エンパイアウォー㉛~水底からの呼び声~
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たたと駆けてくる足音がした。
「みんなの、サムライエンパイアでの活躍のことをたくさん聞いたよ!」
お疲れさまとあいさつもそこそこに、弦月・宵(マヨイゴ・f05409)は話し始める。
「日野富子っておねーさんオブリビオンが、巨万の私財で造った巨大鉄甲船があったでしょう?
あれをね、引き揚げて使えないかなって話が出てるんだ」
猟兵の攻撃により一度は沈んだ船だが、費やされた造船技術も材力も、この世界では他に類を見ないくらいの艦隊だった。
引き上げた船は幕府への寄贈品となり、修理や使い道などはその隻数に応じて協議されるという。必ずやサムライエンパイア発展に貢献することだろう。でなければ海の藻屑と消えゆくだけだ。
だがそれよりも、宵には気になることがあるらしい。
「オレは、もしかしたら外洋に出られるかも! ……なんてさ」
海に閉ざされた国の外を、詳しく知る者はいない。
商船となるか軍船となるか、それはまだ分からないが、もしも外洋船に改修して冒険の旅に出ることができたなら……。
大変な時だとも分かってるけど、引き揚げるなら今しかない。好奇心と、不安にやや揺れる瞳を真直ぐに向けて、頭を下げた。
「オレは沈んでる船の近くに送ることしかできなくて、方法はお任せになる。でも船が傷んでしまう前に、よかったら力を貸してください」
大筋には、己のユーベルコードをどのように活用するか効率の鍵となるだろう。
主力は船の引き揚げだが、改定を探索することでも有力な物が見つかりそうだし、周囲の状況から計画の手引きをすることも必要だ。
「危険はないみたいだけど、気をつけてね。いってらっしゃい!」
髪の合間に角が覗く。宵は両手の中に初めて己のグリモアを浮かべた。
サヤエンドウ
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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サヤエンドウです。
お目にとめて頂きありがとうございます。
公開直後から受付開始。(~システム上の終了まで)
●概要
⑩村上怨霊水軍、短期制圧後のボーナスシナリオとなります。
海底に沈んだ巨大鉄甲船を引き揚げてください。
ある程度の道具の持ち込み、使用は可能です。
足場は問題ないものとお考え下さい。
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微力ながら、精一杯努めさせて頂きます。
取り掛かりやすい内容のプレイングから順次執筆を行います。
※執筆は、プレイングの先着順とは限りません。
※内容を100%含むリプレイとは限りません。
※手探り中であり、これまでや今後の文章傾向を保障しません。
※単騎の描写をやや、得意とします。
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諸々の傾向に関してはマスターページをご参照ください。
※緊急のお知らせを記載する場合もあります。
・アドリブ(A)・絡み(K)はNGの場合のみ。
【A×、K×、AK×】【絡みNG】など、ご記入ください。
・お相手がいらっしゃる場合。
【相手のお名前(呼称や愛称)と、ID】または、
【グループ名(【】付きだとより確実です)】を必ず入れてください。
迷子防止にご協力お願いいたします。
皆様の冒険譚をより引き立てられるように頑張ります。
よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『巨大鉄甲船引き上げ作戦』
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POW : 重量のある船体部分などを中心に、力任せで引き上げる
SPD : 海底を探索し、飛び散った価値のある破片などを探し出して引き上げる
WIZ : 海底の状況や海流なども計算し、最適な引き上げ計画を立てて実行する
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ユキ・スノーバー
大冒険出来るの、ドキドキわくわくだよねっ!ロマンと戦争後の希望に向けて頑張るぞーっ(えいえいおーっ!)
しろくまの行進(ダイビング仕様)でしろくま達を呼んで、先ずは巨大鉄甲船をぐるりと囲う様に皆を配置して
暗いだろうから、明かりは皆ベルトで固定型の水中ライトを使用(手元がちゃんと空く感じっ)
手分けして情報を仕入れて、船内の物品を効率良くリレーみたいに運び出すよーっ♪
しろくまチーム全員で引き揚げれそうな大物が有る場合は、網を対象にぐるりと包む様にして引っかけてから
水中だと音に頼るのが厳しいから、ぼくの顔画面表示+手持ちライトを振ってタイミングを合わせるようにして、よいしょー!って引き上げ作業するねっ
レイブル・クライツァ
期待に胸を膨らませて、こうして送り出してくれた声に応えたい所ね?
