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エンパイアウォー⑱~正解は? 越後ドラゴン!

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #上杉謙信

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●『人軍一体』車懸かりの陣
 いってみればそれは、オブリビオンで出来た台風のようなものだ。
 いくつもの列を作ったオブリビオンを放射状に配置し、車のように回転させる。前線を駆け抜けたオブリビオンの戦列は、そのまま陣の後方に戻る。入れ替わりに、後方にいた戦列がせり出してくる。戦闘にて目減りした分の戦力は、後方を駆けている間に骸の海から補充される。
 誰が呼んだか、車懸かり。まるで、オブリビオンの特性を活かしきり、効率よく指揮するために編み出された戦術であるかのようだった。
 その車輪の軸、台風の目にあたるところに、彼はいた。
 目元涼やか、居住まいの凜とした、苦み走った抜群の美丈夫。
 越後の龍。毘沙門天の化身。軍神。畏敬を以て様々な呼ばれ方をする、戦国の雄。
 上杉謙信。かの名将が。

●ドラゴンキリング!
「史上においては、私利私欲の合戦は嫌っていた一方、筋の通った陣営に助勢するのには躊躇しなかったとか。秩序を重んじたともいわれてるし、オブリビオンでさえなけりゃ、こっちの味方に引き込めそうな性格じゃないかって気もするけど……」
 そう言いつつ、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)は首を横に振った。イフを語っても詮無きこと。生前に義将の鑑であったとしても、オブリビオンはオブリビオン。『今』を生きる自分たちにとっては、不倶戴天の敵である。
「んで、ここにいる皆には、他のメンツが車懸かりを食い止めている間に謙信のところに突撃してもらう。狙うは大将の首一つ、てヤツだぁね」
 突撃ルートの確保については、他の猟兵たちが奮戦してくれるので考えなくていい。
 つまり、上杉謙信と対峙した後、いかにして彼を攻略するかに全身全霊でもって注力できるということである。
「まあ、何だ。たとえば絶対に先手を取られるから対策が要るとか、そういう縛りはない。ただ、何つーか……シンプルに強い。アホみたいに強い」
 難しい顔をしながら、朱毘が言う。
 これという有効な搦め手や策略を必要とせず、純粋にゴリ押しが通用するという点はありがたいといえばありがたいが、ゴリ押すには押す力の巨大さが要求されるということである。少なくとも、無策で単騎で挑んだとしても通用しないのは、確実だ。
「ちなみに謙信が装備しているのは、毘沙門刀っつー十二本の刀だ。刀の属性は、それぞれ水、光、土、火、樹、薬、風、毒、氷、闇……それから、アンヘルブラック、ディアブロホワイトっていうらしい。だから何だって話だが、まあ大雑把に、何にでも対応できるだけの柔軟さがあるってことだよな」
 そこまで言って、朱毘はふう、と一つ嘆息する。
 これで、伝えうる情報は打ち止めである。確実な勝利をもたらすため、できれば謙信の弱点の一つも伝えたかったところだが、そんな都合の良いものまでは見えなかったのだった。
「それじゃ……天下太平のため、ってのもベタな文言だけど、皆、力を奮ってくれ」


大神登良
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。

 この戦場の敵は、ボスオブリビオンの上杉謙信一人です。オープニングにあります通り、謙信に至るまでの道程に関してプレイングを割く必要は一切ありません。
 戦場の地形は、ごく普通の野っ原だと思って下さい。また一応、周辺では今なお猟兵vsオブリビオンの軍勢の戦闘が行われているはずですが、基本的にこの戦場への影響はありません(自由に動き回れる範囲に限りがあるかも? くらいですが、よほど特殊な戦術を想定しない限り、戦闘への支障は生まれません)

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『軍神『上杉謙信』』

POW   :    毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    毘沙門刀車懸かり
自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:色

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

梅ヶ枝・喜介
おれァ学がねえんでさ、上杉のコトなんざ触りしか知らん!

だが義を知る御仁ってぇなら諦めるべきじゃあねェ!
おぶりびおんだろうと一声かけてみようゼ!

其処許!上杉謙信と見受けた!
義を知る勇士ならば答えられよ!

何故天下泰平を乱そうとするのか!
一緒に織田と戦うコトは出来ねぇのか!

