エンパイアウォー㉞~命燃やし魔王は散りゆく
「遂にオブリビオン・フォーミュラ、第六天魔王『織田信長』との決戦の時がやってきた」
魔空安土城の映像を映すグリモアベースで、バルモア・グレンブレア(人間の戦場傭兵・f02136)が気合十分な猟兵を迎える。
「諸君が守り通した首塚の一族が魔空安土城への道を作った。城を守る信長軍も幕府軍が相手をしている。諸君の任務は唯一つ。第六天魔王『織田信長』を討つことだ」
長い戦もとうとう最終局面。敵の総大将である織田信長との戦いがやってきた。
「織田信長は特殊な能力を有している。秘術『魔軍転生』と呼ばれるそれは、配下の魔軍将を背後霊のように『憑装』させて戦うというものだ」
己の力だけでなく、そこに魔軍将の力を上乗せしてさらなる高みへと昇る事ができるのだ。
「諸君が相手をする信長は甲斐の虎『武田信玄』の力を憑依させている。武田騎馬軍団を率いる武名轟く魔軍将だ。復活は阻止したものの、こうして力だけは信長に届いているようだ」
信長単独といっても、その力は底知れない。全力で当たらなくては勝つのが難しいだろう。
「そして信長は必ず先手を取って攻撃してくる。まず倒されぬ対策をせねばこちらの攻撃を当てるのも難しいだろう。各々の得意とする手法で敵の必殺の攻撃に耐えねばならん」
こちらのユーベルコードよりも相手のユーベルコードが先に発動する。ユーベルコードに頼る方法では防御は難しいだろう。
「これに勝てば戦争は決着となる。その手に勝利を掴む為、全力で以って魔王に挑め」
バルモアの言葉に頷き、無言で猟兵は魔空安土城へと繋がるゲートを潜る。見送るバルモアの目には、その背中が必ず勝ってみせると語っているように頼もしく映った。
天木一
こんにちは天木一です。信長との決戦となります。がんばりましょう! しかし信長の台詞を見ると脳内ですごく貫禄ある声に変換されるのは皆さんも同じだと思います!
強敵相手ですので、普段よりも判定厳しいです。ご了承ください。
●
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●先制攻撃
第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
●
とうとうエンパイアウォー最終決戦です。武田信玄の力を得た信長を討つ為に死力を尽くしてください!
第1章 ボス戦
『第六天魔王『織田信長』信玄装』
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POW : 風林火山
【渦巻く炎の刀】【黒曜石の全身甲冑】【嵐を呼ぶ樹木の翼】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 甲斐の虎
自身の身長の2倍の【白虎状態に変身した武田信玄】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : 武田騎馬軍団
レベル×5本の【武田軍】属性の【騎馬武者】を放つ。
イラスト:UMEn人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
白斑・物九郎
●SPD
・対先制
相手の得物は刀
乗騎はデカい虎
主な攻撃手段は「刀で斬撃か乗騎で蹂躙か」ってトコでしょうかや
だってんなら、まずは敵攻撃から逃げて逃げて躱し抜きまさァ
敵先制ターンの間は背も向けて全速力【ダッシュ】
俺めの【野生の勘】がありゃ、後ろを見もしねえ程度のマネは決して無謀じゃナシ
なんなら目で見て躱すよか冴えるくらいっスよ
・反撃
全速ダッシュそのまま、後方を伺い見るようにL95式スマートフォンを手鏡モードでこっそり起動
信長を「視認」したら――【開門】発動!
門の入口を目の前に設定
門の出口は信長の頭上・後方に設定
走る勢いそのまま瞬間移動
【怪力】でブン回す魔鍵で信長を白虎諸共【串刺し】にしてやりまさァ!
●魔空安土城の主
招かれざる者を阻む不可侵だった魔空安土城。その敵の本丸へと遂に猟兵は足を踏み入れる。何十人も入れそうな大広間が幾つも続くような広い城内。その先で待つは第六天魔王『織田信長』。敵の総大将だ。その首を求め猟兵は戦意高く、強敵に戦いを挑む。
「相手の得物は刀、乗騎はデカい虎、主な攻撃手段は『刀で斬撃か乗騎で蹂躙か』ってトコでしょうかや」
相手の手札を推測しながら白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は城内を進む。
「だってんなら、まずは敵攻撃から逃げて逃げて躱し抜きまさァ」
悪戯っぽく笑う物九郎は逃げの一手に賭けることにする。
「現れたか、猟兵よ」
堂々と姿を現した偉丈夫は、ただ前に立っただけでその貫禄に畏怖を覚える。その名は織田信長。この城の主にして敵軍の総大将その人だった。
「ここまで来れたそなたらに対する油断はない。我が秘術『魔軍転生』を披露してくれよう。信玄よ、儂に憑装せよ……!」
信長が宙に語り掛けると、そこに虎の顔をした武者が姿を現した。それは魔軍将『武田信玄』。その武将が白虎へと変身し、信長がその背に騎乗する。
「征けい、我が前にあるものは全て敵ぞ、撫で斬りにしてくれる」
信長の宣言に白虎が猛々しく咆え、飛ぶように駆け出した。
「まともにやり合うつもりなんざ、これぽっちも持ち合わせていやしませんさァ」
だが物九郎は背を向けて全力で逃げ出していた。敵の走り難そうな狭い部屋や通路を通り、斬られぬように兎に角逃げる。後ろも見ずに逃げ続け、迫る足音に気付く。
「韋駄天か、だがこの信玄よりは逃げられぬぞ」
追いついた信長が騎乗から大業物の刀を振るう。
「後ろを見もしねえ程度のマネは決して無謀じゃナシ。なんなら目で見て躱すよか冴えるくらいっスよ」
だがまるで背中に眼がついているように、勘を働かせた物九郎は走りながら飛び退いて躱した。
「ほう……その勘働き、戦場では重宝するものぞ」
物九郎の逃げ足を褒めながら、信長は距離をさらに詰め、飛び掛かる白虎がその爪で物九郎の背を浅く切り裂いた。
「痛いっスね、そんな伸びすぎた爪は切らないといけませんでよ」
背を切られても足を止めず、物九郎はL95式スマートフォンを手鏡モードでこっそり起動し背後を窺う。その画像に信長の姿がしっかりと映った。
――【開門】発動!
物九郎はユーベルブラッドを発動し、空間と空間を結ぶ門が創り出される。その入り口は目の前に、そして出口は敵の頭上へと生み出された。
「串刺しにしてやりまさァ!」
門に飛び込み頭上に信長の頭上に跳んだ物九郎は、魔鍵を突き下ろす。
「なんと!?」
気配に気付き振り向いた信長の肩が鎧ごと抉られ、その反応に従ってすぐさま反転した白虎の脇腹と右足先を貫いた。
「これで爪が短くなりやしたね」
着地した物九郎が仕返ししてやったと口元を歪める。
「逃げに徹していたのはこの一手の為であったか、やはり猟兵とは油断できぬ武士のようだ」
傷ついても冷静に信長が刀を横薙ぎに振るう。
「こりゃ潮時でしょっかや」
初手で仕留められなかった物九郎はこれ以上は不利と見て、すぐさま新たな門を潜って姿を消した。
「……逃げたか、引き際も見事なものだ」
それを無理に追おうとせずに、信長は新たな敵に向けて白虎を転進させた。
大成功
🔵🔵🔵
樫倉・巽
これだけの相手と戦えるとあっては心が躍るな
命を賭けて一太刀くれてやるとしよう
まずは名乗り、刀を抜き、相手と対峙する
「樫倉巽、ただの蜥蜴だ。一勝負願おうか」
戦いとは相手あってのこと
相手の手に合わせた技を使う
五行に則り相手の力を減ずるように立ち振る舞う
炎には流れる水のように立ち振る舞い
流れるような連撃で相手の型を崩し
石(土)には木に落ちる雷鳴のように刀を轟かせ振り下ろし
岩を割って生える草のように鎧を割り
樹木には鋼のように心を静め守りを固め
近づいたところを確実に斬る
無論勝負を決するのは気の力
たとえ斬られても斬り返す覚悟
「お前が何回出てくるかなど関係はない
俺には目の前のお前が全てだ
ゆくぞ」
●立ち合い
「これだけの相手と戦えるとあっては心が躍るな。命を賭けて一太刀くれてやるとしよう」
死闘を前に心昂らせ、樫倉・巽(雪下の志・f04347)は信長の前に姿を現す。
「樫倉巽、ただの蜥蜴だ。一勝負願おうか」
隠れもせずに堂々と名乗りを上げると、使い込まれた刀を抜き放つ。
「第六天魔王・織田信長である! この首欲しくば命を懸けよ!」
騎乗の信長もまた名乗りに応じ、白虎を踏み込ませると炎を纏う刀を上段から振り下ろした。
「激しき烈火には流れる水の如く」
巽は身体の力を緩め、刀で柔軟に受け流し一撃必殺の一太刀を躱した。
「硬き石には雷鳴の如き剣閃を」
そして大振りの後の隙を突き、巽は鋭く刀を振るい胴を斬り、岩を割って生える草のように鎧を割る。
「五行相克か、ならばその理を超越してみせよう」
その術理に気付いた信長は、嵐を呼ぶ樹木の翼を広げ、周囲を呑み込むように風が渦巻き、畳が舞飛び襖が吹き飛ぶ。
「樹木には鋼のように……」
心静めた巽は近づく樹の枝を斬り捨て、腰を落とし受けの体勢に入る。
「まだまだ征くぞ!」
翼が羽ばたいて嵐を起こし、巻き上げる突風によって巽の身体を浮かせた。
「この儂をそのような世の理で縛ることはできぬ!」
燃え上がる刀が斬り上げられ、巽は受け流そうとするが、宙に浮いていては踏ん張りが効かずに弾き飛ばされて天井にぶつかった。
「そもこの身が此処にある事実が既に世の理を越えておる。儂は何度倒れようとも蘇る……それが魔王信長よ!」
白虎が素早く落下地点に駆け、大喝し信長は落下して来る巽を斬り上げる。
「お前が何回出てくるかなど関係はない」
その刃を巽は刀で受け止め、反動で距離を離して着地する。
「俺には目の前のお前が全てだ。ゆくぞ」
鋭い気迫を放って巽は前に出る。元より相手が格上なのはわかっている。勝負を決するは気の力。己が気力で実力差を覆すことだけが勝利への道だと、脇目も振らずに刀を打ち込む。
「なんとも真っ直ぐな剣よ。搦め手ならば容易くあしらえようが――それは覇道にあらず」
対する信長も正面から刀を振るい刃を交える。
もはや言葉は不要。互いが刃を以って己が意を貫く。
信長の袈裟に振り下ろす裂帛の一撃を巽は刃を滑らせるように受け流し、胴を抜く。それを身を引いて躱した信長は、すぐさま跳ね上げるように下段から斬り上げた。
巽は上体を逸らして避けるが、刃は浅く胸から顎を斬り裂く。血を流しながらも引かず、巽はすぐに重心を前に移し、踏み込むともう一度胴を薙ぎ、鎧に深々と傷を作り、刃が肉に達した。そのまま骨を断たんと力を込めたところへ、信長は大上段から頭目掛けて燃える刀を振り下ろした。必殺の一刀を防ぐ為、巽は刀を戻し受け流そうとする。だが信長は振るう角度を僅かに変え、その刀の真正面にぶち当てる。
「ぬぅん!」
「ぐっ!!」
力勝負。信長は上から頭を叩き割らんと押し込め、そうはさせじと巽が両の腕の筋肉を盛り上がらせて押し返す。力勝負に持ち込んだ信長が優位となり、刃は巽の頭に当たり血が流れ出す。ならばと巽は崩れ落ちるように力を抜いて刃を躱し、信長の左脚を斬った。だが続く信長の横一閃を受けて吹き飛ばされ、襖を破って隣の部屋を転がった。
成功
🔵🔵🔴
祇条・結月
魔王に甲斐の虎
ドリームタッグだ、なんて気楽は言えないね
……行こうか。億にひとつ、を摘み取りに
騎乗の瞬間すら遅滞にならないってやりにくいな
相対するだけで圧力がわかる
でも……うん。ここへ来たときから【覚悟】してる
接近戦に持ち込まれるのは避けたい
常に間合いを保ちながら中距離で戦う
苦無を【スナイパー】で【投擲】して虎、できれば足を狙っていく
将を射んと欲すれば、ってところ
銀の糸で咄嗟に【罠使い】を駆使して動きを制限していく
攻撃を完全に捌き切れなくても【激痛耐性】で堪えて動いて、それでもどうしても振り切れないなら
……そう思わせるのが目的
トドメに踏み込んできたところにカウンターで銀の鍵の光を放って削る
ティル・レーヴェ
魔将軍を憑依させて戦うとは……
さて、妾への先制は騎馬軍か
騎馬、と言うならば馬の脚を狙えば多少は防げぬか?
