4
贄の少女と残響する怨讐

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




●贄は追われて
「どこに行った! 探せ!」
 松明を手に村人たちが怒号を上げる。
 路地裏の隠れた栗毛の少女、アーニャがびくびくと怯えながらやり過ごす。
「なんてこった……このままじゃヴァンパイア様に差し出す贄が……」
「どうする、代わりを探すか?」
「馬鹿野郎、指定された以外を差し出しても機嫌を損ねられるだけだ! それに……」
 生贄に相応しい年頃の娘を持つ者は誰もが目を逸らす。
 誰も自分の子を好き好んで生贄になど差し出したくはない。
 否、人の子供だろうと同じだ。
 ――いっそこのまま、どこか遠くに逃げてくれれば。
 それは誰かが呟いたのか。それとも皆同じ事を心に浮かんだのか。
 そんな思いが村人達の足を鈍らせ、立ち止まらせる。
 それは希望に似た絶望か。あるいは絶望の中の希望か。

「逃げなきゃ……どこへいけばいいかなんて……分からないけど、逃げなきゃ……!」
 一年前、生贄に捧げられた大の仲良しだった友を思う。
 どうなったか分からない。きっと、死んでしまったのだろう。
 もしくは何処かで生きているのだろうか。
「ニーナ……どうか私を助けて……」
 彼女から貰った大切なお守りの香り袋をぎゅっと握りしめると、少し心強くなれる気がした。
 村人が追ってこない内に駆け出そうとする少女の背を灯が照らす。
 村人達が追い付いたのかと思い振り返るも、ただ村の篝火が風に揺らめいただけだ。
 ほっと一息ついたのも束の間。
『――許さない』
「ひっ?!」
 アーニャの影から立ち昇るように現れたのは、血色の悪い黒髪の少女。否、少女達。
 驚き尻餅を付いたアーニャの細すぎる足首へと、その異常に白く底冷えする手が伸びる。
『貴女も、こっちへ……こっちへ……』
『恨めしい憎らしい悲しい辛い……』
「い、いやぁっ!?」
 いたいけな少女へとドロドロとした様々な負の感情を叩きつけられながら、アーニャは振りほどこう叫びともがく。
 その叫び声を聞き付けたのは――。
「いたぞ!!」
 ――彼女を追う村人だった。
 影はいつの間にか、不気味な笑い声を残して消え去っていた。
『私達と同じ目に遭え……誰も絶望からは逃れられない……』
 アーニャが自分と同じくヴァンパイアの犠牲になることで、彼女たちは満足するのだろうか。
「あ……」
「……すまないな」
 どちらにせよ、アーニャが捕まってしまった。その瞳が絶望に染まる。
 『身代わり』を捕まえた村人達だが、その目にはむしろ絶望めいた落胆が宿っていた。


「強者が弱者を虐げ、弱者がより弱者を犠牲にする……この世界では、至極当然のように罷り通ってたことですのね」
 予知を目にしたグリモア猟兵、ソフィーヤ・ユリエヴァが自らの世界の真実を憂う。
「失礼しました。私が今回の事件の補佐させて頂く、ソフィーヤ・ユリエヴァと申します」
 丁寧に腰を折ってお辞儀する少女が、グリモア猟兵だ。
「今回私が見た予知は、生贄にされる少女……これを阻止して欲しいのです」
 年に一度行われる儀式。年頃の少女を差し出すことで、1年の安住を得る。
 少なくとも、支配している者は『戯れ』に来ない。
 生贄に捧げられた少女の行方は分からない。
「村人達が見つけた後になってしまいますが、何とか保護してくださいまし」
 身を挺して庇うか、力技で黙らせるか。
 ただの村人が猟兵に敵うはずもない。
「例え少女をこの場で保護したとしても、その後の生活までは保障できません」
 ソフィーヤは少し目を伏せ、歯痒そうに言う。
 どこの集落も自分達で手一杯だ。
 余所の小娘などに構っていられるはずもない。
「何とか村人を説得してください。幸い、彼らは既に少女達を生贄に捧げることに疲れ切っています。希望を示せば……あるいは」
 この世界の希望。それは猟兵だ。
 相手がヴァンパイアだろうと抗う者が、その力を持った者がいる。彼らはそれを知らないだけだ。
 村人達へ希望の光を灯し、この悪趣味な生贄を要求する存在を打ち砕いてしまえばいい。

「では、長くなりましたが要点を纏めましょう」
 ソフィーヤはコホンと咳払いし、3つの目標を提示する。
「1つ、少女の身の安全を確保すること」
 それは今後の生活を含めて、村に残れるようにすることも含まれる。
 少女を守ることで力を示し、希望を抱かせれば良い。
「2つ、予知で見えたのは、生贄を免れようとするのを阻む死霊達の排除」
 これらは、ただ怨讐だけで付き動く、死霊だ。
 もはや救いは、掻き消して骸の海へと還すしかない。
「3つ、根本的な解決が望める支配者格のオブリビオンの排除」
 ソフィーヤは予知では詳細は見えなかったが、猟兵達の力であれば打ち勝つことができるだろう。
「……これは漠然としすぎて、予知というより予感ですが……もう一つの命を救えるかもしれません」
 付け加えて、小さく呟く。
 もう少し確実な情報が集まれば、曖昧な予知や予感以上の予測ができるかもしれない。
「ここに集まってくださった皆様が、少女にとっても、私にとっても希望。どうか、この少女を助けてあげてくださいまし」
 自分が見た予知を幻とするべく、伏して礼をした。


アマガエル
 2つ目のシナリオとなります。アマガエルと申します。
 1章は村人を説得する『冒険』。
 2章は数多くいる死霊を倒す『集団戦』。
 3章はこの儀式を要求した元凶である『ボス戦』の三部となります。
 メタ情報ですが、ボスは黒衣に操られた少女です。
 アーニャから話を聞くか、実際に会えば、前回生贄になったアーニャの友人、ニーナという少女である、という想定は容易でしょう。
 それでは、皆様の希望あるプレイングをお待ちしています。
32




第1章 冒険 『贄の祭』

POW   :    贄となる人間を周りの村民から身を呈して守る

SPD   :    処刑から贄を連れて逃げ回る、背後などを取って気絶させる

WIZ   :    言葉巧みにこの行いをやめるよう説得

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

紅月・美亜
「ようやく私の出番か……待ちかねたぞ。さあ、作戦開始だ」
 Operation;BLACKを発令し、圧倒的な数を以て村民を少しばかり脅しをかけよう。
「愚かな行為はやめたまえ。我が名は、レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット。大いなる始祖の末裔。そして同胞殺し、ヴァンパイアスレイヤーだ」
 50機の戦闘機が一糸乱れぬ動きで『Vampire Slayer』の文字を禍々しい字体で光線を使い空に描く。
「ヴァンパイアは我々が殺す。代わりが来てもそいつも殺す。故に、心配は無用だ。報酬は……そうだな、何か美味い料理でも用意してもらおうか。それで十分だ」


レイジア・ピグマリオ
この世界の出身として、力になれるのならば出し惜しみはしない。弱き人々を助けると、そうあれかしと俺はあの町で育てられたのだから。

第一目標は生贄である少女の救出だ。
村人の説得は他の猟兵に任せ、人形(キュクロプス)で少女を救出するとしよう。無論、爪などで傷つかないように人形を操る。
少女との間に村人が立ちはだかるようなら【フェイント】を交えた歩法でかわして少女へと向かうし、もし攻撃してくるようなら【絶望の福音】をつかって攻撃をかわす。

原則として村人への攻撃はせずに少女を連れて逃げ回ることに徹する。
当然のことだが、村人も加害者ではないからな。生贄など捧げなくていいなら彼らも捧げたくはないだろう。


雛菊・璃奈
【フォックスファイア】の半分をアーニャを守るように周囲に配置。
残る半分を自身の周囲に引き連れて自身が操っている事をアピールしながら村人とアーニャの間に立つ様に登場…。
その上で、「わたし達はヴァンパイアを倒しに来た。だから、少女を生け贄にする事を止めて欲しい。希望を捨てないで欲しい。貴方達だって本当はこんな事をするのは嫌なハズ…」と村の人達の目をしっかりと見返し、紳士に訴える…。
それでも不安がるなら、周囲に配置していた狐火を一つに集束した大火球を作り、手近な目標に放って更に力を誇示。必ず倒す事を誓うので、二度と彼女にこんな事はしないで欲しいと約束させるよ…。…若干、脅しが入ってるかもだけど…。



