エンパイアウォー㊳~黒炎
「……ついぞここまで追い詰められたか。ままならぬものよな」
魔空安土城は地に堕ちた。
猟兵は間もなくこの場に現れるだろう。
蘇りし配下の将はことごとく討たれ。
残るは己が体一つ、第六天魔王・織田信長ただ一人。
「弥助よ」
過去の存在たるオブリビオンが、過去に思いを馳せる。
なんと滑稽なことか。その自嘲を聞くものすら、もう居ない。
「お前を始めてみた日の事はよく覚えておる。ひと目見て思ったものだ、“欲しい”と」
恵まれた体躯。黒檀の如き肌。長い手足は槍や刀をもたせれば、天下無双の将となろう、と。
「嬉しいぞ、この局面において、儂の傍らにお前が居るとは」
立ち上がる信長の背後に。
一人の男が居た。背後霊のように立つ彼こそ、弥助アレキサンダー。
かつて、信長が討たれた本能寺の変にて、その子を守る為に戦った将の一人。
あの時は、共に死ぬ事が許されなかった。
今生こそは。
「――――来たか。では名乗ろう」
足音がする。
襖が開かれる。
無作法にも武器を携えた彼らに。
己が名前を高らかに。
「儂は織田信長。第六天魔王・織田信長。そしてこれは儂の忠臣、弥助アレキサンダー」
圧倒的、強者のオーラ。
この状況において尚。
己の敗北を一切疑わぬ、絶対者の佇まい。
「命の惜しくないものから、かかってくるが良い。全力の抵抗を――――許そう」
●
「ついに決戦でございます、皆様方」
時計塔・ケイト(大きなのっぽの・f00592)はスカートの裾をつまみ上げ、丁寧に猟兵たちを迎え入れた後、簡潔に説明を始めた。
「魔空安土城に存在する信長軍は、皆様の活躍によって幕府軍が引き受けております。故に余計な邪魔はなく、信長を討つ事に集中していただけます」
「しかし、敵はオブリビオン・フォーミュラー。状況はこちらが有利なれど、決して油断出来る相手でも、余裕のある戦いでもございません」
「信長は秘術『魔軍転生』によって、己の配下の力を我が物として使います。此度の信長は“天帝剣”弥助アレキサンダーの力を有しております」
「即ち“闘神の独鈷杵”、“逆賊の十字架”、“天帝の剣”――三つのメガリスの力を振るう、難敵でございます」
「どうか無事にご帰還くださいますよう、心から祈っております」
「―――――ご武運を」
甘党
お世話になっております。甘党です。
VS織田信長with弥助アレキサンダーです。
成功が規定数に達し次第終了となります。
いくら状況が有利といえども、敵は強大なオブリビオン・フォーミュラーにしてかの織田信長。
下記の注意事項を良く確認の上、プレイングをお待ちしております。
なおボス戦では負傷描写がかなり多くなる可能性があるので、
『だ、大ダメージで肉体がやばいことになるのはちょっと……』という方は、
プレイングの冒頭に×を付けていただければ対応いたします。
●技能について
「有効な活用法」であると判断できた場合には、プレイングボーナスを付与させていただきます。
基本的には、技能のみで何とかすることは難しいとお考えください。
では、プレイングをお待ちしております。
=============================
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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第1章 ボス戦
『第六天魔王『織田信長』弥助装』
|
POW : 闘神の独鈷杵による決闘状態
【炎の闘気】が命中した対象を爆破し、更に互いを【炎の鎖】で繋ぐ。
SPD : 逆賊の十字架による肉体変異
自身の身体部位ひとつを【おぞましく肥大化した不気味な鳥】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 大帝の剣の粉砕によるメガリス破壊効果
自身の装備武器を無数の【大帝の剣型】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:UMEn人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
安喰・八束
魍魎風情がもののふ気取ってんじゃねえよ。
――安喰八束。
てめえを狩るのはただの鉄砲撃ちだ。
鳥頭が食いついて来るなら真っ向から受けようじゃねえか。
「狼殺し・九連」全弾、食らいついてくるその顎のど真ん中にくれてやる。
更に傷口を抉るように銃剣を帯びた"古女房"で貫き通し(傷口を抉る)
内側から更にブッ放す。(クイックドロウ、鎧無視攻撃)
俺が食い尽くされるのが先か。
"古女房"がブッ壊れるのが先か。
……保ってくれよ。
これで嫁に、土産話が出来そうなんだ。
卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍
「魍魎風情がもののふ気取ってんじゃねえよ」
成程、安い挑発と言えばそうだろう。
だが、過去現在未来、あらゆる時代、あらゆる場所において。
