エンパイアウォー⑲~傲慢なる将にもう一度、傷の感触を
●慢心せずして
『コルテス様、戦況の報告に参りました』
「……何だ? 戦況になど、私は何の興味も無いぞ」
早馬で来た武士に『侵略渡来人』コルテスは顔も向けずに拒絶の意を示す。
『で、ですが――』
「何度も言っているが、お前らエンパイア人は、たまたま私達コンキスタドールに姿が似ているだけの下等生物。私はお前らを知的生物に定義していない」
コルテスは厳島神社の拝殿で何かをじっと見ていた。よく見ると彼の近くには似たようなものがいくつもある。
「お前らが下等である証拠に……見て分からないのか? 私は今、大いなる神、偉大なる王、麗しの姫君に捧げる宝物を吟味しているのだ。――お前らの小競り合いなど知るか。常識で考えろ」
『――はっ』
早馬で来た武士が去っていくのを傍ら目で見るとコルテスは一つ嘆息する。
「全く、使えん奴らだ……私が以前訪れた国の民は、お前等に比べればマシだったぞ。まあ、皆殺しにして、そいつらの神はこうして乗騎にしたがな」
コルテスが足元にいた鳥とも竜とも言い難い獣、その顔を一つ蹴とばす。
「ほら、ケツァルコアトル。わが乗騎になれた事を感謝して、また子を作れ。お前の子でも送っとけば、邪魔をする馬鹿も減るだろう」
嗚呼、ケツァルコアトルにもし自由があるならば、今すぐにでもこの傲慢極まりない支配者を喰らうであろうに。歯がゆい思いのケツァルコアトルからは、涙が見えそうで、見えなかった。
●慢心故に
「……」
説明会に来た猟兵たちを待っていたのは1人の少女だった。少女は集まったことを確認すると顔を上げてその無表情にも見える貌を見せる。
「……まずは、招集への応答に、感謝する。私の名はアカシャ――しかし、今この場で私のことを知る必要はない。私がこれから説明することを耳に入れ、そして現地で観測すべきことを観測し、為すべきことを為してくれれば、私はそれで構わない」
猟兵たちの反応をよそにアカシャ・クレール(全てを視据える夢幻の少女・f16529)は説明を始める。
「……現在、サムライエンパイア世界において、エンパイア・ウォーが発令中。これに伴う猟兵たちの働きにより、第六天魔軍将の一人、『侵略渡来人』コルテスの居場所が観測された。安芸国佐伯郡、厳島神社。そこにコルテスは存在する」
だがコルテスは現在、慢心しきっていて、自分が直接攻撃される事を想像もしていないようだ。
「……もともと、コルテスが、自分の力で直接戦ったのは侵略を開始した最初の数回のみ……以降は、『侵略して滅ぼした世界の戦力』を利用することで安全圏から楽しく侵略と虐殺を繰り返してきた。ゆえに、将としての力はあれど――大きな隙があるので討滅は苦ではない」
しかし、注意事項――というか、懸念点がある、とアカシャは語る。それは、『想起』について。
「……戦闘方法を忘れているとはいえ、記憶することは忘れていない。例を言うなら――正面からただ殴る、斬る――そのようなすぐに予想できる攻撃などは反撃を受けてしまう可能性が高い。加えて――猟兵たちがすでに行った攻撃と似たような攻撃をした時。直前の攻撃が二度も通じるほど愚かな存在ではない。反撃を受ける可能性は高い」
ではどうすればいいのか。
「……相手が予測できないような方針での攻撃の連発、などが一例としてあげられる。うまくいけば相手に反撃の隙すら与えさせないだろう。発想力と臨機応変さが試されると思う。そのあたりは未来を創るあなた達に任せる」
またコルテスの傍らには隷属させたケツァルコアトルがいる、が。
「……呪いの効果により、救出できる状況ではなく、またコルテスを討滅すると死んでしまう。生命の灯ごと苦痛を消してあげるしかないだろう」
アカシャは一つ猟兵たちに視線を向けた。
「期待する。未来を切り開く存在たちよ。かの傲慢の塊を血で血を洗う、死と隣り合わせの戦場へ、そして躯の海へと送り返すことを」
説明は以上、お願いね、と言わんばかりにそれだけ言って猟兵たちを厳島神社に転送した。
結衣謙太郎
すなわちこれは、吐き気を催す邪悪。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
第1章 ボス戦
『侵略渡来人『コルテス』』
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POW : 古典的騎乗術
予め【大昔にやった騎馬突撃を思い出す 】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : マスケット銃撃ち
【10秒間の弾籠め 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【マスケット銃】で攻撃する。
WIZ : 奴隷神使い
【ケツァルコアトルの噛みつき 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヴィヴィアン・ランナーウェイ
アドリブ・連携歓迎
慢心、ですか。
ヒトとは戦場でここまで他人を軽んじることが出来るものなのですわね。
いえ、ヒトではなくオブリビオンですが。
先手必勝、相手がこちらを気にかけないのであればそのうちに。
●ダッシュで距離を詰めつつUCで周囲にいくつかの炎をばら撒いておきます。
そのうち10の炎は槍に束ね、そのまま敵へと放ちましょう。
断罪の炎、などという訳ではありませんがその炎結構良く燃えますのよ?
