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ハッピーエンドのその向こう

#アリスラビリンス

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#アリスラビリンス


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 うららかな日差しの中、白く丸いテーブルを囲んだ二人の女が紅茶を飲んでいた。
 穏やかな午後。女性と少女。はたから見れば優雅なティーパーティーの光景。
「さぁ、こちらのクッキーも召し上がれ。私のメイドが腕によりをかけて作ったのよ」
「いただくわ」
 交わされている言葉も至って普通の幸せな時。お互いに柔らかな微笑みを浮かべている。
 しかしそれは、ふと少女が表情を曇らせたことで終わりを告げる。小首をかしげ、虚空をみつめている少女。女性がゆっくりと目を細めた。
「どうしたのかしら?“アリス”」
「…そろそろ、帰らなくちゃ」
「どうして?」
 優しいのに冷たい、束縛の言葉。少女の頬に白い指が伸ばされ――それは唐突に軌道を変えて少女の首へ。表情はいまだ優しくやわらかな微笑みで、女性はその首を少しずつ絞めていく。
 少女の顔色が次第に悪くなり、苦しそうにもがき始める。ゆっくり、ゆっくりと真綿で首を締めるようにじっくりと。

「ここにいればいいわ。帰る必要なんてないでしょう?ねぇ?」

 少女の瞳に涙がにじむ。もがきながらも頷けば、パッとその手は離された。にっこりと何もなかったかのように笑う女性。再び紅茶とテーブルに置かれているお菓子を少女へと勧め…女性が艶やかに舌なめずりをした。
 少女の目から、理性の光が薄れて――…。

 。

 ――グリモアベースにて。

「帰り道のあるアリスが、オウガに囚われています」
 そう語り始めたのは、グリモア猟兵の一人たる赤凪・風珀。赤いスカートを揺らして、いくつかの資料を両腕で抱えながら猟兵たちに声をかけた。
 その一言で、なんとなく状況を理解できる猟兵もいたかもしれない。それは、次ぐ言葉で疑問となるが。
「どうやら、茶話会をしているようなのです」

 赤凪の見た予知は、確かに茶話会の光景だった。きっと決定的な瞬間がなければ、そのままになっていたかもしれないほどに。
 小さな小さな茶話会。たった二人だけの、穏やかな時間。されど、それはオウガにとっての晩餐までの余興の時であり、アリスにとっては嵐の前の静けさのような時間だった。
 確かに見たのだ。光を失ったアリスを、オウガが捕食するその瞬間を。

「そのアリスは、帰ろうとしていました。どうか、助けてやってはくれませんですか」
 そこまで語り、赤凪は抱えていた資料からいくつかの紙を引っ張り出した。中身を説明せずにそれをパッと猟兵たちに差し出して、首を小さく傾ける。
「私が予知できたのは、アリスと、アリスを捕食しようとしているオウガだけでした。実は、ほかに何があるのか、把握できていないのです」
 それでも助けたいと思ったから、なけなしの情報をかき集めて寄せ書きした紙を差し出していた。助けに行こうと、元の世界に返してあげようと、そう思えるのなら。
 その紙を受け取り、かの地へと向かってほしいと願うのだ。

 赤凪は多くの言葉で飾らず、静かに請い願うように、ゆっくりと頭を下げた。


時巡聖夜
 どうも、こんにちはこんばんはおはようございます。時巡ともうします。
 四作目です。至らぬ点は多々あるかと思いますが、よろしくお願い致します。

 さて、今回の題材は『エンディング』です。
 皆様、マルチエンディング、お好きですか?
 …閑話休題。

 第一章では、小さくて愉快な仲間達のようなナニかを討伐していただきます。
 第二章では、アリスを縛るオウガを討伐していただきます。
 第三章は討伐完了後、アリスをもとの世界に帰せるように立ちまわっていただきます。相当のへまをしない限り、怪我をする可能性はありませんので、じっくりと向き合っていただければと思います。

 ◎→アドリブ・連携OK。
 ○→アドリブのみOK。
 △→アドリブ等控えめ。
 それでは、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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第1章 集団戦 『共有する者達』

POW   :    遊ぼう!遊ぼう!
自身の【食べたアリスの悲しい記憶】を代償に、【食べたアリスの楽しい記憶にあるもの】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【その姿に見合ったもの】で戦う。
SPD   :    見て見て!そっくりでしょ?
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【食べたアリスの記憶にあるもの】を作った場合のみ極めて精巧になる。
WIZ   :    お茶会しよう!色んなお話し教えて!
【食べたアリスの記憶の中にあるアリスの好物】を給仕している間、戦場にいる食べたアリスの記憶の中にあるアリスの好物を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かの地にたどり着いた猟兵たちが見たのは、ひとりの少女の後姿。それが“アリス”だとすぐに理解して声をかければ、その少女がゆっくりと振り返り…見返してくる瞳に、光はない。
 それでも少女は明るく笑顔を見せた。
「おにいさん、おねえさん。こんなところでどうしたの?」
 そう言った少女の腕に、桃色の小さな生き物が抱かれている。大きくコロンとした黒い瞳が少女の声に反応して猟兵たちに向けられ――その瞳は見つめれば深淵を覗いてしまいそうなほど黒く。
 きゅいっと空気を裂くような甲高い鳴き声を上げ、ソレは少女の腕を飛び出して猟兵と少女の間に立ちふさがった。

「…?どうしたの?」
「きゅい、きゅい!」

 桃色のハムスターを思わせるその姿で、猟兵たちに威嚇する。その声に呼ばれるように、何匹もぞろぞろと現れ少女をかばうようにそれぞれが威嚇をし始めた。
 それは何も知らない第三者が見たら少女と少女を守ろうとする小動物と、それを狙う武装した何者かという善悪の逆転をしかねない光景。
 少女が、猟兵たちに怯えるように身をすくませた。
 きっと、正気ではないのだろう。それはわずかに焦点の合わない少女の瞳が物語っていた。

 少女を正気に戻して、小さな桃色の生き物たちを討伐しなければ。

 ――――☆――――.

 少女『アリス』は現在正気ではありません。正気に戻さない限り『共有する者達』への過剰な攻撃を、その元来の優しい心故に妨害します。
 それを念頭に置いて、宜しくお願い致します。
栗花落・澪
その子達可愛いね
なんていうお名前?

…そう
この子達はどうしてアリスさんを護ろうとするのかな
アリスさんが好きだから?
それとも…

無理な攻撃はしない
初めは【オーラ防御、激痛耐性】を纏いつつ
敢えて攻撃を受けてもいい
撫でてあげてもいい

ねぇアリスさん
どうして一人でここにいるの?
貴方の望みはなに?
この世界は…貴方にとって、なに?

ゆっくり言い聞かせるように語りかけながら
彼女の記憶を揺さぶってみる

この子達も…還してあげないとね
音は…防げないでしょ?