天下統一目前まで迫ったこの男を前に、武士を気取るななどと言えるものが幾人いようか。
「許す」
その大言を吐く無礼を許す。
これから晒すであろう無様を許す。
「名乗れ」
――――しかし、如何なる形であれ、無粋は許さない。
返答と行動を間違えれば、待っているのは無残な“死”だ。
「安喰・八束」
男は名乗った。
剣を取り付けた猟銃をその手に。
「てめえを狩るのは、ただの鉄砲撃ちだ」
かくして―――第六天魔王・戦いの火蓋が切って落とされた。
●
「面白い、この儂に鉄砲とはな」
鉄砲による戦術で、戦の歴史を変えた者……信長へ向ける武器としては、あまりに“出来すぎ”ている。
自然、口の端も釣り上がるというものだ。
「ならばこれを使おう……飛ぶ鳥を落とせるか? 猟兵!」
手をかざし、その手に握るは『逆賊の十字架』。
瞬時、その肩から先が、無尽蔵に膨れ上がる、不気味な異形の鳥の頭部へと変じる。
開いた顎にずらりと並ぶのは、喰らうためではなく殺すために並んだ、刃の如き無数の牙。
変化も、攻撃も、一瞬だった。
「が、あっ!」
開いて閉じる。その動作は認識する前に行われ、猟銃を構えていた腕ごと嘴に挟まれ、八束は神経を引き裂かれる痛みをこれでもかと味わった。
蠢(うご)いている。
喰おうとしている。
肉の一片、骨の一片、残さずに。
「ふん? …………このまま喰らわれるのであれば、拍子抜けだが?」
もはや意識せずとも肉を咀嚼する、変貌した己の肉体にはさして目もくれず。
信長は、ただ八束の顔を見ていた。
「あ、たり前だ……」
喰われた腕は、それでもちぎれていない。
指の感覚がある、肌の感覚がある。痛苦はもはや、考慮すべきではない。
――――指の感覚があるなら、引き金を引ける。
「全弾、くれてやるつもりで――喰わせたんだからなぁ!」
発砲。
ドム、と異形の口腔内で、撃鉄が落ち、火薬が弾け、弾丸が飛ぶ。
ずるる、と肉の中を暴れながら、突き進む。
「で、あるか」
その一発は、肉を貫通しきることなく、やがて止まった。
たかだか銃弾、何か敵うと思ったか。
このオブリビオン・フォーミュラーを。
織田信長を。
止められると思うたか。
存外、些末でつまらなかった。
息の根を止めて、次の相手を待つとしよう。
――――ギラリ、と。
八束の瞳孔が光った。
灰色であるはずのその色はまるで。
月夜の空のようだった。
●
気がつけば、長い旅をしたものだ。
あの日、終わったはずの男が、今こうして生きていて。
あの日、理由を失ったはずの男が、今こうして世界の分かれ目にいる。
一矢、放てる場面に居る。
一撃、くれてやれる場面に居る。
長い休みを過ごしたのだ。
今更何を恐れようか。
怖れるべきことは当に終わり。
狂うべき時にはいざ狂えず。
壊れるべき時に壊れなかった。
『狼ならば一撃で仕留める』
自慢であり、自信であった。
「お前にゃ、何発呉れてやろうか」
決まっている。
全弾だ。
発砲。
「ぬ!」
発砲。
「ぐお!」
発砲。発砲。発砲。発砲。発砲。
えぐる、えぐる、肉をえぐる。
貫く、貫く、刺し貫く。
暴れ狂うがいい、長く連れ添った“古女房”の癇癪だ。
誰であろうと敵うわけがない。
ついに弾丸が一発抜けた。
信長の肩に食い込んで、骨に留まる。
「……保ってくれよ」
今もなお喰らわれながら。
それでも動いている俺の体よ。
これで嫁に、土産話が出来そうなんだ。
発砲。
そして、女房自慢の次は、子供の自慢だ。
ああ、“悪童”の悪戯にゃあ、天下の魔王もカタナシだろう?
どれだけ肉が削がれようと構わぬと、更に“古女房”を奥へと突き入れる。
先端に取り付けられた“悪童”の刃が、口腔を限界まで行き、刺し貫いた。
「ぬぐ―…………その状態でなお余力あるか、見事!」
「馬鹿言え……」
それが最後だった。
瞳の色が失せ消えて、力が抜ける。
最後にもう一度引き金に力を込めて、気づく。
九発、全て打ち込んだ。
弾切れだ。
途絶え行く景色の向こうで、誰かが叫んでいる気がした。
●
片腕を原型を留めぬまで砕かれた男を置き去りに、第六天魔王は歩みを進める。
背後の弥助の虚影が問う。
殺さぬのかと、それが殿のあり方かと。
「あれは元より死人であろう」
同じく、片腕から血を流す信長は、呵呵と笑った。
「死ぬのであれば、それはここがあれが死ぬべき場所であるということだ。違うのであれば――――」
鉛玉を撃ち込まれたのは、何時ぶりか。
その高揚の代価と言わんばかりに。
「――――また、死に損なうのであろう」
卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍
苦戦
🔵🔴🔴
ベリル・モルガナイト
○
守ります。私の。背には。守るべき。人たちが。居るの。ですから
炎の。闘気に。対し。【煌宝の盾】を。構え。正面から。【盾受け】で。受け止める。わ
【オーラ防御】を。盾に。集中して。【火炎耐性】を
これに。加えて。【其れは脆くも儚き桜の城壁】による。身体能力強化
これで。一撃。凌げれば。十分。なの。ですけれど
炎の。鎖で。繋がれたら。鎖を。掴みましょう
繋がれたのは。お互い様。よね?
