エンパイアウォー㉞~魔王が駆るは甲斐の虎
●
『猟兵達、なかなかどうして、できる相手であったな』
魔空安土城の一室にて、男は天を見上げながら独りごちる。
腕自慢の部下達を屠った集団、既に自らに勝ちの目があるとは思っていない。
『だからといって、大人しくやられてやるわけにもいくまいて……のう?』
『―――』
その背後に薄っすらと浮かび上がるのは、獅子の身体を持つ一人の武将。
彼は投げかけられた問いにも応えること無く、ただ自らの主へと傅くのみ。
『ふっ、そうだな、最早戯言を語る時もあるまいて……』
静かに瞳を閉じ、己が下に近づいてくる幾つもの足音を聞き付ければ、一振りの刀を引き抜き声を上げる。
『―――行くぞ』
サムライエンパイアの命運を賭けた今回の一戦。
最後に立ち塞がるは、第六天魔王、織田信長。
●
「さあ、みんな! いよいよ決戦の時だよっ!」
集った猟兵達へ、エスペラ・アルベール(元気爆発笑顔の少女・f00095)は元気よく声をかける。
数々の苦難を猟兵の助力によって潜り抜けた幕府軍の護衛の下、首塚の一族の力により宙に浮かぶ魔空安土城を引きずり降ろすことに成功した。
安土城内部には多数の信長軍がいたが、そちらは幕府軍が相手取り抑えてくれているため、猟兵達は信長との戦いに集中できる。
その相手、オブリビオンフォーミュラ、第六天魔王『織田信長』は、秘術「魔軍転生」によって、配下の魔軍将を背後霊のように「憑装」させて戦うようだ。
「今回みんなに行ってもらうタイミングで憑いているのは、武田信玄だね」
エンパイアウォーの直前に起きた戦いによって、オブリビオンとして復活することを阻止できた相手。
そのためか人語を話すことなどはできなくなっているようだが、その力は他の魔軍将に劣っているわけではない。
僅かな油断も許されない相手であることは間違いないだろう。
「この戦いの決着まであと一息、今も戦いを続けている幕府軍のみんなのためにも……みんな、頼んだよっ!」
芳乃桜花
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
遂に最終決戦! 格好いいぞ織田信長! 芳乃桜花ですっ!
参加頂く際は、以下の特殊ルールについて一読して頂きますよう、よろしくお願い致します。
●先制攻撃のルール
第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
それでは、皆様のプレイングお待ちしておりますっ!
第1章 ボス戦
『第六天魔王『織田信長』信玄装』
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POW : 風林火山
【渦巻く炎の刀】【黒曜石の全身甲冑】【嵐を呼ぶ樹木の翼】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 甲斐の虎
自身の身長の2倍の【白虎状態に変身した武田信玄】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : 武田騎馬軍団
レベル×5本の【武田軍】属性の【騎馬武者】を放つ。
イラスト:UMEn人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
峰谷・恵
「天台座主沙門を纏った第六天の魔王…油が水を飲み込んだというべきかな?」
信長が風林火山で強化できない速さに賭けて空在渾を使えるようになるまで防戦に徹する。可能な攻撃は回避、避けられない攻撃はダークミストシールドと遅すぎた収穫期、オーラ防御で防ぐ(盾受け)。敵の攻撃の手を少しでも抑えるためにMCフォートの連射(誘導弾+鎧砕き)を牽制に撃ち込む。隅に追い詰められないよう注意。
