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エンパイアウォー㉙~かわいいわがこをあらたなぬしに

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●『偽神降臨の邪法』を砕くために
「……ぁ……ぐぁ……っ!!」
 グリモアベースの片隅で眠っていた、グリモア猟兵館野・敬輔が、突然身を捩り呻き出す。傍らに浮く丸盾のグリモアは、異様な光を帯びていた。
「てんせい……じゃほう……あかごに……かみのちから…………あああっ!!」
 己の悲鳴と共に汗びっしょりで飛び起きる敬輔に、猟兵たちが心配そうに駆け寄る。
「……くそっ。安倍晴明、とんでもない爆弾を残しやがって……」
 吐き捨てるように呟いた後、心配そうに覗きこむ猟兵の存在にようやく気付く敬輔。
「悪い……取り乱した。安倍晴明が遺したとんでもない置き土産の存在を夢に見て……ちょっと話を聞いてくれるか」
 猟兵等が頷くと、敬輔は乱れた息を整えるように深呼吸を数回繰り返し、皆に向き合う。

「まずは皆の協力で陰陽師『安倍晴明』を討てたことに礼を言わせてくれ」
 一礼した後、続ける敬輔。しかしその表情は濃い疲労に覆われ、目の下には濃い隈ができたまま。
「奥羽地方の『水晶屍人』の掃討もほぼ終了しているが、実は少し前に、奥羽地方で安倍晴明の拠点と思われる研究施設が発見された、との連絡を受けている」
 研究施設は既に放棄されて久しかったが、掃討戦を行っていた武士から『晴明の研究に重要な役割を持つ怪異(オブリビオン)が匿われていた可能性がある』との報告が上がったそうだ。
「その後、この施設から逃走したオブリビオンに『偽神降臨の邪法』が施されている事が判明した」
『偽神降臨の邪法』とは「人為的にオブリビオン・フォーミュラを産みだそう」という、安倍晴明の恐るべき実験であると、敬輔は語る。その方法は『有力なオブリビオンの胎内に、自身も含む魔軍将の力やコルテスが持ち込んだ神の力を宿らせ、その胎内で神を育て出産させる』というものだ。
「転生には10月10日の日数がかかる……ヒトが子を産むまでに必要な期間と同じだな。つまり、このまま放っておいても今回の戦争には影響は与えないが、戦後のサムライエンパイアの危機に繋がる可能性は充分ある」
 仮に邪法を施された子がオブリビオン・フォーミュラにならずとも、徳川の世を転覆させかねないような強大な力を秘めたオブリビオンになる可能性は、十分すぎる程存在するのだ。
「先程、僕が夢で断片的に視たのは『神の子を宿した女性オブリビオンがある廃村に潜伏している』風景だった。このオブリビオンが邪法を施されている可能性は極めて高い」
 そこで、と敬輔はひとつ息をつき、極力平坦な声音を保ち告げる。
「オブリビオン・フォーミュラになる可能性がある子を宿す……このオブリビオンの討伐を頼む」
 頭を下げながらそう告げる敬輔の表情と双眸は、なぜか苦悩に満ちていた。

「子を宿しているとはいえ、彼女がオブリビオンである事には変わりない。だが……」
 何か言いたげに口ごもり、しかし首を振る敬輔。
「……いや、何でもない。討伐、頼むな」
 丸盾のグリモアを展開し転送ゲートを開いた敬輔に送り出され、猟兵らは廃村へと赴いた。

●可愛い我が子を新たな主に
「私の可愛い赤ちゃん」
 大きく膨らんだお腹を愛おしそうに撫でる、女性オブリビオン――『三姫』織姫。

 彼女が今望むのは、お腹の中にいる我が子を無事に産み、育てること。
 そのために、研究施設を出た後、人の気配のないこの廃村に潜伏し、臨月を迎えるのを待っていた。

 突然、廃屋の外に人の気配が満ちる。

 この廃屋に向けられているのは、敵意、憎悪、嫌悪、憐憫……様々な感情。
 おそらく外にいるのは、この子を、そして自分を討伐しに来た……猟兵か。

「この赤ちゃんは絶対に守り抜くわ」
 ――晴明様が私に託した、私たちの新たな神となるべき子なのだから。

 織姫はゆっくりと立ち上がり、猟兵らを出迎えるために待ち受ける。
 我が子のためになら……修羅になる覚悟を秘めて。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 安倍晴明の遺産、「偽神降臨の邪法」を施された女性オブリビオンが奥羽地方に潜伏していることが判明しました。
 猟兵の皆様には、何らかの対処をお願い致します。

