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月のしずく、水界のうた

#スペースシップワールド #【Q】 #お祭り2019 #夏休み

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●水界のうた。
 白い砂浜。澄んだ海。
 何の変哲もない、美しい景色。
 けれどもこの人工の海では、波のさざめきは耳に届かない。
 ホログラムの星空の下、海を泳ぐ無数のひかり。
 そして水界に響く、優しいメロディがあった。
 ひとつ弾けば鳴るその不思議な音は、波紋のように広がって軈て空気を揺らす。

 ――人々はそれを『水界のうた』と呼んだ。

●月のしずく。
 夏も終わりに近づいている。水着コンテストの会場となった超巨大ビーチリゾート船「ヘブンズピーチ号」をはじめ、様々なリゾート船が其々の観光産業に力を入れている中、浮世・綾華(千日紅・f01194)が今回案内するのは「ルミエール・ドゥース号」と呼ばれる船だ。
「まだ遊び足りないって人には丁度いいんじゃねーの」
 ルミエール・ドゥース号の特徴は、波のない澄みきった海。砂浜から海へと足を踏み入れると、大人の手のひらくらいの大きさの貝が散らばっている。その貝は、この船の技術者たちが作り上げた人工の貝。
 ひとつ叩けば、美しい音が鳴る。音階も響き方も様々で、どんな仕組みか。海の中でも綺麗な音が耳まで届き、地上に響いて消えていく。
「んでさ。面白いのが、この貝を演奏してくれる魚がいるらしーんだよネ」
 その魚というのが、鉱石魚と呼ばれるこの海で独自の進化を遂げた魚である。尾鰭に夜に発光する鉱石を持つその魚は、この貝が奏でる美しい音を気に入り、いつしか尾鰭で貝を弾いてメロディを奏でるようになったのだとか。不思議なことに音は耳に心地よい程度にしか重なることはないし、夜にだけ淡く発光する尾鰭の鉱石は水面にも星空をつくり、人々を楽しませているようだと綾華は語った。
「ただこの魚、ちょっとばかし臆病でな。鉱石魚のうたを楽しむために、夜の遊泳は全面的に禁止されてる。勿論、昼間は思う存分遊んでくれて大丈夫。それに、そっちはそっちでお楽しみがあるんだよ」
 ふたつ叩けば、貝が口を開ける。中で輝くのは淡く輝く真珠。真珠は貝によって色も形も様々で、根気よく探せばきっと気に入るものを見つけることが出来るだろう。
「ひとりひとつなら、持って帰っていいんだってよ」
 海辺にある工房で、それを使ったアクセサリーを作ってもらうこともできるし、ひとつひとつ手作りの真珠のアクセサリーや貝殻のストラップ。それから真珠をモチーフとした「月のしずく」というガラス瓶の飴玉などを購入することもできるらしい。
「どー? 結構楽しそうじゃねえ?」
 良ければ一緒に行こうぜ。そう続けると柔く微笑み、猟兵達を誘った。


紗綾形
 紗綾形(さやがた)と申します。
 どうぞよろしくお願いします。

 このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。

●出来ること。
 昼:海に入って真珠を探す。工房にいく。
 夜:海辺で静かに水界のうたを楽しむ。工房にいく。
 夜は海に入ることはできませんのでご注意ください。
 プレイング内容は昼夜、どちらかに絞って頂けますと幸いです。昼にも遊んだことを前提に、夜の行動を書いて頂くのは可能です。

 お声掛け頂いた場合に限り、綾華がお相手させて頂きます。

●描写について。
 今回、おひとり様参加の場合、おひとり様で描写させて頂く可能性が高いです。

●プレイング受付期間など。
 お手数をおかけしますが、プレイング受付期間や当シナリオに関する情報はMSページをご確認ください。

 ※無理のない範囲での執筆となりますので参加人数が10人以上となった場合、問題がなくても採用を見送らせて頂くか、状況次第ですが再送のお願いをさせて頂く場合がございます。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りに勤しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

