あまくておいしいボクのおかし
#アリスラビリンス
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●お菓子のお城のデスゲーム
元の世界へ帰る扉を探して足を踏み入れた、新しい不思議の国。
アリスの私に記憶なんて無いのだけれど、その国はまさにおとぎ話みたいな光景だった。
床のタイルはビスケット、壁は白いクリームがたっぷり塗られたふわふわのスポンジケーキ。高い天井から吊り下げられたシャンデリアには、ロウソク代わりにキャンディがはめられている。
「すっごぉーい! お菓子のお城だぁーっ!」
今まで何度もオウガに襲われて怖い思いもしたけれど……今度の国はとっても平和そう!
シャンデリアを見上げながら、どうしてキャンディが光ってるんだろう、なんてことを考えていると……ふと、ロウソクの火が消えるように、シャンデリアからキャンディが一粒落ちてきて……。
――どかん。
大きな音がした。
思わず耳を塞いで両目を閉じる。髪を焦がす熱、爆風でスカートがはためく感触。
次に目を開いた時、目の前のビスケット床は大きく砕けて焼け焦げて、破片がそこら中に散らばっていた。
「え……え、なんでっ。 お菓子が、爆発……?」
『えっへへへぇ。 いらっしゃーい、ボクのおかしちゃん!』
「ひぃっ!?」
突然、壁から生えたアイスコーンからスピーカーのように声が響いてきた。立て続けの出来事に、私は変な悲鳴をあげてしまう。
『あまーいおかしが食べられるとおもったのかなぁ? ざーんねーん! おかしはキミ、食べるのはボク!』
子供が無邪気に笑うような、だからこそ恐ろしい、そんな声が私へと向けられている。
こんなことが起こるのは初めてのことだけれど、アリスの私を食べようと思っているのは間違いなくオウガだ。
ぱちぱちぱち……と拍手する音をBGMにして、そのオウガは無邪気なまま告げる。
『ボクに食べられたくなかったら、がんばってにげてみてねぇ。 おかしのおしろの脱出ゲーム、はじまりはじまりぃ~』
●胃袋へ収まる前に
「テメーらにこれから向かってもらうのはアリスラビリンス。 オウガの悪趣味なゲームに、一人のアリスが巻き込まれちまったようだ。 このいけ好かねえオウガをぶっ飛ばして、アリスを助けてやってほしい」
自らの体に炎を纏わせたブラックタール、グリモア猟兵のギャリソン・ハイオクバーナーが集まった猟兵たちの前で予知の内容を告げた。
アリスラビリンスは複数の不思議な国同士が繋がる世界。その不思議な国の一つが、強力なオウガによってまるごとデスゲームの会場にされているらしい。
その不思議の国は、お菓子のお城。文字通り、城内のありとあらゆるものがお菓子で作られている不思議の国である。
「お菓子の家ってのがなんかの童話に出てくるだろ、あれのスーパーウルトラ豪華バージョンみたいなもんだ。 ……問題は、オウガの罠がそのお菓子に紛れて仕掛けられていやがる」
罠を掻い潜って脱出するというのが、オウガの用意したゲームということらしい。
「いちいち付き合ってらんねー!ってそのオウガを先に倒しにいこうとすると……その間にオウガの配下どもにアリスが捕まっちまう。 だから、まずはアリスに近寄る配下どもの相手をしてもらうことになるな」
つまり、猟兵たちはオウガの仕掛けた罠を掻い潜った上で、アリスを襲う敵の集団と戦うこととなる。
「俺様が見た予知の通りなら、最初にあらわれる配下は『にゃんこずきんちゃん』……ちゃんも名前なのかコレ? ……この猫が、アリスに接触してオウガのところへ連れて行こうとする。 俺様が転移させた後、テメーらが全力で向かえば連れて行かれる前に間に合うはずだ」
にゃんこずきんちゃんは愛くるしい姿でアリスに協力的な態度をとることで、アリスを騙してオウガの元へ連れて行こうとするようだ。最初にアリスに近づこうとするのは一匹だけだが、猟兵たちが姿をあらわせば隠れている大量のにゃんこずきんちゃんがあらわれるだろう。
アリスの居場所はお菓子のお城の入り口にあたる、エントランスホール。広くて天井も高く、戦いで猟兵たちの動きが阻害されることはない。
「ここの罠は、いくつもぶら下がってる天井のシャンデリアから、飴の形した爆弾がポロポロ降ってきて、触ったり床に落ちたりすると爆発するってシロモノだ。 どうやら、シャンデリアの真下で大きな声や物音を立てちまうと降ってくる頻度も高くなるみてーだな」
他の場所では違う罠が待ち構えている可能性もあるが、最初の戦いでは天井から降るキャンディ爆弾への対処を考えれば良いということになる。
「それと、アリス自身についても説明しておくぜ」
不幸にもゲームに巻き込まれたアリス。年の頃は12か13歳ほど。髪の長い少女だ。
彼女はユーベルコードの『ガラスのラビリンス』を扱うことができ、戦場に硬度が高い透明なガラスの迷路を作ることができる。
「指示してやりゃあそれなりには戦えるはずだが……まぁ、一体一体は大したことねえ集団で出てくるヤツはともかく、オウガの相手は無謀だな。 まだまだガキンチョだ、無茶はさせてやんなよ?」
何よりも、彼女は守るべき対象なのだ。猟兵の手助けくらいはできたとしても、危険な目に合わせることは避けることが望ましい。
「あと最後に補足だ。 猫どもは『12時になると自爆する南瓜の爆車』を召喚する、っていうユーベルコードを使う。 戦闘が始まる頃の現地時刻は……11時50分ってところだ」
12時になれば、にゃんこずきんちゃんのユーベルコードに警戒が必要になるということだ。手早く倒すのか、自爆への対処を考えておくのか、そもそもそのユーベルコードを発動させないのか。いずれにせよ、対処方法は猟兵たちに託されている。
「……長くなっちまったな! 大事なのは【最終目標はボスオウガをぶっ倒す!】【その前にオウガの配下どもをぶっ倒す!】【ただし罠があるから気をつけろ!】ってこった!」
早口で要訳を済ませたギャリソンが転移の準備を始める。最後に、戦闘準備を始めた猟兵たちに向けて熱を込めて叫んだ。
「こんなロクでもねー事考えるヤツは、爆速でぶっ飛ばすに限るなァ! 頼りにしてるぜ、猟兵ども!」
らけ
お久しぶりです。らけと申します。
少々情報量の多いOPとなってしまいました。ギャリソンも最後に要訳していますが、もう一度おさらいをしておこうと思います。
・シナリオの最終目標はデスゲームを主催するオウガの撃破。
・1章はにゃんこずきんちゃんとの集団戦、降ってくるキャンディ爆弾に気をつけて戦おう。
・アリスのユーベルコードは『ガラスのラビリンス』に準拠、猟兵が指示をすれば従って行動する。
・にゃんこずきんちゃんのユーベルコードは12時になると爆発を伴うものがある。戦闘開始時の現地時刻は11時50分。
以上となります。どうか皆様のお力で、不幸なアリスを救い出してあげてください。
第1章 集団戦
『にゃんこずきんちゃん』
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POW : 12時になると自爆するとは何か間違ってるのにゃ。
自身の身長の2倍の【12時になると自爆する『南瓜の爆車』】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD : お魚やめるなんてもったいないのにゃ。
【相手が変形した部位や召喚物を魚】に変形し、自身の【自制心】を代償に、自身の【食欲と魚への反応速度】を強化する。
WIZ : どこかのおばあさんからもらった毒リンゴにゃ。
【毒リンゴを対象の口に放り込むこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
イラスト:笹にゃ うらら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●救いの手は猫の手?
「どうしよう、どうしよう……!」
どうにか泣くことはこらえたアリスだが、頭の中は真っ白なままだった。
アリスが故郷に帰れるはずの自分の扉、その方角もお菓子のお城に入ってから感じ取ることはできている。
「この感じ……きっと、上、だよね」
そう呟いたアリスが上を意識して周囲を見ると……今となっては恐ろしい、光るキャンディのシャンデリアが嫌でも視界に入ってきてしまう。
アリスが今いるのは城の入り口、広くてお菓子の飾り付けも豪華なエントランスホール。その奥には上階へと続く、カステラでできた階段が見えている。
アリスの扉は城の上階にある。ここから上に登れそうな階段は、奥に見えるあの一つだけ。
つまり、アリスは一人でシャンデリアから降ってくる爆弾を避けながら、この広いエントランスの奥へと進まなければならないのだ。
「怖い、怖いよぅ……!」
泣かないだけでも良くやっているのだろうが、シャンデリアから離れた場所で頭を抱えてしゃがみこんでしまう。
頭では理解しているのだが、まだ子どものアリスにはそんな恐ろしいことに挑む勇気は無い。
お菓子のお城だ、なんてはしゃいでいた自分が馬鹿みたいに感じる。
オウガの恐ろしい笑い声が頭の中で反響して消えない。
怖い。恐ろしい。嫌だ。食べられたくない――!
「大丈夫だにゃ、アリスちゃん!」
「ふぇっ!?」
不意に響いた、この状況には場違いに明るい声。
アリスが思わず顔を上げると、いつの間にかあらわれていたのは赤い頭巾を被った子猫。後ろ足で立ち上がり、ご丁寧なことに前足でバスケットまで握っている。
「にゃあ! にゃーが助けに来たんだにゃー! このシャンデリアの下を、安全に通る方法があるんだにゃー!」
「ほ、ほんとう!?」
害意なんてまるで感じられない、可愛らしい猫ちゃん。小柄ながらも自信溢れる口調で胸を張るその姿は、孤独なアリスに希望を与える。
「ほんとほんと! さぁ、にゃーに着いて来るんだにゃー!」
片手をアリスへと差し伸べて、安心させるような笑顔まで見せてくる。
恐ろしいオウガによって突然理不尽なデスゲームに巻き込まれてしまった幼いアリスが、思いもよらない味方の登場に安心の笑みを浮かべることを、一体誰が責められようか。
だが、アリスはまだ気づいていない。
砂糖菓子の調度品の裏側や、クッキーテーブルの下の暗がりに、同じような猫の姿がいくつもこちらを伺っていることに。
それらの猫たちの表情が、哀れなアリスがこれから辿る末路を想像してくすくすと歪んだ笑みを浮かべていることに。
自分へと差し伸べられたその猫の手が、偽りの救いの手であるということに。
エドゥアルト・ルーデル
アリスchang見守り隊総勢一名参陣!!
