エンパイアウォー㉗~皆で、太平の世を拝むために
●グリモアベース
「サムライエンパイアでの皆さんのご活躍は聞いてますよ、素晴らしい戦果ですね!」
エンパイアウォーの戦争マップにバツ印を書き加えながら、コンラッド・アレグリアス(ケットシーの精霊術士・f01460)は満面の笑みを浮かべていた。
そうしてたくさんのばってんが刻まれたマップを集う猟兵たちへどどんと見せて、既に聞き及んでいるであろう戦果を称えている。
「皆さんの活躍によって、進軍を続けている幕府軍は十万人誰一人欠けることなく、島原にある『魔空安土城』に辿り着けそうです。 ……家光様は彼等に死と必勝を命じたと仰っていましたが、出来ることなら死の命令は果たさせずに事を終えたい……ですよね?」
同意を求めるような問いの後、各々の反応をじっくりと観察した上で、コンラッドはいそいそと地図を仕舞う。
そして自らの腰に提げた剣を引き抜くと、その切っ先を天高く掲げてみせた。
「そうとくれば、皆で大特訓なのです!」
関ヶ原の戦いにおいて勝利を納めた幕府軍は、太平の世で失われていた侍の自信と力を取り戻しつつある。
その自信と力を確固たるものに仕上げるために、幕府軍の大特訓が催されることとなったのだとコンラッドは説明した。
コンラッドもその特訓に手を貸すつもりのようで、集う猟兵たちにその概要を語っていく。
「僕たちが特訓するのは、俗に言う『農民上がり』と呼ばれる人たちです。 その名称通り、日々の大変な農作業によって基礎体力はしっかりしている若者衆なのですが、武器の扱い方といった技術面や、戦局を見極める力に不安がちらほらといった感じです」
元々は農民な彼等は志願する形で幕府軍に加わっている……使いなれたくわやすきを、直槍と呼ばれるまっすぐシンプルな槍に持ち変えての参戦なんだとか。
そして『御国のために命だって燃やして見せる!』と息巻く若者が多いそうだが……コンラッドは苦笑いを浮かべていた。
「今回、皆さんには主に危険を察知する技術や逃走手段、そして戦場での状況把握手段や知力について特訓してもらいたいなーって思ってます」
腕立てや腹筋などといった基礎体力向上系の特訓は、恐らく大丈夫だろうとコンラッドは見ているが……力自慢さんを見つけて体力勝負をしてみてもいいかもしれない、と付け加えた。
むしろそうすることでテンションが跳ね上がる人々も多いだろう、とした上で……コンラッドは心の内を明かした。
「僕個人的には特に、逃げ延びる力を鍛えてほしいなとは思ってます。 せっかくここまで大きな犠牲なく進んできたのですから……最後まで欠ける人は少ない方がいいですよね?
桜の花は自然に散るから美しいのであって、枝ごとぼっきり折れた桜なんて……僕は見たくないですから」
どうやら幕府軍の望みとコンラッドの望みには、食い違いが発生しているようだったが……それはあまり引き摺らずに参りましょうと、コンラッドは転移の門を開いて見せる。
特訓内容はどうあれ、僕は隅っこで応援してますからと、これまた笑顔で猟兵たちを送り出していった。
四季臣
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
三十一度目まして、四季臣です。
この度はここまでOPを閲覧していただき、ありがとうございます。
⑥関ヶ原のファランクスをスピード突破したことによるボーナスステージだそうです、幕府軍の特訓にお付き合いをお願いします。
今回、皆さんが特訓していただく幕府軍の人々は……。
・農民上がりの体力自慢な若者衆。
・武器は直槍と呼ばれるまっすぐな槍を扱う。
・力自慢が多く、腕立てや腹筋などが好き(POW)。
……とのことです、お国のためならと命を燃やす覚悟は出来ているそうですが……。
幕府軍のテンションをよそに、コンラッドからは……。
・危険を察知する技術や、強敵からの逃走方法など(SPD)。
・戦場の状況を把握して、自分がやるべきことを見失わない知力(WIZ)。
……を特訓してほしいとお願いされています。
特に『逃げ延びる術』を教えてほしいと言っていますが、どのような特訓を催されるかは皆さんに一任しています。
幕府軍のテンションやコンラッドの望みが異なる懸念はありますが、基本的に幕府軍は猟兵の皆さんに対し非常に友好的です。
余程のことがなければ皆さんに反旗を翻すことなどないので、やってみたい特訓を思いっきり仕掛けて頂ければなと思います。
それでは、よろしくお願いします。
第1章 冒険
『幕府軍の大特訓』
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POW : 腕立てや腹筋、走り込みなど、基礎体力を向上させる訓練を施します
SPD : 危険を察知する技術や、強敵からの逃走方法などを伝授します
WIZ : 戦場の状況を把握して、自分がやるべきことを見失わない知力を養います
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
巫代居・門
アンディf17527、と同行
「エンパイアウォー②~士屍累々、いざ勝負」で連携
前線から離れようと支援にきた。
ああ、あんたか。
続く戦場に疲れながら。
元気に見えるか?
