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ゴリラVS羽の生えたゴリラ

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●ゴリおこ
「ウホ! ウホホ!」
「ゴリ、ゴリゴリゴリッ! ラーッ!!」
 その森はゴリラの棲む森だった。
 賢く穏やかな気質。剛健な体格と膂力を決して争いに使うことなく、弱き者への労わりに用いる優しさ。森のゴリラはこの地方において聖獣とも呼ばれていた。
 そのゴリラが。
「ウッホホ! ウッホホホ!!」
「ホ、ホア! ホアアア!!」
 太く厚みのある手で拳を握り、地面に叩きつける。脚を振り上げ何度も地面を踏む。
 とあるゴリラがぎゅっと目を瞑り、掌で自分の胸を何度も叩いた。ドラミングだ。ゴリラは仲間を諫めるためにドラミングを行うこともある。争いを望まず平和を愛するゴリラの、代表的な行為だ。
 しかしそのドラミングをするゴリラの表情のなんと悲痛なことか。争いは良くない、平和的に行こう。ドラミングを通じた訴えはどこか自身へ強く言い聞かせるようにも見える。
 ゴリラは怒っていた。
 それも一匹や二匹ではない。
 みんな怒っていた。
「ゴリ――ッ!!」
 やがて一匹のゴリラが怒りを抑えきれなくなったとき、感情のままに拳を振り回してしまう。拳は不運にも木へと当たって、めりめりと叩き折ってしまうのだった。
「ゴ、ゴリ…」
 これにはゴリラも反省。森の木に罪はない。悔恨の念に項垂れて、折れた木を起こし、その辺に落ちていた蔓を巻きつけて修復するのだった。

●何かあったらだいたいオブリビオンのせい
「皆さん聞いてください」
 白い軍服に包んだ少女のグリモア猟兵。ヴィル・ロヒカルメ(ヴィーヴル・f00200)が眉をハの字にして口を開いた。
「ゴリラが怒っています」
 由々しき事態だ。
「怒っているのはアックス&ウィザーズのゴリラです」
 すごいゴリラなのだ。
「どうして怒っているのかわかりません。でも、すごく怒ってるんです」
 森に入り込んだ人間が襲われたり、怒れるゴリラが森を飛び出してしまったら大変だ。ゴリラのパワーが人間を傷つけてしまえばゴリラは物凄い落ち込むだろう。
 いったいゴリラの怒りはどこから来るのか、調査の必要がある。しかしゴリラは既にすごく怒っていて、暴れ出してしまう個体がいる。ゴリラ同士で喧嘩してしまうかもしれない。そのときは力で止めたり、道具で拘束する必要があるだろう。
「でも、このゴリラたちは人々から森の聖獣と扱われているんです」
 彼らを止めるためであっても、ゴリラを傷つけることはできない。
「くれぐれも気を付けてください。万が一傷をつけてしまったら…すごいクレームがきます」
 いっぱいくる。
「でも、ゴリラは本来賢くて心の優しい者たちです。みなさんが心からゴリラになりきることができれば、きっと心を開いてくれます」
 ゴリラはすごいのだ。髪や肌の色でゴリラを差別しない。服を着ていても、なんか武器を持っていても決して差別しない。相手が気高く美しいゴリラの心を持ってさえいれば、仲間と認めてくれる。
「ゴリラが一斉に怒りだすなんて、普通ではありえない事態です。オブリビオンの仕業に違いありません」
 怒りの原因を突き止めれば自ずとオブリビオンへとたどり着くに違いない。
「みなさん、よろしくお願いします!」
 説明をそう締めくくって、ヴィルはバナナを取り出した。そして食べた。


鍼々
 鍼々です。今回もよろしくお願いします。
 今回はゴリラシナリオとなります。参加される方がゴリラになりきればなりきるほど、判定に成功しやすくなるでしょう。渾身のゴリラムーブをお待ちしています。
 なおゴリラは言葉を話すことはできないですが、ボディーランゲージで意思を伝えてきます。賢いので。猟兵もウホウホゴリゴリ言ってれば意思が伝わります。賢いので。
 この依頼は三章構成ですが、全章通してゴリラムーブが推奨されます。
 最後に、登場するゴリラは我々の知る地球産ゴリラでなく、アックス&ウィザーズのゴリラなので細かい生態など気にしなくて大丈夫です。なんとなくゴリラっぽくしてれば大丈夫です。
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第1章 冒険 『いと神聖なるゴリラ』

POW   :    ゴリラを力ずくで止める

SPD   :    いろんな道具でゴリラを拘束する

WIZ   :    ゴリラが暴れた原因を調査する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

オセロ・コールブランド
ゴリラはカッケぇクールな生き物ス。それがこんなに荒ぶるなんておヤベエ
紳士的にウホオゴリゴリ、腕を地面につけて歩くでゴリ
バナナとか差し出してのんびり同じ時間をウホウホ、落ち着くか様子見
食い物がないならそれが原因かもつーコトで
もし喧嘩になる(喧嘩がある)なら俺ァ【無敵城塞】でゴリラ耐え続けててウホホ体力切れを待つッス!
ゴリ(どうしてこんなに争うんスか)!
ウホホ(殴りたいなら俺を殴ればいい)!
でもそれが目当てなんて俺たちらしくねえ(ウッホホィゴリウホ)!
ウホホホ(そうだろのウホホホ)!



●あなたに贈るバナナ
「ゴリ、ゴリゴリゴリ!!」
「ウッホホ、ホッホアーッ!!」
 二匹のゴリラが言い争っていた。最初はお互いに怒りを押し殺した紳士的な意見交換だったが、やがていまの境遇に対するやりきれなさが爆発し、ついには感情が露わとなってしまったのだ。
 ゴリラが拳を作って振りかぶれば、対するゴリラもまた歯を剥き出しにして手を広げる。
「ウホホッ!!!」
 突如一匹のゴリラが飛び出した。163.9cmというやや小柄な若いゴリラの雄。そのゴリラは故郷にてオセロ・コールブランド(人間のパラディン・f05438)と呼ばれていたが、この森においては一匹の心優しいゴリラだ。
 彼は喧嘩の兆しを見るやすぐさま飛び出し、両手を広げて二匹のあいだに分け入ったのだ。
「ゴリ…!」
 どうしてこんなに争うのか。彼の信じていたカッコよくてクールな生き物の、尋常でない様に焦り、そして悲しみを抱く。
「ウッホホホァ!」
「ゴリ、ラリリ!!」
 当然ゴリラも突然の乱入にいきり立つ。事情を知らぬ若い雄が邪魔をしてきたとあれば、ゴリラの興奮も仕方がないだろう。ゴリラは若い雄の襟を掴み上げようと手を伸ばした。
 だが。
「ウホホ!」
 殴りたいなら俺を殴ればいい。そう言われて、どうして乱暴ができようか。
「……ウホ」
「ゴリ……」
 頭から冷水を被ったように、二匹のゴリラが静かになる。
 若い雄の使った力は、あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になる代わりに、自身は全く動けなくなるというもの。決して暴力に頼らず争いを治めようとするその姿は、全てのゴリラが模範とするべき在り方ではないか。
「ウホホホ」
 オセロはやがて広げた手を懐に伸ばした。そこにあるのは二本のバナナ。彼は事前に争いの原因を考えていた。食べ物がないからなのではと。
 二匹のゴリラは顔を見合わせる。互いにふっと笑みを浮かべて、若い雄へ向いた。差し出されたバナナをそっと押し返す。
「ウホ、ホホ」
「ゴリゴリゴ」
 お前は我々よりまだ若く、体が細い。バナナは自分で食べなさい。
 優しく、他者への気遣い忘れない精神。
 それは彼の求めていた、紳士的でカッコよくてクールな生き物だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リゥ・ズゥ
リゥ・ズゥは、ゴリラでは、ない。だが、ゴリラにならなければ、ならない。
リゥ・ズゥは、ゴリラに、なる。ゴリラを、知る。ゴリラの怒り、わかる、はず。
(とりあえず「野生の勘」でゴリラっぽく振る舞います。あと「ブラッドガイスト」使います。ゴリラは血が通った温かい生き物。つまり血を使った強化形態のブラッドガイストは即ちゴリラ化と同義です。またブラックタールの身体ならなんとなくゴリラっぽい形にもなれます。総合的に見てもうゴリラです。ゴリラと化したリゥ・ズゥ、否、ゴリ・ズゥであればPOWで他のゴリラ達を従えるゴリラの王となり怒りの原因もゴリラ達が教えてくれるでしょう。ゴリ語も「野生の勘」でわかると思います)



