「汝らに折り入って頼みがある」
グリモア猟兵、ロア・メギドレクス(f00398)は神妙な顔をしながらベースに集まった猟兵たちの顔を見渡した。
「今のサムライエンパイアは戦乱の真っ只中であることは汝らも承知の上であろ。幕府軍……猟兵ではない兵士たちも戦いに赴いているのはわかるな」
ロアは腕組みしながら頷き、話の続きを口にする。
「だが、はっきり言って今の幕府軍の兵士たちは練度不足だ。まあ、ここまでの進撃で自信を取り戻しつつあり、士気自体は高まっているが……それでもじゅうぶんとは言えぬ。長い泰平の世であった故な。仕方のないことではある。あるが」
そこでロアは猟兵たちを指す。びしっと。
「しかしそれではこの戦乱、この先生きのこることはできぬ。そこで汝らの出番だ。彼らがこの戦いを生き延びられるだけの力をつけられるよう、汝ら猟兵が指南役を務め大特訓会を開催するのだ。イェーガーズブートキャンプであるな」
というわけで、ここまで話してロアはようやく資料を示す。
「まずこの地図に示した練兵場に向かえ。必要な設備は揃っているはずだ。近くに野も山もある。……して、汝らに割り当てられておるのは元服を終えて間もない程度の年齢層の若い侍衆だ。武家の生まれの次男坊以下やさほど裕福でない旗本の子などで構成されておる。熱意はあるが、ちゃんとした訓練を受けておらぬ奴も多いぞ。……くくく!問題児の寄せ集めとも言えるかもしれぬな!」
ひとしきり笑った後、ロアはあらためて表情を引き締めた。そして再び口を開く。
「……だが、人の命は国の未来だ。元気はよくとも、蛮勇がもとの生兵法で命を落としては元も子もない。連中が生きて此度の戦乱を終えられるよう、生き延びるための術や心構えを叩き込んでやってくれ。具体的なやり方は任せる。汝らが必要と思ったことをさせよ」
……と、そこまで言ったところでロアは説明を終える。質問はないな、と最後に確認をとった後、ロアはグリモアを輝かせた。
無限宇宙人 カノー星人
ごきげんよう、イェーガー。お世話になっております。カノー星人です。
戦乱が続きます。我々カノー星人も引き続き侵略活動を進めてまいります。よろしくお願いいたします。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
第1章 冒険
『幕府軍の大特訓』
|
POW : 腕立てや腹筋、走り込みなど、基礎体力を向上させる訓練を施します
SPD : 危険を察知する技術や、強敵からの逃走方法などを伝授します
WIZ : 戦場の状況を把握して、自分がやるべきことを見失わない知力を養います
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「なあ、ほんとか?猟兵とかいう連中が来るって」
朝餉の刻。居並ぶ少年のうち一人が、たくあんをかじりながら周りに尋ねた。
「ああ、本当らしい。ここでオレたちに修練をさせるんだとさ」
「教官役ってことかよ……」
「まあ、いいじゃないか。彼らは皆多くの戦いを潜り抜けてきた猛者ばかりらしい」
「じゃあ、きっとすごい訓練をしてくれるんだろうねえ」
「……いや、訓練を受けるだけじゃダメだ。俺たちが“できる”ってことを、認めさせてやらないと」
「焦るなよ、浩継」
「焦るさ。……この戦争は、俺たちが手柄を立てて立身する好機でもあるんだ」
「たしかに、ここで手柄でも立てなきゃオレら一生傘張りの内職だもんな……」
「気持ちはわかるが、冷静になれよ。俺たちは……」
「吾郎は家が裕福だからそう言えるんでしょう?」
「やめなよ光忠!」
「……」
険悪な雰囲気の中、わずかな静寂。少年たちは視線を交わし合い、様々な思いを巡らせた。
「……そろそろ朝餉の時間は終わりだ。皆、支度を整えて待機」
吾郎と呼ばれた少年が、一応の号令をかける。
少年たちは三々五々食堂を後にし、訓練の始まりを待つのであった。
神羅・アマミ
ふふ、環境利用護衛術の免許皆伝を得た妾が早速教え子を預かる立場になるとは、傲慢かもしれんにゃー。
それでな、”できる”というなら、カマキリじゃよ!