そうだった、あんまり話を聞かないんだったな、あんた。
つっても、指導とか出来ねえしな、とアンディの話を聞く。
布の矢、じゃねえのか。
……それさ……死なねえ?と材料鉄の矢をみる。兵士も青ざめてんだろ。
素で怖いな、あんた。
いや、突っ込み待ちか、それとも、兵士に本気で逃げさせようとしてるのか。
まあ出来そうな事をする。
UC禍羽牙で【呪詛】【目立たない】【情報収集】【暗殺】の技術で追尾の補助でもするか。
なんでだ、絶対にやんねえ。
アドリブ歓迎
アンディ・ワークス
門くん(f20963)と
おや奇遇だね。水晶力士の戦場ぶり。調子はどうだい?
うん、元気そうで何よりだ。
UCで追尾する矢を作り出そう。追尾性能は高くしない。まあ、分かるよね兵士くん達。一刻程逃げてくれたまえ。捕まったらもう一刻追加だ。
【早業】【アート】で何本でも作れる。安心していいよ、兵士くん達。腕っぷしで迎撃するも、避けるも、私を止めるも好きにすればいい。残弾には困らないからね。
何、鉄糸で編めば矢もこの通り。
…確かにそうだね。当たれば鉄糸で拘束するようにしよう。 布【属性攻撃】
うん、手伝ってくれると助かるよ。背が低いと視野も取りづらくてね。
そうだ、加わってみるかい?
アドリブご自由に
●ふとした再会
「世界巻き込んだ戦争とか、荷が勝ちすぎんだろ……」
幕府軍を襲っていた様々な驚異は全て取り除かれた折を見て、小休止を兼ねて前線から離れた巫代居・門(ふとっちょ根暗マンサー・f20963)は、ふと一人ごちる。
手近な大岩に寄りかかり、ため息と吐きながら目を泳がせると、その先には今まさに大特訓を始めようとする若者たちがいた。
グリモア猟兵からは特訓に付き合ってほしいと言われてはいたが……じりじりとした熱気の中で門はがりがりと頭を掻く。
「つっても俺、指導とか出来ねぇしな……」
「おや、奇遇だね」
「ん?」
さてどうするか、と思案し始めた門へひょこりと手を振る小さな影……その容姿には覚えがあった。
大きなアンティーク鞄を持ち歩く紳士的なテレビウム、アンディ・ワークス(フォア・マザー・グース・f17527)その人であった。
かつて同じ戦場に立ったっきりの二人ではあったが、門を見たアンディはその液晶画面に笑顔を表示させてとことことやってくる。
「水晶力士の戦場ぶりかな? 調子はどうだい?」
「ああ、あんたか……元気に見えるか?」
「うん、元気そうで何よりだ」
「そうだった、あんまり話を聞かないんだったな、あんた」
そして門はまだ知らない……この“あんまり話を聞かない”テレビウム紳士は、後にちょっとした(?)騒動を引き起こすことを。
●矢も降れ魚も降れ
「さあ、これは君の為に『繕った』お話だ。 まあ、分かるよね兵士くんたち」
白い箱に笑顔を張り付けたような存在が、基礎訓練に励む若者衆へそう声を掛ける。
それだけならばまだ珍妙な姿の猟兵がやってきただけだったろうに、その白箱の向こう側には無数の矢が浮かんでいた。
そのどれもが矢先を若者たちへ向けている……この時点で嫌な予感がしていた者も多いだろう。
そして、その予感は悲しくも的中する。
「一刻程、逃げてくれたまえ。 捕まったらもう一刻追加だ」
「いやいやいやいやちょっと待て」
今まさに無数の矢を若者たちへ放とうとしていたアンディに、ギリギリの所で門がストップをかけた。
