エンパイアウォー㉙~偽神転生
●奥羽山中
「晴明も、選りに選って私をこんな邪法の母胎にするなんてね……」
月の綺麗な夜。
妖狐のオブリビオンが一匹、奥羽山脈の山奥を、人目を忍んで駆けていた。
「でも私は晴明の頼み事だけは断れない。たとえ何に背いたとしても」
オブリビオンがまるでお尋ね者のように身を潜めていた。
しかしその表情は子を守る母のように決然としたものだった。
「晴明が望むなら、どんな手を尽くしても、この子を産んでみせるんだから……!」
この邪法に晴明を含む魔軍将の力が宿っているなら、クズノハにとってこれほど愛おしいものもない。
まずは身を隠す為の場所を探して、クズノハは闇夜に紛れて行くのだった。
●グリモアベース
「みんな聞いて!」
集まった猟兵達を前に楜沢・玉藻(金色の天井送り・f04582)が声を掛ける。
「奥羽地方で水晶屍人を倒してくれていたお侍さん達が、安倍晴明の研究施設を発見したの」
研究施設は既に放棄されていたが、調査によってそこで何が研究されていたかを判明することができた。
「『偽神降臨の邪法』、人為的に新たなオブリビオンフォーミュラを産み出そうという恐ろしい実験よ」
これは『有力なオブリビオンの胎内に、魔軍将の力やコルテスが持ち込んだ神の力を宿らせ、その胎内で神を育て出産させる』というものである。
「この邪法が施されたオブリビオンが、研究施設から逃走していることがわかっているわ」
邪法の成立には十月十日の時間が掛かる為、この戦争の間に直ちに脅威になることはないが、放って置けばいずれサムライエンパイアの危機に繋がる可能性がある。
「だからこの邪法を施されたオブリビオンを見付けて退治してほしいの」
しかし邪法を施されたオブリビオンは、隠れ潜んで無事に『神の子を産む』ことに最善を尽くそうとするだろう。
「たぶんだけど、見付けても正面から戦って命を危険に晒したりはしないだろうし、隙があれば逃げ出そうとするはずよ」
対峙する時はオブリビオンを逃がさない為の工夫をした方がいいだろう。
「まだ目の前の戦争が終わっていないけど、平和を脅かすものを見過ごせはしないわ。お願い。みんな、協力して!」
刀道信三
どうも、刀道信三です。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
この儀式で新たなオブリビオンフォーミュラが発生する可能性は高くありません。
しかし強大なオブリビオンが産まれることは間違いないでしょう。
それでは皆さんのプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『妖狐・クズノハ』
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POW : あなたへの嫌がらせはとっても楽しい
【殺傷力のない嫌がらせを行いながら】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD : へぇ、あなたはこういうのが苦手なんだ
自身からレベルm半径内の無機物を【相手の苦手なもの、もしくは苦手な生き物】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ : 猟兵をやっているといつかは本当に起きるかもね
対象のユーベルコードに対し【相手にとって最愛の人物の幻影】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:亜鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「葛乃葉・やすな」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リーキー・オルコル
またまた面倒な話だな
こう言うのはあれだ
深く考えずに倒しちまうのが精神衛生上いいってもんだな
