エンパイアウォー㊳~勝ちを求めて
●織田信長の笑み
「遂に来たか、猟兵達よ」
魔空安土城の天守。その中央に織田信長は座していた。
城下では信長軍の本体と幕府軍がせめぎ合い、剣戟の音が信長の耳にまで届く。
それは幕府軍が健在であり、魔将軍の企みが全て打ち砕かれた証。そして、信長の元へ猟兵が辿り着いた証であった。
「さて、もはや儂に万にひとつの勝ち目も無かろうが……」
「億にひとつでもあるのならば、賭けてみるのも一興よ」
織田信長はどこか達観した様子で一人ごちる。
かつて戦国の世で覇を唱えた彼に戦況が読めぬはずもない。織田信長は既に敗北を受け入れていた。そのうえでなお、秘術をもって猟兵達に立ちはだかる。
「いいや信長様。いくら信長様だろうと、億が一つだなんて言わせねぇ」
「信長様が生きてりゃ負けはねぇんだ。なら、向かってくる猟兵を全員倒せばいい」
背後には、憑装した弥助アレキサンダー。
己が力で織田信長を護れるとあって、その気合は熱を感じるほどであった。
織田信長もその熱気に当てられたか、思わず口元に笑みを浮かべる。
果たして何の笑みであるのか。
その答えを待たず、戦いの幕は上がる――。
●戦いの前に
「ついに織田信長が出てきたねぇ。今回は相当ヘビーな戦いになりそうだ」
くるっと回ってビシィと人差し指を突き立てるテイル・スネークス。
特に意味はないのだろうが、気合が入っていることだけは分かる。
「織田信長はね。魔軍転生って秘術で、配下の魔軍将を憑装させるんだけど」
「ボクが予知したときは、弥助アレキサンダーを憑装してたね」
あの髪が超カッコイイ人ね、と尻尾の蛇を頭にのせる。
どうやらアフロを表現しているつもりらしい。
「でね。気を付けてほしいことがあってね?」
「この時の織田信長が使うユーベルコードはだいぶ攻撃的なんだ」
「絶対先手はとられちゃうだろうから、対策はしっかりと考えといてほしいな」
それこそ生中な防御では打ち砕かれてしまうだろう。
たとえ対策を十分にとったとしても格上の相手。油断は禁物だ。
「あとは……頑張ってとしか言えないかなぁ」
「ボクが出来るのは、皆を送って、グリモアベースまで戻すことだけだからね」
「あ、でも応援はしてるよ! いつでも戻せるよう、ずっと見てるからね!」
最悪でも、死ぬことはさせないと張り切るテイル。猟兵の皆には後顧の憂いなく戦って貰いたいようだ。その想いを汲み取ってか、グリモアも普段より多く光っている。
「それじゃ、張り切って……いってらっしゃい、猟兵(イェーガー)!」
黒い蛇
お世話になります。黒い蛇と申します。
今回は織田信長との戦いとなります。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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場所は魔空安土城の天守。
大雑把に言えばそこそこ広い部屋の中となります。
対策が必須のシナリオとなりますので基本的に個別でのリプレイとなります。
合同でプレイングをなさる場合は相手や団体の名前をお書きください。
また、今回はプレイングボーナスを抑えめで判定いたします。
対策が十分であっても苦戦となる可能性がございますので、ご留意下さいませ。
それでは、プレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『第六天魔王『織田信長』弥助装』
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POW : 闘神の独鈷杵による決闘状態
【炎の闘気】が命中した対象を爆破し、更に互いを【炎の鎖】で繋ぐ。
SPD : 逆賊の十字架による肉体変異
自身の身体部位ひとつを【おぞましく肥大化した不気味な鳥】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 大帝の剣の粉砕によるメガリス破壊効果
自身の装備武器を無数の【大帝の剣型】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:UMEn人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ノイジー・ハムズ
自分の城で最後の戦いに挑む、覚悟!
いいですね、いいですね!
強い貴方と戦える縁に感謝です☆
遠距離から私の黒風剣で…先制攻撃がきましたね!
ですが、攻撃の標準は、初めから私の目の前の床!
炎の闘気が届く前に床を叩き割り、フェアリーの小さな体を隠すには幾分かの猶予があるでしょう!
床の破片に命中し爆発が起きれば、煙で身を隠します!
爆風は【オーラ防御】で軽減☆
命とは花火!
楽しい戦いも、一瞬の煌めきが大事なのでしょう!
一撃に全てを込めます☆
遠距離技は遠距離から撃つとは限らない☆
煙に紛れて接近し、至近距離で全力の黒風剣です!
【属性攻撃】…エンチャント炎!【全力魔法】…炎魔法!