●救う為の想いと力
 贄に選ばれた少女、アーニャが村人に腕を掴まれていた。
 見た限り、12歳かそこらといったところか。抵抗を試みるも、大人の男に敵うはずもない。
「ようやく私の出番か……待ちかねたぞ。さあ、作戦開始だ」
 その様子を見つけた紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)がその赤い瞳を煌めかせる。
 いち早く駆けつけたレイジア・ピグマリオ(廃都より出でしドールメイカー・f09676)が糸を手繰る。
「な、なんだ?!」
 突然に現れた一つ眼の戦闘人形『蒼石のキュクロプス』に驚き手を離した男の隙を付き、少女の身を守る様に引き離す。
 鋭いかぎ爪で少女を傷付けぬよう、丁寧に気遣いながら。
 更に人形遣いであるレイジア自身が、阻もうとする村人をフェイントですり抜けて、少女を庇い立ち塞がる。
 そして周囲に近づけまいとするかのようにその周りに炎が囲む。
「大丈夫……」
 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が操る狐火。
 村人の間に立ち塞がりながら、少女を怖がらせないように声を掛ける。
「あっ……」
 怯えていた少女は、強張らせていた身体から力を緩める。
 この人達は、自分を守ってくれる人達なのだとすぐに理解した。
「わたし達はヴァンパイアを倒しに来た。だから、少女を生け贄にする事を止めて欲しい……」
 璃奈は何てことない事実を語る様に、表情を変えないまま静かに告げる。
 それ故に、冗談ではなく本気だとその瞳が如実に語った。
「なっ、ヴァンパイア様を?! な、何を言ってる、そんなの不可能だ!」
「不可能ではないとも。何故ならば、我が名は、レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット!」
 驚愕する村人へと高らかに声を挙げソウルネームを名乗る、美亜が大仰な仕草で天へ手を伸ばす。
 飛来した50機のもの小型戦闘機が、一糸乱れぬ動きで光線を残し禍々しい文字を描く。
 『Vampire Slayer』と。
「大いなる始祖の末裔。そして同胞殺し、ヴァンパイアスレイヤーだ」
 華麗にポーズを決めながら、赤い瞳を煌めかせる。
 戦闘機の存在を知らず、文字が読めない者達でもその異様は分かる。
 そして何よりもダンピールが纏う、そのヴァンパイアとしての力が、村人達の身体を強張らせる。
「ヴァンパイアは我々が殺す。代わりが来てもそいつも殺す。故に、心配は無用だ」
 美亜の自信に溢れた表情は、ただのカッコつけなどではない真実味を帯びる。
 血筋など関係ない、確かに救おうとする強い意志が村人を射抜く。
「希望を捨てないで欲しい。貴方達だって本当はこんな事をするのは嫌なハズ……」
 璃奈は村人の目を真っ直ぐ見つめ、真摯に訴える。
 少女を助けるだけではない、村人も救うつもりだと。
 純粋過ぎる故に、村人は目を逸らしてしまう。
「力になれるならば出し惜しみはしない。弱き人々を助けると、そうあれかしと俺はあの町で育てられたのだから」
 レイジアは、守れなかった自らの故郷を想う。
 強者に従うしかないこの村を救って見せる。
「生贄など捧げなくてもいいなら、君達も捧げたくはないだろう?」
 レイジアの言葉に村人達は、顔を伏せる。
 もしそできるなら、どんなに良いか。
「わたし達の力が不安? なら……」
 周囲に浮かべた狐火の全てを一つに集束した大火球を作り出し、枯れ果てた古木に放つ。
 それは一撃で壊し尽くし、事もなげに再び狐火を展開する。
「ヴァンパイアは必ず倒すと誓う。だから約束して。二度と彼女にこんなことしないで欲しい……」
 不安げに璃奈の服の裾を掴む少女の髪を一撫でする。
 救おうとする想いを伝えた。救う為の力も示した。
 差し伸ばした希望の手を取るのは、村人達自身だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ルサリィ・ネキオマンテイア
WIZの説得の方向ですが、あくまで実力行使を伴う形を取るといたしましょう
なので、他の方々の手段を見守った結果、上手くいかなければ最終手段ですね

アーニャと村人を引き離し、力を示すために、ジャッジメント・クルセイドを適当なところに発動
指で指し示しながら、動けば殺すと警告しつつ、
アーニャには、他の村人の犠牲を許容する覚悟を示すために、村人の目の前でもう一度逃げてみよと
村人には、生贄に差し出すというならば、彼女にその覚悟を示すために動いて彼女を捕まえよと

どちらにしろ殺さず、救えと言うなら救いましょう
しかし、相手に己の覚悟も示さずに犠牲を強いるだけの者達に与える希望は、自己弁護の言い訳になりますから


ジズルズィーク・ジグルリズリィ
・POW判定

ジズも、覚えがあるのです
避け得ぬ厄難を、より弱き者に押しつける、人の弱さ
耐えられぬ状況を変えようとしたこの少女さんは、強い
ジズは、そう思うのです

〈咎力封じ〉にて村民さんの攻撃力を削り攻撃を防ぎます
【見切り】判定も併せて防御の一助とします
攻撃を引きつけて受けられるものは受け、
受けきれないなら避けることを重点的に、
味方さんの作戦、プランの成功を支援します

攻撃の手がやめば、自分たちに「ヴァンパイア様を倒す手立てがあること」を伝え
「それを斃す代わりに、少女たちを集落に住まわせること」を交渉です
もっとも【祈り】判定で嘆願、誓願、誠心誠意のお願いをするのですが


ナターシャ・フォーサイス
【WIZ】
残る者たちは幾度となく心を擦り減らし、贄は本意でない死によって憎しみを残す。
つまるところ、皆救われてなどいないのです。

それは我々の教えに反します。
ゆえに、使徒として彼らを楽園へ導きましょう。

貴方がたはそれで満足なのですか?
痛みも苦しみも悲しみもない楽園のほうが、余程素敵ではありませんか?
私は貴方がたを導きましょう。その方法を、教えを広めましょう。
私は貴方がたを導きましょう。弱者が救われないなど、あってはならないのですから。
私は貴方がたを導きましょう。少女を含めて救うこと、それが私の使命なのですから。
夢から覚める時間です。もう悪夢はこれっきり、歩まぬ者は楽園へも辿り着けないのですから。



●救われる者の覚悟
 目の前の希望に縋る事も、絶望に甘んじる事もできないでいる村人へ、ルサリィ・ネキオマンテイア(揺り椅子の倫理を嘲笑う者・f10391)は溜息をつく。
「うわっ!?」
 天よりの光が、村人と少女の間を穿つ。
「動けば殺します。彼女を生贄に差し出すというならば、それを覚悟して来なさい」
「えっ?!」
 驚きの声を挙げたのは、村人ではなく少女のほうだった。
「何を今更驚くのです。貴女が逃げれば、他の村人が犠牲になる。貴女も覚悟していた事でしょう」
「……っ!!」
 ルサリィの言葉に少女ははっと目を見張る。
 少女にそんな覚悟なんてなかった。
 生贄にされたら、きっと死ぬ。死にたくない。それだけだ。
 理解している村人は、目を逸らす。
 どちらかが犠牲になればもう片方が助かるかもしれない。そういう考え方のほうが彼らにとってより現実的なのかもしれない。
「私、そんな、こと……っ!」
 理解した少女の目は、暗く覆われる。
 苦悶する少女の表情に、ルサリィは愛おしげな、あるいは嗜虐的な笑みを浮かべる。
「他の村人の犠牲を許容する覚悟を示すため、目の前でもう一度逃げてみなさい」
 更に少女を追い詰めるような言葉に、他の猟兵から投げかけられるが――。
「どうして……? どうしていけないの!?」
 少女が泣き叫ぶ。
「どうして『皆』助かっちゃいけないの!?」
 それは幼さゆえの我儘でしかない。
 だがそれは、何かを犠牲に何かを得る『妥協』ではなく。
「私、贄なんて嫌、死にたくない……でも、村の人達だって犠牲になって欲しくない!」
 どちらも救われたい。より良い未来を描く『希望』。
 少女は村人の誰もが諦めてしまったその想いを、願いを吐露した。
 わざと責めるような真意はこれだったのか、と問う猟兵へルサリィは否定も肯定もしない。
「ただ、相手に己の覚悟にも示さず、犠牲を強いるだけの者に与える希望は、自己弁護の言い訳になりますから」
 ルサリィは聖職者然とした穏やかな表情へと戻して佇む。
 仕方のない事だった、などという言い訳は罪悪感を軽減する。
 それでは絶望を彩れない。垣間見えた少女の追い詰められた表情で満足できた。