さあ真後ろからじっくりと見守るでござるよゲヒヒヒヒ!
これはあくまでアリスちゃんを止める為に背後に立っただけでござるよ!ホントダヨ?
ほら拙者が姿を現せばあちこちから…悪い猫ちゃんだ!
ハァ…この状況に怯えるアリスちゃんの姿が拙者にガッツを与えてくれる…おっと失礼、興奮の余り【グラビティの爆発】が出てしまいました
まあ猫ちゃん達が爆発しただけだからセーフ!
そして拙者は変形などしなーい!つまり猫ちゃんが好きなお魚は出てこないんDA!
移動前に予めシャンデリアも爆発させてやれば爆弾は落ちてこない!我ながら完璧…!
例え馬車が来ても遠距離から爆破して片をつけてやりますぞ!
雪華・グレイシア
やれやれ、悪趣味ここに極まれり、というヤツかな
幼気な少女を騙すだなんて、可愛いのは見かけだけだね
やぁ、可憐なレディ
キミを助けに来たよ
ボクかい?
ボクはちょっした怪盗さ
まずはそいつらの本性を暴くとしよう
【予告状】を猫たちが隠れているであろう暗がりへ向けて【投擲】
彼らに尻尾を出させるとしようか
出てきたら次は歌と共に巨人を召喚
落ちてくるシャンデリアに爆発する爆車か、ああ、実に怖いね
想定通りに動けばだけれど
巨人の咆哮でそれらをまとめて凍結させてしまうとしようか
床や天井ごと凍ってしまえばなんてことはないだろう?
予告する……キミたちの魔の手から、可愛いアリスを頂くよ
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
●迷えるアリスに救いの手を!
「さぁ、にゃーの手を取るんだにゃー!」
にゃんこずきんは曇りなき眼を演出するため、できる限り真っ直ぐにアリスを見つめる。
その子どもながらも整った顔を。
その顔を覆う黒く流麗な長髪を。
その真後ろに立ち、満足げなアルカイックスマイルを浮かべる迷彩服のヒゲオヤジを。
「……に゛ゃ゛ぁ゛ー!? 誰にゃこのオッサンは!?」
「えっ……ひ、ひゃぁっ!?」
思わず演技を忘れて汚い鳴き声で絶叫するにゃんこずきんと、釣られて後ろを振り返れば見知らぬ男が立っていたことにただただ驚くアリス。
「デュフフフ、見つかってしまったでござるか。 拙者としてはもう少しじっくりと見守っていたかったのでござるが」
立派に貯えた黒ヒゲを撫でながら悪びれなく言ってのける。彼こそはアリスchang見守り隊(総勢一名)こと、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)その人であった。愛用の迷彩服は任務地に合わせて着替えているため、お菓子のお城に合わせてペロペロキャンディのグルグル模様となっている。
「ああっと、勘違いしないでほしいでござるよアリスちゃん。 これはあくまでアリスちゃんを止める為に背後に立っただけでござるよ! ホントダヨ?」
「絶対ウソにゃー!? アリスちゃん、こんな猟兵なんて信用しちゃいかんにゃ!!」
「え、でも、猟兵さんなら私の味方なんじゃ……」
「にゃ、確かにそうにゃけどぉっ……!」
いかにエドゥアルトが傍目から見て怪しい男であろうと、アリスにとっては絶対の味方であるはずの猟兵だ。それを信用してはいけないというにゃんこずきんの言葉に、アリスは僅かながらも懐疑の視線を向ける。
そんな喧騒の中、ビスケットの床に靴音を鳴らしてもう一人の猟兵があらわれた。
「やれやれ、悪趣味ここに極まれり、というヤツかな。 幼気な少女を騙すだなんて、可愛いのは見かけだけだね」
マスカレイドマスクで目元を隠してはいるが、にゃんこずきんのやり口に不快感を示す口元は見て取れる。
怪盗服に身を包んであらわれたのは雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)。その手には数枚の黒いカードを携えている。
「やぁ、可憐なレディ。 キミを助けに来たよ」
「あ、あなたは……?」
立て続けにあらわれた猟兵たちに、戸惑いを見せるアリス。安心させるよう、グレイシアは笑みを浮かべてこう続ける。
「ボクかい? ボクはちょっした怪盗さ。 まずはそいつらの本性を暴くとしよう」
「そ、そんにゃもの無いにゃー、にゃーたちは潔白だにゃー!」
露骨に慌ててみせるにゃんこずきんを無視して、グレイシアはその手に握った黒いカード、怪盗の予告状を次々に投擲していく。
「予告する…… キミたちの魔の手から、可愛いアリスを頂くよ」
青薔薇のマークが刻まれた漆黒の予告状が、エントランスホール各所の物陰へと吸い込まれていき、そこにあったものへ次々突き刺さっていく。
「に゛ゃーっ!? にゃんで分かったにゃー!?」
「ちょっと刺さったにゃ! 痛いにゃー!!」
「え、えぇっ!?」
隠れていたはずのにゃんこずきんの直ぐ側に、あるいはにゃんこずきん自身に鋭く突き刺さる予告状。驚き飛び上がったにゃんこずきんたちがわらわらと姿をあらわしていく光景に、アリスは目を丸くする。
見渡しの良いエントランスホールでは、隠れられる場所も限られている。グレイシアの投擲技術を持ってすればこの程度、造作もないことだ。
「えぇーい! どうせ猟兵が相手なら隠れる必要も無いにゃ! やっちまうにゃみんにゃー!!」
「「にゃあぁー!」」
「きゃ、きゃあぁぁぁっ!?」
無害な猫の振りをかなぐり捨てて、バスケットを振り回しながら駆け出すにゃんこずきんの群れ。先程まで友好的であったはずの可愛らしい猫ちゃんが、牙をむき出しに爪を立てて襲い来る姿にアリスは恐怖で悲鳴をあげる。
「むっ!」
そこで鋭い反応を示したのはエドゥアルト。本性をあらわし飛んでくるにゃんこずきんの群れにではなく、アリスの悲鳴に対してのものだが。
「ハァ…… この状況に怯えるアリスちゃんの姿が…… 拙者にガッツを与えてくれるっ!」
(この人本当に猟兵さんなのかな……)
アリスがそんな懸念を抱いているとはつゆ知らず。危ない台詞とともに興奮のあまり身悶えするエドゥアルトが、その勢いで持ってグラビティの力を解き放つ。押し寄せるにゃんこずきんたちの中心で収束したそれは、突然の閃光と爆発を引き起こした。
「「に゛ゃぁぁぁっ!?」」
『サイコフォース』の爆発が何匹ものにゃんこずきんを吹き飛ばし、ある者は砕け散ったビスケット床に倒れ、ある者は壁のクリームへズボリと埋められていく。
「おっと失礼、興奮の余りグラビティの爆発が出てしまいました」
まあ猫ちゃん達が爆発しただけだからセーフ!サムズアップと笑顔を見せるエドゥアルト。興奮のあまり出るユーベルコードとは……。
それはともかく、にゃんこずきんの群れにはぽっかりと大穴が空いた。群れとなって襲い来る相手に、突如発生する爆発は効果絶大である。
その上、頭上のシャンデリアも今の爆発に巻き込んでおいた。これで爆弾も降ってこない、我ながら完璧……!
