡の入り口を見つける事。
 次に、遺跡内部で研究者が調査に集中できるようにする事。
 最後に、生きて帰る事。
「遺跡内部の事は予知でも視えなかったんだけどね。UDC怪物が築いた遺跡の中なら、何も起きないという事はないだろうさ」
 UDCの襲撃は、充分に予想出来る。
「組織だって、UDCに襲われる可能性は考えている。研究者は耐冷耐狂装甲服『ヒートアーマー』なるものを装備して行くそうだけどね」
 装甲服と言うだけあって、ちょっとやそっとのひどい目にあっても着用者が死なない程度の耐久性はある。
 その耐久性を得る代わりに犠牲になっているのが、動き易さ。
 つまりは鈍重で窮屈。耐えるための装備であって、戦闘用ではない。
 そもそも研究者であって、戦闘要員ではないのだ。ユーベルコードを使えるわけでもなし。装甲服の耐久性の限界が、研究者の死に繋がる。
「ま、流石にサメが出てくるとなると相手が悪いと言わざるを得ないよ」
 ――サメ?
「予知で視えたんだよ。巨大なサメがヒートアーマーごと人を丸呑みにする光景がね。あの世界のサメって、本当に何処にでも出るんだね?」
 つまり猟兵が護衛に就くのが適任という訳だ。

●研究者と共に
 ――バラバラバラバラ。
 ローター音を響かせ、ヘリが南極大陸から遠ざかっていく。
 氷の大地に残ったのは、ヘリから降りた研究者1人。
 だが、その顔はあまりはっきりとは見えない。
 球体状の分厚いガラスか何かの向こうにあるのだ。その全身は、ずんぐりとしたこれまた分厚い素材で覆われている。
 それが、耐冷耐狂装甲服『ヒートアーマー』なのだろうが――別の単語を知る猟兵であれば、迷わずそれを連想したであろう。
『やあ、君たちが護衛の人達ね?』
 ひょこひょこと左右に揺れながら歩いてくる姿は、宇宙服そっくりだ。
『私はアクーラ。アクーラ・ミロネンコ。クーラと呼んでちょうだい』
 くぐもった声を発するマスクの中に、銀髪が見える。
 アクーラ・ミロネンコ。24歳。女性。若き考古学者としての顔も持っている、シベリア生まれのロシア人UDC研究者である。遺跡大好き。
『それじゃあ、今日はよろしく。遺跡はエルスワース山脈の方に――』
 ヒュゴォォォォ――。
 あっち、とアクーラが指した方向は絶賛ホワイトアウト中。
『さ、早速南極の洗礼ね! でも大丈夫。このヒートアーマー、吹雪くらいは耐えられる筈だから!』
 なお、今回の南極行。最優先とされているのは『遺跡調査の結果を誰かが持ち帰る』ことであり、アクーラの生還ではない。
『それじゃあ、お互い生きて帰れるように頑張りましょう』
 吹雪に向かってひょこひょこ歩き出しているアクーラは、それを承知の上で自ら志願したとの事である。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。
 OPを書いている時点では、まだ時々暑い日もあります。
 残暑にUDCアースの南極調査、如何でしょう。

 1章は、冒険です。アクーラと共に南極遺跡の入口を探して下さい。
 2章、3章は少々特殊な条件の戦闘パートになります。
 それぞれの条件は章開始時に詳細を記載します。

 全編に渡って、研究者、アクーラ・ミロネンコが同行しています。
 護衛対象となります。
 宇宙服のような耐冷耐狂装甲服『ヒートアーマー』を着用しており、南極の寒さは耐えられます。少々ひどい目にあっても死にはしません。
 ただし戦えません。
 死ぬ時は死にます。
 発狂する時は発狂します。
 彼女の生還は、必須ではありません。不幸な結果になってしまう可能性はゼロではありません。皆様のプレイング次第です。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 冒険 『南極遺跡調査』

POW   :    荷運びやUDC職員の護衛を行い、調査の安全を確保する

SPD   :    先行偵察や後方の警戒を行い、危険に備える

WIZ   :    UDC職員と共に遺跡周辺を調査し、入口となる場所を探す

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒玻璃・ミコ
※美少女形態

◆心情
異形の神話が伝えられる地、南極調査ですか
情報収集も大切ですが、優秀な研究者も大切ですからね
出来る範囲でアクーラさんのフォローもしましょう

◆行動
【黒竜の遊戯】でさくさく荷運びや設営をしましょうか

私の【世界知識】では南極は火星と同じ位に過酷なのですよ
風で巨大な車両も横転するほどですからね
事故が起きない様に【拠点防御】の知識と【地形の利用】した移動をしましょう
クレバスも怖いですから【視力】の良いお目々で地面も要確認ですね

なまじロシア生まれのせいかアクーラさんは積極的に動きそうなのですよねー
基本傍に居て危険な時は【念動力】で引き寄せましょう

◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK


カネリ・カルティエ
ふふ、遺跡と聞いたら行くしかありませんね。命懸けで探索を行うクーラ君に対して敬意を払い【礼儀作法】で対応します。
また万が一の為に【かばう】で【呪詛耐性】【カウンター】を発動。

SF世界出身なので、事前に南極に関する文献、クーラ君のレポート等を拝読しておきたいですね。【世界知識・学習力】

【UDC召喚】にて巨大な白熊のUDCを召喚。
我々の吹雪避けの壁として。
また、クーラ君の意見を聞きながら怪しいヵ所の雪掘りを指示。
(ランダム召喚なので失敗した場合はお任せ)

可能であれば【導き鳥のお守り】で調査補助。【追跡・失せ物探し】

入り口が固く閉ざされている場合は【封印を解く】または【鍵開け】を使用。


ロウガ・イスルギ
連携・アドリブ歓迎

防具の【氷結耐性】が低温対策になればいいがな・・・・・・

護衛対象の学者さンには一応挨拶しとくか、全力で護るつもりだが
飽くまで仕事だ。必要以上にベタベタしたりちやほやする気はないのは
表明しとこう。
俺は騎士じゃない、傭兵だからな。

まずは先行しての偵察に付くとしよう
「不空羂索」にて複製したグレイプニルを操作
念力の届く限りの空中・雪中の広範囲に亘り不審者不審物を警戒。
入口を発見したら現場を確保する物とする
視覚に頼らないので吹雪の中でも操作可能!のはず!!

何にしろ入口を発見したなら総員で遺跡突入だ。
「さーて、大きい葛籠かパンドラの匣か・・・・・・何が出るのか
愉しみだ。忌々しい程、な」


ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動

古代遺跡、ですか・・・確かにこれが何か邪神に関する遺跡だった場合、調べる価値は十分にありますね。UDCが熱心に調査を行うのも頷けます。
最悪、調査結果を持ち帰るのが最低目標ではありますが・・・ある意味、そういった事態に陥るのを防ぐ為にも、我々が護衛に就いていると言えますね。

とりあえず、UDC職員達の護衛に就きつつ、遺跡入口の捜索及び周囲の状況の把握に努めます。UCの夜鬼を使用して遺跡の周囲の捜索を実行。猛吹雪で視界が悪いとはいえ、上空からの視点は調査の一助になる筈です。
また、時間があったらミロネンコさんにこの遺跡に関して、詳細な話を(雑さん交えつつ)伺ってみます。


ガーネット・グレイローズ
さ、寒い……
ここが南極か。本当にこんな所にUDC関係の遺跡があるのか?

私は、先行して偵察と後方の警戒活動を行って危険に備えよう。
着用しているスーツとマントには<冷気耐性>があるので、ヒートアーマーは不要だぞ。ただ、靴は滑らないのを貸して欲しい。
そもそも私は普段宇宙で活動しているのだ。この程度の寒さには……慣れっこだ。
しかしホワイトアウトで方向感覚が狂いそうだ、<第六感>を研ぎ澄まさなければ。

仲間との合流・集合には【闇夜の住人】を使用、瞬間移動で時間を短縮する。
アクーラの安全が最優先。移動がつらいなら、<念動力>で歩行を補助しよう。
「大丈夫、私達があなたを守る(シャキサクした宇宙食を差し出し)」


灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員として緊密に連携

相応の覚悟があるとはいえ志願した想いにはこちらも
しっかり応じて上げたいところですね

事前に人数分の冬季迷彩の極地防寒具と
発炎筒・ザイル等の極地装備を準備

捜索を開始したら団長やミロネンコさん達の捜索本隊より
少し先行し進行方向及び周囲を偵察。氷上の大きな傷・足跡、
亀裂、ストームが無いか警戒なるべく安全な氷上を進めるように
ハンドサイン・無線で誘導

同時に襲撃を警戒し一定間隔で指定UCで全員の視覚情報と
自分達に対して敵意を持って視線を向けている生物が居ないかの確認と
ホワイトアウト区域は装備の暗視・サーマルの機能で熱源探査して安全を
確保するよう行動します

(アドリブ・絡み歓迎)


メンカル・プルモーサ
【SIRD】のメンバーと共に行動。
んー…調査に時間どれだけ掛かるか判らないから拠点を作るね…
【旅人招く御伽宿】を発動。手近な雪と風を凌げそうな場所に扉型の魔法陣を設置して入り口とするよ…
…中と外の通信は厳しいけれども、中での休憩は出来るから利用してね…アクーラにしても、他の職員にしてもずっとヒートアーマー着てるのは辛いだろうし…
…私の寒さは【彩り失う五色の魔】での氷結耐性で寒さを軽減…【夜飛び唄うは虎鶫】を召喚して広範囲に散らばらせて遺跡の入り口の探索と地形調査だね…
ガジェットから貰う地形情報をまとめていって遺跡がありそうな場所はないかアクーラに確認するよ…


ミハイル・グレヴィッチ
【SIRD】の面々と共に行動。

南極、ね。いかにも地の果てまで来た、って光景だな。
こんな辺鄙な場所にわざわざ遺跡作るってぇのは、人目を避ける為か、元の環境が全然違ったのか、はたまたただ単に寒い場所が目当てだったのか。ま、邪神の考えるこたぁワカランね。

とりあえず荷運びでもしながら調査隊にくっついて行動。
団長や他のSIRDのメンバーと連絡を取り合って、状況を常に把握。

ミロネンコ、っつーたか?奇遇だね、俺もロシア生まれで、シベリアのクラスノヤルスク出身だ。
そのまま他愛のない会話しつつ、同時に護衛役を務める。この手の学者センセーってのは、目的の為に結構無茶なコトし出かすからな。用心に越したコトはねぇぜ。


真守・有栖
南極。古代遺跡。鮫。そして、狼。
心躍るしゅちゅえーしょんだわ。わっふわふね!

えぇ、吹雪も遺跡も何のその。極狼たる私にお任せあれっ

ふふん。今日の私は最初っから狼よ!
しっぽと同じく、ふわっふわでわっふわふな毛並み。
これだけもふもふしてるんですもの。寒さも吹雪もへっちゃらよ!
北極で暮らす狼がいるんですもの。他の狼にできて、銀狼たるこの私にできぬはずがないわ。…………たぶんっ

……とっっってもびゅーびゅーでまっしろ。猛吹雪だわ!?

けれども。此処で臆せば狼が廃るわ。前進あるのみ、よ!
くーらと荷物を載せる犬そり……ならぬ狼そりを用意したわ。
わっふら、ふらふら。一生懸命にそりを曳いて、いざ古代遺跡へ!!!


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】

UDCエージェントとしては至極まっとうな仕事が来たものだネ
クーラさんはよろしく
耐狂装甲?
研究者さんは精神汚染系のUDCが内部に存在すると予想しているのかしら
ソヨゴも僕があげた服を用意していた方がいい
僕はもう汚染されているようなものだから平気
ウロボロスをにょろりと見せて

何かあればウロボロスで対応できるけど
できる限り危険は避けたいネ

ペンギンがいたら目を奪われそうだけど
プロなので後回しにしよう、うん
全部無事に終わったらぜひいっしょにペンギンを見に行こう
とソヨゴに笑いかけ

氷で覆われていても電脳ゴーグルで分析すれば入口の手掛かりは見つけられるかも
クーラと協力して見つけ出そう


城島・冬青
・アヤネさん(f00432)と

南極は寒い…を通り越してますね
クーラさんは宜しくお願いします
しっかり護衛しますよ
UDC関連の専門用語はちょっとわからないなぁ
あ、服は着ますね

氷河の裂け目…クレバスというんでしたっけ
落ちないように注意して歩きましょう
第六感で危ないところは避けますよ
とはいえ慣れない装備なので足を滑らせることもあるかもしれません
まぁその時はアヤネさんが触手でなんとかしてくれるでしょう!

アヤネさん
ペンギンは私も見たいですが先ずは遺跡の入口探しです
仕事の後ならば喜んで!

しかしこれだけ白銀の世界だとどこに入口があるかわかりませんね
クーラさんの指示を仰ぎあちこち調べます
氷が邪魔ならUCでどかす


鵜飼・章
リュカさんと…

ロシアの人はすごいなあ
千葉県民にはとてもできない
僕も生物学的には人間なんだ
防寒具を着てもすごく寒い
ねえリュカさん帰ろ?
あっ駄目だ瞳が輝いてる

謎のサメや遺跡に興味がない訳ないけど…
せめて吹雪をどうにか出来ないかな
そうだこんな時こそカブトムシだ
UC【確証バイアス】を使い風避けや除雪作業
危険そうな場所への先行等をしリュカさんと協力
…今遊ぶって言った?
子供は風の子だなあ
大丈夫、カブトムシがいる限りここは夏…

後は獣奏器で南極の動物達を呼んでみる
ペンギンやアザラシが来たらアクーラさんも喜んでくれるかな?
【動物と話す/コミュ力】を使って
自然のものではない地形や物体に心当たりがないか聞いてみるね


雨咲・ケイ
氷に閉ざされた古代遺跡……。
ルシルさんでなくても興味深いですね。
オブリビオンが絡んでこなければ
浪漫に浸れそうなのですが……。

【WIZ】で行動します。

調査といっても私もその辺は素人ですからね……。
アクーラさんの情報と指示に従いつつ
【第六感】に頼って当たりをつけ、
【地形の利用】を活用し迅速に行動していきましょう。
調査中は常に周囲を警戒し、オブリビオンや
不審な姿(こんな所に雪男なんていませんよね)等を
発見したら【影の追跡者の召喚】を使用して
追跡させます。

アドリブ歓迎です。


黒天・夜久
【SPD】
優先順位は了解しましたが…。できる限り人死には出したくないものですね。

先行偵察と経路の安全確認を担いましょう。
【空中戦】による足場で足元の安定を確保しつつ、「杖剣ハロエリス」を雪原に突き刺して積雪の深さをチェック。深そうであれば【属性攻撃】(氷)で雪を氷にしましょう。いくら冷気が堪えないからと言っても、動きにくいのはごめんでしょうし。
強化した【視力】で周囲に不審な動体がいないかも確認します。

誰かに触れる時は気を付けた方がよさそうでしょうかね。表面温度の差でくっつくのは、ちょっと…。


リュカ・エンキアンサス
章お兄さん(f03255)と
南極…南極の、冒険

……
章お兄さん、そんな顔しないで
仕事である限りは、ちゃんとする
研究者の人も、章お兄さんが頑張って、護るよ

そんなことを言いながらも、きちんとアクーラお姉さんのことは視界の端に入れながらも活動開始
先行して危険がないか調査して、可能な限り排除する
世界知識で南極と同じ気候条件や地形を照らし合わせて、違うところがあれば注意するし、第六感が危なそうっていう所には近寄らない
地形を利用して通りやすそうなところを探す

後はあちこち首突っ込んで目で見て確認して遊…やるしかないね
細かいところは章お兄さんに詰めてもらおう

(好奇心赴くままにあちこち覗きますが、行動は慎重です



●南極の洗礼
 ヒュゴォォォォ――。
 吹雪いている。
 南極、めっちゃ吹雪いている。
「古代遺跡調査か。UDCエージェントとしては至極まっとうな仕事が来たものだネ」
「これがまっとうなんですか? 南極は寒い……を通り越してますよ!?」
 あっさりとこの状況を受け入れたアヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)の隣で、城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)が目を丸くする。
 両親共にUDC組織の関係者であるアヤネと、小説家と古本屋の間に生まれた冬青とで、場馴れに差が出ても仕方のないことである。
 と言うか、この吹雪。
 猟兵であっても、ちょっと二の足を踏みかねない吹雪だった。
(「とっっってもびゅーびゅーでまっしろ。猛吹雪だわ!?」)
 その証拠に、狼に変身済みの真守・有栖(月喰の巫女・f15177)のふさふさ尻尾も知らず知らずにしゅーんと下がってしまっている。
「さ、寒い……ここが南極か」
 ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)も、南極の極低温に思わず身体を縮こませていた。
 別段、二人が寒さに弱いというわけではない。
 むしろ、どちらかと言えば寒さに強い方であろう。
 狼となった有栖の身体は、ふわっふわでわっふわふな毛並みに覆われている。暖かくない筈がない。(だからこそいきなり狼で登場しているわけだ)
 ガーネットだって、普段は宇宙で活動している。宇宙空間は絶対零度に等しい世界。寒さには強い方の筈である。
 それでも寒いと感じてしまうのは、視覚的な面もあるだろう。
「いかにも地の果てまで来た、って光景だな」
 ミハイル・グレヴィッチ(スェールイ・ヴォルク・f04316)が、そう評する雪と氷しか無い南極の景色は、目にも寒すぎるのだ。
「我が護りよ、削れ、防げ。汝は喪失、汝は絶壁。魔女が望むは五色届かぬ防魔の理」
 ミハイルのすぐ後ろで、同じ組織に所属しているメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が、銀の杖を掲げて何やら唱えていた。
 メンカルの身体が光に覆われ――すぐに、その光が消える。
「ふぅ……やっと身体の震えが止まった。さすが、人類の生存圏外」
 今のは、5種の耐性を一気に高めるメンカルの業である。眠たげな表情は使用前後で変わらないが、相当に寒かったようだ。
「防寒具を着てもすごく寒い。ねえリュカさん帰ろ?」
 首元をしっかり覆った真っ黒なマフラーでは太刀打ち出来ないその寒さに、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)のやる気も、既にちょっと減りつつあった。
「南極……南極の、冒険」
 まあ帰る気ゼロな感じで目を輝かせているリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)の様な猟兵もいるのだけれど。
「あっ、駄目だ。瞳が輝いてる」
「そんな顔しないで」
 目を伏せる章の肩を、リュカがぽむと叩く。
「これも仕事。やるしかないよ。研究者の人も章お兄さんが、頑張って護って」
「うん。リュカさん。さらっと人に押し付けるのはやめ――って、あれ?」
 章がふと気づいた時には、宇宙服――もとい、ヒートアーマーの姿が、さっきまでいた所からいなくなっていた。
「アクーラお姉さんなら、あっち」
 とリュカが指差したのは、ヒュゴォォォと吹雪いている手前。
「護衛対象が、1人で突っ込むンじゃない!」
「ほんと、この手の学者センセーってのは、結構無茶なコトし出かすよな」
『すみません……』
 気づいたロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)と、ミハイルによって、宇宙服みたいなヒートアーマーが引きずり戻されていた。