●どこからどう見てもパーフェクトゴリラ
 リゥ・ズゥは、ゴリラではない。
 だが、ゴリラにならなければならない。
 それはなにもゴリラのなかへ自然に溶け込むためだけに考えたわけではない。ゴリラと化してゴリ・ズゥ(カイブツ・f00303)となればゴリラから一目置かれ、怒りの原因も向こうから教えてくれるに違いない。そう考えたのだ。
 ゆえにゴリ・ズゥは完成度を求めた。野生のゴリラの思考をトレースするために己が勘をフル動員した。友情の儀式、求婚の合図、決闘の作法、その全てをたちまち取り込む。トレースゴリラ、ステージ1だ。
 そして次は造形に拘った。ゴリ・ズゥは元はリゥ・ズゥという名のブラックタールだった。即ち黒色の変幻自在の肉体であり、ゴリラの形を真似ることができる。これがトレースゴリラ、ステージ2になる。
 さらにはゴリ・ズゥはいまの体に足りない要素を補う。ゴリラが血が通った温かい生き物ならば、己が黒い体の中で紅々と光るものを使って活性させれば、血潮のどくどく脈打つトレースゴリラ、ステージ3なのだ。
 ここまでくれば完璧なゴリラだ。それもただのゴリラではない、アックス&ウィザーズという過酷な世界においてゴリラの王を目指せるほどの資質を秘めたゴリラ。ゴリ・ズゥの完成体だ。
「おまえたち」
 身長189.8cmの、大柄なゴリラがナックルウォークで荒ぶる集団へ介入する。そのなかで最も苛烈に怒り、いまにも岩へ八つ当たりしそうなゴリラを見つけて頭を掴み上げた。
「怒り、教えろ」
 頭に血が上っていたゴリラは激しくもがいて、すぐに力の差を思い知って大人しくなる。ゆっくりと地面へ降ろせば彼はウホ…と己が振る舞いを恥じてゴリ・ズゥに頭を下げた。

「ウホ、ウホウホ」
「ゴリラリラ」
 そんなこんなでゴリ・ズゥの周りに10匹のゴリラがいた。どれも似たような経緯で大人しくなった者たちである。呈された疑問に対し、身振り手振りで状況を話し始めた。皆の目は澄んでいて、怒りの影はもうない。
「ゴリラ、二つに、分かれて、いる?」
「ウッホウホホ」
「縄張り、争い」
「ゴリ、ゴリリリ!」
「ウホゴリ、ウッホホ…」
 ゴリラたちは現在二つの意見に割れているらしい。縄張りを巡って争うか、争わずに去るか。
 それは野生動物の集団にとって、深刻な問題だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東風・春奈
ゴリー、ゴリゴリゴリ?ゴリゴリ!
(そうですねー。【優しさ】のある表情でー、ゴリラさんを【誘惑】してみましょうかー)

ごりごりごりー、ごりりー!
(この地方のゴリラさんは聖獣と呼ばれるほど知能の高い様子ー、きっとー、話せばわかってもらえますー)

ゴリゴリゴリゴリラ!
(ゴリラさんたちを宥め、情報を引き出すことこそー、もっとも重要ですー)

ゴリラ。
(詳細な描写、アドリブは歓迎ですよー)



●ちっちゃなミニゴリラに癒されますか
 森のゴリラとて、すべてが怒り狂っているわけではない。憤ることに疲れたゴリラも、荒ぶるゴリラに辟易して距離を取ったゴリラもいる。
 そんな彼らにとって。
「ごりごりごりー」
 柔らかく澄んだ声の。
「ごりりー!」
 身長96cmの小さな小さなミニゴリラは、とても癒される存在に映った。
「ウッホホ、ウホ」
「ウホホ?」
 貴女も離れてきたのですかとゴリラは問う。ミニゴリラはとても幼くか弱い存在に思えたから、危険から彼女を守ろうとゴリラが傍によるのは当然のことだ。そのミニゴリラが、実は同種でなく東風・春奈(小さくたって・f05906)という名のドワーフであったとしても、彼らは行動を変えなかっただろう。いまでこそ森のなかは荒ぶるゴリラで危険に満ちているが、落ち着いた彼らはこのように穏やかで紳士的な生き物なのだ。
 きっと、話せばわかってもらえる。ミニゴリラは確信を深めた。森のなかで腰かけるにちょうどいい岩を見つけて立ち止まると、ゴリラはすかさず自身の胸板ほどもある大きな葉を一枚摘み取って、岩の上に敷いた。
 ゴリラとミニゴリラたちに笑顔が咲く。
「ごりりごり?」
 ちょこんと葉の上に体重を乗せてミニゴリラは小首をかしげて可愛らしく問う。
「ウホ…ウホホゴリ…」
「ゴリラ…ララ…」
 彼女を守るようにしてゴリラが腰を下ろす。ため息とともに憂いがこぼれ落ちて、風に浚われていった。
「うほうほごり」
「ゴリ、ラリラ」
 ミニゴリラの提案に、ゴリラは首を振る。

 森のゴリラはいま、他所からやってきた他ゴリラの集団と縄張り争いをしているらしい。本来ならば争いなどせず暖かく迎え入れてやるところだが、新しく森に来たゴリラたちは大変に粗暴で、暴力で森の生き物を脅かしているそうだ。
「うっほほー…」
 肩を落としながらぽつりぽつりと憂いを語るゴリラを、それは大変だねとミニゴリラが宥める。
「うほほごりごり?」
 戦って追い出すのはいけないのかとミニゴリラが問う。それでは森の生き物たちが戦いに巻き込まれるのだとゴリラは首を振った。
「ごーりごりうほいほ?」
 では戦わずに森を出て新たな住処を探すのかと問えば、虐められる森の生き物たちを置いていくことはできないと首を振る。
 ゴリラたちにはどちらの選択肢も取れない。しかしいずれどちらかを選ばなくてはならない。
「新入りゴリラさんたちですかー、ちょっと見てみたいですねー」
 ミニゴリラはふと素の口調で考え込む。不思議そうな表情でゴリラたちが彼女を見ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリツェッダ・ベシキリス
ゴリラね!相手に取って不足は無いウホ。
メアリにお任せウホよ!
それにしても……どうしてあの《森の賢者》がウホウホウホウホ?(麗しき人形がバナナを抱きかかえて不安げに立ち尽くせば森の涼やかな風がその髪を靡かせる。)

【WIZ】『学習力』『第六感』『カウンター』
ゴリラ語を習得してお返しする作戦でいくウホわよ!

🦍💢 🙌😥

🦍💢 🍌😥❓

🦍💢 🦍♀😥❓

🦍💢 🌲🔥😥❓

🦍🗯🗯🗯 😮❗️

成功→「ウホ!ウホウホウホホッ!ウホホ!!」(猟兵たちにドヤ顔サムズアップ)
失敗→「ダメだ全く分からん。僕には荷が重い。(素)」



●美ゴリラ
 ――どうして。
 ――どうしてあの《森の賢者》がウホウホウホウホ?
 森の涼やかな風がその髪を靡かせる。その色は陽光に照らされた雪原。その瞳は暁を閉じ込めた宝石の煌き。その衣装は首から足先まで覆う墨、あるいは夜の海を想起させた。白魚のように細く滑らかな指がバナナを抱え、丹念な手入れを受け整った眉が窄まり不安を表現する。
 そこにいるのは、人形のように麗しい、一匹のゴリラ。
 仮にその者がメアリツェッダ・ベシキリス(蕩闇の騎士・f00255)という名の人形であったとしても、森へ踏み込みウホと言った時点で問答無用にゴリラ。むしろ美ゴリラ。
 何をするにしてもまずゴリラと遭遇しなければならない。例えゴリラがこちらに手をあげてくるとしても、ゴリラならば相手に取って不足は無いウホと勇み足。森を歩けばすぐに、聞こえてくるゴリラ同士の争う声。
「ウホ、ウホホァ!」
「ゴリィーッ! イーッ!!」
 お互いに異なる主張をぶつけているのだろう。一触即発の空気だ。両手に拳を作っている。あれが振るわれればお互いにただでは済まないだろう。
 ――メアリにお任せウホよ。
 美ゴリラは直ちに介入する。美ゴリラにゴリラ語はわからない。美ゴリラが話せるのは人間の言葉だけだ。しかし、美ゴリラには学習力があった!

 🦍💢 🙌😥
 両手をあげて敵意がないことをアピール。
「ウッホホ!」
「ホホ、ホヒ!」
 ゴリラたちも突然現れた美ゴリラに困惑。しかし部外者は大人しくしていなさいというが敵意のない美ゴリラに決して手を上げることはない。

 🦍💢 🍌😥❓
 すかさずバナナを差し出す。
「ウ、ホホ…?」
「ゴー…ゴリィ?」
 とりあえずバナナでも食べて落ち着けよという美ゴリラの粋な計らいに、ゴリラたちはしぶしぶ受け取る。ゴリラの好物がバナナなのは全世界共通なのだ。

 🦍💢 🦍♀😥❓
 女の子の取り合いですかと問いかけてみる。
「NOゴリ」
「NOウホ」
 ゴリラは手を振って否定した。

 🦍💢 🌲🔥😥❓
 森を焼かれましたかと質問を変えた。
「……」
「……」
 ゴリラたちは顔を見合わせる。事情を知らないこの美ゴリラにどうやって説明するのが良いか、ウホウホゴリゴリと相談を始めた。二匹に、つい先ほどまで殴り合い寸前だった雰囲気はもう見られない。
 やがて。