全ては無理でも多少相殺して残りを耐えることは出来ようか……?
UCの羽根で馬の脚を狙いつつ
外しても陣にて身を癒せる様に立ち回ってみる
受けるダメージは勇気を持って己を鼓舞し破魔の力で耐えてみせよう
初撃を凌いだらば花の陣にて己を強化して信長に喰らいつく
妾のUCは攻防一体
例え羽根が彼奴に届かねども
続く者への癒しの陣となろう
戦場に立つのは1人では無い
妾の前にも妾の後ろにも志を同じくにする猟兵達がおる
この世界を護る……護ってみせる
此処を故郷とする者がおるのじゃから
友を、民を、その未来を
妾は護りたいのじゃ
●武田の赤備え
「この儂と剣を交えてまだ生きながらえているとは」
信長が称賛し、白虎も高らかに咆える。その視線には新たな猟兵が映っていた。
「それが何人も現れるとはな。ならばこちらも数、それも精兵で相手をしてやろう。武田が最強の騎兵。赤備えの武者を目に焼き付けよ!」
信長の周囲にずらりと騎馬に乗った赤い甲冑を纏う武者の集団が現れる。数え切れぬほどの人数に、広間が覆い尽くされる。
「疾く征け! 最強の名、実力で以って知らしめてやれい!」
信長が気勢を上げると、火が点いたように赤き騎兵集団が一斉に駆け出した。
「魔将軍を憑依させて戦うとは……」
その姿にティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は驚きの目を向ける。
「驚きの能力じゃが……さて、驚いてばかりもいられぬ。妾への先制に備えねばな」
予知による情報により、敵から騎兵の軍団が向けられることを知っていた。
「騎馬軍か。騎馬、と言うならば馬の脚を狙えば多少は防げぬか?」
全ては無理にしても、多少は騎兵の戦力を落とし耐えられるようにならないかとティルは考え、実行に移すことにする。
「まずは馬の足を狙うのじゃ」
ティルは翼を羽ばたかせ、複数の羽根を矢のように飛ばす。誘導し正確に狙った脚にそれを喰らい、何体もの騎馬が前のめりに倒れ武者が投げ出される。
「怯むな! その程度で止まれば武田の名が泣こうぞ!」
信長が叱咤すると、その通りだとばかりに白虎が咆える。士気が一気に回復した騎兵が羽根による迎撃に怯まずに、何体倒れようとも構わず突進してきた。
「気合十分のようじゃな、じゃがこちらも覚悟はできておる」
己を鼓舞し、ティルは翼で体を覆うように守り破魔の力を宿す。
そこへ雄々しく騎兵の群れが襲い掛かった。槍を突き出し、突進による体当たりを敢行してティルの身体を軽々と吹き飛ばした。何度も撥ね飛ばされ床を転がる。
「ごほっ、強烈な一撃じゃ……!」
意識が飛びそうになるのを気合で堪え、うつ伏せに倒れたまま口の端から血を流すティルは霞む目で敵を見る。
「まだじゃ……まだやれる……」
頭を振って意識をはっきりさせたティルは、敵の馬群が反転しまた突撃を仕掛けようとしている姿が目に映った。
「この世界を護る……護ってみせる」
ティルの翼から舞い落ちる羽根がその場に花の魔法陣を描く。それは癒しをもたらし幾分か身体を動かす余裕が出る。
「此処を故郷とする者がおるのじゃから、友を、民を、その未来を……妾は護りたいのじゃ」
気力を振り絞りティルは立ち上がる。そしてまた羽根を飛ばし、一騎でも多く騎兵を倒し、信長への道を作る。だが放たれる羽根は信長の刀に斬り払われた。
「例え羽根が彼奴に届かねども、続く者への癒しの陣となろう」
自らの攻撃が届かずとも決してそれは無駄ではない。なぜならば切り開いた道を共に進む、仲間達がいるからだ。その時ティルの横を素早く駆け抜けた人影が辺りの羽根を舞い散らしながら信長へと向かう。
「後は任せたのじゃ……」
膝をついたティルはその背中を見送り微笑んで、騎兵の意識をこちらに向けようと羽根を放ち続けた。
「魔王に甲斐の虎。ドリームタッグだ、なんて気楽は言えないね」
強敵2体を同時に相手取るようなものだと、混乱する騎兵達の隙間を駆け抜けながら祇条・結月(キーメイカー・f02067)は戦いの厳しさを想像する。
「……行こうか。億にひとつ、を摘み取りに」
一人では無理でも、こうして集まった猟兵の力が積み重なれば不可能はないと信長に戦いを挑む。
「新手か、儂の前に立つという事がどういう事か、理解しているのであろうな?」
白虎に乗った信長が結月を見下ろす。それだけで圧を感じ、まるで突風に吹かれているように身体の動きが鈍る。
「騎乗していると迫力も増すね。相対するだけで圧力がわかる。でも……うん。ここへ来たときから覚悟してる」
凄まじい威圧を前にしても、そんな事はここに来る前から分かっていると結月は全身に力を巡らせ、敵と距離を取るように走り出す。
「誘いか、罠か、どちらにせよ食い千切ればよいだけの事」
信長の意思に同意するように白虎が咆え、獲物を追いかける。
「接近戦は避けたいね。将を射んと欲すれば、ってね」
逃げながら結月は跳躍し、壁を蹴って方向転換する合間に苦無を投げつける。刃は狙い通り白虎の足に突き刺さるが、浅く足を止めるには至らない。
「軽業を使うか、忍びの者か? だがここは我が城。逃げようとも地の利は儂にある」
信長が白虎の背を叩く。すると心得たとばかりに方向を変え、襖を幾つも蹴り破ってショートカットして結月の側面へと強襲した。
「追いつかれた! だけどこっちも手は打ってあるよ!」
結月が飛び退くと白虎の足に張り巡らせた線が引っ掛かる。見れば銀の糸がその足に食い込んでいた。
「忍びらしい小細工だ」
信長は刀を振るってその糸を切り裂く。そして傷つけられた白虎が怒りの咆哮と共に飛び掛かった。
「罠は一つじゃないよ」
まだ糸は幾重にも張られている。だがそれを白虎が爪で裂き、牙で噛み千切る。その少しの足止めの間に結月はまた逃げる。だが一旦接近されては逃げ切るのは難しく、背中や手足に爪の切り傷が走った。
「これは拙いね……!」
白虎の攻撃を避けながら結月が苦無を投げると、信長が容易く刀で弾く。そして一閃して結月の脹脛を裂いた。バランスを崩し結月が前に倒れ込む。
「この儂を討ちたければ、正面から打ち倒す器量を磨くのだったな」
小細工は効かぬと、信長が刀を大きく振り下ろす。
「この時を待ってたよ」
結月は手にする銀の鍵が発する時空を裂く光を纏い、無事な片足で床を蹴って瞬間移動するように刃を躱す。そして光の刃を信長の首目掛けて放った。咄嗟に頭を傾ける信長の首をざっくりと刃は切り裂き、肉を削り取った。傷口から血が噴き出す。
「浅かった?」
結月は後一歩深さが足りなかったと、もう一度光の刃を放とうとする。
「儂の首を獲る為に必殺の一撃を残しておったか、惜しかったな」
血に黒い鎧を染めながらも、信長は刀を振るい結月を袈裟に斬りつけ、糸を体に巻き付けた結月は致命傷を逃れたが、血が流れ纏う光が四散した。
「これは一旦引くしかないね」
結月の身体に引っ掛かっていたティルの羽根が小さな花の魔法陣を作り血が止まる。足が動くようになり、結月は刀を避けながら飛び退いた。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
飛鳥井・藤彦
先に騎馬武者がぎょうさん呼び出されるんなら、僕は墨のついた大筆を振り回して地面の至る所に墨を吹き飛ばして黒い水溜まりを作りますわ。
何の為か言いますと、遠目には黒い水溜まりは穴に見えて馬は避けますやろ?