そうか!無理か!
おう!ならば仕方なし!
どちらかが倒れるまで死合おうぞ!

話で解決は無理だった!すまん!

だがすげぇヤツと戦えるのは心地良い!
これでもおれァ武を極めんとする者の端くれよ!

十と二振りの厚みに、おれの渾身の一刀が通ずるか!
木刀は大上段!たとえ肉を裂かれ骨を断たれても一太刀馳走せん!

梅ヶ枝喜介!いざ参る!
上杉謙信!覚悟ッッ!!


フィロメーラ・アステール
(支援ゆえ連携不可なら不採用OK)
「敵の構えは万全みたいだな!」
突っ込むだけじゃ難しそうだぜ!

ここは支援に専念しよう!
【紲星満ちて集いし灯光】を発動!
光精と連携し、味方をサポートだ!

【第六感】を研ぎ澄ませて、敵の行動の予兆を掴むぞ!
それに応じて、いろいろな妨害を行う!

閃光を放ち【目潰し】を狙ったり!
手足や刀を【念動力】で【グラップル】して邪魔したり!
【オーラ防御】のバリアを張ったりするぞ!

敵の大技は【気合い】の【全力魔法】でバリア強化し対応!
制御の難しい技なら、多少、意識を向ける必要があるんじゃない?
そこを味方に突いて貰いたいな!
あたしが防御を担当すれば、天変地異の最中でも反撃できるはず!



