エンパイアウォー㉑~大海を裁ち割る者
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「フェンフェンフェン!」
ここは大海に展開された大渦の中枢部。
『鞠』が不思議な鳴き声をあげながら上下左右、四方八方に設置された的に跳ね飛び、寸分のズレもなくそれらを破壊していく。彼の者の名は『豊臣秀吉』。
「絶好調だな! 秀吉! これなら安心して前線を任せられるぜ!」
その様子を胡坐の姿勢で浮遊し、腕組みしながら見つめる浅黒い肌の男……『弥助アレキサンダー』。
「さあ、奴らが来る。この大海は俺たちのテリトリーだ。でかいのをお見舞いして……一泡吹かせてやろうじゃねぇか!」
発破をかけるように大声をあげると、背中に抱えている業物『大帝の剣』を抜き、天へと突き出した。
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「皆さん、弥助アレキサンダーと豊臣秀吉、二人の魔軍将と決着をつける時がきました!」
マリベル・ゴルド(ミレナリィドールの人形遣い・f03359)が、映し出された映像を猟兵たちに見せながら説明を続ける。
「彼らと戦うためには、まずは『関門海峡』にて毛利水軍と戦わなくてはなりません」
一般人ではあるものの、1人1人が屈強な武士であるため、油断は禁物だ。
「それと、彼らはメガリス『大帝の剣』によって洗脳されており、ボクたち猟兵を敵として認識してしまっているようですね……」
彼らの生死は依頼の成否自体には影響しないが、殺してしまうと後々の江戸幕府に禍根を残す可能性があるため、なるべく殺さずに無力化するのがベターだそうだ。
「毛利水軍を突破したら、『豊臣秀吉』との戦いになりますね……。彼は『逆賊の十字架』によって異形と化し、凄まじい反応速度とスピードを得ています。ゴムマリのようにぴょんぴょん飛び跳ねるみたいですね。彼がいる限り、『弥助アレキサンダー』への攻撃はことごとく阻まれてしまうでしょう」
つまり、豊臣秀吉を先に倒さなければいけない、ということである。
ちなみに、秀吉は「フェン」としか喋らないが、一般人を含む全ての人が『何を言っているのか』理解できるそうだ。つまり知性のない獣ではない、ということでもある。
「豊臣秀吉を倒したら弥助アレキサンダーとの戦いになります。彼は水上を浮遊しながら3つのメガリスを巧みに使って戦ってくるそうです。かなりの強敵です。注意してください」
弥助は、メガリス『闘神の独鈷杵』の力によって発生した『関門海峡の大渦』の中心に浮遊しながら、3つのメガリスの力を高めているそうで、この大渦を戦闘に利用できれば有利になりそうです――と、マリベルが付け加えた。
「それと、最初から最後まで……海上戦になります。戦いに赴くときは『海上で戦う際の準備、工夫』をしておくと良いと思います」
水中で使用できそうな技能、何かしらを利用した足場作りなど、猟兵たちの千差万別の個性を利用すれば海上戦も制することができるだろう。
「難敵ですが……きっと、皆さんなら勝利すると信じてます……! 改めて、宜しくお願いします!」
そう言ってマリベルは勢いよく頭を下げた。
こてぽん
こてぽんです。お読みいただきありがとうございます。
今回は強敵が相手なので、判定が厳しめになることをご了承くださいませ。
しかし奴らは『無敵』ではありません。
しっかり対策をとって戦えば勝てる可能性は十二分にあるでしょう。
皆様の『力』、秀吉と弥助に見せつけてやってください。
それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております。
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大帝剣『弥助アレキサンダー』および隠し将『豊臣秀吉』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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第1章 冒険
『毛利水軍を突破せよ』
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POW : 邪魔する船をひっくり返すなど、力任せに毛利水軍を突破します。
SPD : 毛利水軍の間隙を縫うように移動し、戦う事無く突破します。
WIZ : 毛利水軍の配置、天候、潮の流れ、指揮官の作戦などを読み取り、裏をかいて突破します。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナイ・デス
【念動力】で空を飛び【迷彩】で姿を隠し
無視して進むことも、可能そうですが……
その場合は追ってきて、オブリビオンとの戦いに巻き込まれるかもしれませんね
全員、無力化していきましょうか
そう決めて
『生命力吸収光』を放つ
一度に複数人癒す時のように、複数人から力を奪う
鎧や装甲に覆われた人も癒せるように、影にいても【鎧無視攻撃】光は届く
【暗殺】する時のように、気付かせず、意識を落とす
オブリビオン倒し、洗脳も解けた頃には回復するよう加減した【生命力吸収】
船から落ちた人がいたら救助して
もし撃たれても【第六感見切り】頭は【かばう】
あとは【オーラ防御と覚悟に激痛耐性】で、本体無事だから死なない
再生するから気にしない
神薙・焔
屈強とはいえただの水軍なら空を飛んで上空から爆撃でもすれば容易いんだけど、それでは死者や怪我人もたくさん出てしまうわね…火を付けるのもやめておきましょう、得意なんだけど。
ウィングド・ビートを水上モードに、水面を滑るように走ることができるわ、さながら流行りのスマホゲームの艦艇擬人化キャラクターみたいな?
そして、ガジェットドリル起動、木造の船体なら穴をあけるのはたやすい、高速で移動しながら喫水の下に大穴を開けまくれば、すぐには沈まないけど船は動かせないでしょう。
おや、あの三角の背ビレは…サメだー! 殺しても血の匂いで集まってきちゃうから…片っ端からいったん船上に揚げるわよ、これで皆逃げるかしら。
テラ・ウィンディア
おれはこいつらを脅威とは思わない
だって…洗脳って事は信念も…魂も失ってるって事だ
そいつは…本当の意味での強さを発揮してないって事だ
とは言え…だからこそこのまま死なせる訳にはいかないな!
【戦闘知識】で敵の布陣と水軍の船の機能諸々の把握
ユベコ起動!
そのまま【空中戦】で舞いながら素手で不殺徹底
水に落ちても溺死しないかは確認
大丈夫そうならそのまま海に突撃
船の底を槍で【串刺し】にして破壊
何か所も穴をあけたりそのまま内部に突撃
もしも溺死の危険がある場合は可能な限り敵であろうとオブビリオンでなければ救出!
許されるなら…人は助けるべき、だよな?
甘いって奴はいるかもしれんが
…こいつも強者の証って奴だ!!!
