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エンパイアウォー㊴~黒き忠を受けし者

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #オブリビオン・フォーミュラ #織田信長 #魔軍転生

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「ハハハハハ!無理じゃ無理!こりゃ負けじゃろうて!!!」
 己の軍とぶつかり合う徳川の軍を眼下に見据え、大六天魔王、織田信長は呵々大笑する。
 もはや軍勢としての雌雄は決したも同然。目論見は砕かれ、たいして徳川の軍勢はその目論見を見事成し遂げ、今や敵将の喉元に刃を突き付けたも同然。
「げに恐ろしきは、猟兵共よのぅ」
 そうして、オブリビオン・フォーミュラーたる己に対する者たちを見据える。
 彼らの活躍。それが無ければ、今頃世界を手にしていたのは己の筈であった。それが今や、己は敗北必須の状況。だが、それは裏を返せば、
「貴様らをここで倒し、包囲網を抜ければまだ目はある、という事じゃな?」
 そう、第六天魔王はオブリビオン・フォーミュラー。この戦いに負けたとて、存命であれば手数をそろえる事は可能だ。故に。
「弥助ぇ!」
「ここに。信長様」
 己の主君の声に、かつて奴隷であった者は跪いた。
「憑装せい」
 言葉と共に、弥助アレキサンダーがその背後に憑き従う。
「まったく、渡来人の至宝など持ち出しよって。んなもんあるならそもそも儂に寄越さんか。うつけめ……じゃが、その覚悟をこそ愛でるべきであろうよ」
 そうして天魔は、猟兵達へと向き直る。
「さぁ!貴様ら!押し通らせてもらうぞ!どうやら火の中で敦盛を舞うのはまだまだ先じゃ!何せ此度は、儂が生きてりゃ負けはない戦故にの!!」
 いやぁ!!!情けない!!!!!戦に生きた男はそのように言いながらまるで獣のような獰猛な笑みを浮かべる。まさしくそれは猟兵達を食い殺さんとする獣のように。
 さぁ!猟兵達よ、第六天魔王を見事倒し、この戦争を終わらせろ!!!!


みども
 こんにちは。みどもです。最終決戦2発目でございます。

●注意事項
 1、このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 2、第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

●執筆に関して
 ・プレイング順次募集中。書ける内容採用して書きあがった奴から上げていく形になります。また、リプレイの成功数が目標数に達した段階で終了。その段階で採用できなかった奴はごめんなさい。
 ・上記の関係上少数採用。それでもよろしければぜひ。
 ・そういう感じですがガッツリ熱いやつ書きたいので頑張ります。
 ・それでは猟兵の皆さま、織田信長は強敵ですがかっこよくキメちゃってください。
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第1章 ボス戦 『第六天魔王『織田信長』弥助装』

POW   :    闘神の独鈷杵による決闘状態
【炎の闘気】が命中した対象を爆破し、更に互いを【炎の鎖】で繋ぐ。
SPD   :    逆賊の十字架による肉体変異
自身の身体部位ひとつを【おぞましく肥大化した不気味な鳥】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    大帝の剣の粉砕によるメガリス破壊効果
自身の装備武器を無数の【大帝の剣型】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:UMEn人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

龍ヶ崎・紅音
アドリブ・絡み歓迎

【POW】

「…織田信長…それに憑依しているのは弥助アレキサンダー…ファランクスの件もあるわけだし、ここは全力であなたを倒す!!」

仲間を「黒焔竜剣壱式」を使っての【武器受け】で【かばう】などして、あえて"炎の闘気"うけることによりお互いに"炎の鎖"で繋がせるよ

その鎖を【火炎耐性】で耐えながら掴み、【怪力】でこっちに引き寄せるよ
、態勢を崩した上で近づいてきた信長を『煉獄猛焔波動』で焼き尽くす!!
もちろん、崩したとはいえ斬りかかる可能性もあるはずだからその時は【気合い】で避けるよ

あとは、すこし距離を置きながら追撃としてホムラを【槍投げ】して、【串刺し】にしようとするよ


清川・シャル
【単独】よくもまぁここまで進軍してくれましたね
シャルの故郷なんですよ、丁度この近く
どんな形だろうと此処で食い止めます

【P】
炎、ね。
高速詠唱、全力魔法で氷のミストと氷柱のブリザード兼、風魔法で暴風を巻き起こして、見切り、残像、ダッシュ、地形の利用で回避
氷の盾、武器受けも使います

鬼さんこちら、私が鬼です
上手くやれたらこちらの番です
UC発動
骸の海の海じゃ事足りん、地獄送りにしてやろう
そーちゃんを片手に櫻鬼でのダッシュ、スライディング、空中戦、それからチェーンソーモードでのフルスイング
激痛耐性で何も感じない、全てを壊してみせる
鎧砕き、衝撃波を一気に叩き込む
くたばれ信長ァ!



