●決戦の時は来たれり!
「諸君! あと一歩だ! 我々はついにオブリビオン・フォーミュラ、第六天魔王『織田信長』との決戦に臨む事となる!」
ゴッドオブザゴッド・ゴッドゴッドゴッド(黄金存在・f16449)は猟兵たちに告げる。
魔空安土城は首塚の一族の力により地に降り立った。
信長軍の本隊も、猟兵たちの活躍により万全の状態で島原に辿り着いた幕府軍が抑えてくれている。
もはや細かい事を考える必要はない。
猟兵たちがすること。それは信長を倒すことだけだ。
「無論、奴の力は強大! 一筋縄ではいかぬ! だが、数々の魔軍将を打ち破り、決戦の地へと降り立った諸君であれば必ずや討ち果たして見せると、ゴッドは信じる!」
そこまで語ったところで信長との戦いについてわかっていることをゴッドは語る。
「まず、信長は秘術「魔軍転生」によって、配下の魔軍将を背後霊のように「憑装」させて戦う事となる!」
今回猟兵たちが向かう場に現れる信長は秀吉を憑装させている。
隠し将として現れた秀吉だが、その力は他の魔軍将に劣らない。
信長亡き後一度は天下を取った存在のはずだが信長への忠義は変わらず、さらには力だけではなく知力にも長ける。
この戦いは困難に違いない。だが。
「サムライエンパイアが平和を手にする為にも、諸君たちの力を貸してくれたまえ!」
●フェンフェン!
魔空安土城の一室で、一人と一匹は猟兵たちを待ち受ける。
「サルよ、こうして再びお前を従え、戦う事になろうとはな」
「フェン! フェン!」
追い詰められた状況ながら、その姿はどこか楽しそうに見えた。
納斗河 蔵人
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
お世話になっております。納斗河蔵人です。
今回はサムライエンパイアのオブリビオン・フォーミュラ、第六天魔王・織田信長との決戦になります。
このシナリオでは信長は秀吉を憑装させています。
下記の通り特殊ルールがありますので、確認の上ご参加ください。
第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
以上、プレイングをお待ちしております。よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『第六天魔王『織田信長』秀吉装』
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POW : 黒槍殲撃
【秀吉を融合させた鋼鎧から無数の黒槍】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 黒粘剣戟術
【秀吉の黒粘液で全身から刀まで全てを覆い】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ : シャドウクローニング
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
イラスト:UMEn人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
トウキ・ウィンター
【むにー】アドリブ歓迎
これが最後の正念場って奴ね。気合い入れてくわよ!
事前にアリスティアーを装備して行く
そっちが仲間を装備すんならこっちも装備すんのよ!
気持ち良く喧嘩出来そうね、アンタ達とは!
先制攻撃は第六感で見切って回避しつつ、アリスティアーで攻撃を弾いたり、激痛体制と覚悟で耐えたりする
その後はアリスティアー、冥と憑依合体して、溢れる怪力で剣を叩きつけて地形や壁をぶん殴って破壊していきながら、信長に剣戟のラッシュを決める
サンキュー二人共、力がむんむん湧いてきたっ!
行くわよ信長、コレがアタシ達のオーバーソウルだ!喰らえぇぇっ!!!
海賊から何も奪えるわけがないでしょ、世界ですらアタシ達のもんよ。
小夜川・冥
【むにー】アドリブ歓迎
幽霊がいるのがそっちだけだと思わないでなんだよ!こっちだって憑装くらいできるんだよ!!バーカバーカ!(精一杯の罵倒)
先制されたらシノギお姉ちゃんに庇ってもらうんだよ。彼女が無事でいるのを【祈る】よ
相手の攻撃の隙をついてUCを発動してトウキお姉ちゃんに憑依するんだよ!
巨大なブレードに鬼火を纏わせて強化してトウキお姉ちゃんが怪我しないよう鬼の鎧のような防御膜を作るんだよ
序でに周囲のお猿さんが邪魔しないよう鬼火で【目潰し】したりして牽制とかして援護するんだよ!……あっー!避けられて城へ延焼しちゃったんだよ!?