 猟兵の皆様の選択次第で、後味の悪い結果になるかもしれません。
 参加の際は、よくご検討をお願い致します。

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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

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 概要・詳細はオープニングの通り。
 プレイングの受付はオープニング公開後から行います。

 補足として。
「織姫」は猟兵と戦いながらも、子を守る為に隙あらば逃げ出そうと試みます。よって、逃げ出さないような方法を考えれば、それだけ有利に戦えます。
 戦場は廃屋の中になりますので、逃げ出さぬような方策を取るのはさほど難しくないでしょう。

●本シナリオクリア時のボーナス
 シナリオタイトルに「エンパイアウォー㉙」が含まれるシナリオを10本以上成功させた場合、『偽神降臨の邪法』を完全に阻止することができます。
 もちろん、本シナリオを成功で完結させた場合も、成功本数にカウントされます。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『三姫』織姫』

POW   :    【状態異常付与型UC】地上のミルキーウェイ
【絶望(回避成功率低下)の効果を与える光弾】が命中した対象に対し、高威力高命中の【流星の様な無数の光弾】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    【状態異常付与型UC】ウルトゥル・カデンス
自身の【中身に溜め込んでいた、膨大な人々の願望】を代償に、【召喚した、空を覆い尽くす様な巨大な鷲】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【絶望の効果を与える暴風と、その巨大な体躯】で戦う。
WIZ   :    【状態異常付与型UC】破れた短冊
【絶望の効果を与える無数の短冊を放つ事】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。

イラスト:もりのえるこ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鈴木・志乃
※人格名『昨夜』で参加
とても、志乃には見せられない
彼女が起きていたら泣きながら戦い続けたでしょうね
……戦争なんて虚しいだけ

私は神子の友、昨夜
この戦いに義なんてない
私のエゴで貴女を殺す

屋敷内外に足止めを食らわせるトラップを設置(罠使い)
他猟兵に情報共有
わざとそちらに追い込む
又光の鎖を念動力で操り足払いからの転倒を狙う
転べば早業ロープワークで縛り上げたい

オーラ防御常時発動
第六感で居所、攻撃を見切る
敵UCが来たら自UC発動
志乃の技だけど……力を貸してッ!!

祈り、破魔の全力魔法衝撃波を倒れた所にぶちかましなぎ払う
情け容赦なんてない
戦うって、そういうこと、だから……

もういや
命の奪い合いなんて



●義の無い戦いは空しいだけ
『織姫』がいると思しき廃屋の前に、サムライエンパイアの各所を積極的に転戦している鈴木・志乃(ブラック・f12101)の姿があった。
(「これから起こることは、とても志乃には見せられない」)
 今は憑依している女霊『昨夜』が志乃の身体を借りて動いている。志乃は過労で深い眠りについているはず。
(「彼女が起きていたら、泣きながら戦い続けたでしょうね」)
 ひとつ息をつき、『昨夜』は廃屋に足を踏み入れた。

 ――戦争なんて、虚しいだけ。

 志乃と『昨夜』は、エンパイアウォーを通じてたくさんの死を見てきた。
 その中には、助けられぬ命も、やむを得ず奪うしかなかった命もあった。

 ――もういや、命の奪い合いなんて。
 ――これ以上、見たくない

 それでも、これから『昨夜』が行うのは、命を奪うこと。
 それもひとりではなく「ふたりの」命を奪うことなのだ。

「あなたは……猟兵ね」
『昨夜』を一瞥する織姫の声は、覚悟あることを匂わせる、それ。
「私は神子の友、昨夜」
「へえ、神子の子が子供殺しに加担するの?」
 織姫の皮肉にも、『昨夜』は動じず、むしろ静かに。
「わかっている。この戦いに義なんてないことを」
「ないとわかっているなら、どうして?」
「貴女を見逃すわけにはいかないの」
 ――多くの命を踏み躙った晴明の遺産を抱える貴女を、ね。
 声に出さずそっと付け加えた後、静かに宣告する『昨夜』。
「私は私のエゴで貴女を殺す」
 あくまでも静かな『昨夜』に、大きく嘆息する織姫。
「それなら、私は赤ちゃんを護る為にあなたと戦うわ」