「いやー、思った以上に積極的に動く方なのですねー」
 ある意味、予想通りだったアクーラのアグレッシブさに、黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)が小さくため息を吐く。
「先に言っておくべきではあったがな。護衛される側は、護衛する側から離れるな!」
『すみません、つい気が逸って……』
 その後ろでは、正座した(させられた)アクーラが、ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)に怒られていた。
「離れていたら、護れるものも護れン」
 ロウガの白虎顔と鋭い目つきで、アクーラはヒートアーマーの中ですっかり小さくなっているが、ロウガはそれほど怒っている訳ではない。
 単に、ロウガは飽くまで仕事として護衛するだけであり、必要以上にベタベタしたりちやほやする気が無いというスタンスでいるだけだ。
「仕事は仕事だ。全力で護る。だが俺は騎士じゃない、傭兵だ。雇い主であれ、必要だと思った事は言わせて貰う」
『それはもう、随時言っていただいて構いませんので……』
 立場を明確にしておこうとロウガが告げた言葉に、アクーラは増々小さくなる。
「ふふ、遺跡があると聞いたら、行くしかありませんよね。判りますとも」
 その声にアクーラが振り返ると、魔術自然とした黒ローブ姿が立っていた。
「はじめまして。カネリ・カルティエと申します」
 アクーラの前に進み出たカネリ・カルティエ(ブラックタールの探索者・f10978)が、軽く頭を下げる。
 命懸けの探索に自ら赴くアクーラに、カネリは少なからず敬意を抱いていた。
「クーラ君の以前のレポート読みましたよ。フィールドワークは経験あるようですが、此処までの局地は初めてだそうですね」
『それは……はい。有史以来、南極って人類の生存圏外だと思われてますから』
 事前に資料に目を通してきたカネリの言葉に、マスクの中でアクーラが頷く。
「そうね。それだけ過酷なの判ってるなら、あれはやめておきましょう」
 あれ、とミコが指差したのは、アクーラが自分で運ぼうとしていたソリ。上には幾つかのジュラルミンケースが、ごちゃっと積まれている。
 中身のほとんどは、遺跡調査に使う機材だという。
「私の知る限り、南極は火星と同じ位に過酷なのですよ。特に風。風で巨大な雪上車も横転するほどですからね」
『え!? そんななの!? 火星は知らないけど!?』
 ミコの例えに、アクーラが目を丸くする。
 様々な世界を渡る猟兵の世界知識は、UDCアースでも時として現地人の知識を上回る事はままある事である。
「情報収集も大切ですが、優秀な研究者も大切ですからね。私達に任せて下さい」
『良いんでしょうか……私の機材なのに』
 任せろと言うミコに、アクーラは素直に頷けない。
「異形の神話が伝えられる地に来ることが、アクーラさんの目的ではないでしょう? 遺跡を探すんでしょう?」
『此処での恩を、私は返せないかも知れないんですよ?』
 アクーラがミコの提案にすぐ頷けない1つが、自身の生還が絶対条件ではないが故。
「まあ、そう気負わずとも大丈夫ですよ」
 そんなアクーラに声をかけたのは、ネリッサ・ハーディ(クローク・アンド・ダガー・f03206)である。
「最低目標は理解しています。その上で、ある意味、そういった事態に陥るのを防ぐ為にも、我々が護衛に就いていると言えますから」
 この旅を片道切符にする気は無いと、ネリッサは告げる。
「少なくとも、私とSIRDはそのつもりですよ」
 SIRD――特務情報調査局(Specialservice Information Research Department)。ネリッサが立ち上げた組織には、ミハイルとメンカルも所属している。
 もう1人、極地装備を詰めたリュックから必要なものを取り出している灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)も、同所属だ。
 そしてネリッサ以外の3人も、護衛に就く意味については、同じ気持ちであった。
「調査の方は私は素人ですからね」
 雨咲・ケイ(人間のクレリック・f00882)も、迷うアクーラに声をかける。
「その時になれば、指示に従いますよ。だから、道中はむしろ頼ってください」
『わ、判りました』
 ケイにも促され、とうとうアクーラも折れる。
 全ての荷も猟兵達が受け持つ事が決まれば、あとは進む隊列を決めるのに、さして時間は掛からなかった。

●先行部隊
「偉大なる深淵の主の下僕よ、我が召喚に答えよ」
 ネリッサの唱えた言葉に応じて、漆黒が姿を表す。
 それは角と悪魔の様な翼を持つヒト型の何か。その顔には一切のパーツがなく、一面が黒に覆われている。所謂のっぺらぼう状態。
 サモニング・オブ・ナイトゴーント。
 ネリッサのユーベルコードで喚ばれた夜鬼――ナイトゴーントと呼ばれる者は、背中の翼を広げると上空へと飛んでいった。
「では団長。私は先行しますね」
「ええ、よろしく」
 ネリッサの夜鬼が吹雪の向こうに消えるのを見やり、【SIRD】所属の灯璃が大きなリュックを背負う。
 中身は発炎筒やザイルと言った極地装備の数々だ。
 ゴーグルを降ろした灯璃は、迷いの無い足取りで吹雪の中へ踏み込んでいった。
「視界不良。ですが全く見えないわけではありません」
 早速ゴーグルに付いた雪を拭い落とし、灯璃は空を見上げる。
 吹雪の向こうに、翼を広げた黒い影が見えた。
「聞こえますか、団長。ナイトゴーント、確認出来ました」
「了解。上も吹雪いていますが――ナイトゴーントからも灯璃を確認出来ました。これならば調査の一助になりましょう」
 共有したナイトゴーントの視界で吹雪の中の灯璃を確認し、ネリッサが通信を返す。
 灯璃からも強化型暗視鏡『GPNVG-42 "Nachtaktivitaet.Ⅱ"』を着けたことで、吹雪の中でも何とか視界を確保出来ていた。
 これならば、通信が使えなくてもナイトゴーントを通して、ネリッサと灯璃の間で状況を伝える事が出来るだろう。
(「志願した想いには、こちらもしっかり応じて上げたいところですね」)
 冷たい空気を吸わぬよう胸中で呟いて、灯璃は周囲に目を配る。
 探すのは氷上に残る傷跡や、足跡。
 遺跡の外で活動しているUDCがいないとも限らない。
 或いは自然に起きた氷の亀裂も驚異だ。
 クレバスは深さと形状によっては、抜け出すのは猟兵でも容易ではないだろうから。

(「この吹雪、止む気配がないですね」)
 足元を気にしているのは、黒天・夜久(ふらり漂う黒海月・f16951)もだ。
 数m先も見えないホワイトアウトっぷりにも夜久の表情は変わっていなかったが、この状況は憂慮していた。
 吹雪ということはつまり、雪が積もるということだ。
 それも、凄い勢いで。
「…………」
 サクサクと固い雪を踏みしめながら、夜久が取り出すのは杖剣ハロエリス。
 その石突を足元にずぶりと刺してみれば、刃になっている部分の半ばまで刺さったところで、コツンと硬いものにぶつかった。
 雪の下に隠れた氷床だろう。或いは岩盤か。
「凍れ」
 淡々と、夜久が短く告げる。
 ハロエリスを通じて、氷の魔力が雪へと浸透していく。
 属性攻撃の応用で、雪を凍らせようというのだ。
 元々氷の粒である雪を凍らせたところで、雪がより強固に凍って硬くなるだけだ。もしもその下にクレバスがあっても、雪が凍っていれば落ちるリスクは大きく軽減される。
「こんなところですね――」
 立ち上がった夜久が、膝に付いた雪を片手で払う。
 反対の掌には、霜で白くなったハロエリスが貼り付いていた。氷の魔力を通した事で総金属製の表面も相当に冷たくなり、僅かな空気中の水分を霜と変えてしまったか。
(「ま、この程度なら、後で生やし直せば済むことです」)
 ブラックタールである夜久に取って、人の形はそこまで固執するものではない。必要なものは生やせばいいのだ。
(「できる限り人死には出したくないものです」)
 その為なら、多少自分が手足と生やしているものが凍る程度、どうという事はない。
(「誰かに触れる時は、気を付けた方がよさそうですね」)
 胸中で呟いて、夜久はハロエリスをそのままに進んでいった。

 ヒュン! ヒュン!
 吹雪とは違う、風を切る音が鳴り響き続けている。
 音の正体はグレイプニル。
 とある神話に於いて、神をも縛る縄と同じ名を冠したワイヤーフックが、ロウガの周囲に幾つも浮かんで、全てバラバラに動いていた。
「裁きの対象は未だ見えないが――さりとて、こいつが『救いの手』になるか?」
 不空羂索――複製した40個のグレイプニルをロウガは念動力でバラバラに操り、吹雪の中へと伸ばすことで探索していた。
 2人が直線ルートを警戒するのなら、ロウガの警戒範囲は周囲である。
 全てを個別に念力操作していると言う事は、ロウガ自身はそれらが其処にある、と把握出来ているのだから。
 つまり、ロウガと40のグレイプニルは精神的に繋がっている。
 念力の最大範囲まで広げてグレイプニルを操れば、それは視覚に頼らない、広い索敵網となり得る。
「この吹雪の中では、視覚だけに頼っていては不審なものの発見も遅れるからな」
 今のところは空振りしてばかりだが、何事も起きないのならば、それに越したことはない。氷の上を歩くロウガの周囲に、風切り音は鳴り続ける。

●本隊
 3名の先行に続いて、アクーラを含む本隊である。
「吹雪は敵です」
 己と世界に言い聞かせるように、カネリが告げる。
「さて、どなたが呼び掛けに応えてくださるでしょうか――UDC召喚」
 ほとばしる魔力でカネリの黒いローブがはためく。
 次の瞬間、巨大な白熊UDCがカネリの隣に現れた。
「よしよし。思った通りのUDCが喚べましたね。頼みますよ。此処は北極じゃないけど」
 ホッキョクグマと比較しても大きな白熊UDCの上に、カネリはよじ登った。

「とても寒い。せめて吹雪をどうにかしたい。こんな時こそカブトムシだ」
「うん。どうにか出来たら、いい――カブトムシ?」
 アルビレオを整備しながら相槌を打っていたリュカが、淡々と章が呟く中に南極らしからぬ単語を聞いて、思わず聞き返す。
「そう。カブトムシは強くてかっこいいので最強かつ無敵。この前提は揺るがない――確証バイアス」
 章の想像から想像された、(章主観で)すごくかっこいい巨大カブトムシが、吹雪く南極の中に忽然と現れた。
「カブトムシがいる限りここは夏……」
 ひらりと飛び乗った章を、夏の暖かさが迎える。そうと想像して創造したからこそ、極めて狭い範囲ながら、カブトムシの周囲は夏であった。
「やっぱり、アクーラお姉さんは章お兄さんが頑張って、護るべき。俺はその分、遺跡探す冒険を頑張るから」
 マフラーを解く章をちょっと羨ましそうに見上げ、リュカはそう告げた。

「いあいあはすたあ……拘束制御術式解放」
 ゆらり――1つに纏めたミコの灰色の髪が、風とは違う動きに揺れる。
「黒き混沌より目覚めなさい、第玖の竜よ!」
 ミコが告げた次の瞬間、アクーラの荷物が浮かび上がった。
 正確に言うならば、荷物は浮かび上がったのではなく、ミコの力で持ち上げられたのだ。目には見えない屠竜の魔女に宿る魔力によって。
『は、はぁ……まさか手を触れずに持ち上げる力があるなんて』
 アクーラは、ミコが手で荷物を持つと思って、躊躇ったのかも知れない。今のミコの姿は、細身の美少女然としているからだ。
『皆さんすごいですね』
 白熊が出たりカブトムシが出たり、重さを感じさせず荷物が浮かんだり。
「さあ。これでソリは空きましたよ。どうぞどうぞ」
 猟兵が次々と見せた奇跡の所業に呆気に取られた様子のアクーラを、ミコがソリの上に着座させる。
 荷物固定用のベルトが、アクーラのヒートアーマーをソリにガッチリ固定した。

『けれど、皆様薄着が多いですが……大丈夫ですか? ヒートアーマーは1つしかありませんが……』
「構わない。私の着用しているスーツとマントは、見た目よりも寒さに強いものだ」
 ヒートアーマーの中から不安そうな声を上げるアクーラに、ガーネットが告げる。
「急なことで足元は不安だったがな。アイゼンを借りられて、助かったよ」
 ガーネットの靴底には、着脱式のスパイクのようなものが付けられていた。雪山必須アイテムの1つである。
「うむ。よし。殿は私が努めよう」
 その踏み心地を確かめると、ガーネットは行軍の最後に就くのを申し出た。
「いざとなれば、すぐに追いつける」
 どれだけ距離があっても追いつける術を、ガーネットは持っているのだ。

「わぉぉぉぉん!」
 南極に、相変わらず何処か調子のずれた遠吠えが上がる。
 吠えた狼――有栖は、ソリの先に繋がれていた。自らこれを望んだのだ。
「わぉぉぉぉん!」
 再び、遠吠え。有栖は極狼たる私にお任せあれっ、と言っているらしい。
 つまり、犬ぞりならぬ狼ぞりである。
 夜久が雪を凍らせたのは、後続がソリを使うと聞いていたからだ。積もったばかりの雪よりはソリが滑るし、クレバスを埋めておくのはリスク回避にもなる。
 それでも、ソリを曳くのは楽ではないだろう。
 何故、有栖がこんな役を買って出ているかと言うと、彼女は知ってしまったのだ。この世界に生きる狼の事を。
(「北極で暮らす狼がいるんですもの。他の狼にできて、銀狼たるこの私にできぬはずがないわ。…………たぶんっ」)
 そんな自分でもちょっぴり不安がある自信を胸に、もっふりな白銀狼の有栖はソリを曳いて駆け出した。
 なお、ホッキョクオオカミの事であれば、北極圏に生息しているだけで、北極大陸自体に生息は確認されていなかった筈だが――誰もそこは触れなかった。
 最初っから狼の有栖の心境を、知る由も無いのである。

●氷上進行
 シャーッ。
 氷を削る音は吹雪の風に消されながら、有栖に曳かれてソリが氷を滑っていく。
 夜久が雪を凍らせたのは、後続がソリを使うと聞いていたからだ。積もったばかりの雪よりはソリが滑るし、クレバスを埋めておくのはリスク回避にもなる。
 有栖とソリの間には、アルビレオに乗ったリュカが走っていた。
「アクーラお姉さん、そこ少し、段差あるから気をつけて」
『わ、わかりました!』
 ソリとはつかず離れずの位置を保ちつつ、リュカは世界知識で得た南極の地形との相違や違和感がないかを確かめたり、第六感で気づいたちょっとした地形の変化を後ろのアクーラに都度告げる様にしていた。
 アクーラの周りに猟兵達が名々固めているので、リュカの声は誰かには聞こえる。
 特にアクーラの両脇は、カネリの白熊と章のカブトムシが固めている。
 もしもリュカの警告が間に合わなかったり、見落としがあってソリが横転しても、どちらかが受け止められるようになっていた。
 まあ、ものすごいシュールな絵面だけど。白熊もカブトムシも本来、南極にはいない筈の生物であるのだけど。
「いやぁ、ロシアの人はすごいなぁ」
 そのカブトムシの上に仁王立ちして、章が感心したように告げる。
「カブトムシもなしに南極に来るなんて。千葉県民にはとても出来ないよ」
『それ、地域性関係あります?』
 カブトムシに突っ込まない辺り、アクーラも大分感覚が麻痺してきているようだ。
「そう言えば、あんたもロシア出身なんだって?」
 丁度地域性の話が出たので、【SIRD】のミハイルが話を振る。
『も、という事は貴方も?』
「ああ。俺もロシア生まれで、シベリアのクラスノヤルスク出身だ」
 奇遇だ、とミハイルが笑みを浮かべる。
『クラスノヤルスクですか! 同じ地域ですね。私はノリリスク出身です』
「おいおい。随分と北部の出身だな」
 アクーラが口にした地名は、同じロシア生まれのミハイルであっても思わず眉根を寄せるものだった。
 年間平均気温はマイナス9度。
 月別でも平均気温がマイナスを上回るのは、夏季の僅かな期間のみ。
 人間が住むには非情に厳しい都市、などと言われる事もある。
「道理で、南極に躊躇いがないわけだ」
『このヒートアーマーがないと、流石に厳しいですけどね』
 同郷ロシアの話に花が咲いているが、ミハイルと言う人物は、かつて軍の特殊部隊にいたこともある軍隊上がりの傭兵である。
 素行は決して良いとは言えず、酒好き、女好き、喧嘩好きと、絵に書いた様な問題児と評される事もある。
 そんなミハイルがアクーラの話相手になっている理由は唯一つ。
 それが護衛として、最適な手段だと思っているからだ。
(「この手の学者センセーってのは、目的の為に結構無茶なコトし出かすからな。用心に越したコトはねぇぜ」)
 自分たちとの会話に集中させておいた方が、移動中は護衛しやすい。
「しかし、南極でも随分と奥に来たな?」
『沿岸からは大分遠ざかりましたね』
 ミハイルの言葉に、アクーラが頷く。
「辺鄙な場所にわざわざ遺跡作るってぇのは、人目を避ける為か、元の環境が全然違ったのか、はたまたただ単に寒い場所が目当てだったのか――どう思う?」
『いやぁ……まだ何とも。それを調べに行くんですよ』
「違いねえ。ま、邪神の考えるこたぁワカランね」
 ヒートアーマーの中で苦笑したアクーラに、ミハイルも苦笑を返した。

「クーラさん。僕もその装甲服の事で、ちょっと聞きたい事があるんだけど。いい?」
『はい、どうぞ?』
 白熊とソリの間に入ってきたアヤネに、アクーラが続きを促す。
「それ、耐熱だけじゃなく耐狂も備えているよネ? 精神汚染系のUDCが内部に存在すると予想しているのかしら」
 それならば、相応の装備を整える事も出来る。
『存在する可能性はある、とは予想されています』
 アヤネに対するアクーラの答えは、迷いのないものだった。
『UDC絡みの古代遺跡ですからね。何が出てもおかしくありません。UDCの中には精神を狂気に落とす類が多いので、その機能が付いている――と言うところですよ』
 結局の所、何が出るかは遺跡に入ってみなければわからない。
「成程ネ。参考になったよ、ありがとう」
 1つ頷いて、アヤネは走る速度を落としてソリの後ろに戻る。
「という事だけど、聞こえてた?」
「え、あ、えと、そのー……」
 隣に戻ったアヤネが問いかけると、冬青は曖昧な笑みを浮かべる。
「成程。聞こえてたけど、よく判らなかったみたいネ」
「いやー、あははは。UDC関連の専門用語は聞いてもちょっとわからないですね」
 問い詰められた冬青が、更に乾いた笑みを浮かべる。
 困ったら笑って誤魔化すのは、冬青が良くやる事であった。
 今回の場合、不慣れな装備で不慣れな氷の上を歩くという不慣れ尽くしが、より冬青の耳に専門用語を届きにくくしていたかも知れない。

