2
エンパイアウォー㊴~赤き道の先へ

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #オブリビオン・フォーミュラ #織田信長 #魔軍転生

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー
🔒
#オブリビオン・フォーミュラ
🔒
#織田信長
🔒
#魔軍転生


0




 ――鬨の聲が上がる。

 地に落ちた安土城目掛け突撃する幕府軍。
 その数、11万6千。

 城の守りは首塚の一族によって剥がされ、猟兵たちの活躍により、大きな犠牲を出す事なく辿り着いた幕府軍の士気は高い。

 だが、相対する信長軍は魔空安土城に控えていた、負傷も無ければ疲労もない、万全の軍勢。
 乾いた島原の地は、瞬く間に赤く染まっていく――。


「ここまで来たら、説明は要らないだろう?」

 集った猟兵たちを見回して、羅刹のグリモア猟兵――蛍火・りょう(ゆらぎきえゆく・f18049)は本題に入る。

 首塚の一族の呪詛により、魔空安土城は地に落ちた。
 そして、最後の戦いが始まったのだ。

「魔空安土城には信長軍が控えているよ、でも、キミ達に相手して欲しいのはそっちじゃない」

 信長軍の相手は、徳川軍が務めてくれる。

 ゆえに、猟兵たちには、彼ら徳川軍の切り開いた道を駆け抜け、その先に待つもの――オブリビオン・フォーミュラ『織田信長』を倒してきてもらいたい。

「第六天魔王『織田信長』は、秘術「魔軍転生」によって、配下の魔軍将を背後霊のように「憑装」させて戦ってくるよ。実力は確かだから気を付けて」

 織田信長相手に先手を取る事は、まず出来ない。
 どんなユーベルコードを使おうとも、信長の方が速く技を繰り出してくる。

 それを、何らかの方法でかわすのか、それともダメージを抑えて受けるのか。
 いずれにしても、しっかりとした対策でなければ、その一撃で倒されてしまうかもしれない。

 この戦場で待ち受けている信長は、『豊臣秀吉』の力を憑装させている。
 広範囲への攻撃に長けており、防御面に関しても有効な技を使えるようだ。

「たぶん、本人はあんまり動かないで、遠距離攻撃で攻めてくると思う。でも間合いを詰めれば、刀で応戦してくるだろうから、どうやって反撃するのかもちゃんと考えておかないと、厳しい戦いになりそうだ」

 でも、退くって選択肢はないだろう?と、りょうはくすりと笑う。

「キミたちの後ろでは、11万6千もの幕府軍が一緒に戦ってるんだ。これで勝てない道理はないだろう」

 これまで猟兵たちが護り通した幕府軍たちが、今度は、猟兵たちが信長との戦いに集中できるよう支援してくれている。
 必要なのは、信長を倒すための『策』と、それをやり通す『覚悟』だけ。

「それじゃあ、準備はいいかい? キミ達の武運を祈っているよ」


音切
 音切と申します。
 信長withフェンフェンをお届けいたします。

 このシナリオは、既に信長と相対している状態から始まります。
 オブリビオン・フォーミュラだけあり、難易度の高い依頼となっております。
 下記注意事項をよく確認の上、ご参加くださいませ。

=============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
====================
 第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
====================
73




第1章 ボス戦 『第六天魔王『織田信長』秀吉装』

POW   :    黒槍殲撃
【秀吉を融合させた鋼鎧から無数の黒槍】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    黒粘剣戟術
【秀吉の黒粘液で全身から刀まで全てを覆い】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ   :    シャドウクローニング
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:UMEn人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

勘解由小路・津雲
いよいよ信長公のお出ましか。サムライエンパイアの平穏をかけて、いざ勝負とまいろうか

【作戦】
こちらは【八陣の迷宮】を使用

これが発動する前に相手は秀吉を召喚、攻撃してくるはず。それを「オーラ防御」で防ぎつつ、先制されるUCではなく「玄武の錫杖」を信長に向けて「念動力」も使って「投擲」する。忠義に厚い秀吉は信長のカバーを優先するはず。当然これは防がれる

しかしその隙にUC発動、信長と召喚された秀吉を迷宮で分断し、1対1の状況を作る。作り出した密室で、「破魔」を乗せた「衝撃波」で「範囲攻撃」、この状況ならかわせまい。

相手に先制されることで成り立つ作戦だが、上手くいくだろうか

あとは迷宮が破壊される前に離脱


レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
ふぇんにゃん大戦争…!(にゃんとなくな私情)30代目様の力なら出来そうだけど数で負けそうにゃね。それは兎も角、その数利用させて貰うにゃよ。