「よし! やっぱり映像でみたのと違いないぜ! おれの見立てだと西側、つまり左側が薄そうだ!」
小型船の上で双眼鏡を覗きながら敵陣を偵察しているのは、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)。
突撃志向が強い、強気な立ち回りを得意とする彼女であるが――こういった『戦闘知識』、ノウハウを不足なく修めているが故の『確固たる自信』……それがあるからこそ、いざといったときに躊躇なく突撃できているのかもしれない。
「船で近づけるのはここまでかしらね。ま、あの水軍相手だと、こんな船じゃ近づけたところで紙風船だし、仕方ないわね!」
あたしは水上を滑れることができるから問題ないんだけどね――と、自信満々に語るは、神薙・焔(ガトリングガンスリンガー・f01122)。
水上歩行の類は今回の依頼において鬼に金棒であろう。本人もそれを分かっているためか、その表情に一切の憂いなし。
「空を飛んでいけば……無視はできそうですが……」
秀吉、弥助との戦いに巻き込まれてしまう可能性を考慮し、やはりここで叩いておくべきだろう――と思考を巡らせる、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)。
ルビーのような瞳を敵陣に一瞥し、ふわり、と船上から浮いた。その姿は徐々に景色と一体化して溶け込んでいく。
「じゃあ、左翼から攻め立てる、ということで……」
「成功は前提として……怪我には気を付けて! じゃ、あとは現地で!」
「おーっし! 頑張るぜー!」
ナイ、神薙、テラが同時に船から飛び出した。大海のアクアマリンが強かにざわめき、それはあたかも戦の暗示をしているようでもあって。
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「敵襲だ! 敵襲ー!」
毛利水軍の最左翼から鐘が鳴り、船員たちから声があがる。
「あたしのドリルの前では木造船なんて紙も同然よ! 穴だらけにしてあげる!」
船の一隻から轟音が聞こえたかと思えば、船が大きく胎動。船員たちが慌てて船の下を見れば、右手と一体化するように装着された大型ドリルを船体に突き出して掘削と破壊を繰り返している神薙の姿が。
「撃て撃て! あの女に好き勝手やらせるな!」
銃器、弓、大砲など、各々の得物や持ち場についた船員たちが、それぞれの武器で一斉射撃。弾丸や矢、砲弾の雨が神薙に襲い掛かる。
「そんな豆鉄砲じゃ当たんないわよ!」
水上を滑るように走ることのできる神薙にとっては海上戦で遅れをとることはない。一般人の放つ射出物など避けるに容易い――糸を通すように弾幕の雨を潜り抜けると、再び船下に切迫。そのままガジェットドリルで船体に大きな穴を空けて喫水部分を傷つけていく――。
「ん? あれは……サメだー!」
神薙は飛んできた矢をすれすれのところで避けつつ、不意に水上から顔を覗かせる三角のヒレに気が付く。こんなドンパチやりあっている中で近づいてくるサメだ……大層『大物』である、と神薙は察し、にやりと笑みを浮かべた。
「あなた、『利用』させてもらうわ、よ、っ!」
流れるような動きでサメに近づくと、自らのガジェットを巨大なラケットのような形状へと組み換えた。まるで金魚すくいのような動作で水面を抉ると、ロケットのように敵船へと吹き飛んでいく巨大サメ。
甲板の上に打ち上げられ、勢いよく跳ね続けるサメ――いきなり現れた海の絶対的捕食者に船員はパニックを起こして船から飛び降りていく。
「船員たちは後でしっかり回収しておくとして……とりあえず1隻、無力化したわね!」
自信ありげに微笑んだ神薙は、別動隊で動いている2人を援護するために水上を再び滑走していった。
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「数隻、船がやられた! 敵をなんとしてもここで食い止めろ!」
せわしなく甲板を駆ける船員たち。大型船がこうも簡単に無力化されてしまうことに焦燥を覚えながらも、自らの役目をまっとうせんと船の向きを左翼寄りに変えていく。
「……? なんだ? 空が、明るく――」
船員の一人が、空の『眩しさ』に目をしかめる。真上を見上げようとして――膝から崩れ落ちる。
息も絶え絶えに、落ちかける意識の中、周囲を目線だけで確認する。自分たちと同じように倒れゆく船員たち。熱中症の類ではない。これは――。
重たい身体をどうにか仰向けにして、天にいるであろう『存在』を確認した。
「加減は、難しい――」
もう一つの『太陽』がそこにあった。眠ってしまいそうになる……穏やかで暖かな陽光の中心には、白く長い髪をはためかせ、深紅の瞳でこちらを見つめる中性を帯びた少年――ナイが浮かんでいた。
「おやすみなさい……」
起伏の少ない声色で船員たちにそう告げたかと思えば、光量が一段と上がる。
なんとか這いつくばって影になりそうな部分へと向かおうとする船員が1人。だが、只の光のそれではないのだろう――本来影になるはずの柱の裏側にも、光は届いていた。
「おお、神、よ……」
船員が意識を手放す寸前に放った言葉は、自らが信仰する神に対する言葉なのか――それとも、天に浮かぶナイの『神々しい姿』に対してそう言ったのか……真意は光の中。
光に包まれた一隻の船。誰一人血に染まることなく、一切の静寂が訪れる。
それはまるで、水に揺蕩う揺り籠のようで――。
ナイは僅かながら、口角をあげて――まだ戦火の渦となっているであろう敵陣の一角の方へ頭を振り、光を収束させ――『景色となった』。
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「おらおらー! 蜂の巣にしてやるぜ!」
獅子奮迅、とはまさしく彼女のことを指すのであろう。水上に浮かぶ木板や瓦礫を器用に足場にし――水上を駆け槍を振り回すテラの姿がそこにあった。
テラの眼前にはボコボコに穴の空いた1隻の船。甲板から様々な飛翔体が飛んでくるものの、テラは大半を槍で弾き返している。テラの足元を狙った攻撃も、驚異的な跳躍力――おそらく重力操作による飛翔だろう――それによって意味を成していない。
「よーし! そろそろ入らせてもらうぜ! ――お邪魔します、ってな!」
船体に何度も槍を突き入れてあらかじめ大きく穴を空けておいた場所がある。そこに水上から助走をつけて跳躍し飛び込む。ホール・イン・ワン、というやつである。
「敵兵侵入! 対処を――がはっ!」
船員の一人が目の前のテラを視認した瞬間に――槍の石突が腹に食い込む。そのまま船に空いた穴に突き出され、海へと飛び出していった。
「――やっぱ水軍の兵士だけある! 平気そうだな!」
飛び出された船員は近場に揺蕩う木の板にへばりつき、溺れている様子はない。これなら安心して船から追い出せそうだ――テラは快活そうな笑顔を見せる。不意に横から斬りかかってきた船員を脇目に、太刀打ち部分でサーベルを叩き落とすと同時に石突でピンボールのように突き出した。冗談みたいな速度で穴から船外へと叩き出される二人目の船員。これが病弱な人なら重傷にもなろうものだが……さすがは鍛え上げられた水軍兵士。受け身がしっかりしているので吹き飛ばしても悪くても気絶程度で済んでいる。
船員たちが互いに目配せすると、群がるように一斉突撃。囲んで叩こうという判断のようで、四方から潜ませていた船員たちがテラに飛び出していく。
「……こいつも強者の証ってやつだ!」
旋風が巻き起こったかと思えば周囲の船員がぶっ飛ぶ。中心には槍を振り回すテラの姿がそこに。たしかな手応えに、テラはにかっと微笑んだ。
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――こうして、毛利水軍は『たった三人の戦力』によって壊滅させられることとなる。水上を滑走できる神薙とテラによって水上に投げ出された船員は無事に回収。ナイの『光』によって、船を沈めないまま丸ごと無力化できた、というのがこの上なく功を奏し……結果、敵味方共に一人も重傷者および死者を出すことなく、『毛利水軍』を突破することに成功したのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『隠し将『豊臣秀吉』』
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POW : 墨俣一夜城
自身の身長の2倍の【墨俣城型ロボ】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : 猿玉变化
自身の肉体を【バウンドモード】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : グレイズビーム
【腹部のスペードマーク】から【漆黒の光線】を放ち、【麻痺】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:フジキチ
👑4
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナイ・デス
残るはオブリビオン、ですね
まずはあの……かわいい……毛玉?を倒して、世界を滅ぼすの阻止に、一歩前進、しましょう
ビームを【見切り、空中戦】回避できるなら回避
無理でも【オーラ防御】で軽減、頭だけは【かばい】受け
【覚悟と激痛耐性】で意識を繋ぎ
麻痺した五感【第六感】で補い
麻痺した身体【念動力】で動かし飛行続けて
どれだけ速くても、光からは、逃れられない、でしょう……?