と、そう思いきや。
「おんや? これは思ったより硬いでござるなぁ……」
煙の晴れた頭上を見上げると、シャンデリアは未だ健在。
このデスゲームの根幹を成すメインギミックであるためか、思った以上に頑丈な作りであったらしい。
「……あ、もしかしてちょっとばかりヤバイでござる?」
なにせシャンデリアから降る爆弾は、真下の音に反応する仕組みである。そしてたった今サイコフォースの爆発を景気よくぶちかましたばかり。
予想違わず数瞬後、ポロポロポロポロ。雨のように降り注いでくるキャンディ爆弾。
「逃げるでござるよアリスちゅわぁぁんっ!!」
「ひゃあぁぁぁっ!?」
瞬間、小脇にアリスを抱えダッシュで逃げるエドゥアルト。せっかくのチャンスだが小脇に抱えたアリスの感触を楽しむ暇も余裕も無い。
「逃がすにゃー! 今がチャンスなのにゃー!!」
「「にゃー!!」」
その隙を逃すにゃんこずきんではない。サイコフォースの爆発から逃れた個体たちが次々に南瓜の爆車を召喚し、エドゥアルトたちを追いかけ始める。
降り注ぐ爆弾、追いすがる敵の群れ。
そんな絶体絶命の戦場に――透き通った歌声が響く。
「にゃにゃにゃ?」
こんな状況で歌?と、歌声の出どころを探る一匹のにゃんこずきん。
果たしてその犯人は、先程予告状を自分たちに投げつけた怪盗グレイシアであった。
「落ちてくる爆弾に爆発する爆車か、ああ、実に怖いね」
歌声の合間で器用に呟くグレイシア。その背後には、空気中の水蒸気が冷気で凍りつき、可視できるほどの勢いで渦を巻いている。
「――想定通りに動けば、だけれど」
歌声とともに勢いを増す冷気は、やがて氷で形作られた巨人と化していく。
大多数のにゃんこずきんはエドゥアルトとアリスを追いかけることに夢中で、たまたま歌声を聞いて周囲を見ていた一匹しか気づいていない。
「にゃ、にゃにゃっ!? みんにゃ、なんかヤバ……」
「――――砕けて」
『グゥ、ウオォォォッッッ!!!』
そのにゃんこずきんの警告も、グレイシアの歌声で召喚された『アイシング・ヨトゥンヘイム』の咆哮によってかき消される。
瞬間、巨人の咆哮とともに吹き荒れる氷嵐が周囲を白く染め上げた。
「にゃ……!?」
叫ぶ間もなく途轍もない冷気をぶつけられ、次々に凍りついていくにゃんこずきんたち。氷の暴威から逃れようとも、ビスケットの床が凍りつけば彼らの駆る爆車も車輪を取られてコントロールが効かない。
「ば、バカなやつにゃー! そんなのんきに歌ってたら、キャンディ爆弾から逃げられるわけ無いにゃー!」
寒さでかじかみ震えながら負け惜しみを口にするにゃんこずきん。
だが確かに、キャンディ爆弾はグレイシアの頭上から雨あられと降り注ぐ。明朗に歌い上げる声にもシャンデリアは反応し、その数は更に増えているのだ。キャンディ爆弾の洪水はそのまま床へと落ちていき……。
……爆発せずに、ただ床へバラバラと転がった。
「にゃ、にゃにゃにゃ!? どういうことにゃ!?」
「言っただろう? 想定通りに動けば、ってさ」
グレイシアが操る極寒の吹雪は、空中から降り注ぐ爆弾すら凍てつかせてみせたのだ。一度落ちてしまえば爆発するしかないものも、爆発する前に対処するのはなるほど、道理だ。
「あ、あのキザマスクやばいにゃ! 爆弾も止められちゃうにゃら、あっちを先にやっつけるにゃー!」
そう叫んだ何匹かのにゃんこずきんが、南瓜の爆車を走らせグレイシアへと向かい滑る氷の上で必死に南瓜のハンドルを切る、が。
「はいよそ見したドーン!」
「ぐえにゃー!?」
これ幸いとエドゥアルトが再びサイコフォースを炸裂させる。飛び散る哀れなにゃんこずきん、パラパラと飛び散る氷とビスケットの残骸。
猟兵の一方が襲われればもう一方がカバーする。広い戦場と大勢の敵が相手でも、両名とも扱うユーベルコードの攻撃範囲が広いために為せる連携だ。にゃんこずきんたちにとってはたまったものではない。
「いやぁ悪い悪い! 助かったでござるよ!」
グレイシアへと駆け寄るエドゥアルト。小脇に抱えていたアリスを(やや名残惜しげに)下ろし、爆弾を対処したグレイシアへと礼を言う。
「お礼を言うのはこちらもさ。 君が注目を集めてくれたおかげで、邪魔を入れられずに召喚することができたからね」
初っ端から派手な活躍をしてくれたエドゥアルトあってこそだと、グレイシアも謝意を示す。
「あ、あのっ。 おふたりとも、ありがとうございます……!」
にゃんこずきんに騙されるところを助けてくれた、二人の猟兵に頭を下げるアリス。
「いいんでござるよアリスちゃん!」
「お気になさらず、可愛いレディ」
二人はアリスへ笑顔で返し、互いに壁になるよう後ろにかばう。
爆発と吹雪で概ねの敵は片付いたものの、未だしぶとく残るにゃんこずきんと、シャンデリアから降り注ぐキャンディ爆弾の脅威は健在である。
時刻は11時54分。戦いは続く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
(POW)で判定
「まったく悪趣味な奴らだ…・こんどは熱い熱い炎で…焼き尽くしてやらあ!!」
【オーラ防御】で防御を固め、【戦闘知識】による【見切り】で攻撃を避ける。
【範囲攻撃】のスキルを使用し、アサルトウェポンの掃射で爆弾を迎撃しつつユーベルコード【紅蓮開放『ヴリトラ』】を使用し、炎で焼き尽くすぜ!!
近づいてきたやつには【怪力】での【なぎ払い】で対処する!!
バルドヴィーノ・バティスタ
オイオイ赤ずきんってなら重要なキャストを忘れてねェか?
呼ばれねェでも狼サンが来てやったぞ泣いて喜べ!
で…あの猫どもはなんで無事でいられンだ?
爆発を防ぐカラクリでも持ってンのか巻き込まれねェ場所があるのか、
それともお構いなしに爆発に巻き込まれてるのか。まァそれを確かめるためにもだ…
そーら!ちょうど爆風防ぐために固く変化させてた『自在のコート』がここにあるぞ!
魚にして奪いたきゃこっち来なァ!
…あーそうそう、コート置いた周りな、<早業>とUCで設置した地雷罠<目立たない>ように仕掛けてっから気張ってくれ。
躱しきれねェ攻撃と爆弾は<敵を盾にする>で防ぐぜ、
知らねェ奴や餌にゃ釣られるな…勉強なったな?
●爆発と獄炎の饗宴
「にゃーたちはまだこんなにいるにゃー! みんにゃ、焦らずいくにゃー!」
数を減らせど戦意を無くす気配は感じられないにゃんこずきんたち。なにがなんでもアリスを奪おうと、猟兵たちとアリスを遠巻きに包囲しつつじっくり詰め寄ってくる。
「オイオイ……赤ずきんってなら重要なキャストを忘れてねェか? 呼ばれねェでも狼サンが来てやったぞ、泣いて喜べ!」
見た目だけは童話のように愛らしくも獰猛な獣の群れを前に、そう不敵に笑ってみせたのはバルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)だ。
「アリスをデスゲームに巻き込んだ挙げ句、それを安心させる嘘で騙し連れて行く、か…… まったく悪趣味な奴らだ」
その横に立つガイ・レックウ(相克の戦士・f01997)は、オウガとにゃんこずきんたちの悪辣なやり口に顔をしかめる。
「うるさいにゃー! 犬っコロもサムライもお呼びじゃないにゃー!」
にゃーにゃーとやかましく騒ぎ立てるにゃんこずきんたち。見た目だけならばまだ可愛らしい光景ではあるのだが、その一匹一匹がこちらへ敵意を漲らせているのだからたまったものではない。
「で……あの猫どもはなんで無事でいられンだ?」
爆弾を降らすシャンデリアの下でもお構いなしに騒ぎ続けるにゃんこずきんの様子に、バルドヴィーノが疑問を抱く。確かに直前の戦いでも、彼らはキャンディ爆弾の降り注ぐ中でもお構いなしに攻撃を仕掛けていた。何か仕掛けがある可能性はある。
爆発を防ぐ手段でも持っているのか、爆発に巻き込まれない位置を熟知しているのか、はたまた数に任せてお構いなしに爆発に巻き込まれてるのか。
「確かに少し気になるな。 探る策があるのなら、俺が時間を稼ごう」
バルドヴィーノの呟きに、ガイは前へと一歩踏み出しそう提案する。
「おし、サクッと準備するからその間だけ頼んだ!」
その申し出を受け取り、バルドヴィーノは持ち込んだ装備品を取り出して準備を開始。襲い来るにゃんこずきんの群れを前に、ガイはたった一人で立ちはだかってみせる。
「バカなやつにゃー! 一人でにゃーたち全員なんて相手できるはずないにゃ―!」
今が好機と南瓜の爆車に跨って突撃してくるにゃんこずきんたち。ガイはビスケットの床に車輪の跡を残し爆走する猫たちを見据え、静かに妖刀ヴァジュラを抜き放つ。
「果たして馬鹿はどちらなのか…… 思い知らせてやるぜ!」
更に前へと駆け出し、敵の群れに飛び込んでいくガイ。爆走するにゃんこずきんたちの軌道を見切り、避ければアリスへと向かう者はオーラを纏った防御で受け止めて、そうして近づいた敵の群れの只中で。
「う、おぉぉぉっ!!!」
「にゃぁーっ!?」
ガイが発する裂帛の気合と共に怪力にて振るわれる妖刀。敵の群れをまとめて薙ぎ払い、吹き飛ばされたにゃんこずきんがビスケットの床へと叩きつけられる。
「にゃー! こうなったら爆弾にゃー! 皆一度引っ込むにゃー!!」
ただ南瓜の爆車で突撃を繰り返すだけでは歯が立たない。そう判断した一匹のにゃんこずきんが、仲間に後ろに下がるよう指示を下す。
確かにガイの大立ち回りは派手な音を出し、それに反応したシャンデリアからはキャンディ爆弾がいくつも降り注ぎ始めた。
「はっ! お前たちのように考え無しに突っ込んだとでも思ったか!」
そう言ってガイが構えたのは、彼独自の改造が施された突撃銃型のアサルトウェポン、AW01-2カスタム。
銃口を上へと向け、フルオートで連射される弾丸が爆弾の雨を的確に撃ち抜いていく。次々に空中で爆発が連鎖し、エントランスホールに爆風が吹き荒れる。
「はははっ! 派手にやるなァ! 待たせちまったな、次は俺の番だぜ!」
爆発が空中で連鎖していく様を爽快そうに笑うのは、準備を終えて戻ってきたバルドヴィーノだ。コートを頭上へと掲げて走り出し、爆弾が降り注ぐ中へと突っ込んでいく。