 次にアクーラに声をかけたのは、ケイだった。
「エルスワース山脈を目指しているんですよね?」
『ええ、その辺りに遺跡がある筈なんです!』
 ケイからの問いに、アクーラがぐっと拳を握る。
「具体的に、遺跡はどの辺りに?」
『エルスワース山脈の方としか。近づけば、それっぽい痕跡とかわかると思います』
 だがケイが続けた問いに返ってきたのは、何とも曖昧な答えだった。
 ちなみに、エルスワース山脈には南極大陸最高峰の氷山がある。
「それに登る羽目になったりは……」
『流石にそれはないです。山脈ちょっと登るくらいは』
「あるかもしれないんですね」
『な、ないかもしれないですよ!』
 つまり、行ってみないと判らない。
「ちなみに、どんな遺跡かというのも判っていないのですか?」
 そんな話に、今度はネリッサが口を挟んだ。
『それも、はい。古代遺跡と言っても、どれほど古代かもまだはっきり判っていない状態でして……』
(「これは、遺跡を見つけても長期戦になるかも知れませんね」)
 アクーラの答えからは、遺跡での調査が長くかかるかも知れないと、ネリッサは胸中で呟く。その視界に、赤い光を見下ろす光景が映った。
「! 灯璃からの合図です。山脈の麓に無事についたとの事」
 ナイトゴーントの視界でみた合図を、ネリッサが全体に告げる。
「メンカル。合流したら、お願いします」
「ん、了解」
 ネリッサの言葉に、メンカルが小さく頷く。
 程なくして、吹雪の向こうで左右に振られている発炎筒の赤い光が、全員の目に飛び込んできた。

●南極の夜
 バサッ、バサバサバサッ!
 吹雪の中に響く羽音。何処からともなく現れたのは、無数のコウモリの群れ。
「待たせたな」
 その中心に、殿として後方にいた筈のガーネットの姿が現れた。

 闇夜の住人――ダークストーカー。

 吸血コウモリの群れと共に他の猟兵の元に転移するユーベルコードである。この業があれば、ガーネットにとって距離が離れる事はさして問題ではない。
 故に、殿を努めていたのだ。
「揃ったね。それじゃ、作るよー」
 先端に三日月の意匠を持つ大きな杖を手に、氷壁に向き合うメンカルが何をしようとしているのか判らず、アクーラはヒートアーマーの中で首を傾げていた。
『あの、何を……』
「拠点を作るんだよ。吹雪はしばらく収まらないみたいだし、調査に時間どれだけ掛かるか判らないから」
 アクーラに返しながら、メンカルは手にした杖で氷に何かを描き始める。
「ここなら、吹雪もある程度防げているから丁度いい」
 ゴリゴリと、杖の石突でメンカル描いたのは――扉の様な形の模様だった。
 扉の様な、と称したのは、それは魔法陣でもあるからだ。
「憩いの場よ、開け、招け。汝は旅籠、汝は客亭。魔女が望むは困憊癒やす隠れ宿」
 メンカルの唱えた呪文によって、扉型魔法陣が光を放ち起動する。
「それに触れてみて」
『こうですか? ひゃ――』
 不思議そうにしながらもメンカルに言われるままに触れたアクーラの姿、光り輝く扉の中に吸い込まれる様に消える。

 旅人招く御伽宿――スパロウズ・ホテル。

 扉型魔法陣の中は、ガジェットが歓待し、傷と疲労を癒やす宿屋だ。
 しかも、温泉が付いている。
 生半可なテントでは立てることすら難しい南極で、安全に休める拠点を作る上で、これほど適しているユーベルコードはそうはないだろう。
「中と外の通信は厳しいけれども、中での休憩は出来るから利用してね」
 そう言い残すと、メンカルは自ら光の扉に触れて、その中へと消えていった。
「他のみんなもどうぞ」
 ミハイル、灯璃と【SIRD】の2人がその後に続き、最後にネリッサも他の猟兵に告げて扉の中に消えていった。

「まさか、ヒートアーマーを脱げるとは思いませんでした」
 スパロウズ・ホテル内の温泉で温まったアクーラは、その一角でほうと息を吐く。
 だが――その表情は、何処か強張っていた。
「不安か?」
 偶々そこに通りがかったガーネットが、様子に気づいて声をかける。
「そうですね。少し。ですが楽しみの方が大きいです! 遺跡が私を呼んでいる!」
「……そ、そうか」
 ぐいぐい来るアクーラに、ガーネットが思わず後ずさりかける。
 とは言え、それが空元気の類が混じっているのも明らかだった。
 無理もあるまい。
 この世界の技術で作れる限りでの備えがあるとは言え、何があるかわからない遺跡に入る瞬間が近づいているのだから。
「大丈夫、私達があなたを守る」
『これは?』
「宇宙食だ」
 少しでも気が紛れればと、ガーネットはシャキサクな宇宙食を差し出した。

●南極2日目
 晴れた。
 昨日の吹雪が嘘の様に、青空が広がっていた。
 それでも気温は殆ど変わらず、相変わらず外は寒いままなのだが。吹雪があるかないかでは、大きく変わってくる。
「さて、今日は遺跡を見つけないとネ。ペンギンがいたら、目を奪われそうだけど」
「アヤネさん。ペンギンは私も見たいですが、海の近くの方が多いと聞きますよ」
 そんな話をしながら、アヤネと冬青が宿の外に出ると――。

 ぱぷぷおー♪

 カブトムシの上に胡座をかいた章が、黒いオカリナから残念な音を立てていた。
 それもシュールではあるが、問題はそこではない。
 カブトムシの周りに、何故かいるのだ――ペンギンが。
「ソヨゴ、ペンギン、いないはずじゃ?」
「どういう事でしょう」
 その光景に、アヤネと冬青が思わず足を止めて顔を見合わせる。
 そんな2人の後ろから、再びヒートアーマーをまとったアクーラが姿を現した。
『ペンギンー!?』
 そして驚いた。
「あ、おはよう。この子たちから、自然のものではない地形や物体に心当たりがないか聞いてみようと思って、ちょっと集めてみたんだけど。心当たり、ないって」
 オカリナから口を離した章が、あっさりと告げる。
 あの黒いオカリナ、獣奏器だった。
『こんなにペンギンがいるのに…………南極ではじめて、ヒートアーマーが邪魔だと思いましたよう…………』
 グヮグヮ群がるペンギンを、アクーラは喜びと悲しみが混ざった複雑な思いでヒートアーマー越しに触れていた。
「アヤネさん……」
「僕たちはプロだ。後回しにしよう。うん」
「仕事の後ならば喜んで!」
 唐突なペンギンに、アヤネと冬青も、ほんのちょっとは揺れていたようだった。

 閑話休題。

『それでは、遺跡の入り口を探してください! どんな形状か、見た目か。さっぱり判りませんので、それっぽいものを見つけたら呼んでください!』
 アクーラのざっくりとした指針が、猟兵たちに告げられる。
 GPS情報からすると、大体この地点から、半径1000mほどの範囲にある筈だという。それでも広いが、見えるところ全部、とか言われるよりはマシと言えよう。
(「今日は探狼になるわよ!」)
 やっぱり寒いのでまた狼姿な有栖が、鼻をくんくんと狼らしく探し始める。
 猟兵達は探索範囲を手分けして、雪と氷の世界に眠る遺跡を探し始めた。
 アクーラは拠点とした扉型魔法陣の直ぐ側に残っていた。再び荷物を屠竜の魔女の魔力で持ち上げているミコと、護衛としてロウガの2名も残っている。

「そんなに範囲があるんじゃ、仕方ないね。目で見て探して確認して遊――」
 思わず何か言いかけたリュカが、咄嗟に口を噤む。
「……今、遊ぶって言った?」
「やるしかないよね。あっち、何か光らなかった?」
 じぃっと見下ろす章から目を逸らし、リュカはずんずんと雪を踏みしめ進みだした。
「子供は風の子だなあ」
 その背中を見やりながら、章もカブトムシ引き連れて後に続いて行く。
 遊ぶ、という表現は別として、実際、ここまで来たら後は目視が一番であろう。何か術的なものを探すにせよ、取っ掛かりが少なすぎる。
「あ、危ない危ない。ここクレバスだ」
 危険はちゃんと回避しながら、リュカは好奇心の赴くままに探索を続ける。

「我が従僕よ、集え、出でよ。汝は軍勢、汝は猟団。魔女が望むは到来告げる七つ笛」
 メンカルが掲げた銀月の杖『シルバームーン』をコツンと、氷床に打ち付ける。
 氷の上に魔法陣が描かれ、小鳥の様な形のガジェットが次々と飛び出して来た。
「地形調査と、遺跡の入り口を探して」
 通信・索敵機能のついた275体のガジェットが、メンカルの指示を受けて南極の空に飛び立っていった。
 夜飛び唄うは虎鶫――セブン・ホイッスラーズ。
「偉大なる深淵の主の下僕よ、我が召喚に答えよ」
 ネリッサも再びナイトゴーントを召喚し、空に飛び立たせる。
「視覚野侵入完了――――――Ziel adfangen」
 そこまで見届けて、灯璃もユーベルコードを発動した。
「少し"目"をお借りしますよ」
「おお。探索は得意分野じゃねえからな。目くらい、貸してやるぜ」
 灯璃が告げた言葉に、ミハイルが頷く。
 その通り、その能力は生物の視覚を強制共有化である。
 とは言え、対象は生物に限られる。メンカルのガジェットの視界は共有化出来ないし、灯璃が存在を認識していない生物の視界も不可能だ。
 例えば、まだ見ぬUDCとか。
 それでも、ネリッサのナイトゴーントは共有化可能だし、他の猟兵達の見ている光景も灯璃には共有可能。
 アクーラも、その対象に含まれていた。

「何事も無いですね」
 不審なものやオブリビオンが湧いて出やしないかと警戒を怠らないケイであったが、見回す視線に映るのは陽光に照らされた白銀の世界。
 自分たち以外に動くものなどいない。
 ――そう思っていた。
「こんな所に雪男なんていませんよね」
 ちょっと残念そうに呟いてエルスワース山脈から視線を外し――。
「ん?」
 視界の端に、何か見えた気がして思わず振り返る。
「あれは――人影?」
 エルスワース山脈の麓に、影のように真っ黒な人の形。ケイが想像していた雪男とは真逆の色であるが――怪しいのは間違いない。
 確かめようとケイが一歩踏み出すと、人影は溶ける様に消える。
「ふむ……用心はしておきましょう」
 ケイの隣に、影が盛り上がる。
 召喚した影の追跡者を人影の消えた所に先行させると、ケイの目に届いた影の追跡者の視点には氷の中にポッカリと開いた石造りの通路と思しき扉があった。
(「氷に閉ざされた古代遺跡……ですか。これは興味深いですね」)
 これでオブリビオンが絡まなければ、浪漫に浸れそうなのだけれど。
 胸中で軽くため息を吐きながら、ケイは遺跡発見の報を入れた。

●古代遺跡へ
 章のカブトムシの角が。
 カネリの白熊の爪が。
 冬青の見えない烏(コルヴォ)の嘴が。
 ミコの屠竜の魔女に宿る魔力が。
 分厚い氷をどんどん砕いていき、遺跡の入り口が猟兵達の前に晒された。
「ふむ……特に、封印の術式の類は使われていないようですね」
 白熊から降りたカネリが、扉に触れて確認する。そのまま押してみれば、ギシッと重たい音を立てて扉が少しだけ動いた。
 魔術的なロックはなく、物理的な鍵も掛かってはいないらしい。
「ふむ。素材はごく普通の金属のようだけど……ソヨゴ。そろそろあの服、羽織っておいた方が良いよ」
「着物ですね。――アヤネさんは、良いのですか?」
 電脳ゴーグルで扉を調べたアヤネの言葉に従い、冬青は以前アヤネから送られた浅葱色の振り袖を、いつもの制服の上から羽織った。
「僕はもう汚染されているようなものだから」
 平気だと、袖口からウロボロスの触手の先端を見せ、アヤネは冬青に笑いかける。
『準備は良いですか、皆さん。それでは、突入しましょう!』
「さーて、大きい葛籠かパンドラの匣か……何が出るのか愉しみだ。忌々しい程、な」
 促すアクーラの声を背中に聞きながら、ロウガが扉を押し開け、先頭で踏み入れる。その門には少なくとも、希望を捨てろとは書かれていなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『奇跡亡き夜の囚人』

POW   :    乱心『明けぬ夜の旅』
【失われたはずの自我が不意】に覚醒して【邪神の力を完全制御した闇を纏う姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    汚染拡大『数珠繋ぎの不運』
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【影人間】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    変異侵食『悪夢が始まった日』
自身が戦闘で瀕死になると【全身から無数の影人間】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:nii-otto

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●古代遺跡にて
 カツーン、カツーン。
 石畳の廊下に、幾つもの足音が響き渡る。
 猟兵と、研究者アクーラの足音だ。
 見つけた入り口から、斜め下へと伸びる階段。それを下って辿り着いたのは、外から差し込む光の無い、真っ暗な地下空間。
 猟兵の1人が灯りを灯すと、見えてきたのは巨石で作られた石畳であった。
 完全に整備されているのは足元だけで、壁や天井は、ところどころ古そうな岩壁が露出している。
 他に動く者は見当たらない。
 猟兵達は警戒し、アクーラを中心とした陣を組んで通路を進む。
 だが――。
 先程、氷上で目にした影はおろか、何の気配もなかった。しばらくは。

 どれほど通路を進んだだろうか。
『こ、これは――』
 行き着いた先はまた大きな門のような物があり、くぐった先には天井の高い広間のような空間が広がっていた。
 床はこれまでと同じ巨石の石畳。違うのは、この場は壁も巨石を積み上げたもので覆われているようだ。その所々に、何やら魚類のオブジェらしいものが象られている。
『ここで行き止まりですか。では、ここを調査地とします! 機材を!』
 アクーラの周りに、浮いていた機材のケースが並べられる。
 その中身をテキパキと、アクーラは組み立てて行く。
『音波探査とレーザー探査による、立体スキャンを行います。後は年代測定用の建造物と地質のサンプルを――』
 このまま順調に調査が始まるか――そう思われたのだが。

 ゆらり。
 ゆらり。
 ゆらぁり。

 部屋のそこかしこから、暗黒が漏れ出して来た。
 暗黒は幾つかの塊に集い、塊は人の形を為していく。
 あれは――地上でみた影と同じだろうか。
 だとしても、今はもっとよく見える。単に人のような手足を持っている、というだけではない。明確に、銃器を持っているシルエットだ。
『あ、あれは――奇跡亡き夜の囚人!』
 暗黒から現れた近代装備を持つ兵士達の姿を見て、アクーラが声を上げる。
『彼らは、「邪神の力を身に降ろしその力で邪神と戦う」兵士の試験隊だった者達の成れの果てだと言われているUDCです』
 それがこうして現れるという事は、その計画は失敗したのだろう。
 邪神の影を伸ばす存在となってしまうという、最悪の形として。
 だが――そんな存在が、何故この、古代遺跡に?
『それ判りませんが、確か彼らは窮地になるほど存在を増やす術を持っていると、資料でみたことがあります』
 猟兵と言えども全滅させるのは、容易ではないかも知れない。
『お願いします! 立体スキャンが終わるまで、機材を守って下さい!』
 アクーラの声が、古代遺跡の中に響き渡った。

==============================================
2章は集団戦となります。
敵を全滅させるのは、必ずしも必要ではありません。
立体スキャンが終わるまで、敵を退け機材を守りきり、調査データを取得する事。
これが成功条件となります。
立体スキャン完了までの時間はそこそこ長いです。
数分で終わる様な作業ではありません。
==============================================
黒玻璃・ミコ
※美少女形態

◆心情
奇跡亡き夜の囚人……あー成る程、押し寄せる物量を捌くだけではなく
気絶でもされるとトロイの木馬となる案件ですね(アクーラさんを見やる)

◆行動
心構えがあれば少しは違うでしょうから
【医術】的なカウンセリングを入れてときましょう
アレは邪神由来の悍ましい闇の能力を使う可能性があるので
私の手でも握って気を確かに持っていてください

大丈夫ですよ
片手が塞がっていても先程ご披露した
【黒竜の遊戯】による【念動力】は使えるので
【鎧無視&範囲攻撃】による【カウンター】をお見舞いし
銃弾の雨も【戦闘知識】と【第六感】を
活かして弾き、射線を逸らせば良いのです

◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK


雨咲・ケイ
邪神の力で邪神と戦う試験隊……。
気になる話ではありますが、
今はこの状況を何とかせねばなりませんね。
邪魔はさせませんよ。

【WIZ】で行動。

敵の撃破よりアクーラさんと機材の守備を優先する方向で
動きます。

接近してくる敵に対しては【シールドバッシュ】で、
遠距離から攻撃してくる敵に対しては【スナイパー】による
盾の【投擲】で対応しましょう。
瀕死の状態に近づいた敵は【サイキックブラスト】で
動きを止め、更に【シールドバッシュ】による【2回攻撃】で
一気に片付けます。

アクーラさんと機材に対する攻撃には【盾受け】と
【オーラ防御】を併用して凌ぎますが、
そちらへの攻撃が集中してきたら
敵陣に切り込んで注意を引きつけます。


ロウガ・イスルギ
連携・アドリブ歓迎

傭兵にとっちゃココからが本領発揮ってヤツだな

猟兵でも遺跡ぶっ壊しそうなUC使おうとしてる奴いたら
一応釘刺しとくか、オレらはともかく学者センセイに何かあったら・・・・・・
って、死なれたら寝覚めが悪いだけだ、勘違いするなって!

敵は瀕死や窮地に陥ったら数が増えるなら先ずは「殲滅」より
「鎮圧」狙いで行かせてもらうか
「先制攻撃」にて【不空羂索】発動
複製したグレイプニルを操り火器銃器の類を奪ってから拘束するぜ
後は学者センセイの仕事が終わるまで転がしておいて、と
とにかく時間を稼いでスキャン後に倒そう

傭兵にも傭兵なりに矜持って物があってな・・・・・・学者センセイの
仕事の邪魔はさせないさ!


ガーネット・グレイローズ
あの兵士達は……とてつもなく邪悪な気配を感じるぞ。
邪神の力を宿して戦う兵士か、コンセプトは悪くなかったが……
どうやら精神修養が足りなかったようだな?