空在渾を発動したら最高速度時速5100kmの飛行状態で距離を取り(空中戦)、距離を維持したまま空在渾で強化された全射撃武器をひたすら撃ち込む(一斉発射+2回攻撃+誘導弾+鎧無視攻撃、発射の際空間戦闘用ベルトの姿勢制御機構使用)
テリブル・カトラリー
織田信長、他の世界では武田騎馬隊を撃ち破った男が
武田信玄を纏うとはな。面白い物だ。
超重金属の装甲と身体で地面をしっかりと踏みつけ機械刀を構え、
嵐を耐えて迎撃に精神を集中。
殺気を読み、動きを見切り、機械刀で敵の刀を武器受け。
渦巻く炎の属性攻撃を耐え(火炎耐性・激痛耐性)
ガントレットで敵の刀を掴んでブーストジャンプ。
自身を吹き飛ばし超至近距離へ持ちこむ。
機械刀はフェイント。
刀を手放して戦闘知識も活用し早業と怪力で組み付き、
刀を受け止めていた腕をパージし【戦争腕・射突杭】発動。
換装した腕の杭を黒曜石の甲冑に叩きつける。
捉えたぞ。
高威力の杭を射出し、甲冑を破壊し信長の肉体を貫く鎧無視攻撃を放つ。
●
絶え間無く響き渡る轟音と共に安土城の一室が破壊され、2つの影が飛び出した。
一方は轟音の主たるマシンキャノンのトリガーを引きながら、燃える刃から逃れようと下がり続ける峰谷・恵(神葬騎・f03180)。
そしてもう一方、自らに降り注ぐ弾丸の雨を意に介さず、樹木の翼によって引き起こした嵐に乗って恵を追う男こそ、第六天魔王、織田信長。
『疾きこと風の如く……で、あったか!』
(天台座主沙門を纏った第六天の魔王……油が水を飲み込んだというべきかな?)
戦国の世において名を轟かせ、歴史に名が残る程の大きな戦いを繰り広げた名将同士。その二人の力が合わさるというのは、同じ時を生きた者が聞いたら耳を疑い震え上がるものだろう。
先手を取られるということはわかっていた、ならばこそ選択したのは初めから時間稼ぎに重きを置いた遅延戦法。自身が理を書き換えるだけの時間さえ取れれば、逆転の目はあるはずだ、と。
恵を包み隠すように黒い霧が展開され、それを一手に吹き散らそうとすれば硬い手応えが信長の刃を押し留める。
『ふん、賢しい真似を!』
「くっ……!」
しかし、それも一瞬の事、渦巻く炎が吹き荒れれば霧状のエネルギーシールドは砕かれ、内部でコードを発動せんとしていた恵の姿が曝け出された。
理が書き換わるまで後数瞬、その僅かな時を稼ぐため飛び退る恵へと、炎を纏う刃がそれ以上の速度で迫り。
「―――任せろ」
恵とすれ違う形で前に出た女性の構えた刃が、信長の一刀を押し留めて見せた。
『ほう!』
己の一撃を真っ向から受け切られるとは思わなかったか、信長が感心したような表情を浮かべる。
樹木の翼が起こす嵐の中にありながらも彼女、テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)が圧されずにいられるのは、全身に纏う超重の装甲とそれを身に付けながらも動きに支障を抱かない程の怪力によるもの。どちらかが欠けていても敢え無く吹き飛び両断されていただろうと、刃を介して伝わる力が教えてくる。
しかし、力で拮抗したのみでは信長を止めきれはしない。渦巻く炎が刀を這うように立ち上り、テリブルの身体を焼き尽くさんと飲み込んでしまう。
『これこそ真の侵略すること火の如く、である―――むう!?』
獰猛な笑みを浮かべていた信長の表情が、驚愕に染まる。
燃え上がる炎を掻き分け伸びた手が、信長の刀を掴んでいたのだ。
(織田信長、他の世界では武田騎馬隊を撃ち破った男が武田信玄を纏うとはな。面白い物だ)
相手が知る由もないが、テリブルの生身に見える箇所は皮膚に擬態したナノマシン装甲、彼女を保護するその装甲は炎に対しての耐性も持っている。