●必ずや事に臨みて懼れ、謀を好みて成さん者なり
「上杉謙信公とお見受けする!」
 梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)が大音声にて言う。
 声を向けられた先に在るのは、両手に黒白一対の刀を持ち、身の回りに様々な色の十の刀を漂わせる、御高祖頭巾を被った長身の美丈夫。なるほどその姿、そしてその圧倒的な威圧感、それと見受けられもしよう、軍神『上杉謙信』その人であった。
「義を知る勇士ならば、天下泰平を乱すは何故か!? 一緒に織田と戦うコトは出来ねぇのか!?」
「……?」
 問われた謙信は、笹の葉のような鋭い目を一瞬だけ丸くした。この期に及んでそんな誘いを受けようとは、予想もしていなかった。
 微かに戸惑いつつ、しかし。
「出来ぬ。確かに、この世に生きる者にとって『今』の天下泰平を守ることは大義だろう。しかし、オブリビオンにとっての大義とは、この世を『過去』で埋め尽くすこと……貴殿らにとっては、世界を滅ぼすことと同じ。ゆえに、貴殿らの義と私の義は交わらぬ」
 謙信は淡泊に突っぱねた。難しくもなければ奇抜でもない、猟兵であれば誰でも承知済みの、オブリビオンの有り様を繰り言にしたに過ぎない。しかし、それ以上に意味のある言葉を重ねようがないのも事実だった。
「無理か! ならば仕方なし!」
 喜介もまた、あっさりと言う。最初から、駄目で元々というつもりだったのだろう。
 そして腰に差していた木刀を引き抜き、振りかぶる。木刀といって、その硬さは鋼鉄に伍するという代物である。構えは大上段、【火の構え(ジョウダンノカマエ)】。
「これでもおれァ武を極めんとする者の端くれよ! 十と二振りの厚みに、おれの渾身の一刀が通ずるか――」
「ちょ、ちょいとちょいと!」
 馬鹿正直に真正面から突撃しそうな気配を見せた喜介を、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)が慌てて制止した。
「敵の構えは万全だ! 無闇に突っ込むだけじゃ無理だよ!」
 策なく単騎で挑んでも通用しない。それは、事前にグリモアベースでも言われていたことである。
「うっ……だが、おれは他に芸もねぇし……」
「なら、あたしがやっこさんを妨害してみるから、その隙を突くんだ。それくらいの融通は利くだろ?」
「ふむ」
 鷹揚にうなずきつつ、謙信が口を挟んでくる。
「蛮勇は勇にあらず、猪突猛進もまた兵法とは呼べぬ。お可愛らしいフェアリーの御老体の方が、貴殿よりずっと武の極みに近いところにいるようだぞ、青年」
「うぐっ……!」
「挑発に乗らないでおくれよ。お前さんの一発が当たるかどうかがこの勝負の分かれ目なんだ、安っぽく振るっちゃいけないよ」
「むっ……心得た!」
 フィロメーラの言葉に喜介はうなずき、上段の構えを維持して静止する。フィロメーラのクレバーさも見事だが、喜介の素直さも褒めるべきか。
「さあ、しばらくあたしに付き合ってもらうよ! 光輝の縁を知る者、集まれー!」
 フィロメーラの号令と同時、周囲がライトイエローの光に満ちあふれる。【紲星満ちて集いし灯光(スターダスト・シンクロニシティ)】によって集まったのは、個体一つを見れば羽虫ほどの大きさに過ぎぬ、光で体を成す妖精型の光精。しかしそれが二百五十を超える数も集まれば、なかなかの壮観である。
「行っけぇ!」
「ふむ……氷、火、風よ!」
 己に向かって殺到する光精の群れに対し、謙信は三本の刀を向かわせる。
 それらは空中でくるりと刀身を翻らせるや、氷嵐、火柱、竜巻を生み出し、光精たちを呑み込む。光精たちは氷雪のつぶてに打ち据えられ、炎に焦がされ、風に斬り裂かれ、数を減らす。
 が。
「多い、か」
 謙信の攻撃もそれなりの広範囲だったが、それでも光精を壊滅させるには至らない。百弱の光精が謙信に群がる。それら一つ一つの生み出すダメージは、謙信にしてみればそれこそ虫に噛まれるような程度に過ぎないが、何しろ数が尋常ではない。
 手足にへばりつく光精らをふりほどきつつ、両手の刀を閃かせる。だが、数を頼みに怯まず猛攻を仕掛ける光精らに、さしもの軍神もたじろぐ。
 今と踏んだ喜介の目が、カッと大きく開かれる。
「梅ヶ枝喜介、いざ参る!」
 真っ直ぐな踏み込み、そして真っ直ぐな振り下ろし。粗野なようであり、しかし洗練もされている、最速最大威力を期した一閃である。
 謙信はそれを迎え撃つような動きをできずにいる――彼自身に限れば。
 謙信の周囲にあった毘沙門刀のうち、水、土、樹の二本が謙信をかばう位置に動く。そして、喜介の木刀を挟むようにして受け止めた。
「――!?」
 がっちりと止められ、木刀はそれ以上進まない。並み外れた剛力を持つ喜介が渾身でもって押し込んでも、微動だにしない。
 ゆるりと振り返りつつ、謙信が吐息をもらす。
「貴殿一人の太刀を受けるのに十二振りも要ると思ったか? いや、三本までも使わせたのだから、むしろ誇って良いのだが」
 退かねばと思った喜介だが、木刀は固く挟み込まれ、引けども動かない。
「まず一人」
 言いながら謙信は右手のアンヘルブラックを払うように振り、喜介の首を狙う。
 刹那、一つの光精が謙信の顔の前に飛来し、一際強い閃光を放った。
「!?」
 謙信の体勢が大きく崩れる。
 その隙に光精の三つほどが闇の毘沙門刀に張り付いて押し返し、喜介の木刀を、ひいては彼自身の身を自由にさせてみせる。
 先刻に比して半端な姿勢ながら、喜介が木刀を振り下ろす。
「でやぁっ!」
「……ッ!」
 とっさに謙信は、左に持つディアブロホワイトを天秤棒よろしく肩に担ぐようにして構え、木刀と頭の合間に差し挟む。
 どづん! と。
 減じられてなお恐るべき威力の一撃に防いだ刀ごと押し込められ、蛙よろしく地を這うような格好になるまで圧される。謙信の両の足が地面にめり込んで亀裂が走り、その身から全身の骨が余さず軋むような音が響く。
 ダメージは少なくないはず――だが、彼は健在だった。極度に低い姿勢からアンヘルブラックを薙ぎ、喜介の向こうずねを斬っ払う。
「いだっ!?」
 もんどり打って倒れる喜介を放置し、謙信はフィロメーラに向かって闇の毘沙門刀を飛ばす。
「う、わっ!」
 悲鳴を上げつつもフィロメーラは、全身をレモンイエローのオーラで包んだ。彼女の作り得る全力のバリアだが、毘沙門刀を真正面から弾き返せるほどかといえば、微妙なところ。
 が、切っ先の逸らすだけなら充分だった。ビッ、とオーラだけを浅く裂きつつ、闇の毘沙門刀は明後日へと飛んでいく。
 と、その合間に、喜介も後方に跳んで体勢を立て直した。
「ふ……一筋縄では行かないか。それでこそ猟兵よ」
 謙信は言って、闘争を愉しむかのように口の端を吊り上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夜羽々矢・琉漣
後に見つかった魔軍将二人が先に沈んでるの、大分笑えてくるんだけど…。