誰も幸せにしない策だ
さっさと潰してしまうのがいい
【マジックスナップ】を使い
膠の入った水風船を用意して敵の周囲から投げ込み退路を断っていく
敵が動こうとしたときは体に潜ませたナイフで牽制して足止めをする
「まずは逃がさないようにだ」
逃げようとしたら足を狙って動きを止める
心を冷やさなきゃこう言うヤツの相手はできない
無心で行け
逃げるのを阻止してるうちに仲間が倒すのが一番だけどな
責任持って一撃入れるのが礼儀ってものだろ
機を見て眉間を狙いありったけのナイフを投げ込む
「恨みはないけどな
死んでもらわなきゃならないんだよ」
「またまた面倒な話だな。こう言うのはあれだ。深く考えずに倒しちまうのが精神衛生上いいってもんだな。誰も幸せにしない策だ。さっさと潰してしまうのがいい」
リーキー・オルコル(ファスト・リー・f05342)は転送地点から山に分け入っていた。
予知で近くまでは送られているのだろうが、探しているのは逃げている相手なので山狩りが必要になる。
リーキーは運良く程なくして標的らしい人影を発見することができた。
「まずは逃がさないようにだ」
膠の入った水風船を『マジックスナップ』でオブリビオンの周囲に投げ込み、進行方向と退路の足場を瞬時に悪くする。
「……話を聞いてくれる気はない?」
妖狐クズノハは戦う気はないというポーズか、両手を挙げながら振り返った。
「悪いが聞く耳持たない」
「っ……そんなこと言わずに少し話させてよ。あなた達、基本的には正義の味方でしょ?」
反応する間もなくクズノハの太腿にナイフが刺さっていた。
お互いに視認できる距離から30分の1秒で投擲されるナイフを、オブリビオンの反射神経を以ってしても回避するのは容易ではない。
「無抵抗の相手を攻撃するのは気が咎めるし、少しは私のこと同情してるんじゃないかな?」
「…………」
リーキーはクズノハの動きを注視して、いつでも服の内側に忍ばせたナイフを投げられるように構えていた。
前提としてオブリビオンは殺さなければならない。
しかし猟兵も機械ではないので倒すのに気分の良し悪しはある。
そういう意味では今回は最悪だ。
リーキーは努めて無心で猟兵としての務めに徹する。
「私もあなた達が命乞いをすれば見逃してくれるとは思ってないよ。ただ生前の私は息子にあまり母親らしいことをしてあげられなかったから、息子のために何かしてあげられるこの機会に、私なりに必死なんだよ」
「……もういい。恨みはないけどな。死んでもらわなきゃならないんだよ」
クズノハが逃げ出す隙を窺う為に喋り続けていることは明白だ。
リーキーはクズノハの眉間を狙ってありったけのナイフを、瞬時にすべて投げ切った。
しかしナイフはクズノハの頭を串刺しにすることなく、大量の水蒸気に変じる。
対面して様子を見ていたのはお互い様。
クズノハもリーキーが攻撃に移る瞬間を見ていたのだ。
『あなたの苦手なものはわからなかったけど、今は霧を好きにはなれないでしょ?』
リーキーの背後、クズノハの逃げたであろう方向ではないところから声がする。
とりあえずリーキーは信号弾代わりになりそうな霊符を、狼煙代わりに上空へと投げるのだった。
成功
🔵🔵🔴
加藤・光廣
んー、逃がすと面倒なことはバカな俺でも分かった
まずは見つけなきゃなんねーな
鼻と勘を頼りに探すか
発見したら容赦はしねー
見た目は可愛いけど臭うんだよ、ヤベー臭いが
こちとら生きるために人殺しもやってきたんだ
今更オブリビオンにかけてやる情なんてないね
まずは逃がさねーようにそのヒラヒラした袖と裾を樹木か地面にスローイングナイフで縫い付けてみるか
躱せるもんなら躱してみな
逃げようとしたら追いかけて力一杯に素早く手を摑まえる
捕まえりゃこっちの思惑通り、一九式は捨てて汚れた牙でUC
そーいや俺、生肉苦手なんだよなー(棒読み)
特に牛馬の
苦手だから目の前に飛んで来たらヤダなー
口にねじ込まれる前にとっとと盗んじまうか?