先の共闘時も布を取り扱って戦っていたアンディだから、てっきり布型の矢でも向けているのかと思えば……その材質はしっかりと鉄糸だったのだ。
「……それさ……死なねえ? ほら、兵士たちも青ざめてんだろ」
「そうなのかい? 命を燃やす覚悟はあると聞いていたから、こう……刺激的な特訓もいいかと思ったんだよ。 腕っぷしで迎撃するも避けるも、私を止めるも好きにすればいい、とね」
「素で怖いな、あんた。 いや、突っ込み待ちか、それとも兵士に本気で逃げさせようとしてるのか? んなことしてたら戦う前に兵士が減るぞ」
「……確かにそうだね、当たれば鉄糸で拘束するようにしよう」
と、いった具合に矢を捕縛仕様へと作り直す白箱紳士の後ろ姿を見て、門は深くため息を吐く……続く戦場の最中の支援活動のつもりが、さらに疲れることになりそうだ。
そうして作り直された矢は「当たっても鉄糸まみれになるだけで死なない」と説明が足された後に、矢の雨を避けきる抜き打ちの特訓が開始される。
降り注ぐ矢を避けたり盾で防いだりする兵士の足元……その影より飛び立つのは影を食らう呪いの魚群だ。
この魚群影……禍羽牙を操るのは門である、結果として門は出来そうなことをするとして、アンディの行う特訓の補助をすることとなったのだ。
「手伝ってくれてありがたいよ。 背が低いと視野も取りづらくてね」
「別に、大したことじゃねえよ」
卑屈な性格ゆえに誉められ慣れていない門は、照れ臭そうにそっぽを向いた。
「そうだ、門くんもこの特訓に加わってみるかい?」
「なんでだ、絶対にやんねえ」
門の足元の影に潜む魚群が、じぃっとアンディの様子を伺っている……それに気づいているか否か、アンディは構わずに次々と生成した矢を放っていくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
サンディ・ノックス
状況が把握できないと自分ができることもわからないよと声掛け、状況把握について講義
これは彼らの望みとは違うから
コミュ力も活かし若者を常に観察、反感の空気が強まったら彼らの長所を褒めて話を聞かせる
敵の移動を見て自分はついてこれるか
敵の攻撃がどこかに当たると衝撃も見てわかる形になるけどそれに耐えられるか
見てわからないこともある、それはつまり手におえない相手
それでも構うものか!と考えそう
己が犠牲になって状況が変わるならと一定の理解を示してから
命がけで足止めし逃がした人があっさり追いつかれて殺されるってよくある話と伝える
話しながら解放・星夜を発動、水晶で若者の背をトントン
実例を見せて実感してもらえたらな
バロン・ゴウト
ボク達が兵隊さんの先生をするのにゃ?これは責任重大だにゃ!
【SPD】
強い敵相手にはいったん逃げることも大事なのにゃ!
(マントを敵に見立てた木人形の顔に投げつけながら)
例えばこんな風に敵の視界を塞いで、その隙にすぐ近くの林や藪の中に逃げ込んで、【目立たない】ようにその場を離れながら味方と合流するのにゃ。
手強そうな敵相手に逃げたりするのは悪い事じゃないのにゃ。
戦いであればまず自分が生き延びて、敵を倒す手段を整えて勝てばいいのにゃ。
ボクみたいな小さな体でも、そうやって工夫してるから戦えてるのにゃ!
