2
エンパイアウォー㉙~偽神に贈る子守唄

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー


 胎内に宿った神の子を生む、などと。
「ふ、ふ。晴明に与えられた仕事とはいえ、妙なことになったものだ」
 自嘲するように笑うのは、羅刹のくノ一である。

 オブリビオンであり邪忍軍を率いる棟梁。
 それが此度の大戦に参加せず、人から逃げ隠れることになろうとは。
 それも腹の子を守るために。
「殺すのは得意だが、な」
 仕事であればどんな事もしてきたが、守るのはどうにも慣れない。
「それでも手は尽くそう……安心して生まれるが良い。愛しき子よ」
 腹を撫でる、最初はためらうようだった手付きが徐々にやさしくなり。
「邪魔立てする者は、残らず血祭りにしてやる」
 非情なる忍びの女は、何処で覚えたかも解らぬ子守唄を歌う。


「奥羽地方にて、安倍晴明が作ったと見られる研究施設の跡が見つかった」
 そこはすでにもぬけの殻であるが、調べによって人為的にオブリビオンフォーミュラを産みだす為の実験が行われていた事が発覚した。

 その名も『偽神降臨の邪法』。

 すでに術を施された女オブリビオンは身籠っており、見つかる前に姿をくらましたが。
 その一人の姿を、クックは予知により発見したのだという。

 邪法によって腹に宿った『神の子』は十月十日経てば生まれてくる。
 それまで母体となったオブリビオンは潜伏し、敵に見つかれば子を守るために逃げることを優先するだろう。
「これを討つならば、敵を逃さぬ為の策が必要だ。此度の相手となる羅刹のくノ一は、忍びの術を使って猟兵を翻弄するだろう」

 戦いの場は、山中にある廃村だ。
 人気はなく空き家となった家屋に敵は隠れている。

「逃せば、後に災いを呼ぶだろう。……酷なことを頼むかも知れぬ。だが、皆にしか出来ぬことだ。どうか力を貸してほしい」


鍵森
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。


 お読みくださりありがとうございます。鍵森と申します。
 こちらは鳥取城餓え殺しを短期間で制圧したことで発生したボーナスシナリオです。

 邪忍軍の女棟梁とのボス戦となります。
 潜伏しているのは、山中にある廃村。
 戦闘中も隙あらば逃げ出そうとするのでご注意下さい。

 今回は戦争シナリオという事で、青玉を充分確保できた場合は、プレイングを却下させて頂く場合がございます。ご了承ください。
 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしています。
84




第1章 ボス戦 『邪忍軍の女棟梁』

POW   :    闇闘技・流血乱舞
【手裏剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【血濡れの鉤爪の連撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    邪忍法・身代わりの術
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【呪いの木偶人形】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    禁術・影分身
レベル×1体の、【胸元】に1と刻印された戦闘用【妖艶なる分身体】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。

イラスト:化猫御前

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
メグレス・ラットマリッジ
息を潜めて廃村に侵入、子守歌・足跡などの情報から詳細な位置を割り出します。
襲撃は他の猟兵と共に行いたいですが、待てない理由が出来ればそのまま突入。

戦闘では
・足を狙ったりマヒ攻撃などの手段で機動力を奪う
・他の猟兵と挟めるような位置取りをする
・攻撃や拷問具内の炸薬を爆発させた瞬間など、UCは相手が硬直するタイミングで使う
以上の点を意識します。

逃げられれば血や足跡から追跡、十月十日どこまでも追い掛けましょう
非人道的なのは理解していますが抵抗はありません。
オブリビオン、邪神を生む、顔を見られた、復讐が恐ろしい、殺さない理由を探す方が難しい。


