エンパイアウォー㉚~援軍が来ない
●魔の社へ向かえ
魔軍将・侵略渡来人『コルテス』は、骸の海から渡来人を呼び寄せる、幾つかの財宝を所持していた事が判明した。一定時間ごとに新たな渡来人を召喚し続けるこれらの財宝は、かつてコルテスが侵略した文明から略奪した『血塗れ財宝』と言う物だ。
「――それを使って今も新しい渡来人を呼び出し続けて、信長軍の戦力を増やしているの。これらの『血塗れ財宝』を撃破する事が出来れば、魔空安土城の信長軍の戦力を減少させる事が出来ると思うわ」
グリモアベースの会議室、スマホに書かれている文章を一しきり読み上げた喜羽・紗羅(伐折羅の鬼・f17665)は、画面を閉じて集った猟兵達に顔を向けた。
「この血塗れ財宝は山陽地方のパワースポット……この前メッチャ暑かったあの辺りにある、寂れた神社に安置されているの。定期的に同じオブリビオンを骸の海から召喚し続けるんだって」
自分は一切手をかけずに、自動で戦力を補充し続ける。自らの手を汚さないコルテスらしい仕掛けだろう。
「召喚されたオブリビオン達は、ある程度数が集まると魔空安土城に向けて移動するみたい。だけど財宝の周囲には常に10から20体くらいのオブリビオンが財宝を守る為に居残るそうよ」
召喚されたオブリビオンが20体となると、半数の10体が移動する……というのを繰り返すそうだ。守りは盤石に、確実に戦力を供給するという仕組み。生贄を使うよりまとまった人数は稼げないが、その分着実に召喚が出来る代物だ。
「そこで今回は『敵が何体の時に攻撃を仕掛ける』か考えて欲しいの」
敵の数によって戦いは難しくなるが、敵が多い時に一網打尽に出来れば、その分敵の戦力を減らす事が出来る。あらかじめ敵の退路を断っておけば、人数次第で包囲戦も可能かもしれない。敵の数がどの程度の時に戦闘を開始するかは、現場の猟兵へ一任する様だ。
「で、肝心の敵なんだけど……この前と同じ異国の少女剣士みたいよ」
またですよ。まあ空を駆け上がれる彼女達なら、魔空安土城の戦力として申し分ない。
「だけどこの前とは召喚方式も戦闘の目的も違うから、十分に気を付けてね!」
それでもこの前が一軍なら今度は二軍、控えが仕上がる前にキャンプ地強襲と行こう。
スマホからグリモアのゲートを開き、熱気が部屋に充満する。
戦争も佳境だ。少しでも本隊の戦力を減らすべく、山陰地方へ再度の出撃が始まった。
ブラツ
ブラツです。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。1フラグメントで完結し、
「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
成功シナリオ2本毎に魔空安土城の一部の戦場の制圧に必要な成功数が1減少します。
戦闘は【集団戦】となります。
最大20人前後のオブリビオンを次々と撃破する戦闘シナリオです。
戦場は少女達が儀式をしている寂れた無人の神社で、境内はそれなりの広さです。
初回交戦時に敵の数をそれまでに頂いた全プレイング内容から判断します。
その為、文頭に少か多とご記載下さい。
記載が多い方の状態でシナリオを開始します。
戦術につきましては交戦時の演出が変わるくらいなので、
数によって大幅に内容を変えずとも問題ありませんのでご安心ください。
集団戦を念頭に置いたプレイングであれば成功率が上がるでしょう。
戦闘終了時に『血塗れ財宝』は破壊されますので、特に指定はいりません。
プレイング募集は8/20(火)8:30以降です。
連携アドリブ希望は文頭に●を、同時参加を希望の方は識別子をお願いします。
それではご武運を。よろしくお願い致します。
第1章 集団戦
『異国の少女剣士』
|
POW : 跳躍飛翔
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
SPD : 縮地法
【瞬間移動】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【至近距離からの斬撃】で攻撃する。
WIZ : 憑呪宿奪
