エンパイアウォー㉚~血塗れ財宝撃破ミッション開始!
●先制攻撃!
「皆さーん! 新しい情報がわかりました!」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)が全速力でグリモアベースに飛び込んできた。
「まずは、山陽道のコルテスの儀式を止めて頂き、ありがとうございました! 今回の作戦は、早期にこの儀式を止めたことで判明した新たな情報によるものです!」
ロザリアは早口で集まった猟兵達に説明を始めた。
「魔軍将の侵略渡来人コルテスですが、骸の海から渡来人を呼び寄せる、幾つかの財宝を所持していた事がわかりました! これは、一定時間ごとに新たな渡来人を召喚し続けるもので、おそらくコルテスが侵略した文明から略奪したものと思われます! この財宝がある限り、新たな渡来人を呼び出し続け、織田信長の軍勢の戦力を増やすことに繋がってしまうんです!」
この現時点ですでに渡来人を呼び出し続けており、信長軍は着々と力をつけていっている。
だが、猟兵達はその財宝の存在を突き止めることができた。これはすなわち、財宝を撃破して、最終決戦に先駆けて信長軍に打撃を与えられる、ということになる。
しかし、簡単に撃破できるわけではない。
「ただ、その財宝なんですが、どうやら召喚されたオブリビオンが常に守っているらしく、簡単には手が出せません。数は10~20体のようで、20体まで溜まると、半数が移動し10体に戻り、また召喚されて増えていく、という感じみたいです」
財宝の撃破の前に、まずは財宝を守るオブリビオンを撃破しなければならない。何体の時にオブリビオンへ襲撃を仕掛けるか、考える必要がある。
「今回、私が皆さんを転送するのは、山陽道近くの森の中にある古びた神社です。長く手入れがされていなかったみたいで、雑草とかが生え放題ですね。そういう場所のほうが、隠すのに都合がよかったのかもしれません。そこでは『異国の少女剣士』が召喚されています。ジャンプ能力や瞬間移動など、地形の影響を受けにくい立ち回りをするようなので、注意が必要ですね」
普通に立ち回る分だと、若干ではあるが敵に利がありそうだ。
「現在まだ残されている脅威を直接叩くものではないですが、この戦いも、必ず戦争の勝利へと繋がっていきます! 皆さんの力を貸してください! よろしくお願いします!」
ロザリアは必死に声をかけて、猟兵達の参加を募っていた。
沙雪海都
●このシナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
沙雪海都(さゆきかいと)です。
YBD(予想はしていたけどボーナスシナリオが出たので)です。
●概要
経緯はOPに書いておきました。
読んで頂ければ大体わかるかと思います。
本シナリオは成功シナリオが2本ごとに、魔空安土城の一部の戦場の制圧に必要な成功数が1減少します。
●戦闘について
『異国の少女剣士』との集団戦です。
場所は古びた神社。戦闘場所は境内になります。
広い場所ですが至る所壊れたり崩れたり、あと雑草とかも伸びに伸びてて基本的に足場がヤバい。
転ぶ可能性とか割とあります。戦闘の際の移動方法とかをちょっと考えてみて下さい。
ちなみに財宝が安置されているのは本殿内部ですが、オブリビオンが守っているので倒しきらないと侵入できません。
●戦う敵の数について
本シナリオにプレイングを提出頂く際、「何体の時にオブリビオンへ戦いを仕掛けるか」をお書きください(10~20)。
最初に採用したプレイングに書かれていた数が、このシナリオで戦って頂く敵の数になります。
敵の数を減らせば、戦闘は有利になります。
敵の数を多くすれば、その分だけ、多少なりと敵の戦力を削る事になるので、挑戦しても良いかもしれません。
最初のプレイングの採用基準ですが、基本「何体の時にオブリビオンへ戦いを仕掛けるか」が書いてあるプレイングを先着で選ぼうと思います。
プレイングを提出した人が上記を記載しているかはわからないので、誰かがプレイングを提出していたとしても、最初のリプレイが完成するまでは数を書いて頂けるとたすかります。