泡沫・うらら


まぁ、綺麗
海が輝いて、わろてるみたいやね

一緒に游げへんのは残念やけど
海の奏でを耳にゆっくりするのも風情があってえぇね

色んな海を周ってきたけど
こんなに綺麗で感動する海も珍しいわぁ

出来ればあんたも一緒に――……、なんて
流れる事は無い一夜の海の瞬きに願いを託すぐらい

……ふふ。“らしく”あらへんね

滅多に無い機会やから気に入る雫を探してもええんやけど
この子たちはこのままにしときましょか

奏でを想い出すのは、一対の海を閉ざすだけで十分よ

素敵な夏の想い出を、ありがとうございました



 海が夜空を映しているのか、夜空が海を映しているのか。
 自分は今一体、何処にいるのか。
 全てが曖昧に思えてしまう程、幻想的な景色の狭間で息をする。
 泡沫・うらら(夢幻トロイカ・f11361)はその海を宿したような髪が砂に落ちるのも気に留めず、この世界に身を委ねていた。
 鉱石魚たちのひかりが映れば、花緑の青すらも星空に変わる。映しとる世界に星空を狭め、うららは思わず、歌うように零していた。海が輝いて、そう、まるで。
「――わろてるみたい」
 ずっと海と共にあった。それでも、色々な海を周ってきたうららにとっても。この景色はそれほどに美しく、胸に響くものがあった。
 一緒に游ぐことが出来ないのは残念だと感じるが、それは仕方のないこと。星を灯し游ぐ魚達はとても臆病で、この海で暮らすもの以外が身を浸せば、姿を消してしまう。今はこの海の奏でを耳にできるだけで十分風情があるというもの。だからうららは、淡い珊瑚礁の耳を澄ませて、その音色に瞼を閉じる。
(「嗚呼。出来ればあんたも、一緒に――……なんて」)
「……ふふ」
 流れることはない一夜の海の瞬きに願いを託すぐらい――。
 そんなふうに考えてしまう自分を、らしくないと感じる。それを不思議と嫌だと感じることはないのに、どうしてか。苦い何かが――叶うことのない、呪いに似た願いが思い出されるようで。そんな想いを、夜風に流すように首を振って、それからもう一度眸に光を游がせて。
 そういえば、と思い出したこと。そう、この海で楽しむことのできる、もうひとつ。滅多にない機会だから、気に入る月の雫を探すのも良かったけれど……この子たちはこのままにしておこうと。眦を下げて、微笑う。
 奏でを思い出すのは、一対の海を閉ざすだけで十分だから。

 見上げる夏の宵空。ホログラムで映し出された満天の星。
 夏は少し、苦手に感じていた。けれど、この夏は――。
 敵な夏の想い出に、感謝を宿し、口遊む旋律。
 目の前の海のように透きとおったその音は、水界のうたと共に夜の海に溶けて消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
浮世さんとご一緒出来たら!

【夜】

急にお声掛けしてごめんね?
友達経由で、前々から気になってたから
いい機会かなって
ご迷惑だった?

魚が奏でる音楽かぁ…
僕がまだ知らないだけで
世の中には不思議な事が沢山あるんだね

浜辺でそっと腰掛け
波の音や魚達の奏でる音に耳を傾ける
自然界の全ての音が混ざり合った時
それらは確かに、海のうた

混ざれるものなら混ざりたいくらいだけど
怖がらせちゃいけないもんね
僕音楽大好きなんだ
特に自然の音
シンフォニアだからっていうのもあるかもしれないけど…
僕が初めて知った綺麗なものだったから、かな

海から聞こえる音に合わせるように
即興で奏でるのは優しい歌

素敵なお誘い、ありがとうございました



 これは海辺に出る前のエントランスでのこと。
「浮世さん、だよね?」
 折角幻想的な夜を楽しむならばと、可憐な少女のような見目をした少年、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、今日この場所に猟兵達を案内した紅纏う男に声をかけていた。
「急にお声掛けしてごめんね? ご迷惑だった?」
 澪の優しい性格が表れる、慎ましい言葉。綾華は首を振り目を細めると彼の名を尋ねた。
「わ、紹介が遅れちゃったね。僕は澪」
「澪ネ。おっけー」
 友達経由で前々から気になっていたこと。水界のうたに惹かれたということもあり、良い機会だから話してみたいと声をかけたこと。その言葉に綾華はありがたい話だと告げる。
「いろんな奴と話すのは好きだし」
「ほんと? それなら良かった。魚が奏でる音楽かぁ……僕が知らないだけで、世の中には不思議なことがたくさんあるんだね。楽しみ」
 花が綻ぶように笑顔を零す彼に、つられるように笑みを落とした。

 そうしてやって来た、波のない海。ホログラムの星空の下。
 人工の景色とは思えないほど――否。人にこんな景色をつくることができるのかと。驚きも隠さぬまま、琥珀色の眸を輝かせ砂浜を行く澪の後ろ、ゆっくりと歩く綾華。一度振り返った澪が「ここでいいかな?」とこてり。愛らしく小首を傾げて見せれば、軈てその場所にふたり腰を下ろして。
 琥珀を閉じて、今の自分を、この世界を取り巻く音に耳を傾ける。
 時折響く水の音は、きっと彼らが楽しく泳いで、海を揺らす音。
 そしてこの海でだけ耳にすることが出来る、魚達が奏でるメロディ。
 貝は、海は。確かに人工のものかもしれない。けれどもそれを鳴らすのは、この船で自然に息づくものたち。すべての音が混ざり合った時、それらは確かに、今ここでだけ存在する――海のうたとなる。
「星みたいで、綺麗。それにとっても、楽しそう」
 少しして眸は開かれる。膝を抱えて、愛おしげに海を映す琥珀は、柔らかに細められた。
「……混ざれるものなら混ざりたいくらいだけど、怖がらせちゃいけないもんね」
 折角なら、光る魚達と一緒に。けれど、それは叶わぬことだと澪は知っている。
 叶わぬことを嘆くことはない。共に泳ぐことができないのならと、澪は笑った。
「ねえ、僕、音楽が大好きなんだ。特に自然の音」
「へえ。そりゃまた、なんで?」
「それは――」
 綾華が尋ねれば、澪は答える。
 そよぐ風が、木々を、花々を揺らす音。虫たちの鳴き声。川のせせらぎ。それは澪が、神秘の歌い手であるシンフォニアだからというのもあるだろう。けれど、それ以上に、何より。
「僕が初めて知った、綺麗なものだったから……かな」
 海から聞こえる歌に合わせるように、即興で奏でるのは。誰もが聞き惚れるような美しく優しい歌。尋ねた男はその歌声に瞬いて、けれども納得したように微笑み、目を閉じる。
 別れ際の言葉。
「素敵なお誘い、ありがとうございました」
 こちらこそ、素敵な歌をありがとう。そう返せば、やはり彼は。
 無垢な天使のように愛らしく微笑んで見せるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
真珠(f12752)と