『生命力吸収光』で戦場全体を照らす
光に大勢あたっていても、狙った対象だけを治療する時のように
オブリビオンだけから奪う【生命力吸収】
意識を失わせる程に奪えなくても、動きを鈍らせ
後は次へ
……とても強い覚悟、忠義
しかし、世界を滅ぼすのなら
止めます
鷲生・嵯泉
【海城】探偵女史(f14037)・教授(f07026)
狙い所が広範囲に成る分、徹底的に喰らわせてやれば良かろう
攻撃を耐えねばならんのならば
激痛耐性と覚悟で痛みは捻じ伏せ、致命部分への攻撃だけは見切りで躱す
随分と立派な図体だが、力は教授に遠く及ばん様だな
ああ、ごてごてと付いていては振り回し難かろう
探偵女史、少し待って貰えるか。長くは掛からん
先ずは城の、次いで秀吉の手足と尾を切り飛ばす
使うは終葬烈実
怪力を乗せた斬撃で、戦闘知識を使い
間接に繋ぎ目、合わせ目と脆いだろう部分を徹底的に
ガラクタと毛毬と化すまで削ぎ落とす
此れ位でどうだ?
愉し気にも見える様子はいっそ爽快な程だな
ヘンリエッタ・モリアーティ
【海城】
ああ、なるほど
確かに頭を使って戦ったほうがいい相手だわ
――城が出てきちゃうんだものね。
どうやって壊したものかしら
【黄昏】で相手をします。
まず召喚されたロボの一発を受け止めましょうか
それから――頼みましたよ、鷲生さん
私が振り回しやすいようにお願いしますね!
灯理、秀吉は貴女が相手して
そうそう。固定出来たらロボも固定されちゃうわよね
つながってるんでしょ?じゃあ、さあさあ皆さま、お手を拝借!
せぇ のッ
うん、縁起のいい音がしたわ
じゃあ、最後のもう一発。ハロー、豊臣秀吉。
あなたをボールにしましょうか
サッカーってご存知?
まぁいいわ。何喋ってるかわからないから聞いても無駄ね。
じゃあ、――絶えて死ね。
神薙・焔
むう、あれこそはチーム・蜂須賀の栄光、墨俣一夜城!
先制攻撃で一瞬にして城が建った、だけどこちらの放つユーベルコードも【野焔築城】!
そちらが戦を土と木で支えるなら―ディアーネは夜を照らす術を知る、あたしは焔で支える、仲間たちもこの城が守る。
そして先制攻撃を凌いだならば、今度はこちらが攻める番、あたしのターン! 城塞から出て野戦に移行よ、Let's party!
ブレイズバルディッシュにファイアーバインダーズ・ガントレット経由で胸にある焔を通し、先端を赤熱、炎上、獣は本能的に火を恐れるそうね、これを振り回して怯んだところを肉薄、切り結ぶわ。
鎧坂・灯理
【海城】
あの毛玉が秀吉か。何もかもひどいな
まあいいさ、やることは変わらない
安心しろ、柏手を一つ打つだけだ
――貴様らでな
【脳髄論】発動
この身すべてを魔術機構とすることで念動力の出力を倍増する
そうするとどういうことが出来るかって?
秀吉とやらをこうして固定出来るのさ
スピードも反射速度も強化されていると聞いた
ならば周囲空間ごと固定してやればいい
素早い羽虫を潰す時は大きなハエ叩きを用意するだろ
それと同じだ
さて――剣豪殿に丸めて貰ったならば
まずは一発、伴侶殿と示し合わせて城へと叩き付けよう
やあ年も半ばだが悪運が払えそうな音だ
伴侶殿が蹴鞠をしたいそうだから
私はファール対策に努めよう
地を染めろ、その血肉で
「フェン! フェンフェンフェン!」
暗雲たちこめる黄昏時。鈍色の暗雲が唸り轟いている。
各々の方法で浮遊し、海上にて対峙する猟兵たち。彼らに立ち塞がるは、大きな毛むくじゃらの獣……毛の生えた鞠に手足が生えた異形の魔軍将『豊臣秀吉』が嘶く。
海上はうねり、渦巻く碧の海。大渦は蟻地獄の如く、瓦礫や船の残骸を吸い込んでは海底へと引きずり込んでいく。落ちたら猟兵の強靭さを以てしても危険であることは間違いない。
「……! きます……!」
渦の中心部を深紅の瞳で見つめていたナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)が目を細める。刹那、渦の中心部から巨大な『何か』が海水を巻き上げて飛び出した。
「もう少し知性的な出現方法を考えられなかったのか? まったく嘆かわしい」
降りかかってくる水飛沫に手をかざし、『視えざる壁』によりそれらを眼前で静止させる鎧坂・灯理(不退転・f14037)。
「無駄よ、灯理。意味不明な鳴き声を発する毛玉に、高尚な知性を求めてはいけないわ」
灯理によって作り出された『視えざる床』によって空間の上を立っている、ヘンリエッタ・モリアーティ(犯罪王・f07026)。
水飛沫が多少なり衣服に降りかかるが、涼しい顔をしたまま動じる気配がない。
「知性があろうとなかろうと関係のないことだ。ただ、眼前に立ちはだかる全てを斬り捨てるのみよ」
鷲生・嵯泉(烈志・f05845)も同様に灯理によって作られた足場に立ち、表情と姿勢をほとんど変えることなく、迫りくる荒波を得物で二分し、霧散させる
海水がはけ、出現するは『墨俣一夜城』。本丸を身体とし、そこに壁と同じ材質であろう白色の両手両足が生えているという……なんとも異質な見た目のロボットが海上に君臨した。
「むう、あれこそはチーム・蜂須賀の栄光、墨俣一夜城!」
その姿に見覚えがあるのか、思わず語気が強くなる神薙・焔(ガトリングガンスリンガー・f01122)。
豊臣秀吉の二倍ほどの大きさの『城』。秀吉自体が猟兵たちよりも倍以上の体積を持つが故に、それの二倍ともなるとまさに壮観。巨大ロボットと呼ぶに相応しいだろう。
「フェンフェン! フェン!」
ロボットの頂点に飛び乗る秀吉。彼が右手を大きく振りかぶると――ロボットもその動きを『トレース』し、振りかぶる。
海上で自由に動ける範囲が限られている上に、単純な『大きさ』の暴力。回避するのは難しい。それを既に理解していたためか、ヘンリエッタと鷲生が持ち前の怪力で防ごうと前に出ようとする。が、それを制したのは神薙。
「大丈夫! あたしに任せて!」
持っている三日月斧『ブレイズバルディッシュ』を天にかざす神薙。その刃が暁色に輝く。
「そちらが戦を土と木で支えるなら―ディアーネは夜を照らす術を知る、あたしは焔で支える、仲間たちもこの城が守る」
猟兵たちを取り囲むように焔の壁が立ち昇る。その様は満ちゆく『赤き月』。暗雲で薄暗かった周囲が、ことごとく照らされゆく。
『Diana ist kundig, die Nacht zu erhellen』
直接、脳に響き渡るような――言霊が紡がれると、神薙の身体が、発火。地獄の炎に包まれた彼女を中心に、暁の城が築かれる。
刹那、激突するは墨俣一夜城の巨大な拳。つんざくような轟音と共に――衝撃で周辺の海水が『陥没』する。
だが焔の城は依然として健在。当然、中にいた猟兵全員も無事。たしかな手応えを感じていただけあってか、秀吉が思わず身を乗り出す。
「フェ、フェン!?」
驚愕するのも束の間、城に食い込んだ拳の上にヘンリエッタと鷲生が飛び乗り、駆ける。
それをみすみす見逃すほど秀吉は『甘くない』。身体の中心部に描かれた紋様が黒く輝き――。
「させません……!」
二人を狙った黒色の光線、両者の間に飛び込む、ナイ。漆黒とは対照的な『純白』。その光を身にまとった彼が、迫りくる光線と対峙した。
「……ぐっ」
彼に内包する『光』は漆黒とぶつかり合い、色が混じり合う。さすがに雑兵の放つ投射物とは訳が違う――ナイの身体の節々が黒に侵食されていった。
「……そこ……!」