「シズも、覚えがあるのです」
 ジズルズィーク・ジグルリズリィ(虚無恬淡・f10389)は囚われていた過去を想う。
 避け得ぬ厄難を、より弱き者に押し付ける人の弱さ。
 誰かが犠牲にならなければいけないなら、自分より弱き者へ。
 一人の犠牲で皆が助かるなら、なんて言い訳を振りかざして。
「残る者達は幾度となく心をすり減らし、贄は本意でない死によって憎しみを残す……」
 ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)が言葉を紡ぐ。
「つまるところ、皆救われてなどいないのです。貴方がたはそれで満足なのですか?」
 元よりヴァンパイアが提示する道に、救いの道などない。
 それしかないと思わせ心を支配する洗脳だ。
「痛みも苦しみも悲しみもない楽園の方が、余程素敵ではありませんか?」
 ナターシャは今は無き教団の、けれどその信仰は変わらず、使徒としてその教えを説く。
「私は貴方がたを導きましょう。その方法を広めましょう」
 穏やかに、優しげに、言葉を紡ぐ。
 それは聖句のように、呪文のように、魔法のように。
「私は貴方がたを導きましょう。弱者が救われないなど、あってはならないのですから」
 救いを求めていいのだと、肯定する。
 苦悩して妥協する選択を、否定する。
「耐え切れぬ状況を変えようとしたアーニャさんは、強い。ジズは、そう思うのです」
 ジズルズィークは感情を思いっきり吐き出し涙を流す少女を見つめる。
 考えなしの浅慮だった。けれど確かに自分の脚で、現状を変えようと逃げ出し、そして願ったのだ。
「ジズ達が、ヴァンパイア様を必ず倒すのです。だからその代わり……少女達を集落に住まわせて欲しいのです」
 ジズルズィークや他の猟兵が望むのは、対価としてあまりにもささやかなこと。
 自分達のためではない、少女の為。
 交渉というより、それは祈るような願い。
「夢から覚める時間です。悪夢はこれっきり、歩まぬ者は楽園へも辿り付けないのですから」
 ナターシャが差し伸べた手を取り、涙を拭いながら少女は立ち上がる。
 それを静かに見守っていた村人達の目には光が灯っていた。
「ああ、本当に、本当に恥知らずだが……どうか、救ってほしい。この子を、俺達皆を……どうか」
 祈れば、求めれば誰かが救ってくれる、なんて甘い考えは100年の支配で潰えて久しい。
 助けを求めるだけでも、ヴァンパイアに刃向かうにも等しい。
 それでも、『希望』を抱き、命を懸けて願った。
「ジズ達は最初から、そのつもりで来たのです」
 きっと、この人達も強い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『残影』

POW   :    怨恨の炎
レベル×1個の【復讐に燃える炎の魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    同化への意思
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【異形の肉塊】から、高命中力の【絡みつく傷だらけの手】を飛ばす。
WIZ   :    潰えた希望の果て
【悲観に満ちた絶叫】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『――許さない』
 底冷えする声が響く。
 ぞわり、と影が村の周囲へと集まってくる。
『そんなことはさせない……』
『だってずるいわ、そんなのずるいでしょう?』
『私達は救われなかったのに、私達を救ってくれる人は、いなかったのに』
『憎らしいわ……生を謳歌するあなた達がとても憎らしいわ』
 オブリビオンの犠牲となり、負の感情に囚われた魂……自らも過去の化身オブリビオンと化してしまった哀しき死の集合霊。
 怒り、嫉妬、哀しみ、恨み、呪い。
 もはやそれを他者に叩きつけることしかできない。

「この人達は既に生者を呪うだけの死霊です。もう救えない……いいえ、ここで討ち倒し解放する事こそ、彼女達の救いです」
 猟兵達へ、ソフィーヤが告げる。
 少女や村人を、同じ立場であればこそ、狙ってくる。
 しかし善意を向ける相手にもまた、救いを求めるかのように惹き付けられるはずだ、と。
 迫り来る死霊の集団を討つべく、猟兵達は立ち向かった。
紅月・美亜
「死霊か……問題ない。Operation;FAITH発令」
 自身は後方に控えつつ、飛行甲板から二機の戦闘機を発進させるとそれぞれが白と黒のバリアを展開する。
「死霊ならば属性は全て陰、稼ぎ放題だな!」
 陰のバリアを展開する戦闘機が囮になって突っ込み、攻撃を吸収していく。そして、陽の戦闘機が放つ白の機銃で次々と死霊を刈り取っていく。
「属性反転、力の開放!」
 二機がくるりと横に一回転すると機体色も展開するバリアも黒と白に反転する。
 陰の攻撃を吸収し反転して陽に変換した戦闘機が12本のホーミングレーザーを放つ。
「これはいい、思った通りだ」
 その様子をN.D.A.L.C.S.で観測し、笑みを浮かべる。


ジズルズィーク・ジグルリズリィ
WIZ判定

叫喚、共感。ジズはその痛ましい気持ちを理解するのです
怒ってる?もっともです
妬ましい?すでに羨ましがるほどに、希望に見えますか
哀しいの?ジズも、哀しいです
恨んでる?ジズ達にはそれを受け入れることしかできないのです…

怨霊の無差別攻撃を【見切り】し、
〈生まれながらの光〉で被害大の猟兵たちの支援を試みます
そして【祈り】を捧げ、霊魂に安らぎを与えられるよう祈願します

ところで、先に少女「達」と嘆願に織り込んでみたのですが
前回生け贄になった子のことは、お話を聞けるでしょうか
その大事そうに握りこんでるお守りですとか、話のきっかけになりそうですが


レイジア・ピグマリオ
【SPD】
「その呪いは俺達にぶつけるといい、君達に間に合わなかったのは事実だからな。…だがだからこそ責任をもって、君達をその呪いから解き放とう」

基本的にはキュクロプスの爪を使って【フェイント】や【2回攻撃】を織り交ぜての攻撃を行い、俺の方に接近されたときは【シーブズ・ギャンビット】(軽量化は無しでダガーでの攻撃のみ)を使って対処する。
その時も原則として俺自身は距離が取れるようなら距離を取り、戦場全体を俯瞰できるように立ち回るようにして、数的バランスが崩れているところや苦戦しているところがあったら、可能ならばキュクロプスを向かわせて援護することを心がけよう。




「きゃっ……!」
 死霊が放つ炎に狙われ、転んだ少女。
 死霊に殺到される前に、レイジアはすかさずからくり人形を手繰り守らせ、レイジアが抱える。
「大丈夫か? ここは俺達に任せて、少し離れてるんだ」
「待って! 大切な物なのっ!」
 必死に手を伸ばす少女の代わりに、ジズルズィークが少女の落とし物を手に取る。
 褪せた、しかし微かに香る小さな香り袋。
「これなのですね」
「ニーナ……大切な友達から……貰ったお守りなの」
 ジズルズィークはそっと少女の手に握らせながら、少女の眼を見つめる。
 その眼は、哀しげに伏せられている。きっとその友達は、前の儀式に捧げられたのだろう。
「きっと大丈夫なのです。希望は、諦めない限りあるのです」
「えっ……?」
「ジズ達が、あなたが抱いた希望以上の奇跡を、起こしてみせるのです」
 ジズルズィークは死霊達へ向き直る。
 真っ直ぐと見つめるその目に、敵意はない。
「叫喚、共感。ジズはその痛ましい気持ちを理解するのです」
 犠牲にされた怒りを肯定し、妬ましさの裏返しを理解し、哀しみを共に感じる。
 さぞや無念だったろう。さぞや苦しかっただろう。
「恨みも、ジズ達にはそれを受け入れることしかできないのです……」
 ジズルズィークは拳をきゅっと握りしめる。
「その呪いは俺達にぶつけるといい、君達に間に合わなかったのは事実だからな」
 レイジアは目を閉じ、メガネの反射にその瞳を隠す。
『ふふふ、もっと……もっと私達を憐れんで……』
『憐れむなら……貴方も一緒に』
『貴方達を、存分に呪ってあげる!』
 くすくすと不気味に笑う死霊が、異形の肉塊を召喚する。
 傷だらけの痛ましい手を伸ばし、引きずり込もうとする。
『さぁ、死んでッ!』
 だがそれをキュプロクスがレイジアを庇い、打ち払う。
 ジズルズィークの祈りがその手を聖者の光で浄化する。
 二人が抱いた感情は憐れみでも、呪いの矛先を向けられることに甘んじる事でもなく。
「……だがだからこそ責任をもって、君達をその呪いから解き放とう」
 己の力が及ばぬ悔しさ。彼女達の悲運から解放せんとする決意。
 彼女達の命は助けられなかった。
 ヴァンパイアが支配する世界100年、有り触れた悲劇。レイジアが生まれる前の犠牲者もいよう。
 だが、その魂を救うのは今からでも決して遅くはないはずだ。
『そんなに私達を解放したいなら……』
『……貴方を殺させて!』
 少女や村人達から、レイジアを始めとした猟兵達へと狙いを定める。
 それは言葉と裏腹に、救いを求めているかのようだった。