最もその耐性は十分とは言えない、全身に食らいつく炎は確実に彼女にダメージを与え、次なる動作を遅らせてしまった。
格闘戦に持ち込もうとテリブルがブーストを吹かせるよりも先に、信長が自ら刀を手放し翼を羽ばたかせ―――。
「飛ッ!」
『ぬお!?』
その背へと、高速で飛翔し回り込んでいた恵の放つ砲撃が炸裂する。
テリブルが稼いだ時間によって発動されたユーベルコードによって、彼女の全身は白黒が入り乱れるオーラに覆われていた。
「神殺しの力、受けてみて!」
神に滅びを齎すオーラを介して放たれる彼女の銃器は、どれも平時の威力を遥かに上回る火力を持って信長を襲い、黒曜石の甲冑に亀裂を走らせていく。
強化された火砲は相応の反動をもたらすが、姿勢制御用の機構によって強引に体勢を保ちつつ、信長の身体を撃ち抜かんと連射を続け。
『神を殺す力でも、魔王は滅せん!』
再度翼を震わせ、嵐を即席の防壁として火線から逃れようとした信長の身体が、動きを止める。
視線を落とせば炎を振り切ったテリブルがその身体へと組み付き、杭打機へと換装された腕を振り上げていた。
彼女の怪力によって捉えられれば、いかに信長と言えども容易くは振りほどけず叩き落され。
「捉えたぞ」
『は―――やりおるわ』
密着状態から放たれた杭はひび割れた黒曜石の甲冑など物ともせず、信長の体ごと貫いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シル・ウィンディア
★森深くの博物館の人がいれば連携希望
ついに出てきたね…
…なんか後ろに猫さんいるけど
気のせい、かなぁ?
対敵UC(SPD)
ツカサさんをカバーする様に
大型な猫さん(信玄)と対峙するよ
大型なら機動力勝負っ!
【空中戦】で飛んで【残像】出来るスピードまで持っていって
【フェイント】で撹乱っ!
攻撃も二刀流の光刃剣で【フェイント】を織り交ぜて
【二回攻撃】
敵の攻撃は
自分の【第六感】を信じて【見切り】で回避
間に合わない場合は【オーラ防御】を展開し
【盾受け】で致命的な部分を集中防御
攻撃
【高速詠唱】の限界突破の【全力魔法】でUC使用
連動して精霊電磁砲の
【一斉攻撃】【誘導弾】のオマケつきっ!
わたしの限界突破受けてみてっ!
甲斐・ツカサ
★森深くの博物館の人がいれば連携
大人しくやられてくれないなら、しっかり倒して負けさせてやるよ!
シルちゃんの魔法を完成させる為に、その邪魔になる騎馬武者を止めないと
でもその前に、信玄に乗った信長を何とかしないとね!
シルちゃんの撹乱に合わせてこっちもおびき寄せるように挑発して、気を散らそう!
オレ達は小っちゃいから、狭い部屋を選べば、でっかい相手は手間取るはず!
あとは部屋にワイヤーを張ったり、畳に穴を開けたりして、虎も馬も突進しづらい地形に!
仕上げはこの戦争で編み出した技、"風魔無尽標"!
50本近くに増えたワイヤーを張り巡らせて、近付きにくくさせるのは勿論、全方位から絡み付かせて動きを止めるよ!
リューイン・ランサード
うわあ、凄い威圧感。さすがは魔王とも言われた人だ。
でもこの戦争を終わらせる為にも頑張ります・・・怖いけど。
先制攻撃への対抗は、【空中戦、第六感、見切り、楯受け、オーラ防御】で、飛行で回避したり、防具で受けたりしつつ下記対応。
①炎の刀:【水の属性攻撃】を籠めた流水剣で受け止め、炎を消火する。
②黒曜石の甲冑:黒曜石は衝撃で割れるので、【より硬い鉄の属性攻撃】を籠めたビームシールドで【シールドバッシュ】して裂け目を入れる。
③樹木の翼:【炎の属性攻撃、全力魔法、高速詠唱】による炎弾発射で翼を焼く。
UC発動すれば【空中戦】で素早く移動して信長の身体に密着し、【光の属性攻撃】を籠めた拳で震龍波を撃ち込む!