どちらが可愛く煌めくか、勝負です☆
「自分の城で最後の戦いに挑む、覚悟!」
「いいですね、いいですね! 私、そういうの大好きです!」
初めに信長の前に降り立ったのは、ノイジー・ハムズ(あたまもかるい・f14307)であった。高揚しているのか頬を薄ら紅く染め、せわしなく宙を舞っていた。視線の先には織田信長。ノイジーを前にしても座したまま、冷静にノイジーを眺めていた。
一尺に満たぬ体。背中に生えた四つの羽は幻想的なまでに透き通り、戦いには向かぬ体にも思える。しかし呪術法力もなしに空を飛び、騒ぎながらも少しずつ間合いを取る様は歴戦の猟兵のそれである。信長は不意に立ち上がり、改めてノイジーに相対する。
「なるほど、妖の類か。初めの相手が妖とは、儂も奇縁に恵まれておる」
「奇縁ですか! なら、強い貴方と戦える縁に感謝です☆」
信長が薄く笑い、刀を構える。既に二人の距離は近接の間合いからは遠く離れていた。
しかしノイジーも油断はせずにフェアリーズソードを握る手に力を籠める。いや、油断などできようはずもない。座したままですら隙は見出せなかった。幾ら距離を取ろうが、安心などできはしない。
「ですが、これ程の遠距離からの黒風剣なら――!」
「――遅い」
ノイジーがフェアリーズソードを振り上げた瞬間、信長が炎の闘気を放つ。苛烈にして迅速。闘気はまるで周囲を呑むようにノイジーへ向かっていく。このままであれば斬撃をも呑み込み、ノイジーを焼くことになるであろう。
だが、己の斬撃よりも先に信長の闘気が届くことなど、ノイジーには分かっていたことである。故にこそ、斬撃は信長へと向かわない。攻撃の標準は――目の前の床!
闘気が届くよりも先に床が叩き割られ周囲に破片が飛び散る。咄嗟に大きな破片を探し当て体を滑り込ませるノイジー、コンマ数秒後には闘気が破片へと命中。爆音が響き渡り辺りが煙に包まれる。
「煙に紛れたか。儂を謀るとは豪気な妖よ」
信長の視界からはノイジーが消えていた。
炎の鎖を手繰るも、ついているのは床の破片。ならば煙が晴れるまで守りを固めるか。
否、そんなことに意味はない。信長は勝ちにきているのだ。それはノイジーにだけではない。サムライエンパイアという世界そのものに勝つべくして戦っている。危険を前に己が身を固めるような者が、世界に勝てるものか。
「弥助よ。さらに力をあげるぞ。分からぬならば全てを焼き尽くすのみ」
返事の代わりに弥助が気合いの声を上げ、再び炎の闘気を練り上げる。
先ほどよりもさらに巨大に、周囲を埋め尽くすように。
その様は、煙の中からでもわかるほどであった。ノイジーは思わず笑う。
驚嘆はある、しかしそれ以上に高揚していた。
破片越しの上、オーラ防御で軽減してもなお相当なダメージがあった先の爆発。さらに威力を増すであろう次の一撃をまともに喰らえば、立ち上がることはできない。
だからこそ煌めく。強大な相手、生死を分ける一瞬。
命とは――花火にも似ている。
「さぁ、どちらが可愛く煌めくか、勝負です☆」
煙が薄れゆく。炎の闘気は溢れんばかりの力強さで今にも溢れだそうとしている。
いざと、信長が構えたその瞬間。
――今だ! ノイジーが煙から飛び出す。信長の背後。既に彼女の剣すら届く距離。
「遠距離とはハッタリか……!」
「本当ですよ? でも、遠距離技は遠距離から撃つとは限らない☆」
信長が咄嗟に振り向き、刀を薙ぎ払う。しかしてそれは宙を斬る。
空を飛び、一尺に満たぬノイジーの体。狙いもつけずに当てることはできはしない。
ならばと練り上げた闘気を開放せんとするが、一手遅い。
「大食らいの力よ、かの果実を刈り取れ!」
炎を纏った全力の黒風剣が信長を切り裂く。
ノイジーの持てる全てを込めた一撃。
それは敵である信長の目にすら煌めいて見えた。
煌めきは僅か一瞬。次の瞬間には闘気に呑まれているだろう。
だが、ノイジーはその一瞬、紛れもなく信長に勝ったのだ。
成功
🔵🔵🔴
藤野・いろは
近くば寄って、目にも見よ
我こそは、幕府軍が客将、猟兵の藤野・いろはなるぞ
音に聞く貴様の独鈷杵が興醒めで無き事を祈ろうか
事前に”情報収集”で得た、"先制攻撃"が"見切り"を行えるよう
名乗りの"パフォーマンス"し誘導
想定外の攻撃がこないか"第六感"を活用し警戒
強大な敵であるなら全て道具を相手に合わせて調え直し
決闘状態という”地形の利用"を利用し、"カウンター"を狙うまで
"先制攻撃"には太刀で炎の闘気に合わせて"なぎ払い"
当然太刀は砕かれ鎖に繋がれるーーそこまでが"フェイント"
続けざまに"2回攻撃"と続けましょう"破魔"の力を込めた短刀で決着を
"恩返し"にと頂いたものですが、最後の決め手になりました
一人目の猟兵がグリモアベースへと戻り、再びの静寂が訪れた。
しかし信長を休ませるものかとばかりに一人の猟兵が天守へと降り立つ。
黄枯茶色の髪を靡かせる彼女の名は藤野・いろは(天舞万紅・f01372)。
サムライエンパイアを故郷とする剣豪である。
「遠からんものは、音に聞け」
「近くば寄って、目にも見よ」
「我こそは、幕府軍が客将、猟兵の藤野・いろはなるぞ」
降り立つと共に右手を翳し、名乗りを上げるいろは。これには信長も感心したように顎をさする。ずいぶん古めかしい猟兵が来たものだと。
「よかろう。儂こそは第六天魔王にしてオブリビオンフォーミュラ、織田信長である」
余裕をもって名乗りを返す信長。先の攻防で傷を負ってなお揺るがない。しかしいろは、格上の相手であろうと怯むことなく、その瞳を真っすぐに信長へと向ける。視線には挑発の色が含まれていた。
「背負うは弥助アレキサンダーと見受ける」
「音に聞く貴様の独鈷杵が興醒めで無き事を祈ろうか」
「へぇ、言ってくれるねぇ……!」
背後の弥助が野生の獣を思わせる笑みを浮かべる。
対するいろはも薄っすらと笑みを返すことで挑発を重ねる。果たしてそれは効果を発揮したようで、弥助から放たれる圧がいろはを襲う。
「なかなかどうして、挑発が堂にいっておる。攻め手を絞るのが狙いか?」
「さて、攻撃して見れば分かるのでは」
その様子を見て愉快気に笑うのは信長だ。己を前にしてなんと豪胆な娘であることか。
圧に晒されながら、鎌かけにも汗一つ流さない。
油断はできぬ相手、しかし――。
「ならば望み通り、独鈷杵の力を味わうが良い」
そのような相手を真っ向から下してこその勝ち。
信長は素早く炎の闘気を練り上げいろはへ向かって放つ。
その速さは正しく神速。機先を制すことを得意とするいろはをもってなお、受けにしか回れぬ一撃。このままでは直撃してしまう。
「なんの!」
その瞬間である。いろはの太刀が鞘走り。闘気を薙ぎ払わんと振るわれた。
第六感により信長の言葉に嘘がないことは分かっていた。
だからこそ極限の集中。高速で迫る闘気を斬るという離れ業!
