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機械鳥の楽園

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●マシン・バード
 鬱蒼と茂る森の中、枝が不自然に密集し、扉を形作っている。その手前で、くずおれて、彼は声を上げることもなく、ただ、そこに蹲っていた。鳥の形を象った彼は、多く居る仲間が助けに来ないことを知っていた。
 機械の目が周囲を見渡す、仲間達は自由気ままに羽根を伸ばしており、無感情にそれを見つめ、機械と魔法で編まれた思考回路が、自身の機能停止を、冷静にカウントしていった。差し伸べられた手に、彼は、もしかしたら温かいものを覚えたかも知れない。

●グリモアベース
「アルダワ魔法学園の学園迷宮で、災魔が活性化するのを予知したけー、皆に解決を依頼している所じゃったなー。仕掛けが見えてきたけー、解除を頑張ってほしい。」
 海神・鎮(ヤドリガミ・f01026)が事件の進展を伝える。事の起こりはこうだ。オブリビオンがとある学園迷宮のフロアボスの座につき、迷宮内部を活性化させている、猟兵は転校生の身分を有難く貰い受け、そのオブリビオンを打倒する為に迷宮に挑んでいる最中だ。
「この世界の皆は、儂等の事を知っとるから、動きやすいのー。まあここ、浅い階層は余り危険がなかったんじゃけど。」
 一部の災魔は猟兵にしか対処出来ない為、こうした措置が取られている。探索している迷宮には通りの良い通称が付いていた。機械鳥の楽園と言えば、アルダワ在住であれば、ピンとくる者も居るだろう。
 今は立入禁止措置が取られているこの迷宮は、災魔の活性化や凶暴化がなければ、対応はかなり後回しにされていただろう。何せ、先程も言った通り、浅い階層の危険はほぼ無いと思って良いからだ。
「基本的に静かな森を象っておるが、全部絡繰仕掛けじゃな。機械鳥や、その他機械生物の為にあるような迷宮の作りじゃのー。天井を感じさせん昼夜まで再現しとる徹底ぶりじゃった……と話が逸れたな。」
 次のフロアに行く仕掛けは、門番となっている機械鳥を探し、巣に帰すという手順が必要だ。
「どうも、この門番の鳥が発見した扉の前で蹲っとる。怪我して動けん様じゃ。助けてやってくれ。やり方は皆に任せるけー。」
 原因はオブリビオンか、それとも事故か。危険は薄いフロアだが、機械鳥以外にも機械の獣が生息している以上は一応、気を付けて欲しい。機械獣の戦闘能力は一般人程度で、特殊な能力も持っていない。
「これくらいかの? 簡単な行動指針を書いておくけーな。」
 力、気力、体力に自信のある者は、使えそうな部品を探すと良い。
 器用さや専門知識を持っている者は機械鳥を修理を試すと良い。
 頭を回しながら機械鳥を観察し、破損箇所や状態を調べてみるのも良い。
 勿論、他の方法を試してみても良い。
「あ、そうそう、会いたいと思う森の動物が居ったら、行動の合間に探してみるとええ。」
 他にも、機械鳥と会話がしたい、感情の有無を確認したい等有れば、色々試してみると良い。恐らく、動物と会話出来るだけでは足りないだろう。
「信頼しとるけー、宜しくな。」
 そう言って、明るい笑顔を見せると、鎮は猟兵達を迷宮の扉の前に送る準備をし始めた。



 紫と申します。4作目となります。宜しくお願い致します。今回はアルダワ魔法学園。1章は少しのどかな感じに始まって、遊び要素の多いシナリオにしてみました。楽しんで頂ければ幸いです。反面、2章、3章はシンプルな感じでお送りしたいと思っております。

●最後に
 及ばずながら、一生懸命お送りしたいと思っておりますので、宜しくお願い致します。
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第1章 冒険 『風恋う鉄』

POW   :    使えそうな部品を探す

SPD   :    機械鳥を修理する

WIZ   :    破損個所や状態を調べる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

逢坂・宵
今回はアルダワですか
機械鳥とは興味をそそられますね
僕の知るそれとはまた違った構造なのでしょうが……
動力、構造、動作いずれもたいへん気になるものです

怪我をして動けないようであれば、破損個所はおそらく動力か動作系
念のため構造についても調べてみましょう
のちのち有利なことがわかるかもしれません
……いやですね、いたずらになど使いませんよ? ふふふ

この機会に、お話なども聞いてみましょう
怪我した経緯や、この迷宮のことなど、ね


イクス・ヴェルデュール
アルダワに住んでたけど、こんな所があったとは
もっと早く知りたかった!……と、今はそんな事言ってる場合じゃなかったな

機械鳥にそっと近付きまずは自己紹介

俺はイクス
お前がまた仲間達と一緒に空飛ぶ手伝いをしにきた
空飛ぶ仲間達を指差し、にかっと笑う
意思の疎通が出来ててもそうでなくても
それでも何もしないよりかはいいだろう

電脳ゴーグルを展開して機械鳥をスキャン
何処が悪いのか特定できねぇか調べてみる
同時に損傷の原因が特定できりゃいいんだけど
メカニックで修理可能であれば修復を
何か必要な部品が分かれば、
他の猟兵達に情報を伝えつつ、必要なら自分でも探しに行く

機械獣とやり合う時はエレクトロレギオンを召喚して対応するな



●接触
 これは繁茂と言って良いのだろうか。見かけも感触も全て自然物だが、妙に出来すぎている。何故かはわからないが拭えぬ違和感。それが作り物であると確証するには十分だった。太陽を模した疑似天体、空を写し、雲を流す映像媒体。その中を自由気ままに飛び回る機械鳥のモデルとなった鳥は実に様々だった。
 何もかもがアルダワの技術体系とは異なっており、どちらかと言えばスペースシップワールドの物を連想させる。
 イクス・ヴェルデュール(春告のひかり・f01775)はもっと早く知りたかったと、その光景に改めて感動を覚えながら、機械鳥にそっと近づいた。すくい上げる前に軽く話しかける。
「俺はイクス、お前がまた仲間達と一緒に空飛ぶ手伝いをしにきた。」
 今も聞こえる彼の仲間の居るスクリーンの空を指さして、歯を見せて太陽のように明るく笑う。彼は視覚センサに捉えたイクスを見て、機械の羽根を数度、動かそうとする。
「焦らねえでくれよ。」
 損傷箇所を拡げないよう、慎重に掬い上げ、電脳ゴーグルを展開して機械鳥の損傷箇所を走査、状態を確認していく。
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)はそれを興味深げに見つめながら、まず周辺の環境を整理していく。確かに機械が混じっており、精霊の気配も薄いが、相反するように魔力資源が濃い。到る所から匂い立つ程の豊富さ。源泉と言って良かった。基本構造は機械であり、アルダワの技術とはかけ離れていながら、魔法資源とその利用はアルダワの物を利用しているようだ。
「如何です?」
「分かりやすい所で羽根がやられてるな。後はもう少し調べてみねぇと……」
「魔力資源の不足は感じられませんか?」
「……! 魔法使いさんらしい意見だ。豊富か?」
「ええ、異常な程に。」
「じゃあ餌がそれなんだろう。それだけで動けねぇって事は無ぇだろうけど。ああでも、食わせてやりてぇな。」
「やはり、食べ物を食べるのね。魔力資源だとすると、全て自然として擬態しているだから、考えるに……」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヘルミナ・イェルソン
SPD
機械でできた森、とはまた面白いですね。私のスケッチが火を噴きますよ。

私も体を機械にしてるので、機械鳥には少し親近感湧きますね。壊れてる時の違和感たるや。とにかく、無事に修理をしてあげたいです。
さて、私は修理を試みます。ガジェットってこういうことにも使えるはずよね。修理工具オールインワンなガジェットを展開して、機械鳥をいじくりまわし……いえ、修理です、修理。

そういえば機械とはいえ鳥、何か食べたりするのかしら。つまり私は動力が気になるのです。普通の木の実か、もしくは逆に電池とか。余裕があったら与えてみるのも面白いかもしれないわね。


ユノ・フィリーゼ
機械仕掛けの者達の楽園
見上げればそこには確かに"ソラ"がある

仲間達が自由に風をきり飛ぶ姿は、君の瞳にどう映っているのかしら
哀しい?寂しい?
それとも、早く、また空を飛びたい?
…私だったらきっと、そう思っていただろうな

大丈夫。必ずなおしてあげるから、ね
労る様に機械鳥をそっと撫で、微笑む
機械の知識はあまり無くて、
何が必要だかさっぱり分からないけれど
ここはあの子達の楽園
必ず直す手立ては見つかるはず