数の違いによるプレイングの齟齬についてはある程度考慮しておきます。
(例えば、10体を選んだ人のプレイングが、敵が20体の時に「数の違いだけで不利になる」ことはないようにします)
●財宝について
バカでかい紫水晶みたいな物体です。
適当に攻撃すれば壊れます。撃破プレイングがなくても成功数クリアしたら何かしら描写を追加しておくので、プレイング自体は集団戦対応のみで問題ありません。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『異国の少女剣士』
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POW : 跳躍飛翔
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
SPD : 縮地法
【瞬間移動】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【至近距離からの斬撃】で攻撃する。
WIZ : 憑呪宿奪
対象のユーベルコードに対し【その属性や特性を奪い取る斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:ちーと
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鍋島・小百合子
※敵が15体の時に仕掛ける
SPD重視
渡来人の財宝か…
それが敵の出所であるならば潰す手はあるぞ
「神社に土足で踏み入るとは罰当たりではあるのう」
UC「群制御動陣」発動
召喚した49人の苦無装備のメイドを召喚し戦闘知識活用にて指揮
49人に神社周辺にて潜伏、号令があるまで待機を指示
視力にて遠方から神社内を覗き敵の配置を可能な限り確認
戸を壊して境内に乗りこむと同時に長弓にて敵集団を矢を数本番えて射抜き誘き出しを試みる(視力、スナイパー、範囲攻撃、目潰し併用)
誘き出せたら周辺に配置した伏兵に奇襲をかけさせる
奇襲以降伏兵と共に敵の殲滅を担う
こちらへ急速接近してきた敵は小太刀による咄嗟の一撃か武器受けで防御
●メイド部隊が渡来人を討つ
「渡来人の財宝か……それが敵の出所であるならば潰す手はあるぞ」
鍋島・小百合子(朱威の風舞・f04799)は鳥居をくぐり本殿を目指す。石段は苔生し、丈の長い野草が存在を主張するように参道に覆いかぶさってくる。手で払いのけると、大きく振り子のように揺れていた。
鳥居の横に神社の名を刻んだと思われる石碑があったが、崩れて読めなくなっていた。補修もされないほどに人の手を離れ、忘れ去られた神社――それが、コルテスに目をつけられた所以なのだろう。
境内を進み、本殿が近づく。小百合子は一度、本殿が確認できる茂みの中に身を隠した。
本殿はどっしりとした構えだったことが見て取れた。今は風化し、屋根や壁が半分近く崩れている。
オブリビオン、異国の少女剣士が本殿の前を徘徊していた。数は十体。
穴の開いた壁から淡い紫の光が漏れた。すると、本殿の中から少女剣士が一体現れる。
これが、コルテスが他の文明から略奪した『血塗れの財宝』の力だ。オブリビオンを際限なく呼び出し、無尽蔵の戦力を作り上げる。
「厄介な代物を持ち出してきたものじゃが……それにしても、本殿に土足で踏み入るとは、罰当たりじゃのう」
本殿は一般的には神が宿る器物を安置する場所。神様の住居、と考えられている。そこへ土足で踏み入るなどまず考えられないが、相手は渡来人。神道の知識を期待しても致し方ない。
「さて……」
小百合子は少女剣士達の様子を伺う。本殿周辺を警戒するそぶりは見て取れるが、小百合子の存在には気づいていないようだ。
『我は呼ぶ武を誇らんと勇む戦女達……』
【群制御動陣(イクサニノゾミシウツクシキハナバナノグンダン)】を発動し、周囲に四十九人のメイドを召喚した。皆、苦無を手に小百合子と同じく茂みに潜む。
「……よし、お前達、本殿周辺に広がりわらわが号令するまで待機するのじゃ」
指示を出すと、メイド達は即座に散らばっていく。