先制攻撃に対して
呪い(アイテム)に包まれて子猫に変身し、髭感知で動きを見切り、盾たる肉球・武器たる爪で攻撃を受け捌く。
そして自身に集中したら戦場に大音量のミュージックエナジーを鳴り響かせて隙を作り出し、現れては消える一撃離脱の死神(暗殺者スタイル)、18代目様の力【スカルキャット】を発動。
召喚した頭蓋骨を被り、頭蓋骨の特性「装備者と共に発見され難くなる」で隠密性を高め、肉球で足音を消し、秀吉達に紛れて、斬鉄爪で死角から奇襲攻撃。


アリス・フォーサイス
小型とはいえ、豊臣秀吉がそんなにいっぱいでてくるの!?

打ち落とす?いや、秀吉は光線がうてる。とても間に合わない。

秀吉が召喚されたのを見たらすぐにアナロジーメタモルフォーゼでビー玉を変換し、ぼくをぐるっと囲む障壁を作るよ。

秀吉が障壁を越えてくる前に、全力魔法ですべての秀吉を打ち落とすよ。

打ち落としたら魔力を一点に集めながら障壁を解除、信長を目掛けて集めた魔力をぶつけるよ。



 咆哮と叫び声の中。
 激しい剣戟の間を抜けて、駆けあがった赤き道の先に、その男は立っていた。

「フェンフェン!」
「……来たか」

 途方もない数の配下を従えて、このサムライエンパイアという世界に危機をもたらしたオブリビオン・フォーミュラ――『織田信長』も、今はただ1人。

 既に趨勢は決している。

 例え今一時、猟兵たちを退けようとも。11万6千もの軍勢を守り切り、魔将軍たちを討ち取ってきた猟兵たちの勢いは、抑えられるはずもない。
 それは、信長当人こそ、よく分かっているはずだ。

 だが、この男は退かない。

 何も言わずに、悠然と刀を抜き、構える。
 この男の戦いは、既に戦いは始まっているのだ。

 それは猟兵たちが、寛永三方ヶ原の戦いに挑んだ時からか。
 あるいは、この男がサムライエンパイアの世界に現れた、その時から。

 始めたものは、終わらせなければならない。

 過去より出でて、ばら撒かれた厄災に。
 一体どれほどの人が、絶望と悲しみを味わったのだろうか。

 そしてこの戦いに、どれ程の血が流れたか。
 ――今こそ、全てを終わらせる時。


「サムライエンパイアの平穏をかけて、いざ勝負とまいろうか」

 錫杖を手に進み出た勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)の言葉に、信長が笑い応える。

「我が軍をここまで追い詰めた力、儂に見せて見よ。猟兵ども」
「フェンフェン、フェフェン!」

 信長の背後で揺らめく秀吉が叫べば、まるで影から染み出して来るように。信長の周囲に次々と召喚されてくる、小さな秀吉たち。

 それは、フェンフェンと鬨の聲を上げ、猟兵たちの視界を埋め尽くす程に数を増やしながら迫りくる。

「豊臣秀吉がそんなにいっぱいでてくるの!?」

 1体1体の大きさは、子犬程度ではあるが。
 装着した電脳ゴーグルを使っても、とても数えられそうにない秀吉の大増殖っぷりに、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)が驚きの声を上げた。

 津波のごとく押し寄せる秀吉たちに、せめて何か、障壁になるものを……と。
 アリスはビー玉を取り出そうとするけれど、秀吉の爪が。尾が。させないとばかりに、次々にアリスに迫る。

(まるで、ぼくの狙いが分かってるみたいだ)

 だが、そう考えれば納得がいく。
 どんなユーベルコードを使おうとも、信長が先手を取ってくるという事は、ユーベルコード同士のぶつけ合いでは、押し負けるという事。

 これ程の数の秀吉を相手に、障壁を作れない状況に陥るとは……。

 だが、アリスという猟兵は、様々な世界を歩き情報を糧とする妖精。
 そのゴーグル越しに観察していた秀吉たちの動きに、もう1つ気付いた事がある。

(秀吉は光線がうてたはずなのに……)

 1体たりとも、光線を放ってきていない。
 その光線によって麻痺の効果を与えられては、一気に崩されてしまうと。そう警戒していたが。
 もしかすると、信長に憑装させられた事により秀吉固有の能力については、失われているのかもしれない。

 ならばまだ、応じようがある。
 
 この体はまだ動く。魔力も十分残っている。
 だから今は少しでも、この秀吉たちを減らそうと。ウィザードロッド型の端末より解き放たれた力は、1と0を書き換えて。
 秀吉たちを吹き飛ばしていく。