「ハハハハハ!退けい!退けい!!!猟兵共よ!!!」
 信長の声が響く。大笑いする彼の傍ら、弥助が手に持つは闘神の独鈷杵。振るうは炎の闘気(オーラ)。触れた者を焼き付くそれを手に、進軍する。そう、進軍だ。織田信長は、この場から離脱しようとしていた。
「――――弥助アレキサンダー……」
 そして、それを許さない者もまた当然の如く存在した。南蛮鎧をまとったまさしく重戦車といった風情の信長の前に立ちふさがるのは、一人の少女。
 銀の髪に決意を宿した紅い、瞳が天魔を睨みつける。傍らに白銀の竜を従えるは、龍ヶ崎・紅音だ。
「ガハハハハ!何を言うか!儂は天魔ぞ!!第六天魔王、信長なり!!!!!」
 言うや否や、炎の闘気が浴びせられる。
 瞬時、それを、己が武器、〈黒焔竜剣 壱式 「禍焔の大剣」』〉で受け切れば、瞬時、そのまま闘気が炎の鎖となり、剣に巻き付いた。
 そしてそのまま、
「うつけめ!」
 爆発。炎が噴き出した。
「おうおうおう!何の対策もなしかよ貴様!こりゃ一人脱落かぁ!?」
 そも逃げるのが信長の目的である。だからこそ、生死の確認はせずにそのまま爆炎を横切り、逃げようとすれば、
「待ちなよ」
「ぬおおお!?」
 未だ爆炎の中に伸びていた鎖、それが引かれる。
 瞬間、爆炎の中から、紅き炎の翼が噴き出した。露わになったのは、体中、あちこちに傷を付け、満身創痍の龍ヶ崎・紅音。
 少女はこの戦いにおいて、何より許せない事があった。それは無辜の民が犠牲になる事。 そしてそれが、目の前の、男によってなされた。さらには、
「全力で、貴方を倒す…!」
 民を洗脳し、戦いへと駆り出した弥助・アレキサンダーこそが最も、少女にとって許せないものだった。
(力を貸して黒焔竜……!)
 決意の瞳の先、剣を持たぬ手の平が炎の鎖を掴む。
「ああああ”あ”あ”あ”あ”……!」
 肉の焼ける音。火炎耐性があれど、UCで形作られた炎は体を確実にむしばんでゆく。手が炎と、血に塗れる。けれど、それでも。瞳の先の男を見据え、一掴み、一掴み、第六天魔王を、己の方へと寄せてゆく。
「ぬおおお・・・!気合入っとるな小娘!!!」
 たまらないのは信長の方だ。偉丈夫と少女、本来であれば拮抗すらしないであろう暴力的な綱引きはしかし、少女の持ちうる怪力によってお互い一歩も引かない状態にまでなっていた。
「ああ!くっそ!こりゃしもうたわ!儂の闘気で作り出した鎖じゃから儂から手が離せん!おいおい小娘!さっさとくたばらんか!血も流して手も焼けて辛いじゃろう?」
「うる・・・さい・・・・・・!」
 引き寄せようとする紅音。逃れようとする信長。両者一歩も引かない状況はしかし、だからこそ状況は紅音に不利と言えた。流す血と。燃える手。体中から汗を噴き出しながら、しかし手は離さない。
「なら、それを冷やせばいいんですね」
「なに!?」 
 可愛らしい声が聞こえる。瞬間、炎の鎖を冷やすように氷のブリザードが吹き荒れて、鎖から炎を散らす。
「よくもまぁここまで進軍してくれましたね。シャルの故郷なんですよ、丁度この近く」
 大丈夫ですか?心配そうに紅音の背後から現れ、彼女の顔を見やるのは、清川・シャルだ。
「いけ……る……!」
「わかりました!なら、いっちゃいましょう!押さえておいて、くださいね……!」
 そうしてシャルは、走り出した。
「ぬおおお!小娘が二人目か!めんどくさい!」
「小娘とはなんですか!鬼ですよ私!」
 闘気が炎として放たれる。
 本来であれば、着弾し、爆発するはずのそれはしかし、
「憑装相手を変える事で色々な能力を使えるなんて小回りが効くみたいですが、無意味です!」
 シャルの進行方向に壁のように現れる氷柱に着弾し防がれ、あるいは氷の嵐が吹き荒れて炎を自体を散らす。
 そうしてすぐさま、信長の目の前まで走り込んでで来れば、
「えーい!」
 可愛らしい声とともに厚底高下駄が大地をしっかりと踏みしめ天高く飛び上がり、位置エネルギーを加えての鬼の金棒、〈そーちゃん〉の振り下ろし。ご丁寧にもチェーンソ―モードを駆使して棘が高速回転した状態だ。
「やっかいな!一撃喰らったらそれでおじゃんじゃろそれは……!もっと手心を加えんか……ぬおっ!」
 振り下ろされるそれを片手に握った大太刀でどうにか受け止めながら信長が抗議の声を上げる。受け止めたはいいが、体勢が崩れ、その分僅か、紅音の方へと引っ張られる。
 状況は推移しているが一撃が防がれる。それを見たシャルの対応は早かった。刀で受け止められたそーちゃんを受け止められた状態のまま、出し惜しみはしないとばかりにその圧が高まって行く。
「父様母様、力を貸して下さい」
 祈るように呟かれたその言葉に、シャルの体はすぐさま応えた。金の髪はそのままに、角が伸びて、蒼の瞳が赤く染まる。そして浮かべる笑みは爽やかな少女のものからどこかしら悪戯めいて。《曼殊沙華開花/メザメルオニコ》は此処に在り。
「さぁ、骸の海の海じゃ事足りん、地獄送りにしてやろう!」
「抜かせ悪童がぁ!!!!」
 そーちゃんが振るわれる。信長がいなす。返しの刀が襲い掛かる。知らない。鬼の血が、それに沸き立つ精神が、傷の痛みをものともしない。
 肩が引き裂かれる代わりに、そーちゃんが信長の体を捕える。浅い。肉を引き裂く感触はしかし、致命傷には至らない。しかしその分、力が緩んだ信長が紅音の方に引っ張られる。
「くそ!こりゃ前門の虎に後門の狼かい!見目がええのんがまだ救いがある…のぅ!」
 瞬時、背後へと炎の闘気を放つ。完全なる不意打ち。今目の前に居るシャルを無視しての一撃はしかし、
「ホムラ!」
 白銀の龍が防いだ。槍となり放たれたそれが、新たに襲い掛かる炎を相殺する。
「あ!くそ武器大剣だけじゃないんかい!」
 完全なる不意を打ったつもりの一撃、それが防がれたのなら、隙が出来る事は明白だった。
「くたばれ信長ァ!」
 シャルの気合の入った言葉と共にソーちゃんがジャストミート。ホームラン。
「ぐおおおおお!!!!!」
 血肉をまき散らしながら、紅音の方へと叩き返される。そうすれば、
「焼き尽くす!!」
 《煉獄猛焔波動/レンゴクモウエンハドウ》。今度は信長が爆炎に包まれる番だった。
「ガアアアア!!!」
 苦悶の声を上げながら吹き飛ばされていく。そしてそれを見やり、紅音が崩れ落ちた。
「龍ヶ崎さん!?」
 シャルが駆け寄る。最初の爆発に綱引き。体力は、限界だった。
「そっちこそ、大丈夫?」
 心配げな声を掛けるシャルの肩にも、確かに傷がある。
「あっ・・・えへへ。痛いですね」
 少し困ったような笑顔。まずは一あて。お互いに傷を負いながらも、後に続くものの為に、確実なダメージは負わせた。信長決着の時は、着々と迫っている。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

