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エンパイアウォー㊴~舞うは安土の地にて

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #オブリビオン・フォーミュラ #織田信長 #魔軍転生

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「ふん。一度目は本能寺。二度目はこの安土の城にて、か」
 眼下にて激突する己の軍と徳川軍を見下ろし、第六天魔王『織田信長』はさして感慨もなく鼻鳴らす。
「『織田がつき羽柴がこねし天下餅 座して喰らふは徳の川』など、な。狸もようよう上手くやったものよ」
 その言葉と共に天魔は、オブリビオンフォーミュラーは君たちへと向き直った。
「ようようやったと言えば、貴様らもだな猟兵共。貴様ら、貴様らじゃ。儂の邪魔をしてくれよって」
 だが、だからこそ。猟兵共を血祭りにあげたのなら、そしてその先に、幕府軍を撃破出来たのなら。それはまさしく子供の夢想。ましてや万に一つの可能性。
 そしてそれをなおも見据え、天下に武を布いた漢は刃を構える。
「サル」
「フェンフェン」
 かつての主君の声に、かつて男に傅いた異形がその傍らに現れた。
「憑装せい」
 言葉と共に、異形、豊臣秀吉がその背後に付き従う。
「まったく、このサルめ。羽柴筑前守如きが豊臣なぞ立派な姓を賜りよって」
 嘲りの言葉はしかし、その口調に込められた信頼の色を隠すことなく。
「しかもお主、毛むくじゃらではないか。末期の伴がこれとは。一回目とは大違いではないか。万死に値する。が、赦そう。故に、お主の全てで儂の役に立ってみせい」
 言うや否や、圧が極大まで増す。
 天下泰平、今の徳川の世を作り上げる定礎を気付き上げた者たちの圧が、君たちに襲い掛かった。
「さぁ猟兵共、儂は新しいものが好きじゃ。精々異界の業で、儂を楽しませてみせい!!!!!」
 さぁ!猟兵達よ、第六天魔王を見事倒し、この戦争を終わらせろ!!!!


みども
 こんにちは。みどもです。最終決戦という感じでやっていきましょう。

●注意事項
 1、このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 2、第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

●執筆に関して
 ・遅くとも来週29日(水)完結を目標に書いていきます。成功数が規定数を超えた段階で〆。その後新しく決戦依頼を出していく、というローテにする予定。
 ・成功数が規定を超え次第締めるので場合によっては採用できない事もございます。ご了承ください。
 ・仕事の合間合間を縫って執筆するので、上記の通り29日完結を目標に動きますが、執筆できるタイミングの関係上場合によっては採用できずに流してしまう場合もあります。 その際はお手数ですが再送していただければと存じます。
 ・それでは猟兵の皆さま、織田信長は強敵ですがかっこよくキメちゃってください。
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第1章 ボス戦 『第六天魔王『織田信長』秀吉装』

POW   :    黒槍殲撃
【秀吉を融合させた鋼鎧から無数の黒槍】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    黒粘剣戟術
【秀吉の黒粘液で全身から刀まで全てを覆い】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ   :    シャドウクローニング
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:UMEn人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒川・闇慈
「もはや餅を食べた者の孫の治世ですよ。新しく餅つきを始めるのは今更というものでしょう?クックック」

【行動】
wizで対抗です。
先制攻撃への対策として、ブラックシェードとホワイトカーテンによる防御魔術を展開。激痛耐性と覚悟の技能で攻撃へ備えます。
更なる対策としては高速詠唱の技能で炎獄砲軍を高速使用。炎の半分は秀吉の迎撃に使用して時間を稼ぎます。範囲攻撃の技能で複数の秀吉を纏めて爆破し、時間を稼ぎましょう。
残りの炎は属性攻撃、全力魔法の技能で信長へ向けて発射。一斉起爆でカタをつけましょうか。

「残念ながら、貴方が向かうのは海は海でも骸の海です。どうぞ安らかな航海を。クックック」

【アドリブ歓迎】


アララギ・イチイ
信長ちゃん、みーつけたー、遊びましょうぉー♪

先制攻撃で物量で攻められるのは辛いわぁ
【早業】で下記武装(迫撃砲、ロケット弾、グレネードランチャー、ミサイル)を狙いを付けずに【一斉発射】、爆風による【範囲攻撃・吹き飛ばし】で面制圧攻撃、同時に戦闘人形の二人を前線に押し出し、防衛線させて【時間稼ぎ】よぉ

それでも接近された場合、隠し腕(バトルアックス装備)を【早業】で展開、【武器受け】からの【カウンター】で対処するわぁ

上記の隙に【選択UC】を発動ぉ
召喚された豊臣秀吉の動きを【見切り】、面で制圧する様に【選択UC】の端末を発射よぉ
支配権を奪取したら、豊臣秀吉で織田信長を【捨て身の一撃】攻撃させるわぁ