見事闘気は真っ二つ。いろはの体を抜ける。
しかし信長は余裕を崩さない。闘気など、攻撃の初動にすぎぬ。
さらに、余裕の理由はもう一つ。
「儂には見えておったわ。刀を握る手にも掠っていたな?」
「くっ……!」
太刀が爆発する。太刀は砕かれ、いろはの体も宙へと投げ出される。
しかし、そのままの離脱は許されない。いろはの右手には炎の鎖が繋がれ、一定の距離で停止、床へと投げ出された。
かろうじて受け身を取りながら、右手の調子を確かめるいろは。
動かぬ。しばらくは使いものにならないか。
しかし幸い、体の方はまだ動く。対信長用に調え直した甲斐があった。複数の道具で力を重ねた霊的防御により、爆風は軽減されたのだ。
「なるほど、音に聞く通り。いやそれ以上ですか……」
「何、真髄はここからよ」
信長がいろはを引き寄せようと炎の鎖を手繰る。
勢いよく手繰られた鎖はいろはの力ではあらがえず、宙に舞うだろう。
「それは奇遇ですね。――僕の神髄もここからです」
しかしいろは、ここにきて笑みを浮かべる。
ダメージは甚大。太刀は砕かれた。それでもなお、勝ちを諦めることなない。
手繰られた力に合わせるように床を蹴り跳躍。
先の闘気に迫る勢いで信長へと向かっていく。
信長の用いる闘気と鎖のことは事前に調べていた。だからこそあえて太刀を砕く覚悟で受けたのだ。すべてはこの瞬間、信長の虚をつく為に。
「無手で向かってくるとは、血迷ったか!」
「血迷って勝てるのならばいかようにも。ですが――」
虚を突かれながらも手にする刀で応戦する。
だが、しかし、此度はいろはの方が速い。
「決め手は最後まで取っておくものです」
左手を振るい、一閃。手の内には小刀が収まっていた。
それはかつてサムライエンパイアの民を救った恩返しにと貰ったもの。
いろはの巡ってきた道が信長へと届き――その体を切り裂いた。
成功
🔵🔵🔴
フランチェスカ・ヴァレンタイン
敦盛よりも激しい舞闘を、どうぞご堪能くださいな?
空中機動で信長へと迫り、先制攻撃が命中するタイミングを見切って炎の闘気へぶつけるように外殻装甲のパージを
同時にバーニアの推力偏向で闘気の射線から身を翻し、爆風を追い風に初速を稼いでの空戦機動で一気に距離を詰めます
擦れ違いざまに斧槍を叩き込み、砲撃を浴びせながら周囲を旋回して
ヒット&アウェイを繰り返しつつこちらの攻撃手段を印象付けていき
近接での的確な反撃に合わせ、被弾を覚悟の上で仕掛けます
「重鳴り奏でる神音の響きを――どうぞ、召しあがれ…ッ!」
零距離でのクロスカウンターでUCを空中回し蹴りと共に叩き込み、身体の内部から蹴り砕いて差し上げましょう…!