そっちのお猿の幽霊よりわたしの方がすごい幽霊なんだよ!どうだ参ったか!
法月・フェリス
【むにー】【アドリブ歓迎】
魔王信長……君の期待する億が一の勝利さえ、ぼく達が潰して蹂躙しよう。
【ガジェットショータイム】で空中で足場になる1.5㎡の板状ガジェットを電脳空間から取り出し、『Military uniform』を広げて『迷彩』を施す。
天守閣の外で狙撃の準備を整えるけど、信長の先制攻撃がこちらまで及ぶなら、動体『視力』に『野生の勘』『見切り』と『空中戦』でガジェットを操作して回避。
『迷彩』がおかしくならないように気をつけながら狙撃ポイントまでこっそり移動。電脳空間との連結でガジェットを固定し、志蓮が地上で狙撃するのと同じ環境を整えるよ。
それにしても燃やしたい……燃やしたくない?
シノギ・リンダリンダリンダ
【むにー】
しんみりしている所失礼します
古の配下と再び共闘できる喜びは理解します
なので、その喜びを感じたままやられてください
なんなら、また最後の最後、全て炎上させましょうか?
先制してきたら、冥様をかばいつつ激痛耐性、覚悟で耐え
戦闘知識、見切りで危ない場所には食わらないようにします
シン様のシールドも活用させてもらいます
あぁ痛い…これだけ痛いんですから、そちらも相応の代償を受けるべきですね?
痛み分けって言うじゃないですか
痛みもダメージも我慢して、【赤い華火】で呼び出した刀の死霊で攻撃
フェイントかけたり、傷口をえぐったり、嫌らしい攻撃で
織田信長。海賊らしく貴方からも略奪していきましょう
我々の勝利を
野良・わんこ
【むにー】
開始時信長がフェン召喚したら「コミュ力」を使ってフェンフェンで会話
フェンフェン「待機!!」と叫ぶ。
一瞬でもひるめば御の字。その間に風閂を前面に展開。天井や壁に張り巡らせる。
そこにフェンが突っ込んでくれば勝手にひき肉になっていくという寸法ですよ!
「これがオリジナル! 風摩忍法風閂!」
フェン語で叫ぶのが通用しなくても風閂は狙う。
攻撃は激痛耐性で耐える。
フェンの処理が終われば信長に攻撃。
「念動力」と組み合わせて鋼糸の動きを読ませなくする。
ダメージよりも「鎧砕き」「武器落とし」で装甲破壊、武器の奪取を狙う。
法月・志蓮
【むにー】
億に一つの勝ち目も与えないさ。ここで確実に仕留めてやる
城に入らず、フェリのガジェットで城から数km離れた空中に足場を作ってもらって待機
先制攻撃は距離的にほぼ届かないだろうが、もし来ることがあれば『第六感』や『見切り』で捌いたり、手榴弾の『範囲攻撃』で凌ごう
トウキやシンが壁に穴を開けてくれたらスコープを通した『視力』やフェリのサポートを活かして戦闘を観察し対信長用の『戦闘知識』を集める
狙撃できる想定が出来れば『スナイパー』らしく、最大の効果を見込める『暗殺』のタイミングを『見切り』、【崩壊を招く一射】を放つぞ
虎の子の徹甲炸裂焼夷弾だ。信長なら信長らしく、燃えて死ね
※アドリブ歓迎
アリスティアー・ツーハンドソード
【むにー】【アドリブ歓迎】
いよいよ敵の総大将か、配下を装備して力を使うとか若干キャラ被ってる気がするし即座に仕留めよう
トウキに装備してもらって出撃
防御は基本的にはトウキにお任せしつつも、【ブレイクミラー】を周囲に展開して少しでも槍の勢いが落ちるようにしよう
【モルガン】は幾重に重ねた鏡を盾代わりに装備して攻撃が当たりそうな仲間をカバーしてやってくれ、いつも通り自分が本体だと思わせる【フェイント】も忘れずにね
攻撃を凌いだら【涙刃連結技】を発動!