「フェン!」
「フェンフェン!」
「フェンフェンフェン!!」
「フェンフェンフェンフェンフェン!!!!!!!」

「なるほど。黒い餅、とそういう事ですか」
 迫り来る小型戦闘用、『豊臣秀吉』を前に、黒川・闇慈は何かについて納得したかのように頷いた。
「ハハハハ!サル餅か!!!不味そうじゃのぅ!!!貴様の末期の飯がそれとはまっこと、もうしわけないのぅ!!!!!」
 その言葉に呵呵と大笑するは信長だ。
「クックックッ。これは異な事を」
 言葉と共に白いカードが舞う。<ホワイトカーテン>、闇慈の持つ魔術障壁を展開する為の道具だ。
 それが迫り来る『秀吉』の盾となるも、
「数が多い・・・!」
 容易く乗りこえ、群れが迫り来る。叩きつけられる腕を防御魔術を重ね掛けした黒いコート、<ブラックシェード>で防ぐも、
「グッ・・・!これは、中々……!」
 滅多打ちにサルの群れが打ち付けてくる。
「「「「フェンフェン!フェンフェンフェン!
「相も変わらず、何を言ってるのか分かりませんねぇ……!」 
 これがグレイズビームなど撃ってくるのなら超アストラル体に変身して回避できたものを。振り下ろされる小さくも数ある実体の腕は、それを許さない。
 いくら【激痛耐性】と【覚悟】を以て耐えているとはいえ、辛いものは辛い。
(かくなる上は……《炎獄砲軍/インフェルノ・アーティラリ》)
 もはや詠唱破棄に等しいスピードで詠唱された呪文(ことば)が中空に炎の奇跡を描く。
 奇跡は球となり、周辺にまとわりつく『秀吉』へと着弾。焼き払う。そしてそのままの勢いで腕を振るって信長へと炎の球をを向けた。
 が、
「フェンフェンフェン!」
「カカ!焼きサル餅なぞ喰わんぞサル!じゃがようやった!」
 信長の忠臣がそれを許すはずもなかった。
「クックックッ!本当に数が多い……!」
 信長へと炎を向けた分、信長へと意識を差し向けた分、当然の事として闇慈に隙が生まれる。そしてそれを埋めるかのように、『秀吉』が襲い掛かる。
「クックックッ……私の我慢を、舐めない方がいい……!」
 ほとんど無意識に炎を呼び寄せ壁にせんとするも、『秀吉』の群れが襲い掛かる方が早い。故に各所に傷を負った体に再び【覚悟】を込めようと瞳に力を入れれば、
「信長ちゃん、みーつけたー、遊びましょぉぉぉー♪」
 声は、空から降って来た。
 闇慈の眼前、まずピンク色の影が地に降り立ち、そして次の瞬間、地面が爆発し、迫り来る『秀吉』の群れを吹き飛ばす。
 新手。
 煙が晴れれば、そこには着物姿に白衣を羽織り、着物と白衣の合間から6本、バトルアックスを持つ機械の腕を生やした少女。
 アララギ・イチイだ。
「クックックッ……竜の助けとは、これはまた瑞兆というもの……!」
「何言ってるのかしらぁ」
 面白い事を言う人ねぇ。そういった感想を持ちながら、未だなお数多き『秀吉』達に向き直る。
「よいしょ」
 可愛らしい言葉と共に、まるで魔法のように一瞬前には存在しなかった武器が其処には顕れていた。
「物量で攻められるのは辛いわぁ」
 だから、
「一斉掃射♪」
 言葉と共に、イチイの持つありったけの火力が叩き込まれる。迫撃砲、ロケット弾、グレネードランチャー、ミサイル種々の火薬が爆発を起こし、『秀吉』達を吹き飛ばしていく。
「たーまやー、だったかしら?」
 爆炎に包まれて『秀吉』達が削り飛ばされてゆく。
「ガッハハハハハ!貴様!火薬か!?そりゃ火薬かぁ!?」
 自分の戦力が削り飛ばされているにも関わらず信長が膝を叩いて喜びの声を上げた。
「やっぱりええのぅ!ええのう火薬!坊主や烏帽子頭の唱える妖しい経文や呪など時代遅れの古びた骨董よ!これからの世は誰でも扱える火薬の時代思うとったわ!お主のそれ、儂にもくれんか!?報酬は弾むぞ!!!」
「残念だけれどぉ、これは私の玩具よ。フギン、ムニン」
 言葉と共に現れた二体の戦闘人形。そのうちの一体が秀吉の群れへと刃を振るって切り込み、もう一体が手に持つ重火器でもってその穴を拡げ、
「カカカ!儂と刃を交わすか!」
 信長と交戦を開始した。
「これでとりあえず信長はあっちに注意がいってる筈よぉ……」
 衝撃。何かが軋む音、
「おいおいおい!火薬!火薬の衝撃とはこんなものかぁ!?!?!?」
 信長の楽し気な声が響く。
「……あまり長くは保たないだろうけど」
 どうしようかしらぁ、肩を竦めながら問いかけてくるイチイの言葉を聞きながら、闇慈は依然、こちらへと襲い掛かる『秀吉』の群れを見据える。
 イチイの用意した火力でもって吹き飛ばされながらも、『秀吉』の数は未だに多かった。
「大きな攻撃は、『秀吉』が身を挺して防いでしまうでしょうね」
「だったら『秀吉』をどうにかすればおっきいの、イケるかしらぁ?」
「勿論」
 闇慈は胸を張って答える。
「さぁ、さぁ!どうにかしていただけますか・・・!」
「テンションが高いわねぇ」
 そう言いながらイチイが指を鳴らせば、その背後にコンテナが現れる。
「さぁて、試作品だけど上手に機能するかしらぁ?」
 《サモンリバース》。言葉と共に、干渉端末が発射される。着弾地点に目星は付けてあった。いくら数が多いとはいえ、火力で追い立てればある程度固まる場所は絞られる。
 そしてそこに干渉端末が降り注げば、
「ナーブジャック♪」
 楽し気な声と共に、『秀吉』達の分身の多くの支配権を奪取するなど、容易い事だった。
「それじゃ、捨て身の一撃、行ってみるわよぉ」
 言葉と共に、意思を乗っ取られた『秀吉』達が信長へと襲い掛からんとする。
「フェン……!」
 そしてそれを、支配から逃れた未だ正気な『秀吉』が、許せるはずもなかった。一度目の生では主の危急の時に駆け付ける事すら出来ず、その死に水を、仇を討つ事しかできなかった己が、例えその結末が同じであろうと、此度その末期を共にするという望外の喜びを得る事の出来た己が、主に刃を向ける、などと・・・
「フェンフェンフェン・・・!」
 赦せるはずがあろうもなかった。
 そうして始まるは『秀吉』と『秀吉』、サルとサルの大乱闘。
 即ち、
「大きな隙よぉ」
「クックックッ……感謝します」
 今や、闇慈と信長を遮るものはなかった。
 そうして広く両手を広げ、男は世界に謳い始める。
「『炎よあれ。それは生命と破壊の象徴』」
 爆炎が舞い踊り、闇慈の意思へと集ってゆく。
「『炎は熱を生み出し、熱は鼓動を生み出す。さりとて過ぎれば灰へと還らん』」
 意思が集めた爆炎へとさらに酸素を送り、なおも燃え盛らんとさせる。より一層燃え盛る爆炎、それこそが闇慈の意思。そう、珍しく黒川・闇慈は怒りを覚えていた。
(魔術を時代遅れなどと、このような愉快な玩具を…!)
 そういう輩が居るから、魔術が廃れ、調べ、詳らかにして、玩弄すべきものが失われてゆくのだ。
「『戦場を満たすは灼炎の王威よ、一切全て灰に帰せ』さぁ!古きものの力を味わいなさい!!!《炎獄砲軍/インフェルノ・アーティラリ》!!!!」
 言葉と共に爆炎が信長へと迫る。ギリギリまで引き寄せて、半壊したフギンとムギンが離脱すれば、
「ぬぉぉぉぉおおお!?」 
 闇慈の炎が直撃し、信長が吹き飛ばされて行った。
「クックックッ。そもそも、古いと言えば貴方が古いのです」
 もはや、餅を食べた者の孫の治世ですよ。嘲りの言葉と共に、吹き飛ばされる信長を、見送った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雷楽寺・六郎兵衛
共闘/アドリブ歓迎

