エンパイアウォー㉙ ~ 後顧の憂いを絶ち切る
●奥羽のとある詰所にて
それが見つかったのは戦場近くの洞窟だった。
「……これが本当の事ならば、ほうっておくと大変な事になるな」
水晶屍人を従えていた敵の首魁を撃退し、その後の掃討戦で大部分の屍人は討伐された。
その後、各地に生き残りが居ないかを確認する為に編成された討伐隊の1つから急ぎの伝令といくつかの資料が送られてきたのだ。
「三度となるが、また彼らの力を借りなければいけぬ……か」
手にしていた資料を文机の上に投げ出して部屋を後にする。
その資料の表題には大きく『偽神降臨ノ邪法』と書かれていた。
●後顧の憂い
「皆さんには三度目となりますが奥羽に行っていただきたいと思います」
フェン・ラフカ(射貫き、切り拓く、魔弾使い・f03329)はエンパイアウォー終結の為に集まった猟兵達にそう声をかけた。
奥羽に現れた水晶屍人を引き連れたオブリビオンは撃退されて、統率を欠いた水晶屍人らの掃討戦も終わっている……今更奥羽に何の用があるのかと疑問の声が上がっている。
「置き土産と言うべきなのでしょうか……安倍晴明が面倒なモノを残していきました」
奥羽にて水晶屍人の残党狩りをしていたとある武士が洞窟の奥で、怪しげな装置や檻などが置かれた施設を見つけた。
一体ここで何が起こっていたのかと調べていたら、安倍晴明が残したと思われる資料が見つかって報告。
それがグリモア猟兵へと回ってきたのだ。
「研究施設では研究資料が見つかりましたが、装置類は利用不可の状態まで破壊済み、檻の中には生き物と思われる死体がいくつか転がっていましたが……その内の1つが内側から破壊されていたそうです」
資料の内容は魔将軍らの力か、コルテスの持ち込んだ神の力を宿して神の子を生ませる為の研究内容。
人為的にオブリビオンフォーミュラーを生み出そうとしたとんでもない実験だ。
そしてそこに残る破壊された檻、つまりそこから逃げた者がいるのだ。
「今回はそのオブリビオンの討伐となります、既に現在位置は捕捉出来ていますが……どうやらお腹の子供は大切な存在だと認識している様で可能な限り逃亡を試みるようです」
ランタンの灯りを点けて目的地へのゲートを解放する。
どことなく寂しそうな表情を一瞬だけ浮かべたが、猟兵達へ向き直した時には既にその表情は無かった。
「……少々思う事はありますが相手はオブリビオンです、後顧の憂いを断つ為に皆さんよろしくお願いします」
そう言って彼らをオブリビオンの元へと送り出した。
ダムナティリウス
初めましてこんばんは、ダムナティリウスです。
驚異の排除が無事に終わり、最終戦へと望めるようでほっと一息。
しかし、まだ終結した訳ではないのでもうひと踏ん張りですね。
●シナリオフレームについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●概要
安倍晴明が使っていた研究施設から逃げ出したオブリビオンの追撃戦です。
OPにある通り、相手は戦闘はしますが可能な限り逃走を試みますのでそこを気を付けて頂ければ良いかと思います。
それではよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『剣鬼・無銘』
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POW : 魔剣・首刎
【敵の攻撃速度を上回る居合抜きで反撃し、】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD : 魔剣・千鳥
【極限まで殺意を研ぎ澄ませること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【一瞬で間合いに踏み込み、神速の一閃】で攻撃する。
WIZ : 魔剣・無銘
【居合の構え】を向けた対象に、【敵の逃げ道を塞ぐように放たれた無数の斬撃】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:kuraba
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「蒼焔・赫煌」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フィロメーラ・アステール
「こういう時こそ、あたしが頑張らねば!」
特に思う事のない身の上を活かす時!
オブリビオンを倒す、それだけのことだぜ。
【第六感】を開放し自然界とリンク!
相手は世界を滅ぼす毒だ! みんなの力を貸してくれ!
