エンパイアウォー㉛~おかえり鉄甲船
●海の底から
海は青く、凪いでいる。
激戦が繰り広げられたのが、遥か遠き日に思える程に。
奥底にてまどろむは、大きな大きな鉄の船。
このまま永久の眠りに沈んでいくのか。
それとも――。
●海の上へと
「ね。もう一度、南海道方面の海に行こうよ」
グリモア猟兵の影守・吾聞(f00374)が仲間たちに声を掛ける。
魔軍将・日野富子が巨万の富を費やし建造した、超巨大鉄甲船の大船団。
南海道の海路を塞いでいたそれらにより、幕府軍の船は悉く沈められてしまうと予知されていた。
猟兵たちの活躍により大船団は撃破され、苦難を乗り越えることに見事成功。
戦場と化していた海も今のところ、穏やかさを取り戻しているはずであるが。
「沈んだ鉄甲船を再利用しようかって話が幕府の方から出ていてね。サルベージのために人手が必要なんだって」
ユーベルコードを操れる猟兵ならば、引き揚げ作業をより効率よく行える。
巨大鉄甲船を引き揚げる事が出来れば、商船や軍船として再利用したり、外洋船に改修して冒険に出る事が出来るかもしれないという。
「具体的な使い道は、引き上げられた数によって決まるみたいだけど……まあ、その辺は今は気にしなくて大丈夫だよ」
戦後のサムライエンパイアにとって、大きな利益となることは間違いないのだから。
「利益になるっていうのも、もちろん大事なんだけどさ。俺、思うんだ。まだ生きられる鉄甲船を助けてあげたいなって」
骸の海に逝かせてしまうには、きっと早すぎると続け。
吾聞は仲間たちを、青い海へと誘うのであった。
藤影有
お世話になっております。藤影有です。
鉄甲船に新たな生を与えるべく、猟兵の皆様の力をお貸しいただけますと幸いです。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
日野富子が巨万の富を費やして建造した巨大鉄甲船を、海の藻屑となる前に引き上げて再利用できるようにします。
このシナリオの成功数×隻の巨大鉄甲船を引き揚げる事が出来ます。
引き上げ船の修復や使い道などは、引き上げる事が出来た隻数に応じて、幕府などが協議して決定するようです。
●プレイングについて
巨大鉄甲船のサイズはおよそ全長200m、全幅30m程。
ユーベルコードや技能を存分に活用してくださいませ。
それでは、皆様のプレイング楽しみにお待ちしております。
第1章 冒険
『巨大鉄甲船引き上げ作戦』
|
POW : 重量のある船体部分などを中心に、力任せで引き上げる
SPD : 海底を探索し、飛び散った価値のある破片などを探し出して引き上げる
WIZ : 海底の状況や海流なども計算し、最適な引き上げ計画を立てて実行する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●船を迎えに
海は青く、凪いでいる。
水底に身を横たえた鉄の船を優しく抱いて。
時が経てば、此処は墓場となるだろう。
このまま永久に眠らせてやることもできるだろう。
それでも、猟兵たちはやってきた。
鉄の船たちの生を、未来へと繋ぐために。
アーク・ハインド
「……アーク・ハインド海賊団、今回の任務はあの船の死を略奪することっす。」
「正直、戦争には興味がなかった、敵の舟にも興味はなかった、でも……これは、見捨てられない。自分と同じ末路をたどる船は少なければ少ないほどいい。」
そう言いながらUCで召喚した船員達に船の修繕や海流の計測などをするよう船長に頼んで自分もそれに交じり船の引き上げや修繕などを一心不乱に行います。
その際浸水が酷い等あった場合は技能:属性攻撃の火による蒸発か、雷による電離か、氷結させて外に運ぶかとその場による適切な判断を行います。
「あんたはまだ海を走れるっす、絶対走れるようにしてやるっす。だから、絶対あきらめるんじゃないっすよ…!」
●
サムライエンパイアの戦争にも、オブリビオンが創り出したという船にも。
正直、興味など無かった。
――それでも。
「……これは、見捨てられない」
作業用にあてがわれた船の上にて、アーク・ハインド(f03433)はゆらゆら揺れる水面を見つめる。
赤の三角帽子とロングコートを纏い、銀の長髪を潮風に靡かせて。
ひとり佇む彼女の姿は、まさに何処かの世界に生きた海賊が顕現したかのよう。
それは、あながち間違いではない。
彼女はガレオン船のヤドリガミ――かつては海賊船アーク・ハインドとして、仲間を乗せて海を駆けていたのだ。
ゆえに、放ってはおけなかった。
「自分と同じ末路をたどる船は、少なければ少ないほどいい」
この海で眠りにつかんとしている同族のことを。
「野郎共! 今、再び、略奪を開始するっすよ!!」
アークの叫びに応じて姿を現すは、共に海に散った船員たちの亡霊。
「アーク・ハインド海賊団。今回の任務は、この海に沈んでいる船の死を略奪することっす!」
鬨の声を上げ、船員は各々の仕事に取り掛かる。
海流の計測、引き揚げ、修繕。
今は亡き海の男らは、未だ生きられる船のため力を尽くす。
「あんたはまだ海を走れるっす、絶対走れるようにしてやるっす。だから、絶対あきらめるんじゃないっすよ……!」
再び海上に顔を覗かせた一隻に、力強い言葉を掛けるアーク。
その頬を、潮風が優しく撫でていった。
大成功
🔵🔵🔵
プロメテ・アールステット
作られて、必要がなくなれば捨てられる
物としては当然の結末だが…
もしこの手で救えるのなら、手を伸ばしたい
【武火装々】発動
…水は少し苦手だが、この状態なら潜れる…と思う
尽力、する
(苦手が表に出ない人形、握った拳がちょっぴり震え)
『地形の利用』で持ち上げやすそうな場所を探し
『怪力』で持ち上げて『運搬』
この状態で飛び上がれば引き上げやすくなるだろうか
一気に飛び出さないよう気を付け
周囲と協力して引き揚げる
目覚めたら何をしたい?