七瀬・麗治
あいつか、羅刹の女忍者。オレの本職は調査なんだが……。やるしかないのか。

【カルマハウンド】を召喚し、ターゲットを〈追跡〉させる。こいつは殺人や呪いの儀式で発生した標的の「業」の匂いをかぎ分けることができる。隠れようが、分身しようが必ず本体を見つけ出すぞ。
戦闘時はハウンドを攻撃の補助に据え、銃による〈援護射撃〉で味方をサポート。ハウンドは〈グラップル〉で飛びかかり、噛みついて攻撃。ダメージを受けるとオレの影に潜って傷を回復させる(要時間)
「お前、隠密か。暗殺もやったのか?」
「身重の女を斬ったことはあるのか? 幼子を殺めたことは?」
「オレも今、任務でお前を殺そうとしている。……悪く思うなよ」



 寥々たる山村は住人がいなくなって久しいようだ。
 住人が消えた理由に、事件性が在る訳ではなさそうだが、それでも住処を変えるのにはそれなりの理由があったのだろう。
 家屋の崩れ具合や辺りに生える雑木の様子から、七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)は大まかな推察をする。

 敵の逃げる可能性が高いというのならば。戦場となる周りの地形はできるだけ把握しておいたほうが良い。
 それに本来なら、麗治の仕事はこうした調査が中心なのだ。
 オブリビオンの命を断つ、これからやる仕事を思い、麗治は重たく溜息を吐いた。
「……やるしかないのか」
 零れた呟きは返事を求めていた訳ではなかったのだろうけれど。

「ええ、やらねばなりません」

 同じように息を潜めて辺りを確かめていたメグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)は淡々とした声で言った。
 確固たる意志を現す言葉は、それでいて、他者に強要するような調子ではない。
 平素なら柔和な表情が似合うだろう彼女は、感情のゆらぎを見せないような、掴みどころのない顔をしていた。

 オブリビオンの居所を掴んだ二人は、敵に悟られぬように動き出した。

 相手は隠密。忍び、追手を捲くことに長けた者。
 足跡などの痕跡を巧みに隠しているようだったが。

 ――やや子かわいや、かわいや、な。

 かすかに聞こえる拙い子守唄が居場所を敵に悟らせることになるなどと。
 芽生えた母性が文字通り命取りになろうとは、なんとも皮肉なことだった。

「私は反対側に回ります。挟み撃ちにしましょう」
「わかった。突入したら逃げ道を作り、そちらへ誘導しよう」

 手はずを確認し合うと、メグレスは物音も立てずに雑木の中へと消えていった。
 召喚した黒い犬型のUDCを従えて、麗治も歩き出す。

 歌が止んでいる。

 相手はもうこの襲撃に勘づいているのに違いない。
 荒々しく家屋の板戸を蹴放し、一気に踏み込むと。影になった部屋の奥に立つくノ一の女が二人見えた。片方は、敵の気配に気づいた瞬間に用意した分身だろう。
「追手か、思ったよりも早かったな」
 と、くノ一は舌打ちして、二手に分かれて逃げ出そうとする。
「逃すな。――さあ、行ってこい!」
 主人の指示に黒犬が吠えた。
 どれほど精巧にできた分身であっても、本体から漂う隠しようのない業の匂いを嗅ぎ取り、カルマハウンドは迷いなく本体に向かって飛びかかる。
「この犬! 見抜いて……!」
 術が効かぬと悟って分身体は転身して飛び戻ると、カルマハウンドに向かって鉤爪型の凶器を振るった。
「任せたぞ、そのまま食い止めてくれ」
 分身はカルマハウンドにまかせて、麗治はくノ一の本体を追った。逃げる先を塞ぐように発泡した銃弾が、相手の動きを阻害する。
「お前、隠密だろう。暗殺もやったのか?」
 銃口を向けたまま麗治は確認するような問いを投げかけた。
「身重の女を斬ったことはあるのか? 幼子を殺めたことは?」
「それを聞いてどうする」
 くノ一が、こわばった声で答える。
「……それが仕事ならやっただろう。金払いが良い客が殺したがる中には、そうした者も珍しくはない。……だろう?」
 やけに素直に話すのは、少しでも時間を稼ぎたいからか。
 麗治の嫌悪を掻き立てるような、わざと想像させるような言い方も、精神を揺さぶり、隙を見出そうというように見えた。
 そうして必死に活路を探すくノ一の姿を、麗治は冷静な目で見つめる。
 仕事か。
 この女の罪がそうして重ねたものならば。
「オレも今、任務でお前を殺そうとしている。……悪く思うなよ」