と【情報収集】し、敵を補足し続ける!
【紲星満ちて集いし灯光】で光精召喚!
空から敵を襲撃するぞ!
あたしからは逃げられないぜ、観念しな!
と【パフォーマンス】し、あたしへの攻撃を誘う!
敵の攻撃は逃げ道を塞ぐ、つまり逃げなければ効果半減!
そこで光精に【念動力】で【投擲】され突撃!
【オーラ防御】を纏った体当たりで攻撃する!
数で攻めると思わせて、自分が弾丸になる作戦だ!
もし逃走されたら、光精の人海戦術で追うぞ!
フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)転送されてすぐに宿場町周辺を飛んでいた。
「こういう時こそ、あたしが頑張らねば!」
オブリビオンを倒す……ただそれだけの事を意識して『第六感』を解放して、草原や街道に並ぶ木々などの自然界とリンクして目的の相手を探す。
世界は違えど自身と同じ存在は数多に存在する、そんな小さな仲間たちと協力して世界を滅ぼす毒を探索すればそれほど時間もかからずに1人の人物が引っかかった。
その方向へと向かえば宿場町から人目を気にしながらも足早に、まるで追っ手が来ていないかと町の方を気にしながら逃げる女剣士を見つける。
「いた! 『光輝の縁を知るのも、集まれー!』」
目的のオブリビオンを見つけて、フィロメーラは迷わず【紲星満ちて集いし灯光】を使い数多の光精を召喚して上空から流星のごとく攻撃をする。
その事にすぐに気付いた様で女剣士は振り向き様に携えていた刀を抜き放ち、直撃コースだった光精だけを切り払いすぐにその場から駆ける様に逃げ出した。
「あたしからは逃げられないぜ、観念しな!」
それを簡単に見逃す訳もなく攻撃した後、光精と共に逃げた先に回り込んで声高らかに宣言する。
鮮やかな手つきで納刀されていた刀の柄に手をかけて女剣士はこちらを睨みつけていた。
一瞬の睨み合いの後、先に動いたのはフィロメーラだった。
集めた光精の一部が相手へと勢いよく飛んでいく。
居合の構えから抜き放たれた抜刀が先頭の光精を切り伏せる、そして返す刃で後続をどんどんと斬っていくが当然手数が足らない。
そうなれば当然優先順位として腹や足周りに飛んでくるものを優先し、次に利き手を守る様に斬っていく。
逆に言えば自身の上半身に関してはある程度諦めている様で掠めたり被弾していた。
そうして初撃を対処している所に、フィロメーラは自身に『オーラ防御』を施して光精に『念力』で投げられた。
女剣士はその捨て身とも思える突撃に一瞬驚いて太刀筋がやや揺らぐ。
逃げる素振りも無く、体当たりを敢行してきたせいで迷いと共に放たれた斬撃は本人に当たりはしたものの大きなダメージとはならなかった。
だが、それで弾いたおかげで彼女が操る光精達の指揮系統が一瞬だけ止まり、その隙を逃がさずにその場から逃走する。
「……っく! 逃がさないぞ!」
すぐに弾かれて崩れたバランスを取り戻して、光精と共に逃げた女剣士を追いかけるのであった。
成功
🔵🔵🔴
緋薙・冬香
「置き土産って……勘弁してよもう」
女なら一度は考える夢
きっとオブリビオンになる前の、彼女たちだって一度は夢見たはずの
それをこんな風に利用するなんて、ね
宿場町を起点にしていたのね?