【催眠歌唱】の子守唄の【範囲攻撃】で動きを鈍らせ
【優しい祈り】を込めた【破魔の指定UC】による光の【全力魔法】で
作られた偽物ごと包み込み
痛みを与えず眠るように浄化させる


ヴィオレッタ・スノーベル

帰れる場所…それがあるの、とても素敵なことだと思うわ
だから、アリスが自ら、留まる事を選んだのなら…ともかく
邪魔をするのは許せない
とてもきれいな世界だけど…善いことばかりではない世界なのね

かわいい子たち……でも、そう。分かるのね
けれど、だめよ。ここに留まるのは、きっと……

わたしはサポートに回ろうかしら
【聞き耳】で戦況に気をつけつつ、【目立たない】ようにアリスに近づくわ
「ねえ、アリス。…ダンスはお好き?」
近づいたら、アリスに声を掛けて、ぐいっと手を引っ張るわね
アリスがこちらを向いたら、無理矢理にダンスに誘いつつ、目を覗き込んで【催眠術】を
少しでも、妨害を止めさせたいわ

時間が稼げたら良いのだけれど


アルトリウス・セレスタイト

先ずはアリスを正気に戻すべき、ということらしい

魔眼・停滞でアリスが受けている影響を初期化
敵性個体が攻撃を行っているならそれもついでに打ち消し
これで戻らねば魔眼・円環でアリスの精神を復元

戻ったら攻撃に移行
魔眼・統滅で消去
見るだけで手順が完了する魔眼故、時間は極小で済む
視界に収まる全個体同時に、速やかに消去して終わらせる

アリスが正気になっても再度奪われる、という状態なら、自身はアリスのケアに専念し、他の猟兵に敵を任せる


園城寺・藍励
アドリブ連携歓迎
あらら……随分と警戒されちゃってるね。人見知りの子なのかな。(桃色の生き物に対し
ふふ、大丈夫、悪い人じゃないよ。キミ、見たところ迷子みたいだから、気になって声をかけてみただけ。もしよかったら、お父さんやお母さんを探すの、手伝わせてくれないかな。帰るべき場所に、連れてってあげる(アリスに対し

可愛い見た目して、敵なんだものね……ちょっと罪悪感湧いちゃう
けど、この子が帰る道を阻むなら……容赦はしないよ。ごめんね
ダッシュ、目立たないを駆使して空中戦、指定UCで薙ぎ払い、範囲攻撃で進行方向の敵さんを一網打尽かな
敵さんの攻撃は……この子の記憶?
何が来るかわからないし、第六感、オーラ防御かな



 少女と桃色の生き物の様子を見て、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)とヴィオレッタ・スノーベル(白き野に咲く・f18000)は顔を見合わせる。
 その後ろではアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)と園城寺・藍励(蒼天の白猫天使・f10781)が目線だけ合わせ、四人は状況把握のためか一瞬口を閉ざした。

「…先ずはアリスを正気に戻すべき、ということらしい」

 囁くようなひっそりとした声でアルトリウスが言う。その言葉に各々頷き、改めて少女たちの様子をうかがった。
 未だ怯えた様子で身体を縮こまらせ震える少女と、それをかばうように威嚇する小さき者達。
 その様子は、小さき者に手を出したらより少女をかたくなにさせてしまうことが容易に想像できた。
 思考を巡らしながら、最初に動いたのは藍励だった。

「あらら……随分と警戒されちゃってるね。人見知りの子なのかな」

 しゃがんで目線を近づけて、微笑んで見せる。その横に歩みを寄せ、澪も膝に手を当てて目線を近づけた。優しい藍色の瞳と琥珀色の瞳が小さき者達を見つめる。
 澪は目線はずらさず、少女へ問いかけた。

「この子達可愛いね。なんていうお名前?」
「名前…?」
「そう」
「…、…しら、ない」

 一瞬の間に、藍励が目線を少女に移す。怯えの中に、戸惑いを混じらせる顔色。その顔に、安心させるように笑みを見せた。
 澪は「そう」と小さく言葉をつけるだけにとどめて、小さき者達の気を引くように白い指先を近づけて揺する。きゅきゅ、と気を引かれて小さき者達が往々にしてその指先を見つめた。
 藍励は立ち上がってまっすぐ少女を見つめる。

「ふふ、大丈夫、悪い人じゃないよ。キミ、見たところ迷子みたいだから、気になって声をかけてみただけ」
「迷子…、?」
「うん。もしよかったら、お父さんやお母さんを探すの、手伝わせてくれないかな。帰るべき場所に、連れてってあげる」
「お父さん…おかあ、さん…?」

 怯えと戸惑いの色に、明らかな恐怖が混ざった。
 震える声に反応して、小さき者が声高に鳴き、気を引いていた澪の指に噛み付く。一瞬、痛みに顔をしかめて、それでも澪は【激痛耐性】でそれ以上の反応を示さぬようにした。

 二人が少女たちにアクションをしている間、魔眼で対処する術を探っていたアルトリウスと目立たないように少女たちの背後に回っていたヴィオレッタも、その状況変化に反応する。
 影響の初期化を行うべく少女を視ていたアルトリウスは、歪みかけた精神にいち早く気が付き【魔眼・円環】を発動した。混ざる恐怖と怯えと戸惑いを和らげ、できうる限り”正常”な状態へと復元をさせる。
 パニックを起こしかけていた少女が平静になる。それを確認したヴィオレッタが、背後からその手を引いた。
 引っ張られて驚いたように顔を上げた少女を、微睡みの紫が捉える。

「ねえ、アリス。…ダンスはお好き?」
「だ、ダンス?」

 驚きつつも手を引いてくるヴィオレッタの後をついてくるくると踊り出す。
 少女に触れたヴィオレッタを威嚇しようとした小さき者も、その様子に楽しそうだと思ったのか首(?)を傾げる。噛み付いていた澪の指を放し、ちょこちょことダンスをしている二人の後を追っていく。
 その隙に藍励はアルトリウスのところまで引いた。すこし申し訳なさそうに表情を曇らせている。

「ごめん、言葉選びを間違えた、のかな」
「いや…おかげで分かったことがあるから大丈夫だろう」
「何がわかったの?」

 同じくアルトリウスのところまで戻ってきた澪が首をかしげる。その琥珀を見返して、アルトリウスは顎に手を当てて己が読み取ったものを言語化するべく思考を巡らした。
 視界の端では覚束ないものの楽しそうにヴィオレッタと踊る少女が映っている。

「おそらく、“父”と“母”はカギだ。あのアリスの記憶のな」
「カギ…」
「…アリスさんは、…」

 澪が目を伏せた。それが遠めに見えたのか、ヴィオレッタが目を細めて――くるり、と少女を踊りまわしたかと思うと、澪のほうへと流した。
 驚きたたらを踏むもバランスを崩してしまう少女を、慌てて澪が受け止める。

