7
エンパイアウォー㉙~邪神を宿し母の愛

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー


0





「――ああ、神にして地上に顕現せし至上の御方。貴方様を孕んだわらわは、なんと幸福な事か……!」
 『三姫』かぐや姫は奥羽の山脈を超え、海を目指していた。彼女の脳裏には、一分一秒でも早く戦場と化した奥羽周辺から逃れなければならない、そんな強迫観念じみた逃走本能が植え付けられている。高貴な着物を泥と水晶屍人の残骸で汚しても気にはしない。艶のある黒髪は額に張り付き、そこにサムライエンパイアの男を誑かす事を喜びとする悪の妖怪の面影は微塵もなかった。
 その両の手で愛おしむように腹を撫で、悪意の代わりにただただ、そこに宿った命に対する母性のみがあった。
「守らねば、守らねば! わらわが守らずして誰が守る! そして生むのだ、至上の御方を!」
 それは、狂気と呼んで差支えがない想い。
 そして、人と変わらぬ我が子への愛にも似ていた……。


「みんな、心して聞いて欲しいのだ! 無事に水晶屍人の掃討を終えた奥羽地方だけど、そこでなんと清明の拠点と思われる研究施設が発見されたのだ!」
 戦争においてはやる気や気概というものを一切感じさせなかった魔軍将・陰陽師『安倍晴明』。だがその裏では、どうやら恐ろしい研究を行っていたようだ。月詠・色葉(ロリ系焦熱妖狐のアーチャー・f03028)が説明する。
「その研究の内容は、神の出産。ここで言う神とは、オブリビオンフォーミュラの事なのだ」
 有力な女性型オブリビオンの胎内に、晴明を含む魔軍将の力やコルテスが持ち込んだ神の力を宿らせ、出産させる。つまりは、人為的なオブリビオンフォーミュラの創造。安倍晴明流に言うならば、『偽神』を降臨させる邪法だ。
「何より恐ろしいのは、既にその実験は着手された後……という事なのだ! 肝心の研究施設は放棄された後で、匿われていた力を胎内に宿す複数のオブリビオは逃走した可能性が高いとの報告が、掃討戦を行っていた武士達からあがって来ているのだ!」
 色葉が大きく息を吸い込む。
「転生には10月10日の日数が掛かるそうで、戦争の帰趨に影響は与えないみたい。だけど戦後のサムライエンパイアへの大きな脅威に繋がる事間違いなしなのだ!」
 転生の邪法で、実際にオブリビオンフォーミュラが発生する可能性は高くない。だが仮にオブリビオンフォーミュラになれなくても、徳川の世を転覆させるような大事件を引き起こす強力なオブリビオンが生まれる事になるだろう。
「予知で見た限り、みんなに追ってもらう『三姫』かぐや姫は『胎内に宿った神の子』を至上の存在だと認識させられているみたいなのだ。戦闘が開始しても隙を見せれば逃げ出すことを最優先とすると思うから、注意して欲しいのだ! お願いみんな! 逃げ出したかぐや姫を見つけ出し、必ず撃破して欲しいのだ!」


ハル
 =============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 =============================

 皆様、お世話になっております、ハルです。

『三姫』かぐや姫は10月10日の間、隠れ潜み、無事に『神の子を産む』ために最善を尽くそうとします。
 現在は海路での奥羽脱出も視野に入れ、海辺を眺められる森の中に身を潜めているようです。また、戦闘中も隙があれば逃げ出そうとします。

 当シナリオが戦争終了までに、成功シナリオ数が10本以上となった場合、転生の邪法は完全に阻止できます。

 では、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
58




第1章 ボス戦 『『三姫』かぐや姫』

POW   :    【ダブルUC】龍の首の球+燕の子安貝
【龍の首の球を媒体に、炎を吐き攻撃する七体】【の巨大な龍を召喚する。また、燕の子安貝の】【自軍強化能力(召喚した龍も対象)の効果】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    【ダブルUC】不死の薬+蓬莱の玉の枝
【不死の薬を飲む事で自身に常時回復効果を付】【与する。また、蓬莱の玉の枝を翳す事で発生】【した、七色の魔力球から高命中のレーザー】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    【ダブルUC】仏の御石の鉢+火鼠の裘
【仏の御石の鉢を媒体に、上空に月の使者達】の霊を召喚する。これは【レーザーの弾幕で敵を攻撃する。また、かぐ】や【姫は火鼠の裘を纏う事で、高威力の火炎弾】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:桐ノ瀬

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エスペラ・アルベール
お腹の子ごと、か……気分が良くなる戦いじゃなさそうだけど、それがみんなの笑顔のためなら、躊躇わないっ!