 🦍🗯🗯🗯 😮❗️
「あ、待って!」
 ゴリラたちが突然背を向け歩き始めた。地面に拳を付きながら進むナックルウォークは意外に早い。木を避け茂みに分け入り、あわや見失うかというところで、彼らは美ゴリラに振り向いた。
 ――ついて来いと言ってますのね?
 美ゴリラが表情を引き締めて彼らを追う。
 やがて森の奥に落ちている、新入りゴリラたちが使っていたという剣や盾などの粗雑な武器を目撃するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都築・藍火
拙者がやるべきことは一つ。そう、砕天ゴリラによるドラミングでござウホ。巨大な砕天號のドラミング。きっとゴリラも敬意を払うでござウホ
もしもこちらに襲いかかるゴリラが入れば、砕天號の巨腕でそっと押し留め、気が落ち着くのを待つのでござウホ。こちらの【怪力】があれば、筋力勝負も勝てるでござウホ
ゴリラも疲れれば一旦怒りは鎮めるでござウホ
ゴリラがオチつたのならば、砕天號を使ったボディ・ランゲージで話しを聞くウホ



●しとしとぴっちゃんではない
 そのとき、ゴリラに戦慄走る。上半身だけでも自身の身長と並ぶ巨大なゴリラ。しかも上半身しか存在せず浮遊する謎のゴリラ。そのような存在が、怒りに地団駄踏むゴリラ集団へエントリーして突然ドラミングしてはどんなゴリラとてビビる。ゴリラじゃなくてもビビる。むしろ上半身のみの巨大ゴリラのインパクトに気を取られてそのすぐ前で同じようにドラミングする都築・藍火(サムライガール・f00336)に気付かない始末だ。仲の良い親子かなと思いつつもゴリラたちは身構えてしまう。
「ゴ、ゴリ…ウオォォーッ!」
 そのうち一匹のゴリラが驚きと混乱の果てに飛び出した。ドラミングの意図を知らぬわけがない、しかし突然登場し両手を激しく動かす巨大な何かというものに、そのゴリラは仲間を守るため反射的に立ち向かってしまったのだ。
 たちまち子連れゴリラの子供のほうが構え、そして親のほうが同じ構えを取る。激突するゴリラと子連れゴリラ。巨腕が互いの手を掴み合う。ゴリラはたちまち表情を変えた。己の全力をもってしても、相手はびくともしないのだ。同族でも指折りの力自慢であったのに。
「ウ、ウホ…!」
 ゴリラは静かに敗北を悟る。決して叶わぬ相手に挑んでしまったと理解する。せめて仲間へ今のうちに逃げろと伝えるが果たしてどこまで時間を稼げるだろうか。だが、ゴリラの決意に反して仲間に動く気配はなかった。
 そう。子連れゴリラに害意はないのだから。
 子連れゴリラは最初から力比べなどしていなかった。飛び掛かってきたゴリラを押し留め、気が落ち着くのを待っていたのだ!

「ゴリーゴリ、ウホ」
 勘違いして申し訳ないとゴリラが頭を下げる。子連れゴリラは気にするなでござると手を振る。親も子もぴったり息の合った動きにゴリラは目を細めた。さぞ仲の良い親子なのだろう。
「ござウホ?」
 子ゴリラが両手を広げて問う。一体この森に何があったのか。同じ動きで親ゴリラも手を広げて、質問を投げたはずの子ゴリラから視線を奪ってゆく。だってしょうがないじゃんこっちのが大きくてインパクトあるんだもん。
「ゴリ…!」
 するとゴリラが縋るような目を浮かべた。どうか、力を貸してほしいと。
 すべての始まりは、突如森へ押し入り縄張りを主張してきたゴリラ集団にあるという。本来なら新たな森の住人として受け入れるゴリラたちであったが、新入りゴリラの森の動物を脅かす態度を批難。現在は一触即発の状態にある。平和を愛するゴリラだが森の動物のためには無法者の排除も辞さない。しかし、争いになるとどうしても森の動物を巻き込んでしまう。
「ゴ、ゴリラウホ…!」
 そこでゴリラは子連れゴリラに依頼するのだ。自分たちが無法ゴリラと対決するときだけでも森の動物たちを守ってほしいと。いつの間にかそのゴリラの周囲には多くの同族が集まってきて、皆一様に頷いていた。
「なるほどでござウホ」
 子連れゴリラは親子揃って腕を組んだ。それからピンと人差し指を立てる。
「それなら、役割を交代しないかでござウホ?」
 つまり、ゴリラたちに森の動物を守ってもらい、猟兵ゴリラたちが無法ゴリラと対峙するのである。
 もしこの事件にオブリビオンが関与しているのなら。その新入りの無法者ゴリラが怪しいのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ゴブリン』

POW   :    ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


突如森を脅かした無法ゴリラは小柄なのだという。そして武器を使うという。また、森の奥で集団を作っているという。
 落ち着かせたゴリラたちから聞いた、無法ゴリラの特異な性質にオブリビオンの影を感じて、猟兵たちの調査は次の段階に移る。
 すなわち、無法ゴリラとの接触、または排除。
 ゴリラの案内に助けられて奥へ踏み込めば、木々の開けた場所に無法ゴリラたちの姿が見える。
 粗雑な武器を持った小柄な体躯。
 赤い髪と緑色の肌。
 申し訳程度の腰巻。
 それはどこからどう見てもゴブリンだった。

「ゴーブゴリゴリ…!」
 あ、こいつら自分たちのことを心の底からゴリラだと思ってる!
 だからゴリラたちもゴブリンをゴリラ認定したんだ!
 無法ゴリラ改めゴブリン集団は猟兵に気付いて吠えたのち、武器を持ったままのナックルウォークで迫ってくる。そう、彼らは勘違いしているのだ。ついに森のゴリラたちが決着を付けに来たのだと。もし猟兵たちがゴリラとして振る舞うのをやめてしまえば、彼らはたちまち猟兵が人間であると気付き、素通りしてゴリラや森の動物たちを襲い始めるのに違いない。
 いざゆけ猟兵たちよ!
 渾身の力でゴリラを演じて、己をゴリラだと信じているゴブリン集団を倒すのだ!
都築・藍火
ござウホ、ウッホホござウホ、ござウホッホホ!!!(彼女は、ゴリラとして戦う必要があるのならば、やはり必要なのは巨大ゴリラ。ゴリラは武器を持つべきではない、であれば巨大ゴリラによる巨大ゴリラパンチ、巨大ゴリラヘッドバッド、巨大ゴリラハンマーフックなどでゴリリン共を叩き潰さねばならぬ! という趣旨のことをボディランゲージで伝えようとしている)



●敵はゴブリンでなくゴリリン…?
 一匹の都築・藍火(サムライガール・f00336)もといゴリラがゴブリンたちの前に飛び出した。
「ござウホ、ウッホホござウホ、ござウホッホホ!!!」
 勢いよく地面を叩きながら呼び出すのは親ゴリラ。見た目は空中に浮く鎧武者の上半身だが、渾身のボディランゲージが鎧武者だってゴリラになれることを伝えてくる。
「ゴブ、ゴリリリ!!」
 ゴブリンたちが闘志を燃やした。激しく地を踏み、歯を剥き出しにしながら頭上で両手の武器を打ち合わせて威嚇。彼らは親子のゴリラすなわち子連れゴリラを名のあるゴリラと認識したのだ。
「ゴブラーッ!」
 武器を掲げて左右から襲い掛かるゴブリン。自分をゴリラだと思ってるゴブリン略してゴリリン。
「ござウホァー!」
 子ゴリラが声を発しながら拳を付きだせば、寸分違わぬ動作で親ゴリラが巨大パンチお見舞いする。ゴリラでありながら武器に頼る貧弱なゴリリンにはひとたまりもない。ぺちっと潰れてお陀仏である。すごいぞ、強いぞ子連れゴリラ!
 側面から回り込んだもう一匹にも難なく対応し、小柄な緑肌をあっさり掴み上げる。そしてゴリリンに抵抗する間を与えぬまま巨大ヘッドバッド。
 やはり巨大さこそパワー。ゴリラは武器を持つべきではないと、鋼のように鍛えられた筋肉が主張する。ちなみに金属製。
「ゴ、ゴリゴブ…」
「ゴブリラ…!」
 切り込み隊が為すすべもなく磨り潰されれば、ゴリリンたちに動揺が広がるのも仕方のないことだ。あの巨大ゴリラは危険、迂闊に手出しはできないという認識を共有する。
 そのとき、ひとつの武器が飛来した。子ゴリラが気付き親ゴリラが腕で弾けば、からんと地面に小さな斧が落ちる。それはフランキスカと呼ばれる、ゴリリンにも片手で扱える大きさの斧だ。戦場では主に投擲武器としても使用される。それが子ゴリラへまっすぐ飛んできたのだ。
「なるほどござウホ」
 敵はどうやら、親ゴリラから子ゴリラへ標的を変えたらしい。親ゴリラの圧倒的な戦闘力を目にすれば自然な考えだが、子ゴリラを見くびっているというしかない。
「ゴブゴリァー!」
 声に振り向くとそこに剣を掲げて襲い掛かる三匹のゴリリン。爛々と光る橙色の眼のことごとくが子ゴリラへ向いている。三匹纏まって確実に仕留めるとでも言うつもりか。先頭のゴリリンが距離を詰め鈍色の剣を振り下ろす。
「ふん!」
 それを子ゴリラは武器を抜くことなく、無手のまま迎え撃つ。ゴリリンが垂直に描く剣の軌道を、屈みながら踏み込むことで背にやり過ごし、すれ違いざまに重く力の乗った右フックを顔面へ叩き込む。そして彼女が動けば正確に動作を再現するのが親ゴリラだ。全く同じように低く屈んで、凶悪な重量の右腕を振るえば、残る二匹のゴリリンがたちまち吹き飛ばされるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リシェリア・エスフィリア
……戦うためにはゴリラになり切るのが必要なの?
ゴリらないとゴブリンの気は引けない。そう、必要ならやる。