テラ・ウィンディア
シルが居るなら連携をするぞ!
事前
織田信長と武田信玄の生い立ち…特に武術についての情報を可能な限り集める
可能なら【情報収集・世界知識】持ちの猟兵にも聞く
天下を制した猛者に挑む事こそ我が誉れだ
【属性攻撃】
炎を剣と太刀と槍に付与
対風林火山
【戦闘知識】で
【見切り・第六感・残像・空中戦】で太刀による攻撃を最低限致命だけは避
炎を付与した槍で嵐にて更に炎の力を増強して相殺を試
その上で【串刺し】で槍による刺突
【早業】で剣と太刀に切り替えての斬撃
常に信長の斬撃も記憶に刻
己も太刀と剣で回避されようようが可能な限り必殺の斬撃の繰り返
消えざる過去の痛み発動!
信長の刃とおれの刃
仲間の刃全てを再現!
おれも仲間の力を使う!
●
シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)と甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)の前に姿を表した織田信長は、既に別の猟兵との戦いによって傷ついた姿であった。
ちらほらと見える出血はまだしも、腹部に空いた穴は普通の人間ならば致命傷となりえるものだ。
『ほう、次は童が相手か』
されども、その身体から放たれる重圧は並の相手とは比べるべくもない、気を抜けば押し潰されかねない程の物。とても手負いの相手とは思えない。
「ついに出てきたね……」
「大人しくやられてくれないなら、しっかり倒して負けさせてやるよ!」
しかしこの二人も年こそ若いながらも相当な実力者、重圧に怯むことなく啖呵を切り、それぞれの武器を構える。
―――と、そこでシルが信長の背後、薄っすらと浮かび上がる武田信玄を見て首を傾げた。
「……なんか後ろに猫さんいるけど、気のせい、かなぁ?」
「えっ」
『うん? ……かっかっか! 童にかかれば甲斐の虎も猫扱いか!』
シルの呟きにツカサは思わず硬直し、信長は笑い飛ばし、信玄本人はと言えば何か不満そうな表情を浮かべながらも小さく唸るのみ。復活を阻止されたことを強く悔やむ。
傍目には空気が緩んだように見えるやり取りの最中も、互いに仕掛ける隙を伺い続け、むしろ緊張の糸は張り詰めていた。
そして、その糸が遂に限界を迎え―――。
「―――いくよ!」
「勝負!」
シルが踏み込み、ツカサが懐のワイヤーを取り出し。
二人が動こうとした、その瞬間。
『遅い』
信長は瞬時に巨大な白虎と化した信玄に騎乗し、シルの横をすり抜けツカサへと襲いかかる。
その速度は例え猟兵であっても対応できる者は限られる、ツカサも愛用のバイクに乗っていたならば兎も角、人の身で獣の爪から逃れきることはできない。
それが必然、だからこそ。
織田信長は、眼前の少女に感服する。
「シルちゃん……!」
『やるな、儂らを謀るとは!』
「そう簡単に、負けないよ!」
二振りの光刃が、信玄の爪を受け止めていた。
それは先んじて踏み込み、故にこの二人の間には存在しなかったはずのシル。
信長が視線を送れば、踏み込んでいたはずの少女の姿は掻き消え、それが残像による撹乱であったことを理解する。
そして初速の差さえ埋められれば、この二人の機動力は獣にも決して劣らない。
シルが受けた爪を横へと流し、その間にツカサが常闇の短剣で信玄の横腹を斬りつける。馬上―――虎上から放たれる信長の斬撃を空中へと飛んだシルが引きつけ凌ぎ、ツカサを狙い喰らいつかんとする信玄が踏み込んだ畳が、早業によって仕込まれた罠によって口を開き動きを止めた。
善戦をする二人であったが、それも長くは続かない。