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
●生き延びて、立ち回れ
「ボク達が兵隊さんの先生をするのにゃ? これは責任重大だにゃ!」
人にものを教えるどころか、勉学に励んでいるお年頃であるバロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)は、今回のポジションの重要さを改めて認識していた。
ここに集う兵隊たちに授ける知恵や経験によって、彼等の生死を左右するかもしれない大特訓……その指導役を買って出ると言うのなら、その使命はとても重要なものとなる。
自らが通う学舎にもいるであろう多くの先生の姿言動を思い浮かべながら、バロンはひらりとマントを翻しては講義の準備を始めた。
そしてその様を微笑ましげに見つつ、こちらも支度を始めているのはサンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)、中性的で穏やかな佇まいが印象的な青年である。
そろそろ予定していた時刻だとサンディが目を泳がせた頃、バロンと共に声かけをして回った甲斐があって、講義に参加するという若者たちか集まってきた。
そんな若者たち一人一人をサンディは注意深く観察する……声かけを行ったとき、誰も彼もが体力作りの基礎訓練に励んでいて、講義を終えたらすぐまた基礎訓練に戻ろうとしている様子も把握できた。
ようは分かりやすく反抗する者はいなかったが、内心は乗り気ではない……といったものが多いと言うのがサンディの見立てだ。
若者一同がサンディとバロン、二人の講師に一同平伏し、体制を直したところで講義が始まる。
小さなバロンが高台にしゅたっと飛び乗り、身に付けていたマントをぱっと外した。
「強い相手には、いったん逃げることも大事なのにゃ!」
バロンは傍らに立て掛けられていた木の人形、その頭に向けて赤いマントをぽいっと放り投げる。
鮮やかな赤にすっぽり覆われた人形を確認した後、バロンは素早く高台から降りて身を隠すように、体を小さくした。
「例えばこんな風に敵の視界を塞いで、その隙にすぐ近くの林や藪に逃げ込んで、目立たないようにその場から離れて味方と合流するのにゃ」
「お言葉ですが猟兵殿、その視界を塞いでいる間というのは、我々が攻撃する絶好の好機なのでは?」
身を低くした体制のままサンディの元へ戻っていくバロンへ、一人の若者が意見を述べる。
そしてそういった意見を予期していたのはサンディである、若者の意見にも一利あるとした上で、木人形へ剣を向けた。
「もちろん、視界を失った敵一人をその場で倒すのは容易かもしれないね。 けれどそれは“本当に敵が一人である場合”だね、もしも他にも敵が潜んでいた場合……攻撃に向かった人が、潜んでいた敵に返り討ちにされることもあるよ」
それに、視界を封じたからとてその敵が完全に無力とは限らない……槍で深々と突いても、それすら耐えてしまう敵も存在する。
そもそもその一撃で痛手を与えられたかもわからない敵さえいる……それはつまり手に負えない敵と言うことだ、ともした。
そんな敵がいると言うのか……サンディの言葉に若者たちは改めて自分達が戦おうとしている敵の恐ろしさと言うのを噛み締めつつある最中、再び高台に登ったバロンが金色のレイピアを掲げて見せる。
「手強そうな敵相手に逃げたりするのは悪いことじゃないのにゃ! まずは自分が生き延びて、それから敵を倒す手段を整えて勝てばいいのにゃ。 ボクみたいな小さな体でも、そうやって工夫してるから戦えてるのにゃ!」
「ただ、それでもどうしても敵わない敵もいるんだ。 もしそういった敵と遭遇してしまった場合は……生き延びることを優先してほしいな。 己が犠牲になって状況が変わるなら、と思う気持ちも分かるけど、命がけで足止めして逃がした人があっさり追い付かれて殺されるって、よくある話だよ。 ……例えば、この子たち、どう見える?」
バロンから説明を引き取ったサンディがいたずらっぽく指を立てて若者たちへ問う。
すると、ある一人の若者が突然振り返り……そして悲鳴を上げたのだ。
振り返った若者の視線の先には、水晶の青に輝く竜が大口を開けて迫り来ていた。
背を小突かれたらしい若者はそのまま尻餅をついてしまったが……別の若者がすぐさま座布団を握り、竜の顔にそれを思いっきり投げつける。
ちょうど、竜の視界が座布団によって塞がれた隙に……尻餅をついた男を助け起こした若者の冷静な対応力へ、バロンはぽふぽふと拍手を送っていた。
「……実感してもらえたらな、とは思ったけど……驚かせすぎたかな?」
ユーベルコード……解放、星夜によって呼び起こした水晶竜を下がらせながら、サンディはぺこりと詫びるように頭を下げた。
成功
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ファン・ティンタン
【SPD】真心に嘘をつかず
コンラッドの言う事、分かる
本来、彼らはこんな戦場に出てくる必要なんてないのだから
平和ボケした士族の体たらくが招いた状況が悩ましけれど
本題は別だからね、今は置いておこうか
若者衆に護身の術を教える前に
威力を極小に絞った【嘘針誕懐】で彼らの真心を解く
あなた達は、この戦に納得して来ているかな?