「死霊か……問題ない。Operation;FAITH発令」
 美亜が距離を取って発進させた白黒二機の戦闘機、それぞれが白と黒のバリアを展開する。
「死霊ならば属性は全て陰、稼ぎ放題だな!」
 美亜の予想通り、陰のバリアを展開する戦闘機が囮になって突っ込み、怨恨の炎を吸収していく。
 吸収しきれない分で損傷を負っていくも、許容範囲内だ。
 更に陽の戦闘機が放つ白の機銃で次々と死霊を刈り取っていく。
「属性反転、力の開放!」
 二機がくるりと横に一回転すると、機体色と展開するバリアが白から黒、黒から白へと反転する。
 陰の攻撃を吸収し反転して陽に変換した戦闘機が12本のホーミングレーザーを放つ。
 死霊の身体を違わず貫いていく。
「これはいい、思った通りだ」
 美亜はその様子を『N.D.A.L.C.S.』、全方位レーダー管制システムで観測し、笑みを浮かべる。
『痛いィ……苦しいィ……!』
『どうして、どうして私達がこんな目に……』
「ああ、その苦しみ、終わらせよう」
 怨嗟の声をあげ、管制に集中し無防備な美亜を狙う死霊へ、レイヴンのキュクロプスがその鉤爪を振るう。
「どうか、安らかに眠ってくださいです……」
 傷付く死霊へと、ジズルズィークは祈りを捧げる。
 恨むことでしか自らの嘆きと向き合えず、自らの恨みでより深く傷付く、哀しい死霊達へ。
 ただ純粋に、安らぎと救いあれと。
『ああ、暖かい……』
 ジズルズィークの光によって、死霊達は浄化され消滅していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

雛菊・璃奈
【呪詛】を込めた【unlimited】を展開。同じく【呪詛】を込めた九尾凶太刀からの【なぎ払い】【衝撃波】による攻撃と共に一斉掃射。

その後、【2回攻撃】で【unlimited】を再展開して追撃及び敵の反撃に備える…。炎と肉塊は剣の群れの掃射でそのまま迎撃…。絶叫は敵の範囲外でなるべく戦闘し、近づけさせないようにするよ…。
アーニャや村人もいるから、無差別攻撃の範囲外にいれるわけにはいかない…。射程内に入れる前、もしくは使われる前に倒す…。

「恨むなとは言わない…間に合わなかったのは事実だし…。でも、それは他者を恨む理由にはならない…。その呪いはわたしが引き受ける…。だから、せめて安らかに…」


ルサリィ・ネキオマンテイア
行動指針 WIZ

敵と距離を保ちつつ、武器である、からくり人形の『踊る愚者は自己犠牲を問わず』を使用
相手が近づいてきたら、からくり人形で妨害し、近寄らせないようにすると共に、相手の『消えた希望の果て』の有効範囲を測る
攻撃は、遠距離攻撃としてジャッジメント・クルセイドにて行う

生きたかったでしょう、悔いはあるでしょう、憎しみもあるでしょう
だが状況がそれをさせてくれなかったのでしょう
だけど、彼女は、それでも生きようと行動した結果、私達が間に合ったわけです
知っていましたか?
神は存外、妥協による自己犠牲よりも、諦めの悪い人間の方が好きですよ
なぜなら、死者は救えませんからね


ナターシャ・フォーサイス
WIZ
あぁ、やはり。貴女はここで捧げられた方の末路なのですね。
ですが嘆くことは、呪うことはないのです。
貴女がたは、いえ、貴女がたこそが、我々が導くべき存在なのですから。
救われていいのです。救いを求めていいのです。

ですから、貴女がたの怒り、憎しみ、悲しみ、嘆き、そのすべてを私は受け止めましょう。
受け止め浄化して、楽園へと導く。
それこそが使徒、それこそが私の存在意義。
身体的な傷は私のUCで癒せます。私は貴女がたの心の傷を癒したいのです。
そうして癒せたのなら、楽園を冠するこの鎌と、楽園への使者によって導きましょう。
生前に救うことのできなかった魂に安寧を。私は貴女がたを歓迎します。




「あぁ、やはり。貴女がたはここで捧げられた方の末路なのですね」
 ナターシャは死霊達へと言葉を投げる。
 死霊の中には少女と同じ年頃の少女が何人もいる。
 村人の様子から見ても、生贄に捧げられた少女達と見て間違いないだろう。
「ですが嘆くことは、呪うことはないのです。貴女がたは、貴女がたこそが、我々が導くべき存在なのですから」
 優しく、穏やかに、ナターシャの紡ぐ言の葉一つ一つが心を癒す。
 すなわち、死霊の力を削ぐ浄化の言葉。
「救われいいのです、救いを求めていいのです」
 死霊の少女達はは苦しげに、頭を抱えて髪を振り乱す。
『この世界に希望なんてない! 救いなんてない!』
『永遠に、そう永遠に苦しみ続けるの! あなたも、私達も! 皆皆皆みんなみんなミンナミンナミンナッ!!』
 死霊達は生前には差し伸べられることなかった救いの手に、拒絶するように悲観に満ちた絶叫を挙げる。
 それは猟兵のみならず周囲の死霊達をも傷付けながら連鎖していく。
「つぅ……」
 少女と村人達を守る為に間に入った璃奈は、薙ぎ払った衝撃波で死霊を吹き飛ばしながらも、絶叫がその身と心を苛む。
 かつて救われた自分を思い出し、悲観的な『もしも』が頭を過り心を締め付ける。
「約10m、誤差2mというところでしょうか」
 距離を取ってからくり人形を手繰るルサリィが目測で試算し、猟兵達へ声を掛ける。
 ルサリィの冷静な言葉に、璃奈は頭を振って思考を振り払う。これは死霊達の嘆きに引き寄せられているだけだ。
「恨むなとは言わない……間に合わなかったのは事実だし……」
 彼女達の生前に救えなかったことを悔やむ。
 璃奈は無表情ながらも、決して無感情ではない。
 叶うなら、救いたかった。理性を失くし誰も彼も見境なく傷付け傷付く姿など、見たくなかった。
「でも、それは他者の命を奪う理由にはならない……!」
 絶えず放たれる怨恨の炎を、妖刀・九尾乃凶太刀を薙いで打ち払う。
「生きたかったでしょう、悔いはあるでしょう、憎しみもあるでしょう。だが状況がそれをさせてくれなかったのでしょう」
 ルサリィは少女を背に守るように立ちながら、言葉を投げかける。
 死霊達は恨み言をぶつけることすら、生前は許されなかっただろう。
 諦めて口を閉ざして、しかし絶望の中息絶えていった。
「だけど彼女は、それでも生きようと行動した結果、私達が間に合ったわけです」
 希望を抱きながらも、死霊の恨み言を聞いて悲痛な表情を浮かべる少女にも聞こえるように。
 救われる側もまた、みっともなくとも足掻かねば救われぬと。足掻いたからこそ救いの手が届いたのだと諭す。
「知っていましたか? 神は存外、妥協による自己犠牲よりも、諦めの悪い人間の方が好きですよ」
 天は自らを助ける者を助ける。
 ルサリィは優しく、希望にも絶望にも容易く揺れ動く脆い少女を希望で揺らす。
 ――なんて愚かで愛おしい。

