エンパイアウォー㉛~引き上げよう宝船
●海の藻屑になる前に
「みんな集まってくれて有難う。戦争もいい感じに進んでて幕府軍が島原に到着する日も近づいてきているね」
柔らかな表情のヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が集まった猟兵達にそう話しかける。
「さて、今日お願いしたいのは戦いじゃない、サルベージだ」
シャチのキマイラ曰く、先日撃破された魔軍将『日野富子』が巨万の富を費やして建造した巨大鉄甲船――全長200メートル、全幅30メートルのそれは瀬戸内海の海底に沈んだままあるらしい。
「時間のできるであろう戦後に引き揚げるって手もあるんだけれど、時間をかけると船自体が海の藻屑になっちゃいそうなんだよね。だからその前に何とか引き揚げて再利用できればいいんだけど……でかいし重いし、行軍中の幕府軍の力を借りるのも本末転倒になっちゃうだろうからね。ユーベルコードの使える皆でなら、少人数でも巨大鉄甲船を引き揚げる事もできるだろう」
引き揚げた船の修復や使い道は幕府が協議決定する事になるだろう。予想できる範囲では商船や軍船としての再利用や外洋船に改修して冒険の旅に出る何かが考えられるね、とヴィクトルは言う。
「巨大鉄甲船はとても大きいから、今回手伝ってくれる皆で一隻引き揚げるのが限界だろう。全部をいっぺんに、ではなく砕けた破片の中で価値のありそうなのを探して引き揚げたりより引き揚げやすい計画を立てたりとか……やり方は任せるから思い思いの方法で協力するなり工夫するなりして欲しい」
それじゃよろしくね、と鍵型のグリモアに意識を集中し、ヴィクトルは転送を開始した。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
サルベージはロマン。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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このシナリオで引き揚げられる船は一隻です。
また、引き揚げに成功した船の数で使い道は決定されるようです。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 冒険
『巨大鉄甲船引き上げ作戦』
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POW : 重量のある船体部分などを中心に、力任せで引き上げる
SPD : 海底を探索し、飛び散った価値のある破片などを探し出して引き上げる
WIZ : 海底の状況や海流なども計算し、最適な引き上げ計画を立てて実行する
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アーク・ハインド
「……アーク・ハインド海賊団、今回の任務はあの船の死を略奪することっす。」
「正直、戦争には興味がなかった、敵の舟にも興味はなかった、でも……これは、見捨てられない。自分と同じ末路をたどる船は少なければ少ないほどいい。」
UCで海賊団を召喚後細かい指示こそ船長に任せますが放置すると引き上げに影響を及ぼすような場所を技能:見切りを用いて捜索、属性攻撃:氷で穴をふさぐ、ヒビを埋めるなどと応急処置したり船員に木材を海底や近場から回収させて応急処置をしていきます。
「あんたはまだ海を走れるっす、絶対走れるようにしてやるっす。だから、絶対あきらめるんじゃないっすよ…!」
●水底の鉄鯨
戦の熱気は潮風にすっかり流された瀬戸内海。
けれどもその水底には、巨大鉄甲船たちが沈められたままに残っている。
その海域に小舟が一つ、浮かんでいた。海賊風のヤドリガミの少女、アーク・ハインド(沈没船・f03433)は水面の向こうの巨大船を静かに見つめ、
「……アーク・ハインド海賊団、今回の任務はあの船の死を略奪することっす」
呟き、ユーベルコードを発動すれば、彼女の想い描く船員達が召喚される。彼らは、ガレオン船のヤドリガミである彼女に乗船し、共に海に散った仲間達。
正直な所、戦争にも、敵の舟にもアークは興味を抱いていなかった。
(「でも……これは、見捨てられない。自分と同じ末路をたどる船は少なければ少ないほどいい」)
本来の略奪ではないが、こういう事もたまにはいいだろう。アークは船長に指示を任せると海へと飛び込み、深く潜る。