潜伏予測地点の近辺でフォニックソナーを起動して正確な相手の位置を探るよ。視覚を欺いても、歌声からは隠れられないっ!【歌唱】
敵を発見できたら【メイディアシンフォニー】で攻撃、フォニックソナーはそのまま起動し続けて、逃走されてもすぐ見つけられるようにしておくよっ
火炎弾やレーザーは【見切り】ながら飛行魔法(【空中戦・空中浮遊】)を駆使して回避しつつ、上空の使者を巻き込むように歌い続けるっ
今を生きる人達の笑顔を奪うお前達を、ボクは絶対に許さないっ!!

アドリブ連携等、なんでもOKです


鈴木・志乃
※人格名『昨夜』で参加
こんなことが許されてたまるもんですか
ええ、まったくやっていられませんね
……虚しい

志乃、力を貸してね
UCは決まってる
問題は発動タイミングと接近方法……
第六感で居所と動きを見切り光の鎖で足払い、なぎ払いの転倒を狙いましょう
そのまま念動力で早業ロープワークで縛り上げ、UC発動
意思そのものを消し飛ばしてしまいましょう
この方には大変申し訳ないのですが、そうでもしなければまた世が魑魅魍魎に溢れてしまうから

オーラ防御常時発動
全ての行動に祈り、破魔、呪詛耐性を付与します
邪法が一瞬でも緩めば、そこに付け入り光の鎖の衝撃波の一撃を叩き込みましょうとも




 ――こんな気持ち、知らなかった。
 自分自身よりも明確に大切なものがあるという実感。『三姫』かぐや姫を突き動かすものは、まさにオブリビオンよりも人としてのそれに近しい未知の心。
 そして、恐ろしい。大切な存在を奪われる事が、何よりも恐ろしい。
「ああ、至上の御方! 貴方様の存在を己がの内に感じられまする……!」
 かぐや姫の腹中で、強大な力が鳴動する。猟兵やサムライエンパイアの住民にとっては脅威に他ならないその存在。だがかぐや姫にとっては、紛れもない我が子。自分自身の存在が矮小に感じられる程の愛を込めて、海と森の狭間にしゃがみ込むかぐやは恍惚と腹を撫でた。

(「……気分が良くなる戦いじゃなさそうだね」)
 快活な笑顔が常のエスペラ・アルベール(元気爆発笑顔の少女・f00095)の表情には、珍しく暗さが混じっていた。かぐや姫の子は、将来必ず世界に災いを齎す。だが、そのために災いの子を幼いうちに害するのは果たして正しい事なのか。過去からの侵略者とはいえ、躊躇なくという訳にはいかないのだろう。仮に安倍晴明がそういった感情の揺らぎすら計算に入れているのだとしたら……エスペラはそこまで考えて、フォニックソナーで反響させていた明瞭美麗な歌声を止める。
「綺麗な歌声ですね」
 その歌声に、鈴木・志乃(ブラック・f12101)――ではなく彼女の肉体に憑依した昨夜が薄っすらと微笑んだ。一時の癒し。だがその癒しも、エスペラが続けた言葉によって塗りつぶされる。
「視覚を欺いても、ボクの歌声からは隠れられない。……うん、正確な位置が分かったよ」
 エスペラが海風が流れ込む木々の先に視線を向けた。
 そしてそれは、
「志乃、力を貸してくれてありがとう」
 昨夜の第六感が訴える方角と、同一のもの。
「みんなの笑顔のためなら、躊躇わないっ!」
 迷いを振り切るように、エスペラが気配のする場所に向けて一歩踏み出した。
「まったくやっていられませんね……虚しい」
 昨夜もその後に続きながら、大きく息を吐き出した。