【妖刀の導き】を発動し、攻撃力を増強させて戦う
さて、ここからは持久戦か。そっちの仕事は頼むぞ? アクーラ。
妖刀アカツキと躯丸の二刀流による<2回攻撃>。
敵の攻撃(アサルトライフル?)はブレイドウイングによる<武器受け>で
マントを硬質化させて防御し、ブラックバングルから<衝撃波>を撃ち込んで反撃。
受けたダメージはブラッドエーテルによる<生命力吸収>の波動を撃ち、回復。
敵の数が増えて来たら、クロスグレイブの砲門を解放し、<一斉射撃>で
まとめて殲滅だ。



●それぞれの護り方
『お願いします! 立体スキャンが終わるまで、機材を守って下さい!』
 部屋の中心に、調査を進めるアクーラ。
 その周りを猟兵達が囲み、そのさらに周囲には、壁際から滲み出すように出てきた影を纏った兵士達――奇跡亡き夜の囚人。

「あー、成る程。アレですか」
 四方八方から現れたその姿に、黒玻璃・ミコは小さく頷く。
 問題は壁という壁から押し寄せる物量だけではない。
(「単に捌くだけではダメ。アクーラさんに気絶でもされると、トロイの木馬となる案件ですか」)
 胸中でミコが呟いた懸念を、もうひとり抱いている猟兵がいた。
「皆! 判ってるだろうが、遺跡ぶっ壊すようなあまり派手なやつは控えとけよ」
 大きく声を張り上げた、ロウガ・イスルギである。
「ここが崩れてもオレらは何とかなるが、学者センセイに何かあったら……ん?」
 ロウガに、他の猟兵達の視線が集まる。
 上げた警告に何かある、という様な視線ではない。どちらかと言うと「あ、心配してるんだ」と言いたげな視線だ。
「……死なれたら寝覚めが悪いだけだ、勘違いするなって!」
 ふい、とアクーラから視線を外し、ロウガは部屋を見回す。
 部屋中から現れた兵士が、銃口をこちらに向けていた。

「邪神の力で邪神と戦う試験隊……気になる話ではありますね」
 そんな計画、いつ何処であったのだろうか。
 雨咲・ケイは腕に取り付けた小型の盾『アリエル』の具合を確かめながら、雨咲・ケイは誰に言うでもなく呟く。
「さてな。だがあの兵士達……とてつもなく邪悪な気配を感じるぞ」
 ガーネット・グレイローズが兵士達に感じた気配は、間違いではない。
 今となっては、邪神に呑まれ世界の影となってしまった兵士達。彼らはもう、世界に滲む暗黒でしかないのだから。
「邪神の力を宿して戦う――毒を喰らわば皿まで、と言うところか」
 コンセプトは悪くなかったのだろうと、ガーネットは思う。
「今はこの状況を何とかせねばなりませんね」
 そんな計画がいつ何処であったにせよ、今は目の前で驚異として顕現している。
 ケイは指で眼鏡を押し上げ、兵士の群れを見据えた。

「傭兵にとっちゃココからが本領発揮ってヤツだな」
 平たく言えば囲まれている。その状況に、ロウガは不敵な笑みを浮かべていた。
「ここは『殲滅』より『鎮圧』狙いで行かせてもらうか」
 瀕死に陥れば、数を増やす――アクーラはそう言っていた。
 ならば、まともに倒す必要はない――そう判断したロウガは、氷上でも使ったワイヤーフック『グレイプニル』を掴んで放り投げる。
「こいつが『救いの手』になるか『裁きの縄』になるか、総ては貴様等次第だ」
 ヒュンッ!
 【不空羂索】で40個以上に複製されたグレイプニルがあちこちで風を切る音を鳴らし、ロウガの念動力でバラバラに動き出した。
 ガキンっ!
 響く鈍い金属音。
 ロウガの狙いは、兵士達が持っている銃器だ。
「花器銃器の類は、使用禁止だ……学者センセイの仕事の邪魔はさせないさ!」
 グレイプニルの先についているフックをぶつけて、銃器を弾き飛ばしていく。
 いかにも力技が得意そうな体格ながら、ロウガの戦い方は堅実だ。
 傭兵には傭兵なりの矜持がある。
 必要な時に必要な戦い方を選ぶのも、その現れと言えるかもしれない。

『オ……オオ……』
 銃器を失った兵士達が、腰のベルトから大振りのナイフを抜き放つ。
「邪魔はさせませんよ」
 近づいてきた兵士の前に、ケイがするりと滑り込んだ。
「ふっ!」
 ごがんっと盾を打ちつける。
「そこそこの装備のようですね」
 盾打ちの衝撃が防弾チョッキに吸収されたのも構わず、ケイは更に押し込――。
「っと」
 もう一段、押し込もうとしたケイだったが、咄嗟に飛び退いた。
 遠くの兵士が撃ってきた弾丸をオーラを纏わせた『アリエル』で弾きながら、ケイが両掌から高圧電流を放つ。
 だが、盾を当てた兵士も既に飛び退いていて、電流は石畳を焦がすのみだった。
「狙撃手ですか、なら――」
 一旦その兵士からは視線を外し、ケイは銃口をこちらに向ける兵士を見据えて『アリエル』を掴む。
 『アリエル』は投擲にも使える小型の盾だ。
 だが、ケイは投げるのを一瞬躊躇した。距離は問題ではない。問題は、投げて戻ってくるまでの僅かな間、ケイの手元からは『アリエル』が無くなるという事だ。
 ヒュンッ!
 そこに風を切る音が鳴る。
 ケイの逡巡を察したロウガが、グレイプニルを1つ、狙撃手に飛ばしてその銃を弾き飛ばしていた。
「遠距離は――任せて良さそうですね」
「任せろ。近づいてくる連中は頼む」
 短くロウガと言葉を交わし、ケイは石畳を蹴って、兵士達の前に飛び出した。あえて敵陣に切り込む事で、兵士の注意をこちらに向ける。
 そのケイの氣を受けて『アリエル』も強い輝きを放ち――。
「倒すよりも、アクーラさんと機材に近づけさせない事が重要ですから、ね!」
 輝く盾が、兵士の一人を痛烈に吹っ飛ばす。
「よし。あとは縛って転がしとくか」
 盾打ちで壁に叩きつけられた兵士に、ロウガのグレイプニルが受け止めるように巻き付いていく。
 武器を飛ばし動きを封じておけば、瀕死にすることもない。

「成程。倒さずに制圧するか」
 ロウガとケイの戦い方を眺めながら、ガーネットの両手が刃の柄を掴んでいた。
 複製したグレイプニルの数にも限りがある。どちらの方が多いかと言えば、兵士の方が圧倒的に多い。
 だからこそ、ガーネットは刃を抜くのだ。
 赤く輝く刀身を持つ妖刀――朱月。
 骨のように真っ白な刃を持つ太刀――躯丸。
 赤と白の二色の刃に、黒が纏わり着いていく。ガーネットが纏わせたのは『地に満ちた邪気』――この場合は即ち、兵士たちが纏っているのと同じ黒い影。
「今宵のアカツキと6960號は――血に飢えているぞ!」
 ガーネットの靴底が、石畳を強く蹴った。
 飛び出すなり閃いた二刀が、兵士の首と胴を斬り飛ばす。
「さあ、どんどん行くぞ!」
 黒を纏った紅白の刃が閃く度に、兵士が1人、また1人と倒れていく。
 一撃の元に斬り伏せる。瀕死になる暇など、与えない。
 それがガーネットの選んだ手段。
『ソレ、ハ……』
「ん?」
 次第に、二刀を振るうガーネットに兵士達の視線が集まっていた。
『そ、それだ! それが我らの目指していた――!』
 一部の兵士の口調が、流暢なものになっていた。
 どうやら、失われた自我をほんの一時的に取り戻したらしい。
 もしかしたら、ガーネットが同じ種類の力を使ってみせるのを目の当たりにしたのが、切欠になったのかもしれない。
「ふん。目覚めたか」
 だとしても、ガーネットは慌てない。
「今更だ。どうやら精神修養が足りなかったようだな?」
 タタタッ!
 闇を纏ったアサルトライフルの銃口から銃火が立つと同時に、ガーネットのマントの中から流体状の金属がずるりと出てきた。
 放たれた銃弾を絡め取りながらガーネットの背中に広がった流体金属は、コウモリの翼の様なフォルムを取って固まった。
 ブレイドウイング――攻防一体の、鉄の翼である。
「そっちの仕事は頼むぞ? アクーラ」
『ま、任せて下さい! なるべく早く終わらせてみせます』
 応えるアクーラの声を背中に聞きながら、ガーネットは翼を盾に間合いを詰め、自我を取り戻し闇を纏った兵士に、闇を纏った二刀で斬りつける。
 ぶつかる闇と闇。拮抗は一瞬。
 闇をすり抜けた紅白の刃が、兵士を斬り伏せた。

 あちこちで、金属音や銃声、打撃音など、戦闘音が響いている。
 その度に、毎回ではないにせよ、アクーラが中にいるヒートアーマーの背中が、ぴくんと反応することがあった。
「そのスキャンの操作って、片手でも出来ますか?」
『こ、このヒートアーマーの中だと、難しいですよ』
 ミコの問いに、アクーラはやや震える声で返す。
(「やはり――恐怖を感じていない訳ではない、ですか」)
 アクーラの声の中に隠しきれない恐怖を見て、ミコは胸中で呟いた。
 まあ、無理もない事だろう。出発前に言われたではないか。研究者であって、戦闘要員ではないのだと。
(「だからこそ、心構えがあれば少しは違うでしょう」)
「資料を見たのなら、ご存知かもしれませんが。アレは邪神由来の悍ましい闇の能力を使う可能性があります」
 だからミコは、時折に震えるアクーラの肩に、手を置く。

「私はこうやって、あなたに触れておきますので。不安になったら、私の手でも握って気を確かに持っていてください」

 ミコのその手、それ自体に癒やしの力は特にはない。
 医学的な観点からの、一種のカウンセリングのようなものである。
 それでも、アクーラに落ち着きを取り戻させていた。
 戦場に慣れていない者にとって、傍に誰かがいると明確に感じ取れるのは、それだけで心を落ち着かせる効果があるものだ。
『え、でもそれでは貴方が片手で戦う事に――』
「ああ、大丈夫ですよ」
 ミコの方を案ずるアクーラに、ミコは空いてる片手をひらりと振って返す。
「いあいあはすたあ……拘束制御術式解放」
 ミコが唱えるは、昨日、吹雪の前で唱えたものと同じ言葉。
「黒き混沌より目覚めなさい、第玖の竜よ!」
 ミコの背中から立ち昇る、幾つもの屠竜の魔女の魔力。それらは、ミコが幾つもの竜を糧としてきた証。
 目には見えないが、まるで竜でありその翼であり爪であり尾でもあり。
「例え片手が塞がっていても、この術は使えますから」
 屠竜の魔力を通じたミコの念動力が、詰め寄る『奇跡亡き夜の囚人』の身体を持ち上げる。こうなってしまえば、現代装備を持った敵だろうが問題ではない。
『――っ!! !?』
 成す術なく、石壁に叩きつけられる兵士達。
『術者を狙――』
「無駄ですよ」
 響く銃声に、ミコが片腕を振るえば、放たれた弾丸は大きく逸れていく。
 他の猟兵にも後ろのアクーラにも届かない、明後日の方向に。
 第六感でおおよその位置が判れば、受け流すくらいならば充分可能だ。弾丸一つ一つを見極める必要などない。
 ミコの屠竜の魔力は、数千にも及ぶのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバー共に行動

状況は把握しました。スキャンが完了するまで、現状を維持。ミロネンコさんの安全を最優先で行動します。
UCの炎の精を、ミロネンコさんを中心とした外周に展開。炎で敵の接近を阻害します。別に今回の敵は必ずしも倒す必要性はありません。ミロネンコさんに危害が加えられる範囲内に入る事を阻止すればいいのですから。無論、倒せるのなら倒すに越した事はありませんが。
また、わざと炎の精が手薄になる場所を作り出して敵をそちらに誘導。そうすれば敵が集まり易くなり、味方の火力も集中できる筈です。
私の炎の精とプルモーサさんの黄金の壁を突破して来た敵が居た場合、ハンドガン(G19C)で射撃します。


灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員として緊密に連携

敵具現化と同時に(先制攻撃)で
発炎筒をグレネード!と叫んで投擲
兵士の習性を利用して防御態勢を反射的に取らせるよう陽動し
出鼻を挫いて仲間の防壁・炎の精展開の時間稼ぎを狙う

団長とメンカルさんの誘導が始まったら
アタッカーとして近接してくる敵とそれに随伴してこちらの防御線を
切り開く為に近づいてくる敵を優先して狙撃で叩き(スナイパー)
敵の頭を抑えて時間稼ぎしつつ

同時に指定UCで狼達を召喚
炎の明るさと煙に紛れる様に誘導地点周囲に
密かに配置、敵が集まったところで四方から
襲撃させ連携を乱しつつ味方と攻撃集中し
壊滅を狙う

彼らの任務はもう終わったんですし。早く眠らせてあげましょう…


メンカル・プルモーサ
【SIRD】のメンバー共に行動…
守りは任せて…まずは【愚者の黄金】でアクーラと機材の周囲に黄金の壁を立ててオブリビオンの進入と流れ弾を防ぐよ…
【夜飛び唄うは虎鶫】によりガジェットを召喚、アクーラの護衛として配置しておくね…
…次に壁や地面に遅発連動術式【クロノス】により印を刻み、オブリビオンが印に近づいたり踏んだりすると【尽きる事なき暴食の大火】が発動する罠を仕掛けて罠を警戒させることで時間稼ぎ…
…さらに罠の配置を偏らせてネリッサの誘導地点へと移動させるね…
…ある程度集まったら【連鎖する戒めの雷】で動きを止めつつ雷撃でダメージを与える…
…影人間が出現したら同様に打ち込んで一網打尽にするよ…


ミハイル・グレヴィッチ
【SIRD】の面々と行動

やれやれ、どー考えても歓迎されてる、って雰囲気じゃねぇな。ま、いつものコトかもしれねぇが。
さて、んじゃま、ちったぁ護衛らしい仕事でも始めるか。

戦闘では、ミロネンコの傍に付いて、主に射撃戦を展開し【援護射撃】【一斉発射】【2回攻撃】にて攻撃。まぁ恐らく、ウチの局長やプルモーサ辺りが敵を一定方向に追い込むだろうから、その流れで火点を集中してやる。
要はこちらがスキャン完了まで守り抜けば勝ちだ。それまではしっかり守り抜いてやるぜ。

(スキャンに集中するミロネンコをちらりと見やり)ふん、大したタマだぜ。学者センセーにしとくにゃ勿体ないな。

※アドリブ・他者との絡み歓迎



●特務情報調査局
 古代遺跡の中で、なし崩しに開かれた戦端。
「あちら側は任せて良さそうですね」
 既に一部の猟兵が動き出している状況を冷静に分析し、ネリッサ・ハーディは自分たちが取るべき行動を瞬時に見定めた。
「これより、スキャンが完了するまで現状を維持、及びミロネンコさんの安全を最優先で行動します。範囲はミロネンコさんの正面を0時方向とし、0時より4時まで」
 10人以上の猟兵が集まったこの状況。
 四方から敵が現れているとは言え、ネリッサは自分たちで全方位を対応する必要はないと判断を下した。告げた範囲は、およそ3分の1に当たる。
「了解!」
「守りは任せて」
「んじゃま、ちったぁ護衛らしい仕事でも始めるか」
 ネリッサの判断に、SIRDの他の3人も異論を挟まず頷く。
『ォォ………ォォォ…………』
 そんな4人に、兵士達が迫る。他の猟兵が兵士をふっ飛ばしているのに気づいているのかいないのか。それを意に介した風もなく。
「どー考えても歓迎されてる、って雰囲気じゃねぇな」
 ゾンビじみた呻き声はさておき、向けられる視線は、ミハイル・グレヴィッチが戦場で幾度も浴びたものだ。
「ま、いつものコトかもしれねぇが――」
「グレネード!」
 機関銃を構えながらぼやいたミハイルの声を、灯璃・ファルシュピーゲルが張り上げた声が遮った。
『!!!!』
 その声に、奇跡亡き夜の囚人の兵士達は、一様に頭を抱えて屈み込んでいた。
『!?』
 予想した爆発が起こらず、困惑する兵士達。
 先の声に自我を失ってなお反応した事からも、彼らの身体には銃火飛び交う鉄火場の癖が染み付いている。
 灯璃は、彼らの兵士としての質を逆手に取ったのだ。
「おい、ファルシュピーゲル! やるならやるって言っとけ。思わず反応しかけちまったじゃねぇか!」
「敵を欺くには味方から、と言います。こちらも1人くらい反応していないと、連中に怪しまれるかと。団長とメンカルさんには言ってありますよ」
 防御姿勢を取りかけて気づいたミハイルの抗議に、灯璃は淡々と返す。
 灯璃が味方すら欺いた時間は、そう長くはない。既に兵士達も、ブラフだと気づいて活動を再開している。
 だがメンカル・プルモーサが術式を1つ完成させるのには充分な時間だった。
 カツンと、銀杖『シルバームーン』が石畳を打つ音が響く。

「世に漂う魔素よ、変われ、転じよ。汝は財貨、汝は宝物、魔女が望むは王が呪いし愚かなる黄金」

 メンカルの詠唱が響いた直後、石畳の一部が黄金の輝きを放ち、せり上がった。
 愚者の黄金――ミーダス・タッチにより作られた、この遺跡を作っているのと同じ石を黄金と変えた偽物である。
 タタタタッ!
「これで少しは時間稼げる筈」
 壁の向こうから聞こえる銃声を気にした風もなく、メンカルが3人に告げる。
 黄金と変えた石壁は、敵が近代兵器を持っていても容易く壊せるものではなかった。そんなものが一枚ではなく十数枚も現れれば、兵士たちの侵攻は自然と遅くなる。
「まあ、上まで塞げていませんが、そうそう登れはしない――」
 メンカルが言った傍から、黒い塊が放物線を描いて壁の向こうから飛んできた。
「させねえよ!」
 ミハイルが構えていた機関銃『UKM-2000P』が銃火を放つ。
 7.62mm――30口径から放たれた銃弾が、黒い塊が落ちる前に壁の向こうへと撃ち返した。直後、壁の向こうで上がる爆発音。
「ま、そう来るよなぁ。セオリー通り過ぎて、判り易いぜ!」
 先の灯璃のグレネード騙しが効いた事で、ミハイルは兵士達が手榴弾の類をそう使ってくるだろうと見当を付けられていた。
 だからこそ、先に銃口を向けていられたのだ。
 とは言え、壁を作って阻んだだけで諦めるような敵ではないのは明らか。

「フォーマルハウトに住みし荒れ狂う火炎の王、その使いたる炎の精を我に与えよ」

 そこに響くネリッサの詠唱。
 その声に喚ばれて現れるは、光球のような炎の精。
 荒れ狂う火炎の王の使い――ファミリア・オブ・レイディング・フレイム・キング。
 46の炎の精はネリッサの意思を受け、黄金の壁の隙間を埋める位置へ飛んでいく。
 そこを抜けようと抜けようと身体を入れていた兵士達は、突如現れた光球の炎に、容赦なく焼かれる事となった。
 メンカルは黄金の壁を、意図的に不規則に配置し僅かな隙間を幾つも作っていた。兵士1人ずつならば、ギリギリ通り抜けられそうな程度に。
 その隙間を、ネリッサの喚んだ炎の精が埋めた形だ。
 だが、それでも敵は諦めてはいなかった。
『――! !!!』
 SIRDの4人からは見えていなかったが、隙間を抜けようとして焼かれた兵士達は、次の活路を壁の上に見出していた。
 壁の上を越えられるのは、先の手榴弾で確認している。
 兵士の一人が、壁の縁に手をかけて――その瞬間、黄金の壁の一部を燃料として燃え上がった白い炎が轟と燃え上がって兵士をふっ飛ばした。
 尽きる事なき暴食の大火――グラトニー・フレイム。
 メンカルが遅発連動術式【クロノス】で、黄金の壁に仕込んでおいた術式である。
 尤も、悟られぬ様、無詠唱で仕込んだが故に、延焼時間はメンカルが本気で放った時に比べてかなり短くなっているが。敵の足止めには充分だ。
 だが――燃料と変わった壁は、それで半分以上が崩壊していた。
 これなら兵士達は飛び越えられる。炎の精も、白炎に呑まれたか近くにはいない。
 兵士達にとっては、願ってもない好機――だが、それはメンカルとネリッサが意図的に作った『隙』であった。
『どうする?』
『罠かも知れんぞ』
 戦いの最中、偶然に失われた自我を取り戻していた兵士達はその可能性に気づいて、飛び越えるか否か、逡巡を見せる。
 そう。逡巡したのだ。その感情は、紛れもなく疑問。
 灯璃は待っていた。兵士達が、その感情を抱くのを。
「Sammeln! Praesentiert das Gewehr!」
 灯璃の声が響くと同時に、兵士たちの間に広がるは漆黒の霧。

