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エンパイアウォー㊴~Besessenheit~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #オブリビオン・フォーミュラ #織田信長 #魔軍転生

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●『是非もなし』
 魔空安土城、天守は城主の間。ただ一人この場に存在することを許された男が一差しの舞を静かに愉しんでいた。

『人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり』

 ゆったりとした歌い口であれど、歌い終えてしまうまで然程の時は掛かるまい。その僅かな暇を惜しみつつも、その二度と戻らぬ時を男はじっくりと味わっていた。

『一度生を享け、滅せぬもののあるべきか』

 特に気に入ったその一節を謡い終えると同時に、オブリビオンフォーミュラ第六天魔王『織田信長』は手にした扇をぱたりと閉じる。

 遠く聞こえる鬨の声。忌まわしくも芳しき土埃と硝煙と血の混じり合う臭い。
 怒号響き、砲声轟き、軍馬は嘶き、悲鳴は耳を劈いて。
 矢弾は風斬り、刀槍は噛み合い火花散らして鎬を削る。
 それら全てがが重なり奏でる戦の調べが何とも心地よい。懐かしき戦場の空気を信長は己の肺腑、五臓六腑に染み渡らせるが如くに深く吸い込み、静かに堪能した。

「最後に残った将はなんとこの儂ひとりと来た。……ククク、この妙にこそばゆい感覚は何であろうな? 勝三郎に半羽介、おまけに権六も五郎左も居らぬとは」
『フェンフェン! フェン!!』
「ハハハ、すまぬなサルよ。まだキサマが居ったのを忘れておったわ」

 信長の身に宿るのは、忠臣『豊臣秀吉』のその力と意志。例え敵にその身を討たれようともその魂は今、主君の身と共にある。それを確かめるように、信長はゆっくりと五指に力を込めて握り、拳の形に結ぶ。
「……忌々しきは儂の絵図をこうも台無しにしてくれた猟兵どもよ。だが見事なり。……その貴様らを、儂のこの手で八つに引き裂き、火に焚べてやるのはさぞや愉快であろうな」

「さあ、戦じゃ。サルよ、供をせい。もう暫く儂に付き合うてもらうぞ」
『フェーン! フェフェフェン!!』

「我が生もまた、悠久に続く時の中でほんの刹那に浮かんだ夢幻なのかも知れぬ。されど我が命、我が魂、我が覇道……今ひとたび、この世に強く深く刻み込んでやるとしよう。……そして儂は、永久に語り継がれる魔王となろうぞ」

「さあ、竹千代。キサマの残した世界と、儂の野望(ゆめ)、果たしてどちらが勝るか……此処で存分に比べ合おうではないか」
『フェン!』

●グリモアベースにて
「いいか、皆。いよいよおれたちは、この局面にまで漕ぎ着けた」

 赤い天狗の面を手にする形代・九十九は常通りの仏頂面で猟兵たちにそう告げる。
 けれどもその声には何か深い感慨を覚えているような趣があった。

「連日の皆の踏ん張りのお陰で、魔軍将たちの企みはほぼ全て水泡に帰したと言っていいだろう。……幕府軍もその戦力を消耗させる事なく、無事に島原の地へと辿り着いた」

 グリモアの力を宿した天狗面。仏頂面を隠すように、九十九はそれを己の顔へと静かに宛がう。面越しにくぐもった声を響かせながら、天狗の双眸が見上げた虚空に結ぶのは、地へと引きずり落とされたとは言え、その威容は未だ衰えぬ魔空安土城の姿。
 その足元では、幕府軍の兵士と妖怪、異国人、屍人などが織り成す信長の軍勢がぶつかり合う様までもが見て取れた。

「……信長軍本隊を彼らが抑えてくれている間に、第六天魔王『織田信長』を撃破するのが、おれたちの役割だ」

 天狗の双眸が更なる虚像を映し出す。覇気に満ち溢れた、禍々しい当世具足を身に纏う一人の偉丈夫。覇王の気風とは、こういうものを指すのだろう。九十九が面を着けたのは、その姿に少なからず憧憬を覚えてしまった自己を恥じてのものでもあった。

「……信長を倒すことだけに集中できるとは言え、奴は恐ろしい敵だ。しかも【魔軍転生】とか言う秘術によって、配下の魔軍将の力を自分に『憑装』させて戦う事が出来るのだそうだ」

 虚像の信長の背に寄り添い従うように浮かび上がったその生き物の姿に見覚えのある猟兵たちも居る事だろう。
 隠し将『豊臣秀吉』。大帝剣『弥助アレキサンダー』と共に猟兵たちの前に立ちはだかった摩訶不思議な生き物だ。

「いいか、奴は一人ではない。そして、とっくに腹も据わっている。万全を期して我々を迎え撃ってくる事だろう。……奴の先手を取るのは諦めろ。こちらも万全を期して、奴の初撃に備え、これを凌ぐ事が何よりも肝要だ。数に任せて力押しする人海戦術で何時かは奴を討ち果たせるとしても、無謀で闇雲な突撃は推奨しない」

 そう告げれば、九十九は少し考える素振りの後に天狗の面を外し、其処に並んだ猟兵たち一人一人の顔に視線を一巡りさせてから、深々と腰を折り頭を下げた。

「厳しい戦いになるが、サムライエンパイアの興亡はまさしくおれたちの働きに懸かっている。……すまないが、もう少しだけ皆の力を貸してくれ」


毒島やすみ
 はじめまして、或いは何時もありがとうございます。
 毒島やすみです。いよいよサムライエンパイアの戦争もクライマックスに差し掛かりましたね。
 最後に待ち受ける相手は強敵、第六天魔王『織田信長』!
 オブリビオン・フォーミュラにふさわしく、相応の特殊ルールも御座いますので、ご確認の上でご参加して下さいますようお願い致します。
 サルとノッブをやっつけて、サムライエンパイアに平穏を取り戻しましょう!