スカイステッパーや【地形の利用】を活用し、
帰るべき巣である場所を中心に迷宮内で部品や手がかり探し
森の動物…熊、とかもいるのかな
ちょっぴりそんな期待も抱えて歩を進める



●3人
 ヘルミナ・イェルソン(夜を飛び越える・f02267)は独り言を呟きながら、溢れた創作意欲をスケッチブックに発散する。白黒で綴られた見事な風景クロッキーが、瞬く間に出来上がった。
「自然物を模しているのでしょうね。」
「そう考えるのが妥当でしょう。」
「……修理する前に、探索役の2人にも伝えとくかねぇ。」
「さて、思う存分弄くり回し、もとい修理を……まだお預けでしょうか?」
「部品が無ぇのに手術しても駄目だろうが……」
 修理工具型のオールインワンガジェットを、眼鏡を光らせながら展開した所でお預けを食らう。そんなヘルミナに宵が心中で同意するが、表情にはおくびにも出さない。此方は原理の解明に重点を置いているので若干アプローチは違うのだが。

●天原に落ちる千の花
「なら、出掛ける前に少しだけ良いかな?」
「ああ、良いぜ。」
 ユノ・フィリーゼ(碧霄・f01409)の声にイクスが答える。空の涙を風に揺らして、機械鳥をそっと受け取ると、優しく頭を撫で、藍色の瞳を優しく細めた。
「仲間達が自由に風を切って飛ぶ姿は、君の瞳にどう映っているのかしら。哀しい? 寂しい? それとも、早く、また空を飛びたい?」
 私が同じであれば、そう願ったとユノが語りかける。翼が無くとも、狂おしく焦がれたモノ、落ちてしまったあの愛しき場所に、再び届く事を願っている。有限であっても、確かにここには彼女の知る愛しき蒼空があった。
 彼はそれを集音センサで感知し、カメラアイに彼女を映す。掌中で静かに眠るように。優しい声音に耳を傾けるように。
「大丈夫。必ずなおしてあげるから、ね。ごめんね。」
 受け取る時と同じ様に、静かにイクスへ機械鳥を返す。
「……こいつの食い物になりそうな物があったら、頼むな。」
「うん、任せて。」
 地図を受け取り、返事をすると、すぐさま、ユノは宙を蹴って探索を開始する。
「話は終わったか? 私はあっちの方を探してみるよ。」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御倉・ウカノ
アドリブ歓迎
判定:POW
機械鳥ねえ。残念だけど、あたしにゃ仕組みがさっぱりわからないよ。でもま、からくりが壊れたってんなら、部品の交換でなんとかなるだろ。この階層にいる連中は猟兵なら大したことはないだろうが、部品探しの途中で邪魔されるのは面倒だし、『フォックスファイア』を使って獣除けにならんか試してみようか。自分の周りに設置しておいて、からくり連中が近づいてきたら炎でビビらせてやれば部品探しに集中できるかもね。肝心の部品だが…使えそうな部品をかたっぱしからかき集めて、一つ一つ当てはめるか…。使う部品が分かるやつがいたら、是非教えてもらいたいだが、それは他の猟兵に期待するとしよう。



●稲穂の酒瓶
 御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)は皆の話が落着するまで、適当に草の上に腰をおろして提げた徳利を傾けていた。15の狐火を灯し、周囲を警戒する。獣達が寄ってくる気配はない。全体的に機械の事は分からないので、そちらの専門家に任せようというハラで、自身にできる事は軽快くらいだろうとそちらに気を配っていた。
 酒気で顔を赤くしながら、話が終わったとみるや、方向を指し示し、確りとした千鳥足で機械の森の探索を始める。
「しんぷるに考えるか。この場合、死んだ奴は何処へ行く?」
 自然の摂理として、死んだ血肉は自然へ還る。骨は風化し、血肉は他種族、もしくは同種の栄養源だ。血に類する者は兎も角、絡繰が絡繰を食う、とは若干考えにくい。となると絡繰を処理し、再生成する場がある筈だ。
「輪廻転生の極端すぎる再現だな……」
 独り言を呟きながら、良い気分な頭でアタリを考える。擬態を完璧にするならば、不透明度の高い液体に沈ませるのが有力だろうか。猟兵仲間が纏めた地図を取り出して、まだ足を踏み入れていない場所を探していく。
「少し遠いが、行ってみるか。」

●風の竪琴(Zephyros*)
 ウカノが地図を開く頃、ユノは調べの付いていた巣の付近を目指して歩を進めていた。すると、子連れの熊が目の前に現れた。瞳はつぶらとまでは行かず、体表は毛に覆われておらず、色を模しているだけだった。しかし、ボディラインは丸みを帯びており、動作は驚くほど滑らかで、機械らしさを感じさせない。小熊を気遣う様に寄り添う親熊は、しかし、ユノへの恐れも警戒も見えなかった。ただ無感情に視覚センサにユノを捉え、同時に、聴覚センサの活性化の為に数度、耳部分を前後させた。子熊はのそりと後退し、親熊の後ろに隠れ、様子を伺う様に四肢関節を地に落として蹲る。
(熊も……居るんだね。)
 期待して歩を進めていたが、本当に会えるとは思ってなかったようだ。動かないのならば、少し触ってみようかと、一歩踏み出してみる。反応はない。そのまま掌を頭に添えると、丸みを帯びてはいるが、鉄の硬質な手触りと、人と同様の温もり、体温のような物が感じられた。更に数度擦ってやると、敵意は無いと判断されたのか、その場に横に寝そべって、のんびりし始め、小熊も警戒を解いて、のそのそとユノの方に寄って来る。互いの肌質を理解しているようで、ユノに擦り寄る事はなく、足元から、遊んでとせがむように頭を持ち上げて来た。
(仕事が……進まなくなるな!)
 飼育されている様に様に大人しい親子熊と、長くはない時間の間戯れて、最後は礼代わりにゼフィロスで一曲弾いてやる。その後、巻き返すように大急ぎでスカイステッパーと地形利用を駆使し、巣の周辺を探り始めた。修理対象の仲間達が多く生息しており、そこには彼等が良く食んでいた木の実型と花の蜜型の動力補給物資が多く在り、幾つかを収穫して、皆の元へ持ち帰った。
 余談だが、親子熊の視覚、聴覚センサがユノの演奏を捉えた時、余り使わない記憶領域を作動させ、音楽データと映像データ両方を、記憶に焼き付けていた。ユノ本人さえ知らない、彼等の思い出だ。

●濁り酒
 例えるならそうだ。濁り酒の様な色だった。澄んだ印象の乳白色は、米の研ぎ汁の様な印象だとも言える。数種の機械獣が、動作しなくなった思われる同種を、その沼の様な場所に沈めていた。溶けるような音もなく、皆静かにそこに沈んでいく。墓場と言うには綺麗すぎ、分解工場と言うには有機的だった。ウカノは上手く言葉に出来ず、ここに潜るか、引き連れてくる同族を狙うか、どちらにしようか考える。
「釣り竿か磁石でも持ってくりゃ楽だったかな……参った。」
 思い切って潜る方を選んだ。少なくとも、すぐに溶解することはないだろう。何となく、此処にそういった危険な雰囲気は似合わないと考えた。徳利だけは一応、地上に置いておいた。思っていたよりも視界に自由が効く。湖底までは遠くなく、沈み切った鳥型の同型の大きさの残骸を、持っていた大きい巾着に片っ端から突っ込んでいく。息が続かなくなった所で浮上し、液で濡れた身体を狐火で乾かした。
「……凄いね、こりゃ。」
 水等よりも遥かに早く、着物や毛皮、耳の内側が乾いていく。最後に酒瓶を提げ直し、、確かな収穫を持って、ウカノは救出対象の元へと帰る。