無視して突っ込んで来はったら、一体か二体が足滑らせてくれるかもしれへん。
そうなったら騎馬隊の足並み崩れて、攻撃見切れる上に反撃出来ひんかなぁと。
動きが鈍ってるならグラフティスプラッシュ……僕の塗料も当てやすいしな。
もし当たらんくても戦場が僕の色で染まればええよ。
今回は地を最大活用させていただきます。
「この戦場、僕が貰たで」
大筆で騎馬隊薙ぎ払いつつ信長はんに迫り、その顔に死相……蒼の一閃を描く。
アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)
いよいよ決戦!わたしも全力でお手伝いするよ!
●
先制攻撃には存在を広げて…大声で叫んで相手に恐怖を与える事でお馬さんの足止めをするよ(存在感、恐怖を与える、範囲攻撃、衝撃波)
それでも簡単には止まらないよね、強敵だもの。だから体を丸めて必死に守る。植物達にも手伝って鎧になってもらうよ(オーラ防御、生命力吸収)
耐えきった後には【包囲・狩猟庭園】を発動
『高き森』に閉じ込める(罠使い)
『森』はわたしの住処、勝手は誰よりも分かってる。それに障害物の多い森ではお馬さんも走り辛いはず
数は多いけど、孤立しているところから狙って仕留めていくよ(地形の利用、迷彩、目立たない、野生の勘、怪力)
●騎兵を阻む墨と森
「騎馬武者がぎょうさん呼び出されとるみたいやね」
飛鳥井・藤彦(浮世絵師・藤春・f14531)が城内の惨状を見まわす。辺りは畳に馬の足跡が一面に残され荒れ果てていた。
「そんなら僕は墨で黒い水溜まりを作って準備しますわ」
身の丈ほどもある青い大筆を振るい、畳や板張りのいたるところに墨を飛ばし、あちこちに黒い墨の水溜まりを作り出す。
「うん、遠目で見たら落とし穴に見えんこともあれへんかなぁ」
その出来栄えを確認し一先ず藤彦は筆を止める。
ヒヒ――ンッ。
すると馬の嘶きが響いた。そしてこちらを見つけたように足並み揃った軍馬の足音が近づいてきた。
「見つかってもうたみたいやわ。ちょうどええ、こっちも準備は整ったところやで」
黒い水溜まりを前にするように藤彦は後退する。
「……罠か、構わぬ。蹂躙せよ、武田の名高き赤備え、儂の目に見せてみよ」
黒いものが地面にあるのを見た信長が、すぐに突進を選んで檄を飛ばす。それに応えるように赤き甲冑の武者達が馬を疾走させた。
「罠と知っても突っ込んで来はるんやね、普通なら避けますんやけど、厄介な相手やね」
大筆を構え、藤彦は凄まじい威圧感を持つ馬群が迫るのを待つ。
「凄い迫力やね。これはええ題材になりそうや」
その迫力に藤彦の内にも恐怖心が湧き立つが、それよりもこの光景を絵に収めてみたいという浮世絵師としての業が勝っていた。
騎馬隊の先頭の馬が黒い水溜まりに足を踏み入れる。するとずるっと足が滑り転倒する。その後の馬もそれに巻き添えを食って倒れた。武者は投げ出され衝撃に動けなくなる。だが後続の騎馬はそれを乗り越え、構わず突進を続けた。
「いややわぁ、動揺もせんと突っ込んで来やるやん」
覚悟を決めて藤彦は目の前に迫る騎兵の槍を大筆で弾く。だが次々と槍が突き出され、それを捌き躱していると、突進する馬に撥ね飛ばされる。
「馬に蹴られるんは恋路を邪魔するもんだけにしてほしいわぁ」
地面を転がり片膝をついて起き上がると、すぐに新しい騎兵が槍を構え串刺しにせんと突進してくる。
「そろそろこっちの番やね、この戦場、僕が貰たで」
騎馬が足元の蒼い塗料を踏む。するとその足がずぼっと穴に嵌り前に倒れ込んだ。藤彦の持つ大筆にはいつの間にか蒼い塗料に染まり、吹き飛ばされながらも辺りを蒼く染めていた。
「反撃開始といかせてもらいましょ」
蒼い塗料を撒き散らし、己が支配地を増やしながら騎兵を薙ぎ払う。
「ほう、武田の騎馬の突進に耐えたか、ならばそっ首、儂が直接落としてやろう」
そこへ白虎に乗った信長が現れ、刀を手に駆け寄る。
「信長はん……顔に死相が出てはるで」
藤彦が大筆を一閃させ、蒼の線を信長の顔に塗った。激痛が走り信長は歯を食いしばって耐える。
「戦場を駆ける武人にとって、死など常に側にあるものだ。人生とは儚きものよ」
反撃に信長が刀を振るい、防ごうとした大筆を押し切って藤彦を薙ぎ倒し、そのまま駆け去る。そしてその後に続く騎兵の群れに藤彦は撥ね上げられた。
「いよいよ決戦! わたしも全力でお手伝いするよ!」
アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)は元気に戦場に飛び込む。その前には広い室内を駆け回る騎馬の軍勢がいた。その騎兵がアウルに気付く。
「ここにもおったか。我が城を荒らす者よ、武田の赤備えの恐ろしさ、その身で味わうがいい!」
白虎を駆る信長が軍配のように刀を振り下ろす。それに応じて騎兵が一気に駆け出し、槍を構えアウルに突進する。
「わたしは逃げも隠れもしないよ!!!」
その馬群を前にして大声でアウルは叫び、衝撃波を放って威圧して馬を驚かせて足を止めさせる。驚いて馬が前足を軽く上げて嘶くが、すぐに赤き甲冑の乗り手が馬を制御する。混乱する馬を宥め勢いを落としながらもアウルに突進した。
「簡単には止まらないよね、強敵だもの。でもちょっとは足を遅くできたよ」
後はこれに耐えるだけだと、体を丸めて被弾箇所を少なくし、苔や蔓で体表を覆ってオーラを通し鎧にする。
その身体を馬が踏み潰し、槍を突き入れられ、最後には馬に蹴られて撥ね飛ばされる。それでもただじっと我慢してアウルが耐え続けていると、足音が通り過ぎた。
「……っ、大丈夫、まだ戦えるよ!」
植物の鎧はぼろぼろに砕け、傷だらけで体中に痛みが走っても、アウルは起き上がりまた衰えぬ闘志を燃やす。
「赤備えの突進を受けてまだ起き上がれるのか。だが満身創痍のようであるが、それでまだ戦うつもりか?」
その強靭さに感嘆したように、騎兵と共に駆け、足を止めて振り返った信長が白虎の上からアウルを見下ろし問うた。
「こんなくらいじゃわたしは倒せないよ!」
堂々と信長を見返し、アウルは挑発するように答える。
「ならばもう一度受けてみるか、次は儂が自ら斬り捨ててくれよう」
信長が先頭集団の騎兵達に混じって突進してくる。
「駆けっこならあなたたちの方が速いけど、オニごっこならわたしの方が速い!」
その進路上にアウルがあっという間に木々を生やす。天井を貫通するような木が辺りに広がり一息の間に高い森が作り出された。それは迷路のように入り組み、騎兵の足を止める。
「なんと!」
手綱を引いて信長が白虎に留まらせ、視界の悪くなった辺りを見渡す。
「『森』はわたしの住処、勝手は誰よりも分かってる。そして孤立したあなたはわたしの獲物だよ!」
信長の頭上から木に登ったアウルが襲い掛かる。手に覆った植物が鋭い獣の爪のようなものを作り出し、右腕を振り下ろした。
「ぬぅっ!」
顔を背ける信長の額から左目へと赤い線が4本走り、血が溢れ出す。
「ここで倒しちゃうよ!」
着地と共にアウルは左腕を薙ぎ払い、信長の胴を鎧の上から裂く。だが深く体に入る前に刀で止められた。
「まさか我が城を己が領域に塗り替えるとは、驚いたぞ。かつて儂が奇襲で倒して者もこんな気持ちだったやもしれぬな」
血で赤くなった左目を見開き信長が爪を弾く。それと同時に白虎が飛び掛かりアウルの腕に噛みつき、振り回して投げ飛ばした。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
神酒坂・恭二郎
【連携アドリブ歓迎】
「この戦況にあって見事な闘志だ。俺も答えにゃならんな」
見事な敵に感嘆を覚えれば、後は戦にて語るのが【礼儀作法】だ。
先制攻撃は取られる。それに応じる術が後の先だ。
炎の刀には精密な命中率の布槍
全身甲冑には攻撃力の布ドリル
樹木の翼には攻撃回数で双布刀
相手の重視する強みを【見切り】、対応する攻撃に布を【早業、武器改造】で千変させる事で対応したい。
その見極めには限界まで引き付け、信長公相手では無傷で突破できぬ【覚悟】がいる。
「勝機はこの一瞬ってね」
相手の技が尽きる瞬間まで粘り、【カウンター、クイックドロウ、封印を解く】にて抜刀術。
全風桜子を収束させた【捨て身の一撃】に勝負をかけたい。
カタリナ・エスペランサ
「第六天魔王に甲斐の虎、相手にとって不足は無いわね」
「――猟兵カタリナ・エスペランサ。その首級、貰い受ける!」
常の軽薄は鳴りを潜め、遂にまみえた戦乱の元凶へと名乗りを上げて。
先制攻撃には《第六感》で予兆を察知、《属性攻撃》で眩い雷を纏わせた無数のダガーを《早業》で《投擲》して《時間稼ぎ》。
稼いだ一瞬に幾つもの《残像》を残してUC発動の隙を作り【天災輪舞】を発動して反撃。
「神すら屠った蒼き稲妻、その身でとくと味わいなさい!」
高速移動と《空中戦》を活かした立体軌道で信玄の機動力に張り合い、雷羽の散弾による《誘導弾》《鎧無視攻撃》《範囲攻撃》で信玄ごと信長の身を焼きます。
※アドリブ・共闘歓迎です。
ステラ・クロセ
あれがオブリビオン・フォーミュラ…すごいプレッシャーだね。
でも、このエンパイアを守るためにアタシは負けられないよ!