スラスター付きの巨大な刀となってトウキの腕と融合し、彼女の連撃を強化しよう
トウキの力に冥の炎、こっちの力は三人分だ!負けるはずがないね!
シン・ドレッドノート
【むにー】アドリブOK
よくここまで暴れてくれましたね。
…そろそろ骸の海へお帰りいただきましょう。
信長の攻撃は閃光の魔盾のビームをソードビットのエネルギーをつぎ込んで中継・増幅・拡大展開、味方も含め防御します。
「乱れ撃ちます!」
攻撃を受け止めつつ、【加速する小人の剣】を真紅銃・精霊石の銃・ライフルビットに装着して攻撃力アップしたら、壁を破壊して外から見えるようにしつつ、召喚された秀吉を一斉射撃で蹴散らします。
信長本体に味方が攻撃する際は、フェイントを織り交ぜた援護射撃。気を逸らして味方の攻撃を当てやすくします。
討伐後は貴紅に騎乗して壁の穴から脱出するとしましょう。
二人くらいなら一緒に乗れますよ?
レイ・キャスケット
【むにー】
魔王?スケール小さいよ
なんたってボクが倒すべきはアルダワの『大魔王』様なんだからね
先制で襲い掛かってくる豊臣秀吉はダッシュで逃げ回りオーラ防御で耐えながら炎の壁で遮り応戦
態勢が整ったら反撃開始
連射性能に特化させた高速詠唱で放つ≪二重可変の三稜鏡≫は『着弾すると表面が石化する泥弾』
威力は可能な限り抑え石化による行動阻害や『黒粘剣戟術』の摩擦係数対策がメイン
石化も解除もボクの匙加減一つ、威力極小なのも味方ごと気にせず射撃できるようにする工夫だよ
イヤガラセ戦法はボクの十八番♥
卑怯だとか小癪だとか言われてもそーゆーの戦場じゃ誉め言葉でしかないからさぁ?
※アドリブ歓迎
緋神・美麗
【むにー】【アドリブ歓迎】
いよいよ総大将との闘いね。今回の闘いも長かったけど無事勝利して凱旋するわよ
【雷天使降臨】を使用し、先制カウンターで使用されたシャドウクローニングの小型秀吉は第六感・見切り・カウンター・薙ぎ払い・衝撃波・範囲攻撃も駆使してそのまま高速回転して生成した翼とライトニングセイバーで斬り払いながら信長に突撃する
「先撃ちされるのがわかってるなら迎撃するのはさして難しくないわよ。」
信長との間合いを詰めたらトウキさんと連携してライトニングセイバーで斬りかかる。二回攻撃・先制攻撃・フェイント・鎧無視攻撃等を駆使して全力攻撃する
「そろそろ骸の海に帰りなさい!」
魔空安土城、天守。
第六天魔王『織田信長』は座して待つ。オブリビオン・フォーミュラたる己を討たんとする猟兵たちを。
万に一つの勝ちも無かろうが、億に一つはあると見た。
弱気にも見える判断だが、状況を考えれば間違いではないだろう。
だが、万に一つの勝利くらいは幾度となくつかみ取ってきた男だ。
「フェン!」
億にひとつを掴み取る。
「それくらいは、やって見せようぞ。なあ、サル」
信長と戦うべく、天守へと急ぐ猟兵たち。
しかしそれとは別に、城の外から天守を狙うものがいた。
法月・志蓮(スナイプ・シューター・f02407)と、法月・フェリス(ムーンドロップ・スポッチャー・f02380)の夫婦である。
フェリスが『ガジェットショータイム』で作り出した足場は宙に浮かび、その時を待つ。
志蓮は狙撃手だ。信長の知覚、射程の外から狙い撃つことも不可能ではない。
もちろん、それは相対してその機会を作り出す仲間あってのことではあるが。
「フェリ、状況はどうだ」
「うん、もうすぐ皆も天守にたどり着くみたいだよ」
プライベートとは違い、二人も戦場ではそれに見合った表情を見せる。
そんなことを語りつつ状況を確認する。すると突然、フェリスが声をあげた。
「志蓮!」
浮遊していたガジェットが勢いよく浮かび上がる。その数瞬後、さっきまで二人のいた場所を黒い何かが通り抜けた。