程なく降ってくる爆弾の一つ衝突し爆発に巻き込まれるコート。しかし爆風に煽られ激しくはためきながらも、そのコートは焦げも破れもしない。
バルドヴィーノ愛用の人狼装束、自在のコートは持ち主の意思に応じてその形状や特性を瞬時に変えることができるのだ。今は爆発から身を守るために固く変化させているのだろう。
「にゃー! あれにゃ、あれをお魚に変えてしまうにゃーっ!」
降って湧いたチャンスとばかり、にゃんこずきんたちがユーベルコードを発動する。相手が変形させたものを、更ににゃんこずきんたちの大好物である魚へと変形し直す術だ。
ポンッ!とメルヘンな音を立てて、バルドヴィーノのコートが大きな魚へと変化される。これでは身を守ることも叶わない。
「今にゃ―! あの猟兵を魚ごと食っちまうにゃー!」
「ハッ、そうかよ! ならこいつはくれてやらァ! そーら!」
防御手段を失えど不敵に笑い、食欲を増して暴走するにゃんこずきんの前に魚となったコートを放り投げる。
「お魚にゃーっ!!!」
涎を垂らして魚にかぶりつくにゃんこずきんたち。……カチッ。
「……にゃにゃ?」
魚が置かれたビスケットの床が、なぜか金属音が鳴らす。にゃんこずきんが首をかしげる……暇もなく、ビスケット床だったものが爆発を起こす。
「にゃにゃにゃぁーっ!? 床にも爆弾があるにゃーっ!?」
巻き込まれた大勢のにゃんこずきんがあちらこちらへ吹き飛ばされていく。バルドヴィーノ自身は、勢いあまって突っ込んできた何匹かをむんずと捕まえ爆風の盾にしていた。
これがバルドヴィーノが準備してきた本命の仕掛け。ガイが時間を稼いでいる間に『レプリカクラフト』でビスケット床に擬態した地雷を仕掛けていたのだ。変化させたコートをわざと見せつけて敵のユーベルコードを誘い、魚へと変化されたコートを地雷原へと投げて誘い込んでの一網打尽。
そして地雷の爆発音に触発されて、更に降り注ぐキャンディ爆弾。上下から爆発に挟まれて、にゃんこずきんたちはあちこちに吹っ飛んでいく。
「フツーに爆弾には巻き込まれンだなアイツら。 別に爆発を防ぐカラクリがあるわけじゃないみてェだわ」
シャンデリアの位置程度は把握していたのだろうが、魚を前に自制心を無くし食欲を増した彼らの判断力では避けきれないらしい。地雷によるダメージもあれば尚更だ。
「なるほど、熱に強いわけでもないなら遠慮はいらないな。 こんどは熱い熱い炎で……焼き尽くしてやらあ!!」
ガイが再び前に出る。頭上へと掲げた妖刀ヴァジュラに赤く激しい炎が宿る。勢いを増す獄炎はやがて巨大な竜の姿を形取り、溢れ出る熱波が砂糖菓子の調度品を溶かしていく。
「我が刀に封じられし、炎よ!! 紅蓮の竜となりて、すべてを焼き尽くせ!!」
主の叫びに呼応し、咆哮をあげて襲いかかる炎の巨竜。紅蓮開放『ヴリトラ』が猫の群れに次々と喰らいついていく。
「ぎにゃぁーっ!? こ、こんにゃばかにゃぁーっ!!?」
バルドヴィーノの地雷とキャンディ爆弾に巻き込まれ、もはや虫の息となったにゃんこずきんたちにそれを妨害する術もなし。次々と炎竜のアギトに焼か尽くされ、炭となっては灼熱の牙で噛み砕かれる。
やがてエントランスホールに残ったのは……熱で溶け出した壁のクリームと、爆発で空いたビスケット床の穴、かつてにゃんこずきんだった黒焦げのなにか。
お城のどこかからか大きく鐘の音が鳴り響く。12時の合図だろうが、既に立ち上がる敵はいない。猟兵たちの圧勝である。
猟兵たちは、いたいけな少女を誑かさんとする魔の手から見事アリスを救ってみせたのだ。
……しかし、このお菓子のお城から脱出するにはまだ早い。このデスゲームを始めたオウガを倒さねば、新たな犠牲者が出るばかりだ。
彼らはアリスを守りながら、上の階へと続く階段を登り始めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『うさうさトランプ兵』
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POW : 落雷II
無敵の【空飛ぶイボイノシシ型の対地攻撃機】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : そう、我々はやればできる!
自身の【ゴーグル】が輝く間、【軽量自動小銃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : バーガータイム
【ハンバーガーとフライドチキン】を給仕している間、戦場にいるハンバーガーとフライドチキンを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
イラスト:しちがつ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●パーティフロアと串刺しの罠
「……多分、あっちだと思います」
自分の扉がある方向を探るアリス。猟兵たちはその気配を頼りにお菓子のお城を進んでいく。
城の上層へと登った一同は廊下をいくつか通り抜け、やがて再び広大な空間へとたどり着いた。
「ここは……パーティの会場、でしょうか?」
エントランスホールに劣らず、むしろより豪奢な装飾品で彩られている。いくつか並べられたテーブルの上には食事まで置かれている。無論、すべてお菓子だが。
そして床はチェス盤のように、白いビスケットと黒いクッキーが交互に並んだ市松模様で彩られている。その一つ一つは大きめのサイズで、人が一人寝そべるのには十分といった大きさだ。
高い天井に取り付けられたシャンデリアも健在ではあるが、ここのは大きなものが一つだけで、普通のロウソクが取り付けられている。どうやら爆弾を降らせるものではないらしい。
「ここには、さっきの罠は無いんでしょうか……?」
部屋へと一歩踏み出そうとするアリス。だが何があるかも分からないと、一人の猟兵がその腕を引き……。
ジャキンッ!
「ひいっ!?」
間一髪、踏み出す先であった黒いクッキーの床から何本もの槍が飛び出した。一歩間違えば命を落とすところであった。
「あ、ありがとうございしたっ……!」
へたり込みながらも、助けてくれた猟兵に礼を言うアリス。しかし休んでいる暇は訪れない。
突如パーティフロアに響き始めるけたたましい警報。反対側の扉が開け放たれて、ピンク色の軍服を纏うオブリビオンがあらわれる。頭につけた兎耳のような装飾が特徴的な、うさうさトランプ兵だ。
「HQ! パーティフロアの罠が発動! 猟兵の侵入者たちと思われる! USA!」
「動ける者は直ちに急行、アリスを捕らえ侵入者は排除せよ! USA!」
「USA!」
謎の合図と共に無線で連絡を取りだし、次々に同じ姿の兵士たちがパーティフロアへと集まってくる。アリスを騙して連れてくるのがにゃんこずきんの役目ならば、こちらはアリスを力尽くで連れ去ろうとする主戦力と言ったところだろう。
彼らの歩みに対して槍が飛び出す気配は無い。何か仕掛けがあるのか、罠の位置を熟知しているのか。
アリスを後ろへと下がらせた猟兵たちは、床から飛び出す槍に注意しながら兎姿の軍人たちへと立ち向かうのであった。
ガイ・レックウ
【POW】で判定
「ここはこの手で行くか!!」
ユーベルコード【竜王技『天下無双』】を発動し、飛翔しながらアサルトウェポンとコンバットマグナムによる射撃での【2回攻撃】と【範囲攻撃】を叩き込むぜ!!
防御は【オーラ防御】で固め、【残像】と【フェイント】を織り交ぜ、接近。攻撃は【見切り】で避けるぜ
【怪力】での【串刺し】と【鎧砕き】で一撃離脱戦法をとるぜ
※アドリブ、連携歓迎
雪華・グレイシア
これはまた賑やかな歓迎だね
ボクとしてはもう少し優雅なお迎えの方が好みなのだけれど
キミたちの動きを見て、仕掛けを暴くのもいいのだけれど
今日はお姫様がご同行しているものでね
彼女にも分かりやすいように対処させてもらおうか
次に呼ぶのは霜の巨人
氷でできた彼なら当然の如く、槍で刺されたって痛くはないさ
飛び出て刺さった槍は、また引っ込めないように氷漬けにしてしまおう
これなら敵の邪魔にもなるし、お姫様は槍を見て避けれて一石二鳥と
対地攻撃は【ワイヤーガン】と【予告状】の【投擲】で対処
落すよりは妨害を意識していこうかな
何度も上手くいかなければ通じるのか不安になってくるものだろう?
エドゥアルト・ルーデル
デュフフフ…アリスちゃんにいいトコ見せないとねェ!
イボイノシシで有名な攻撃機はあるけどさぁ
お前たちの攻撃機って醜くないか?
【航空機】召喚、呼び出すのは当然、本物の"ウォートホッグ"しかあるまい
拙者が本当の対地攻撃を教えてやる
拙者自ら【操縦】し味方の近接航空支援を開始でござる
コイツの装甲は【自動小銃】程度では破れん!ましてやトラップの槍など…逆にへし折ってくれる
装甲の頑丈さを見せつけたらたっぷりとガトリングの掃射と爆弾の投下を行い殲滅してやりますぞ
一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやろうか!
それはそれとしてアリスちゃんを後部座席に…お膝に乗せたい人生だった
アドリブ連携歓迎
バルドヴィーノ・バティスタ
(アドリブ・連携歓迎)
爆弾の次は槍かよ、如何にもおとぎ話な城のくせしてガチで殺しに来てンな…
読めねェうちは槍だのは<第六感>で避けるとして、アリスを先に進ませるからにゃあ仕掛け探りもやっておきてェ、
ちと『BW-1954』を<空中戦>と<ロープワーク>でシャンデリアに引っかけて上から俯瞰してみるか。
ウサ公どもの動きにパターンがありゃ踏んだ場所によって罠が発動してる、
バラバラの動きでもウサ公に槍がブッ刺さってねェならウサ公の方に何かしらあるんじゃねーかと思うが…
ま、どっちにしたって最終的にやるこた変わらねェ。
攻撃が届く前に走って叫んで怯んだ隙に喉笛掻っ切るだけだ!
さぁて、狩られる準備はできてるか?