強化された。身体能力を。全力で
鎖ごと。信長を。引っ張って。壁へと。叩き。つけましょう
あまり。優雅。ではない。けれど
これも。戦い。ですもの
ごめん。あそばせ?
卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍
そのピンクパールの輝きを有する石を『モルガナイト』と呼ぶことを、信長は知らなかった。
しかしながら、それが気高く、美しく、価値ある輝きであることは一目瞭然だった。
外海のモノに目がない男であるが故に、最初の感想は。
「欲しいな」
……だった。
対し、盾と細剣を携え、応じる騎士は、首を横に振り。
「叶いません。私は。誰のものでも。無く」
顔の半分を被う仮面の向こうより、相対の意思を明確に示した。
「あなたを。倒すために。ここに来たの。ですから」
「で、あるか」
ならば是非もない。
力づくで、強引に。
「ならば、砕いて茶室に飾るとしよう」
奪い取るまでだ。
「それも。叶いません」
何故なら。
「守ります。私の。背には。守るべき。人たちが。居るの。ですから」
ベリル・モルガナイト(宝石の守護騎士・f09325)と、織田信長の戦いが、始まった。
●
「ならば証を見せよ。我が忠臣の持つ力、生半可で受けきれると思うな!」
闘神の独鈷杵。
その神威が振るわれた瞬間、周囲の空間は『戦うための領域』へと変じ。
信長の背後から放たれる、爆炎を伴う闘気の嵐が吹き荒れる。
「耐え――――――」
身構えるは、“煌宝の盾”。
自らの身体に反射する、炎の明かりは独立した粒子となり、オーラに変じて盾に纏う。
「――――る――――耐え。ます――!」
ほんの数秒の熱波は、それだけで石たるこの体を溶かしそうなほどだった。
けれど。
この戦いに敗北すれば。
織田信長が生き延びれば。
誰かが傷つき、誰かが損ない、誰かが失い、誰かが泣く。
断固としてそれだけは、許すことができない。
たとえこの身に代えてでも。
(守ります。それが。私の誓い。なの。だから――――!)
モ ル ガ ナ イ ト ・ フ ォ ー ト レ ス
《其れは脆くも儚き桜の城壁》
守るという誓いがある限り。
決して倒れぬ、守護のユーベルコード。
炎が晴れた時、ベリルはまだ立っていた。
「ふむ」
代わりと言わんばかりに、お互いを繋ぐ炎の鎖。
戦いが終わるまで、決して逃げえぬ事を知らしめる束縛。
「資格はある、ということか。ならば――――」
考えることは同じだった。
行動もまた、同じだった。
お互いがお互い、鎖を引きあい、硬直する。
「――――女だてらにその怪力、素晴らしい! 何故力を振るう! 異邦人よ!」
信長は笑いながら、ベリルは歯を食いしばりながら。
余力があるのはどちらか、考える間もないだろう。
「この世界の民は、貴様にとって異邦のモノのはず! 何故守る! 何故戦う! 答えよ!」
「何故。ですって――――」
異邦であるというのなら。
そもそも、この身がそうだ。
クリスタリアンであるベリルのあるべき場所は、彼女の居た世界にはなかった。
異種族たちが身を寄せ合い暮らす集落で育ったのだ。
「理由が。必要ですか」
傷つこうとしているのならば。
死のうとしているのならば。
守り抜く。それは決意だ。
誰であろうと、何であろうと。
戦えない者の為に、前線に立つ。盾となる。
「私は。守るために。戦います。例え――――」
相手が第六天魔王であろうとも。
「――――誰が。相手でも。守る為の。戦いを。私は……するのです!」
ギリ、と拮抗が動いた。
ベリルの引く力が、わずかに上回る。
守るという決意は、ベリルに無尽蔵の力を与える。
「ぬう! 見事!」
信長の足が、ついに浮いた。
鎖でつながったベリルの力から、逃れられない。
「―――ごめん。あそばせ」
優雅ではないけれど、華麗でもないけれど。
戦場に、そんなものは必要ない。
勢いのままに、安土城の壁に、信長の体を叩きつける。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も!