「フェン、フェフェン!」

 影のように黒い爪で、床を引っ掻いて。尻尾を揺らし迫りくる秀吉たち。
 そして、アリスの魔法に吹き飛ばされて、ころころと転がっていく姿は、子犬のようでもあり……。

「ふぇんにゃん大戦争……!」

 とある猟兵――レフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)には、子猫のようにも見えたという。

 負けられない。
 あえてみなまで言わないが、色々な意味でこれは負けられない、と。
 レフティの心に火が付いた。

 そう、猟兵には時に、何があっても決して負ける訳にはいかない戦いというものがあるのだ。

 その心に応えるように、まとわりつく呪詛はレフティを子猫の姿へと変えて。
 黒い波のごとき秀吉たちの間を、白い子猫がすり抜けていく。

 多方面から迫る爪に。しかし子猫の髭がピクリと揺れれば、まるで後ろにも目が付いているかのように、レフティはするりとかわして見せる。

 ぷにっとした肉球で、鋭い爪を弾き飛ばしながら、数には数を……と、一瞬考えるけれど。

(数の勝負では、負けそうにゃね)

 今の自分で呼び出せる猫は47匹。
 猟兵たちを取り囲む、数え切れぬ程の秀吉たちを前に、文字通りの『大戦争』としゃれこむには、やはり心許ないか。

 だが、数こそ武器だと言うのなら、逆にその数を利用できないだろうか。
 そう、木を隠すには森の中と言うならば。子猫を隠すには……?

「フェン!?」

 大音量で鳴り響く音楽に、秀吉たちが驚く隙に、レフティの頭部は頭蓋骨に覆われて。
 その爪は、より鋭く。柔らかな肉球で音もなく降り立つ不吉な姿は、死神を思わせる。

 そのまま、黒い秀吉たちの影に紛れんとするけれど。

「フェン、フェン」
「にゃにゃ!?」

 いかに発見され難くなるユーベルコードとて、既に発見されている状態からの使用では、効果を期待できない。
 増して、大きな音を立てて沢山の秀吉たちに注目されてしまった今、その全ての視線から逃れる事など、不可能だった。

 迫りくる爪に、髭の感覚を研ぎ澄まし何とかかわして見せるけれど。
 1体の視線を振り切っても、また別の秀吉がレフティを目に止めて迫ってくる。

 例え、信長には注目されていないとしても。この秀吉たちをどうにかしなければ、信長に近づく事も出来ない。

 この秀吉たちは、信長の攻撃であると同時に、盾でもあるのだ。

(やはり、忠義に厚い将なのですね……)

 子犬のような大きさで召喚されているとはいえ、秀吉は秀吉。
 本体同様に、その心は信長への忠誠に溢れているならば。逆に、そこに付け入る事ができれば……。

 息も付かせぬ多方面からの攻撃に、津雲の纏っていたオーラは既にほとんど剥がされてしまっているが。
 いつまでも、ただ守っているつもりはない。

 目の前の秀吉を、叩き落として。
 信長への射線を開き、振りかぶる錫杖に念動力を込めて、放つ。

「フェン、フェンフェン!」

 弾丸のごとく飛び出した錫杖に、秀吉たちが騒めいて。
 我が身を盾にせんと、次々に信長の前に飛び出してくる。

 だが、強い念を込めた錫杖は、秀吉たちの次々に貫き通して――信長の眼前へと。

「直接、儂を狙うか」

 相手が軍勢ならば、それを率いる『頭』を狙うは王道の策。
 ゆえに、読みやすいと。錫杖は、容易く刀で打ち払われるが。

 ――この攻撃が通る事はないと、分かっていた。

 狙いは、信長にダメージを与える事にあらず。
 秀吉たちの注意が逸れた、この一瞬。津雲の放った霊札は戦場に舞って。
 信長と、秀吉たちを分断する壁となる。

 戦場に響く呪言によって結び引かれた境界に、3つの門は閉ざされて。

「汝に開かれたるは死門のみ」
「……ほう?」

 自身を囲む結界に、信長は目を細めるが。
 口元に浮かぶのは、余裕の笑み。

「出口のある結界とは、珍しいものを見せよる。だがそれでは、サルを止めるなど出来んではないか」

 欲を言えば、信長と1対1の状況を作りたかったのだが。
 信長の周囲に、まだ数多く残る秀吉たちの姿に、津雲の表情が僅かに陰る。

 直接、信長を狙って見せたがゆえに、秀吉たちの警戒心を高めてしまっていたのだ。
 また次なる攻撃に備えて、信長を守らんと密集している秀吉たちまでは分断する事がかなわず。
 そして迷宮という、完全に閉じられてはいない結界は、時間が経てば経つ程に、分断したはずの秀吉たちが合流してきてしまう。