UCで召喚するのは刀と同数の12人。攻撃に耐える「タンク」って役をするナイトってジョブのキャラたち。俺は「Twilight」の【迷彩】で白の草原に隠れて、腹這いの状態で「Nigredo」を構えて狙撃の機会を狙うよ。
刀を召喚したキャラに抑えさせて、謙信の動きを【情報収集】して【見切り】、隙が見えたら狙撃する。外したら【ハッキング】で反撃の刀に介入して動きをおかしくして、さっさと逃げさせてもらうよ。接近戦は分が悪いんでね。
俺だけに狙いを定めてくるようなら、召喚したキャラを一つに纏めて嗾けて時間稼ぎにしようかな。


ナイ・デス
変身した姿で戦場へ

……信玄さんは、見た目も虎ですが
あなたは、見た目もドラゴン、というわけでは、ないのですね

なんて。無駄話
名乗り、挑みます

名は、ナイデス。首を、とります

……名はない、と受け取られたら心の中でだけ訂正

天変地異へ、秒速68m以上の飛翔突撃
【オーラ防御】と鎧で軽減
【覚悟と激痛耐性】で突破

『もっと、速く』

【忍び足ダッシュ】音もなく更に加速
『瞬断撃』

毘沙門刀の放射もされるが
腕の刃を振るい自身を【かばい】相殺
しきれず刃が折れ、翼を、足を失っても
【念動力】エネルギー放って自身を【吹き飛ばし】止まらない

黒剣攻撃回数9倍
【暗殺】急所狙い【鎧無視攻撃】
刃が折れていても、その時は拳で
全身の鎧も、黒剣



●武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つことが本にて候
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)の姿は、常のような白髪、白皙の少年のそれではない。【エクストリガー『ブレンホルズ』(エクステンドオーブ)】によって全身を闇色の鎧というか、機械生命体めいた装甲で隙間なく覆っている。
 それでも、声はいつもと同じであった。
「あなたは、見た目がドラゴン、というわけでは、ないのですね」
「……何の話だ?」
 ナイの言葉に、謙信は首を傾げた。
「……いえ、ただの無駄話です。私の名は、ナイ・デス。あなたの首を、取ります」
「くれてやるとも。貴殿が私よりも強ければな」
 あっさりと言い放つや、謙信は水と土の毘沙門刀を繰り出した。
 刹那、水の毘沙門刀は鉄砲水、土の毘沙門刀は岩雪崩を起こす。同じようなユーベルコードを使いこなす猟兵やオブリビオンもいるにはいるが、流石に軍神の生み出すそれは規模の大きさが違う。
 その大規模な天変地異の暴力の中に、ナイは躊躇なく突入した。
 金色のオーラに身を包みながらの、スポーツカー並みの飛び込み――跳躍ではなく、飛翔。全身鎧と相まってかなりの防御力を持ちながらのそれは、濁流の比較的弱いところや土石の薄いところを突破しつつ、謙信へと迫りゆく。
「なるほど……だが」
 次いで謙信が繰り出したのは、光の毘沙門刀。翻るかの刀が再現するは、落雷の雨。
「くっ……!」
 速度に優れるそれらに体のど真ん中を撃ち抜かれ、さしものナイの足も止まる――と、思いきや。
「まだ……!」
「ぬ――」
 ナイの体が空中で不自然に『弾む』。
 軍神の目をもってしても見切れなかったその挙動は、ナイが念動力によって己の体を吹き飛ばしたゆえのものであった。
 間合いの内側に体を無理矢理ねじ入れるような、強引な一手。それでも体勢を保ちつつ、両手の籠手と一体化した黒剣(といって、そもそも全身鎧が黒剣の変形したそれなのだが)を振りかぶる。
「見事ではある。が、そんな力押しが通じるとでも――」