それじゃ町の人からお話聞いて情報を集めて
だいたいの方角を掴んだら後は第六感を頼りにして
見つけたら『人の『闇』を狩る者』を発動してから挑発
「せめて私が貴女を終わらせてあげる」
正面から攻撃を仕掛けて相手の殺意を誘うわ
仕掛けてきたら、回避は難しそうね
それなら大ダメージを食らうのも覚悟して
それすらも目眩しにして
「冬の香りがもたらすのは、貴女の夢の終わりよ?」
暗殺の一撃で仕掛けるわ
共感は出来ても協力は出来ないの
ごめんなさいね
楠葉・狐徹
【POW】
「妊婦と戦うのは気が引けるが…まあいい。今回は悪人に徹するか。」
まずは【忍び足】や【目立たない】で無銘にこっそり接近。刀で足を斬るか間に合わない場合はけたぐりを食らわせて足を蹴り、逃走対策として動きを鈍らせることを試みる
「俺が何者か?名乗るほどの奴じゃねえよ。ただの辻斬りだ!」
散桜斬りを初手で放つ。無銘が魔剣・首刎で回避したら、すかさず【グラップル】で無銘を掴み、【怪力】と【吹き飛ばし】を組み合わせた投げ技で建物の壁などに思い切り叩きつける。また、チャンスがあればもう一度散桜斬りを使用
「お前は生まれを間違えたか…来世はいい母親になれよ。じゃあな。」
※アドリブ、連携OKです
目的の相手が滞在していた宿場町を、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)は行き交う人々に話を聞きながら歩き回っていた。
「置き土産って……勘弁してよもう……」
集めた情報をまとめながら愚痴る様に呟く。
グリモアベースを出る前に聞いた、特殊な方法による新たな脅威の発生の芽。
女ならば一度は夢見る事柄を利用したその方法に顔を曇らせる。
思う事はある、しかし事情はどうあれ相手は倒すべきオブリビオンだ。
迷いを振り切るように気合を入れなおし、集めた情報を元に出ていったと思われる方角へと進んで宿場町を後にした。
一方その頃、楠葉・狐徹(表裏一体の刃・f17109)は逃げるオブリビオンを発見してその後を追跡しており、戦闘の機会を伺っていた。
見つけた切っ掛けは森の中を移動している光の玉である。
何者かを追いかける様に動いていたそれを追いかけてみたら、その先に件のオブリビオンが逃げていたのだ。
これはチャンスと考え、目立たない様に光の玉──どうやら誰かが呼んだ妖精の様だ──を追いかけている。
やがて森が途切れてどこかの街道へと出ると、自分が居る事で見失ってしまわないと判断したのか妖精らはどこかへと消えていく。
追跡者に対応しようと森へと向き直り、刀へと手を伸ばしていたその顔には怪訝な表情が浮かんでいた。
しかし、待てども追いかけていた妖精らが戻ってくる様子も無ければどこからか攻撃が飛んでくる様子も無い。
数秒ほどして何も起きない事を確認すると、刀の柄から手を放して再び逃げようと森に背を向けた瞬間に狐徹は飛び出した。
一足飛びで一気に距離を詰めて、気が抜けたそのタイミングを狙って【散桜斬り】を放つ。
そしてそれを予測していたのか、はたまた飛び出す瞬間を見たのか、彼女はその斬撃に合わせて振り向く様に居合切りを放った。
金属がぶつかり合う甲高く鈍い音が街道に響き、すぐに静寂が辺りを包む。
「……ちっ、狙いが浅かったか」
追いかけていた女剣士へと向きなおし、浄玻璃刀を正眼に構える。
対する彼女の手にしていた刀の切っ先が無くなっていた。
【散桜斬り】を今までの経験から太刀筋を予測し、受け止める……もしくは受け流す為に居合切りを合わせた様だが、どうやら刀の方が持たなかったようで剣先が切り落とされたのだ。
しかし、一瞬とはいえこちらの攻撃を受け止められた事により太刀筋がずれてせいで目的のダメージは与えられなかった。
さてどうするか……と狐徹は考えながら、お互いに武器を正面に構え合って様子を伺う。
そして、その睨み合いは格好の的であった。
「せめて私が貴女を終わらせてあげる」
突如、背後から聞こえた声に女剣士が振り返るとそこには冬香が光の刃を片手に突き刺す瞬間だ。
急所を狙った刺突を、体を無理矢理逸らす事で紙一重に回避して突如現れた冬香を睨みつける。