水底に沈む鉄甲船はとても巨大で一人で、持ち上げる事は難しいと判断していた彼女は、引き揚げの為の応急処置を優先する。どの部分がロープをかけられる程に頑丈か、逆に引き揚げの圧力で崩れてしまいそうか。その部位を見切り、七つ道具や氷の魔法を使い、耐えられるよう補修していく。船員達も付近の海底に散らばっていた部品を回収し、船長の指示に従って補修している。
呼吸が苦しい、一度水面へと上がり息継ぎをする。長時間置くと海の藻屑になってしまうと聞いているはいえまだまだ時間はある。
(「あんたはまだ海を走れるっす、絶対走れるようにしてやるっす。だから」)
――絶対あきらめるんじゃない。そう強く願うアークは、再び海の底へと潜っていった。
大成功
🔵🔵🔵
中村・裕美
裕美は泳げないので水底へと潜っていくのは無理。だが、そこは電脳魔術を使って船上で作業
「……データが集まれば……あとはそれを改竄するだけ」
仲間の集めたデータや翼型センサーで【情報収集】した海流などのデータを元に【現象改竄】で潮や砂地に【ハッキング】を仕掛け、潮流・流砂的なものを起こして、船を埋まっている砂地ごと浅瀬の方まで運び出す。変に別属性付けない分、制御は楽になるはず。
あとは逐次収集したデータを元に塩の動きに修正の必要を感じたら【早業】でデータの再入力
「……船が動かないなら……周りごと動かせばいいのよ」
平然とした顔で言ってかもしれないが魔力リソース的なものごっそり消費して死にそうかもしれない
幻影の船員に混じり、小舟の上から一人の少女が水底を観察していた。彼女、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)は泳げない。だから潜って直接何かの作業を行うことはできないし、最初からその辺りは諦めていた。
しかし、彼女には電脳魔術がある。
「……データが集まれば……あとはそれを改竄するだけ」
竜の翼と角を模したセンサーで情報を集め、海流や海底の地形データを収集、
「……アクセス開始。……パラメータ変更」
呟いた裕美がユーベルコードを発動、すると潮の流れが変わり、更に海底の砂地が流砂のようにずれていく。砂地に沈み込んでいた鉄甲船の全体像が顕わになり、そして徐々に浅瀬へと、陸地へとその巨体を滑らせる。
彼女のその電脳魔術は空間へのハッキング、本来起こるはずのない潮流や流砂を無理矢理に引き起こしたのだ。
鉄甲船がぐらつき倒れそうになれば即座にデータを再入力、潮の流れと流砂の速度を操作して倒れないよう調整する裕美の顔は平然としたもの。
「……船が動かないなら……周りごと動かせばいいのよ」
こともなげに呟くが、これだけ巨大な鉄甲船周囲全ての潮と砂の流れの情報を読み切り、操作するのは魔力的にも精神的にも負荷はかなりかかっている。
よくよく他の猟兵が見れば彼女の顔色が少し悪くなっている事に気付いた者もいたかもしれない。
(「……完全に陸地に上げるのは難しそうね……」)
最小限の動作でエナジードリンクを一本飲み干し、そんな事を考えながら裕美はゆらゆら揺れる小舟の上で、再び電脳魔術の制御に意識を集中させた。
大成功
🔵🔵🔵
渡塚・源誠
アドリブ連携歓迎
戦争中ではあるけれど、とても面白そうな試みだね
引き揚げた船の数によってはこの世界の海の外に出られることも考えてるとか……旅人としては協力しないわけにはいかないよね!
まずは瀬戸内海域に関しての【情報収集】、そこから海域のどの辺りに船が眠っているのか、【失せ物探し】をする要領でアタリをつけようかな
旅で海を渡ることもあって【世界知識】として海流関係の知識も持ち合わせてるからね
引き揚げには水圧対策用に強度を上げた魔糸を使うよ
【釣り】をするイメージで、海底の方で触れたものを縛って引き揚げてみようかな
大きめの物には、糸に金属札を括り付けて、札の魔力で対象の重さを軽くして引き揚げやすくするよ
チトセ・シロガネ
海の中に沈んだ船をサルベージ、なーんてロマンチックな計画ネ。
その計画、一枚噛ませてヨ!(指パッチンしながらUC発動)
ボクの体じゃ、あのデカブツはちょっと厳しいネ。
だからこのUC【白鶴号】に乗ってサルベージするネ。
白鶴、ウェイクアップ!サルベージ開始ネ!
ボクは主に力仕事を担当するヨ。
『アシュラユニット』のクローアームで協力するヨ。
【第六感】で運んでも安全なものを選定。
【グラップル】で掴み、【念動力】で船の一部と自分を【空中浮遊】で浮かせて重量を相殺しつつ【怪力】で陸地まで【運搬】するよ。
ユーが修理されたら海の向こうに何があるカ。
とてもワクワクするネ!