『恨めしい……! 狂おしい……! どうして私は、私達は救われなかったのに、お前達はッ!!』
「その呪いはわたしが引き受ける……あなた達も、もう救われていい……」
 再び嘆きの絶叫が連鎖する前に、璃奈は無数の剣を展開する。
 それは百に届かんとする魔剣、妖刀の数々。
 それらが宿す力は呪い。それらに込めた想いは祈り。
 きっと、彼女たちの死は決して安らかなものではなかった。
「だから、せめて安らかに……『unlimited curse blades』……!」
 だから苦しまぬよう、一瞬で片付くよう一気に叩き込む。
 無数の剣で貫いた死霊達から、奪うように怨恨の呪いが魔剣へと吸い込まれていく。
 力の源泉たる怨恨を吸い尽くされた死霊達は力の大半を奪われたも同然。
『あ、あぁ……――!!』
 オブリビオンに奪われた人々が、同じ境遇の人々を恨み呪うなど悲しいすぎるから。
 これでもう誰も呪うことはない。誰も呪わなくていい。
 魔剣や妖刀に愛され、呪詛を操り、そして鎮める役目を担う璃奈なりの救いだ。
「貴女がたの怒り、憎しみ、悲しみ、嘆き、そのすべてを私は受け止めましょう」
 ナターシャが語り聞かせるように、祈りを紡ぐ。
 受け止め浄化して、楽園へと導く。
 それこそが使徒、それこそがナターシャの存在意義。
「私は貴女がたの心の傷を癒したいのです。生前に救うことのできなかった魂に安寧を」
 ナターシャが取り出したのは『シャングリラ』。楽園の名を冠する一振りの鎌。
「私は貴女がたを歓迎します」
 穏やかに優しく抱くように、その魂を許した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ゼラの死髪黒衣』

POW   :    囚われの慟哭
【憑依された少女の悲痛な慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    小さな十字架(ベル・クロス)
【呪われた大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    眷族召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【眷族】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ふふふ、なんだか賑やかね?」
 死霊達を現れたのは黒衣を纏い大鎌を手にした少女。
「嘘、本当に……?」
 少女アーニャは、驚愕に目を見開く。
 猟兵が予想した通り、以前贄として捧げられた少女だろう。
 ――無論、ただ人間のままではない。
「ニーナ、ニーナよね!? 生きてたの!? よかった、私……!」
 少女は猟兵に止められながらも、懸命に叫ぶ。
「あら? この身体(こ)のお友達? ふふ、残念。もうその子じゃないわ」
 黒衣の少女はくすくすと口だけで笑みの形を作り、冷ややかに笑う。
「ねーぇ、私約束してあげたわよねぇ? 一人を差し出せば……村人みーんな、助けてあげるって。まさかとは思うけど……『約束』、破るの?」
 黒衣の少女は、村人達へ冷酷な笑みを投げかける。
 ヴァンパイアの髪で編まれた黒衣に精神を支配された、オブリビオンの代弁者。
 その目に射抜かれて震えぬ者はいない。
「でも、そうねぇ。今なら、許してあげなくもないわ?」
 優しげに微笑み、村人へ問いかける。
「貴方達を『希望』なんて下らないものをちらつかせて誑かしたのは、そこの連中でしょう? 差し出しなさい。当然、その贄の娘もね」
 猟兵を指差し、『良い取引でしょう?』なんて微笑んで見せる。
「何なら……そうね。代わりに、この身体を返してあげる。私にとっては用済みだものね。貴女もオトモダチなら、助けたいでしょう?」
「……っ!」
 その言葉は、少女を少しだけ迷わせる。
 しかし、恐怖に震えながらも唇を噛み締め、猟兵達へ視線を向ける。
 助けて、と。

「……答えは、決まっています。あのオブリビオンを倒さねば、どうあってもこの村は滅ぼされるでしょう」
 ソフィーヤは気取られぬよう身を隠しながら、今しがた予知した未来と共に、猟兵達へと伝える。
 この世界の絶対強者として振る舞うヴァンパイアの『温情』など、信用におけるわけがない。
「オブリビオンは早く身体を変えたがっている様子。少女を守りながらは大変ですが……お願いします」
 『村人と私の心配はせず』と断りを入れる。猟兵達が戦い出したらその隙に避難させるらしい。
「どうか、ここで倒してください。あの黒衣だけを滅すればきっと乗っ取られている少女も助けられるはずです。乗っ取られた少女にも……皆様の希望で、照らしてあげてください」
 最上の希望を得るべく、三度送り出した。
紅月・美亜
「ふむ、黒衣を剥がせばいいのだな? 援護は任せろ」
 Operation;BLACKを放って隙を作ってからアンカーチェーンを放ち、死神への【ハッキング】を試みる。
「Operation;INVADED、発令。私のハッキングは機械にしか通らない訳ではない。魂ある者、その精神に侵食して侵略する。まずは、動きを止める!」
 これなら肉体を不用意に傷付ける事も無い。全てのハッキングが通らなくてもそれなりに戦いにくくはなるはずだ。後は、得意な奴が組み付いて引っぺがせばいいだろう。


レイジア・ピグマリオ
【SPD】
『約束』『取引』『助けてあげる』…まったく、お前らヴァンパイアは揃って同じようなことを言う。
聞き飽きたからさっさと失せるんだな、用済みなのは黒衣(お前)だけだ。

基本的に自分は敵に近寄らず、キュクロプスもある程度の距離を保ちつつ、【フェイント】や【2回攻撃】を織り交ぜて爪もしくは【一つ目巨人の熱視線】で攻撃を行う。
敵が自分に向けて接近してきた場合はキュクロプスで妨害して距離を取るようにして、ベル・クロスを警戒する。
敵が眷属を召喚した場合は、近くに寄ってくれば自分もナイフで眷属を攻撃する。

他の誰かが無防備に攻撃を受ける状況があればキュクロプスを割り込ませてガードもするつもりだ。



「『約束』『取引』『助けてあげる』……まったく、お前らヴァンパイアは揃って同じようなことを言う」
「ふふふ。ごめんなさいね? 何か嫌な事でも思い出させちゃったかしら」
 半ば苛立ち、半ば呆れるレイヴンへ、黒衣はさらに挑発する。
「聞き飽きたからさっさと失せるんだな、用済みなのは黒衣(お前)だけだ」
 それを聞き捨てたレイジアはキュプロクスを突撃させ、しかしフェイントでタイミングをずらしながら鉤爪の二連を放つ。
 黒衣は大鎌を振るって防ぎ、至近距離に間合いを詰める。
 が、レイジアは間合いに入る接近戦を嫌って、キュプロクスを即後退させ距離を取る。
「あらあら、勇ましいのは口だけ? 臆病な戦い方だこと」
「口の減らないヴァンパイアだ。よく喋るところなど、実に小物らしい……『一つ目巨人の熱視線』!」
 互いに挑発し合い、人形頭部の宝石が一瞬煌めき、刹那のビームを放ち黒衣を撃つ。
「っ……不意打ちは上手ね。でもそうと分かれば、避ければいいだけよ」
 黒衣は直撃しているというのに、余裕を持って笑ってみせる。
「ふむ、黒衣を剥がせばいいのだな? 援護は任せろ。Operation;BLACK!」
 美亜は隙を作るべく、多数の小型戦闘機を発進させる。
「あら何かしら? 玩具遊びしたいの雑種ちゃん? ほら、本物はこうするのよ」
 くすくすと笑いながら、蝙蝠の眷属を召喚し対抗する。
 その数は美亜が召喚した戦闘機の数を、優に超える。
「まともに撃ち合うつもりはない、Operation;INVADED、発令」
 蝙蝠と戦闘機が撃ち落とし合う中、美亜はアンカーチェーンを放ち、死神への『ハッキング』を試みる。
「私のハッキングは機械にしか通らない訳ではない。魂ある者、その精神に侵食して侵略する。まずは、動きを止める!」
 美亜は五感の内、感知系の3種の感覚へとハッキングを試みる。
 視覚のハッキングに成功し、感覚を狂わせた。
「ふ、ぅん……? まぁまぁね。でも、所詮混ざり者ね。この程度で純血のヴァンパイアは止められないわ」
 しかし黒衣は構わず美亜の元へ踏み込み、至近距離からその大鎌を振るう。
「――『ベル・クロス』」
 超高速で放たれた大鎌は不可避。
 だがそこにレイジアのキュプロクスが割り込み、鉤爪でガードする。
 美亜にハッキングされて攻撃力が下がっているはずだというのに、装甲の大部分を削り取られてしまう。
「あら。ガードの上からでも腕一本持ってくつもりだったけど。思ったより厄介ね、これ」
「ちぃっ……しかし元より全て通るとは思っていない」
 美亜は黒衣が放つプレッシャーに、僅かに冷や汗をかく。
 憑りつかれた少女を傷付けないよう手加減など、できるのだろうか。
 一度見せた手札は警戒されるだろう。中々骨が折れそうだ。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ルサリィ・ネキオマンテイア
ふふふ……、我々を差し出せ、と?
えぇ、えぇ、構いませんよ、構いませんとも
今やこの場は、私達があなたを殺すか、私達があなたに殺されるかの二者択一
そこに、中途半端な絶望の介入は無しでしょう?