対象のユーベルコードに対し【その属性や特性を奪い取る斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:ちーと
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ミハエラ・ジェシンスカ
●
成る程また貴様らか
いや、こちらの話だ
ともあれ戦力の拡充は防がねばならんな
敵が20人いる時を狙うとしよう
以前の戦闘データを参照に立ち回ればできない事ではないはずだ
【念動加速】で飛翔しつつ今回は更に【乱戦戦術】も織り交ぜる
あるいは盾としてだけではなく踏み台にしての加速、急激な方向転換にも使えるか
今回は数が数だ。隠し腕の展開も惜しまない
ドローンは敵の退路を断つように展開しつつ
フォースレーダーによる【情報収集】で敵味方全体の動向を把握
逃走を許した場合にも他の猟兵がいる方へと向かうよう仕向ける
悪いが一人も逃さん……という程に強欲ではないがな
必要なだけの働きはさせて貰おう
アララギ・イチイ
人数:多
私は何人の相手が可能かしらねぇ♪(わくわく
制空権確保の為、戦闘人形フギン・ムニンを【武器改造・防具改造】で補助航空兵装と合体して【空中戦】、ホーミングレーザーの【誘導弾】、電磁投射砲の【スナイパー】で攻撃よぉ
私は地上で【選択UC】を発動ぉ
世界を書き換え、下記兵器類を操るわぁ
空中はMiG15(戦闘機)の編隊で、機銃類で戦闘人形の【援護射撃】よぉ
地上はZSU-23-4シルカ(対空戦車)の部隊で、接近を許さない様に敵の動きを【見切り】、【一斉発射】の制圧射撃よぉ(上空支援も担当
私も複数のナパームB(航空用ナパーム爆弾)を【念動力】で【投擲】、地上に降りた敵周囲ごと炎上させて【範囲攻撃】よぉ
●鋼の津波
寂れた神社の境内で少女達が円陣を組む。その中心には巨大な鏡が。それは陽光を浴びて紫色の光を放ち、鏡に映った少女と同じ姿の剣士を――オブリビオンを現世へと迎え入れる。
『大分集まったかしら』
『そうね』
『早く行きましょう』
安土城へ。鈴の音の様な声を揃えて、少女達が大地を蹴ろうとした刹那――赤黒い光の矢が、その行く手を遮った。
「成る程、また貴様らか」
またとは、何奴? すかさず小剣を抜いた少女達が、声の主――痩躯のウォーマシン、ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)を囲い込む。
「いや、こちらの話だ」
ミハエラは既に隠し剣を含む四振りの光剣を抜き放ち、四方を牽制しながら少女の一人へじりじりと間合いを詰めた。
「どうせ覚えてなど無いだろう」
ともあれ、戦力の拡充は防がねばならんな。瞬間、地を蹴ったミハエラが影を残して姿を消す。その影を目で追って――少女達は上空のミハエラへ一斉に飛び掛かった。
「それはもう、識っている」
以前の戦闘データを参照に立ち回れば出来ない事ではない。四方どころか八方塞がり、手にした小剣の切先がギラリと煌めいて、ミハエラの行く手を阻む。
「――行くぞ」
四振りの光剣が四方に広がって、その身を中心に回転――独楽の様に群がる少女を弾き飛ばす。そして。
『回転ならば、その中心が穴となる』
「そうやって直ぐに、騙される」
頭上からの奇襲を敢行した少女がその腕を取られて、振り向き様を狙った少女に小剣で斬り付けた。その腕を取って、力の流れを利用して――僅かな補正は念動力で行えば、彼女は自分が何をしてしまったかも理解出来ないだろう。
『ああッ!』
何故私が味方を切りつけて……そしてそのまま、手にした小剣を奪われて、弾き飛ばされ地に落ちた仲間目掛けて投げつけられる。
「酷い事をする奴だな」
淡々と乱戦戦術を遂行するミハエラ。これで二人。赤黒い光を放ちながら飛翔して、フォースレーダーで走査した敵の数は全部で二十名。残りは十七――いや。
「すまない、忘れる所だった」
抑え込んだ少女の首筋を光剣で斬りつける。鮮血が噴水の様に地面を赤く濡らして、骸が空よりぼとりと落ちた。
『十秒も無く、三人も……』
「ふむ、続けてもいいが」
見れば境内に備え付けられた鏡より、少女が続々と姿を現す。
「悪いが一人も逃さん……という程に強欲ではない」
だが、あいつはどうかな?