全長200m、全幅30mだと1隻を形状維持させて上げるのは理論上無理
クレーンですら複数必要になる訳で…
船として活用する形を支援するなら、組み立て易い様に分割する形で分解
目星を、目立つ色の縄で一定の間隔を保ちつつ取り付けて目安に
変に曲がったりしていないかは、一旦距離を置いて遠巻きに全体を見て確認して慎重に作業をするわよ。
ある程度の大きさを簡単に持ち上げる工夫ともなると
水脈のある透水層まで掘り抜けば、水圧で下から持ち上げる力をある程度かけれるかしら?
地質観察と、現状の周辺の海流の確認をしてから彷徨の螺旋で護人を呼び出して掘らせるわね。
嘉三津・茘繼
うんうん、解るー。
折角大きなお舟があるんだし
あったらさ、使いたくなるよねー。
将来的には美味しい海の食べ物ザックザクとかさ?
僕は水泳で海へ入って
船の引き揚げを手伝おう
満ち潮の時に浮力を上手に利用しながら
ある程度岸へ寄せてから
丸太とかを噛ませて
タールの手を沢山伸ばしてさ
【喰い】でもって怪力で押すよー、引くよー。
一人じゃ難しい時は
他の人達と協力して一緒に押せば
事故り難いじゃない?
だからすぐ助けてって言っちゃう
せっかく海に浸かったし
時間が余るようなら丸太の回収がてら
海底を失せ物探ししてみようかな
探す時は第六感を使ってみる
で、何か見つけて一人では持って帰れない時は
やっぱり助けてーって言っちゃうかな
レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
巨大船の引き揚げ作業かにゃあ…30代目様の力【ガイアキャット】ならいけるかにゃ?。
「地形の影響を無効化」する子猫に変身し、無効化により水中呼吸等を得て海底作業に適応するにゃね。
そして波や砂に向けて肉球をぱしゃりと叩いて、水や砂を素材に配下子猫達を錬成。
立場的に上に立つリーダー効果で動き易くなる様に戦闘力を高めつつ、配下子猫達と連携しつつ、皆の探索や海底作業をサポートするにゃあ。
数は力になりそうかにゃ?配下子猫達をたくさん増やして、配下子猫達による組体操で、底から船を引き上げたり、海上の足場を作ることもいけそうにゃね。
シホ・エーデルワイス
宵の記念すべき初依頼でお願いと言われたら頑張っちゃいます♪
とはいえ…
私のUCや技能で使えるものはあるかしら…
(トランクの中を確認しバレンタインで撮った写真を見て閃きます)
【覚聖】とリュートの<楽器演奏>で海豚や海亀
等の海洋生物を呼び<コミュ力、動物と話す>で協力を要請
具体的には沈没船に縄や鎖を巻き付けるのを手伝ってもらい
あと背中に乗せてもらって海中を<水泳、視力、暗視、第六感、情報収集>
で探索し
鉄の破片や食料等の資材を見つけたら回収し【救園】へ格納
お礼は怪我等があれば<医術>や【祝音】での治療や
天下自在符の権力で調達した餌はどうかしら?
外洋ね…この大海原の果てに何があるのか見てみたくはあります
塩崎・曲人
成程、サルベージ
リサイクル精神は大事だなぁオイ
環境に優しいのは良いこった
「一つ問題が在るとすれば、普通サルベージってのは数人ぽっちで挑む事業じゃねぇ事だけだな」
まぁ、猟兵は常人とは呼べんがね
さて、流石に海中の船を直接どうこうできる手札はねぇなオレ
だが確か、サルベージでは海流が作業を阻む大きな要素と聞いた覚えがあるな
「じゃあそっちをどうにかして、他の奴が作業し易くしますかね」
【最後の手札】で属性魔法を使用する
氷属性の魔法で沈没船の周りの水を凍らせ…あ、ダメだ
普通にやると氷が海に流れてくだけだわ
「じゃあアレだ、気合で海底から水面まで一気に凍結させるしかねぇな!根性ォー!」
全力出すんで後は他に任す!