 これぞ大一番、ラスボス戦ってやつだ。
 なら、BGMがなきゃ締まらねえよな。

 豊臣秀吉は儂から見れば謎の生き物だが、観察してれば鳴き声で意思疎通してるのはわかる。
「そら、一丁踊ってもらおうか」
 錬成ヤドリガミで出した三味線をあちこちにばらけさせ、念力で「フェンフェン」と掻き鳴らす。

 三味線に言葉喋らせるってのはまだ無理だが、単純な鳴き声の模倣くらいならできる。そうして敵の軍勢を撹乱する一方、手持ちの三味線の演奏で仲間を支援する(サウンドオブパワー)。切った張ったは味方に任せるぜ。

 さあ、第六天魔王よ。
 武力によって敵を滅ぼし、滅ぼされた過去の遺物よ。
 音楽の力を魅せてやる。


龍之・彌冶久
呵々、いやはや古の強者と斬り結ぶ事が叶うとは。
長寿冥利につきるとはこの事だな?

さてさて、ちょいとばかし老いぼれに付きおうて貰おうか。

【双境】。
奴さんの先制に発動が間に合うかは何とも言えんな?
まぁどうにか剣で凌ぐなり弾くなり――叶わずとも俺は一太刀で斃れはせんとも。せっかくの真剣勝負だ。
お前さん、真剣勝負は好きか?
この領域はお前さんと俺の水居らず。
勝負を愉しむ者のみが真っ当に動ける――それ以外は鈍くなる

何、単純だ。要は俺とお前がただ勝負を愉しむ為だけの境界よ。
愉しむ心を先に無くした者が敗けるだけの空間――いや、無粋な言葉はいるまいよ!
さあ、さあ、第六魔天殿。いざ尋常に死合おうじゃぁねぇか!


雨宮・いつき
かの信長公と秀吉公が相手であろうと、僕の為すべき事は変わりません
勤めを果たし、人の世の理を護る…未来の前に立ち塞がる過去を打ち破るのみ
決着をつけましょう、第六天魔王

秀吉公への対抗策は雷撃符と魂縛符を重ねた物
敵を吸い寄せながら雷撃を放つ雷縛符としたそれを複数周囲へと放ちます
秀吉公達を符の方へ吸い寄せ雷撃で消滅させ、初手を凌いで【時間稼ぎ】し、
【力溜め】をした【高速詠唱】の【全力魔法】で桃の侍とその配下をお呼びします
焔の【範囲攻撃】で後続の秀吉公ごと信長公を足止めし、
魂縛符で信長公と憑装の秀吉公を引き剥がす吸引と、氷結と雷の【マヒ攻撃】で隙を作り出す
それを突いて桃の侍様に全力の攻撃をして頂きます!