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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第1章 ボス戦 『第六天魔王『織田信長』秀吉装』

POW   :    黒槍殲撃
【秀吉を融合させた鋼鎧から無数の黒槍】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    黒粘剣戟術
【秀吉の黒粘液で全身から刀まで全てを覆い】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ   :    シャドウクローニング
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:UMEn人

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イフェイオン・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

滅せぬものは無し。私も同意です。
貴方の死がより良いものとなるように私もお力添えしますよ

敵集団が猟兵の私に殺意や敵意を抱いてくれたのならば好都合です。
ブラックテンタクルを召喚し、一体でも数を減らしておきます。
触手は当たればいいです。脆弱な敵集団には毒で十分でしょうから。
少しでも足止めや集団に穴が開けばこちらのものです。ブラックホープを用いて敵本体へ強襲。
弱っているフェンフェンを蹴り上げても良し、ナイフを投げても良し。視線を惑わせありがたく『暗殺』させていただきましょう。
もし可能ならブラックテンタクルも追撃してくれると嬉しいな。
必ず死ぬと書いて必死。死を感じたいなら私も必死になりますよ



●暗殺者は黒の戦陣を越え
「貴方の好む敦盛には『滅せぬものはなし』なんて、下りがありますね。私も同意です」
「……ほう」

 城主の間へと姿を現すなり、その場で猟兵たちを待ち受けていた信長へと投げかけられたイフェイオン・ウォーグレイヴ(濡鴉の死霊術士・f19683)の言葉は彼の興味を惹いたらしく、信長は目の前で対峙する少年の顔をちらりと一瞥する。

「では……その心は何とするか、童(わらし)よ」
「そうですね。貴方の死がより良いものとなるように私もお力添えしますよ」

 相手を試すように発した信長のその問いかけに、表情を崩す事なく、涼しげに答えるイフェイオン。その言葉にはそれまで信長の浮かべていた無表情が静かに揺らいだ。それは怒りでもなく、嘲弄でもなく。ただ闘争という行為を愉しむようにオブリビオン・フォーミュラ、第六天魔王『織田信長』は口元に笑みを浮かべるのだった。仮にも嘗ては天下人を目指し、今は魔王と成り果てたその身。己の喉元に迫る刃の冷たさ、鋭さを愉しまずして、どうして戦など出来ようものか。

「……で、あるか。ならば、儂を愉しませてくれると期待しても良いのだろうな?」

 ただ静かに敵を敵と見定め打ち倒す。第六天魔王は生前そうであったように、目の前に居並ぶ猟兵たちを宿敵と見定めた。窮地など、生前から慣れたものだ。……今川、雑賀衆、三好、武田、浅井朝倉、数えるのも馬鹿らしい。その度に打ち倒してきた。此処が本能寺の再来ならば、真に魔王として蘇った今の己が武運はそれすらも跳ね除けてみせよう。

『フェン!!』

 信長の背に浮かぶ、忠臣『豊臣秀吉』が自分のことも忘れてくれるなよ、とでも言うかの如くに一声上げる。そして、まるでその声を合図にするかの如く、信長の身に『憑装』される秀吉の力が黒い瘴気と化して溢れ出し、主君信長の身体へと取り巻いていく。

「童、心せよ。儂を討つより先に、儂に討たれぬようにな」

 その言葉と共に、信長が羽織るマントを大きく翻し、勢い良くはためかせる。まるで虚空を舐める炎のようにその裾が踊るたび、生まれ出でるは忠臣、豊臣秀吉の写し身たち。本来の彼よりも小さいが、その数は余りにも多い。ただ一人であった信長は瞬く間に、無数の忠臣たちに取り囲まれて、盤石の布陣を敷いていた。

『フェンフェンフェンフェンフェンフェン!! フェフェン!』
「成る程、数だけは多い。……では、此方も数には数で対抗するとしましょう」

 猫背気味の前傾姿勢で立つイフェイオンが、緩やかに片腕を持ち上げる。その手の指先が指し示すのは、無数の秀吉たちに守られた織田信長ただ一人。

『邪悪な触手の王よ、その僕達よ。我に力とその能力を貸し与えたまえ』

 その呼び声に、空間を水面の如く揺らがせ、其処から這い出るようにして姿を表すのは粘液に塗れた表皮を不気味に脈打たせ、絶えず流動させ続ける醜悪にして巨大な一本の触手だった。その全容は向こう側の空間に残したまま、ただ力の先触れだけをこの世に介入させた邪悪な触手の王。イフェイオンが呼び出し使役する、『謎を喰らう触手の群れ(ブラックテンタクル)』である。その表面を突き破り、次々と小さな触手達が枝分かれして無数に生み出されていく。次の瞬間にはそれらが一斉に秀吉の群れへと矢の雨のように突き出されるのだ。

『フェーン!!』

 彼方此方から断末魔めいた秀吉たちの鳴き声が響く。ある程度の戦闘力を備えているとは言え、写し身たる彼らは余りにも脆弱なのだ。その脆弱さを補う為に、数を揃えてはいるが、単純に一体ずつ撃破していく事は猟兵たちにとっては然程難しい事ではない。秀吉たちは貫かれた端から針を刺した血袋の如く次々と爆ぜては散っていく。イフェイオンの使役する触手たちの一本一本それぞれに、流血を強いる猛毒が備わっているのだから、単に掠めただけであっても彼らにとっては致命傷である。

(少しでも、一体でも多く数を減らしておきましょう。……どうせ当たれば脆弱なフェンフェンはあの触手の一撃で十分に倒せる。これはあくまで牽制です)

 秀吉たちの悲痛な叫びが響く中、イフェイオンは醜悪な肉塊が触手を振り回し大暴れしている事に乗じて、小さな祈りの言葉と共に己の気配を殺す。

『この暗黒の中で、私の飢えと空虚さを満たしてくれる希望を……』

 そして、虚空を引き裂き這い出た新たな触手がその首後ろ、とある一点を素早くそして正確に深々と貫いた。触手の先端から飛び出す細く鋭い針が彼の脳のツボを巧みに刺激し、其処から脳内麻薬を刹那の暇に大量分泌させた。2つ目のユーベルコード、『ブラックホープ』発動の瞬間である。

「……くふっ……」

 陰鬱な無表情めいていたイフェイオンの顔に浮かぶ、微かな熱と後ろ暗い愉悦めいた笑み。煮えたぎる濃厚な甘露を神経節の隅々にまで流し込まれたかのような強烈な衝動に突き動かされ、イフェイオンは畳の上を低く疾走する。まるで湿った影のように音もなく、触手に蹂躙されて手薄となった秀吉たちの隙間を滑り抜け、一気に距離を詰める。狙うのは首魁、信長の首ひとつ。ダメ押しにたまたま足元に転がっていた気の毒な一体の秀吉を思い切り蹴りつける。

『フェーン!?』

 サッカーボールのように蹴り飛ばされた秀吉の姿を、つい反射的に目で追う信長。ごく僅かではあるが、不意打ちを決めるには十分に大きなその隙をイフェイオンは見逃さず、握り込んでいたナイフ『淑女』を手の中でくるりと反転。逆手に握り直しながらその切っ先で信長の首を狙って掻き切るように払う一撃を見舞う―――――が。

「……やるではないか、乱波(らっぱ)の小僧。雑賀の連中の狙撃の時より肝が冷えたわ」
「……これは……!」

 信長の首を狙って払ったナイフの一撃は、彼の全身から武器までを全て包み込むようにして纏わりついた黒色の粘液によって、つるりと往なされた。摩擦抵抗を極限まで軽減する秀吉の粘液を身に纏うユーベルコード『黒粘剣戟術』はイフェイオンの必殺の刃をただの掠り傷にまで抑え込んでいたのだ。