「仕事の時間だ、狼達≪Kamerad≫!」

 灯璃の声を合図に、黄金の壁の陰という陰から狼のような影の群れが飛び出し、兵士達に喰らいついていく。
 Schwarzwald Wolfsschanze――黒い森の狼。
 ここが地下の遺跡ではなく日の差す地上であったならば、森のように立ち込めた漆黒と影の狼達はが、光を飲み込み喰らう存在であると判っただろう。
 隙に気づいて集ったその時点で、兵士達は最後の罠に掛かっていたのだ。
「……なぁ、局長よ」
「何でしょう」
 影の狼から逃れて壁を乗り越えそうな兵士を機関銃で撃ち落としながら、ミハイルがネリッサに声をかける。
「学者センセーがスキャン完了まで、守り抜けばこっちの勝ちだよな」
「ええ。必ずしも倒す必要性はありませんね。ミロネンコさんに危害が加えられる範囲内に、敵が入る事を阻止すればいいのです」
 ミハエルに返しながら、ネリッサは炎の精を操り、影の狼から逃れようともがく兵士を容赦なく焼き焦がしていた。
「現状維持にゃ、火力がちと強いんじゃねえか?」
 ミハイルの視線の先では、メンカルが銀杖を再び掲げていた。その周囲には、幾つもの青白い魔法陣が浮かび上がっている。
「紡がれし迅雷よ、奔れ、縛れ。汝は電光、汝は縛鎖。魔女が望むは魔狼封じる天の枷」
 吹き荒れる魔力に白衣をはためかせ、メンカルがシルバームーンを振り下ろす。銀の三日月の間で瞬いた雷光は、雷の鎖となって兵士達へと迸った。
 連鎖する戒めの雷――ライトニング・チェイン。
 同じ性質の存在の間を伝播する雷鎖は、兵士から兵士へと次々と絡みついて、その雷撃を浴びせていく。
「一網打尽にすれば、問題ない」
 最も戦士らしからぬ外見ながら、この4人の中で最も火力を出してるであろうメンカルが、淡々と口を開く。
「私は最初から壊滅狙いですよ。彼らの任務はもう終わったんですし。早く眠らせてあげましょう」
 セミオートライフル『Schutzhund』からの連射を浴びせながら、灯璃も口を開く。表情にこそ出てないが、元軍人として思うところがあるのだろう。
「倒せるのなら倒すに越した事はないでしょう。脱出もし易いでしょうし」
 咲き乱れる雷鎖に絡みつかれた兵士の頭を改造ハンドガン『G19C』で撃ち抜きながら、ネリッサは事も無げにミハエルに返していた。
 必ずしも倒す必要はないだけで、倒せるなら倒してしまっても構わないのだ。
「違ぇねぇな」
 ニィっと深めた笑みが、ミハイルの口に浮かぶ。もとよりミハイルも軍隊経験者。
 火点を集中させる利点は、言われるまでもない。
 瀕死になった兵士から影人間が出てこようが、そこも既に罠の中。
 炎に焼かれるか、雷に焼かれるか、影に喰われるか、弾丸に撃たれるか――SIRDの仕掛けた罠の中から出てくる術が、ある筈もないのだから。
 倒れた兵士を他の兵士が操る暇すら与えない、圧倒的で緊密な火力制圧。
(「にしても……大したタマだな。もう慣れて来てやがる」)
 兵士に向けた銃口は逸らさず、ミハイルは背後のアクーラにちらりと視線を向ける。
 他の猟兵が傍に付いているとは言え、これだけ派手にやっていながら、今はもう、自分の仕事に専念出来ているようだった。
(「学者センセーにしとくにゃ勿体ないな」)
 戦場で落ち着けるというのは、得難い資質だ。技術は訓練でいくらでも磨けるが、精神は容易に鍛えられるものではないのだから。
「ま、しっかり守り抜いてやるぜ」
 ミハイルが呟いた言葉は、左手に構えた『MPi-KM』が『UKM-2000P』と合わせた重なった銃声にかき消されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
章お兄さん(f03255)と協力して

確かに魚類感あるオブジェだよね
俺は焼き魚にするなら鮭がいいな
それはそれとして、嫌な予感がするのには同意
手早く片づけよう

章お兄さんの近くで銃を構える
ゴキブリって、この世界で異様に嫌われてる生物だよね
こんなに寒いところでも生存できるの?
冷凍スプレーに弱いなら違うのかな…?
良く解らないけど、お兄さんの言うことがよく解らないのはいつものことだと真面目に納得する

俺の基本は、章お兄さんが動きを封じた敵に追撃
確実にトドメをさすことを目標に
後は機材に近寄ろうとする敵を優先的に牽制
ただ、変異侵食を起こさせないように、瀕死手前で止めてお兄さんにUCを封じてもらうように呼びかける


鵜飼・章
リュカさんと協力して連携

何だろうこの唐突な魚類
面白いアートだけど凄く嫌な予感がする…
焼鮭もいいけど僕はムニエル派

さておき敵だよリュカさん
黒くて繁殖力が強いなら実質ゴキブリだな
彼らは文明人に滅法強いけど冷凍スプレーには弱い
『生かしたまま動きを止める』
これが答えだ

アクーラさんを守る陣形は極力乱さず
指定UCで敵の弱体化・無力化を狙う
【早業/先制攻撃/範囲攻撃】で無数の蜂を広範囲に放ち
先手で機動力を奪ってからUCを封じる
リュカさんの銃撃を隠れ蓑に
服の隙間に潜りこませ確実に刺すよ

任せてリュカさん
彼の傭兵としての腕に全幅の敬意と技術で応えよう
UCを封じた敵には針を【投擲】して目印をつけ
皆にも解り易くするね



●ムニエルも焼き魚と言って良いのではなかろうか
「何だろう。この唐突な魚類」
「確かに魚類感あるオブジェだよね」
 鵜飼・章とリュカ・エンキアンサスには、迫りくる兵士よりも気になる物があった。
 この空間を作っている壁のそこかしこにある、謎のオブジェだ。
「面白いアートだけど凄く嫌な予感がする……」
「そうだね。俺も嫌な予感がするよ」
 遠いオブジェを見上げ、章とリュカは揃って頷く。近づいて見ることが出来ずとも、あれが魚類を模したものであるのは明らかだった。
「俺は焼き魚にするなら、鮭がいいな」
 鮭にしては背びれが大きいオブジェを見上げ、リュカがそんな事を口走る。
「焼鮭もいいけど、僕はムニエル派」
 章が魚の話題に乗っかった事で、魚類っぽいオブジェから焼き魚に脱線した。
 嫌な予感は、何処にいったんだろう。
「ムニエル?」
「簡単に言うとバター焼き」
 そんな2人の背後で、ズドンッと爆発音。
 振り向けば、他の猟兵が放ったものだろう――白い炎が兵士をふっ飛ばしていた。
「さておき敵だよリュカさん」
「手早く片付けようか」
 どちらからともなく顔を見合わせ、2人は流れるように戦闘に意識を切り替える。
 章は図鑑『自然数の集合』を片手に掲げ、リュカはアサルトライフル『灯り木』を背中から降ろして構えた。
 2人の視線が、闇を纏って迫る兵士を油断なく見据え――。

「黒くて繁殖力が強い――実質ゴキブリだな」

 今度は章が、何か言い出した。
「ゴキブリって、この世界で異様に嫌われてる生物だよね?」
「そうそう」
 リュカに問われて、章の指が図鑑の頁を素早く捲り出す。ふと、ある頁を開いて指が止まると、図鑑から大量の蜂がブゥゥゥンと羽音を鳴らして、一斉に飛び出していった。
「今のが違うのは判る」
「ゴキブリはこっちだね」
 こっち、と章は更に図鑑を捲って、リュカに目的の頁を見せる。載っているのだ、この図鑑。ゴキブリが。
「確かに黒い……こんなに寒いところでも生存できるの?」
『南極大陸にも生息している、という、噂ならありますよ。ちなみにロシアには意外といます。ウラジオストク辺りとか』
 リュカの素朴な疑問に答えたのは、アクーラの声だった。何だかんだで、この状況にも慣れてきているようだ。
「僕の知らない事が、この世界にもまだまだあるものだね」
「ありがとう、アクーラお姉さん」
 アクーラが何故か持っている虫知識に素直に感心し、章とリュカは兵士に向き直る。
「それで、ゴキブリだけど。文明人に滅法強いけど、冷凍スプレーには弱いんだ」
「あ、ゴキブリに話戻るんだ」
 リュカにツッコまれるのを覚悟で章が話を戻したのには、理由がある。
 兵士達に対する答えが、そこにあるのだ。
「『生かしたまま動きを止める』。それが答えだ」
 章が指差した先には、手足が痺れ動けなくなった兵士達がひしめき合っていた。中には動けなくなったまま、未だ動ける兵士に踏まれているもいる。
 先程、図鑑から飛んでった蜂の群れ。その毒針が持っているのは、手足の神経を麻痺させる類の毒だ。
(「あれ? 結局、ゴキブリは冷凍に弱いのかな?」)
 動きを止めるが答えという事は、冷凍に弱いというところに繋がるのではと、リュカは内心で首を傾げて――。
「ま、いいや。章お兄さんの言うことがよく解らないのは、いつものことだし」
「人らしくするのは難しいなぁ」
 良く判らないまま真面目に納得するリュカに、章はあまり残念さはなさそうな口調で言いながら図鑑を逆さまにする。
 すると、図鑑からボトボトと、サソリと蜘蛛が石畳に落ちていった。
 サソリは視力を、蜘蛛は意識を。どちらも奪う毒を持って動けない兵士達へ、カサカサと群がっていった。
「議論は既に終わっている。≪現在完了≫」
 蜂もサソリも毒蜘蛛も。幼い日の章が考えた虫であり、実在の虫ではあり得ないほどの毒を持つ。三毒が全てが合わされば、それはユーベルコードすら封じる奇跡の毒だ。

「願いの重さに負けない強さを」

 毒が回って動けなくなった兵士に、リュカがピタリと灯り木の銃口を向ける。影人間を出す力を毒で封じられたならば、急所を外す必要はない。
 リュカの指が引き金を引く直前、灯り木の銃身が淡い輝きを放った。
 銃口で火花と硝煙を散らして飛び出した弾丸は、空中で幾つもの光に分裂した。その全てが、小さいながら星の様な強い輝きを放ちながら。
 それらは、数多の敵を、悲劇を、乗り越える為の弾丸。
 凶星砕き。
 星を砕くは、また星。リュカの放った弾丸は、幾つかの流星となって動けない兵士達の急所を的確に撃ち抜いていた。
「流石リュカさん」
 章が兵士の動きを止めることに徹しているのも、リュカの傭兵としての腕に全幅の敬意を寄せているからだ。
「章お兄さんが動きを封じてるから、楽だよ」
 リュカもまた、章が兵士達の力を間違いなく封じたと確信していた。互いに互いの腕を信頼し、それに己の技術で応えている。
「トドメは刺すから、動きを止めるのは頼むよ」
「任された」
 膝立ちでライフルを構えたリュカの言葉に、章は毒でユーベルコードすら使えなくなった敵が判るよう、標本針を放ちながら頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】
時間稼ぎ?
いいともそういうの得意だし
任務は確実に遂行するとも

PhantomPainを電子ゴーグルと同期させる
戦闘目的はディレイ
敵の動きを少しでも遅くする
致命傷より数
スコープは覗かない
カーソルの合った敵に向けて引鉄を引くだけ
ウロボロスで武器を支え
無理な体勢での射撃を可能にする
ご機嫌なハミングはワルキューレの騎行
指揮棒を振るうように滑らかに光弾をばら撒いて舞う

え?歌?
僕が戦闘中にそんなことするわけないじゃないか
とクスクス笑う

猟兵として戦っていて
声を上げて笑ったのは初めてで
そんなわずかな変化は僕もソヨゴも気づかなかった

南極で絶望的状況の戦闘
ソヨゴと一緒だから楽しくて仕方ない


城島・冬青
アヤネさん(f00432)と

クーラさん
立体スキャンってどの位かかります?
大作映画1本見られる時間とかだったら絶望しますけど…まぁ仮にそうだとしてもやるしかないですね

花髑髏を構えアヤネさんの撃ち漏らした囚人達を叩き斬る
護衛をしつつ時間を稼ぐ戦闘なので体力を温存して戦いを進めていきます
第六感で不穏な気配を察知したりクーラさんが敵に襲われそうにな時はダッシュで駆けつけかばう
かばう時は武器受けで
これで被ダメを最小にします
囲まれたら囚人達を衝撃波で蹴散らしたいとこですが
遺跡が損傷する可能性があるなら使用×

鼻歌…?
アヤネさんどうしました?
……そ、そうですか
わかりました(渋々納得)



…なんか機嫌良さそうだなぁ



●黒橙のワルキューレ
「クーラさん。立体スキャンって、あとどの位かかります?」
 城島・冬青の問いに、アクーラはヒートアーマーの中で少し困った顔を見せた。
『この遺跡全体の規模が判ってないので、はっきりした事は――この機械の最大連続稼働時間は3時間くらいですね』
「大作映画1本見終わるよりも長いですよねそれ!?」
 予想以上に長い時間を告げられ、冬青が思わずツッコミ返す。
「本当にそんなにかかるんだとしたら、軽く絶望ですよ……」
「なぁに、気にすることはないよ、ソヨゴ」
 ため息をこぼした冬青の肩を、アヤネ・ラグランジェの掌がそっと叩く。
「時間稼ぎすればいいんだろう? 僕そう言うの得意だしネ」
「アヤネさん……?」
 冬青が思わず口にした軽い絶望など微塵もないような、アヤネの笑顔。それに冬青は何か違和感のようなものを感じたが――状況が、問い詰める事を許さなかった。
「来るよ、ソヨゴ」
 2人の前にも、奇跡亡き夜の囚人の兵士達が迫りつつあった。
「ジェノサイドは必要ない。ディレイ――敵の動きを少しでも遅くする」
 アヤネは顔にかけた電脳ゴーグルを、中距離制圧用アサルトライフル『Phantom Pain』と電子的にリンクさせる。
 これで、スコープを覗く必要はない。
 アヤネが見て電脳ゴーグルのカーソルが捉えた存在がそのまま、照準となる。
「僕が足を撃つ。ソヨゴは腕を頼むよ」
 言うが早いか、アヤネの向けた『Phantom Pain』の銃口から輝きが溢れた。放たれた光弾が兵士達の足を撃ち抜く。
「やるしかないですね」
 石畳を蹴って飛び出した冬青の指が、花と髑髏の彫り模様が入った鍔を押し上げる。
 冬青は上体を斜めに体勢を変えて、鞘内で刃を滑らせた。
 浅葱の振り袖が翻り、閃いた花髑髏の刃が『キンッ』と甲高い音を鳴らして、足を撃たれた兵士の手元にある銃器を両断する。
「っ!」
 冬青は返す刃をそのままの向きで振り下ろし、兵士の肩口に峰を叩きつける。
 峰打ちに重ねて放った衝撃波が兵士の腕をへし折り、その身体をふっ飛ばして後ろの兵士へと叩きつけた。
 タンッと軽く足音を立てて冬青が動けば、空いた空間に光が尾を引いて、アヤネの光弾が兵士達の足を撃ち抜いていく。
「UDC形式名称【ウロボロス】術式起動」
 アヤネの袖からスルリと伸びた蛇に似た触手が、その腕と『Phantom Pain』を結ぶように絡みつく。コートの中からも袖から伸びたのより少し太い触手が伸びて、尾の様にアヤネの身体を支えていた。
 敵を拘束するための業で己を支え、アヤネはまるで指揮棒のように銃身を振り回し、滑らかな動きで光弾をばら撒いていく。
 アヤネが指揮者ならば、花髑髏の刃で光弾の向きを逸らす芸当すら見せながら動きについていく冬青は、舞台の演者か。
 合図を言葉とする必要もなく、2人は時折視線を交わすのみで舞うように動き、この場の一角に防衛線を築き上げる。

 ひらりと舞う様に揺れる冬青のオレンジの髪を見ていたからだろうか。アヤネの心の何処かから、とあるリズムが涌き出すように鳴り出していた。
 それはトリガーを引くアヤネの指に。
「~~♪ ~♪」
 やがて鼻孔を通した音となる。
 そのメロディは、このUDCアースで戦乙女と呼ばれる存在を描いた楽劇の一節。
「鼻歌……?」
 その音は、前で刃を振るう冬青の耳にも届いていた。
「アヤネさん、どうしました?」
 強めの峰打ちと衝撃波で兵士をふっ飛ばしておいて時間の余裕を作ってから、冬青は少し下がってアヤネに声をかける。
「ん? 何のこと?」
「アヤネさん、今、鼻歌を歌ってませんでした?」
「歌? 僕が戦闘中にそんなことするわけないじゃないか」
 首を傾げて問う冬青に、アヤネはクスクス笑って僅かに肩を震わせる。
「……そ、そうですか」
 更に問い詰めようかと冬青の中に生まれた逡巡を、自身の第六感が遮った。
 ちらりと視線を横に向ければ、手足を砕かれた兵士を押しのけ、未だ無事な兵士達が動き出している。
「わかりました」
 未だ言いたいことはあるけれど不承不承と言った様子で、それでも石畳を蹴って飛び出した冬青が振り下ろした刃の冴えは変わらない。
「ソヨゴ、疲れてるのかな?」
 その背中を護る様に光弾を放ちながら、アヤネは気づいていなかった。猟兵として戦っていて、先の様に小さいながら声を上げて笑ったのが、初めてだったことに。
 南極という僻地で、地下の袋小路で、いつ終わるとも知れない戦闘。
 言葉にしてしまえば絶望的と言える状況で、冬青と一緒にいるということが楽しくて仕方なくなっている自分に。
 自身に起きた僅かな変化に、アヤネはまだ気づいていなかった。
 それは、冬青も同じ事だった。
「……なんか機嫌良さそうだなぁ」
 アヤネの様子に何かを感じ、その機微がどういう種類であるか大凡は判っても。
 自分の存在がアヤネを笑わせているとは、露にも思わず、変わらぬ太刀筋で花髑髏を振るい、兵士を斬り倒す。
 戦場の中で芽生えた感情。2人がそれに気づくには、時間が必要なようである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真守・有栖
ゆらゆら。わらわら。たっくさん沸いて出たわね!
闇を裂くは光なり。えぇ、煌狼たる私にお任せあれっ

――月喰

抜刀。一閃。
群がる敵を横薙ぎに一気にずばばっと成敗……!

わふん!ざっとこんなもの……よ?
ふぅーん???どうやら一狼打尽とはいかないようね!

じぃーっと見据えるは闇を纏う兵士
群れを従え、纏う闇を駆使する“あれ”はとっても厄介で大変で危険だわ!たぶんっ

一閃突破。光刃の真髄を魅せてあげる……!

刃に込めるは“突”の決意
遮るもの。阻むもの。一切を穿ち、貫く刃を――今、此処に。

我が意を喰らいて、吼えろ。爆ぜろ。――月喰

突き穿つ極光にて。
群れも闇も貫き、裂いて――明けぬ夜に光を。成敗……!