「ちょ、ヴィオレッタさん!?」
「わたし以外とも、踊ったほうが…アリスも、たのしい」

 そう告げて、舞踏会の最中のようにスカートを軽く摘み上げて礼をした。小さき者達は、ヴィオレッタと澪の間まであとを追うも、状況が読めないのか足を止めてあちこち視線を動かしている。
 受け止めた少女の目を見て、澪は気が付いた。
 光がなく焦点のずれていたその目は今、まっすぐに澪の琥珀色の瞳を見ている。
 ――完全ではなくとも、正気を取り戻しつつある。
 それを悟り、澪はゆっくりと少女の手を引いた。

「ねぇアリスさん」
「…?」
「どうして一人でここにいるの?」
「…母さんが、ここに、いなさいって…、…?…ここは、どこだっけ…?」
「…じゃぁ、貴方の望みはなに?」
「…のぞ、み…?」

 足取りと同じくらいにゆっくりと、語り掛ける。少女の瞳が揺れる。小さな唇が、言葉を紡ごうと戦慄き――誰のものでもない、声がした。
 突然の声に五人の視線が集まる。そこには男が立っていた。この中に知る者のいない男。――アリスである、少女以外には。

「父さん!」

 少女が声を上げ、澪の手を放してその男へと駆け寄る。即座に四人は悟った。この男の姿をしたなにかは、先ほどまでちょこちょこと動き回っていたあの小さき者の一部が作ったものであること。
 臨戦態勢を取るのに目もくれず、少女が男に嬉しそうな声で言った。

「よかった、生きてる。死んだなんて嘘だったんだね」
「遅くなってすまないな、迎えに来たぞ」

 語られるその少ない言葉で、たどり着く答え。少女の記憶の中にあったであろう“父親”の姿を模した何か。
 早々に対処しなくては、取り返しのつかないことになりそうな予感をさせる、泥のような男の闇色の目。
 男と少女に一番近かったヴィオレッタが、少女の腕を引いた。

「え…」
「アリス、まだ遊びましょう?」

 親が迎えに来た子供に、まだ遊びたいと縋るようにそういって、見つめる紫色の瞳で【催眠術】をつかう。その目に囚われて、少女が一歩、ヴィオレッタへと近づく。

「まだ、踊りましょう」

 オブリビオンから引き離すことに成功した傍ら、気が立った様子の小さき者に向けてその刃と瞳を向けたのは、残る三人。
 先手必勝とばかりに、藍励は力強く地を蹴った。空中へと飛び出し強く輝く藍色で男を見詰め、その手に握る剣で男を中心とした"六芒星"を描きこむ。
「魔姫空封、幻姫時解――――参之式、終之型」

 収縮を始める斬撃の軌跡に、逃げるように飛び出してきた小さき者は、アルトリウスの発動した【魔眼・統滅】により、藍色に囚われて何を感じることもなく消去される。
「――消えろ」

 それでも取りこぼされ、四足で素早くアリスへと近づこうとしたものは、澪の【催眠歌唱】の子守唄に足を鈍らせる。還してあげたいという願いを宿した彼の放つ光に、眠りの浄化を与える。
「…おやすみなさい」

 小さき者が二人の手で葬られ、残された男が藍励の発動した【ヘキサグラム・ジ・エンド】の収縮に爆発する。
 少女『アリス』を捕らえていた『共有する者達』が討伐された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『黒百合の女王・ミスト』

POW   :    私の愛しき騎士とメイド達、私の声に答えて
戦闘用の、自身と同じ強さの【レベル×5の剣や槍で戦う騎士】と【レベル×5の魔法や飛び道具で戦うメイド】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    私の狐達から逃げられるかしら?
【伸縮自在の髪の狐達の噛みつき】が命中した対象に対し、高威力高命中の【扇による一閃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    さぁ遠慮せず、食べて飲んで楽しみましょう?
【メイド達が用意するお茶やお菓子】を給仕している間、戦場にいるメイド達が用意するお茶やお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は推葉・リアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 『共有する者達』が討伐され、少女『アリス』は力が抜けたようにその場にへたり込む。喰らわれた記憶の欠片が戻り、混乱したようにぽろぽろと涙をこぼす。
 そんな少女に猟兵たちが声をかけるより早く、新たなる声が空気を裂いた。

「貴方達、なんてことをしたの」

 凛とした冷たい女性の声。
 森の小道の先から鋭く飛んできたその声に視線を向ければ、そこに立っていたのは、黒百合を思わせる綺麗な女性。キリッとしていてなお柔和な印象を抱かせる姿。
 されど、その声と赤い瞳は氷のような冷たさを孕んでいる。
 猟兵たちをまっすぐとみるその氷の瞳は怒りを宿し、不機嫌そうに漆黒の扇を左の手のひらに打ち付けた。

「ここは幸せな世界よ。ここにいることが、アリスにとって≪ハッピーエンド≫なのに」

 嗚呼、語られるその言葉に惑わされるな。
 その≪ハッピーエンド≫の真実を見抜け。
 かの『黒百合の女王・ミスト』を打ち倒し、少女を送り届けることこそが、あるべき姿なのだから。
栗花落・澪
それは貴方が勝手に決めた事
貴方にとってのハッピーエンド

本当の結末は本人が決めるべきだよ
それがどんなに残酷な世界でも
彼女の意思は、誰にも邪魔されるべきじゃない

★Venti Alaに宿した風魔法で【空中浮遊、空中戦】
【オーラ防御】で身を守りながら
翼と合わせて空から援護

【催眠歌唱】を奏で敵の集中力を奪いながら
★Staff of Mariaで水の【高速詠唱、属性攻撃】
目晦まし兼ダメージを狙いつつ敵の体を濡らしていく

更に【指定UC】発動
さぁ、遊んでもらっておいで!
お茶はごめんね…僕動かなくても戦えるからさ

分身達を敵にまとわり付かせ
自分と分身達で一斉に雷の【全力魔法+範囲攻撃】
濡れた体にはよく効くでしょ?