『何を……』
少女が上空のミハエラへ向けて切先を向けた時、風が吹いた。
随分と長く吹いていたように感じられたその風が止んだ時、辺りの風景は寂れた神社では無く、見覚えの無い砂漠。砂塵舞う荒涼とした大地に、赤錆びた古戦場の主達が、音も無く静かに佇んでいた。そこに現れたのは一人の少女――否、狂戦士。
「さぁて、私は何人の相手が可能かしらねぇ♪」
わくわく。恐るべき超常が健在の十七名の少女を地獄へと誘った。狼狽える少女達を眺めて、アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)はにんまりと笑みを浮かべる。朱色の髪を揺らしてステップを踏むその姿は、傍目には砂場で戯れる可憐な少女。
「ここは無数の朽ち果てた兵器達が捨てられた世界、彼らの最後のダンスをお付き合いしてねぇ♪」
しかしその実態は、攫われた少女がこの中で最も恐れるべき、最狂の天才。
『何を、お前も猟兵か』
だったらどうするぅ? 少女の激昂が砂漠に響いた直後、その叫びを掻き消すように大音響の飛行物体が続々と姿を現した。NATOコードFagot、鈍色の猛禽が機種に備えられた鉛玉をばら撒いて、少女達の足を穿つ。その姿は正しく、地獄から蘇った機械の亡者――アララギの超常が再び魂を与えた、恐るべき兵器達。
『何、なの……?』
「私に勝てたら教えてあげるわぁ♪」
さあ遊びましょう――アララギの背後からワタリガラスの名を冠された人型機動兵器が姿を現した。それに手を伸ばしたアララギが、レールガンと光学兵器を搭載したスラスターを強引に組み付けて宙を舞う殺戮人形が出来上がる。そして、飛翔。
「この子達はね、ステップを踏まなくても飛べるわぁ」
さあ踊って頂戴。鈍色の支援を受けて人形が牙を剥く。空より放たれるは絶対命中の光の雨。高圧と高熱の光槍は逃げ惑う少女達を追い詰め、一人、また一人と骸に姿を変えていく。
「ほら、そんな所を走ってばかりじゃあ」
駄目よ。突如大地を揺らして異なる轟音が迫り来る。ガラガラと装甲を揺らして迫る無限軌道の狂機はシルカ、ハリネズミの様な対空砲を地上へ向けて少女達を追い立てた。その名の如き鮮血の川をここに掘り起こさんとして。
『地上は駄目よ、空へ!』
空を蹴り必死の形相で逃げる少女。しかし対空砲の猛威は一人、二人と少女達を地に落とす。距離を取ろうと真っ直ぐ駆ければ超長距離からレールガンの洗礼を受けて、絶大な威力が全身を木っ端微塵に吹き飛ばす。
「ひい、ふう……あれぇ、足りないわぁ」
まあいいか。煙管を燻らせ空を見上げたアララギは、大地に眠る終末の牙を念動力で掘り起こす。
「それじゃあ皆、フィナーレよぉ♪」
その牙は不発弾――炸裂すれば辺り一帯を灼熱の地獄と化す油脂焼夷弾だったもの。それを持ち前の工学知識で再び眠りから呼び覚まして。赤軍の墓場にはあらゆる憎悪と悪意の痕が秘められているのだ。
「あと十人、ご苦労様ぁ♪」
尋常ならざる怪力で、少女達が隠れる残骸の真上に放り投げた。近接信管作動、カチリという無機質な音の後に続くのは、黙示録さながらの地獄の光景。
「やっぱり格別ねぇ、戦場のナパームは」
そこには最早、骸すら残っていなかった。
『この、いい加減しつこい!』
宙を蹴りながら剣戟を続ける少女とミハエラ。だが踏んできた場数が違う。少女が背中に回り込んだが最後、隠し腕の一閃がその胴体を真っ二つに断ち切った。
『……折角、還って来れたのに』
「お前が還るべき場所はここではない」
地に落ちた少女に介錯の一振りを――ミハエラが腕を振り上げた刹那、少女の頬を一筋の涙が伝う。
『そうね、攫われた皆はもう、還ったのかしら』
「――還れていればいいがな」
多分、攫われた先は地獄よりも酷いぞ。心の中で呟いて、湧き出た三十人目を始末した。鏡から大分離れてしまったが、こちらにもまだ仲間がいる筈だ。
レーダーを手繰って、痩躯のウォーマシンは再び逃亡者を追い掛けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
日ヶ丘・美奈
●アドリブ歓迎 数は少を希望
☆行動
……怖いけど……頑張らなくちゃ。
私が狙われないように【目立たない】ようにしながら、魔獣さんの背に乗って、コメットやスズメさんと一緒に戦うの。
【動物と話す】で魔獣さんやスズメさんに指示を飛ばして他の猟兵の皆とも一緒に逃がさないように戦うと、いいのかなって。
……その、こういうの初めてだしあんまり沢山と戦うのは……怖い、かな。
☆補足
美奈自身は戦わず、動物やテディベア等の付き従う者達が代わりに戦うという描写でお願いします
荒谷・つかさ
●
多
なるほどね。
それじゃ、存分に腕を振るってくるとしますか。
真っ正面から堂々と接近。
歩みは財宝の在処へ真っ直ぐに。
ついでに「財宝を壊しに来た」って言い放ちましょう。
そうすれば、奴等は全力で財宝を護る……つまり、一定範囲に集まりやすくなるでしょ?