行動指針 WIZ

まず、ニーナを、からくり人形と【恐怖を与える】で拘束
失敗しても成功しても、からくり人形はニーナに集中させ、牽制しながら戦闘から遠ざける
その間、私はブリビオン本体からは距離を保ち、【誘惑】で召喚された眷族を誘き寄せ、【鈴蘭の嵐】で攻撃
高威力の攻撃手段が多いので、その範囲内で、皆が眷族で足止めされてしまわないようにする

本体の討伐自体は、他の皆さんにお任せしましょうか
すべてに介入など手に余りますからね


雛菊・璃奈
【呪詛】を込めた【狐九屠雛】展開…。
大鎌は危険と見て、慟哭の範囲外くらいから攻撃…。

まずは【狐九屠雛】を五発程に分けて圧縮して敵を連続攻撃…。
一発目と二発目は敵がギリギリ回避できるくらいのタイミングで仕掛けてわざと回避させて余裕を無くし、三発目を確実に敵の鎌に直撃させて凍らせる事で武器を封じる…。四、五発目は途中で眷族呼ばれた際の対応と、万一に三発目を回避された時の予備弾…。

鎌を封じた後は【狐九屠雛】を敵の全周囲を包囲するように、敵の動きを封じるように本体の黒衣のみを凍らせて、少しずつ剥ぎ取って行く…。

「他人の体を使わないと何もできない寄生虫の癖に偉そうだね…人間、嘗めない方が良いよ…」



「ふふふ……、我々を差し出せ、と? えぇ、えぇ、構いませんよ、構いませんとも」
 ルサリィは黒衣の提案を、嗤う。
「今やこの場は、私達があなたを殺すか、私達があなたに殺されるかの二者択一。
 そこに、中途半端な絶望の介入は無しでしょう?」
「そうねぇ。絶望させるのはついでだし、貴女達を殺した後でもいいわね。儚い希望が潰えた時の絶望の顔こそ、愉しいもの。……ああ、その点だけは貴女達に感謝しなくてはね」
「えぇ、その点だけは理解を示しましょう」
 互いに人の絶望を好む者同士、嗜虐的な笑みを交わし、ルサリィは名も無きからくり人形を手繰る。
「あら、また人形? どうして皆私のダンスに付き合ってくれないのかしら。寂しいわ」
 ワザとらしく溜息を尽きながら、黒衣はからくり人形の拘束を飄々と受け止める。
 ぎちぎちと競り合いながらも、大鎌を振るわれる前に離脱させて距離を取り牽制する。
 ルサリィ本人は、未だ多数残っている眷属へと目を向ける。
「私の眷属を誘惑? ふふっ、面白い。何をしてくれるの?」
 その誘いに敢えて乗る様に、ルサリィへと眷属を殺到させる。
「――『鈴蘭の嵐』」
 自らの武器、からくり人形が鈴蘭の花びらへと変じ、眷属達を撃墜していく。
 吹き荒れる花びらの嵐は、範囲に入った蝙蝠たちを切り裂いていく。
「面白い手品ね。けれど、貴女自身ががら空きよ?」
「さぁ、それは他の皆さんにお任せします。あの蝙蝠に足止めされなければ、十分」
 からくり人形の抑えがなくなった代わりに、黒衣はルサリィへと向かう。
「他人の体を使わないと何もできない寄生虫の癖に偉そうだね……人間、嘗めない方が良いよ……」
 璃奈が絶対零度の焔を周囲に浮かべる。
「九尾炎・最終地獄――『狐九屠雛』」
 氷結地獄の名を冠するその炎のコントロールに集中する。
 璃奈は自身が操れる19の炎の内、4つずつ力を集めて圧縮し、計5発の炎弾を作っていた。
 初撃はルサリィを守る様に真正面から、回避を誘う。次撃も避けられる事を前提に、2発を消費する。
「あら狐さん、お仲間を守るにしても、狙いが甘いんじゃなくて?」
「人間を嘗めないほうが良い、と言った……!」
「っ!?」
 余裕の態度を崩さない黒衣が避けた先は、璃奈の狙い通りの場所。
 ルサリィが眷属を払ったお陰で、妨害する盾はない。
 黒衣の大鎌へ、続く三撃、四撃、更に五撃と殺到させる。
 大鎌が氷で覆われ、黒衣が凍てついて行く。
「ふぅん……面白いわね、猟兵。まさか私と競り合ういるなんてね。興が乗って来たわ」
 凍てつく大鎌を地面へ叩きつけ、まとわりついた氷を砕いて払う。
「その黒衣、少しずつ剥ぎ取って行く……」
 黒衣のヴァンパイアとて強敵ではあるが、無敵ではない。その身に着実にダメージは通っている。
 少女の身を案じながらも、押し切るべく再び狐火を展開した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジズルズィーク・ジグルリズリィ
SPD判定

ソフィーヤさんの言う通り
今こそジズたちが照らす希望、
みなの強さを知らしめすとき
その希望で、強さで!未来を変えるのです!!

オブリビオンが温情をかけるのなら余裕を【見切り】し
損傷を省みない〈ネガセイヴァー〉で急襲です
突貫し注意を惹き、あとは頼れる仲間の猟兵たちが戦いを決着してくれることを期待です

アーニャさんとニーナさんのお守りのように
体がどれだけぼろぼろになろうとも、
【祈り】願って掴もうとする未来は……少女と村人さんたちに戻る平穏

すなわち
「ヴァンパイア様を必ず倒すのです。だからその代わり……少女達を集落に住まわせて欲しいのです」
ただそれのみです
どうか幸多きこれからでありますように


ナターシャ・フォーサイス
ご友人が生きていらしたんですね。
それはとても喜ばしいこと、救わない道理はありません。
生けるものはまだ、自分の足で楽園を目指すことができますから。

ですがオブリビオン、過去の者はそうはいきません。
楽園へ至るには、肉体など不要。
それに貴女のそれは、とても傲慢なもの。救いとは呼べません。
そもそも救いとは、取引ではないのです。

貴女が新しい身体を望むのなら、肉体という軛から解き放ってあげましょう。
それに、同じ事ばかりを繰り返しては退屈でしょう?
ですので傲慢かもしれませんが、貴女にも救いを与えましょう。
味方の方々やニーナさんの傷は私の力で癒せます。
ただ黒衣を、依代だけをこの鎌で浄化しましょう。



「ご友人が生きていらしたんですね。それはとても喜ばしいこと、救わない道理はありません」
「……っ、ぅん……!」
 ナターシャはこの世界において恐怖そのものであるヴァンパイアを目の前にし、恐怖に震える少女を励ますように優しく声を掛ける。
「生けるものはまだ、自分の足で楽園を目指すことができますから」
 少女は震える足で一歩も動けずに、けれど膝を屈せず、真っ直ぐと立つ。
 その様子を見て、ジズルズィークは心を強く持つ。
「今こそジズたちが照らす希望、みなの強さを知らしめすとき。その希望で、強さで! 未来を変えるのです!!」
 大人しいジズルズィークが語気を強く、その覚悟を露わにする。
 自らが二人の少女の希望になるべく、心を奮い立たせる。
「楽園へ至るには、肉体など不要。それに貴女のそれは、とても傲慢なもの。救いとは呼べません。そもそも救いとは、取引ではないのです」
「……ヴァンパイア(わたし)相手に説教なんて、面白いわね貴女」
 聖者として語るナターシャに、黒衣は忌々しげに眉を顰める。
 その言の葉に一つ一つに、純粋な祈りが宿る以上、邪悪なオブリビオンにとって毒だ。
 ナターシャを止めようと振るわれる黒衣の大鎌を、ナターシャは大鎌を持って受け止める。
「それに、同じ事ばかりを繰り返しては退屈でしょう?
 ですので傲慢かもしれませんが、貴女にも救いを与えましょう。貴女を肉体という軛から解き放ってあげましょう」
「……なんだ、そういうのなら話は早いわ。此方のセリフよ、からくり仕掛けの聖者。その命、刈り取って救ってあげるわ」
 黒衣は力任せに弾き、大鎌を振るう。
 しかしそこへ割り込む小柄な少女。
「無私、不死。ジズの受難は、とこしえに苛むのです。――『私に七難八苦を与えたまえ』」
「ちっ……! 本当。聖者は生意気な連中揃いね」
 祈りを捧げたジズルズィークが黒衣へと身体ごと突撃し、聖痕から漏れ溢れる光を叩き込む。
 黒衣を焦らせるほどの一撃の代償に、刻まれた聖痕が激しく疼き血が流れ出す。
 傷痕だけではない、ジズルズィークの全身が悲鳴をあげている。
「ジズルズィークさん。貴女の献身に、私の力で言祝ぎましょう」
 ナターシャの身体から放たれる優しい光が、ジズルズィークの身体を包む。
 更に黒衣をすり抜けてニーナ自身が負った傷をも照らしていく。
「ああ、もう。本当、面倒だわ、貴女達は!」
 強者たるが故に慢心しながら削られていった後、叩き込まれる聖なる力。
 黒衣はその余裕は剥がれ落ち、苛立ちを露わにする。
「ジズは、祈り願うのです」
「――『ベル・クロス』」
 傷付きながら、癒されながら、身体が悲鳴を上げるのを堪えて大鎌の真正面から踏み込む。
「アーニャさんとニーナさんのお守りのように、この身体がぼろぼろになろうとも……」
『……っ!』
 全身の痛みに歯を食いしばりながら、ジズルズィークの半ばうわ言のように呟いた独白に、ほんの一瞬黒衣――ニーナの手が止まる。
 ニーナの瞳に、ジズルズィークが拾ってくれたお守りを大切に握りしめるアーニャの姿が映る。
「掴もうとする未来は……アーニャさんとニーナさんの二人、そして村人さん達に戻る平穏」
 その一瞬の隙に、強く強く、光り輝く拳を握りしめて振りかぶり――。
「だからニーナさん……ヴァンパイア様を必ず倒して、貴女も、助けて見せるのです!」
 避ける素振りを見せないへと黒衣へと、寸分違わず叩き込む。
 渾身の聖なる力を受けて吹き飛ばされた黒衣が、膝を付いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