「貴様には何をくれてやろうか。焼けて死ぬか、それとも鋸挽きにて死ぬか。ついでに髑髏を抉り出して薄濃(はくだみ)としてやろうか」
「……おっと……っ!」

 返し様に信長が繰り出す袈裟懸けの一閃。それを後方転回にてアクロバティックに飛び退ってやり過ごしながら、イフェイオンの投げ放つ『淑女』が、信長の右腕に粘液の防壁を突き破って深く刺さる。過剰分泌された脳内麻薬の影響でテンションは激しい程にバク上がりしている。それでも、イフェイオンは引き際を見誤ることはなかった。足元にたまたまやってきた新たな秀吉を信長目掛けて思い切り蹴りつけながら、戦列の乱れを立て直そうとする秀吉たちの囲みを抜けて後方へと引き下がっていく。

「……必ず死ぬと書いて必死。死を感じたいなら私も必死になりますよ。そして私も、その死がこの身を滅ぼすその瞬間までは必死に足掻いてみせましょう」
「見事なり。……遠慮は要らぬぞ。もう殺すと決めているからな」

 遠ざかっていくイフェイオンの姿を見送りながら、信長は己の腕に突き立つ短剣を引き抜いて無造作に足元へと放る。腕に刻まれたその傷は決して浅くはない……が、まだ何とか刀を振り回す事が出来る。ならばよし、と信長は傷の痛みを無視して不敵に笑う。

『フェンフェンフェーン!!』

 ……続いて響く、抗議めいた秀吉の声には聞こえないフリをするイフェイオンだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

駒鳥・了
今回は僕、スミで
フェーンを気に入ってるアキじゃ
小型を一匹連れ帰りたいと言いかねない

初撃は残像と第六感とでひたすら回避
フェンの攻撃法を確認
避け切れなずとも受けた衝撃分は上手く生かすさ
勢いのある個体は踏みつけて跳ぶ
2~3匹ほど連続して上手く踏みつければ高さを稼げるか
迫る個体は空中戦を生かして刀で薙払い
距離のある群れへはアキの得手を拝借し
アイテムのナイフを増殖しながら投擲で纏めて狙撃

全部片付かないまでも余裕が出れば
キーボードを叩くよう左指だけ躍らせてUC発動
的は信長と秀吉本体だよ
小物と遊んでる者からボスを狙う味方へのフォローが入るとは思うまい

小型フェンが片付けば僕も一勝負願おうか

共闘アドリブは歓迎だ


ンァルマ・カーンジャール
信長さん、未来へ進む為そのお命を頂戴致します!

フェンフェン・・・!可愛い・・・!
非常に残念ですが・・・お引き取り願います!
風の精霊さんにお願いし、風の刃を周囲に展開です!
それを周囲に放つ事で足取りの軽い秀吉さんであっても捉える事が出来るはず・・・!
第二、第三波も対応出来るように引き続き周囲に展開した状態で戦闘を進めます!
合わせて土の精霊魔法で盾を生成です
秀吉さんだけで無く信長さん本体の攻撃も警戒です!
電脳魔術で行動パターンを分析し先読みしながら躱せる攻撃は回避ですっ!

信長さんの攻撃を凌いだら今度はこちらの番です!
UC《[複合接続]【分子運動制御】風葬》で攻撃です!
骸の海にお帰り下さい!



●「きさまは電子レンジに入れられたダイナマイトだ!」
 呼び出された触手の王が、イフェイオンの撤退と時を同じくして、その触手を引っ込めていく。
 揺らぐ空間の乱れが収まれば、其処には最初から何も存在しなかったかのごとく、異形の存在は跡形もなく消え失せた。ただ足元に飛び散った秀吉たちの血の痕だけが、暴れ狂う触手がつい先刻まで確かに存在していた事を静かに証言しているばかり。

『フェンフェン!!』
「……かっ……可愛い……! いやいや、可愛さに心奪われてしまってはいけません。非常に残念ですが、お引き取り願います!」
(あの子、なんだか『アキ』みたいな事を言ってるなあ。この場に居るのが『僕』で良かったよ)

 オリジナルよりも小さな秀吉たちの、どこか愛嬌があるように見えなくもないその姿を前にして何やら苦しげに葛藤しているンァルマ・カーンジャール(大地と共に・f07553)の姿を隣からちらりと横目で見ながら駒鳥・了(I, said the Rook・f17343)は胸中で独り言ちた。
 彼女はその基本となる人格以外にもスミ、アキ、サト……三人の人格をその身に宿した、いわゆる多重人格者と呼ばれる存在だ。そんな彼女の肉体の制御を今現在行っているのはスミである。(※便宜上、これより先は彼女をスミと統一して呼称する)

「ねえ、大丈夫かい? 僕たち、これからアレと戦うんだよ。まさか、一匹連れて帰りたいとか言ったりしないよね……?」
「えっ、連れ帰る、ですか……? それはまたなんともステキな……ああいえ!ワタシ、別にそんな事考えたりなんてしてマセンヨ……!」

 少し不安さを覚えたスミの問いに対するンァルマの答えに、その不安はますます大きくなったかも知れない。しかし、彼女たちは猟兵。いざ戦いともなれば、瞬時に思考は戦闘へと向けるそれへと切り替わる。大丈夫、大丈夫デスと繰り返すンァルマの言葉をひとまず信用することにして、スミはその視線を真っ直ぐに秀吉たちの織り成す軍勢と、そしてその後方に構える信長へと向ける。

「信長さん!未来へ進む為、そのお命を頂戴致します!」
 隣から聞こえるンァルマの声に、やはり心配は要らないと判断したスミは、『蛇目貫』と呼んでいる無銘の打刀を鞘より静かに引き抜いた。

「……そういう事で、一勝負願うよ信長公」
「風の精霊さん、お願いしますっ!」

 言い終えるよりも先に駆け出すスミ。その背をンァルマがただ見送る事もなく、スミと自身を取り巻くようにして呼び出した風の精霊が生み出す鋭い風の刃を、まるで壁の如く幾重も展開する。
 立ちふさがるように次々と殺到してくる秀吉の群れを唸る不可視の刃が片っ端から切り払い、或いは吹き散らすようにしてその侵攻を押し退けていく。

「……合わせて土の精霊さんも、お願いします!」

 次々と撃ち出す風刃の弾幕を持続させながら、ンァルマはじりじりと信長目指して距離を詰め、更に並列して発動させた土の精霊魔法により、虚空に岩盤で作られた即席の盾を幾つも浮上させた。それは風刃をやり過ごして近付き飛びついてくる秀吉を弾き飛ばし、払い除けるようにして、スミとンァルマの進撃を助ける2つ目の壁として、秀吉たちの接近を阻害する。

(……基本的には群がって体当たりしてくる感じかな。立ち回りを間違えなければ、少しは余裕をとって躱せるね)

