エンパイアウォー㉞~夢幻の如く
●魔空安土城
「遂に来たか、猟兵達よ。
エンパイアを滅ぼし、渡来人共の『グリードオーシャン』をも侵略する道筋は、これでほぼ絶たれたか。血塗られし彼奴らの神が如何程の物か、確かめてみたかったがな。
城内に兵が流れ込む気配がある。まもなくこの間に到着するに違いない。
「さて、もはや儂に万にひとつの勝ち目も無かろうが……。
億にひとつでもあるのならば、賭けてみるのも一興よ。
秘術『魔軍転生』。信玄よ、儂に憑装せよ……!」
●グリモアベース
「ついに第六天魔王『織田信長』が出現したっす! 決戦にご案内するっす!」
今日もグリモアベースに威勢の良い声が響く。集まった猟兵たちに香神乃・饗は説明を始める。
これから討伐に向かってもらうのは『武田信玄の力を宿した信長』だ。秘術を使って魔軍将の力を宿している状態だ。
「第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃をしてくるっす。
先手で自己強化をするっす。『強化された相手をどういう方法で倒すのか』を考えて欲しいっす。
技能やユーベルコードを使ってどう身を守って、反撃に繋げるか具体的な動きを考えて欲しいっす。名前を挙げて羅列するだけでは押し負けるっす!」
技能名やユーベルコードの名前を羅列するだけではなく、それを使った具体的な行動も考える。そこまで対策をして漸く同等に立ち向かえる。
「注意点して欲しいことがあるっす。
まず一つ、ユーベルコードは1種類に絞って欲しいっす。複数使うと相手も複数使ってくるっす。手のつけようがなくなるっす。
もう一つは、自分が使うユーベルコードと同じ系統の攻撃をしてくることっす。今から使ってくる手を説明するっすからしっかり対策を考えて欲しいっす」
予見される手を種類別に教えてくれる。
信長の前に転送を行う。屋内での戦いになる。戦闘の妨げになるものは見当たらない。
「猟兵さんたち、しっかり頼んだっす! サムライエンパイアを救って欲しいっす! 皆を、信じてるっす! 俺も全力で支えるっす!」
いつになく真剣な眼差しで一同を見渡す。饗もサムライエンパイアの民のはしくれだ、力も入る。
ぱんと掌を打ち鳴らせば、紅梅の花が咲き乱れる。導く先は魔空安土城、最終決戦の間――。
ごは
【8月23日(金)午前8時31分よりプレイング受付】します。1度ほどプレイング再送をお願いしてしまうかもしれません。執筆具合はMSページにてお知らせいたします。
戦場をお間違えないよう、OPをご確認ください。
難易度高い目のシナリオになります、相応の判定をいたします。
戦争シナリオのため全員描写はいたしません。成功度に到達次第、締め切らせて頂きます。
執筆速度を優先するために、1人づつの執筆いたします。連携は指定がある場合のみ2名さまくらいまで対応いたします。
1フラグメントで完結するため、真の姿はユーベルコードでご指定頂いても使えません。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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第1章 ボス戦
『第六天魔王『織田信長』信玄装』
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POW : 風林火山
【渦巻く炎の刀】【黒曜石の全身甲冑】【嵐を呼ぶ樹木の翼】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 甲斐の虎
自身の身長の2倍の【白虎状態に変身した武田信玄】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : 武田騎馬軍団
レベル×5本の【武田軍】属性の【騎馬武者】を放つ。
イラスト:UMEn人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヘンペル・トリックボックス
さて、長い道程でしたが──漸くお目通りが叶いましたな、第六天魔王。生憎と戦に草臥れ果てた老骨ですが……お手合わせ願いましょう。えぇ、紳士的に……!
迫るは彼の高名なる武田騎馬軍団。単なる火力押しだけでは競り負けるでしょうし、小細工を弄そうにも時間はない。で、あれば──
UCを発動。【高速詠唱】しながら【戦闘知識】を駆使して、嘗て武田軍を壊滅せしめた鉄砲隊の三段撃ちを再現します。対象が武田軍属性である以上、『敗因となった逸話』なら効果もある筈……!