「――――――――っ!」
ボキン、と軽い音が、幕切れだった。
投げられようとも、鎖を引き続けた信長と、ベリルの腕力に、限界を迎えたのは、宝石の体の方だった。
「あ――――」
鎖がつながった場所から、砕け、へし折れた己の腕を、何故か他人事のように見ていた。
痛みはなかった。代わりに、許し喪失感だけが残る。
「…………その方、覚悟と理由、しかと聞いた」
束縛から解き放たれた信長は、体についた埃を払い落とし、そして告げる。
「形は違えど、気高く誇り高い。故に儂は貴様を一人の武士として扱おう」
闘神の独鈷杵が再び、唸りを上げた。
「一切の加減はせぬ。死ぬなよ、気高き石よ」
儂の手元に置くには身に余る。
その言葉と、体を飲み込む衝撃が、この時点でのベリルの、最後の記憶となった。
卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍
苦戦
🔵🔴🔴
ウェンディ・ロックビル
炎の闘気っ!いーねっ、カッコいーよ!
うん、流石は大ボスさんっ!
僕も、一人じゃきっと、挑めなかったかも。
でも……世界一カッコいい炎、僕知ってるからねっ!
「炎を纏った攻撃」といえばおねーちゃん!その戦い方を見てきた経験で、どう喰らうとヤバそーかを判断して、直撃を避けます!
後は……耐える!
痛いし、しんどいけど……!『鼓舞』『手をつなぐ』でおねーちゃんの事を思い浮かべて、気合で耐えます!
おねーちゃんを思う気持ちが力になって、僕ってばサイキョーです、なんてねっ!
それで、敵の攻撃を喰らったらこっちのもん!
炎の鎖を逆に辿るようにして、猛『ダッシュ』で……角でっ!頭突きっ!
僕は!ウェンディ・ロックビルだぜっ!
アリエル・ポラリス
仲がいいのね。
オブリビオンでも、素晴らしいことだと思うわ。
故に、全力で!
炎の闘気、私も炎を使うし、その軌道位読める……って言いたいけど。
相手は歴戦の武将、悔しいけど、私とは経験値が圧倒的に違うわ。
だから回避は諦める、真正面から耐えてあげる!
攻撃を受ける私の身体。
お姉ちゃんが縫い付けてくれたアンダープレート! 爆破の瞬間にこの鉄板の裏側からも私の炎で押し返して、敵UCの衝撃を最大限和らげる!
鎖で繋がれたなら後は火力勝負ね?
鉄板見りゃわかるでしょ、私は物凄い甘やかされてるの! いっぱいいっぱい助けられて、『恩返し』なんて全然終わってないんだから!
だからこそ、勝ってお家に帰るのは私よ、信長さん!
卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍
戦国の世において、家族とは時に敵になりうる存在だ。
兄弟姉妹となれば尚更の事である。
織田信長にも弟が居た。
あれは…………。
●
闘神の独鈷杵の戦闘領域が展開された時、炎に襲われた猟兵は二人。
「あっぢぢぢぢぢぢっ!」
一人は、トナカイの耳角とチーターの尾を持つキマイラの少女、ウェンディ・ロックビル(能ある馴鹿は脚を隠す・f02706)
「っぐう~~~~~~~~~~~っ!」
一人は、狼の耳と尾を持つ人狼の少女、アリエル・ポラリス(慈愛の結実・f20265)だった。
共に、十四、五歳程度の若い娘だ。
されど、眼前に立つ以上、信長に容赦などあるはずもない。
「疾く燃えよ。儂に抗う気概があるのなら、それもまたよし」
最も、彼の価値観において。
年端もゆかぬ小娘が、第六天魔王――――ましてメガリスの力を伴う闘気に当てられて。
まともに立っていられるとは思っていなかった。
だが。
「炎の闘気っ! いーねっ、カッコいーよ!」
ウェンディ・ロックビルはただの小娘ではなかったし。
「仲が、いいのね、部下の力を使うなんて……!」
アリエル・ポラリスも、ただの小娘ではなかった。
●
ウェンディ・ロックビルには姉がいる。
格好良く、自信に満ち溢れ、誰にはばかる事無く胸を張り、己の道を歩いている、大好きなお姉ちゃんだ。
姉より格好いい人を、ウェンディは今の所しらない。ママは別枠だしパパは論外だし。
そして、きっとお姉ちゃんはママに似ているのだろうな、と思う。
『ほら、ウェンディ』
記憶の中のお姉ちゃんは、何時だってウェンディの前を歩いていて、だけど背中を見たことはない。
ちゃんと振り向いて、手を引いてくれるからだ。
時々後ろに居ることもあるけど、それはそれ、どっちにしたって本気になれば、あっという間に追い抜かれてしまう。
一言で言うなら、憧れだ。
そして、言葉を尽くすなら、尊敬だ。
だから、ウェンディ・ロックビルはお姉ちゃんみたいになりたい――訳ではない。
同じになりたいのではなくて。
並べるようになりたい。
一緒に歩いて、一緒に走って、時々追い抜いて、笑って。
誰に恥じ入ることのない、キッテンの妹、ウェンディでありたい。
だから、そんな己は。
「痛いし、しんどいけど――――」
負けるわけには、いかないのだ。
だって、お姉ちゃんはこれぐらいじゃあ。
絶対弱音なんて、吐かないから。
●
アリエル・ポラリスは四人兄妹だ。
はっきりいって、甘やかされて育ってきた自負がある。
兄の尻尾に丸まって、姉の膝枕に頭を載せて、可愛がられてきた自信がある。
ダークセイヴァーという、暗く閉ざされた世界のなかで。
愛されてきた自覚がある。
必要とされている確信がある。
その自己肯定感は、時としてどんなものよりも強い力になる。
「仲がいいのね」
繰り返し言って、思う。
オブリビオンでも、死して尚、切れぬ主従の絆は、敵だからといって否定しきれるものじゃない。
「オブリビオンでも、素晴らしいことだと思うわ」
だからこそ、自分達兄妹の絆もまた、負けるわけには行かない。
ここには兄も姉も居ない。
甘えられる相手は居ない。
縋り、頼れる誰かは居ない。
だけど。
きっと乗り越えたら、頭を撫でてくれるだろう。
きっと勝ち残ったら、抱きしめてくれるだろう。
頑張ったねと、よくやったねと言ってくれるだろう。
だって、世界を救ったのだから!