さぁ、次々いくわよ!


カネリ・カルティエ
邪神の力をその身に降ろす兵ですって?
そう……制御失敗したにしろ、呼び出すことができたということでしょう?
……少し、妬いてしまいますね。
(別の個体ではあるが、長年邪神が気になっている為)

遺跡内部の【地形の利用】し【地縛鎖】で大地から魔力を吸い上げ長期戦に備えましょう。

調査結果は私も知りたいので、機材とクーラ君への手出しは許しませんからね。

刃物のついた地縛鎖を操り敵を【串刺し】【傷口をえぐる】
ほらほら、邪神の力、是非とも私に見せてくださいよ。

クーラ君とデータを回収したら、兵士のお相手も飽きましたし、さっさと撤退しましょうか。
クーラ君、さぁ、お早く。
魚類のオブジェの意味はわかりましたか?



●焦がれる者、穿つ者
『ォ………ォォォ………』
「ゆらゆら。わらわら。たっくさん沸いて出たわね!」
 もはや意味のある言葉ですらない音だけを口から漏らし、闇を纏い迫る兵士を前にしても真守・有栖はいつも通りだった。
「煌狼たる私にお任せあれっ!」
 自身たっぷりに、有栖は腰の愛刀に手をかける。
「闇を裂くは光なり――月喰」
 抜刀。有栖が迷いなく鞘走らせた刃が輝きを放ち、光刃が間合いを変えて閃き、兵士達を纏めて横薙ぎに斬り裂いた。
「わふん! ざっとこんなもの……よ?」
 振り切った月喰を鞘に納めた有栖の瞳が、驚きに見開かれた。
「ん? ――んんん??」
 思わず目を疑う。倒れた兵士から滲み出すように出てきた影が大きく広がり、兵士自身を飲み込みながら、一部は影のヒト型へと姿を変える。
 ゆらり。
 斬り倒した筈の兵士が影人間となって立ち上がり、その後ろに浮かぶ新たな影人間。
「ふ、ふぅーん??? ど、どうやら一狼打尽とはいかないようね!」
 びしっと指差す有栖だけれど、ふわふわの尻尾はピクリとも動いていなかった辺り、今回はどうやら大見得のようだ。
 ジャラララッ!
 そこに、金属同士がこすれる音が響いた。

「成程……それが邪神の力ですか」
 有栖の後ろで、カネリ・カルティエが何かを放り投げた格好で佇んでいた。
 影人間となった兵士に絡みついているのは、カネリが投げた地縛鎖。先端についた刃を楔とし、石畳から魔力を吸い上げ敵の動きを封じている。
「邪神の力をその身に降ろす兵――本当なのですね」
 アクーラがそう言った時は、カネリは何処か半信半疑と言うか、素直に信じきれてはいなかった。
「……制御失敗したにしろ、呼び出すことができたということでしょう?」
 何故信じきれなかったか。理由は、カネリ自身がよく判っている。
「随分不安定な力のようですが……少し、妬いてしまいますね」
 カネリの顔を隠す紙の雑面の下にあるのは。
 穏やかな物言いで隠したのは。
 ――嫉妬。
「そんなものですか? 君たちの得た邪神の力は」
 迫る兵士を端から地縛鎖で絡め取ると、カネリは影人間と化してない兵士ばかりを狙って、地縛鎖についた刃で斬りつける。
「ほらほら。邪神の力、是非とも私に見せてくださいよ」
 一度斬りつけたところを、更に別の地縛鎖の刃でグリグリと抉る。
 カネリには長年気になっている邪神がいる。この遺跡と、カネリが気にしている邪神は関係がないかも知れないが、だとしても、その域に不完全ながら到達したものを見せられては、心の底まで穏やかでいられよう筈もない。
『この力は――』
「おや?」
 そうこうしている内に、カネリの前でとある兵士が意味の判る言葉を発した。
『この力は見世物ではない!』
 ふいに兵士に戻った、失われた筈の自我。
 それは即ち、その身に入れた邪神の力を一時的に完全制御した証。
「そうそう、それを見たかったのですよ」
 闇に覆われた兵士の姿に、カネリはじっと見つめる。体格に大きな変化はなし。背中に闇がヒレの様な形を持っている事を除いては。
 2本の足で石畳を蹴って跳び上がる姿は、ほとんど人と変わりない。
「……制御しても、その程度ですか」
 上から迫る兵士を、カネリは地縛鎖を鞭のように振り回して叩き落とし、そのまま投げて巻き付かせていく。
「調査結果は私も知りたいので、機材とクーラ君への手出しは許しませんから」
 妬みと好奇心から、敵を煽るなどと言うリスクのある行動を取ったカネリだが、アクーラを護ると言う点までは忘れていなかった。
 その時だ。

 ピーッ! ピーッ! ピーッ!

 家電みたいな電子音が響き渡ったのは
『お、終わりました! スキャン完了です!』
 ヒートアーマーの中でアクーラが張り上げた声が、猟兵達の耳朶を打つ。
『遺跡のサンプルも、皆さんの戦いで出た瓦礫片を幾つか採取しました。お手伝い頂きまして、ありがとうございます』
 そこまで計算して戦っていた猟兵が果たして何人いたかはやや疑問が残るところではあるが、当のアクーラは、猟兵達のお陰と信じ切っている。
 さもありなん。
「丁度良いところです。兵士のお相手も飽きましたし。さっさと撤退しましょう」
 カネリの言葉に、異論が上がる筈もない」
 だが、この部屋の唯一の出入り口の前には、兵士の一部が集まっていた。
 猟兵達とアクーラの動きを察したわけではない。兵士の習性として、囲んだ敵を逃さぬ様に、唯一の出入り口を塞いでいるのだろう。
「うん、わかったわ! たぶんっ」
 その時、有栖が自信たっぷりな声を上げた。

「影で兵を作り、纏って力となす“あれ”はとっても厄介で大変で危険だわ!」
 一度倒しそこねてからしばし、有栖はじぃぃぃっと敵兵を見つめていた。
 有栖なりに、突破口を探っていたのだ。
 そして見出したのは、あの闇。
 カネリが挑発する中で、敵兵は闇を纏ってみせた。有栖が倒した時には、影のヒト型と変わった。
 ならば。
(「遮るもの。阻むもの。一切を穿ち、闇を貫く刃を――今、此処に」)
 刃に込めるは“突”の意思。
「一閃突破。光刃の真髄を魅せてあげるわ!」
 半身を前に、構えた刀を後ろに引いて。有栖が取るは刺突の構え。
「我が意を喰らいて、吼えろ。爆ぜろ。――月喰!」
 有栖が突き出した月喰の刀身から、極光の刃が部屋の外まで伸びる。
 倒せば影が影人間となるのならば、その影すら光で消し飛ばしてしまえ。闇を纏う兵士達を纏めて貫いた光は、さながら狼の牙のように噛み砕いて散らしていた。
「明けぬ夜に光を。成敗……!」
 猪突猛進もいいところな力技。紙一重とまでは薄くないにせよ、実のところ割とギリギリの線ではあったのに、有栖は気づいていたのだろうか。
 ともあれ、突破口は開けた。
「クーラ君、さぁ、お早く」
 ヒートアーマーは鈍重だろうと、カネリはアクーラを護るその服の上から地縛鎖を巻きつけて、ぐんっと引っ張る。
『あわわわわっ』
「はい、そのままそのまま。姿勢はこっちで制御しますから」
 他の猟兵の念動力がそれをサポートして。
 猟兵達は宙吊り状態のアクーラを連れて、古代遺跡最奥の部屋を抜け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『サメ』

POW   :    サメは潜航する
【地形に姿を隠した状態からの不意打ち】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛み付き】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    サメは飛行する
全身を【任意の属性】で覆い、自身の【サメ力(ちから)】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    サメは仲間を呼ぶ
レベル×5体の、小型の戦闘用【の任意の属性のサメ】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:井渡

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルミィ・キングフィッシャーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●最後の難関
 何人かの猟兵が後ろを警戒していたが、最奥の部屋を出たあと『奇跡亡き夜の囚人』が追ってくることはなかった。
 大分数を減らしたので余裕もなかったのかもしれないが、もしかしたら、あの部屋に踏み入ったものだけを襲う様に、邪神に作り変えられていたのかも知れない。
「ところでクーラ君。魚類のオブジェの意味はわかりましたか?」
 出口へと戻る道すがら、黒いローブ姿の猟兵がアクーラに問いかける。
 あの部屋にあったオブジェのことだ。
 それを気にしていた青年と少年の猟兵も、アクーラがどう答えるかと、走りながら耳を欹てる。
『ああ、アレですか。多分、シンボル的な物だと思います』
 アクーラに寄ると、スキャンの結果、あのオブジェは部屋を構成していた他の石材と組成に違いはなかったらしい。
『特別なエネルギー反応も見られなかったので、アレ自体は、サメの石像と見て間違いないと思いますよ』
 ――サメ。
 確かに、アクーラはそう言った。
『まああんな最奥の部屋に沢山飾っているくらいですから、この遺跡と関係はありそうですよね。ここがサメのUDCを祀っている神殿だったりするかもしれません』
 サメって、祀られるものだっけ。
『あと判った事は、あの遺跡の地質年代が手持ちの機材では計測しきれなかった、と言うことです。計測範囲外という事は、数千年前以上、もしかしたら億年単位の古代の可能性もあります』
 そんなアクーラの説明を聞きながら歩いていると、外から差し込む光が見えた。
『やりました! 外ですよ!』
 アクーラが安堵の声を上げるが、猟兵達は誰も安堵していなかった。
 サメが出てくる。
 何処かもエルフは、そんな事言っていた。
 そして、サメと断定されたオブジェ、この遺跡に関係していると思しきオブジェ。
 逸るアクーラを押さえ、猟兵達が外の様子を伺うと――。

 いかにも『サメですよ』って感じの巨大な背びれが氷の中からにょきり出ていて、ぐるぐると円を描いていた。

●命名、アンタークティカ・シャーク(今決めた)
『それはきっと、南極属性のサメですね』
 猟兵達から状況を聞いたアクーラは、色々ツッコミどころしかない事をあっさりと口に出していた。
『この遺跡の何処かに封印されていた、と考えるのが自然でしょうか』
 そうだね。南極に野良のサメが出てくる方が不自然だ。
『もしそうだとしたら、この遺跡から一定範囲がサメの活動範囲かも知れません』
 どのぐらいの範囲かは、出たとこ勝負。
『それに南極属性なら、南極大陸の中でしか効果がない筈です。南極大陸の外に出てしまえば、きっと大丈夫です!』
 アクーラによると、信号弾を打ち上げれば近くの基地から迎えの船を沖に出して貰う手筈になっていると言う。
 つまりは、船まで逃げ切れればこちらの勝ちという事だ。
 勿論、サメを倒してしまっても構わない。
 逃げるにせよ、倒すにせよ――最後は、南極の氷上での戦いだ。

==============================================
3章です。ついにサメとのボス戦です。
沖の船まで逃げ切るか、サメを倒せば成功となります。
今回も必ずしも倒さなくてもOKです。
勿論、倒してしまっても一向に構いません。

文中ではアクーラの言葉であるため、やや曖昧な表現になっていますが、サメの活動範囲に限界がある事と、海上の船が安全地帯である事。
この2点は確定として頂いて大丈夫です。
(なお活動範囲の具体的な距離はあえて明記しておりません)
==============================================
黒玻璃・ミコ
※美少女形態

◆心情
南極属性の鮫……間違いなく氷や吹雪の中に潜み襲い来る難敵です
時速数千㎞の敵から逃げ切るのは至難ですしね

◆行動
さて先ずは【黒竜の恩寵】で防御力UPし迎撃の準備です
影から愛用の9つの黒竜剣を取り出し
【念動力】による【カウンター】で迎撃戦と洒落混みましょうか?
冴え渡る【第六感】により【地形の利用】した
足下の氷や岩壁からの不意討ちも見当が着きますしね
武器に塗った【毒使い】による魔術毒で
少しずつ【生命力吸収】させて貰いましょう

完全に南極から去るまではアクーラさんの安全に気を配りますよ
脱出物の映画で最後の最後に
丸囓りにされることは良くありますからね

◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK


雨咲・ケイ
話はわかりました。
活動範囲は限られているんですね。
ですが、やはりオブリビオンであるならば
この場でやっつけちゃうのが良いかと思います。
というわけで(?)三枚におろしましょう。

【POW】で行動します。

敵の注意を引き付け、アクーラさんから
引き離すように動きましょう。

敵が姿を隠した際は【第六感】で当たりをつけ、
ルミナスから【2回攻撃】でサイキックエナジーを放ち、
敵をあぶり出しましょう。
敵が姿を現したら、【スナイパー】による盾の【投擲】で
【目潰し】を狙い、怯んだら【魔斬りの刃】で攻撃します。

敵の不意打ちを受けてしまった場合は【オーラ防御】で
ダメージを最小限に抑えます。

アドリブ・共闘歓迎です。


ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
現状は・・・あのサメを放置するのは、危険ですね。
仮に船が来たとしても移乗時に襲われる、ひいては最悪船自体が損傷を受けかねません。ここは、殲滅するのが最善の手段かと。
とりあえず、ミロネンコさんは避退させ、サメはこちらで引き受けます。

件のサメは、恐らく氷の中を自由に動くのがアドヴァンテージになります。つまり、氷の中から引き摺り出すのが最善。サメがこちらを襲う、または跳ね上がる時を待ち、私のUCを使用して動きを封じますので、その間に皆さんで攻撃を集中してください。

どうやら気配から、私の黄衣の王もサメが相手、つまり水の属性相手のせいか、非常に敵愾心が高まってる様です。


ミハイル・グレヴィッチ
【SIRD】の面々と共に行動

おいおい、南極にサメだぁ?どこぞのB級映画じゃあるまいし、出来損ないのCGか何かじゃねぇのか?ったく、厄介だね。
とりあえず、ミロネンコの身の安全を確保すりゃいいみたいだが・・・別に、倒しちまっても構わねぇんだろ?上等だぜ。

とはいえ氷の中を動き回るのは厄介だな。まぁ局長に何か考えがあるらしいから、それに従いつつこちらは勢子替わりにサメを追い込む為、弾幕を張ってサメを追い込む。チャンスができたら、サメにありったけの火力を叩き込む。

ミロネンコは退避させてる方針だが、まぁ指示を無視して残る可能性もあるからな。まったく度胸があり過ぎだぜ。普段の調査とかも、こんなカンジなのか?


ガーネット・グレイローズ
南極属性の……サメ? 南極属性とは……
あれか、武田属性みたいなものか。
何にせよ、アクーラの調査が終わったのなら
こんな所に長居は無用だ。全員で無事に帰還するぞ!

ところで、サメというのは本来温かい海にしか
いない筈じゃないか?
私は地球の自然に詳しくないから、詳しく教えていただきたいのだが!

【ブレイカーシップ・ブレイブナイツ】を発動。
53隻の自律式小型宇宙船を召喚。
高く飛び上がった巨大南極サメに空中戦を挑む!
艦隊は上空を旋回しながら<援護射撃>し、火力と装甲が必要であれば
適宜合体して強化する。

私は氷の中から襲ってくる小型サメに対処しよう。
手に装着したブラックバングルから<衝撃波>を放って迎撃するぞ。


メンカル・プルモーサ
【SIRD】で参加。
南極属性の鮫…南極属性とはいったい…氷上は危険だね…箒に乗って飛んでおいて…
……アクーラはいったん【旅人招く御伽宿】に避難してもらうかな…

…仲間を呼ばれたら小型鮫は…【連鎖する戒めの雷】で一網打尽だね…飛ぶ鮫だけでも面倒だからさっさと始末するに限る…
…鮫本体はネリッサがひきつけてくれるみたいだから…動きを封じたところに全力魔法での【尽きる事なき暴食の大火】をぶつける……

……もしネリッサの拘束を解いて逃げるなり襲い掛かろうとしたら【愚者の黄金】で作った黄金の網を絡ませて再び拘束だね…氷に潜られたら厄介だから逃がさないよ…


灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員として連携

これが只の野生なら静かに暮らさせてあげたいですが
…敵ならば止むを得ませんね

言いつつUC:ウロボロス・アーセナルで
電磁波利用型の地雷探査ドローンを数体召喚
ミロネンコさんの退避支援に四方に一気に走らせ
音と振動・出力を落として微弱な電磁波でサメの感覚器官を
刺激し誘導し囮に

同時に団長が捕殺しやすいキルゾーンに引きずりこみ
上手く連れ込めたら動きを緩め飛び出してくるを誘います

自身は(忍び足・見切り)で
動きに警戒しつつ徐々に近づいておき
捕獲成功次第、即時に指定UCを発動
尾鰭の付根と鰓を巨狼の顎で強襲し
(鎧無視攻撃・鎧砕き・戦闘知識)
機動力を削ぎつつ確実に傷を増やす様戦う

アドリブ歓迎


リュカ・エンキアンサス
章お兄さん(f03255)と
…なんだろう。お兄さんがすっごいはしゃいでる…
ええ。うん。……うん?
そう…なんだ?
(B級何とかってこないだ見たやつのことだよな
お兄さんが楽しそうだから、まあ、いいか)

と、とにかく
戦闘せずに澄むならそれに越したことはない、ということで逃走を選択
油断はしないけど
空飛ぶって何さ
それは、本当に魚類なの?
怪しみつつもいつでも走行しながら銃を撃てるように準備はしておく
最小限牽制しながら逃走優先するけど、やむなく接近されたときは足止めをするから、先に行っておいてもらおうか
絶望の福音で回避しながら、敵をちまちま撃って時間を稼げたら
お兄さん、あとは任せ…

…面白時空って何?(とまどい


鵜飼・章
リュカさんと

凄いよリュカさん南極属性のサメだ
サメはゾンビと並ぶB級映画界の花形なんだ
こんなサメ映画的な場面に出会すなんて…
感動で寒さも吹き飛んだよ

バイクか隼でアクーラさんを運びながら船を目指そう
油断は禁物だよ
この世界のサメは潜るし殖えるし空も飛ぶ常識の通じない存在さ…
疑ってるの?
なら魚類ワールドを見せてあげるよ

逃げる事を優先しつつ牽制もするよ
南極属性には熱帯属性のサメだ
図鑑から出したシュモクザメの群れをぶつけ
弱点を突いてサメ力を下げ飛行力を削ぐ…!
だよねアクーラさん?

駄目だよリュカさん普通に対応しちゃ
面白時空に慣れないと
この地球では生き残れないよ…

逃げ切れたらアクーラさんと握手
健闘を讃えあおう


ロウガ・イスルギ
脳が考えるのを拒否してるな・・・・・・ええい、ままよ!
目の前のサメを排除対象として確認!殲滅する!!