アヤカも、歌ききにいこっ
お昼にちょうどいいところ見つけたんだよ
座りやすそうな岩場にご案内
褒められてうれしい

整えられるのをわくわく眺め
いいのっ?
ふか、と手が沈めば笑みが零れる
アヤカもいっしょにすわろう
シュネーもっ

キサラギとサツキはすわらないの?
姿勢よく座る姿を見て
つられて姿勢をぴっと
きれいだね

わ、光があつまってきたよ

聴こえてきた歌にそわそわ
いろんな歌がきこえる
追いかけるように思わず零れる控えめなハミング

わたしね、あの子
少しせわしなく泳ぐ子は弾むような歌を

たいようの石?
わあっ

あっちの子はシンジュみたいにきらきらしてる
ひらり揺れた尾はやわらかな歌を

あの子はアヤカの赤だねっ
きれい


雅楽代・真珠
オズ(f01136)と水界のうたを聞きに行くよ
綾華もおいでと袖を振り
案内をと歩くオズにえらいねと声を掛け

如月が敷物を敷き
皐月がくっしょんを置く
僕の鱗が傷ついたら大変だものね
敷物はオズと綾華も座れるくらい広いから
二人にもどうぞと如月が促すよ
愛らしく座るシュネーを見て
背後に控える如月たちを正座させよう
正す姿勢に袖の下でくすりと微笑い

臆病な魚たちを大人しく待って
静かに水界のうたに耳を傾けるよ
尾鰭の鉱石の煌きに
傍らのオズのはみんぐ
転がる音色は僕の知らないうた

オズと綾華はどの魚が奏でる音が好き?
僕はね、あの、オズみたいな太陽色の石がついてる魚
オズが選ぶ魚は元気な子だね
話す声は音を邪魔しないように密やかに



「アヤカも、歌ききにいこっ」
 ぱたぱたと子供のように駆け寄ったのは、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)。一足先に、ちょっとだけ楽しんだのは秘密にし、紅を纏う男はその誘いに応じた。あの浜辺で、同じ歌が二度紡がれることはない。それに何より、共にする友が違えば、また違う楽しみ方が出来るだろうと思ったから。
 そして彼の後ろから揺らりと現れたのは純白の金魚、雅楽代・真珠(水中花・f12752)だった。
「真珠さん、どもども。俺も一緒していいんデス?」
「――綾華もおいで。一緒に行くの、許してあげる」
「ふ、そりゃあドーモ」
 そんなやりとりをみて、なかよしだなぁ、なんて思いながら、オズはにこにこ。
「お昼にね、ちょうどいいところ、見つけたんだよ」
 そのにこやかな笑顔から、昼間も存分に楽しめたことが伺えて、綾華は笑う。何故笑われたのだろう。分からないと言った表情で首を傾げたものの、オズはすぐにふにゃりと笑んでみせた。

 案内役のオズを先頭にして、少し砂浜を歩く。
「えらいね」
 と、真珠が褒めれば。
「ほめられたっ」
 褒められたことが嬉しくて、案内する足取りは更に弾む。そんなオズの様子を、真珠は微笑ましく思う。そうして目的の岩場に到着すれば振り返り、オズはぱっと両手でそれを指した。
 確かに座りやすそうだと、真珠は感心した様子で袖を口元に寄せた。
 すると、合図がなくとも動くのは彼の愛しの人形たち。如月が岩に敷物を広げれば、皐月がその上にクッションをそっと重ねる。手際よく施される準備に、オズはわくわくと仔猫色の瞳を輝かせている。
「僕の鱗が傷ついたら大変だものね」
 そう口にしながら、当然のように真珠が腰を下ろせば、オズと綾華にもどうぞと如月が促す。
「いいのっ?」
 その心地を確かめるように触れれば、柔らかく沈む手に笑みが零れる。そのままぽふんと両手をついて腰を下ろし綾華を見上げた。
「アヤカもいっしょにすわろう」
「はぁい。真珠さん、ありがと」
「シュネーもいい?」
「勿論。シュネーもオズの大事な子だものね」
 オズと自分の隣にちょこんと愛らしく座るシュネー見て、真珠は眸を細める。
「あれ」
「どうしたの」
「キサラギとサツキはすわらないの?」
 オズの言葉に、もう一度口元に裾を当てた真珠が彼らに視線を送る。すると背後に控えたふたりの人形は、すっと正座をしてみせた。
「きれいだね」
 ふたりにならうようにぴっと姿勢を正すオズに、真珠は袖の下でくすり笑う。綾華も特に隠すことはせず。
「お前それ、ぜってー続かねーだろ」
 そんなふうに笑えば「がんばるよっ」と気合の入った声が返った。