反撃を食らう前に距離を取り、周囲の炎で敵を牽制しつつ、今度は剣で斬りかかります。
傷を負えば残った炎で回復を。
それでもまだ余裕があれば、トドメの炎の一撃。
生憎と私、見下されるのは嫌いなんです。その鼻、へし折ります。
●悪役令嬢らしく、油断してるところを
『む……これはよくないな……』
拝殿にいるコルテスと部屋1つのところまで近づいてもまだ気づかないのか、とヴィヴィアン・ランナーウェイ(走れ悪役令嬢・f19488)は慢心に呆れ顔をした。
(先手必勝、相手がこちらを気にかけないのであればそのうちに)
ヴィヴィアンは炎を周辺にまき散らす。――厳島神社はあっという間に炎に包まれる。そう、それはまるで――本能寺の変のように。いわば厳島神社の変か――
「コルテス、覚悟するのですわ」
アリスランス・烈火に束ねた炎、槍を突き出すと壁の向こうのコルテスに放たれる。
『ぐっ――誰だ』
コルテスが壁を突き抜けて突き刺しに来た槍の形状をした炎に痛みを覚え、焼け落ちた背後の壁の方を見る。しかしそこには誰もいない。燃え盛る厳島神社のみ。
「まさか野山を駆けてきた経験がここで役立つとは思いませんでしたわ!」
炎を撒いて牽制しながらもそのスピードでヴィヴィアンは駆けていた。目的は、コルテス本体。厳島神社はその構造上、ぐるっと一周すれば元の場所にたどり着ける。そして半周すれば――
「覚悟するのですわ、コルテス。生憎と私、見下されるのは嫌いなんです。その鼻、へし折ります」
そう、慌てて背後を見たコルテス、その背後を取ることもできる。
『なっ――』
「はああっ!」
革命剣・共振で思いっきり斬りかかる。生憎鼓舞する声はないし、単純な攻撃ではある――だが、背後を取ったこと、そして牽制の炎、それに伴う厳島神社の炎上――それが判断を鈍らせていた。
『ぐううっ!』
コルテスが後ろに一歩下がらざるを得なくなる。見ていた宝が床にゴトッ、と音を立てて落ちる。
「これで終わりですわ」
そのまま追撃で炎を合体させた巨大な火球を飛ばそうとする――が。
『ケツァルコアトル! 何をしている! 噛みつけ!』
「!?」
ヴィヴィアンの足元に痛烈な痛みが走る。足元を見れば、ケツァルコアトルが自分の足に噛みついていた。
――しまった。このケツァルコアトルを忘れていた。
『はははは……そのままそこでじっとしていろ』
火球が力を失い、飛ばされることもなく消滅する。ヴィヴィアンにはそのままそこで這いつくばるしかなかった。あと一歩、しかしそこでやらかしてこうなってしまうのは、まさに悪役令嬢としての在り方、なのか――記憶を忘却の彼方にしてもなお付きまとう運命なのだろうか――
成功
🔵🔵🔴
ドロレス・コスタクルタ
「その増上慢が命取りですわ、コルテス!」
独楽のように回転しながら四方八方に銃弾をばら撒く。
跳弾1:周囲の地形(壁・床等)を利用した跳弾で攻撃。
通常の銃撃も織り交ぜて攻撃し、銃弾の軌道を読ませにくくする。
わざと宝物にも当ててコルテスの怒りを誘う。
跳弾2:跳弾と跳弾、又は跳弾と普通の銃弾を空中で互いに衝突させて
跳弾1とは異なる軌道の跳弾銃撃。
跳弾3:コルテスの攻撃を避ける、又は攻撃を食らったときに
後ろに倒れ込みつつ両手を背中に隠して発砲。
股抜きで地面で反射させ攻撃。
遠距離メインという印象を与えた後、隙を見て距離を詰める。
銃で荒っぽく滅多打ち。