「これは傷つけるための歌じゃない、笑顔を守るための歌!」
 躊躇いはない、そう強く断じた自身の覚悟を証明するように、かぐや姫を発見したエスペラが冷酷にかぐや姫を睨みつけ、歌声に魔力を込めて放出する。
「くっ、そなたらは!?」
 かぐや姫は目を剝いた。そして庇うお腹を守らせるように、仏の御石の鉢を媒体にして月の使者達を召喚する。使者がレーザーで、かぐや姫が火炎弾を放つも、エスペラはそれら攻撃を見切って空中から歌声をかぐや姫に叩きつける。
(「さぁ、一体どう考えますか。応戦でしょうか、それとも――」)
 昨夜の視界の先で、かぐや姫は鋭い瞳で周囲に視線を這わせていた。
「やっぱり、そう来ますか」
 そこに、果敢に戦いに挑む者の覚悟はない。むしろ逆。なんとしてでも生き残ろうとする執念のみがあった。だからかぐや姫が使者達を囮に逃走しようと立ち上がった時、昨夜が罠のように仕掛けていた光の鎖に足を絡め取られるのは必然。
「――ッッ!!」
 足を絡め取った光の鎖が薙ぎ払われ、かぐや姫がバランスを崩す。そして昨夜は早業で、かぐた姫を鎖で縛り上げた。
「ごめん、神様。あたしこの絶望を希望に変えたい」
 かぐや姫がもんどり打ちながら、腹部だけを懸命に庇おうとしている。見るに堪えない。
「意思そのものを消し飛ばしてしまいましょう」
 全身を光に変えた昨夜がかぐや姫のお腹にそっと手を触れ、ありったけの祈りと破魔の力を注ぎ込んだ。
「そ、そなたらアアアァァァァ!!?」
 誰を狙い撃ちにしているか明白な攻撃に、かぐや姫の形相が鬼となる。顎に炎を渦巻かせる七体の巨大な竜が召喚され、昨夜を襲った。昨夜は冷静に龍の攻撃をオーラで防ぎながらも――。
「ちょっとだけ堅くなったみたいだね!」
 エスペラの呟きに小さく頷いた。かぐや姫は自軍強化能力の全てを防御力に回しているのだ。
「今を生きる人達の笑顔を奪うお前達を、ボクは絶対に許さないっ!!」
 エスペラが歌声に、より一層の敵意を込めた。
「大変申し訳ないのですが、そうでもしなければまた世が魑魅魍魎に溢れてしまうから」
 戦争中のサムライエンパイアの戦場に、昨夜は幾度も飛び込んだ。放置すれば、その戦いの成果も、犠牲者も無となってしまいかねない。昨夜は祈りによって邪法が緩む瞬間を狙い、光の鎖による衝撃波を叩き込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

祇条・結月
オブリビオンが守るために必死なんて姿をみることになんて
でも、だから油断も……同情も捨てる
行くよ

森に隠れてるっていうなら十分警戒しながら、【忍び足】で進む
先手を取られないように【第六感】を信じて行動するよ

交戦状態になったらとにかく敵の攻撃の隙を与えないように手数で攻める
苦無を【スナイパー】で【投擲】、できれば足に当てて短い間でも動きを鈍らせていって
見失わないように銀の糸を【ロープワーク】で絡めて捕まえる

火力不足だろうし、無理やり抜けられるかも
攻撃も激しいだろうし、形勢不利なら迷わず≪鍵ノ悪魔≫を降ろす
光線は透過して躱して
……常時回復は後付けでしょ? そういう境界を切り分けて咎人の鍵を振るう