しかして真なる敵は鉄砲隊を編成した織田信長その人。UCで迎撃している間に詠唱を済ませ、彼には【全力魔法】で【範囲攻撃】化した火【属性攻撃】を叩き込みます。
「さて、長い道程でしたが──漸くお目通りが叶いましたな、第六天魔王」
つかつかと歩みでるヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)。数々の戦場を乗り越え漸くこの間に辿り付いた。
「生憎と戦に草臥れ果てた老骨ですが……お手合わせ願いましょう。えぇ、紳士的に……!」
帽子を脱ぎ優雅に一礼。帽子を被りなおすと入れ違いに霊符を翳す。
「良かろう、かかってくるが良い。来たれい、武田騎馬軍団!」
馬が駆けつける、鎧武者を乗せた屈強な軍馬の群れが信長を護るよう取り囲み陣を敷く。
「対象認識。解析開始」
術式を展開し、戦力分析を始めるヘンペル。
相対するは彼の高名なる武田騎馬軍団。
単なる火力押しだけでは競り負ける、小細工を弄そうにも時間はない。で、あれば──、
「属性定義。弱点把握」
対象が武田軍属性である以上、『敗因となった逸話』なら効果もある筈……!
「霊符連続展開、完了───」
ここまで一呼吸、光の速さで術式を編み上げた。ヘンペルを護るよう陣が現れる。
三重の土塁に馬防柵を設け、鉄砲隊を配置、かの長篠の戦場を再現する。嘗て武田軍を壊滅せしめた鉄砲隊の三段撃ちだ。鉄砲隊は元より待ちの陣形だ。武田軍は天敵でもある鉄砲隊の出現に攻めあぐね両軍睨みあう。
怪訝な顔をする信玄。
「初見であろうな。之は長篠で信長軍が敷いた陣。武田勝頼の騎馬隊を撃破せし陣」
落ち着きはらった信長の声。然し、何処か他人事のように語る。在りし日、全ては遠き過去の話。
「ぐるるる……」
口惜しいとでも言いたいのだろうか、唸り声をあげる信玄。猟兵たちの手により復活は阻止されてしまった、故に獣のように鳴くのみ。言葉を交わすことはできない。
「さて、どう出る信玄公」
口には出さぬその想い。言わずとも伝わるその決断。
「ならば、儂等も童になろうぞ――全軍前進!! 蹂躙せよ!!!」
口角をあげる信長。振り翳される軍配、鳴り響く法螺貝。軍馬が一斉に駆ける。
鉄砲が一斉に火を噴く。軍馬が嘶き跳ね上がり、そして倒れる。倒れた馬を乗り越え次の馬が柵に足をかける、それをも撃ちぬく。更にその屍を越えた軍馬が鉄砲兵に襲い掛かる。援護を受けながら内側の柵に向け撤退を始める鉄砲兵、その背を追う軍馬。
己が負けても宗主が居る、武田の未来は揺らぎ無い。故に勝頼は豪気に攻め続けた。オブリビオンは幾度でもよみがえる。そう、一度破れても後釜がいる、闇雲に攻めてでも勝てれば良いのだ。万が一の勝機に賭ける。勝頼の覚悟は今この度の信長に重なった。
この無謀ともいえる攻撃により、軍馬はみる間に数を減らしていく。だが、決して一方的な蹂躙ではない。じりじりと後方の柵に向け撤退する鉄砲兵。互いに命を散らしつつ削りあう。
軍馬が駆ける、丘を駆け、同胞の屍を越え、遂にヘンペル迫るも銃弾に撃たれ紅に爆ぜる、その血煙から躍り出る影。地獄を越えて来た。
「やはり、来ましたか。――喼急如律令」
現れしは真なる敵、鉄砲隊を編成した織田信長その人。火行熒惑符を翳す。上段から振り下ろされた刃と炎が衝突する。空気が震え、ビリビリと音をあげる。
「炎か、本能寺の再現とでも言うか」
「はは、お見通しですか」
「効かぬわ、炎なら儂も得手にしておる。焼き討ちにしてくれようか」
にいと笑ってみせる信長。更に波動を強め刃を押し込んでくる。
「ご免っ……被ります!」
更に符に念を篭める。拮抗。双方の間にバリバリと火花が散る。踏みしめる地が悲鳴をあげ割れる。一歩も譲らぬ全力の魂が激しく衝突する。