虎に乗ってつっこんでくるんだね。
たしか、虎って直角に曲がれないって聞いたことあるよ。
だったら、【勇気】を出して恐れずギリギリまで引き付けて真横に【ジャンプ】。
一度避けてまた来るようなら動きは見られてる、横っ飛びしても追いかけてくるようなら、さらに前に【スライディング】で下をくぐるようにする。
反撃ができるようならUC【バトル・インテリジェンス】で炎の【属性攻撃】、行けるなら【二回攻撃】。
狙うは頭。カチ割りに行くよ。
「アタシの炎で焼き尽くす!」
※アドリブ・連携など歓迎です!
●その刃は魔王に届く
「強い……これだけの力を持った猛者が多く揃っているのなら、我が軍が破れたのも納得できるというもの」
絶望的な状況。その中で孤軍奮闘し傷つきながらも信長はまだ戦う意思を持ち続ける。
「されど儂の城で好き勝手は許さぬ。誰ぞ腕に自信のある者は儂の前に出て参れ! そなたらの求める首は此処にあるぞ!」
逃げも隠れもせず、堂々と信長は声を上げ、首を獲れるものなら獲ってみろと云わんばかりにその存在を戦場に示す。
「この戦況にあって見事な闘志だ。俺も答えにゃならんな」
そんな武人らしい立ち居振る舞いに感嘆を覚え、神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)もまたその前に堂々と姿を歩み寄った。
「呼びかけに応じて現れたか、それでこそ武士よ!」
「神酒坂風桜子一刀流……神酒坂・恭二郎。いざ、参る!」
名乗りを上げ恭二郎が鞘に納まった刀の柄に手を掛ける。対して信長も刀を上段に構えた。振り下ろされれば真っ二つにされる。そんな幻影が脳裏に過ぎる。
(「先手は向こう、ならこっちは後の先だ」)
すぐに動いて避けたくなる圧力に恭二郎は耐え、じっと相手の出方を窺う。汗が流れ、僅かな間が無限にも感じる。ぽたりと汗が床に落ちた。
一閃。
烈火の如き燃える刃が唐竹割に振り下ろされる。
(「来た!」)
恭二郎は手拭いに風桜子を流して槍に見立て、側面に当てて軌道を逸らす。轟っ、と左腕に刃が掠める。直撃した訳ではない、だがその一刀が左腕を焼いて表皮が破れ血が流れ出る。
(「当たらずともこの威力!」)
その剣筋の凄まじさを痛みで感じながら、恭二郎は手拭いを槍からドリルへと変えて胸を貫く。ガリガリと黒い鎧が削れていくが、その背の樹木の翼が広がって覆い被さってくる。
「儂の鎧の傷をつけるか、だがこれは防げるか」
翼が風を起こし鎌鼬を放つ。それに対して手拭はドリルから刃に変わり、双布刀を振り回し風と共に翼を切り裂いた。だが恭二郎の身体は風の刃によってあちこちが切られ血に染まっていた。
「ほぉ、見事凌いでみせたか」
信長の攻め手が止まる。そして引こうとしたところに恭二郎は絶好の機を見た。
「勝機はこの一瞬ってね」
鯉口を切り腰の刀を抜き放つ。内なる全ての風桜子を刃に集めた抜刀術。振り抜かれた刃は深々と黒い鎧を裂き、脇腹から入り骨をも斬った。だがそこで刃が止まる。
「よもやこうも容易く自慢の黒曜石の甲冑を斬るとは。まさに必殺の一の太刀よ」
感心したようにその刃を見下ろす信長は、腕を差し込んで籠手で刃を止めていた。籠手にも刃が食い込み、刀身に血が伝わる。
「だが一の太刀を凌がれれば勝機はあるまい」
信長が恭二郎を押し飛ばし、己が間合いに離すと刀を振り抜く。それを恭二郎は刀で受け止めようとするが、消費した風桜子が戻らず、押し負けて壁へと叩きつけられた。
「第六天魔王に甲斐の虎、相手にとって不足は無いわね」
カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)が猟兵相手に大立ち回りをする強敵を前に、いつもの軽薄な態度とは違う真剣な表情で相対した。
「――猟兵カタリナ・エスペランサ。その首級、貰い受ける!」
遂にまみえた戦乱の元凶へと名乗りを上げ、全神経を敵に向けて少しの兆しも見逃さぬように集中する。
「儂の首を狙うのだ、逆に首を獲られる覚悟もできておろうな!」
信長が跨る白虎の身体を軽く足で叩く。すると白虎は心得たように真っ直ぐカタリナへ向かって駆け出す。
「少しでも近づかれる時間を稼ぐわ!」
それを察知していたカタリナは、眩い雷を纏わせたダガーを無数に投げ、視界を塞ぎ足止めを計る。
「猪口才な、粉砕せよ!」
信長の命を受け、白虎が跳んでダガーに突っ込み弾き飛ばす。信長は鎧で防ぎ、顔に当たりそうなものだけ刀で弾いた。そして刀がカタリナの首を刎ねる。だがその姿は幻の如く消えた。
「まやかしか」
すぐに信長の視線が一足飛び離れた位置に居るカタリナへと向けられ、すぐさま白虎が地を蹴って飛び掛かる。
「稼げたのはほんの少しの時間。だけどそれで十分よ!」
残像を残し初撃を逃れたカタリナの身体が蒼く輝き、神殺しの蒼雷を纏った。
「神すら屠った蒼き稲妻、その身でとくと味わいなさい!」
雷翼を背中から伸ばすと雷光の如く加速して飛ぶように動き、白虎の動きに対抗し機動力で張り合う。
「信玄、その甲斐の虎と呼ばれたそなたの力見せてやれ!」
信長の激に白虎が咆え、速度を上げてカタリナを追う。
「これで焼き尽くしてあげるわ!」
そこへカタリナは雷翼から小さな雷羽を散弾のように飛ばし、白虎もろとも信長まで撃ち抜く。雷羽が突き刺さり、黒い甲冑に穴を穿つ。白虎の硬い毛も貫きその白い毛が赤く染まる。そしてその左目にも雷羽が突き刺さっていた。
「グゥオオオオオオ!!!」
白虎が咆える。左目から血の涙を流し、右目でカタリナを睨む。その目は猛々しく闘志に燃えていた。
「信玄よ、そなたと張り合える好敵手だぞ。征けい!」
信長が愉快そうに声をかけると、白虎がまた咆えて駆け出す。
「怒らせちゃったみたいね、でもこっちも怒ってるのよ!」
戦争を起こした張本人を前に、カタリナは引かずに地を蹴り壁を駆け上がり、天井を足場に所狭しと飛び回って白虎と戦う。
「グゥアォオオ!!」
白虎の身体に深く雷羽が突き刺さる。だが同時にカタリナも爪を喰らい、床に叩きつけられた。
「あれがオブリビオン・フォーミュラ……すごいプレッシャーだね」
ステラ・クロセ(星の光は紅焔となる・f12371)はその威圧を浴びて体が震えるのを感じる。
「でも、このエンパイアを守るためにアタシは負けられないよ!」
その震えを武者震いだと言い聞かせ、燃え上がる心で緊張する体を動かす。
「虎に乗ってつっこんでくるんだね。たしか、虎って直角に曲がれないって聞いたことあるよ。それに左目が見えないみたい」
傷つき血を流す白虎の左目を見たステラは、光る刀身を持つ二刀を手に勇気を出して白虎の正面に立つ。
「次はそなたか。愉快なものよな、戦乱が終わったはずの現世がこれほど修羅が蔓延る世界となっておったとは」
女子供が相手であろうと、油断なく信長は刀を構え白虎を走らせる。
「よく引き付けて……」
ギリギリまで引き付けると、ステラは目の見えぬ左目側へと真横に跳んで躱した。爪が掠めたのか服が切れ、肌から血が滲んだ。
「大丈夫、ちゃんと見えてるし、反応もできてるよ!」
ステラは敵の動きを見逃さぬように正面から見据え、二刀を構え立ち会う。
「こうも信玄の動きについてこれるものが次々と現れようとは、驚くばかりよ」
「ガアアアアア!」
信長が白虎の身体を軽く踵で蹴ると、白虎が猛りもっと己は強いと駆け出す。
「よく見て……今!」
またステラは横に避けながら、今度は刀を振るう。その刃が白虎の胴を傷つけた。だが白虎の爪も腕を切り裂いていた。
「動きが速くなってる。それにこっちの動きを読んでたみたいだね」
白虎が若干の軌道修正を行ったのを見たステラは、緊張で上がる息を整え覚悟を決める。
「どちらに逃げようとも、信玄はその身に食らい付くぞ!」
跳躍したステラを狙おうと、白虎は隻眼でじっとステラを見つめる。
「左右がダメなら――下だよ!」
前にダッシュしたステラは小柄な体を活かしてスライディングで足元を潜り、背後に回ると敵の背中に向かって飛び掛かった。
「下を潜ったか、その小さな体に似合わぬ豪胆さよ」
白虎の上から信長が振り向きながら刀を振るう。戦術ドローンを召喚し、戦闘力を高めたステラは右の一刀でそれを受け止め、左の刀を振り上げ炎を纏わせる。
「アタシの炎で焼き尽くす!」
頭目掛けて振り下ろされた刃は、白虎が動いた事によって左肩に食い込む。ざっくりと入った刃が血を噴き出させた。
「なんとも熱き炎よ、だが儂の命を燃やし尽くすには、この城全てを燃やす業火が必要だ」
信長もまた刀に炎を宿して横薙ぎに振るう。それを二刀の刀をクロスして受けたが、ステラの身体が軽々と飛んで天井を突き破った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
明石・真多子
【タコミイラ】
ついに出たね大将首!