 残りの毘沙門刀を己の体の周囲に巡らせ、謙信はそれらを丸鋸よろしく回転させた。
 剣速はほぼ互角。が、間合いの差によって謙信の方が有利。
 まずい、とナイが思った刹那、鈍色の影がナイと毘沙門刀の間に割り込んできた。
「な――」
「あ?」
 それは謙信にとっても、そしてナイにとっても予想外の闖入者だった。
 鈍色の中世風のフルプレートアーマーに身を包み、さらに分厚いタワーシールドを構えた、ドワーフほどの大きさの騎士。フルフェイスメットの頬には「2」という刻印も見える。
 それが五、六体ほど、盾を前にしつつ殺到する毘沙門刀に向かって突進していく。
 ごごぎぎん! と断続的に金属音が響く。毘沙門刀とタワーシールドの拮抗は一瞬に過ぎず、刃は盾をあっさりと断つ。次の一瞬にして、甲冑の半ばにまでも容易に斬り裂く。同時、鈍色の騎士は弾けるように消え去った。
 鎧袖一触といって良い――が、そうやって稼がれた短い時間が、ナイの剣を謙信へと届かせる。
「――ッ!」
「ぬぅ!」
 神速の刺突、一瞬九撃。速度だけの雑な攻撃ではなくして、鎧の隙間や急所を狙った精密なものである。
 それを迎える謙信は、両手の黒白一対の刀を急所を守るように振るう。彼の剣さばきもまた神域にあり、防ぐこと四撃、辛うじて切っ先を逸らすこと三撃――しかし、二撃はどうにもならず、首の頸動脈と左脇腹を深々と斬り裂いた。
 さらに。
「がッ!?」
 謙信の眉間が弾け飛ぶ。
 それもまた、ナイによるものではない。ナイも、また謙信も全く気付かぬところ、野っ原のいずこかから虚を突いて飛来した銃弾によるものであった。
 意図せずして噛み合った、恐るべき猛攻。
 だがさらに恐るべきは、常人ならば――いや、並大抵のオブリビオンであっても絶命しているであろう猛攻を受けながら、なお健在な謙信か。
 仰け反りつつも闇の毘沙門刀を閃かせ、暗黒の霧を生み出す。
「何――」
「……っ」
 視界を遮られ、ナイも、伏せる狙撃者も、追撃の機を失う。
 一方の謙信は弾丸の衝撃から狙撃者の潜む方向を割り出し、毒の毘沙門刀を飛ばす。
「ちっ」
 正確に飛来してきたそれを、迷彩を利して隠れていた狙撃者――夜羽々矢・琉漣(コードキャスター・f21260)は【戦闘式・幻想現像(コード・レヴェリー)】で生み出されていた騎士を合体させ、防がせようとする。騎士の頬に刻まれた刻印は「13」、なかなかの値である。
 ごづ、と鈍い音が響き、今度は盾の半ばまで貫いたのみで、騎士は毘沙門刀を受け止めてみせた――が、毘沙門刀から流し込まれる毒までは防ぐことあたわず、またしても騎士は消滅する。
 それでも、その場から琉漣がポジションを改めるに充分な間は稼いだ。
「伏兵とはな……味な真似をする」
 首から、腹から、割れた額から血を流しながら、それでも謙信は口の端を笑みの形に歪める。
「卑怯と罵るかい、軍神?」
「いいや。私自身はさほど使う機会がなかったような覚えがあるが、別に嫌いな戦法でもない。戦は勝ってこそ。どんな手でも使ってくるが良かろう」
「流石、腹の据わりようが違う、な!」
 素速く移動しつつ、琉漣は愛銃Nigredoを撃つ。先ほど謙信の額を弾いた超音速の弾丸が、再び彼に迫る――が、今度は謙信の右手一閃、アンヘルブラックで斬り弾いてみせた。
(……やっぱり不意を突けなきゃ厳しいか)
 畏怖といらだちが、同時に琉漣の胸に去来する。
 とはいえ、謙信が決して小さくないダメージを負っているのは間違いない。
 決着の時は、着実に近づいていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