黒に飲み込まれながらも、『純白』は消えてはいない。ナイは光線の僅かな『綻び』を見切り、そこに強めた『光』を放つ。光線は大きく軌道を逸らし、海上に激突――質量を持っているのか水飛沫をあげた。
「おかえし、です……!」
黒に侵食された身体はうまく動かすことができない。現に、彼は空中に投げ出されたまま体勢を直すことができていない。だが、彼はその身を、己に宿す『念動力』……『暁光』に包み込ませることによって――強張る身体を無理矢理に動かす。返す刀で放つは『純白』の光線。
「フェンッ!?」
麻痺して動けないはずの存在から放たれる『光速』の反撃。どれだけ反応速度をあげようとも、放たれた光を反射神経だけで避けることは不可能である。
対照的に『白光』に包まれた秀吉は吹っ飛び、空中に投げ出される。
「お見事です。ナイさん。さて……我々も参りましょうか。そちらのロボットはお任せしましたよ。伴侶殿、剣豪殿」
「よし! 今度はあたしたちのターンよ! Let's party!」
役割を終えた焔の城が霧散すると同時に、そこから飛び出して宙を駆ける灯理。そして神薙も赤熱するブレイズバルディッシュを片手に、追随するように海上を滑走していく。
「私も、援護……します」
二人の後方をついていくように、緩やかに飛翔し、吹っ飛んだ秀吉を追いに行くナイ。
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「そちらこそ、あの毛玉は任せたわよ。灯理」
彼らとほぼ同時に動き出すはロボットの腕に取りつき、その上を駆けるヘンリエッタと鷲生。ヘンリエッタは秀吉を追う灯理の背中を一瞥し、不敵な笑みを見せる。
「さて教授殿。彼方に見える肩口こそが、我らの目標地点と見える」
歩きづらい丸みを帯びた円柱状の腕であるにも関わらず、二人は意にも介さず――全速力で駆けている。鷲生が目を細め、肩口の『接合部』を捉えた。両手に手にした双刃が光を反射して煌く。
不意に、ロボットの全身が胎動する。その『屋根』に酷似した頭が二人を捉えたかと思えば、もう片方の剛腕が二人めがけて振るわれた。
「教授殿。援護を頼む」
「お任せください。あの程度の拳――」
向かってくる超質量の塊……二人の何倍もの大きさの、巨岩――否、拳。それが風を切る轟音と共に迫りくる。駆けながら鷲生と拳の間に入るようにポジションを変えたヘンリエッタ。
「粉々に砕いてみせましょう」
彼女の眼が『それ』を邪魔なモノであると認識した時――”黄昏”の帳が、降りる。
某の激憤が、彼女の全身に『暴力』を滾らせる。血が、騒ぐ。巨大な拳がヘンリエッタに接触する寸前、彼女は足を止め、両腕を伸ばし――二者の間に挟まれた空気が弾け、衝撃、烈風。
本来ならば人二人ごとき、潰して余りある重量と破壊力を秘めたパンチであったが、それを人一人の力によって、『止めた』。ヘンリエッタが其の両足で踏みしめている岩石が破砕し陥没。さらに、彼女自身も衝撃波をもろに食らったためか、身体の随所に血を滲ませている。
「もっと力を込めて振るうべきだったわね」
みしり、巨岩の拳に、ヒビが入る。
「――ぶっ潰す」
右腕の手のひらを握りこみ――振るう。極めて単純な攻撃、暴力。しかしそれは自分よりも何倍も巨大な拳を、押し返し、粉砕した。
「教授殿、感謝いたす」
一方、鷲生はヘンリエッタが敵の攻撃を抑えている間に先行。無事に接合部へと到着。
「随分とごてごてしておる。その癖、教授殿には遠く及ばぬ――」
目を閉じる鷲生。その時間はコンマ秒にも満たないほどの一瞬だが――静寂が、訪れた。
「ガラクタ、だな」
――終葬烈実――
目を開けばその眼は烈火。刹那、一閃。振るう動作『すら』見えず、ただ振るった『結果』のみがそこに残る――刹那、一瞬遅れて、巨腕の肩口が……ずれた。
「――箍は要らん。擁するのは討ち砕く力のみ」
己の内に燃ゆる烈火を糧に、疾駆。一瞬で城の喉元まで切迫する。それはもはや『瞬間移動』に等しい。
「お前には”三閃”すら惜しい。”二閃”で十分だ」
得物が一つ、『秋水』を横なぎに振るう。その剣筋の鋭さは、振るう過程すら見えず、頭部分であろう天守閣が『ずれ落ちた』。一閃。
首が落ちるころには鷲生の姿はすでに在らず。一瞬の間を置いて、黒の剣筋が迸る。始点と終点が結ばれた城の両足と身体が分断。二閃。
――こと、城の両足に関しては、放たれた斬撃の残滓でか――海に沈む前に四散していく――。
「さて、仕舞いといこうか」
海めがけて落下していく『ヘンリエッタが乗っている巨腕』。それの真下に回り込んだ鷲生が、その埒外の怪力を以て……宙にさらけ出された『城の身体』めがけて、巨腕を”剣圧”……いわゆる『剣を振るったことによる衝撃波』によって弾き返した。彼自身も、降りしきる瓦礫に飛び移り、跳躍。
「そら、忘れ物だ。しっかり受け取っておくといい、ガラクタよ」
城の身体に突き刺さる円柱状の腕。乗っていたヘンリエッタが飛び出した。
「鷲生さん、取っ手を残してくださるなんて流石です……あとは、私にお任せを」
口角を上げるヘンリエッタ。『暴力の権化』。彼女が、もう一方の腕、『取っ手』に切迫する――。
●
時は少し遡る。ヘンリエッタと鷲生が城型ロボットと対峙している間に、灯理、神薙、ナイも激闘を繰り広げていた。
「フェンフェンフェンフェン!」
猟兵たちの二倍ほどの大きさを誇る『豊臣秀吉』。その奇怪な見た目からは想像もつかないほどに俊敏な動きをみせ、猟兵たちを攪乱せんとぴょんぴょんと跳ねまわる。避けてばかりかと思えば四方八方から突進し、三人の喉をかっ切らんと腕を振るう。
「なるほど、たしかにこれはなかなかに鋭い動きだ。私の脳を以てしても、貴様を捉えるのは少し難儀だな」
――そのままでは、な――。すでに策を巡らせている彼女に焦燥の表情は微塵もなく、極めて冷静に敵の動きを目で追っている。
だが、秀吉も観察眼はそれなりに鋭いようだ。ナイのような『光』を持たず、かといって神薙のような得物を持つわけでもない灯理に対して底知れぬ不気味さを覚え、彼女に狙いを定めて一撃離脱を繰り返す。
『あれ』の発動には少々集中がいる。ここまで集中攻撃してこられると、発動させる際にリスクが生じる。リスクというものは無駄だ。なるべく排除して然るべきものなのだ。
すでに何回目か……数えるのも馬鹿らしいくらいの、秀吉による一撃離脱。それを『視えざる壁』で防いだあたりで、ほんの少しだけ、秀吉が離脱する際にたたらを踏む。僅かな綻び。一般人では視認すら許されない、砂粒の如き小さな『隙』。
「そこだー!」
神薙の胸部を照らす焔。それがブレイズバルディッシュに伝播し――発火。炎の三日月を秀吉めがけて思い切り振るった。
「フェ、ン!?」
圧倒的な反応速度を以てそれを両の手で掴み、白刃取り。地獄の炎が秀吉の両腕を焼くが、弥助アレキサンダーを護るために存在するだけあって頑強な肉体を持つ――毛を焼くのみに留まった。
だが、眼前にいきなり現れた巨大な炎に、僅かながら慄いた。
「隙あり! 燃やし尽くしてあげるわ!」
二撃、三撃と続けざまに斧を振るい、秀吉の両の肩口を切り裂き赤熱させる。
「フェンフェン!」
直撃に大きくひるんだ……とみせかけて、両腕の爪を鋭く神薙に突き出す。
が、その瞬間、秀吉の横っ腹を閃光が貫いた。それにより秀吉がひるみ、神薙も余裕をもって斧の柄で爪を弾くことに成功する。
「フェン!」