 吹き飛ばされた先、イチイの洗脳から脱した『秀吉』達を引き連れ、一端態勢を整えた信長の前に現れたのは、年齢も背丈も違う3人だった。
「呵々、いやはや古の強者と斬り結ぶ事が叶うとは。長寿冥利につきるとはこの事だな?」
 雲の如く靡く白髪、瞳は空の如く。纏うは神事仕る祭祀の如き衣を纏いながらも老人のように萎びた言葉を発するは、龍之・彌冶久。
「これぞ大一番、ってぇやつだな」
 それに対してこちらもまた笑うはヤドリガミ、雷楽寺・六郎兵衛。歌舞いた装いと傍らには三味線を持ちつつ。
「ほう・・・なんじゃ。流れの剣客に地方・・・となると貴様は、さしずめ立方かのぅ」
 楽し気な信長の言葉と目が三人目を捕える。
「いいえ。いいえ。僕は怪異を糺すもの。妖を討ち、世に平穏と安寧を齎す者。」
 即ち、
「未来の前に立ち塞がる過去を打ち破り、勤めを果たす者です。さぁ、決着をつけましょう、第六天魔王」
 雨宮・いつきが宣言するなり、戦闘は始まった。
「ガハハハハ!!!サルぅ!ほら汚名を返上せんかい!!!」
 言葉と共に『秀吉』の群れが向かって来る。
「さぁて!どうするんじゃ!!!」
 六郎兵衛が二人に言葉を放った。そしてその言葉に反して、既に体は反応していた。音が周囲に広がってゆく。
 それを尻目に、駆けだすのは彌冶久だ。
「俺が先に征く。『秀吉』は、どうにかしろ」
「頼みましたよ、彌冶久さん」
 いつきの言葉を背に、刃一本だけを手にして、彌冶久は『秀吉』の群れへと突っ込んでいく。そのまま体一つ分、波を断ち割り、抜ければそこには、
「はっ!剣客よ、どのような業を見せてくれる?」
 体全体を黒粘液で覆った信長が、太刀を片手に立っていた。
「さてさて、ちょいとばかし老いぼれに付きおうて貰おうか」
 そう言って剣を構えた。

「さて、儂ら、頼まれた訳じゃが」
 と言いつつ六郎兵衛の指は止まらない。つま弾くは音。どのような絶技にてそれが成されているのか。音はまさしく、『秀吉』達の『フェンフェン』という鳴き声に似通っていた。
 意味など分からずとも、音さえ真似出来れば攪乱になる。事実、『秀吉』は全く意味の通らない、『自分の声』に似た音に浮足立っていた。
「でしたら次は僕が」
 そして浮足立った其処に、吸魂符と雷撃符が同時に投じられる。吸い寄せられた『秀吉』が、雷撃で吹き飛ばされる。
 数の多い群れの勢いが、完全に殺された。
「では」
 スィ。いつきが右手に持った扇子を一つ、下に向けた。所作一つ、それだけで、六郎兵衛のかき鳴らす音に、雷撃符の爆発で騒がしかった場が鎮まる。
「是なるは、日ノ本一の兵の陣触れ」
 そして舞が始まった。これより呼び出す者たちへと手向けるそれは、その勇壮さを示すが如く、大振りで、力強い。
「左に犬養縣主。右に「猿女君。そして背に鳥飼臣を置き、陣と成す」
 それは言葉であり、歌であり、祝詞であった。所作と声にて場を作る。そしてその場に、音楽が加わった。六郎兵衛の、音だ。
「いいねぇいいねぇ!そりゃ、らすぼすとの戦いには、びぃじぃえむが必要だろうが!!」
 さぁ、武力によって敵を滅ぼし、滅ぼされた過去の遺物よ、音楽の力、魅せてやると言わんばかりにかき鳴らされる三弦が、勇壮なる舞にどこかしら熱狂と、そしてどこかしら偲ぶような切なさを加えてゆく。
 その音に笑みを浮かべながら、いつきの舞がさらに激しくなる。
「たった四人の陣なれど、温羅を討ちし破魔の陣なれば。さぁさ見よ!」
 言葉と共に舞と音楽が佳境へと入って行き、いつきの眼前に無双の鬼武者。そしてその他三方に、狛犬、狒々、雉の幻影が結ばれてゆく。
「遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ! これより来たるは鬼断ちの無双、日ノ本一の兵の出陣である!」
 《吉備津彦演戯開帳/エタニティ・ブレイヴ》はなった。桃より生まれし無双の若武者が、お供を連れて出陣する。
 そしてそれを彩るように音楽は新たな局面へ。まるでゲームの戦闘音楽のような激しい曲調。それが武者達に更なる力を与え、容赦なく『秀吉』達を蹴散らして行く。
「六郎兵衛さん、ありがとうございます!」
「なぁに、わしとて、日々鍛錬しておるものよ。こういう時は、ろっく、がええじゃろ?」
「ろっく・・・?」
 いつきは、エンパイア以外の音楽事情には疎かった。
「ともかく、これで『秀吉』達は蹴散らせます!ゆきましょう!」
「おうさ!カミサマ相手に奏でるなんて、楽器冥利に尽きるってもんじゃ」
 そうして二人は、『秀吉』達を蹴散らしながら、信長の元へと急いだ。
「ガハハハハ!!!剣客!吉備津彦ときたもんだ!儂が鬼じゃってよ!!!第六天魔はまぁ信玄坊主への売り言葉に買い言葉で名乗ったがよ、人を鬼って言うのはどうよ鬼って言うのは、なぁ?どう思うよ剣客?」
「はん・・・!」
 彌冶久の体は既に、血に塗れていた。
 