「大丈夫――だって私、愛されてるものっ!」
決して負けない、理由がある。
●
「む?」
炎の闘気が晴れた後、信長には二本の、燃える炎鎖が繋がっていた。
即ち、ウェンディとアリエル、それぞれの右手首から、己の両手首に一本ずつ。
「――――耐えただと?」
「うん、流石は大ボスさんっ! 僕も、一人じゃきっと、挑めなかったかも」
ウェンディは、未だ体表でくすぶる炎のゆらぎに身を焼かれながら。
それでも快活に、ニコっと笑った。
「でも……もっともっと! 世界一カッコいい炎、僕知ってるからね!」
姉の足は、炎のそれだ。
歩めば赤の尾を引き、走れば帯を引く。
何度目に焼き付けただろうか。
その火の色を知っていれば。
その熱を胸にいだいていれば。
「耐えられない温度じゃ――――ないもんっ!」
一方で、アリエルも、無傷ではなかった。
焼かれ、焦げて、しかしそれでも立っていられるのは。
「こんなの――へっちゃらなんだから!」
心臓と内臓を守るように、服に縫い付けられたアンダープレート。
アリエルの命を失わせないためのそれを、自らの炎で押し出して、簡易的な障壁としたのだ。
衝撃を和らげ、熱を弾き、結果、こうして立っている。
服は破けて、あられもないことになってしまったが。
恥じらう余裕のある戦いじゃないし、またきっと縫ってもらえる。
無事で良かったと微笑みながら、お互いを労いながら。
「おねーちゃんを思う気持ちが力になって、僕ってばサイキョーです、なんてねっ!」
「ありがとうお姉ちゃん……おかげで、まだ戦えるわ!」
少女たちが、そう叫んで。
不意に顔を見合わせた。
二人の耳がピクリと動いて、それから同時に、小さく笑った。
「もしかして、キミも?」
「ええ、あなたも?」
不思議と気持ちが通じ合ったのは、似た者同士だったからかもしれない。
即ち。
「おねーちゃんの妹だから」
「情けない所なんて見せられないわ!」
そして。
「お姉ちゃんが守ってくれたから!」
「やられるわけにはいかないよねっ!」
ウェンディが、とんと足を鳴らすのと。
アリエルが、どんと足を踏み込んだのは。
ほぼ、同時だった。
●
「で、あるか!」
この娘達の力の源は、どうやら家族を思うことらしい。
それも、姉と来た。
信長にも姉はいた。四人だったか五人だったか。
戦国の世にて、それはあたり前のことであり。
それを思ってここまでの力が出せる存在ではなかった。
即ち、未知の思想と未知の感情によって。
未知の出力を行う生命体。
――――そう、シスコン女子。
「教えてあげるぜ……僕が誰の妹なのか!」
マ イ ・ デ ィ ア ー
《 天 上 天 下 唯 我 独 尊 》
姉に恥じない己を信じる限り、ウェンディ・ロックビルは無敵となる。
「汝は星の愛し子なれば。月狂いの獣なれば。――相克抱き征く英傑なればっ!」
ア ム ー ル ・ プ ロ ープ ル
《愛満つ私の報恩讃火》
己に与えられた愛情に応じて、アリエル・ポラリスは強くなる。
だから。
「絶対!」
「負けない!」
「「だって!」」
「おねーちゃんが!」
「お姉ちゃんがっ!」
「「大好きだもんっ!」」
爆炎を纏う二つの蹴りが、信長目掛けて放たれた。
「――――――であるか! 見事!」
炎に飲まれる信長は、いっそ吹っ切れたような笑みだった。
卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
非在・究子
お、思ったよりも、普通の信長、だな?