 何か、手を打たなければ――。

「ぼくに任せて!」

 焦る津雲の視界に飛び出してきたのは、小柄な少女――アリス。

 次々と迫ってくる秀吉たちに隙を見いだせず、手をこまねいていたが。
 迷宮によって、秀吉たちが分断された今ならば。

「ぼくにかかれば、なんでも作れるよ」

 投げたビー玉が、放物線を描く間に。
 分解された膨大な1と0は、アリスの意思に基づいて、ビー玉を分厚い壁へと作り変える。

 情報妖精たるアリスに掛かれば、DIYもお手の物。
 信長と秀吉と。そして猟兵たちのいる空間に通じる全ての通路が、壁によって塞がれて。迷宮は、密室へと変わる。
 
「これでしばらくは、合流してこれないでしょ」

 だが、この壁も、オブリビオン相手に長く持つ訳ではない。
 壊される、その前に。
 この空間に残った秀吉たちを――。

(すべて打ち落とすよ)

 手にしたウィザードロッド型の端末に、全ての魔力を込めて。
 狙うは1点。

 津雲もまた、手元に戻した錫杖に、魔を砕く力を込める。

「この状況ならかわせまい!」

 アリスの支援により、完全な密室と化したこの空間ならば。
 津雲が練り上げた魔を砕く力は、押し寄せる波のように。
 逃げ場のない空間を駆けて、秀吉たちを消し飛ばす。

 その波に乗るように、アリスの魔法が矢のごとく信長へと迫るが。

「甘いわ」

 信長の、大刀の一振りに威力を殺されて。僅かに肩鎧を破壊するに留まった。

「正面から来ると分かっていれば……」

 斬り伏せるのは容易いと、言いかけた信長の言葉を遮って。
 アリスがわざと首を傾げてみせる。

「ぼく『たち』の攻撃は、まだ終わってないよ?」
「何……?」

 信長の目に映るのは、津雲とアリスの2人だけ。
 だが、この場には、もう1人猟兵がいる。

「言っただろう。汝に開かれたるは死門のみだと」

 信長を直接狙った攻撃に、秀吉たちの注意が削がれて。
 さらに迷宮によって、大半の秀吉たちが分断された今。
 音もなく信長の背後に忍び寄る子猫に……レフティに気付いていたのは、仲間である猟兵たちだけ。

「覚悟するにゃ!」

 信長の鎧に、深々と食い込むその時さえも、静かに。
 鉄さえも切り裂く爪が、死神の鎌のごとく振り下ろされた――。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

月舘・夜彦
【華禱】

……倫太郎殿、此処は私に
名も無き忍の彼が私を守ってくれたように
私も守りたい者の為に、此の力を使います

放つ槍は無数なれど、必ず隙はある
倫太郎殿を背にして無数の槍へ抜刀術『八重辻』
視力・見切りにて槍の本数・方向を確認し、槍を捌いていきます
2回攻撃は槍を武器で受け止め、武器落としにてなぎ払う
鎧で精製された槍ならば鎧砕きも通じるはず

槍の数は余りにも多い
全てを捌けなくとも、痛みは激痛耐性を以て
人を守る盾と成る覚悟を以て、この腕が動く限り振るい続ける

槍の雨が止む時こそ好機
私が守り通せたのなら、後ろの彼の刃が奴に届くでしょう
任せましたよ、倫太郎殿


篝・倫太郎
【華禱】
信玄よりも背後霊っぽいナー……

先制攻撃には見切りと残像、フェイントで対応
対応しきれない場合はオーラ防御で防ぎ
カウンターを仕掛けられるなら仕掛ける
どちらも難しい場合は華焔刀で可能な限り受け流し
最悪、左手を犠牲にする覚悟で

ま、右手が動きゃどうにかなるだろ

拘束術使用
鎖での攻撃と華焔刀での攻撃をタイミングを合わせ使用
こちらの攻撃は全て衝撃波と鎧無視攻撃を常時乗せてく
フェイントも使用して
攻撃タイミングを可能な限り読ませないよう行動

先制さえ凌げば、手はあるだろ

敵の攻撃には先制攻撃時と同じように対応しつつ
槍には拘束術の鎖を当てる事で対処する

夜彦が守って作ってくれた好機、無駄にはしねぇ
ぜってぇ、通す!