真に自らの意で護国を思えばそれもよし
不本意があってもそれは当然の権利
真意は、彼らの胸の内にだけ、分かるはず
重要なのは、様々な前提の上で、なお従軍を決心出来ているか、その一点だけだよ
自分と向き合い、迷い(雑念)を払うことで、戦場での勘が冴える
それが出来たら、私の【戦闘知識】、伝えていこうか
●心に問う
「コンラッドの言う事、分かる」
――桜の花は自然に散るから美しい、枝ごと折れた桜など見たくない。
そう口にしていたグリモア猟兵に理解を示し頷いたのは、ファン・ティンタン(天津華・f07547)だった。
本来ならば――オブリビオンなどが存在しなければ、彼等はこんな戦場に出てくる必要などなかったのだろう。
それが如何なる状況かによって招かれたか……治世の世に浸かりきった士族が招いた状況を悩ましく感じるが、今はそれは置いておくこととした。
さて、とファンもまた若者衆に向けて護身の術を教える、その前に。
ユーベルコード……嘘針誕懐、嘘を糧に急成長を遂げるという魔力針、その
威力を最小に押さえ込んだモノを手に取り……その先端を若者たちへ指したのだ。
ちくり、と微かな違和感に首を傾ける者たちへ、ファンは問う。
「あなた達は、この戦に納得して来ているかな?」
「…………納得、とは?」
唐突な問いに戸惑う若者の一人が、その真意を計るべく質問を返す。
確かにこの聞き方では言葉が足りなかったか、ファンは続けて若者たちへ呼び掛ける。
「真に自らの意思で御国を思えばそれもよし、不本意があってもそれは当然の権利。 その真意、その答えはあなた達の胸の内にだけある。 重要なのは、様々な前提の上で、なお従軍を決心出来ているか、その一点だけだよ」
御国の為に命だって燃やして見せると言っていたらしい彼等へ、ファンは問うた。
その言葉に嘘偽りなく、その心と向き合い、迷いなく戦場に立てるのかと。
やがて若者たちはファンへ、己の言葉でその答えを示す……刺した針はその言葉の“真実”を受けて次々と消されていく。
「俺たちは御国のため戦う覚悟は出来ている、だがそれは死ににいくことを是としているわけじゃない。 皆で、太平の世を拝めるように……その一心で全力を尽くして戦うのみだ」
「……そう、わかった」
荒療治になるかと思われたが……すべての針が解除されたことを確認したファンは、改めて白の一振りに手を掛ける。
その迷いなき心は、戦場での勘を冴え渡らせるだろう……ファンはそう信じて、自らの持つ戦闘知識を紐解いていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
アリス・セカンドカラー
……時間がないから、念動力、精神攻撃、ハッキングで脳に直接やり方をインストールしましょ、大丈夫大丈夫SFならよくあること。まぁ、ぶっつけ本番だと失敗確実だから慣らしの訓練は必要だけど、時間短縮はできるはず。
インストールするのは自己催眠による火事場のクソ力の出し方よ。スポーツでいうフロー体験ってやつね。時間感覚が引き延ばされる程の深い集中に潜ることでパフォーマンスの向上をはかるのよ。
ああ、そうそう、うまく出来た子にはご褒美よ♡と誘惑してやる気アップを狙いましょ。
アリソン・リンドベルイ
【POW】
く、訓練ですね! 頑張りますっ!
私、猟兵に……えっと、この世界だと『天下自在符』持ちになったばっかりで…。だから、一緒に頑張りましょう!
体力のありそうな若者衆の皆さんに混じって、同じ訓練メニューに立ち向かいます…! きっと先輩の猟兵さんが考えた訓練ですし、たぶん一生懸命に訓練すれば強くなれますっ…。 私は体力に自信は無いですが、皆さんを応援したり、励ましたりしますっ。今はまだ、私には強い敵と戦う力は無いけれど……。……きっと、いつか。皆さんと一緒に、戦えたら。ううん、みんなを守れるように。強くならなくちゃ、ですっ。 ファイトですよっ! えいえいおーっ! 声を出して、明るく行きます!