こうしている間にも少女剣士は増えていく。今は数えれば十三体。
(もう少しじゃな……)
攻撃を仕掛けるタイミングは決めている。無理なく、しかし信長軍の戦力へある程度の打撃が見込める十五体。そこを仕留める。
十四体。敵の配置を確認する。全てを相手にするのは小百合子と言えど難しい。分かれた小集団への強襲がベストだ。
本殿が光る。そして現れた少女剣士。十五体。時は来た。
すでに呼び出されていた少女剣士達が新しく召喚された少女剣士を迎えるように本殿正面へ集まった――が、一部が引き続き警戒に当たっていた。
その数、三体。
『鹿島弓』を取り、三本の矢を同時に番える。引き絞りながら狙いを定め、一斉に放った。矢は音もなく飛行し少女剣士達の顔へ――。
「うああぁっ!!」
「て――敵襲っ!!」
目を射抜き、大ダメージを与えた。クリティカルヒットした一体はそのまま倒れ動かなくなる。
矢を抜き、穿たれた目から血を流した少女剣士が、小百合子が潜む茂みの近くに鬼の形相で駆け寄ってくる。片目が使えなくなり、普段は前髪に隠しているもう片方の目を血走らせ、敵を探す。
「総員、かかれ!!」
号令をかけ、小百合子も茂みから飛び出していった。同時に四十九人のメイドが一斉に現れ、目を負傷した少女剣士に殺到した。
伏兵の登場は予想外。二体の少女剣士の表情に驚きの色が見られたが、怯まず短剣を手に向かっていった。
しかし、片目では距離感がうまく掴めず、瞬間移動で迫っても短剣は空を切った。振り抜いた隙を突き、メイド達は苦無を少女剣士の体へ連続で突き立てた。
「ああっ……ぐぅぅ」
「囲め! 囲んで一気に仕留めるのじゃ!」
小百合子の指揮に従いメイド達は二体の少女剣士を包囲した。背後に回ったメイドが即座に苦無を投擲。突き刺さって気が逸れたところへ他のメイド達も殺到して袋叩き状態になった。
一体が倒れ、残り一体。
「あなたが操っているのですね……!」
メイドの奥で指揮を執る小百合子に気づき、少女剣士は視界に捉えた。瞬間移動はメイドの包囲を越えてくる。半分ほど血に覆われた顔が真正面に現れ、殴りつけるような軌道で短剣の切っ先を小百合子の顔目掛けて突き出した。
銀閃が視界を占める。少女剣士は報復とばかりに小百合子の目を抉ろうとしている――!
「させぬわっ!」
『白石局』を抜き、振り上げて突き出される短剣を阻もうとした。二つの軌道が重なる。その交差点に、小百合子の小太刀が一瞬早く到達した。短剣の先を弾き、逸れて少女剣士の狙いは外された。
前のめりになった少女剣士の体を腕で押しのけたところへ、後ろからメイドが苦無を思い切り突き立てた。刃が半分以上少女剣士の体に埋まる。
「うぐああぁぁ……」
「一気に仕留めよ!!」
メイド達は正面から迫り少女剣士を押し倒すと、苦無をその体へ一斉に突き立て絶命させた。
「奇襲完遂じゃ! これより掃討に入る! 続け!」
残りの少女剣士は十二体。一体でも多くの敵を倒すべく、小百合子はメイド軍を進めていった。
成功
🔵🔵🔴
緋月・透乃
オブリビオンを自動で召喚する財宝ねぇ。どうせ自動召喚するなら食べ物がよかったねー。
まずは重透勢を使い、破壊すべき財宝へ向かって進んでいくよ。
足場が悪いならいっそのこと敏捷性を捨てて無駄に動き回らないようにしてしまえということだね。
敵へはできるだけこちらからは攻撃はせずに、強化された防御力で敵の攻撃をくらいながらこちらの攻撃を叩き込む、ごり押し反撃作戦でいくよ!
敵は回避は得意そうだけれど攻撃力は低そうだし接近しないと攻撃できなさそうだから、こっちから攻めるよりいいんじゃないかな。
敵が慎重になったら、
「こないなら財宝ぶっこわそー」等と言いながらどんどん進んで攻撃を誘うよ。
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
「信長のところには向かわせないぞ!ここでみんなやっつけてやる!」
神社を囲む森の木の上から飛び出して少女剣士たちに奇襲をかけるよ!
背中の翅を羽ばたいて「空中浮遊」、「空中戦」で空中から襲い掛かるね♪
風を纏わせたレイピアによる「属性攻撃」のヒット&アウェイで攻撃してまわるぞ!