有名軟体魔忍になるためにその首頂戴しちゃうから覚悟してね!
って思ったら増援呼んで来た!?
二対一はフェアじゃないしここはアタシも助っ人呼ぶよ!ミイラのクレオちゃん!
まずは甲斐の虎をどうにかしないとね。アタシも明石の蛸だから負けられない!
まずは黒く[迷彩]しながらタコ墨をばら撒いてタコスミデコイを作るよ。美味しい匂いたっぷりだから鼻を潰して翻弄しよう!
そしてタコ墨に[おびき寄せ]られて信玄に墨がある程度付着したらチャンス到来!
付着したタコ墨から【軟体忍法卍固めの術】で触手を転移させて四肢を縛ろう!
これでしばらくは動きが止まるはず!クレオちゃん後は任せたよ!!
クレオ・バトラー
【タコミイラ】
呼ばれて来たが…何をすればいいだ?私に出来る事なんて戦闘くらいだぞ。
なるほど、あのデカブツをヤレばいいんだな。任せてくれ。
あれだけの大きさを喰うには、流石に少し貯蓄エネルギーが足りないか。
まずは距離を取りつつ、移動しながら周囲の壁や床を『ナノマシネイト』で分解吸収して準備するぞ。
『メルセゲルアーム』を伸ばして天井などの高所を転々としていれば攻撃も当たらないはずだ。
よし、エネルギーは充分か。真多子が動きを止めてくれているし好機だな。
【偉大なる強さ】を発動し、敵の反撃ごとナノマシンで喰べながら接近だ!
溢れ出た黒砂塵のようなナノマシンの渦で敵を包み[生命力吸収]し尽くすぞ!
●タコミイラ
「ついに出たね大将首! 有名軟体魔忍になるためにその首頂戴しちゃうから覚悟してね!」
テンションアゲアゲで明石・真多子(軟体魔忍マダコ・f00079)がビシッとタコ足を敵に向けると、信長は止血した左手を振って腕の動きを確認しながら、なんとも珍妙なものを見る顔つきとなり首を傾げた。
「蛸か人か、妖の類か? なんにせよ我が前に立ち塞がるというのなら斬り捨てるのみ」
「ガァアアアアアアア!!」
信長の言葉に同意して白虎が咆え、食い千切ってやろうと、餌でも見る目で真多子に隻眼を向けた。
「って思ったら増援呼んでた!? 二対一はフェアじゃないしここはアタシも助っ人呼ぶよ! ミイラのクレオちゃん!」
信長と同じくらい強そうな白虎を見て、それならこっちもと真多子がバーンッと効果音が出そうな勢いで仲間を呼ぶ。
「呼ばれて来たが……何をすればいいだ? 私に出来る事なんて戦闘くらいだぞ」
現れた包帯を巻いたクレオ・バトラー(Cleo type battler No.Ⅶ・f20973)が周囲を見渡し、黒き甲冑の武者とそれが跨る白虎へと視線が止まる。
「なるほど、あのデカブツをヤレばいいんだな。任せてくれ」
すぐに状況を察したクレオは快諾し、敵の倒し方を考える。
「だがあれだけの大きさを喰うには、流石に少し貯蓄エネルギーが足りないか」
今のままでは無理だとクレオは判断し、ガントレットの蛇腹腕を伸ばして遠くの壁を掴み、一気に距離を離してナノマシンを使い、襖や畳を分解吸収することでエネルギーを溜めることにする。
「まずは甲斐の虎をどうにかしないとね。アタシも明石の蛸だから負けられない!」
真多子は己をタコ墨で黒く迷彩し、周囲にタコ墨をばら撒いてタコスミデコイを生み出す。
「見た目だけじゃなく、タコ墨の美味しい匂いで鼻も利かなくなるよ!」
どうだと自慢げに真多子が姿を隠すと、不快そうに信長が顔をしかめる。
「儂の城を好き勝手に汚しておって、捕まえてタコらしく焼き殺してくれよう」
「グルアァッ!」
白虎も臭そうに鼻を鳴らし、真多子を捕えに駆け出す。
「姿や臭いを消そうとも、この城は我が庭。隠れ通す事など出来ぬと知れ」
襖を破って白虎がひっそり隠れていた真多子に襲い掛かる。
「うわっ! 見つかっちゃったよ!」
慌てて真多子がびちゃびちゃと辺りの墨を撒き散らしながら逃げる。だが追いかけられ突進を受けて床をゴロゴロと転がってビターンと壁に張り付いた。
「無様な。このまま焼け死ぬがいい」
刀に炎を纏わせ信長が真多子を斬り捨てようとする。
「タコ墨は目と鼻を潰す以外にも使い道があるんだよ! 軟体忍法卍固めの術!!」
そこで真多子はユーベルコードを発動し、追い回す間に白虎の白い毛に付着したタコ墨からタコの触手が現れ、うねうねと信玄の四肢に巻き付いて拘束する。
「なんと! タコの忍びであったか!」
張り付く吸盤を引き剥がし、脱出しようと信玄がもがく。
「これでしばらくは動きが止まるはず! クレオちゃん後は任せたよ!!」
真多子の声を待っていたように、クレオが天井にぶら下がって姿を現した。
「よし、エネルギーは充分か。真多子が動きを止めてくれているし好機だな」
ナノマシンが吸収したエネルギーでナノマシンが黒砂塵のように無数に生み出され、敵を呑み込み生命力を吸い上げる。
「干からびるまでその命を吸い上げてやる」
増え続ける黒砂塵の中に信長と白虎の姿が消える。
「これで儂らの命を奪うだと? ぬるいわ!」
中から刀が振られ、大きく黒砂塵が散らされると、触手を引き千切って白虎に乗った信長が飛び出してきた。そして跳躍し、天井にぶら下がるクレオに爪で引き裂こうとする。
「普通ならもう喰らい尽くされていてもおかしくないのだがな」
クレオは蛇腹腕を伸ばして移動して逃れる。だがそこへ信長が刀を振るい、その背中を斬りつけた。
「そこらの有象無象と同じにするな。我は第六天魔王ぞ!」
追い打ちに信長が返す刀で首を狙う。
「どうやらそのようだ。だが私の能力はまだ終わった訳ではない」
蛇腹腕を引き寄せる力で攻撃を避けたクレオと入れ替わるように、追いかけてきた黒砂塵が信長を包み込もうとする。
「一度受けた術を何度も食らうと思うたか!」
炎を発する刀を振るって信長が黒砂塵を焼き払う。その間にも白虎は走り抜け、クレオに迫っていた。
「これは拙いな」
「大丈夫! こんな時の為のタコ墨だよ!」
そこへ現れた真多子がタコスミケンを飛ばして迎撃する。
「タコの忍びも纏めて斬り倒してくれる」
信長はそれを刀で燃やし、真多子へと狙いを変えた。
「これ以上は無理だ。ダメージを与えただけ良しとするか。引くぞ真多子」
「クレオちゃんがそう言うなら仕方ないか、首は獲れなかったけど、活躍はしたからちょっとは有名になれるよね!」
冷静にクレオが判断を下し、敵との間に黒砂塵を展開してその間にわいわいと騒がしい真多子を蛇腹腕で引っ張って脱出した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リダン・ムグルエギ
【ワイルドハント】乙女組でイケオジを見に来たわ
鋭い牙や鼻の柔らかそうな感じがステキ…
あれ、別の人見てる?
戦場にはニコリネさんの車でGO
事前に車を防具改造
パイプで作った外付けフレームに
距離感の歪む催眠模様アートを施した各種耐性のある布幕を取付
後、万魔電をワイヤで結び車後方で引き摺る形に
武田軍が来たらMi-6で城内や敵陣の情報を収集し道をナビゲート
万魔電から大爆音目覚まし時計を1分毎に鳴らしたり
窓から葉巻の毒煙を垂れ流し
馬を近寄らせ難くするわ
時間を稼げたら「車に着せた服」である布を媒体にコード発動
見た人の五感を阻害し車を認識できなくするするの
キメ時よ、ニコリネさん
愛車(虎)ごとレッツアクシデント!
ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】
野心あるイケオジ。嫌いじゃないわ
えっえっリダンさんそっちは憑依してるニャンコ!
武田の騎馬隊は私の営業車『Floral Fallal』がお相手するわ
防具改造で装甲を強化した2tトラックをシェルターに、突進から身を守るの
馬って実は繊細なのよね
鉄の塊にも驚くと思うけど、クラクションやパッシングをしたらどうかしら?
音と光に驚いて列を乱しそうじゃない?
他にもGOATia仕様にチューンされた愛車の力を発揮するわ
先生、お願いしまーす!
騎馬隊に綻びが見えたら反撃開始
4点シートベルト、ヘルメットとHANSを装着してエンジン全開!
スピードに遠心力を乗せた車輛をぶつけるの
愛車対決、制してみせるわ!