大崎・玉恵
音に聞く越後の龍か。
なるほど、大層な気迫じゃ。かつてわしが立ち回った烏合の衆の朝廷軍数千にも勝ろうて。
ならば、持てる力を尽くして戦うのが筋というもの。技比べならば負けるつもりはないぞ。

【御社・出雲八重垣】で社を象った結界を形成。奴の攻撃をしのぐ。
毘沙門刀を解き放った時が好機じゃ、多重結界を差し向け押し返し収束させる。
……お主、手は二本しかなかろう?十二振りを、自らのいる空間が狭まり行く中で御しきれるかのう?
抗いきれずにお主が縛られたとき、自らの得物の鋭さに裂かれることとなろう。
脱してくれば大したものじゃが、その時は再び結界を差し向けよう。さぁ、どこまで耐えられるかのう?


ナイ・デス
伏兵に――私を忘れては、いませんか?

【地形の利用】暗黒の霧で見失った。それは謙信も同じか
【迷彩】で利用。姿を隠し【忍び足ダッシュ】

先の攻防経験も合わせ【第六感で見切り】【かばい】受け【オーラ防御】軽減し
【覚悟、激痛耐性】怯むことなく

『瞬断撃』
秒速1.4km以上の【暗殺】急所狙い【鎧無視】黒剣による9連撃
先と同じ――否

真の姿開放

背から光【念動力】を放ち、更に加速【自身吹き飛ばし】
神速の斬撃
そして、終わらない
【生命力吸収】斬ると同時に力を奪い、一瞬の隙を作りだして

【2回攻撃】『瞬断撃』
神速を越えた超神速による、再びの9連撃

私達は、今を生き続けます
過去を越えて、糧として
強く、なります



●極楽も地獄も先は有明の月の心に懸かる雲なし
「なるほど、その気迫――かつてわしが立ち回った烏合の衆の朝廷軍、その数千にも勝ろうぞ」
 十代の少女にしか見えぬ妖怪狐、大崎・玉恵(白面金毛・艶美空狐・f18343)が言う。
 朝廷軍というのが具体的にいつの時代のものを指すのかは不明だが、明確に朝廷が軍権を掌握できていたのは、少なくとも五百年は前である。それを懐かしめるなどと――はったりか、事実か。
 もっとも、どちらであっても謙信にとってはどうでも良かった。
「それは、貴殿は幸運であったのだな。私とて俵藤太や八幡太郎の武に並べるかと言われれば、自信は持てぬ。貴殿が朝廷軍を『烏合の衆』などと呼ぶからには、そういった真(まこと)の武士(もののふ)と戦ったことはないのだろう」
 背伸びする少女だろうと、年を経た古妖であろうと、恐れるに足りぬ者には違いなし。謙信の所感は、そんなところだった。
「ふ、言ってくれるのう。ならば、真の武士とやらがどんなものか、お主に見せてもらおう」
 舞扇「白面」でピシリと謙信を指し、玉恵は言った。
 同時、玉恵の周囲に半透明の木造建築が出現する。その造りは古式の建物、もっといえば古い神社の本殿を連想させる。
「……む?」
 異様な気配を放つそれと対峙する謙信の眉間に、しわが寄る。
 だが【御社・出雲八重垣(ミヤシロ・イズモヤエガキ)】の効能はそれだけにとどまらない。
「八重垣作る、その八重垣を」
 玉恵の詠唱に従い、謙信の周囲を薄雲のような何かが覆っていく。
 だが、視覚からの情報以上の威圧感を謙信は感じていた。空間それ自体の変質。結界――それも、多重の。
 次第に結界は、謙信を封じ込めるように狭まっていく。
「空間が狭まり行く中、十二振りの刀を御しきれるかのう?」
 勝ち誇ったように、玉恵が言う。このまま空間が狭まっていけば、いずれ鋭利なる十二振りの牙が、龍自身の体を噛みちぎるだろう。
 だが、自らの牙を喉元に突きつけられた格好の謙信自身は、涼やかな表情を保ったままだ。
 謙信の周囲で整然と並ぶ十振りの中から薬の毘沙門刀がするりと躍り出るや、狭まった空間を危なげもなく撫で回す。瞬間、パキン、とプラスチックが割れるような音がして、結界が砕かれた。
「な……!」
 呪術に長じた玉恵なればこそ、何が起きたのか瞬時に把握できた。