三人目との戦端は彼女の到着と同時に開かれた。
フランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)は立派な白翼を大きく広げ天守内を舞い踊る。その軌道は優雅でありながら素早く、只人では目で追うことすら難しいだろう。
しかし此度の目標は織田信長。先ほどまでの攻防でそれなりの傷を負っているものの、未だ健在の強者である。フランチェスカの軌道を完全に目で追っていた。
「次は鳥の羽をもつ女か。猟兵とは実に多彩なものよ」
「大した曲芸であるが、儂も忙しい身でな」
信長が炎の闘気を練り上げる。これ以上の傷はさしもの信長も看過できぬのか。初撃で落とそうという気概が見てとれた。
「つれないお方。敦盛よりも激しい舞闘を、どうぞご堪能くださいな?」
対するフランチェスカは軽口を叩きながらも無理には距離を詰めず、じりじりと迫っていた。無策に突っ込めば手痛い攻撃を食らうは必至。なればこそ、機会を窺っていた。
「何、もう十分に堪能した。――褒美をやろう」
炎の闘気が放たれる。フランチェスカの空中機動をもってなお避け切れぬ一撃。
いや、そもフランチェスカに避ける気などなかった。
むしろ己から闘気へと向かい、命中のタイミングを早める荒業をくりだす。
無論自棄になったわけではない。
あえて己から向かうことで命中のタイミングをコントロールし、見切ることこそが目的である。そしてもう一つ、この後を想えば加速が必要だったのだ。
「外殻装甲――パージ!」
フランチェスカの纏う外郭装甲が闘気へと向かってパージ。闘気の侵攻を防ぐ。
さらにはバーニアの推力変更を行いその場でターン。
外郭装甲と闘気を迂回し、信長をその目に捉えた。
「さぁ、もう少し近くでご覧くださいませ」
闘気が命中した外郭装甲が爆ぜる。
爆風が背中へと襲い掛かるが、既に追い風ばかりの距離。
加速したフランチェスカは一直線。次の一撃が来る前に至近距離まで迫り切った。
「儂の一撃を利用するか、面白い……!」
しかし信長もさるもの。加速された一撃に素早く反応し、刀を振るう。
フランチェスカの斧槍、ヴァルフレイア・ハルバードが信長の刀と交差する。
一瞬の拮抗。制したのはフランチェスカであった。
加速の勢いに押され、信長が僅かによろめく。しかし、この好機を見逃し、あえて引くフランチェスカ。互いの武器が届かぬ距離まで後退。砲撃を信長へと浴びせた。
「……無理に攻めてくるのならば、そのまま仕留められたものを」
「ええ、存じております。ですが、あなたにはもっとご堪能頂かなくては」
砲撃により起こった煙が晴れ、健在の信長が現れる。
だが問題はない。フランチェスカは距離を保ちながら旋回し、砲撃を繰り返す。
信長が煙に包まれれば背後から斧槍を振るい即座に距離を取る。闘気を練り上げようとすれば砲撃により邪魔をする。フランチェスカはヒットアンドアウェイの形を保つことで信長を抑え込んでいた。
「なるほど見事な舞踏。先の時点で堪能したなど、早計であった」
「だが、流石に見飽きたわ――!」
信長の刀がフランチェスカの肌を切り裂く。
砲撃は信長にたどり着く前に切り捨てられる。
幾度かの攻防を経てフランチェスカの攻撃パターンを見切り始めているのだ。
「そろそろ、潮時ですね」
その様子を見たフランチェスカは腹をくくる。
無理に攻めなかったのは信長の反撃を警戒していた訳でなはい。
全ては己が一撃を万全に打ち込むため。そう、ここまでは仕込み――!
「この一撃で幕引きにしてくれる」
砲撃の煙に紛れたフランチェスカの突撃に対し、信長が見事な突きを合わせてくる。
今まで通りであれば胸を的確に貫く一撃。しかしそれはフランチェスカの脇腹をえぐるだけに留まり、二人の距離を限りなく零へと縮めることになった。
目を見開きつつも、刀を薙ぎ払い胴を両断せんとする信長。
足を振り上げ、薙ぎ払いと同じ方向に回転するフランチェスカ。
「重鳴り奏でる神音の響きを――」
初動は僅かにフランチェスカが速かった。
差を決めたのは相手の攻撃に対する想定。
フランチェスカは的確に。信長は斧槍での攻撃を想定していたのだ。
結果としてフランチェスカの蹴りが先に届き――。
「どうぞ、召しあがれ……ッ!」
見事なクロスカウンターとなり、身体の内部から骨を蹴り砕いた。
成功
🔵🔵🔴
ステラ・クロセ
そう、アンタが居る限り、猟兵たちが勝ったとは言い切れない。
だから第六天魔王、アンタを滅ぼす!
大帝の剣が砕けたら、花びらをよく観察しておく。
たくさんあるそれは、絶対自分を狙ってくる。できる限り引き付けてから、UC【紅蓮の灼翼】の翼を広げ、空中へ飛びだして回避する。
一回で全部避けられなければ何度でも翼で移動して避けていく。
回避しきれたら、新焔・関勝大刀に炎のサイキックエナジーを纏わせて花びらを【なぎ払い】で刈っていく。
その勢いで【勇気】をもって信長に斬りかかり、炎の【属性攻撃】で兜割りの一撃を叩きこみに行く。
「アタシの熱情、そして熱気。受け取れぇ!」
※アドリブ・連携など歓迎です!