ヴィオレッタ・スノーベル

ハッピーエンド…幸せな世界…
その存在を、否定はしないわ
でも…アリスは、さっき、何か伝えようと…

「ねえ、教えて?女王さま
アリスの『しあわせ』が何なのか、わたし、知りたいわ」
勿論、正しいしい応えが返って来るとは思わないけれど
ナイフ《願い星》を影で構えて警戒しながら、訊ねるわ
この人の言う『しあわせ』がどんなもなのか…単純に、知りたい

もし、アリスを冒涜するような答えだったら、
【咄嗟の一撃】【暗殺】を駆使しつつ、UCで女王さまに斬りかかるかも知れない
他の猟兵さんがお話をしたそうだったら堪えるけれど

伸縮自在の髪…じゃ、肉を斬らせて、という訳にはいかないわね
【空中戦】で出来る限り回避を試みつつ、囮になるわ



 『女王』の言葉に、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は力強い目で、ヴィオレッタ・スノーベル(白き野に咲く・f18000)はまさしく疑問を宿した目で、その秀麗な顔を見つめた。
 右手を握りしめて、澪は少女をかばうように前へ進み出る。

「それは貴方が勝手に決めた事。貴方にとってのハッピーエンド」
「いいえ、違うわ。アリスの願ったハッピーエンドよ」

 まっすぐと放たれる澪の言葉は、真っ向から打ち返すように否定される。ゆるり、口元を手に打ち付けていた扇で遮り彼を見るその赤は、理解しえぬ愚か者を見下すかの如く侮蔑を孕んでいた。
 本人が決めるべきことを他人が決めるな、と声を荒げかける澪を、ヴィオレッタがさらに前に出て遮る。
 侮蔑の視線がヴィオレッタへと移り、うっそりと細められた。

「貴女も、ひどい勘違いでも語るのかしら?」
「違う、わ」

 静かな声音に『女王』が胡乱気に眉根を寄せる。遮られた澪までもが驚いたようにヴィオレッタを見た。
 ヴィオレッタにとって、それが"誰"のハッピーエンドであるかはさしたる問題ではなかった。故にハッピーエンドの否定も、幸せな世界の否定もしない。
 彼女にとって今重要なのは"少女『アリス』"自身のこと。先ほど遮られた問いの、その答え。
 曖昧な菫の瞳が刹那に光る。

「ねえ、教えて?女王さま。アリスの『しあわせ』が何なのか、わたし、知りたいわ」

 あなたにはわかるのでしょう、とまでは続けずに愛らしく小首を傾けて。その愛らしさの陰、背後にナイフ≪願い星≫を構えながら問う。
 答えによっては即座にその首を刎ねると言わんばかりのそのナイフを背後で確認した澪は、その翳を感じて口を挟まないことを内心決意した。代わりに、すぐに反応できるようにと臨戦態勢を取る。
 その翳に気付かない『女王』は、優しくにっこりと笑顔を見せた。

「勿論、この世界にいることよ、可愛らしいお嬢さん。だって、帰りたくなどないでしょう?<虐待ばかりの世界>になんて。――ねぇ?アリス」

 優しく優しく、恐ろしいほどにまで優しく、ねっとりと甘い声が少女に絡みつく。肩を大きくはねらせる少女に、澪が気遣うように視線を向けた。震えるその姿は、語られる言葉を否定する材料になりえない。
 むしろ、肯定であるとさえ取れるほどに――その目は壊れそうなほどの恐怖を宿していた。
 アリスさん…?と澪が声をかければ、弾かれたように後ずさる。

「ごめんなさい、ごめんなさい!いい子にします、だから、あそこには帰りたくない…!」
「いいのよアリス。ここにいればいいの。ここには優しいお父様とお母様しかいないわ」

 激しい声は錯乱した様子で。パニックに陥った少女にはまた声が届かなくなってしまう。そんな少女に甘い言葉が誘惑のように囀る。
 澪にもヴィオレッタにも、その言葉の裏に「夢の中で終わればいい」という声が聞こえた。
 ヴィオレッタが、珍しくカッとしたように飛び出した。握られたナイフが、発動されたユーベルコード【流星群】によりぶわりとその数を増やし『女王』へと襲い掛かる。

 嗚呼、しかし。
 艶やかな漆黒の髪が、狐の頭部を成したそれが、伸縮して三十を超えるその刃を喰らい落し、ヴィオレッタの振り下ろしたナイフまでもをその扇で受け止める。
 ぎりぎりと扇とナイフが音を立て『女王』とヴィオレッタの力が均衡する。悪い子をたしなめるように『女王』は目を細めた。

「あらあら、教えてほしいというから教えてあげたのに、ひどいわ」
「…アリスの言葉を曲解して、冒涜するその答え。許せないわ」

 "あそこ"が"元の世界"だなんて、一言も言っていないじゃない。それを幸せと騙って偽って閉じ込めて喰らおうなどと――ヴィオレッタにとってそれは許しがたき大罪を犯したも同然だった。
 彼女の中にあるまっすぐと歪んだ心は、かの『女王』を完全な「悪」と認識していた。
 されど、認識された【暗殺】はその力を失い、【咄嗟の一撃】も鍔迫り合いをしているうちに失われていく。いかに全力で掛かろうと、齢11の少女には力が足りない。
 ついにはその刃は弾かれ、ヴィオレッタの体は空中へと投げ出された。

「ヴィオレッタさん、ふせて!」

 投げ出されたヴィオレッタに声をかけたのは、彼女が飛び出すと同時に己の靴に宿した風魔法で空中へと飛び上がっていた澪だった。即応して羽搏き一つで猫のように身を縮めるヴィオレッタのその背後から、清浄な輝きを放つ杖を構えた澪がまっすぐに『女王』を捉え――激しい清流が杖を起点に生まれ、周囲へと拡散する。
 豪雨のように降り注ぐ清流を避けることもできない『女王』の小さな悲鳴が、二人の耳に水音の隙間を縫って届く。

「貴様…!茶も菓子も嗜めぬであろう愚者どもめ…!!」

 今まで怒りを纏いながらも冷静さを保っていた声音が崩れる。激しい怒りに飲まれ、その瑪瑙が激情に輝く。琥珀と瑪瑙が真っ向からぶつかり、火花を散らしそうなほどににらみ合う。
 言葉遣いを取り繕う事すらしなくなった『女王』を見下ろして、澪はゆっくりと右手のひらを開いて突き付けた。

「いけ、僕の分身。さぁ、遊んでもらっておいで!」

 トリガーとなる言葉を紡ぎ、澪もユーベルコードを発動する。ポポポンッとあたりに姿を現すのは、一目では数を確認できないほど多く指一本よりも小さな【無邪気なミニ澪】達。
 数百にもなるミニ澪達は、楽しそうに一直線に『女王』へと飛び掛かっていく。
 そのスピードは、ユーベルコードを発動したはずの『女王』の虚を突いた。嗜んでいない者どもの素早さなど奪ったはずだと瞠目する。

「ごめんね…僕動かなくても戦えるからさ」

 無意味な制限などないも同じ。大元が制限がないのなら、その枝葉の先にまで制限など及ぶこともなく。『女王』は反応が遅れてミニ澪達から逃げられない。
 忌々しそうにそれらを振り払い振り落とそうと足掻いても、たとえ伸縮するその髪でそれらを引きはがし食いつぶそうとも、圧倒的に手数が足りなかった。
 大元を狙おうとしても、一度外れた視線は妨害せんと周囲を飛び回り始めたヴィオレッタに無意識に意識を奪われてすぐに見つけることもできず。
 意識の端から、澪は己の召喚した分身たちへ念を向ける。打ち出されるのは――雷による【全力魔法】の【範囲攻撃】。たとえ澪一人の力では及ばずとも、分身一人一人では及ばずとも、それらが一堂に集うならば。
 それは、断末魔を上げさせるほどの威力をもって『女王』を襲うのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