●帰還まで(三者三様)
 イクスは2人の帰還までに軽い応急処置を機械鳥に施した。触れた時に感じた機械らしからぬ温もりが、今も掌中に伝わってくる。寝かせる物を作ってやろうかと、地面に生えている植物の様な何かを軽く千切る。鉄の感触は感じられず、興味で電脳ゴーグルでスキャンしてみると極小の鉄成分が繊維の様に編み込まれており、そこまで徹底するのかと、軽く目眩を覚えた。とりあえず、機械鳥をそこに寝かせてやる。藻掻く様子も無く、懐いているのか、元気がないのか少し気になったが、イクスがその場を離れようとすると、軽く身じろぎするように、身体を揺する。
「どこにも行かねぇから無理すんな……」
 そもそも仲間から余り目を離せない。自分もそうだが、技術者や研究者は厄介だ。知らない物があると好奇心と探求欲が先走る。ヘルミナはその時が来るまで、スケッチブックに風景クロッキーや機械鳥のスケッチを書き溜めていく。時折周辺環境をサイバー・アイで興味深げに観察する。時折インスピレーションが振ってきた際はシュルレアリスム調の形容し難い世界観の何かが描かれている。宵は、偶に何かを確かめるように魔法を使い、書物を読み耽っている。気になることは多いが、急ぐほどでもないという事だろう。
「……壊れている時の違和感と、改造後の違和感、どちらが辛いでしょうか?」
「いきなり物騒な話題振るなよ……」
「そうですね。不治の病等で身体の何処か……違和感を感じやすい部分といえば、腕や足でしょうか。その機能を代替する為に機械化する、という表現は如何でしょう?」
「生々しい表現ですね。私も同じ様な事をしていますが、そう考えると、あの子を弄くり回す、というのは可哀想です。」
「そこまで言わねぇと駄目か。怪我人だぞ……」
「では、健常者ならば良いのですか?」
「そうは言ってねぇ……」
「……残念です。」
「同意しましょう。」
「俺の目が届かねえ時に頼む……」
 イクスが頭を抱えそうになる。物騒な話題を知ってか知らずか、空を巡る機械鳥達の鳴き声が、和やかに響き渡る。丁度、ウカノとユノの帰還を報せる様に。

●修理
「戻ったよ。片っ端から引き上げてきた。これで良いか?」
「約束通り、同じ子が食べてるのを見つけてきたよ。」
「ありがとな。じゃあ早速。」
「修理しましょう。部品選定と走査、補助は頼みます。
「ああ、任せとけ。」」
 ガジェットを修理モードで起動。歯車が回転し、ギアが煙を上げながら、何本もの機械椀が展開され、計器が慌ただしく上下する。
 展開している間、ユノが花蜜を嘴に持っていくと、少しずつそれを吸っていく。
「手術の合間に食べさせてあげましょうか。」
 イクスが瓦礫の山を走査、手際良く部品を選定し、まずは視えている動作部を危うげなく挿げ替える。次に、見えにくい部分、動力部に手を出す為、まずは機械鳥のセンサー類をクラックし、シャットダウン。人間の昏睡状態に近い状態を作る。これには宵も協力した。次に電脳ゴーグルの情報を処理するイクスの言葉を頼りに、ヘルミナが慎重にヒートメスアームを操作し、機械鳥の動力を暴く。運良く生きていたそれと交換し、有ったものと同じ様に循環経路を繋ぐ。
 ヘルミナの頬が、緊張で幾筋もの汗が伝うのを、手の空いている者が拭き取っていった。最後に溶接アームで開いた傷口を繋ぎ、クラック作業を逆手順で解除。視覚センサに光が戻る。
 自身の状態を確認するように、両翼を交互に拡げ、数度翼を羽ばたかせた。何かが足りないのか、ユノの持って来ていた木の実を元気良く啄むと、その勢いのまま、空へと帰っていった。
「終わったか。」
「達者でなー。」
「良かったね。うん、良かった。」
「……まあ、珍しい物が見れたので良しとしましょう。」
「ええ、良い刺激になりました。」
 程なく、蔦で覆われていた通路が、地面に引き戻されるように動き、通路が姿を見せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『メイド人形』

POW   :    居合い抜き
【仕込み箒から抜き放った刃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    暗殺
レベル分の1秒で【衣装内に仕込まれた暗器】を発射できる。
WIZ   :    人形の囁き
対象のユーベルコードに対し【対象の精神に直接響く囁き声】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●帰巣
 彼等は何故と考える。彼等は何故と疑問を覚える。記憶領域に密かに格納した彼等の映像を見て、使命感を携えて、自分は巣に帰ろう。どの道、自分に出来ることはそれくらいだろう、彼はそう考えた。

●温室
 安定した気候、彼等の楽園を今にも破らんとするように迷宮が胎動する。食われていく、蝕まれていく、主の命のまま、主の思うままに、迷宮を作り変える。あれが要る、これが要らない。そうして出来上がっていく熱帯気候。粘つくような湿気と、過渡と言って良い程の魔力資源が濃霧として実体と質量を持つ。此処は迷宮の主の鎮座する階層、楽園失墜後のグリーン・ハウス。
 真に繁茂した草木が機械を食い潰し、植物はかくあるべきと己を主張する亜熱帯。20の影が濃霧の森を暗躍し、迷宮の主の敵を手厚く出迎える。

●状況整理
 身長80cm程のメイド人形15体が温室と化した階層で猟兵を待ち構えている。これは迷宮変化によって生まれたものであり、魔力資源の異常な濃さをそのまま引継ぎながらも、亜熱帯に相応しい濃霧と化し、非常に視界が悪く、外敵の侵入を阻んでいる。
 メイド人形は各種センサが搭載されており、濃霧を障害とせず外敵を襲う。1体1体は弱いが、5人組で動く4チーム編成で、通信機能も備えており、連携もしてくる。厄介と言って良い。
 亜熱帯林の様相を呈しているので障害物が豊富であり、隠れんぼの様に探り合いとなる可能性もあるが、索敵しつつの戦闘になるだろう。
と、資料には記載されている。
 最後に、敵が使用するユーベル・コードが記載されていた。

●ユーベル・コード一覧
 力任せの居合い抜きは仕込み箒から抜き放った刃が命中した対象を切断する。
 器用さを活かした暗殺は10分の1秒で衣装内に仕込まれた暗器を発射できる。
 魔法力による人形の囁きは対象のユーベルコードに対し、対象の精神に直接響く囁き声を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
ヘルミナ・イェルソン
おや、これはまた急な環境変化ですね。まあいいでしょう、細かい作業をした後は思いっきり体を動かすに限りますからね。

視界が不利なら、おびき寄せて叩いた方がいいかしら。見つけにくいなら釣るだけね。
ガジェットは囮。茂みの中でガサゴソさせればいい感じに人がいるような雰囲気が出るでしょう。
私は物陰に隠れた状態で敵が寄ってくるのを待つわ。1チーム分の存在を確認出来たら【ヴァリアブル・ウェポン】命中率重視の槍を脊椎の機械部から展開して攻撃します。背後をつければいいんだけれど、霧でそこまでわからなかったらあまり頓着しないわ。
危なくなったら【メモリ配分・分析】で攻撃を避けながら立て直しを試みましょう。


ユノ・フィリーゼ
さしずめ森の中でのかくれんぼ
地の利は其方にあっても負けはしないよ
―鬼さんこちら手の鳴る方へ

同じ所には長く身を留めず、
見切りや残像・地形を利用しながら攻撃と回避の繰り返し
高所からの攻撃が見込める時は、
衝撃波やスライディングによる急降下の一撃を試みる
基本は単騎狙い
複数時は一番近い位置にいる個体から
弱った個体は常に最優先処理

剣を手にし奏で唄うは盟約の歌
鋼鳥の戯れを使用し群れを空へと舞わせ敵へと嗾ける
響く音色で私の居場所は分かっても、
この子達の動きはどうかしら?

集中的に狙われている仲間が居れば、
敵の視界を遮る様鋼鳥を舞わせる
一瞬でも時間が稼げればそれでいい

連携は貴女達だけの特権じゃないの
甘く見ないで?


イクス・ヴェルデュール
完全にジャングル…つくづくすげぇなここの技術
じっくり観察する暇が無いのが悔やまれる!

電脳ゴーグルを展開し熱源による仲間の位置把握が出来ないか試してみる
連携の手立ては少しでも抑えておきたい所
敵の位置を探索出来ないかも試すだけは試しとく

視界がダメなら頼るのは音
恐らく相手方もそこは同じだろう
視認出来る位置に敵がいない時は、
敵を発見する為の囮としてエレクトロレギオンを少し離れた位置に召喚
釣られて姿見せてくれりゃ僥倖
遠距離から攻撃受けた時は冷静に場所を特定
仲間へ声かけ、自分もレギオンと深森の牙手に攻撃を仕掛けるぜ