明らかにこちらを狙った攻撃。当然、この距離で当たってやるほど甘くはない。
だが、このガジェットもフェリスのMilitary uniformによって、空中であってもそう容易く視認できるような状態ではないのだ。
「さすがはオブリビオン・フォーミュラといったところか」
「攻撃の瞬間は慎重に、だね。正確な位置を掴まれたら危ないよ」
体勢を立て直し、魔空安土城を見やれば、天守からは無数の黒槍が飛び出す。
「頼むぞ、みんな……」
その少し前、海賊幽霊船『シャニムニー』を根城とする旅団、しゃにむにーの面々は天守へと続く道を駆け上っていた。
「いよいよ総大将との闘いね。今回の闘いも長かったけど無事勝利して凱旋するわよ」
頂上を前にそう口を開いたのは緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)であった。
答えるのはトウキ・ウィンター(桃鬼・f01434)。
「これが最後の正念場って奴ね。気合い入れてくわよ!」
「そうとも、配下を装備して力を使うとか若干キャラ被ってる気がするし!」
両手剣型の愉快な仲間たち、アリスティアー・ツーハンドソード(王子気取りの両手剣・f19551)もそれに続く。
「ついに来たか、猟兵達よ。よくぞ我が策をことごとく打ち破ったものよ」
「フェンフェン!」
現れた猟兵たちに、信長と秀吉は落ち着いた様子で言葉を紡ぐ。
「名乗るまでもなかろうが、儂が第六天魔王、織田信長である」
「フェン、フェフェン!」
「魔王? スケール小さいよ」
そう告げるのはレイ・キャスケット(一家に一台便利なレイちゃん・f09183)だ。
「なんたってボクが倒すべきはアルダワの『大魔王』様なんだからね」
ふふん、と笑ってみせる。実際のところ第六天魔王と大魔王、どちらのスケールが大きいかはわからないが、その自信と戦意は伝わってくる。
「フェンフェン!」
「そう急くな、サルよ。儂がこういった輩を好むのは知っておろう。弥助や、他の魔軍将たちと同様にな」
「幽霊がいるのがそっちだけだと思わないでなんだよ!」
その言葉に反応したのは小夜川・冥(おてんぱ幽霊娘・f13189)。彼女は幽霊はテレビウムで幽霊だ。信長が呼び出した秀吉に対抗意識を燃やしているらしい。
「こっちだって憑装くらいできるんだよ!! バーカバーカ!」
「フェンフェンフェン」
「サルよ、そう笑うな。お前が儂の力となる事と、あやつのいう事に違いなどなかろう」
そう信長と秀吉が笑う。
と、今度は"お頭"たるシノギ・リンダリンダリンダ(ロイヤルドレッドノート船長・f03214)が続いた。
「しんみりしている所失礼します。古の配下と再び共闘できる喜びは理解します」
その表情からは本当に共感しているのか、掴み取れない。だがこの後に続く言葉。それは間違いなく、本気だ。
「なので、その喜びを感じたままやられてください」
「そうですね。よくここまで暴れてくれました。……そろそろ骸の海へお帰りいただきましょう」
シン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)が宣言する。
その横では野良・わんこ(灼滅者・f01856)が待ちきれない、といった表情で戦闘態勢を取っていた。
「よかろう、だが、その前に」
「フェンフェン」
信長は目の前の猟兵たちでなく、その向こう。もっと遠くへと視線をやる。
「ふむ、二人……か。サル!」
「フェーン!」
信長が命ずると秀吉は黒い粘液を生み出し、その全身を覆う。そのまま刀を抜き放つと、その視線の先へと振るう。
何人かがその意図に気付くが、間に合わない。
「まさか、この距離で!?」
「気付いたっていうのか……」