 麗治が引き金を引くのと同時に、くノ一が飛んだ。
 腐りかけた天井板を破って、外へ飛び出したようだ。
「……死にもの狂い、か」
 麗治は床に散った血を目端で確認すると外へ出た。


 屋根に上がったくノ一を襲ったのは、メグレスが放つUCだ。
 まずは相手の動きを封じようと放たれたロープや手枷がくノ一の足を狙う。
「待っていましたよ」
 メグレスが静かに呟く。
 その姿は建物の影に隠れていて、相手からは見えない位置にいる。
「しまった……!」
 咄嗟にロープは切りつけたものの手枷が足首に掛かり、バランスを崩したその身体が屋根の上から落下した。
 落下地点へ滑り込むと、メグレスは雷杖を振りかぶった。くノ一は着地の体制から銀色の鉤爪を閃かせてその攻撃を防ぐ。
「そう、そうやって受けてください」
「なにを! あっ、ああ……!」
 電流がパチリと爆ぜる。くノ一は悲鳴を上げた。我が身の痛みよりも、胎の中の子への影響を恐れているのか、顔に恐怖が見える。
 武器が触れるたび、雷杖からは電気が走る。距離を取ろうとするくノ一に肉薄したまま、メグレスは連撃を叩き込んで、電気ショックを浴びせていく。

 メグレスは、母子共々を葬る行為が、非人道的なものだと理解していた。
 それでも誰かが成さねばならぬことなのだ。
 彼等は脅威であり、人類を滅ぼす存在なのだから。

 雷杖の攻撃でマヒした体は確実に動きを鈍らせていった。動きを完全に封じようと、メグレスはロープで相手の体を絡め取るように投げ打つ。
 その瞬間、ダラリとくノ一の体が力を失ったように倒れる。
 電撃で気を失った――訳ではない。
「……逃げましたか」
 一瞥したその先には。
 ロープに縛り付けられた、身代わりの術によって入れ替わった木偶が転がっている。
 メグレスには少しの抜かりもなかった。
 ただオブリオンの持つ生き延びることへの一念が恐ろしい程の瞬発力を生み出したのだ。
「顔を見られてしまいましたね」
 やれやれ、というように短く息を吐き。
 フェルト帽を上へ傾けて、メグレスは辺りに残る痕跡を辿る。
 点々と続く血の跡が、受けた傷の深さを物語っていた。
 けれどまだ終わっていない。終わりを見届けるまで追跡は続けなければならない。

 オブリビオン、邪神を生む、顔を見られた、復讐が恐ろしい、――殺さない理由を探す方が難しい。

 どこまでも追いかけよう。
 十月十日、どれほどの時間が掛かろうとも。

 平穏のために、あらゆる禍根はここで絶たねばならぬ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベルベナ・ラウンドディー
〇地形の利用・時間稼ぎ
足止め、周辺地形を利用して逃走経路を遮断
〇演技・追跡・罠使い
経路を利用し、行き止まりへの誘導も想定
〇騎乗、吹き飛ばし、追跡
敵の抵抗は気合いで耐えること
よって分身体には注意、
愛機で突撃し、多少の被害を覚悟で吹き飛ばし交戦よりも追跡を優先
有効圏内に把握次第、ユーベルコードを使用します



結界に封鎖して焼き払います、が…
余裕があれば聞いておきたいことがあります
その子は何と名付けるつもりですか?
…などと、せめて墓は遺したいと思うあたり私も甘くなったと思います
…子供の頃ヤンチャし過ぎた反動でしょうけどね