 少し休憩していたのだろうか。人の気配が多かったからだろうか。音のない時間は、ホログラムの夜空を見上げて楽しむ。暫くすれば、淡いひかりがゆらゆらと揺れて。
「わ、ひかりがあつまってきたよ」
 海に星が輝いたなら、軈て奏でられる歌がある。
 澄んだ水を通して、空気に溶けながら、耳へと届く。優しく美しい音。様々な貝が、魚が奏でる彩りの音を追いかけるように、オズが零したのは控えめなハミング。
 この音に酔いしたい気はするけれど、瞼を閉じては勿体ない。水界のうたに、傍らのオズのはみんぐ。知らないうたでも、心を優しくさせる、何処か温かい音。それから尾鰭の鉱石の煌き。美しいのは音だけではなく、広がる星空も同じだからと、真珠はその眸に煌きを閉じ込める。
「オズと綾華は、どの魚が奏でる音が好き?」
「えっとえっと――あっ。わたしね、あの子っ」
 尋ねられれば歌うのをやめ、じっと海を眺めて。指さしたのは少しせわしなく泳ぐ、弾むような歌を奏でる子。
「オズみたいに元気な子だね」
「その隣で泳いでるちっちゃい子の音もきれーだよ。オズの隣にいるし、シュネー?」
「わたしとシュネー。ふふ、うれしいっ」
「僕はね、あの、オズみたいな太陽の色の石がついてる魚」
 たいようの石? と首を傾げて、見つめるのは真珠が袖を向けた先。水色の眸に太陽が映れば、晴れた日の青空のように眸を輝かせ、「わあっ」と小さくも声を弾ませた。
「あっちの子はシンジュみたいにきらきらしてる」
「だな。音も真珠さんっぽい気がする」
「あの子はアヤカの赤だねっ。きれい」
 どの魚が奏でる音が――なんて問いは何処かに行ってしまったように探す、君の色、君の音。
 けれどもそれも悪くない。そんなふうに思いながら、真珠はもう一度袖の下で柔く微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
キトリ(f02354)と
タイミング合えばあや君も誘って浜辺お散歩をば

夜の中を飛ぶキトリの姿を追いかけながらゆるゆると浜辺を歩こう
波の音は無く、けれど不思議に心地良い音が響く……
昼間に海の中でも聞いたが、夜の調べはまた違ってよいな

キトリにはそう聞こえるんじゃな、わしには子守唄のようにも感じる
尾鰭ふるのも、案外ここにいるんじゃよ、かもしれんな
きらきらと海の中で音と共に輝く様は美しい
夜は海に入ってはいけないと、そう定められたのもこの様を見て納得よな
ここにつれてきてありがとぉな、あや君

さて……やはり土産は必定よな
店の方に散歩の足を向けて行こかの
キトリ、わしもそれが気になっておる…!
よし、見にいこ!


キトリ・フローエ
嵐吾(f05366)と/◎☆
綾華も一緒にお散歩できたら嬉しいわ

二人の周りを翔びながら、空に海にと散りばめられた星の瞬きに
波の代わりに聴こえる水界のうたごえに、耳を傾ける
…すてきね
どこか賑やかで弾むようだった昼間のうたとは違って
鉱石魚の奏でるうたはきらきらしていて、でも何だか切なくて
ぎゅうっと胸が締め付けられてしまいそう
それでもずっと聴いていたいと思うのは
今この瞬間だけしか聴くことの出来ないうただから

綾華には、どんな風に聴こえるかしら?
あたしには、ここにいるよって伝えてくれているように聴こえるの

…お土産!嵐吾、あたし月のしずくが欲しいの!
今日の想い出とこのすてきなうたを、いつでも思い出せるように


筧・清史郎
見かけた綾華に声掛け、よければ暫し共に

夜の海辺で、まずは水界のうたに耳を傾けよう
美しく優しい音色だな、心癒される気がする
発光する尾鰭も星の様で、音を奏でるたび揺れて幻想的だ

演奏の邪魔にならぬ程度に綾華と会話も
今年の夏は満喫したか?
俺はこの夏、新たな経験が沢山できたな
虫取りも初めてしたが、連れ帰ったミヤマさんと毎日会話するのが楽しい(微笑み
夏はもうすぐ終わるが、またどこか共に遊びに行こう
甘い物を堪能しに、などな(微笑み
この夏の様に、まだ知らぬ新しい事を沢山体験していきたい

演奏や会話を楽しんだ後は工房へ
昼に見つけた桜色の真珠は何に仕立てて貰おうか
それに甘い物は好きだ、甘く美しい月のしずくも是非にと



「せーちゃん!」
「あら、清史郎も来てたのね」
 ぴこんと狐耳を立てて、友を呼んだのは終夜・嵐吾(灰青・f05366)。彼の隣を飛んでいたキトリ・フローエ(星導・f02354)は、そのステンドグラスのような美しい翅を羽ばたかせ、雅やかな友人の元へと向かった。
「らんらんにキトリ。奇遇だな」
 そう柔らかに口にし、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は紅の眸を細め微笑う。折角だから一緒に。仲良しの面々が集まれば、そんな話になるのも自然な流れで。けれど視界のすみっこにもうひとり。
「ねえ、綾華も一緒にお散歩できたら嬉しいわ」
「ん、俺もいーの?」
 すっと目の前まで飛んできたキトリの言葉に綾華が尋れば、嵐吾と清史郎は。
「勿論じゃ」
「勿論だ」
 そう息ぴったりに声を揃えて笑った。