閃光の正体は――ナイの、『生命吸収光』だ。思わず距離をとった秀吉だが――依然として自分の身を『光』が捉えている。
「意識は、奪えずとも……」
暗雲を破る『暁光』。彼自身が『太陽』となって放たれるそれは、戦場を暖かに照らす。
全体を照らしているが――灯理と神薙の生命を吸収することはない。その光は、常に『オブリビオン』の生命を奪い続ける指向性を持つ。逃げ場はない。
秀吉の動きが、鈍った。たまらず、上空にいるナイめがけて跳ね飛ぶ。
「させるかっ!」
神薙が背後から秀吉にブレイズバルディッシュを叩きつける。
血潮をまき散らすも、辛くも彼の動きは止まらず。動きが鈍くなってもなお、秀吉のスピードは魔軍将の中でも一線を画す。
――突如、秀吉が不意の停止。まるで時が止まったかのような、噴き出している血潮ですらその場に『固定』されている。
「無知な貴様に、知恵をやろう」
秀吉の下方面から、灯理の声が聞こえる。灯理は『視えざる昇り階段』を指を鳴らして作成――秀吉の隣まで近寄った。
「私を構成する細胞全てが、我が脳髄を補助する外付け機構だ」
言っている意味がわからない、と秀吉は困惑するも、それが見た目上に出ることは無く、停止したままだ。
「この身すべてを、魔術回路とすることで――空間を固定することができる」
どれだけ速かろうと、その空間を固定してしまえば動くことすら叶わぬ――灯理は、その歯を見せて傲岸不遜たる『笑顔』を秀吉に見せつける。
「さて、神薙さん。ナイさん。あとは手筈通りにお願いします」
神薙、ナイは共に頷く。
ナイが、『光』の輪を崩落する城方面――ヘンリエッタ、鷲生方面に数個作り出す。
神薙が、斧を両手を用いて自身の頭上で振り回し続け、十二分な膂力を得た瞬間に――。
「えーい! ぶっ飛べ!」
激震。一時的に固定された空間を解除、燃えた毛鞠となった秀吉が城方面までぶっ飛んでいく。光の輪を通るたびに彼の身体は灼け、その強靭な身を『脆弱なもの』にしていく。
そして秀吉の姿が見えなくなったところで――遠方から煌く伍の煌き。直後にこちらに投げ返されてきたのは――両手両足を斬り落とされた、巨大な『鞠』のようなものであった。そして、再度の空間固定。
そして今度は、空間を固定した『まま』、空間ごと城方面に吹き飛ばす神薙。
「さあさあ皆様」
灯理の言葉と同時に、空気が、振動する。見れば、吹き飛んでくる城の残骸。敵の攻撃か――否、某の城主は既に秀吉ではない。
飛んでくる秀吉目がけて、城ごと抱えて叩きつけようと――『取っ手』を両手で持ち振りかぶるヘンリエッタの姿が映った。その傍では、その城に乗っている鷲生の姿も見える。
「お手を拝借」
鷲生が城から離脱。その直後に灯理の言葉に呼応するかのようにヘンリエッタの声が響き――柏手。
粉砕する墨俣一夜城。瓦礫が辺り一面に散らばり、海面に沈みゆく。だが秀吉は空間が『固定』されているためか吹き飛びすらせず、一見するとそのままだ。
「じゃあ、最後の一発」
ヘンリエッタが、大きく足を振りかぶる。空気が微動し、海面であるのに――地鳴りが聞こえた。
「ハロー、豊臣秀吉。あなたをボールにしましょうか。サッカーってご存知?」
ヘンリエッタの足から、軋む音が聞こえる。
「まぁいいわ。何喋ってるかわからないから聞いても無駄ね」
たとえ『固定された空間』が解除されていたとしても、
たとえ彼が普通の言語を用いていた場合でも、
もはや彼の『返答』には興味すら抱かない。
ひどく声色が冷めたものになり、つまらなそうに溜息をこぼす。足先まで、『暴力』がたっぷりと『満たされた』。臨界点。
「じゃあ、――絶えて死ね」
――このとき、隠し将『豊臣秀吉』は、『全身が半ばで爆散するほどの速度』で、弥助アレキサンダーが待ち構える大渦の中心地点に蹴り飛ばされたらしい。
遠目でも分かるほどにあがる吹きあがった水柱は、猟兵たちのこの上ない勝利を褒めたたえているようでもあった。
大成功
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第3章 ボス戦
『大帝剣『弥助アレキサンダー』』
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POW : 大帝の剣
単純で重い【両手剣型メガリス『大帝の剣』】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 逆賊の十字架
自身の身体部位ひとつを【触れた者の闘志を奪う超巨大肉塊『視肉』】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 闘神の独鈷杵
自身からレベルm半径内の無機物を【無尽蔵に破壊の雷槌を放つ『闘神の渦潮』】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:みやこなぎ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「……秀吉殿」
大渦に沈まんとする秀吉の『欠片』をすくい上げ、彼方からこちらに迫りくる『猟兵』たちの気配を感じ取る。
「……秀吉殿の雄姿、たしかに見届けた。あとは、この俺……『大帝剣』が、奴らをことごとく撃滅してみせよう」
だから、安らかに眠ってくれ。そう呟くと、それに応えるように、秀吉の『欠片』は塵となって――消滅。
「力には力。『海すら裁ち割る大剣』で裁断してくれよう」
両手剣型メガリス『大帝の剣』を振るう。振るった衝撃波のみで、波がさざめき轟く。
「速さは残念だが秀吉殿ほどのものはない。だが、その『闘志』を奪い取ることで撃滅してみせよう」
片腕が、タコとも魚の合いの子のような――『名状しがたい』肉塊となる。それは再び『十字架』に触れれば元の腕に戻っていて。
「魔導の類には『闘神』の雷槌だ。雷と渦潮、自然の猛威を思い知らせてやろう」
独鈷杵が光り輝き、周囲に巨大な雷が無尽蔵に落ちる。
――さあ、猟兵たちよ。俺はここにいる。ことごとく、渦潮に沈みゆくがいい――
その貌はまさに羅刹。渦潮の中心部に浮遊しながら、これからやってくるであろう猟兵たちを只々待ち望む。
神薙・焔
ウィングド・ビートを再度飛行モード、あたしなら弥助アレキサンダーを空から攻めるわね。
上空なら地形破壊の効果は薄いし単純な攻撃なら躱すこともできる、先制攻撃を避けて吶喊! 【ブレイズフレイム】の焔をバルディッシュに纏わせて切り結ぶ、視肉って食べられるのよね? 不老不死の薬の材料だっけ? いい感じにローストしてあげるわ、味も見てみる?
乱戦になると「闘神の独鈷杵」がやっかいそうね、大地にブレイズバルディッシュを突き立て、ブレイズフレイムを展開、内部に自由電子やイオンを含む火炎は電気を通す、避雷針替わりね、仲間が戦うなら地形破壊されないように手で支えて仁王立ち、【野焔築城】で城塞を築く!
ナイ・デス
消耗、していますが。まだ大丈夫、です
眠らせましょう。もう、死人なのですから
弥助さんも、骸の海へ
雷放たれる闘神の渦潮向かって【念動力】で自身【吹き飛ばし】飛行【空中戦】
【第六感で見切り】回避
【オーラ防御】で軽減
【覚悟と激痛耐性】に、これまで水軍や秀吉さんから【生命力吸収】して【力溜め】てた分もある
耐えて
『生命力吸収光』
加減は、難しい……けれど、無尽蔵なら、加減は、いらない……!