(信玄よりも背後霊っぽいナー……)

 炎の舞い踊る薙刀を手に。
 黒き鎧を纏う男の前に立った篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)の心に浮かぶのは、そんな他愛もない言葉。

 この前に立ちはだかる男こそ、オブリビオン・フォーミュラ――『織田信長』だと言うのに。

 思考と感情が、まだどこか戦う時のそれに切り替わっていないのは。信長の背後にちらちらと見える、円らな瞳のせいだろうか。
 それとも、隣に立つ月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の纏う空気に、普段とは少し違う『何か』を感じているからだろうか。

 普段と、一体何が違うのだと問われれば。上手く説明は出来ないが。

「……倫太郎殿、此処は私に」

 信長の影のごとく控えていた秀吉が、解けるように信長の鎧に融合していくのに、夜彦が進み出れば。
 やはり、と。

 夜彦がそう言いだすのではないかと。
 どこかでそう感じていた、自分に気付く。

 止めたいと思っている訳じゃない。
 ただ、その纏う空気は。背負っているのだろう『何か』は。
 重たくはないのかと。そう、思っただけだ。

 ただ守られるつもりはないと、薙刀を構え直せば、倫太郎の思考は一気に冴えて。
 戦うための、それへと切り替わる。

 だが、信長の放つ攻撃が、数え切れぬ程の黒槍であろうとも。
 ただの1本さえも、通すつもりはないと。

 全霊で、全身の集中を高めんとした夜彦の肩に。
 突き飛ばされるような、衝撃。

「なっ……」

 瞬きさえ許さぬ速さで、深々と突き刺さった黒槍が。
 ユーベルコードでは、信長の先手を抑える事は出来ないのだと告げていた。

 猟兵たちがどんなユーベルコードを使おうとも、先手を取ってくるという事は、こういう事か……と。
 だが、倫太郎に言った言葉を違えるつもりはない。

 ユーベルコードを使えずとも。
 この体、手にした刃がある限り。この身は、盾。

 人が心を込めて持ち続けてくれたから、この魂は此処にある。
 名も泣き忍が、命を賭して守ってくれたから、この体は此処にある。

 ならば、この力は。守りたい者の為に――。
 必ず守り通すのだと、魂が吼える。

 あるいは、本当に叫んでいたのかもしれない。

 肩を貫く槍を抜いて。眼前の槍を弾き、投げ捨てて。
 腰に帯びた刃が、鞘を走る。

 迫りくる黒槍の、全てを捌く必要はない。
 ただ、この体より後ろに槍を通さなければいいのだから。

 その目に、全神経を集中させて。槍の軌道を見極める。
 この身に、あるいは倫太郎に向かってくる槍だけを、正確に。
 夜禱を以って振り払うが、迫ってくる無数の槍に対して、夜彦が振るうのは1振りの刀。
 どうしても、応じきれぬ槍も出てくる。

 ならばそれには、この体そのものを盾にして。
 雨のように降る、槍の中を。夜彦は舞う。

 その動きに合わせて、尾を引く赤い血が、倫太郎の頬を濡らして。

 動くな。
 動いてはいけないと、倫太郎は己に言い聞かせていた。

 薙刀を握る手に、力が籠って。
 強く噛み締めていたらしい奥歯から、嫌な音がした。

 今、自分は。夜彦に守られているのだ。
 その自分が下手に動き回れば、足を引っ張る事になると分かっている。

 ましてや、夜彦を庇って飛び出すなど。
 間違えても、してはいけないのだと。

 だが。
 目の前で、夜彦の衣が、鮮やかな赤色に変わっていくのを。動かず見ていろというのは――。

 このほんの数秒の時間が、あまりにも長い。
 
 まだか。
 この黒い槍の雨は、まだ止まないのか。

 数時間にも思えた黒き雨の、切れ間に。
 鉄砲玉のごとく、倫太郎が飛び出した。

 踏みしめる床は、守りたいと願っている者の血で、赤く濡れている。
 それを強く蹴って、信長へと迫れば。
 その鎧から、再び槍の穂先が生え始めていて。

 倫太郎は見えぬ鎖を解き放つ。

「次なんて撃たせるかよ!」

 倫太郎の声が、随分と遠い。

(任せましたよ、倫太郎殿)

 自分はまだ、立っているのだろうか。
 刀を握れているのだろうか。

 手足の感覚も、周囲の音も、何もかもが遠くて。
 もう夜彦には分からない。

 ただ、暗くなっていく視界に。遠ざかる、見慣れた背中に。
 成すべきことは成したと知って。
 血にぬれた唇が、笑みを象る。

 あぁ。
 今、少しだけ。
 あの忍びが笑った意味が、分かった気がした――。

 倫太郎の振り下ろした薙刀が、大刀で振り払われる。
 返し、迫ってくる刃を、ステップを踏み残像を残し、かわして。

 ユーベルコードを使わずとも、これほどの強さかと。
 だが、退くつもりは無い。

 ここでまた信長から離れてしまえば、夜彦が守り作ってくれた好機を、ミスミス逃す事になる。

 この好機。絶対に、無駄にはしない。

 首目掛けて突き出された大刀に、倫太郎は左手を突き出して。
 鋭い刃は、容易く掌を貫通する。

 だが痛みなど、もはや感じていなかった。
 そのまま根元を握り込み、大刀を封じて。

 目を見開く信長に、右手1本で突き出した刃は。
 深々と、その肩を貫いていた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