 夜の中を飛ぶキトリの羽ばたきは、星の瞬きに劣らぬほど煌いてみえる。彼女をゆるりと追いかけながら三人が歩けば、今度は三人のまわりをくるくると楽し気に飛び、銀白の髪を揺らす。
 はじめは言葉数少なく、其々が波の代わりに聴こえる、水界の音に耳を澄ませるように。
「すてきね」
「昼間に海の中でも聞いたが、夜の調べはまた違ってよいな」
「嗚呼、美しく優しい音色だ。心癒される気がする」
 波の音がなくとも、不思議と心地よい音が心にじんわりと滲むようだと感じていた嵐吾は、友の言葉にふわりと尾を揺らし。
 魚の尾鰭のひかりが海を泳げば、そこは星の海。音を奏でる度に揺れて、より幻想的な世界をつくる。
 すてき。けれど、どこか賑やかで弾むようだった昼間のうたとは違って、鉱石魚の奏でるうたはきらきらしていて、けれども何だか切なくて。
(「ぎゅうっと締め付けられてしまいそう」)
 胸のあたりに両手をきゅっと握り、空に近づく様に羽ばたいたのは、その表情が彼らに見られるのが少しだけ照れくさい気がしたから。
 そう感じるのに、それでもずっと聴いていたいと思うのは。このうたが、今この瞬間だけにしか、聴くことの出来ないうただからだと、キトリは知っている。
 妖精は綾華の方を振り向くと、ふわりと首を傾げてみせた。
「綾華には、どんな風に聴こえるかしら。あたしには、ここにいるよって伝えてくれているように聴こえるの」
「……へえ。なるほどな。そう言われると、なんか俺にもそう聴こえてきたかも」
「キトリにはそう聴こえるんじゃな。わしには子守唄のようにも感じる」
「こんな子守唄なら、穏やかに眠ることができそうだ」
 嵐吾の言葉に清史郎が紅を細めれば、そうじゃろ。なんて笑い返して。
「でも尾鰭をふるのも、案外ここにいるんじゃよ、かもしれんな」
 きらきらと海の中で音と共に輝く様はほんに美しいから。夜は海に入ってはいけないと、そう定められたのもこの様を見れば納得できると。今日この場所に連れてきてくれたことに嵐吾が礼を告げれば、紅の男は首を振った。
「むしろ、一緒にって誘ってくれてありがとうございマス」
 そんなふうに星泳ぐ海と、水界のうたを楽しみながらそっと海辺に腰を下ろしたりして、ホログラムの星が咲く空の下。今度は夏の思い出話の花でも咲かせようか、と口を開いたのは清史郎だった。
「今年の夏は満喫したか? 俺はこの夏、新たな経験が沢山できたな」
「新たな経験?」
 綾華が尋ねれば、あの雑木林での想い出を語る。奇遇なことに、此処にいる面々は其々、あの場所で虫取りを体験した。嵐吾と清史郎は仲良くミヤマクワガタを、小さなキトリは愛らしいてんとう虫を。ヘラクレスを探し続けた綾華が、結局あのあとどうなったのか知る者はいない。
「虫取りも初めてしたが、連れ帰ったミヤマさんと毎日会話するのが楽しい」
「会話……そりゃ良かった」
「清史郎はミヤマさんと会話が出来るのね。すごいわ!」
「わしのミヤマクワガタも元気にしておるぞ。せーちゃん、今度一緒に遊ばせよ!」
「嗚呼、ミヤマさんは何をして遊ぶのが好きか。今度聞いておこう」
「まじデスか。めっちゃ気になるんで、俺にも教えてくださいネ」
「嗚呼。分かった。綾華もまたどこか共に遊びに行こう」
 夏はもうすぐ終わるが、また何処か共に。そう、例えば――。
「甘いものを堪能しに、などな」
「甘いもの! といえば! せーちゃん、店の方はもう行ったかの?」
「嵐吾。あたし、月のしずくが欲しいの!」
 月のしずく。それは瓶に詰められた、淡い真珠を模したあまぁい飴玉。
 ずっととっておけるわけではないけれど、今日のみんなで見たこの景色と、すてきなうたをいつでも思い出せるように。
「キトリ、わしもそれが気になっておる……! ふふ。勿論、せーちゃんもじゃろ?」
「甘い物は好きだ、勿論、買い求めるつもりでいた」
「よし、見にいこ!」
 俺はもう少し散歩を。そう言って綾華は、散歩の足を工房へと向ける三人を見送る。
 向かう途中、懐に仕舞っていた桜色の真珠を清史郎が空に翳せば。真珠の向こうで羽ばたく少女が笑う。
「きれいね」
「せーちゃんによく似合っとる」
 紡がれる言葉にありがとうと微笑む。さて、この真珠はどんな想い出のかたちに仕立ててもらおうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トトリ・トートリド
夜の工房の、見学
自然のものも、好きだけど
手作りのものは…胸がそわっと、するんだ…
わあ、って零れそうになる、声
あわててふさいで、静かに耳を澄ませる
きれいなもの、やさしい音、作るひとの手
…ひとが、こんなにあったかくて、すごいこと
トトリは今年、たくさん出会って、話して
はじめて、知ったんだ

…ちょっと、勇気、出して
綾華、となり…座っても、いい?