それで、ぴちぴちと攻撃しながら敵が一直線になるように誘導するね♪
一直線になったら【お姫様ビーム】でまとめてどかーんとやっつけちゃうぞ☆
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●力と気合の一撃必殺
「信長のところには向かわせないぞ! ここでみんなやっつけてやる!」
がさがさっ、と木の葉が揺れ、森から飛び出してきたのはティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)だった。
「今度は上からですか!?」
「下からもだよー」
ワンテンポ遅れて、最後の数段をすっ飛ばして現場へ到着した緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)。着地と同時に豊満な胸がぶるんと暴れた。
「……オブリビオンを自動で召喚する財宝ねぇ。どうせ自動召喚するなら食べ物がよかったねー」
「だったら、ボクは蜂蜜がいいなー! いくらでも食べられるもんね☆」
「蜂蜜、甘くておいしいよね。でも、財宝は結局オブリビオンしか出さないし……破壊するしかないねー」
「敵もいっぱい倒して、信長をぎゃふんと言わせちゃおう! いっくぞー!!」
ティエルは羽根をパタパタパタパタ高速で羽ばたかせて全速力で空中飛行。ただでさえ小さいその姿が目まぐるしく上空を移動するのを、少女剣士達は捉えきれずにいた。
「は、速いです……!」
「落ち着きましょう! 攻撃を仕掛けてくる一瞬を狙えばいいんです!」
「そんな悠長なこと言ってていいのかなー? こないなら財宝ぶっこわそー」
ティエルへの応対に気を取られ動きが止まった少女剣士達の元へ、ぴょこんとアホ毛を立てた透乃がじりじりと重戦車の如き威圧感を放って歩み寄っていた。崩れた参道の石畳をがら、がらと踏み越え迫る。
足元が不安定なら、無駄に動き回らないようにしてしまえばいい。【重透勢(ジュウトウセイ)】を発動し透乃は敏捷性を捨てた。頭のアホ毛はその証だ。
もちろん、ただ敏捷性を捨てたわけではない。それと引き換えに透乃が手にしたのは攻撃力、そして防御力。
「向こうは私達でいきます!」
少女剣士が三体、その場を離れジャンプで空中に出た。それぞれ高さを変えながら落下し、三連の唐竹割りだ。透乃の頭上へ短剣を真っ直ぐ落としにきたが、そこへ透乃は両腕を重ねて防御の姿勢を取った。
敵の攻撃は、受けて耐える。ざ、ざ、ざん、と三つの裂傷が縦に刻まれたが、その奥で透乃は笑みを浮かべていた。
「ちょっと痛いけど……大丈夫! 今度はこっちから――反撃だよ!」
取り出したるは『重戦斧【緋月】』。重量感のある大斧を片手で軽々と振り少女剣士達を一閃。旋風を巻き起こした斬撃が三体纏めて薙ぎ払い、紙切れのように吹き飛ばした。うち最初に直撃した一体は透乃の全力をまともに食らい、地面に打ち付けられうつ伏せのまま動かなくなった。
「な、なんという力……化け物ですか!?」
「うーん、オブリビオンには言われたくないよねぇ」
体を斬り裂かれ血を流す少女剣士へと、大斧をくるくると傘のように回して透乃は近づいていく。こちらも腕には赤い血の筋が走っているが、表情は明るく余裕が見える。
片や、ティエルは飛び回りながら、時に急降下を見せて『風鳴りのレイピア』で果敢に少女剣士達へ向かっていく。少女剣士が持つ短剣もティエルにとっては大地を斬り裂く神剣のように強大な相手だが、巧みに少女剣士の剣閃をすり抜けぴちぴちと攻撃を当てていく。
「そっちへ行きましたよ!」
「へへーん、当たらないよー☆」
戦いにおける空中戦術はお手の物。ティエルは少女剣士達が振り回す短剣をかわしてかわしてかわしまくった。
そして、ただちくちくと相手を突いているわけではない。飛行経路を計算し、少女剣士達に追いかけさせ、誘導していた。
そしてついに、少女剣士達が四体、ぴたりと並ぶ。
「うーー、どっかーん! テンション最高潮! 今ならビームだって出せそうだよ☆」
ティエルの気合もついにMAX。レイピアの先端を下へ。並んだ少女剣士達の先頭へ向けて、
「お姫様(プリンセス)ビーム!!!」
光が弾けた。景色を丸ごと染めてしまうほどの強烈なお姫様気合パワー全開ビームが射出され、少女剣士達を貫かんと地上へ落ちる。
「私が受けます! 奥義、【憑呪宿奪】!」
ビームの先端へ、一体の少女剣士が居合い抜きの要領で短剣を体の奥から斜に振り上げ、斬撃をぶつけた。相手の攻撃の属性や特性を奪い取る異国剣技だ。
しかし、少女剣士の斬撃もティエルのビームを一太刀でねじ伏せることはできず、互いに押し合うように拮抗し動かない。
「負けないぞー!! 超お姫様(プリンセス)ビームだー!!!」
ティエルはさらに気合を高めた。謎のビームが一回り太くなり、徐々に少女剣士の短剣を押し込んでいく。
「ま、負けませんよ……っ!」
少女剣士も意地を見せる。足を強く踏み込み、血管が浮き出るほどに柄を強く握り込み、前へ。
――バキン!!