「まさか直接殴りかかるとは思わなかったでしょう?」
シリン・カービン
【SPD】
慢心は戦いの場において最も忌むべきもの。
コルテスがそれを思い出す前に、さっさとご退場願いましょう。
コルテスの正面に立ち【ピクシー・シューター】を発動。
コルテスを囲む様に40数挺の精霊猟銃が出現します。
「羽根妖精よ、私に続け」
弾籠めの10秒など与えません。号令と共に一斉に、
縦回転しながらコルテスに襲いかかります。
撃って来ると思わせておいて、上下左右、四方八方からの銃床殴打。
さらには40数連打の後、開けた視界に入る銃を構える私の姿。
「とどめです、コルテス」
直後、頭上に待機させておいた一挺が自由落下、脳天を直撃します。
今度こそ撃つと思いましたか?
攻撃は基本コルテスに集中。
アドリブ・連携可。
●銃とはこう使うものだ
「羽根妖精よ、私に続け」
シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)がコルテスの目の前に立つと精霊猟銃が46挺出現する。それらの銃口はもちろんコルテスを向いている――
『撃つつもりだな? ふっ、だが、これくらいは慣れて――』
――キン。
自分に当たったわけではない、何かに銃弾が当たった音がした。
『む?』
コルテスは音のした方向を見る。すると――
『なっ――私の戦利品が!?』
そう、捧げもの候補だったお宝にいくつか銃弾が埋まっていた。これじゃあ傷物になってしまって捧げる価値にも値しない。
『き、貴様――よくも!』
「え? それは私じゃないわよ」
『なんだと? だが貴様の手の――』
と、はっと気づいたように背後を見る。そこには回転しながら銃弾を撃つ少女がいた。
「宝にしか目を向けてない――その増上慢が命取りですわ、コルテス!」
ドロレス・コスタクルタ(ルビーレッド・f12180)だ。回転しながら壁に床にお宝にあちこちに、果ては銃弾同士も跳弾ではじきながら普通の銃撃もするというよくある跳弾戦術。だが軌道が見えないので厄介だ。下手に動けば銃弾に当たる。
『ちっ』
「よそ見している場合ですか?」
シリンが召喚した銃、それが――
【縦に回転した】。
『なっ!?』
撃って来ると思わせておいて、上下左右、四方八方からの銃床殴打。銃床は意外と固くできているのが普通であり、殴打物としても使える。それを有効利用。46の銃が一斉に回転してコルテスの体を滅多打ちにする。まるでそれは全身を鞭でたたかれているかのよう。
『ぐ、ううう――』
コルテスが苦痛に顔をゆがませながら目を開けると、開けた視界に入るのは銃を構えるシリンの姿。
「とどめです、コルテス」
『くっ――』
コルテスが慌てて銃弾を込めようとする――が。
「遠距離メインと思いましたね!? 今度こそ撃つと思いましたわね!? その増上慢で――」
「命を落とすのです」
一気に接近したドロレスがコルテスに肉薄し、銃で荒っぽく滅多打ちにする。それだけなら手段が同じだけあり対応できた、のだが――
『がっ!?』
スコーン、といい音が響く。コルテスの頭上に待機させておいたシリンの精霊猟銃の一挺が自由落下、そのままコルテスの脳天を直撃したのだ。
――竹刀などで脳天を打たれた経験がある存在はわかると思うが、脳天への固いものの直撃はかなり痛く、混乱、視界の混濁、場合によっては脳震盪を起こすこともある。そこに追撃で滅多打ちが加われば――どうなるだろうか?