「さて、ずいぶんと傷を負ったが……儂は未だ健在よ」
「行くぞ小娘。お主も退き、勝ちへと繋がせて貰う」
「そう、アンタが居る限り、猟兵たちが勝ったとは言い切れない」
「だから第六天魔王、アンタを滅ぼす!」
骨を砕かれながらも猟兵を退けた織田信長の前に現れたのはステラ・クロセ(星の光は紅焔となる・f12371)だ。互いに間合いを計りながらの掛け合い。戦いの火蓋を斬ったのは信長であった。
「大帝の剣で行く。力を貸せ、弥助」
背後の弥助が気合いの叫び。すると信長の刀が崩れ、剣の形をした花びらが舞う。
これぞ大帝の剣の粉砕によるメガリス破壊効果。天守内を埋め尽くす程の花びらが周囲を破壊しつくす、悪夢の如き技である。
あまりに多い花びらにステラは思わず喉を鳴らす。沢山あると想定はしていたものの、実際に見るのとでは訳が違う。本当に全て避け切れるのだろうか。そんな弱気の考えが頭をよぎる。しかしそれも一瞬の事。頭を二振りすると、じっと迫る花びらを見つめる。
どれほど多くとも、ステラを狙ってくるのには変わらない。一度に襲い掛かって来る数にだって限りがあるはずだ。それなら避け切れない道理はない。一度で全て避け切れなくとも、避け切るまでは何度だって避け続けてみせる。
「アタシの限界をこの翼で乗り越えてみせる!」
花びらが当たる直前、炎のサイキックエナジーがステラの体を包む。
勇気を翼に、深紅の火の粉が宙に散る。
ステラはギリギリまで引きつけながらも飛翔することで花びらを回避した。
「宙を飛ぶか。だが、甘い!」
第一陣は見事な回避。しかし体勢を立て直す前に第二陣が迫る。さらに第三陣、第四陣と息つく暇なくステラに花びらが襲い掛かる。辛うじて回避し続けるも、ステラの肌には次第に切り傷が増えていった。
避け切ればとは思っていたが、この花びらには終わりが見えない。避けられた花びらは空中で反転、他の花びらを避けている間にステラへと迫る。このままではいずれステラの体力が尽き、切り刻まれることになるだろう。
「それなら……!」
ステラは覚悟を決めた目で信長を見る。その心を映すように翼が煌めく。
これから行うことを、ある者は無謀と呼ぶだろう。
しかしステラは知っている。
敵の強大さを。己の力を。あとに続く者の存在を。
決して無謀などではない。
己のできる全力を、恐れずに突き進むこと。
そう、これは――勇気だ!
「もっと遠く!」
手にした新焔・関勝大刀が炎のサイキックエナジーを纏う。上に向かって薙げば花びらが焼け落ち道が切り開かれる。そのまま左右から迫る花びらにも気にせず飛翔。傷を負いながらも天井めがけて迫る。
「もっと高く!」
天井に届くかというほどで反転し、天井を踏みしめる。
頭上には信長。一直線上に捉え、追って来る花びらを薙ぎ払う。
「アタシの熱情、そして熱気!」
天井を蹴り、信長へと向かうステラ。信長もこれを通してはまずいと思ったか、花びらを全てステラに集中。迎撃を試みる。しかしステラは目前の花びら以外は気にも留めず、ただ前を薙ぎ、一直線に信長へと飛んでいく。
「くっ、ならば儂自ら……!」
無数の傷を負いながらもなお止まらぬステラ。
ならばとユーベルコードを解除する信長。元に戻った刀を上段に構える。
「受け取れぇ!」
「返り討ちにしてくれる!」
交差は一瞬。刀を振り切った二人は互いに背中を向けている。
一拍の静寂が過ぎるとステラが倒れ、信長が刀を収める。
ほんの僅か、ステラの刀は信長の頭へは届かなかった。
しかし――。
「織田信長が認めよう。この儂でさえ焼き付くさん熱であったと」
信長の鎧がひび割れる。
それはステラの勇気が、熱が成したこと。
己の限界を超え、信長へと届いた証しであった。
苦戦
🔵🔴🔴
御形・菘
妾は邪神、御形・菘!
魔王よ、ひとつ手合わせ願おうか!
闘気の回避など考えておらん!
放たれた瞬間に、邪神オーラを纏った尻尾を前面へ出し、上半身を守る盾としよう
覚悟を決めて痛みは我慢、爆発のダメージは、すべて尻尾のみで受け止めきる!
はーっはっはっは! 世界の頂点とチェーンデスマッチでバトる!
妾が望んだ、最高に素晴らしいシチュエーションよ!
そのまま突進して左腕で殴りつけ…と見せかけて、楽土裁断をブチ込む!
普段高く跳び上がるのはただの演出でな
ダッシュと上半身の捻りだけで、威力は十分に出るのよ!
ダメージ食らった尻尾で攻撃するとは思うまい
そしてこの状況では逃げられんぞ!
防御などブチ抜いてくれよう!