クリストフ・ポー
富子はどうあれ
価値のあるものは好きさ
折角残ったのだから使えるだけ使ったらいい
海図やら何やら情報収集で引掻き集めて
海底環境や海流の流れ、満ち潮に引き潮
世界知識と各種のデータを基に
最適な引き上げ計画の手伝いをしよう
また、第六感と失せ物探しを使ってダウジングを行い
反応があったポイントに印をつけた海図を
海底探索の実行者に資料として提供しておく
眉唾と思うかもしれないけど
是もある程度実証&実施されてる技法なのさ
船の引き上げ時は
僕もアンジェリカを操るワイヤーを使って参加する
寄せる浪のタイミングを見切って
皆とタイミング、力を合せてね
上った船は武器改造と人形師としての工学知識で見て
修復が必要ならアイデア出すよ
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新米グリモア猟兵の大雑把な依頼にも関わらず、名乗りを上げた恐れ知らずの猟兵が7名にもなった。
「大冒険出来るの、ドキドキわくわくだよねっ!」
ロマンと戦争後の希望に向けて頑張るぞーっ! えいえいおーっ! とアイスピックを天に掲げるユキ・スノーバー(しろくま・f06201)。
小さなしろくまは可愛らしくも頼もしく、ええと頷くレイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)と、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)。
「期待に胸を膨らませて、こうして送り出してくれた声にも応えたい所ね?」
「記念すべき初依頼でお願いと言われたら頑張っちゃいます♪」
二人は出発前に、彼女がやっぱり行きたかったと零すのを聞いたとか。
ここは瀬戸内海の一画。播磨灘の海の上。
『だいたいこの辺』という曖昧なデータを元に、海図やらなにやらからの情報収集の末、天下自在符で借り受けた小舟で漕ぎ出した地点だ。
まずは情報を、と望んだ者は既に水に入り、その姿を一度確認している。
「富子どうあれ価値のあるものは好きさ。折角残ったのだから使えるだけ使ったらいい」
クリストフ・ポー(美食家・f02167)は更なるデータ解析の為に、海図と地形とを見比べながら言う。
うんうん解るー。折角大きなお船があるんだし。と軽い口調で答た嘉三津・茘繼(悪食・f14236)が、タール状の体をうねらせた。
「あったらさ、使いたくなるよねー。将来的には美味しい海の食べ物ザックザクとかさ?」
海の幸に反応を示したのは美食家だけではなかった。レフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)が髪を揺らして振り仰ぐ。
「にゃ、煮干しにする小魚もたくさん捕れるのにゃ?! でも、巨大船の引き揚げ作業かにゃあ……」
30代目様の力ならいけるかにゃ? などと考える側ら、塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)もまた、小舟の縁に足をかけ海底の船に思いを巡らせていた。
成程、サルベージ。リサイクル精神は大事だなぁオイ。環境に優しいのは良いこった。……だがこの依頼、生易しくない問題がある。
「一つ問題が在るとすれば、普通サルベージってのは数人ぽっちで挑む事業じゃね事だけだな」
今、頼みの人員はこれだけ。まあ、猟兵が常人とは呼べんが、実際にはどうするかね。
眉根を寄せる曲人に、クリストフは余裕の表情を見せる。
「ふふ。それっぽっちでも事業が成り立つように、僕は最適な引き上げ計画の手伝いをしよう」
「全長200m、全幅30m。海流で流されたのか、横倒しね。船として今後使用するにしても、ある程度分解した方がいいのではないかしら」
滴る水滴をタオルで拭いつつ、レイブルが確認した船の状態を伝える。
この大きさの船は、1隻の形状を維持したまま引き上げるのは理論上無理だ。解体ですら本来なら爆発物を用いて行われるが、組み立てを考慮して水中で作業するくらいなら、猟兵には容易すく行えるだろう。