(前肢を握り拳の状態にして地面を突くナックルウォーキングと呼ばれる四足歩行を心がける)
うっほ……うっほ……わたしは、ごりら
ばななも大好き。おまえ達との決着をつけてやる。うほほほほ。(薄い胸を叩いて精一杯ドラミング)

【wiz】行動
【魔剣の縛鎖】を使う

無数の短剣型の魔力を地面に突き立て足場を崩す。
相手が低い姿勢から体勢を崩しを目論むなら先んじて此方が先手
体勢を崩した相手を魔剣でなぎ払い、仕留める

剣を使うのはゴリラじゃない?
大丈夫ごりらは賢いよ。……賢いから剣を使っても大丈夫。私はごりら。うほうほ。



●研ぎ澄まされた魔剣の切っ先によく似た横顔のゴリラ
 リシェリア・エスフィリア(蒼水銀の魔剣・f01197)は自称ゴリラと自称ゴリラの激突する様子を眺めながら静かに思考する。
「……戦うためにはゴリラになり切るのが必要なの?」
 そんなことがあるのか。首を傾げたくなる話だが、いざ目の前でウホウホ言ってる猟兵とゴリゴリ言ってるゴブリンを見れば、頷ける部分もないわけではない。ゴブリンたちは棒立ちのリシェリアには目もくれず、ゴリラの真似をした猟兵にばかり武器を向けてるではないか。
 リシェリアは吸い込まれるような青色の瞳を揺らめかせた。
「ゴリらないとゴブリンの気は引けない…」
 そう。必要ならやる。彼女は小さく頷いた。
 瞳をゴブリンに向けたまま両手で握り拳を作る。姿勢を前傾させ拳を地面に付くと、透明感のある銀髪がさらさらと肩から滑り落ちた。拳に体重を乗せて四足歩行を心がければ完成、これがナックルウォーキングである。するとそれまでリシェリアをスルーしていた周囲のゴブリンたちがぴくりと反応を示した。
「うっほ……うっほ……わたしは、ごりら」
 ゴブリンたちの顔が向いた。
「ばななも大好き。おまえ達との決着をつけてやる」
 互いに顔を見合わせてリシェリアのゴリラ度を審議に掛ける。
「うほほほほ」
 背を逸らし、薄い胸を叩いてドラミング。ゴブリンたちはというとリシェリアへ指を差しながら何やら主張し合っていた。
「……!」
 ドラミングのボルテージをさらに上げた。ゴブリンは手で丸を作り、リシェリアをゴリラと認定する。合格。
 このとき、リシェリアは魔剣ゴリラとなった。

 魔剣ゴリラとゴブリンの戦いが幕を開ける。
 視界にいるゴブリンたちがいっせいに武器を振り上げ、敵意の篭った視線を投げかけてきていた。やがて剣と盾を持つ個体が数匹、前衛となり距離を詰めてくる。奥には投擲用の斧を持った個体が控えて、彼らの殺意が伺えた。
 ひゅう、と空を切る音。回転する斧が見えた。魔剣ゴリラは白く細い指先に剣の柄を現し瞬く間に弾く。
 ゴブリンが動きを止めた。
「あ」
 ゴリラが剣を使うなんて、と自らのことは棚に上げて審議を始めるゴブリンだ。誰だあの美少女をゴリラ認定したやつと仲間を責める声が聞こえる。
「待って……ごりごりうっほ」
 剣を使うのはゴリラじゃないというゴブリンの主張に、ゴリラは賢いから剣だって使えると反論する。この魔剣ゴリラの意見は不思議と剣を持ったゴブリンたちの支持を受け、やがて再び魔剣ゴリラは再び合格判定を勝ち取るのだった。剣ゴブリンたちがどこか嬉しそうなのは、自分たちも賢いと間接的に言われたからかもしれない。
「それじゃあ始めるうっほ」
「ゴブゴブ、ゴリラ!」
 戦闘再開。
 突貫してくるゴブリン前衛隊に、魔剣ゴリラは一歩後退しながらくるりと一回転。空をきる深い蒼の切っ先から無数の短剣型の魔力を放ち、檻のようにゴブリンたちを閉じ込めてゆく。辛うじて檻を免れたゴブリンが魔剣ゴリラの体勢を崩そうと飛び掛かると、たちまち両刃の長剣が翻った。
 首から血の飛沫をあげて倒れる骸。
 青い瞳は、静かに次の獲物を見定める。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東風・春奈
己をゴリラだと信じている精神異常ゴブリンさんたちでしたかー
彼らを放置はできませんねー

ゴリラとして戦うというのは、なんともハードルの高いことですがー
やらざるをえませんねー
本当はー、ゴリラさんと一緒に戦えたらいいんですけどー
ゴリラさんは臆病で繊細な動物ですー
傷つけたくはないですねー


さて、ここでひとつ。

大砲はゴリラですー。

だってそうですよねー?
黒くて、大きくて、力持ち。戦いのときは轟音をあげて敵を蹴散らかしますがー、戦わざる時は決して人を傷つけませんー
その運用は繊細な事前作戦立案を強く要求するものでー、柔軟な対応はなかなかできませんー。そう、繊細なゴリラさんですねー

どかんどかーん。そういうことですー



●ゴリラは繊細なのさ
 ゴリラとゴリラが戦っている。状況はゴリラが優勢だ。
 東風・春奈(小さくたって・f05906)はそっと両手を合わせて、自称ゴリラのゴブリンを眺めた。
 なるほど。
「己をゴリラだと信じている精神異常ゴブリンさんたちでしたかー」
 心から信じているため、森のゴリラたちはゴブリンをゴリラと認識したのだろう。ゴリゴリ言っていた猟兵たちが仲間と認められ、そしてゴブリンに敵と認められているのと同じ理由だ。現在の春奈はうほうほごりごりしてないので、ゴブリンたちに襲われる気配はない。
 いまでこそゴリラを装った猟兵が迎え撃っているから、ゴブリンたちは猟兵へ武器を向けているが、彼らがゴリラごっこをやめればたちまち森のゴリラを襲い始めるに違いない。
「彼らを放置はできませんねー」
 とはいえ。
「ゴリラとして戦うというのは、なんともハードルの高いことですがー」
 そう何度も何度もゴリラの真似などできないのだ。ゴリラの振る舞いを考えれば考えるほどにインスピレーションとごり力(※ここではゴリラを表現するボディランゲージの語彙力を指す)が枯れていってしまう。とはいえ、やらざるをえない。それは必要なことだから。
「本当はー、ゴリラさんと一緒に戦えたらいいんですけどー…」
 そこで春奈は一計を案じた。

「さて、ここでひとつ」
 春奈はピンと人差し指を立てた。目の前にはゴリ猟兵を倒すべく駆け足しているゴブリンたちが見える。
「大砲はゴリラですー」
 ゴブリンがコイツ何言ってんのと足を止め振り向いた。彼女の背にある金属製の厳めしい大砲。それがゴリラに見えてしまうゴブリンなどどこにもいやしない。だが春奈は構わず続ける。
「だってそうですよねー?」
 どこが。
「黒くて、大きくて、力持ち。戦いのときは轟音をあげて敵を蹴散らかしますがー、戦わざる時は決して人を傷つけませんー」
「……」
 ゴブリンたちは顔を見合わせる。春奈の解説をゆっくり咀嚼しながら、黒光りする大砲を眺めた。確かに黒くて、大きくて、力持ちである。
「また、その運用は繊細な事前作戦立案を強く要求するものでー、柔軟な対応はなかなかできませんー」
 なるほどゴリラの繊細さをそういう風に出してきたかと、半ばゴリラソムリエになりつつあるゴブリンたちは唸る。腕を組み、何度も頷いて春奈へ理解を示した。
「そう、繊細なゴリラさんですねー」
 つまり、これは春奈とゴリラの共闘なのである。
 やがて大砲をゴリラと認めたゴブリンたちは肩をいからせ、剣や斧を構えながら邁進するのだ。水平に構えた大砲ゴリラの銃口へ詰め寄り、おうテメェやんのかコラとすごむ。
「ゴブ、ゴリゴリ…!」
「ゴブウッホ、ウホウホ…!」
 そして大砲が火を噴いた。
「どかんどかーん」
 どかんどかーん。至近距離で砲弾を浴び跡形もなく消し飛ぶゴブリン。
「そういうことですー」

成功 🔵​🔵​🔴​

リゥ・ズゥ
今のリゥ・ズゥは、ゴリラ、だ。ゴリラの、リゥ・ズゥは、森の、王。ゴリラの王、だ。縄張り乱すゴリラ(ゴブリン)は、許さない。纏めて、追い払う。
(引き続きゴリ・ズゥです。もちろんブラッドガイスト仕様です。強化されたゴリ・ズゥのドラミングはただのドラミングではありません。「鎧無視攻撃」を伴う「衝撃波」となって敵ゴリラ(ゴブリン)達を薙ぎ払うでしょう。結果的に攻撃となってはしまいますが、これは『争いをやめよう』のサインに変わりありません。ただ聞かないなら遠慮せず殴るぞという意志も篭っているだけです。)※ゴリ・ズゥも普通にゴブリンをゴリラと認識しています。部下ゴリラ達があれはゴリラだと言っているので。