秋穂・紗織
この戦も終局
最後に立ちはだかるのは第六天魔王『織田信長』
ですが、此処に繋がるまでの戦いや、今も戦っている人達がいる
その人達に報いる為
明日へと繋げていく為に

「その信念、その武勇、その覇気。全て、此処で断たせて頂きます」


黒粘液による摩擦の減少からの高速化
そして刃も滑り、受けるのも難しいのでしょうね

ならばと私が狙うのは後の先

ダッシュ+フェイントでの、緩急をつけた動きで私を狙い辛くして
見切りと第六感で扱う刀と信長の動きを捉えつつ
深手や急所へを出来るだけ逸らし、後方へと避け
相手が斬撃を放った直後に、早業とカウンターで素早く一閃を放ちましょう
私の刀の間合いの外でも、飛びゆく鎌鼬による斬風は届く、奇手となる



 猟兵たちの決死の攻撃に、既にいくつかの浅くない傷を受けているはずだが。
 胸を張り、大刀を構え直す『織田信長』の姿は、気迫は。いささかの衰えもなく。

 だが、信長の灼熱の色をした眼光を、茶色の瞳で包み込むように正面から受け止めて。
 白き刃を手に、秋穂・紗織(木花吐息・f18825)はゆっくりと進み出る。

「その信念、その武勇、その覇気。全て、此処で断たせて頂きます」
「ほう。この儂に、剣技で挑むと申すか」

 あの大刀の間合いを見誤れば、一刀の元に斬り捨てられてしまうかもしれない。
 だが、それでも。
 紗織は足を止めない。

 互いに、互いの間合いを探り合う。静かな戦い。

 ふと。
 見据えた信長の姿に、違和感を覚えて。目を眇めれば。

 それは、黒い粘液が信長を覆おうとしているのだと、気付いて。
 大きく踏み込み、天峰白雪の刃を振るう。

 しかし、やはり。
 粘液が、信長を覆う方が早い。

 切っ先は、信長の体に届く事はなく。
 滑る粘液に、軌道を逸らされて空を切る。

 裂帛の気合と共に、繰り出された信長の大刀に。
 体を引いて、白い刃で受けるけれど。本来響くはずの、高い金属音はなく。

 ずるり、と。

 ナメクジが這うのに似た、奇妙な手ごたえと共に、信長の大刀が紗織の首元を掠めた。

 黒い粘液は、信長の大刀までをも包み込んでいて。
 白い刃の表面さえも、つるりと滑り。
 およそまともな剣技とは思えぬ速さと動きで、紗織へと迫ってくる。

 だが、退くつもりはない。

 私と、そして天峰白雪の間合いを、信長に覚えてもらうために。
 今、退くわけには行かないのだ。

 滑る大刀に囚われぬように、紗織の足運びは流れる川のごとく。
 時に速く、時に遅く。気まぐれに向きを変えて。
 
 金属音の全く響かぬ、奇妙な剣戟が続くが。

(やはり、強いですね……)

 オブリビオン・フォーミュラにふさわしい信長の技量に。致命的な一撃を避けるのが、やっと。
 信長に一太刀も届かぬ一方で、紗織には細かな傷が徐々に増えていき。
 いよいよ捌きそびれた一刀が、紗織の体を斬り裂いた。

 血がしぶき、視界は揺れて。体が傾ぐ。

 けれど、これでいい。
 信長の刃が、この身を捕らえたという事は。

 私の速さを、間合いを。
 信長がしかと覚えてくれたという事。

 真っ当な剣技のみで勝てる等とは、初めから思っていない。
 だからずっと待っていたのだ――この時を。

 この男を倒す為に。
 猟兵たちだけでなく、この世界の沢山の人が戦ってきた。
 今、この瞬間も。

 彼らが戦い、傷付き。切り開いた赤き道を駆け抜けて、ここまで来た。

 ならば、私のこの『赤色』は。彼らの為の道となろう。
 戦いのない、明日へと繋がる道に。

 踏み出した足に力を込め、傾ぐ体を支えて。
 振り向きざまに、白き刃を振るう。

 信長の目には、苦し紛れに刀を振ったように映るだろう。
 そして、この間合いでは届かぬと、確信しているからこそ、避けない。

 だがこの一刀は、空を渡る御業なれば。
 一閃の輝きは、風となり。渦となる。

 間合いの外とは言え、この距離で。
 本来、複数に向けて放つそれを束ねれば、旋風は荒れ狂う暴風と化して。

 実体無き刃を前に、粘液は意味を成さずに。
 鎧諸共、信長の体を斬り砕くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