あー、つまりな?別になんでもええんじゃが、想像上の巨大な昆虫相手にシャドー…格闘ゴッコしてみ?
何か得られたか?
その後も「右足が沈む前に左足を出して水面を走れ」「一日に30時間鍛錬してみろ」とか無茶振りをする。
無茶に少しでも対応した奴は”できる”ということになる。
そうでなければ猟兵なぞ夢のまた夢!
今のは貴様らが役立たずの蛆虫であることをわからせるため(突然の鬼教官ロール)!
まずはグラウンド十周!腕立て腹筋プランクで筋肉をいじめるところからはじめんかーい!
非在・究子
く、訓練。訓練なぁ。
……し、死んで覚えろ。
……だ、だめか。ふ、普通のやつは、死んだら、そこで終わり、だもんな。
お、お前ら殆んど、オワタ式だって言うのに、よくそんな猪武者な感じで、戦場に立てるな。そ、尊敬するぞ。(HP、残機、コンティニュー。システム的に死に難いが故に戦場に立てている自分からすれば、本当に)
そ、それで、訓練だけど。
た、短期間で、出来る事なんて、限られてる、から、な。
も、模擬戦形式で、行くか。
ゆ、UCを、使って、周辺マップを、支配して、無機物から、ゲームのモンスター、として、雑魚オブリビオンを、生成する、ぞ。
ぎ、ギッタンギッタンに、して、攻撃パターンを、覚え込ませる、ぞ。
「おい、あれ……」
「本当かよ……」
ざわつく少年達の前に現れた猟兵たちは。
「ふふ、環境利用護衛術の免許皆伝を得た妾が早速教え子を預かる立場になるとは、傲慢かもしれんにゃー……」
「……く、ひ。ど、どう、した。そんな、に、じろじろ、見て」
神羅・アマミ(f00889)と、非在・究子(f14901)である。
アマミは空を仰ぐ。
『しゅごらねば……』
青空に師の顔が浮かんで見えた。ような気がした。
話を戻そう。
「女……!?」
「……オレらよりちびっこいガキじゃねーか」
少年たちは明らかに困惑していた。訝しむよう視線を巡らせ、彼らは2人の猟兵を見る。
「おーし。じゃあさっそく訓練を始めていくぞ」
その視線を意に介すことなく、アマミは号令をかけた。
「く、訓練。訓練なぁ」
究子は首を傾ぎ、少し考え込むような仕草をする。そして。
「……し、死んで覚えろ」
「死ん……!?」
飛び出した言葉に、少年たちが絶句する。『何を言っているんだ』という困惑と、猟兵という存在が自分たちとは異なる生命であるという理解からの恐れが混じっていた。
「……だ、だめか。ふ、普通のやつは、死んだら、そこで終わり、だもんな」
「あ、あんたは違うのかよ!!」
「ア、アタシは、残機も、あるし……」
「ほほー。お主は残機制じゃったか」
「残機ってなんだよ……!?」
非在・究子は元来がゲーム内空間を出身とするバーチャルキャラクターである。HP。残機。コンティニュー。元々の世界法則や生命の在り方そのものが違うのだ。
ざわめく少年たち。彼らに向けて、究子は続ける。
「ア、アタシは、そーいう、の、あるから……だ、けど。お、お前ら殆んど、オワタ式だって言うのに、よくそんな猪武者な感じで、戦場に立てるな。そ、尊敬するぞ」
「おわた式……?」
「すぐ死ぬってことじゃぞ」
「なにを……!」
究子は掛け値無しにそう思っていた。死なない保証がないのに戦場に立てるのはすごい、と。そう言ったつもりであったが。
「俺たちはそんなにヤワじゃない!」
「浩継の言う通りだぜ!オレらだってやりゃできるんだ!」
少年たちは、反発する。
「おーおー。イキっとるイキっとる。……じゃーまず、あれをへし折るとこからじゃのー」
「な、なら、試して、やろう。も、模擬戦形式で、行くか」
究子は静かに目を閉じ、ユーベルコードを起動する。【ゲームナイズ】。彼女は練兵場を中心とした周囲の空間を支配する。瞬く間にテクスチャを被せられたそこは バトルフィールドだ。
「おーし。じゃあ妾が『おわり』とゆーまで立ってられたら合格じゃぞー」
「そ、それじゃ、はじめる、ぞ」
究子が指先をフィールド内へと向けると、そこにモンスターが生成されていく。究子のもつデータ領域から再現した、今回の戦乱でも頻出するオブリビオンたちを模したバーチャルエネミーだ。
「よ、妖術か!?」
「うわ、敵だ!」
「落ち着け!俺たちなら“できる”!それを見せるんだよ!」
「焦るな浩継!一人で前に出るんじゃない!」
少年たちはそれぞれ訓練用の木刀を携え、敵へと向かう!