●そのゴリラの名は

 ある男は言った。
 ――あの黒いのか? よく知らねぇよ。ゴリラで、雄で、そんで強ぇ。そんだけだ。

「今のリゥ・ズゥは、ゴリラ、だ」
 森の奥、木々のない開けた場所に声が響く。
 ゴブリンは瞬く間に警戒態勢をとった。声の主の、光を吸い込む黒色の毛並みに、全身へ動脈の如き赤色が這った風貌。森のゴリラの王と呼ぶにふさわしい尋常ならざる怪物が登場したのだ。ゴリラの王、ゴリ・ズゥ(カイブツ・f00303)はそれきり何も言わない。無音のナックウルウォークにてゴブリン集団の中心へと進む。
 戦いの喧騒のなかにありながらも構えず威風堂々と歩く姿に、ゴブリンは無意識に後ずさってしまう。偉大なる王ゴリ・ズゥ。彼はゴブリンの中心で立ち止まり、上体を起こす。そして己より体の小さい緑肌を睥睨した。
「ゴリラの、リゥ・ズゥは、森の、王。…ゴリラの王、だ」
 宣言。
 しかしゴブリンとていつまでも圧倒されてはいられない。目の前にゴリラのボス格がいるのなら、それを討ち取れば縄張り争いに勝利する。互いに目配せするとたちまちゴリ・ズゥの包囲網を完成させた。二重三重に囲むゴリラの大群から縄張り争いへの気迫が読み取れる。前衛が盾を持って腰を落とし、中衛が槍を構えて槍衾を形成し、後衛がスローイングナイフとフランキスカを手に狙いを定める、完全無欠の包囲網。どれほどの王であっても、この殺意の前にはひとたまりもないだろう。ゴブリンはゴリ・ズゥの凄惨に果てる様を思い浮かべ、舌を舐めずった。

 ある女は言った。
 ――あの黒いゴリラですか? ちょっと怖いですけど、意外と大人しいっていうか、優しい、かも……?

 ゴリ・ズゥは動じない。
「縄張り乱すゴリラは、許さない。纏めて、追い払う」
 縄張り争いは避けられないと悟った。ゴリ・ズゥには敵の緑色の肌が見える。粗雑な武器が見える。爛々と光る橙の眼が見える。だが、彼は敵をゴブリンでなくゴリラと認識していた。それは舎弟のゴリラ達がゴリラと呼んでいたからであるし、敵もまた己を心からゴリラと信じる者たちだからだ。
 だから敵は縄張りを乱すゴリラで、始まるのはゴリラ同士の戦いなのである。だが、ゴリラの戦いが血の流れるものであっていいのだろうか。
 いいや、良くない。それは良くないのだ。互いにゴリラならば争いをやめて平和的に解決するべきである。
 ゴリ・ズゥは二本の足で立つ。そして胸を反らし、両手を大きく広げた。

 ある幼子は言った。
 ――あの黒いやつすっげーよな! ドラミング出来んだぜ、かっけー!
 そして森のゴリラは言った。
 ――ウッホホ、ゴリゴリ! ウホ!!

 ゴリ・ズゥは両手で胸を叩いた。ドラミングである。しかしただのドラミングではない。
 森の王の凄まじいドラミングなのだ!
 彼が胸を打つたび衝撃波が生まれた。地は揺れ空気が破裂し、木々がざわめいて、鳥が一斉に飛び上がる。ゴリ・ズゥへ最接近していたゴブリンなどただでは済まない。あるものは吹き飛ばされて地を転がる。あるものは巨大な圧に精神を砕かれ昏倒する。敵の武器も包囲も、全てを無意味にしたのだ。
 やがてドラミングが止むと、いつの間にか戦えるゴブリンはどこにもいなくなっていた。
 森の王、ゴリ・ズゥ。
 彼は偉大なるドラミングによって、争いをここに鎮めたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ハーピー』

POW   :    エキドナブラッド
【伝説に語られる『魔獣の母』の血】に覚醒して【怒りと食欲をあらわにした怪物の形相】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    ハーピーシャウト
【金切り声と羽ばたきに乗せて衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ハーピーズソング
【ハーピーの歌声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


わたしはゴリラ あなたもゴリラ みんなゴリラ
 こどもはゴリラ おとなもゴリラ みんなゴリラ

 歌だ。歌が聞こえる。
 縄張り争いの緊張感に包まれていた森にひどく不釣り合いな、あどけない歌声が響く。
 アックス&ウィザーズの冒険者ならば、声の主が何であるかすぐに気づくだろう。人間の女性の上半身と、鳥の翼と下半身を持つモンスター。彼女の持つ歌声で虜にする能力がゴブリンを狂わせていたに違いない。
 そう、森の聖獣ゴリラが荒ぶる原因を作ったのはこのハーピィなのだ!
 しかもコイツは素で自分のことをゴリラだと思っている!
 ゴブリンを洗脳し縄張り争いを仕掛けたモンスターは、猟兵たちを見るや声を張り上げて歌い出した。

 あなたはゴリラ
 あなたはゴリラ

 途端。猟兵たちを強烈な催眠能力が襲う。それはあたかも、自分たちがゴリラとして生を受けいままで育ってきたかのような、バナナがかけがえのない宝物に見えてくるかのような。戦いを忘れさせる魔性の力。
 だが、もしここに『最初から自分のことをゴリラと思っている猟兵』がいるなら、歌の影響などないに等しい。
 さあゆけ猟兵たちよ!
 渾身の力でゴリラを演じて、自分の催眠によって自分でゴリラだと思い込んでいるハーピィを倒し、ゴリラの森の平和を取り戻すのだ!!


【お知らせ】
 リプレイ執筆の時間確保のため、
 プレイングの送信は『1/4 0:00』以降にお願いします。
リシェリア・エスフィリア
可憐で繊細だから、自分をごりらだと信じたかったの?
色々あったのかも、けど許さない。

(太い木の枝を拾って折る。敵に対する威嚇行動!)

いけない。既に思考がごりらめいてきた
大好物はばなな……
ううん、闘争心さえあればごりらでもよくない?
ごりらは強い、賢い。問題ない。
うほうほ。湧きあがる野生の咆哮を信じて。私達の戦いはこれからだ
(受け入れてナックルウォーキングで飛び込む)

【wiz】
【蒼の鏡】を使用
魔剣が断つのは肉体だけじゃない、音も切り裂く
そう自分をゴリラだと信じる心さえ

うほうほ(剣をすっと天に掲げ一つ物申したい意)
うほーー!(剣で地面を指さして、色んなごりらがいていいけど、ごりらは飛ばないよ。の意)



●ごりらになったっていいんだ
 信じれば いつだって 世界はゴリラ
 心ひとつ あればすぐ みんなゴリラ

 ハーピーの歌声が響く。技量のまるでない幼子のような歌い方だ。しかし奔放で伸びやかな声に乗った無邪気な感情が、心を塗りつぶす魔力となって猟兵へと襲い掛かる。どうしてゴリラの歌にしたのか、ハーピーにとってゴリラはどういう存在なのか、うっとり陶酔する彼女からは伺えない。
「可憐で繊細だから、自分をごりらだと信じたかったの?」
 リシェリア・エスフィリア(蒼水銀の魔剣・f01197)の言葉にハーピーは答えない。自分に刃を向ける存在がいることなどまるで関知してない様子だ。
「あなたにも色々あったのかもしれないけど」
 ゆっくりと屈んで太い木の枝を拾う。
「許すわけにはいかない」
 それを折った。
 リシェリアははっとする。いまの行動は何だ。木の枝を折るとは、まるでゴリラの威嚇行動ではないか。これはいけない。
 彼女の思考は既にゴリラめいてきてるのだ。恐るべきはハーピーの洗脳能力。いまならバナナが大好物であると断言できてしまう。いや、でも待てよとリシェリアは細い顎に人差し指を当てた。
 ――ううん、闘争心さえあればごりらでもよくない?
 なぜならゴリラは強い。ゴリラは賢い。もうなにも問題ないのではないか。
 思い至ったとき、体の芯からこみ上げてくる熱いエネルギーを感じる。形容しがたい原始の奔流。逞しさと優しさを兼ねたこれは。
「うほうほ!」
 野生の咆哮である!
 これからだ。これから始まるのだ。リシェリアは生まれ変わる思いで野生に身を委ねた。心地よい荒々しさに揺蕩いながら、体が自然とナックルウォーキングの姿勢をとる。
 それゆけ魔剣ゴリラ、きみたちの戦いはこれからだ!

