エンパイアウォー⑱~血風、関ヶ原
●グリモアベースにて
「軍神『上杉謙信』の居場所が、判明したぞ」
猟兵たちを前にして、グリモア猟兵のプルート・アイスマインドは粛然と告げた。
第六天魔軍将の一角――軍神は関ヶ原にいるらしい。関ヶ原にて徳川軍を待ち受けるオブリビオンの軍勢、その陣の中央にて采配を振るっている。
「車懸かりの陣……名将の指揮するその陣形は容易に突破できるものではないだろう。だが陣の突破には別の猟兵たちが力を尽くしてくれる。だからおまえたちは、そのひらけた穴の先、中央にいる上杉謙信の撃破だけを考えてくれればいい」
謙信を骸の海に放逐するには、蘇生時間を稼ぐ役割も果たしている車懸かりの陣を攻略する必要もあるのだが、それは別働の者たちの使命となる。
この場に集う猟兵に託された仕事はただひとつ、上杉謙信の撃破である。
「で、肝心の謙信自体の戦闘能力だが……当然ながら侮れん。他の魔軍将とは違ってこちらが必ず後手を踏むということはないが、12本の毘沙門刀を用いた攻撃はやはり他のオブリビオンとは一線を画している」
謙信が揃え持つ毘沙門刀には、それぞれ属性が備わっている。
水・光・土・火・樹・薬・風・毒・氷・闇――そこへ『アンヘルブラック』『ディアブロホワイト』を加えた12の属性から、適確に攻撃手段を選択してくるだろう。
「何もできずに倒される心配はないとはいえ、奴の実力が脅威であることに変わりはない。死力を尽くさねば喰われる……そう心しておいたほうがいい」
静かに締めくくったプルートが、そっとグリモアを取り出す。
パッと輝きが弾け、その光の粒子を受けた猟兵たちの肉体が転移を始めた。
「謙信は強い。だがおまえたちも強い。どちらの強さが上なのか……軍神に教えてきてやれ!!」
●血風、関ヶ原
広く、見通しの利く平野。
その地にて、白き将――軍神『上杉謙信』はじっと前だけを見据えていた。
打倒信長にひた進む徳川軍を、叩くために。
だがそれも容易ならざるようだと、謙信は悟った。
瞬く光。車懸かりの陣の周辺に現出する強き光が、軍神の肌をひりつかせている。
「幕府軍との決戦より前に、居所を暴かれるとはな。
グリモアの予知は躱せたと思っていたが、流石は信玄を【Q】で阻んだ者達だ」
涼やかな顔のまま、2本の刀を手にする謙信。
白と黒――その双刀で風を薙ぐと、軍神は静かに、しかし確固たる力強さで、向かいくる猟兵たちへ布告した。
「私の得手は『人軍一体』。車懸かりの陣にて、お相手致そう」
星垣えん
まだだ。まだ女性である可能性も残っているはず。
編成のバランス的に女性であってもいいはず……!
というわけでスタイリッシュケンシンさんとの戦いです。
このシナリオは謙信との戦いを描くものですので、プレイングは『車懸かりの陣を突破して謙信にたどり着いている』というイメージでお書き下さい。
それでは皆様からのプレイング、お待ちしております!
以下、本シナリオにおける注意点!