「やられたー!」
「うわーだめだー!」
しかして次々に叩きのめされ、瞬く間に倒されていく。残念なことに、全滅までには5分とかからなかった。
「……や、やっぱり、オワタ式、だな」
「だ、大丈夫、か?」
「どうじゃったーお主ら」
目を回した少年たちに桶いっぱいの冷や水を浴びせ気付けしながらアマミが尋ねる。
「はっ……!」
「う、うう、俺たちは……?」
「見事な負け犬ぶりじゃったぞ」
「……」
ぎり、と歯を嚙み鳴らす音がした。浩継、と呼ばれていた少年がふらつきながら立ち上がる。
「俺は……」
「あー、よいよい。“できる”って言いたいんじゃろー。なら、ちょいとこっちに来てやってみ?」
アマミは浩継を手招き、近くに立たせる。
「なにを……」
困惑する浩継へ、アマミは更に言葉を投げた。
「カマキリじゃ!!」
「カマ……なに?」
アマミは更に続ける。
「あー、つまりな?別になんでもええんじゃが……目の前に、でっかいカマキリがいる、とまず想像するんじゃよ。で、それ相手にシャドー……格闘ゴッコしてみ?」
「ええ……?」
浩継はぎこちなく目の前の何もない空間を見て、木刀を二、三度振る。しかし、四度目を振れずにアマミに視線を返した。
「カマキリと戦ったことなんかないんだから、できるわけが……」
「……じゃろ?」
我が意を得たり。浩継は表情を凍りつかせる。
「ふっ!今のはなーんの根拠もなく“できる”と言うてるお主らを“わからせ”るためよ!役立たずの蛆虫ども!」
突然始まる鬼教官プレイ!!アマミの罵倒が雷鳴めいて響く!!
「く、くそ……!」
だが、少年たちはそれに反発することができない。
「じゃが安心するとよい!今日から妾たちがお主らを一人前にするためにばしばし指導してやるからのー!まずはグラウンド十周!腕立て腹筋プランクで筋肉をいじめるところからはじめんかーい!」
「き、基礎体力は、大事、だからな……」
こうして、猟兵たちによる訓練の初日は過ぎていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アリシア・マクリントック
こういうことは得意です!
まずは刀の構え方からが良いでしょうか?基本的な持ち方、振るい方。
そして体力を維持しながら戦い続ける方法、身を守る方法を教えましょう。敵を倒すことも大事ですが、戦士として立ち続けることも大いに意味があることです。
自身のある者とは手合わせを。凰剣『ルシファー』と鳳刀『暁』の二刀流でお相手します。これで知らない技を使う相手にも怯まない心、自らの技を活かす道を見つけてくれれば……
他には馬上戦闘も多少指導できそうですが……基本は槍ですよね。そちらは経験がなくて。この機に学ぶのもいいかもしれませんね。太刀を使う戦い方や馬の操り方ならいけるでしょう。
さぁみなさん、頑張りましょう!