●少女の希望
「っ、ああ、もう……やっぱり換え時に無理はいけないわ」
 猟兵達の思わぬ反抗に、手傷を負った黒衣の少女が、大鎌の柄を杖に付く。
 黒衣の少女の目が、無防備なアーニャへと向く。
「だから……そうね。『着替え』ようかしら」
 猟兵が意図に気付いた時には、既に遅かった。
 元より黒衣は少女の身体が目当て。
 アーニャを村人と共に逃がすのは困難……いや、アーニャを残したからこそ村人がひとまず見逃された。
 眷属の群れと共に、アーニャへと殺到し、黒い塊で覆い尽くされる。
「ふふっ、さぁ――仕切り直しよ」
 黒い塊から現れたのは、黒衣に纏われ憑りつかれたアーニャと、一糸纏わぬ姿で倒れ伏すニーナ。
 ニーナは気を失っている様子だが、息はある。
 少女を傷付けぬよう戦ったお陰もあり、その傷のほとんどは浅く、命に別状はないだろう。
 アーニャのほうは――。
「ああ、この身体(こ)に語り掛けても無駄よ。優しく、優しく眠らせてあげたから」
 猟兵が向ける視線を感じたのか、アーニャの顔で歪に笑う。
「あなた達を始末したら、この身体(こ)の意識を起こしてあげるわ。その時は……用済みになったその身体をこの手で殺してあげる。ふふっ、さぞや色濃い絶望に心砕けるでしょうね」
「そんな事、させない」
 黒衣の笑い声を止める、強い意志の籠った言葉。

 その言葉を発したのは他の誰でもない。
 初めて会ったのに。一切関係ないのに。
 自分達を助けようと、優しい言葉をかけてくれる猟兵達の姿に何より励まされた者。
 それは、黒衣に憑かれたアーニャ自身だった。
「お願い! 私がコイツを止めて見せるから、その間に仕留めて! 大丈夫、怖くないよ」
 ――だって、目に前には希望の光がこんなにも溢れている。

 ヴァンパイアが絶対強者として存在するこの世界で、堂々とヴァンパイアスレイヤーと名乗り『心配無用だ』と言ってくれた人がいた。
 絶望で満ちるこの世界出身同士だというのに『力になれるのならば出し惜しみはしない』と言ってくれた人がいた。
 優しい炎で守ってくれ、ヴァンパイアに従うしかなかった村人達にも『希望を捨てないでほしい』と言ってくれた人がいた。
 弱ければ奪われるしかない世界で『弱者が救われないなど、あってはならない』と言ってくれる人がいた。
 考えなしで動いた私に覚悟を示すチャンスをくれ、『生きようと行動したから間に合った』と言ってくれた人がいた。
 きっと同じような……もっとひどい目に遭ったかもしれないのに、『耐えられぬ状況を変えようとした貴女は強い』と言ってくれた人がいた。

「弱くて無力な私を、信じて助けてくれた。だから、今度は私が力になる番」
 猟兵達を前に、アーニャは力強く精一杯微笑んだ。
紅月・美亜
「ふん……混ざり物か、否定はしない。だが純潔に拘るあまり他を取り入れる事を忘れた時代遅れに引けを取る気も無い」
 アンカーチェーンを壁に撃って巻き取り、強引に距離を取って壁に張り付き戦闘機への管制に集中する。
「Operation;R、発令……今度はまともに撃ち合ってやろう。その上で圧倒する」
 最初からすべての機体を一つに集約し、火炎武装専用機を形成。火炎レーザーで眷属を撃墜していく。
「撃ち合うつもりなら一機で十分だ」
 隙を見て波動砲をチャージし、灼熱波動砲で黒衣のみを焼き払う様に撃つ。
「第一、布切れに血統がどうこう言われる筋合いはない!」


雛菊・璃奈
「それが人間の強さ…言ったよね…?人間を嘗めるなって…!」

【フォックスファイア】展開…。ヴァンパイアを完全に滅ぼす為、全力の【呪詛】を織り込みアーニャに取り憑く黒衣へと狐火を放つ。
あの時と同じ様にアーニャを守る為、あの時と異なりヴァンパイアを滅ぼす為、アーニャの周囲を周回する様に狐火を操作し、ヴァンパイアだけを呪炎で焼き尽くす様、細心の注意を払ってコントロール。自身への敵の攻撃も二の次にして、アーニャを助けるのに全力を出すよ…!
もし、アーニャから逃げ出したら、全狐火を集中。大火球にして今度こそ焼き尽くす…!

「大丈夫…貴女は必ず助ける…希望は、わたしが守る…!」
「消え去れっ…ヴァンパイア!!」


ルサリィ・ネキオマンテイア
行動指針 WIZ 【恐怖を与える】【鼓舞】

アーニャに動きを止められてる間に、更にからくり人形を抱きつかせ、眷族はジャッジメント・クルセイドで攻撃
一つ一つ、確実に手を潰していき、死をちらつかせて【恐怖を与える】
アーニャさん自身には、【鼓舞】を使用して、気をしっかり持つように勇気つけるとしましょう

あぁ。そうやって、絶対の強者が、弱者と侮っていた者に足元を掬われて、無様に死にゆく姿は、とても愚かで愛おしいですね
弱者が、変わらず弱者のままで居続けるなんて盲信していた己の愚かさを呪いながら死になさい


ナターシャ・フォーサイス
貴女はまた罪を重ねるのですね。
使徒の身ではありますが私も人間、怒りを感じずにはいられません。
しかし赦しましょう。
罪を許し、祓い、導くのが使徒ですから。

真の姿を解放することも考えましょう。
使徒として神に仕えることを望んだ身。
一時的ではありますが、天使としての姿を…
…何故かはわかりませんが、機械仕掛けの天使の姿を見せてあげましょう。

アーニャさんに傷はつけさせません。
ヴァンパイア、貴女だけを肉体の鎖から解き放ちます。
楽園への使者を呼び寄せます。
何も心配はいりません。
これ以上の罪を重ねず祓い、我々の眷属とこの鎌でもって導きましょう。
そう言えば…貴女の名を聞いていませんでしたね。何と言うのですか?


ジズルズィーク・ジグルリズリィ
絶望を祓い、ついに灯された希望、奇跡
もはや恐れを抱くものはここにはいない
所信、確信。ジズは、安心したのです

【祈り】判定にて力を高め
己の疲労は気にせず〈生まれながらの光〉で可能な限り多くの
アーニャさん自身が負った傷、ニーナさん、猟兵さんたちの傷などを癒します
前線は味方に任せ支援に徹するのです

そして、ありがとう
貴女の笑顔で希望をいただきました
修練、練習。ジズも、貴女のように人に希望を与える、すてきな笑顔をみせたいものです
これからは、その笑顔が曇りそうな時は、二人で乗り越えてほしいのです
ふぁいとっ、です!