一人の時は質より数で圧す!
仲間と居る時は頭を使って質で圧す!
とにかく諦めないで最後迄戦い抜く



●白中模索
「おや、これはまた急な環境変化ですね。まあいいでしょう、細かい作業をした後は思いっきり体を動かすに限りますからね。」
 ヘルミナ・イェルソン(夜を飛び越える・f02267)が軽く汗を拭い、ガジェットを操作する。魔法蒸気機関がけたたましい音を上げながら、四つ足を展開し、濃霧の先を駆けていく。サイバー・アイ、情報収集ツールボックスと紐付けた半自動制御機械を、ヘルミナが時折操作し、木々の合間を潜らせる。
「ガジェットはそういう使い方も出来んのか……」
「便利でしょう? 私達の役割は」
「目と耳、だな」
 木々の合間、背の高い雑草の茂みへ巧妙に隠れるヘルミナに、イクス・ヴェルデュール(春告のひかり・f01775)は掌サイズの戦闘用機械兵器80体を召喚し、放射状に展開すると、電脳ゴーグルにそれらとレーダーを同期させる。
「それと、撃ち漏らしの処理でしょう。」
「此方側の視界が塞がれているとなると、厄介ですね」
「見ての通り、目と耳はこっちでどうにか出来る。ただ伝達に大きな声は不味いと思う。誰か良い方法ねえか?」
 通信機を作る手もあるが、時間の猶予はなさそうだ。
「では、少し試してみましょうか」
  逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が星詠み人、陰陽師としての知識を掘り起こしながら、通信符の作成を試みる。
「試してみて下さい」
 2枚出来上がった所でイクスに1枚を渡して通信テスト。宵の札から声が響く。宵が満足したように一つ頷くと、人数分の札を作り、皆に手渡した。
「機械無しで此処まで出来んのか……」
 メンツが潰れる、と嘆く。錬金術の心得はあるが、紙一つで通信機器を作られてしまえば、嘆きたくもなるだろう。
「アルダワの様な混成技術が進めばいずれ、機械鳥に似た物も出来上がってしまうのですが」
「この階層は災魔が組み替えた結果だけどよ。すげぇよなここ。ゆっくり観察してえ……」
 つくづく早く知りたかったと電脳ゴーグルの下で目を輝かせながら、仕事の合間にもう少し情報アンテナを立てておこうとイクスは考えた。
「じゃあ、あたし等はあんたの機械と並行して前に出るかねえ。」
「そうしようか。案内、宜しくね。」
 酔いの残る赤ら顔のまま、身の丈程もある大太刀を担いだ御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)が酒を煽りながら、ユノ・フィリーゼ(碧霄・f01409)と動き方の算段をさっさと決め、濃霧の中へ消えていこうとした所を、ロア・ネコンティ(泥棒ねこ・f05423)が引き留める。
「霧を晴らしますので、それまで息を潜めるというのはどうでしょう?」
「出来るのかい?」
「恐らくは」
 問題は精霊の気配の薄さだ。ロアは以前訪れた時、この環境の異常さを体験していた。心が有ると信じるからこそ、やるべきことは一つだ。まずはその為の障害の打破、考えた策をどう実行しようかと頭を回す。
「ロアさん。」
「何でしょうか?」
「今回に限りますが……足りないのであれば、作れば良いんですよ」
「人工精霊?」
「僕も少し試そうと思っていまして。流石にこの環境ですと、星に声が届かない。」
 幾ら精巧に造られていたとしても、それは幻像で神秘が宿りにくい。まずは試しと指で幾つか字を切り、濃い水の魔力資源から、数体の式神を作ってみせる。
「これを作るのは、久し振りでしたか。」
 水気を依代にした式神、おびき寄せる為の囮としては十分だろう。
「……」
 軽く杖を振るう。普段よりも力強く煌めく彗星に、暫し考え事をするように目を閉じ、開く。それから、暗視ゴーグルを利用し、周辺に銀糸の感知結界を張り巡らせた。

●潜伏
「さしずめ森の中でのかくれんぼ」
 作戦案を受けて予定を変更したユノとウカノは、場所を変えつつ、息を潜め、その時を待つ。互いに近くない距離を開けながら、通信符で
「好きかい?」
「……風に乗れないし、演奏も駄目だから、嫌いかな」
「私は視界が良けりゃあ、楽しいかねえ」
 軽口を叩く。暫くは我慢比べになりそうだ。幸い囮が味方のお陰で豊富。配分も前衛2、中衛1、後衛1、斥候2と悪くない。
「所で奴さん、どう動くと思う?」
「機械的な連携なら、まずは誰か一人を先行させるかな」
「その後、囮じゃなけりゃ4人で叩く。囮だったらそのまま散らばって、ついでに一報ってとこか。視界の自由が利かないこっちは下手に追えない、と。」
 ウカノが誰にともなく呟いてから、酒を煽る。濃霧をどうにかした一瞬を狙い撃つ方が確実なのは変わり無さそうだ。

●静かなる状況進行
 2桁後半の熱源体反応を感知し、メイド人形3班はそれをデコイかどうかを確かめる為に1体を前に出した。小火器を搭載した掌大の四つ足が、先行したメイド人形の足に穴を開けるも、すぐに切り払われる。スコープ越しに視認した他の12体がそれをユーベル・コードであると見抜き、まず12機の小型機械の召喚をキャンセルする。
 すぐさま班員全てに囮であることを通達。しかし、他にも妙な熱源反応、戦闘能力は無いが、水を吹きかけてくる不定形生物、物陰から隙を見て機械腕を伸ばし、攻撃をする中型機械、メイド人形部隊は軽く混乱していた。
 感情は無くとも、機械式でない疑似魔法生物である以上、理解し辛い思考の揺らぎ、つまりストレスは発生する。何度も水をかけられ、不快感を覚えた1隊が耐えきれず突出。不定形数体を切り伏せ、それの主を探すと持ち場から離れた。包囲し囲む筈だった陣形が歪になる。
 地の利は有ったはずだが、相手を視認出来なかったのが災いしたと、隊長格は冷静に分析し、頭部に奔る幻痛を抑えるように、額に手を当てた。まずはこの小型機を片っ端から潰すしか無い状況に、逸るのも無理はないかとストレスを早々に切って捨てる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

逢坂・宵
◆アドリブ歓迎

『暗殺』『人形の囁き』がなかなか厄介そうですねえ
はぁ、15体しかも5人組3チームですか。数は暴力、連携は敵と申しますが……そのとおりで、なかなかに厄介です
ですが、数があるなら削ればよいだけのこと。欠ければ連携も難しくなりましょう
……そうですよね?

「属性攻撃」、「全力魔法」、「高速詠唱」、そして可能なら「おびき寄せ」も使っていきましょう
「2回攻撃」も有効に使っていけたらいいですね
『天撃アストロフィジックス』で各個撃破を狙いましょう

「第六感」「封印を解く」もなんらかの形で役立てればいいのですが
それにしても……実に奇妙な迷宮ですね
拭えない違和感を覚えます


ロア・ネコンティ
【共闘・アドリブOK】
【WIZ】濃霧をはらう

機械鳥の楽園、知ってます。魔法と機械で編まれた動物達が暮らす場所。彼らにも心や魂はあるのでしょうか?たとえ無いとしても僕はあると信じたいのです。異形の悪は楽園追放し守らねばなりません。

蒸し暑い……,。僕暑いのは苦手です。そしてこの濃霧。これが魔力由来の超常なら、こちらも魔力由来の超常を起こせるはず。

周りを鋼糸で囲い【武器受け】で敵が来ても対処できるようにした上で、水と風と雷の精霊を使役し【全力魔法・高速詠唱・属性攻撃・範囲攻撃・マヒ攻撃】【エレメンタル・ファンタジア】で濃霧を集めて雷雲を作り、雷を落とし人形達の回路を焼いて動きを鈍らせます。


御倉・ウカノ
アドリブ歓迎
判定:POW
濃い霧のせいで視界が悪いうえ、相手はあたしの半分もいかない位に小さく、複数いて連携もばっちりたあ厳しいね。
相手の襲撃に備えつつこっちも連携をとることが重要なのは間違いないが、人形たちの連携をどう崩していくか、これも考えなきゃね。
そうなると、一番わかりやすいのはとにかくチームの一人を撃破することかね。多少無理にでも近づいて、先の先でもって【剣刃一閃】による撃破を狙っていこう。注意するべきはほかの人形たちによる妨害だろうね。特に【人形の囁き】は厄介だね。一体目に【剣刃一閃】を使った後は、純粋な剣技のみで挑んだ方がいいだろうね。



