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エンパイアウォー㊳~野望の残火・魔空安土城血戦

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #オブリビオン・フォーミュラ #織田信長 #魔軍転生

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 難攻不落を誇った魔空安土城は地に落ちた。
 その天守より、オブリビオンフォーミュラたる第六天魔王『織田信長』は、眼下で繰り広げられる信長軍本隊と幕府軍の戦いを見下ろしている。

「遂に来たか、猟兵達よ。エンパイアを滅ぼし、渡来人共の「グリードオーシャン」をも侵略する道筋は、これでほぼ絶たれたか。血塗られし彼奴らの神が如何程の物か、確かめてみたかったがな」

 フ、と信長は嗤った。
 自嘲するような、しかし楽し気にも見える笑みが口の端に浮かぶ。
 階下からは何者かが天守へと駆け上ってくる音。
 猟兵達が、来る。
 信長の仕掛けた企みを、無敵の配下達をことごとく退け、幕府軍をほぼ無傷の状態で島原へと導いた驚くべき異能者達。

「さて、もはや儂に万にひとつの勝ち目も無かろうが……。億にひとつでもあるのならば、賭けてみるのも一興よ。秘術「魔軍転生」。サルよ、弥助よ、儂に憑装せよ……!」

 最後に残った自らの矜持と配下の力を武器に、信長は一人の武人として猟兵達を迎え撃つ。

 ――サムライエンパイアの未来をかけた戦いも、ついに最終局面を迎えていた。


「みなさん、ついに織田信長を追い詰めました!」

 グリモア猟兵ティアラ・パリュール(黄金と蒼の宝冠・f00015)は、いつものように片手にフクロウ型ガジェットのフクちゃんを乗せ、笑顔で猟兵達を出迎えた。

「ここまでの戦いは、わたしたちの完勝といって良いと思います。幕府軍のみなさんが、今も信長軍本隊と戦ってくれていますけど、その間にわたし達がすることはもちろん、信長を倒すことですね」

 机の上に開いた図面の一点、天守を小さな指先が指し示す。

「ここです。ここに、信長が居ます。もはや大勢は決しました。私たちの、勝ちです。でも、オブリビオンフォーミュラ・第六天魔王『織田信長』が残っている以上、安心はできません。だから、最後まで気を抜いちゃダメですよ?」

 織田信長は、秘術「魔軍転生」によって、配下の魔軍将を背後霊のように「憑装」させて戦うという。
 ティアラの予知によれば、今突入した場合に信長に憑依しているのは大帝剣『弥助アレキサンダー』。従って、弥助アレキサンダーと同じように、信長も必ず先制攻撃を行ってくるらしい。

「ですから、必ず先制攻撃に対する心構えをしておいてください。十分な対抗策がなければ、猟兵といえど簡単にやられちゃいますから。……でも、皆さんなら、きっとだいじょうぶですよね?」

 説明を終えるとティアラは帽子を脱いで頭を下げ、一同を笑顔で送り出す。

「それじゃ皆さん、今回もお願いします! わたしはいつも通り、ここで皆さんの勝利を信じて待っていますから。いってらっしゃい!」


第六封筒
=============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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●特殊ルール
====================
 第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
====================

 こんにちは。あるいは、はじめまして。第六封筒と申します。
 ついにエンパイアウォーも大詰め。
 今回は上記説明にもあるように、オブリビオンフォーミュラ・第六天魔王『織田信長』との決戦シナリオです。
 しっかりと特殊ルールを把握の上、先制攻撃への対策と、有効打を与える手段を、しっかりとプレイングへ記載して頂ければと思います。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしています!
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第1章 ボス戦 『第六天魔王『織田信長』弥助装』

POW   :    闘神の独鈷杵による決闘状態
【炎の闘気】が命中した対象を爆破し、更に互いを【炎の鎖】で繋ぐ。
SPD   :    逆賊の十字架による肉体変異
自身の身体部位ひとつを【おぞましく肥大化した不気味な鳥】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    大帝の剣の粉砕によるメガリス破壊効果
自身の装備武器を無数の【大帝の剣型】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:UMEn人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シホ・イオア
グリードオーシャンのことは聞いておきたいなぁ。
代わりに見てきてあげるよ。

その憑依の力……、弥助ちゃんたちとは絆があったんだよね。
信頼か忠義か、支えあう絆を平和のために使ってほしかったよ。

指定型の範囲攻撃か
霞による残像で的を絞らせないようにして
オーラ防御と見切りと空中戦を駆使して回避&防御
高速詠唱で愛の炎を呼び出すのが間に合えば
炎による結界を周囲に作る

攻撃の際は
戦うだけが全てじゃない、手を取り合う未来が欲しかったという
願いと祈りを込めつつ
属性攻撃で破魔を付与し全力魔法に誘導弾に精神攻撃
使える武器はすべて使って全力攻撃!