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軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦
『軍神『上杉謙信』』
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POW : 毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 毘沙門刀車懸かり
自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
イラスト:色
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ルベル・ノウフィル
高名な方と戦えるのを光栄に思います
全行動に早業活用
・遠距離から手持ちの彩花を全て投げ、同時に念動力で敵の足元狙いトンネル掘り
・12本のうち6は彩花で相殺、3は三分の一の鏡盾で防ぐ、1は夕闇を投げ、1は亡夜が守ってくれる、最後はオーラ防御を局所集中で防ぐ
・僕は小さく小回りが利く身、念動力で敵の足場を崩しながら妖刀は積極的に左低めを狙い
・手傷を負えば痛悼の共鳴鏡刃を右肩狙い投げましょう、僕の痛みにより殺傷力が増しています
貴方のような武将と戦えた事を誇りに思います
僕は使える札は全て切りましょう
UC:遊戯
貴方とのここまでの戦闘の記憶を捧げます
貴方との戦いの記憶を誇るより、僕は貴方を倒したい
「高名な方と戦えるとは、光栄なことでございます」
先陣きって敵陣を突破し、現れたのはルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)。
謙信は、一番槍で駆けてくる少年へ毘沙門刀の切っ先をかざす。
「光栄か。自身が命を落とすとしてもか?」
十本。浮遊する毘沙門刀がルベルへと射出された。
同時に白刀と黒刀を携えた謙信が追随する。
ルベルは手持ちの彩花を前方にありったけ放り投げると、鏡盾を構えて吶喊した。
「私に真っ向から挑むか、小僧」
全速で走る小さな猟兵へ、十本の毘沙門刀が群がる。
だがそのうち六本はルベルの体を斬る前に地に落ちた。宙を舞う無数の彩花が刀身を包みこみ、勢いを相殺したのだ。
放たれた毘沙門刀は、あと四本。
「残りはこちらで!」
羽織った闇のようなマントを投げて一本を絡めとったルベルが、飢えた獣のように襲いくる三本の刀を鏡盾で防ぎ止める。
残すは、謙信が握っている二本。
「十本を止めるとは見事。だがもう貴様を守るものはあるまい」
抜け目なくルベルとの距離を詰めていた謙信が、黒白の刀を振り下ろす。
しかし、二本の刀はルベルの肩と腕に斬りこんだだけだった。斬り通してはいない。
亡き主が編んだ衣『亡夜』が一本を、もう一本を凝集したオーラの鎧が防いでいた。
「これをも、防ぐか」
「貴方のような武将と戦えた事を誇りに思います……ですが!」
謙信の体が、ぐらりと傾ぐ。
ルベルが放った念動力で足元の土が陥没していた。
謙信の瞳がわずかに開かれたのは、隙が生じた証だった。
「私は誇らしい記憶より、貴方の打倒を望みます!」
その手に握った星守の杖へ、軍神との戦いの記憶を捧げるルベル。
禍々しい死霊の刃へと変貌した杖は鋭く地表を飛び、謙信の左脚を切り裂いていた。
成功
🔵🔵🔴
栗花落・澪
普段は後衛なんだけど…
僕だって本気を出せばそれなりにやれるんだって
教えてあげなきゃね
敵の素早さを警戒し
翼および風魔法を宿した★Venti Alaの【空中戦、空中浮遊】で
行動範囲を上空まで広げ
【催眠歌唱】であわよくば弱体化を狙いつつ気を引き★爪紅の【投擲】
爆発と爆炎による目眩し
【指定UC】発動
敵のUCが竜巻や雷などの
軌道が直線的または台風の目のような安全圏のある技の場合
即座に安全圏に高速移動後攻撃
津波などの範囲攻撃の場合【オーラ防御、激痛耐性】しつつ攻撃
攻撃法は敵の使用属性に対応した【属性攻撃】での
【高速詠唱、全力魔法、範囲攻撃】で追撃
※水なら氷で凍結破壊狙い、木や氷なら炎、闇なら【破魔】の光等
「猟兵。やはり侮れんようだ」
左足に刻まれた深い亀裂に触れ、謙信が顔を上げる。