敵中ど真ん中へ斬り込みつつ【荒谷流乱闘術奥義・明王乱舞】発動。
両手に持つ暁と黄昏を除く七振りの武器と
事前に大量に調達しておいた丸太で
半径47mの範囲を一網打尽にするわ。
この半径、当然ながら私を中心とした「球」の半径だから
空中を蹴った所で逃げられると思わない事ね。
にしても、丸太は数を用意しやすくて威力も優秀なのに、何故皆ネタ扱いするのかしら。
見た目のせい?
●不思議なモフモフと物理特攻
異国の少女剣士達は依然増え続けていた。それでも折角集まった最初の二十名はあっという間にあちらへお帰りになり、続いて呼ばれた少女達も、猟兵を警戒して神社の周辺に散っていた所だった。
「うう……あれかなぁ?」
日ヶ丘・美奈(リトルマスター・f15758)は、ちょっと怖い風貌の頼れる魔獣さんの背に乗って、歩哨の様にうろつく少女を林の中からひっそりと覗く。
「……怖いけど……頑張らなくちゃ」
私は戦う力なんて無い。けれど猟兵として目覚めたからには何かしなくちゃ――その心一つだけで戦場へやってきたものの、実際に白刃をちらつかせる相手を見ると、足がすくんでしまう。そんな彼女を心配そうに、意志を持ったテディベアのコメットが懐から覗き込む。更にはスズメさんも美奈の頭上をくるくると回って、周囲への警戒を怠らない。
「……うん、まだ大丈夫。ここまで来たんだもの、何とかしなくちゃ」
いつも助けてもらってばかり――けれどもそれは信頼の証。心より忠誠を誓った仲間達の愛の証左。その意志を汲み取った仲間達が少女達へ一斉に飛び掛かる。
「頑張って! コメット、スズメさん!」
美奈からぴょこんと離れると同時にぐんぐんと巨大化するコメットが、鏡の近くでたむろする少女達に飛び込んだ。豊かな毛並が風に揺られて、傍目には可愛らしい巨大な着ぐるみの様にも見えた。だが。
『あ、テディベア!』
『モフモフやん』
熊の本質はそういうものではない。巨大化したテディはテリブル、剛腕から放たれる強靭な爪の一撃は、少女達に回避されても境内の石畳をスナック菓子の様に吹き飛ばす。
『違う、あれじゃまるで赤カブ……』
名状し難い狂暴な咆哮が少女達を恐怖に包み、戦意を取り戻した一群は瞬間転移――瞬く間にコメットを包囲して陣形を立て直す。
「あ、危ない!」
しかし敵は熊だけではない。上空より飛来した勇敢なスズメのトップガンが、8の字の機動を取って少女達を迎撃する。これでは迂闊にコメットへ近寄れない。
『何、あれは……』
『スズメ? いや違うわ』
ヒラヒラとリボンの様に宙を舞ったかと思えば、急激なコブラ機動で眼前に爪を突き立てる。小剣の切先をくちばしで突き落とし、その隙をコメットがダンプカーの様なタックルで襲い来る。可愛らしい動物達の猛攻は優勢に事を進めていた。
「……魔獣さん!?」
不意に美奈の方へ、転移した少女が一人奇襲を掛けた。その一撃を魔獣が脚で払い落し、間一髪の所で急襲を避けたのだ。しかしこちらの位置がバレた。このままでは危ない――そう思った矢先、ズシンと大地が揺れた気がした。
『獣使いか、これ以上は好きにさせない』
「そうね」
更に声が――現れた少女の更に背後から、鬼が姿を現した。
「それじゃ、存分に腕を振るわせてもらうわ」
音も無く振られた二刀が、有無を言わさず少女を斬り飛ばす。声を出す間もなく骸の海へ――一瞬の出来事だった。
「大丈夫?」
「はい……」
荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)はスラリと暁と黄昏を納め、境内を見やり口元を歪ませる。そして不思議そうな顔をする美奈へ、ひそりと耳打ちした。