連携アドリブ歓迎



 信長は、天主の最上階、金碧障壁画に彩られ、美術品で絢爛に飾られた座敷で猟兵達を待ち受けていた。
「信長様、そろそろ奴らが来ますぜ!」
 信長に憑依した弥助が背後に付き従い、声を上げる。
「で、あるか」
 無論、それは信長にもわかっている事。
 おもむろに立ち上がり片手に太刀、片手に大帝の剣、禍々しい鎧の出で立ちで、堂々と猟兵を待ち受ける。
「……だが、まずはそちらからやってきた、無作法な客の相手をせねばならぬようだな」
「むぅ!?」
 開け放たれた廻縁へ出る戸口から、飛び込んできた一つの影……いや、光。
 シホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)。
 小さな身体の妖精は単身、空中から直接信長の元へやってきたのだ。
 ともあれば見逃してしまいそうな矮躯ではあるが、その身体も、背を覆う半透明な羽根も、身に着けた装備品すらキラキラと輝きを放ち、その存在を主張している。
「よくぞここまでやって来た、猟兵よ」
 低く朗々とした、しかし静かな一言。だが、ただそれだけで、シホは気圧されるような威圧感を感じてもいた。
「あなたが、信長さんだね」
 幼気な顔を緊張で固く強張らせ、シホは問う。
「左様。儂が織田信長である! 名を聞こう。儂の最初の獲物となる者の名を」
 名乗りを上げた信長は、さして興味もなさそうにシホに問う。
「……シホ。シホ・イオア。……その憑依の力、弥助ちゃんたちとは絆があったんだよね」
 言葉を紡ぐ間に、徐々にシホも緊張が解れてくる。信長はそれを静かに聞いていた。
「信頼か忠義か、支えあう絆を平和のために使ってほしかったよ」
「言いたい事はそれだけか。儂は儂の大望を為さんがため、ここにいる。弥助も、他の者達も、その儂に付いて来たのだ」
 信長の気配が膨れ上がる。気圧されるような威圧感は、物理的な程の圧力に、殺気へと姿を変え、シホは思わず空中でよろめいた。
「平和? 欲しければこの第六天魔王を打倒して、見事勝ち取ってみせい!」
 振り上げた大帝の剣が刃先から解けていく。細かく砕けた刃は、それぞれが小さな大帝の剣の形の鋭利な花びらへと変じ、シホを取り囲み、殺到する。
 無論、シホも黙ってやられることはない。携えた剣を抜き放ち、正面からやってきた刃を弾き返す。
 解放された宝石剣エリクシアが、危険を告げるかの如く一際強く輝いた。エリクシアの鞘たるロイヤルミストガードからは、所有者を守るべく濃い霞が噴き出して、室内は一瞬にして幻想的な雰囲気に包まれてゆく。
 それだけでは無い。空中を飛び回り、刃の軌道を見切りつつ回避していくシホの身体から放たれる光が、霧で乱反射し信長の目に無数の残像を残すのだ。
 だが、それでも、全ての攻撃を防ぎきる事はまでは出来なかった。
 弥助を憑依させた信長の認識力は、異常と言ってよいほどに研ぎ澄まされている。
 それだけの撹乱を受けていてなお、幾つかの刃がシホの身体に傷を刻んでいく。
「あうっ!」
 身体が小さいだけに、わずかな傷でもダメージは軽くはない。しかし身体が小さいだけに、この室内で、無数の刃からの致命傷を避けられたとも言えるだろう。
 刃の吹雪が過ぎ去っても、シホの姿は空中に留まり強い輝きを放ち続けている。
「戦うだけが、全てじゃない……叶うなら、手を取り合う未来が欲しかったな」
「この第六天魔王を前に、よくぞほざいたわ! そのようなもの、儂は望まぬ!」
 シホの呟きを、笑うでもなく信長は受け止め、確固たる意志でそれを拒絶した。
 諦めてはいない。戦局をひっくり返そうという気概はある。
 だが第六天魔王として、猟兵によって倒されることで今回の全ての幕引きとする覚悟も持ち合わせているのだ。
 シホはそれを身をもって感じ取り、全力を持って返事とする。いつのまにか、エリクシアの周囲に輝石が結晶していた。
『輝石解放、ルビー!』
 空中を漂う輝石が紅い輝きを纏い、炎へと変じていく。
『愛の炎よ、優雅に舞い踊れ!』
 炎は瞬く間に数を増し、勢いを増して。
 ユーベルコード【ハート・ロンド】。
 全ての愛を注ぎこまれ増幅された無数の炎が、一斉に信長へと殺到し。
 ――そして、消えた。
 同時に、シホの姿もすでにその場には見えなくなっている。
 全ての力を出し切った以上、長居は無用と素早く外へと飛び出したのだ。
「信長様! 大丈夫ですかい?」
 慌てたように、弥助が言う。無論、この程度で信長が倒れるなどとは、毛頭思っていないのだが。
「なに、ほんのかすり傷よ。だが、見事な手腕。恐るべし、猟兵。恐るべし、シホ・イオア」
 その言葉通り、炎はジリジリと信長の衣装を焦がしてはいるが、負傷自体はシホの受けた傷とさほど変わらない程度。
 それでも、たった一人。たった一人の猟兵を、弥助の力を憑装していてさえ圧倒する事が叶わないとは。
「カッカッカ! のう、弥助。これは、想像以上に楽しめそうであるな」
 階下から届く他の猟兵達の足音を聞きながら、信長は一層獰猛な笑みを浮かべるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

逢坂・理彦
WIZ
遂に信長公とご対面、だね。
うん、さすがの迫力だ。
俺はサムライエンパイアの人達を守りたいから…だから貴方の野望の為にこの世界を犠牲にするわけにはいかないんだ…終わらせてもらうよ。

先制攻撃についてはグリモア猟兵さんから話は聞いてるけどさて上手くいくか。
花弁の攻撃か…【戦闘知識】で敵UCの発動をタイミングに合わせてUC【狐火・椿】を発動。
狐火の炎で花弁を焼き払う。

花弁の攻撃を回避出来たら墨染桜で【早業・なぎ払い】で斬り込み。【だまし討ち】や【武器落とし】を狙いながら攻撃。
【聞き耳・第六感】で敵攻撃を【見切り】から【カウンター】

アドリブ連携歓迎。


オーガスト・メルト
デイズ、ナイツ、これが最終決戦だ。
『うきゅー!』『うにゃー!』
ああ、この戦争に決着をつけようか。

【POW】連携・アドリブ歓迎
デイズは饅頭形態のまま肩に乗せ、ナイツはバイク形態にして【騎乗】した状態で会敵する。
敵の先制攻撃は鋼糸に【オーラ防御】を重ねて【武器受け】する。
近くに鋼糸で絡め取れるものがあれば盾として使う。
爆炎の余波は【火炎耐性】で耐える。
炎の鎖で繋がれても鋼糸を切断すればこちらの動きは阻害されない。

後は敵の攻撃は【見切り】、【残像】で回避する。
バイクの【ダッシュ】によるすれ違いざまに小太刀【焔迅刀】による【二回攻撃】を使って攻撃。
隙ができたらUC【赤光一閃】を叩きこむ。