間田・綯
【SPD】
古の武士は常在戦場の心持ちを常に備えていたそうで御座いますね。
果たして若君様がたはその心を抱けているで御座いましょうか。
訓練の休憩時、或いは訓練が終わった頃に顔を出します。
お疲れ様で御座います、若君様がた。
喉が渇いて御座いましょう、御飲み物をお持ち致しました。
どうぞお召し上がり下さいませ。
お持ちしたのはお茶、と見せかけためんつゆで御座います。
果たして訓練疲れの身でこの【暗殺】の要領で仕掛けた罠に気づけましょうか。いえ、気づいて頂かねばなりません。
どちらに転べどお茶を淹れ直し……に見せかけ二度ネタも狙います。
一度の回避で油断せず二度回避できてこそ真の武士、真の将に御座います。
ガンバ。
リカルド・マスケラス
「まあアレっすね戦場は生き残ってこそっすよね」
まずは【仮面憑きの舞闘会】で生み出した仮面を付けてもらう
「まずは戦場での立ち回りをみんなで覚えてもらうっすかね」
実際に体験してもらったほうが覚えがいいだろうという頃で、兵士達に同時憑依して、戦闘での打ち合い切り合いみたいなものを猟兵の身体能力で体感してもらい、【戦闘知識】でその際にどう連携するか、どう立ち回ればいいのかなども覚えてもらう。対戦相手は兵士同士でも猟兵でもリカルドのUC【霧影分身術】でも。代償の様子は相手に見せないようにはする
「あとはさっきの動きは想像しながら訓練っすかね」
たくさん動いたら、次はご飯っすかねー。訓練後のためにたくさん用意
翌朝。
「……大丈夫ですか、浩継」
「み、光忠こそ……」
「ふああ……。僕もう動けないよお……」
「太一、起きろ。辛い気持ちはわかるが……」
少年たちは猟兵たちによる激しい訓練を経て疲れ果てていた。一晩休んである程度の回復は見込めたが、それでも全快とはいかない。“できる”という気持ちをへし折られたのも、少々後を引いている。
「おはようございます、みなさん!!」
「Bow!」
すぱーん!
障子戸が勢いよく開かれ、そこに輝かんばかりの笑顔を見せるのはアリシア・マクリントック(f01607)とその友人である狼のマリアだ。今日の指南役を務める猟兵である。
「さあ、起きてください。朝餉を終えたら鍛錬ですよ」
「お食事の用意、まもなくできます」
間田・綯(f20460)はアリシアの背後からそっと顔を出し一礼する。
「え、こんな女中さんいたっけ」
「わたくしめも猟兵の一人なのですよ。ですが、わたくしめは給仕も得手としておりますので」
どうぞ若君様がた、と綯は少年たちを食堂まで移動を促す。戸惑いつつも足を進める少年たちへと道すがら、ヴォン!挨拶がわりにバイクの排気音が彼らの耳に届く。
「ヘイブラザー。お目覚めかい?」
「な、なんだあれ!?」
「あれも猟兵なのか……?」
縁側から庭先に視線を向けた少年たちに挨拶したのはリカルド・マスケラス(f12160)である。狐面のヒーローマスクである彼は、今回バイクを仮初めの身体としてここにやってきていた。
「鉄の……なに?」
「あの方は面の方が本体なんですよ」
「面妖な……」
「自分は練兵場の方で待ってるっすよー」
少年たちはそれぞれリカルドへの挨拶を済ませ、食堂へと向かう。今日の鍛錬はここからだ。
「さぁみなさん、頑張りましょう!」
「Bow!」
「まずは戦場での立ち回りをみんなで覚えてもらうっすかね」
ヴォン。リカルドはバイクのエンジン音を鳴らしながら、並んだ少年たちに呼びかける。
「本当か……?」
「何か変なことをされるんじゃ……」
サムライエンパイアにおいては珍しいバイクにヒーローマスクという存在に不安を隠せない少年たちは恐る恐るリカルドの話を聞く。
「これから、猟兵たちの戦いがどんなものかを自分たちで経験してもらうっす」
【仮面憑きの舞闘会】。リカルドの本体と同じ狐面を作り出し、それを被った者にリカルドの持つ力を与えるユーベルコードである。彼はその狐面を人数分用意し、少年たちへとかぶるよう指示した。
「うわ……!」
「感じるっすか?それが猟兵の力っすよ。今、一時的にみんなに貸してるっす」
少年たちが困惑する。身の丈を超えた力が突然宿り、体の動かし方に戸惑っているのだ。
「まず走る!」
リカルドはそれに号令をかける!