元より実力者である魔軍将の一人と、それを率いる魔王。その両者の戦闘力が更に増強されているのだ、拮抗できただけでも大したもの。
『どうした、遅れてきたぞ!』
「くぅ……!?」
捌き切れなかった斬撃が、身に纏うオーラを貫きシルの身体を傷つける。
ここぞとばかりに刃が連続で振るわれ、その一つがシルの首を狙い振り下ろされ―――。
飛び込んできた紅蓮に染まる槍が、凶刃を弾き飛ばした。
「シル! 無事か!?」
「テラ!」
『ほう、新手か』
シルと信長の間に割り込んだのは、炎を纏う槍を手にしたテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)。
彼女の強い視線を受けると信長は笑みを浮かべ、その身を黒曜石で覆い樹木の翼を生やすと信玄の背から虚空へと舞い上がる。
手にした刀に炎を渦巻かせると、構える姉妹へと向けて小手調べとばかりに解き放ち。
「舐めるな!」
炎の扱いならばテラとて負けはしない、槍が纏う炎を巻き上げ、自ら信長の発する嵐に乗せることでその勢いを増して真正面から対抗して見せる。
互いの炎がぶつかり飲み込み合う中で、嵐の指向性をズラせば少女の一人軽く吹き飛ばす暴風がテラを襲うが、背後からシルが支えることで持ちこたえ。
ならばと黒曜石の甲冑の防御力頼りに炎のぶつかり合う中を突破し、直接斬りかからんとしたその瞬間。
「や、やぁぁぁぁぁ!!」
『む!?』
やや怯えの混じった声と共に、ビームシールドを構えたリューイン・ランサード(今はまだ何者でもない・f13950)が突撃をかけ信長の体勢を打ち崩す。
仕掛けられる側から仕掛ける側へと、相手の隙をついてテラが炎の壁を打ち破って紅蓮の槍を突き出し。
その刺突が寸でのところで凌がれるのも想定済み、即座に槍を手放し二振りの剣と太刀を握ると今度こそ信長に一撃を食らわせる。
『やりおる、だが!』
「まだだ!」
テラの斬撃を受けながらも怯む事無く振るわれる刃を、彼女は先読みしていたかのように剣で流すと更に一太刀。
『この動き、儂の技を知っているか!』
「天下を制した猛者に挑むんだ、それぐらいはするさ!」
「テラ、合わせるよ!」
強者と刃を合わせる事は彼女にとっての誉れ、故にそこに油断は無く、事前の情報収集も欠かしてはいない。
シルも交えて斬撃の応酬を繰り広げる三者を、リューインは少し離れた位置で斬り込む隙はないか伺っていた。
(うわあ、凄い威圧感。さすがは魔王とも言われた人だ……それに全然怯まないテラさんとシルさんも凄い……)
ともすれば飲み込まれてしまいそうな気迫に怯えつつ、強く首を振ってその弱い心を振り払う。
自分よりも年若い女の子までああして戦っているのだ、この戦争を終わらせる為にも自分だって頑張らなければ。
(……怖いけど)
と、恐怖心から僅かに視線を落とせば、そこでは白虎と化した信玄との戦いを続けるツカサの姿が目に入る。
地形を上手く使って攻撃を凌ぎ続けてはいるが、相手を倒すだけの火力がないのだ、このままでは身をかわし続けるのにも限界が来てしまう。
早く信長を倒さねばならない、蒼い光を放つ剣を握る手に力を込めて、信長の背後を付くように斬りかかるが。
『温いわ!』
二人と斬り合いながらリューインのことも意識から外してはいなかった、信長は振り向き様に渦巻く炎を放ち。
逃げ出しそうになる心を抑えつけ、彼は流水剣を構えて真っ向から炎の中へと突撃をかける。
全身を焼き尽くさんとする熱波に剣を介して発する水で強引に突破し、シルとテラの斬撃を受けるその背へと拳を振りかざす。
「世界に遍在するマナよ―――」
『ちい!?』