 時間を少し前へと戻す。彌冶久が接敵した直後、刃を振るった直後に違和感は感じた。滑るのだ、相手の体が。
「ム・・・」
 振るう。刃を立てようにも、
「よっと」
 相手が少し体を動かすだけで、刃が滑る。そうすれば斬る事が出来ない。体泳いだ。その隙を見逃す相手ではなく、
「ほらよ」
 言葉一つ。大太刀が頭上から降りそそぎ、
「・・・!」
 右に避ける。僅かに斬られた。腕に傷。振り下ろした瞬間、隙を見て再び彌冶久の刃が迫るも、同じように僅かな動きで刃が滑り、再び僅かな傷。
「おいおい。どうした?儂に一太刀、入れるんじゃないのか?」
 そういう信長は依然無傷。そう、黒粘液によって摩擦係数が0の体は、僅かな動きだけで刃を滑らせ、刃を立てる事を許さない。彌冶久とは、極限まで相性が悪かった。
 嘲るような信長の言葉、しかしそれには答えず、彌冶久は再び、刃を構える。そして、
「―――お前さん、真剣勝負は好きか?」
「あん?好きじゃよ?好きに決まっておる。貴様、舐めておるのか?」
「ならその言葉、努々、忘れるな!!!」
 言葉と共に彌冶久の体が翻った。

 そして現在、彌冶久の刃は届かず、対して信長の剣が通る。血濡れた彌冶久を前に、信長が勝ち誇った声を上げた。
「おうおう、言葉もないか、剣客!?」
「愚か」
 返答は言葉より早く、刃で齎された。
「な・・・に?」
 逆袈裟に信長の体に傷が付く。気付けば、眼前に居た筈の彌冶久が、背後にいる。
「き・・・さ!?」
 今まで目に追える速さだったはず、それがもはや目に見えないなどと、有り得る筈がない。
 そう想い、対応しようと必死に気配を巡らす。
 再び、三度斬られる。そこでやっと姿を捕えた。いや、動きが、鮮明にかつ、捉えられるようになった。
「なにを、した…貴様!」
「言っただろうさ」
 再び構える彌冶久の目が信長を冷たく見据える。
「『真剣勝負は好きか?』と。この領域はお前さんと俺の水居らず。勝負を愉しむ者のみが真っ当に動ける――それ以外は鈍くなる」
 それだけの話だ、と詰まらなさそうに答えた。そう、《双境/ソウキョウ》は既に発動している。互いに真剣であれば、その速さは変わらず、されど真剣でなくなれば、速さが5分の1となる。勝ちを確信した信長が、外の様子に目を向けた。その瞬間に『真剣勝負』の舞台から降りた。それだけの事。
 そも相手の摩擦係数が0であったため、刃を立てた瞬間体を動かされる事で刃が立たず、斬れなかった。ならば相手の反応が遅くなったのなら、斬る事は容易い。それだけの事だった。

「カカ!となるともうそいつは使えまい。今は儂も貴様に向き直り真剣勝負!さぁどうする!?」
「こうする」
「彌冶久さん!」
 言葉と共に放たれたのは魂縛符。魂ごと吸い寄せる強力な呪が、黒い粘液を根こそぎ剥がした。
「ぬおおおおお・・・!」
 信長の時間が5分の1になったという事はつまり、いつき達が信長の前へと現れるのに十分な時間が存在した、という事である。
「さて、やるか信長公。愉しむ心を先に無くした者が敗けるだけの空間は、今だ続いてるぞ」
 そうして再び刃を構える。
 『秀吉』達の間を駆け抜けて来たせいで、まだその勢力は残っている。吉備津彦が、犬が、猿が、雉が追いすがっていたそれらを蹴散らしながら、いつきは魂縛符に力を送り続け、黒粘液が信長を覆わぬように、どうにか堪えている。
「時間、そんなにありませんよ彌冶久さん!」
 返答はない。ただ、瞳の鋭さが増しただけだ。
「おうおうおう!切った張ったの正念場、本分はおめぇに任せるとて、このヤドリガミもなんもせん訳にもいくまい!さぁさ第六天!音楽の力を魅せてやる!!!」
 言葉と共に音楽がより激しくなり、いつきと彌冶久へと力を分け与えてゆく。

「ガハハハハ!お前!儂とまっとうな剣術勝負でもする気か!!!言っておくが儂、剣術は弱いぞ!?」
「ほざけ第六天魔殿。その体、膂力は人を越えてるだろうが。ならば―――」
「「是非もなし」」
 言葉重なった。
 そして次の瞬間、
  
 ―――刃が重なり、血が舞った。

 交錯は一瞬。しかしてその交わりは刹那の間、幾たびにも行われた。血に濡れ消耗した彌冶久、常人にない精力と膂力を持ちながら剣の術はさほどでもない信長。総合的な実力は伯仲すれども、最後は
「斬る術は、体が覚えているからな」
 信長が態勢を崩す。即座に彌冶久が振り向き、その首を落とそうとすれば、
「フェン!」
 傍らに浮かぶ『秀吉』のオーラがそれを防いだ。
「「「「フェンフェンフェンフェンフェンフェン!!!!!!!!」」」」
 そうすればどこからそんな力があったのだろうか、突如と湧き出た『秀吉』の群れが傷を負った信長を抱え、即座にさってゆく。
 退却だ。将が退く。もはや勝敗は決したようなもの。とはいえ、その引き際の鮮やかさに猟兵達も虚を突かれたのは事実。決着は、後に続くものに託された。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

月宮・ユイ
アドリブ◎
*器に<呪詛>宿し呪詛/呪操る

敵に囲まれてなお余裕ある様子、
実力に加え経験故かしらね
《捕食形態》武装圧縮成形:<生命力吸収の呪>上乗せ
衣:<念動:オーラ>に重ね身に纏う
・足場に粘液撒かれた場合、捕食と鉤爪変化形成し対処
剣槍:二刀流も