波音のかわり、きらきら、しゃらしゃら
…魚たち、すごいね
トトリと同じ、怖がりの魚たち、驚かせたくないから
声、ひそめて

綾華も、作ってもらった?
トトリは、貝殻の帯かざり
あいかわらず、話すのはへただけど
今は、いろんな人と話したいって、思うんだ
そういうみんなと、出会えたから


チロル・キャンディベル
夜の海ってさみしいと思ってたけど
ここはとってもにぎやかね!
目の前にも上にもキラキラ!
お星さまの世界みたい

貝とお魚のたのしいが、いっぱいつまった音が聞こえるの
耳をぴくぴく動かして、ご機嫌な足取りでソルベ(白熊)とお散歩
綾華を見つけたらごあいさつするのよ
夜はこんばんは、ってチロ知ってるの
ほら、ソルベも

綾華にはこの音、どんなふうに聞こえるかしら?
チロはね、いっぱいのおともだちと楽しいえんそう会をしてるように聞こえるの
毎日毎日、えんそう会を開いているのよ!
だからね、チロたちはしーっなの
うるさくしたら、貝もお魚もおこっちゃうのよ

おみやげはどこかしら?
キラキラも気になるけど、甘いおかしのほうがチロは好き!



 煌きの世界を、小さな少女はゆっくり、それでも弾むように歩いた。だって砂浜を走ってころんだら、危ないもの。そんなふうに、チロル・キャンディベル(雪のはっぱ・f09776)はひとり――否、大好きな相棒で、一緒に育ったたいせつな家族である白熊のソルベに得意げに笑って見せて。
「ここはとってもにぎやかね!」
 ぐぐっと身を乗り出して両手を額の上に宛てる。ずーっとずーっと遠くまで続いている海。目の前だけじゃない、奥の方まで、ずっと。それから両手を伸ばして、星に手を翳す。上にも、きらきら。
「お星さまの世界みたい!」
 夜の海は静かで暗くて、それがどこまでも続いてみえるから。どこかさみしいと思っていたけれど、此処はにぎやかで、きらきらの世界。
「まぁチロは、ソルベがいればさみしくないけどね!」
 魚が鉱石を弾く音。貝と魚のたのしいがたくさんたくさつまった音に、耳をぴこぴこと動かして、るんるんご機嫌な足取りのお散歩をつづければ、視界に映るは紅の。
「綾華、こんばんはー!」
「ん? こんばんは?」
「夜はこんばんはっていうのよ」
 ふふりと胸を張るチロルに、紅を纏った男、綾華はちげえねえと笑う。
「じゃあ、こんばんは」
「チロはチロルっていうのよ。それから、この子はソルベ!」
 ほら、ソルベも! 促せばぺこりと行儀よく挨拶してみせるおっきなもふもふ。元気な子に流されるのは嫌いじゃないと、男は笑みを絶やすことなく。
「こりゃドーモ、ご丁寧に。チロルちゃんにソルベな、よろしく」
「よろしくなの!」

 ところ変わって、工房前。他の猟兵達が水界のうたを楽しむ中、天鵞絨の鬣を持つ異形の青年、トトリ・トートリド(みどりのまもり・f13948)は、真っ先に海辺にある小さな工房へと足を運んでいた。
 OPENという木板の看板が下げられた扉の向こうでは、一体どんな作業が行われているのだろう。
(「……この中が、工房?」)
 この気持ちをどんなふうに表現したらいいのか、今のトトリには分からなかったけれど、手作りのものはなんだか、胸がそわっとする感じがするから、とても気になって。どきどきしながら、ドアの硝子を覗こうとする――が、やはり何を行っているかまではよく見えない。意を決して扉を開く。お店なのだから、ノックは必要ないのかもしれないけれど。律儀なトトリは、こんこんとノックすることを忘れずに。
 開いた扉の先、夕焼け色の眸に映る光景にわあっと零れ落ちそうになる声。
 慌てて両手で塞げば、その様子にくすりと笑う女性がトトリを迎えた。
「いらっしゃいませ。ゆっくり見ていってくださいね」
 優しい声にほっと胸を撫でおろして、こくこくと頷く。急だったものだから、すぐに言葉は出てこなかったけれど、店を出ていく前にはきっとありがとうと口にしよう。そんなふうに心に決めて。
 アクセサリー類が並ぶ入り口の先。奥の作業台では数人のスタッフが道具を手に、何かを作っている途中のようだった。そのままでも淡く優しい色の真珠が、人の手で磨かれ更に美しい輝きを宿す。金具や他の装飾と繋げられていく様子に、トトリは静かに耳を澄ませた。客からの注文に合わせ、満足してもらえるように、それを身に着けて笑顔になってくれるように。きっとそんな想いがたくさん込められている。
 きれいなもの、やさしい音。作るひとの手。みているだけで伝わってくるのだ。
 ひとがこんなにもあったかくて、すごいこと。
 それはトトリが今年、たくさんのひとと、出会って、話して、触れて。
 はじめて知ったこと。