せ、先制攻撃への、対処は、だ。
あ、あくまで、身体の変化、だから、相手を全体で、とらえて、攻撃の、兆しを、つかむ。
こ、攻撃が、来たと同時に、【ハッキング】で、『大帝の剣』に、破壊効果を、暴発させる様に、干渉。う、うまくは、行かないだろうけど、攻撃の、精度を下げられれば、いい。
さ、さらに、喰らい『ボム』の、無敵時間と、『残機』の消耗からの、リスポーンで、意表をついて、反撃に、移る。
ステ改竄、スローにポーズ、乱数把握を駆使した、限界超過の、速さで、鳥頭を、掻い潜って、チェーンソー形態に変化させた『ゲームウェポン』の、連撃を、叩き込む、ぞ。ば、ばらばらに、してやる。
マグダレナ・ドゥリング
〇
「……偉大なる第六天魔王。」
「なるほど、相対すると想像以上だ。」
「戦の大勢は決まったはずなのに『この人ならもしかしたら』と思わせるモノがある。」
「最大限の敬意を持って、挑ませてもらおう。」
この世界において、見慣れぬはずの僕の左腕の機械は【存在感】があるはずだ。
噛み付き生命力を喰らうというのなら、【挑発】を駆使し左腕に誘導し、
食わせた内側から隠し持った【手榴弾】で頭部を吹き飛ばそう。
相手は遥か格上だ、自分が傷付いてでも確実にダメージを残したいところだね。
「……時勢が違えば、君の見る覇道も見てみたかったけれど。」
「それは無粋か、今だ付き従う臣下が居るんだ、君達だけが見ることの許される夢だろう。」
夕凪・悠那
○
メガリス…
要はチート武器を装備してるわけか
第六天魔王・織田信長
相手にとって不足なし、推して参る――
…とか言っちゃうくらいにはテンション上がるよね
先制に対し『仮想具現化』
[早業]で編み上げたMMOのタンクを盾にするけどそれくらいぶち抜いてくると想定
故に第二の盾
キャラに電脳魔術で具現化したウイルスを仕込む([破壊工作+罠使い+カウンター])
生命力を奪うどころかウイルスを喰らうことになるね
信長公はガン=カタって知ってる?
【英雄転身】その役は双銃構えし狩人
UCで得られる技術を最大駆動
刀を[見切って]捌き、肉体変異の奇襲には[第六感]フル活用
鎧を撃ち抜くべく[武器改造]して貫通力強化した弾丸を叩き込む
卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍
第六天魔王・織田信長。
人々がその名前を聞いて抱くイメージは多々あれど。
昨今において、その名が示すのは残虐無比にして冷徹冷酷な“天下統一にあと一歩届かなかった魔王”――――だけであるとは、限らない。
「お、思ったよりも、普通の信長、だな?」
非在・究子(非実在少女Q・f14901)が実際に抱いた感想は、それだった。
何せあらゆる媒体、あらゆるコンテンツにおいて信長は多種多様な変貌を遂げている。
美少女、幽霊、動物、はたまた転生。
炎を背負い、髷を結い――いわゆるオーソドックスな“信長”は逆に珍しくさえある。
「……偉大なる第六天魔王、なるほど、相対すると想像以上だ」
逆に、“織田信長”という存在を文化として知らないマグダレナ・ドゥリング(罪科の子・f00183)は、己らしくない冷や汗を、背中だけで流した。
戦の大勢は既に決まった。如何にオブリビオン・フォーミュラといえど、この状況を覆せるとは思えない。
にもかかわらず。
“もしかしたら”、何かしでかすかもしれない、という潜在的な恐怖をまざまざと感じさせる。
「要はチート武器を装備してるわけか……」
夕凪・悠那(電脳魔・f08384)からしてみれば、お誂えたような“ラスボス”だ。
立ち振舞い、一挙一動、まさしく織田信長のそれ。
仮想の中でコマとして扱うならともかく。
現実に相対するとなれば、これほど強大な存在もあるまい。
文化と文明を創り、書き換えた、歴史の転換を行った者。
「で、あるか」
無論、異世界の未来人達にどう評価されたところで、織田信長という概念が揺らぐはずもない。
絶対的に。
圧倒的に。
超越的に。
彼は魔王なのだ。
「娘と言えど油断ならぬのは承知よ。故に儂は全力を持って殺す。抵抗を許そう」
逆賊の十字架が、鈍く輝いた。
「慈悲はない。情けもない。よって――――」
全力で足掻け、と言うように。
両腕と頭部、三人に合わせた体の部位が、それぞれ奇形の鳥の顎となって襲いかかった。
●
「う、そだろ!」
事前に警戒していた。肉体の変化があった瞬間行動を起こすと決めていた。
それでも、その変化速度があまりに早かったことと。
メガリス――超絶的な力を秘める“大帝の剣”へのハッキングが間に合わなかった。