●騎馬兵VS貨物自動車
「乙女組でイケオジを見に来たわ」
「野心あるイケオジ。嫌いじゃないわ」
ワイルドハントから花で飾られ、改造された2tトラックの営業車に乗ってやって来た、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)とニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)がじーっと服屋で物色でもするように、戦いよりも真剣な顔で敵の姿を見る。
「鋭い牙や鼻の柔らかそうな感じがステキ……あれ、別の人見てる?」
「えっえっリダンさんそっちは憑依してるニャンコ!」
リダンは信玄を、ニコリネは信長を見ている事に気付き、互いが顔を合わせて驚いた顔を見せ合い、そして笑って戦いの準備を始めた。
「戦場で笑うとは剛の者よな。珍妙な騎馬に乗っておるが、どれほどのものか武田の赤備えと競ってみせよ!」
信長が手を振ると、赤い甲冑の騎兵がぞろりと現れ、一斉に槍を構えて突撃する。
「馬って実は繊細なのよね」
運転席に座るニコリネがクラクションを鳴らす。大きなトラックから腹に響くような音が鳴り響き、馬が驚いて足を止め、それにぶつかった後方の騎兵と共に倒れる。
「なんと珍妙な。だが戦場を駆ける馬は種子島の音に慣れておるわ」
すぐに体勢を立て直した騎兵が車に槍を突き刺し、穴を穿っていく。
「他にもGOATia仕様にチューンされた愛車の力を発揮するわ。先生、お願いしまーす!」
「任されたわ。仕込みは万全よ」
ニコリネに頼まれ、トラックに仕掛けを施したリダンがサイドミラーを見てその効果を確かめる。すると距離感を間違ったように騎兵がトラックにぶつかり馬が倒れたり、馬同士がぶつかったりし始める。
「催眠模様アートの効果があったみたいだわ」
リダンの施した精神に影響するアートが五感を狂わせ、騎兵達の動きを混乱させた。
トラックの破壊は困難と、乗っているニコリネとリダンを狙いに騎兵が真正面から突っ込んで来る。
「音の次は光でどう?」
ニコリネが一瞬だけ車のハイビームで照らしてパッシングし、それを見た馬が仰け反り武者を落とした。それでも耐えた騎兵が突進するが、その一撃は枠のように取り付けられたフレームに防がれた。
「パイプで作った外付けフレームよ。簡易だけどなかなか実用的でしょ」
自分の仕掛けをリダンはあれこれ解説し、その効果を敵の身体で確かめていく。
「でも相手もやられてばかりではないわね」
リダンの言葉通りにトラックが揺れる。後方から騎兵が突撃を仕掛けていた。
「リダンさん、後ろに仕掛けはないの?」
「もちろんあるわ」
ニコリネの問いにリダンがにっこり笑って答えた。すると後方に取り付けられたスマホが大音量で目覚ましを鳴らし、突撃中だった騎兵達を驚かせ、ぶつかり合い、大混乱を巻き起こした。
「何も武器を振るうだけが戦いではないわ。スマホ一つでも使いようよ」
上手くいったとリダンの笑みが深くなる。
「何をしておるか、不甲斐ない!」
いいように手玉に取られる騎兵を見、信長は自ら指揮を執ろうと白虎を疾走させる。
「リダンさん来たわ。シートベルト、ヘルメットの準備は大丈夫?」
「ええ、今装着したわ。こっちも準備はOKよ」
ニコリネとリダンは4点シートベルトとヘルメットにHANSまで装備して安全性を高めた。
「それじゃあ行くわよ、エンジン全開!」
アクセルをベタ踏みして速度を上げて行く。それをフォローするようにリダンが車に服を着せるように用意しておいた布を媒体にユーベルコードを発動する。車を見た者の五感が阻害され、車が何処に居るのか分からなくなった。
「消えた? いや、音はする。信玄よ!」
信長が一瞬戸惑いながらも、すぐさま白虎に任せて突っ込ませる。
「キメ時よ、ニコリネさん。愛車(虎)ごとレッツアクシデント!」
「愛車対決、制してみせるわ!」
煽るリダンにニコリネも楽しそうに笑みを返し、速度を最大まで上げて信長を目指し、タイヤを思い切り切った。甲高い音を発しながらトラックがドリフトし、信長を白虎ごと撥ね飛ばした。
「まさかまさか! 騎兵のぶつかり合いでこの儂と信玄に勝るとは!」
宙で白虎が信長を乗せたまま回転し、受け身を取って着地した。それでも身体には大きな衝撃が走り、毛が逆立ち震えている。
「くくく、はーっはっはっは! 愉快愉快。かつてこれほど愉快な日があっただろうか。これ程の猛者たちがあの手この手で儂に挑んでくる。なんとも堪え切れぬ。この内なる炎が滾ってくるわ!」
ダメージを受けるほど、信長の目に炎の如き生気が宿り、その手にした刀が燃え盛る。
「征けい! 何としてもあの者どもの首を獲って参れ!」
信長の指示に猛り、騎兵達がなりふり構わず特攻する。
「成功ね。だけど仕留めるには至らなかったみたい。このまま勝ち逃げするってのはどう?」
「それすごく良いアイデアだわ! それで行きましょう!」
リダンのアイデアに乗って、ニコリネはまたアクセルを踏み、騎兵に追い駆けられながら逃げ出した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジェイクス・ライアー
【紳士と剣】
オブシダンの本体を構え
先制攻撃を剣で受け、
相殺しきれずとも弱まりさえすれば
不定形の炎であろうと風であろうと一閃で斬りふせる
斬撃の延長線
狙いを定めて鋭く研ぎ澄ました剣閃
名乗りとは古風だと
相棒の言葉にクッと笑い
それも良かろう
礼節に則り、所作はあくまで優雅に
御機嫌よう
音に聞く織田信長
乱世の世を駆け抜けた英傑
斬りふせるこの剣の名を覚えておくといい
オブシダン・ソード
魔王殺しの剣となる名剣を
神速、距離を詰め繰り出す剣戟とフェイント
この感触
そのようだな、黒曜石とは
まさか刃こぼれなんてしないだろうな
フッ、ならば、思い切り打ちふせよう
第六天魔王
その首に黒刃が達したならば
高らかに声を上げてみせよう
オブシダン・ソード
【紳士と剣】
ジェイクスの剣として
器物の剣は彼に。僕は魔杖剣の方を使おうかな
虎穴に入らずんば…何だっけ
戦争も大事だけどね、今はただ名を上げるために
魔王殺しの逸話も欲しかったところだよ
先制攻撃にはオーラ防御
爪か牙を剣で受けられたらそのまま属性攻撃で発火
火傷させるくらいはできない?
ジェイクスへの先制攻撃にもオーラ防御で対応、最悪仮初の人間体は囮に使う
切り抜けたら器物に意識を移す
ジェイクスの斬撃に合わせてUCを発動
獣を斬り払い、炎を裂いて
後は軽口と警句で持ち手を鼓舞
いけるかい、相棒
名乗りとか上げる?
鎧と同じ材質?
そんなの僕が勝つに決まってるでしょ
根拠はない
さ、今度は君が言うんだよ
敵将討ち取ったり、だ
●魔王を斬る剣
「騎兵は去ったか。今が好機というわけだ」
「そうだね、僕達で魔王を討とう」
誰がどう見ても紳士だと答える。そんな姿をしたジェイクス・ライアー(驟雨・f00584)は黒き剣の姿をしたオブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)の本体を携え、信長の前に立つ。その隣にはフードを深く被った人の姿をした、オブシダンの意識を宿す仮初の身体が黒い刀身の魔杖剣を手にしていた。
「次は武芸者か。全く、次から次へと儂を楽しませてくれるものよ!」
戦い続け、敵の血も己の血も浴び、汚れきっていながらも毅然とした態度で信長は炎纏う刀を強く握る。
「虎穴に入らずんば……何だっけ」
オブシダンの意思に反応して仮初の身体が首を傾げる。
「戦争も大事だけどね、今はただ名を上げるために。魔王殺しの逸話も欲しかったところだよ」
まさに打ってつけの相手だと仮初の身体は信長に刃を向ける。
「虎の尾を踏んだならば、死ぬしかあるまい」
そこへ白虎を駆る信長が一気に接近し、白虎が襲い掛かり仮初の身体は魔杖剣で受け止めるが、押し倒されて爪を深々と体に刺し込まれる。そして乗っている信長は、ジェイクスに向けて燃え上がる刀を薙ぎ払う。
「速い――」
ジェイクスがオブシダンで首に迫る刃を受け止める。凄まじい力が襲い、首の皮が切れる。オブシダンはオーラを最大に放ち、それ以上の侵入を阻止する。
「想定以上の剣だが、弱まりさえすれば……」
ジェイクスとオブシダンが力を合わせ信長の一撃を受けきった。
「斬りふせる」
今度はこちらの番だとジェイクスが刀を押し返し、信長へとオブシダンを振り下す。信長も白虎も一太刀で斬ってしまおうという鋭く研ぎ澄ました剣閃。
「やれるものならやってみせてもらおうか!」
対して今度は信長が刀で受け止めようとする。
「僕もここからは全力で力を貸すよ」
オブシダンが仮初の人間から剣に意識を移し、まるで刀身が伸びたような斬撃を放つ。
「ぬぅん!」
それを信長は刀で受け止めるが、じりじりと押され額に刃が届く。そこへ樹木の翼が広がり、吹き荒れる風によって押し戻そうとする。
「不定形の炎であろうと風であろうと、この一閃は全てを断つ」
それでもジェイクスは力を弱めず、オブシダンを振り抜いた。刃は咄嗟に身を反らした信長の右の額の肉を削ぎ取っていた。
「儂を引かせるとは、なんとも見事な腕と名剣よな」
正面からの斬り合いには自信を持っていた信長は、それを返したジェイクスとオブシダンを褒める。
「そちらこそ、必殺の一撃のつもりだったが」
それを凌いだ敵にジェイクスも言葉を返す。