上空から見ていた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、愛用の飛行靴『Venti Ala』の力を駆って、大気を蹴った。
「普段は後衛なんだけど……本気を出せばそれなりにやれるんだから!」
靴に生えた翼が風を切り、獲物を狙う猛禽類のように駆け下りる澪。
対して地上の謙信も、地面に揺れる澪の影からその存在を感づいた。
「上からも来ていたか」
「迎撃する気? でもさせないよっ!」
零が頭につけていた花の髪飾り『爪紅』を外す。
下へ放り投げた途端――それは大爆発を起こした。
爪紅は非常時には手榴弾としても使える、澪の便利アイテム(?)なのだ。
爆炎がひろがり、謙信の視界から澪の姿を隠す。
「よぉし、今だ!」
好機を逃さずユーベルコードを発動する澪。
どことなく日曜の朝を想起させるフリフリゴージャスな姿――マジカル☆つゆりんプリンセスフォームに変身すると、少し赤面しながら聖杖『Staff of Maria』を取り出す。
時を同じくして、澪と謙信を隔てていた爆炎が晴れた。
「……撃ち落とさせてもらおう」
謙信が先に動く。
足で地面をひとつ踏むと、次の瞬間、巨木が噴き出ていた。
さながら火山の噴火のように。
幹がうねり、爆発的に成長する枝葉が上空の澪を取り囲もうとする。
――だが澪は、わずかたりとも動じてはいなかった。
「そんなもの、燃やしてあげる!」
高めた魔力、そのすべてを火球に変じて撃ちおろす澪。
燃え盛る球は迫りくる枝葉を消し飛ばし、幹に着弾。
業火。
幹を這う炎は樹の全体へ瞬く間にひろがり、謙信もろともすべてを呑みこむのだった。
成功
🔵🔵🔴
祇条・結月
武運を祈るべき毘沙門天の化身がここにいるんじゃ、神頼み、とはいかないね、って軽口
……子供だなんて甘く見ないで。そっちの世界でなら元服してる
出会い頭に苦無を顔に向かって【投擲】して【先制攻撃】
これで隙が作れればいいんだけど
隙が出来てもできなくても、やることは変わらない
隙を狙って、常に動き回って投擲武器で仕掛ける
勿論、無傷でしのげるなんて思ってない。ダメージは受ける【覚悟】で【第六感】も駆使して致命打を避けて立ち回るよ
……決定打がない、って思わせるのが【フェイント】
相手がこちらに止めをって狙ってきたタイミングに合わせて≪鍵ノ悪魔≫を降ろす
毘沙門刀を透過して躱して、渾身の一撃を叩き込む
ティエル・ティエリエル
SPDで判定
「ふふーん!ライバルの武田信玄の復活阻止したボク達だったら、上杉謙信だってへっちゃらだー」
車懸かりの陣を飛び越えたら、背中の翅で「空中浮遊」して空中から襲い掛かるよ!
襲い掛かってくる毘沙門刀は「空中戦」や「見切り」、【スカイステッパー】も使って避けていくね♪
【スカイステッパー】だけじゃなく、刀の峰を蹴って方向転換したりもしちゃうぞ!
こっちから攻撃する時は「フェイント」を加えながら風を纏わせたレイピアによる「属性攻撃」だよ!
ボクの攻撃でダメージを負わせられなくてもきっと味方の人が強力な一撃を入れてくれるよね!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
「私のユーベルコードを阻むか……」
燃え上がる炎から転がり出た謙信。
その表情に俄かに驚きが浮かぶ。
距離をとって攻撃の機会を探っていた祇条・結月(キーメイカー・f02067)は、その身に忍ばせた忍具『クナイ・ダート』に指をかけた。
「武運を祈るべき毘沙門天の化身がここにいるんじゃ、神頼み、とはいかないね」
誰にともなく軽口をこぼしながら、結月の手が苦無を放つ。
引き結ばれたように、苦無は一直線に謙信の顔へ。
だが軌道は顔のすぐそばを掠めた。
結月が狙い損ねたわけではない。迫る苦無を察知した謙信がかわしたのだ。
十二本の毘沙門刀が、ゆらりゆらりと謙信の周囲を回りはじめる。
「忍の者か? しかし生憎、それしきの軽さでは私を倒すことは叶わん」
「……なら、倒れるまで投げつづけるまで」
謙信からの攻撃をかわすべく横向きに走り出した結月が、幾本もの苦無を投げつける。
が、苦無は中空で壁に当たったかのように弾かれた。
そして――投擲した結月めがけて、飛んでくる!