――カッ、閃光が走る。
限界だ。膨れ上がった闘気が爆発し、隈無く焼き尽くすよう吹き荒れる。双方爆風に吹き飛ばされた。熱風に揉まれながらも、体勢を建て直し着地するヘンペル。だが、片膝をつく。
「――っ」
置き土産か。血痕が滴り落ちる、胸に真紅の筋が走った。離れ際に斬り裂いていったのだろう。
「あの外道を喚び従えただけあるということか」
歯がみする。食えない相手だ、第六天魔王の名は伊達ではない。
大成功
🔵🔵🔵
タビタビ・マタタビ
いよいよ信長との決戦!
ようし、ボクも出陣だ!
武田信玄、なんだかすごく強そうだけどちょっぴり親近感……。
これが、武田騎馬軍団! 数はもちろん、武者の練度も高そう……!
ならボクも剣を抜いて、まずは……【逃げ足】で逃走!
「こんな数、聞いてないよー!!」
怖気づいたような声を出して、何か作戦があるのを悟られないようにしてみるよ。
ここは魔空安土城の中。
騎馬隊が広く展開できないよう、細い廊下へとおびき寄せる。
敵が、できるだけ一直線に近い形に並んだら、UC【ブレイヴソード・オブ・ザ・サン】を発動!
巨大化した剣で、一気に騎馬隊を真っ二つ!
ちっこい猫だって、騎馬にも甲斐の虎にも負けないよ! それと魔王にも!
志崎・輝
その秘術、ずっこくない?そんな猫つれて、ずいぶんとゴキゲンね
強化は絶対される
ならアタシは耐えうるように
回避と防御に力をいれないと負ける
火は少しなら耐えられる
刀ならアタシにだって覚えがある
苦手とかそんなこと言ってらんない
全力の雷を発露させて紫棘で受け感電させて防御
見切っていなして回避
攻撃できそうな呼吸、一瞬でも見逃さず
刀を持ってたら躊躇わず手放してUC発動
手数全てに全開で雷電纏わせ怪力発揮
鎧なんて関係ない、一寸の隙なく蹴り飛ばす
女だからチビでしょう
でもナメないで
刀よりこっちの方が得意だから
ここはアタシの国だ、守ってみせる
以降紫棘は拾わない
刀が必要になるなら小太刀を抜く
(バアちゃん、借りるけんね)
「やあやあ! ボクの名はタビタビ・マタタビ! ケットシーの騎士だ、決闘を申し込むのだ!」
爆風から逃れ、着地する信長を待ち構えていたのはタビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)だ。赤い正義のマントをばさっと翻し、堂々と名乗り上げる。いよいよ信長との決戦! いざ出陣! と張り切っていた。
「ふん、畜生めが決闘か。片腹痛いわ」
見下すように言い放つ信長。鎧から黒煙があがっている。焦げた臭い。至近距離で業火を食らったのだ。涼しい顔をしているが、無事で済むわけが無い。
「武田騎馬軍、再び我が元に集え!」
軍馬の群れを呼ぶ。先程の戦いで半数以下に数を減らしているが、屈強さに変わりは無い。馬のつま先から胴までの高さでも、タビタビの身丈の倍以上ある。
「(これが、武田騎馬軍団! 数はもちろん、武者の練度も高そう……!)」
見上げて気を引き締めるタビタビ。剣を抜き構えたものの、
「こんな数、聞いてないよー! わーーーん!!!」
ピンと立てた尻尾をぶわっと膨らませる。怖気づいたのか、涙を浮かべて逃げ出すタビタビ。
「わわっ」
マントを踏んでべたんと転がる。タビタビにとってこのマントは少々長いのだ。転んだタビタビを踏みつけようと前足を振り上げる馬を転がって避ける。騎馬の猛攻はとまらない。馬の股の間をくぐり抜け駆ける。一生懸命逃げ続けるタビタビ。心に秘めた作戦を悟られないように。
「その秘術、ずっこくない? そんな猫つれて、ずいぶんとゴキゲンね」