 さて、一緒に海を楽しもうか。チロルがソルベに寄り添うように腰を下ろしたところで、そろりと現れた姿に、若葉の瞳が煌いた。
「トトリ!」
 まるで幸せの四つ葉を見つけたみたいに綻んで、こっちこっちと自分の隣をぽんぽん。
 勇気を出して、声をかけようとしたのだけれど、先に見つかってしまったことにちょっぴりだけわたわたと左右をみて、けれども促されればこくりと頷き、そっと傍に腰を下ろした。
「……魚たち、すごいね」
「トトリと綾華にはこの音、どんなふうに聞こえるかしら」
「きらきら……は音じゃないから――えっと、しゃらしゃら。きれい」
「俺はそーだな、風鈴みたいな。涼しい音だよな」
「しゃらしゃらに風鈴! みんな違った音に聞こえるのね。不思議なの」
 違った音に聞こえても、今一緒に此処にいて、それを綺麗だと思える。こうやって、それぞれの音を言葉にすれば、それを分かち合うこともできる。それはとても、幸せなことのように思えて。
「チロはね、いっぱいのおともだちとたのしいえんそう会をしてるように聞こえるの」
「……演奏会? 魚達の――」
「そう! 毎日毎日、えんそう会を開いてるのよ!」
「ふふ、そりゃ楽しそうだ」
「だからね、チロたちはしーっなの」
 口元に小さな指をあてて。ついでにソルベの口元にももう一方の指をあてて。
「うるさくしたら、貝もお魚もおこっちゃうのよ」
 ぷんっと頬を膨らませて見せるチロルに、トトリはこくりと頷く。もとよりトトリはとても静かな青年ではあるのだけれど、少女の言葉を素直に受け入れたのは、彼も同じように、怖がりの魚たちを驚かせたくなかったから。
 そんなふたりの様子をみて、綾華はくすくすと口元を抑え笑った。
 そういえば、と。
「……チロと綾華は、作ってもらった?」
「あ、装飾品か。俺はまだ」
「トトリは、貝殻の帯かざり」
「へえ、綺麗だな」
「すてきね! チロもまだなの。おみやげ、どこかしら?」
「――あっち。ふたりも選びに行く?」
 トトリの提案に、チロルはばんざいと両手をあげて。
「キラキラも気になるけど、甘いおかしのほうが、チロは好き!」
 そんな正直な言葉に綾華とトトリは顔を見合わせくすり、目を細めた。

 さてと歩く、工房までの道。
 隣を行く少女みたいに、歌うように軽やかに話すことはできないけれど。
 今はやはり、たくさんのひとと、出会って、話して、触れて。
(「――そう思えるみんなと、出会えたから」)
 彩りにあふれた世界を知りたいと。
 トトリはぽつりぽつりと、優しい言葉を紡ぐ。
 それだけで、少女と男の心も、僅かずつ彩りを増していくことを、青年はまだ知らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ
◎夜

綾華綾華、こっちこっち!
見つけた平坦な岩場に腰掛けて手招き
それから魚は臆病なんだったと思い出し
慌てて口を手のひらで押さえる

ここなら静かだし、いい場所だろう?
昼間海で遊んでる時見つけてな
絶対綾華に見せてやろうって思ったのだ!

岩に囲まれた水面はまるで光の劇場
色とりどりの光たちが踊っているようで
響くメロディにじっと耳を傾ける

魚たちのパレードを独り占め
最高だな!と無邪気に笑って

演奏を堪能したら
綾華、手を出して目をつぶってくれないか?
悪戯なんてしないぞ!早く!