●蒸気の鷲
「上手く行ったぜ!」
「ほぼ貴方のお陰ですが、これはもう撹乱の粋ですね。成功です。少し1隊の足が早い、でしょうか?」
「浮き足立ってるなら応戦するよ?」
「準備は?」
「良いタイミングになりそうです」
「他は視認次第、此方も叩きましょうか。」
 或いは作り上げる人工精霊の力次第で、地形ごと燃やす事も出来るかもしれない。考えながらも、屋内であることを考え、今回は見送った。ロアが魔法陣代わりに張った銀糸に力を通していく。宝珠に鮮やかな黄色が灯る。
 甘い紅の果実の香りに誘われて、絹色の星を行こう。少年は南十字に向かい、星の童謡を歌うが良い。孔雀の星はすぐそこに。鳥捕り人は振り返ればもう居らず。かささぎの群れを越えれば、三角標はすぐそこに。もし、全てが夢であったなら。
「僕は、人の幸せの為に何が出来るだろう」
 高速で紡がれていく幻想を手繰る祈り。その切符に呼ばれる様に、汽笛が鳴る。鷲を模した蒸気機械の人工精霊が、全身から煙を吹き出しながら、濃霧を裂き、空を舞う。爪元に雷雲を型作り、迷宮に豪雷の雄叫びが響き渡った。ロアの全ての魔力を込めたそれが、先行したメイド人形4体を焼き、機能を停止させた。
「ようやくかねえ」
「ようやくだね」
 雷雲が去った後は、あの疑似天体と映像媒体による偽の空が広がっていた。ウカノとユノが本格的に前に出る。

●マジック・クラック
 機能停止させた内の1体を宵が封印解除を利用し、仕組みを経験と知識に基づいた勘で機能復帰を行う。封印とは封じ込めること、媒体に魔力を封じ込めて疑似魔法生物は作られると言って良い。機能復帰したメイド人形に仲間に通信を取り、戻るように命令を出した。宵は残った分隊一つを潰しにかかる。
「あちらですか。使いやすい目で助かります。」
 クラックが終われば物陰に隠れ、 大体の方角が分かった所で詠唱を始める。あの様な形で顕現するのは此処の魔力特性故だろうか。非常に興味深い。
此処に天体はなく、されど彼等の星は幾度も廻る。穏やかに、緩やかに。星降る夜は遠く、せめて、雫に覆われた貴方に焦がれましょう。太陽は地を照らし、月は宙に輝き、星は天を廻る。そして時には、彼らは我々に牙を剥くのです。
「さあ、宵の口とまいりましょう。」
 高速で紡がれ、顕現する人工精霊、蒸気式のアストロラーベを模したそれが、水気を多量に含み、身を覆う。激しく機構を動作させながら、周囲に190の水星の隕鉄を纏い、普段よりも遥かに威力の大きいそれらが流線を描いて、クラックしたメイド人形の行く先の地面に穴を開けた。3体が50か60の水星の群れに砕かれ、消し飛ぶが、1体が視認し、対応する。すぐに熱源から宵の反応を追い、単騎で特攻を仕掛ける。
「撃ち漏らしの処理は私の仕事ね」
 遠くない場所に居たヘルミナが脊椎から機械の槍を展開し、メイド人形の腹を穿つ。
「有難うございます。」
「此方こそ。最後の囮役、有難うございました。」
 あえて分かりやすい位置に宵に居て貰い、敵に発見させやすくした所をヘルミナが狙い撃つ。残る敵は戦闘継続が出来る4体と、戦闘続行が怪しい4体となる。

●バード・ウォッチング
 前方に出たウカノとユノは役割をさくさく決める。囮と妨害をユノ、攻撃役がウカノだ。まずは視認、とは言え、先程の探査のお陰で相手の大まかな位置は割れている。通信によると2班は壊滅。目標地点に到達した所で、索敵を開始。
 どうやら何だかんだメイド人形の部隊は80の小型機械をどうにか無力化したようだ。物陰に隠れ、誘き寄せる様に、剣の竪琴を指で弾く。弾かれた弦からは優しい音色が響き、周囲を音の波紋で満たしていく。音の波紋に釣られて、痺れを切らしたメイド人形が1体飛び出して来た。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」
 ウカノの挑発の様な一言に、メイド人形からアンカーボルトが射出され、それを剣で弾き、ワイヤーを巻き取って近付いてくるメイド人形にすれ違いざま、斬撃を浴びせる。片腕が飛んだ。ユノは曲目を変えず、歌声を重ねていく。鋼の鳥が自由気ままに空を舞う、彼方への契りの歌、気ままな彼らと共に行く、盟約の歌。
「遊んで、おいで?」
 メイド人形を視認した鋼鳥の群れが、刃のような翼を持って、慈悲無くメイド人形を蹂躙し、両断する。気ままな鋼鳥の無慈悲な戯れ。ユノの周囲に滞空し、指揮役の一羽がユノの肩に留まり、羽衣を揺らした。
 残ったメイド人形の3体が、じりじりと機を伺う。正直此処に至っては3体で前へ出て消耗を計るべきだろうかと、隊長格が迷い、それが仇となる。目にも留まらぬ神速の剣閃が、メイド人形の胴と腰を別つ。ウカノがトントンと太刀の峰で軽く肩を叩く。血が出ないので血振るいも必要がない。撃破をユノに伝え、動く。
「見つけたよ」
 地形利用で高い木に程よく昇り、物見、急降下のスライディングの様な飛び蹴りから、鋼の鳥がメイド人形のセンサーを破壊する。
「あいさっと」
 軌道も拍子も不規則な千鳥足の踏み込み、大仰に見えて繊細な太刀筋、上から来ると思えばふらりと軌道を変えて横に太刀が見え、止まったと思えば、次には鋭い太刀筋が黄泉の道を指し示す。酔剣と名付けたウカノの術理が、的確にメイド人形を解体する。
 残りの1体、隊長格は覚悟を決め、決闘を申し出るように、2人の前に進み出る。ウカノが察して太刀を鞘に仕舞うと、仕込み箒を逆手に構えた。粘つく熱気の中に、一陣の風が吹き、木の葉が飛ぶ。
 契機に踏み込み、振り抜かれる2つの刃。10分の1秒の壁を越え、逆手から抜かれた仕込み刀を制し、アンカーを打ち込もうとした二の手より早く、ウカノの剣が、メイド人形の身体を切り裂いた。
「相手が悪かったな……ま、覚悟は良かった。覚えておこう」
 残った行動不能の4体は残りのメンバーが探し、きっちり機能停止させたようだ。後は残った主人を倒すのみ。一段落と、多めに酒を喉に流し込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『迷宮温室の女王』

POW   :    百裂蔓撃
【髪のように見える無数の蔓】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    捕縛液噴射
【腹部の食人植物】から【刺激臭のする液体】を放ち、【空気に触れると凝固する性質】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    女王の花蜜
レベル×5体の、小型の戦闘用【昆虫型モンスター】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神楽火・夢瑪です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●温室の主
 メイド人形を倒した所で迷宮変化の音が止む。濃霧が晴れたフロアを猟兵が探索する。程なく、それは見つかった。
 獲物を誘うような甘い香り、蔦で編まれた髪と蝶々の髪飾り、茎色をした上半身、胸からは毒々しい赤色の大輪がかちかちと牙を鳴らし、今か今かと獲物を待ち構える。
 肩から生えるのは異様に長い腕、その先は異様に大きな掌と指、薔薇色の長い爪。腰半ばから球根を思わせる茶褐色に変容し、それを思わせる太い足と、枝分かれした根の触手が蠢いている。
 女性型の頭部が囁くように、微笑の音を落とし、猟兵を捉えた。

●状況整理
 迷宮温室の主の撃破となる。濃霧は晴れ、メイド人形の残骸も周囲には無い。精霊の気配は薄い代わり、魔力資源の濃度は濃さはそのままだ。また遮蔽物は変わらず多い。何か有ればすぐに身を隠せるだろう。
 温室の主、正式名称は迷宮温室の女王。全身は魔法薬の原料となるため、持ち帰ることが出来れば良い稼ぎになるだろう。また、何か食べさせる余裕が有れば何か食べさせてやれば、それが媚薬の材料として高値で売れるだろう。そんな余裕があるのかは別として。
 気を付けるべきユーベル・コードは女王の花蜜だろう。このオブリビオンの攻撃方法は触手による打ち付け、巻取り、腕による引っ掻きだが、そこに小型の昆虫型モンスターが増えれば距離を詰めるのが困難となるかもしれない。
 猟兵は頭の中で軽くデータを纏め、最後の仕事に取り掛かる。
逢坂・宵
◆アドリブ歓迎
◆共闘描写歓迎

迷宮温室ですか……
精霊の気配が薄いということは、彼らの手助けはあまり期待できなさそうですね
その代わり、魔力資源が濃いのならば
濃霧も晴れたことですし、星魔法はなんとか使えそうです
精霊術士としては複雑ですが

警戒すべきはやはり『女王の花蜜』『捕縛液噴射』でしょうね
メイド戦でも見受けられましたが、相手には地の利があります
身を隠せそうな場所が多くあるのは助かりました

『高速詠唱』『全力魔法』を用いて
天宙アストロメトリーで仲間のサポートに回りましょう
出来そうならば『第六感』『おびき寄せ』で、仲間が戦いやすそうなところに敵を誘い出したいですね