「いけるかい、相棒。名乗りとか上げる?」
そんな相棒にオブシダンが尋ねてみた。するとクッ、とジェイクスは思わず笑ってしまう。そしてそれも良かろうと表情を引き締め、礼節に則った振る舞いで挨拶を交わす。
「御機嫌よう。音に聞く織田信長。乱世の世を駆け抜けた英傑」
優雅な振る舞いは教養を持つ紳士らしい態度だった。
「斬りふせるこの剣の名を覚えておくといい。オブシダン・ソード。魔王殺しの剣となる名剣を」
言い切ると同時に神速の踏み込み。一瞬で距離を詰めオブシダンを振るう。胴を薙ぐ一撃を受けられると、首を狙うと見せかけて脚を斬る。繰り出す剣戟とフェイント。
だが信長もまたそれに見事に反応し、互いの剣と刀がぶつかり合う。致命傷は受けぬが、両者が傷ついていく。腕や脚から血が流れ、派手な動きが少なくなる。だが剣の冴えだけは増し、お互いが最小の動きで相手の命を狙っていた。
「あの鎧、僕と同じ材質みたいだね」
斬った感触からオブシダンは鎧の素材を言い当てる。
「そのようだな、黒曜石とは……まさか刃こぼれなんてしないだろうな」
「そんなの僕が勝つに決まってるでしょ」
ジェイクスの軽口に、根拠はないがオブシダンが言い切る。負けるつもりなど全く頭になかった。
「フッ、ならば、思い切り打ちふせよう」
上段からジェイクスはオブシダンを振り下ろす。
「見事な一刀。されど一度見た太刀筋は読みやすいわ!」
それを信長は刃を斜めにして受け流す。そして跳ね上げる刀でジェイクスの腕を落とそうとするが、オブシダンで防ぎ肩を掠めるだけに留まった。
「強敵だね。魔王に相応しい実力だ。だからこそ倒す価値がある。次に君はこう言うんだよ。敵将討ち取ったり、だ」
「第六天魔王。その首に黒刃が達したならば、高らかに声を上げてみせよう」
オブシダンが鼓舞し、それに乗ってジェイクスは傷つきながらも剣を振るう。
「獲ってみよ! この魔王の首は高くつくぞ!」
信長も剛剣を振るい、一太刀でもまともに浴びれば即死という剣を叩き込む。
攻防が一瞬にして変わる目まぐるしい戦い。だがそれも終わりの時が来る。
「ちぃっ」
蓄積されたダメージの大きい信長が白虎からずり落ちそうになり隙を見せる。そこへジェイクスがオブシダンを振り下ろそうとする。
「ガアアア!」
「危ない!」
その前に白虎がジェイクスの身体に爪を立て、腹を引き裂いた。
「一閃。この黒い刃を届かせよう」
声も上げずにただ精神を集中し、ジェイクスは剣を振り下ろした。
爪を引き抜いた白虎が動き、刃は頭ではなく信長の右肩に当たる。黒曜石の鎧を裂き右肩の根本から斬り飛ばした。
「ぬぐぅ……利き腕を持っていかれたか。誇れ、そなたらは魔王の右腕を落としたのだからな」
そこで信長の樹木の翼から強風が吹き荒れ、部屋が崩壊し白虎は素早く刀を銜え、信長を安全な騎兵の居る場所へと駆け出した。
「魔王殺しとはいかなかったね」
「だが魔王の右腕を斬り落としただけでも箔はつくだろう」
残念そうに言うオブシダンに、ジェイクスが軽く笑いこっちも治療しなくてはと赤く染まった腹を見下ろした。そんな時でも背筋は伸ばしたまま、紳士たるもの如何なる時も慌てぬのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
霧島・絶奈
◆心情
第六天魔王に甲斐の虎のタッグですか…この上ない相手です
嗚呼、此の逢瀬に感謝を
愉しみましょう
◆行動
敵の先制ユーベルコードに呼応し『暗キ獣』を使用
念の為、【オーラ防御】を展開しつつ回避行動
下がりつつ【罠使い】として罠を設置
足止め用の罠>迎撃用の罠の優先度で短期間にさり気無く設置出来る物を設置
敵の機動力を殺します
加えて【衝撃波】を放ち敵の突撃対策とします
負傷は【生命力吸収】で回復
『暗キ獣』の展開が間に合うならば槍衾にて迎撃
密度を維持しつつ広域に展開し回り込みを防止
天守閣は騎兵が回り込むには狭過ぎます
その間に【目立たない】事を活用し移動
死角より屍獣と共に【範囲攻撃】で【二回攻撃】する【マヒ攻撃】
ヒルデガルト・アオスライセン
白虎の突進力、目で追える事を祈ります
イーコアで敵の速度と位置情報を収集
属性攻撃&オーラ防御で雷光を纏い、接触した相手に痺れを蓄積させます
先制を剣と盾で衝撃・重量を受け流し
度々、圧縮閃光瓶を投げつけ、4つの目と上下の連携を遮ります
稀に閃光に紛れて鼻先に香水瓶を投げ、嗅覚も潰します
虎前腕&信長腕に損傷を負わせ、牙を誘発させたい
虎の側面を取るよう意識、動作が制限される閉所高所に引き寄せて飛行
柱や屋根を遮蔽にしながら雷を伴った水圧弾で射撃
飛び掛かりに、腕へ守備体勢のまま突進するように攻勢防御
噛み付きが来たなら、腕でも足でも犠牲に掴ませてUC使用
逃れようのない熱の塊となって虎を引き裂きます
※諸々ご自由に
秋穂・紗織
人の世は儚き夢幻
無常の風に、栄花は散るのだと歌いて舞ったのは貴方
だからこそ、その中で懸命に、必死に、明日と理想を求める強さも知っている筈でしょう
戦いの先にと駆け抜ける想いの輝きも
ならばと、武器飾りの鈴鳴り散らし
戦乱の禍根たるその姿、斬り散らしましょう
風林火山の武を顕現せし白虎
けれど本質として騎兵である事に変わり無い筈
フェイントの動きで突撃攻撃を誘い
見切りで攻撃の筋、勢いを読んだ上でダッシュ+ジャンプで横へと跳躍して攻撃を回避し、騎兵の弱点である側面を取りましょう
無傷は無理でも直撃と深手は避けて次へ繋ぎ
白虎の機動力と勢いを逆にカウンターで返しの太刀に乗せ活かし、早業+2回攻撃で迅たる十八の剣閃を
セゲル・スヴェアボルグ
竜虎相搏つといったところか?相手は謙信の方がよかっただろうが、そこは我慢するんだな。
飛べば優位は取れそうだが……流石に狭いか。向こうさんもデカいしな。
木天蓼でも投げてみるか?まぁ試せるものは何でも試すか。
床板を踏み抜いて、駆けてくる虎を梃子ではじいてみるか。
当たれば無防備だ。当たらなくても壁ぐらいにはなる。
遅すぎないように注意だ。
時間さえ取れればあとは水で流してしまうか。
虎は泳ぐのは得意らしいが、今回は特別に海水を馳走しよう。
地に足をつけられなければ回避も難しい。
思う存分、槍を投げ込んでやるかな。
●命懸け
「追い詰められたか。だが殊勝に首を差し出すつもりはない。最後まで足掻いてみせよう」
満身創痍。全身傷だらけで右腕まで失った。それでも信長は命尽きるその時まで戦いの意思を失わない。
「第六天魔王に甲斐の虎のタッグですか……この上ない相手です」
その手強い敵との戦いに、霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は心猛らせ口元に笑みを浮かべた。
「嗚呼、此の逢瀬に感謝を。愉しみましょう」
そして屍の獣と兵からなる軍勢を呼び寄せる。
「死人か、そのようなものは我が城には不要。蹴散らせい!」
信長か左腕で刀を振るって指示を出し、騎兵が一斉に突進を開始した。屍獣がそこへ正面からぶつかるが、槍を突き刺され、馬に蹴られて弾き飛ばされる。それでも屍獣は動いて牙を突き立てようとするが、馬に踏み潰された。その後ろ詰めの兵士達が槍衾を作って騎兵を遮る壁となる。
「武田の騎馬隊。圧巻の突進力ですね」
だがこちらは元より文字通りの死兵。絶奈は消耗戦にもつれ込まそうと軍勢を騎兵にぶつける。そしてその時間稼ぎの間に下がりながら行動開始する。
「死人如きに手古摺るのか? 赤備えの名が泣こうぞ!」
信長の叱咤を受け、騎兵は勢いを増して槍衾を強引に突破し、屍兵を槍で貫き防御陣を突破する。屍の軍勢を蹂躙しその破壊の先駆けが絶奈へと迫る。
「突破されましたか、やはり武田の赤備え、伊達ではないですね」
絶奈は剣を構え騎兵を迎撃せんとする。だが騎兵が接触する前に馬が床を濡らす油に足を滑らせて転倒した。他にもロープが張ってあったりと、絶奈の用意した罠で騎兵の足が遅くなる。だがそれでも足は完全には止まらず、騎兵は罠を踏み越え絶奈へと刃を向ける。
「多少は遅くなりましたが、完封は無理のようですね」
絶奈は周囲に従える屍兵で槍衾を作る。だが槍を持つ騎兵が勇猛に突進し、先頭が倒れようとも構わず続き、その圧倒的破壊力で以って屍兵を突破した。その槍が絶奈に届き、剣を抜いて斬り払うが、馬の突進を避けたところに右肩に槍を喰らい吹き飛ばされる。それでも屍の軍勢は騎兵を襲い、注意を引きつけた。
「竜虎相搏つといったところか? 相手は謙信の方がよかっただろうが、そこは我慢するんだな」
竜の姿をしたセゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)は、信長が騎乗する白虎を見て軽口を叩いて笑ってみせる。
「さて、飛べば優位は取れそうだが……流石に狭いか。向こうさんもデカいしな」
天井を見てセゲルは飛ぶのを諦め、どうしたものかと思案する。そんなセゲルに向かって白虎に乗った信長が駆けてくる。
「木天蓼でも投げてみるか? まぁ試せるものは何でも試すか」
思いついて事を口にしながらセゲルはやれる事は全て試してみようと、床板を踏み抜く。すると駆ける白虎の足場が持ち上がり、梃子のように白虎が宙に跳び上がってセゲルの頭上を越えて着地した。
「器用なものだ。だがこのような小手先では儂らは倒せんぞ」
信長が振り向くとすぐに白虎も反転して駆け出す。
「なんでもやってみるもんだな」