「私にいい考えがあるの。手伝ってくれる?」
『大分集まったわ』
『それじゃ今度こそ行きましょう』
「地獄へね」
その宣言と共に振るわれたのは大小様々な刀剣の乱舞。
『猟兵! またこんな所まで……』
「そうよ。財宝を壊しに来たんだから」
次々とつかさから投げ放たれるは流星、禍月、轟雷、瑞智、そして零式――少女達の動きを封じる様に地面に楔を打ち込んで。迎え撃たんと空を駆ける一歩も、風迅刀の一振りが戦場からの離脱を許さない。天下無敵の剛拳が少女を返り討ちにして、刃噛剣が小剣の一撃を往なして鬼瓦を喰らわせる。その姿は正に明王の威容。血風吹き荒ぶ死地と化した境内に、徐々に少女達が集められ、鏡も続々と骸の海から新たな彼女らを呼び起こす。
「そろそろね。皆、丸太の準備はいい?」
丸太。そう、最強の打突兵装たるそれを予め多数用意したつかさは、自身は四本、コメットと魔獣にそれぞれ二本ずつ貸し与え、三方より圧倒的なプレッシャーを中心に向けて放つ。その様子を木陰からこっそりと美奈が覗き込んで、心配そうに仲間達の雄姿を見守った。熊が丸太を抱える絵面に頭を抱えながら。
「それじゃフィナーレよ」
半径47mの範囲を一網打尽にする。つかさを中心とした球状の半径は絶対制空権、そう易々と空中へは逃がさない。トップガンもいる事だし――獣達の雄叫びと共に、鏡を中心にして鬼と獣の一斉突撃が敢行された。
『一体、何を……』
宙に逃げようとスズメの一蹴りがそれを許さず、背後から振るわれた丸太に突き飛ばされる。ただでさえ強靭なコメットの体当たりは丸太により更に増幅、とうとう鏡ごと引き潰してしまった。せめて一矢報いんと転移した少女も、魔獣の尋常ならざる動きが影すら掴まさず、振り回された丸太で地面へと叩き落した。
「何って、グラウンド整備よ」
そして四本の丸太を抱えたつかさは正面と左右側面にそれぞれを展開し戦場を飛び回る。空中から、地上から、圧倒的な跳躍力と脚力で縦横無尽に戦場を跳ねる丸太持ちは、動き回るだけで暴風を巻き起こし、大地を揺らして少女達の大半を戦闘不能にしてしまった。丸太は数を用意しやすくて威力もこんなに優秀なのに、何故皆ネタ扱いするのだろう。戦いは見た目じゃないというのに。
「大体二十は片付けたかしら」
鏡はコメットが破壊した。外周へ逃げようともスズメと魔獣がそれを許さない。
「あの……終わりましたか?」
恐る恐る身を乗り出した美奈。目の前には九人の少女達がそれぞれの背を守る様に円陣を組み、恐怖と絶望に彩られた眼でつかさ達を睨みつける。
「ええ。でも夏はまだ終わらないわ」
はて? と首を傾げる美奈。気が付けばコメットもつかさも丸太を境内の外周を囲う様に打ち付けて……まるで少女達を中心に円形の檻の様な形状と化した。
「これでもう、逃げられない」
この死合いが終わるまでは。つかさが空を見る。照り付ける陽光が一仕事終えた彼女達を祝福する様に、燦然と煌めいていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
少
おやおや~?
あれは前に俺がコールド負けにしてやったコルテスガールズ!
今回は助っ人選手も呼んだから更に鬼に金棒!兎に釘バット!
ニコ!プランB始動だ!
【こんとんのやきゅみっちファイターズ】プレイボール!
今回打ち込むのはバリエーション豊かな
うさみっちゆたんぽシリーズ!打った先で
さむらいっちがでチャンバラ仕掛けたり
まほみっちが魔法の属性攻撃ぶっぱしたり
ばにみっちが零距離でキャノンぶっぱしたり
とまぁ念動力でやりたい放題
そしてここで、代打~ニコくん~
俺の攻撃で満身創痍な敵陣を
範囲攻撃で一網打尽にしてもらう!