「んー、逃がすと面倒なことはバカな俺でも分かった。まずは見つけなきゃなんねーな。鼻と勘を頼りに探すか」
加藤・光廣(人狼のグールドライバー・f06416)が転送地点から山に入ると、急に霧が立ち込め、狼煙のように発光する何かが空に上がった。
霧で少し薄くはなっているが、狼煙の近くまで来たことで、光廣は追跡するのに十分なオブリビオンの臭いを捉える。
「居た居た。見た目は可愛いけど臭うんだよ、ヤベー臭いが」
程なくして光廣は妖狐クズノハの姿を見付けた。
木々の間を走りながら投擲用に特化した4本一組のスローイングナイフを放つ。
狙い違わずスローイングナイフは長い袖や裾を木に縫い付け、クズノハが一瞬つんのめっている間に追い付くことができた。
「……一人撒いたと思ったんだけど、あなた達は集団で狐狩りでもしているつもりなの?」
クズノハは光廣を警戒しつつ、服を気にするでもなく手足の力で木とナイフから布を破いて拘束を解く。
「こちとら生きるために人殺しもやってきたんだ。そのヤバそうなのを放って置いて、今更オブリビオンにかけてやる情なんてないね」
目の前にいるオブリビオンは戦意もないし、それほど脅威には感じないものの、その内側からする厭な予感に鼻が曲がりそうだ。
「逃がさねーって言ってんだろ」
視線で退路を探し再び逃げる為に駆け出そうとするクズノハの手首を掴み、強く引っ張る。
クズノハの体勢を崩したところで、一九式突撃銃を手放し愛用のダガー『汚れた牙』を抜いて、シーブズ・ギャンビットをクズノハの急所目掛けて繰り出した。
しかし手の中で汚れた牙の柄の感触が変化し、滑ってベチャリという湿った音を立てる。
「……これは『まんじゅうこわい』的なやつよね」
「そーいや俺、生肉苦手なんだよなー、特に牛馬の」
たっぷり霜降り模様の乗った塊肉を顔面で受け止めたクズノハがジト目で光廣を睨んだ。
ベリッとブロック生肉を剥がすと手首を掴んでいる腕の外側に向かってポイッと投げる。
光廣は咄嗟に霜降り肉へ空いている方の手を伸ばしてしまった。
元は愛用の短剣なので仕方がない。
きっと反射的に肉に反応してしまった訳ではない。
光廣が体勢を崩している隙にクズノハは手を振り解いて逃げ出していた。
その背に向かってスローイングナイフを投げようとするが、それもまた生肉に変換されてしまう。
クズノハを見失ってしまったところで仕方なく、光廣は一九式突撃銃を拾って撃つのだった。
成功
🔵🔵🔴
鞍馬・景正
此度の標的となるオブリビオン、クズノハと申されるか。
伝説に於いて安倍晴明の母である妖狐と同じ名ですが、当事者か、偶然か。
いずれにせよ、為す事には変わりありませぬが。
◆戦闘
物音を殺し、【視力】と【暗視】の術で山中を索敵。
足跡などの追跡や、【第六感】も活かし、発見次第、【紅葉賀】による火矢を周囲に撃ち込み。
炎の壁で退路を塞ぎ、そのまま敵本人へ【怪力】の限りの【早業】で矢の連射を見舞いましょう。
問答は無用、命乞いも無駄。
母殺し、嬰児殺しと糾弾し、狙いを鈍らせるくらいの事はしてくるかも知れませんが――その汚名を背負う【覚悟】は既に出来ております。
それでも、胸に疼痛を奔らせる程度は甘んじて受けますが。
「此度の標的となるオブリビオン、クズノハと申されるか。伝説に於いて安倍晴明の母である妖狐と同じ名ですが、当事者か、偶然か。いずれにせよ、為す事には変わりありませぬが」
鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)は物音を殺し、目を凝らしながら山中を進む。
先程から標的との交戦が続いているのか、度々仲間達からの合図が上がっていた。
合図があった方へと足を向けると、獣道とさえいえない木々の間を我武者羅に駆ける妖狐クズノハの姿を見付ける。
景正は虎落笛に火矢を番えると、クズノハの進行方向へと一射目を放った。