遠呂智・景明
あえて刀の銘を名乗らせて貰う
大蛇切景明だ、その首貰おうか

飛んでくる槍への対処だが受け手に回るのはしょうにあわん
攻め込みつつ迎撃するぞ

最初の数本は羽織で薙ぐ。突き破って来ようが多少減速してるのならば問題なく弾き飛ばせる。
次弾、懐刀で捌き切っ先をこちらから外す。
次、抜き放つは黒鉄。真正面から受止めることは不可能。回避にあわせてその持ち手部分を斬り捨てる。
その勢いのまま大蛇切、残りの槍も薙ぎ払う。
さあ、信長との距離はあと少し。
四本目の刃、精霊銃。黒鉄を一旦納め敵へと銃口を向け、そのままぶん投げる。
敵の虚をつければ上等。そのまま懐へ飛び込めば
この距離なら外さねぇ
風林火陰山雷 風の如く
死ね。


リティ・オールドヴァルト
みんなと協力
信長倒す

くろくてつよそうなまおうさんと…
おさるさん?
なのです?
首傾げ

ってたくさん黒い槍が降ってきたのですっ!!
意識集中し
聞き耳第六感用い見切り
あとは気合いでよけるのですっ
リリィっ、背中はまかせましたっ!
後ろはリリィにも頼り避ける
避けきれない分は咄嗟の一撃や盾受け、オーラ防御も展開

たえっ…ましたね…!
今度はぼくたちの番ですっ
勝機を見るやジャンプで素早く懐に入り込みフェイントからの串刺し
絶対あてるのですっ
当たればドラゴニック・エンド
まおうさん、かくご!

ぼくにはまおうとよばれたあなたのことはよくしらない
…でもぶかがそこまで力を尽くす人が
ただのまおうになるのは見たくないのです
もう還るのです



 猟兵たちの決死の攻撃は、信長の体に多くの傷を残して。
 纏う黒い鎧も、華美な装飾は剥げ、砕かれ。既に見る影もない。

 だが、猟兵たちへと伝わる闘気は、その眼光は。衰えを知らず。
 その手の大刀は、猟兵たちの方へ向いたまま。

 そして猟兵たちもまた、無傷の者はおらず。

 ――次が最後の攻防になる。

 誰もがそう、肌で感じていた。


「サルよ、儂の鎧に融合せよ」
「フェンフェン、フェン!」

 信長がそう発すれば、背後に控え得ていた黒い影――秀吉が、鎧の中に溶けるように消えていく。

(おさるさん? なのです……?)

 知っている『おさるさん』とは、何だか随分と違う気がして。リティ・オールドヴァルト(天上の蒼・f11245)は思わず首を傾げた。

 リティの知っているおさるさんと言えば、茶色く、もっとすらりとした手足で。鳴き声もこう……。

「って、たくさん黒い槍が降ってきたのですっ!!」

 思い浮かべている間に、気づけば無数の黒い槍が迫って来ていて。
 思わずびくりと毛を逆立てて、飛び退く。

「リリィっ、背中はまかせましたっ!」

 その手に備えた、小さな盾を構えて。頼もしい相棒に声を掛ければ。
 小さなドラゴンは一声鳴いて、リティの背後へと回る。

 ピンと立てた青い耳に、槍の風切り音を聞きながら。
 小さなケットシーとドラゴンは、ぴょんぴょんと跳ねるように、戦場を駆けまわる。

 鳴き声と共に、リリィに袖を引かれて。慌てて立ち止まれば、今まさに踏み出そうとしていた場所に落ちてくる、槍。
 串刺しにはならずに済んだが、その槍に逃げ道を塞がれて。

「リリィ、後ろにっ……!」

 咄嗟に、その手の盾を掲げた。

 いかにリティとリリィが小柄とは言え、片手で扱うサイズの盾では、とても全身を隠せない。
 それでも。さっきは、リリィがリティを守ってくれたのだから。
 だから、今度は自分が。