 ほどなく、次なる猟兵が階段を上がってやってきた。
 そのままゆったりと歩を進め、部屋の中程まで進み出る。
 逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)はぐるりと室内を見回し、最後に正面の人物に目を留めた。
 名を聞くまでもない。背後に弥助を従えた偉丈夫。その威圧感、迫力は織田信長以外ではありえなかった。
「おやぁ? ひょっとして、俺が一番乗りかな」
 友人と遊びにでも来たかのような、軽い口調。愛用の薙刀を無造作に持った立ち姿。
 だが、飄々とした態度とは裏腹に、どこにも隙は見当たらない。
「否。一人目はなかなかに儂を楽しませてくれたぞ」
「何?」
 信長の応えを聞き理彦は、再び先ほどよりも注意深く、しかし素早く周囲を確認する。
 傷つき倒れている者は、居ない。
「案ずるな。かの者は儂に一撃を加えた後、驚くべき手際で姿を消していきおったわ。貴様も、楽しませてくれるのであろうな? 猟兵」
 理彦はふうっと安堵の息をつく。それならば、後顧の憂いなく存分に力を振るえるというものだ。
「ああ、勿論そのつもりだよ。お気に召して頂けるかは、わからないけどね」
 ひゅんと音を立てて、薙刀を一回転。穂先は信長へと真っ直ぐに向けられて、ぴたりと静止した。
「……信長公。俺はこの世界の人たちを守りたいから……貴方の野望の為に、この世界を犠牲にするわけにはいかないんだ」
 表情は変わらない。だがその目付きだけは、理彦の集中を反映して軽く細められ、一際鋭いものに変貌していた。
「だから……終わりにさせてもらうよ」
 それを見てとり、信長も構える。
「その心意気やよし。だがこの第六天魔王を、そう易々と討ち取れるとは思うでないぞ!」
 片手に太刀、片手には大帝の剣。信長の右手の太刀が振り上げられ、一瞬理彦の視線から大帝の剣が外れた。
 刹那。
 大帝の剣が砕け散る。大小様々、無数の破片がことごとく小さな大帝の剣型の花びらへと変じ、理彦の視界を埋め尽くした。
「さあ、どうでる猟兵。先の小妖精は、この攻撃を見事、凌いで見せたぞ!」
 その言葉が出るが早いか、渦を巻いた花弁が理彦の周囲を覆っていく。
(これは、まずい、か……)
 弥助アレキサンダーを憑依させた信長の異能については、説明を受けていた。
 だから敵の攻撃の出がかりに自らのユーベルコードを被せ、相殺する事を考えていたのだが、信長の攻撃は想像を超えて苛烈で、また疾風のごとき速さだ。
 ただ間に合わせることは出来る。が、十分に集中して威力を高めなくては、この攻撃を無効化することは出来ないだろう。
 逃げ場もまた、無い。
 無傷で乗り切ることは出来そうもなかった。ならばと理彦は覚悟を決め、薙刀を握る手に力を込める。
『ぽとり、ぽとりと椿の様に』
 そうして理彦は拙速をもってユーベルコード【狐火・椿(キツネビ・ツバキ)】を発動させた。
 天井付近に幾つもの椿の花のごとく丸い炎が生まれ、細かな花弁を巻き込んで床へと落ちて行った。
 それと同時に理彦の薙刀・墨染桜が、燃え尽きなかった中でも特に大きな花びらを、刃だけではなく柄さえも使い一振りごとに幾つも粉砕する。
 だが、それも全ての攻撃を捌く事は不可能。でも、それで良いのだ。
 理彦はユーベルコードと墨染桜で生じた、花弁と花弁の隙間に身体を滑りこませることで、回避不可能だったはずの大帝の剣によるダメージを最小限に抑えたのである。
「やるな。猟兵。だが、これはどうする!」
 ほっとする暇もあればこそ。
 裂帛の気合いを込めて、信長の手にする太刀が理彦に迫る。
 ギリギリの所で花吹雪を捌いた後だ、態勢を整えるだけの余裕は無い。
 ――やられる。
 理彦はそれでもただでやられるわけにはいかないと、防御を捨て、相打ち覚悟でカウンターを狙い弓を引き絞るように状態を反らして……。
 その時だった。
「……やらせるか!」
 理彦の背後から声が響き、信長の太刀が虚空を切る。
 否、そこに存在した何かに受け止められ、弾かれたのだ。
「ぬうう、新手か!」
 口惜し気に吐き捨てる信長の視線の先、新たな猟兵が立っている。
「アンタが織田信長だな。……デイズ。ナイツ。これが最終決戦だ」
『うきゅー!』
『うにゃー!』
 オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)の言葉に、左肩に乗るデイズと、跨るバイクに変形したナイツが鬨の声を上げた。
「ああ、この戦争に決着をつけよう。行くぞ、信長!」
 オーガストが構えた手には手甲が嵌められており、そこから伸びるのは鋼糸である。
 無論、ただのワイヤーであれば信長の太刀を受け止める事は不可能。オーガストは鋼糸にオーラを纏わせた上、伸ばし続けて一箇所に圧力をかけないようにすることで、太刀の威力を分散して攻撃を弾いたのだ。
「無粋であるぞ! 興が削がれこと甚だしいわ。……疾く、死ね!」
 再び、信長は太刀を振るう。先程と同じ攻撃であれば、オーガストは再び鋼糸で防ぐことも出来たが、同じでは無かった。
 太刀を振るうと同時。憑依する弥助の手には闘神の独鈷杵があり、そこから放たれた闘気が炎となって、オーガストに迫る。
 先ほどと同じように、まずは鋼糸で太刀を受けるが、太刀を受けたところに炎の闘気が集中し、爆発を起こす。
 多少の距離が空いているのをものともせず、強い爆風が生じて熱がオーガストの身体を炙った。
 鋼糸を捉えた炎は鎖状に収束し絡みついて、ぐいと信長が鎖を引けば、オーガストを爆風の中へと引き寄せる。
 だが、これは当初から考えていた通り。想定内なのだ。
 オーガストは跨る竜核二輪乗騎ナイツを横に向け、身体を一杯に倒して引き寄せられるのに抗いつつ、腰の小太刀に手を回す。
 炎に耐えつつも小太刀を引き抜き、一息に、切った。
 切ったのは信長ではない。炎の鎖でも無かった。では、何を切ったのか。
 ――鋼糸だ。炎の鎖が繋がったのは、オーガスト自身ではない。鋼糸だった。
 それならば、鋼糸を切ればこちらの動きは阻害されない、というのがオーガストの策。
 そして今回オーガストの本命の武器は、この小太刀、焔迅刀なのだ。
「信長様! 手応えが……!」
「わかっておるわ!」
 鋼糸を切ると共に、床を蹴って身体の傾斜を反対側……信長の方へと変え、一気にナイツを加速。
 大きく傾斜したまま横向きに急加速したナイツは、弧を描くような軌道でオーガストを信長へと肉薄させる!
『我が抜刀に……斬れぬものなし』
 オーガストのユーベルコード、赤光一閃(ヒートクリムゾン)。
 繰り出された焔迅刀による超高速・大威力の一撃は、すれ違いざまに大きく信長の左肩を斬り裂く。
「ぐおおっ!」
 ナイツを巧みに操り、いまだ残る爆圧の後の白煙すら利用して、オーガストは再び弧を描いて信長に迫った。
 だが。
「この第六天魔王を――舐めるな、こわっぱ!」
 ギリ、ギリと。
 首筋を狙った刃は、加速していたナイツの質量ごと、信長の太刀により受け止められていた。
 信長の恐るべき膂力。
 噛み合った刃の一点に全ての力が集中し一瞬は拮抗したが、直後、勢いを殺されたナイツはガシャリと転倒。オーガストはその場に投げ出され、床へと強く叩きつけられてしまう。
「その首、もらったぞ!」
 今度は逆に、無防備になったオーガストの首へと、太刀が振り下ろされて。
 ざくり。
「……ぐ、ふっ!」
 太刀は、今度こそ空を切っていた。脇腹を突き刺され、信長はたまらず膝を付く。
「……猟兵め、やりおるわ!」
 喉にこみ上げる血塊を飲み下し、信長が吼える。
 静かに機を見ていた理彦による、ここぞとばかりに繰り出された渾身の一撃は、人であれば間違いなく致命傷。
 それでも、再び立ち上がった信長にはまだ余力があるように見えた。
「立てるかい?」
 理彦は油断無く墨染桜を構え信長を牽制しつつ、床に叩きつけられ転倒したままのオーガストに声をかける。
「……なんとか、な。でも、アンタは?」
 オーガストは起き上るが、ダメージは決して小さいものではない。
 一方の理彦も、先ほどの大帝剣によるダメージと、今の渾身の一撃に体力を奪われており、万全には程遠い状態になっている。ともすれば、オーガストよりも蓄積したダメージは大きいかもしれない。
「……潮時だね」
「ああ」
 理彦の言葉に、オーガストは臍を噛む。
 結果だけを見れば、勝負を急ぐべきでは無かったのかもしれない。それでも、チャンスだったのは間違いない事であり、理彦にもその気持ちは痛いほどよく理解できるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