声が返ってくる訳がないのに鉄甲船に話しかけてしまう
きっと様々な光景に出逢う
様々な人に出逢うだろう
楽しみにしているといい
思ったよりも世界は広くて眩しいから
※他者との協力・アドリブ歓迎
●
必要とされたゆえに創られ、不要となれば捨てられる。
人工物の迎える、ひどくありふれた結末。
それはきっと、自然の摂理のようなものなのだ――けれども。
金色の光を身に纏い、プロメテ・アールステット(f12927)は海へと飛び込む。
実のところ、彼女は水が少し苦手だ。
それでも。
震える手には気付かないふりをして、真っすぐに海底を目指し潜っていく。
この手で救えるのならば、手を伸ばしたいから。
戦で剥がれた装甲の欠片が、辺り一面に散らばっている。
傷跡を残してなお、船は未だ其処に在った。
力を加えても、問題のない位置は何処だろう。
これ以上は傷が広がらぬよう、慎重に探り当ててのち。
プロメテは握りしめた拳を解き――船体にそっと手を当てた。
水上からの助力も受けて、船は少しずつ動き出す。
(「目覚めたら何をしたい?」)
寄り添うように持ち上げながら、プロメテは心の内で語り掛ける。
様々な光景に出逢うだろう。
様々な人に出逢うだろう。
きっと、自分と同じように。
(「楽しみにしているといい、思ったよりも世界は広くて眩しいから」)
金色に光る水面から、一隻の船が水上へ顔を出す。
まるで朝を迎えたかのように。
大成功
🔵🔵🔵
大宝寺・風蘭
【POW】を使う。
「作ったヤツのこと考えるとちょっとモヤる気持ちもあるけど、まあ物に罪はないからねぃ」
こう見えて技能【怪力】がある。力仕事は不得意ではない。
頑丈なロープでも借りて船に巻き付け、引っ張っての引き上げを試みる。
さらに、【望月】でモチズキ(自分に憑依するオウガ)を召喚し、ずんだ餅を四つほど与えて一緒に船の引き上げに従事させる。
もしいつものノリでパンチキックを見舞おうとモチズキが構え出したら制止。
「いや、殴れってんじゃない! 壊せってんじゃない! なるべく傷つけないように引き上げるんだってば! わかる!?」
融通が利かず理解できないようなら引っ込めて、自分一人で引き上げ作業を行う。
●
曳航用の船の上にて。
「作ったヤツのこと考えるとちょっとモヤる気持ちもあるけど、まあ物に罪はないからねぃ」
飄々と呟きながら、大宝寺・風蘭(f19776)は括り付けたロープの具合を確かめる。
結び目に異常なし。
水底へ向かった者に動きがあり次第、いつでも引き揚げを始められるだろう。
力仕事は不得意ではないゆえ、一人でもどうにかする自信はあるが。
手は多いに越したことはない、“もう一人“にも働いて貰おう。
「――モチズキ」
名を呼べば、少女の傍らに何者かが立つ。
華奢ながらも筋肉質な、黄金の毛並みの猫獣人――風蘭に憑依してのち、共に在り続けるオウガだ。
「食った分はちゃんと働いてよ?」
お代はずんだ餅を四つ。
与えたところで、海中へぴんと張っていたロープが僅かに弛む。
作業開始だ。
ロープをしっかり握りしめて、ぐっと腰を落として。
「そんじゃ、始めるよ。頼ん……いや、殴れってんじゃない!」
いざ引き揚げんとした風蘭であったが、慌てて構えを解いてモチズキを止めに掛かる。
海面を見据えてファイティングポーズをキメるオウガを放っておいたら、きっといつものように暴れ始めてしまうから。
「こう、引っ張って……なるべく傷つけないように引き上げるんだってば! わかる!?」
風蘭が手本を見せてやれば、オウガはそれを真似るように宿主の後ろに回ってロープを掴む。
どうにか戦力として数えられそうだ。
ほっと安堵の息をついて、少女は改めて構えを取り。
「そんじゃ、改めて。いくよ、モチズキ!」
オウガと二人、作業に取り掛かるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
タロ・トリオンフィ
雅一(f19412)と
うん、引き揚げ、と言葉で言えば一瞬だけれど
どうしようかな……正直、水に入るのは気が進まない
褪せぬ魔法が掛かってると言っても、僕の本体は紙製だから、気分的にね
クレーン?