●見敵
「なかなかグロテスクな敵ですね! 見た目だけは嫌いじゃないですけど、臭いのは好みません。やっちゃいましょう。」
「マシンゴーレムみたいなのを想像してたけど、成程な。いや残念とか思ってな……って画家さんの感性は分かんねえな。グロテスクなのが良いのか?」
「……全身魔法薬の材料だそうで。標本に出来るでしょうか?」
「それ、後でサンプルとして検体くれねえか?」
「私もスケッチをお願いしたいですね……」
 ヘルミナ・イェルソン(夜を飛び越える・f02267)が少し浮かれた口調で切り出すと身を隠したイクス・ヴェルデュール(春告のひかり・f01775)と逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)がそれに反応し、若干不謹慎な会話を繰り広げ始める。
「悪いけど、全部盗ませてもらうよ。お零れだけになっても恨みっこなし。どう?」
 遊びのない表情で、ロア・ネコンティが提案をする。流石に少し空気が冷えるが、彼がそうした行為で最後に行う事は寄付であり、今回はその資源と引き換えに、この迷宮の保護を願い出る心積もりらしい。
「では、早い者勝ちとしましょうか」
「俺は少しでも貰えりゃ、それで良いんだがな……分かった」
「どうあれ、インスピレーションの元になってくれるなら私はそれで構いません」
「終わった? 先に行くよ」
 涼やかな風の様な声色で、ユノ・フィリーゼ(碧霄・f01409)は、その一言を皮切りに駆け出した。階層を女王の支配領域と考え、油断なく周囲を警戒し、亜熱帯の森を走る。
「あたしもだな」
 4人の会話を少し呆れた様子で聞きながら、御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)が軽く酒を煽り、目標に向かって、ふらりふらりと不安定な足取りで向かっていく。見た目に反し、その歩速は恐ろしく早い。
「遅れは取らない」
 ロアも宝に向かい、小さな身を跳ねさせた。
「後ろはお任せ下さい」
「私は前よりの中衛くらいかしら。アウトレンジから少しずつ削りましょう」
「俺もその辺りだな。必要ならもう少し前に出るが」
 イクスは電脳ゴーグルを起動させ、ヘルミナはガジェットを展開し、2人の後を追う。
「星魔法は何とか、と言った所でしょうか……精霊術師としては複雑ですね」
 機械の森で、彼の様子を見ていた時と同じ様に、星杖を軽く振る。それから、宵は軽くため息を吐いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

イクス・ヴェルデュール
◆アドリブ歓迎

ここの主って事だし機械仕掛けのゴーレム辺り想像してたけど
成る程、そっち方面か!
いや別に残念とか思って無い…って
え、全身魔法薬の材料?
…サンプルとして検体貰えねぇか交渉してみよう

基本的には仲間が自由に動く為のサポート
あともう一歩とか余裕がありそうな時は深森の牙で攻撃に

遮蔽物に身隠しつつ、電脳ゴーグルで敵をスキャン
構成してる物質が何なのか調べてみる
何で出来てるのか分かれば、それが弱点に繋がるかもしんねぇしな

最大級に厄介な女王の花蜜は視認次第、
即座にミレナリオ・リフレクションを展開。相殺を狙う
目には目を、虫には虫を…ってヤツだな
ここが踏ん張り所
何としてでもお前の攻撃凌いでみせるぜ



●組成走査
 イクスは、ある程度距離を縮めた所で、遮蔽物の影に隠れ、起動した電脳ゴーグルで、敵の構成物質を紐解いていく。視界に次々に表示されていく基準値、先の全身魔法薬の材料という記述から、正体は割と呆気なく割り出せた。
「偉そうな二つ名が付いちゃいるのが、要するに巨大化したマンドラゴラか! 根が露出して人型取ってるってなると、アルラウネの方が正しいか?」
 成分表は良く有るとは行かないまでも、発表がまちまちあった物とほぼ同様。しかしこの大きさならば、やはり検体回収はしておきたい。貴重に類する素材の一つだ。
「大体植物、上半身は水分多め。茎ってより、不定形生物……スライムみてぇだな。そうすると、胴体部分の口は取り込んで中でじわじわと消化か、噛み砕くのは養分を早めに摂取する為で、この辺りは人間と同じっと……」
 つまり上半身は幾ら切ってもすぐに生え変わる。幾ら潰しても再生する便利な生体思考回路と、伝達神経系くらいはありそうだが、本体は腰から下の根の部分だ。 通信符でその事を味方に伝え、了承を聞くと、自身も深森の牙を携え、機を伺う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユノ・フィリーゼ
霧は晴れて人形も居なくても、
このフロアは間違い無くあの女王が支配する領域
温室に茂る植物達が牙を向く可能性も棄てきれない
油断はせず、戦局の見極めは慎重に
志同じ仲間と呼吸を合わせて行動を
……昆虫の群れを喚ばれる前に何とか出来たら、いいな

力ではきっと貴女に敵わないでしょうけど、
…速さなら負けないよ?
先よりもずっと自由に動く身体を武器に、
見切りや残像で翻弄し誘惑し攻撃と回避の繰り返し

あの触手や長く大きな腕の一つでも、
剣や衝撃波の刃で傷つけられたらいいんだけど

好機がくれば腹部の食人花目掛けて刺棘の円舞曲を放つよ
お腹を減らしているのならこちらはいかが…?
女王陛下のお口には少し刺激が強いかもしれないけど、ね



●果てなき蒼穹
「あたしは近寄って斬るくらいしか出来ないからね、有難いよ」
「口はどう?」
「どうだろうなあ。一応、痛覚神経は通ってそうだが……」
「ありがと」
「そっちは僕が狙おう」
「……手加減、しないよ?」
「泥棒猫の自称は飾りじゃない」
「あたしと後ろの2人は、精々、切れ間に大きいのを狙うかね」
 通信付を介して入ってきた情報を聞きながら、3人が目標地点で早々に立ち回る。蔦の打ち付けをロアが払い、雑把に振り回される両腕をユノが切り落とす。水のような物が滴ったかと思うと、半流動が元の身体に引き寄せられるように戻り、元の腕を再形成。同時に、微かに耳に落ちていく葉擦れのような微笑。無駄と嘲笑うかの様な、傲慢な表情。
「楽しいかしら、女王様」
「クリケット程楽しいとは思わないけど」
「フラミンゴを使うのかしら? なら、許せないわね」
 振るわれる腕を銀剣の一閃が切り落とし、反対から迫る根の打ち付けを、1対のダガーが切り払う。
「その剣、良いな。朝と夜の彼みたい」
「空が好きかい?」
「勿論」
「僕は見上げるだけだね。盗人だし」
「……夜鷹は出会えたよ?」
「万人の幸福を願える程、僕の心は綺麗じゃない。あんな鷹が居たら、身包みを剥ぐだろうね。それで反省したら許すかもしれないけど」
「なるほど、義賊は大変だね」
 会話を交わしながらも、互いの剣が、振るわれる根と腕を切り払い、縦横無尽に戦場を舞う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロア・ネコンティ
【SPD】敵に盗み攻撃、戦力の半減狙い

女王の全身は魔法薬の原料。全身がお宝。ならば盗み尽くす。泥棒猫の本懐だ。

精霊の気配が薄い以上、物理攻撃と速さに頼る。両手にタガーを1つずつ持ち、前線に出て狙うは蔓。[早業・盗み攻撃]の[シーブズ・ギャンビット]を用いて蔓をタガーで切りながら盗む。捕縛液は避けながら近づき、花部分を宙返りで蹴り上げ軌道をそらす。怯んだら切り取り盗む。昆虫の群れが現れたら一旦退がる。但し4本脚で立ち、尻尾を立て、瞳孔を開かせて最速で動けるように。ほかの猟兵と連携しながら王女を狩っていこう。