才堂・紅葉
「割に合わないわね。他に任せるべきだったかしら」
圧倒的な覇気を前に、軽く息を吐いてマインドセット。
「ま、挑む以外にないわね」

先制攻撃は【紋章版】で斜めに受け止め、【オーラ防御、野生の勘、ジャンプ】で衝撃を逃して軽減を図る。
以後は【自動小銃】で射撃を挑み、【炎の鎖】による近接戦を【戦闘知識】で誘う。
近接に持ち込まれた瞬間、狙い澄ました毒霧の【目つぶし】。
更に【早着替え】で真の姿の【封印を解き】、【グラップル、属性攻撃】での白兵戦を挑む。
正直、時間をかければ反動で死ぬ。
隙があれば、相手が鎖を引く拍子に合わせ、重力を帯びた手刀で鎖を【部位破壊】。
僅かでも信長公の姿勢を崩し、【気合】の一撃で挑みたい。



「あれが第六天魔王、織田信長……他に任せるべきだったかしら」
 二人の猟兵と入れ替わるように座敷へと立ち入った才堂・紅葉(お嬢・f08859)は、怒気を放つ信長を目の当たりにし、思わず一歩後ずさった。
 ――信長の装束はちりちりと煙を上げている。大きく切り裂かれた肩口は傷口から位置がずれ、少々腕の角度が変わってしまっており、脇腹に穿たれた、深い傷跡の奥からはじくじくと体液が滲む。
 それでも、弥助を背にした信長は圧倒的な闘気を放っていた。むしろ、怒りにより威圧感が増している程だ。
「……ま、挑む以外にないわね」
 紅葉は息を吐き、意識をプロとしてのそれに切り替える。これまでに培った経験は、紅葉の身体を本能的な恐怖より解放した。
 そう、相手がなんだろうと、いつも通り。私は私の仕事をこなすだけ。紅葉は一歩を踏み出した。
「女! 五体満足で帰れると思うな!」
 同時に信長も動く。巨体に似合わぬ素早さで、その怪我を物ともせず、あっというまに距離が詰まる。
「……っ、速い!」
 紅葉が右手で太刀を構える信長の右側へと回り込むように駆ければ、信長は振り上げていた太刀を中段に下げ、突きを繰り出す。
 ゴウッと空気を裂いて、いやブチ破って。太刀が紅葉に迫った。
 しかし紅葉は慌てない。抱えていた鉄板を下から斜めに太刀にぶつけるようにして、思い切り突き上げる。
 その鉄板は、ただの鉄の塊では無い。極薄の特殊鋼、紋章板を108枚重ね、それ自体が術式を為したもの。一抱えほどのサイズしかないにも関わらず非常に重いそれは、その重さ以上に、硬いのだ。
 太刀の軌道がズレ、紅葉の頭の上を通過した。
 直後、太刀の後を追って来た炎の闘気が紋章版の表面で炸裂するが、紋章板を斜めにしていた事が功を奏した。衝撃が上滑りしてその大半が逸れ、天井に穴が空く。
 それでいてなお、強い衝撃が紅葉の身体を叩き、身体を骨まで軋ませる。
 熱は身に着けていたミリタリージャケットを焦がした。
 炎の闘気が紋章板の表面で鎖の形を成し、絡みつくに至って、紅葉は紋章板をあっさりと地面へと落とす。
 代わってその手に握られたのは、対UDC用の自動小銃。
「信長と言えば、火縄銃も有名だけど……」
 腰だめに構え、セーフティを解除する。
「現代の銃の性能、想像がつくかしら」
 ガガガァン!
 三発の弾丸が立て続けに発射される。
 信長は床を蹴り、大きく距離を開けてそれを避けた。
「ぬうっ!」
 ガガガァン!
 位置を修正し、再び射撃を行う。
 キキンッ、二発の弾丸を信長は太刀で弾き落とすが、残り一発が信長の身体を穿つ。
「ぐうっ、なんたる威力! それ以上に、なんたる連射速度であるか! だが」
 ガガガァン!
 次の弾丸が発射されると同時、信長は大きく跳躍する。身体の上下が入れ替わる。
「それでは、この儂は倒せぬぞ!」
 ガガガァン!
 銃口を上に向け続けざまに射撃。
 信長は今度は天井を蹴り、紅葉の左へと位置を変える。
『コード:ハイペリア承認。出力限定解除ランク100』
 一瞬動きを止めた紅葉を見、勝機とばかりに信長が深く踏み込み、水平斬りを放つ。紅葉は銃身を縦にしてそれを受けた。
「ええ、わかっているわ。でも……あなたの間合いを崩すのには、役に立ったでしょ?」
 その手に、その背に。紋章が浮かんでいた。
 ユーベルコード【ハイペリアの姫(プリンセス・オブ・ハイペリア)】により、自身を強化して、至近距離からの白兵戦を挑む。
 それが紅葉の勝機。
 長くは保てないその力を確実に叩き込むため、封印を解除しつつも信長を自身の間合いに引き込む。自動小銃はその為のギミックに過ぎなかった。
「覚悟!」
 裂帛の気合いを込めた手刀が、ぞぶり、と信長の身体へと沈み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘
はじめましてだ魔王よ!
妾は邪神、御形・菘! 世界の頂点に立つ者として、ひとつ手合わせ願おう!