「オブリビオンが守るために必死なんて姿をみることになんてね」
 猟兵を憎悪するはずの『三姫』かぐや姫が、猟兵に背を向ける。それはまるで、かぐや姫と猟兵――祇条・結月(キーメイカー・f02067)達による追いかけっこの様相を呈していた。唯一違うのは、結月が口にしたように、かぐや姫は守るために死に物狂いとなっている点であろう。
(「僕の第六感を信じていけば、大丈夫だ」)
 結月はかぐや姫の後を忍び足で追い縋る。
「でも、そう時間もかけてはいられないな」
 かぐや姫は不死の薬を飲むことで、常時回復が可能だ。時間をかけすぎれば、仲間が与えたダメージすらも回復されてしまう。
「そこだね!」
 ゆえ、先手先手を狙い、手数多く結月は攻め立てる。苦無を逃走するかぐや姫の足に狙いを定め、勢い良く投擲する。
「――うぐっ、っ」
 手応えあり。結月はさらに、銀の鍵から生成した銀糸でかぐや姫を拘束しようとするが、すかさず巨大な龍と月の使者達がかぐや姫の補助と援護に回って防がれた。
「火力不足だし、そう上手くはいかないか」
 巨大な龍と月の使者達に加え、七色の魔力球から乱発される高命中のレーザーが結月に狙いを定めている。
「……僕を、見るな」
 対抗し、結月は自身に鍵をかけた。ユーベルコードを封じられないようにレーザーを透過してやり過ごし、
「……常時回復は後付けでしょ? そういう境界を切り分けるのが、鍵ノ悪魔だ」
 宿した境界を統べる権能を解放する。
「油断も……同情も僕は捨てた。だから――行くよ?」
「わらわと御方に触れるでないッ!」
 続けて咎人の鍵が、かぐや姫が繰り出す攻撃と防御を無視して、縫い留めるようにその心に深々と突き刺さる。
 力の代償に、結月の赤い瞳から同じ色をした血が溢れ出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<誘惑の呪詛>宿し呪詛/呪操る

新たな命を宿し育む行為と
子を守ろうとする思いを利用するとは…
彼女にとって猟兵は悪鬼羅刹でしょうね

《幻影兵団》形状:狼、材質:影、群れで召喚
<第六感>併用感覚リンク
命下す「討ち取るまで追い続けなさい」
『偽神』を宿す以上、異質な力も宿す
捜索範囲が絞れているなら追跡可能
<情報収集>と共有を

▼発見後
<生命力吸収の呪>乗せ噛み付きや影の槍に変化させ攻撃。
敵の攻撃には実体化の解除や影に潜む事で対処。
自身は距離を置き、回避の余裕作り、
数が減れば追加召喚<早業:高速詠唱・2回攻撃>
一度でも命中すれば残る呪詛辿り追走容易に。
無理な追撃はせず存在感の薄さ活かし奇襲中心




「――安倍晴明……矛を交える機会もありましたが、やはり碌でもない男のようですね。子を守ろうとする思いを利用するとは……これも戯れに過ぎないとでも言うのでしょうか?」
 月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)の義体と未熟な心では、母の気持ちは想像する事しかできない。だがそんなユイでも、現在の『三姫』かぐや姫の心情は察するに余りある。
「彼女にとって、私達猟兵は悪鬼羅刹でしょうね」
 それでも、ユイ達はかぐや姫を見逃す訳にはいかないのだ。
「(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。幻影体生成、共有同調)来たれ…」
 粛々と、ユイは手を翳す。するとユイの眼前に、変幻自在の幻影体が複数召喚された。気配や存在感といったものが皆無に等しい幻影兵団に五感を同調させ、ユイは命を下す。
「討ち取るまで追い続けなさい」
 慈悲はない。かの安倍晴明が関わっているとなれば、なおさらだ。
「『偽神』を宿す以上、異質な力も宿しているはず」
 そして何よりも、間違いなくかぐや姫はユイ達猟兵を呪っている。であるならば、ユイに探知できない道理はなかった。