タビタビへの追撃を行おうとした信長の手を止めさせたのは、志崎・輝(紫怨の拳・f17340)の一言だ。男物の黒羽織を翻し立ちふさがる。
「何用ぞ小娘。女子供と言えど楯突くと言うなら容赦はせんぞ」
無造作に携えた刀に炎が渦巻く、まるで威圧するように。背に樹木の双翼が生え、身に纏う黒曜石の全身甲冑の一層黒味を帯びる。
「(強化をされた。なら、アタシは耐えうるように備える)」
信長の変化に身構える輝。
「打って来ぬか、ならば此方から打ち込んでくれる」
「刀ならアタシにだって覚えがある」
上段から振り下ろされる炎の刃を、濃紫の柄巻きの刀を抜き放ちざまに受け流す。刃が交わるその瞬間、バリっと音をたてる。信長の全身に紫電が走る。だが、信長は動じない。一切の変化を伴わない。今のは全力の雷を発露させた特別の雷の刃だったはずだ。これは状態異常力の耐性か。
「どうした小娘、威勢が良いのは口先だけか」
嗤う信長。更に袈裟に斬りかかってくる刃を、その懐に飛び込むように掻い潜り脇を駆け抜ける。その背に追い討ちの袈裟斬りが迫る、身を翻し紫棘で受ける。炎と紫電の刃が交錯し鍔で迫り合う。
「小娘、小娘って。女だからチビでしょう」
「屁理屈を言うか、小娘」
ぐいっと力任せに押さえ込まれる。負けじと押し返すが、刀を捻り込まれ絡めとられて体が浮く。疾風が吹き抜ける気がした。否、吹き飛ばされているのだ。自身がの体が疾風の如く速さで投げ飛ばされていた。そのまま背から壁に激突する。
「ぐっ……」
息が詰まる。世界が、暗転した。
信長の背後を見るタビタビ。目線の先にいるのは武田信玄。
なんだかすごく強そうだけどちょっぴり親近感を感じる。虎は猫のお仲間さんだ。もふもふの耳、もふもふの尻尾、鎧に包まれた筋骨粒々の体もきっと毛並みの良いつやもふで、雄々しくカッコいい武士ケットシーだ。でも気を許してはいけない、復活し損ねたとはいえオブリビオン、過去の幻影なのだ。もふもふはさせて貰えない。
「ぐっ……」
囲まれた。馬上から一斉に振り下ろされる槍。飛んで避ける。槍の口金に着地し胴金をかぶら巻を足場に駆け、騎馬兵の頭を踏み越え、ついでに後ろ、その後ろの騎馬兵の頭をぴょんぴょん踏み渡り、くるりと前宙返りをして音もなく着地。するりと窮地を抜ける。小柄なケットシーだからこそ出来る軽快な身のこなしで。今は騎馬に集中しよう。
「鬼さんこちらだよ! 違った、お馬さんだ」
馬の間をくぐり抜け煙にまく。
――このままじゃダメだ。
――アイツにすら敵わない、アイツにすら届かない、届かな……。
――っッ、はっ…………はっ……、
目を見開く輝。息を吐く、吸う。生きている。
一瞬意識が飛んでいた。頭を振り、意識を呼び覚ます。背がズキズキ痛む、相当ぶつけたのだろう。咄嗟に見切り致命傷は避けたものの、勢いを殺しきれず壁に叩き付けられた。地力の差が露呈したのか。
手の中に何かある、目の前に翳す、鞘に収めたままの無尖月影だ。無意識の間に握っていたのか。再び懐に収めなおす。厭な夢を見た、でも、でも、……そうだ、今はまだ戦の最中だ。戦局はどうなったのか。体にのしかかる瓦礫を押しのけ見渡す。
ここは魔空安土城の中。決戦の間に直接送り込まれたから城内の構造はわからない。もしかしたら、作戦に使える地形が無いかもしれない。それでも、賭けよう、この身で軍馬の大群に対抗するにはそれしかない。
「わーーーん! もう許してよ見逃してよーーー!!」
決戦の間を出るタビタビ。でも、その不安はすぐに拭い去られた、決戦の間に続く廊下は細く長い直線だ――これなら、
「おのれ、ちょこまかと!!」
廊下を全力で逃げる、直線の道は逃げる場所もない。追いつかれれば踏み殺される。さぁ来い……ついてこい! ついてこい!! ついてこい!!!!!!