「なに、ほんのあいさつ代わりよ……実際、当たってはおらん。だが、これで警戒せざるを得なくなっただろう?」
振るった刀から飛び出したのは黒粘液の一滴。
その粘液は先に記したとおり、まっすぐに志蓮、フェリスのもとへと放たれた。命中こそしなかったがその実力の一端を見せつけた事となる。
「では、始めよう。儂とて十五倍の兵を破ったこともある男だ。五倍の敵が何するものぞ! この手腕、その目に焼き付けよ!」
「フェン!」
「フェン!」
「フェン!」
秀吉装の力、『シャドウクローニング』によって生み出されたそれらはその大きさこそ本体よりはるかに小型。
しかしその数は驚異的というほかない。一瞬にして天守は小さな秀吉たちで埋め尽くされる。
「おいおい、誰が多勢に無勢だって? 向こうの方が多いじゃないか」
アリスティアーがぼやく。一体一体の強さは大したことはない。だが、あまりにも数が多すぎるのだ。
その体を丸くし、跳ね回りながら迫りくる群れ。
それに向かってわんこは言葉を放つ。
「フェンフェンフェン!」
秀吉たちと同様に「フェンフェン」と言葉を紡ぐ。どうやら、「待機!」と言っているらしい。
だが、秀吉が信長以外の命令を聞くわけもない。言っていることは通じているようだが、秀吉たちの返事は当然「フェン!」だ。
「ありゃ、やっぱダメですかー。でも!」
ちょっとがっかりしながらも、わんこの指がくん、と動く。その十本の指先にあるものは糸。伸びた糸は天井や柱へと張り巡らされていた。
「これがオリジナル! 風摩忍法風閂! そこにフェンが突っ込んでくれば勝手にひき肉になっていくという寸法ですよ!」
言葉通り、『風摩忍法風閂(フウマニンポウカゼカンヌキ)』によって作られた結界に秀吉たちは切り刻まれ、消滅する。
中にはそれを潜り抜けてわんこに迫るものもいるが、少数ならばそれを阻むのは容易い。
「フェン! 痛いですよ!」
時々噛みつかれたりしながらも、わんこは小型秀吉たちの数を削っていった。
「こいつらもイヤガラセ戦法が得意なようだね」
「フェンフェン!」
「策と言えって? やーだよ」
天守を走り回り秀吉を誘導しながら、レイは笑う。
この数でちまちま攻められ、こちらも一体ずつ倒していては埒があかない。
適当な数が集まったところでレイはにやりと笑い、手を掲げると同時に炎の壁を作り出し、一網打尽に焼き払った。
「乱れ撃ちます!」
「フェーン!」
その横ではシンが『加速する小人の剣(アクセル・ダガー)』によって強化された真紅銃・精霊石の銃・ライフルビットといった武器を放つ。
その弾丸たちは小型秀吉だけでなく、壁にもいくつもの穴をあけていく。
「風通しが良くなりそうだね。でも、調子に乗って天井を落としたりしないでよね」
「心得ていますよ。そんなへまはしませんとも」
「フェン!?」
城の外から飛んできた弾丸に撃ち抜かれた秀吉を目に、シンは空いた穴の向こうにいるであろう志蓮へ向けて軽く手をあげてみせた。
小型秀吉たちは次々と倒されていく。もともとの生み出された数が膨大であるがゆえにそう容易く全滅はさせられていないが、このまま戦いが続けばいずれ猟兵たちが勝利する。
「フェンフェン!」
信長の背後に控える秀吉が何やら言葉を放つ。
敗北を悟ったかのような目ではない。それは次の一手を打つ時が来た、と告げる合図だ。
「うむ、猟兵たちも見事なものよ。では、次の段階へと進もうぞ。サル!」
「フェン!」
信長の言葉を待っていたかのように秀吉はその姿を薄れさせ、信長の鋼鎧と一体化する。
右手を高く掲げると、その鎧から無数の黒槍が放たれる。
通り抜ける隙間などないかの如く迫りくる黒槍。
だが、小型秀吉たちはその間を跳ねまわり、その隙を埋めるかの如く共に襲い掛かってきた!