綾華の手首に、きらめく真珠が付いたミサンガをを巻いて
目、開けていいぞ!
…にへへ、これは俺からのお守りな!
2人でずっと一緒にいられますようにって



「綾華綾華、こっちこっち!」
 ぴょこぴょこと跳ねれば、ふわふわと揺れる藍白の髪。見つけた座りやすそうな岩場にひょいっと腰掛け、ゆるりと歩く男を手招いてから、はっと口元を両手で抑えた元気いっぱいの少女は、ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)。そう、ここで歌を奏でる魚、鉱石魚はとても臆病なのだ。少し話したり、共に歌を奏でたりする分には構わないが、大きな声を上げたり、水の中に入ればたちまち海の底へと姿を消してしまう、繊細な魚。
「ここなら静かだし、いい場所だろう? 昼間海で遊んでる時に見つけてな。絶対綾華と来ようって決めてたのだ!」
 ふふりと得意げに話すヴァーリャに、綾華は眸の緋色を細める。ヴァーリャの想いが嬉しくて、心がじわりと温もるような感覚。
「そっか。ありがとうな」
「ふふ、どういたしましてだぞ」
 岩に囲まれた、とっておきの水面。色とりどりの光たちはまるで踊っているようで、響くメロディと合わさればそれは光の劇場のようだと感じ、菫色の眸にその光を映し笑う。
「魚たちのパレードをひとり占め、最高だな!」
「えー、そこはふたり占め、じゃないの」
「言葉の綾、というやつなのだ。じゃあふたり占め!」
 細かいことを言う男の言葉にも慣れたように答えて見せる。輝く光と美しい音の舞台を堪能したなら、ポケットの中にしまっておいた、とっておきの秘密のお披露目の時間。
「なあ、綾華。手を出して、目を瞑っていてくれないか?」
 見上げられば、首を傾げて。
「悪戯なんてしないぞ! 早く!」
 ほらほら、と手を取るヴァーリャに、急かされるままはいはいと瞼を閉じる綾華。
「ちゃんと閉じたか?」
「閉じたよー」
「ちょっと開けたりしてないか?」
「ふ、開けていいの?」
「だ、駄目! すぐだからっ。駄目だからな?」
 そわそわした様子の彼女が愛らしくて、揶揄うように口にする。
 ヴァーリャは慌てて男の手首に何かを結ぼうとするが、焦っているせいか、ちょっぴりドキドキしているせいか、少しだけ時間がかかってしまって。何となく、その緊張が伝わって、綾華もそれ以上、揶揄うことはしなかった。
「ゆっくりでいいよ」
「だ、大丈夫、もう終わるからっ。――よしっ、出来たのだ。目、開けていいぞっ」
 ゆっくりと瞼を持ち上げれば、緋色の双眸に映ったのは小さな真珠が煌くミサンガ。
「――これ、もしかして。ヴァーリャちゃんが採ってきたの?」
 ころんと真珠を揺らし問われれば、はにかむヴァーリャ。
「……ふへへ。俺からのお守りな!」
 込められた願いを聞けば、綾華は口元に手を当て、くしゃり笑う。
「さんきゅ。大切にする」
 その笑顔が見れたことが嬉しいと笑うヴァーリャに、綾華は。
 今度は君が目を瞑っていてと伝えた。
 細い手首に飾ったのは、ホワイトゴールドのチェーンにひとつ揺れる純白の真珠。
 瞼をあげた彼女はどんな表情をするだろう。
 きっと喜んでくれるに違いない。綻ぶ笑顔を想像して、柔く笑む。

 ヴァーリャがミサンガに込めた祈り。
 ――ずっと一緒にいられますように。
 切なる願いを胸に、ふたり寄り添って。

 水界にうたに――君に、心を委ねる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユノ・フィリーゼ
【夜☆】
頬を撫でる風の色も匂いも
馴染み深いものとは違うけれど
何処か新鮮で心地良いものね

白砂に腰下ろし耳を澄ませば
さざめく波の音に混じり聴こえる
静かな海のアンサンブル

心にすぅっと染み渡る不思議な調べ
言葉では表すことの出来ない麗しの音色
鉱石の魚達はこのうたに焦がれ
そして、恋に落ちた…のかしらね

そっと地を蹴り、空中浮遊を以て宙へ
見渡す澄んだ夜の海
彼等がうたい、瞬き、揺れるたびに
水面に幾つもの星の花が咲く
ひとつひとつ異なるひかりを魅せるそれは、
(私が恋した蒼天と、同じ)

高鳴る鼓動が奏でる音を静める様
瞼を閉じ、優しい風と水界のうたに身を委ねる
夏の終わりに出会えたこの美しい世界が
いつまでも続きますように



 そよぐ風に揺すられる天蒼を映したような髪もそのままに、この世界を受け入れる。頬を撫でる風の色も香りも、馴染みのあるものとは違う。けれどもそれは、ユノ・フィリーゼ(碧霄・f01409)にとって、何処か新鮮で心地の良いものだった。
 さらりと指をすり抜ける白い砂に腰を下ろして、耳を澄ませば。穏やかな世界を静かに、けれども鮮やかに彩るアンサンブルとなる。
 心にすぅっと染み渡るその不思議な調べは、言葉で表すことができないほどに麗しい音色。ユノは藍色の眸を細め、抱えた膝へ、頬を預けた。嗚呼、鉱石の魚達はこのうたに焦がれ、そして。
(「恋に落ちた……のかしらね」)
 それは何処か、自分が目眩を覚えるようなあの美しい蒼に焦がれ、空へと続く道を歩み続けるのと似ている気がした。
 顔を上げれば立ち上がり、そっと地を蹴り、ちょっとずつ、優しく宙を駆ける。あの魚たちと同じように、踊るように少しだけ弾んだ気持ちで。きっと地上から見上げた彼女は、輝いて見えただろう。ホログラムの星空にだって劣ることがないくらい、軽やかで美しく輝くステップだったから。

 少し高い場所から見渡す、澄んだ夜の海。
 その海で魚たちがうたい、瞬き揺れる度、水面に幾つもの星の花が咲き、まるで美しい花畑のようだ、と。そしてひとつひとつ異なるひかりを魅せるそれは――。
(「私が恋した蒼天と同じ」)
 嗚呼、なんて美しくて、愛おしいのか。
 恋する少女は、高鳴る鼓動が奏でる音を静めるように瞼を閉じて、優しい風と水界のうたに身を委ねる。
 それは優しい願い。そして祈り。
 私にこんな気持ちをくれたこの音色が、景色が。
 夏の終わりに出会えたこの美しい世界が。

 どうかいつまでも、続きますように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月03日


挿絵イラスト