闘気は視認できるのかのう?
不可視でも、熱で来る方向は感知できるであろう
上半身を守るように、迫ってくる側へと、防御のために邪神オーラを纏った尻尾を出し、素早く盾としよう
覚悟を決めて痛みを我慢、爆発のダメージはすべて尻尾で受け止めきる!

はーっはっはっは! お主ほどの実力者とチェーンデスマッチでバトれるとは、感謝しかない最高に素晴らしいシチュエーションよ!
尻尾のダメージで移動が困難でも関係無いしな
さあ魔王よ、妾の左腕にボコられ平伏すがよい!
刀や鎧など気にならん、ガードをブチ抜き全力で攻撃を叩き込んでくれよう!



「少々、血を流しすぎた、か……まあ、良いわ。おかげで、頭も冷えた。さあ、来い猟兵共。この身体が動く限り、儂は諦めぬ」
 全身に、幾つも深い傷が刻まれていた。肩で荒く息をつきつつ、それでも信長はなお戦意を新たにする。
「はじめましてだ魔王よ! 世界の頂点に立つ者として、ひとつ手合わせ願おう!」
 そこへまた一人、信長を骸の海へと帰さんと、猟兵が現れる。
 下半身が蛇体となっているキマイラ、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は真っ向、信長へと立ち向かう。
「世界の頂点に立つとは、な。ずいぶん大きく出たものだな。猟兵」
「……猟兵? 他の者と同じと思ってもらっては困るな。妾は邪神、御形・菘! 魔王と邪神、どちらが上か試してみようではないか!」
「カッカッカ! 面白い女であるな。ならば、存分に試すが良い、菘。その思い上がり、第六天魔王が叩き潰してくれようぞ!」
 ぴたりと信長の息が整う。常人であればそれだけで心臓が止まりかねない、威圧を込めた鋭い眼光が、菘を貫いた。
 しかし菘はひるまない。殺気を込めた視線で信長を睨み返し、蛇体をくねらせ滑るような動きで信長へと真っ直ぐ突き進んだ。
 信長が太刀を手に迎え撃てば、背後では弥助が闘神の独鈷杵を振り上げた。
 そして、両者はぶつかった。信長の太刀が袈裟懸けに切り下ろされる。
 ザクリと刃は菘が差し出した尾へと食い込み、さらに収束した炎の闘気が爆発を起こして、血と肉を撒き散らした。激しい痛みが菘を苛む。
 だが、痛みは我慢し、爆発のダメージは全て尻尾で受け止める!
 それが、菘の覚悟だ。例え尻尾がちぎれようとも、意志を曲げる気はなかった。
 もし信長が万全のままであれば、実際に尻尾はちぎれていたかもしれない。それどころか、最初の一太刀で断ち切られ、身体と泣き別れていた可能性すらある。
 しかし先に信長と相対した猟兵達の残した思いが、刻んだ傷が、それを許さなかった。
 例え信長本人が意識して居ない程度にしか動きが鈍っておらずとも、確実にダメージは積み重なっているのだ。
 爆発が収まり、炎の鎖が形を成して尻尾と信長の間に鎖が繋がれると、菘は笑う。
「はーっはっはっは! お主ほどの実力者とチェーンデスマッチでバトれるとは、感謝しかないぞ! 最高に素晴らしいシチュエーションよ!」
 いかにダメージ軽減しているとは言えども、苦痛に耐性があろうとも、これは菘の痩せ我慢に過ぎない。
 それでも、菘がこの形に拘ったのはなぜか。それは。
 ユーベルコード【逆境アサルト】が発動され、菘の身体能力は極限まで強化された。
 逆境アサルトは、キマイラフューチャーに生まれた菘の映像制作最優先思考が、異能にまで昇華されたもの。
 わざわざ敵の土俵の上に乗った。不利は常套、承知の上。
 けれどもそう、カメラの前でならば、よりよい映像の為ならば……菘は邪神を名乗る者の矜持で、限界を超えた力を出すことが出来る。
 きゅっと尻尾の筋肉が収縮し、流れる血が止まる。痛みもほとんど感じなくなっていた。
「さあ魔王よ、妾の黄金の左腕にボコられ平伏すがよい!」
 バシィ!!
 菘の右のパンチが、信長の顔を打つ。つっと血が頬を伝い、こめかみがピクピクと動く。
「……よかろう。乗ってやろうではないか。この儂に喧嘩を売った事、後悔するでないぞ!」
 こうしてノリノリになった菘と、怒った信長の壮絶な打撃戦が始まる。

 ――しばし続いたその喧嘩に、勝者はいなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

尾崎・ナオ
SPD攻撃したいから、SPD「噛みつき」を回避!