短剣が急激に軽くなった。
短剣のほうが耐えられなかった。少女剣士の意地も空しく、根元から折れた刃が旋回して空を舞っていた。
「あっ――」
四体の少女剣士を光の柱が貫いた。背丈が同じ四体の胸を纏めて串刺しにしたビームは神社を囲む森の中まで伸びていく。
「うぐ……そん、な……」
胸にぽっかり空洞ができた四体の少女剣士が、バタバタとドミノ倒しになって倒れていった。
「派手にやったねー。じゃあ、私もちょっと派手にいこうかなー」
手負いの二体の少女剣士が再び飛び込んでくるのを、透乃は大斧を振り上げて弾き返した。放物線を描き落下した少女剣士達の元へ、新たに一体加勢する。
「ここで倒れてはいけませんよ!」
「わ、わかってます……」
短剣を杖代わりに、足をふら付かせながらもまだ立ち上がるだけの余力を見せる少女剣士。三体揃うと、今度は重心を前に倒して前方への低空ジャンプから短剣を低く構え、
「三位一閃! 決めます!」
無傷の少女剣士を中央に、残る二体を両側に配置しての一斉攻撃。三つの斬撃が一点に収束する――渾身の一撃を、透乃は迎え撃つ。
『力の限りぶっ壊せー! 必殺の左! 緋迅滅墜衝!!』
左手に持った大斧を、三体の斬撃に合わせて踏み込み、大きく薙いだ。三本の短剣に一振りの大斧が叩きつけられ、鈍い金属音が走った。
力が数を押し切った。透乃の大斧が短剣を砕き、三体の少女剣士を一撃で両断した。振り抜いた大斧が地面に着弾し荒地をさらに破壊していく。
瞳の焦点が合わぬまま、断ち斬られた少女剣士達は顔から地に落ち、さらさらと体を失っていった。
「結構減ったねー」
「くっ……残るは私達だけですか……」
劣勢を悟り、身を寄せる四体の少女剣士。抗うことは、果たしてできるのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鈴木・志乃
※人格名『昨夜』で戦闘
……もうため息しか出ません
早く殲滅しなければ
ああ、ろくでもない戦争なんで早く終わればいい
空に逃げますか……オラトリオの翼で追いかけましょう
それでもまだ逃げるならUC発動
念動力でトランプを操り、第六感で動きと攻撃を見切りながら
その細腕、切断して差し上げましょう
敵攻撃は光の鎖で早業武器からのカウンターなぎ払い
……まだ逃げますか?