「この御方だけは、至上の御方だけは殺させぬ! 」
「私を呪いなさい。その呪い諸共、喰らってあげます」
 ユイは<生命力吸収の呪>を宿し、顎や影の槍に変化させた幻影兵団でかぐや姫の背中を追い縋る。その中で月の使者達が盾となり、次々と消滅していった。やがて防御を喰い破るように、影の顎がかぐや姫に迫る。
「至高の御方を無事に産むまで、わらわも死ぬ訳にはいかんのだ! そのためならばこの身がどうなろうとも構わぬわ!!」
 かぐや姫も使者にレーザー弾幕を張らせ、火炎弾を放ってユイの攻撃の手を緩めさせようと攻めてて来た。
 ――が!
「残念ですが、それは私と五感を同調させた幻影に過ぎません」
 幻影兵団は五感を同調させているゆえに痛みを受ける事もある。だが、同時に幻影ゆえに無理も利く。形状変化で弾幕を掻い潜り、実体化を解除して火炎弾を無効化する。
 ユイ本人は激しさを増す戦場から少し距離を置き、いつでも直接攻撃を回避できる態勢を整えていた。
「……残酷な一時を長引かせる趣味はありません。終わりにしましょう。逃げても無駄です」
 ユイが、形勢不利を察して脱兎の如く駆け出すかぐや姫に冷たく言い放つ。幻影兵団がかぐや姫に刻んだ呪詛は、ユイによるかぐや姫の追尾をより容易にしている。ユイは「(共鳴――)」高速詠唱で幻影兵団の増援を召喚して同調すると、死神の如く気配を殺し、かぐや姫の後を追った。

成功 🔵​🔵​🔴​

巫代居・門
ったく、気の滅入る汚れ仕事だな
いや、俺みたいな奴にゃお似合い、ってか

UC『禍羽牙』で居場所を探し【情報収集】、【目立たない】よう、ある程度まで近付いて、UC『不寝鏡』鼠の幻影を走らせる

【恐怖を与える】連想した通り死を迎える鼠を見た者に同じ傷、死に様を遷す【呪詛】での【暗殺】

はあ、流石にバレるか
しかたねえ

レーザーや火の玉は【破魔】を纏わせた忌縫爪で、出来るだけ弾き、軽減しながら【激痛耐性】【呪詛耐性】で耐えながら、前に出て【カウンター】

その腹が大事ならさ、自分が被弾するのは躊躇うだろ

ああ、そうかよ。好きに恨めよ。
俺だって自分が嫌になる
オブリビオンつっても、そんな状態を殺すなんてのはよ

アドリブ歓迎


二天堂・たま
…ソレがどんな未来を呼ぶとしても、母親は常に愛児の味方なのだろう。
その在り方を否定はしない。ワタシを孕婦を狙う悪鬼と呼ぶなら甘んじて受けよう。
ワタシは猟兵であって、正義の味方じゃない。

最も優先すべきは逃亡の阻止、ボビンケースの糸で罠を張る。
見やすい位置に鋼糸、見えにくい位置にカーボン繊維を張れば逃走は困難になる。

攻撃はUC:アルダワ流錬金術で無機物を“水”に変え、操作する。
水面は時に鏡となる。
水鏡を以って、月の使者達が放つレーザーを反射するのだ。
火炎弾で妨害してくるならそのまま水で受け、霧に変えて視界を奪う。
霧の中ではレーザーも散乱して威力も鈍る。
忍び足で近づき、ケットシーの肉球をお見舞いだ。