 ――覚悟を決めた者同士の対峙が、始まる。

 織姫に先んじて動いた『昨夜』が光の鎖を念動力で操り、織姫の足を掬おうとするも、織姫も宙を滑り執拗に居場所を変え、『昨夜』を攪乱。
 何度も何度も土間や板張りの床を薙ぐ光の鎖を、織姫は右へ左へ舞いながら避けていくが、土間に降りた瞬間突然足が何かで固められた。
(「罠!? いつの間に!?」)
『昨夜』が廃屋の内外に仕掛けた足止め用のトラップ、そのうちのひとつに追い込まれ引っかけられた織姫は、それでも絶望を与える無数の短冊を『昨夜』に浴びせかける。
「志乃の技だけど……力を貸してッ!!」
 短冊に覆われる直前、『昨夜』は全身を神光で覆い、短冊に籠められた絶望の感情を吸収し反転させることで完全に無効化。
 吸収した負の感情で戦闘力を増強し、生命力をも吸収する力を得た『昨夜』は、魔を砕く祈りを込めた衝撃波で織姫をなぎ払い、吹き飛ばす。
「ああっ!! お腹の子ども……大切な赤ちゃんに……!!」
 衝撃波がお腹を激しく打ち付け、中の子に影響がないかと錯乱する織姫。
「情け容赦なんて最初からない」
 切って捨てる『昨夜』だが、その胸中は極めて複雑だった。

 ――戦うって、そういうこと、だから……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

北条・優希斗
連携・声掛け・却下可
―そうか
その『覚悟』があるなら遠慮は要らないな
お前を斬ればお前とお前の嬰児の企みを削げる
…鬼? 畜生? ハイエナ?
今更だよ『織姫』様
(脳裏を過ぎるは蒼月に刻まれた闇に堕ちた娘の記憶
娘には双子がいたが、彼女達の成長を見守る娘の願いを砕いたのは俺であり『俺』だから)
その程度の罪を負う覚悟はとうの昔に出来ている
先制攻撃+見切り+ダッシュ+早業+地形の利用で速攻
蒼月、月下美人、鏡花水月、月桂樹にUC使用、更に二回攻撃+早業+薙ぎ払い+騙し討ち+傷口を抉る+串刺し+鎧砕きを加えて『織姫』へ
自身への攻撃は見切り+残像+オーラ防御で回避及び防御
「お前の覚悟はその程度か、『織姫』様?」



●罪を抱え、罪を抱く
「……そうか」
 家屋の外で他の猟兵とのやり取りを聞いていた北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は、ひとつ首肯する。
「その『覚悟』があれば、遠慮はいらないな」
 織姫の覚悟は確認した。ならば……

 ――俺にできることは、ここで仕留めるのみ。

「あなたも私を斬りにきたのね」
 家屋に足を踏み入れるなり、優希斗に投げかけられるは織姫の辛辣な声。しかし優希斗は頷き肯定するだけ。
「ああ。お前を斬れば、お前とお前の嬰児の企みを削げる」
「あなた……本気なの? それは鬼の所業よ?」
 声を震わせ情に訴えようとする織姫に、優希斗がかけるのは情の欠片もない言葉。
「鬼? 畜生? ハイエナ? ……今更だよ、『織姫』様」
「―――!!」
「その程度の罪を負う覚悟は、とうの昔に出来ている」