僕が手に入れた魔法薬の材料は、あの楽園守る事を条件に学園に寄付する。それが僕の本懐。



●剣の円舞
「……お手をどうぞ、女王陛下?」
「パーティだろう。曲目くらいは教えて欲しい」
「……ワルツかな」
 ただし主役は風神の名を冠する銀剣と、相反する空の色を再現した1対の鉱石製の短剣、切り払った腕の再生が終わる前に双方が跳躍する。更に高い木々を蹴り、影さえも置き去りにしようと跳ね回る。囲い込み、剣を振るう。一閃、二閃、三閃。生え変わった腕が届く前に切り落とし、根の払いを避けながら、ユノは時に剣から衝撃波を発生させる。
 曲目はさながら剣の円舞。ソードダンスに旋律はなく、剣撃音と僅かな手応えの後、刃筋の軌跡を秒もない時間の間残すのみ。再生の間を徹底的に与えず、花を模した口が怒りに口を開く。それより上は磨り潰される様に減少する。
「空腹なら、刺激的なのも良いでしょう?」
 本来ならば八方20メートルの敵に扱うそれを、一極集中すればどうなるか。目標を固定され、生成された棘の弾丸が、迷宮の主を包囲し、一斉に牙を剥く。花口が怒りにかちかちと牙を鳴らし、生物のように威嚇の不気味な声をあげる。再生が終わるより早く、根から生成された無数の蔓が、ユノに襲いかかる。
「女王陛下には少し、刺激が強かったかしら?」
 上下左右、全方位から迫りくる無数の蔦を銀剣で切り払い、残像で位置を錯覚させ、或いは紙一重で身を捻り、あらゆる方法を用いて捌いていく。
「なら、女の子にはなれないね」
 ユノが切断しきれなかった分を更に速度を上げ、閃光の速度で半ばから切り落とす。唸りの様な耳障りな声を上げ、腹部の食人植物が異臭の液体を放とうとするも、それより早く、這い寄って、宙返りしつつ蹴り上げ、軌道を逸らす。一瞬の間に、蔦と根に包囲されるも、ロアは怯まず、花弁を口ごと、強引に切り取った。手の中で暫く生物の様にのたうち、先程と同じ粘液を吐き、僅か、ロアの速度が落ちた。
「無茶するね……」
 それを全中衛4人で切り払い、退路を確保。通信符から呪いの声。
 流星は古来より、人々の望みをその身に受け、そして時には雨となって人々のもとへ降り注ぐ。
「さあ。あなたに光を捧げましょう。無茶は、あまり関心しませんよ?」
 架空の空に落ちる流れ星、煌めきを宿した火球が、ロアに優しく降り注ぐ。空気に触れ、固形化しようとした粘液が浄化され、塵に戻る。
「有り難う」
 地を叩き、根が揺れ動く。音に応えるように数十の小型昆虫型生物が召喚されていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

御倉・ウカノ
アドリブ歓迎
判定:WIZ
さて、こいつが迷宮の主か。遮蔽物が多いのは相変わらずだが、霧も晴れてるし奇襲を喰らうってことはないだろうね。
あたしは寄って切るのが仕事だからあまり離されたくないが、『女王の花蜜』は厄介だね。流石のあたしも集団で襲われたら離れざるを得ないからね。そうなると、対策はそもそも召喚させないか、速攻で虫共を片づけるか…。此処は速攻で片づけることにしようか。『フォックスファイア』を限界まで作ってとにかく数を減らそう。その後は他の連中が突っ込むか、あたしが突っ込むか、どっちかになるだろうね。どちらにせよ、相手の思惑通りに距離を離させないことが重要だろうね。



●豊穣の祓
 うだるような熱気とともに召喚される虫が集待っていく中で、早口気味に祝詞を歌い上げる。
「高天原に神留まり坐します。皇親神漏岐神漏美の命を以ちて、豊葦原の瑞穂の國。五穀の種津物の御霊飯成五社大明神へ鎮まり坐します。稲倉魂命、大巳貴命、太田命大宮姫命、保食命……」
 狐火が勢いを増す。神楽を舞うように大太刀を振るい、血気に盛った虫を正確に切り落とす。祝詞は続き、狐火がぽつぽつと、勢いを増していく。
「恐み恐み申せば十穀の種津物五穀成就致ずと云ふ事無し、祈る處願ふ、處守り幸へ給ひ。
無上霊寶神道加持……豊穣の為に、焼き祓おうか。」
 言葉と共に20の種火が更に勢いを増して、大きく灯る。召喚された狐火が豊富な魔力資源に触発され、祝詞の増幅効果も相まって瞬く間に周囲を焦熱地獄へと変えていく。それらの狐火を自在に操り、ウカノは剣を引っさげて、向かい来る物全てを焼き払いながら、切り落とす。まず熱気に耐えきれなかった虫が火の粉に巻かれて焼かれ、それでも耐えた虫を、狐火で追い回す。中途に出てきた根は、大太刀で切り払う。水分でできていた上半身が蒸発し、再構成の暇も与えない。穴の開いた湿った根が瞬く間に乾き、しかし改めて土壌に根差し、水分を巻き上げる。
「……やり過ぎたかね?」
 祝詞は知っていても、そちらの知識には疎い。祓いの側面も持っているが豊穣祈願の文が此処までの惨状になるとは思いもしなかったようだ。
「根が乾いたマンドラゴラなあ……加工の手間は省けるんだが」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルミナ・イェルソン
なかなかグロテスクな敵ですね!見た目だけは嫌いじゃないですけど臭いのは好みません。やっちゃいましょう。

女王の花蜜対策は【ヴァリアブル・ウェポン】手数重視のナイフです。マニピュレーターと共に八本出ますので手数としては良いかと。
かつ、女王からの攻撃は【メモリ配分・分析】で避けていきます。上手く攻撃を誘導して接近するか、他の方が攻撃しやすいようにしたいですね。
ええ、速さには多少自信ありますので。
近接が取れたら【ヴァリアブルウェポン】威力重視の大剣で腹部の食人植物めがけてぶちかまします。相手の妨害手段から優先的に潰したいですね。



●共食い
 イクスの呟きと同時に、地に籠もった女王が、焦熱地獄に耐え得る昆虫を呼び出そうとするのを、真っ向から迎え撃つ。
「女王の花蜜は解析完了ってな。お膳立てしてもらったんだ。凌がせて貰うぜ!」
 虫は主に翅の付いた甲虫型、主の構成要素を解析、同じ波長のユーベル・コードによって、イクスが召喚した虫と、女王の召喚した虫同士での食い合いが始まる。結果は拮抗する実力同士による共食いだ。焦熱地獄で展開される生存競争。先にあるのはどちらも同様に命を落とすという結末のみ。
 混乱の中、根が地中を移動するのを、猟兵は見逃さなかった。しかし移動速度は早く、焦熱から逃れた辺りで再び昆虫を召喚し、事ある毎に根から蔦で打ち付けを行う。逃走を妨害するのは難しかった。
 新たに召喚された虫をヘルミナが8本のマニピュレータに持たせたナイフで手早く撃ち落とし、切り刻み、召喚した狐火を引き戻し、もう一度、虫を追い回して焼き尽くし、伸ばされる蔦と根をユノとロアが薙ぎ払う。イクスは同種の共食いが終わるのを見届けてから、仲間に合流する。

●思考加速
 回復が終わったのか、上半身が再構成された所を、ヘルミナが生成される蔦を思考加速による超スローの世界の中で飛び込んでいく。止まったように見える蔦を避けながら、ガジェットに変形を指示、蒸気を動力とした根を掻き切る為の刃を覆ったチェーンが、連立回転し低音の唸りを上げる。まずは伸ばされた腕を斬る。次にそのまま回転を加えて首、一度着地してから、振り上げて片腕。すぐに、という表現が的確な再生を置き去りにして、根を根本から幾つか掻ききると、残った根が藻掻くように踊る。此処で処理限界をサイバーアイが伝え、無数の蔦が襲おうとした所で一度身を退き、察したように飛び込んできたウカノが狐火でそれを焼き払う。
 許容一杯まで使ったメモリの放熱を宵に頼む。星が飛来し、虫が召喚されたのをイクスが同様の手順で相殺する。ユノとロア、ウカノが再生された上半身を剣撃と熱で磨り潰す。女王としての威光は既に、皆無と言って良かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

逢坂・宵
さてさて、総仕上げとまいりましょうか
いやはや、女王というだけあってお強い
……ですが、猟兵も負けていないでしょう?
最後の手番といきましょう
……標本にできそうな部分が少しでも残ればいいのですが

『属性攻撃』『2回攻撃』『高速詠唱』『全力魔法』を用いて
『天撃アストロフィジックス』で攻撃します

雲がかかるなら、星を作ればいいのです
魔力資源は幸い豊富にありますからね
あなたの迷宮を星で照らして差し上げましょう

仲間との連携も密にして
お互い効率的に戦えたら


ユノ・フィリーゼ
みんなの疲れもそうだけど
出来れば此処もこれ以上荒らしたくないしね
あともう一押し、頑張ろうか

根の部分を狙って刺棘の円舞曲を放ちながら、
一気に間合いを詰め剣戟を見舞う
敵の攻撃は躱し、受けた傷は生命力吸収で補って
追撃の手は決して弛めないし止めないよ

敵が地に潜る素振りを見せれば、
地表に縫い付ける様に根の一部に剣と針を突き立てて

また、逃げるの?…女王とは名ばかりかしら
その名は最後まで気高く堂々と戦い抜くものにこそ相応しい
…今の貴女には何一つ、当てはまらないね

憐れむような笑みを向け、挑発的な言葉で煽る
再生の暇はもう与えない。どこにも逃がさないわ
…楽しい時間はもうお終いよ
さぁラストダンスと、いきましょう?