「ごりごり!」
 魔剣ゴリラがその本性たる深い蒼の長剣を振った。とはいえハーピーまで距離がある。刃は何にも届かない、ただ空を切るのみ。
 いや、あった。たったひとつだけ、刃の切り裂いたものがあった。それはハーピーの全身を反響しながら世界へと溢れ出る歌声。すなわちユーベルコードである。魔剣の刃はハーピーの歌うという運命を斬り捨て、静寂を齎したのだ。
「!?」
 ハーピーの表情が驚愕に染まる。唐突に声が出なくなり、大慌てで原因を探す。やがて青い瞳と銀色の髪を見つけると、怒りを露わにした。ハーピーはそのとき、ようやく敵性存在をはっきり脅威と認識したのだ。
 敵の関心が自身へ向いた、その絶好のタイミングで魔剣ゴリラは剣を天へと掲げて口を開く。銀の髪がさらさらと肩から流れ、静かに波打った。
「うほうほ」
 鳥の妖魔の怒りに満ちた眼が剣に向く。
 次に切っ先は地へ向いて。
「うほー!」
 ゴリラは空なんて飛ばないという主張を叩きつけた。その正論は刃となってハーピーの心を切り裂く!
 そう。世界は広い。様々なゴリラがいるだろう。しかし、空を飛ぶゴリラはいないのだ。
「……!」
 ハーピーは心を引き裂かれるような顔で地面へと墜落した。土に汚れながら胸を掻きむしってもがく。とめどなく涙があふれていく。
 魔剣ゴリラもなんだか悲しくなった。
 そう。アックス&ウィザーズにも、他の世界にも。空を飛ぶゴリラなぞいないのだ。
 現実に打ちのめされてべそをかくハーピーが、酷く弱々しい存在に見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都築・藍火
ウホござウホッホホホゴザうっほほほー!!(もはやここまで親ゴリラとの共闘を演じてきたのならば、一貫して親ゴリラとともに戦い抜こうぞ、拙者は引き続き親ゴリラによる肉弾戦を仕掛けるのでござる。されど相手は空を飛んでいる。もし届かぬならば木の上に登り【ジャンプ】で相手に一気に接近し、拳をお見舞いするのでござる。万が一ジャンプでもダメであれば、拙者の奥の手、ゴリラキャノン(火縄銃)をお見舞いするでござる ということを身振り手振りで説明しようとしているらしい)


東風・春奈
◆方針
ユーベルコード【女神はかく歌えり】で対空砲撃しましょうねー
大砲がゴリラであることは、すでに証明済み。
すなわち私はゴリラですー

拡散する鳥打弾を空に放って、ハーピーさんの行動を縛りましょうー
当たれば大ダメージ。外れても、相手の行動はかなり制約されるはずー。


ですがー、逆に相手に狙われてしまうかもしれませんー
大砲の狙いをつけられないくらい、接近されてしまうかもしれませんねー
でも大丈夫ー、私はすでにゴリラだと、証明してきたはず。
私はまだ意識できてないかもしれないけれど、ゴリラさんとの絆は、きっと武器になるはずですー

アドリブとか、もう完全にお任せですー
優勢苦戦もご自由に。採用されたら嬉しいですー



●羽ゴリラ復活まで少々お待ちください
「ウホござウホッホホホゴザうっほほほー!!」
 気合十分。戦意最高潮。そんな都築・藍火(サムライガール・f00336)の背に浮き、揃ってドラミングするのは、森へ入ってからずっと付きそってきた外殻大武者。その名も砕天號である。藍火が右手を出せば砕天號も右手を出し、藍火が左手で拳を作れば砕天號も左手で拳を作る。冒険と戦いを通してゴリラらしさを追求する様は、誰もが親ゴリラと子ゴリラと認識するに違いない。
「ござウッホッホ!」
 さあ敵よ覚悟しろと構えれば、たちまちゴリラ親子の目に飛び込んでくるのが落ち込んで蹲るハーピーである。
 え、なにこれ。目が点になる子ゴリラ。飛んでないならちょうどいいと泣いてるハーピーに攻撃するような真似はしない。ゴリラは優しいからだ。
「うほうほー?」
 そこへ東風・春奈(小さくたって・f05906)がそっと膝をついた。背を撫でながら涙の理由を問うのだ。彼女もまたゴリラであった。1mに満たない身長を考慮すれば、まさにミニゴリラと呼ぶにふさわしいゴリラだった。可愛らしいゴリラだが、ゴブリンとの一戦で森の地形を変えかねないほどの砲撃をしたゴリラである。しかし、それでもゴリラは優しい。
 例え敵であったとしても、傷つき落ち込んだ者には寄り添う。ごりごりーと涙の理由を尋ねれば、どうやら猟兵にこっぴどくやられたかららしい。しょうがないね。
 ゴリラ飛ぶもん、嘘じゃないもん。涙と鼻水を垂らしながら繰り返すハーピーに、バナナを差し出すなどして慰めること10分。やがてハーピーは目を擦り、笑みを浮かべた。

 そしてようやく戦いが始まった。
 羽ばたき空を飛ぶハーピーにゴリラ親子は肉弾戦を挑むが、そのままでは手が届かない。ならばと木に登り、枝をしならせながら大きく跳躍する。ハーピーへ向けて手を伸ばす子ゴリラと全く同じ動きで手を伸ばす親ゴリラ。親ゴリラの体格は驚異の一言に尽きる。上半身のみの姿でありながら、その体長は子ゴリラの身長の二倍に相当するのだ。そのような体躯の親ゴリラが鋼の如き筋肉で拳を付きだせば、ハーピーとて危ういだろう。
 しかし相手は鳥の妖魔。空中での動きにはこちらに一日の長がある。凄まじいプレッシャーを放つ親ゴリラの拳に対し、両翼でくるりと体を錐揉み回転させ攻撃の軌道から体を逸らす。それと同時、振り抜かれた腕を足で蹴り、距離を稼いだ。
「ござウホ!?」
 肉弾戦は厳しいか。とはいえ全く予想してなかったわけでもない。子ゴリラはすぐに次の対応を考える。
 続いて大砲がどぉんと火を噴いた。それはミニゴリラの用意した無数の黒光りするゴリラだ。黒くて、大きくて、力持ち。それでいて繊細な運用を求められるから間違いなく大砲もゴリラ。つまり大砲をいくつも従えたその光景はミニゴリラによる姫プレイと捉えて間違いはないだろう。連続して轟音を立てる大砲から打ち出された弾は、空中で大きく拡散する。鳥打弾なのだ。
 だがいかな鳥打弾とて決定打にならない。ハーピーはというと両翼で空中を踊るように動き、巧みに射線から逃れて捉えられない。それどころかミニゴリラへと距離を詰めてゆくのだった。大砲の狙いをつけられなくなるほどに接近されてしまえば、ミニゴリラはたちまち脚爪の餌食になってしまうだろう。
 ぎゅっと目を瞑るミニゴリラの前に、風が吹く。次に目を開けると、麻布を着た若武者の背と巨大な鎧武者の背。脚爪がミニゴリラへと届く前に、ゴリラ親子が追い払ったのだ。
 すっかり調子を取り戻したハーピーは、妨害されたことで不満げに眉を顰めて、そして口を開く。そこから咲くのは歌だ。

 ゴリラ ゴリラ なんでもできる
 ゴリラ ゴリラ すごいから飛ぶ

 心の傷を埋めるかのようにハーピーが空を舞いながら歌う。歌い続ける。声に混じる魔性がたちまち猟兵たちを襲った。
「ござるッホホ…!」
「うーん、ごりごりー…」
 ゴリラたちは歯噛みする。先ほど戦ったゴブリンとはずいぶん違う。ハーピーは力を持ったモンスターで、ゴブリン集団の上に君臨できる存在なのだ。攻撃が届かずじわじわと消耗するしかない事態に、ミニゴリラの眉がハの字を描き、子ゴリラは歯噛みした。
 ところで、ここでひとつ思い出してほしい。
 ハーピーの歌は強力な洗脳能力こそあるものの、ハーピーズソングという名のユーベルコードでもある。その効果は、ハーピーの歌声を聞いて共感した者の戦闘力を増強するというものである。
 さて、ゴリラの歌に共感した者がこの場にいるだろうか。
 いるのだ、ここに!
「む、…ござウホ?」
「ごり?」
 二匹のゴリラが顔を見合わせる。体の底から漲ってくる力に気付いたのだ。
「ウホッゴザうっほほ!!」
 力の正体を考察するよりも先に、子ゴリラは目の前へ転がってきた勝算に飛びついた。走り幅跳びの要領で大きく跳躍。木の幹に真横から両足を突けばそのまま強く強く押し込み、木をたわませた。これならいける。子ゴリラにはある種の確信があって、勝利への明確なビジョンが浮かんでいたのだ。たわんだ気の元に戻ろうとする力を利用して再び跳躍。最初の攻撃より速さも高さも数段上回る勢いでハーピーの上を取る。
「!?」
「ウホァーッ!」
 見開かれたハーピーの目と勇ましい子ゴリラの目が視線を交差させる。腕の振りかぶりに従って親ゴリラも構え、やがて拳の巨大な質量でハーピーを地面へ叩き落とした!
「ぶぎゃ!」
 全身を襲う痛みと口内に入った砂利でハーピーが咳き込む。よくもやったなと猟兵へ振り返る。だが怒りはすぐに萎んだ。
「ごりーごり」
 その目の先で、無数の砲塔を構えたミニゴリラが立っていたからである。彼女は別れを告げるように小さく手を振り、そして命じた。
 すぐさま爆発音が連続して、ハーピーの体が無数の爆炎に包まれるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リゥ・ズゥ
リゥ・ズゥは、強い。リゥ・ズゥは、ゴリラ。ゴリラ達の敵は、許さない。
今度は、ドラミングでは、済まさない。ゴリラの力を、思い知れ。
(POWで挑みます。今回は全身の強化より、一撃を重視し、渾身のゴリ・ズゥパンチを叩き込みます。魔獣の母だろうと森の聖獣の前では敵ではありません。衝撃波が撃たれてもこちらも「衝撃波」と「カウンター」で応戦します。ハーピーの歌声は、ゴリ・ズゥはゴリラなので当然共感し強化されます。「鎧無視攻撃」「捨て身の一撃」での「グラウンドクラッシャー」で必ず敵を打ち倒し、ゴリラの森に平穏を取り戻します。しかし平和な森では武力に物を言わせる王は不要。ただの元ゴリラとして森を去ります)