全力魔法の衝撃波で空間ごと震撼させるのも手でしょうか
あまり、荒々しいやり方は好みではないのですが
戦争なんて無ければ良い
これ以上誰かが傷つく所も、傷つける所も見たくない
オブリビオンとは言え、元は命ある生き物なのですから
……虚しい
●終わりの見えない終わり
少女剣士の守りを固める様子に、はあ、と憂鬱な吐息が聞こえた。
鈴木・志乃(ブラック・f12101)は据わった目で冷たい視線を向けている。
今の彼女は『昨夜』と呼ばれる。
コルテスの策略を阻止したかと思えば、今度は財宝から湧く雑魚狩りだ。山陽各地を巡り、倒して壊してまた倒して。その繰り返し。
魔軍将には隠し将なる者も出てきた。倒せど倒せど湧いてきて、この世界を破滅の道に追いやっていく。
猟兵達と織田軍のイタチごっこは二十日を数え、まだ終わらない。そうこうしている内に信長が本腰を入れ、憑装だの何だのと。
いつまでやっても結末など変わらないのに。何が面白くてこうも戦い続けるのか。
(……もう、うんざりです)
目の前の少女剣士達は、猟兵がいなくなればまた数を増やし、信長の軍勢に加勢するだろう。そうなれば新たな戦いが起こり、戦争が長引く。
ほんの少しの延命だと言うのに、何がそんなに大切なのか。負け戦とわかっていようが命を散らすのがそんなに誇らしいのか。
それとも彼女達は、この期に及んでなお、勝利を信じているのだろうか。
くだらない。実にくだらないが、そんなことをわざわざ口に出すのもくだらない、と昨夜は頭の隅に言葉を捨てた。
(……早く殲滅しなければ)
昨夜は『魔法のトランプ』を取る。それを交戦の合図ととったか、少女剣士の二体が跳んで上空を目指す。
「……空に逃げますか」
「逃げるなど……万に一つもありません!」
一体の少女剣士が、とん、とんと数度跳んで高さを確保し、さらに下向きへ跳ぶことで加速をつけて短剣を突き出す。地上でかわすこともできたが、昨夜はオラトリオの翼を広げ飛翔した。向かってきていた少女剣士の攻撃を交錯の直前に見切ってすれ違い、今度は昨夜が上を取った。
「……っ! まだです!」
少女剣士は再び空中を蹴り出し浮上するが、翼で自在に動ける昨夜には機動力で劣る。直線的に向かってくる少女剣士へ、指に挟んだトランプをナイフのように鋭く放った。
「その細腕、切断して差し上げましょう」
念動力で操られたトランプが回転しながら緩く弧を描き、少女剣士の肩を狙う。鋭角で入ってきたトランプに、少女剣士は空中で体を捩じりながら剣を回して薙ぎ払った。
剣に打たれたトランプは切断されるでもなく、金属片のように甲高い音を鳴らして宙へ逃れた。それを昨夜は再び念動力で操り、大きく転回させて少女剣士へ向かわせる。
「魔導具のようなものですか……厄介な」
剣で破壊できないとなれば、対応も変えざるを得ない。トランプの軌道から外れるように跳んで昨夜への特攻を試みたが、そこへトランプの吹雪が襲い掛かった。
「時間はかけたくありませんので……大盤振る舞いですよ」
何十というトランプが飛来し、四方八方から少女剣士を刻みにかかる。呑まれまいと短剣を乱舞させ弾いていたが、吹雪の猛威に耐え凌ぐことはできなかった。一度捕まれば、もう逃げられない。
ざくり、と。およそ紙片とは思えぬ切れ味で両肩にトランプが突き刺さった。剣を持つ力を奪われ、柄が手から滑って落下する。昨夜は刺さったトランプにさらに念動力を込めて、少女剣士までも地上へと突き落とした。