「あああああああ!!許さない、赦さない、ユルサナイ!アリスのためのハッピーエンドの邪魔をする愚か者ども!!」

 雷によるダメージを受けてなお『女王』は吠え猛る。
 燃え盛る紅蓮の炎を連想させる赤い瞳は、その怒りの奥に確かに"アリスを想う心”が隠れていた。

「痛みや苦しみの蔓延る世界に帰ることが、幸せだとのたまうか!?『その幸福の世界で、苦しむことはなくなるのでした』という結末のほうが、ハッピーエンドであろう!」

 少女の閉ざされている記憶の欠片を知る『女王』は、あぁ、どこまでもハッピーエンドを追い求めている。たとえエンディングのその先にあるエピローグが捕食であろうと、『女王』にはそれこそが“アリスのためのハッピーエンド”だった。

 しかし、それが真実ハッピーエンドであるのならば、猟兵たちはここにはいないのだ。
園城寺・藍励
何を言ってるのか、よくわからないね、このおばさん。
怒りや悲しい記憶も嬉しさや楽しい記憶も、それら全部を引っくるめて人っていう存在は成り立ってるのに。
苦しみのない世界がハッピーエンドだなんて……ほんとに、骨の髄までお花畑だね。
仮にそれが本当にハッピーエンドなら……楽しい、嬉しいなんて言う感情は起こり得ないよ。表裏がなくなれば、あるのは平面、ただただ、なにもないんだからね。

髪の攻撃はダッシュ、情報収集、逃げ足、空中戦で躱しながら隙を伺うよ。見えた隙に合わせて空中戦、ダッシュ、戦闘知識、鎧砕き、串刺しを載せた指定UCで一撃。状況次第では、オーラ防御、覚悟、激痛耐性、捨て身の一撃も駆使して行くよ。


アルトリウス・セレスタイト
幸福か否かの判断は本人に委ねるとして
お前は終わったもの。忘却に還るが良い

界離で時の原理の端末召喚。魔力を溜めた体内に召喚し自身の端末機能を強化
自身を黒百合の女王が討たれた後の時間に置いて、全ての行動の影響を回避する

攻撃は纏う原理――顕理輝光を用いての打撃
『天光』『天冥』にて逃すことなく捉え、『励起』『解放』で個体能力を極限まで引き上げて迫り、『討滅』の死の原理を乗せた白打を見舞う

界離で自身の時間を何億と重複させて一打でその回数分を撃ち込み、『再帰』で撃ち込んだ死の原理を無限に循環
一打で仕留めに行く

ハッピーかどうかは知らんが、エンディングだぞ
大人しく退場しておけ



 吠え猛る『女王』に、園城寺・藍励(蒼天の白猫天使・f10781)とアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は同じようで異なる藍色の瞳を向ける。
 藍励の瞳は淡く透き通りながらもその言葉が心底理解できないと言わんばかりの侮蔑を宿し、アルトリウスの瞳は冷たく深い深海のような冷徹さを孕んでいた。されど、似て非なるその瞳たちは一つの共通点を持つ。存在悪たる『女王』への否定だ。
 藍励がその長い緑髪を右の手で後ろへ払いながら言葉を紡ぐ。

「何を言ってるのか、よくわからないね、このおばさん」
「そうだな」
「怒りや悲しい記憶も嬉しさや楽しい記憶も、それら全部を引っくるめて人っていう存在は成り立ってるのに…苦しみのない世界がハッピーエンドだなんて…ほんとに、骨の髄までお花畑だね」
「まぁ、幸福か否かの判断は他人がするものではないだろう。どちらかなんてことは本人に委ねるとしても、だ」

 そんなお花畑な終わったもの(オブリビオン)は、滅して忘却へと還らせよう。言葉を交わしながら、アルトリウスはユーベルコードを発動して【端末】を召喚する。
 それを視界の端で確認しながら藍励が走り出した。『女王』の髪が怒りに身を任せたような荒々しい動きでそのあとを追うように喰らい付かんと伸びてきても、全てを最小の動きで躱しながら様子をうかがう。並行して『女王』と――震えて顔を覆い隠した少女へと言葉を投げた。

「ねぇ。それが本当に『ハッピーエンド』なら…楽しい、嬉しいなんて言う感情は起こり得ないよ」
「…いや、いやだよ…」
「どうして。表裏がなくなれば、あるのは平面。ただただ、なにもないんだからね。それでも――このハッピーエンドを願うの?」

 苦がなければ楽はない。悲がなければ喜はない。裏をなくすということは表もないということ。負がないというのなら正もない。すなわち――『女王』の語るハッピーエンドは、ただの平坦な「0」である。
 楽しいだけの世界なんてない。嬉しいだけの世界なんてない。それらはすべて、相反するものがあってこそ輝くのだ。どちらか一つだけを選ぶことは不可能なのだ。
 語られる現実に、少女が衝撃を受けたように顔を覆っていた手を放す。涙に揺れる瞳が、どこか虚無を映していたその瞳が、焦点を結んだ。
 嗚呼、それを良しとしない『女王』様が、叫ぶ。

「黙れええええ!!!!!」

 弾けるように伸び広がった髪の狐が、藍励を、少女の背後で【端末】を握り動かないアルトリウスを襲い喰らおうとする。
 されど、すでに幾度もそれを躱している藍励にその攻撃は届かず――微動だにせずいたアルトリウスにさえ、当たらなかった。
 それもそのはず。彼は【端末】を握ってからその瞬間までの間に、己を"女王が討たれた後の時間"に<置いて〉いた。時の壁は、常人には越えられない。故に"攻撃を避けたことのある"彼にその攻撃が当たることもない。
 目を見開いた『女王』の緋色を見て、藍励は次の行動へと移った。足先へと力を籠めて、空中に体を持っていく。構えた剣は『女王』を捉え――伸縮するその髪の狐を貫いた。
 狐の断末魔が耳朶を打つ中、ぐるりと身をひるがえして振りぬく斬閃。それを阻もうと伸びてくる扇を鎧砕きが斬りぬき、新たなる斬閃を放つ。素早い動きは再び形成した髪の狐を即座に切り捨ててまた一つの斬閃を放つ。