粘液で遠距離から有効打は困難故接近戦挑み
UCの捕食で削り効果下げる。
<第六感>併用全知覚強化<情報収集・学習・見切り>
刀の斬れ味も向上…
鋭さ逆に利用し傷を最小限に抑え、致命傷のみ避け
呪と捕食で得た力使い応急処置。
念動:オーラ使い傷固定と体を意志で操作継戦
UCで得た加速で<早業:2回攻撃>
粘液捕食した箇所に攻撃重ね攻撃通す狙い。
どちらの刃が命に届くか勝負です


ヴィクティム・ウィンターミュート
天下布武の魔王
サムライエンパイア最強の男
あぁ、いいな…奪ってやりてぇ──何もかもを
だが一番欲しいのは…勝利だ
お前から、奪っていくぜ

まずは秀吉の群れの対処か
【ハッキング】でサイバネを全てオーバーロード
【ドーピング】でコンバット・ドラッグ摂取
【ダッシュ】【早業】【見切り】【フェイント】高速戦闘状態へ
さらにUC起動──セット『Flatline』

──俺に大量の敵意/殺意/攻撃/害意が向いている
もっとだ、もっと向けろ
そうすりゃ俺は際限なく強くなる
秀吉を殺し、命を吸い取って薙ぎ払う

さぁ信長──奪い合いをしようぜ、俺と
お前の武力も、カリスマも、腕も、脚も──俺のもんだ
ハイエナが、お前の覇道を喰い殺す!!



「ガハッ・・・!ゴフッ!やりおる!やりおるわ猟兵共!いやぁ!斬られた斬られた!こりゃ溜まらん!死ぬぞ儂!!!」
 無数の秀吉達に抱えられ、血を流すはオブリビオンフォーミュラー、織田・信長。つけられた傷は深く、確かに致命に達しているように見えた。
「フェン・・・」
 抱える『秀吉』達は敬愛する主の姿に、悲しみ、忸怩たる想いを抱くかのように一鳴きする。
「ハハハハ!何を殊勝な態度を取りよるかサル!!!お主、儂が死んでから関白なぞになりよった漢じゃろうが!ここは『失望しましたぞ我が主君斯様な矢傷で斃れようとは。それでも戦国の礎となった漢でありましょうや!』位の発破かけんかアホめ!」
 そして血を吐きながらもなお、天下の泰平、その先鞭をつけた男は家臣の気後れを糺した。
「現にほれ、敵がもう目の前じゃぞ?」
「そうだな。悪いが、お涙頂戴って場面はもうとうに過ぎてるんだよ」
 そうして現れるのは黒衣の男。端役。ヴィクティム・ウィンターミュートだ。
「まったく。敵に囲まれてなお余裕ある様子、実力に加え経験故かしらね」
 そしてそれに続くように現れたのは白衣の少女、月宮・ユイ。

「ガハハハ。サル、降ろせ」
 血に濡れた男が、大地に降り立つ。致命傷を負ってなお、第六天魔王は威風堂々と刀を握り、その威容は陰る所を知らなかった。
(ああ、これが。これこそが、天下布武の魔王。サムライエンパイア最強の男……)
 まさしく物語の主役。そう、織田信長は、後世の世界で様々な戯曲に現れるべき強大な存在だ。
(あぁ、いいな…奪ってやりてぇ──何もかもを)
 そしてそれはきっと、端役にはないもので、だからこそ焦がれるのだ。しかし今、何よりも焦がれるのは、
「……勝利だ」
 そうして端役は宣言する。
「お前から、奪わせてもらうぜ、信長」
 そう、相手が覇者。主役たる者ならば、これが仮に物語ならば、『ジャイアントキリング/大物殺し』もその醍醐味なれば。
「……高いわね、テンション」
 これより始まる戦いに武者震いを起こすヴィクティムに対して、対照的にユイのテンションは平素と変わらないものだった。
「ハッ!悪いかよ」
「いいえ……それが勝つことに必要なら、それもまたいいんじゃないかしら?それよりも、マキナ」
〈イエス、マスター〉
 電子音声が応え、〈連星型共鳴コア:無限封珠『ウロボロス』〉がその手に現れ、それをヴィクティムに手渡した。
「貸すわ。上手に使いなさい」
「ハッ!お互い様だろうが」
 憎まれ口を叩きながら、手渡された宝珠に〈電脳接続型拡張プロセッシングゴーグル『ICE Breaker』〉を接続する。
 一瞬ゴーグルにノイズが走り、次の瞬間左下に新しいデバイスが接続された事を確認する。
「さぁて、やるか」
 眼前、雄々しく立つ信長の前、無数の『秀吉』が壁となって待ち構えてる。もはや、これ以上猟兵達によって傷を付けさせないと必殺の意思を持って猟兵に相対する壁。
 それを見て、ヴィクティムの笑みはより一層深まった。
「いいねぇいいねぇ」
 【ハッキング】、瞬時にゴーグルに表示された各種装備機器がレッドアラートを示す。赤はいい。激情の色だ。そしてそれだけ、力を示す。オーバーロード。耐用年数と引き換えに今この一瞬の力を手に入れる技。
 そしてそれは、何も機械だけにとどまらない。首筋へと無針注射。撃ち込まれたコンバット・ドラッグが脳の限界を無理やりこじ開ける。自身の耐用年数と引き換えに、今この一瞬の力を手に入れる術。
「セット―――『Flatline』」
〈UC、《Forbidden Code『Flatline』/スベテウバイツクスマデハ》―――レディ〉
 これで準備は整った。
「さぁ、俺はアイドリングだ。どうだ、お前は?」
「いつでもどうぞ」
「なら、ミッション、スタートだ」
 瞬時、黒い影が『秀吉』の群れへ躍りかかった。