●さらばゴリ・ズゥきみを忘れない
 炎のなかから怪物が現れた。元のハーピーの可憐さを脱ぎ捨てた、荒れ狂う魔獣の顔。それは魔獣の母の血を受け継ぐものだけが持つ力。翼を翻し、禍々しい足爪を猟犬へと突き出した。そのひとつひとつが槍の穂先に匹敵する、まともに受ければ致命傷を免れられない一撃だ。
 だが。
 怪物に立ちはだかるのもまた怪物である。
「リゥ・ズゥは、強い」
 果たして鉤爪を止めたのは剣でも盾でもなく、ましてや鎧でもなかった。黒い液体だ。ゴリラの腕を模った粘性の液体がハーピーの足爪に突き出され、受け止めていたのだ。
 美女の顔をした、猛禽が怒りに狂う。
「リゥ・ズゥは、ゴリラ」
 漆黒の体に浮かび上がる血管状の赤。それをどくどくと脈打たせて怪物はハーピーを見据えた。相手はゴリラの棲む森に混乱をもたらした元凶だ。気高く優しいゴリラたちの心をかき乱し、仲間割れにまで追い込んだ許されざる敵。群れの仲間同士で争うゴリラたちの慟哭を覚えているか。突然現れた己に驚き、直前まで争っていた相手を守るために立ち向かってきたゴリラの覚悟を覚えているか。
「ゴリラ達の敵は、許さない」
 ドラミングでは済まさない。
 森のゴリラの王。ゴリ・ズゥ(カイブツ・f00303)が再び牙をむいた。
 漆黒の腕が高く叩く伸び、拳を作って振り下ろされる。それは液状の腕であるが勢い、質量ともに絶大。鎧など薄紙のように叩き破る怪物の一撃。羽ばたいて身を翻すハーピーの鼻先を通り抜けて地面を穿った。凄まじい音と衝撃が暴れ、無数の土砂が舞い上がる。土が雨のように降り注ぐなか、怪物たちの瞳が絡み合った。
「ゴリラの力を、思い知れ」

 戦いは熾烈を極めた。全身を著しく強化したゴリ・ズゥだが特に重視したのは一撃の重さである。どれほどハーピーが魔獣の母の貌を呼び起こそうとも、森の聖獣の意志を背負ったゴリ・ズゥを圧倒するには至らない。鉤爪の一撃は悉く拳で打ち返され地面を耕していき、羽ばたきが起こす衝撃波は同じ衝撃波によって相殺され草木を薙ぎ払う。ハーピーがゴリラの賛歌を歌えばお互いにゴリラを自認する怪物たちである、ともに力が増強されて仕切り直しだ。
 お互い一歩も引かぬ攻防が永遠に続くかに見えたが、それはやがて唐突な終わりを迎えることになる。
 ゴリ・ズゥの拳がハーピーの腹を捉えたのだ。
「ぎえッ!?」
 呼気の絞りだされる悲鳴がハーピーの口から零れる。猛禽の怪物は地形を破壊するほどの衝撃を受け止めきれず吹き飛ばされた。森の木に叩きつけられ、へし折りながら倒れる。
「……」
 ゴリ・ズゥは拳を振り抜いた姿勢のまま止まる。攻防を制した彼の眼に喜びの色はない。彼は森のゴリラたちの王を自認していた。事実一部のゴリラが付き従ってもいた。だが、平和なはずの森に武力で物を言わせる王の存在はどうか。土の弾け飛んだ地面に目を落とし、ゴリ・ズゥは小さく首を振る。ゴリラの王に最もふさわしいのは覇王でなく――。
 ゴリ・ズゥはハーピーに背を向けた。王位を捨て、ただの一匹の元ゴリラとして、森を去ることにしたのだ。
 ゴリラの歴史はここでひとつの大きな転換期を迎えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リンタロウ・ホネハミ
いやあの、遅れてきたと思ったらなんすかこの惨状
右を向けば猟兵がナックルウォークしてるし左を向けば猟兵がドラミングしてるし
挙げ句にゃ上にはなんか空飛ぶゴリラがいないっすか?
いくらファンタジー世界だからっておかしすぎっホ
オレっちゴリラだけはまともに戦い抜くウホー!!

この戦いで散っていったゴリラ(洗脳のせいでそう思い込んだのかな)の骨を食って【〇二〇番之剛力士】を発動ウホ!
地形を変えるほどのこの一撃……反動を利用すれば頭上のゴリラまで届くはずウホ!
食らうウホ!!この一撃は全てのゴリラの魂が込められた一撃ウホ!!
ウホウホパーンホウホ!!!(洗脳が行き過ぎて途中でウホしかいえなくなった)
アドリブ大歓迎



●ようこそ新たなる犠牲者
「いやあの、なんすかこの惨状」
 リンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)の心境を一言で表現するならばそんな台詞になるだろう。
 右を見ればナックルウォークした猟兵がいて、左を見ればドラミングした猟兵もいる。
「挙げ句にゃ上にはなんか空飛ぶゴリラがいないっすか?」
 いる。いるいる。驚くべきことにそれは見間違いではない。倒れた木々の合間からハーピーが飛び上がって、歌を紡いでいるのだ。

 ゴリラ ゴリラ 決して負けない

 ハーピーの歌声にはモンスターを支配する力がある。敵は催眠能力であらゆる生物をゴリラへとつくりかえようとしている。リンタロウは歯を食いしばった。咥えた骨ががりりと音を立てる。めまいと陶酔にも似た不思議な感覚が心を捕まえようとしてきて、彼は気を強く保った。人間の心を手放さないように耐える。
「いくらファンタジー世界だからっておかしすぎっホ!」
 だめだった。
「オレっちゴリラだけはまともに戦い抜くウホー!!」
 早くもゴリラ化の魔力が言葉に影響を及ぼしていた。
 リンタロウはハーピーから目を離さないまま大きく後方へ跳躍する。逃げたのではない。彼の戦いに必要なものを調達するのだ。それは動物の骨。骨がリンタロウの力の触媒となるのである。彼は異色の特徴を持った傭兵だった。

 ゴリラ ゴリラ やべーやつ

 相変わらずゴリラの歌を続けるハーピーを睨みつけながら、ゴリラの骸から骨を抜き取って咥える。これほんとにゴリラの骨かな。よく考えてみれば今回の事件で死んだ森のゴリラはいないし、死んだのはむしろ自分をゴリラと心から信じきってるゴブリンたちだったような気がするが、ゴリラだって信じればすべてゴリラだ。
 骨を噛みしめればたちまち漲るゴリラの力。あらゆるものを粉微塵に粉砕しうる力と、あらゆるものを守る慈悲の精神がリンタロウに宿る。ゴリラの持つ腕力は理性と表裏一体。力を見せる場面を見極めてこそ真のゴリラである。
「行くゴリウッホよ」
 森に混乱を呼び込んだ、大空を舞う悪しきゴリラ。ハーピーとの戦いは果たしてゴリラの力を発揮して良い場面かというと、リンタロウのなかのゴリラの力の象徴的なイメージが両手でサムズアップした。ウッホウッホあれは敵、全力で殴っていいやつ。
「アンタ、ゴリゴリッホホ!」
 もはや人語の大半を失いつつ、彼は拳で地面を殴る。ゴリラは空を飛べない。ハーピーまで拳は届かない。だが、ゴリラには不可能を可能とする力がある!

 あいつチンパン おれゴリラ

 そのときハーピーの表情は驚愕に彩られた。リンタロウの拳が地面を叩き、凄まじい破壊力によって地形を大きく変えたのだ。駆け抜ける衝撃に森の大地が揺れ、木々がざわめく。リンタロウの体は地面を殴った反動により高く高く飛び上がっていた。
「ウホウホパーンホウホ!!!」
 意訳すると『食らうウホ、この一撃は全てのゴリラの魂が込められた一撃ウホ』となる。彼の洗脳は完了しつつあった。この場にいるのは骨喰リンタロウではなく、ゴリンタロウに違いない。
 彼はハーピーを見下ろすほどに高く舞い上がって、それから拳を振りかぶりながら体を捻った。まさか地面を殴ってまで飛び上がってくるなど夢にも思わなかったハーピーでは有効な防御行動がとれない。

 おれゴリラ あいつ――…

 限りない破壊力を秘めた拳が腹へと叩きつけられる。肉を打つ鈍い音が森に響いて、ハーピーは地面へと落とされ、さらに地を抉る轟音が広がった。
 歌声が途切れて静けさを取り戻す森には、骨を咥える一匹のゴリラと、倒れ伏す羽の生えたゴリラが映った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィロメーラ・アステール
なんだこの戦場は! ゴリラだらけだぞ!
こんな所にいられるか! あたしは自分の部屋に戻らせてもら……うん!?