究子の技巧はもはや神の領域に等しくても。
現実世界の物体に電脳干渉を行う際の微細な“ラグ”と、未知なる存在への干渉。
1/1000000秒の間ですら命取りだった。
「ぎゃ、あ!」
腹に食らいついた異形は、そのまま貪るように究子の肉体を引きちぎっていく。
「ボ、ボム……!」
喰らい『ボム』の発動、巻き起こった爆発と共に得る、僅かな猶予時間は。
「是非も無し」
痛みが一瞬、消える程度の意味しかなかった。
命が奪われていく。
数多あるはずの残機が、失われていく。
●
「ぐ…………!」
マグダレナの読みは当たっていた。
信長は見覚えのない機械を確かに警戒し。
差し出せば、それを喰らうよう動いた。
問題があったとすれば、問答無用で“喰いちぎられた”事だった。
肘から先がぶつんと音を立てて飲み込まれ消え失せた。
短い舌打ちと、意識のどこかで“治るのか”という未来の己に疑問をはせて。
(馬鹿馬鹿しい)
そんな事を考えている暇など、微塵たりともない。
傷ついてでもダメージを入れてやろうとした、代償がこれだ。
「まだだ……!」
それでも目から火が消えないのは。
諦めるにもまた、速いと思っているからだ。
●
「速……!」
サイバー・リアライズ。
電子の存在を現実に置換するプログラム……術式によって生み出したのは、MMORPGのタンクキャラだ。
壁となり、盾となる存在で時間を稼ぐはずだったそれは、一秒以下の時間で喰い破られた。
「あ、っぐ! この…………あぁっ!」
タンクキャラは飲み干され、横向きに喰らいついてくる牙を何とか両腕で受ける。
肉にメリメリと牙が食い込んでくる感触、どれだけ力を込めても、あと十秒程度で。
押しつぶされて、そのまま喰われるだろう。
さっきまでなかったはずなのに、今はもう真隣にある“死”の恐怖。
こちらを見ながら異形の目が、嘲笑う。
何をしにきた?
何ができた?
死にに来たのか?
愚かな娘よ。
「は――――」
骨にまで達した牙の痛みを、存分に味わいながら。
強がりでもいい、悠那も笑い返した。
「第六天魔王・織田信長、相手にとって不足なし――ねえ」
何故なら。
「…………この程度で終わるわけないっしょ?」
仕込みはまだ、生きているのだから。
信長が最初に感じたのは、肉体の異変だった。
もとより変質した異形だ、通常の感覚とは違う事は承知の上だが。
「……何をした、娘」
顎が閉まる力が弱い。
筋肉の弛緩と組織の崩壊が、同時に起こっている。
「ウィルス、って、知ってる? はずないか」
ようやく抜けてくれた牙が与える新たな痛みに顔をしかめながら。
「あんたが今食べた、タンクキャラのことだよ」
防げるとは思っていなかった。
対抗出来るとは思っていなかった。
信長は確実に先手を取り。
こちらを潰しに来るのだ。
だから――――“喰われること前提で”。
電子化したウィルスを仕込んでおいたのだ。
「うぃるす? ……面妖な!」
「お互い様、でしょ……それに」
体中にテクスチャが走る。
コ ネ ク ト
《電脳接続》
「勝った気になるのは……」
ロ ー ド
《記録参照》
「まだ速いっての……!」
セ レ ク ト
《対象選択》
衣服を、装備を、電子が分解し、新たな衣装を生み出した。
インストール
「…………《転身開始》!」
双銃構えた狩人――――ゲームのキャラクターを己に宿す《英雄転身》。
この世界に、概念すら存在するはずもない、“拳銃を使った近接格闘術”。
その名も――――。
「なんだ、その妙な武装は」
「ご存知ないの? 信長公――――ガン=カタだよ!」
殴りつけるようにトリガーを引き、畳み掛けるように二つの火砲が吠える。
「成程、伴天連、海の向こうの武術と見た。愉快! 愉快ぞ!」
鎧すら貫く弾丸に、それでも信長は、まだ笑い。
大帝の剣をスラリと抜き放つ。
「弥助よ! さあお主ならどうする! 儂に示してみよ!」
答えるように、圧倒的な覇気が、周囲を包み込んだ。
●
究子にとって己の命の価値とは、デジタルな数式で表せるものだ。
死ねば数字が1減って、やることをやればその内数字が1増える。
主観的な彼女の世界は、ゲームでしかないからだ。
セーブ&ロードでやり直せばいい。
出来なかったらリトライすればいい。
それでも無理なら投げてしまえばいい。
だってゲームとはそういうものだ。
「げ、現実は、クソゲー、だ」
口癖となってしまった言葉。
だって、こんなに残酷で、こんなに痛くて、こんな苦しくて。
それでもこんなに簡単に、書き換えられる。
「ぬ!」
大帝の剣が震え、信長の手からノイズとなって解け、消えてゆく。