「は、はい!」
「剣を抜く!」
「うわっ!」
「力み過ぎっすよ!もう一回!」
「お、おおっ!」
「そしたら次、向き合って!」
「はい!」
「打ち込むっす!」
「おおっ!」
「それじゃあ私も参加しますね!」
ここに切り込んできたのはアリシアである!実戦形式の戦いに血がたぎる!『暁』の刃を翳し、少年たちの中へ飛び込んだ!
「だ、だけどこれくらいの力があるなら、俺は……!」
「やめろ浩継!焦るな!」
「峰打ちっ!」
すぱーん!
同じだけの力量をもったと仮定しても、数多の戦場を潜り抜けてきたアリシアと新兵の少年たちでは格が違うのである。
見事な打擲の音が練兵場に響き渡った。
「お疲れ様で御座います、若君様がた。喉が渇いて御座いましょう、御飲み物をお持ち致しました」
「おーっ、マジで!ないちゃんだっけー、気がきくー!」
午前中の訓練を終えた少年たちへ、綯が飲み物を差し入れる。いただき、といの一番に茶碗を受け取った少年がそれを一気に飲もうとし――
「ぶえあふっ!!」
「六郎ー!!」
噴いた。
「古の武士は常在戦場の心持ちを常に備えていたそうで御座いますね」
綯はふわりと可憐に微笑みながら少年たちへと頷く。
「お持ちしたのはお茶、と見せかけためんつゆで御座います。3杯に1杯の割合で仕込ませていただきました」
即ち、この罠を躱せるだけの緊張感を持ち続けているか……。その覚悟を彼女は問うたのである。効果は出ている。茶碗を手に取った少年たちは、警戒心をあらわにした神妙な面持ちでお茶かめんつゆか、どちらとも知れぬものに向き合うのであった。
「大丈夫っすか?……まあ、でもこのめんつゆも無駄にはしないっすよ。昼餉の用意はできてるっす」
と言ってリカルドが示したのはよく冷やしたおそうめんである。お茶のフェイクであるめんつゆも無駄なく使おうという気遣いも織り交ぜつつ、夏の暑さに負けないようにと心を込めたチョイスであった。
そして午後。
「それでは、まずは刀の構え方からが良いでしょうか」
昼餉の後の訓練は、戦い方の基礎を学ぶ内容となった。アリシアは刀を構えながら、少年たちの構えを見渡す。
「基本的な持ち方、振るい方。そして体力を維持しながら戦い続ける方法、身を守る方法を教えましょう」
敵を倒す剣よりも、生き延びるための剣をアリシアは教える。
「敵を倒すことも大事ですが、戦士として立ち続けることも大いに意味があることです」
「アレっすね。戦場は生き残ってこそっすよね」
リカルドもまたそれに同調し、頷くようにバイクとライトを明滅させた。
少年たちには熱意があり、腐っても武士の子だ。素養も十分にあった。そしてアリシアの指導は適切だ。構え方。重心の移動。敵の攻撃を躱す体捌き。指導を受ける少年たちは飲み込みも早く技術を体得してゆく。
「なかなか覚えがいいですね!」
「俺たちも武士の家の子ですから」
アリシアの指導の成果もあり、彼らは短い時間の中で格段に進歩していた。
「では、仕上げです。……希望する者がいれば、私と手合わせをしましょう」
「やります」
「俺もお願いします」
「オレも!」
アリシアの申し出に数名の手が上がる。わかりました、と頷いたアリシアはふた振りの剣を抜き、マリアを呼び寄せる。
「おおおッ!!」
「捨て鉢にならないでください!反撃にあいますよ……こういう風に!」
「やあッ!」
「今のはいい太刀筋です。次は受け身をとりましょう!」
「ぐあッ……!」
「次、いきます!」
「どうぞ!それから、戦場では死角にも注意!」
「Bow!」
「うわあッ!!」