紅葉賀によって強化された燃焼力によって、一矢でクズノハの足を止める。
続く二射目を躱させて、クズノハの側面の樹木を射た。
更に景正の方へと視線を向けている間に三射目。
クズノハがやって来た方向も炎が燃え広がり、三方を炎の壁で囲われる。
「さっきから私が逃げることを前提に退路を断とうとしてるよね」
奇襲の狙撃だけやり過ごせばいいならもっと楽なのにと独り言ちた。
「…………」
問答は無用と景正は4本目の火矢を虎落笛に番え、今度はそれをクズノハに向ける。
「ごめんね、童子丸。母様が生き残れるかは、あなたが生き延びられる可能性と大して変わらないみたい」
剛弓で狙われているにも拘わらず、クズノハは戯けるように肩を竦めてみせた。
「貴女はやはり……」
「あら、お侍さんは私のことを知ってるの?」
今まで散々狐狩りの獲物扱いだったので、嬉しそうに尻尾を振る。
「研究中の邪法で『神の子』が産まれるのと同じくらい低い可能性だけど、私が産めばもしかしたら童子丸……安倍晴明が産まれるかもしれない。そう思わない?」
「……それだけは許す訳にはいきません」
母殺し、嬰児殺しと誹られる覚悟は出来ていた。
しかしクズノハは彼の魔軍将を転生させようと目論んでいたのだ。
明かされた彼女の出自を考えれば無理からぬことかもしれない。
でも、何故それを弓矢を構えられた目の前で語る?
そう疑問が過ぎった時には、既に景正の手から紅葉賀が放たれていた。
射る瞬間と狙いを誘導して、クズノハは正面から飛んで来た火矢を手の平で受け止める。
矢の勢いに肉は裂け骨は砕け、あとは炎で全身が焼き尽くされると思われた。
しかしクズノハは少しの躊躇もなく火矢を受け止めた手首を切断する。
落ちた手首から勢いよく狐火が燃え上がり、景正の視界からクズノハの姿を隠した。
恐らくこの炎に対処している間に、クズノハが手段を選ばず姿を眩ましていることだけは確かである。
成功
🔵🔵🔴
北条・優希斗
連携可
…話ね
聞くだけは聞こうか
…正直アンタの嬰児を守りたいって思いは人間と変わらない
そう考えれば俺はアンタの言う正義の味方じゃ無くて悪の権化だな
でもな、一つだけアンタが忘れていることがある
『正義』は其々だ
そして俺にとってはアンタを殺すことが『正義』なんだよ
好きに罵倒してくれて構わない
俺がアンタを殺すのは変わらないからな
UC+先制攻撃+ダッシュ+地形の利用+情報収集+見切り
でクズノハの退路を断つ様に動きながら肉薄月桂樹で騙し討ち
蒼月、月下美人で二回攻撃+見切り+早業+傷口を抉る+串刺し+薙ぎ払い
必要なら、お腹の子を狙って攻撃
残像+見切り+ダッシュ+ジャンプ+地形の利用で確実に追い詰めて斬り殺す
「やれやれ、流石にもう隠れて逃げるのも限界かな。期待はしてないけど、命乞いを聞いてくれる気はある?」
クズノハの逃げて来た方向からは火の手が上がり、山火事のようになっていた。
片方の手首はなく、服も所々が煤に塗れていたが、目の前に立ち塞がる北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)の隙を探ろうとする視線に諦めの色はない。
「……話ね。聞くだけは聞こうか……正直アンタの嬰児を守りたいって思いは人間と変わらない」
優希斗は刀の柄に手を置き、クズノハが逃げようとすれば、いつでも対応できるように構えつつ会話を続けた。
事ここに至っては会話で時間が長引くことは、クズノハ側にとって不利でしかない。
「じゃあ、このまま見逃してくれる?」
「そう考えれば、俺はアンタの言う正義の味方じゃ無くて悪の権化だな。俺にとってはアンタを殺すことが『正義』なんだよ。『正義』は其々だ」
「そうだよね。この子を産まなくても私がオブリビオンである以上、世界を滅ぼそうとする。あなたは世界にとって正しいと思うよ」
「ああ、だからアンタは俺を好きに罵倒してくれて構わない。俺がアンタを殺すのは変わらないからな」