「海の中に沈んだ船をサルベージ、なーんてロマンチックな計画ネ」
「戦争中ではあるけれど、とても面白そうな試みだよね」
全身に未来の技術の粋を纏うチトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)と、どこかのんびりとした旅人のような居住まいの渡塚・源誠(風の吹くまま世界を渡れ・f04955)が話す。
鉄甲船の沈んだ場所については源誠が既にアタリをつけ、その真上にまで移動してきている。見れば先客が既に引き揚げの為の作業を始めている所だ。
「引き揚げた船の数によってはこの世界の海の外に出られることも考えてるとか……旅人としては協力しないわけにはいかないよね!」
「そうネ! 賞金稼ぎとしても一枚噛ませて貰うヨ!」
そう言うや否や、とぽんと海に飛び込み水面に顔を出したチトセが指パッチンすると、彼女の二倍の大きさの鳥人型ロボットが召喚される。
彼女の体の大きさでは、というより巨大鉄甲船相手では大体の猟兵がちょっと厳しい。だからこその彼女のユーベルコード、白鶴号。
「白鶴、ウェイクアップ! サルベージ開始ネ!」
チトセが海へと潜れば、白鶴と呼ばれたロボットが主と同じ動作で追いかけるように潜っていった。
潜りだしたチトセを見、源誠は海流を見る。彼の知識とは少し違う、というか人為的に操作されているように思えるこの海流は、恐らくは他の猟兵によるものなのだろう。それでも目標が同じであるならば、特に問題はない。
先行した一人と一機を追うように旅人の青年は海へと潜った。
二人の猟兵が見た海底の鉄甲船は、鯨のように巨大だった。所々に損傷が見られるも、海底で誰かに修復されたかのように資材で補強されている。これならば多少荒っぽく動かしても全損等という悲劇はないだろう。
まずチトセはその鉄甲船周囲をぐるっと泳ぐ。そして船を観察すれば、何となく怪しく感じる箇所をいくつか発見。近づいてみれば損傷の大きい、補修しきれなかった箇所。
元より、この鉄甲船を丸ごと一気に地上へ引き上げるのは白鶴でも無理な話だとチトセは考えていた。潮流や流砂で動いているが浅瀬までが限界だろう。
どこかで分割して、いくつかの部品にしてから引き揚げようと、チトセは腰に接続されたアシュラユニットの有線式クローアームで鉄甲船の部品の一つを掴む、それに連動する形で白鶴が鉄甲船の折れて倒れたマストを掴んだ。
そしてその部品を念動力で力場を形成、持ち前の力と合わせて力を加えれば何とか持ち上がる。
(「……これを舟に乗せるのは難しいネ」)
流石にこのサイズの部品を舟に持ち上げると重さのバランスで沈んでしまうかもしれない、そう判断したチトセは白鶴と共に陸地に向かいすいすいと泳ぎ始めた。
一方で、源誠は周囲の海底を見ていた。鉄甲船から分離したかなり大きな部品がぽつぽつと転がっている。まずはそちらを回収しようと、源誠は一つの部品へと水を蹴り泳いでいく。軽く持ち上げようとするが、見た目以上に重い。水面まで運べるとしてもそこから引き揚げるには難儀しそうだと、懐から鋼糸と金属札を取り出し鋼糸を部品に巻き付け、そして糸に金属札を括り付ける。
そして彼は海上の小舟へと浮上、そして舟の上から鋼糸を手繰り寄せる。金属札に込められた魔力により重量が多少減じた部品、それを源誠は釣りの要領で舟の上に引き揚げたのだ。
彼が陸地の方を振り返れば、大柄なロボット、そしてチトセが海岸に部品を持ち上げている所だった。
それが視認できる位に陸地が近づいていた。何回かに分ける必要はあるだろうが、あの海岸へと引き揚げきるのもそう遠い事ではないだろう、そう源誠は思案しながら再び海底へと潜っていく。
そしてそれを数度繰り返したのち、小舟一杯の部品を海岸へ置いた源誠、そして鉄甲船の航行に影響なく分割できる範囲の部品を海岸へと引き揚げたチトセは鉄甲船本体の引き揚げに挑む。特に頑丈そうな部分数か所にに括り付けた鋼糸の束、それを一気に引き揚げようというのだ。
船体に張り付けられた魔力札で重さは幾分軽くなっているが、鉄甲船、そしてその内部に溜まった水の重量は相当厳しい。焦らずゆっくり、水を抜きながら引き揚げる。
せーの! の掛け声でチトセと白鶴、源誠が力を込める。念動力と怪力、そして潮流の後押しもあり、ついに鉄甲船は久しぶりの大気をその鉄の全身に触れさせた。
この鉄甲船、そしてその部品がどう使われるかは分からない。けれど、海底で海の藻屑になるよりはきっと役立てる事はできる。
その鉄の鯨を眺め、一仕事終えた猟兵達は笑顔で帰還した。
大成功
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