「逃がさんぞ!!」
後をついてくる蹄の音。その願いが通じたのか、軍馬たちは次々に廊下に駆け込んでくる。
「良いのは威勢だけか。所詮畜生。狩りとれ、鷹の餌にしてくれる」
後ろから信長の声、最後列に居るのかもしれない。――やるなら今だ!
一層速度をあげて駆け軍馬との距離を稼ぎ、くるりと身を翻す。携えたゆうしゃのつるぎ(仮)を正眼に構えて。
「あまねく勇者たちの魂よ」
タビタビの周りに光が集う、かつて勇者と崇められた人々の魂を喚ぶ。金色の光がタビタビの中に吸い込まれ、タビタビ自身が金の光を帯びた。金に輝くタビタビの姿は小さな猫ではない、ひとまわり、ふたまわり大きく見える。勇者の目指す世界、平和を護る決意を受け入れたその姿は、夢にこがれる小さな少年騎士を大英雄に変える。
「剣に宿りて――ボクに、力を!!」
天に叫ぶ! 受け継いだ力を剣に注ぎ込みながら剣を振り上げる。タビタビの持つ剣がみるみるうちに伸び膨れ上がる。
「いっけえええええええ!!!!」
――ズシンンッ、地響きが鳴る。
「なんだこの光は! どうなっているんだ!?」
「ひっ、上だ! 上から! 剣……うわあああ!!!」
悲鳴があがり、血飛沫が飛び散る。騎馬兵が、軍馬が、廊下が割れる。大剣は一列に並んでいた全てを真っ二つに両断した。大群を相手どるには自由に動き回れる平地では適わない。自身を弱い存在だと印象付け細い廊下に誘い込み、一列に並べ一網打尽にする、これがタビタビの作戦だった。
「ちっこい猫だって、騎馬にも甲斐の虎にも負けないよ! それと魔王にも!」
啖呵を切るタビタビの前に全てが地に伏し沈黙した。
「何をはしゃいでおる、畜生めが」
「――っ」
低く冷たく響き渡る信長の声。振り下ろした剣がぐっと持ち上げられる。廊下の先、決戦の間のなか、携えた刀の鎬で剣を受け止めていた。巨大な剣の一撃を受け耐え凌いだのだ。息をのみ、剣を握る手に力を篭め直すタビタビ。
「そこで待っておれ、儂自ら引導を渡してくれるわ」
にいと笑い、大剣を受けたまま駆ける信長。擦れあう刃が火花をあげる。軍馬の屍を越え、タビタビに迫る。大剣を跳ね上げ、斬りかかろうとしたその時、突如、ダビダビに背を向け駆けた。
「ナメないで」
信長の刃に拳がめり込んでいた。背後から輝が殴りかかったのだ。全身からばりばりと紫電を放電させている。
「不意をついたつもりか、小娘の癖に猪口才な」
「この程度じゃ効かないだろうね、解ってる。尤も、この程度で済ませてあげる気もないけど。刀よりこっちの方が得意だから」
言葉より先に拳が出る。その拳を刃が受け流す。懲りずに殴る、殴る、殴りつける。刀に阻まれ届かない、だが、先程までのキレがない。タビタビの重い一撃が信長の四肢に損傷を与えていた。左拳を力任せに振りぬけば刃が流れる。身を翻し踏み込み拳の裏で更に追い込み払い落とす。今なら通る!