『がっ、あっ、あがあっ――』
響く痛み、揺れる視界、そんな状況でまともに銃を持っていられるはずがなく、持っている銃が床へと落ちる。
「まさか直接殴りかかるとは思わなかったでしょう?」
「しかも2人がかりでね」
視界がぐらつく中、コルテスは意識を保つのだけで精一杯だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
隷属させた神に騎乗して子を産ませるのか(言い方)。
妄想が捗ったので息をするように妄想世界を展開してコルたんを男の娘化しツァルたんも萌擬人化☆念動力、催眠術、精神攻撃、ハッキングでコルたんの無防備な精神に妄想を流し込んで洗脳してそれがコルたんの望みだと誤認させるわ♪で、ツァルたんが雌ならおねショタ展開で、雄なら下剋上よ♡大丈夫、今この空間においてはソレがコルたんの望みになってるから隷属の呪いも無効よ☆
思い出した?なら、もっと鮮明に思い出させてあげる☆だってコレ、トラウマ案件でしょ?(念動力、催眠術、医術、精神攻撃、傷口を抉る)。実際に体験がなくても方向性を与えれば記憶の捏造で鮮明に思い出すのよ♪
●おねショタというかおかショタ
「隷属させた神に騎乗して子を産ませるのか。妄想がはかどるわね」
なにぃ!? ここでアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)の登場だと!? た、頼む、全年齢の範囲でお願い!
「妄想世界、てんかーい♪」
ああ、だめだ……世界が彼女色に染まる……頼むコルテス、抵抗を――あ、コルテス意識保つのだけで精一杯なんだった……こんな妄想流し込み、受けるしかないじゃないか……
『……はっ、ここはどこだ……』
『お目覚めになられましたか、コルテス』
『な――貴様は誰だ!』
『ケツァルコアトルです――あなたがさんざん弄んだ、ね』
『ばかな――き、貴様人間になれたのか!? それに、視界が――俺の背が低くなってる!?』
なぜかこの精神世界ではコルテスがいわゆる男の娘(ちなみにツインテール)になっており、目の前のケツァルコアトルも擬人化されていた。
『ですが私は許しましょう、人の子よ。さぁ、おいでなさい――地球に生きる存在の一つとして、我が太陽に包まれるのです』
『あ、ああ――母よ……俺の望みはここに叶えられた――斯様な呪いなど、かけるべきではなかった――許せ――』
『構いません……あなたが望んでいるがために、ここではそのような呪いは力を失っているのですから――』
ケツァルコアトル(人)がコルテス(男の娘)を抱きしめる――おねショタというかおかショタになっているんだが――アリスの妄想とUCの生み出した精神空間とはいえ、ナァニコレ?
で、現実に戻ると、コルテスが安らかに眠って――と思ったら上から焼け落ちてきた木がコルテスに激突! この痛みにコルテスは目が覚めた! 正気に戻った!
『よくもやってくれたな……』
コルテスは憤怒の目をアリスに向ける。
「おおこわいこわい。でもあなたも思ったことあるでしょ? そのケツァルコアトル、お母さんと思ったことが」
『何をばかなことを――なっ、この記憶は――く、くそっ!」
言いながらアリスはまた念動力と催眠術を駆けていた。コルテスにさっきの記憶がトラウマとして呼び起こされる――
「思い出した? なら、もっと鮮明に思い出させてあげる☆ だってコレ、トラウマ案件でしょ? 実際に体験がなくても方向性を与えれば記憶の捏造で鮮明に思い出すのよ♪」
トラウマになったのはたぶんアリス、君のせいだ。
「えー? じゃあ今度はおにロリで」
次のシーン行こう次のシーン!
大成功
🔵🔵🔵
ヴィヴィアン・ランナーウェイ
これで終わり?いいえ!
運命なんてクソ喰らえ
記憶?ないものをどうこう言ってどうします
●覚悟など、とうに出来ていますわ。
脚に食らいつくケツァルコアトルへ槍を突き立てる。その口を離さざる負えないほど深く!