「ハァッハァー!!!!!!」
 見渡す限りの群れ、群れ、群れ――――そして、敵意/殺意/攻撃/害意。
 腕が、牙が、体が、ヴィクティムの体にぶつかろうと突撃してくる。
「ああ、そうだ!そうだその眼だ!俺を殺せると思ってる上位者気取りの目。──奪ってやる。金も、武器も、命も名前も存在意義も!お前から全てッ!!」
 言葉と共に、UCが発動する。
 『秀吉』を一体ぶん殴る。その瞬間、『秀吉』一体分の力が、信長の背後に浮かぶ『秀吉』から強奪された。
「フェン!?」
「カハッ!将棋か貴様!」
「ああ!?殺し合いだろうが!」
 もう一撃、また一体分、力を得る。瞬間、背後から一撃。秀吉の爪だ。血が飛び散る。ダメージを負う。振り向きざまにまたぶん殴る。強奪する。
 命が削れ、力が満ちる。オーバーロードとドラッグの影響で高速起動モードに移行してもなお、『秀吉』の数の暴力は確実にヴィクティムを傷つけていく。
 だがしかし、ヴィクティムもまた『秀吉』から力を得ていく。
「さぁ信長──奪い合いをしようぜ、俺と!」
 背を伸ばせばそれだけ『秀吉』達が襲い掛かる。ならば、姿勢を低く。そして一つ所に留まらず。
「お前の武力も、カリスマも、腕も、脚も──俺のもんだ」
 また一体殴り飛ばす、その様はまさしく、
「ハイエナが、お前の覇道を喰い殺す!!」
 それそのものだった。
「ガキがほざきよる!!!」
 端役の、少年の大言壮語に漢は大笑し、そしてふと真顔になり、
「所でもう一人―――どこに行った?」
 次の瞬間、無意識の域で自身の後ろに粘液を放った。
「あら、察しがいいわね」
 後ろを振り向けばそこには、【人型変異/トランス】にて目立たぬように黒猫に変身して近付いたユイが、飛び上がって変身を解いていた。
「マキナ」
〈イエス、マスター…共鳴・保管庫接続正常、能力強化。無限連環強化術式起動。捕食吸収能力制御、圧縮成形〉
「『ステラ』、『ケイオス』、形状変化」
〈ポジティブ〉〈ハ、ハ、ハ。主は人使いが荒いな〉
 いつの間にか手に持つは現れるは武装を創生する星の如き核、星剣『ステラ』、そしてそれを喰らい、混ざり合うのはドラゴン、『ケイオス』だ。二者は混ざり、絡み合い、やがて優美な装飾を持つ槍剣となり、そして分かたれた。両端に刃を持った槍剣は二つに分かれ、そしてその先端が鉤爪となり、地面へと射出される。
「おいおい!んなもん許すかよ!」
 再び粘液が、鉤爪の着弾点へと射出される。摩擦係数を0にするそれは、地面と爪を滑らせ、咬ませることはないだろう……本来なら。
「喰らえ…」
 言葉と共に、撒かれた粘液が、吸収され、鉤爪が地面を噛んだ。
「なんと!貴様もか!!!」
 答える言葉は無く、そのままユイが懐に入る。振るわれる刃
〈共鳴・保管庫接続正常、能力強化。情報読取蓄積更新…各技能へ反映継続、最適化…機能強化〉
「適用……」
 言葉と共に強化された感覚が、振るわれる刃を目で捉える。早い。体をずらして、それでもなお、刃が体を捕え、
「……!」
 体に傷が走った。構わず、こちらも刃を振るう。
「なるほどのぅ!喰らうか!」
 ユイの振るった刃を振るえば、その一瞬、粘液が『捕食』され、すぐさま与えられる二の太刀が信長に傷を与える。
 しかし、
「再び、儂の全身は粘液で覆われるぞ?それにニ撃、与えねばダメージが通らぬのなら、手数が増える分、隙も大きいよなぁ?」
 事実、ユイにも傷が増えていた。
「問題・・・ない!」 
 嵐のような剣風を避け、傷を増やしながらも捕食で得た力と己の呪にて体を癒しながら、斬り結ぶ。
「それに、粘液を捕食するとて、そりゃお主、あくまで粘液じゃよそれ?んなもん喰ったって力なんぞ微々たるものじゃ・・・あっちで暴れとる小童の方が、そういう意味では余程恐ろしい。そんなんで貴様、勝てるかね?いいか?いいのんか?儂が死ぬ前に、貴様、死ぬぞ?」
「御託はそれだけですか?」
 刃が二度振るわれ、大太刀が一度振るって双方の血が舞う。
「ハッ!言いよるのぅ!」
「ええ。信長公、どちらの刃が命に届くか……勝負です」
 そうしてお互いの刃が振るわれた。