黒羽織が翻る。再び身を翻し、加速して左回し蹴りを首に喰らわせる。
「その程度か。笑わせる、ああ、やはり小娘だ」
動かない。全く動じず余裕の笑みを浮かべる信長。当然、このままでは済まさない。
「ここはアタシの国だ」
更に一度身を翻し右回し蹴りを首に、同じ場所に喰らわせる。右足がめり込む。想定以上に重い。蹴りつけた足がめきめきと音を立てるが構わない。鎧なんて関係ない。食いしばった歯がギリリと鳴る。燃え上がる闘気に呼応して紫電が爆ぜ、一層激しくバリバリと音をあげる。――この一撃に全てをかける。
「守ってぇぇっ、みせるぅっ!!!」
渾身の力を込め力任せに足を振り抜く。先祖が、家族が居て、故郷がある、大好きなサムライエンパイア。アタシの大事な場所がある、壊させる訳にはいかない。守り抜く為に初めてグリモアを発動させ猟兵を導き戦場を駆け巡ったりもした。今、その総力を叩き込む。
「――っ、このっ、小娘ェェェェェッ!!!!!」
吹き飛ぶ。憤怒の声を残し、信長の巨躯が紫電を纏い廊下の奥に吹き飛んでいく。タビタビの頭上を越え更にその奥へ消え、――衝突音。突き破る音が聞こえた。廊下の奥の壁にでも激突したのだろう。
「はあ……バアちゃん、あたしやったよ」
肩で息をしながら懐を撫でる。まだ祓いきれぬ闇を睨みつけながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
明石・真多子
【タコミイラ】
ついに追い詰めたよ大将首!ニンジャ世界…じゃなかったサムライ世界の平和のために、お命頂戴に参上!
なんかド派手にパワーアップしたみたいだけど、近付かなけれな問題ないでしょ!
『タコ墨』を水かきに溜めたら思いっきり投げて水圧カッター攻撃だ!…のはずなのに炎の刀で蒸発しちゃった!?
しょうがないから遠距離攻撃で牽制しながら隙を見て『タコの保護色能力』で[迷彩]して凌ごう!
どうやらクレオちゃんも有効打が出せなくて苦戦してるみたいだね。
なら合体攻撃いっちゃおう!
クレオちゃんの腕に掴まって【軟体忍法人間砲弾の術】を発動して[ジャンプ]!
推進力と重量で威力を上げて甲冑を打ち砕いちゃえ!
いっけぇ~!
クレオ・バトラー
【タコミイラ】
アイツと戦えばいいんだな真多子。
戦うことで平和とやらが来るのなら、私の力も喜んで貸そう。
見たことのない力を使うようだな。翼まで生えたか。
しかしそれくらいで私の射程距離から逃げられるとは思わないことだ。
『メルセゲルアーム』を伸ばして、逃げようとも[追跡]しながらその腸を抉ってやる!
っ…!暴風で腕が届かないか。流石に強い、推力が負けている。
ひとまず『アンクリフレクター』の[オーラ防御]で凌げるがこのままでは…。
その声真多子か?なるほど、ならば!
真多子ごと腕を再び伸ばし[串刺し]だ!
今度こそ捉えたぞ!最後のチャンスだ、【此岸と彼岸の境界】の出力は全力全開!真多子のみ入ることを許可する!