離脱出来ているのなら次の行動への準備を。
脚は手頃な布で縛り付け止血。
これならまだ走れます。
そしてもう1人の私を呼び出しましょう。
一度地に落ちた鳥が再び空へ羽ばたくなどきっとあの男は予想もしていないでしょう。
今度こそ、我が剣を突き立てます
もう一人の私が●ダッシュで肉薄。
弾込め、時間かかるでしょう?
無論、そちらは囮。
喰らいなさい、傲慢なる侵略者。
かつての私でも、未来の私でもない。
今の私が貴方を討つ。
●元悪役令嬢は二度立つ
「これで終わり? いいえ!」
ヴィヴィアンは自分に噛みついているケツァルコアトルに槍を突き立てる。
『PiiiiYaaaa!!』
ケツァルコアトルが苦痛に似た声を上げながら足から口を離す。
「そこでじっとしていなさい」
手近にあったコルテスの宝物だろう布――ところどころ焼けてはいるが――それを軽く振って炎を消すと自分の足に巻き付ける。
(――よし、これでまだ走れますわね。一度地に落ちた鳥が再び空へ羽ばたくなどきっとあの男は予想もしていないでしょう。今度こそ――我が剣を突き立てます)
混乱しているコルテスをキッと見ると手の剣を軽く振る。するとそこに――鏡合わせのようにかつての自分――悪役令嬢だった頃の自分――モウオボエテイナイジブンが出現する。
「覚悟なんか、とっくにできてましてよ」
「運命なんてクソ喰らえですわ」
「記憶? ないものをどうこう言ってどうします」
「ええ、大切なのは現在(いま)ですわ!」
悪役令嬢の方のヴィヴィアンが先にコルテスに真っ向から斬りかかる。
『ふん、混乱しているところをついたつもりだろうが、そのくらいならもう思い出している』
コルテスが床から拾い上げた銃の銃身で素早く受け止める。金属同士の間で火花が散る。
――もちろんこれは囮だ。
「喰らいなさい、傲慢なる侵略者。かつての私でも、未来の私でもない――現在(いま)の私が貴方を討つ!」
コルテスの背後から走り、回り込んだ現在のヴィヴィアンが――
『その攻撃は、すでに見た』
囮を使った、正面と背後からの近接攻撃。それはすでに銃床の痛みを以てコルテスは味わっている。
コルテスは弾籠めが終わると銃身で悪役令嬢の方の剣を弾いて大きくのけぞらせると、素早く背後を向きヴィヴィアン本体の方に銃弾を放つ。
「なっ!?」
予想外の攻撃。しかもコルテスは的確に、足を狙ったのだ。そう、ケツァルコアトルの噛んだ方とは逆の足を。
「っあっ! ううっ……」
激痛が走り、カウンターヒットを喰らったヴィヴィアンはその場に転げるしかなかった。
苦戦
🔵🔴🔴
ヨナルデ・パズトーリ
どの世界でも奴は変わらぬな
ほんに反吐が出る外道よ
異なる世界の妾に代わり妾の手で討ち滅ぼしてやろう!
厳島神社と言う周囲に海や森の多い『地形を利用』
『目立たない』様に『迷彩』を施し『殺気』を抑え『暗殺』の要領で隠匿し隙を伺う
『野生の勘』で敵の気が緩んだ隙を『見切り』自身の司る煙の『属性攻撃』の
『範囲攻撃』魔法を『高速詠唱』で放ち『目潰し』する『先制攻撃』
その後、即座にUC発動
『空中戦』で肉薄
『怪力』による『呪詛』を込めた『鎧無視攻撃』の後『傷をえぐる』様『高速
詠唱』による『零距離射撃』『全力魔法』を叩き込む『二回攻撃』
攻撃は『野生の勘』により『残像』で回避
当たれば『オーラ防御』と『激痛耐性』で対処
●第一の太陽として
「どの世界でも奴は変わらぬな――ほんに反吐が出る外道よ」
燃え盛る厳島神社を、そこで戦う――そして令嬢を痛めつけるコルテスを水着で海から遠めに見ながらヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)はバシャバシャと泳いで近づいていく。
『ふん……終わりか。てこづらせてくれやがって』
コルテスは戦闘が終了したと思い、近づいてくるヨナルデには気づかない。それはヨナルデにとって最高のチャンスでもあった。
「コルテスゥゥゥゥ!」
ヨナルデは床につかまると水音を立てながら飛び上がり、コルテスに煙を吐き出す。ヨナルデ――ヨナルデパズトーリは煙を吐く鏡と言われる。まさにその伝承通りに口から煙を吐いたと言えるか。
『ちっ――誰だ? 目くらませなどしおって』
「妾を覚えておらぬか、ああならば遠慮なくやれるというもの! 覚えていても殺すがな!」
ヨナルデはバックステップで自ら海に飛び込む。すると地響きがすると思いきや――飛び込んだ場所からジャガーを模した黒曜石の鎧に身を包んだヨナルデが飛び出す!