バンシィ・ルフェイ
・先制対策
オーラで全力防御
死霊術で「身代わり人形」にダメージを肩代わりさせ
即死を回避、意識だけは残す様にしのぎ切る

「打ちのめされた半死人、この姿がワタシの原風景だ。
そのまま死にゆくことを拒否し、報復してやると誓ったのが
バンシィとしての起源なんだからね。
アンタを滅ぼすまでは足掻いてやるさ」


・攻撃
自身の血肉を贄にして
攻撃された事象をパスとして受けたダメージを呪詛返し
ユーベルコードに上乗せする

・心情
対ヴァンパイアのオブリビオンフォーミュラ
その試金石としてアンタで試させてもらうよ

アンタのような強者は
弱者を踏みつけて我が道を行くんだろうね
だが踏みつけた石ころに
足を貫かれることもあると覚えておくがいいさ


杜鬼・クロウ
アドリブ◎
UC新詠唱歓迎

是非に及ばず、とでも言うかと思いきや
テメェの目はまだ死ンじゃァいねェようで安心したぜ
引導を渡してないしなァ

さァ、此れが最期の晴れ舞台だ
幕引きとす

敵の先制は剣に流水の魔宿し攻撃緩和させ防御(武器受け
炎の流れや太刀筋を注意深く視て回避(見切り・第六感

【トリニティ・エンハンス】使用
攻撃力up

繋がれた炎の鎖利用し手繰り寄せ遠心力で地面に強打
火傷のリスク負う
体勢崩れた所を玄夜叉で敵を刺し戦力削る(属性攻撃・2回攻撃
鎖断ち切り一旦下がる

黒外套舞う
刹那の静寂
霞の構えで目閉じ開眼
総てはこの一太刀に

五の型、刃光(デスティニーブレイク)
渦巻く魔力集め槍の様に突く
意志力を収束
遠くを斬る光の刃



「・・・!ガッ・・・グッ・・・!やりおって、猟兵共め……!」
 焦げ付き、血を腹よりまき散らしながら、それでもなおオブリビオンフォーミュラー、第六天魔王織田・信長は未だなお、生きていた。
 吹き飛ばされた先、憑装した弥助に叱咤されながら立ち上がる。
「おやまぁ、まだまだ元気じゃないさ」
 そしてその姿にまるで感心したかのように声を掛けるのは、
「なんじゃ、羽虫か」
「精々夜の蝶、辺りと言って欲しいねぇ」
 バンシィ・ルフェイ。枯れた声の女が笑った。
「弥助ぇ!」
「承知!」
 以心伝心。目の前に浮かぶのは妖精の女。つまりは小さく、的は狙いにくい。ならば行うべきは広範囲への攻撃。
 弥助の背負う剣が破壊されれば、それはすぐさま花弁となり、バンシィへと襲い掛かる。一人二役。相手への初動の優越が、天魔の強みであった。
「おやおや、異国の王様は淑女の誘い方も知らないと見た。怖い怖い」
 そう言いながら傍らに、己の姿と瓜二つの人形を引き寄せて、全力で防御の態勢をとる。
「おうおう!こりゃ相済まなかった!!!異国の貴婦人殿よ!儂と一曲踊ってくれんか!なぁに、貴様の死出の旅まで付き合ってくれるだけで構わんからよ!」
 刃の花弁が嵐となって襲い掛かる。妖精など所詮嵐の中では容易く舞い散る葉の一枚のよう。
「くぅ・・・!」
 宝珠に乗ってどうにか展開した防御を容易く引き裂き、刃が迫る。刃に巻かれる瞬間、傍らに置いていた人形を庇うように抱き締めれば、
「これ・・・は、中々・・・!」
 刃がバンシィの体を撫でる。しかし撫でられたはずの体は傷付かず、代わりに抱きしめた《身代わり人形》が傷を負う。
「っぁ……!」
 しかしそれでもなお、刃は鋭く、瞬く間に《身代わり人形》が屑となり、バンシィ本人の体にも傷がそこかしこに。
 ああ、どこにでもいる婦女であるならば涙も出よう。けれどここにいるのは涙も枯れ果てた泣き女。
「どうじゃ?死んだかの?」
 だからこそ、刃の嵐が過ぎ去った後、信長がその死体を見ようと目を凝らしてもなお、
「おあい・・・にくさま、だね。」
 バンシィは、体中に傷を刻み、血を流しならも即死を免れ生きていた。
「ハハハ、なんじゃ貴様。まるで打ちのめされた半死人のようではないか。これでは踊る事も出来んな」
 そう言いながら天魔は一歩づつ、フラフラと宝珠にしがみ付くように伏して、顔だけを信長へと向けたバンシィへと歩いてゆく。
「あおい、にくさま。踊る相手は決まってるさね……それに、この姿がワタシの原風景だ。そのまま死にゆくことを拒否し、報復してやると誓ったのがバンシィとしての起源なんだからね」
 だから、と血を流して茫洋とした瞳の中に宿る意思は強く。
「アンタを滅ぼすまでは足掻いてやるさ」
「そりゃ天晴なり」
 言葉は簡潔で、振るわれた結果も簡潔だった。
(ああ、くそ・・・) 
 悪態をつく。視界が霞んでいる。意思が固くとも、血を流し過ぎた。心は体より早く動いているのに、それに体がついていかない。己の次の動きよりも、相手の方が早い。
 だからそれは、