そう言って優希斗はクズノハに肉薄した。
蒼穹の瞳で視た数秒先の未来で、クズノハは退路を断つように立っていた優希斗から逃げる様子はない。
そのまま漆黒の短剣『月桂樹』を優希斗は突き立てようとした。
「あなたの苦手なものを探ってる余裕がなくてごめんね。それ、私の苦手なものなんだ」
優希斗の手の中で短剣は仔犬に姿を変えていた。
「くっ……」
優希斗は素早く抜刀して、二振りの刀でクズノハを斬り伏せようとするが、それもまた犬に変換される。
「あなたの使う武器が無機物ばかりで助かったよ」
そう言い残してクズノハは優希斗を振り返ることなく駆け去っていた。
苦戦
🔵🔴🔴
神籬・イソラ
――いのちの名を冠する御方の、置き土産
新しき生命は、さぞやいと惜しいことでしょう
しかし、結び違えた『霊の緒(タマノヲ)』を前に
見過ごすことはできませぬ
お守りの「追跡・失せ物探し」で妖狐の元へ
逃げても追い続けます
想い人はすでに彼岸の住人ゆえ
攻撃は痛みのみ受けましょう
クズノハ様
あなた様の胎から生まれ落ちる子は
理を歪められた存在
猟兵は決して見過ごしはしませぬ
真に子を想い、命を慈しむのなら
生きてほしいと望むなら
あなた様と子のお命を
わたくしにお預けくださいませ
【巫覡載霊の舞】で神霊体に変身し
身体を傷つけるのではなく、霊を断つ業にて
ふたつの御魂を正しき輪廻へと送りましょう
いつか母子として生きられるよう――
「――いのちの名を冠する御方の、置き土産。新しき生命は、さぞやいと惜しいことでしょう」
夜の闇から溶け出すように神籬・イソラ(霊の緒・f11232)が妖狐クズノハの前に現れる。
「いのちの名? ……ああ、セイメイのことね」
「しかし、結び違えた『霊の緒』を前に、見過ごすことはできませぬ」
そう言ってイソラは薙刀を構え、その刃をクズノハへと向けた。
「クズノハ様、あなた様の胎から生まれ落ちる子は理を歪められた存在。猟兵は決して見過ごしはしませぬ」
「そうだね。世界から選ばれたあなた達が、強力なオブリビオンが産まれるとわかっていて、放って置いてはくれないよね」
「真に子を想い、命を慈しむのなら、生きてほしいと望むなら、あなた様と子のお命を、わたくしにお預けくださいませ」
「ごめんなさい。この子だけじゃなくて、息子との約束なの。あなたに預けることはできないよ」
「仕方ありません。ふたつの御魂を正しき輪廻へと送りましょう。いつか母子として生きられるよう――」
巫覡載霊の舞で神霊体になると、クズノハとの間合いを詰めつつ薙刀を振り被る。
神霊体の力で薙刀の刃からは衝撃波が生まれ、伸びた斬撃が木々を伐り倒しながらクズノハに迫った。
(「想い人はすでに彼岸の住人ゆえ、これはまやかしに違いありません」)
刃の先に人影が現れるが、微かな心の痛みだけ、イソラの切っ先が鈍ることはなかった。
「…………!?」
幻影ごとクズノハを断ち切ろうとしたその矢先、その幻影を突き破るようにして、クズノハがイソラの懐に飛び込んで来た。
長柄の武器の薙ぎは、その刀身の内側であっても敵を打つことができる。
しかし今回の一撃でイソラは薙刀の刀身、或いはそこから伸びる衝撃波でクズノハを斬ろうとしていた。
薙刀の柄に体当たりして来たクズノハの、腕の骨を折った手応えを感じる。
だが芯を外されたことで、取り落とすことはなかったものの、薙刀を握る手が緩む。
その隙に痛みを感じさせない加速で、クズノハはイソラの脇を駆け抜ける。
「世界から忘れ去られ、歪んだ理の中で、ようやく一緒になれた母子もいるんだよ」
すれ違い様にそう言い残して、クズノハは山の奥へと去って行った。
成功
🔵🔵🔴
クラウン・アンダーウッド
相手がオブリビオンなら女子供であろうがボクは一切容赦しない。キミの意思も矜持も所詮無価値さ。なぜなら全部まとめて骸の海に還してあげるからさ♪
キミはこの子の迷路にご招待しよう。δ!忘却の森!