「さあ、お前たちはどれほど戦えるかな?」
「先撃ちされるのがわかってるなら、迎撃するのはさして難しくないわよ」
そんなことを言いながら美麗は笑みを浮かべる。『雷天使降臨(モード・バラキエル)』を発動し、その天井ギリギリを飛び回っていた。
黒槍をかわし、秀吉たちを薙ぎ払う。天守は戦うに十分な広さを持っていたが、その速さを活かしきるには狭すぎる。
そんな中でも隙間を縫い、時に緩急をつけながら宙を舞う。雷の翼が軌跡を残す。
「冥様、私の後ろに」
「シノギお姉ちゃん……どうか無事でね!」
一方、シノギは冥の前に立ち、槍と秀吉に対する。
その背に祈りの言葉を捧げ、冥は『私が取り憑きあなたを護る(アナタガタタカイワタシヲマモル)』を発動するべく精神を集中した。
(痛いのは嫌。……でも、何もしないのはもっと嫌!)
その間にも黒槍は猟兵たちへと迫りくる。
「シノギ船長! これを!」
言葉と共にシンが展開したのは閃光の魔盾。攻撃分のエネルギーまでつぎ込まれたその盾は広い範囲をカバーしていた。
「ええ、それも活用させてもらいましょう。……それにしても多いですね、槍も秀吉も」
いかに効果範囲が広いと言えど、自分の身を守るだけでなく冥の事も守っているシノギは自然、その守りから外れる事も多くなる。急所こそうまく避けているものの、時と共にその傷は増えていった。
そして、その活躍もあってついにトウキへと力が集う。
「行くよ! トウキお姉ちゃん!」
「トウキ、ここからが本番だ!」
「冥! アリスティアー! サンキュー、二人とも!」」
トウキが声をあげる。冥のユーベルコードが発動し、アリスティアーを手にしたその身に宿ったのだ。
「力がむんむん湧いてきたっ! そっちが仲間を装備すんならこっちも装備すんのよ!」
その言葉に違いなく、三人分の力をもってトウキは進む。
黒槍はアリスティアーの従えるモルガンが防ぎ、それを突破したものも冥が作り出した防御幕に阻まれる。
迫りくる小型秀吉もアリスティアーを振るい、薙ぎ払う。
その歩みは力強く、遅くとも確実に信長へと近づいていく。
「大したものだ。遠からず、奴らは儂の眼前に迫ろうな」
「フェンフェン!」
秀吉と一体化した信長は楽しそうに笑う。
「だが、そこからが真の戦いの始まりよ。もっとだ……もっと儂を楽しませてみせい!」
そんな中飛来した一発の弾丸が信長の体を捉えた。しかし、その身体の上を滑るようにすり抜け、後方へと消えていった。
「だめだね、あの粘液はまだ効果を残していたみたい。……反撃を受けないようにまた少し動かすよ」
「くそ、あの効果を無効化するか、あるいは……」
フェリスの告げた結果に志蓮は歯噛みする。天守の壁は仲間たちの戦いによって幾分隙間を見せ、射線は通りやすくなっていた。
小型秀吉を狙うのには問題ないが、多少倒したところできりがない。やはり本命、信長を狙わなくては。
しかしその全身は秀吉の黒粘液によって摩擦を極限まで減らされ、銃弾も少し接触点をずらされるだけで無効化される。
「あるいは、摩擦がなくても効果のある弾を使うか、だな……」
ちらりと自身の持つ弾薬を確認する。一発だけ、それを可能とする弾はあるのだが……
「ねえ、志蓮……信長って、燃やしたい……燃やしたくない?」
その姿に、フェリスは平然とそんなことを言ってのけるのだった。
黒槍がその足を、腕を、体を貫く。球状に化した小型秀吉の体当たりがその体を揺らがせる。
「あぁ、痛い……」
襲い来る攻撃を防ぎ続けていたシノギだが、最前に立った彼女のダメージは軽いものではない。ついに限界が訪れたか。