その瞬間、まるで心臓を握られたような錯覚を起こし、次いで冷たく鋭い感覚が突きつけられる。
見れば相手は既に霞の構えを取っており、極限までに研ぎ澄まされた殺意がはっきりとコチラに向いていた。
そこから放たれた突きは瞬きの間に自身の体を貫く。
神速の一撃とはこうも痛みが無いものなのかと、自身の胸に突き立てられた刀を見て思った。
しかし……こちらは未だ倒れていないのだ、咄嗟に伸びた手で相手を掴んで逃げられない様に力を入れる。
そして指輪を嵌めた手に光の刃を再び生成してその肩へと突き立てた。
小さく苦痛の声をあげると同時に刀を手放して蹴りを入れられる。
踏ん張る事も出来ずに蹴り飛ばされて地面に倒れると、口の中が鉄臭くなり思わず吐き出すと共に意識が遠くなっていった。
一瞬の出来事ではあったが、仲間が作ったチャンスを見逃すほど狐徹は甘くはない。
刺されてよろめいていた隙に背後から掴み、力任せに宙へと放り投げると同時に浄玻璃刀を構えてその足へと斬りつける。
切り落とすまではいかなかったが、手応えから確実にダメージを与えたと判断する。
その状態ならば遠くまで逃げる事は困難であろう……そう判断して投げ飛ばした女剣士を追いかけずに冬香の元へと駆けつけると、傷口を悪化させないように抱え上げるとその場を後にした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
大神・零児
神速…遅い
この先にある無双をみせてやる
UC全開
第六感・野生の勘・世界知識・戦闘知識・聞き耳・町人等から情報収集しそれらしい人物を探す
見つけたら何食わぬ顔で歩きながらすれ違い様に左手に持った黒剣「黒鞘」で鞘当て(決闘の合図です)か足払い
足払いは転ぶか躓かせ
鞘当ての場合と同様に
そのまま流れで妖刀「魂喰」を引き抜きながらの抜刀術で斬りつけ、鞘を持ったままの左拳又は鞘で殴る
足払いを回避又は気がつかれた場合
反撃された場合
あからさまな殺気に反応し全開のUCと野生の勘・第六感・見切り・咄嗟の一撃・早業による回避か防御からのカウンターで斬りつけるかマルチグレネードで爆破
技能
2回攻撃
だまし討ち
アドリブ共闘可
皆城・白露
(連携・アドリブ歓迎です)
……胸糞悪い奴だと思ったが、置き土産まで胸糞悪い。
(実験施設から逃走、と聞けば、どうしても自分と重ねてしまう
しかしそれ故に、逃げる者、逃げようとする者の考えや動きは察しが付く)
【聞き耳】【情報収集】を利用し対象を【追跡】
発見後は逃走経路を塞ぐように立ち位置を調整
戦闘時は【群狼の記録】使用
血を流しながら己を強化し
踏み込んできた相手に、禍々しい爪状に変化した一対の黒剣で【カウンター】を仕掛ける
そうだ、許せなんて言わない。憎んでも、恨んでも構わない
オレが逝ったら、その時アンタがオレを憶えててくれたら
その時は文句でもなんでも、聞いてやるよ
皆城・白露(モノクローム・f00355)は先程の戦闘があった街道に立っていた。
怪我人を抱えて戻ってきた猟兵から聞いた話によれば、ここで足を斬りつけて放置したとの事。
街道には確かに微かに血の匂いが残っているし、投げ飛ばしたという方向には茂みに隠れてはいるが確かに小さな血だまりが出来ていた。
しかし痕跡はそこにしか無く、辺りには出血からなる道は出来ていなかった。
「……ここで傷口を塞いで洗ったっぽいな」
傷口をきつく縛り、持ち歩いていただろう水で濯いでしまえば跡は残りにくくなる。
だが、白露にはこの後の行動がなんとなくだが読めていた。
その視線の先には鉱山近くの宿場町が映っていた。
同じ頃、大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)は自身の勘が囁くままに宿場町を重点的に探し回っていた。
「……はぁ、そういった御人は見かけておりませんなぁ」
「そうか……すまんな、手間をかけた」
礼もそこそこに何件目かの店を後にする。
いくつかの茶屋や飯処などで聞き込みを繰り返していたが、見かけた気がするという程度の話がいくつか聞けただけだった。
(こうなると、店屋の類ではなく長屋周辺を当たるべきか……?)