『魔姫空封、幻姫時解――――参之式、終之型』

 いくつかの斬撃ののち、藍励が声を出す。軌跡はいつの間にか六芒星を描き、直ちに収縮を開始する。軌跡はその髪を焼き切り、逃げだすこともできない『女王』は足掻くように斬りぬかれ破壊された扇を藍励へと薙ごうとする。
 しかしその足掻きが藍励へ届くより早く、『天光』『天冥』を用いて捉えたアルトリウスが動きだしていた。原理を扱う彼に、成しえぬことはほぼない。
 【端末】が呼応し、多重に現れる“時”の中で、その全てが『女王』へと牙をむく。
 『励起』『解放』にて強化された幾重ものアルトリウスの手によって『討滅』の死の原理が放たれた。
 明確な死を前に『女王』は逃げられない。

「ハッピーかどうかは知らんが、エンディングだぞ。――大人しく退場しておけ」

 静かな死刑宣告の詞。
 死の白打は確かに『女王』を打ち砕く。その刹那。
 少女が、小さくつぶやいた。

「…みすと」

 それは、名前。『黒百合の女王』の名前。舌足らずでありながら、しっかりとした声で紡がれる真名。
 名を呼ぶ声に何を視たのか。『女王』は僅かに笑みを浮かべて。

 その地から、消失した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『よるのもり』

POW   :    聴覚や触感頼りに踏破する

SPD   :    暗視装置や忍びの技術を駆使する

WIZ   :    心の目や魔力を見る目で周囲を感じ取る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 消失の末に森の小道へと続く地に墜ちたのは一つの黒百合。
 だれに阻まれることもなくそれに手を伸ばす少女は、はらりと一粒の涙をこぼして。

「…みすと、ミスト。…ごめん、なさい」

 その謝罪の意味は、少女自身も分からない。
 不意に木漏れ日を翳らす夜の闇に飲まれて隠されて――急速に周囲は暗くなる。
 目の前に掲げた己の手までもが見えなくなりそうなほどの夜闇が猟兵たちと少女の視界を奪った。
 空気に溶けるように黒百合さえも消えて、少女が呆然とその場に立ち尽くす。

 夜闇に包まれた森の中。猟兵たちには少女『アリス』の扉がどこにあるのかわかっている。ゴールの気配はもうすぐ、そこに。
 されど、少女は動かない、動けない。

 それは何故? ――歪んだピース。
 それは何故? ――見出せない還る理由。
 それは何処に?――少女の中に。
 それは何処に?――夜闇の森の、その奥に。

 正しいピースを揃えよう。語り、語られ、虚にまみれたハッピーエンドの先の真実を見つけよう。
 如何なる幸福の結末も、真実とは限らない。向かうべき真実が、幸福でないとしても。
 歪んだエンディングを、正しいエピローグへ繋げるために。

 迷子になったアリスには見えないエンディング。かえりみちは何処?
 語ろう、内にあるピース〈真実〉を。繋ごう、パズル〈還る理由〉を。
 確かに送り届けるまでが、成すべきことだ。

 ――――☆――――.

 歪んだピース1『両親』
 歪んだピース2『還る場所』
 欠片『"ここ"にいる理由』
 欠片『言いかけた言葉』
栗花落・澪
アリスさんの心を落ち着かせるように
【指定UC】で【破魔の歌唱】を奏でる
込めるのは【優しい祈り】
どこか懐かしい子守唄

ねぇ、今更だけど…貴方の名前はなんていうの?
アリスじゃなくて本当の名前

歌は好き?
僕は友達に教えてもらったんだ
貴方にも思い出の歌はある?

少しずつ彼女の記憶の引き出しを試みる
両親に辛い記憶しか無いのなら
友達や兄弟
彼女を待つ誰かの記憶

辛い事があったなら話して
全部受け止めてあげる
だけど…貴方の思い出は、本当にそれだけ?

どんな答えでも
僕は貴方の決断を応援する
だから改めて聞かせて
どうして1人でここにいるの?
貴方の望みは、なに?

もし帰る決意を決めてくれたならそっと手を繋いで
僕の光で導いてあげる



 あたりの暗闇に飲み込まれていきそうなほどに少女は小さくか弱い。今ここに正しく意識があるのかさえ疑わしくなるほどの虚無感の中に、届く声一つ。
 それは、歌声。優しく温かく、どこか懐かしい子守唄。少女と見紛う姿をした少年、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の歌声。優しい祈りを込められたその声は、虚無の内に沈み凪いでいた少女の心を靡かせた。
 声のするほうへ、澪のほうへ、少女が視線を向ける。木の葉の隙間から月明かりが僅かに差し、琥珀色の瞳と少女の玻璃の瞳が一瞬繋がった。
 割れそうなガラスのごとし瞳を見つめて、澪はこてん、と首を傾けて見せる。

「ねぇ、今更だけど…貴方の名前はなんていうの?」
「…え?」
「名前。アリスじゃなくて本当の名前」

 本当に今更だけどね、なんて澪は肩をすくめて見せる。まるで、何となく一緒に遊んでいたけど、名前知らないや、とでもいうように問われ、少女も首を傾げた。
 しかし、それが逆に気を抜けさせたのか、少女が綻ぶように口元に笑みを浮かべた。

「…ありす、なの。羽吹、有栖(ハブキアリス)。…お姉さん、は」
「…っ、あー…、ごめん、僕は澪、男だよ…」
「…えっ…あ、ご、ごめんなさ…」

 「お姉さん」と言われた瞬間に強張った澪の顔をみて、少女が心底申し訳なさそうにする。気にしないで、と気遣うように澪が言っても、なお申し訳ないと眉を下げた。
 しばしそうして沈黙を保つと、澪は話を変えるように笑った。

「有栖さん、歌は好き?」
「うた…?うん、好き…かな」
「そっか。僕は友達に教えてもらったんだ。…貴方にも思い出の歌はある?」

 そう言われて、少女は顎に手を当てて首をかしげる。
 深く考え込んでいるのか、その眉が顰められた。辛抱強く澪は様子を伺い、回答を待つ。
 長考の末、呟くように言った言葉は――。

「姉さん…から、教えてもらった…」
「お姉さん?」
「"アリス"の、うた。寂しくない、ように。…夜は、明るくしちゃ、ダメだから…母さんが、くるから…」

 とろり。玻璃の瞳が溶けるように濁る。それはどこか遠く、澪の奥に違う“誰か”を見ていた。
 澪の背筋をひやりとした何かが伝う。正面にいる少女が誰を見ているのかわからないけれど、澪も誰を見ているのかわからなくなった。揺らぐ、少女の背面に。
 少女と似た顔立ちで冷たい瞳をした、女性が見えた。――ユーベルコードだ。そう気付くのに時間はかからなかった。

「有栖さん」

 慎重に、ゆっくりと音を紡ぐ。濁りかけた玻璃をまっすぐと見つめて、瞬き一つとってもゆっくりと。優しく、寄り添う意思を込めて、祈るように両の手をその頬にそっと添えた。
 それでも、玻璃の瞳は違う誰かを見ている。