「くっ……!?」
「言ったろう。軽いとな。我が毘沙門刀の風ならば、弾き返すのは容易い」
鎌鼬のような疾風が、結月の全身を切り刻む。
襲いくる痛みから逃れるべく距離をとろうとする結月だが、すでに謙信は次の攻撃態勢に入っている。
不味い――と、思った瞬間だった。
「ふふーん! 武田信玄の復活を阻止したボク達だったら、上杉謙信だってへっちゃらだー!」
周囲を囲む敵陣を飛び越えて、見るからにやんちゃなフェアリーが謙信の後ろに現れた。
ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)である。
翅をパタパタと高速で動かし、ティエルは謙信の背中へと突撃してゆく。
「いっくぞー!」
「猟兵とは、面妖な存在もいるようだな。しかし今の私に奇襲は効かん」
顔だけを振り向け、ティエルの姿を見止めた謙信が、毘沙門刀の防壁で迎え撃つ。
起動されたのは炎の毘沙門刀。
灼熱の炎をまとった斬撃が、ティエルを焼き払うべく空中に放射された。
「来たなー! でもボクにだって、そんな攻撃は効かないぞー!」
飛んでくる炎は、ティエルから見れば炎の壁にすら見える大きさだ。
だがティエルは怯むことなく炎に突き進むと、当たる直前で跳躍。さらに跳躍。
鋭い直角軌道で、炎の壁を飛び越えた!
毘沙門刀をすり抜けてみせたティエルへ、謙信は素直に感心していた。
「我が炎、かわしてみせるか」
「それー!」
避けたばかりの毘沙門刀の峰を蹴り、速力を増して突っこんでくるティエル。
振りかざすは、つむじ風をまとわせた『風鳴りのレイピア』だ。
回転する毘沙門刀の防壁を軽やかに抜けたティエルが、幾重もの斬撃を浴びせる。
しかし謙信はそのすべてを己の腕で防ぎ、急所への攻撃を許さない。
「鬱陶しいな……だが、それだけだ」
傷だらけの腕を下ろしながら、謙信が青い眼光を強める。
回転する毘沙門刀の切っ先が、自分とすれ違っていったティエルの背中へと向く。
――それが、隙だった。
「鬱陶しい。それだけで、十分だよ」
「……貴様は!」
謙信の眼が見開かれる。
己の懐にまで入りこんでいた影に。
回転する毘沙門刀で守っていたはずなのに、気づかぬ間に結月の接近を許していた。
しかも、その結月はもう、ただ苦無を投げるばかりの男ではなかった。
その身に漂う恐ろしいまでの覇気が、謙信にそう教えていた。
「爪を隠していたか……」
「甘く見ないで。そっちの世界でなら元服してる」
鮮やかに輝く銀の短剣が、謙信の腹に深々と突きこまれた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アリス・セカンドカラー
なんか、上杉謙信女性説の幻想を広げろって電波を受け取った気がした。
まぁ、メタ的にTSは無理なので私がその幻想纏って2Pキャラ戦にしましょ、赤ナコ紫ナコな感じで。
創造した12本の毘沙門刀を念動力で空中浮遊させて操作。念動力由来の怪力で威力重視。カウンター、早業、先制攻撃で後の先を取って、五行相克思想で相克関係にあたる剣に属性攻撃の念動力を上乗せして対抗しましょう。早着替えによる武器持ち替えフェイントも交ぜ。
念動力で地形の利用をした罠使いで床移動トラップをでっちあげ、緊急回避や踏み込みの阻害に使用。
劣勢時には奥の手として某ゲーム(架空のも可)の某超必(架空のも可)を幻想で再現して逆転を狙いましょう
「ぐっ、は……!」
痛烈な刺突を受けた謙信が腹を押さえてたたらを踏む。
焦燥と汗が滲む美麗な貌。
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)は、その貌をなめるように凝視していた。
「なんか、上杉謙信女性説の幻想を広げろって電波を受け取った気がした」
そのアンテナ壊れてるから早く直してェ!