●その訓練、ベリーハードにつき
所変わって、基礎訓練場。
こちらでは現在、二人の猟兵によって上空から降り注ぐ無数の追尾矢から逃げ切り、更に地中から迫る影の魚群からも逃げ切れ、という非常に高難易度な訓練が実施されていた。
無数の矢も影の魚群も一応は兵士が死んでしまわないようにと威力を抑えられているが、端から見れば死と隣り合わせの過酷な訓練メニューであり、既に脱落の象徴であろう鉄糸まみれの者が半数以上となっていた。
そんな脱落者の側に、二人の少女が降り立つ……訓練という言葉にはなかなか不釣り合いな彼女たちも、また猟兵であった。
「ふぅーん。 ぶっつけ本番だと失敗確定だから慣らしの特訓が必要だと思ってたから、丁度いいわね」
「あ、あわわわ……」
兵士に絡まった鉄糸を切りながら、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)が愛らしく微笑む。
対し、壮絶な訓練風景を目の当たりにして、アリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)は目をぱちくりとさせ……けれどすぐさま気合いを入れ直すように、ぐっと両手を握りしめた。
「きっと先輩の猟兵さんが考えた訓練ですし、たぶん一生懸命に訓練すれば強くなれますっ!」
と、ぼんやり風なツインテール少女が訓練場へ向かっていく最中、無邪気さと妖艶さを併せ持つ先輩猟兵は、解放した兵士に“なにか”を施していた。
●それは無我の境地とも言う
「おやおやおや」
「……なんだありゃ」
それは当然ながら、矢を降らせたり魚群を操ったりしているアンディと門の目にも映った光景であった。
自分達が行っている特訓の最中、幕府軍に混じって猟兵が混じっている……ガーデニアの花が咲いた大きなツインテールを揺らしながら、アリソンは矢と魚の群れの中を走って来ていた。
猟兵の力は開花したばかり、その在り方や生き方はまだ身に付いていないというアリソンにとって、それは荷が勝ちすぎている訓練にも思われたが……それでもアリソンは懸命に、共に特訓を受ける兵士たちを励ましながら……迫り来る矢と魚群を、周囲に散らした鈴蘭の花びらで凌ぎながら立ち回っていた。
「今はまだ、私には強い敵と戦う力はないけれど……きっと、いつか。 皆さんた一緒に……ううん、みんなを守れるように、強くならなくちゃ、ですっ!」
――ファイトですよっ! えいえいおーっ!
アリソンの鼓舞する声に答えるかのように、訓練に戻ってきた兵士たちも大きく声をあげる――それだけなら、まだ普通の活気ある訓練風景だったのだが。
問題は、その戻ってきた兵士たちだ。
彼らは先程とはまるで別人のような所作で矢や魚群を凌いでいるのだが、その誰もがみな燃えている。 比喩ではなく、物理的に燃えている。
しかもその炎はたちまち他の兵士たちに連鎖し燃え広がり、燃え上がる誰も彼もが本能的な叫びを上げては復帰していくのだ。
あまりの光景に呆然としている門と、興味深くじぃっと眺めているアンディの側に、エプロンドレスのフリルを揺らしながら、アリスが合流。
一体全体どういうことだと頭を抱えそうな門へ、アリスは人差し指を立てながらにっこりと答えた。
「……時間がないから、脳に直接やり方をインストールしたの。 自己催眠による火事場のクソ力の出し方よ。 スポーツでいうフロー体験ってやつね」
その人自身の心理的エネルギーを100%、今取り組んでいる対象へと注いでいる状態……フロー体験は俗に無我の境地とも呼ばれている。
尋常ならざる集中力、最大限の力の発揮を可能とするこの状態には「入り方」があり……アリスはその入り方を直接兵士たちの脳へ叩き込んだのだ。
結果として兵士たちは、自身の100%の力をもって門とアンディの施す訓練に立ち向かい、そしてそれを攻略するまでに至っている。
この所作を実際に戦場でも引き出せたなら、それだけで彼らの戦闘力はもちろん生存率も高まることだろう。
……で、なぜ燃えているのかと言えば。
「うまく出来た子には、ご褒美よ♡」
妖艶な少女が微笑むと、兵士たちは熱狂とも取れる勢いで拳を突き上げる。
誘惑か、身を焦がすほどの情欲の炎がそうさせるのか……文字通り火がついた兵士たちは格段と強くなったのは間違いなかった。
そして燃え盛る炎の中で、今一度アリソンの明るい声が響き渡る。
「声を出して、元気を出して! 皆さんっ、一緒に頑張りましょう!」
「「おおーっ!!」」
大成功
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