「我ジャガーにして煙吐く鏡、テスカトリポカにしてケツァルペトラトルたる者、ヨナルデパズトーリ! 闇の神、魔術の神、そして――奴隷の守護神として! 民と共に在った嘗ての妾の猛き力、目に焼き付けるが良い!」
ヨナルデパズトーリことテスカトリポカは海に落ちてジャガーに変身したという逸話がある。それの表れがこの姿と言えよう。
そしてそのまま、ギシ、ギシと音を立てながら翼が展開されていく。それは骨の翼。かつて自らに捧げられた血が、骨が、この翼を形作る。
『ケツァルコアトル! 何をしている! 早くそいつを――』
「ああケツァルコアトルよ! 我がわからぬか? わからぬか――その身が生身かオブリビオンかは知らぬが――どいておれ!」
相反する命令がケツァルコアトルに飛ぶ。本来隷属の呪いでケツァルコアトルはコルテスの指示に従うはずだ。
――それへの答えは。
『……』
【動かない】。待ち伏せしてるようにコルテスに見せかけ、邪魔はしないというようにヨナルデに見せる。それがケツァルコアトルにできる精一杯――だったのかもしれない。
ケツァルコアトルのその行動に一つうなずくと。
「おおおおおっ!」
そのケツァルコアトルの横を通り、飛行で一気に近づき煙幕にやられているコルテスを――その黒曜石の斧、数多の血を吸ってきたその斧で。
斬る。
切る。
斬る。
切る。
killkillkillkillkillkillkill――
『が、はっ、あ、ぐぇあ――』
コルテスは思い出す。そうだ。この感触。皮膚が斬られる感触(いたみ)。血の匂い。意識が消えゆく中ようやく思い出した――が、もう、遅い。
「異なる世界の妾に代わり妾の手で討ち滅ぼしてやろう! コルテス!」
そして最後の一撃が振り下ろされると――コルテスはもはや言葉を発さない肉塊となり動かなくなった。
「ふん、生贄にする価値もないわ貴様には」
炎上する厳島神社、その中で変身を解くとコルテスを尻目に帰ろうと――
――ふと、目が留まったのは。
『……』
【動かなかった】ケツァルコアトル。そう、コルテスが死んだ以上、こいつも死ぬ運命だ。
――その目が、少しヨナルデの目を見た気がした。まるで、ペットが死に際に飼い主の目を見るように。
「――」
ゆっくり、ケツァルコアトルに近づくヨナルデ。
――今の世界でそうかは知らないが。ヨナルデパズトーリとケツァルコアトルは兄弟であり、世界を滅ぼしあう宿敵であり、協力して創世に貢献することもあり――そう。いわば、ライバルのようなものだった。
ならばこそ――その最期は。
こんな呪いという運命ではなく。この方が良いだろう。
「安心せい。お主はしっかり、冥界へ送ってやるからの」
ヨナルデはゆっくりと、斧を振り上げた。ケツァルコアトルがそれに応じてなのか否か――ゆっくり、目をつぶる。
「――さらば。我が兄弟――ケツァルコアトルよ」
ケツァルコアトルに、斧が――振り下ろされる。血が、吹き出す。
『Piiiyaaa……a……aa……』
それは槍で刺された時よりは、どこか優しい声。まるで感謝するかのような声で。
ケツァルコアトルもまた、静かに息絶えたのだった。
大成功
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