●串刺し罠と銃撃戦
次々とパーティフロアにあらわれるうさうさトランプ兵たち。増え続ける大軍を前に、足元すら信用できない戦いを強いられるこの状況は猟兵たちにとっても厄介だろう。
「面倒なことばかり思いつくもんだな…… ならば、ここはこの手で行くか!!」
しかしそれに怯まず、ガイ・レックウ(相克の戦士・f01997)が駆け出す。猛烈な速度で走り抜けたのち跳躍。その瞬間、ガイの全身を光り輝く炎が包む。
「燃えろ!俺の魂!!雄々しく猛き魂の炎よ!! わが身を包み、悪を討たん!!」
竜王技『天下無双』。灼熱のごとき闘気を纏い、意思と魂の猛りに応じた戦闘力の強化と高速の飛翔能力を得るガイのユーベルコードである。高く跳躍したガイはそのまま床に落ちることなく、パーティフロアの空中を翔ける。床のトラップが厄介であるならば、そもそも踏まなければ良いということだ。
「まずはひと当て、試してやるぜ!」
突撃銃型アサルトウェポンとリボルバー式の大口径マグナムを両手それぞれに握りしめ、うさうさトランプ兵たちの上空をとる。広範囲にばら撒かれた弾幕が敵軍の中央へと突き刺さり、何名もの兵士たちと白黒のお菓子の床に弾痕を残していく。
「ターゲットの一人が空中を飛翔中! 各員散開、イボイノシシで対処せよ! USA!」
「「USA!!」」
しかし敵もさすがに戦闘要員といったところか。一網打尽を避けるために密集した陣形を散開、そして何名かのうさうさトランプ兵がユーベルコードを発動する。
あらわれたのは……口から飛び出したガトリング砲、前足後足それぞれに抱えた爆弾、そして豚っ鼻と立派な白い牙、もさもさの毛皮。『落雷II』と命名されたそれは、想像から創造されたイボイノシシ型対地攻撃機である。
口から生やしたガトリング砲が邪魔なのか、少々苦しげにフゴフゴと鳴くそれらが広いパーティフロアを飛び回る。高い天井の下、この空中を制覇せんと言わんばかりだ。
「はっ、面白い」
そう言ってガイはイボイノシシたちへと向けて飛翔する。向かってくる猟兵にイボイノシシたちは、文字通りの銃口を向けて連射を開始。普通に直撃を喰らえば重症は免れないどころか命が危ういだろうが、今のガイは灼熱の闘気で大幅に戦闘力を増しており、その闘気で守りを固めている念の入れ用だ。最大速度は音速を軽く突破する高速飛行から生まれる残像、そこにフェイントを織り交ぜて銃口の向きを見切れば、イボイノシシの銃撃など当たるはずもない。
「さあこれで、まずは一機!」
音速を越えた速度のまま、接近したイボイノシシに一撃を加えるガイ……だが。
「何っ……!? おいおい、こいつはちょっと硬すぎねぇか!?」
叩き込んだガイの攻撃はイボイノシシの分厚い毛皮に阻まれ、そこで止まっていた。ユーベルコードで強化され、超高速度でガイの剛力を叩き込んだ、渾身の一撃であったが……想像から生まれたがゆえに無敵というユーベルコード相手には、そこまでしても通じない。召喚しているうさうさトランプ兵をどうにかするか、どうにかしてイボイノシシたちへの能力に疑念を持たせて弱体化を図る必要があるだろう。
仕方なくそのイボイノシシを蹴り飛ばし、一撃離脱を図るガイ。その跡を追うように他のイボイノシシたちがガトリング弾を飛ばしてくるが、ガイの速度を捉えることはできない。しかしこのイボイノシシたちが前へと出れば、ガトリング砲や爆弾が直接アリスを狙うだろう。それだけは避けねばならない。
「ならば、俺は本体たちを叩こう! 誰か援護を頼む!」
「ほいきた、任せるでござるよ!」
諦めず次の攻撃へと移るガイの叫びに応えたのは、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)。どうやら彼には、空飛ぶイボイノシシたちに思うところがあるらしい。
「イボイノシシで有名な攻撃機はあるけどさぁ…… お前たちの攻撃機って醜くないか?」
そう言ってエドゥアルトが発動させるのは『Aerial warfare』。戦闘相手に有効な軍用航空機を召喚する彼のユーベルコードだ。光を放ち呼び出されるのは一機の攻撃機である。
「USA…… ま、まさかあれはっ!?」
その姿を見た途端、敵の兵士たちがざわめき始める。イボイノシシの攻撃機を操る彼らが、その姿を知らないはずが無いのだ。
正式名称A-10、愛称はサンダーボルトⅡ、そしてまたの名をウォートホッグ(イボイノシシ)。彼らのユーベルコードの元になっているであろう、とある世界での対地攻撃機の傑作である。
「モノマネ芸人の後ろからご本人が登場、ってところでござるかなぁ! さて……これからこいつとお前と、どちらがより強いのか、答え合わせをしようじゃないか」
自らコックピットへと乗り込み操縦桿を握るエドゥアルト。離陸までの助走の間、何度も床のトラップが作動して槍が飛び出すが……徹甲弾や榴弾の直撃すら耐えるこの機体の頑丈性は折り紙つき、逆に槍の方が折れる始末だ。あまりに広いとはいえ室内では限界のある助走距離は、エドゥアルトの卓越した操縦技術でなんとかした。
結果、無事に空中へ飛ぶウォートホッグ。偽のイボイノシシたちに本当の対地攻撃を教えてやろうと、機首に施されたサメのノーズアートがギラリと光る。
「それはそれとしてアリスちゃんを後部座席に……お膝に乗せたい人生だった」
「ワリィな、俺で我慢してくれや」
エドゥアルトのそんな邪な呟きに、からかうような笑い声で応えるバルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)は、後部座席どころかコックピットの外……防風窓にしがみついていた。
「確かめたいことがあるって言うから乗せたが、何するつもりだ? 戦闘中にそこにいて守れる保証なんざゼロでござるぞ?」
「ああ、ここまで乗せてくれりゃ十分…… まぁ見てろって!」
バルドヴィーノは攻撃機で上昇した更に上、高すぎる天井から吊り下がるシャンデリアを睨む。距離を測り、装着したハーネスから伸びるワイヤーを天井へと射出。狙い通りに天井へと刺さったそれを手繰り、シャンデリアへと登っていく。
天井からぶら下がりシャンデリアを目指すバルドヴィーノ。そんないかにも怪しい動きをする猟兵に向けて自動小銃を構えるうさうさトランプ兵たち。
「ははーん、『拙者を踏み台にした!?』ってことね。 それならこっちは……一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやろうか!」
エドゥアルトはバルドヴィーノに向いた射線を遮るように攻撃機を飛ばす。機体に命中し乾いた音と共に弾かれていく弾丸、自動小銃ごときではそのコックピットを破れはしない。
お返しに撃ち出すのは機首に搭載された30mmガトリング砲。ヴーーーーー、と繋がって聞こえる独特の連射音と共に飛び出すガトリング弾の雨あられ。そしておまけのように投下される爆弾。
「US……ッ!?」
「退避、退避ーっ!! USA!」
可哀想なほど粉微塵になるうさうさトランプ兵たち。ビスケットとクッキーの床にいくつもの穴が空く。航空機が飛べるほどに広いパーティフロアではあるが、本当にこんなものを室内で使用して良いのか疑問が湧くほどの威力だ。兵士たちは壁際でウォートホッグが旋回した隙をついて反撃を試みようとするが……。
「残念だったな! 俺がいることを忘れるんじゃねぇっ!!」
「U、USA……ぐわぁっ!!」
その隙間をフォローするのはガイだ。戦闘機よりも小回りが効くその身一つで飛び回り、反撃の隙を無くしていく。逃げ惑う兵士たち、吹き飛ぶ兵士の残骸、吹っ飛んで落ちた先の床で発動する槍の罠。
「……今、吹っ飛ばされたのも串刺しにされたな。 つーことは、ウサ公を無視して俺らにだけ反応するワケじゃねーってことか。 しっかし、如何にもおとぎ話な城のくせしてガチで殺しに来てンな……」
その様子をシャンデリアの上から観察するのはバルドヴィーノだ。このフロアを制圧した後にも、アリスを先に進ませるならば罠の仕掛けを解き明かす必要がある。そう考えた彼は、こうしてシャンデリアによじ登り俯瞰から敵の様子を観察していた。
(罠が敵味方関係なく発動すんなら、ウサ公どもは罠にかからないよう動いている、つまりパターンがあるってことだ……)
注意深く眼下を観察するバルドヴィーノ。ガイとエドゥアルトがばら撒く銃撃から逃げ惑う兵士たちの動きに法則性は感じられない……が。
「あン? あいつ今変な動きしたな……?」
二人の銃撃から必死に逃げていたはずの兵士が、何も無いところでぴょんっとジャンプしたのを見つける。その床に視線を向けるバルドヴィーノ。そしてふと、この部屋に入った直後にアリスが罠にかかりそうになった時を思い出し……そして閃いた。
「ハッ! 分かっちまえば簡単だなオイ! あのトラップは黒いクッキーにだけ仕込まれてンのか!」
アリスが踏み入り発動した罠も、今の兵士が飛び越えた床も……どちらも黒いクッキーの床だ。そう気がついて眼下の光景に目を走らせれば、槍が飛び出しているのはどれもこれもクッキーの床からであった。
「成程、単純だからこそ分かっている味方は避けやすい。 でも、種の割れた手品は何度も続けられるものじゃないね」
バルドヴィーノが見破った罠の仕掛けを聞いて、雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)が策を練り始める。
「今日はお姫様がご同行しているものでね。 彼女にも分かりやすいように対処させてもらおうか」
そう言って、グレイシアは銃撃飛び交うパーティフロアで歌声を張り上げる。その目立つ姿に兵士たちが銃口を向けるが……。
「やらせはせんでござるよ!!」
上空から目を離せば、急降下したエドゥアルトのウォートホッグがグレイシアを狙う兵士たちへと銃撃。兵士たちはそれをイボイノシシで迎撃しようとするが、そうしている間にグレイシアの仕掛けが終わる。