「飽きもせず女に傷を付けてご機嫌か。虫唾が走る」

 その助けはまさしく天祐だった。
 振るわれる刃を、黒魔剣が弾く。
 後ずさる信長がすかさず放った炎の闘気は宿された流水の魔で受け流し、そうしてバンシィを庇えば、
「大丈夫か?」
 僅かに背中へと顔を向けて声を掛けるのはヤドリガミ、杜鬼・クロウだ。
 力強い夕赤と青浅葱異色の瞳が、どこか茫洋としながらも意思を宿した藍色の瞳と交錯する。
「ハン!テメェの目はまだ死ンじゃァいねェようで安心したぜ」
「当たり前だよ。まだワタシはアイツに一杯、食わせてないからね」
「よし、それじゃあ行くぜ。これが最後の舞台。幕引きとする」
 100の生を重ねる老女と、100の時を経てより生を重ねはじめた男が同じく前を向いた。
「は、ハ!男が1人か!無粋じゃのぅ!儂とご婦人の逢瀬を邪魔するか」
「やめな、それこそ虫唾が走る」
 バンシィの言葉と共に、クロウが駆けだした。
 クロウへと向かって炎の闘気が舞う。炎弾として打ち放たれたそれを、先ほどのように受け流さず、今度は真正面から受け止める。
 そうすれば、爆破が襲い、
「ぃってぇな!!!」
 それを耐えたのなら結ばれるは炎の鎖だ。
「それはさっき見ておるんじゃな儂も!」
 故に起こるのは綱引きならば、それをさせなければよい。一気に天魔が一気に肉薄してくる。
 思いっきり鎖を引き、クロウの態勢を引き倒して来ようとするその動きには、黒魔剣<玄夜叉/アスラデウス>で鎖を断ち斬る事で対処。しかしその分、振り下ろされる刃を受け止める形になり、
「おうおう!どうしたお主、押されておるのではないか!?」
「ハッ!!俺を押しつぶすなら、虎くらい連れてこい!!」
 鍔迫り合い、炎が、水が、風が舞う。それがクロウの力となる。
「さぁ!アゲていくぜ!……《十重二十重、鬼すら隠れる時重ね、朽ち果てし杜に鎮護されし其の名は何ぞ》」
 シン……眼下の戦場では万の軍勢が相争ってる筈の戦いの場が、一気に鎮まった。
「なに!?」
 鍔迫り合い。確かに上の位置を取り、押さえつけようとしているのは己の筈、しかし、ならばこの圧は。この静けさは一体。そう…まるで熱海の辺りに、参り、拝した時のような。
《ああ、名は知れず。銘(な)も知らず。ならば今ここに祝(な)を付けよう。すなわち、鬼の杜のクロウなり》
《さぁ、天照大御神よご照覧あれ。八咫が護りしクロウと名乗った輝きは、今もなお陰りなきゆえに。杜鬼のクロウが奏上する。その遍く輝きにて、昏き海の禍を払わらん力を与えんことを……恐み恐みも白す》
 瞬間、爆発的に力が増す。
「《トリニティ・エンハンス/奏上・三位一体之祓剣》」
「ぐおおお!!!!まずい!こいつぁ不味いのぅ!!!」
 あっさりと上から押さえつけられた力をはねのけ、信長が、天魔が吹き飛ばされる。
 清浄な空気を纏い、静かにこちらを見つめるクロウは、明らかにオブリビオンに対して致命的となる『何か』を備えていた。
 これは不味い。そもそも、もはや天魔の目的は逃げ延びる事。斯様な奴に構ってはいられないと、後ずさろうとすれば。
「それは無理な相談だね。羽虫の石にだって、気付かなければ足を貫かれる事もあると、覚えておくがいいさ」
 《死者の審判/ジャッジメント・ハデス》。冥界の波動が、バンシィが負った傷の分だけ威力を増すという呪詛の風を帯びて、信長を襲った。
「ぐぉおぉおおおお・・・!」
 体中に新たな傷を刻み、織田信長が逃走の足を止める。
(これが、今のワタシの限界かね)
 将来的に予想される、ヴァンパイアのオブリビオンフォーミュラとの戦い。それを見据えて、今この時に戦える相手と戦い、このような結果となった。
「なら、それが知れただけいいさ。頼むよ」
「分かってる」
 静かに、クロウが答える。隙が出来た。ならば黒外套が舞う時だ。
 刹那の静寂。
 ”意思”を乗せて。
 霞の構えで目閉じ開眼。