ですが必然とされた未来の災禍はここで断つ
子を思う心共々裁く私を、貴方は恨んでもいい


黒羽・鴉
黒羽……嫌なら目を瞑っていて良いんだぞ。その間に俺が終わらせる。

冗談でしょ、僕だって猟兵です。…見届けますよ……最期まで。

【鴉】
八咫烏を先行させ、女の血痕や足跡などを探しながら《追跡》

見付けたら距離のあるうちに蒼鷺火で上空に飛び上がり、先ずは金烏を放ち、迂回させ後方の追跡者からの攻撃であるかの様に山の木々の間から攻撃。
相手が気を取られている隙に真上から急降下し奇襲。
速度、重力、体重を乗せて剣刃一閃で斬り下ろし。
着地と同時に足を狙って《部位破壊》水平斬り。
流血乱舞には《第六感+見切り》
影分身には金烏で対応。

敵に対しては出来うる限り剣技で相対する。

……それくらいは、最低限の礼儀だと思うからな。



 ――黒羽……嫌なら目を瞑っていて良いんだぞ。その間に俺が終わらせる。
 ――冗談でしょ、僕だって猟兵です。……見届けますよ……最期まで。

 血の跡を辿ると、黒羽・鴉(両面宿儺・f09138)は山の木々を軽々と飛び移って相手に気取られぬように移動を始めた。
 やがて前方によろめく人影が見える。
 枝を蹴って一飛に、鴉は女の真上をとった。

 急降下する姿は獲物を狙う鳥のごとく。
 刀の柄を握りしめ、くノ一目掛けて一刀両断の刃を振り下ろす。
「ッ、あああッ!!!」
 飛び降りざまの刃を転げるようにして避けたくノ一だったが、二の太刀で斬りつけられた足から血が奔る。黒羽の瞳は、逸らすことなく開かれていた。

「もう追ってきたのか……!」
「一思いに終わらせてやりたかったんだがな」
 先程の戦いで受けた傷からは血が流れ、ひと目で深手だとわかる。
 また、足にも怪我を負っているのか、動きも鈍っているようだった。
 もはや最後の力を振り絞って戦っているのだろう。
 鴉はその様子を見、刀を構えた。

「ほざけ……! 死ぬのはお前の方だ!」
 血に濡れた鉤爪を振るい、猛然とくノ一が襲いかかる。
 鴉は俊敏な動きでそれを避けては、隙を縫って斬りつけた。
 互いに息もつけぬ程の切り合いが続く。
「刀だけで私を倒せると思っているのか!」
 くノ一が叫んだ。
 攻防が続く。次第に浮かぶのは、他の攻撃手段を用いない事への疑念。
 しかし、鴉に裏はなかった。
 無論、この仕事をやり通す為にあらゆる手段を使うつもりだ。
 それでも、
「……それくらいは、最低限の礼儀だと思うからな」
「……礼儀を払うのに、値すると?」
 一瞬、くノ一は不思議そうな顔を浮かべた。
 今まで情けめいた言葉を一笑する事なぞいくらでもあったが、真剣な鴉の声が驚くほど心に響く。
「おかしな男だな」
「そうでもない」
 禍ツ風の美しい刀身が、風に舞うように軌跡を描く。
 目を奪われそうなほどに美しい動き。

 それを受ければ、痛みもなく逝けるのだろう。
 火に飛び込む蝶のように魅せられたまま。

 いやだめだ。だめだ。だめだ。だめだ!!!
「ッ、私は、死ねない!!!!」
 吸い込まれそうだった意識を取り戻すようにくノ一は金切り声を上げた。
 なりふり構わずに逃げ出すその背を太刀が斬りつける。
 木立の影に飛び込み斜面を転げて距離を稼ぐ、脱しようとしたその時。