 結界を張るというのは、本来の空間の在り方をねじ曲げる行為である。いわば空間に対して状態異常攻撃を仕掛けているようなもの。その空間そのものを、薬の毘沙門刀の効果で『治療』したのである。結果的に、結界が破壊されたように見えたわけだ。
「そんな器用な真似までできるとはのう……じゃが!」
 砕かれた結界は一重のみ。玉恵はすぐに結界を重ね、再び謙信を拘束に掛かる。しかし。
「良き技だ。が、相手が悪かったな」
 結界が狭まるより、また玉恵が結界を補充するより、謙信の剣さばきの方が速い。八重垣のごとき多重結界が、次々に断たれ、斬り拓かれていく。
「ぐ……!」
 玉恵の顔が悔しげに歪む。足止めにはなっているが、それ以上にはなりそうにない。
 あと一手あれば……と、思った、その矢先。
「――私を忘れては、いませんか?」
「!?」
 無音の踏み込みで謙信に肉迫するは、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)であった。
 黒剣を変形させた漆黒の全身鎧、その背面部分からジェットよろしく金の光が噴出し、ナイの体を加速させる。その速度は先刻のそれを凌駕し、恐るべき神速の領域に至っている。
 再び謙信の急所を狙い澄まし、貫手めいて鋭くまとめられたナイの両手が風を斬る。
 だが、速さは増しても手段そのものといおうか、挙動は同じであった。
「同じ手が通じるほどこの謙信が迂闊と思ったか」
 的確な太刀筋で、謙信は両手に握った毘沙門刀を振るった。その刹那にして、黒剣で覆われた頑強なナイの手が両方とも斬り裂かれる。いずれも、痛みに対して耐性のあるナイをもってしても、二の太刀が許されぬほどの大ダメージだった。
「がっ……!」
「仕舞い……」
 謙信の【毘沙門刀車懸かり】により、九振りの毘沙門刀が間髪入れずにナイに襲いかかる――いや、常ならば間髪すら入れる隙なぞ与えることはなかったはず、なのだが。
(鈍い!)
 玉恵の結界によって、毘沙門刀の動きが窮屈だった。薬の毘沙門刀によって押し勝っているとはいえ、常に比して呼吸一つ分ほどの停滞が生まれる。神速を誇る敵に対して、致命的といえる時間が。
(――いや、両手が裂かれているのだ。この程度の隙ができたとて、私を討つ手立てなど……!)
 謙信がそう思った刹那、ナイの頭部がまたも『弾み』、謙信の胸に飛び込むような軌道を描く。
 謙信は知るや知らずや、ナイを覆う甲冑は甲冑にあらず、兜も兜にあらず、黒『剣』であることを。
 兜の一部が角のごとく錐のごとく、鋭利に伸びる。最後の一伸びによって超神速を得たそれは謙信の心の臓を貫いた。
 超常の中の超常、軍神と謳われしオブリビオンたる謙信にとってさえ、その一撃は決定的な致命傷であった。
「両腕を殺されながら、なお……前に出る、だと……!」
 ごぼっ、と大きな血塊を吐き出して、謙信はうめいた。
「死を必するものは生く……死中に活を求めたか、見事なり、少年……」
「いいえ」
 謙信の賞賛に、しかしナイはきっぱりと否を唱えた。
「私達は、今を生き続けます。過去を越えて、糧として……だから、強く、なれます」
 ナイの言葉に謙信は、笹の葉のような鋭い目を一瞬だけ丸くした。その一瞬の後、瞑目する。
「必死にあらず、必生の覚悟か……なるほど。ふふ、流石は猟兵たちよ、ますますもって……」
 そこまで言って謙信は、越後に降る雪のごとく白き千々のモノへと変じ、消え散った。
「だから……強く、なり、ます」
 精魂絞り出し尽くしたナイが、その場に倒れ伏す。構うまい、今は倒れようが寝ようが気絶しようが、彼の脅威になるようなモノなどないのだから。

 越後の龍殺し、成れり。この場の戦は、猟兵たちの大勝利をもって幕引きとなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月26日


挿絵イラスト