●裁かれぬ者に、裁きを
「ちっ……活きが良すぎるのも考えものね……」
 閉じた目が開かれ、黒衣が意識の主導権を取り戻す。
 だが俊敏な動きは見る影もなく、全身に枷を嵌めているかのように重々しい。
 それは今なおアーニャが意識の中で戦っている証明だ。
「それが人間の強さ……言ったよね……? 人間を嘗めるなって……!」」
 感情を上手く出せない璃奈が、語気を荒げて見せる。
 人間の心の強さを見せた少女に、そしてその希望になった自分にもどこか誇らしげに。
 最初に少女を守る為に使ったように、今度は黒衣の周りに……否。やる事は全く変わらない。
 少女を守る為に、その周囲に浮かべる。
 だから『少女』は、安堵するかのように炎の中で『守られる』。
「こんなもの、本当に……小賢、しいッ!」
「遅いですね」
 自ら呪炎の檻に閉じ込められた黒衣は、苛立ちを隠そうともせず璃奈へと突進しようと踏み込むが、遅すぎる。
 ルサリィの操るからくり人形が抱きつき拘束する。
「離せ、離せこの人形風情が! 眷属よ!」
 本来であれば振りほどけるはずの拘束に抗えない黒衣は明らかに焦る。
 ルサリィは黒衣の心が手に取る様に分かる。感じているのは、消滅の恐怖。
「あぁ。そうやって、絶対の強者が、弱者と侮っていた者に足元を掬われて、無様に死にゆく姿は、とても愚かで愛おしいですね」
 少女の顔と声を借りた黒衣が浮かべるその表情に、ルサリィは恍惚の笑みを浮かべる。、
 呼び出した眷属へと、丁寧に一つ一つ指差し、暗雲を貫き降り注ぐ光が射抜く。
「アーニャさん。貴女は確かに弱者でした。しかし、だからこそ強さが何たるかを考え、求め、得ることができる」
「黙れ、黙れ黙れ、耳障りなオラトリオめがッ」
 ルサリィは、言葉を選び鼓舞していく。
 その言葉は、少女の心へと届いている。
 黒衣の動きが鈍っていき、ルサリィが紡ぐ言葉を止めようとするのが何よりの証拠。
 そして、それ以上に猟兵達に力が漲っていく。

「貴女はまた罪を重ねるのですね。使徒の身ではありますが私も人間、怒りを感じずにはいられません。
 しかし赦しましょう。罪を許し、祓い、導くのが使徒ですから」
 ナターシャがその真の姿を解放する。
 眩い光の中から現れたのは、機械仕掛けの天使。使徒としての責を果たすべく得た力。
「アーニャさんに傷はつけさせません。ヴァンパイア、貴女だけを肉体の鎖から解き放ちます」
「忌々しい、戯言を、繰るなと言っている!」
 背後に背負った光の中から次々と天使の眷属が現れる。
 その数を減らしつつも、僅かに数で勝る蝙蝠達を天使の眷属が圧倒していく。
 力の大部分を抑えつけられた黒衣と、真の姿を解放したナターシャの力の差はもはや逆転したと言っていいほどに覆っていた。
「絶望を祓い、ついに灯された希望、奇跡。もはや恐れを抱くものはここにはいない。
 所信、確信。ジズは、安心したのです」
 祈りを捧げるジズルズィークは、穏やかに笑み、勝利を確信する。
 その身と心全てを捧げるように祈り、戦場全てに、ジズルズィークがもたらす柔らかな光が満ち溢れる。
 猟兵達が負った傷、ニーナの身に残る傷、黒衣ががむしゃらに酷使してアーニャが負った傷……それら全てを癒していく。

「ふん……混ざり物か、否定はしない。だが純血に拘るあまり他を取り入れる事を忘れた時代遅れに引けを取る気も無い」
 美亜はアンカーチェーンを背後の壁に撃ち込み、黒衣から一気に距離を離す。
「Operation;R、発令……今度はまともに撃ち合ってやろう。その上で圧倒する」
「たった一機で何をほざくっ! まだよ、もっと来なさい我が眷属!」
「撃ち合うつもりなら一機で十分だ」
 恐らく最後の、決死の力で再召喚した蝙蝠に対し、美亜が召喚したのは一機のみ。
 キャノピーに描かれた数字は14。
 火炎武装を装備した機体が、火炎レーザーで蝙蝠の群れを焼き尽くす。
 見開かれた美亜の瞳が煌々と紅く輝く。ヴァンパイアの血を宿しながらヴァンパイアを狩る者。
 その名は『ダンピール』紅月・美亜、あるいは『ヴァンパイアスレイヤー』イリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット。
 それだけではない。璃奈の呪炎が黒衣を正確に狙い、焼き尽くしていく。
 璃奈は少女の身を決して傷付けないよう、針の穴を通すように神経を研ぎ澄ませる。
 黒衣は蝙蝠で防ごうとするも、それらは美亜の戦闘機の砲撃や、ナターシャの天使の眷属の格好の的となる。
 自身が動けない代わりに何度も繰り返し呼び出したというのに、その数はもはや指で数えるほどしかいない。

「くっ、このままでは……本当に……」
「えぇ、その通りです、憐れな強者。弱者が、変わらず弱者のままで居続けるなんて盲信していた己の愚かさを呪いながら死になさい」
 ルサリィの言葉にぞくりと、その恐怖を一層強める。
 少女の意志によってその力を削がれ、人形によって拘束された少女の身体を捨て、黒衣がすり抜ける。
 何もかもかなぐり捨てた、逃げの一手。しかしそれこそ最大の好機。
「この時を待ってた……消え去れっ……ヴァンパイア!!」
「第一、布切れに血統がどうこう言われる筋合いはない!」
 全ての狐火を集束させた璃奈の大火球が、最大チャージした美亜の戦闘機の灼熱波動砲が、黒衣へと迫る。
「大丈夫……貴女は必ず助ける……希望は、わたしが守る……!」
 解放された少女の元へ、璃奈は大火球を放った後命中を見届けずにすぐさま踏み出す。
 二つの爆炎の余波から少女を庇い守る。
「何も心配はいりません。貴女の罪を祓い、我々の眷属とこの鎌でもって導きましょう」
 大部分が焼け焦げ地に落ちた黒衣へと、ナターシャがゆっくり歩み寄る。
「そう言えば…貴女の名を聞いていませんでしたね。何と言うのですか?」
『敵とすら見てない……本当、忌々しい……』
 機械仕掛けの天使はその大鎌を振り下ろし、刈り取った。

●救われた者に、笑顔を
「皆さん、ありがとうございます……本当に、何とお礼したらいいか……」
「そうだな、では何か美味い料理でも用意してもらおうか。それで十分だ」
「……はい! 精一杯、おもてなしさせていただきます!」
 支配していたヴァンパイアから解放された村人達が猟兵達の元へ集まって来る。
 美亜は村人が満足するなら、と告げれば、村人は明るい笑顔を浮かべて慌ただしく準備に取り掛かった。

 アーニャとニーナ、しっかりと手を繋いだ二人の少女が猟兵達の前に立つ。
 二人の少女の身体には、傷一つない。
 璃奈やルサリィが傷付けないように戦い、ジズルズィークやナターシャがその力で戦いの最中も癒し続けたお陰だ。
「あの、私達からもお礼させてください。皆さんのお陰で私だけじゃなく、ニーナまで助けてくれて……」
 少女は涙ぐみながら、仲良さげに抱き合い夢のような奇跡を喜び合う。
 無茶とも言える力の行使で疲労困憊であるはずのジズルズィークは、しかし満ち足りたように微笑む。
 自分達はこの二人に希望を与える事ができたのだ。
「ありがとう。貴女の笑顔で希望をいただきました。
 修練、練習。ジズも、貴女のように人に希望を与える、すてきな笑顔をみせたいものです」
「そんなことっ! ジズさんの笑顔も、とっても素敵ですよっ! 私達が笑えるのも、希望を持てたのも、皆さんのお陰なんですから! 璃奈さんの火も、とってもあったかくて、ナターシャさんの言葉は優しくて、ルサリィさんにはいっぱい元気づけて貰って、レイリスさんもカッコよくて、それからそれから……」
 感謝の気持ちを精一杯伝えようと必死に言葉を紡ぐ少女に、和やかな空気になる。
「これからは、その笑顔が曇りそうな時は、二人で乗り越えてほしいのです」
「……はい、皆さんが救ってくれたこと、希望を教えてくれたこと、絶対に絶対、忘れません!」
 この世界は、決して優しい物ではない。
 猟兵達が掴み取った平穏も、ほんのひと時の物でしかないかもしれない。
「ふぁいとっ、です!」
 けれど村人達、そして二人の少女が浮かべる笑顔は紛れもない本物だ。
 猟兵達によって、人々の心に希望の光が照らされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月06日


挿絵イラスト