「まぁ、TSは無理だろうし、私がその幻想纏って2Pキャラ戦って感じでまとめましょ」
それがいいわ、とか頷いたアリスが全力のスキップで謙信に接近。
当然、謙信さんがその不穏な気配に気づかないわけもなく――。
「新手か……しかしなぜか貴様だけは近づけてはならない気がする」
毘沙門刀を杖代わりにして立ち上がった謙信が、十二本の毘沙門刀をアリスへと飛ばす。
「来たわね。じゃあこっちも使わせてもらうわ」
「……何?」
訝しんだ謙信の眼前で、アリスがほくそ笑む。
そして彼女の周囲がぐにゃりと歪んだ。
やがて歪みの中から出てきたものは――十二本の毘沙門刀だった。
「毘沙門刀、だと……?」
「とりあえず相克関係に当たる剣とかぶつけとけば何とかなるでしょ☆」
飛んでくる謙信の毘沙門刀へ、アリスも毘沙門刀を放つ。
樹を土に。
土を水に。
水を火に。
あとは適当に。
互いに打ち合った毘沙門刀が鳴り響く。
総計二十四本。毘沙門刀は墓標のごとく地面に立ち並んだ。
「私の毘沙門刀とまったくの互角……!」
「いいえ、互角じゃないわ」
上から降ってくる声を、謙信が見上げる。
アリスが創造した鷹につかまり、毘沙門刀の墓場を飛び越えていた。
手を離し宙に放られたアリスが、一振りの小太刀を持って落ちてくる。
その切っ先はぴたりと、謙信の胸へ。
「これが、奥の手」
ぐっと押し込められた刀が、鯨の潮のように鮮血を噴かせた。
成功
🔵🔵🔴
鎹・たから
頭の悪いたからは、あなたをよく知りません
けれどあなたは、民のために尽くす人であったはずです
無辜のいのちをうばうなら
たからはあなたを、ほろぼします
この身に悪鬼を宿します
どのような代償を払おうと
これは、軍神に立ち向かうための力
【勇気、覚悟】
刀の攻撃は特に炎に気をつけ
可能な限りオーラと残像で凌ぎ
攻撃パターンを学習、隙を狙います
【オーラ防御、残像、情報収集、学習力】
隙を見つけ次第、残像をのこしたまま急接近
手裏剣とセイバーで脚や腕に斬りかかります
連撃で敵の機動力や防御力を着実に落とし
その首と心臓を狙います
【暗殺、2回攻撃、ダッシュ、気絶攻撃、鎧砕き】
こども達の未来をうばうなら
たからは神をほろぼします
上泉・祢々
人軍一体ですか
でももう頼みの綱である陣は突破しました
あとはあなたを相手取るだけです
さぁ、死合ましょう? あなたの武と私の武どちらが上か勝負です
素手で触れるのはあまりよろしくなさそうですが
とはいえこちらに得物はありません
仕方ないので着物の袖を拳に巻き付けておきましょう
気休めですが無いよりはましです
そのまま全速力で駆けだしこの身に迫る飛ぶ刀は動きを見切り致命傷になりそうなものだけ拳で受けて逸らす
間合いに踏み込み振るわれる両手の刀は腕の動きを盗み刀の腹を殴って防ぐ
好機を待ち刀を回避
腹部に衝撃を伝える掌打を放ち出来た隙に相手の顔面目掛けて拳を叩きこむカウンターの二回攻撃です
私の拳のお味は如何ですか?
