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エンパイアウォー㉙~おまえはややこをころすのか?

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●奥羽山中
 草木を分け、得物たる棍を杖にするのは渡来の娘。
 時折、胎に手を当てれば笑みを浮かべ、決意に満ちた目で歩く。
 それはまるで母の様。
 それはまるで母の様。

●グリモアベース
「水晶屍人の掃討を終えた奥羽地方で清明の拠点と思われる研究施設が発見された」
 トラガン・ストイコブッチ(ブッチ軍曹・f04410)が濁った眼で煙草を吸いながら皆へと口を開く。
「研究施設は既に放棄された後だが、調査の結果『偽神降臨の邪法』というものを行う施設と判明した」
 深くため息、紫煙が漂う。
「偽神降臨の邪法って奴は、有力なオブリビオンの胎内に、魔軍将の力やコルテスが持ち込んだ神の力を宿らせ、その胎内で神を育て出産させる――人為的にオブリビオンフォーミュラを産みだそうという方法らしい」
 再び皆を見る、ケットシーのグリモア猟兵。
「そしてオブリオンは偽神降臨の邪法によって胎内に宿った神の子を守るため十月十日を逃げ、隠れようとしているらしい。お前達に行ってもらうのはそのうちの一人だ」
 決意したように頭を振れば、猫は用件を切り出す。
「端的に言えば、子供を身ごもったオブリビオンを殺す――それだけの仕事だ」
 表情を変えることなくグリモア猟兵が立ち上がる。
「俺は予知をした、故に行くことが出来ない。なので皆に頼む」
 煙草を灰皿でもみ消せば、深く息を吸い。
「以上だ! 希望者は装具を整えて、時計を合わせろ。戦後のサムライエンパイヤに禍根は残せない、ここで終わらせるんだ」
 羅針盤のグリモアを右手に持ち、ゲートを開いた。


みなさわ
 こんにちは、みなさわです。
 皆さんは『偽神降臨の邪法』によって『胎に神の子』を身ごもったオブリビオンを倒す。
 それだけです。
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第1章 ボス戦 『『異国の棒術士』孫・金華』

POW   :    如意分身法・天降驟雨
【上空から降り注ぐ無数の如意棒】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に如意棒が乱立し、その中を自在に動き回り】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    如意加重法・爆砕地裂撃
単純で重い【振り下ろし時に重量を増やした如意棒】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ   :    如意伸縮法・千里彗星突
【如意棒の伸縮】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【突き】で攻撃する。

イラスト:オペラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●逃走

 奥羽の山を渡来の娘が歩く。
『偽神降臨の法』を受けて、間もなかったのが幸いした。
 もし胎が大きくなれば逃げることは叶わなかっただろう。
 神の子を育てんがため、自らの力を与えている為か、足が重い。
 俊敏な武術の使い手たる自分が母になるとは思わなかった。
「――!?」
 何かがこみ上げ、思わずうずくまる。
 苦みの残る口元を拭えば、足取りを追われんがために出したものを土で埋めた。
「必ず……成し遂げれば」
 けれど、心中に宿るのは使命感、そして授かった喜び。
 過去に生きたオブリビオンたる自分が未来への子を預かる。
 これほどの役目あるだろうか。

 けれど。

 その姿は猟兵によって捉えられていた。
ミハエラ・ジェシンスカ

貴様を突き動かすのはなんだオブリビオン
課せられた使命感か?
降って湧いた母性か?
どちらにせよ胎の子が脅威である以上、貴様はここで殺さねばならん

フォースレーダーによる【情報収集】で対象を追跡
悪いが逃しはしない
私自身とドローンとでの挟撃になるよう立ち回る事で逃走を阻止
棒術は自身のリーチを活かしつつ【見切り】【武器受け】で捌き
降り注ぐ如意棒は空中の時点で【念動力】を当て遠くへと逸らす
可能なら私の死角へと回り込むのに利用できそうな一部を「逸らし切れなかった」という体で敢えて残す
そこに敵を誘い込み、フォースレーダーでそれを捕捉しつつ隠し腕を展開し【だまし討ち】

全く、私もこれで女に分類される人格の筈だがな



●おまえはややこをころしにきたのだな

 渡来の娘――孫・金華の足取りが止まった。
 杖代わりの棍はすでに得物となって彼女の両腕に収まれば、半身の構えで腰を落とす。
 先程までさえずっていた鳥の音が消えた時――巨大な影が踊りかかった。
「悪いが逃しはしない」
 ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)が体格差から得られる間合いを武器に右手の理力剣を振るえば、金華は一歩踏み込み、突き出した棒を外側に回して、剣を打ち払い、即座に突く。
 ミハエラも左手の理力剣で打ち払えば、背後を取る様に側背へと移動。
 勿論これは誘い――本命は背後から飛ぶ二振りの刀剣型飛翔体。
 シュッっと渡来の娘が鋭く息を吐けば棍は円を描き、背を狙うドローンを叩き落した。
「貴様を突き動かすのはなんだオブリビオン、課せられた使命感か?」
 騎士が問う。
「降って湧いた母性か?」
「子を生そうと志せば分かる」
 金華が答える。
「どちらにせよ胎の子が脅威である以上、貴様はここで殺さねばならん」
「つまりは――」
 渡来の娘の言葉を遮るかのように悪心回路が塗りつぶそうと起動する。

 ――悪で在れ
 ――悪で在れ

「おまえはややこをころしにきたのだな?」

 ――悪で在れ!

 問われた言葉が感覚器が受け取り、メモリに刻む。
 だが……だからこそ、悪心回路は心を黒く染めた。
 命と定義付けた疑似円盤が聞こえるはずのない削れる音を耳にしながらミハエラは距離を詰めた。

「ならば、二人で生きる!」
 金華が棒を大地に突き刺し印を結び、両手を広げれば、悪道を選んだ騎士の理力感覚器が警告を発す。
 天頂域――上空より落下するのは無数の如意棒。
 咄嗟、ミハエラが念動力を働かせれば、直撃は避けられたものの、降り注ぐ棒の雨に動きが止まる。
 騎士がさらに念を広げる。
 降り注いでいた如意棒の動きが変化し、二人の周りを林のように突き刺さる。
 渡来の娘にはそれで十分であった。
 背を向け、竹林のように乱立する棒の中を飛び回る様に駆け抜ければ、そこは自らの領域。騎士が追うには如意棒が柵となる。
 金華にとって戦闘は優先すべきことではなかった。優先すべきは『神の子』を産むこと、ただ一つ!
 だからこそ――ミハエラにはそれで充分であった。

 理力探知機能で先回りした騎士が娘の前に立つ。
 全てを操ることは出来なかったが、念動力が作った一部の区画。
 死角に位置するそれは逃げるにしても戦うにしても必ず通るであろう道。
 後は簡単であった。
 装甲が展開し、隠された第三、第四の腕に持った理力剣が金華へと刺突の連撃を放つ。
「――ッ!!」
 渡来の娘は間に合わないと悟るや、迷うことなく背を向けて刃を受ける。
 肉の灼ける匂いと音が聞こえた。

「全く、私もこれで女に分類される人格の筈だがな」
 傷を負い、如意棒が作った林の中を転がっていく娘を見て、ミハエラが呟いた。
 悪心回路はまだ機能を止めない――。

成功 🔵​🔵​🔴​

イフェイオン・ウォーグレイヴ

オブリビオンも大切な存在を持てるんですね。
その大切な存在、希望が潰えた時、貴方はどんな顔をするのでしょう?

山の中、『目立たない』よう身を潜めます。
戦うのは私ではなくブラックスローター、忠実な僕にお願いしましょう。
『恐怖を与える』ことで足止めを狙います。逃げられない、そう思っていただければ成功です。
何やら誤解しているようですね。過去に生きる貴方に未来はありません。希望ではなく絶望がお似合いだと私は思います。
その顔は絶望に塗れている時が一番です。
逃げるのはオススメしません。お身体に負担がかかりますし、私のブラックスモーカーで追跡しますから。
ここでさっくり首を刎ねられてくれると嬉しいかな。



●おまえのかおはわたしのよう

 彼は死を触れることで命を実感し。
 彼女は生を授かることで命を実感する。

 傷つき、如意棒が作りし林から逃れた先に立つのは、大槌を持った奴隷頭と大剣を持った処刑人。
 二人ともイフェイオン・ウォーグレイヴ(濡鴉の死霊術士・f19683)が呼び出した虐殺者。
 麻袋を頭に被った奴隷頭が槌を持ち上げれば、転がる様に孫・金華が逃れる。
 大槌が大地を叩き、大地が震動する中立ち上がれば、同じように麻袋を被った処刑人が大剣を振るう。
 渡来の娘は近くに突き刺さった棍を掴めば、絡めとる様に攻撃を受け流し、その勢いを柄の長さを活かし、反対側の端を剣を持った縦に長い男へ叩き込んだ。

「オブリビオンも大切な存在を持てるんですね」
 その身が目立たないように身を潜め、風下より様子を見ていたイフェイオンが呟く。
「その大切な存在、希望が潰えた時、貴方はどんな顔をするのでしょう?」
 何かが心を動かしたのか、陰鬱な表情を浮かべる少年が足を動かした。

 巨躯の虐殺者が大槌を構えて、にじり寄る。
 巨大な槌という分かりやすい武器が渡来の娘に恐怖を与えるが、為すべきことがそれを阻む力となっていた。
「何やら誤解しているようですね」
 大槌を避ける金華へ向かってどこからか声が響く。
「過去に生きる貴方に未来はありません。希望ではなく絶望がお似合いだと私は思います」
 それは逃走を防ぐためにイフェイオンが告げる死の宣告。
「その顔は絶望に塗れている時が一番です」
 そこには死への興味と超えてしまったが故の加虐心が疼く。
「逃げるのはオススメしません。お身体に負担がかかりますし、私のブラックスモーカーで追跡しますから」
 大剣を振るう処刑人から逃れる渡来の娘を眺めながら、少年は言葉を続ける。
「ここでさっくり首を刎ねられてくれると嬉しいかな」
 それが――金華というオブリビオンの神経を逆撫でした。
「笑止!」
 渡来の娘が持っていた如意棒に力を込め、大地に叩きつければ周辺の地形が崩壊し、土砂が崩れる。
「――!?」
 大地の崩壊から逃れるようにイフェイオンが跳ぶが、身を動かすに慣れない身。
 跳ね飛ぶ石を頭に受ければ、二人の処刑人も姿を消す。

「しゃべりすぎだ、猟兵」
 どんなに身を潜めようと、自らの心のまま語れば、姿など容易と見つけられる。
 いや、どんなに智を凝らしても見つけ出すであろう。
 それは人であっても変わらない。
 だからこそか、金華は頭を押さえている少年を見下ろせば、笑い、口を開く。
「おまえのかおはわたしのようだな?」

 逃走を封じるという目的は果たされた。
 だが、それでよかったのか?
 そして渡来の娘の言葉の意味は?
 それは誰も分からない……。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

宇迦野・兵十
別嬪さん、こっからは先は行き止まりだよ。
―へらりへらりと【誘惑/コミュ力】と語りかける

今のお前さんには護りたい命があるんだろうさ。
―相手の動きを【見切り】逃がさないように先回りしつつ
 攻撃には【早業/武器受け】で回避、受けた時は【激痛耐性】で耐える

でもね、その子を生かす訳にはいかない。
ああ、嫌な話だ。

だから、さ…

―笑顔を消す、三狐新陰流として告げ

俺を憎め。決して赦すな。そして諦めろ。

―【暗殺/早業】で踏み込み、笑狐を【早業】で引き抜く

人界を護る為、お前達親子を斬る愚挙を。

―【三狐新陰流・常世還】

還んな、常世の底に。
地獄に落ちべきはややこ殺しの悪党だけだ。

[アドリブ歓迎、諸々お任せいたします]



●おまえはやさしいやつだな

「――別嬪さん」
 線のように細い眼をし、女物の着物を羽織った男が声をかける。
「こっからは先は行き止まりだよ」
 宇迦野・兵十(きつねさん・f13898)の言葉に孫・金華はだろうな、と返す。
「今のお前さんには護りたい命があるんだろうさ」
「わかっているではないか」
 兵十が腰の一振りへ手を伸ばそうとすれば、その手を打ち据えんと渡来の娘の棍が飛ぶ。
「でもね、その子を生かす訳にはいかない」
 へらりと笑みを絶やさず、けれど言葉は真剣。
 飛びずさって棍から逃れれば、狐の優男は回り込むように摺足で動く。
「ああ、嫌な話だ――だから、さ……」
 笑みが消えた。
「俺を憎め。決して赦すな。そして諦めろ」
 棍の内側に兵十が踏み込んだ。
「還んな、常世の底に」
 抜かれるのは鈍刀・笑狐。黒紐が解かれ、代わりに刃紋が笑う。
「地獄に落ちべきはややこ殺しの悪党だけだ」

 ――三狐新陰流・常世還

 防げないと悟った金華が背を向け、走る。
 その背中に斜めに刃が走れば、おびただしい紅が零れる。
 直後、大量の如意棒が降り注ぎ、視界を塞いだ。

「自らを憎めというのか、この戦の中」
 如意棒の向こうより渡来の娘の声が響いた。
「おまえはやさしいやつだな」
 続く言葉に込められるは敬意。
「けれど諦めない。私達は生きるんだ」
 人界を護る為、親子を斬る愚挙と知りつつも振るった刃。
 届かなかった想いが狐の男の深いところで悔恨を呼ぶ。
「だから、お前は憎まない。地獄で会ったら――酌の一本くれてやろう」
 それは男の荷を少しでも軽くしようとした不器用な心遣い。
 敵ゆえばこそ、命を奪う覚悟を持つ男だからこそ結んだ約定を最後に女の気配が消えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

舞塚・バサラ
【SPD】
是非も無し
逃す訳には行かぬで御座る

捉えたのならば、そこはもう某の間合いに御座る
UCで相手の影より現れて不意を撃ちつつ、可能ならば神を宿している胎を破壊するで御座る(暗殺、だまし討ち、部位破壊、早業、クイックドロウ)

また、相手の得物は如意棒
遠近が自在であろうと振るう事で威力を出す以上、苦無を振るえる程度の近距離で詰め続ければ、体調が悪い事も踏まえて十全には威力を発揮しえぬで御座る
隙を見て武器を手ごと弾き、胎の子の破壊を狙うで御座る(見切り、 武器落とし、早業、暗殺、部位破壊、第六感)

…何を言おうと
攻めて来たのは其方で御座る
新たな禍根を生み出すつもりならば、容赦も躊躇も無用
滅するで御座る



●おまえはややこをころすのか

 崩れた山野と如意棒を柵を背に、山道を走る。
 手に持つのは棍一振り。
 背中の傷は痛むけれど、生きていれば果たすことは出来る。

 使命の為に逃げる孫・金華の望みは目の前より現れた舞塚・バサラ(罰裁黒影・f00034)が断たんとする。
 陰術:無影転身によって奪い取りし、金華の影より伸びるのは葛の葉一刀!
「――っ!?」
 その刃が胎を狙うを分かれば渡来の娘は棒を身をくぐもらせ、棒を盾に刃を逸らす。
「貴様、腹を!?」
 金華が怨嗟を込めて叫べば、苦無のように編み上げた影を振るい、無言でバサラが攻める。
 短く、軽い刃を素早く振るわれれば、棍の間合いは死間に等しい。
 渡来の娘も如意棒としての特性を使い、棍を短刀並みに縮めれば刃を振るうように打ち払い、叩き落さんと手を狙う。
 黒影が身を翻せば、短棍は空を切る。
 直後その身は跳び、体重を乗せた薙ぎの刃が手刀の如く繰り出されれば、金華は腕の力を抜き、肩の動きと体重移動で鞭のような一撃を放ち、お互いの得物が交差する。
 両者が間合いを取れば、渡来の娘が膝を着いた。

『偽神降臨の邪法』により、胎に命を授かり。
 戦いの中、背に大量の傷を負い。
 そして、今、激しく身を動かせば、体力の消耗は免れない。
 飢えぬ身であろうとも、あらゆる枷が重なれば、動きは止まるのだ。
 そして舞塚・バサラという男がそれを見逃すはずがない。
 苦無を振るって短棍を叩き落せば、返す刀で胎を狙う。
 渡来の娘が蹲った。
 両腕で胎を庇い、頭を地面に擦り付けるようにして座り込む。
 刃が背をかすり、熱のような痛みが走るが構わなかった。

「お前は……」
 頭だけ動かし、バサラを見る。
 黒影はただ、そこに立つ。
「おまえはややこをころすのか!」
「是非も無し」
 その声を非道と憎しみで染め上げた女の腹をバサラは横から蹴り上げた。
「ああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
 腹を抑えて、金華が転がり、ただ声を上げる。
 ……それは痛み故か?
 ……それは恐怖故か?
「……何を言おうと」
 石土むき出しの地面を這うように逃げる女へ黒影が口を開く。
「攻めて来たのは其方で御座る」
 言葉に出たのは戦の発端。右手に持つは苦無のように編んだ影一つ。
「新たな禍根を生み出すつもりならば、容赦も躊躇も無用」
 戦を終わらせるために己が業を自覚する男は得物を持つ手に力を込めれば。
「滅するで御座る」
 振り下ろす。
 ――だが。
「死なぬ! 死なせぬ!!」
 間一髪! 落ちた短棍を拾った金華が地面を叩いた。
 必死の一撃が大地を叩き割れば、足場を失った二人は山野に転がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

伊美砂・アクアノート
【SPD 結界糸・無風陣】
ーーー悪いが、コレが仕事でね。
情け容赦も慈悲も無く…此処で始末させて貰うぜ。
【罠使い11、毒使い10、物を隠す5、地形の利用5】で、毒香水の罠を設置。逃げる方向を誘導するように追い立てる。【第六感8、暗視5、視力5、聞き耳5】で山中を見失わぬようにし、【早業18、暗殺13】で首を狙う。……ま、因果な商売さね。オレも、真っ当な死に方はできないかもねー……でも、何処かの誰かが果たすべき仕事なのさ。逃げるなとは言わないよ、抵抗するといい反撃したまえ生存競争に善悪などないさ。ボクは殺し、キミは死ぬ。この結末を変えたいのならば、全力で抗うといい……それを、私は否定しないよ。



●おまえはうそをついてるな

 崩れた大地より孫・金華は立ち上がり、歩いていく。
 足取りは重く、棍を杖にしないと歩けないほど。
 けれど、けれど。
「私は生きねばならぬ」
 例え邪法と言われても。

「――?」
 渡来の娘が鼻腔に何かを感じた。
 それは不快かつ、死を呼び起こすような不安があった。自然とその方角を避け、藪を掻き分け、沢へと逃げる。
「……みず?」
 沢へと近寄れば、川の流れる音を聞き、金華の足が速くなる。
 岸に歩み寄り両手で水をすくえば、それを口元に近づけ、喉を鳴らす。
 その細い喉へ糸が絡みついた。
「――ゥ!」
 声にならない叫びを上げて、右手を伸ばす。
 けれど細い糸は指にかからず、喉に食い込み、呼吸を断つ。
「――悪いが、コレが仕事でね」
 伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)が糸を持つ手を握れば、それはさらに肉に食い込む。
「情け容赦も慈悲も無く……此処で始末させて貰うぜ」

 毒を混ぜた香りで誘導し、沢へと歩かせる。
 疲労があるなら水を飲むだろう、その隙を狙って繰り出した伊美砂の糸は渡来の娘の喉に食らいつき、皮膚を裂き、赤いものが零していく。
「……ま、因果な商売さね。オレも、真っ当な死に方はできないかもねー」
 諦観の混ざった声はどの人格であろうか?
「……でも、何処かの誰かが果たすべき仕事なのさ。逃げるなとは言わないよ、抵抗するといい反撃したまえ生存競争に善悪などないさ」
 もう一人の伊美砂が抵抗を促し――。
「ボクは殺し、キミは死ぬ」
 ――もう一人は死を告げる。
「この結末を変えたいのならば、全力で抗うといい……それを、私は否定しないよ」
 最後の伊美砂が指先に力を込めて、その首を切り裂かんとした時。
「ガァアアアアッ!!」
 咆哮のような叫びと共に振るわれた金華の棍棒がその重さを以って糸を断ち切る。

 荒い息の吐きながら、渡来の娘が顔を上げる。
「色々な顔を出しているようだが……」
 潰された喉から出る声はもはやしわがれた老婆の様。
「おまえはうそをついてるな」
 各人格が主張するそれを嘘と呼んだ。
 それは正しいのか、間違っているのか?
 知っているのは伊美砂のみ。
「…………」
 答えようと多重人格の女は口を開くが、全ての人格が何かを言おうとして、そして互いが何かを言うのを拒んでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
ねえお姉さん
オブリビオンじゃなくて、普通の人みたいに、赤ちゃんと生きられないかな
それならマリアはお姉さんと赤ちゃんを、守ってあげられるよ?
でも、だめなら
マリアは猟兵で、聖者だから
この世界の未来の、ために……あなたの宿した未来は、マリアが、壊すわ

UCの透明化と0Gパラソルの浮遊で姿と足音を消して近づくね
もし気配とかで気付かれたら念動力で離れた所の石や枝葉を動かして気を逸して、
祈りの剣でお姉さんのお腹を、狙う
浅かったら2回攻撃で、もう一度
あと必要なのはきっと、勇気よりも、覚悟

・成功時
まだ、生まれても居なかったのに
ごめん、なさい……ごめんなさい……!

・失敗時
やっぱり、できない……だって、だって……!



●おまえのようなややこがいいな

 沈黙が支配していた。
 覚悟を決めたように孫・金華が棍を構える。
 命を燃やしてでも、生き残るために。
 だが、これは戦いであり、それは終わりが近づいていた。

「――腹!?」
 何かの気配を感じ、金華は腕で胎を庇う。
 見えない刃が光を帯びた時、渡来の娘の腕が飛んだ。

「ねえお姉さん」
 アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(救世の極光・f13378)がユーベルコードを解き重力を消し去る傘と共に地へと降り立つと、両腕を無くした金華へと近づき。
「オブリビオンじゃなくて、普通の人みたいに、赤ちゃんと生きられないかな?」
 それは少女故の無垢なる望み、そして問い。
「それならマリアはお姉さんと赤ちゃんを、守ってあげられるよ?」
 それは猟兵で、そして聖者だからこそ出来る約束。
「それは……出来ない」
 渡来の娘が首を振った。
「私はオブリビオンで、この子は『神の子』。大切な使命があるから出来ないの」
 潰された喉から出る声はまるで母の様。拒む言葉は子を嗜める母の様。
「ごめんね」
 一言だけ謝罪をすれば、金華は転がった棍へ足をかける。
 腕を失った以上、後は蹴りだした如意棒を伸ばし、目の前の少女を突き殺す。
 自らが成すべきことのために生き残るにはそれしか道はなかった。
「……だめなら」
 宝石の少女は祈りを剣に変えて両手に握る。
「マリアは猟兵で、聖者だから」
 決意をその目に
「この世界の未来の、ために……あなたの宿した未来は、マリアが、壊すわ」
 ――命を。

 川の流れる音だけが流れた。
 鳥の囀りが、虫の鳴く声が聞こえた。
 ――一瞬
 全ての音が消え、二人が同時に動いた。

「まだ、生まれても居なかったのに」
 胎へ突き刺した刃から伝わる熱にマリアの瞳から何かが溢れる。
 蹴られた如意棒は川の向こうへと突き刺さり、主を失い灰となって消えていた。
「ごめん、なさい……ごめんなさい……!」
 助けられなかったことに、命を壊したことに謝りながら少女が顔を上げれば、肘から先を失った腕を伸ばした渡来の娘が撫でるように腕を動かす。
「もし……産ませてもらえるならば……」
 前のめりに倒れていく金華。
 気づいたマリアが小さな体で必死に受けとめる。
「おまえのようなややこがいいな」
「――!?」
 言葉が出なかった。
 自分は聖者で、猟兵なのに!
 声をかけようにも、何かをしようにも、こみ上げてくるものが邪魔をする。
「我的孩子……我的孩子……」
 目から光を失い、胎に刃が埋まり、口元から零れる紅が大地を汚す中、渡来の娘からたどたどしく聞こえるのは異郷の歌。
「……请好好休息」
 いつか歌うであったろう子守唄。
「……晚安……晚安……晚安……我的……孩子」
 歌が終わるまで、少女はずっと女を抱きしめていた。
 やがて、歌が終わり。
 マリアの両腕に残った重さは消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月22日


挿絵イラスト