あ、そうだね、クレーンか
船が目視出来れば何とか出来るかもしれない
雅一が凍らせてくれた海に降りて
うん、これなら見やすいよ
……それに、何より濡れないし
破損状況や船体の向き等を情報収集
引っ掛けるならこの辺りかな?
UC『魔術師』のカードを翳す
ロープを念動力で動かし、船が重心を保てるよう位置を選んで数本結んで
ロープの端を氷の外側へ
これで、乗ってきた船にロープを引いて航行して貰えば、クレーンの真似事が出来るんじゃないかな
双代・雅一
タロ(f04263)と。
沈んだ船か…いや、潜るとか俺も御免だ。
ああ、確かに紙ならば。
塩水はどんな物質も劣化させるしな。
だからこそ、鉄の船も早く引き上げるんだろうけどな。
クレーンも無しか…どうしたものか。
ん? 見えれば良いのなら。
惟人、ちょっと来てくれ。
(後ろ手に眼鏡渡すと受け取る手)
「嫌な予感しかせんのだが」
なに、二人係りで行こうって話さ。
弟と二人で船の沈む真上海面を氷の属性全力魔法にて凍らせる。
すり鉢の形に水を掻き分け、下に進むように。
氷蛇ラサルハグェにも手伝って貰うか。
船が見えるようにすれば良いんだろ?
持ち上げた下から凍結解除して少しでも浮力を利用。
水が抜けたら多少は浮くだろうしな。
●
鉄の船を引き揚げる。
言葉にしてしまえば単純かつ、一瞬のことにも思えるが。
「どうしようかな……」
タロ・トリオンフィ(f04263)は、水面を見つめたまま困り顔。
「正直、水に入るのは気が進まないんだよね」
「潜るのは俺も御免だが」
そこまでのことなのか、首を傾げるは双代・雅一(f19412)だ。
「褪せぬ魔法が掛かってると言っても、僕の本体はタロットカード――紙製だから、気分的にね」
「ああ、確かに紙ならば」
タロの答えに、雅一は得心したように頷く。
ヤドリガミとして受肉しているとはいえ、やはり元の器物に関連する苦手意識は拭えぬものらしい。
「加えて、塩水はどんな物質も劣化させるしな。だからこそ、鉄の船も早く引き上げるんだろうけどな」
さて、どう引き揚げたものかと雅一は思考を巡らせる。
呪術法力が存在するとはいえ、サムライエンパイアの文明レベルは江戸時代と同程度だ。
「クレーンも無しか……どうしたものか」
「クレーン? あ、そうだね、クレーンか。船が目視出来れば何とか出来るかも」
「ん? 見えれば良いのなら」
何気ない呟きに、タロが活路を見出したらしい。
ならば、路を開くとしよう――双子の弟と二人で。
「惟人、ちょっと来てくれ」
後ろ手に眼鏡を渡せば、それを受け取る“弟”の手。
「嫌な予感しかせんのだが」
眼鏡を掛けつつ眉を顰める己とよく似た顔に、雅一はいつもの調子で返してみせる。
「なに、二人係りで行こうって話さ」
雅一と惟人、二人の全力の氷魔法が海面を凍らせていく。
「船が見えるようにすれば良いんだろ? ラサルハグェ、頼む」
雅一が命じれば、白衣のポケットからするすると氷蛇が出でて作業に加わる。
すり鉢の形に水を掻き分け、下に進むように。
「うん、これなら見やすいよ……それに、何より濡れないし」
凍結した海へと降り立ったタロは、船の様子を確かめる。
破損状況は如何ほどか。
船体の向きはどうだろう。
ロープを引っかけるならば。
「……この辺りかな?」
答えを導き出し、翳す一枚は『魔術師』のアルカナ。
不可視の腕がロープを動かし、船が重心を保てるように結んでいく。
ここまで乗ってきた船にて曳航すれば。
「クレーンの真似事が出来るんじゃないかな」
僅かに船を持ち上げて、下側から氷魔法を解除して浮力も利用すれば。
「――いけるな」
タロと雅一、そして惟人。
三人の見守る前で、鉄の船は見事に海上へと舞い戻る。
鉄の装甲に僅かに残る氷が、日の光を浴びて溶けていく。
その様は、まるで泣いているようでもあった。
*****
新たな生を得た鉄の船は、いずれまた海へ出る。
その旅路はきっと、人々の未来を切り開くものとなるだろう。
――ありがとう、行ってきます。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