それでも取りこぼしあれば俺が更に追い打ちかけて
確実にトドメ刺していく!
ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)】と
少
うさみよ、プランBで行くのだな
ならば相手の数は欲張らず、大人数では無くとも確実に撃破して行こう
最も守備が手薄になった頃合いを狙う――野球で勝負だ
俺はうさみのファイターズに助っ人外国人枠で参戦となる
愛用の杖をバット代わりに何時でも代打で出れるよう身体を作っておく
タイミングを見計らい代打で颯爽登場
杖を構えて繰り出すは「属性攻撃」を乗せた【精霊狂想曲】
フルスイングで生み出すは「氷の雨」…突然の氷柱が天から降り注ぎ
場に居る少女剣士達を守備位置問わず「範囲攻撃」で巻き込もう
斬撃で無効化されても構うまい、本命はうさみのラフプレーなのだから
正々堂々と試合開始したと思ったのだが…
●バトルドーム(屋外)
「おやおや~? あれは前に俺がコールド負けにしてやったコルテスガールズ!」
『コルテ、え……何?』
説明しよう。オブリビオンは骸の海に還ると記憶がリセットされる、らしいのだ。 ぶーんと現れた榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の強敵を懐かしむメモリーもどうやらよく分からなかったらしい。
「また揃いも揃って同じ格好しやがって!」
『え、そこ……』
戸惑う少女達、割れた鏡を守る様に円陣の幅が狭まる。
「円陣なんか組んじゃって、とぼけるなよ。分かってんだよ~?」
『だから、何が……』
じりじりと近寄るうさみっちの圧に戸惑う少女達、何だか知らんが嫌な予感しかしない。記憶は無くても身体は正直だ。
「やりたいんだろ……野球!」
その時、割れた鏡が輝いて――辺り一面を光が包み込んだ。
『おはようございます。本日の山陽地方は快晴、絶好の野球日和ですね!』
『……そうですね。鏡割れましたし。もう援軍は来ないし』
いつの間にか召喚された七三分けのやきゅみっちと、鏡の中から最後に出てきた少女が切なそうに、丸太に囲まれた神社の境内の端の方で長机を前に座っている。
『それでは実況席からは司会のやきゅみっち78号と、解説のコルテスガールズ18号さんでお送りします!』
『いや、私“異国の少女剣士”って名前が……』
『いんだよ細けぇ事は!』
プンプンと顔を膨れさせる78号が18号に釘をさし、改めて会場に目を向ける。既に少女達は散ってそれぞれの守備の位置へ。マウンドではやきゅみっち13号がゆたんぽを頭上へ放りながら、超エキサイティンな試合開始の時を待つ。
「それでは武蔵坂やきゅみっちファイターズ対山陽道コルテスガールズ二回戦、うらぶれた神宮の球場で試合開始です!」
サイレン代わりの戦闘機の爆音が何処から響き、打席にぶーんと妖精が舞う。
『コルテスって、あの髭、今朝またやられたらしいわよ』
『じゃなくて、野球って何をどうするのよ!』
少なくともピッチャーとバッターが守備をゆたんぽで攻撃する競技ではない。だがこれは猟兵野球――ルール無用の残虐ファイトも厭わない地獄甲子園が、山陽の地で再び幕を上げた!
「それじゃ、本当の野球を教えてやるぜベイビー」
グラサンを掛けたうさみっちが監督席で足を組みながらサインを出す。試合中に私語は厳禁、喝を入れんと腕をブンブン振るって。
『さあ打席に立ったのはやきゅみっち55号、今回もメジャー級の猛打を量産出来るか!?』
『はい、第一球投げましたね、ゆたんぽ』
もうヤケクソな18号が淡々と状況を説明する。ぶうんと曲線を描いて投げられた熱々のゆたんぽ――しかし今回は熱湯が目的ではない。
『55号打ったいい当たりだ! 大きくアーチを描いて――丸太を越えたァァァァァァ!!!!!!』
『yeeeeeaaaaah!!!!!!』
丸太を飛び越えたホームランゆたんぽ、しかしその実態はうさみっち監督の秘中の秘策、指をクイッとすればたちまち、魔導士めいたそのゆたんぽ――まほみっちゆたんぽは荒れ狂う稲光を乾いた大地に解き放つ!