 先行するスミは、緩急の差をつけた不規則な足運びからまるで本当に分身でもしているかの如く、自身の残像を鮮やかに虚空に残し、秀吉たちを幻惑していく。一瞬、判断に窮した秀吉たちが狼狽えながらもスミに飛びつこうとするが、それらは尽く空を切り、残像にさえ嘲笑われているかのようである。それぞれ地べたに顔を押し付けるような格好で、怨嗟の声を上げるそれらをスミは黙殺しながら、手近な一体へと視線を向ける。

「失礼!」
『フェンッ……!?』

 勢い良く飛び込んでくる個体を咄嗟に靴底で押し止めるようにして踏みつければ、そのまま体重をかけて彼を足場に飛び上がる。重みは然程なくとも、猟兵の身体能力に基づく加速と勢いが十分に乗っているのなら、その衝撃は相当のものだ。踏み潰されて悶絶する秀吉を置いてけぼりに、空高く軽やかに舞うスミを見て、その他の秀吉たちも次々と飛び跳ねて追い縋る。

「よっ、と……!」

迫る一体を踏んづけて更に跳躍の距離と勢いを稼ぎつつ、手にした打刀を払って群がる秀吉を撃ち落とし―― 身を翻しながらに左手は慣れた所作で握ったバタフライナイフをくるりと回し、割れたグリップから飛び出す刃がぎらりと閃く。まるで複製されたかの如く、指の間に挟んだそれが一呼吸の間にその数を二つ、三つ、四つと数を増やし。

「……ほら、プレゼントだ!」
『フェーン!? フェフェフェーン!?』

 願い一つで無限に増殖する鋼の蝶、その名も『dancing Butterfly』。次の刹那、主の手を離れて思い思いに飛び立った。銀の刃で空を切り裂き羽撃く蝶たちの群れは、居並ぶ秀吉を次々と貫き弾けさせては乾いた音を立てて床へと突き立つ。貫かれて弾けた秀吉たちがそれぞれ地べたに赤い血のペンキをぶち撒ける頃には、地に突き立った群れはただの一羽へと戻っていた。
 軽い音ひとつを伴に着地するスミの眼前では、大分数を減らしたとは言え未だ多数の秀吉たちが、主君信長を懸命に護衛し続けている。

(……頃合いかな?)

そう判断したスミがナイフを手放し軽くなった左の手を緩やかに虚空で踊らせる。その五指は、まるで目に見えないキーボードを叩くかのように、何かしらの規則性を帯びてリズムを刻んだ。

『フェ……フェフェンッ!? フェーンフェーン!!』
「……どうした、サルよ? 何、身体が動かぬとな……。……ッ、儂も……か!?」

 不意にびくりと身を震わせた秀吉たちが、次々と項垂れるようにして動きを止める。そしてまるで旧時代のコンピュータRPGの村人が如く、それぞれ思い思いの方向へとうろうろ不規則に歩き回るのだ。
 秀吉自身の意志さえをも無視してひとりでにあちこち歩き回るその身体は、最早本来望むべき忠義で作り上げた鉄壁の防壁としての役割を果たせない。そして彼らが守護するべき主君信長もまた、自身の意図に割り込まれる不協和音に抗う事で、それ以上の身動きを果たせずにいた。

「……小娘。貴様の仕業か」
『……生物でも機械でも、時に理解不能な行動を起こす。それも己の不利になる事をね』

 スミの放った『Spaghetti Code(アンチパターン)』。念で組み上げた不可視のプログラムを敵に放ち、その本来行うべきであった意図に割り込み、精神や駆動への干渉を起こす事で正確な動作を阻害するという妨害型のユーベルコードである。

「今だよ、ンァルマ!!」

 即席で組んだとは言え、今は互いに背中を預け合う相棒の名を呼ぶ。
 無論、彼女は既にその意図を汲んでくれていた。

『複合接続(マルチアクセス)!分子運動制御!』
 
 彼女らを取り巻く風の刃、岩の盾は雲散霧消し、入れ替わりに何処からともなく流れ込んだ風が吹き荒れる。
 閉ざされた城主の間に起こるのは、風の精霊自身が作り出した魔の風だ。どこか不吉な生微温さを帯びたその風が、ゆっくりと禍々しい唸りを上げて吹き付ける勢いを増していく。
 振り返ったスミにンァルマが向けた目配せ。一瞬でその意図を悟れば、回れ右したスミはンァルマの立つその隣にまで慌てて駆け戻る。

『──優しき風は大気となり、全てを赦す風雅なる抱擁!』

『フェーン……!!!!』
「ぐぅおおおおおおおォォォォォッッッ!?」

 直後、ンァルマの前方に収束していく風が大きく膨れ上がり、うろつく秀吉ごと身動きも儘ならぬ信長を飲み込むように吹き抜けていく。風が通り抜けた途端に、秀吉たちの全身表皮が震えて膨れ上がり、次々と弾けて白煙を噴き上げながら彼らはそれ以上の身動きを止めた。その後方では信長もまた、全身の彼方此方から白煙を噴き上げつつも、然し刀を杖にし身を支える事で地に倒れるのを拒んでいた。

「あれは、要するに電子レンジだね……?すさまじい威力だ……!」
「……いえ。先に纏っていた粘液のおかげか、思ったほどの効きではなかったようですねえ」

 ンァルマの発動させた[複合接続]【分子運動制御】風葬(マルチアクセス・マクスウェル・フウソウ)。
 風の精霊が引き起こす分子運動制御でンァルマ自身が敵意を向けた相手を沸騰させる風を叩きつける凶悪なユーベルコードである。

「……っ、く…… ただの涼風かと思えば、まるで死を呼ぶ風よ。どうだ、小娘……この儂に仕えぬか?思うがままの褒美も用意してくれようぞ。貴様が我が軍勢の中に居れば、徳川を滅ぼすのもさぞや愉しかろうな」
「たいへん魅力的なお誘いですが、お断りしておきますね。例え秀吉さんを貰えるとしても、わたしは靡いたりはしませんよ。………………本当ですからね?」

 杖代わりの刀を床より引き抜き、構え直しながら信長の発したその問いへと答えるンァルマの姿に、スミはやはりほんの少しだけ不安を覚えるのだった。

(……可愛いは、正義とか。そういえばアキもそんな事を言いそうだからなあ)

 信長の足元では、運良く障害物の影に身を隠せた、或いは主君のマントに包まるようにして辛うじて難を逃れた秀吉の生き残りがうぞうぞと這い出している。その兵力は、恐らくは最初の3分の1にも満たぬ事だろう。されど、未だ侮れぬ武力を彼らは残していた。オブリビオン・フォーミュラ『織田信長』。そしてその身に宿りし忠臣『豊臣秀吉』彼らを待ち受ける運命の趨勢は未だ不明瞭。彼らを骸の海という名の本能寺に叩き込めるかどうかは、此処からの展開に懸かっている……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