戦いと戦いの合間。
信長が僅かでも傷を癒やしていると、威厳のある声が天守に響く。
「妾は邪神、御形・菘!」
「魔王よ、ひとつ手合わせ願おうか!」
現れたのは巨大な蛇の下半身を持ち、セクシー&クールな意匠を体に凝らした御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)である。その傾奇っぷりには信長も思わず痛みを忘れ、感心した様子で菘を眺める。
「なるほど、神を名乗るに似つかわしき姿よ」
「丁度良い、渡来人共の神の代わりに、貴様が如何程の者か確かめるとしよう」
どこか楽しげな様子で信長が炎の闘気を放つ。
しかし菘は不遜に笑い、避ける気配がない。ただ尻尾を上半身の前にかざし、ゆるりと闘気の命中を待つ。何たる不遜。これが邪神たる所以か。
「儂を前にして余裕を気取るか。ならば、速やかに死ねい!」
「余裕ではなく自負よ! お主の攻撃はすべて、尻尾のみで受け止めきる!」
この状況で外れるはずもなく、炎の闘気が尻尾へと当たり、爆発を引き起こす。
爆炎が晴れた後に見えるは先ほど同様、不遜な笑みを湛えた菘の姿。
炎の鎖が付いた尻尾を揺らし、今の様子を撮影していた撮影用ドローン『天地通眼』に決め顔を向ける。その姿は正しく、最高に格好良い邪神として映っている。
しかし信長は見抜いていた。
一見余裕に見える菘。しかしその額には脂汗が流れている。
つまり凄い我慢をしているだけだ。本来ならば大声を出したいほどであろう。
「は、はーっはっはっは! これにて場は整った!」
「世界の頂点とチェーンデスマッチでバトる!」
「妾が望んだ、最高に素晴らしいシチュエーションよ!」
痛みをごまかすためにも高笑いを上げる菘。
そして信長もまた傾奇者。
指摘するという無粋な真似はせず、高らかに声を張り上げる。
「決闘状態が望みであったか。だがこれは弥助の、儂の技よ!」
「この戦い、優位はこちらにあり!」
「その意気や良し! であれば、次は妾からまいるぞ!」
尻尾の激痛に内心叫びながらも、左の腕を振り上げる菘。
最もこれはフェイント。本命は尻尾での一撃である。
そうとも知らぬ信長は間合いを計り間違い、尻尾の一撃を食らうだろう。
「儂の技を食らってなお動ける強靭な肉体。近寄せるはずもなし!」
しかし、信長とてそう簡単には近寄らせぬ。
炎の鎖を手繰り、菘の尻尾を引く事で体勢を崩す。
すぐさま炎の闘気が放たれるも、菘は咄嗟に尻尾を盾とする。
「何の、効かぬわ!」
再びの爆発。菘はなおも我慢を続けるが、脂汗はさらに酷くなっている。
もはや一撃も喰らえば気絶は免れまい。あるいは、己の攻撃の余波ですら耐えきれないかもしれない。しかし菘はそれを表には出せず、なおも高笑いを放つ。
「妾の体勢を崩す見事な鎖捌き、チェーンデスマッチの名手と認めよう!」
「だがしかーし! 妾はより巧みに手繰り、次の一撃で決めてくれる!」
信長に手のひらを向け、堂々と宣言する菘。
その姿は信長の背後に回った天地通眼によりド迫力で撮られていた。
ここに来てなおこの威勢。プロ根性恐るべし。
「吠えたな。では、儂も真っ向から相手取ってくれる」
「おうとも! いざ――!」
菘が再び左腕を振り上げ突進を試みる。
信長は闘気を練り上げ、鎖を警戒。間合いはまだある。
たとえ鎖を手繰られようと菘の左腕が届くことはない。
だがしかし、信長の遥か手前で菘は上半身を捻る。
手繰り寄せるつもりかと信長は鎖を引き、逆に引っ張り上げてくれると力を籠める。
「はーはっは! 手繰り寄せると思うたか!」
「そうよな! ダメージ食らった尻尾で攻撃するとは思うまい!」
捻りを開放し、引っ張られた方向に回転する菘。
尻尾は鎖を巻き取りながら信長へと迫る。
「そしてこの状況では逃げられんぞ!」
「防御などブチ抜いてくれよう!」
チェーンデスマッチの醍醐味は相手の妨害にあらず。
互いに逃げられぬ至近距離での殴り合いにあり。
尻尾に巻き取られ、短くなった鎖は信長に回避を選ばせない。
菘の尻尾は見事に信長の胴を捉え――。
宣言通り、その防御をブチ抜いた。
成功
🔵🔵🔴
ガルディエ・ワールレイド
この状況でその戦意、流石は戦国の世を駆け抜けた覇王だ
だが億に一つの可能性を残すわけにはいかねぇんだ
織田軍総大将信長! 骸の海に還りな!
・先制対策
敵の炎の鎖に対して《念動力/見切り/武器受け》で浮遊させた魔剣をぶつけて盾とし、更に念動力で魔剣を敵に射出
《オーラ防御/火炎耐性》による守りを常時展開し爆破の余波を防ぐぜ
・反撃
《怪力/2回攻撃》による連撃での近接戦と、【竜神気】を組み合わせて戦闘
《武器受け》で身を守りつつUCで攻撃したり、UCで敵を妨害しながら斬ったりだ
余裕があれば魔剣レギアを念動力で操作して追撃
敵のUCを喰らって決闘状態となってしまった場合は、死中に活を求める《捨て身の一撃》
深手を負いながらも猟兵達を退けた信長。次に相対するは黒き魔鎧『シャルディス』に身を包んだガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)であった。