「ありがとう。 さて、君たちには――凍っていてもらおうか、永遠にね」
グレイシアに呼び出されたのは霜の巨人、『アイシング・ジェネラルフロスト』。彼が行進曲を歌うことで呼び出されるユーベルコードの巨人だ。その巨体に反応したクッキー床から槍が飛び出すが……氷の巨人の前には意味が無い。
「さあ――――凍えて」
『グオォォォォッ!!!』
グレイシアの合図と同時、巨人から放たれる絶対零度の氷嵐が、兵士を凍てつかせクッキーの床を氷面に変える。あらかじめ罠を凍らせてしまえば作動することもないだろう。味方も大半が空中へと飛んでいる中、凍った床は地上を歩くうさうさトランプ兵の邪魔としても優秀だ。
「USA、USA! 航空支援を要請する! USA!」
「「USA!!」」
たまらずイボイノシシの応援を向けるうさうさトランプ兵。ガトリング砲がグレイシアへと向けられ火を吹く。
「おっと、それには……こうしてみようか!」
ガトリング弾を防ぐべく投擲するのは、凍てつく怪盗の予告状。弾幕を張るように投げて妨害を狙うが、それを見た兵士の一人が笑う。
「馬鹿め、紙切れ如きでイボイノシシの攻撃を防げるはずが……何っ!?」
その笑いも、途中で驚愕へと変えられてしまう。強力無比な武装であるはずのイボイノシシの銃撃は、しかし彼の言う紙切れ如きで防がれてしまったのだ。
「そ、そんなはずは……USA! 我々のイボイノシシは、無敵のはず……!」
「それは多分、彼のおかげじゃないのかな?」
次に笑うのはグレイシアだ。彼が指を差したのは上空。空をかける本物のイボイノシシ、ウォートホッグ。
「……偽物が、本物に敵うと思うかい?」
「ぐうぅぅぅっ!?」
想像の創造であるがゆえに無敵というユーベルコードの致命的な弱点。それは能力に疑念を感じると大幅な弱体化をきたすというもの。本物の攻撃機に追い回される中、無意識下で彼らもその疑念を抱いていたのだろう。
実際にガトリング弾を予告状で叩き落されるところを見せつけられ、グレイシアの一言でそれを自覚させられてしまった今、イボイノシシたちは更に弱体化する。
「ハハッ! こうなっちまえばもう、ただのウサギ狩りと変わんねえな! さぁて、狩られる準備はできてるか?」
力なく宙を漂うばかりとなったイボイノシシたちを踏み台にして、バルドヴィーノがシャンデリアから飛び降りてくる。
「USA! こうなればせめて、少しでも敵戦力を削ることに注力するのだ!」
「「USA!!!」」
降りてきたバルドヴィーノに向けて、せめて一矢を報いると自動小銃を構えるうさうさトランプ兵たち。……しかし、兎が狼に敵う道理があるだろうか。
「ウオォォォォォンッッッ!!!」
「U、USA……!?」
人狼の咆哮がパーティフロアを突き抜けたと同時、彼の身体がお菓子のお城の風景に同化する。そして遠吠えを聞いた兵士たちは放心したかのように……否、実際に魂が抜けたかのように立ち呆けてしまっている。
バルドヴィーノの『ナディエ・アルカンザ』は風景に溶け込む毛皮をまとい、高速の移動と聴いた者を放心状態にする咆哮を可能とする。狼の咆哮を聞けば普通の兎は逃げ出すだろうが、人狼の咆哮は逃げる意思すらも刈り取るのだ。
「た、退避ーっ! 退避ーっ!! USA!!」
幸運にもその咆哮が聞こえる範囲よりも外にいた、あるいは素早く耳を塞いだ兵士たちは……文字通り脱兎の如く逃げ出す。だがしかし。
「USA!? あ、足が凍って……!?」
「キミたちには悪いけれど…… 狙った獲物を逃さないのは、狼だけじゃないのさ」
その兎たちの足元をユーベルコードで凍てつかせ、逃げ足を封じたのはグレイシア。イボイノシシを無力化され、逃走手段も消えた彼らに、もはや抵抗の手段など無い。
「逃げてェなら走ってみろよ――できねェだろうけどな?」
「U、USっ……ぐぁぁぁっ!!」
獰猛な狩人の笑みを浮かべたバルドヴィーノが、動きを止めた兵士たちの喉元を鮮やかに裂いていく。放心した者たちは気づかぬうちに。動けぬ者は恐怖の中で。
ばたり、ばたりと倒れていく兵士たち。主が倒れてその姿をかき消すイボイノシシ。もはやパーティフロアに残るのは猟兵たちとアリスのみ。
罠の仕組みも看破した今、彼らの歩みを止められるものはない。アリスの扉を探すべく、猟兵たちは更に奥へと歩を進める。
●すききらいなんてしないよ!
「本隊との通信途絶! 全滅と思われます! USA!」
一方その頃。お菓子のお城の最上階に存在する、うさうさトランプ兵たちの司令部(HQ)。
「くそっ! 猟兵どもめ、なんということだ……!」
多くの兵士に命令を下していた数名のうさうさトランプ兵が、クラッカーのテーブルを叩いて砕き怨嗟の声をあげる。
「こうなっては仕方ない……! 速やかに当司令部を放棄、我々は一刻も早く別の国へ逃げ……」
「え~? ウサギくんたち、どこいくのぉ~?」
「ひいぃっ!?」
逃亡の準備を始めた兵士たち、だがそこにあらわれたのは、この城の主である巨大なオウガの姿。
「ご、誤解です! 我々はこれから、猟兵たちの排除に……」
「いいよいいよぉ~、ボクお腹空いちゃったし。 アリスも美味しいけど、猟兵も食べた方がごはんのバランス良いしねぇ~」
「は、はぁ……?」
のんびりとした主の口調に、思わず毒気を抜かれる兵士。だが、そんな兵士の一人がオウガに鷲掴みにされる。
「う、ぐぉっ!? な、何を……!?」
「え~? 言ったでしょう、バランスが大事だってぇ~。 ボクそろそろ飽きちゃったんだよね、お菓子……」
握りつぶされミシミシと音を立てる兵士の体。慄く兵士たちが逃げ道を探すも、出入り口はオウガの後ろに一つだけだ。
「アリスもいいけどぉ…… ウサギ肉も久しぶりに、いいかなぁ~って」
「や、やめっ……!?」
悲鳴をあげる兵士。オウガの巨大な口が、掴み上げられた兵士の頭へと近づいて……。
ばりばり、ごきり、むしゃむしゃ……ごくん。
数分後、一人部屋に佇むオウガは満足そうに笑う。
「えへへぇ…… おいしかったよぉ。 ごちそうさまでしたぁ~」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『モグモグちゃん』
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POW : お腹が減って仕方がないんだよぉ~……
戦闘中に食べた【無機物または有機物】の量と質に応じて【筋力が向上し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : お腹が背中にくっつきそうなんだよぉ~……
戦闘中に食べた【無機物または有機物】の量と質に応じて【瞬発力が向上し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : お腹が満たされないんだよぉ~……
戦闘中に食べた【無機物または有機物】の量と質に応じて【思考力が向上し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠竹城・落葉」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●猟兵、食べ放題。食後のデザート、アリス。
「こ、ここのはずです! ここに私の扉が……!」
お菓子のお城、最上階。アリスの導きで到達したそこは、またしても広大な空間。
ビスケット、キャンディ、チョコレートにクラッカー……様々なお菓子を積み重ねて作られた巨大な玉座が鎮座する、お菓子のお城の王の間であった。
「えへへへぇ。 いらっしゃ~い、アリスと猟兵くんたちぃ」
その玉座にふてぶてしく座るのは、巨大な玉座が更に小さく見える、岩山のような巨体のオウガだ。
岩石で作られた雪だるまのような体型は首が埋もれ、小さな足とは正反対に太く逞しい両腕が周辺のお菓子をもぎ取っている。そして何よりも頭部を横に割るように開いた、大きな口。今しがたもぎ取ったお菓子をそこに放り込み、ぐしゃぐしゃと音を鳴らし咀嚼する。
「う~ん…… アリスもいいけど、キミたちもずいぶん元気みたいで、美味しそうだねぇ~…… どんな味がするのか楽しみだよぉ、うふふふふ」
不気味な笑い声をあげるオウガの様子を前にして、多くの猟兵たちはアリスを後ろへと庇い警戒態勢をとる。
なにせこのオウガの風体と言動、『食べる』ことで何かをする能力を持っているのは明白だ。
そしてここはお菓子のお城。これほどに食べることに困らない戦場があるだろうか?
「みんな、みぃ~んな、ボクのおなかに入れてあげるねぇ~。 えへへへ…… た~の~し~み~」
ずしん、とお菓子の床を鳴らして立ち上がるオウガ。この醜悪なオウガの腹の中に、アリスを迎えてやるわけにはいかない。幸い玉座の間だけあって、さすがにここに罠は仕掛けられていない様子だ。小細工無し、オウガとの真っ向勝負。
お菓子のお城の主との、最後の戦いが始まる。
ガイ・レックウ
【POW】で判定
「さあて、勝負と行くか…』
ユーベルコード【絶刀鬼神『破天修羅王』】を発動と同時に【オーラ防御】でオーラを纏うぜ。
相手の攻撃を【見切り】で避けつつ、【残像】と【フェイント】を混ぜた動きで翻弄。
【怪力】での【鎧砕き】と【なぎ払い】の【2回攻撃】や【串刺し】で連続して攻めるぜ
状況に応じて【戦闘知識】で隙を見極める!!
※アドリブ、連携可
雪華・グレイシア
折角、玉座まできたんだ何かお宝のひとつでもあるのかと、少しは期待してみたのだけれど……
どうやら期待外れのようだ
とはいえ、ここまで来たんだ
最後にもう一仕事してから帰らせてもらうよ
さぁ、今度の出番はキミだぜ
歌と共に呼び出すのは冬将軍
彼の氷嵐で部屋中、凍らせてしまうよ
食べた分だけパワーアップするのならその邪魔というこう
そのままなら随分と食べやすそうなお菓子だけれど、凍ってくっついてしまえば多少は食べにくくなるだろう?