対象は妖狐・クズノハ。迷路内では、記憶も知識も経験も何もかも忘れさせる。
はてさてキミがまだ覚えていることは何かな?答えてくれたらいい研究材料になるからさ♪
8体のからくり人形と共に空中機動で移動しながら、人形は投げナイフで、主人はガントレットで執拗に攻撃する。
あえて出口に誘導し、相手に希望を与えてからの出口前に配置した人形のUC(人形個体能力・タイプβ)を発動
あえてもう一度言おう。ボクは一切容赦しない♪
「相手がオブリビオンなら女子供であろうがボクは一切容赦しない。キミの意思も矜持も所詮無価値さ。なぜなら全部まとめて骸の海に還してあげるからさ♪」
クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)は樹上から妖狐クズノハを見下ろしていた。
「キミはこの子の迷路にご招待しよう。δ! 忘却の森!」
既に道ですらない木々の間を走るクズノハを、木が柵のように囲いながら、樹海の迷路に閉じ込めていく。
(「これは……まずいかな……」)
δの固有能力によって、どんどん意識が胡乱になっていき、クズノハはまだ動く方の手で頭を押さえつつ足を止めた。
「はてさてキミがまだ覚えていることは何かな? 答えてくれたらいい研究材料になるからさ♪」
クラウンはガントレットを装着した腕を構えながら、空中機動で俯き動きを止めたクズノハへ向かって飛び降りる。
腕を覆う白磁のように滑らかな鉄塊が、落下の勢いも乗せてクズノハの頭蓋を打ち砕くと思ったその時、攻撃に反応するようにクズノハが跳躍した。
「おかしいな。記憶も知識も経験も何もかも忘れている筈なのに……」
体を起こしながらクズノハの表情を窺うことでクラウンは気付いた。
クラウンを見るクズノハの瞳に、凡そヒトらしい知性の色がない。
威嚇するように唸りながら睨んでくるその姿は、獣のそれに近い。
恐らく急速に忘却が進む中で、クズノハはそれを猟兵の攻撃と考え、自分に狐レベルまで知性を下げる自己暗示の術でも掛けたのだろう。
「やれやれ、これじゃ何かを聞くことはできそうにないね♪」
クラウンは8体のからくり人形を操ると、一斉にナイフを投擲させた。
クズノハは意思を忘れることで動けなくなることを避ける為の暗示により、飛来するナイフを反射的に躱そうと飛び跳ねる。
今まで意思力で押さえ込んでいた片腕の痛みを堪えられずに庇うような動きになるが、ナイフを避け切れない時に動かない腕を盾にするという生存の為の判断は変わらなかった。
出口に向かって逃走を始めたクズノハの姿を見失わないように、8体のからくり人形と共に空中浮遊で俯瞰するクラウンの目には、迷路実験のネズミならぬキツネのようなクズノハの姿が映る。
迷路の中を高速で疾走する標的を投げナイフだけで仕留めるのは難しい。
だからクラウンは敢えてクズノハを出口へ誘導するように人形達にナイフを投げ続けさせた。
迷路の出口には1体のからくり人形が置かれている。
それを目にしたクズノハは全身が粟立つのを覚え、出口に向かってスパートを掛けた。
あの人形は危険だと頭の中を全力で警鐘が響く。
「あえてもう一度言おう。ボクは一切容赦しない♪ β! 終焉の大火!」
からくり人形が劫火のオーラを無差別に放出する寸前、クズノハは走り高跳びの要領でからくり人形の頭上を跳び越えた。