……【第六感】が捉えたぜ、この場所に秘められた、熱い想い……!

そうか、全てがゴリラだったんだ!
この場所が、この自然が、この星が! みんなゴリラで!
熱い想いをぶつけたい森の仲間達だったんだよ!

姿なきゴリラ達の想いを伝えるなら、あたしに任せろー! ゴリゴリー!
【星の遊び場】を発動! 星と交信してゴリラ属性の津波を呼び起こすぜ!
ここはもう【ゴリラの遊び場】だー!

お星様がゴリラなら、あたしだってゴリラ!
ドラミングの【パフォーマンス】でゴリラ達を【鼓舞】するぞ!
みんな纏めてゴリラッキーにしてやるぜ!



●ゴリラ流星群
「何だこの戦場は! ゴリラだらけだぞ!」
 フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は叫んだ。力の限り叫んだ。だがその叫びもじきに鳴き声に変わるだろう。
 前後左右をゴリラに囲まれ、いや正確には自分をゴリラだと心から信じている猟兵なのだが、枝を折って威嚇したりナックルウォークしたりドラミングしたりバナナ食べてる連中から、お前もすぐこうなるんだろ的な期待を掛けられてフィロメーラは渾身の力で拒絶する。
「こんな所にいられるか!」
 流星の輝きをその髪に湛えたようなフェアリーが空中で器用に地団駄踏んだ。
「あたしは自分の部屋に戻らせてもら――… うん!?」
 そのときだった。フィロメーラの胸を言い知れぬ何かが吹き抜けた。
 それは風の囁きだったかもしれない。草の囀りだったかもしれない。大地のいびきか、あるいは木の葉を伝う滴の笑い声か。
 およそ第六感と呼ぶべき超常的な理解と感覚が、彼女にひとつの気付きをもたらした。
「……そっか」
 フィロメーラは両手を広げて、瞼を閉じる。
「全てが、ゴリラだったんだ」
 この世のすべてに溶け込み静かに世界の行く末を見守るゴリラの因子。それがフィロメーラの小さな体を支え、励ましてくれるのを感じる。
「この場所が、この自然が、この星が!」
 みんなゴリラで! 想いを持った森の仲間!
「いいぞ! 姿なきみんなの重いをあたしが代弁してやるぜ!」
 そしてフィロメーラはゴリメーラになった。

 煌びやかな金髪を躍らせ、フェアリーが両手を天に翳す。童女が跳びあがるように、イルカが水面から舞うように。星と繋がりを結び己を星の翻訳機構と為す。
「あたしにまかせろー! ゴリゴリ!」
 すると。
 世界に宿るゴリラが一斉に励起した。草は波打ちながら盛り上がり、巨大なゴリラの輪郭をとってドラミング。土もまたみるみる体積を増やして拳つきながら歩き始める。
 ハーピーが輝くフェアリーを認識したのはその瞬間だった。しかし、それからでは何もかもが遅かった。
 ドラミングするゴリメーラの旗の元、木のゴリラ、土のゴリラ、水のゴリラとあらゆる巨大ゴリラがスクラムを組んでハーピーへと殺到する。その光景はまさしくゴリラの津波か。否である。
「ゴリゴリウッホー!」
 自由奔放に走るゴリラの群れは決して暴力を揮いに来たのではなく、ただ心行くまま体を動かすのみ。
 ここがゴリラの遊び場なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヒバゴン・シルバーバック
アレンジ、アドリブ可。
ゴリラたちが集っている。ウォーマシンのバーバリアン、ヒバゴンは森を駆けた。猟兵としてではなく、彼はゴリラとしてやって来たのだ。この数日ゴリラたちが荒れて森がざわめいている。先を急げば我に返ったゴリラたち、更に進めばおお、見よ!我こそはゴリラと戦う者共!片や猟兵、片やオブリビオン!彼は全てを理解した。全ての生き物をゴリラにせんとする者に魂のゴリラたちが立ち向かっているのだ!
「ウホー!」
ヒバゴンは猟兵に加勢すべく拳を振り回して戦場に飛び込んだ。彼の名はヒバゴンシルバーバック。ゴリラ型のウォーマシン、彼もまた、ゴリラの心を宿す者だった!



●ラスト・ゴリラ
 草花が、木々が勢いよく後方へ流れてゆく。
 一人の男が走っていた。
 否、一匹のゴリラが走っていた。
 両手の拳を地に付きながらの独特な移動法。ナックルウォークにてそのゴリラは走っていた。
 そのゴリラは猟兵だった。だが、猟兵としてではなく、一匹のゴリラとして現場を走っていた。
 彼は純正のゴリラだった。決してこの森の戦いの必要に駆られてゴリラとなったのでなく、もっと昔から、あるいは産声を上げたときから既にゴリラだったのだ!
 だから他のゴリラの気配に敏感だったのかもしれない。彼はこの数日にわたってゴリラたちが荒れ、森が剣呑な気配に包まれていたことを把握している。せめて森の同胞たちよ無事でいてくれと、祈りながら疾走すればやがて見えてくるのは、おお!
 ゴリラたちが森の様々な動物を避難させる姿。彼らの眼差しのなんと慈悲と思いやりに溢れていることか!
 間違いない、何者かが仲違いするゴリラたちの目を覚ましたのだ。
「ウッホホ…!」
 安堵と歓喜が全身に満ち、疾走するゴリラは大きく跳躍する。太い枝へと手を伸ばし、掴み、勢いを殺さず次々に進路上の樹の枝を伝ってゆく。移動のペースはさらに上がっていた。
 次に見える光景は無数のゴブリンの死骸。彼はそれで察した。おそらく森のゴリラたちの怒りに触れたのはこのゴブリンに違いないと。しかし疑問は残る。一体誰がゴブリンを倒したのか。森のゴリラたちでないのは確かだ。
「ゴリッ!」
 彼は一際大きい枝を両手で掴み、両腕の膂力だけで大きく己の体を高く高く打ち出した。視線の高さは森の身長を越え、彼は一時的に広大な視界を獲得する。
 見えたのは。
 新緑の深い深い森のなかで、開けた場所で対峙するオブリビオンと猟兵たち。彼は全てを理解した。空を舞うハーピーに宿る悪しきゴリラ心と、それに立ち向かう猟兵たちの正しきゴリラの心を! 間違いない、全ての生き物をゴリラにせんとし、森へ災いをもたらしたのはあの羽の生えたゴリラの仕業である!
「ウッホホホァ――ッ!!」
 彼は吠えた。正しき怒りを胸に秘めて。
 彼は猟兵ゴリラに加勢すべく風を切って急行した!

 一条の流星が大地を穿った。舞い上がる土、波打つ草、吹き荒れる風。猟兵オブリビオン問わずその場にいた全てのものの視線を集め、爆心地から姿を現すのは一体のゴリラ型ウォーマシン、ヒバゴン・シルバーバック(ゴリラ型ロボット・f07349)!
 周囲の猟兵は瞬時に理解した。彼もまたゴリラの心を宿す同志であると。
 空を舞うオブリビオンは瞬く間に察知した。最も恐るべき敵が現れたのだと。
「ゴリア"ァァ!」
「ウホホォ!」
 魔獣の母の血を目覚めさせ怪物の本性を露わにしたハーピーの足爪と、荒ぶる力と正義の心を宿した拳がぶつかり合う。二人のあいだに衝撃波が生まれ、あらゆるものを薙いでいった。
 くぐもった悲鳴をこぼすのはハーピーのほうだ。彼女にはこれまでの戦いのダメージと疲労が蓄積していた。
 対するシルバーバックのゴリラは気力体力ともに万全。むしろ彼は全てのゴリラの矜持を拳に乗せる。怪物を打つ力は決して恨みからでもなく、憎しみからでもなく、ただ平和を求める心から。弱きものを助け仲間を労い強きものを労わる、崇高なるゴリラの精神。
 素早く腕を引き戻し、次はハーピーの体を地に拳で打ち付ける。彼の背に見えるだろうか。これまで森のゴリラを救うべく奔走してきた数多のゴリラたちが。
 彼は戦いに幕を下ろすため繰り返し拳を叩きつけた。地にクレーターがあき、怪物から軋む音が伝わってくるが彼は攻撃を続けてゆく。
 シルバーバックのゴリラは静かに想うのだ。ゴリラを求める故に暗黒面へと落ちてしまったこのゴリラのことを。もしこのゴリラが全ての生き物をゴリラにしようなどと思わなければ、もっと違う未来があっただろうか。
「ギィ――ッ!!」
 ハーピーから苦し紛れの反撃が飛ぶ。鋭い脚の爪が胸に浅くない傷をつけていった。
 だが、彼は止まらない。
「ウホホ…!」
 さようなら、おやすみ。
 大きく大きく振りかぶった拳は、やがてハーピーの頭蓋を捉え、砕き、そしてゴリラの森を巡る一連の騒動に終止符を打った。

 どこからかドラミングが聞こえる。
 戦場となった場所を取り囲むように、何者かがドラミングをしている。
 猟兵ゴリラの最後の一匹は、それが感謝と平和への喜びを表す森のゴリラたちによるものと気づく。
 森を包むドラミングは続いた。
 いつまでもいつまでも続いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月29日


挿絵イラスト