そう考えて長屋が立ち並ぶ方へと足を運ぼうとした時、正面から異質な雰囲気を放つ人物が現れた。
セミショートで花柄の着物を女性だ、変な点を挙げるならばその腰に携えた刀とその身体から染み出す死臭だろう。
一瞬足を止めて周囲を確認しながら考える、中央から外へと向けて店屋を巡っていたので辺りには町民はまばらで少ない、町の外縁部にほど近いので建物も気を付ければ問題ない。
(となれば、カマかけてみるか……)
人違いであったならば天下自在符を見せた上で、こちらの事情を話せばそう酷い事にはならないだろう。
そう判断して腕を組んだまま、顎に手をかけて正面からやってくる女剣士とすれ違えるように歩みを進める。
こちらに気付いた様で一瞬視線が上がるが、何も無かったかのように元に戻してすれ違う。
すれ違う瞬間、左手に持っていた黒鞘で相手の鞘にわざと当てる。
それが合図だった。
鞘同士をぶつけた瞬間に、背後から隠す素振りの無い殺気が襲う。
迷う素振りが一切無かった殺意に、咄嗟に【無双の意識】を発動させて即座に魂喰を抜刀して合わせる。
甲高い音が町外れに響いて辺りは静寂に包まれる。
十字の形で互いの居合切りが止まり、一瞬の睨み合いの後に女剣士の方が先に下がる。
砂を擦る音と共に周りの音が返ってきたかの様に騒がしくなり、悲鳴と野次が聞こえ始める。
周囲の様子を忌々しげな顔で睨んだと思うとすぐに零児の方へと向き直す。
互いに正眼に刀を構えて睨み合う。
遠くで町民で呼んだと思われる廻り方が騒がしげにこちらに駆けつけているのが聞こえてくる。
逃がさぬようにと零児が踏み込むと同時に正眼に構えていた刀を下段へと構え直してすくい上げる様に斬りつけた。
しかし、それは見切られていたようで軽いバックステップで躱すと同時に霞の構えとなり、反動を利用してこちらへと飛びかかってくる。
本来ならば振り上げた反動で動きが止まったであろう攻撃だが、素早く刀を素早く切り返してそのまま振り下ろす……燕返しである。
どこへ飛び込んでくるかは相手の殺気で既に見切っていた、確実に合わせた振り下ろしはたたらを踏んで止まった彼女へと落ちる。
しかし、ギリギリの所で防ぐのが間に合った為に斬りつけるまでとはいかなかった。
そしてこれ以上の戦闘は危険と判断したのか素早く手にしている刀を捻り、受け止めた刀を流すと飛ぶように離れた。
それと同時に袖口から何やら小さな袋を取り出してこちらへと投げつける。
思わずそれを切り落とすと途端に顔中に刺激が走る。
「……!! げほっ! げほっ! ……唐がら゛っげほ!!」
投げつけられたのは唐辛子入りの小袋だった。
どこから調達したのか分からないが、それを切り落としてしまいその場で咽る。
それを確認するとこちらを振り返らずに町の外へと駆け出す。
「……アイツは胸糞悪い奴だと思ったが、置き土産まで胸糞悪い」
その逃げ道の先に白露がいた。
両手には禍々しい爪状に変化した一対の黒剣が握られていた。
女剣士は下段に刀を構えて白露を睨みつけるがその足は止まっていない。
あと数歩という所で殺気が膨れ上がり、そしてそれが形となる。
本来ならば目にも止まらない速さなのだろうがかろうじで目で追えた。
事前に零児が使った【無双の意識】が彼女のユーベルコードを縛っていたのだ。
とはいえ自身の鍛錬から生まれた攻撃だ、ユーベルコード特有の絶対性が無くなったとはいえ技が消えた訳ではない。
ギリギリで躱した太刀筋はわき腹を裂く。
痛みを食いしばり回避した勢いのまま1回転して両手に持った剣で斬りつけるとそのまま倒れた。
だが手にした黒剣には手応えはあった。