まるで果実が潰れたように、謙信の体は血で染められている。
けれど未だ、地に伏してはいない。
「負けるわけには……いか、ぬ……!」
死力を振り絞る謙信が、十二の刀を振りかざす。
向けるは猟兵。
漆黒のポニーテールを踊らせて、上泉・祢々(百の華を舞い散らす乙女・f17603)が敵群を荒れ馬のごとく突破してきていた。
「さぁ、死合ましょう? あなたの武と私の武どちらが上か勝負です」
「……いいだろう」
全速で駆けてくる祢々に、謙信が次々に毘沙門刀を飛ばす。
十本。
軌道に一切の迷いはない。まともに受ければ尽く肉を裂かれるだろう。
――が、祢々は構わず吶喊した。
「なんのこれしき!」
火事場に突っこむように背中を丸め、駆ける祢々。
着物の袖を巻きつけた右拳で、首を狙ってきた毘沙門刀の一本を弾き飛ばす。
さらに腹を貫通せんと襲ってきた一本を、左拳で打ち払う。
そうして、前へ。
脚が、腕が、斬られる。だが猛進する。
急所にさえ受けなければいい……捨て身の覚悟で、祢々は謙信の懐に到達していた。
「凌いでみせるか……しかし!」
謙信の左手が、ディアブロホワイトを打ち下ろす。
対する祢々は――思いっきり、左拳を振り上げていた。
「はあっ!!」
「!?」
拳が刀身の横っ腹を叩く。逸れた斬撃は地面を割った。
「貴様……!」
すぐさまアンヘルブラックを、祢々めがけて振るう謙信。
だが祢々のほうが、速い。
「私の刀、見舞ってあげましょう」
祢々の刀――日夜研ぎつづける肉体が、吼える。
鋭く繰り出された掌打が打ちこまれると、謙信の体は綺麗にくの字に折れていた。
「カハッ……!?」
「もう一発!」
下がった謙信の顔面を、祢々の拳が、刀が打ちぬく。
全力の一打。それをまともに受けた謙信の体は、はるか後方に吹き飛ばされ、幾度も地面に打ちつけられたところでようやく勢いを止めた。
「武器も持たぬ者が……私を打ちのめすだと……」
よろりと立ち上がる謙信だが、その脳裏を占めるのは動揺だけだった。
しかし、その動揺を収める時間はない。
「頭の悪いたからは、あなたをよく知りません。けれどあなたは、民のために尽くす人であったはずです」
「……!?」
毘沙門刀を立てて体を支えた謙信が、少女の声に振り返る。
後ろにいたのは、能面のような冷たい表情を見せる女羅刹――鎹・たから(雪氣硝・f01148)だった。
だが動かぬ顔とは裏腹に、その胸には燃え立つ意志がある。
「無辜のいのちをうばうなら、たからはあなたを、ほろぼします」
「滅ぼす……私をか。ならば相応の覚悟は、持ってみせよ」
「覚悟なら、すでに」
たからの黒い角が震え――その場一帯に雪風が吹きすさぶ。
闘気が、凍気が、満ち満ちていた。
その身に悪鬼を宿したたからの身体は、もはやあるだけで辺りを凍てつかせる災害だ。
力の代償として口や眼から血をこぼす姿は、まさに悪鬼羅刹であった。
「容赦は、しません」
「……いい覚悟だ」
言下、謙信の毘沙門刀たちが回転を始め、うち一本が唸りをあげた。
炎だ。
凍気を御するならば熱気。
放射された炎が獰猛に空間を走り、凍りついた空気ごとたからを呑みこんだ。
――が、たからは平然と立っていた。
平然過ぎるほど、身じろぎもしない。
「……幻か!」
弾かれたように謙信が辺りを見回す。
すると左方、猛然と疾駆してくるたからの姿があった。毘沙門刀の炎が呑んだのは、すでにその場から動き出していた彼女の残像だった。
たからが放った手裏剣『不香の花』が、謙信の脚に突き刺さる。
「くっ、遠距離での手段も持ち合わせていたか……」
「軍神に立ち向かうのであれば、手抜かりはありません」
地を蹴りつけたたからが、一気に謙信に肉迫した。
懐に潜らせてはならぬ――そう直感が囁くままに、謙信が黒刀を振るう。
だがたからは透き通る硝子の剣『玻璃の花』で黒刀を打ち上げ、がらあきの懐にするりと音もなく体を潜りこませた。
返す刀。
玻璃の花が、軍神の首元を刈る。
「……この私を葬るか、猟兵…………」
「こども達の未来をうばうなら、たからは神をほろぼします」
上杉謙信の首に刻まれた一線が、赤々と大花を咲かせた。
玻璃の花から血を振るい落とすたから。
そして今一度、見下ろした。
用兵の神の姿は、晴れゆく雪風とともに消えていた。
大成功
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