刹羅沢・サクラ
噂に違わぬ威容。まさに魔王を名乗るにふさわしい人のようですね
しかし、滅びを歌わば、己もそれに魅入られているということ
忠臣と共に、ここで眠れ

秀吉の補助がどのように作用するのか明確には読めません
見切りと残像でこちらに飛ぶものはどうにかするにせよ、こちらの攻撃を流される可能性もありますね
立てなくなるほど摩擦を奪われるなら、手裏剣を突き立てて取っ掛かりや足場にしましょう
足止めにもなりますまいが、毒を仕込んだ簪などで秀吉を引き剥がせればよいのですが
それが叶わずとも、隙を見出して渾身の連撃を当てられれば幸い
信長本人は討てずとも、その腹心を引き付ける程度の役はこなしたいですね。



●ことばは宙に舞い、思いは地に残る
「噂に違わぬ威容。まさに魔王を名乗るにふさわしい人のようですね」

 黒く禍々しい南蛮具足を纏い、魔王を自称する織田信長。
 刹羅沢・サクラ(灰鬼・f01965)は彼と対峙して覚えた感想をぽつりと漏らす。

「しかし、滅びを歌わば己もそれに魅入られているということ。……第六天魔王よ。忠臣と共に、ここで眠れ」
「……ならば、そうさせてみれば良い。貴様にそれが出来ると言うのなら」

 魔王は泰然自若としてそう告げながら、一歩踏み出し佩刀『へし切長谷部』の切っ先を正眼の位置にてぴたりと据えた。
 真っ直ぐに突き付けられる剣先と其処に宿る殺気がまるで結界の如く、サクラの接近を静かに阻む。

(秀吉の補助がどのように作用するのか……明確には読めません)

 剣術の理合を知るが故に、これより先へと安易に踏み込めば危ういと言う事をサクラは本能的に理解していた。
 更に、サクラは信長の肉体に憑依している秀吉の備えた権能の得体の知れなさをも警戒している。しかし間合いの内へと踏み込まぬ限り、此方の振るう剣は信長の元には届く事がない。そして今彼女が立っているこの場所でさえ、何時安全圏でなくなるか分かったものではないのだ。

(何時までもお見合いをしていては埒もあきません……)
「どうした、来ぬのならば此方から参るぞ」

 いざ攻め込むか。そう腹を決める刹那に先んじて、信長が動く。その全身を何処からともなく滲み出した黒く透き通った粘液がどろりと包み込み、その姿はまるで瘴気を纏っているかのようだ。そして、息を呑む僅かな暇さえ許さずに信長が前に出る。
 秀吉の権能である『黒粘剣戟術』により、信長の足裏と床との間の摩擦係数は限りなくゼロの領域にまで近付いている。無造作に一歩踏み出しただけで、その身体はまるで氷上をスケートで滑走するが如く前方のサクラ目掛けて加速した。

(……速い!)

 振り抜かれる斬撃を、サクラは咄嗟に飛び退いてやり過ごす。驚異的な速度であれど、ある程度の剣の術理を知る者ならば、その太刀筋そのものを見切る事は不可能ではない。一瞬前までの立ち位置に取り残されていたサクラの残像だけを斬り裂いた空虚な手応えに信長は低く喉を鳴らして笑う。

「その事な体捌き、まるで先の乱波の小僧のようだな」
「っ! ……もちろん、あたしは忍ですからね。……それっ!」

 会話の最中も次々と振るわれる斬撃を紙一重にやり過ごしながら、サクラは告げる。言葉の合間に牽制として信長目掛けて投げ放つ手裏剣は、信長の振るう長谷部に弾かれ、たまたまそこに居た哀れな秀吉に直撃し、またしても血袋がひとつふたつと弾けて散った。

『フェンフェンフェーン!?』
「……まあ、数が減る分にはあたしは有り難いのですが」

 どの道、此方も倒さねばならぬ相手に違いない。聞こえる秀吉の悲鳴にも動じる事なく、サクラは信長との剣戟に意識を集中している。彼我の振るう剣刃が虚空で交差し、噛み合い、その度に響く刃金同士の散らす耳障りな異音と、鮮やかに飛び散る眩い火花。一手繰り出し合わせる度に、サクラは頭の中でタイミングを測り、仕掛けるその時を静かに待つ。粘液に包まれた刀身との打ち合いは常の剣とは手応えが違う。力を込め過ぎればバランスは崩れ、抜き過ぎればそのまま押し切られて斬り倒される予感がする。どうにも細かな感覚が狂わされるが、それでも数合も打ち合えば少しずつ加減の感覚を理解も出来よう。

『阿布那把留耶……』

 仕掛けるなら今だ。そう判断したサクラが唱える祝詞。アフナワルヤ。彼女の亡き母が遺した経典にあてたその響きの意味は、それを今唱える彼女自身にもよく分からない。然し、その祝詞を唱える度に、サクラの意識は自己暗示の深みへと没入していく。忘我、無念無想の境地にまで引き込まれたサクラは、最早信長の斬撃へと追いつき、否……それを追い越すほどの速度で剣を振るい出す。

「……何っ……!」

 攻めのつもりで繰り出した一撃を弾かれ、更に唸りを帯びて鋭く迫る二の太刀を信長は焦燥と共に引き戻した長谷部の鎬に掌を添え、まるで念仏でもするが如き形で受け止めた。耳障りに刃金が哭いて、火花の涙が飛んで散る。まだ来る三の太刀、四の太刀…… 次々と迫るそれらは加速を続け、受けの姿勢を強いられた信長の防御を次第に追い越し、黒い粘液の防御壁ごと、信長の全身彼方此方を斬り裂き始める。

「……っぐ、ぬぅぅぅ!! 何たる速さよ……小癪な!」

 サクラの繰り出す『無念鬼哭辻(ムネンキコクツジ)』。
 振るう為の想念さえをも必要としない、無念無想の境地より繰り出される怒涛の高速多段斬撃である。自我に頼らぬが故に速く鋭い。ほぼ機械的に繰り出す無想の剣ゆえ、見切られてしまえば回避は容易いが、一度その刀刃の届く圏内に敵を捕えてしまえば、刃の織り成す牢獄のように相手を包囲する無数の連撃から逃れる事は困難を極める。一度守勢に廻れば、今信長がそうであるようにただ一方的に斬り刻まれるだけ。

「……っ、この儂を……!」
「……ぅ、あっ……!?」

信長は咄嗟に地を蹴り、粘液の滑りを得た滑走によってサクラの斬撃から大きく後退して、その包囲より抜け出した。
一拍を挟み、連撃の舞踏より開放されたサクラの身体が危うげに傾ぎ、無想の境地より引き戻された身体を限界を超えて無数の連斬を繰り出し続けた負荷が一気に蝕んでゆく。
咄嗟に地に突き立てた刀にて、倒れる事を辛うじて堪えながら、サクラは後退した魔王の姿をじっと見る。