手加減は逆に彼らに対して失礼だ。アリシアは全力で少年たちの相手をするのであった。
「お疲れ様でした、若君様がた」
日暮れ近く。訓練を終えた少年たちのもとへ盆を持った綯が現れる。
少年たちは一人残らず疲れ果てた顔をしていたか、同時に、今日の鍛錬に成果を見出し、確かな充実感をもった表情をしていた。
「お茶です。どうぞお召し上がりくださいませ」
「ありがたい。ノド乾いてたんだ。いただきます」
綯の用意した茶に手を伸ばし、少年がそれを口に含む。
「ぶえあふ」
「六郎ー!!」
そして噴いた。
「「「またかよ!!!」」」
「一度の回避で油断せず二度回避できてこそ真の武士、真の将に御座います。ガンバ」
油断大敵、ということである。
――こうして、日暮れと共に今日の特訓は終わりを告げる。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
鈴木・志乃
※人格名『昨夜』で参加
……あたしは昨夜
アンタ達の先生を仰せつかった
戦場でみじん切りになりたくないなら、ちったァ本気で訓練しな
武器は問わない
私に一撃入れてみろ
それが出来たら合格
UC発動
第六感で動きを見切り、光の鎖で早業武器受けする
必要があればオーラ防御で攻撃を弾く
一人一人の癖、弱点を把握した時点でその弱点を突く一撃を入れる
「次!」
毎回丁寧に弱点を指摘するよ
疲れてへばるヤツが出たら全力魔法で治癒
実際の戦場は一瞬たりとも逡巡してられない
その瞬間にズドン、だ
(どうしても必要なら生命の危機を覚える峰打ちを叩き込む)
死なないことを体に叩き込め
死んだら、手柄も何も無いんだから
……残されたやつが泣くぞ
ジニア・ドグダラ
……自信はおありのようですね。しかし、相手は、オブリビオン。何れも、己が崇拝し、背中に追い付くために居た、強者である存在達です。
さて、私が行う訓練内容ですが、簡易的に言えば私に攻撃を命中させればよい、という事で開始します。
相手の刀や槍に対しては、ワイヤーフックで急速に後方に【逃げ足】を活用して避けます。弓矢や銃には棺桶を盾にしたり、【第六感】で命中しそうな所を鎖で矢を打ち払ったりして防ぎましょうか。
ある程度時間が経ち充分の敵意を感じれば、死霊兵士を召喚。47体と少ないくらいですが、いずれも強者です。彼らを倒せずして、あれらの相手は困難です。
だからこそ、彼らを技術を学び、奪い、強くなりなさい。
白鳥・深菜
訓練、ねえ。
まあ、自分のやり方でいいのよね?じゃあ……
刃を潰した模擬戦用の短剣片手に
新兵相手に模擬戦闘の形で訓練を行う。
序盤は相手に攻め込ませ、こちらは防御に専念。
甘い攻撃は『見切り』で躱し、鋭い攻撃は『武器受け』でいなす。
しばらくしたら「押されている『演技』」をしながら
相手の攻撃を、隙の大きな一撃へと誘導していく。
そして、それが来たらここまでの経験を元に
【魔術師の直感】を発動。
相手の攻撃を先読みで躱し『カウンター』の一手で一本を奪う。
「戦場で隙を見せて、死んだら終わり。
故に己と相手を適切に見て、経験を積み上げていく事。
これが私の教えかしら。
……さて、次やる?この『狩り方』はまだ序の口よ?」
三日目。
訓練用の剣を手に、少年たちが練兵場へ集う。
「浩継」
「わかってるよ、吾郎。……大丈夫だ。落ち着いてやる」
「うえー……」
「六郎、どうしたの?」
「まーだ口にめんつゆが残ってる気がして……」
「油断大敵ということでしょう。勉強になったじゃないですか。……それより、今日の先生方が来ますよ」