「弥助!?」
流石に、戸惑いの声が溢れた。
己の傍らにあり、己と共に闘っていた忠臣の姿が、同じ様に、デジタルな0と1に還元されていく。
「おそ、かった、な……」
本当に遅い。
まったくもって遅い。
二人の接続を切断するのに、数秒間もかかってしまった。
「何をした、娘!」
「そ、それ、結局、借り物、だろ? チ、チート乙……」
大帝の剣は、弥助アレキサンダーの力、借り物だ。
ならば、信長の纏う武装そのものを切り離してしまえば。
力は使えない道理だ。それも、一瞬だけでいい。
「ぐ――――――」
メガリスの力を失ったことで、全身を纏う闘気の鎧が解け消え。
意思の力によって押し留めていたウィルスが、一気に侵食を開始する。
「ぐ、う、おおおおおおおお――――!」
「よそ見、してんなっての……!」
《英雄》をその身に宿す悠那の銃弾が、信長の、肩を、腹を、貫いていく。
ステータス弱体、防御力0。
「やっちゃえっ!」
弾丸が切れた、リロードの暇もない。
後方に飛び退くと同時、入れ替わるように究子が突っ込んだ。
「残機、残り“1”……だ!」
もう死ねない。
もう消えられない。
それでも、ゆくのだ。
「か、神じゃなく、て、魔王、でも、効く――だろ!」
唸りを上げるはチェーンソー。
超常を殺す、殺戮兵器。
「ふ、ふふふふははははははははは!」
その回転刃が信長に迫る直前、再び闘気の炎が燃え上がった。
姿の薄れていた弥助の姿が、徐々に輪郭を取り戻し始める。
破壊した肉体が再び再生を始め、手に大帝の剣が戻り。
ガキ、と音を立てて、チェーンソーを受け止めた。
「見事であった。儂の知らぬ文化と力、とくと見せてもらった」
「う、げ、こ、このチーターめ……!」
「やはり海に向こうにはあるな。儂の知らぬモノが、儂の求めるモノが! よくわかった! ならばこそ、貴様らを越えていこう! 猟兵!」
徐々に力を取り戻し始めた信長と。
力を振り絞った猟兵。
均衡は徐々に崩れていく。
もう、後がない。
●
「…………勝ち誇るなら、全て終わってからにすべきだ」
襖に体を預けて。
止血のために腕を抑えながら、マグダレナは小さく呟いた。
誰も聞いていないだろう言葉を、痛みに耐えるように。
「強者ゆえの傲慢という奴かな。ここぞというところで脇が甘い」
信長は見たがっていた。
信長は知りたがっていた。
まだ己の預かり知らぬ知識と技術を。
「……時勢が違えば、君の見る覇道も見てみたかったけれど」
使えば、半径三十メートルを粉々に吹き飛ばす破壊の塊。
即ち、単なる手榴弾。
「それは無粋か、今だ付き従う臣下が居るんだ、君達だけが見ることの許される夢だろう」
、、、、、、、、
食いちぎられた腕に握り込んでいた、殺傷兵器。
「見せてあげよう、この時代と世界には――ないモノを」
大帝の剣を握っていた信長の右腕が。
肩の付け根から、轟音と共に吹き飛んだ。
●
「!」
爆発がもたらした破壊は、右腕だけにはとどまらなかった。
飛び散る破片が体内のいたる所に食い込み、臓器を傷つけ。
熱風が肌を焼き、骨を焦がす。
「何という奇術か、これは――――――」
「へ、へへ、ナイス『ボム』」
その隙を、見逃さない、見逃せない。見逃すはずがない。
「ばらばらに、してやる」
一回、二回、三回、四回。
唸る壊刃が、再度異形と化していく、信長の体を斬り裂いた。
●
「……人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり、か」
己の知らぬ間に。
よくもまあこれだけの文明が発展したものだ。
これだけの多種多様が生まれたものだ。
これだけの数多が己に牙を向き。
そのどれもが等しく、面白い経験だった。
「見事」
故に認めよう。
信長は負ける。
知らぬが故に受け入れて。
今生を終える。
「弥助」
己に纏う部下は、その有様をなんと言うだろうか。
「今生は儂の末期を見届けた、まこと忠義者よな」
きっと、泣き、怒るだろう。
すまないとは、無論口にしない。彼は、将軍なのだから。
「娘達よ、猟兵たちよ」
にや、と少年のように楽しげに笑い。
「楽しかったぞ!」
それが――――織田信長、最後の言葉となった。
エンパイアウォー、終結。
その一端に、この戦いは、確かに記されている。
卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍 ◇ 卍
成功
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