●星成の追走曲
「さてさて、総仕上げと参りましょうか」
「何かするなら、合わせるよ」
「では、座標の固定と、今暫くの時間稼ぎを」
「了解。あともう一押し、頑張ろうか」
 通信から仲間の返事を聞いて、ユノが剣舞を継続する。今までの疲労はこまめに回復してくれるだろう。根の半分をごっそり失った女王は包囲された状況をどう思ったのか、全方位に蔦を伸ばし、生成し、振り回す。ユノがそれを切り払いながら剣舞を舞う。
「……楽しい時間はもうお終い。さあ、ラストダンスといきましょう? 」
 せめてもの慰めに、もう一度手を撮ろう。振り回される蔦を切り払い、再生された身体を地を蹴り、脇口から銀剣を振り上げ、両断。自由落下を捉えに来た片腕を、反動を付けて振り抜いた。縦に裂けた腕の合間から地に足を着く。狙い澄ましたかのように振るわれる蔦を、瞬時に逆手に持ち替え、片足を軸に回転、衝撃波を伴うそれが、蔦を千切り払う。腕の再生が終わらない内に強く地を蹴り、正面から思い切り胴を薙ぐ。生命力が強いのだろう、上半身を削るだけでも、自身の体力が回復していく手応えがある。再生の隙など与えない。これより以後は、嵐となるまで剣を振るうのみ。女王は勢いに押され、防御に蔦を振るうのに精一杯となっていく。
 一方で体力が加算されているユノは、攻撃の手を全く緩めない。切り払って強襲し、再生が行われる不定形部分を潰す。追撃が来る前に退き、別方向から鋭く切り込む。次の瞬間には別の位置へ。瞬間で立ち位置が変わる様は、錯覚を覚えても良い程の速さだった。繰り返せば、幾重もの白銀の軌跡を置き去りに、次の剣閃が刻まれ、折り重なっていく。時間稼ぎはこの程度で十分だろうか。やけに落ち着いた心境で、通信を待つ。
 宵は後方で支援を細かにこなしながら、星杖と魔導書を見つめ、足元に描いた大型の、複雑な魔法陣を見つめる。人工精霊は先に試した通り、この環境下では可能だった。では、星を作るのはどうだろうか、魔導書を捲りながら、その可能性を考えて行く。水気は豊富であり、まずはこれを更に純化させ、必要な物を土気から抽出錬成し、それらを固め、靄状にする。これを時間加速させることで、重力崩壊を起こさせ、純化された水気の衝突が中心部で起こる状態にして、いわゆる、恒星という極めて物理的な天体が完成する。
 この時点で精霊が居ない環境であれば実現せず、今回の状況であればこそ、出来る行いと言って良い。気の遠くなるような時間加速、ほぼ手動で各物質の抽出、合成を行い、その被害を超局所に限定するという非人間的な行いを、魔法陣の補助によって、実現させようと、宵は全力を傾けていく。
(滅多に……いえ、今後試せる機会も、恐らく無いでしょう……)
 どちらにしろ星魔法の魔導書がまた厚くなると、穏やかな笑みを浮かべ、術式を進行させていく。
 時よ進め、針よ進め、遥か最果てまで届く尊き光、遥かな空に輝く恒星の、二度輪をかけて小さき靄は、九字三度、飛んで七と二と六を十度越え、四日目の夜、鍵の牛に至るべし。六日目より後、人の営みに、太陽は地を照らし、月は宙に輝き、星は天を廻る。そして時には、彼らは我々に牙を剥くのです。
 全身を多量の汗が伝う。偽の空の下、小型の靄が生まれ、超高速での内部温度上昇、重力収縮を経て、核を持った恒星が生み出された。イクスが電脳ゴーグルで異常を読み取ると、すぐさまユノが通信で状況を確認する。
「合図かな?」
「ええ、一応局所破壊ですが、見ての通りです。退避をお願い致します」
 後はこれを200ほどに砕いて目標座標に降らすのみ。高速二重詠唱を用いても、維持するだけでも脳内を巡る夥しい量の演算術式、星魔法の為に固めた装備一式ですら、溢れそうになり、それらが頭への激痛となって宵を襲う。そんな中でユノからの応答を聞く。
「じゃあそろそろ……合わせて動きを止めるよ。カーテンコールまで、何処にも逃さないわ」
 言うや否や、根の部分に飛び込み、数本を削る。反応するように伸ばされる無数の蔦は、始めに比べて本数が少ない。それらをユノが切り落とし、隙を付いて逃げようとする女王を、銀剣で縫い止めるように突き立てる。
「また、逃げるの? 女王とは名ばかりかしら……」
 その名は最後まで気高く戦い抜くものにこそ相応しい筈だ。ユノは女王であったものを、棘の杭で取り囲み。憐れむ様な笑みを浮かべると、ティアドロップが鈴の様に虚しく、小さな音を響かせる。
「今の貴方には何一つ、当てはまらないわね……」
 降り注ぐ棘が女王の根を縫い止め、苦悶に喘ぐように根がじたじたと動き、数本が天を指した。。
「追走曲よ。最後には……刺激的なのも、いいでしょう?」
 怒るように伸ばされる蔦がユノを取り囲み、後方に跳んだのと、ほぼ同時。
「有難うございます。座標固定。さあ、宵の口と参りましょう。あなたの迷宮に……星降る、夜を」
 星杖を大きく横に降る。術式の完了と共に、200に砕けた恒星が流星の矢と化し、残った根を焼却溶解せんと降り注ぐ。悲鳴を上げる筈の上半身は容易く蒸発し、残った半分の根を溶解させ、一点集中の結果、地に大きなクレーターを残す。焼け焦げた女王の根が、食い千切られた跡を残す。
「いやはや、女王というだけあって……お強かった……ですが、猟兵も、負けていなかった、でしょう?」
 宵は星杖で未だに痛む頭と、息が上がる身体を支えながら、少しずつ女王の元へ向かい始めた。
「……ああ言われましたが、いつも宵さんの方が無茶している気がします」
 ロアが戦闘の終了を見て、いつかの依頼とかを思い出しながら、しみじみと感想を漏らす。
「あれ、星作ってたよな……いつかどっかで理論自体は見た気がするけどなあ……」
 イクスはそこから再現性について、問題点と障害は何か、と独り言で推察を始め、魔法機械での極小の転用方法は無いかと考察を頭の中で組み立てる。
「あれ、あたしと違って意図的なんだよね。いやあ何ていうか……凄いね」
「でも、綺麗だったかな……」
「ええ、魔法研究は爆発(ビッグバン)だってことですね」
 ウカノは目を丸くしながらも酒の肴に良い物が見れたと、徳利から勝利の美酒に酔い、赤ら顔を更に赤くしていく。ユノは昼中に降り注ぐ流星という光景に、何だかんだ目を奪われた様で、率直な感想を漏らし、ヘルミナは何やらインスピレーションを得たようなハイテンションだった。

●カーテンコール(最後まで、お付き合い有難うございました。)
 ロアは自身が盗み取った女王の遺体の殆どを学園に寄付した。要望嘆願がどう受け取られるかは校長次第だろうが、無碍には出来ないだろう。元々、今回の事件が無ければ対応は遅らせたいという考えであり、結果が悪くないことは容易に想像が付く。
 イクスは、収集した根と、肥大化したマンドラゴラの一種が持つ、不定形物質を小瓶に入れ、検体サンプルとして数日放置する実験を行ってみる。結果は、根が軽く動き出し、新しい根が生え始め、その生命力に驚く様な事があった……かもしれない。どちらにしろ、少し先の話だろう。
 ウカノはメイド人形に思いを馳せる。逆手抜刀術は珍しい技の一つだ。少し鍛錬してみるのも一興かもしれないと考えながら、月夜の下で酒を煽る。
 ユノは変わらず蒼穹に焦がれ、果てを目指しながら、時折気ままに弦を爪弾くのだろう。そんな折に、熊の親子を思い出す。一曲作れないだろうかと考えたのかも知れない。
 宵は魔導書に新たな1ページが刻まれたことを密かに喜び、標本に出来そうな物を標本と出来た様だ。しかし、本体が根であったので、若干の不満が残るかもしれない。
 ヘルミナはその標本をスケッチしし、インスピレーションを絵に落とし込もうか、ガジェットに落とし込もうかを考える。
 そんな風に、仕事を終えた猟兵達は、日常に帰っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月26日


挿絵イラスト