足音。
少年たちの前に現れる猟兵は3名。
「……あたしは昨夜。アンタ達の先生を仰せつかった」
鈴木・志乃(f12101)。
しかして、今の彼女はそうであってそうではない。彼女の身の内に宿す別人格、『昨夜』だ。
「猟兵団ワイルドハント。遊撃・兼・奇襲担当、白鳥・深菜」
白鳥・深菜(f04881)。オブリビオンを『狩る』狩猟者。
「ジニアです。よろしくお願いいたしますね」
ジニア・ドグダラ(f01191)。彼女もまたオブリビオンを追う者であり、大切な人を失った痛みを知る者でもある。であるが故に、自分と同じ苦しみを、誰にも与えたくないと彼女は願う。
女性ばかりであったが、初日のような戸惑いは少年たちの中からは出なかった。性別や見た目ではない、ということを彼らは知ったのだ。彼らは真摯に猟兵たちへと礼をする。
「思ってたよりいい面構えをしているな」
「指南役の先生方が優秀でしたから」
「だいぶマシになったと思いますよ、オレたち」
昨日までの甘さを笑い飛ばしながら、少年たちはまっすぐに視線を向ける。
「……自信はおありのようですね。しかし、あなたたちがこれから戦場でまみえる相手は、オブリビオン。何れも、己が崇拝し、背中に追い付くために居た、強者である存在達です」
ジニアは目を細めながら、ユーベルコード起動の準備をする。
「構えな。今日は私たちのやり方で訓練をさせてもらうよ」
「ええ。わたしも自分のやり方でやらせてもらうわね」
殺気。
3人の猟兵たちが武具を手に取り、場の空気が変わったことを少年たちは感じ取る。
「武器は問わない。私に一撃入れてみろ」
「はい。私も同じく、私に攻撃を命中させればよい……という事で開始します」
「それじゃあ、あなた達の腕を見せてもらうわ」
猟兵たちの課す訓練は、即ち実戦に堪えてみよ、というものであった。
「やれるか……?」
「やるんだ。いくぞ、皆!」
「「「おおッ!」」」
「戦場でみじん切りになりたくないなら、本気で訓練しな!」
「づ、ッ!」
「六郎!」
「た、太一いきますっ!!」
『昨夜』は模擬刀を構えて突進してきた少年を軽々といなし、後続の追撃を光の鎖で受け止め更にカウンターを放つ。蹴り足をまともにくらった少年が土の上を転がりながら咳き込んだ。
「六郎だっけ?自分を囮に仲間の剣を届けようって心意気は悪かない、が、お前の仕事は生き残ることでもあるんだ!命を粗末にするんじゃない!太一、お前は力がある。太刀筋もいい。だが動きのトロさが弱点だ!単純で見切られやすい!連携のタイミングをもっと早めろ!次!」
「だあッ!」
「踏み込み、もう少し速く」
少年の剣が空を切った。目にも留まらぬ速さで後退しながら、ジニアはワイヤーフックを用いた素早いアクションで少年たちを翻弄する。
「くッ……!皆、包囲陣形を!相手は個で勝る!僕たちの勝機は連携と戦術しかありません!」
「わかった!光忠、指揮を頼むぜ!」
「ええ!」
「そう簡単に合格はあげられませんよ」
「そうそう、上手い上手い」
「吾郎!」
「わかってる!」
少年たちは巧みに立ち位置を入れ替わりながら深菜へと剣撃を打ち込んでゆく。しかし深菜もまた幾つもの戦場を巡り多くのオブリビオンを狩ってきた歴戦の猟兵だ。彼女は少年たちの剣を軽々といなす。
「踏み込みは上等。息も合ってるわね」
「くッ……!」
「落ち着け、浩継。ここまでの訓練の成果を見せるんだ」
2人がかりで攻め込む少年たちの刃を深菜は躱し、武器で押しとどめ、ぶつかり合い、そして離れる。更に交錯!