●防御
敵攻撃は先制攻撃してくるけど『どうやって防いで、反撃に繋げるか』がキーなら、防御や回避は可能と見た!
「うわ、きっもちわる。ただのバケモンじゃん」
「駄目だよぉ? ナオちゃんみたいな優美さを忘れちゃあ☆」
挑発41で相手を馬鹿にし、自身を褒める事で指定UCを発動。
爆発的にスピードと反応速度を増大させ、回避する事に専念する。
持ち前の視力10で変化部の動きを確認し、人体の動きから次の行動を第六感41で予測。

●反撃
「お前にコレが見えるかにゃ~?」
ナオちゃんの代名詞。二丁拳銃の超高速早打ち!
クイックドロウ157、援護射撃41、早業40、零距離射撃36



「……なんたる無法。なんたる、でたらめ」
 オブリビオンフォーミュラたる第六天魔王、織田信長は顔を腫らし次なる猟兵を待っている。
「儂ともあろう者が、ついつい乗せられてしまったわ」
 しかし、その表情は不思議と晴れやかだった。
 猟兵の戦力は、全体としては強大で脅威という他ない。
 しかし単純な力、強さであれば、個々の猟兵は信長には取るに足らない矮小な存在の筈だった。
 だがどうだろう。実際に戦ってみれば、どれもこれも一筋縄ではいかないものばかりではないか。
「フ……これが猟兵の強さ、ということであろうな」
 信長は今ここに、立っている。最後まで、その役目を全うしなくてはなるまい。
 
「おっ、いたいた。信長発見~♪」
 廻縁へとつながる戸口を背に、逆光を受けて尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)は立っていた。
 特徴的に跳ねた横髪を指先でいじりながら、ニヤニヤと信長を見る。
「もうぼろっぼろじゃん。これはらっきー。ナオちゃんが、止めを刺しちゃおっかにゃ~?」
「貴様ァ!」
「よい、弥助。かまうな。相手のペースに乗せられるで無いわ」
 無礼に耐え兼ね背後の弥助が声をあげるが、信長はそれを片手を上げて制した。
「ではやってみるがいい。確かにダメージは大きいが、なに。治療すれば良いだけの事よ」
 信長の頭部が、ぶくぶくと膨れ上がり、見るまにおぞましく肥大化した不気味な鳥の物へと変貌してゆく。鳥の頭部で噛みつくことで、犠牲者の生命力を奪い、自身を癒す。逆賊の十字架の力だ。
「……うわ、きっもちわる。ただのバケモンじゃん」
 心底嫌そうな声色で言うナオの目の前に嘴が迫る。
「駄目だよぉ? ナオちゃんみたいな優美さを忘れちゃあ☆」
 ナオはふわりと跳躍し、目の前でガチリと噛み合わさった嘴を紙一重で避けた。
「こんな感じにねぇ」
 そして無造作にも見える動きで自ら信長の方へと歩み寄ると、軽口を叩きつつ、連続っで繰り出される噛みつき攻撃を、小馬鹿するように次々と避けてみせるのだ。
 ナオのユーベルコード【煽りは任せろ(イエーイ)】は、自画自賛することで全力で相手を馬鹿にする軽口マシーンのごとき精神状態となり、同時にその煽りに見合うだけの、爆発的なスピードと反応速度を得るものである。
 もちろん、リスクは少なくはない。繰り出される攻撃を一撃避ける間にも、見る間にナオの寿命と体力は損耗していった。
 挑発を聞いているのかいないのか、もしくは鳥の頭では喋る事が出来ないのか。無言のまま信長の攻撃は執拗に繰り返され、さらに加速。
 ――実際の所、ユーベルコードを用いてさえその攻撃を躱し続けるのは容易な事ではなかった。
 ナオは信長の可動部を注視して、次の動きを予測。それに超反応力とスピードを駆使することで、ようやく回避をなし得ている。
 それでも、このスタンスを崩すわけにはいかない。強敵であると認めるわけにはいかない。それだけでナオはユーベルコードの効力を失いかねず、そうなればもはや信長に抗う事は難しくなる。
 しばし防戦に徹しながら、ナオは機を待つが、ある時ついに怪鳥の嘴がナオの腕をかすめた。
 ほんのわずかな接触にも関わらず血の珠が溢れ、腕の表面を転がり落ちていく。同時に傷口から力が抜けていき、変わりに信長の傷が、巻き戻しをみるように少しずつ癒えていく。
 しかし……このピンチこそ、チャンスでもあった。
 油断したのか、わずかに信長の動きが鈍ったのを見計らい、目にも止まらぬ速度で鈍く黒光りする愛銃を抜く。
「お前にコレが見えるかにゃ~?」
 魔法のように現れた二挺拳銃。ナオはほとんど信長の頭部へと押し当てあるような距離で、リズミカルにその引鉄を引いて。
 パパパパパパン!
 超高速の早撃ちに、交互に放たれた拳銃の射撃音がほとんど繋がって室内に響き、一発ごとに鳥の頭部が血に塗れて行った。
 信長が押せば引き、引けば押す。その間にも、ナオはギリギリの所で噛みつきを避け続けているのだ。
 あっというまに弾丸を打ち尽くすと、手にした拳銃を新たな拳銃へと持ち替えて。
 パパパパパパン!
 再び、発砲する。
 合計、4挺の拳銃から弾丸が撃ち尽くされる頃には、信長の頭部は元へと戻っていた。
「傷を受けたのは、あえてか。猟兵」
 頭部を抑えつつ、信長は問う。
「……もっちろん!」
 それをナオを肯定する。実際は違ったし、わずかなケガにも関わらず、立っているのがやっとな程に消耗もしていた。
 けれども、その方が、信長が悔しがらせることが出来るに違いなかったから。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・クロセ
アタシたちの勝ち?
違う、信長が、第六天魔王がそこに居る限り、勝ちは無い。だから滅ぼさなきゃいけないんだ。

あの花びらをどう防ぐ。武器を構えて【武器受け】できっちりガードしながら攻撃を待つ。
武器だけの防御で耐えられないようなら、タイミングを見計らって【ダッシュ】でかわしていこう。

反撃できるなら炎のサイキックエナジーを刀に纏わせた【属性攻撃】で花びらを燃やして減らす。
そこから【勇気】を全開に振り出し、【スライディング】で信長の懐まで入り込み、UC【倫敦塔】。
城の外まで吹っ飛ばす気持ちで掌底を叩きつける!