己の鎧に負けず劣らずの威容を持つ鎧に身の丈が6尺は超えているのではないかという大男。それを前にしても信長は傷による消耗も見せずに相対する。
「その威容、聞いたことがあるぞ。騎士とやらか」
「面白い、如何程の物か。試してやろう」
ガルディエを信長より発せられる圧力が襲う。
只人であればそれだけで気絶をするだろう圧を心地よく感じながら笑うガルディエ。
いくらオブリビオンフォーミュラといえ、信長は既に満身創痍に近いダメージを負っているはずだ。それでもなお、圧倒的な強者の気配。騎士の相手として申し分ない。
「この状況でその戦意、流石は戦国の世を駆け抜けた覇王だ」
「だが億に一つの可能性を残すわけにはいかねぇんだ」
複合魔槍斧ジレイザの切っ先を信長へと向ける。無論攻撃ではない。
いわば戦前の名乗り。当然信長もここで攻撃などという無粋なことはしない。
ガルディエは声を張り上げ、信長へと啖呵を切る。
「織田軍総大将信長! 骸の海に還りな!」
「さて、まだこの首をやるわけにはいかぬ。この戦、勝つのは儂よ!」
信長が返し、戦いが始まった。
先手は当然の様に信長。炎の闘気を放つ。
ガルディエは走り出しながら念動力にて魔剣を目の前に。盾にする腹積もりだ。
「まだまだぁ! こんなもんじゃ止まらねぇぜ!」
目前で爆発する魔剣。爆風がガルディエに向かうが、持ち前の火炎耐性とオーラ防御により軽減。走るのを止めることなく、さらには魔剣を射出して信長への牽制を放つ。
「粋が良いな。だが、温い」
炎の鎖を踏みしめる信長。するとどうだ、射出された魔剣は地面へと向かい、二人の間に壁の如く突き刺さったではないか。ガルディエもこれには思わず舌打ちをしながら体を捻る。かろうじて激突は避けられるが、無理に捻ったせいで体勢が崩れてしまった。
「さっきので魔剣に繋がってたか!」
「児戯にすぎぬがな。だが、勢いは削げたであろう」
再び炎の闘気が迫る。
ガルディエは咄嗟に念動力で魔剣を引き抜き、再び盾代わりとする。しかし炎の闘気はあまりにも速い。防げはしたものの、ガルディエの自身にも闘気が掠ってしまう。
爆発。そして鎖が右腕に繋がれる。幸い、常に防御を張り巡らせていたお陰で致命傷には至っていない。ガルディエは覚悟を決め、手繰り寄せられる鎖に体勢を崩さぬよう信長へと迫っていった。
信長が手にした刀を上段から振り下ろす。魔槍斧で受け止め、ユーベルコードを発動、竜神気にて信長を狙う。異端の神の力には信長も脅威を感じたが、しかして冷静に闘気で相殺。体を翻し横薙ぎで胴を払う。
「なら、こいつはどうだ!」
あわや斬られるかと言うところでガルディエは魔剣を動かす。決闘状態というのは伊達ではなく、鎖は右腕の一本だけとなっていた。自由になった魔剣で刀を受け止めると共に魔槍斧を豪快に振り下ろす。闘気は竜神気で抑え込んでみせる。確かな手ごたえを感じたガルディエだが、不意に右腕が横に引かれ、魔槍斧は信長の横をすり抜ける。
「手数も威力も大したものよ。だが、儂はとれん」
返す刀を受け止めながら距離を取り、ガルディエは笑う。
鎖に繫がれたらとは思っていたが想像以上の厄介さ。信長へと通すには一手足りない。
ならばどうするか? 決まっている。
「だらだらやり合っても仕方ねぇ。次で決める」
「来るが良い。全てを捌き、首を刎ねくれる」
二人の間に緊張が走る。互いに満身創痍。次の一攻防で決まると分かっているのだ。
いざーー。
開幕の鐘代わりに互いのユーベルコードがぶつかり合う。爆発が巻き起こるも、それを気にする者はいない。両者共に爆発の中に飛び込んでいく。
ガルディエの魔槍斧が爆煙を払う。その軌跡の下には信長。鎖を手繰ることで横薙ぎを空振らせたのだ。魔槍斧程の巨大な獲物は、振り切ってしまえば隙は大きい。飛んでくる魔剣を捌き、返す刀で切り裂く。それで終わりと、信長は勝ちを確信した。しかし――。
「舐めるんじゃ……ねぇ!」
振り切った腕を元に引くように、魔剣が互いを繫ぐ鎖を貫く。
信長の体勢が崩れ、ガルディエは僅か、魔槍斧の慣性から回復する。
「それでも一手届かん!」
信長の刀がガルディエを切り裂く。
信長の勝ちに思われたこの戦い。しかし斬ったはずの信長は未だ睨み付けていた。視線の先には斬られてなお、魔槍斧を振り下ろさんとするガルディエ。崩されたせいで、斬り捨てるには至らなかった。
「ここで届かせんのが――」
腕の筋肉が悲鳴を上げる。今にも意識が飛びそうになる。
だが、そんなことで止まれはしない。
この身は、騎士なのだから。
「騎士ってもんだ!」
魔槍斧が信長を切り裂く。
その一撃は重く――ついに、信長にその膝をつかせた。
大成功
🔵🔵🔵
秋穂・紗織
万に、億にひとつと賭けるといいつつ
その実は勝利することに渾身かつ、全霊
武人、将たる器というものなのでしょうね
「けれど、栄花の花も、戦乱の炎も、無常の風にてかき消える夢幻」
その先に何を望むかは、切っ先に謡わせるのみ
信長が私へと狙いを定め辛いよう、ダッシュ+フェイントで緩急をつけた疾走で側面へと回り込みつつ
持つ刀や、肉体の変異での攻撃兆候を見切りで伺い
攻めに出られた瞬間に、早業+ジャンプで全力で後方に飛び退いて回避を
回避に重きを起き、私の刀の間合いではない、と思ってくれれば好都合