「全てを破砕する波と化し、僕の拳に宿れ!」
魔力によって創造された超振動、それを纏った拳を叩きつければ黒曜石の甲冑はあえなく砕かれ、込められた光の魔力が信長の身体に炸裂した。
至近距離でしか使えず、故に高威力の一撃を受けた信長の身体は地面へと叩きつけられ、ツカサを追っていた信玄が慌てた様子で側へと駆けつける。
『ぐ、ぬかったわ……!』
「リューインさん、ナイス!」
「決めるぞ、シル!」
「うん、いくよ!」
続き猟兵達も降り立ち、トドメの一撃を放たんとシルが詠唱を初め。
『やらせん……行け、信玄!』
信長の号令と共に信玄が咆哮を上げる、次の瞬間現れたのは部屋を埋め尽くさんとする程の騎馬軍団。
数多くの敵を屠ってきたその突撃は、白虎と化した信玄を先頭にすることによって更に力を増しており、まともに喰らえば猟兵達と言えども耐えきることはできないだろう。
しかし。
『なんと……!』
信長が驚愕の表情を浮かべる。
それは突撃をかけた騎馬軍団が、次々とその身を切り刻まれ倒れ伏したから。
目を凝らせば部屋全体に無数のワイヤーが張り巡らされており、これが騎馬を迎撃したであろうことは想像に容易い。
「これは無限に広がる未知の未来へ続く、尽きる事のない道標!」
風魔無尽標。これぞエンパイアウォーにてツカサが手にした新たな力。
無数のワイヤーを同時に操り敵の動きを封じる、歴代の風魔の技を学び、未来の技をも取り入れた”新たな風魔小太郎”としての忍法。
見れば信玄さえもが、自在に動くワイヤーによって動きを封じられてしまっている。
そして武田軍が封じられたならば、彼女の詠唱を妨害できる者は存在せず。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ……我が手に集いて、全てを撃ち抜きし光となれっ!!」
シルが放つは四の属性を内包した無数に分かれる魔力砲撃。
その一つ一つが並の相手ならば打ち砕くだけの威力を誇り、その全てが今信長一人を打ち倒すために迫りゆく。
『ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
大きく傷つき甲冑も砕かれた身でこの全てを受け切ることは、いかにオブリビオン・フォーミュラといえどもただでは済まない。
魔力の衝撃を受けながら残る翼を羽ばたかせ宙へと逃れ。
「これは我が悔恨……我が無念……」
『な、にぃ……!?』
逃れた先が、無数の斬撃によって埋め尽くされていた。
それはテラが、シルが、リューインが、そして信長自身が放った斬撃の記憶。
過去に刻まれた全ての斬撃が信長の全身を切り刻み、その身を再び地へと叩き落とした。
「おれも仲間の力を使う、とくと味わえ……!」
『これが……猟兵の力、か……信玄!』
そのまま倒れ伏すかと思いきや、ワイヤーを振りほどいた信玄が信長を咥え部屋を飛び出し、城の内部を駆け去っていく。
追いかけるにはこちらも消耗しすぎている、追撃を別の猟兵に託し、シル達は一先ずの勝利を噛みしめるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ルーナ・ユーディコット
壁際に逃げる振りをしながら走りこんで、窮したように構えた私の武器を上に弾き飛ばさせること
……それで天井に武器が都合よく刺さってくれるかは別だけど
そこまでが、仕込みで初動の対抗策
無傷でとは言わない、吠える喉と振るう腕が無事なら戦える
攻め手に用いるは人狼咆哮
的が2つに増えてその体力が共有ならまとめて叩けば1度の攻撃で2倍削ることが出来るはず