「あっ、ああ!」

 ぐるりと周辺に火が起こった。
 慌てて逃げ道を探すくノ一の行く手を見えない壁が阻んだ、逃げ道が塞がれている。

「私を殺さねば、道は開けませんよ」
 くノ一が振り返った先に立っていたのは、結界を展開させたベルベナ・ラウンドディー(ドラゴニアンのバイク乗り・f07708)の姿。
「いいだろう……お前を殺して! 押し通る!!」

 念入りに仕込まれた結界は辺りを包囲し、くノ一を逃がすことはない。
 しかし、結界は同時に他者の介入を断つことになった。

「聞いておきたい事があります」
 剣が鉤爪とぶつかり合い火花を散らす。
 攻撃の手は緩めず、ベルベナは言葉を続けた。
「その子は何と名付けるつもりですか?」
「なにを」
「名前です。」
「それを聞いてなんとする!」
 竜は静かな眼差しで見据えた。
「せめて墓を遺したいと思います」
「巫山戯るなっ! ふざけるな! この子は、私が! 死なせない!!」

 激昂の叫び。
 狂気すら感じさせるほどの形相は、子を想う母そのもの。
 鉤爪を剣で受ける度に感じる、生きる事への執念。
 ――それでも必然とされた未来の災禍は、ここで断つ。
 ここへ来ると決めたその時に覚悟は決めている。

「子を思う心共々裁く私を、貴方は恨んでもいい」

 攻撃の勢いは凄まじいが、早く逃げねばという焦りからか、大振りに鉤爪を振る動きが増えた。
この隙を逃さず。
 ふところへ飛び込んだベルベナの剣が、くノ一の胸を貫いた。

 仰向けに倒れ込む、その身体が起き上がることはもう無いだろう。
 ベルベナは、結界を解いた。爽やかな風が吹き込んでくる。
「恨む、ぞ」
 くノ一が呟く、それはまさに今際の際の呪詛。
 しかし、その言葉は猟兵に向けられたものではなかった。
「……恨むぞ晴明、この私が、このような気持ちに……なるなどと」
 羅刹のくノ一は、喉を震わせていた。
 邪法により授かった我が子は、邪悪に染まりきっていた女に情を与えた、それが子を守らせるための支配めいたものだとしても芽生えた愛は確かにあったのだ。
 しかしそれは、情を捨ててきた邪忍者の女に動揺を生み、平静を失わせた。それほどのものなのだ、と理解して彼女は今更ながらに慄いたのだ。
「……、……」
「何か言っている」
 鴉が囁いた。
 手にした武器はそのままに、ゆっくりとくノ一へ近づく。
 とどめを刺さなくてはならないなら、そうしなくてはならない。
 だが、
「……き……ひびき、と、……」
 掠れた声からは死の気配が滲み、茫洋とした瞳は誰かを探すように揺れている――ベルベナは、その顔を見つめ頷いてみせた。
「ええ、たしかに聞き届けました」
 響き、鳴り渡る音。それが、母が子に贈った名前。
 男か、女か、人の形すらしていないかもしれない偽神が、ただの子でもあったのだという証。

「死んだな」
 鴉は刀を下げながら呟いた。
 視線をそらさず、最後まで見届けた黒羽も仮面の下でゆるりと息を吐く。

 名を告げて事切れた、それが救いになったのだろうか。
 思いの外、その死に顔は安らかであった。
 彼女は最後だけくノ一でもオブリビオンでもない、ただの母になったのかもしれない。

 猟兵達が立ち去りあるいは後始末を終えた頃。
「墓石を探してきます」
 言い置いて、ベルベナが歩き出した。
「……子供の頃ヤンチャし過ぎた反動でしょうけどね。私も甘くなったと思います」

 黒羽と鴉はしばらく佇み、やがて空を仰いだ。
 山の鳥が、どこかで鳴いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月27日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルシー・ナインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト