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エンパイアウォー㉗~猟兵パワーを魅せつけ訓練!

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●ぐりもあべーす
「サムライエンパイアでの大戦、皆のおかげで各地の脅威も退けて貰い感謝なのじゃー!」
 集まった猟兵達に氷長・霰(角型宝石人形、なわけないのじゃ角娘じゃ・f13150)は深々と礼をする。
「関ヶ原での戦い。かの地での勝利は幕府軍の皆に明るくめでたい話として語られているそうじゃ」
 幕府軍の士気は高く、自分たちならこの戦に勝てる!と力も漲っているらしい。
「そこでじゃ、そんな彼らを鍛え上げこれから先の行軍で何かあっても対処できるよう特訓をして貰いたいのじゃ!」
 対オブビリオンのため世界を飛び回り、力と知恵を持ち、経験豊富な猟兵だからこそ、との依頼である。
「幕府からは『猟兵が必要と感じたものであればなんでも構わない』とお達しがあったのじゃが……少し曖昧じゃのう」
 少し考えた霰は何かを思い出したようにスクリーンに現地の映像を映し出す。

 関ヶ原の近くの山間。野営地で武器の手入れをし、飯の支度をしている幕府軍。
「兜被ってると蒸れて髪の毛洗いたくなるよね~」
「あ、川で水の補充忘れないでね皆ー!」
「鉄砲の手入れ、あと20追加でお願い!」

「……というわけで、女性の鉄砲隊。彼女達に訓練をお願いしたい」
 彼女達は各農村で暮らし、幼いころから畑を荒らすイノシシやシカ、クマ退治まで鉄砲一丁でしたと胸を張る者もいるという。
 今回の戦争には自ら志願し、男達に交じり武道の稽古や幕府が使用している鉄砲の取り扱いを学び、行軍では他の隊の補助を任されている。

「しかしこの先に待っているのはあの織田信長じゃ。事前に聞いてみた所『名前は聞いたことあるけど何した人なのか良く分からない』という答えが返ってきたらしくての……」
 彼女達に足りないのは、敵が何をしてくるか分からないという『想像力の不足』ではないかと霰は切り出す。
「例えば辺り一面を暗闇にすれば『これ絶対織田の妖術じゃん怖い!』と逃げ出してしまうかもしれない」

「皆には是非、技を”見せ”彼女達に学びの機会を与えてくれ。ま、ようは脅かしじゃな」
 幕府軍に協力している猟兵は不思議な力──ユーベルコードを持つということは既に噂になっているらしい。
「彼女達に直接全火力でぶつけるのは流石にまずいかも知れぬ。地面や石で代用したほうがいいかもしれないのう」
 勿論力を上げるユーベルコードで対峙し、基礎体力を上昇させるよう促すのはいいかもしれない。
「皆が皆すんごいユーベルコードを持っているのはわらわが知ってるぞ!是非とも訓練のために”魅せ”てほしいのじゃ!楽しく明るく、幕府軍の兵がもっと自信を持てるようによろしく頼むぞー!」
 転送ゲートを繋げた霰は手を振りながら猟兵たちを見送った。


硅孔雀
 サムライエンパイア大戦、訓練タイム。
 硅孔雀です。
 猟兵の皆さん恐るべし。ギャグなノリのシナリオです。

●構成
 冒険:幕府軍の大特訓。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●状況
 安全が確保された関ヶ原近くの山間。女性で結成された鉄砲隊が勝利に喜んでいます。
 基礎体力や鉄砲の扱いについては一般兵と同じ位ありますが、農民出身者が多く、戦国の知識や妖術の類には全くの無知です。

●特記事項
 ギャグなノリのシナリオです。
 皆さんのかっこいいユーベルコードを見せお勉強タイム→訓練成功!なノリで。
 ユーベルコードを披露して、彼女達に何をさせたいのかをプレイングに記載していただけると助かります。

 尚当シナリオの成功に合わせ幕府軍に被害が出た際、生存率があがります。
 それではプレイングお待ちしております。
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第1章 冒険 『幕府軍の大特訓』

POW   :    腕立てや腹筋、走り込みなど、基礎体力を向上させる訓練を施します

SPD   :    危険を察知する技術や、強敵からの逃走方法などを伝授します

WIZ   :    戦場の状況を把握して、自分がやるべきことを見失わない知力を養います

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※8月19日(月)23:59までプレイングの受付をいたします。30分程なら日をまたいでしまっても受付します。
リンネ・ロート
(人格・口調:リンネ)
あ……あの……初めまして、リ……リンネ・ロートと言います
ば……幕府から訓練を指導するようにお達しがあったので、参上しました

まずはこれをご覧ください(くまちゃんを取り出して地面へ置く)
そ……そこの方はこちらへ……(近寄ると可愛いくまちゃんがグロテスクに口を開く)
こういう戦場にあるはずのない物には近づかないようにして下さいね
敵の罠だと思います

次にこれを(UC発動、機嫌の悪そうな狂哉を呼ぶ)
このように怪しい術を見かけたら最低限の衣服ですぐに逃げるようにお願いします
その後で天下自在符の持ち主に対処してもらって下さい
鉄砲とか通じないので……
試しに私か狂哉を撃ってみれば分かります


ファン・ティンタン
【SPD】鉄砲隊の長所と短所は

フツーの人に私達猟兵の存在を正しく認識してもらうのは難しいけれど
まあ、敵にもこんなことしてくる連中いるよって分かってもらう事は、大切かな

【千呪鏡『イミナ』】を手にレクチャー開始
さて、鉄砲の長所は何かな?
遠くから敵を撃てることだね
じゃあ、逆に、短所は?
【千呪万華鏡】で一人、二人と自身の映し身を増やしながら、彼女達の周りを囲み、距離を詰めていく
どうかな? 大勢に近付かれたら? 一つの対象しか攻撃出来ない鉄砲は不利だね?
…と、こんな感じで
鉄砲隊は近付かれない工夫が必要なんだよ
相手の次の行動を予測して、相手との位置関係を、【地形の利用】を考慮する
少しは、勉強になったかな?


鈴木・志乃
※人格名『昨夜』で参加
……魅せる、か
本当は志乃がいつもやっていること
私が出来るかは分からない、けれど

志乃、力を貸してね
……昨夜、と申します
よろしくお願い致します

妖術と言えるかは分からないけれど……そうですね
このUCはどうかな
54×5本の光の大花火は、見てて結構強烈だと思います
周囲を漂う残留思念がいきなり爆発するのは、ちょっとした衝撃でしょうね

大丈夫、落ち着いて
ちゃんとよく見て攻撃を見切ること
花火だから変な弾道にはならない
回避出来るタイミングは必ずある
それを逃さないで

自分の感覚を信じることも重要
嫌な気配がしたらそれに従って動く
……恐怖とはまた違うの
少し練習してみましょうか


本山・葵
UCでオバケの幻を映しておどかす。
「みんな腕前も度胸もそこそこあるっす、あとはオブリビオンの見た目に慣れる必要があるっすね」
「即興の肝試しで、恐怖のどん底におとしいれてやるっすよ♪」

物陰からオバケのセリフを言って盛り上げる
「悪い子はいねえか~?泣く子はいねえか~?」
「フハハハハ!お前も泣いたり、笑ったり、できなくしてやろうかぁ~!」

技能:コミュ力、罠使い、目立たない

※アドリブ、連携ご自由にどうぞ


数宮・多喜


なるほどね、戦い方を伝授か……
なら、直接「アタマに」教え込んでしまおうじゃないのさ。
伝えるのは、『地形の利用』を活用した逃走経路の確保。
後は、奇襲対策って所かね!

話し言葉で伝えるんじゃなく、
【超感覚探知】のテレパスで思考を繋ぐ。
ちょっとは驚かれるかな?
そうすりゃ好都合、物の怪の類にゃこういう手管が得意な奴もいるからね。
慣れておいても罰は当たらないよ!

さ、そしたらこの状態で実地訓練さ。
奇襲する側、される側の二組に分かれて
お互いの立場から見えるもの、見えないものを探らせてみるよ。
アタシのUCは地味だけど、
こういう手助けにはうってつけさ。
ちっとはこれで浮気相手を見つける役に立てなよ!
……なんてな?



 転送ゲートから幕府軍が制圧し、一時期とはいえ安全が保たれた関ヶ原の近くの山間。
 女性鉄砲隊の視線は5人の猟兵に集まる。
 女性兵士の前に立つのは偶然にも5人の女性猟兵。

「あ……あの……初めまして、リ……リンネ・ロートと言います。ば……幕府から訓練を指導するようにお達しがあったので、参上しました」
 集まる視線から目をそらすリンネ・ロート(RegenbogenfarbeFlügel・f00364)。
「皆は鉄砲隊だって聞いたよ。よろしく頼む」
 女性兵士達が構えている銃を見渡すファン・ティンタン(天津華・f07547)。
「……あ、皆さん私は昨夜、と申します」
(志乃、力を貸してね)
 鈴木・志乃(ブラック・f12101)の中のもう一人、『昨夜』が礼をする。
「皆関ヶ原ではよく戦ってくれたね!猟兵としてアタシの力を魅せるよ!」
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はニカリと兵士たちに笑いかけた。
「このわさび……じゃない自分にお任せっす!」
 関ヶ原に降り注ぐ日差しが本山・葵(ユートレマジャポニカ・f03389)の眼鏡をキラーンと光らせた。

「ユーベルコードを見せる前に彼女達が得物をどれだけ理解しているか。それも併せてまずレクチャーを……」
「おお!だったらアタシの考えていた訓練方法の前にやって貰おう!上手くいけば……ことが出来るね」
「お二人の訓練が終わりましたら、私はユーベルコードで……を見せて、それの対処法を教えてみようと思います」
「そ……それでしたら、それ以上の……を想定した際の……を、より……な状態の時での訓練に繋げられます……」
「よーし!じゃあ自分も手伝いますよ!うらめしや~憎しや~。精神攻撃は基本!ですから」
 
 ガールズ猟兵たちのガールズトーク(主に物理)は暫く続いた。
 女性兵士の元に本山が駆け寄る。
「鉄砲隊の皆さん、お待たせしましたっす!今回の訓練はズバリ二本立て!『銃』と『妖術』っす!」

●訓練その1:己が武器を知れ!
 空の鉄砲を構えた女性兵士の前にファンが立つ。
(フツーの人に私達猟兵の存在を正しく認識してもらうのは難しいけれど)
(まあ、敵にもこんなことしてくる連中いるよって分かってもらう事は、大切かな)
 その手に千呪鏡『イミナ』を握りながら、空いた手でファンは女性兵士の一人を指さした。
「さて、鉄砲の長所は何かな?」
 指をさされた女性は『遠くから敵への攻撃が出来る』と答えた。
「その通り。遠くから敵を撃てることだね……じゃあ、逆に、短所は?」
 女性兵士たちが騒めく。誰かが知識がなければ打てない、一撃での殺傷力は刀や槍に劣ると次々に言い出す。
(うーん。その前に、のことなんだけどな)
「よし。では模擬戦闘だと思って隊列を組んでくれ。実戦で見せたほうが良いだろう」
 ファンに向かって一斉に銃口が向けられた、その時であった。
 一人また一人……誰もいなかった空間にファンが現れる。
「えっ、な、なにこれ……これが妖術!」
「皆落ち着いて、敵を狙うのよ!」
「誰を狙えばいいの!?」
 ユーベルコード:千呪万華鏡(センジュバンカキョウ)。ファンを映した『イミナ』の鏡面から、ファンに似て異なる無数の対象が関ヶ原に立つ。
 鉄砲隊の周りを囲むファン『達』はゆっくりと包囲網を狭める。
 銃口を右往左往させながら慌てふためく彼女たちを前に──ぱん、とファンが手を叩く姿。
「どうかな? 大勢に近付かれたら? 一つの対象しか攻撃出来ない鉄砲は不利だね?」
 表情は変えず。しかし少し穏やかな口調でファンは落ち着きを取り戻した鉄砲隊に声をかける。
「先程みたいに鉄砲隊は近付かれない工夫が必要なんだよ」
 うーんとファンは考え近くにあった岩場を指さす。
「例えば、まず敵から離れてあそこに隠れる。その次に自分達を探しに来るであろう敵の動きを考え、鉄砲の強みである遠くからの狙撃を行う」
 兵士達がはっとした顔でお互いの顔を見合わせる。
「茂み、岩山、滝の裏……『地形を利用』して動けば鉄砲はより強くなる」
 きらきらと目を輝かせ、自分を見てくる兵士──護刀として傍にいた『人』の笑顔を前にファンは口を開く。
「少しは、勉強になったかな?」
 返ってきたのは大きなはい、という肯定の返事と笑顔。

●訓練その2:己が知恵を絞れ!
「お、銃の強さ、地形の利用は勉強したようだね。じゃあ次はアタシが応用訓練って所かね」
 女性兵士達の前に数宮が現れる。そのすぐ脇には石の山。

「なるほどね、戦い方を伝授か……」
 ファンが兵士達に戦い方を教えている間、数宮は石を選んでいた。
「直接「アタマに」教え込んでしまおうじゃないのさ」

「と、いうわけで……悪いね、アンタとはちょいと繋がらせてもらったよ。ついでに思いっきりそれをアタシに投げてみな」
 兵士達の一人に石を握らせた数宮に、困惑の色を浮かべた兵士が頷く。
 正確無比に数宮の額へと投げられた石を、それが肌に掠める寸前で目を瞑りながら数宮は避けた。
「え!?」
「ほら、何度も投げてみな」
 しかし、いくら投げても石は数宮の服にすら当たらない。ユーベルコード:超感覚探知(テレパシーリンク)で数宮は兵士とテレパスで思考を繋ぎ、ひたすら躱す。
(単純なネタなんだけど……おお、驚いている)
「ちょっとは驚いた?」
「は、はい……これも、妖術ですか?」
 数宮は頷く。実戦で見せたことにより、兵士達の間にざわめきが起きる。
「アタシが使った妖術は、兵士さんの頭の中を読んだ。それだけさ、でもまあ物の怪の類にゃこういう手管が得意な奴もいるからね。
慣れておいても罰は当たらないよ!」
 思わず頭を押さえた兵士たちに苦笑しながら数宮は告げる。
「さ、そしたらこの状態で実地訓練さ。奇襲する側、される側の二組に分かれて石の投げ合い」
 頃合い毎に、どちらかの側に数宮が加わり戦闘の補佐をするという。

「お、今茂みの向こうで相手が二手に分かれた、片方は……右からくるよ」
 どう動く?と聞かれた兵士は辺りを見渡す。
「わざと囮になって、相手を見晴らしのいい場所までおびき出します」
(うん、地形の把握もできているね)
「残りの皆は移動経路……川傍はぬかるんでるから泥で足跡がつくし、避けます」
「よしよし、じゃあ数刻したら今度は奇襲側にアタシは移るよ」

 お互いの立場から見えるもの、見えないものを探らせる事。
 地形を利用し逃走する方法まで学んだ兵士たちはみな疲れ座り込んでいた。
「はは、皆の手助けになればよかったよ……あ、ちっとはこれで浮気相手を見つける役に立てなよ!」
「そうだねえ、戦が終わったら旦那をこっそり観察してみないとね」
 女性達が豪快に笑った。

●訓練その3:脅威の正体を見極めろ!
(……魅せる、か)
(本当は志乃がいつもやっていること。私が出来るかは分からない、けれど)
「……大丈夫、志乃がいるから」

 休憩が終わった女性兵士達の前に昨夜は改めて礼をする。
 今まで受けた猟兵たちの訓練の中、鉄砲隊の女性兵士達は確実に成長していた。
「今度は何を教えて頂けるのでしょうか?」
 兵士の一人が昨夜の様子を窺う。昨夜は……ゆっくりと目を閉じ、オレンジの瞳で皆を見渡す。
「これから、私の妖術、妖術と言えるかは分からないけれど……そうですね。それをお見せします」
 え、と誰かがつぶやく前に昨夜は小さくつぶやく。
『最後の想いを遂げて、おかえり?』
 次の瞬間、辺りは昼だというのに目も眩む閃光と激しい音が鳴り響いた。
「きゃー!」
「み、皆、頭を下げて!」
 一斉に頭を下げ、鉄砲を構えた女性達が見たもの。
「……大花火?」
 ユーベルコード:意志の花(ファイアーワークス)が見せるは54×5本の光の大花火。
(周囲を漂う残留思念がいきなり爆発するのは、ちょっとした衝撃でしょうね)
 昨夜が先頭に立つ女性の傍にしゃがみ込む。
「大丈夫、落ち着いて。確かにあれは花火。だから変な弾道にはならない」
 銃と弓の中間のような軌道を描き、花火が地面へと落ちる。
「大切なのは、ちゃんとよく見て攻撃を見切ること……回避出来るタイミングは必ずある。それを逃さないで」
 少し練習してみましょうか、と昨夜は言葉を紡ぐ。女性兵士達は光の大花火が降り注ぐ中、逃走経路を探し始め動き始めた。
 兵士の一人が怯えた顔を見せ、大花火を避ける。咄嗟に駆け寄り昨夜は声をかけた。
「こ、こんな技を使われたら……こ、怖いです」
「それは恐怖ではないです。今までの訓練で、妖術を知ったからこそ『自分の感覚』が変化した証拠です」
「えっ」
「自分の感覚の中、『嫌な気配』がしたらそれに従って動く。この先、嫌な気配を突然に発する者がいても、今こうして私の妖術で感じた感覚を研ぎ澄ませば……大丈夫」
 昨夜の言葉に兵士は何度も頷き、鉄砲を抱えたまま移動を始めた。

 昨夜の作りだした大花火がすべて着弾した後、鉄砲隊の間に怪我をした者はいなかった。
「妖術、見せていただいてありがとうございました!」
 兵士達に囲まれる昨夜……大花火が着弾し、抉れた地面に水が溜まったそこには『志乃』の顔。
(上手く……出来たよ)

●訓練その4:真の脅威を体験!
 自らの武器、危機の回避、そして地形を把握し適切な行動をとること。
 さらに、これから先敵が妖術を使った際どうやって切り抜けるか。
 女性鉄砲隊達は確実に猟兵の”魅せた”技や助言によって知識を身に着け、実践訓練を行っていた。

「みんな腕前も度胸もそこそこあるっす、あとはオブリビオンの見た目に慣れる必要があるっすね」
「そ……そうですね……オブビリオンの見た目……」
 リンネがそれを抱え兵士の元へと駆ける。眼鏡を煌めかせ本山がにやりと笑う。
「ふふ、それじゃあ最後の仕上げだー!地獄いきだー!……っす♪」

「あ、そ、その……先程もご挨拶しましたが……リンネ・ロートと申します。まずはこれをご覧ください」
 リンネの腕の中にはかわいらしい『くまちゃん』が抱えられている。
「それ舶来品ですよね?たしかふわふわした人形だっていう」
「はい、くまちゃんです……ちょっと待っててくださいね」
 リンネは地面にくまちゃんを置き、女性兵士達を見まわし一人に声をかける。
「そ……そこの方はこちらへ……」
「え、はい……」
 舶来品のくまちゃんに、女性兵士は物珍し気に視線を向け手を伸ばした瞬間──くまちゃんの口元が裂け、中から血の匂いを漂わせる『口』が開かれる。
「きゃ、きゃー!!!!」
 ぺたん、と尻をつく女性兵士を優しく起こしながら、リンネは口を開く。
「その……この戦場に、舶来品があるという状況はあるでしょうか……?」
 女性兵士達は気が付く。そんなものがあるわけがない。
「はい、こういう戦場にあるはずのない物には近づかないようにして下さいね。敵の罠だと思います」
 こくり、と真剣に頷いた女性兵士達を前にリンネが口を開く。
「では次に、これを」
 ユーベルコード:オルタナティブ・ダブル。
 リンネの傍にリンネがもう一人──黒髪を苛立ちを隠せず掻きながら、現れる。
「あ!?なんか用かよ……なにじろじろオレの何が珍しいんだ!?あ!?」
「え、ぶ、分身!?」
 女性兵士が驚き、リンネが目をもう一人の自分──狂哉へと向ける。
「このように怪しい術を見かけたら最低限の衣服ですぐに逃げるようにお願いします。その後で天下自在符の持ち主に対処してもらって下さい」
 妖術を使った際は反撃ではなく状況を見極め、猟兵の元へ。今までの訓練で女性兵士達はそれを学んでいた。
「鉄砲とか通じないので……試しに私か狂哉を撃ってみれば分かります」
 女性兵士の一人はリンネの言葉に目を丸くさせるが、分かりましたと言い、鉄砲を構える。
 パアンと音が鳴り、リンネのいた場所に弾は落ちる。
「は、オレだったらそのままカウンターしてたぞ」
「……そ、それは」
 呆然とする兵士達。一瞬のうちにリンネと狂哉が移動していた。──圧倒的な、力の差。
 改めて猟兵の力を知り、女性兵士達の訓練が終わった。