ましてや眼前にある変異させた頭部は鎧に覆われていない柔らかい部位
早業+カウンターで、斬風の鎌鼬を飛ばし、切り裂きましょう
「まだだ、まだ終わらぬ……」
「幾千幾万の猟兵が来ようと討ち果たし続けてくれるわ」
刀を地面に差し、強引に立ち上がる信長。その体は既に満身創痍である。
しかし瞳は煌々と燃え盛り、未だに勝ちを諦めていないことは明白であった。
満身創痍とはいえ、相手取るには決して油断はできぬ。
今の信長には手負いの虎という表現すら生ぬるい。
「あなたの様な方を武人、将たる器というのでしょうね」
ふわりと、秋穂・紗織(木花吐息・f18825)が信長の前へと降り立つ。柔らかな笑みを携えながら、この状況下でなおも勝ちを求める信長を感心したように見つめていた。
信長は万に、億にひとつに賭けるといいつつ、その実は勝利することに渾身かつ全霊。
紗織はその姿に正しく、将たる器を見た。
「けれど、栄花の花も、戦乱の炎も、無常の風にてかき消える夢幻」
「あなたは果たして――」
その先に何を望むのか。
問いかけは言葉にせず、信長へと駆けていく。
どのみち信長が答えを口にすることはないだろう。
ならば、切っ先に謡わせるのみ。
「儂の内に踏み込もうとは不埒な女よ」
「しかし許そう。これよりお主は我が糧となるのだから」
緩急をつけて疾走する紗織に対し、信長は不動のまま迎え撃つ。
傷が深くもはや動けぬのか。紗織の動きに翻弄され、狙いが定まらないのか。
いや、それだけではない。信長の行動原理はただひとつ。勝ちへの道筋となること。
側面に回り込むように距離を詰め、刀を構える。
一歩踏み出せば紗織の刀が届く距離。しかして紗織が足を踏み出すことはなかった。
「やはりそう来ましたか。想像以上に、大きいですね」
信長の頭部が聞くに堪えぬ音を出しながら肥大化していく。頭が段々と作り変えられているのだ。そして、変化が終わる頃には信長が動く。紗織のいた場所を嘴が貫いていた。
「ギリギリで避けたか。勘の良いことだが、それも幾度続くか」
「それはもう。貴方にこの刃が届くまで、避け続けてみせましょう」
嘴に貫かれる前に紗織は跳躍。遥か後方へと回避を果たす。しかし、信長の速さは衰え知らず。安々と避けられるはずもなく左腕からは血が流れている。嘴に噛まれたのだ。
距離を取って改めて見ると、信長の頭部が完全に異形となったことが見てとれる。その威容をあえて例えるならば、カラスが近しいであろうか。頭より大きい嘴と、全てを呑み込むかのような瞳が、紗織に恐怖を起こさせる。
「粋は良し。だが、先に届かせるは儂の刃よ」
紗織を噛んだことで僅かばかり傷は癒えた。ならばと気合いを入れ、追撃を試みる。
刀が、嘴が紗織へと迫るも、紗織は回避に重点を置き紙一重で避けていた。
巨体となった信長と、小柄な紗織。近接での間合いは信長が有利であった。嘴は勿論のこと、刀とて信長が責め立てるのみで紗織は受けに回っている。そんな中、紗織は柔和な表情を崩さず、穏やかに立ち回っていた。
刀を交えることで、紗織には信長の本質が見えてくる。
一見して苛烈な攻め。しかし所々に隙が見える。これ以上踏み込めば危険だといった、躊躇いがないのだ。それは技量がない訳でも、油断や慢心をしている訳でもない。信長は危険よりも踏み込んだことに得られる成果のみを見ていた。
ひたすらに勝ちを求める。ならばあって良いはずの負けを恐れる心がない。
それが指し示すこと――信長は、ただ愉悦にのみ戦っている。
「億に一つの勝ちに賭けるも一興。そして、破れるも一興と……」
「織田信長、あなたは正しく夢幻の中にいるのですね」
紗織の言葉に信長が笑う。
鳥の表情などわからない。だというのに何故か笑ったと理解が出来た。
信長は未来を望まない。ただ今を蹂躙する。
その命はとうに尽きているが故に、夢幻の中にいる。
それこそが――信長の罪。
「それなら私は無常の風となりて、貴方の夢をかき消しましょう」
「抜かせ、吠えるのであれば儂に一撃入れてからにせよ」
大きな一撃は未だないものの、じわりじわりと削られている紗織。まずは間合いに入れなければどうしようもない。しかし間合いに入れれば、信長の苛烈な攻めが待っている。
じり貧に思われる状況。しかし紗織は焦ることなく再び距離を取る。
そして加速。緩急をつけながらも、一気に間合いを詰めんと信長へと迫った。
待ち構える信長。既に迎え撃つ準備は万端である。
紗織の間合い外から刀を振るい足を止め、即座に嘴でかみ砕いてくれる。
勝負は一瞬であった。
信長の間合いが紗織を捉える直前、風が吹き抜ける。
「風のように走り、渡り、あなたへと届くこの刃を」
刃の形をした風は、すなわち鎌鼬。
ここまで紗織が隠し通した真の間合い。
信長が振るわんとした刀が地に落ちる。
風は信長の首を通り切断を果たした。もう、信長に立つ力はない。
「……見事」
首を切断されてなお、言葉を紡ぐ信長。
言葉になったのは僅かに一言。猟兵達を称え、笑いながら息絶える。
背後の弥助は、いつの間にか消えていた。
納刀した紗織が信長へと近づいて、目を閉じる。
言葉はなく、ただ祈るように――。
戦いは終わり、天守を風が吹き抜けた。
成功
🔵🔵🔴