「オブリビオンに物忘れをさせるなんて皮肉にもほどがあるよ……!」
迷路の外に出た瞬間、意識を取り戻したクズノハは目に付く無機物を無差別に水蒸気に変換した。
βの放つオーラに吹き飛ばされ、炎に巻かれながら、クズノハはクラウンの視界から逃れるように、朧な人型の幻影を目眩ましの為に大量に投影する。
しばらくの間、その幻影が山の夜闇の前から消えることはなかった。
成功
🔵🔵🔴
石守・舞花
いしがみさんは正義の味方ではありません
あなたたちオブリビオンにとっての、悪です
【クロックアップスピード】使用
高速移動で逃げ道に回り込んで、絶対逃がさないように薙刀で牽制して足止めします
隙があれば脚を狙って【部位破壊】
逃げられないように動きを封じます
苦手なものは、いわゆる火星人タイプのエイリアン
苦手なので、目の前に出てきたら何のためらいもなく【なぎ払い】ます
ついでに敵本体も巻き込めたらいいですね
間合いに入ったら、魔切り包丁でお腹を捌くように【部位破壊】
中身をえぐり出すように【生命力吸収】
大丈夫、あなたのお腹の子は神石様のエネルギーとして末永く生きてくれるはずです
「つらそうですね」
「せっかく晴明とも会えて、頼ってもらえた今回だけは、もう少し生き延びたかったんだけどなぁ……」
石守・舞花(神石の巫女・f17791)が近付くと、妖狐クズノハは辛うじて木にもたれかかることで立っているような状態であった。
「いしがみさんは正義の味方ではありません。あなたたちオブリビオンにとっての、悪です」
「これは私の都合だから、あなたがオブリビオンを狩ることは間違ってはいないよ」
「…………」
パチンと舞花は指を鳴らすと、クズノハの視界から消えるように背後へと回り込む。
諦めたような態度を取っていながら、クズノハは目で追えていない舞花の方に霊符を放った。
木を背にしていることで、自ずとクズノハの死角になる場所は限られていた。
霊符は山の樹木ほどもある軟体生物の様な火星人型エイリアンに変化する。
「ああ、これはヌメヌメしていて苦手ですね。苦手だから……」
一秒でも見ていたくないと、舞花は焔薙刀『狐百合』で火星人型エイリアンの胴を躊躇いなく薙ぎ払った。
火星人型エイリアンを溶断した狐百合が、返す刀でクズノハの脛を斬る。
腕が動かない分、重心の乗った足を切断され、クズノハは背中から地面に転倒した。
倒れたクズノハに追い打ちを掛けるべく一歩踏み出した舞花に、クズノハは握り込んだ霊符を投げ付けようとする。
攻性術式の真言が込められた霊符を、舞花は狐百合の刀身をクズノハの肩口に突き立てることで止めた。
「大丈夫、あなたのお腹の子は神石様のエネルギーとして末永く生きてくれるはずです」
クズノハの腰の上に乗り、両手で握った魔切り包丁をストンと腹部に落とす。
最早両腕の動かないクズノハは上半身を起こすことも出来ない。
舞花は魔切り包丁を根元まで突き入れたまま、鍋でも掻き混ぜる様にクズノハの腑をズタズタにしていった。
「あなたの神さまは、『過去』を供物にしてくれるのね……それなら、忘れ去られるより、この子も……」
神石を鎮めるため、舞花はクズノハが事切れるまで、魔切り包丁で執拗に贄を捧げ続けたのだった。
大成功
🔵🔵🔵