【地形の利用】破壊の雷槌から、エネルギーを、吸収する
地縛鎖繋いだ大地や宇宙船から吸収する時のように
完全機械のウォーマシンさんから吸収する時のように
そこに生るものからだけではない。在るものからも
そうして光、強め、弥助さんも
「……きたか」
大渦の真上を浮遊し、胡坐の体勢で猟兵たちを待つ弥助アレキサンダー。
閉じていた眼を開けると、彼の視線の先には二人の『猟兵』。
「あんたが弥助アレキサンダーね。このあたしが、ここであんたを焼きつくす!」
三日月斧『ブレイズバルディッシュ』を弥助の方へ突きつけ、宣戦布告するは神薙・焔(ガトリングガンスリンガー・f01122)。
鼓動を動力に空駆けるインラインスケート……『ウィングド・ビート』によって現在の彼女は空中に浮遊している。
「あなたは、もう、死人……。ここで、眠ってください……」
身体の随所には未だ秀吉の時の残滓……『漆黒』が残っている。だが、それはいわゆる傷でしかなく、それ以上に彼を、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)の動きを阻害することはない。
ナイの傷跡をみた弥助が、何かに気が付いたかのように目を細める。
「そうか――秀吉を殺した猟兵がそのまま俺のところにきたわけか。ならば、丁度いい――」
背中に背負っていた両手剣型メガリス『大帝の剣』、それの柄を片手で持ち、目を瞑った後に――。
「――ここで、一切合切を沈めてくれよう!」
その心には仇討ちと主への忠義。それらが内で重なった瞬間、弥助の瞼がかっと開かれる。
空中で立ち上がったかと思えば、疾風。
風切り音と共に神薙に肉薄し、剣を背中から抜く。
「粉々にしてくれるッ!」
剣の刃に群青色のオーラが収束し、それを背中から勢いよく振り下ろした。
神薙も黙って見ているわけがなく、咄嗟に『上』へ飛びのくように回避。
ナイは遠目の位置にいたが、嫌な予感を察知して自身に『光』を纏わせ防御態勢をとる。
刹那、巻き起こるは――空気が弾け、空間が震え軋むような轟音。振り抜いた際に発生した衝撃波が下界の海面に触れると、そのまま海面部分が『抉り取られた』。
振り下ろしたが故に衝撃波の大半が下方向へ行ったため、神薙に直撃することはなかったが――上空方面にもその衝撃が伝播する。
神薙は斧を前面に構えて防御姿勢をとり、炎を纏わせて疑似的な『盾』を作り出す。その瞬間、衝撃の残滓が神薙に激突して鈍く重たい轟音が鳴り響いた。
「うぐ、っ」
彼女は空中でたたらを踏み、頭を揺らされるものの――すぐさま体勢を整え、『ウィングド・ビート』の出力を最大にする。
「さすがに強敵ね。あぶないところだったわ――でも」
神薙は弥助めがけて弾丸のように突撃し、斧を振りかぶる。
「この通りあたしは無事よ!」
不敵な笑みを浮かべると、斧の刃を地獄の炎で赤熱させ、赤い線を空に描くほどに疾く――振り下ろした。
弥助は神薙を見上げると、すぐさま大帝の剣を振り上げて斧と激突。火花が散り空気が振動し、衝撃が拡散する。
単純な力なら弥助の方が有利……だが、神薙は弥助の『上』をとっている。位置取りで彼女が有利であるが故に――鍔迫り合い、拮抗している。
「……!」
弥助は神薙の得物を見て目を見開く。
――燃えている――
彼女の得物は焔を宿している。只の火炎ではない。彼女自身に宿る……『地獄の炎』。有象無象を焼きつくすことのできるそれは、たとえ『大帝の剣』であっても例外ではない。徐々に、『大帝の剣』に紅蓮の炎が伝播しはじめ、それを両手を持っている弥助の掌から煙があがりはじめる。
「小癪な!」
このままでは不利――そう察した弥助が再び『大帝の剣』の力を爆発させんと群青を宿しはじめた。が――。
「させません……!」
先刻の衝撃波を『光』で受け流したナイは、援護できるタイミングを伺っていたのだ。
彼の横っ腹を『光』が貫く。質量をもたないので弥助の身体が直接傷ついたわけではないが――それは『生命力』そのものを奪い取る。弥助が僅かにひるみ、集中が切れたためか群青が霧散する。
「助かったわ! ナイちゃん!」
神薙が弥助から一旦距離をとり、ナイに感謝の言葉を投げかけ笑顔を見せる。ナイもこくりと頷いたところで――暗雲が唸り、雷鳴。
「ならば、まとめて葬ってくれる! これはどうだ!」
弥助が吠え、独鈷杵を握りこみ、それを天にかざす。
ナイはそれを見て神薙に振り向き、重ねて頷くと、すぐさま空へと疾駆。神薙はそれに呼応するように大きく離れた。
ナイは、そのまま高度を上げていくと――暗雲の彼方でこちらを睨みつける『力の奔流』に備えるべく、内包していた『光』を解き放った。
その瞬間、暗雲から巨大な槌……それを模した雷が、無尽蔵に降りしきる。
それはまるで、異郷の神話でみた『雷槌』の如く。
破壊、破壊、破壊――常人では『一撃目』で炭となり、その光景を目にすることは叶わない。
雷槌が海面に触れると爆発し、その部分が蒸発し消失する。それらが数えるのもくだらないほどに降ってきたのだから、直撃すればその一帯には生命が存在することなど到底許されない――はずなのだが、二人は依然としてそこに『いた』。
「加減は、難しい……」
ナイの『光』は加減が難しい。対象の生命を吸収する『光』を放つ能力なのだから、無理もないだろう。
「けれど――」
雷を受け止めるべく何重もの層となった『光』のベールが、ナイを中心に展開されている。それでも尚、雷の余波が貫通し、彼の身体を傷つけ焼いていく。
だが、彼の『目』は未だ光を宿したままで。
「無尽蔵なら、加減は、いらない……!」
これまで、この戦いで吸い取ってきた『生命』。内包してきた巨大な力の奔流を、この瞬間に解き放つ。光のベールがさらに煌き、辺り一面を光の奔流……いわゆる『純白』に包み込んだ。
それに『雷槌』が相殺するように激突し、互いに霧散、消失、そして――行き所を失った『力』が空中にばらまかれ……胎動し、爆発。
「ぐおおおおっ!」
巻き込まれた弥助が全身に傷を作りながら大きく吹き飛び、空中に投げ出される。
だが彼もさすがに頑健。全身から白煙をあげつつもすぐさま体勢を整え、力を使い果たし緩やかに落下していくナイを二分せんと『剣』を構えるが――。
「させるかああああ!」
大きく離れたおかげで爆発に巻き込まれなかった神薙。彼女が、すでにナイと弥助の間のポジションをとるべく準備をしていた。ナイに切迫せんと突撃する弥助の前に飛来し、ブレイズバルディッシュの赤熱した刃を横なぎに振るった。
「ぐっ……!」
完全にナイの方に意識を持っていかれていたためか、神薙の不意打ちに驚愕の表情を見せる。咄嗟に大剣でそれを防ぐが、衝撃を殺しきれずに大きく吹き飛ばされた。
神薙はその間にナイを空中でキャッチ。回収。弥助と再び距離をとる。
「さすがに秀吉殿を葬っただけのことはあるな。手強い」
体勢を整えた弥助が大剣を構え、油断なく二人を見つめている。
まだまだ弥助は動けそうだ。このままだと不利な状況は免れない。
だが神薙の表情はすでに勝ち誇った笑顔となっている。
「あたしたち『だけ』だと思った? あたしたちを倒せば、終わりだと思っているのかしら?」
弥助は、周囲に接近してくる複数の気配を感知する。辺りに目を配り、再び神薙とナイを見たころには――彼女たちの姿は、すでにそこには在らず。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鎧坂・灯理
【海城】
あれが今回の首魁か
なんだあの髪型はふざけているのか
手入れする余裕があるとでも言うつもりか?