 総ては一刀、この一太刀に。

《五の型、刃光/デスティニーブレイク》
 

 それは、遠くを斬る光の刃。
 確かにその一撃が、織田信長の芯を、貫き、吹き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

烏丸・都留
アドリブ共闘可

「逃がさないわよ……」


装備を隠蔽状態で大量に縮小召喚し常時待機。
自身味方への全ての攻撃を迎撃/ガードしながら反撃。
UC:雷冥威武により装備は機動力攻撃回数強化、味方攻撃時に治癒効果を発するので回復支援も並行し行い状況を後方から監視し随時予備機を投入。


攻撃:
アサルトユニットα/Γ:無数

迎撃支援監視:
クラスタード・デコイ/リレイ:各9万

防御:
ガードユニット:3万
アイテールの護衛隊:無数


POW:防御装備で味方への攻撃へ割り込み防御

SPD:防御装備で攻撃を率先して受け、生命力を吸われる前にシールドバッシュ、カウンター、捨て身の一撃等で反撃

WIZ:防御装備を周囲に多数配置、範囲防御で守る。


御形・菘
妾の名は御形・菘! 真なる邪神よ!
魔王を名乗る者よ、さあお相手願おうか!

闘気が来る方向は分かるであろう?
邪神オーラを纏った尻尾を迫る側に出し、爆発のダメージから上半身は確実に防御する!
痛みは我慢、覚悟を決めて耐えきる!

攻めを凌いだら、眼前の空間を右手でコンコンっと
はーっはっはっは! 二度も炎の中で果てるなど、実に芸が無かろう?
相応しい場を用意してやったぞ
そしてこれは、妾ではなくお主が逃げられんチェーンデスマッチよ!

ああ本当に素晴らしい! 今の妾は最強無敵よ!
攻撃力が限界まで高まった、全力の左腕の一撃の前に沈むがよい!
攻撃も防御もカウンターも関係ない! 一切合切全部ブチ抜いてくれよう!


兎乃・零時
アドリブ絡み大歓迎

…あれが…憑装した信長…!(震え

でも
お前を倒せりゃ戦争が終わる
この世界も守れる!
だったら…怯える場合じゃねぇ!

全身全霊を賭け
俺様の持てる全てで
お前に…勝つ!


夢の為
友の為
勇気を出す

迫る闘気は
紙兎パルの【属性攻撃・オーラ防御】で防ぎ
逃げ足ダッシュで悲鳴と共に避け
自身の全力魔法風の魔力放出で弾く


隙を見て
光属性攻撃の閃光で視界を遮り
杖の先から魔力放出
天高く高くへ疑似空中浮遊

そして…急降下!

迫る攻撃は
パルの援護射撃で逸らし
パルのオーラ防御で防御硬め
気合で耐える

パルの誘導弾で自身を誘導加速
誘導先は信長

そして
光【属性攻撃】の【捨て身の一撃・零距離射撃・カウンター・全力魔法】を…UCを放つ!