壁を突き破る信長。瓦礫の中から身を起こせば、
「あっ、ほんとだ。こっちに来たよ!」
待ち構えていたのは、明石・真多子(軟体魔忍マダコ・f00079)とクレオ・バトラー(Cleo type battler No.Ⅶ・f20973)だ。
「ついに追い詰めたよ大将首! ニンジャ世界……じゃなかったサムライ世界の平和のために、お命頂戴に参上!」
ビシっと指差し威風堂々と立ちふさがる。
「アイツと戦えばいいんだな真多子。
戦うことで平和とやらが来るのなら、私の力も喜んで貸そう」
「うん、頼んだよクレオちゃん」
アレが今回の標的か、静かに敵を確認するクレオ。相手にとって不足はない。
「畜生の次は、また小娘と……蛸か。サルが居れば褒美にくれてやるのだが食むか信玄公」
もの言いたげに唸り声をあげる信玄。鼻で笑う信長。
「ちょっとちょっと、軟体魔忍をナメないでよね! 食べ物じゃないんだから!」
ぷうと頬を膨らませる真多子。怒りで顔を真っ赤する姿は一層蛸のよう。
「餌にもならぬと言うなら、焼き捨ててくれよう」
小馬鹿にしたように笑む信長。再び刀に業火を宿せば、燃え上る刃から放たれる熱気が辺りを焼く。背に生やした樹木の翼を羽ばたかせ、吹き荒れる嵐を纏う。
「見たことのない力を使うようだな。翼まで生えたか」
信長の変化を見据えるクレオ。淡々と分析するように。新たなる肉体を作り出す過程で多数の戦術を叩き込まれた。幾ら考えを巡らせても思いあたるものはない。すべて初見だ、警戒すべき相手だ。
「なんかド派手にパワーアップしたみたいだけど、近付かなけれな問題ないでしょ! 来るよっ!」
2人同時に飛びのく。蛸足も使ったバク転でくるくる回りながら後方に下がり間合いを取り直す真多子。すぐさま『タコ墨』を水かきに溜めて、
「水圧カッター攻撃だ!」
投げる、投げる、投げる! 蛸足4本を全力で活用し間断なく投げまくる。みるみる間に黒の弾幕が張られる。
「ぬるいわ小娘」
裂ける。タコ墨が真っ二つに裂け信長が姿を現す。不敵に笑みを浮かべて。
「炎の刀で蒸発しちゃった!?」
水圧がかかった水がかすれば傷を残せるのだが、信長の刃は炎の刃だ。刀で斬られるだけではない、炎でタコ墨が蒸発してしまい役目を果たせない。次々と刀で斬り捨て一気に間合いをつめ迫る信長。
「掻っ捌いてくれる」
上段に振り上げられた刀、真多子に向け振り下ろされる。
「――、逃げたか」
刃が宙をきる。手応えは無い。真多子の姿が忽然と消えた。ぐるり、辺りを見渡せば、
「儂の背後を突いたとでも言うのか」
飛び退く信長。先ごろまで立っていた所にアヌビスガントレットの爪が突き刺さる。クレオだ。隙を突くべく様子を伺っていた。
「そう簡単に取らせてくれないか。だが、逃げても無駄だ」
爪が追う。爪は真っ直ぐ進むだけではない、逃げる信長、その先を読み執拗に追い続ける。
クレオの武器はアヌビスガントレットとメルセゲルアームだ。蛇腹になった腕、メルセゲルアームを伸縮させ、鋭い爪のついたガントレット、アヌビスガントレットで敵の腹を貫き内蔵を抜く。そう、内臓を抜く筈なのだが、
「バネか、面妖な動きをする。だが見切るに容易い」
羽ばたく。信長の背に生える樹木の翼が扇げば、荒れ狂う風が護るように吹き荒ぶ。
「っ……! 暴風で腕が届かないか。流石に強い、推力が負けている」
風の盾がアームを阻む。打ち込めど、打ち込めど信長に届く前に進路を曲げられてしまう。
「これで終わりか、小娘」