 その時であった。
「即興の肝試しで、恐怖のどん底におとしいれてやるっすよ♪」
 物陰に隠れていた本山の眼鏡はすべてを見ていた。そして、ユーベルコード:幻灯の百器徒然袋(ゲントウノヒャッキツレヅレブクロ)で眼鏡が煌めく。
 メガネのレンズから生み出される立体映像は、おどろおどろしい妖怪や首のもげた幽霊。
「ぎゃー!!!」
「幽霊、幽霊!?」
『悪い子はいねえか~?泣く子はいねえか~?』
 悲鳴を上げ、思わず逃げ出した女性が派手に転ぶ。事前に本山が作っていた兎取り用の罠であったが、突然の出来事に普段慣れているはずの女性達がパニック状態になる。
「あ、あれ……さっきの猟兵さんがいない!?」
「そんな!?」
 いつの間にかリンネと狂哉の姿は消えている。
(ふっふっふ、ご協力感謝っす!)
『フハハハハ!お前も泣いたり、笑ったり、できなくしてやろうかぁ~!』
 おどろおどろしいメイクをした悪魔が鉄砲隊の戦列を薙ぎ払おうと迫る、その時であった。
「皆、落ち着いて!……さっきの猟兵さんを探しましょう。この妖術から逃げながら!」
 鉄砲隊の強みは遠くからの狙撃、しかし今は敵に接近されている。
 教えて貰った、地形を利用して最高の状態で動けるように。
 鉄砲隊を素早く分け、山間を見まわし、大きな岩に隠れる。万が一のために必要な装備以外は捨て、第一に逃走経路を確認し。
『首おいてけ~!首おいてけ~!』
 幽霊は動いてはいるが、攻撃はしてこない様子だと隠れていた先行隊が報告する。
「でも、近づいたら攻撃をする可能性もある。突然に幽霊が出てくる不自然な状況──先程の猟兵さんを探すことに集中しましょう」
『お腹へったからおなごたべるど~!』
 奇襲をかけるふりをしながら、幽霊(立体画像です)に向かい、進行方向とは逆に銃を撃つ鉄砲隊。
(それが正解っす。これで敵は引き付けられて……)
 山間から少し離れた丘に、リンネと狂哉が立っていた。
「て、敵が来ました!こちらに損傷はありません」
(……敵、そういうこと、でしたか)
「おう、あとはオレが殺るから隠れとけ」
「み、皆さん……訓練、お疲れさまでした」
 風のように消える二人。訓練、の言葉に女性兵士達は顔を見合わせる。
 
「うわー!本体はやめるっすー!丈夫だけどだめっすー!」

「はは、というわけで、これにて訓練終わり、っす!」
 皆の前に姿を現した本山の眼鏡が光る。
 即興で身を隠し、鉄砲隊の訓練の成果を見守っていたリンネもほっとした様子で労いの言葉をかけた。

 かくして幕府軍、女性鉄砲隊は訓練内容を身に、そして書に纏め出発する。
 ──第六天魔王が本拠地に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月21日


挿絵イラスト