 クロウの一撃によって第六天魔王・織田信長は確かに、その中心を穿たれ、遠くへと吹き飛ばされた。
 ドチャリ。水音を多く含んだ音を立てて、その力の多くを減じた魔王が倒れ伏す。もはや死に体としか言いようのない風情だった。
「お・・・おう、これはもう勝った!勝ったんじゃないのか・・・!?」
 その様を見て、どこか怯えたように声を上げるのは兎乃・零時だ。オブリビオンフォーミュラー。こいつを倒せばエンパイアを助ける事が出来る。戦うために来たとはいえ、怖いものは怖いといった風情。
「ぐ・・・ぉ・・・貴様、猟兵・・・・・・か?」
「うわぁぁぁああああ!?しゃ、喋ったぁ!?」
 掠れた男の声が零時へと語り掛ける。信長だ。半死半生から片足さらに死に突っ込んだような風情ながら零時を見つめる瞳はなおも鋭く、己の敵を見据えていた。
 正直、怖い。だからそれを振り払うように殊更に強く握りしめ、
「そ……そうだぞ!やい!お前を倒せばこの世界を救えるんだ!今から倒してやるからな!」
「は……はは。儂を、この儂を倒すか。ならばよ」
 俯く信長。
「な・・・なんだよ」
「せめて怯懦に竦む小童でなく武士(もののふ)になってもらわねばなぁ!弥助ぇ!よこせぇ!!!」
「承知!」
 瞬間、刀を持たぬ、信長の左手が不気味な鳥となり、
「うわああああ!?」
 とっさに防御の態勢を取った零時でなく、背後の弥助へと喰らいついた。
「んな!?」
 それはあまりにも異質な光景。憑装した相手に喰らいつくなど。あまりにも異様な光景はしかし、一つの結果を齎した。即ち、
「ガハハハハ!!!!おうおう!小童!どうじゃ、半死半生の天魔など殺そうが漢の本懐には遠かろうて!!!!首を取るなら五体満足!気力充溢の織田信長から首、とってこそじゃろうてな!!!!」
 言葉と共に、織田信長に存在していた傷が凄まじい勢いで塞がってゆくと同時、背後の弥助の存在感がどんどん薄くなってゆき、
「と、の・・・これ、いじょう・・・は」
「うむ!ようやった弥助!さぁ、小童、やろうではないか」
 『憑装した存在の生命力を喰らって回復する』、己の持つUCの威力を減じ、過ぎれば弥助由来のUCすら使えなくなる信長の切り札。そのままの勢いに振りかぶられた鳥の腕が襲い掛かる。それを前に、零時の反応は心と体が強張っていた分だけ遅れた。
 当たり前だ。死に体とか思っていた存在がいきなり見た目は完全復活してくるのだ。少年にそれを避ける術はなく、しかし、
「逃がさないわよ……」
 静かな声が、魔王の暴力を遮った。
 幾何学的な結晶によって形作られた透明な壁のようなものが、怪鳥の頭部を遮る。
「なんじゃこりゃ!?」
 怪訝な声をあげながら、しかし第六天魔王の反応は素早い。そのまま。壁と噛みつき、生命力を吸収しようとする。
「……収集した予測データより生命力を吸収する力が弱いわね。そもそも致命傷を負っていたはず。何か、したのね?」
 分析の言葉と共に、零時の背後から信長を見据えて現れたのは、烏丸・都留。生体戦艦、烏丸型強襲揚陸艦二番艦鶴丸のヤドリガミだ。
「いずれにせよ捨て置くわけにはいきません」
 言葉と共に透明な壁を構成する幾何学的な結晶、本来は戦艦用のサイズを持つガードユニットを対人用にまで縮小したそれを、まるで手足のように動かし、柔軟に形を変え、
「ぬぉお!?」
 鳥のくちばしをおもむろに突き放し、カウンターを放った。
「アサルトユニット」 
 静かな言葉と共に三角錐を上下逆に合体させたかのような幾何学的な形状のユニットが無数に信長を追い立てる。
「おお・・・綺麗だ・・・」
 まさに水晶の乱舞と言った風情の光景に、零時は目を奪われた。
「ハハハハハ!まったく!はよ儂を逃がさんか!」
 しかし幾ら弱体化したとはいえ、敵もまたさるもの。大帝の剣が花弁となり、アサルトユニットの攻撃に対応し始めた。オブリビオンフォーミュラーの面目躍如だ。
「……やはり流石、取ったところかしら。私だけで状況の打開は……」
 そこで言葉を切り、都留は中空をみやる。どうやら本体の観測結果と、都留本人が現に信長を見やった結果を照合しているらしい。
「……できなくは、ないけれど決め手に欠けるわね。だからそう、あなた」
 淑女の笑みが少年に向けられた。
「頑張って」
「おおう…!俺様か……!いや、やるぞ!やるぞぅ……!」
 いきなり振られた少年は気合の声と共にしかし、一歩、脚を前へと踏み出す事に躊躇してしまった。
(できるん・・・だろうか)
 杖が強く握られる。正面を見やれば、楽し気に笑いながらそこかしこから降りそそぐアサルトユニットから光を刃の花弁でいなし、防ぎ、ユニットを落として行く第六天魔王の姿。それにさっき、僅かななりとも自分は怯えた、のだ。
 少年の躊躇いが、手とそして口元へと伝わり、しかし状況は待ってはくれなかった。
「はーっはっはっは!撮れ高ゲットォ!!!!!」
 言葉は空から聞こえた。
「おおう!?今度はまた面妖な女子が来たもんじゃのう!!!」
 空より来る圧に、信長はすぐさま反応した。炎の闘気が放たれる。先ほど戦った、別の『信長』と同じように、尻尾で受け止める。爆炎。尻尾のダメージをものともせず、邪神、御形・菘は降臨した。
「さぁ!これで本日4度目の『妾がいろんな世界で怪人どもをボコってみた』となるわけだが、いやー!流石に四度目!!!しかも馬鹿の一つ覚えのように相手はまたもや炎の闘気を放ってきたと来れば、そりゃもう効くはずが無いだろうが!」
 そう言って、撮影用ドローン、<天地通眼>へとアピール。実際の所、菘もまた、他の信長から受けたUCよりも威力が減じていたのは感じていたが、それは言わぬが華。そういうの視聴者求めてない。
「ほう!貴様、四度目か!」
 迫り来るアサルトユニットを切り飛ばし、当てた炎より伸びる鎖を引っ張って菘をこちらに寄せようと、鎖を引きながら信長が叫ぶ。
「おうよその通り、そしてこの身、三度天魔を降せし、邪神なり!」
「ハハハハ!愉快愉快!ならば邪神よ、名を何と申す!?」
「笑止!知らぬか!ならば知れ!妾の名は御形・菘!」
 言葉が重なり、刃と拳が交差する。一瞬。互いに、相手の攻撃をいなし、にらみ合う。アサルトユニットと剣の花弁が舞い、それを少年と淑女がみやり、邪神と魔王はお互い笑いあった。
「やるのう!」
「そちらこそ!……とはいえ、二度も炎の中で果てるなど、実に芸が無かろう?」
 そう言いながら、御形は背後、零時へと一度意味ありげに振り返って、眼前の空間をコンコン、と叩く。
「……ん?あれは」
 その仕草に見覚えがあった。零時が怪訝な声をあげると、事態をより正確に認識した都留は、深刻な叫び声を上げた。
「うそでしょ……ここは、サムライエンパイアよ……!なんて、出鱈目!」
「どういう事だ?ええと、お姉さん?」
「システム・フラワーズよ!今あの彼女の、御形さんの周りが、キマイラフューチャーの技術によって一時的に作り替えられようとしてる」
「つまり?」
「流石に空間を隔てられたら一時的にでもアサルトユニットとの接続が斬れるから」
「剣の花弁が襲い掛かるのか!不味い!どうすればいい……!」
 少年の怯えた脚は、誰かの危機にあっさりと前へ進む意思を取り戻した。見れば、溶けるように信長と菘が消えていこうとしている。一時的に空間が隔てられようとしている証拠だ。
「これを持っていきなさい」
 そう言って都留が零時へと正八面体の結晶を渡した。
「これは?」
「いいから持って!」
「わ……分かったぞ!」
 そうして正八面体を懐に収めた零時が、薄れゆく菘へと近付き、そして3人とも、消えていった。
「……やっぱり」
 そうすれば都留とその本体の観測器から3名が完全にロスト。恐らくは眼前の、隔てられた空間にいるのだろうが、もはや『いない』も同然だった。
「身一つで入ってたら、私だと最悪本体との接続が切れてたわね。どうなるか分からない所だわ」
 そう言いながら、都留は本体とのリンクを深めていった。
「さて、本領発揮。させて貰うわよ」
 