ぶち殺す
さて、私は念動力で飛べるからいいが他二人は足場が厳しいか
『カルラ』、「属性攻撃」で海面を凍らせろ
二人が動ける分だけでいい
大剣はハティが必ず止める
私はその隙を逃さずUCで殴り飛ばそう
鷲生殿と挟撃する場所に位置取って
息も吐かせぬ強打の連撃であばらを全部へし折ってやる
念動力の出力は意志に比例する
できると思えばできる やれると思えばやれる
私は私を信じている 私の念動力に不可能はない
このアフロを上から下まで凹々にしてやる!
鷲生・嵯泉
【海城】探偵女史(f14037)・教授(f07026)
先の秀吉の様にあれも爆発させてやればいい
あの髪と揃いで良く似合うだろうよ
ああ、足場が出来るのは有難い、感謝する
教授が止めると云うなら確実に止めるだろう
ならば其処からは此方の仕事だ
一気呵成に前へ出る
探偵女史との挟撃狙いの位置取りをし
破群領域にて、怪力に鎧砕きを乗せた乱打を以って徹底的に叩き潰す
刃の奔る位置と速度を調整し、刹那の隙すら生みはせん
攻撃があれば見切りと第六感にて躱すとしよう
主への忠義は見事なものだが
オブリビオンの其れ等何の意味も齎さない事を知るがいい
早々に此の海へ、そして其の侭骸の海へと沈め
ヘンリエッタ・モリアーティ
【海城】
ああ、ごめんなさい。貴方のお仲間だったのよね
大丈夫よ、貴方もじきにそうなる
足場が出来たのなら誰よりも早く怪力で走って
攻撃を受け止めます
ああ――それが大帝の剣。白刃取りしましょう
もちろん何もなしで無事に済むと思っていないわ。だから
「無かったことにする」。【暁光】を発動
大事そうね、この「ただの」剣。がっちりと私で固定してあげる
ええ、私も貴方もこのまま。「不利でいい」の。
私は生命力吸収で自動修復するし
何も出来ない私に変わって――「つるぎたち」がやってくる。
絶対に離さない。何があっても
――ここで死ねよ従属者。私達を下したい割に意志が弱すぎる
忠義?片腹痛いンだよ
死ぬ程度の覚悟で
私たちの前に立つな
ナイ・デス
……あれで終わりと、思われた、でしょうか
猟兵は、一度退けられてからが、本番、です
真の姿開放で負傷治療
光の塊のような姿になって、再び戦場へ
私はヤドリガミ、どこかにある本体が壊れない限り、死なない
例え、跡形もなく消されても、時間はかかるが再生する
【オーラ防御】雷を受ける。前と同じように軽減、そして貫通
【覚悟、激痛耐性】光の身体でも、ダメージは受ける
それでも、耐えて
『イグニッション』
光の身体を黒き鎧で覆い
秒速約69mで飛翔突撃
背から【念動力】エネルギー放ち、自身を【吹き飛ばし】更に加速
【第六感見切り】
これが私の、必殺
【暗殺】急所狙い
【2回攻撃】黒剣攻撃回数9倍【鎧無視生命力吸収】18連斬
消滅させます
「”カルラ”、海面を凍らせろ」
弥助が周囲に感じ取っていた気配は気のせいではなかった。光を遮る暗雲の下――その暮明からふわりと姿を現す、鎧坂・灯理(不退転・f14037)。
彼女が『カルラ』と呼ぶ存在は、周囲を飛び回る小さな竜。火の鳥のような羽毛をもつそれは、彼女の指示を受けて鳴き声をあげた。透き通る声だった。美しい声色でありながら、どこか寒気を感じさせる、『ひんやり』とした音色。
刹那、海面の一部が軋むような悲鳴をあげたかと思えば――凍結。大小さまざまな氷床が、戦場を彩っていく。
「こけおどしか? いや、違うこれは――」
弥助が目を細める先には――たった今、凍てついた『足場』に降り立つ、二人。
「こんにちは。『ボンバーヘッド』さん。あなたへの贈り物を先刻、”木っ端微塵にブッ飛ばして”お届けさせていただきましたが、如何だったでしょうか?」
ヘンリエッタ・モリアーティ(世界竜・f07026)、彼女がやけに『懇切丁寧』に、ひどく他人行儀な笑顔を見せつつ、弥助に対して肩をすくめる。
「その髪と揃いで良く似合っただろうよ」
ヘンリエッタのすぐ隣に立つは、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)、其の人。弥助を見つめる右目は恐ろしいほどに鋭利さを帯びており――弥助は鋼の太刀を飲まされるような『冷たい殺気』を感じ取る。
だが、それに呑まれることはなく、弥助は一切の躊躇いを見せずに『大帝の剣』を構え、不敵に嗤った。
「ずいぶんとビッグマウスなことだ。だが、すぐにそんなことも――」
群青色の錬気が、刀身に宿り――
「言えなくなるだろうよ!」
不敵な笑みから一変、烈火の表情を浮かべると、弥助は鷲生をその両の目で補足。間髪入れることなく剣を振りかぶり、大海嘯が如き埒外の『力』が宿った刀身を脳天から振り落とさんと――飛翔する。狙いは鷲生。
「――ああごめんなさい。贈り”物”じゃなかったわね。貴方の”お仲間”だったのよね」
死角から氷が砕ける音がしたかと思えば――鷲生の前に立ち塞がるように間に入るヘンリエッタの姿が。無理矢理に急ブレーキをかけたためか、足元の氷がそのまま摩擦と衝撃で抉り取られる。
鷲生は咄嗟にその場から飛び退き離脱。すでに大剣は彼女の目と鼻の先まで迫ってきており、彼女の『他人行儀』な言葉遣いと声色もそのままで。
「大丈夫よ、貴方もじきにそうなる」
声のトーンが落ち、某の温度が下がったかと思えば――両手を大剣の刃めがけて構え――挟んだ。
真剣白刃取り。彼女の両手が剣の刃を挟んだ瞬間に巻き起こるは、旋風、爆発、そして、鎌鼬。
其の『竜』が、仲間を護るならば――暗夜を祓う暁光と成る。
本来ならば白刃取りで受けることなど決して許されぬ破壊力を秘めた『大帝の剣』。だが、それは確かに彼女の眼前で、『止まっている』。
彼女の全身は、刃を挟んだ瞬間に発生した『力と力のぶつかり合い』によって発生した衝撃波により、すでに浅くない切り傷が刻まれている。滴る血液が、幾重にも破れた黒の服飾らを深紅に染め上げていく。
上から一方的に押さえ込まれているためか、片膝をついて徐々に足場に膝がめりこんでいく。膝をついている方の足が軋み、悲鳴をあげはじめた。
弥助はそのまま押し切ろうと力を込めるが――なぜか『押し切れない』。状況、力の差、どこをとっても自分が有利。なのに、王手をかけられない。『チェック』はできるのに『チェックメイト』ができない。
「大事そうね、この”ただの”剣。がっちりと私で固定してあげる」
身にうっすらと『暁光』を宿すヘンリエッタ。彼女に傷が刻まれ、血を零すほどに――それの輪郭が強まっていく。一瞬、困惑する弥助。彼女から剣を取り上げようとするも、それすら微動だにしない。
「――ここで死ねよ従属者。私達を下したい割に意志が弱すぎる」
声のトーンがさらに一段、深みへと沈む。それは、『悪の花』。
依然として力の放出が続く『大帝の剣』。それの余波が彼女の頬を切り裂き、貌を紅に汚す。が、それは少しずつ『塞がっていて』。
「忠義?片腹痛いンだよ。死ぬ程度の覚悟で、私たちの前に立つな」
蒼の放出が千切れた、瞬間――弥助の横っ面に『拳』がめりこみ――『ブッ飛んだ』。
「な――」
思わず剣の柄から手を離し、置き去りにされる景色を整えようと受け身をとろうとし、腹部に衝撃が走る。
「か、は――」