「レフティも見てきたにゃ。壊れてるところは少なくてそのままの感じにゃあ。武装は外れてたり、側面に穴はあったりにゃけど船底はキレイにゃ」
「私も、損傷が少ないように思いました。力を合わせることで、なんとか引き揚げることが出来ないでしょうか」
リュートを手にしたシホが加わり、
「大きい物でも、ぼく運べるよ!」
「力仕事は僕かなー。でも助けてほしいなー」
口々に言うユキと茘繼。曲人が唸る。
「海中の船を直接どうこうできる手段はねぇなオレ。だがサルベージでは海流が作業を阻む要素だとかって。そっちをどうにかして、他の奴が作業しやすくしますかね」
「海流? それなら、水脈のある透水層まで海底を掘り抜いて、水圧で下から持ち上げる力を稼ぐこともできるかしら?」
レイブルは言う。透水層とは海底の更に下、岩盤間にある水を通しやすい地層のことだ。理論上、水の中に噴水ができる。
「流石、街角情報交換所の団長とメンバーってところかな。目の付け所が同じだね? そして、僕が手にしたるは海底環境や海流の流れ、満ち潮に引き潮なんかの世界知識と各種のデータなのだよ!」
「……つまり?」
クリストフが胸を張り、結論を聞いた茘繼にはダウジング結果の印が入った海図が渡された。
「これはー?」
「探してみて。眉唾じゃなくて、是もある程度実証&実施されてる技法なのさ」
ブラックタールが海に飛び込む。
「解体はしないということですね」
改めて聞いたシホにクリストフは頷く。
「うん。でもできればもっと正確なデータがほしい。あと持ち上げた後どうやって運ぶか」
「レフティは海上に足場を作れるにゃ。浮かべて引っ張るほうが楽かにゃあ?」「海中の情報収集なら任せてください。手伝ってもらうことができますから」
「お船さんの救助活動だね! 軽くなるように物を運び出して、船内の水が抜けるように鉄板剥がしとく!」
それぞれ、やることは決まった。
「後で塞げるようにお願いだよ。目指すは姫路港!」
決行は、潮の流れが味方をしてくれるタイミングだ。
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シホの奏でるリュートに乗って、【覚聖】覚醒せしアセビの聖痕が輝きを帯びる。
持参したトランクにはバレンタインで撮った写真が入っていて、何か良い手はないかと考えていた時、そこに映るペンギンや歪なカメを見て思いついた。
演奏に引き付けられて海面に顔を覗かせたイルカや海カメに微笑みかける。
「もう一度私を背中に乗せてもらえますか? 沈んだ船を退ける為に協力してください」
快く承諾した住人達と共に、シホは必要な情報を集める。その側ら、鉄の破片を浚っては【救園】へと格納する。
やがてそれが一息つく頃、ねだるように袖を引く彼らへとお礼の食糧を渡して鼻頭を撫でた。
「ありがとう。浮上させるときの為に縄を巻いたら、終わりですから」
海に住む彼らは、どこまでの海を知っているのだろう。大海原の先に何があるのか、見てみたいとシホは思うのだ。
ユキの率いるしろくまの行進は、たとえ海の中でも健在だ。
ダイビングスーツに身を包み、大きなお顔を覆うほどのゴーグルをつけて巨大な鉄鋼船をぐるりと囲う。暗い水の中、船内へと入る為に各々が水中ライトをベルトに固定して、準備は万端。
櫂を差し込む穴から中を覗きこんで、運び出せそうなものがあればみんなでリレーする。大物には網をかけて、地引網の如く。
合図を出すのはもちろんユキ。いつもは表情を映し出している顔画面の色をペカペカと点滅させて、手に持ったライトをめいいっぱい左右に振って……。
「タイミング合わせてー。よいしょー! よいしょー!!」
足ひれを巧みに動かして泳ぐ様はまるで人魚、だったかはさておき。
あらかた物のなくなった船の底板を、同じ用にチームプレイで外しにかかる。
「ゆっくり丁寧にが大事なんだよ、子猫さん達に負けないでやろ~!」