 言葉失う織姫を前に優希斗の脳裏に過るは、左手に持つ蒼月に刻まれた、ある娘の記憶。
 ――ある洞窟で闇に堕ちた娘の、記憶。

 彼女は子の成長を願っていた。
 目の前の織姫と同じように、ふたりの子の成長を願い続けていた。

(「だが、娘の願いを砕いたのは……俺だ」)
 ――いや、砕いたのは『俺』だったか?
(「どちらにせよ、あの時から涙は流れない」)
 ――数々の罪に塗れた俺に、泣く資格などないのだから。

 それは、「北条・優希斗」という『猟兵』が抱える罪の一端なのだろうか。
 ――そして、それを背負い、なお歩み続ける覚悟の表れなのだろうか。

「この子を守るためだったら、何でもするわ!!」
 織姫の悲鳴に近い声が、優希斗の意識を一気に現実に引き戻す。嫌な気配を察し優希斗が天井を見ると、天井を覆うほどの大きさの鷲が召喚されていた。それは羽ばたきひとつで優希斗に暴風を叩き付け、絶望で心を蝕もうとする。
(「くっ……この距離では!」)
 屋内故避ける場所もなく、屋外に逃げるのも間に合わない。優希斗はその場で両腕を交差し漆黒のオーラを纏って防ごうとするも、暴風がオーラを徐々に削り取る。
 このままでは暴風に巻き上げられ手酷い傷を負うと優希斗が覚悟した、その時。

 ――パンッ!!

 空気の塊が破裂するような大きな音と共に、暴風と鷲、そして漆黒のオーラの全てが消滅。
「な、何故!?」
「何が起きた?!」
 鷲の召喚主の織姫は状況を理解できず戸惑うが、優希斗の目にはオーラが消滅する寸前の出来事が焼き付いていた。

 ――削られし漆黒を一筋の蒼穹が覆い、暴風を打ち消していた。

 双方状況の理解が追いつかないが、織姫が動揺しているのであれば優希斗にとっては千載一遇のチャンス。ダッシュで織姫へ肉薄し、月下美人に籠められたオブリビオンの呪詛を、鏡花水月、月桂樹、そして手元の蒼月に宿らせる。
 呪詛を帯びた三の武器が鈍く妖しく輝き、月下美人の呪詛がさらに強まり己を蝕み始めた時、優希斗は目を閉じる。
「その罪は……全て、俺が背負うよ」
 目を見開き繰り出すは、怒涛の七十二連撃。

 ――【滅技・散華葬月斬】。

 月下美人が織姫の手にする笹と短冊を細切れに砕き、絶望を呪詛で侵蝕し。
 鏡花水月の呪詛に蝕まれくすんだ銀は、それでもなお美しい弧を描きながら織姫の衣服を斬り刻む。

「ああ……っ!!」
 織姫の声にならぬ悲鳴が上がるも、罪を背負う覚悟を決めた青年の連撃は止まらない。

 黒と銀の呪詛宿りし月桂樹が四肢に突き立ち、深く深く抉りゆく。
 そして最後に呪詛で濁った蒼月の斬撃が……悉く腹に吸い込まれた。

「お、鬼……ヒトの姿をした鬼よあなたは!!」
 斬り刻まれた腹の傷を眺め、喚く織姫。
「言ったはずだ、その程度の罪を負う覚悟はできている、と」
 滅技の代償で口端から血を流しながら、優希斗は改めて覚悟を口にし、織姫を絶望へと追い込んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルード・シリウス
オブリビオンでも、子を守る情とやらは有るのか
まぁ、今の俺にはそれがどういうものかは理解出来ないがな…

敵の攻撃と同時に暴食剣、呪詛剣構え【刻印解放・斬獲せし者】発動
致命傷となるもの以外は攻撃を受けようと構わず、寧ろ受けた攻撃を糧に自己強化しながら全力疾走で接近
この程度で絶望だと…?いいや違うな、俺が知ってる絶望は…こんなものじゃない

近づけたら二刀による連撃叩き込み、受けた傷は補食能力(吸血&生命力吸収)で回復
ついでに教えてやる…。俺が絶望を知った時、最初に抱いたのは憎悪と飢餓だ。俺から何もかもを奪った世界の総てに憎悪し、力を欲した時と同時に満たされぬ飢餓感に苛まれた
刮目しろ…これが本当の絶望だ