「やめ……やめて――」
懇願も空しく。全身を満遍なく強か打ち付けられた上に、トランプが抉り込まれ、ぶつっと両腕が切り落とされた。さらに降り注ぐトランプ三枚ずつが両足をもぎ取り、最後に少女剣士はありったけのトランプが殺到するのを見て。
覆いかぶさるように首筋にトランプが集まり、目に光を失った頭がぐらりと揺れ、転がった。
「なんてことを!!」
もう一体、仇と言わんばかりに激高した少女剣士が剣を真横に構えて跳びかかってきた。
トランプは使ってしまった。昨夜は次に『光の鎖』を取り、突進してくる少女剣士へ投げ打った。
鎖が真っ直ぐ伸びてくる。少女剣士は真正面から迎え撃ち、力任せに薙ぎ払って鎖を弾いた。弛んだ鎖が宙を泳ぐ。
少女剣士が昨夜を間合いに捉えた。振り切った短剣を持ち直し、今度は逆方向へ一閃。跳んだ勢いも乗せていたが、昨夜は太刀筋を見切って前方へ飛び越え、少女剣士の裏に回った。
がら空きの背中へ、鎖を引き寄せカウンターの一撃を叩きつける。しなる鎖が遠心力で速度を増して少女剣士の体を激しく打った。
「がはっ……」
肺が押し潰され唾液交じりの空気を吐き出す。空中で傾いた体に、昨夜は掌をゆっくりと向けた。
「あまり、荒々しいやり方は好みではないのですが……」
魔力を放出し、空間を切り取り制圧した。固められたゼリーの中に埋まったかのように、程なく落下するところだった少女剣士が空中で留められていた。
こうでもしなければ、戦いは終わらない。今も信長が築いた魔空の城で、刃を交え、傷つき、傷つけて。
人も傷つき、オブリビオンも傷つく。オブリビオンは骸の海から生み出された過去だ。すなわち、その大元には、世界に生み落とされた何らかの命がある。
純粋な世界の悪ではない。世界を構成する命の裏にオブリビオンがいる。そんな相手に、自分は刃を突きつけなければならないのか。
しかし、突きつけなければならないのが、今なのだ。昨夜は目を閉じ魔力の流れを制御する。触れる空間の中へ、一点に凝縮した魔力を衝撃波へと変換して叩き込んだ。ズドン、と天から鉄槌が振り下ろされたかのような衝撃が一帯を震撼させ、閉じ込めた少女剣士の空中で潰されていく。
「あ……ぁ……」
ブチブチと肉が潰され、内部で骨が砕けていく。最後に地面に突き刺さったトランプの山へ落として、二体目の少女剣士の命も終わる。
平和を勝ち取るために、強大な敵を倒していく。なんと崇高な目的だ。そのために命の過去を斬る。斬っても斬っても消えない過去を、斬って斬って斬り続ける。
繰り返せば、なんだか心が喪われる気がして。
気怠くなって、昨夜はのろのろと地上に降りた。
成功
🔵🔵🔴
フィロメーラ・アステール
「この財宝、何かに使えないかな?」
もし骸の海が溢れてきたものオブリビオンなら、
ガス抜きの用途に使えたりとか……しないか。
まあ危険の方が大きいし、今は壊すしかないか!
あたしもみんなに力を貸すぜー!
足場が悪いので【空中浮遊】して【空中戦】するぞ!
ジャンプが軸になる敵は、速度調整や小回りが苦手だと思う!
細やかな【ダンス】ステップに【スライディング】のすり抜け!
さらに【ダッシュ】と【忍び足】を使い分ける緩急の動き!
これらの組み合わせで翻弄するぜ!
そして【オーラ防御】の輝きを纏う!
【聖星辰・飛龍段波】でオーラの【衝撃波】を飛ばし攻撃する!
敵を撃墜したら【気合い】の【踏みつけ】アタックでトドメだー!