『や、ちょっと、痺れ!』
稲妻の直撃を受けた少女達が次々と悶絶し倒れ込む。カウント1、2、3――。
『ダァァァァ!!!!!! 死亡確認!』
『勝手に殺さないで下さい。三名退場ですね……おや、ファイターズのベンチが』
倒れた少女から目を放し改めてうさみっち監督を見る18号。何やら試合が終わってもいないのにリポーターやきゅみっちのインタビューに答えている。
「ガッハッハ、今回は助っ人選手も呼んだから更に鬼に金棒! 兎に釘バット!」
バッドな笑みを浮かべるうさみっちの傍らにはその選手、ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)の姿が。身長178cm28歳、選手としては正に全盛期と言えるだろう。うさみっちが指を鳴らせば褐色の清廉な男が颯爽と打席に入った。
身体は充分温めた。ニコが手にした、星型の花が絡み付く綺麗な魔法の杖を事もあろうか大きく振りかぶり、主審のやきゅみっち5号が手を上げる。試合再開!
ピッチャー第二球、振りかぶって投げた! これはいい球だ、とても打ちやすいふわりとしたスローボール!
「フ……歯を食い縛り覚悟せよ、此の一撃はかなり痛いぞ」
カキィィィィン! と快音を響かせてファースト真正面にゆたんぽが飛ぶ!
『ニコ選手のキレッキレのスイングが真芯にゆたんぽを捉えたッ! いい当たりだ流石助っ人外国人!』
『そんな事言ったら私達、異国の……』
『違うそうじゃない。助っ人外・国・人選手!』
ぎゃあぎゃあと騒がしい解説席はさておき、ファーストを強襲した正確無慈悲な一打はさむらいっちゆたんぽ。ニコの猛打で倒れた少女に追い打ちをかける様にガツン、ガツンと模擬刀で刺す。
「さあ、続けようか」
杖を大きく振りかぶり次に狙うはレフト、アーチを描かなくとも音より早いゆたんぽの一打は更に少女を強襲し、解き放たれたばにみっちゆたんぽがえげつない零距離砲撃を喰らわせる。
『流石です助っ人外国人のニコ選手、おおっと、ここでうさみっち監督から新たな指示が――』
うさみっちが拳をパンパン平手に打ち付け指示を出した。手がちょっと痛い。
「ニコ! プランB始動だ!」
「そのサインは――うさみよ、プランBで行くのだな」
そのプランは最終局面、敵を一網打尽にする禁断のデュエル。高々と杖を掲げたそれは正しくニコのホームラン予告。
「しかし、正々堂々と試合開始したと思ったのだが……」
迷ってはならぬ、ここは戦場。この援軍を食い止めなければ、魔空安土城の戦いは一層困難なものとなる。
「本命はうさみのラフプレーなのだから、問題ない」
そう、問題など無い。勝てばよかろうなのだ。投げられたゆたんぽを真芯に捉え強打を振るう。このまま進めば悠々と丸太越えを果たすだろう。だが真の目的はそうじゃない。
「荒れ狂え精霊よ、汝らは今こそ解き放たれん!」
それは精霊の属性攻撃――爆ぜたゆたんぽから放たれるは熱湯じゃなくて絶対零度の氷の雨! 天空より降り注ぐ数多の氷柱が少女を頭上から襲う!
『ちょ、何なんですか一体!』
「これが野球だ!」
やきゅみっちから借りた釘バットでガツンと一撃。監督がベンチから飛び出すとはつまり乱闘、うさみっちの無慈悲な行為を審判やきゅみっちでは止められない!
『ていうかそもそも、審判が不正じゃない!』
『黙れ審判は絶対だ!』
おおっと、実況席でも乱闘が始まった! 時は正に世紀末! 再び極寒の地と化した山陽地方は真っ赤に染まり、どうやら放送終了の時間の模様です。
今回も一回コールド、ファイターズの圧倒的勝利と言えるでしょう。
鏡は砕かれ援軍が来ない魔空安土城は絶賛大炎上中です。
非正規戦闘に始まり赤軍の蹂躙、動物が鬼と一緒に丸太を持って暴れまわり、最後は野球。素晴らしい、誠に素晴らしい戦いでした。
それでは皆さんごきげんよう。さよなら、さよなら、さよなら……。
大成功
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