――いいや、違う。そんな目をしてはいない。その言葉は弱音などではなかった。
「これだけ痛いんですから、そちらも相応の代償を受けるべきですね?」
言葉と共に現れたのは赤い手袋の死霊。手には真っ赤な日本刀。海賊であると同時に死霊術士であるシノギの『赤い華火(ハナビ)』である。
現れた死霊はその身を屈め、黒槍の隙間を縫い、信長のもとへと迫る。
「最初に儂のもとへたどり着いたのはおぬしか。だが!」
その手の刀を日本刀と打ち合わせ、滑らせる。普通では起こりえない挙動に死霊も惑わされる。
「そう容易く儂に刃を届かせる事ができるとは思わん事だな」
「あら、それはどうかしら」
続いて、雷が奔る。美麗のライトニングセイバーは雷を圧縮した剣。摩擦があろうとなかろうとその威力には違いがない。
とはいえ、信長の鎧も頑健だ。一撃で破られるようなことはなく、今は衝撃を残すだけで終わる。
「ほう、考えたな……確かにこれならば儂にも通じよう」
「へえ……じゃあ、こっちはどうかな」
炎の壁の向こうから声がする。レイは手を翳し、付与の羽衣を翻す。
辺りに魔力の弾が浮かぶ。
「ふん、その程度……」
「おっと、こちらを忘れてもらっては困りますよ」
と、横合いからシンの援護射撃が飛ぶ。威力こそ殺せても、その数の前に信長の動きが止まる。
「ぬっ……」
「集めて、集めて……その身を放て!」
炎の切れ間。その隙間を縫って魔力弾が飛ぶ。『二重可変の三稜鏡(プリズム・オブ・フェノメナ)』の作り出したその弾に込められたのは石化の魔力。その狙いはすなわち……
「狙いは粘液か! 小癪な……!」
「フェンフェンフェン!」
「ふふ、イヤガラセ戦法はボクの十八番♥ 卑怯だとか小癪だとか言われても、そーゆーの戦場じゃ誉め言葉でしかないからさぁ?」
黒粘液はその特性を失い、信長は摩擦を減らす事でとっていた戦法を使えなくなる。
「志蓮! チャンス!」
「ああ、わかってる。流石だ、みんな」
遠く離れた空の上で、変化を察知した二人が信長のもとへと弾丸を届かせる。
粘液を封じた事とその正確な射撃により、切れ間の無い攻撃を繰り出していた信長にもわずかな隙が見えた。
その隙を見逃す猟兵ではない。
「オラアアアア! ようやく気持ちよく喧嘩できそうね!」
言葉と共に殴りかかるのはトウキ。
「お猿さんに邪魔はさせないんだよ! ……あっ、床にも火がついちゃったんだよ!」
冥が鬼火で小型秀吉を払えば、アリスティアーは温存していたブレイクミラーを展開し、黒槍を阻む。
「よーし、トウキ! 存分に受けるといい、これが僕の真髄だ! 冥も行くよ!」
そしてついにアリスティアーがその真の力を開放する。『涙刃連結技(ティアーエッジ・コネクション)』によってその剣はスラスター付きの巨大な刀へと姿を変える。
「うん、任せて!」
続いて冥も操る炎を刀へとまとわせる。
「さあ、行くわよ信長。コレがアタシ達のオーバーソウルだ! 喰らえぇぇっ!!!」
「よかろう、我が全霊をもって凌ぎきって見せよう!」
「フェンフェン!」
トウキは『Rush(ラッシュ)』を仕掛ける。冥の炎、アリスティアーのスラスターによる加速を加えたそれは、重さと速さ両方を兼ね備え、信長へと迫る。
一方の信長も負けてはいない。刀を振るい、黒槍を放ち、時に篭手で殴りつけ、小型秀吉がその身を投げうち、ぶつかり合う。
戦場にはいつしか炎が燃え広がり、辺りを包む。
しかし逃げようなどというものはいない。誰もが必死に、己の全力を信長へとぶつけていた。