●エアリアル・ダンスバトル
「コルテスが持ってきた財宝ってさー、何かに使えたりしないのかな? 骸の海のガス抜きとかさ! しない? しないか。危険のほうが大きいもんなー、今は壊すしかないか! あたしもみんなに力を貸すぜー!」
ふと思い立った疑問をノリと勢いで自己解決したフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)が空中を飛び回りながら残る二体の少女剣士に向かっていく。飛べば足場の悪さなど関係ないのだ。
「また小さいのが……仕留めますよ!!」
対抗して少女剣士達も跳び、宙を滑空するように動き回る。だが、フィロメーラが自在に飛行するのに対し、彼女達はあくまで空中でジャンプをしているだけ。速度調整や小回りにはどうしても難が出てしまう。
単調な空中での動きに、フィロメーラは細やかなステップで宙に踊り、少女剣士の斬撃を潜り抜けていく。二体がかりでフィロメーラを挟むようにして剣技を繰り出していたが、刃の下を滑り抜けたかと思えば、その先で待ち構えていた振り下ろしには起き上がり様にくるっとターンして刃の横をひゅるりと通過する。
二体の少女剣士も互いの刃がかち合わぬよううまく攻撃を繋いでいたが、変化する刃の迷宮からフィロメーラは正しく通り道を選び、舞っていく。
緩急自在。動いたと思えばぴたりと止まり、また動く。
「おおーっとぉ」
「素早い上に、間合いを見切って……!」
ジャンプで詰め寄り見舞おうとした薙ぎ払いは、フィロメーラがひゅんと後方へ下がったことで、剣先がわずかに届かず空を切った。跳躍のままに上がっていく少女剣士を見上げつつ、背後に迫る気配を感じてフィロメーラはそこから直角に空中をダッシュ。真一文字に走った刃の範囲の外へと逃げ出した。
「お前らの動きはもう完全に見切ったぜ! 今度はこっちから反撃といくぞー!!」
振り返れば、今し方攻撃を仕掛けてきた少女剣士がいた。ジャンプ力を失い落下しようかというところへ、フィロメーラはオーラを輝かせて最高速度で飛び込んでいった。
フィロメーラが一筋の流星となる。
『必殺の、オーラ攻撃だぁー!』
短剣が届かない手元へ直進し、そのままオーラを纏って体当たりをぶちかました。
「うぐっ!」
ズン、と槍を突き立てられたような尖った衝撃を胸元に受け、喉の奥から呻きが漏れた。引き寄せられるように落下していく少女剣士の体に、フィロメーラはくるんと前転の要領で体を回し、
「オーラドライブシューティングスタァァァァ!!」
真上から垂直に落ちた。地面へ叩きつけられ反発して浮いた体にフィロメーラの両足が突き刺さり、少女剣士の体がVの字に折れ曲がった。緩やかに地面へ投げ出された手足はもうぴくりとも動かない。
「地上に降りた今なら――!!」
もう一体、その影がフィロメーラを覆う。短剣を高々と構え重力を利用した渾身の振り下ろしを見舞おうとしていた。たとえ外そうとも、地上から刃が届けば捉えきれると。
隙はあるが勝負に出た少女剣士へ、フィロメーラはにやりとほくそ笑む。
「来るなら迎え撃つまでだぜ! 気合いで吹っ飛ばす! うおーーー!!!」
倒した少女剣士を足場にフィロメーラも跳んだ。短剣を振りかぶった少女剣士を正面に、オーラを纏ってその太刀筋を見る。
銀の光が迫る。それが視界を埋め尽くす一瞬――そこを見極めて、ステップを踏んだ。
触れるか触れないかの紙一重。オーラを掠めて煌めきが散った。刃が流れていくのを横目に確認し、フィロメーラは拳を握った。
「うらーーーっ!!」
「なっ――!」
オーラを固めて振り抜かれた拳が少女剣士の腹に突き刺さり吹き飛ばす。カウンターをもろに受けて弾けた体へ、フィロメーラはさらに加速して、
「これでトドメだぁぁーーー!!」
足をピンと伸ばし、一点に全ての推進力を乗せた跳び蹴りを放った。インパクトの瞬間にオーラを解き放ってぶつけると、少女剣士の体は子供に振り回された人形のようにぐるぐるぐにゃぐにゃ回転しながら、傷んだ本殿を破壊して転がっていった。
「動くか? 動かないか? 動かないな? よーし、あたし大勝利だぜ!!」
風通しの良くなった本殿の内部へ入り、まずは蹴り飛ばした少女剣士が倒れたのを確認。ぼんやり明るいのは、そこに鎮座する財宝が放つ光のためだった。
フィロメーラの十倍はありそうな、巨大な紫水晶のような物体。それが財宝の正体だ。
「壊すぞー!! えいやー横からどーん!!!!」
水晶特有の角張りにも一切躊躇せず、フィロメーラはオーラを纏って突っ込んでいった。
財宝は見た目の割に脆く、フィロメーラの体は容易く財宝を貫通した。財宝を飛び抜けて振り返ると、通過して空いた穴から亀裂が広がり、やがて粉々に砕け散っていった。
成功
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