そして咆哮の衝撃で私の武器が落ちてくるのなら、おそらく最大のチャンス
落ちてこないなら、手元に残るもので何とかするしかない
それらの仕込みで狙う事は、虎の首を落とす事
恐らく、その時最も近くにあるのは虎の首だから
人は、獣にも過去にも傅かない
超えていくんだ
●
傷ついた信長を咥え、信玄は安土城をひた走る。
向かう先はとある部屋、城の本道からは外れた位置のそこならば、ある程度傷を癒やす時間が取れるはず。
そうして辿り着いた部屋で―――。
『ふん、そう容易く逃れられるような相手ではないわな』
待ち受けていた一人の猟兵、ルーナ・ユーディコット(ヒトであろうとするもの・f01373)を確認すると、信長は信玄から離れ刀を引き抜き構えを取る。
その佇まいからはとても弱っている様子は見て取れない、どれだけの深手を負おうとも、力尽きるその時までこの男は魔王として十全の力を振るうのだろう。
ならばこそ、この相手は逃せない。埒外の敵を倒すのは自分たちの役目、そう侍達に告げたのは自分だ。彼らがこの男と相対することなどあってはならない。
刀を握る手に力を入れ、ルーナは信長へと斬りかかる。
●
戦いは一方的な物となっていた。
白虎と化した信玄と、それに騎乗し斬りかかる信長。
その力は先程四人もの猟兵を相手取り、互角以上の戦いを繰り広げたことからも理解できるだろう。
ルーナとて実力では他の猟兵に引けを取らないが、二人と同時に戦うのは厳しいものがある。
信玄の爪が、信長の刃が彼女の身体を斬り裂いていき、決して浅くはない傷も数を増してきた。
(……何を企んでおる?)
されど圧倒的優位な状況においても、信長は気を抜かない。
その原因はルーナの瞳、どれだけの傷を負っても、彼女の瞳からは一切の力失われていないのだ。
しかし信長の懸念を他所に、彼女は敢え無く壁際に追いやられ。やぶれかぶれに突き出した刀も弾かれ天井に突き刺さり、無手の状態となってしまう。
武器を失えば人の身で獣に勝れる筈もなし、前足で両手を抑えられ地面に倒されれば、睨みつける他に打つ手はなく。
『その姿、信玄と同じく獣と成るやもと思ったが……考えすぎであったか』
刀を振り上げながら信長が告げる。
その言葉が、ルーナの瞳に憎悪の感情を与えた。
「―――は」
『む?』
「私は、人間だ!」
『ぬう!?』
怒りと共に放たれた咆哮、それは信玄と信長を同時に吹き飛ばす。
思わぬ反撃を受け、すぐに体勢を立て直そうとした信長だったが、その足から力が抜けて膝を付き。
『ぬかった……!』
白虎と化した信玄と信長はその生命力を共有する。
ならば同時に攻撃を受ければ、そのダメージも本来の二倍となるのが道理。
既に大きな傷を負っていた状態でそうなれば、いかにタフだろうとも限界は来る。
視線を向ければ体重差か信長程は吹き飛ばず、されども立ち上がることのできない信玄へとルーナは刀を向けていて。
『まんまと策に乗せられてしまったか……』
あれは先程彼女が追い詰められ、天井に弾かれた筈の刀だ。
全ては至近距離から二人同時に咆哮を喰らわせるための作戦、その咆哮によって天井に刺さっていた刀の回収すらをも兼ねるとは。
その策略が成功する確率は決して高くはなかっただろうが、ルーナの覚悟はそれを乗り越えて見せた。
「人は、獣にも過去にも傅かない―――」
小さく唸り声を上げる信玄へと、手にした刀を振り上げ。
「―――超えていくんだ」
一刀の下に、その首を落としてみせる。
『完敗であるな……是非も無しよ』
生命力を共有する以上、一方が倒されればもう一方も同様に。
ルーナが視線を向けた時には、信長は既に躯の海へと還っていた。
大成功
🔵🔵🔵