あとは逃げ回りながら、【予告状】を【投擲】して【目潰し】
食事の邪魔をしていこう
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
●捕食者と鬼神と冬将軍
「さあて、勝負と行くか……」
お菓子のお城に君臨する巨大なオウガを前に、ガイ・レックウ(相克の戦士・f01997)は怯む様子など欠片も見せずに抜刀し前へと駆け出す。ここまでの戦いでもそうしてきたように。
「天に轟け! 天下無双の鬼神伝説よ!! 我が名のもとに降臨せよ!!」
顕現するは絶刀鬼神『破天修羅王』。ガイの背後にあらわれる漆黒の武者鎧を纏う鬼神。その手にはガイの握る妖刀ヴァジュラと同じ物が握られていた。
「わぁい、チョコレートみたいでおいしそう! ……みてたらお腹すいちゃったなあ」
鬼神が纏う黒漆塗の甲冑を前に、そんなことをのたまうオウガ。玉座の背となっているチョコレートを巨腕がへし折り口に運んでいく。
「ほざけ!」
猟兵を前にのんきにお菓子を咀嚼し始めたオウガへ、ガイとその動きをなぞる鬼神の斬撃が襲いかかる。
強固な鎧相手にも刃を通すガイの剣閃がオウガの岩肌を削り、鬼神と同時に繰り出す突きは見苦しい腹に突き刺さる。鬼神の巨体は象のような体格のオウガにはいくらか及ばないが、それでもガイと鬼神が同時に繰り出す斬撃は岩のような肌に確かな傷をつけていく。しかし。
「わぁーっ、痛い、いたーいっ」
(確かに傷は与えているはずだが…… 効いているのか、コイツ!)
手応えは間違いなく実感として手に残り、岩のような体には確実に傷が増えていくというのにオウガはふざけた笑みを崩さない。そうしているうちにチョコレートを飲み込んだオウガが、その巨腕を振り上げる。
「もぉう! おかえしだよぉーう!」
メキメキと音を立てて、オウガの巨腕が更に太く膨れ上がる。攻撃の軌道を見切ったガイはオーラを纏い守りを固め、振り下ろされる巨腕を誘導するようにフェイントを混ぜた動作でそれを躱す。空振ったオウガの拳は床へと突き刺さり……。
「っ、不味いっ!」
ガイの経験に基づいた戦闘知識が、その場から飛び退くよう命じる。直感めいた感覚に身を任せてオウガから距離を取った次の瞬間、その巨腕がビスケット床を砕きクレーター穴を作り上げた。その威力が巻き起こす風圧に、ガイの羽織った着流しが飛ばされていく。
「あれぇ~? よけられちゃったぁ~」
「馬鹿力め……!」
お菓子とはいえビスケット床は猟兵やオウガが乗っても床として機能する程度には頑丈な作りだ。そこに穴を空けるような威力を至近距離で受けては無事で済まなかっただろう。攻撃一辺倒ではなく、防御や回避にも意識を割いていたガイでなければどうなっていたか。
「食べた分だけパワーアップするのなら、その邪魔といこう」
オウガの攻撃から飛び退いたガイに代わり、雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)が前に出る。その横には氷で作られた巨人『アイシング・ジェネラルフロスト』が既に佇んでいた。ガイがオウガを引きつけている間に、歌唱による召喚を済ませていたのだ。
「さぁ、今度の出番はキミだぜ。 そのままなら随分と食べやすそうなお菓子だけれど、凍ってくっついてしまえば多少は食べにくくなるだろう?」
グレイシアの合図とともに、冬将軍の咆哮が玉座の間に氷嵐を撒き散らす。たちどころに周囲一体が氷に包まれれて、お菓子も当然氷の下で固まってしまう。こうなってしまえば、お菓子に手を出そうにも氷を叩き割らねばならないだろう。
「あははぁ! チョコの次はアイスだぁ~ いただきまぁ~す!」
しかしオウガは嬉しそうな笑い声をあげ、次々に氷を砕いてそれを口に放り込んでいく。
「……なに?」
仮面の下で怪訝な表情を浮かべるグレイシア。氷を食べたオウガの顔がぐるんと回ってグレイシアへと向き、その短い足で床を蹴る。いかにも鈍重な見た目をしていながら、しかしオウガはグレイシアとの距離をどんどん縮めていく。
「なるほど、確かに氷も食べ物といえばそういえるけれど…… やれやれ、少しくらい好き嫌いをしてもいいんじゃないのかな?」
迫り来るオウガから距離を取るべく走り出し、グレイシアはそう呟く。このオウガのユーベルコードによる食事の対象は無機物・有機物を区別しない。当然ながら氷とは固体になった水であり、水は立派な無機物である。
しかし、さすがに霞を食べて強くなるというほど都合の良いものではない。強化の度合いは食事の質と量が重要であり、今もオウガの短い足で走る速度はその巨体にしては確かに素早いが、逃げに徹した怪盗には到底及ばない。
「氷を食べただけじゃ、さすがにお菓子を食べるほど強化されないみたいだ……ねっ!」
グレイシアは青薔薇の刻まれた予告状を鋭く投げつけ、食欲に爛々と輝くオウガの瞳に突き刺していく。
「あっ! いったーい、ひどいなぁ~」
とぼけた口調で目を擦り立ち止まるオウガ。さすがに岩のような体よりは目を攻撃される方が痛いようではあるが、どうにもその様子には緊張感が無い。
「本当に、効いているのかそうじゃないのか……」
「なに、菓子を食わせるよりはこちらの方が遥かに楽だ。 助かるぞグレイシア!」
再びグレイシアを追いかけようと踏み出したオウガの足に、ガイと鬼神が薙ぎ払うように繰り出した斬撃が叩き込まれる。
「あっ! もーう、キミの方が先に食べてほしいのぉ?」
再びガイの方へ向いたオウガは、その巨体でもってガイを押し潰そうと踏み出して……。
「おっと、ここまで来たんだ。 帰る前にもう一仕事していくよ」
そしてその瞬間を狙ってグレイシアが再び予告状を投擲、目に突き刺ささればオウガも目測を狂わせる。
「あれぇーっ?」
間抜けな声をあげながら、ガイのいる方向とは見当違いの方を向いて倒れ込むオウガ。ズシンと重い音が響き渡りビスケット床にヒビが入るが、先ほどの攻撃のように劇的な破壊を巻き起こすことはない。
「さっきまでとは威力が違うな、どういうことだ?」
「一度に強化できるのは一つだけなんじゃないかな。 さっき強化されたのは筋力だけで、今強化されているのは瞬発力だけ、って」
ガイのあげた疑問にグレイシアが推測で答える。倒れ込んだ巨体を起こすのに苦労している姿からは、確かに筋力の強化された様子は見られない。
「それなら……今のうちに一撃、叩き込ませてもらおうか」
倒れてもがくオウガに向けて、大上段に刀を構えるガイ。その後ろには動きをトレースする鬼神もいる。倒れ伏したオウガの脳天に、同時に振り下ろされる斬撃。
「いっ、だぁいっ!?」
不気味に笑みを浮かべ続けていたオウガが、積み重ねられたダメージにとうとう叫び声をあげたのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
銀山・昭平
お前も腹が減ってるんだべな……だがおらたちは食べられるわけにはいかないべな!
◆戦闘
【銀山流即席絡繰術・弐式】を使って偽物のお菓子……というよりもお菓子の幻を映し出すべ。食べようと思っても食べられず、それでも【存在感】でアピールするようなお菓子で敵を他の猟兵たちが攻撃しやすい場所まで誘導してやるべな。
そしてそのスキにおらの攻撃だべ。【暗殺】で視覚から近づいて【属性攻撃】で毒属性の攻撃を叩き込んでやるべな。そのまま空腹を抱えたままブッ倒れるべ!!
もし誘導できないようなら【咄嗟の一撃】で目眩まししつつの一撃離脱戦法で戦うべな。
※アドリブ・共闘描写歓迎です。
エドゥアルト・ルーデル
確かにアリスちゃんはprprしたいぐらい可愛いでござるが…
それを食べてしまうなんてとんでもない!
ここに来てトラップ無しはつまらんだろ?
【罠使い】で対戦車地雷なんかの爆発物を撒いときますぞ!
食われそうならその前に銃で撃ち抜いて爆破ですぞ
怯んだスキにオウガメ…流体金属生命体を敵のお口なりお手々なりに纏わり付かせて食事の妨害でござるよ
要は物を食えなきゃ何も強化されないからな!
何オウガメタ…流体金属君?自分が食われそう?頑張って避けてネ☆
じゃれてる間に取り出した【超大型爆弾】を担いで敵にぶっこんでやる!
貴様らがデスゲームなんざしなくてもな!
猟兵の人生はいつだって生きるか死ぬかのデスゲームよーッ!!
バルドヴィーノ・バティスタ
(アドリブ・連携歓迎)
逃げずに待ってて殊勝じゃあねーか!
テメーになざ肉一片たりともやらねェよ、とっととぶっ飛ばされて道あけやがれ!
確かに大した素早さのようだが、辺り一面区別なく壊し尽くすコイツはどうだ?
【人狼咆哮】!耳の穴かっぽじって聞いて死ねェ!
何でも食って強くなるってんなら<破壊工作>だ、菓子もその口ももう食えねェくらいに粉々に砕いてやる!
一応、巻き込まねェよう菓子が積み重なったとこで叫ぶつもりだが…
巻き込まれそうなったらガラスの迷路で手前の身は手前で守れよ、アリス?
まァ扉の先までは無理にしても辿り着くまでは力を貸してやる、オウガごと蹴散らしてスッキリとハッピーエンドを迎えようぜ!
●目には目を、歯には歯を、デスゲームには?