「何か、辛い事があったなら話して?全部受け止めてあげる」
「…大丈夫、だよ…大丈夫…大丈夫なの。…大丈夫じゃないと、母さんが怒るから、大丈夫」
「…有栖さん、僕を見て。貴方の思い出は、本当にそれだけ?お母さんとお姉さんだけ?」
「…とう…、…だめだよ、母さんだけじゃなきゃ、ダメだよ」
「ダメじゃない」

 凛とした少年の声音は、少女の濁りをかすかに祓う。嗚呼、だけど、届かない。揺れる玻璃が澪を視ない。そのガラスの奥には、まったく別の女の人の陰が映りこんでいた。
 唇をかみしめて、澪はそれでも手を差し伸べる。手を伸ばして、つかんでほしいと願う。そうすれば、導いてあげられるから。
 玻璃が、凍った。

「…お願い、貴方の決断なら、僕は応援するから…だから、改めて聞かせて…」
「…、…」
「どうして一人で、ここにいるの?…貴方の望みは、なに?」
「…母さんが、いったのよ。"ここ"にいなさいって。…、ねえ、…まぶしい」

 え、と澪が声を漏らす。それと同時にドンっと澪の体が突き飛ばされた。力こそ強くはないが、不意を突かれた澪は体勢を立て直せず尻もちをつく。
 ふらりふらりと、少女が後ずさる。その背面で、変わらず冷たい目の女性が少女に覆いかぶさるようにいる。
 ――見上げたそこに在ったのは、玻璃ではなく瑠璃だった。

「――明るくしちゃ、ダメなんだよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​


 ――――☆――――.

 歪んだピース1『両親』
 歪んだピース2『還る場所』
 欠片『"ここ"にいる理由』
 欠片『言いかけた言葉』
 欠片『姉』
 深い青を宿した瑠璃色の瞳が、翳る月明かりの奥に消える。
 空気に溶けるように消えた女性の気配、そこに佇むのは少女一人。

「…明るくしちゃダメ、母さんがくる。…ここにいなきゃ…、…ここ、どこ…?」

 ぽつ、ぽつ、と言葉が零れる。ざりざりと足元の砂を擦る音が響き、少女が猟兵たちから距離を取った。
 あたりは何も見えない、月すらも雲や葉に隠されてその光を届かせることはなく。それは逆に少女を浮き彫りにした。

「…ここは、どこ…あなたたちはだれ…?姉さん…姉さんは、どこに行ったの…」

 迷子のアリス。帰り道は目の前なのに、その先がわからなくて動けない、迷子のアリス。
 ぽっと、涙の雫が砂に落ちる小さな音がした。
 ――愛されたかった。
 声なき声が空気を震わせる。
 ――一緒にいたかった。
 切なる少女の心に、森の草がざわめく。
 ――かえりたかった。
 たとえ叶わない願いだとしても。願ってしまえば罪となる。
 "此処"は少女の願いが生み出した、夢の世界。『共有する者達』も『黒百合の女王・ミスト』も、ただ少女の願いを形にしようとしていた。その結末がどうなるとしても。

 されど、その願いは歪んだ現実から成る紛い物。
 “父と母”は、本当は“どうなっている”のか――目をそらした、“言いかけた言葉”が答えを。
 正しい“還る場所”は何処なのか――歪んでなお心に残る“姉”がその道を。

 だけれど、少女は歩けない。
 曖昧な記憶はひずみも欠片も見られないから。整理ができない無数の欠片に目を奪われているから。
 言葉を尽くして、整理して、一つずつ道を繋いで。

 光を拒絶している少女の手を引いて。
アイン・バリエット(サポート)
●概要●
いかにも悪者といった仮面を付けた呪術師、怪人。
人間嫌いでシニカルな男だが、
異形の仮面の下にある人間的な優しさと甘さを捨てきれていない。

●口調●
一人称は僕、喋り方は(紳士ぶっているので)とても穏やか。
キザな言い回しが好きなカッコつけ野郎でもある。

●行動●
NG内容以外では自由に動かして構いません、必要な事ならば汚れ仕事も引き受けます。
所持している猟銃から「呪殺弾」を撃って「援護射撃」を行う、
UC【影の追跡者の召喚】を使っての調査等が主な役割になるかと思います。

救助が必要な対象が居れば、「救助活動」の技能を使って意外性のある活躍が出来るかもしれません。

●NG行為●
※R18要素を含む行動・展開


キーシクス・ジェンダート(サポート)
「助けが必要なら、私も共に行こう」
「…あぁ、いつ見てもオウガのやることは、虫唾が走る」
通常時一人称:私 二人称:キミ
三人称 :彼等
戦闘時一人称:俺 二人称:貴様

魔法による遠距離戦を得意としたアリス適合者
味方には努めて穏やかに、敵には冷徹に
オウガ相手には嫌悪感を隠さずに

戦闘
UCによる範囲攻撃が主力
「高速詠唱」から「全力魔法」「属性攻撃」「衝撃波」を主に行う
物量で追い詰めつつ、必要ならトラピッチェによる「スナイパー」「呪殺弾」で敵を撃ち抜いていく

基本方針
戦闘時は積極的に攻撃に打って出る
負傷を恐れず、味方がいる場合は積極的に連携を行います
要救助者の救助は優先的に


数宮・多喜(サポート)
『よっし、アタシに任せときな!』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」

基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。

探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。

情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。

戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。



 触れる、ふれる、振れる音。正しい道の見つけられない少女。
 足りない情報と虚実の詞に動けない猟兵と少女。

 不意に吹いた風が、少女の瑠璃を壊した。
 現れたのはにやにやとした笑みを描いた仮面の男――アイン・バリエット(悪なる者・f08657)だった。
 たなびく黒い衣は闇に紛れ、ともすれば仮面が宙に浮いているかのよう。そう、仮面だけが月明かりに照らされて浮かび上がっている。

「やぁ、…君が今回の“アリス”なのか?」

 静かな声が空気に溶け、じわりと少女の耳にしみ込んだ。壊れた瑠璃を穏やかに包む。
 くつくつと笑うと、アインは歩を進め少女の眼前に立った。大きな黒い影が少女を覆い、その光景は生き残りの村人を狙う悪の図。困惑を映した瑠璃に向け、アインは至極穏やかに声をかけた。

「可哀想なお嬢さん。このような怪人に目を付けられるとは…帰り道も分からないのだな」

 穏やか、故に恐ろしく見える表情の変わることない仮面。少女がヒクッと息を詰める。
 カタカタと震え出した小さな体を見やる仮面の下の瞳から、少女には何の感情も見いだせない。ゆっくりと伸ばされる手の、行き先は。

「ちょっと」

 割って入ったのは新たな男の声。降り立つは金色の髪を靡かせた男――キーシクス・ジェンダート(翡翠の魔人・f20914)だ。
 優しい新緑の瞳が揺れるように少女とアインを見ている。