「ハハハハ!どうだ!手向けの花の中、送り出される覚悟は出来たか?」
「おお……」
「ほぉ……これは……まさしく天竺のような……」
 そこは、まさしく今しがた存在していた戦場とは、似ても似つかぬ光景だった。 
 制御を失った都留のアサルトユニットがそこかしこに地面に落ちいる、花々の舞う草原。そのあまりの美しさに、信長と、どうにか空間に入り込んだ零時はしばし目を奪われた。
「戦に、似つかわしくないのぅ」
「当たり前だ。これから行われるはデスマッチ。即ち、どちらかが死なねば出る事の出来ぬ場所。これ即ち手向けの場であるが故に」
「ハハハハ、そりゃ剛毅じゃのう。じゃったら、なぜ。貴様はそこにおる?小童」
 無感動な、冷酷な瞳が零時を貫く。
「……!」
 思わず、杖を握る手が強くなる……先ほどの、弥助に喰らいつく悍ましい光景が目に浮かぶ。けれど脚を踏み出した理由は、分かってる。それは、当たり前で、ありふれた事。
「邪神を、助けるためだ」
 そう、結局の所兎乃・零時の動機はそんなものだ。夢の為、友の為。それはつまり、誰かの為。
「ほ~う」
 何やら、隣に立つ菘の意味ありげな視線に、正面に立つ信長面白げな視線。それらを真正面から受け取って、思わず照れ隠しに視線を逸らして、少年は吠えた。
「そ……それに俺様は最強の魔術師だからな!助ける位訳ないんだからな!」
「そうか。なら、この戦いは、デスマッチだが、最強の魔術師と最強の邪神のコラボ配信という訳だ……名前は?」
「零時」
「よし、なら零時、いくぞ」
「ああ、いこう!邪神様!」
「おうおう!来るか!ならばこれが最後。まさしく、是非もなし!殺して生きるか」
「死んで終わるかの《落花狼藉・散華世界/イキナリクライマックスバトル》だ!!!」

 そうして、エンパイアウォー、最後の戦いの、最終局面は始まった。


「おりゃぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!」
「はーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!」
「ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」

 もはや、理屈も理論も駆け引きもない。信長へと向かってゆく菘と零時を、信長が迎え撃つことが出来るか。それだけの単純な戦いだった。

(ああ本当に素晴らしい! 今の妾は最強無敵よ!)
 迫り来る剣の花弁が肌に傷をつける。尻尾と信長を結ぶ鎖から湧き上がる炎が、尻尾を炙る。それでもなお、止めるには至らない。
 傍ら、共に走る美少年とのコラボでとエンパイアウォー最終決戦という事で視聴者数はうなぎのぼり。これだけ見られてるという事はチャンネル登録数もまた増えるという事で、痛みを耐える理由には十分すぎる。
「魔王よ!敢えてこう言おう!感謝する!故に妾の動画高評価の糧となる栄誉を与えよう!!!」
 まだ、信長との間に距離はある。しかしどのようにトドメを振るうかは決めていた。だからこそ、左の拳を握り込んだ。


(そう…か、配信されているのか) 
 駆け抜ける。炎が襲い掛かってくる。眼をそらさない。何故なら、紙兎パルが守ってくれるから。式神は襲い掛かる炎の闘気を、その性能を十全に発揮し防ぎきる。そしてその隙を縫うかのように、迫り来る剣の花弁。
「ぎゃああああああ!!!!!!!!」
 情けない悲鳴。しかし声と共に振るわれた全力の風属性の魔力放出はしっかりとその役目を果たし、襲い掛かるそれを散らした。
「ああくそ!…怯える場合じゃねぇ!」
 夢の為、友の為。そして、これがキマイラフューチャーで配信されているのなら、さらには何時かの誰かと交わした手の為。
 情けなかろうが少年は、兎乃零時はやるしかないのだ。