「うぅ~ん? なんだかふらふらしちゃうよぉ~……」
したたかに頭部への一撃を受けていたオウガが、時間をかけてようやく立ち上がる。相変わらず深刻さを感じないとぼけた口調ではあるが、巨体をフラフラ揺らす足取りには先ほどの戦いで猟兵たちが与えたダメージが確実に残っていることが分かる。
「なんだかチョーシがわるいなぁ~…… こういうときは、お菓子を食べてなおそっと~」
発光する目で手頃なお菓子はないかと探してみれば……いつの間にかオウガの目前にあらわれたのは、ウェディングケーキもかくやといわんばかりの巨大ケーキだ。
「わぁいっ、ケーキだぁ~いすき! いっただっきま~す!」
食い意地の張ったオウガにとってはアリスのようなご馳走だ。一も二もなく、大きな口を開いてその巨大ケーキに飛びつく……だが、ガチン、と音と立てて閉じられる口。
「あれれぇ~?」
オウガの巨体は何も無かったかのように巨大ケーキをすり抜けたのだ。口の中にも何も無い。美味しそうなケーキは確かに、そこに見えているのに。
「お前も腹が減ってるんだべな……」
そう呟いたのは作業服姿のドワーフ、銀山・昭平(田舎っぺからくり親父・f01103)。幼少期のトラウマから空腹というものに恐れを持つ彼にとって、食の権化のような姿をしたオウガには何か思うところがあるのかもしれない。
「だがおらたちは食べられるわけにはいかないべな!」
昭平がその手に握っているのは『銀山流即席絡繰術・弐式』で作り出された絡繰仕掛けの映写機だ。手回し式のそれから放たれた光の先に、巨大ケーキの幻影が映し出されている。お菓子を食べてオウガが強力にならないよう、ケーキの幻影で誘い出したのだ。
「さ、今なら隙だらけだべ!」
「おうよ、まかせなァッ! 巻き込まれそうなったら、手前の身は手前で守れよ、アリス?」
「は、はいっ!」
アリスに声をかけながら、オウガを欺き誘導した先に飛び込むのはバルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)。
「テメーになざ肉一片たりともやらねェよ、とっととぶっ飛ばされて道あけやがれ!」
「えぇ~? やだよぉ、ボクはお腹いっぱい食べたいんだからぁ~」
向かってくるバルドヴィーノに気がついたオウガは、幻影のケーキを諦めて足元のビスケット床をめくろうと手をかける。
「させるかよ! 耳の穴かっぽじって聞いて死ねェ!」
「……耳あるんだべか? あいつ」
昭平の疑問はさておき。ゴウ、と吠えるバルドヴィーノを中心に破壊の嵐が巻き起こる。『人狼咆哮』はその咆哮で敵味方を関係なく攻撃するユーベルコードだが、昭平が映し出すケーキの幻影に誘導されたオウガの位置ならば、味方を巻き込む危険もない。
「うわわわわ~っ あぁ、ボクのお菓子が~!」
先の戦いで傷だらけになった岩の肌に、更に強烈な咆哮を受けてグラグラと揺れる巨体。そして無差別な破壊はオウガだけでなく、その手が掴んでいたビスケットまでもを粉々にする。
「もぉ~、たべもののうらみは恐ろしいんだよぉ~! キミたちもアリスも食べてやるぅ~!」
どうやら折角のお菓子を台無しにされて怒ったらしい。オウガはドスンドスンとその短い足で必死に走って猟兵たちへと向かってくる。
カチッ。
「あれぇ~?」
そして何かを踏み抜くオウガ。とぼけた困惑声をあげた直後、その足元が大爆発を起こす。
「うわぁ~っ! なになに~?」
衝撃で転びゴロゴロと床を転がるオウガ。目を白黒に発光させているのはどうやら驚きを表現しているらしい。
「せっかくのデスゲームなんだ、ここに来てトラップ無しはつまらんだろ?」
オウガの踏み抜いた地雷を仕掛けた張本人、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)が口の端を上げて獰猛に笑う。昭平やバルドヴィーノが時間を稼いでいる間に仕掛けたものだ。
「確かにアリスちゃんはprprしたいぐらい可愛いでござるが……それを食べてしまうなんてとんでもない!」
「え、ぺろ……?」
「耳塞いどけアリス」
エドゥアルトの妄言を耳に入れないよう、アリスに注意を呼びかけるバルドヴィーノ。そうこうしている内に転がっていたオウガが立ち上がる。
「もぉ! 食べるジャマしないでよぉ~!」
さっきから何も口にすることができていないオウガが大声をあげて、近くに転がっていたキャンディを掴もうとする……しかしそれを、オウガの手に巻き付いた何かが弾き飛ばした。
「じゃ、あとは頑張ってくれでござるよ、オウガメタ……流体金属君!」
オウガが転んだ拍子にエドゥアルトが投げつけていた、意思を持つ流体金属生命体・Spitfireがオウガの腕に絡まり、お菓子を掴むのを妨害したのだ。
「おいしそう! あつーいチーズみたいだねぇ~」
これはこれで美味しそうだと手をのばすオウガ。オウガの体の上ニュルニュル這い回り逃げる流体金属君。鋼のように固くなったり、真っ黒になって熱を放射したり、光り輝いてオウガの目を眩ませたりと、案外芸が多い。
「隙だらけだべっ!」
そんな風に液体金属へ気の取られたオウガを昭平が強襲する。投擲された小型の絡繰手裏剣がオウガの背中にいくつも突き刺され、その大きな頭に大型レンチを叩き込む。
「あいたっ! もう、お腹と背中がくっつきそうだよぉ~…… もうこのまま食べちゃえ~」
食事の邪魔ばかりされているオウガは面倒くさそうに大口を開いて、なんと自分の腕ごと逃げ回る液体金属を食そうと試みる。
「ウォォォンッッ!!!」
「あうあぁっ!?」
そしてそのがっぽりと顎が開いた瞬間を狙い、バルドヴィーノが再びの人狼咆哮を叩き込む。先ほどから積み重ね続けられたダメージがようやく実を結んだのか、オウガの体と顎にヒビが入り、顎はダランと下がったままだ。液体金属君もその隙に逃げ出した。
「あぁーっ! ひどぉい! なんてことするんらぁ~!」
これではお菓子を食べることもできないと、子どものように怒るオウガ。顎が取れかけた今では話すこともおぼつかない。
「どうやらそろそろ頃合いのようでござるな! よいしょっと」
オウガの体にヒビが入ったことを確かめたエドゥアルトが楕円形の物体……超大型爆弾を両手に掲げる。
「どっから出したんだべ、あれ」
「つーかどうやって仕舞ってたんだ」
「こまけぇこたぁ気にするなでござるよ!」
両名の疑問をスルーして、爆弾を抱えたエドゥアルトはオウガへ向かってひた走る。その爆弾の大きさを認めたオウガもさすがに焦りを見せた。
「わぁっ! しゃすがにそれは、だめだよぉ~!」
ヒビの入りつつある体ではさすがに耐えきれないと思ったのか、慌てて逃げようとするオウガ。しかし、走ろうとしても上手く体に力が入らない。
「あれ、あれれ…… ボクのかりゃだ、へん……!?」
「あぁ、さっきの毒が効いてきたみたいだべな! そのまま空腹を抱えたままブッ倒れるべ!!」
先ほど昭平がオウガへ仕掛けた不意打ち、その時に投げた手裏剣に毒を仕込んでおいたのだ。巨体のオブリビオンゆえ少々時間がかかったが、結果的には最高のタイミングで機能した。
「貴様らがデスゲームなんざしなくてもな! 猟兵の人生はいつだって生きるか死ぬかのデスゲームよーッ!!」
「わわわっ、うわぁぁぁっ!!」
ふらつくオウガに、エドゥアルトの抱えた超大型爆弾がそのまま直接打ち込まれる。『Tallboy Throwing』。超大型爆弾の一撃が玉座の間を一瞬の閃光で照らし……巨大な爆発音が響き渡った。
●お菓子のお城の燃え尽きた焼き菓子
焦げ臭いお菓子の匂い。もうもうと立ち込める煙。
巨大爆弾で破壊し尽くされた玉座の間だが、ある一角だけが壁に守られたように被害が抑えられていた。
「テメーの身はテメーで守れ……でしたもんね!」
「へっ、ちゃんとできンじゃねェか」
「これ、おらたちも普通にしてたら危なかったんじゃねぇべか……?」
否、壁に守られたようにではなく、実際に透明なガラスの壁が猟兵たちとアリスの周囲に張り巡らされていた。爆発の余波から身を守るため、アリスがとっさにユーベルコードで作り上げたガラスの迷宮だ。このユーベルコードは戦場全体に迷宮を作り上げるため本来ならば玉座の間全体を覆っていたのだが、爆心地を中心とした大部分は爆発の威力に耐えきれずに割られている。
「……拙者も守って……ほしかったなぁ……」
「いやえらく楽しそうに突っ込んでたべ?」
「つーか良く生きてたなホント」
その爆心地で転がっているのはエドゥアルト。爆発の直前、回収した液体金属君を全身に纏って身を守っていたようだが、さすがに完全に衝撃を殺せるわけではなかったらしい。自慢のヒゲ以外も色んな所が煤で真っ黒だ。
そしてその横にあるのは、バラバラに砕け散った岩となった、オウガだったもの。猟兵たちが攻撃を積み重ねてヒビを入れられた体では、地形すら変化させる威力の一撃には耐えられなかったどうだ。
「ま、更地になったのは返って良かったみたいだべ」
昭平が指を刺した先にあるのは完全に崩れた玉座の下。光り輝くアリスの扉はそこに隠されていた。
「ああ、やったぁ! 皆さん、本当にありがとう……!」
「気にすンな。 オウガも蹴散らして、こいつでスッキリとハッピーエンドってわけだ」
とうとう元の世界に帰れる喜びに、満面の笑みを浮かべるアリス。猟兵たちへとお礼を言い、早速自分の扉をくぐろうとして……。
「あっ、そうだ!」
ところが、何かを思い出したようにくるりと振り返る。
「ん? どうしたでござるかアリスちゃん」
上体を起こして胡座をかいていたエドゥアルトへと、アリスがとてとてと近寄って……。
ぽすん。と胡座をかいていたそこに腰をおろした。
「!!!」
「これでお礼になるか分かりませんが……さっき、私を膝に乗せたいと言っていたので!」
「あー……」
バルドヴィーノには聞き覚えがある。うさうさトランプ兵との戦いの時にエドゥアルトが呟いていたことだ。まさか聞こえていたとは。
……ほどなくエドゥアルトの膝から降りたアリスは改めて自分の扉へと向かう。
「それじゃあ! 猟兵の皆さん、ありがとうございました! 私、皆さんに助けてもらったこと、一生忘れません!!」
こうして猟兵たちは無事に依頼を終えて、自分の世界へ帰るアリスを見送るのであった。
「なぁ……ずっと動かないけど、大丈夫だべか?」
「…… ……」
「ダメだこりゃ、燃え尽きてるわ」
「……黒焦げになったり灰になったり、忙しい人だべなあ……」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