「……この儂が……こうして無様に、後ろに逃がれるより……他ない有様だとは……まこと恐ろしい剣よ、忍の小娘。……いよいよ認めねばならぬ。……貴様らの振るう刃、我が首に届き得る脅威であると……!」
「……そう、ですとも。……今日ここで、貴方は……終わるのです、信長殿……!」

 呼吸を整えながら、サクラはゆっくりと傾いだ身体を引き戻しつつ周囲を確かめる。無念鬼哭辻によって縦横無尽に振るわれた刃は、サクラも知らぬ間に信長に巻き込まれる形で、幾体もの秀吉を斬っては散らしていたようだ。巻き込まれぬように、或いは主君の邪魔にならぬように遠巻きに見守っていた生き残りたちが、信長の元に戻るまでの僅かな隙を、続く猟兵たちへと繋げよう。静かにちらりと後方を振り返る。大丈夫―― 少しだけ任せて、息を整えて休むとしよう。

 どろりどろり。信長のその身に纏わり付いていた血混じりの粘液がずるりと床へ落ち、ゆっくりと広がっていく。粘液越しではない、抜き身の輝く白刃を居並ぶ猟兵たちに突き付け、信長は高らかに吠えた。

「……是非もなし! 纏めて掛かってくるが良い。この信長と切り結ぶ栄誉を貴様らにもくれてやろうぞ」

 まだ終われない。刻み足りない。この地に、己のやり遺した全てを、今こそ叩き付けてやる。
 どれだけの思いを連ねたとて、確かな証を残さねば、永遠には届くことすらないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナターシャ・フォーサイス
【祓罪】
WIZ
貴方が第六天魔王なのですね。
そして、配下たる哀れな魂を憑依させると。
導かれなお、使役するというのは…使徒として見過ごせません。
貴方もまた、楽園への道行きへと導きましょう。

先手を取って秀吉さんを召喚するようですが、似たようなことは私もできるのです。
そして、弱点もまた知っていると。
ですので、機械仕掛けの天使となり皆様を守護する結界を張りましょう。
天使を召喚し闇祓う光を以て皆導くのです。
貴方が群を率いるなら、我々もまた同じく群で当たるまで。

槍はひらりさんがあたってくれるでしょう。
天使たちに命じ、援護させましょう。
そうして隙が生じたのなら…聖句を紡ぎ、天使たちと共に楽園へ誘いましょう。


黒鋼・ひらり
【祓罪】
…先ずはざまあみろ、って、言ってやるわね
目論見が御破産の所悪いけど…最後の最期まで徹底的に邪魔させて貰うわ
悪(あんた)の思惑なんか何一つ果させてやんない

黒槍に対しては磁力操作能力展開…磁力反発で弾き逸らす、ないし勢いを削ぎ(念動力、吹き飛ばし)、逸らし切れなかった槍には咄嗟に斧槍を遮るように転送して相殺(武器受け、咄嗟の一撃、第六感)、それでも抜けて来るなら義手で叩き落とし迎撃…ナターシャの結界も併せて凌ぎ切ればいいけど

初撃凌ぎきればナターシャの攻撃に併せ私もUC発動…鋼鉄の鎧を纏った相手を磁力で阻害しながら渾身の鎖鉄球で…ぶっ潰してやるわ!(怪力、属性攻撃、投擲、おびき寄せ、鎧砕き)


ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブ歓迎
○連携ご自由に

(信長と他猟兵との戦いが終わるまで、屋内でその戦いを肴にどこぞの蔵から頂いた酒をちびちび)

○先制対応
敵の攻撃方法を考えりゃ、受け止めるよか見極めて反らすのが理想的じゃな。
攻撃を確認したら【オーラ防御】を展開、威力を殺し【早業】の【盾受け】で無数の黒槍を反らし続けよう。
被弾0とはいかんじゃろ、【激痛耐性】で耐える【覚悟】は決めておくぞ。

○攻撃
こっからはわしの【カウンター】だ!
槍翼の揮士に合図をして【選択したUC】で天空から千の槍頭を降らせる。
それを囮に姿勢低く【ダッシュ】で近づき、【装備1】を【鎧無視攻撃】で突き入れ、蒼炎の【属性攻撃】で蒸し焼きにしたろうかの。



●蒼の炎と共に散る
「……先ずはざまあみろ、って、言ってやるわね」

 サクラの後方よりゆっくりと信長に向けて歩みを進めるダークスーツ姿の少女がひとり。黒鋼・ひらり(鐵の彗星・f18062)である。無造作に腕に絡ませた黒い鎖が引きずるそれは、首輪を着けた子犬……などではない。或いはそんな姿も似合っていたかも知れないが。
 一歩。そしてまた一歩と。少女が脚を踏み出す度に、その足元では引きずられた巨大な鉄球が床板を無惨に削り、抉る。超重量級の得物、鎖鉄球を従えて、少女は眼前の信長を真っ直ぐに睨んだ。

「目論見が御破産の所悪いけど……最後の最期まで徹底的に邪魔させて貰うわ。悪(あんた)の思惑なんか何一つ果させてやんない」
「何、儂に気兼ねをする必要はない。戦いとはそういうものだ。手管の如何を問わず相手を捻じ伏せ、勝った方が我を通す……単純な話だ」

「貴方が第六天魔王なのですね。そして、配下たる哀れな魂を憑依させると」

 信長が言葉を続ける間に、ひらりの隣に進み出た者がひとり。年頃はひらりよりも若干上だろうか。
 その少女―― ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)は、どこか憂いを帯びた声と視線を眼前の魔王、そして彼が従える臣下たちへと向けた。

「導かれなお、使役するというのは……使徒として見過ごせません。貴方もまた、楽園への道行きへと導きましょう」
『フェンフェン!!』
「ははは。哀れまれる謂れなど無いぞ、とサルめが喚いておるわ。だが、そうさな……。貴様らが儂達を倒せるのならば、正しくその言葉通りの結末になるのだろうよ」

 遠くから抗議しているかの如きに鳴き声をあげる忠臣たちをまるで宥めでもするかのように緩く片手を振りつつ、第六天魔王は居並ぶ両者をそれぞれ一瞥し、改めて愛刀を静かに構え直して見せる。

「では、そのように」
「……で、あるか。なれば、地獄だろうと極楽だろうと貴様の好きに導いてみせよ。この第六天魔王、織田信長をそう出来るものならば――」

「……っと、ちょうど酒が切れたわ。そんじゃあそろそろわしも混ぜてもらって良いかの」
「おう、まだ居ったか。今更ひとりふたり増えようと違いはあるまい」

 いざ激突するかと思われたそのタイミングに不意に響いた低い声。
 そちらへと視線を向ければ、広間の隅の壁には凭れて逆さの徳利を手にした壮年の男がひとり胡座を掻いて座り込んでいた。
 それまで猟兵たちの激突を見物しながらちびちびと酒を愉しんでいたゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)であったが、中身が空になった徳利を足元に静かに置くと立ち上がり、太い筋肉質なその首をごきごきと左右に揺すって鳴らし、続けてゆっくりと左右の肩を回しながら信長の前へと歩み出る。