呼吸が、できない。衝撃で滲む視界。だが、それでも、目の前にいるのが『誰』なのか理解できた。其れは、意思の怪物、『叡智』を持つもの、『傲慢不遜』たるもの。
「ハティはやはり”あれ”を止めてくれた」
立て続けに繰り出される拳の連撃が胸部、腹部にそれぞれ数発めり込む。それと同時に弥助の鼓膜に響き渡る、灯理の声。
「ハティは必然、絶対、しくじることはない。貴様とは違ってな――」
彼の全身めがけて浴びせるように――掌底、膝蹴、蹴撃、殴打、蹴撃、殴打、蹴撃――。
防御の体勢をとろうと身構えようとするも、それらをすり抜けるようにして放たれ続ける連撃の嵐。無秩序な乱打にみせかけた、計算されつくした『念動力の極致』。
「ところで……なんだ、その髪型は。ふざけているのか」
黒の靴裏、それが強かに弥助の鳩尾めがけ振るわれ、突き刺さった。『くの字』に折れ曲がった弥助が思わず喀血し、灯理のスーツを……突き出した足を赤色に汚す。
「手入れする余裕があるとでも言うつもりか? ぶち殺す」
空中で一回転した後に放たれるは、弥助の顔面めがけた回し蹴り。何かが弾けるような轟音が鳴り響く。
衝撃を和らげるために大きく吹き飛んだ弥助だが――背中に衝撃が走り、血が噴出した。
「では、第二幕といこうか。――叩き潰す」
背面から鷲生の声が聞こえる。振り向きざまに腕を薙ごうと弥助が身構えるも、その腕に『鞭状に変形させた刃』が絡みつき、切断。
声にならない声をあげた弥助が空中でたたらを踏み、おびただしい量の血潮と片腕が大渦の底へと落ちていく。
続けざまに繰り出されるは、某を振るい続ける――所謂『乱打』。
だがこれもまた、素人が我武者羅に振るうそれとは訳が違う。
それは残像すら残さぬ『刃』の領域。只々無心に、弥助の四方から鞭状の『刃』が喉首をかっ切らんと飛来し、弥助が防御姿勢をとっても軌道をずらされ、隙間に刃が突き刺さり、全身を紅で染め上げていく。
一手先、常に一手先を往く卓越した技量はまさに『羅刹』。常に動きを読み切り、弥助の全身をズタズタにしていくその刃はもはや『生きている』ようでもあって。
「挟撃の時間だ。貴様を上から下まで凹々にしてやる!」
合流した灯理が、鷲生と挟みこむように連撃を叩き込んでいく。
前門の虎、後門の狼とはまさにこのことであろう。灯理の連撃を防ごうとしても、鞭打ちしなる刃がそれを許さない。どちらかを防いでも、どちらかが直撃する。
「オオオオオオ!」
残された片腕で『闘神の独鈷杵』を構え、それを即座に握りつぶして『割った』。
即座に巻き起こるは雷の渦潮。彼を中心に展開されたそれにより、二人は咄嗟に距離をとる。
「チッ、往生際の悪い……。死に際の『あがき』ってやつか」
思わず不満げに舌打ちをする灯理。
「――いや、探偵女史。あれは『すぐに止まる』」
天をあおいで、ほんの僅かに口角を上げる鷲生。灯理はそれをたどるように空を見上げ――同じく笑った。
『イグニッション』
暗雲を裂き、天上から一筋の『光』が大渦を貫いた。否、それは人。否、それは『宿る者』。否、それは『真に近づいた者』。
その者の名は――ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)。
一度負傷し撤退した彼は、『真なる姿』へと近づき、再度この戦場に降り立ったのだ。全身の殆どが、甲冑や甲殻のような……名状しがたい異形へと成り果てているが――未だそれは『完成形』ではない。
だが、それでも今の彼は、この雷の大渦を『消し飛ばす』に足りる、キーマンとなりえる力を内包している。
「これが、私の、必殺」
その身に『黒剣』を宿す。それは黒い鎧となり全身を包み、現れるは『黒い騎士』。その手に宿すは『黒剣』。
――秒速約69m、18連撃――
「目標、補足」
大渦の中心にいる弥助を、鎧の中に秘めたる『光』で捉える。刹那、彼の身体が『ブレた』。
外周を削り取るように、十の閃光が『ほぼ同時に』迸る。雷よりも疾く鋭いそれは、雷槌を霧散霧消させるに十二分な力を持っていて。
「もっと速く、早く、疾く――」
十の光はそれぞれが、彼が放った『剣筋』。加速を繰り返し、大渦の中で舞い、嵐を『切り取っていく』。
一つ、二つ、三つ――。
動くことのできない雷の大渦はいわば巨大な的。回避など不可能。
数発の雷が彼の身体を直撃したが、彼の身体に宿る『光』が煌き、衝撃を薄めていく――彼の足取りが止まることはない。
外周部分が『ちぎれ落ちた』。即座に内周部分へと侵入し、『光』が舞い散る。
より雷エネルギーの濃い内周部分でもやることは変わらない。
只々、『光』と『剣』の協奏曲を紡ぎ続け、破壊の渦を消滅させていく。
瞬く間に内周も六の光で消し飛ばし、中心部分に『唯一』の光が、”差した”。
「――っ」
大渦が消失し、空中に投げ出された弥助アレキサンダー。彼の胸部には、『穿孔』が空いていて――。
「あと一つ、残っている」
放たれたのは”十七”。最後の一筋が、彼の残された片腕によぎり――線に沿ってずれ落ちた。
緩やかに空を彷徨った末に――落下していく弥助。
だが、その真下では『ただの剣』を片手に持つヘンリエッタの姿が。
「さァて、絶滅のお時間だ」
剣は剣豪に渡すべし――持っていた剣を上方にいる鷲生めがけて投げ飛ばした後、軸足を後ろに構え、もう一方の足を大きく振り上げ、頭を振りかぶり――。
空気が震える音、空気が弾ける音、巨大な岩が大地に激突するかのような音――それらが混ざりあった轟音と共に、落ちてきた弥助めがけた『頭突き』が直撃する。おおよそ『頭突き』のそれとは思えない重厚な音を鳴り響かせた後に、彼は幾ばくかの骨を粉砕しながら空を舞う。
そこに待ち構えるは、『ただの剣』を構えた鷲生。
「少々刀身が太すぎるが――まぁいい。お前を爆発させるには十分だろう」
刀部分の峰で吹き飛んできた弥助を跳ね飛ばす。より高く、弥助を空に舞い上がらせた後に、腰を深く落とし構えるは『居合』。
「剣とはこう使うのだ。よくよく覚えて、逝け」
一閃。極限まで集中された力を以て放たれたそれは、肉厚で鈍重な両手剣であるにも関わらず、『振るわれた後』しか見ることが能わず。風切り音を残し放たれた一撃は僅かに遅れて……弥助の全身を刀傷と打撲傷で紅に染め、吹き飛ばした。
「そら、おまけだ」
鷲生もまた『怪力』の持ち主……両手剣を片手で悠々と持ち上げると、吹き飛んでいく弥助の胸部めがけて投げ飛ばし、突き刺す。
「さて、終着点はこの私」
吹き飛んだ先には、笑顔で拳を振りかぶる灯理の姿。ヘンリエッタの『暴力』とも違う――『念動力』の気が、周りの空気を巻き込み、彼女の振りかぶっている拳に集約していく。
「念動力の出力は意志に比例する」
空気が巻き込まれゆく音で辺りが振動し、躍動し、胎動する
「できると思えばできる やれると思えばやれる」
風が鳴る。空間が嘶く。拳から、何かが割れる音が聞こえる。
「私は私を信じている 私の念動力に不可能はない」
眼前まで迫った、弥助の頭めがけて――拳を打ち放ち――。
「爆ぜよ」
其れは、『大海を裁ち割る者』。
大成功
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