●真に絶望知りし者が、絶望を叩き込む
(「……オブリビオンでも、子を守る情とやらは有るのか」)
 まぁ、今の俺にはそれがどういうものかは理解できないがな……とひとつ息をつき、ルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)は家屋に足を踏み入れる。

「あああああ……また来た……」
 ルードの姿を認めた織姫の服は無残に斬り裂かれ、手にする笹もその葉は悉く斬り刻まれていた。
(「別の猟兵が遠慮せずに斬っていったようだな」)
 それ以上の事は知らぬと、ルードは改めて織姫を見つめるが、彼女は狂乱一歩手前の精神を胎内の赤子でかろうじて繋ぎ止めているかのように、頻りにお腹をさすっていた。
「あなたたち猟兵は、私達から希望すら奪うの?」
 織姫は喚きながらも赤子宿りし腹をさすっていない方の手で大量の短冊をルードに浴びせる。しかしルードは攻撃を受けようが構わない。【刻印解放・斬獲せし者】を発動しながら、全力疾走で突撃する。
(「その希望が、晴明に植え付けられたものである可能性はあるよな」)
 短冊がルードの腕や髪を斬り刻むが、致命傷以外は意図的に受けながらも疾走をやめない。
「お腹の中の希望を奪われたら、私には絶望しか残らないじゃない!!」
「この程度で絶望だと?」
 皮肉気に呟くルードは織姫の短冊の嵐を潜り抜け、暴食剣と呪詛剣でまずは二撃。
「いいな違うな、俺が知ってる絶望は……こんなものじゃない」
 さらに二撃。織姫が悲鳴をあげるも、ルードは手を緩めることなくさらに二撃。

 ついでに教えてやる、と前置きしてルードが語るのは……己の絶望のルーツ。

「俺が絶望を知った時、最初に抱いたのは憎悪と飢餓だ」
 ――己の出生故、世界から忌み嫌われ、挙句の果てに捨てられたことで、憎しみを抱いた。
「俺から何もかもを奪った世界の総てに憎悪し、力を欲したと同時に満たされぬ飢餓感に苛まれた」
 ――絶望を知った子が抱いたのは、飽くなき力への欲望と叶わぬ飢餓感の相反する感情。
「今の俺に在るのは、身を焦がす程の狂気と憎悪」
 ――己の魂に刻まれ、消されることのない負の感情が、今なおルードを駆り立てる。
「そして知るのは……ただ喰らい奪うという事だけだ」
 ――斬っても喰らっても一向に満たされぬ、永遠の飢餓の煉獄のようなものなのか。

 ルードは己の絶望を織姫に言葉で叩き込みながら、暴食剣と呪詛剣による連撃の手は決して緩めない。
 織姫が絶望を与えるためにばら撒く短冊はルードの力を増す糧にしかならず、連撃もさらにルードの力を高めるスパイスと化している。

「さあ、刮目しろ」
 充分な程力を蓄えたルードが、暴食剣と呪詛剣を構えるのを、織姫は大きく目を見開いて見つめるしかできない。

 ――これが本当の、絶望だ!!

 ルードは呪詛剣で織姫の動きを封じつつ暴食剣を織姫の腹に突き立て、中の赤子の生命力を喰らった。
「あああああーーーっ!! 赤ちゃんが、赤ちゃんが……!!」
 暴食剣に赤子の生命を吸い取られ、赤子のいのちの灯が消えゆくのを感じながら、織姫は無暗矢鱈に四肢をばたつかせ狂乱するだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

富波・壱子
戦闘用の冷徹な人格で参加
任務了解。標的を抹殺します

前に出る味方がいれば拳銃による援護射撃でサポート
標的の放つ短冊は第六感と見切りにより回避。対処し切れなければ呪詛耐性により抵抗

標的が逃走を試みたらUCを発動。瞬間移動によって一気に至近まで距離を詰め、相手の下腹部を目掛けて拳銃による零距離射撃を行います

胎内の子が大事というのなら下腹部を狙われれば平静ではいられないでしょう。その分、他の守りは疎かになるはず。下腹部を狙った攻撃から即座に2回攻撃で首など他の急所を狙います