上手くいったと豪快に笑うセゲルは、また襲い掛かろうとする白虎を前に、手にした槍を床に突き立てた。すると水が湧き出し、大波となって突っ込んで来る白虎を信長ごと呑み込む。
「虎は泳ぐのは得意らしいが、今回は特別に海水を馳走しよう」
大量に海水に押し流され、白虎は壁に叩きつけられた。
「楽しんで貰えたようだな。それじゃあたっぷり槍も馳走して――?」
槍を構えたセゲルは、そこで海水に流れる白虎の元に信長が居ない事を気付く。
「なかなか楽しませてもらった。ならば今度はこちらが馳走する番だな」
床に刀を突き立て、海水を突破した信長が目の前に現れる。
「血の海に溺れさせてやろう」
横に振り抜かれる刀を、セゲルは槍の柄で受け止めるが、両断され胸を刃が抉る。
「残念ながら海の男が溺れることはないんでな、遠慮しておこう」
セゲルは折れた槍の穂先を信長の顔に投げつけ、それが刀に弾かれている間に間合いを開け、新たな槍を突き出す。
「どうした、早く儂を倒さねば信玄が戻ってくるぞ」
それを刀で弾きながら、信長はセゲルを焦らせるようにちらりと海水の流れに逆らって戻って来る白虎の姿を見た。
「そうだな、それじゃあさっさと仕留めてしまうか」
セゲルは槍の切っ先を信長に向け、全力で駆け出す。
「戯け、玉砕のつもりか」
信長はその一撃を易々と避けて刀を走らせセゲルの背中を斬る。
「いいや、俺は竜だからな、戦う相手は虎だ」
減り始める海水の中に飛び込んだセゲルは、流れに乗って加速し白虎の胸に深々と槍を突き立てた。
「なんと、狙いは信玄であったか、ぬかったわ」
海水が辺りに散った後に、信長はセゲルを狙おうとしたが、既に流れに乗ったままセゲルは姿を消し、水と血で濡れの傷ついた白虎の姿が目に入った。
「信玄よ、儂と共にまだ戦えるな?」
「ガゥアッ」
もちろんだと白虎が咆え、信長をその背に乗せて駆け出した。
「人の世は儚き夢幻。無常の風に、栄花は散るのだと歌いて舞ったのは貴方」
現世に蘇った信長を前にして、秋穂・紗織(木花吐息・f18825)は歴史上の信長の最期を思い出す。
「だからこそ、その中で懸命に、必死に、明日と理想を求める強さも知っている筈でしょう」
そう問いかけると、まるでそれを斬り捨てるように信長は刀を振るって空を断った。
「これは儂にとって夢のようなもの。そして夢は何処までも果てしなく続くものよ。そこに終わりなどはない。今こうして新たな命を得たならば、ただ求め、手を伸ばし、足を前へと進めるのみ。我は第六天魔王! この世界を支配する王なり!」
轟っ、と信長の気迫が辺りを駆ける。多くを従える威厳、それはまさに支配者たる貫禄だった。
「ならばその夢と共に、戦乱の禍根たるその姿、斬り散らしましょう」
踏み込んだ紗織は武器飾りの鈴鳴り散らし、白き刀身の刀を抜き打った。
「散らせるものなら散らしてみよ! 儂の夢を終わらせてみせよ!!」
倒する信長は刀でその攻撃を弾き、跨る白虎による反撃を行う。白虎は一息に噛み殺そうと、飛び掛かってきた。
(「風林火山の武を顕現せし白虎。けれど本質として騎兵である事に変わり無い筈」)
その直線的な攻撃を紗織は読み、横へと跳躍して避け、白虎の側面に刀を走らせる。
「読んでおったか、だが読んだからといって躱せぬこともある」
反転した白虎は速度を上げ、ぎりぎりで躱し反撃しようとする紗織に、信長が刃を向けその脇腹を斬り裂いた。
「人馬一体ならぬ人虎一体でしょうか……厄介なものですが、次は当てます」
血を流しながらも紗織は衰えぬ闘志を見せ、次の攻撃を待つ。
「その意気や良し! その剣が儂に届くか試してみよ!」
機嫌良さそうに信長が笑い白虎が突進してくる。そして地を蹴って速度をさらに上げ、砲弾のように飛び込んで来た。
「届かせてみせましょう。この一瞬の輝きを」
それに対して紗織は己も前へと踏み出す。低く地に倒れ込むような前傾姿勢。白虎の爪が背中を掠めて赤い線が走る。そこで紗織の持つ刀が輝く。その瞬間、体を反転させた紗織が刀を振るう。瞬きする合間に十八の剣閃が走り、白虎の右前脚と胴がズダズダに斬り裂かれた。
「グルアアアアアアア!!」
白い毛を真っ赤に染めた白虎は片足で着地し、後ろ脚を蹴り上げて紗織を蹴り飛ばした。
「征くぞ信玄。この戦場を何処までも駆け抜けようぞ!」
信長の駆る白虎が楽し気に咆え、所狭しと広間を駆け回る。
「白虎の突進。本来ならば目で追えぬ速さなのでしょうが、弱った今ならば私でも捕捉できます!」
金の瞳を輝かせたヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)は、傷つき速度を落とす白虎の動きをしっかりと捉える。それが一足でこちらに飛び掛かってくる。
「来ます……!」
雷光を纏ったヒルデガルトは白虎の攻撃を致命傷だけは避けるように、振るわれる爪を盾で、噛みつく牙を剣で弾く。さらに騎乗する信長の刀まで振り下ろされる。何とか盾で受け流すが、続く連撃全てを凌ぎ切れずに手足から血が流れ出す。
「雷を纏っているのか、だがこの程度では儂や信玄を倒すことはできんぞ!」
接触の度に電撃が流れるが、構わず信長は攻撃を仕掛けてくる。そしてぶつかる白虎の体当たりを盾で受け、ヒルデガルトは後方へと吹き飛ばされ倒れる。そこへ覆い被さろうと白虎が脚に力を溜めた。
「目を潰します」
圧縮閃光瓶を投げつけ、瓶が割れて眩い閃光が辺りを照らす。
「小賢しい! 征けい!」
構わず白虎が匂いを追って襲い掛かる。だがその攻撃は外れた。甘い花のような強い香りで匂いが打ち消されていた。
「これで視覚と嗅覚を潰しました」
香水瓶を投げたヒルデガルトは好機と剣を手に斬り掛かり、白虎の前脚を切り裂く。その気配へ向け、信長が白虎から飛び降りながら振り下した刀を盾で受け流し、すぐに立ち位置を変える。
「信玄よ、意地を見せてみよ!」
信長の激励に応え、白虎は目を見開き、宙に飛び上がったヒルデガルトを見つけ、すぐさま追って跳び上がる。
「もう視覚が戻りましたか」
ヒルデガルトは雷を帯びた水圧弾をその顔面に撃ち込む。顔を変形させながらも白虎は大きく口を開けて噛みついた。
「っ! 痛いですが、これは私が作り出した状況でうs」
その一撃を腕で受け止めたヒルデガルトは、骨まで砕ける痛みに耐えて反対の腕で銀のコインを指ではじく。するとその体がプラズマ状に変身し、全てを融解させる熱の塊となって白虎の口に腕を突き入れる。内部から白虎の身体が燃え上がり、両腕を口に突っ込んで、その身体を引き裂いた。
●命散る
「見事な最後だ信玄よ。先に逝って儂を迎える準備をしておけ」
白虎の死に様を褒め称え、信長は鷹揚と猟兵達を見渡す。
「さあ、この首が欲しいなら獲りに来るがいい! されど幾人かは儂の炎に焼かれ冥土に付き合ってもらおう!」
道連れになる覚悟があるなら掛かってこいと、どれほど不利になろうとも信長は揺るがず己が意思を通す。その手に持つ刀が燃え盛った。
「そんな炎なんざ、こいつで消しちまえばいい」
そこへセゲルが槍を床に突き刺し、大波を起こして炎を鎮火した。
「海の中じゃ燃え続けられんだろ」
そこへ槍を投げつけ、信長の胸を狙って飛翔する。
「この程度で消える炎と思うな!」
消えた火がまた灯り、刀が槍を弾き飛ばす。
「右腕は使い物になりませんが、それだけです。互いに片腕で条件は五分。貴方を討つには十分でしょう」
気配を殺し屍の山に身を隠して近づいた絶奈が、連れる屍獣と共に背後から襲い掛かる。
屍獣が足に食らい付いて動きを止め、その隙に絶奈の剣が背中をざっくりと深く斬り裂いた。
「討てるものなら討ってみよ!」
信長は屍獣を引き摺りながら振り返り、刀を横に薙ぐ。それを絶奈は切り返す刃に当てて火花が散った。そのぶつかり合いで体勢を崩した絶奈に、信長は追い打ちを仕掛ける。胸目掛けて突き出される切っ先。それを割り込んだ屍獣が身代わりになると、絶奈が逆に胸に剣を突き入れる。
「ぬるいわ!」
それを跳ね上げ、絶奈の首に信長の刃が迫る。
「私達は負けません。」
元の姿に戻り疲労しながらも、ヒルデガルトは盾で刃を受け止めた。そして反撃に剣を胸に突き入れる。同時に絶奈の剣が信長の左腕を斬って刀を落とさせた。
「私達は夢を生きているのではありません。今という現実を生きているのです」
続けて紗織の手元で鈴鳴りが起こる。一閃された刃は信長の首を刎ね飛ばした。
「現世は夢幻のごとく……美しく咲いた花は散る定めか……」
何処か満足そうな信長の姿が薄れ、まるで幻のように消え去った。
「とんでもない強敵でしたが、私達の勝利ですね」
ヒルデガルトは激しい戦いだったと、辺りの破壊痕だらけの惨状に目を配った。
「総大将を討ったのなら凱旋できるな!」
長い戦いもこれで終わりだとセゲルは胸を張って帰ろうと、この戦いに参加した他の猟兵にも声をかけに行く。
「とても愉しかったです。きっと貴方のことは忘れないでしょう」
死闘の満足感に絶奈は笑みを浮かべ、その胸に魔王信長の名を刻んだ。
「全力で生きて散る……その姿は儚くも美しいものです」
紗織は敵とはいえその駆け続けるような生き様に感じ入るものがあった。
もうすぐこの戦争は終わる。後は他の戦場での報告を待つだけだ。自分達も勝利の言葉を伝えようと、猟兵達は疲労しながらも元気な足取りで帰途についた。
成功
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