 半身蛇の邪神と、発展途上の少年。それが、鬼気迫る表情で自身に襲い掛からんとしてやってくるのを見て、第六天魔、織田信長の心は、不思議と晴れやかであった。
 体は猛り、魂は荒ぶ。しかし、心は、どうにも。
(よい、な。良い。終わりじゃ。若い者が、やってくるのが、よい)
 思えば、本能寺で焼かれるまでも、戦いの連続であった。敵は、恐ろしいものであった。それは例えば、自身の身内であったり、恐ろしき先達であったり、宗教であったり、常識であったり。いずれにせよ、
(皆……そう、皆。儂よりほぼ年が上で、そして儂より強大であった)
 織田信長という男は、常に挑戦者であった。強敵に挑戦して挑戦して挑戦して、そしてついに頂に手がかかりかけた所で、
(零れ落ちるように本能寺……ハハ。まさしく夢幻の如くなり、よのぅ)
 挑戦者の夢は、炎に露と、消えた。
(そしてその儂が、骸の海より蘇り、此度はまさか……)
 あの憎き信玄坊主、越後の龍は他の英傑を従え、徳川の世の、天下泰平に対する強敵となりおおせた。
(ああ……やった。ようようやった。じゃから、よ。最期に儂はお主らの強敵であるとしよう)
 零時と菘、両者を迎え入れるように、両手を広げる。しかし、決してこちらには届かせないとでも言うように、なけなしの力総てを弥助のUCに注ぎ込む。
 猟兵達もその動きに気付いたのだろう。力を振り絞った一撃を叩き込む直前、相手の最大の攻撃への防御の態勢を取り、襲い掛かる暴威をやりすごそうととして、
「弥助」
「承知」
 瞬間、盛り上がり不気味な鳥の頭となる信長の背中、喰らい尽くされる憑装の弥助。弥助が喰らい尽くされると同時、強制的に鳥への変態が解除され、猟兵達に襲い掛かろうとした剣の花弁も、炎の闘気や鎖。その総てが、解除された。
 信長の攻撃を耐え抜いて一撃喰らわそうという意思を強く持っていたからこそ、
「おわっ!?」
「なっ!?」
 心がつんのめり、僅かな隙が出来た。
「ガハハハハ!んなもん儂が常に挑戦者側に決まっとろうが馬鹿どもめ!!!!やーい!!!騙された!」」
 そしてこの空間に入ってから猟兵達を迎え討とうという姿勢を取っていた信長が、刀一本で全力で猟兵達へと突貫してゆく。
 このままいけば、まずは隙を晒した零時を一刀の元に斬り捨て、返す刀で倒れ伏した零時に動揺した菘の頸を跳ね、見事織田信長の、勝利である。

 
 しかし、零時に正八面体は渡されていた。伏線は既にあった。ならば今から起こることは、奇跡でもご都合主義でもなんでもなく、林檎が地面へと落ちるような、当然の帰結である。

「『上天の威。黒天の武。我らが敵にその威武を示したまえ』」
《雷冥威武/ライメイイブ》
「ガハァ!?」
 信長が踏み出そうとした瞬間、女性の声が響き、一斉に本体との接続をシャットダウンされて地面に落ちていたアタックユニットが再起動。そこから放たれた幾条もの閃光が、信長を貫きその場へと縫い留めた。
「な……なん、じゃ」
 烏丸・都留の仕業である。視点を一度この菘の産み出した空間の外に戻せば、そこには疲労困憊の様子で地面に座り込む彼女の姿があった。零時に渡した己のUDC対応戦略型CICユニットを起点にこの空間を作り出したシステム・フラワーズの一部に一時的なバックドアを形成。無理やり空間に介入し、接続が途切れていた自身のユニットと再接続を果たしたのだ。
 都留が今まで何もなかったはずの正面の空間を見やれば、CICユニットから送られる情報がARとして視界にオーバーラップ。戦場の情報を確実にとらえていた。
「あとは、頼んだわよ」
 出来る限りのことはしたのだ。後は中の二人に、委ねるのみ。

 
 言葉はなかった。交わす余裕も、無かった。
 眼前、お互いに見せるのは第六天魔王、織田・信長幾たびもその野望を阻まれ、幾たびも己を倒され、もはや骸の海より再生する余裕すら亡くしたオブリビオン・フォーミュラー。
 もはやこいつを倒せば、此度の戦争において織田信長が再び蘇ることはなく、この戦いを終わらせる事になる存在。
 それが、今、幾条もの光に貫かれて、大きな隙を晒していた。
「これが妾の全力だ―――受け取れぇぇぇぇええええええ!!!!!!」
 裂帛の気合。この空間にて限界まで高まった左ストレート一撃が、その頬に刺さった。
「俺様の持てる総てで!!!!!」
 これで戦いが終わるなら出し惜しみは無しだ。光がその手に集まり、狙うはその胴。
「全身全霊を賭け、お前に!!!勝つ!!!!!これが!《全力全開・最大出力魔力砲/イッパツカギリ・ギャクテンノイッテ》だ!!うおおおおおお!!!」
 胴に軽く両手が添えられ、極大の光が、放たれた。

 そして、
「あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
「負けぬ!!!!!負けぬぞぉぉおおおおおおあああああああ!!!!!!!!!」


 一撃が、光が、信長を襲う。猟兵共の一撃、何する者ぞ。天魔はそれを耐え、耐え。耐えに耐え、耐え抜いて―――――――――――――

「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁおおおおお…おお…おお・・・」

 やがて、踏ん張っていた足が地を離れ、

「……おおおおおお!?がはぁぁぁああああ!!!!!!!!」
 吹き飛ばされた。


 猟兵達の放つ光が何時しかやみ、静寂が訪れる。
「やっ!ん、だよな?」
 へたり込み、荒い息をつきながら零時が菘に聞き返した。
「そのはずだが……」
 いい加減こちらも満身創痍。疲れを色濃くにじませた声で菘が答える。
 そしてそこに、
「ガッ……ハハ……ようよう、やってくれたのぅ」
 第六天魔王の声が二人の会話に入り込んだ。
「嘘だろぉ!?もうやめてくれよぉ!?」
 もう己の全てを絞りつくしたのだ。情けない声を上げなが目を向けた零時と対照的に唇を強く結んだ菘が声のする方へ眼を向けてみれば、
 そこには、もはや力の全てを使い尽くしたのだろう。存在感が急速に薄まってゆく織田信長の姿があった。
 己を見る猟兵達を見て、何か言おうとして、しかし男は口を閉じ、にやりと泰然自若な笑みを浮かべ、最期に一言

「―――是非も、なし」

 そう言って、消え去って行った。

 こうして此度の戦いの首謀者である第六天魔王、織田・信長は消え去った。
 即ちこれにて――――エンパイアウォー、終結。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年09月01日


挿絵イラスト