 ひらり、ナターシャ、ゲンジロウの3人を前にして、第六天魔王は余裕を崩さない。否、既に覚悟を決めているが故に、動じることがないのだ。

「……サルよ、もう一働きせよ」
『フェンフェン!!』

 相当に数を減らしてこそ居るものの、秀吉たちは未だに戦列を形作るほどの数を留めてはいる。最早その軍勢は交戦開始直後程の脅威足り得ぬとは言え、それでも猟兵たちが警戒を解かぬ理由にはなるまい。その猟兵たちの視界いっぱいに広がり、押し寄せる小さな獣たちの群れに対し、ナターシャが一歩大きく前に出る。

「召喚術のたぐい、似たようなことは私もできるのです」

 そして、弱点もまた知っている。あえて言葉にせず、視線に込めて信長を見据える。

「面白い……ならば貴様はこれをどう凌ぐか!」

吠えるような信長に、ナスターシャは言葉では答えない。
代わりに、祈りを捧げるように両手を胸の前で組み、自分の中に存在する力を解き放つ。
今こそ、力を使うべき時だ。そのために、嘗ての名を捨て、生身の肉体を捨てて機械じかけの身体も得たのだから。

『まだ見ぬ楽園、その一端。我らが同胞を導くため、闇と罪を祓い、救い誘いましょう』

 眩い輝きがナスターシャの足元を中心に広がり、大きく膨れ上がっては無数の光の粒子を散らして弾け飛ぶ。
そして、其処に立つナスターシャの背には機械仕掛けの一対の大きな翼が生まれ、緩やかな羽ばたきと共にその身を虚空へと浮き上がらせた。その身に纏う、対峙する者を萎縮させるような神々しさに、殺到しようとしていた秀吉たちが気圧され、その場で身動ぎ出来ずに硬直していく。

「……貴様、その姿は……! いや、貴様は一体何をしている……!」
「貴方が群を率いるなら、我々もまた同じく群で当たるまで。我が天使たちと共に、貴方達の罪を焼き清めましょう」

 その命を削ることを代償に、改造されたナスターシャの肉体を機械仕掛けの大天使へと変化させ、同時に天使たちを呼び出し率いる彼女のユーベルコード『召喚:楽園の結界(サモン・サンクチュアリ)』が発動したのだ。
 機械の翼がはためく度に、天より光が射して次々とナスターシャの周囲に光り輝く天使たちが舞い降り、敵味方を問わず神々しい輝きの結界にて包み込んでいく。
 味方には強化の加護を、悪しき敵には罪を祓う浄化の光による責め苦を与える奇跡によって、光を浴びた端から次々と秀吉たちが灼かれては爆ぜ散り、跡形もなく消え去っていく。

「……ッ、サルよ! もう良い、戻れッ!!」
『フェーン!!』

 辛うじて消し飛ばずに済んだ秀吉たちの生き残りが、慌てて主君の元に駆け寄れば次々とその身体へと飛びついていく。決してじゃれついている訳ではない。その黒い甲冑にまるで吸い込まれるように、秀吉たちは溶け消えていく。

「あんじゃ、合体かの……!」
「もともと憑依とかやってたわよ、あいつら」

 秀吉を吸収した信長の鎧から湧き上がる黒い瘴気。先の粘液よりも尚、禍々しく色濃い黒い霧がゆっくりと広がり―― その不吉さに猟兵たちは静かに緊張を覚えた。じり、と一歩進む信長の力強い歩みには、結界より照射される眩い浄化の輝きも効果を鈍らせる。

「……おい、嬢ちゃん。すごいのが来るぞ」
「わかってる!」

 それぞれ戦闘経験を十分に積んだ者たちだ。ゲンジロウもひらりもほぼ同時に身構え、次に襲いかかるであろう苛烈な攻撃に備えた体勢を整える。

「猟兵どもよ、儂を愉しませてくれた褒美だ。存分に喰らうが良いわ!!」
「やらせません……ッ!!」

 信長の裂帛の咆哮と共に、瘴気を纏う漆黒の鋼鎧から無数の黒い槍の穂先が、まるで雲丹か栗の如くびっしりと生え揃い―― 次の刹那にはそれらが一斉に撃ち出された。まるで黒い雨の如く次々と降り注ぐそれらを前に、ゲンジロウとひらりの前に立ち塞がったナスターシャは従えた天使たちを寄せ合い、結界を重ねて分厚い盾とすることでそれを辛くも凌ぐ。

(何という威力……! 然し、これで幾らかでも皆様の被害を抑えなければ……!)

 一発一発を弾いたとしても、無尽蔵とも思えるような勢いで次々と撃ち出される黒槍はその連射速度を微塵も緩めはしない。
 幾重にも重ねた強力な結界であれど、まるで機関砲の如く勢い落とさず撃ち続けられる猛攻によってその障壁はじりじりと削られつつあった。

「……ありゃいつまでも受け止めきれんわな」
「前に出るしかないわね」

 ナスターシャの障壁によってなんとか防護されてはいるが、あの猛攻の前に彼女一人に頼って何時まで耐え切れるかは不明瞭。このまま押し切られる前に打って出て、信長を叩く。ゲンジロウとひらりの出した結論はほぼ同じだ。

「ふんっ!!」
ゲンジロウは鍛え込まれたその肉体に湧き上がるオーラをまるで鎧のように纏わせながら、結界より前に躍り出る。
逞しいその両腕を体の前方で交差させ、飛び来る黒槍を尽くインパクトの瞬間に傾斜を付けて構えた筋肉の盾によって、弾いて往なす。無論、着弾の際に痛みはあるが、鍛え込んだ肉体と蓄積した戦闘経験を信じている。
(……きっとこいつが一番被害を抑えられるわい)

「……っ!! ホント、数だけは多くて面倒だわっ!」
悪態をつきながら、ひらりは磁力操作能力によりその身に纏った力場の反発によって、飛んでくる槍を次々と弾き、叩き落としていく。
力場だけで到底防げるような勢いではない為、別空間に備えた『武器庫』より取り寄せた斧槍【ミーティア】を盾にして不意の一撃を払い除け、それでも受け切れぬものは手袋で偽装した頑丈な右腕の義手にて掴み、叩き落とし、へし折りながら前へ前へと進み出る。