胎児であろうとそれが有効ならば利用します。妊婦であろうと一切容赦しません。それらに何かを思うこともありません
どこへ逃げても殺します



●冷徹冷酷に、標的を『始末』するだけ
 富波・壱子(夢見る未如孵・f01342)が家屋に駆け付けた時は、既に織姫の目から理性の光が失われつつあった。
「ああああああ……赤ちゃんが……赤ちゃんが……」
「…………」
「赤ちゃんのいのちが消える……消えてしまう……」
 まるで我が子の存在に縋るようにお腹の傷痕を頻りにさすり、消えゆくいのちと正気を繋ぎ止めようとする織姫を見ても、今の壱子には何も感じない。
「……任務了解、標的を抹殺します」
 ただそれだけ呟き、壱子は手にした拳銃を向けた。
「この子を……この子を殺させやしない……誰にも渡さない……!」
 言葉とは裏腹に織姫の声音に満ちる感情は、絶望。
 ――お腹の子のいのちは、ひょっとしたら……もう……。
 絶望に満ちた織姫の声とともに、激しい短冊の嵐が壱子を絶望で覆い尽くそうと襲いかかる。
「標的の攻撃、回避行動に移ります」
 しかし狂乱状態で引き起こされたそれはいともたやすく壱子に軌道を読まれ、躱されてしまった。
「――!!」
 織姫は家屋の外へ這って逃走しようとする。しかし壱子は決して標的を逃がさない。
「標的が逃走、追撃に移ります」

――【あなたを決して逃さない】

 ユーベルコードを発動した壱子が織姫との距離を瞬時に詰め、意図的に下腹部目がけて拳銃を発射し、撃ち抜いた。
「ひいいいいっ!! 子供が、赤ちゃんが、どうして……!!」
 理性をかなぐり捨てさらに狂乱する織姫が、尚も這って外へ逃げようとする。

 壱子の日常生活を送るための人格なら、胎児と母体を痛めつけるその行為に何か感じたであろう。
 しかし、戦闘用の冷徹な人格を纏う今、壱子が己の所業に何か感慨を抱くことは、一切ない。

 胎児だろうと、それが標的抹殺のために有効であれば利用する。
 妊婦だろうと、それが標的ならば一切容赦しない。

 それこそが、壱子の別人格が『冷徹非情の兵士』たる所以。
 あるカルト教団が行っていたサイキッカーの私兵を量産する、非人道的な計画の、遺産。

 逃げながらも必死に短冊と疵だらけの腕で腹部を庇う、織姫。だが、それこそが壱子の狙い。
 腹部を狙えば子供が大事な織姫は平常心を失い、お腹を庇うことに意識を取られる。必然的に他の急所の守りが疎かになり、撃ち抜きやすくなる。

 壱子は即座に拳銃の狙いを右足首に変え、至近距離から二連射。
 引き続いて左足首を、右肩を、左肩を……急所と思わしき部位に立て続けに弾丸を叩き込む。
 常にダブルタップを意識し、確実に標的の部位を撃ち抜いてゆく。

 確実に動きを奪い、続いて壱子が狙ったのは、首筋。
 織姫がもがくも虚しく、首筋を2発の弾丸が貫く。

 織姫の口から、ゴフッと血の塊が吐きだされる。
 こうなればもう、オブリビオンとて長くはない。

「私は……赤ちゃんが可愛いだけなのに……!!」
「その赤子とあなたが世界を壊すのであれば――」

 ――私はあなたを抹殺します。

 頭に2発、そして腹に2発。
 壱子が何の感慨も抱かず叩き込んだ弾丸で、織姫とその子のいのちは完全に失われた。

 くたり、と力なく倒れ伏す織姫の身体が、壱子の目の前で消滅する。
「……任務完了、帰還します」
 壱子はそれを見届け、住人のいなくなった家屋を後にした。

 こうして、晴明の『偽神降臨の邪法』を施された母子は討ち取られた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月25日
宿敵 『『三姫』織姫』 を撃破!


挿絵イラスト