一息に間合いをつめる信長、炎の刃がクレオを襲う。籠手を翳して受ける。赤い水晶が光る、アンクリフレクターが発動した。オシリステープを消費することで強力なバリアを貼ることが出来る防具だ。バリアは信長の狂刃を受け止め火花を散らす。辛うじて凌いでいるが、
「このままでは……」
「あっぶなーい!」
安堵の息を漏らす真多子。咄嗟に蛸の能力を総動員して刃を回避していたのだ。蛸の柔軟性を使って刃を避けると同時に、体色を変え背景に溶け込み擬態しやり過ごした。
「今度はクレオちゃんが危ないね、助けにいかなきゃ!」
孤軍奮闘しているクレオだが、バリアは信長の狂刃を受け止め追い詰められている。
「もう一度、水圧カッター攻撃っ!」
横槍を入れる。アンクリフレクターを破り、今にも切り裂こうとしている信長にタコ墨が迫る。振り返りざまに一刀両断されるタコ墨。だがそれで良い、それだけの時間があれば。
「今度はこっちだ、受けるが良い」
クレオのアームが迫る。真多子が稼いでくれた一瞬で体制を建て直したのだ。再び貫かんと信長に迫る。その手は見切ったと言わんばかりに翼で風を起こしガントレットを弾き飛ばす信長。
間合いをとっては、姿を現しタコ墨を投げ、ひきつけては離れる。その合間を突いてメルセゲルアームが追う。2人の力を合わせれば辛うじて同等位に立ち回れる。だが、あくまで同等なのだ、戦局は動かない。
真多子の目線の先にはクレオの姿。お互い攻めあぐね決定打を欠いている。クレオの顔にも疲労の色が浮かびはじめる。このままじゃいけない。
「クレオちゃん、聞こえる?」
「その声真多子か?」
隣に気配が一つ。擬態したまま近づいてきたのだろう。
「合体攻撃いっちゃおう!」
「なるほど、ならば!」
顔を見合わせ頷くクレオと真多子。
「今更、何をすると言うのだ」
見守る体制の信長。ならば、好都合だ。クレオの腕、アヌビスガントレットに乗りメルセゲルアームと肩の付け根にある金の輪を掴む真多子。真多子の力も借りアームのバネを引き戻し限界まで縮める。まるで力を溜めるように。
「軟体忍法、人間砲弾の術!
速さは強さだっておじいちゃんも言ってたよ! 突撃――!」
発射!メルセゲルアームが一気に伸びる、圧縮されたバネが一気に開放される。相乗効果で更に推進力をあげ重力を利用し一層加速する。1人では敵わない。でも2人分の力だ、2人分の想いだ。互いに想い支えあう、熱い想いは無限の強さを生む。如何に硬い装甲でも、2人の前には無力だ。真多子をのせた爪は阻む風を貫き信長に届く。
「今度こそ捉えたぞ!」
「――っ、離せ!」
「このバリアは許可なきものを全て拒む。そして私はお前を許さない、内から爆ぜて消え失せろ!」
漸く捕らえた、これが最後のチャンスだ。
迫るアームを刀で受け流そうとする信長を刃ごと爪が貫く。口から血吐きながらもがく信長。出力は全力全開! 幾らもがこうとも逃がさない! 全ての力を込めてバリアを発動させ封じ込める。
「いっけぇ~~~っ! お命頂戴だよ、大将首っっ!!!」
爪の到達直後、信長と真多子の体が交錯した。衝撃派が吹き荒れる。一呼吸。ぐらり、揺らいだのは信長だ。胴を境に真っ二つに折れ、上半身が滑り落ちた。もう一呼吸。声をあげ忘れていた地が鳴く、音速の衝突に耐え切れず、床がひび割れ陥没した。爆炎が信長を飲み込み、あたり一面を火の海に変える。
●終幕
「再びこの身を手に入れようとも、斯様に消え行く定めとは。所詮、此の世は夢幻の如く――」
炎に呑まれ消えゆく。夢、幻が如く欠片も残さず。
大成功
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