「……これを、抜けて来るか……! 流石だ猟兵! 長篠の武田どもよりも歌舞いておるわ!」

 降り注ぐ黒槍の豪雨を駆け抜け、気付けば彼我の距離は最早接近戦の間合いだ。
 ゲンジロウが前へと踏み込み、吠える。

「こっからはわしらのターンだ!」
その叫びを合図代わりにして、信長の頭上に現れる影。
それはパワードスーツをその身に纏う、サイボーグの突槍飛兵『槍翼の揮士』だ。

「……待ちくたびれましたよ、ゲンジロウさん」
「悪ぃな槍翼の揮士、遠慮なくぶっ放してくれや!」

 軽やかな飛翔から携えた槍を大きく引き絞る揮士―― その鋭い穂先は標的たる織田信長を真っ直ぐに捉えていた。
「ターゲットロックオン!翼槍…展開!穿て、一揮槍千!!』

 刹那、瞬時に千にも及ぶ刺突の連打が、まるで銀色の雨が如くに信長を目掛けて降り注ぐ。

「……この期に及んで伏兵となッ!? おのれェェェェェッ!!!!」

 篠突く銀雨が信長を襲う様を見届ける事なく、ゲンジロウは身を低く沈めながら床上を全力疾走し、走りながら引き抜いていたスティレットを逆手から順手へと手の中で回して握り直す。揮士の放つ槍の雨に晒され、所々が亀裂の走り砕け始めた信長の黒鎧の隙間を狙って、その尖った鋭い刀身が閃く。刃に刻まれたルーン文字が青く輝きながら、信長の鎧へと吸い込まれ―― 

「……ぐぅおおおおおおおおおァァァァァァッ!!!!!」
『フェ、フェーンッ!?』

 ゲンジロウの突き刺したスティレット。その銘もずばり〝劫火〟。その刃に纏う蒼炎は、万象を灰燼に帰す火力を備えている。黒い鎧の彼方此方の亀裂から蒼い炎を噴き上げて、その身を焼き焦がす信長が天に向けて吠え、信長の鎧に宿る秀吉もまた、蒼炎の熱量による苦痛に叫ぶ声を上げて悶えて苦しむ。ゲンジロウがスティレットを捻り込みながら引き抜くと同時、槍翼の揮士はまるで羽根のような軽やかさでゲンジロウの背後へと着地する。

「ほい、ご苦労さん。……何時もながら見事な槍捌きだわい」
「こ、これはまるで本能寺……! くはは、やはり儂のさだめは焔に灼かれる終焉とでも、言うのか……」

 その身を焔に包みながらよろめく信長。その眼前に迫るは、ブラックスーツの彼方此方を槍に裂かれながらもゲンジロウ同様にそのダメージを最小限に留めてくぐり抜けてきたひらりである。

「……そんなに火葬が嫌なら、こっちで終わりにしてやるわ!」
 
 じゃ、らんッ―― 黒い鎖が不吉に鳴り響き、大地を抉る鉄球が大きく虚空へと舞い上がる。同時に地を蹴り、空高く舞い上がるひらり。鉄球と彼女を繋ぐ黒い鎖『プラズマテイル』がその名の如く帯電し、鮮やかなスパークの輝きを迸らせる。

「第六天魔王、織田信長ッ!!!!」
「……っ!!」

 頭上で吠える少女を睨み上げながらも、信長は身動きを取ることが出来なかった。ひらりより放射される磁力によって、信長の鋼鎧は抑え付けられ、身動きを阻害されているのだ。それに加え――

「……どうか、そのままで。今こそ貴方が天に還る時が来ました」

 黒槍の雨が降り止んだ事で、ナスターシャもまたその結界を信長ただ一人に向けて行使する事が可能となっていたのだ。奇襲による幻惑と絶え間ない猛攻による精神的な憔悴。電磁波によって沸騰した死の風、更には身体の奥深くよりその身を焼き焦がす焔によるダメージ。そして、磁力と結界の二重束縛。これまでの戦いで猟兵たちが与えてきた全ての要素が今この瞬間、第六天魔王『織田信長』に避けられぬ滅びのさだめを決定づけた。

「ここがあんたの終わりよッ! ぶっ潰してやるわ!」
「ぐぅっ、が……はあァァァァッ!! ば、馬鹿なァ…… この、儂が…… この儂がァァァァ!!!!」

頭上より振り下ろされる鉄槌。渾身の一打に上乗せした電磁加速によって更に勢いを増した超重武器を叩き付けられる衝撃に、信長の胴鎧は肩口から無惨に拉げるように陥没して、其処から無数に走った亀裂によって完全に砕け散る。

『フェ、フェーン……!』

 同時に信長の鎧に宿っていた忠臣豊臣秀吉の意志と力もまた、依代を失った事で口惜しげな鳴き声と共に霧散していく。まるで忠義を果たせなかった事を悔いるかのような哀切を帯びた声。

 信長の撃破。それだけでは飽き足らぬ威力は、大地を深く刳り大きく爆ぜさせ、安土城を地響きと共に崩壊させていく。崩れ落ちる城の中、信長がよろめき、崩落した床から階下に大きく開いた底無しの穴へと落ちていく様を、ひらりは静かに見下ろす。その後ろでは、次々と退避していく猟兵たち。変身を解いて疲弊したナスターシャを槍翼の揮士が肩を貸し支えながら共に退いていく。

「……見事、である。……猟兵どもよ……。見事である……。 ああ……竹千代、なんとも癪だが貴様の勝ちだ……」

 そう告げて、奈落の如き大穴へと第六天魔王『織田信長』はゆっくりと堕ちていく。
 その最中、満身創痍となった肉体の彼方此方から、蒼い炎が噴き上がり、その身をじわじわと焼き焦がし、少しずつ焼け朽ち散っていく様を、少女は静かに見下ろしていた。

「……儂は永久に、この世すべての記憶に刻まれる魔王に……なってやろうと思うたのだがな……」
「……言ったでしょ。あんたの思惑なんか、何一つ果させてやんないってね」

 少女の声に、最早首だけとなった信長の口元が微かに笑う。

(―――― 是非もなし)

 そう、彼の口元が動いたのだと少女が気付いた頃には、織田信長の身体は蒼白い炎の粉をまるで蝶のように散らし、跡形もなく焼滅し終えるところであった。

「…………まったくもう」

 そう独り言ちながら、ひらりはゆっくりと踵を返し、仲間たちの待つ後方へと歩き出す。
 その途中、うんざりだと言いたげに後頭部を掻いて、一度だけ後ろを振り向いて少女は呟いた。

「……忘れるまでは、あんたのこと……一応覚えといてあげるわ」 

 その呟きは吹き抜ける風に飲まれ、誰の耳にも届かない。
 かくして信長の野望は、その集大成たる安土城と共に、砕けて散った。
 エンパイアウォーはまだ終わらない。しかしそれでも猟兵たちは、目指すべき勝利へとまた一歩、着実に歩みを進めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月26日


挿絵イラスト