「罠を張る必要、もしかしたらなかったかもしれねぇな」
「そんな事はない。いつ何時も備えは必要だとも」
 巫代居・門(ふとっちょ根暗マンサー・f20963)が、正面から目を逸らすようにして頭を掻いた。そこにひよこに騎乗して移動する二天堂・たま(神速の料理人・f14723)が追い付くと、鋼糸の囮の傍でカーボン繊維の糸を使った罠がきちんと作動している様子に、「……ふむ」そう頷きながら顎下のモフモフとした毛並みを扱いた。
「……ハァ……ハァッ……ハァ………ッッ……!!」
 『三姫』かぐや姫の様子は酷いものであった。少なくとも、門が思わず目を逸らしてしまう程度には。着用している着物や露出している肌は汚泥に穢れ、憎悪に塗れた血走った瞳を門とたまに向けている。ダメージは色濃く息は乱れ、かぐや姫がいくら狂ったように逃走しようとも、最早発見するのは容易であった。
(「そりゃそうか。血痕や這いずった痕跡があれだけ残ってりゃな……」)
 門が見る限り、痕跡を消す余裕がかぐや姫にはもうないのであろう。
 おまけに召喚した龍や月の使者の姿も残り少なくなっている。
「……ハァ……ハァッ……猟兵よ、取引だ。わらわは殺しても構わん。その代わり、至高の御方には手を出すな……!」
 かぐや姫が、まるで首を差し出すように頭を垂れる。しかし、神の子を産むには10月10日が必要。ゆえ、これは猟兵を油断させるためのブラフと考えて間違いない。
 だが頭を垂れているのは、サムライエンパイアの男を手玉に取り続けたオブリビオンである。
(「……ソレがどんな未来を呼ぶとしても、母親は常に愛児の味方なのだろう。だがな――」)
 たとえその裏に何らかの思惑が隠されていようとも……たまは緑色の瞳を薄っすらと開き、
「断る。ワタシを孕婦を狙う悪鬼と呼ぶなら甘んじて受けよう。ワタシを猟兵であって、正義の味方じゃない」
 そう、正義の味方であるならば、たま達はこの場にそもそもいなかったであろう。サムライエンパイアで進行しているのは、互いの存在を賭けた戦争。綺麗ごとだけで解決はしまい。
「――そういう訳でお前の餓鬼、殺すぜ?」
「……ッッ!!??」
 やがて門が、あえて強い口調でそう言った。瞬間ドロドロとした憎悪に塗れた視線が門を射貫く。そして、同時にかぐや姫に喪失の恐怖を与えた。
「なあ、何が見えたんだ?」
「……ひっ、かはッ……!」
 恐怖は死を連想させる鼠の幻影を生み出し、かぐや姫の脳裏に子と共に死に至る姿が想起させる。
(「これで逝ってくれれば……」)
 連想した死の苦痛が、衝撃が、喪失感が呪詛となってかぐや姫を襲う。
「アアアアアアアアアア!! わらわの子だ、殺させぬ、殺させぬぞオオオオオオ!!!!」
「はあ、流石にバレるか。しかたねえ」
 だが、後一歩で静かなる死を門が与える間際、かぐや姫の胎内で命が脈動し、踏み止まる。
「窮鼠猫を噛む、という奴だな」
 たまが呟くと、激昂に反応した月の使者達が一斉にレーザー弾幕を展開する。
「ちちんぷいっ!と」
 殺到するレーザーに、たまは周囲の空気を水に変換し、水鏡としてレーザーを反射させた。
「キミも問題はないだろう?」
「俺には問題があるが、武器やUDCがなんとかしてくれるだろ……たぶん」
 たまの問いに門は自信なさげに返すが、それでもレーザーを忌縫爪でいい感じに捌いていく。
「炎も来るぞ」
「死ねえええええエエエエエエエ!!」
 続けて弾幕を隠れ蓑に、かぐや姫が火炎弾を発射する。たまがそれを水で受けると、蒸発して霧となった。
「ケットシーの肉球をお見舞いだ」
 そして今度は猟兵側が霧を隠れ蓑にソッとかぐや姫に接近し、たまが肉球を叩き込んだ。
「がはッ――く、来るなァアア!! し、至高の御方を害せば、おぬしら絶対に許さんぞー?!」
 まさに絶体絶命。この状況でも、かぐや姫は自身を二の次に、お腹を抱えるようにしゃがみ込む。
「ああ、そうかよ。好きに恨めよ」
 決死の覚悟で放たれた二発目の火炎弾を突っ切るように、門が飛び出してくる。その身体には小さな火傷が所々刻まれていたが、(「俺だって自分が嫌になる。オブリビオンつっても、そんな状態を殺すなんてのはよ」)心の痛みに比べれば些事同然だ。
 それでも、止まる訳にはいかない。カウンター気味に振るわれた門の忌縫爪が、かぐや姫を抉る。それは明らかな致命傷であり――。
「ったく、気の滅入る汚れ仕事だな。………………いや、俺みたいな奴にゃお似合い、ってか」
 オブリビオンは過去の存在。そう知ってなお忌縫爪を通じて確かに感じた二人分の命に、門は小さく自嘲するような笑みを浮かべるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月22日
宿敵 『『三姫』かぐや姫』 を撃破!


挿絵イラスト