※アドリブ・連携など歓迎です!


ヴィクティム・ウィンターミュート
リンタロウ(f00854)と共闘

先制攻撃はリンタロウに任せる
万が一に矛先が向いた場合は【ダッシュ】【見切り】【早業】で退避
リンタロウの実力と打たれ強さに、マックスベットだ
耐えろよチューマ

──嘴が喰いついた
サーチスタート。骸の海へアクセス
いくらオブリビオン・フォーミュラつったって、所詮は一度死に、過去になった身
なら奴にとっての『滅び』が必ず存在する
そいつを見つけ、手繰り寄せ…もう一度呼び起こす
『Destroy』
過去の産物を過去で撃ち落とせ

リンタロウの毒が入った
反撃は許さない、逃走も許さない
射程距離2916m──どこに行こうと、お前の滅びが追いかける

リンタロウ、お前すげー奴だよ
俺も応えなくっちゃな


リンタロウ・ホネハミ
ヴィクティム(f01172)と共闘

まずはオレっち一人で信長の前に立ち、ヤツの攻撃を誘うっす
繰り出される怪鳥の噛みつき、それを長年傭兵をして養った『第六感』によって『見切り』
致命傷を避けるようにして受けるっす

「美味しそうにオレっちを喰いやがって……ついでにこいつも喰らわせてやるっすよ!」
コブラの骨を食って【二〇六番之暗殺者】を発動!
どでかい嘴に毒をぶち込み、強力な毒をたらふくごちそうしてやるっすよ!(『毒使い』『だまし討ち』)

まあこれで仕留められるとは思っちゃいないっす
オレっちだけならね
やってやれっす、ヴィクティム。オレっちらに噛み付いたことを後悔するようなやつをな!!

アドリブ大歓迎



 夕暮れ時、朱に染められた天主にやって来た猟兵達。
「アタシたちの、勝ち? ……違う」
 強い決意を秘めた深紅の瞳に夕陽を映し、燃えあがらせながら、ステラ・クロセ(星の光は紅焔となる・f12371)は戦場に立つ。
(信長が、第六天魔王がそこに居る限り、勝ちは無い。だから滅ぼさなきゃいけないんだ。)
「神への祈りは済んだか、猟兵」
 刀を手に、やや目を細めて信長を注視するステラへと、信長は声を投げかける。
 信長はこれまでの戦いを経て満身創痍だが、意外な程に静かだった。背後に憑装された弥助も、無言で闘志だけを滲ませる。
 ステラは、それに逆に空恐ろしさを感じた。
 信長の身体からは余分な力が抜け、体力を温存している状態。それはとりもなおさず、諦めていないという事。
 正直に言えば、恐ろしい。だが、それでも逃げるわけにはいかない。世界を脅かす脅威を、今、ここで滅ぼさなくては。
「覚悟、織田信長!」
 ステラの言葉に呼応するかのように、信長の左腕が、大帝の剣を振り上げた。
 あの花びらを、どう防ぐ。ステラは天主に来るまでの間、ずうっとそれを考えていた。
 結論は、出なかった。完全に防ぐ方法などないのかもしれない。だから、ステラは。
「……まかり通る!」
 これまで研鑽してきた剣技を信じ、道を切り開くのみ。展開した刃の花吹雪の中へと、まっすぐ突っ込んだ。
 Now or Never。炎のサイキックエナジーで出来た刀で、無数の刃をなぎ払い、受ける。
 時にはジャンプで身を躱し、屈んで地面を滑るようにして隙間をすり抜ける。ただ真っ直ぐに、信長の元へ。
 全ての刃を悉く躱しながら進むステラは、わずか数メートルの距離を、これほどまでに長く感じたことは無かった。

「へえ。信長相手に、やるもんっすね」
 リンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)は呟いた。
 チラリと、階段の影に潜む相棒に目を向けず意識だけを送り、ステラへと注意を向けている信長に、横合いから突っ込んでいく。
「鼠がもう一匹来ましたぜ、信長様!」
「む」
 弥助の言葉を受け、至近距離へとやってきていたリンタロウに信長の意識が向く。
 瞬時に信長の頭部がいびつな怪鳥へと変貌し、リンタロウの頭を丸ごと飲み込もうと上方から襲い掛かった。
「ヤベっ」
 リンタロウは襲い掛かる気配を察知。地面についた片手を軸に、身体を半回転させることで直撃を回避するが、完全には避けられない。
 肩口に食い込む怪鳥の嘴はギリギリと音をたて、リンタロウの血肉を食み、骨すらも軋ませた。

(──嘴が喰いついた。耐えろよチューマ)
 静かに階段から室内の影へと移動しつつ、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)はこの戦いを終わらせるべく攻撃準備を開始した。
 サーチスタート。
 ユーベルコード【Forbidden Code『Destroy』(ナンドデモコロシテヤル)】が起動して、ヴィクティムの意識は果てしなく深い骸の海へと沈んでいった。
(いくらオブリビオン・フォーミュラつったって、所詮は一度死に、過去になった身。なら奴にとっての『滅び』が必ず存在する。そいつを見つけ、手繰り寄せ……もう一度呼び起こす。)
 ただでさえ、多量の生命力を消費するその行為。オブリビオンフォーミュラたる信長の滅びを探ろうというのだから、一筋縄では行かない。
 下手をすれば、消耗しすぎて戻ってこれない可能性すらあった。そうなれば、待っているのは……死だ。
 しかし、それがなんだというのか。
(賭けるのが俺の命つったって、リターンが敵の総大将の命だぜ? 掛け金としちゃ安すぎるくらいだぜ。それに俺は……俺達は、絶対に負けやしないんだからな)
 ヴィクティムは運命を手繰り寄せる為、さらに骸の海の奥へと進んでいった。