「おっと、わんこの事を忘れてはいませんか!」
変幻自在に動き回る鋼糸が黒槍を奪い取り、鎧の隙間を突く。この細い糸のどこにそんな力が籠められているのか、鎧の一部が削り取られる。
「この攻撃、邪魔はさせませんよ!」
トウキを狙う小型秀吉をシンが打ち落とす。
「そろそろ、骸の海に還りなさい!」
美麗が信長の鎧の向こうまで雷を届かせ、その動きを鈍らせる。
「味方にあたっても大丈夫なように威力を抑えてるんだ、近付けさせはしないよ」
レイの無数の魔力弾が黒槍の穂先を無力化する。
「オラオラオラオラオラオラァ!」
トウキの動きはさらに加速。その動きはでたらめなように見えて確実に、信長の防御を崩していく。
「ぬううううううっ!」
「フェン! フェンフェンフェンフェン!」
「トウキの力に冥の炎、こっちの力は三人分……それにみんなの力も乗ってるんだ! 負けるはずがないね!」
アリスティアーの言葉が届いたか。ついに、その剣が信長の鎧へと届いた。ぴしり、と音がする。
と、同時に秀吉が融合を解かれ、鎧から弾き飛ばされる。同時に鎧から産み出されていた黒槍が力を失う。
「そっちのお猿の幽霊よりわたしの方がすごい幽霊なんだよ! どうだ参ったか!」
冥が霊魂のままふふん、と鼻を鳴らす。
だが、信長は、秀吉はまだあきらめない!
「サル!」
「フェンッ!」
一瞬の間に小型秀吉たちは一斉にトウキのもとへと襲い掛かる!
「おーっと、そうは問屋が卸しませんよ!」
が、逆にその動きが仇となった。わんこが糸で作り出した結界はその行く手を阻み、切り刻む。
その内側で、シノギが静かに告げた。
「痛み分けっていうじゃないですか。ようやくお返しできますね」
「フェン!」
「ぐ、ぐぬっ……」
赤い日本刀が鎧を失った信長の腹を刺し貫く。
それだけでは終わらない。刀を、上へ、下へ。その傷口をえぐるように。決して離さぬように。
「さあ、最後の最後。全て炎上させましょうか」
そして、はるか遠くから放たれるのは一発の弾丸。
志蓮の『崩壊を招く一射(デストラクション・トリガー)』が信長へと届き、爆炎をあげる。
「虎の子の徹甲炸裂焼夷弾だ。信長なら信長らしく、燃えて死ね」
スコープの向こうで、志蓮がつぶやいていた。
燃え盛る炎の向こうで、信長はそれでも、両の足で立っていた。
「フェン……」
「そんな顔をするな、サルよ。奴らの方が上手であっただけの事」
そういうと、信長は猟兵たちへと向き直り、目を閉じる。
「エンパイアを滅ぼし、渡来人共のグリードオーシャンをも侵略せんという野望は断たれた。これもまた世の習いだ」
「海賊から何も奪えるわけがないでしょ、世界ですらアタシ達のもんよ」
鎧を砕いたトウキの言葉に信長は笑う。
「海賊、海賊か。海賊どもが陸の上で儂を討つとはな。これも時代が変わったという事か」
「フェン! フェン!」
「いいだろう、海賊たちよ! その船を新たな時代、新たな世界! 欲望の海へと進め、帆を掲げよ! 儂は骸の海よりその行く末を眺めさせてもらう!」
「ええ、織田信長。海賊らしく貴方から略奪させていただきましょう。我々の勝利を、新たなる世界への道筋を」
炎はさらに大きく燃え上がる。これ以上は危険だ。
「シノギ船長、トウキさん、乗ってください!」
貴紅<ノーブル・スカーレット>の上からシンが声をかける。
猟兵たちが脱出したのを見届けると、信長は炎の中へと消えた。その傍らには最後まで秀吉の姿があった。
大成功
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