「ん……」
「いける……!吾郎、攻めるぞ!」
勝機!衝突の勢いに深菜は態勢を崩した。浩継と呼ばれる少年はそこへ更に踏み込み――
「浩……」
【魔術師の直感】。仕掛けようとした瞬間に、深菜は身を翻し、刀身の軌道をすり抜けながら短剣の切っ先を少年の首元へと突きつけた。
「はい。これで一本……戦場で隙を見せて、死んだら終わりよ」
「く……ッ」
「故に己と相手を適切に見て、経験を積み上げていく事。これが私の教えかしら?」
「……よく、わかりました」
深菜は静かに頷いてから、ゆっくりと離れる。
「もう一本、お願いします」
そして、少年たちは再戦を乞うた。
「やる気があるのはいいことね?」
深菜はそれに応え、一度短く呼吸する。そして、再び刃を構えた。
「う、うう……」
「光忠、どうする……!?」
ジニアと相対する少年たちを囲むように配されたのは、ジニアが呼び出した死霊兵たちである。
「信長に与するオブリビオン……いずれも強者です。彼らを倒せずして、あれらの相手は困難です」
ジニアはつとめて冷静に、死霊兵士たちへと指示を飛ばす。即ち、少年たちを叩きのめせ、と。
「やるしかありません。死ぬ気で……いえ、必ず生きて帰る、と思って挑みましょう。誰も欠けることなくこれを突破し、先生に一撃叩き込みます!」
「「「おおッ!!」」」
「意気やよし、といったところですね。……彼らを。技術を学び、奪い、強くなりなさい」
少年たちは士気高く死霊兵士たちへと挑む。互いに背と背を庇い合い、死角を潰し、陣形を維持しながらジニアのもとを目指した!
「実際の戦場は一瞬たりとも逡巡してられない……その瞬間にズドン、だ」
「ウワーッ!」
強烈な一撃!『昨夜』の放つ光の鎖が大地を揺るがす程の威力で地面を叩く!辛くも躱した少年は半ば悲鳴をあげながらも這い上がるように立ち上がり、剣を握って二度三度と『昨夜』に挑む!
「そうだ、死ななきゃ何度だって挑める!死なないことを体に叩き込め!」
「はい!先生!」
「死んだら、手柄も何も無いんだから――」
ざら、ッ!滑らかな音が響き、光の鎖を『昨夜』が放つ!少年たちはそれを躱して反撃へと転身!
「……残されたやつが泣くぞ」
眼前に迫る少年たちの刃の気配を感じながら、『昨夜』は静かに呟く。
その声は、風に阻まれ聞き取れた者は僅かであった。
夕刻。
これで、この練兵場における猟兵を指南役に招いた訓練は全て終了となる。
「……いやあ、ダメだったな」
「けどオレたち、だいぶしぶとくなったんじゃねえ?」
結論を言ってしまえば、『合格』した者は皆無であった。
しかして、全員揃って練兵場の土の上に転がる彼らの顔は実に晴れやかである。
「六郎、そっちどう?」
「躱し方なら、もうバッチリじゃねーの……へへ、オレ、天才かも」
「……生き延びる方法は、だいぶわかったかもな」
「常に油断しないこと」
「茶がしょっぱくないかとかな」
「茶化すなよ!」
「焦らないこと」
「仲間と連携すること」
「すごかったな、猟兵のひとたち」
少年たちは数刻経ってようやく立ち上がる。
その顔は、訓練前の彼らとはまるで見違えていた。
かくして、信長との決戦を前にしたエンパイア兵たちの訓練のひとつが終わりを告げる。
猟兵たちによって磨かれ、体力と技術とチームワーク。そして戦士としての心を学んだ彼らは、戦場においても大いに活躍できるだろう。
サムライエンパイアにおける戦いは、未だ続く。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