 足りない範囲を、オーラで補って。全身で小さな盾を支えて、耐える。
 背中にリリィの声援を受けながら、残る槍は、あと……少し。

 リティが耐え忍ぶ戦いをしている中、逆に前へと進む者がいた。

 この身は刀。
 大蛇さえ斬り捨てて見せる刃ならば、敵に斬りこむ時こそ、力を発揮できるというもの。
 『攻撃は最大の防御』という言葉もある。

 ゆえに、刀のヤドリガミ――遠呂智・景明(いつか明けの景色を望むために・f00220)は、前へと進む。

 振るった真白き羽織は、槍の穂先にズタズタにされるも。
 景明が体を回転させて羽織を降り抜けば、槍の軌道は僅かに逸れて。体すれすれに通り過ぎていく。

 動きを止めずに、大きく踏み出して。懐より取り出すのは、小刀。
 槍を相手に心許ない刀身だが、向かい来る切っ先を見切って。
 2本も逸らせれば、上々か。

 痺れを覚える手に。懐刀は、3本目の槍で吹き飛ばされて。
 次いで抜き放つのは、黒鉄の刃。

 先の小刀よりも、しっかりとした刀身とは言え……いや、むしろ長い刀身だからこそ、正面で受ければ折れるのは必至。

 かわす足さばきに合わせて。
 黒き槍を横合いから斬り捨てるけれど、これほどの数。

 捌ききれぬ槍が、景明の体に傷を残していく。

 だが、致命的な一撃さえ避けられれば、それでいい。
 信長までの距離はあと少し。

 景明の接近に、信長が大刀を構える。
 その信長へ向けるのは、4本目の刃――精霊銃。

 弾丸が放たれるかと身構える信長に、しかし景明は、精霊銃そのものを、投げた。
 虚を突く事が出来ればと。
 しかし、弾丸よりも遥かに遅い精霊銃は、容易く振り払われて。

「たわけが。そのまま撃った方が、まだ牽制になったであろう」

 信長が踏み込み、返す大刀が、景明へと振り下ろされる。

(駄目だ。退くな……!)

 肩口から食い込んでくる刃に、体は咄嗟に後ろに跳ぼうとするけれど。
 氷が走るような、冷たさと痛みに耐えて。踏みとどまる。

 離れる訳には行かない。
 この一振を食らわせてやる為に、ここまで駆けた。

 この体を斬り捨てんと、信長の方が踏み込んで来るのなら。
 距離が、縮まるのなら。それで。

 信長の大刀が赤い尾を引いて。
 景明の衣が、赤く染まっていく。

 一泊遅れてやってきた、灼熱に炙られるがごとき、痛みに堪えて。
 最後に手にする刃は、景明自身。

 この距離。この間合いならば。外す事はない。

「死ね」

 刀身そのものが風と化したように。
 振り抜いた動作さえ、見えぬ程の、一瞬。

 完全にその鎧を砕いて。
 信長の体から、血が噴き出した。

 だが、止めには……わずかに、浅いか。
 先に信長より与えられた傷が、技の威力を僅かに殺してしまった。

 あと少しだと言うのに、景明の体は傾いでいく。
 この距離ではもう、刃が届かな――。

「今度はぼくたちの番ですっ」

 その視界に飛び込んで来たのは、小さなケットシー。

 纏う白い装束も、青い毛並みも。今は、所々赤く染まりながらも。
 その跳躍は、力強く。槍へと姿を変えた相棒を、高く掲げて。

「まおうさん、かくご!」

 この、黒い鎧の人の為に。
 オブリビオンも、人も。沢山の部下が、戦っていたのだ。
 それは、とてもすごい事。

 それなのに、この人は『まおう』と呼ばれているのだと、聞いた。
 この世界を壊してしまうのだと。

 もしも、大切な人が。
 例えば、リティにとっての、にいさまが。
 悪い事をしていたら? まおうに、なってしまったら……。

 きっと、悲しい気持ちになるから。
 沢山の人が悲しむ光景は、見たくないから。

「もう還るのです」

 突き出した槍は、信長の体をしかと捉えて。
 響き渡るドラゴンの咆哮が、猟兵たちの勝利を告げた――。


「これが、うぬら猟兵の力……か」

 既に手足は砕けて。
 大の字に床に倒れた信長から、戦意は消えていた。 

 まだ呼吸しているのが、不思議な状態。
 灼熱の色をした目から、徐々に光が消えていく。

「褒美だ。この首、もっていくがいい」

 それでも、血に染まった口元をにやりと上げて見せた姿は。
 魔王と呼ばれるに、相応しい顔だった。

 傷を圧し、自身を携え、景明が名乗る。

「あえて刀の銘を名乗らせて貰う」

 これより魔王の首を断つ、その刀の銘は――大蛇切景明。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月25日


挿絵イラスト