 ――かかった。
 リンタロウは流れる血と痛みに顔面を蒼白にしつつもほくそ笑む。
 致命傷は避けた。そして信長は動きを止めている。最初からこのタイミングを狙っていたのだ。
「そんなにオレっちは美味いっすか」
 ゴリ、とさらに肩に嘴が食い込むが、リンタロウはかまわずこの時の為準備していた骨にかじりついた。
「……ついでに、こいつも喰らわせてやるっすよ!」
 リンタロウのユーベルコード【二〇六番之暗殺者(ナンバートゥーゼロシックス・コブラボーン)】が発動する。
 先ほど口にしたのはコブラの骨だ。その能力を獲得したリンタロウは、体内で練り上げた猛毒を、横合いから怪鳥の口内へと注ぎ込む。
 ……変化は起きない。それどころか、ますます嘴は肩に食い込み、今にも骨が砕かれそうになっていた。
「やああああぁ!」
 そこへ敵のユーベルコードを突破してきたステラが信長の正面から斬り込む。直線的な動きで迫る刀は信長の右腕を浅く裂き、装束が燃え上がった。
 攻撃で強固に食い込んでいた嘴の拘束がほんのわずかに緩み、リンタロウは転がるようにしてその場を逃れることが出来た。
 事も無げに信長は燃え上がる右袖を引き裂くが、そこで様子が一変する。
 怪鳥の頭が溶けるように歪み、何度も形を変えて、最後に元の信長の頭へと戻ったのだ。
「ぐ、貴様! 何をした! だが、この程度で、この第六天魔王は倒れはせんぞ!」
 苦し気な様子の信長ではあったが、その気迫は衰えていない。
 だが少なくともしばらくの間は、もう身体を鳥へと変貌させることは出来なくなったようだ。
「思っちゃいないっすよ」
 弱々しい声で答えるリンタロウだが、致命傷ではない。だが息も絶え絶え、しばらくは上手く動くことも出来ないような状態なのは間違いない。
 しかしリンタロウは、脂汗を額に浮かべながらも、笑みを浮かべるのだ。
「オレっちだけならね。……やってやれっす、ヴィクティム。オレっちらに噛み付いたことを後悔するようなやつをな!!」
 それは死にかけているような男の叫びでは無い。勝利を確信した、相棒への合図。

 見つけた!
 ヴィクティムは目を見開いた。
 骸の海から引きずり出した情報を、コードへと変換。滅びの要因を再現するウィルスへと再構築していく。
 強い毒を受け、動きに精彩を欠いた信長を見る。
 ――リンタロウ、お前すげー奴だよ。
 今は、ステラがかろうじて信長と一人で渡り合っている。ヴィクティムから見てもステラは決して弱くはなかったが、それが出来るのも、リンタロウの毒が効果を表していてこそだろう。
 まさしく、信長は規格外と言える。
 それでも。
「これで、終わりだ」
 それ以上の反撃は許さない、逃走も許さない。
 射程距離2916m──どこに行こうと、お前の滅びが追いかける。
『Destroy』
 そしてヴィクティムのユーベルコードが放たれた。
「ぐ、ぐ……がああぁあぁぁぁ!」
 あっというまに信長の身体が炎に包まれ、腹部に亀裂が走る。
 本能寺に自ら火を放ち、炎に包まれて自害したその最後を、再現させているのだ。
 ステラは驚きバランスを崩して、数歩信長との距離が開いた。
「ま、まだだ……儂こそは……第六天魔王、織田信長なるぞ!」
 時ここに至ってもいまだ信長は闘志を無くさず、悪鬼の形相で振り上げた太刀をリンタロウへと向ける。
 それだけではなかった。再び頭部が膨れ上がり、見る間に怪鳥の物へと変じた。
「リンタロウ!」
 想定外。もはや信長も長くはもたないはずだった。
 だが、振り上げた太刀を振り下ろせば、あるいは怪鳥の嘴が襲い掛かれば、無防備なリンタロウの命はたやすく消え去るに違いない。
 ヴィクティムも、常であればここからでもフォローに入ることが出来ただろう。
 だが、ほぼすべての力を使い果たしている今は……間に合わない!
 それでも、リンタロウは身を躱すべく身を捩り、ヴィクティムも走った。

 ステラの脳裏に、最悪の状況が浮かぶ。
『真鉄の盾、黒鉄の甲、秋の陽炎………』
 ステラはいまだ、バランスの崩れから完全に立ち直ってはいなかった。
 この体勢から、最後の死力を振り絞った信長を止められるのか。それはよくて五分五分か、それ以下の賭け。
 それでも、今ここで、わたしがやらなければあの男性は死ぬ。
 それを許せば、真の強さとはなにかを追求してきた自分の存在が揺らぐ気がして。
 だから……絶対に、助ける。
『正義は高き主を動かし、神威は、最上智は、最初愛は、アタシを作る! 倫敦塔!!』
 残った力全てを、いやこれまで培った全てをかけて、ユーベルコード【倫敦塔】を放つ。
 自身へと向け突き出された鳥の頭部を最低限の動きで避け、敵の懐へと飛び込む。
 持ち替えた刀剣の柄を渾身の力で下方から叩きつけると、信長の巨体がわずかに浮き上がり、足が床から離れた。そこへめがけて放たれる掌底打。
 ステラ目の前が暗くなった。腕から先を除き、身体の感覚も無い。
 それだけ振り絞った一撃は、信長の腹部を確かに捉えていた。

 ――――空は暗くなり、わずかに紅色のグラデーションを地平線際に残すのみ。
 その空気の中を、天主から地上へ向けて、信長が燃えながら落ちてゆく。
 落ちていきながら、掌底打を受けた腹部から灰と化し、風に吹き散らされて消えていくのだ。
 すでに弥助の姿も見えず、頭部も元の信長の元へ戻っている。
「見事」
 最後にただ一言。
 穏やかで静かな声が、しかしはっきりと、三人の耳へと届いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月29日


挿絵イラスト