どこかほのぼのとした号令がかかる。
レフティは海を自在に泳ぐ子猫になる。水中で呼吸し、地上を走るのと変わらない速さで。
私のガイアキャット。呪いを受け入れた子達。
レフティが水を掻き、肉球が触れた水と海底の砂を素とし、彼の意のままに眷属となる。数は力とばかり増える子猫たちの上に君臨し、現場を指揮するリーダーとしての素質と意識を高めていく。
「組体操で足場を作るのはあとにゃあ、船を浮かべるまでは海底で作業のサポートをするのにゃ。しろくまさん達に負けるなにゃ~!」
どこか愛らしい号令がかかる。
隊列を組んだ半透明の子猫たちは、あちらこちらと他の猟兵のところへと向かう。ある部隊は甲板から砲台を運び、ある部隊は船体に縄やワイヤーをかけて船体を起こす。
そこへ、茘繼が現れた。
「あ、いたいた。助けて-」
「どうしたにゃ?」
「探し物が見つかってー、丸太……じゃない。折れたマストがあった」
茘繼が見つけたのはそれだけではなかった。その途中で、沈没の際に投げ出されたと思われる砲弾や積み荷が散乱していたらしい。
「嘉三津さん、レフティさんそろそろ本体を引き上げるようです」
伝達を終えたシホと準備を終えたユキも合流し、一旦船の浮上を優先することにする。
シホやクリストフから得た情報、そして実際に地質観察を行ったレイブルは、慎重に周囲の海流の確認を済ませて彷徨の螺旋を解き放つ。
呼び出されたのは水の底。二人の護人が顔を見合わせたのはほんの一瞬で、すぐに作業へと取り掛かる。その後の影響も考慮して、掘削の規模はかなり抑えたものにしてある。しかし罅割れた岩盤を突き上げて出た海底の湧水は確かに、船の船首を持ち上げた。
それだけでは、一隻まるまるの船を持ち上げるだけの浮力を得ることは出来なかったものの、それは想定内。
揚げて――。
レイブル自身は目星を。合図に決めた縄を引く。先にかけておいた縄は目立つ色の目印に。それらを一定の間隔に保ちつつ、船体を起こし、まっすぐのまま浮上するよう子猫部隊へと調整を頼む。それを加勢するユキのしろくま部隊。
合図を受けた曲人が最後の手札(マジックユーザー)を切る!
「アレだ、気合いで海底から水面まで一気に凍結させるしかねぇな!」
根性ォ―――――!!!!
氷属性の魔法は、浮かびかけていた船首を押し上げて広がり、一気に船尾までの一帯を凍らせた。
その勢いのまま伸びあがり、柱となって海底から湖面に一柱を築き上げる。
平均水深が約40m、という事実を知る者はこの場にごく僅かだろうが、まさに『まぁ、猟兵は常人とは呼べんがね』ということである。
いろいろ考えてみた結果、沈没船の周りの水を凍らせただけでは浮かばないと彼は結論を出し、ここは自分がやるべき! とのヤンキーの男気を見せる瞬間だったのだ。
すかさず茘繼がタールの腕を伸ばす、伸ばす、伸ばす……。
それも、沢山。
絡みつくように船を支えた腕、それを支える喰い(イーティング)。
「面白い人だねー。頑張ってー」
「おう、意地だ! ……ってこれ、港までじゃね?」
船に浸水していた水が抜けきるまで待てば、船の浮力はそれなりに安定する。が、航海ができるわけはない。
「もちろん港までに届けるまでだよ。大丈夫、僕もアンジェリカのワイヤーを使って参加するから。追い波もバッチリ」
クリストフの激励が入る。
「だー、オレ。全力出したんで後は他に任す!」
「えー、一人より協力した方が事故り難いじゃない?」
潮に乗っており、浮かんでいるだけの船を引くだけならできなくもないような気はしつつも、念の為にと茘繼は言う。
「ぼくもみんなで押すよー!」
ユキの声は明るい。
「足場は任せてにゃ!」
レフティの声は凛々しい。
「港までは、最短の潮の流れを教えてくれるそうです」
シホの声が風に乗って……、
「まだ残してきた物があるから、もう一往復まであるわね」
護人と並び、レイブルが告げた。
大成功
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