「なんだ。僕は何もしていないだろう」
「怖がらせているじゃないか。…キミ、大丈夫かな?」

 毛色の違う穏やかな声で少女に語り掛けると、キーシクスは軽やかに手を差し伸べた。さらなる困惑が少女の中に生まれる。
 気が付けば、そこには壊れた瑠璃の少女ではなく、ただの迷子の玻璃の少女。長身の青年二人を前に困惑を隠せず、後退った。
 キーシクスが柔らかく微笑む。差し伸べられた手が、少女の頭の上に乗せられた。

「…?」
「大丈夫だ。私たちは、キミの敵じゃない。…彼は、味方とも言い難いが」
「待ちたまえ、僕に失礼だな?」
「そんなことはないさ」

 二人に面識はないが、一つのことが共通しているのでそんな軽口をたたきあう。共通点――目の前の少女(救助対象)の救助である。
 優しい手つきで少女の頭をなでながら、キーシクスがアインを見る。アインも、キーシクスをわずかに見上げた。…そして後退る。
 訝し気にその視線の後を追ったキーシクスは見つけた。宙に浮く、バイク。

「遅れたねぇ、情報持ってきたよ!」

 明るい声が響き、バイクは三人を追い越した場所に着地する。バイクの背に乗っていたのは一人の女――数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)。
 外されたヘルメットの下から見える強気な瞳が少女を捉えた。
 包容力の高い人好きする笑みを浮かべ、多喜はバイクを下りると三人に近づく。
 途中、アインに紙束を押し付けた。ここに来る前に集められた情報の束。

「初めまして、だねぇ。あたしは多喜。あなたは、有栖だね?」
「え、あ…はい」
「“姉さん”に頼まれて、迎えに来たよ」
「…姉さん、に…?」

 首をかしげる少女の前に膝をつき、多喜がうなずく。
 その間に二人から距離を取ったキーシクスがアインに渡されていた紙束に視線を向けた。
 ――アリスの、真実。
 父親が蒸発して、母親に虐待され、行きついた施設に暮らす、少女の話。
 キーシクスの眉間にしわが寄る。アインも、見えないもののどこか不快そうな雰囲気を醸し出す。
 紙片に書かれた情報は、少女の紡がれ得なかった望みを二人に、しいては多喜に教える。

「さきの猟兵が情報を引き出してくれて助かったよ。おかげでその情報をつかめた」
「…このお嬢さんの望みは…」
「……」

 沈黙ののち、再び距離を詰めたキーシクスが、少女を抱きしめた。
 困惑する少女は、しかし手を包む多喜のぬくもりに、体を包むキーシクスの切なさに、離れたところから向けられるアインの瞳の奥の捨てられぬやさしさに、動けはしないまま。
 震える声が、少女の頭上から降り注ぐ。

「…かえりたかったんだね…優しい、父と母のもとへ」
「…!」
「ただ、あいされたかった…だけ、なんだね」
「…わたし、は」
「有栖。ここには、あなたとあたしたちしかいない。いってごらん」
「…っ!」

 ふれる、振れる、玻璃色。ふれる、降れる、涙。
 父親が恋しくて、それを認めることが許されず、ため込んだゆがみがほどける。
 堰を切ってあふれる涙が、とどまることなく地を濡らす。
 大声で泣く声が、とめどなくあふれる言葉を乗せる。
 父のことをいうと、母がひどく怒り悲しんだこと。そのたびに上げられる手が痛かったこと。連れていかれた知らない家で、ここにいなさいといわれ、おいていかれたこと。そこで出会った、優しかった“姉”のこと。
 一つ一つに、キーシクスと多喜が相槌をうつ。暗闇にいることを強いられ、身動きの取れなくなった少女の、叫びを聞き届ける。

 言葉の雫が落ち切った頃、静寂が地に墜ちきる刹那のとき。ざわめく風が凪いだ瞬間。
 アインの声が空気を切った。

「さぁて、迷子のお嬢さん。お帰りの時間だよ」

 砂を蹴る音を響かせながら離れていた距離を詰めていく。
 手に持ったままだった資料をばさりと宙に放り、舞い散る紙の中で紳士的に礼をした。
 ニヒルな笑みをした仮面で、そのダークヒーローは嗤う。

「僕らはもう時間だ。君は、君の力で帰るんだ」
「…なに、も、見えない…のに…?」
「そう」

 ひときわ大きく砂を蹴り、アインがキーシクスと多喜を引っ張り下がる。
 闇が深まりそれぞれの視界が閉ざされていく。
 二人が抗議の声を上げるよりも急速な闇の浸食は、この世界の主となっている少女を除き、この場にとどまることをユルサナイ。

「誰かの手を借りてもいいだろう。だが、最後は君自身が選ぶんだ」

 アインの言葉を最後に、よるのもりが少女を一人引き離した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​


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※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「真壁真人」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
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政木・朱鞠(サポート)
とりあえず、感覚共有した『忍法・繰り飯綱』を放ち【追跡】や【情報収集】で周囲を探って敵の分布や地形の情報を把握しておきたいね。
邪魔をする敵が湧くのなら、武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使い【傷口をえぐる】でダメージを与えたいね。

アドリブも連携もOK



 くらい、くらいよるのもり。
 猟兵達から引き離された少女は、そこに一人きり立ち尽くしていた。

 辛かろうとも現実を直視し、元の世界へと還ろうとした少女。
 だが、彼女をこの世界に留めようとするかのように、夜の闇はどこか粘り気すら感じさせるような圧をもって、少女の道行を阻んでいた。
 視界を闇に閉ざされ、何処に進むべきかすら分からず足を止めてしまった少女の姿を政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は見つめる。

「この空間が彼女の心なら、この闇も彼女の内心の不安と恐怖の象徴……なのかな」

 彼女が、それを自ら打ち破るまではあと一歩。
 ならば、手を貸すのも猟兵としての役割だろう。

「我が魂魄の欠片よ目覚め…力を行使し見聞きせよ……」
 急急如律令と唱えると共に、子狐のような分霊が闇の中を駆けて行く。
 その鋭敏な感覚によって、ただちに『扉』の在り処を見つけ出した分霊は、少女の足元へと駆けていく。

「きゃっ、狐さん……?」
 目を丸くした少女の周囲をくるくると回った分霊は、彼女を先導するように駆けて行く。
 朱鞠の子狐に導かれるままに扉へと辿り着いた少女は、意を決したように扉へと手をかける。重い扉を、少女がぐっと力を籠めて開けるのを朱鞠は見た。
 そして扉の隙間から光が溢れ、よるのもりを照らしていく。
 闇が消えた時、少女の姿もまたこのアリスラビリンスから消えていた。

『ハッピーエンド』のその向こうで、少女が新たな幸せを迎えることを、朱鞠は願うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年07月08日


挿絵イラスト