こちらの攻撃に合わせてくれるってんなら儲けモノ、
不意打ちからの【噛み付き】は「残像」で躱して「カウンター」で
攻撃を叩き込む!
先ずは厄介そうな歯を斬り落としますかね。
「グレイプニルを噛み切ろうってのか?、歯周病末期より
酷い事になるのを覚悟するんだな!」

(予知が現実化した場合)
サメの胴体にグレイプニルを巻きつけ切断!輪切りにし
アクーラを救出する、勿論ヒートアーマーまで切らないように
威力は調節
「全く・・・・・・当分護衛任務は懲り懲りだ。アクーラ、できればアンタとは
二度と会いたくないぜ、仕事では、な」


カネリ・カルティエ
【UDC召喚】で再度白熊のUDCを召喚。
クーラ君達の撤退補助を任せ、私自身は敵の足止めを試みます。

アレがこの神殿の主ですか?
そういえば、兵士の背にもありましたね、背びれ。
少々ガッカリしてしまいましたが、一応アレも神の一柱というのならば、それなりの対応をしなければなりませんね。

お守りの【追跡】で敵の動きに注意しつつ、【催眠術】で立っている位置を誤認させ敵の攻撃を避けます。

言葉で敵に【呪詛】をかけ、
地縛鎖を操り【串刺し】深くまで【傷口をえぐる】

サムライエンパイアやUDCアースではアレをかまぼこ、という料理にするのでしょう?
何人前ぐらいになるのでしょうね。

可能であれば【情報収集】しクーラ君への土産に


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】
やっぱり出たか
出発前からサメは予測されていたので
心構えは出来てる

首が三つだったりタコの足がついていないだけまだマシだよネ

ソヨゴはやる気みたいだし
倒してしまっても構わんだろう?

PhantomPainを装備
前に突っ込むソヨゴを援護射撃するよ
敵の動きを電脳ゴーグルで予測してその前に銃弾を撃ち込む
ソヨゴは囮のつもりだろうけど鰭一本触れさせない

サメって飛ぶの?
南極属性なら仕方ないか

敵の動きが止まったら
徐にSilverBulletを組み立てる

その手合いは生き汚いから
油断は禁物

照準を定め
少しでも動いたら
とどめを刺すよ

え?アレ食べたいの?
お腹壊しそうだし
僕は遠慮したいかな...


城島・冬青
アヤネさん(f00432)と

世の中には空から雨の様に降ってくるサメとかメカになるサメとかも存在しているらしいので南極のサメくらいでは動じませんよ
勿論コレを倒してしまってもいいんですよね?

クーラさんには戦闘に巻き込まれないよう離れて貰いサメに此方の存在をアピールします
はい!餌です
氷の上に顔をだした所を衝撃波をぶつけます
サメが負傷してたら負傷箇所を傷口をえぐるで追撃
UCは夜歩く
第六感で潜航したサメの気配を察知したら不意打ちを食らう前に上空へ退避
ジャンプして飛んで来たら武器受けで対応

そういえばアヤネさん
新鮮なサメの刺身はトロに匹敵する美味しさらしいですよ?
気になる!
まぁ倒したら消えちゃうと思いますが



●南極属性とは
『それはきっと、南極属性のサメですね』
 そんな局地的な属性――属性と呼んで良いのだろうか――をアクーラから聞かされた猟兵達の反応は、まさに三者三様、十人十色。

「南極属性の……サメ? 南極属性とは……」
「南極属性の鮫……南極属性とはいったい……」
 ガーネット・グレイローズとメンカル・プルモーサの口から、同時にほとんど同じ言葉が出ていた。
 メンカルの好奇心と知識欲の強さを知る【SIRD】の3人は、少なからずその姿に驚いていた。
「わかる。わかるぜ。俺も脳が考えるのを拒否してやがる」
 白虎顔の眉間を寄せたロウガ・イスルギが、2人に同調する様に深いため息を吐く。
 否定しようにも、現実がそれを許してくれない。遺跡の外を覗けばサメのヒレが氷からとにょっきり出ていて、ぐるぐるしているのである。
「何でやつは氷の中を平然と泳いでいる。水じゃないぞ」
 その現実こそが、ガーネットを増々の混迷へと誘うのだが、かと言ってそれを見なかったことにする、というわけにもいかない。
 このまま南極の遺跡に籠もっている訳にはいかないのだから。

 南極属性をすんなりと受け入れられない者がいる一方で、その逆もいる。
「凄いよリュカさん南極属性のサメだ」
「ええ? うん。……うん?」
 鵜飼・章は、はしゃいでいた。リュカ・エンキアンサスが戸惑うほどに。
「サメはゾンビと並ぶB級映画界の花形なんだ」
「そう……なんだ?」
(「B級何とかって、こないだ見たやつのことだよな?」)
 記憶の中のそれと南極のサメと章のはしゃぎっぷりが中々繋がらず、リュカは胸中で首を傾げながら相槌を打つことしか出来ない。
「こんなサメ映画的な場面に出会すなんて……感動で寒さも吹き飛んだよ」
(「お兄さんが楽しそうだから、まあ、いいか」)
 結局、章のはしゃぎっぷりに、リュカは深く考えるのをやめた。
 寒さに意気が下がっていた章と南極の冒険に目を輝かせていたリュカの立場が、たった1匹のサメによってこうも逆転する事になろうとは。
 サメ、恐るべし。

「話はわかりました」
 とは言え、最も多かったのは、すんなり頷いた雨咲・ケイのように、事実を事実と受け止める猟兵達である。
「アレがこの神殿の主ですか」
 カネリ・カルティエは、氷から生えたサメの背びれを落ち着いて眺めていた。
「そう言えば、兵士の背にもありましたね、背びれ」
 カネリの脳裏に蘇るのは、遺跡の奥で戦った兵士達が纏っていた漆黒の形。背びれのような形があったではないか。
(「あれはサメ力を纏っていた、という事でしょうか」)
 その本尊と言えるのならば――まだ得られる情報はあるだろうか。消沈しかけていた好奇心が、カネリの中で再び首をもたげていた。

「やっぱり出たか」
 アヤネ・ラグランジェは、いつも通り。落ち着いている。
 出発前からサメが出る予測されていたのだ。
 氷から突き出たサメのヒレ程度で動揺しない心構えは、来る前から出来ている。
「ソヨゴも平気そうだネ?」
「それはもう」
 アヤネに視線を向けられ、城島・冬青は笑顔で頷く。
「世の中には空から雨の様に降ってくるサメとか、メカになるサメとかも存在しているらしいので。南極のサメくらいでは動じませんよ」
「そうだネ。首が三つだったりタコの足がついていないだけまだマシだよネ。南極に台風は発生しないだろうしネ」
 冬青もアヤネも、B級サメ映画を押さえているようだった。

「ったく、南極にサメなんてよ。ホント、どこぞのB級映画じゃねぇか」
 そんな2人の会話が聞こえたか、ミハイル・グレヴィッチがため息を吐く。
 ミハイルの場合、受け入れ難いのは南極属性よりもサメそのものであるようだ。
「出来損ないのCGか何かじゃねぇのか?」
 口ではそう言いながら、ミハイルは感じていた。あれは紛れもなく本物の驚異だと、傭兵として培った勘が告げているのを。
「ったく、厄介だな。どうするよ局長? とりあえず、ミロネンコの身の安全を確保するのは聞くまでもねぇだろうけど」
 目を背けてもどうにもならない。
 ピシャリとこめかみを両手で叩いて、ミハイルはネリッサ・ハーディに問いかける。
「そうですね。南極属性と言う事ですが、恐らく氷の中を自由に動くのがアドヴァンテージになる類のものだと思われます」
 問われたネリッサは、落ち着いて考えを喋り始めた。
「あのヒレは氷から突き出ていながら、氷が割れた様子はありません。どういう原理はさておき、南極属性の為せる技かと」
 確かにサメのヒレは氷の中をぐるぐると回遊し続けている。
「団長の言う通りかと。あのヒレが氷を割って出ているのなら、今頃は氷床に大穴が空いていなければおかしいです」
 ネリッサの考えに、灯璃・ファルシュピーゲルも同意を示す。
「ってことは、外は奴のフィールドか」
「そうですね。氷や吹雪の中に潜み、襲い来る。それが南極属性の特徴であるのは、間違いないと思います」
 黒玻璃・ミコも【SIRD】の3人の間で固まりつつある考えに、同意する様に頷いた。
「とりあえず……アクーラはいったん【旅人招く御伽宿】に避難してもらうかな」
 好奇心と知識欲の強さ故に南極属性に困惑していたメンカルも、SIRDの仲間が納得しているのなら、と、気を取り直してアクーラに提案する。
『え? ここからでも入れるんですか?』
 それを聞いたアクーラが、今度は目を丸くしていた。
「扉型魔法陣を描けば、何処でも入り口は作れるよ」
『成程……では、出口はどうなんでしょう?』
 サラリと返すメンカルに、アクーラはなおも問いかける。
「基本的には入った場所と同じ所だけど。私が魔術的にマーキングした場所も出口に指定出来るから、一応、何処にでも出られ――あ」
 アクーラの問いに答える形で返していたメンカルは、ふと、気づいた。
 最後に旅人招く御伽宿から出てから、まだ半日と経っていないという事に。
「もしかしたら――ちょっと確かめてくる」
 言うが早いか、メンカルは扉型魔法陣を描いてその中に飛び込んだ。
 そして、待つことしばし。
「やっぱりだ。昨日、外に描いた魔法陣がまだ残ってる。ここから入って、今朝と同じ場所に出ることが可能だよ」
 戻って来たメンカルが、少し興奮した様子で告げる。
 多少なりとも吹雪の影響を受けにくそうな地形を選んだ事が、功を奏したか。
 思いもよらず見つかった、サメとエンカウントせずに遺跡の外に出られる道。それを選ばない手はなかった。

●猟兵達の選択
 南極の氷原に、猟兵達が次々と姿を表す。
 サメはまだ、遺跡入り口前にいるのだろう。少なくとも、背ビレは見えない。彼我の距離は数百mは確実にある筈だ。
 とは言え――逃げ切るのに十分なアドバンテージとは言い切れない。
 だから、猟兵達は遺跡の方に向き直った。
「皆、本当に戦うつもりなんだ?」
 戦闘せずに済むならそれに越したことはない――リュカはそう思っていたのだが。
「私はアクーラの調査が終わったのなら、こんな所に長居は無用だと思うのだがな」
 はっきりと同意を示したのは、ガーネットくらいだった。

「あのサメを放置するのは、危険ですよ」
 目を細めて遠くを見ながら、ネリッサが返す。
「仮に船まで辿り着いたとしても移乗時に襲われないとは限りません。ひいては最悪、船自体が損傷を受けかねません。ここは殲滅するのが、最善の手段かと」
「ええ。脱出物の映画で、最後の最後に丸囓りにされることは良くありますからね」
 ネリッサの懸念に、ミコが同意を示す。
 そんな事は起きない――とミコの懸念を否定する言葉は、誰も言えなかった。そうと言い切るには、この世界は色々ありすぎる。
「それに情報通りなら、最大時速は数千㎞の敵ですから。逃げ切るのは至難でしょう」
「滑って逃げられる速さではないですね」
 ミコの言葉に頷きながら、ケイは腕に小型の盾を嵌め直す。
「それに活動範囲に限界があるとは言っても、オブリビオンですからね。この場でやっつけちゃって、3枚におろしてしまいましょう」
 ケイの判断は、猟兵として正しい。
「アレを倒してしまってもいいんですよね」
「そうそう。倒してしまっても構わんだろう? だネ」
 やる気満々で刀に手をかけている冬青に、アヤネも頷き同調する。
「これが只の野生生物なら、静かに暮らさせてあげたいですが」
 灯璃とて、不要な戦いを好む訳ではない。だが、氷の中を泳ぐサメなど、まともな生き物ですらない相手を、放置する気もない。
「……敵ならば止むを得ません」
 灯璃のその言葉に、撤退の意志は感じられない。

「章お兄さんも?」
「リュカさんのバイクか僕の隼でアクーラさんを運ぶ手もあるけど。それも安全とは言えないからね」
 見上げて問うリュカの視線に、章はこくりと頷き返す。
「この世界のサメは潜るし殖えるし空も飛ぶ常識の通じない存在。油断は禁物だよ」
「油断はしないけど」
 一見らしさはないが、リュカは戦場を渡り歩いた傭兵だ。敵がいるのであれば、油断することなどあり得ない。あり得ないのだが――。
「空飛ぶって何さ。それは、本当に魚類なの?」
 リュカの常識の中では、魚類は水の中を泳ぐ生き物だ。
 飛ぶもんじゃあない。
「疑ってるの? すぐに分かると思うよ。この世界の、魚類ワールドを」
 無駄に自信に溢れた章の言葉が現実になると、何故かリュカは予感していた。
 何故なら、遠くでぐるぐるしていた小さな点が、こちらに向かって動き出していたからである。

「真っ直ぐこっちに向かって来てますね?」
「サメは遠くの獲物を察知する能力に長けていると聞きます。実際に、これだけの距離でも察知されると流石に驚きます」
 小さく息を吐いたネリッサに、灯璃が淡々と告げる。
「だとよ? 学者センセーには引っ込んでて貰いたいんだけどな」
「今なら宿への扉を描く時間、あるよ?」
 氷の上に立つミハイルと、箒に乗って浮かぶメンカルの視線の先にいるのは、巨大な白熊にがっしりもっふりホールドされたアクーラだった。
『あのサメが遺跡に関係しててもしてなくても、見届けたいのですよう』
 多少申し訳無さそうな声を出してはいるが、おとなしく引っ込む気は無いらしい。
「まったく度胸があり過ぎだぜ」
 ますます学者にしておくのは惜しいと、ミハイルは胸中で続ける。
 メンカルは、黙って溜息をこぼしていた。
「好奇心を押さえられない――判りますとも」
 この場で誰よりもアクーラの気持ちが判っているのは、恐らくカネリだろう。カネリの行動原理も、好奇心に寄るところが大きいのだから。
 だからこそ、カネリは白熊を喚んだのだ。
 その身体は、吹雪の行軍のために召喚した時よりも二周りは大きい。
『サメに対抗してサイズアップですね』
「まあ、クーラくん護衛用に喚んだものですからね。サメを防ぎきれなくても、一回くらいは保つでしょう」
 アクーラは白熊に任せて、カネリは遺跡の方に向き直る。
「兵士達には少々ガッカリしてしまいましたが、一応アレも神の一柱というのならば、それなりの対応をしなければなりませんね」
 次第にはっきりと見えてくるサメのヒレを眺めながら、カネリはどうしてやろうかと考えを巡らせる。
 サメが猟兵達に気づいているのは、もう疑いようがなかった。
「ええい、ままよ!」
 サメが迫るという現実が、ロウガに傭兵として腹を括らせる。
「目の前のサメを排除対象として確認! 殲滅する!!」
 その声が聞こえたのか。
 サメのヒレが、ロウガに真っ直ぐ向かって来ていた。

●氷の上の決戦
「氷の中から不意打ちしてくるってンなら――こうだ」
 ザッと氷のクズを散らして、ロウガが氷を蹴って飛ぶ。
 次の瞬間、ロウガの姿が幾つにも増えた。
 その大半は輪郭がややぼやけている。残像だ。
 氷上でこれだけの残像を作れるロウガの体捌きを、流石と言うべきだ。サメが視覚で敵を捉えているならば、その動きも有効だっただろう。
 だが、サメが頼りにしているのは視覚だけではない。
「ちっ。残像にゃ引っかからンか」
 真っ直ぐ自分に向かってくるサメの背びれに、ロウガが小さく舌を打つ。
 だが、その声に焦りの色はなかった。
 トプンッ。サメの背びれが氷の中に沈む。
「あ、潜航しましたか」
 それを見たカネリが、懐に手を入れる。
 取り出したのは、導き鳥のお守り
「さて、サメは何処でしょう?」
 カネリが問いかける様に呟く。
 カネリはお守りに問いかける様に呟く。導き鳥のお守りには、持ち主の望む場所に導くと言う。
 何かの骨で作られた鳥の嘴は、ロウガの3m程前の氷へ向いていた。
「来ますよ」
 カネリがそう告げてから、1秒――2秒――。
 ゴバァッ!
 氷を割る音もなく静寂を破ったのは、氷の中から飛び出すサメの口。だが、そこにずらりと並んだ歯が噛み千切ったロウガの姿が、風に溶けるように消える。
 それもまた残像。
 残像を残すだけの速さで動けるのならば、来ると判っている不意打ちを避ける事は難しくはない。
「先ずはその厄介そうな歯、斬り落とす」
 ヒュンッ、とロウガの手元でワイヤーが風を切る。
 その音に対抗するかのように、ガチンガチンとサメが歯を打ち鳴らす。
「グレイプニルを噛み切ろうってのか? 歯周病末期よりも、酷い事になるのを覚悟するんだな!」
 グレイプニルとは、とある神話に於いて神すら喰らう獣を縛った縄の名だ。
 それと同じ名を冠した鋼の糸。
 サメ相手だろうと、噛みちぎられる事は無いとロウガは確信していた。
 その確信はすぐに現実となる。
「パズルは得意か? 貴様の歯がピースになる方の話だがな!」
 絶冥拘縄――ストラングラーフィニッシュ。
 ガキンッ!
 グレイプニルのワイヤーがぶつかった歯が、鈍い音を立てて斬り砕かれた。
「はっ、だから言っただろ――って、オイ?」
 折れた歯の残骸がサメの口から抜けて、サメの奥の歯がスライドして歯が折れた間を埋めていく。
「本当に、厄介な歯だな」
 次は胴体を輪切りにしてやろうかと身構えるロウガだが、サメはそのワイヤーを驚異と見たのか。着氷するなり氷に潜り込み、他の猟兵達へと向かっていった。

「はい! こっちにも餌がいますよ!」
 鬼さんこちら。
 自身の存在をアピールしようと、冬青が声を上げる。
 サメのヒレがくいっと向きを変えるのを冬青の後ろから見ながら、アヤネは無言で電脳ゴーグルとリンクさせた『PhantomPain』を構えた。
(「ソヨゴが言い出したから囮を任せるけど、鰭一本も触れさせない」)
 静かな決意を秘め、アヤネの指が安全装置を外すと同時に、サメのヒレが再び氷の中に消えていく。
 だが、アヤネの電脳ゴーグルには、計算されたサメの出現予測地点が明滅していた。
 アヤネはその全てに、銃弾を撃ち込む。
「ソヨゴ、その何処かから出てくる可能性大だよ!」
「判りました!」
 アヤネの声に頷いて背中を向けたまま頷いて、冬青は目を閉じた。
「っ!」
 己の中に電気が走った様な感覚に従って、冬青は後ろに跳ぶ。
 直前まで冬青がいた空間を、牙を剥き出しにしたサメが通り過ぎる。
「そこっ!」
「合わせるよ!」
 冬青の花髑髏の刃から放たれた衝撃波と、アヤネが『PhantomPain』の銃口から浴びせた弾丸に横腹を叩かれ、サメは再び氷に潜っていった。