既に視界にその姿は無いが、足取りの覚束ない音と地面には逃げた”道”が点々と続いている。
「あー……血を流し過ぎたか……」
斬られた傷は深くは無いが、事前に自信を強化するために代償に流した血が多かったのだろう。
ぼんやりとしてきた意識を手放さぬように踏ん張りながら、集まってきた町民達に運ばれるのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携可
…正直な所、複雑だ
オブリビオンとは言え、子を宿しているのだから
だが、晴明の研究の遺産であるなら別だ
それに、自分でも予知して討伐を頼んで、自分がやらないのは筋が通らない
…心を鬼にして、斬る
「地形の利用、情報収集」で予測される逃走経路を把握
無銘を発見したら「目立たない」で接近、背後から「先制攻撃」
「殺気」をぶつけて怯ませながら
腹を狙って「2回攻撃、怪力、鎧無視攻撃」+【憎悪と闘争のダンス・マカブル】(※味方攻撃なし)
ひたすら徹底的に斬り刻むのみ
相手の攻撃は「第六感」で察知し黒剣で「武器受け」
受け損ねたら「オーラ防御、激痛耐性」で軽減を図る
鬼と罵られようが構うもんか
ここで散れ
館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は宿場町の外で複雑な顔をしていた。
相手はオブリビオンとはいえ子を宿しているのだ。
親に罪はあるが、子にその罪があるのかと考えると何とも言えない。
だが、その子供はあの清明の研究の遺産だ。
「……ならば心を鬼にして、一切合切を切り捨てる」
決意を口にして覚悟を決める。
そうこうしている内に町の方から1人の剣士が見えた。
脇腹を押さえて、片足を半ば引きずりながら歩いている。
恐らくあの町の中で猟兵の誰かと戦ってギリギリの所で逃げ出せたのだろう。
その姿を確認すると目立たない様に道の傍らに潜む。
ふらりふらりと満身創痍の体を引きずって目の前を通り過ぎる。
静かに街道に戻って、その背後を追いながらそっと黒剣を抜く。
飛びかかれば十分射程内の距離まで詰めた所で剣を構えて踏み込む。
直前で気づかれたのかゆらりと力が抜けたように振り向くと、まるで鞭の様にしなった抜刀で斬りつけられる。
振り抜かれる前に体を捻り何とか躱すが、オーラ防御を施していなかったらもう少し痛手だったかもしれない。
じくりじくりと痛みを訴える左腕に力を入れて一時的に痛みを誤魔化す。
だが、相手は刀を構えてはいるもののゆらゆらとどこか頼りなく視点もどこか定まっていない。
しかし、時折戻る視点は明らかに逃げ道を探していた。
逃げる先に視線を送った瞬間に、その先に殺気を飛ばす。
そしてびくりと動きが止まったのを見逃さない。
「怒りと憎悪、そして闘争心を力に替えて……貴様を斬り刻む!!」
怒声と共にその瞬間に飛び込んで一気に斬りかかる。
1回2回と最初の内はギリギリで防がれていたが、途中から攻撃に追いつけなくなり守りが間に合わなかったその腹へと斬りつける。
その瞬間、何かを悟った様にその顔が蒼白になった……だが、そんな事で止まる訳にはいかない。
次に切り落としたのは腹へと伸びていた右手だった。
その次は縋るようにこちらへと伸びた左腕だった。
この有様を見た者が居たならば、俺の事を鬼と罵る者が居るかもしれない。
「……構うものか、お前はここで散れ」
誰に言うでもなく呟き、青く光る右目が彼女を骸の海へと導く様にゆらゆらと揺蕩う人魂を思わせた。
そうしてそこに残ったのは僅かな戦闘の跡と、壊れた一振りの刀だけだった。
成功
🔵🔵🔴