 破局は、まずヴィクティムの方に訪れた。
「ギッ・・・・・・ガッ・・・・・・!」
 ゴーグルでない。本来の視界が赤く染まる。傷より流れ出る血が沸騰する。体の奥底に何か、本来の己の命とは別の何か、熱いものが滾っているのが分かる。
 たまらず、蹲る。そこに追い打ちをかけるように未だ数多く残る『秀吉』が襲い掛かってくる。反射的に極限まで強化された腕を振るい、打ち倒す。打ち倒した分だけ、力が、『秀吉』達の生命力が、ヴィクティムに流れ込む。
「ガハッ!」
 血を吐いた。吐いた血すら、ぐつぐつと煮えたぎっている。
「ハハハハ!貴様!そりゃそうじゃろ!やーい!やーい!うつけ者ぉ!」
 その様を見て信長が呵々と嗤う。
「奪い合ぅ?この儂と?オブリビオン・フォーミュラーとぉ!?そりゃワシャ弱っとるよ?さっきの剣客にズンバらりとやられとるからね?実際お主らと戦っとるせいで傷が癒えておらんからこのままだったら儂ゃ死ぬ。その前に貴様らを殺すが」
 と、信長は言葉を切って、
「これでも儂、総大将じゃからな。ただの一介の猟兵如きに吸い尽くされる程の力じゃと思うてか、ガキ。のう、貴様も、そう思うじゃろ。めんこいの」
 そういって眼前にて刃を構える。ユイへと向き直る。
 槍剣を構えなおす。傷を癒しながら戦ってもなお、着実に増えていく傷と流れ出る血を気にせぬとばかり、眼光鋭く信長を睨み返した。このままでは、負ける。
 だが、
「は、はは……うつけ者うつけ言われるとは、光栄じゃねぇか」
 体中から蒸気を立ち上らせながら、端役は笑う。
「だったら、うつけらしい所、見せてやらねぇとな」
 そう、もとより、吸い尽くせるなど思っていなかった。体が先に限界が来る事も。 事実、生命力を吸収しすぎて限界を迎えた体は立ち上がる事も出来ず、それを隙と見た『秀吉』達が襲い掛かる。
 だから、
「使えよ、ユイ」
 端役は結局、主役を引き立たせる為の舞台装置なのだ。
〈Account Name:Arsene より、ウロボロスをキーとした統括管理用装置&システム群へのアクセスの要望があり、承認しますか?〉
〈―――エネルギー貯蔵領域に限り、承認〉
 次の瞬間、二か所の地点で爆発が起こった。
「……は?」
 一か所目、信長の眼前。目の前に存在したユイが爆発を起こしたと思った瞬間、眼前から消え、そして―――
「儂、の……腕」
 無意識だった。無意識のまま刀を持つ右腕を庇うように左腕を突き出し、それが斬られた。
「あら、流石ね」
 声は、後ろから聞こえた。ユイだ。その体に生命力を充溢させて、頬すら上気している。僅かな、高揚を混じらせた声に、ヘラリ、と頬が緩んでいる。
 その様で、信長は理解した。
「くっ・・・貴様ら・・・!」
 瞬足。先ほどと比べ物にならないユイの力とスピードをどうにか受けて、もはや構ってはいられぬことは事実なれど、信長は叫ばずにはいられなかった。
「ヴィクティム・ウィンターミュート……!」
「あーあー。ったく。肩が凝ったぜちきしょうめ」
 爆発の二地点目、ヴィクティム・ウィンターミュートは肩を鳴らしながら、今しがた自分に襲い掛かろうとした『秀吉』達が消し飛んだそこで、今なお周囲に存在する『秀吉』達を睥睨する。
 そう、力を吸いきれないなんてわかりきった話だった……一人なら。
 だったら、簡単な話だ。1足す1は、1より大きい。
「さぁて、少なくとも、さっきとおんなじ位は奪える」
 それどころか今はオブリビオン・フォミュラーを倒すために無尽蔵時力を使う『蛇口』まである。もはや勝負は決した。
「ユイ、俺が『秀吉』倒しきるまでに終わらせろよ」
「あら、結構な自信ね。貴方1人でまだ沢山いる『秀吉』を倒しきれるのかしら」
「ハッ・・・!言いやがる。なら、ゲームだな」
「ええ。ゲームね」
 二人、僅かな笑みが浮かぶ。
「あんだと貴様ら!遊戯か!儂もぉ!混ぜろや!!!!」
 腕を片方なくそうと、その膂力は健在。力任せに振るわれた大太刀を、ユイはしかし避けようともせず真正面から受け止め、
「あら、スコアが何か言ってるわ」
「儂が景品か!剛毅じゃな貴様ら!まぁええわ!じゃったら景品らしく!華々しく散らせてもらおうか!サルゥ!!!気張れぇ!!!」
「「「「「「「フェン!!!!!!」」」」」」
「はっ!面白れぇ!」
 ヴィクティムの言葉を最期に、ゲームが再開した。『秀吉』達が蹴散らされ、力を奪い、それがヴィクティムとユイに還元され、信長へと襲い掛かる。そうしてしばしの時間の後、
「ラストだ!!」
「……覚悟!」
 ヴィクティムが『秀吉』の最期の一体を倒しきるのと、ユイが信長の頸を撥ねたのは、同時だった。
「ガハハハ!見事!いやぁ!お主ら直接儂の頸を撥ねたのは誇っていいぞ!キンカン頭よりやりよるわ!愉快愉快!褒めて遣わす!!!!!」
 首になりながらも、そうって大笑し、第六天魔王は露と消えていいた。
 そうすれば辺りには静寂が戻ってくる。
「あー、疲れた」
 そう言いながらヴィクティムが「ウロボロス」を返した。
「でも、目的は達する事が出来たわ」
「ああ、そうだな」
 ニヤリ、端役は笑う。そうして此度の戦いの幕を引いた。
「敵将、討ち取ったりってな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月26日


挿絵イラスト