 二度も襲撃に失敗したサメは、次なる獲物を探す。
 そして、より小さな人影――ミコに狙いを定めた。
 確かに姿形を言えば、ミコの姿は小柄な少女のそれだ。
「いあいあはすたあ……拘束制御術式解放」
 だが、ミコは屠竜の魔女である。
 唱える言葉で、ミコが解放していく魔力は、吹雪や遺跡の中で使った時とは異なり、可視化された色を持っていた。
「黒き混沌より目覚めなさい、第壱の竜よ!」
 その色は黒。
 ミコの全身から、漆黒の光が溢れ出す。
「黒竜剣・第六圏」
 サメの不意打ちを第六感で感じ取ったミコが己の影から取り出した漆黒の大盾が、氷の中から出てきたサメとぶつかり合う。
 ピシリ。
 サメの牙が、大盾を覆う漆黒の光に小さなヒビを入れた。
 ぐぐぐっとサメの口が大盾を押し込んで、少しずつ閉じていく。
 ゴンッ!
 目の前の盾を噛み砕いてミコに噛み付く。それだけに意識が行っていたサメの横面を、何処からか飛んできた小さな盾が叩いた。
 ケイが投擲した盾、アリエルだ。
 ケイの闘氣に感応して輝くアリエルは、その大きさ以上の衝撃をサメに与えていた。
「へえ。黒竜の鱗にヒビを入れますか」
 サメが怯んだ隙に、ミコは大盾を引く。
「ならば私も出し惜しみなしで行きましょう。全圏出なさい――黒竜剣」
 ミコの影から新たに飛び出した8つの剣。
 それぞれに漆黒の光を纏った剣の幾つかは、槍や飛剣、大鎌へと形を変えながら、8の刃がサメを迎撃する。
 ミコが剣に纏わせた漆黒の光は、黒竜の恩寵。聖剣をも防ぐ黒竜の鱗であり、魔王すら恐れる黒竜の爪。
『!?』
 思わぬ反撃を受けたサメが、慌てて身を翻す。
「させませんよ」
 そこに、サイキックの光が浴びせられた。光の先には、両の手首のブレスレット型の増幅器『ルミナス』を輝かせたケイの姿。
 ケイの放ったサイキックエナジーが、潜航しようとしたサメを弾き飛ばす。
「そう何度も何度も、氷に逃げられると思いましたか」
 ケイはサメを氷の中のあぶり出すつもりでいたが、その位置を掴むよりも、サメが飛び出す方が早かった。
 故にケイは方針を変えたのだ。
 氷の中のサメではなく、サメが氷の中に戻る瞬間に狙いを切り替えた。
 空中に放り出されたサメの巨体が、ゆっくりと降下をはじめ――。
 パァンッ!
 空気の弾ける音が響いて、ケイとミコの前からサメの姿が消えた。

●南極の空に
「本当に、飛んだ」
 リュカの目の前で起きたことを端的に表すと、その一言につきた。
 謎の力を纏ったサメが、一気に空に飛んでったのだ。しかも音の壁を超えて。
「サメって飛ぶの?」
 音速で飛ぶサメに、流石に遠い目でアヤネが見上げる。
「南極のサメですから!」
「ま、南極属性なら仕方ないか」
 それでも冬青の一言にあっさり頷ける辺り、流石にUDC慣れしていると言うべきか。
「なにあれ。やたら速いんだけど。撃てるかな」
 あまり自信はなさそうに言いながら、リュカが『灯り木』の銃口を空に向け、ギュンギュンと空で五月蝿く風を切るサメに狙いをつけようとする。
「駄目だよリュカさん」
 その銃身を、章の手がそっと降ろした。
「普通に対応しちゃ駄目だよ。面白時空に慣れないと」
「…………」
 真顔でそんな事を言われ、リュカが一瞬固まった。
「ええ……面白時空って何?」
 これまでの14年の中で、ついぞ言われた覚えのない駄目出しに、リュカは戸惑いが深まるのを感じながら、絞り出すように章に聞き返す。
「面白時空は面白時空だよ。魚類ワールドは、その1つにすぎない」
 章の答えは、ますますリュカを戸惑わせた。

「アクーラ。私は地球の自然に詳しくないから、詳しく教えていただきたいのだが」
 音速で飛んでるサメを呆然と見上げ、ガーネットがアクーラに問いかける。
「何でやつは氷の中を平然と泳いだ挙げ句、空をあんなに元気に飛んでるんだ。水じゃないぞ? サメは温かい海にしかいない筈じゃないか? 乾燥にも弱いんじゃないか?」
 あんな速度で飛んでたら、たしかにサメ肌カピカピに乾きそう。
『ホオジロザメなんかは、寒冷気候帯の海にもいるらしいですよ』
 だが、アクーラはそんなガーネットに事も無しに返していた。
『深海に生息している種もいると聞きますし。割と何処の海にでもいますよ、サメ』
「あ、そうなのか……」
 地球の自然も侮れないと、齢100歳にしてガーネットは思い知るのだった。

「あ、そうだ。それだ」
 ガーネットとアクーラの会話が聞こえた章が、ぽんと手を叩く。
 そして、徐に図鑑『自然数の集合』を掲げた。
「という訳で、南極属性のサメには熱帯属性のサメ――だよね、アクーラさん?」
『熱帯属性? ――あ、成程!』
「待って、アクーラお姉さん。なにが成程なの?」
 章の言葉にアクーラが手を打ち、ついていけないリュカが問いかける。
 その間にも、自然数の集合の頁はひとりでに捲れて――止まった。
「さあ、行っておいで」
 光を放つ図鑑を、章が掲げる。光の中から飛び出したのは、奇妙な頭を持つ魚。
『ハンマーヘッドシャークですね!』
 またの名を、シュモクザメ。
『確かにハンマーヘッドシャークは、熱帯の海に生息している方が多いです。南極の海は生息圏外なので、アンタークティカシャークに対抗出来るかもしれません!』
 南極ザメを追って空へ浮かび上がっていくシュモクザメを見上げ、アクーラが興奮した声を上げる。
「そう。サメにはサメということだよ」
(「また謎の属性が増えた……」)
 何か意気投合してるっぽい章とアクーラを眺めるリュカの瞳は、心なしか虚ろになっていた。頑張れ、常識人。

 南極の空で、サメとサメが対峙する。
『2万か。まあまあのサメ力(ちから)だな』
『サメ力(ちから)53万だと!?』
 そんな会話がサメ同士でなされた――ことはない。図鑑から現れたシュモクザメは、所詮、章の魔力で出来た幻の獣に過ぎない。そこに心はない。
 故に、明らかな力の差があっても、シュモクザメは臆する事なく南極サメに向かって攻撃を仕掛けていた。

(「私は何をしている――この程度で動揺してどうする」)
 その奮闘が、ガーネットの混乱を払っていた。
「勇敢なる騎士たちよ、今ここに集え!」
 南極の氷床の上に響き渡ったガーネットの声から、戸惑いの色が消えていた。
 その声に応えて空より舞い降りる、53機のブレイカーシップ・ブレイブナイツ。
「空中戦が望みか。ならば応じてやろう。征け」
 サメ対サメの戦いに加わる、小型宇宙船の艦隊。艦隊は上空を旋回しながら、光線を放ちシュモクザメを援護する。
 パァンッ!
 再び空気の弾ける音。直後、小型宇宙船が5機程、大破していた。
「……サメに音速をあっさり超えられると、デタラメな生物感が更に増すものだな」
 戦闘機以上に速く飛ぶサメ。
 そんな非常識に、ガーネットが思わず呻く。だが、対抗策はある。
「ブレイカーシップ、合体せよ」
 ガーネットの号令に応えて、残る小型宇宙船の全機が1つに集まり、中型くらいの宇宙船へと変形を遂げた。
 その大きさは、南極サメと比べての遜色がない。
「制空権、そう簡単には譲らんぞ」
 キィンッ! ガキンッ!
 南極の空に金属音が響き、血飛沫が舞う。
 サメ対サメが、サメ&宇宙船対サメ、になっていた。

『シャァァァァ!』
 空中戦闘の最中、南極サメの方が吠えた。
 ボコリ。ボコリ。
 その咆哮に呼応する様に、氷が盛り上がる。氷を突き破って飛び出したのは、マグロほどの大きさの魚影。海中の氷で作られた、氷属性の小サメだ。
「操縦者を狙ってきたか!」
 氷の小サメの視線が、ガーネットに浴びせられる。
 ブラックバングルから衝撃波を放ち、小サメを吹き飛ばす。
 だが、ガーネットの背後で、新たに氷が盛り上がり――
 飛び出した小サメが、一瞬で砕け散った。
 出てくるのが判っていたかの様に先を読んだリュカが、無言で『灯り木』のフルオート射撃で出てきた所を一気に撃ち抜いたのだ。
「小さいのがワラワラと……飛ぶ鮫だけでも面倒なのに」
 銃撃を逃れて氷の中から飛び出してきた小サメの群れに、メンカルが何度目かになる嘆息を漏らしながら銀杖を掲げる。
 周囲に浮かびあがる、青白い魔法陣の数々。
「紡がれし迅雷よ、奔れ、縛れ」
 メンカルの掲げた杖の先端、銀の三日月の中に生まれる雷光。
「汝は電光、汝は縛鎖。魔女が望むは魔狼封じる天の枷」
 連鎖する戒めの雷――ライトニング・チェイン。
 銀の三日月の間で瞬いた雷光は、雷の鎖となって、小サメの中を吹き荒れる。小サメは全て、南極サメが作った同じ属性の個体。
 同じ性質の間を伝播するメンカルの雷は、氷の小サメに殊更良く効いた。

「アヤネさん」
「うん。援護は任せて」
 トントンとつま先で氷を叩く冬青に、アヤネが組み立てたSilverBulletを手に頷く。
「じゃあ、ちょっと飛んできますね――音速で駆け抜けますよ!」
 説明せずとも通じるアヤネを心強く思いながら、冬青は氷を蹴って飛び上がった。
 夜歩く。
 黒蘭の花弁を羽のように軌跡に残し、冬青は空を翔ける。
 それでも、冬青の速さは南極サメには及ばない――サメが万全の状態で、真正面からぶつかったなら。
「呆れた生命力ですが――そろそろ、黒竜の毒も効いてきたでしょう」
 上空の戦いを見上げて、ミコが呟く。
 黒竜の恩寵は、黒竜の毒としての一面も持っている。ミコが大盾や剣に纏わせていたそれは、じわじわと南極サメの生命力を奪っていた。
 疲弊した状態でガーネットが操る宇宙船の砲撃をかいくぐり、章のシュモクザメの腹に喰らいついたサメの不意を突くには、冬青の飛行速度は十分。
 空中で閃いた花髑髏の刃が、南極サメの背びれを斬り落とした。

●再び氷上戦
 メンカルの御伽宿空間から出る前、【SIRD】の4人で作戦を立てた際の事。
「氷の中から引き摺り出すのが最善でしょう」
 ネリッサは3人に、そう提案していた。
「狙うのは、サメの攻撃の瞬間です。下から来るにせよ跳ね上がるにせよ、氷上に姿を表す筈――そこを、私が動きを封じます」
 飛行能力もあり多少手順は狂ったが、その作戦の好機が訪れようとしていた。

 サメが墜ちる。
 力尽きたシュモクザメは空中で消えていき、背びれを失ったサメは、そのまま氷上へと落下する。
「……Was nicht ist, kann noch werden」
 それを見やる灯璃の掌が輝きを放っていた。
 光の中に生まれたシルエットは、明らかな人工物。
「ドローンですか?」
「ええ、この寒冷地でどれほど動くか判りませんが」
 問うネリッサに応えて、灯璃はドローンを飛び立たせた。
 Ouroboros Arsenal――ウロボロス・アーセナル。
 兵器や火器に特化した、灯璃の偽物創造系能力。
 元々が軍用の起動兵器の類とは言え、南極で使う事は想定されてない。如何に灯璃がユーベルコードで作った偽物とは言え、南極の環境でどれほど動くか。
「まあ、目的を果たす程度には動かして見せますよ」
 もとより、空中戦を挑むほどの高度も速度も出せる機体ではない。
 灯璃がドローンの偽物を創造したのは、攻撃の為ではなかった。
 機体中央のランプが何度か明滅し、サメの周囲の空気が歪む。
「地雷探査用ドローンです。電磁波を出せるのですよ」
 灯璃がドローンが放出していたのは、電磁波だ。
 サメには電場を感じ取る器官があるという。生物が放つごくごく微弱な電場を感じ取れるほどの、高性能なものだ。
 灯璃の目的は、その器官を狂わせる事にあった。
『!?』
 まるで視界を失った様に、サメがその身をくねらせる。UDCのサメに果たして同じ器官があるのかは1つの賭けではあったが、その賭けは灯璃の勝ちとなったようだ。
「ファルシュピーゲルが上手くやったか――さあて、それじゃあ行くか」
 そこに響く銃声。
 ニィっと笑みを浮かべたミハイルが、サメの背後に立っていた。
 ミハイルが両手に持った『MPi-KM』と『UKM-2000P』の銃口で、立て続けに銃火が瞬く。
「逃げろ逃げろ。蜂の巣にされたくなけりゃな」
 一見、容赦の無い弾幕。
 だが、ミハイルの射撃は攻撃のためのものではない。
 狩猟で言う所の勢子――追い込み役。それがミハイルの任である。
「別に、倒しちまっても構わねぇんだろ? 局長」
 とは言え、やっぱり容赦のない射撃だった。

 追い立てられたサメが、氷を泳いで進む。
 ネリッサのいる方へ、真っ直ぐ。
「The Unspeakable One,him Who is not to be Named」
 迫るサメを見据えながら、ネリッサの口が言葉を唱える。
 その背後に浮かび上がる黄金の陰。
 ネリッサが喚んだそれが人成らざる何かであるのは、誰の目にも明らかだった。
 ボロ布としか言いようのない黄金の衣の下から覗くのは、顔を覆う白銀の仮面と、禍々しく蠢く無数の黄金の触手。
『ォ…………ォォォォォォッ』
 邪悪なる黄衣の王が、雄叫びともつかぬ音を発する。
「あれがサメ――水属性の存在だと気づいたようですね」
 背後のそれが見せた敵愾心に、ネリッサは口元に小さな笑みを浮かべた。
 南極属性だろうが、まずサメなのだ。水生生物なのだ。五大元素で言えば、水であって然るべき――ネリッサはそう考えて、黄衣の王を喚んでいた。
 その敵愾心を感じたのだろう。その姿に気づいたのだろう。南極サメもピタリと動きを止める。その胸中にあったのは紛れもなく、恐怖の感情だ。
 本来、捕食者であるサメには無い筈のもの。
「さぁ、貪り尽しなさい」
 ネリッサがサメを指差し黄衣の王に告げる。禍々しい黄金の触手が、サメが氷に潜る暇を与えずに絡みついてその身を空中に持ち上げる。
 灯璃が感覚器官を狂わせたのも、ミハイルが背後から追い立てたのも、全ては黄衣の王の気配を悟らせない為の布石だった。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
「今です!」
 メンカルが詠唱を終えるのと、ネリッサが全体に声をかけるのはほぼ同時、
 放たれた白色の炎は、号砲。
「上等だ。ありったけの弾丸持ってけ!」
 撃ち尽くす勢いで、ミハイルが銃弾を浴びせる。
「地を揺るがす"牙"《Fenrir》よ――――喰らい尽くせッ!」
 灯璃の腕が、形を変える。
 人の腕としての形を失い、全く別の生き物――巨大な灰色狼の頭部へと。
「du verschling!」
 鋼鉄の戦艦すら噛潰せるほど鋭い牙が、サメの尾びれを食いちぎった。
「このUDCアースやサムライエンパイアでは、サメをかまぼこ、という料理にするのでしょう? 何人前ぐらいになるのでしょうね?」
 サメを食材扱いしながら、カネリの言葉は呪詛。
 恐怖を煽れば、ネリッサの黄衣の王の触手は更に強く絡みつく。
 拘束を強固にしておいて、カネリは南極の大地から魔力を吸った地縛鎖を振り回し、その先端の刃を食いちぎられたばかりの尾に突き立て、傷口を抉った。
「邪妖を斬り裂く刃……。その身で受けてみますか?」
 ケイの手から、光が伸びる。
「今度は歯じゃ済まさん。その胴体、ぶった斬る!」
 ロウガがグレイプニルを巻きつける。
 氣をのせた光の手刀――ケイの魔斬りの刃がサメの頭部をエラの辺りで切り落とし、ロウガの絶冥拘縄が胴を2つに断ち切る。
 頭と尾を失い、胴を斬られたサメが、徐々に動かなくなっていく。
『――!』
 だが、そんなサメの身体から吹き出す漆黒。
 あれは遺跡の中で兵士が纏っていたのと、同じ色。サメ力。
 ズドンッ!
「普通なら頭を斬り落とされたら死ぬけど、あの手合いは生き汚いからネ」
 それが失った頭部と尾を形成する前に、アヤネがSilverBulletのトリガーを引いた。UDC細胞炸裂弾が、サメを内側から食らっていく。
 程なく、サメ力も霧散し――完全に、サメは動かなくなった。

●南極の空
「アヤネさーん」
 南極の空から、冬青が降りてくる。
「見て下さい! フカヒレ!」
 自ら切り落とした、サメの背びれを抱えて。
「新鮮なサメの刺身はマグロのトロに匹敵する美味しさらしいですよ?」
「え? ソヨゴ、ソレ食べたいの?」
「ちょっとだけ……」
 もしかして、フカヒレ狙いで飛んでったんだろうか。
「うーん……僕は遠慮しようかな」
(「……お腹壊しそうじゃないかな」)
 笑顔の冬青に、アヤネはその一言を飲み込んだ。

「クーラ君」
 白熊にホールドされたままのアクーラに、カネリが歩み寄る。
「調査は、十分できましたか?」
『ええ、お陰様で。私も皆さんも無事なんです。これ以上ない成果ですよ!』
 ヒートアーマーの中で、アクーラが笑顔を見せる。
 全員が無事であることに心底安堵するそれは、カネリには眩しいほどに純粋で。
(「南極まで来た甲斐はありましたね」)
 カネリが気にしている邪神に繋がる情報は得られなかったけれど、悪くないとカネリは胸中で呟く。
「結局、最後まで観てたな。普段の調査とかも、こんなカンジなのか?」
『え、ええと……その、今回は猟兵の方々が護衛でしたので……』
 ミハイルの言葉に、アクーラはヒートアーマーの中で小さくなる。
「判らなくは……無い。知らないことを知るのは……楽しいもの」
 メンカルもまた、アクーラの好奇心には理解を示していた。ある意味、同類だ。
「全く……当分護衛任務は懲り懲りだ」
 その様子に、ロウガが溜息を溢す。
「アクーラ、できればアンタとは二度と会いたくないぜ。仕事では、な」
『仕事では?』
「…………知るか!」
 付け足した一言をアクーラに聞き返され、ロウガはズンズン、海へと進み出す。
 その背中を見送るアクーラの前に、白く細い手が差し出された。
「知識に助けられたよ。色々とありがとう」
『こちらこそ。サメにサメなんて流石です』
 健闘を称え、章とアクーラが握手を交わす。
「……面白時空……魚類ワールド……」
 その隣には力尽きて消えつつあるシュモクザメを見下ろして、リュカが珍しく困ったようにブツブツと呟いていた。

(「ああ……そうか」)
 そんな中、ガーネットの脳裏に、ふとある言葉が浮かぶ。
 つい最近も、謎の属性があったのを思い出したのだ。
「南極属性はあれか。武田属性みたいなものか」
 ガーネットが思い出したそのワードは、数人の猟兵が『あっ』と声を上げる。
 今tのなってはもう、そう言うものと思うしか無いが。
 何はともあれ、驚異は去った。あとはゆっくり――とは行かないのが世の常。
「少し急ぎましょうか。雲行きが怪しいですよ」
 ケイが遠く、南極の山脈の向こうの空を指差す。
 もう空を泳ぐ魚はいないけれど。猟兵達を船へと急き立てる吹雪を運んで来そうな寒々しい雲が、いつの間にかそこに浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月21日


挿絵イラスト