エンパイアウォー㉑~忠義の剣は魔猿と共に
「エンパイアウォーへの参戦に感謝します。リムは現在の戦況を報告します」
グリモアベースに集った猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「皆様がエンパイア各地でオブリビオンの討伐を続けた結果、信長に仕える『魔軍将』の一人の所在が判明しました」
魔軍将は信長軍に属するオブリビオンの中でも最高クラスの幹部たち。その中にはエンパンパイアの歴史にその名を刻んだ偉人、名将たちも名を連ねている。
もし、この戦争に勝利したとしても彼らを討ち損ねることになれば、逃げ延びた魔軍将は戦争後もエンパイアの何処かで暗躍を続けるだろう。
「単なる強敵というだけではなく、戦後のエンパイアの未来を考えても、決して無視することのできない驚異です。リムはこの機に乗じた確実な撃破を要請します」
そう言ってリミティアは作戦の詳細について説明を開始した。
「今回、所在が判明した魔軍将の名は大帝剣『弥助アレキサンダー』――そして第六天魔軍将図には記載の無かった隠し将『豊臣秀吉』です」
一人でもただでさえ強大な魔将軍が、同時に二人。しかもそのうちの一人は情報になかった敵ということもあって、説明するリミティアの表情も険しいものとなる。
"弥助"と"秀吉"と言えば、異世界の歴史上においても織田信長の臣下としてその名の残る人物である。とにかく癖が強く、意志も目的も統一されているとは言い難い魔軍将の中でも、彼らは信長に固い忠誠を誓っているようだ。
「弥助アレキサンダーは『メガリス』と呼ばれる、特殊な力を持つ渡来人の至宝を所持しています。さらに戦闘においては豊臣秀吉が彼の盾となるため、苦戦は必至でしょう」
この二人に共通する信念、それは『全ては信長様の為に』。油断も慢心もなく、彼らは全力で主君の敵を討ち倒す覚悟でいるようだ。
「弥助アレキサンダーと豊臣秀吉の所在地は、本州と九州を隔てる関門海峡の海上。現在この海域は『大帝の剣』により支配された長州藩の『毛利水軍』に封鎖されています」
メガリス『大帝の剣』には大軍勢を操る能力がある。毛利水軍はこの力によって猟兵が敵だと洗脳されており、弥助アレキサンダーを守ろうと襲い掛かってくる。
魔軍将と戦うためには、どうにかしてこの水軍を突破する必要がある。彼らは一般人ではあるが屈強な武士たちで、さらに猟兵に対して敵意を剥き出しにしている。
「皆様の力であれば毛利水軍を全滅させて強行突破することも可能でしょうが――戦後の長州藩と江戸幕府の未来を考えれば、あまり良い手とは言えないでしょう」
可能な限り被害を抑えたうえで、迅速に敵軍を突破する作戦が必要になるだろう。
「弥助アレキサンダーは毛利水軍による防衛線の向こう、メガリス『闘神の独鈷杵』の力によって発生した『関門海峡の大渦』の中心に浮遊しながら、3つのメガリスの力を高めています」
彼が所持するメガリスは『大帝の剣』『逆賊の十字架』『闘神の独鈷杵』。この3のメガリスの力が大きく高まった時、天変地異の如き雷の大渦が発生する。それは作戦に参加した猟兵たちを纏めて吹き飛ばせるほどの絶大な力だ。
「この雷の大渦の発生が事実上、今回の作戦のタイムリミットとなります。しかし先に弥助を撃破しようとしても、その前には豊臣秀吉が立ちはだかります」
秀吉は対象を異形強化するメガリス『逆賊の十字架』の能力によって、スピードと反応速度を強化されている。海上を自在に超高速で飛び跳ねる彼によって、弥助への攻撃はすべて受け止められてしまうだろう。
「将を射んと欲すればまず将から――というのもおかしな話ですが、まずは秀吉を倒さない限り、弥助への攻撃は届きません」
隠し将と言えど、メガリスで強化された秀吉の力量は他の魔軍将に劣るものではない。
明らかにヒトからかけ離れた――サル? のような異形なれど、その精神性は義と忠に厚いまさに武将の鑑。信長軍の勝利のため、その生命を捨てる覚悟で挑んでくるだろう。
「そして秀吉を突破しても、3つのメガリスを武器とする弥助も恐るべき強敵です」
弥助にとってもこの戦いは正念場。勝利にためにその身を呈した秀吉の覚悟を無駄にしないためにも、持てる限りの力を尽くして戦うだろう。
立ち向かう猟兵たちも、相応の作戦と全力を以て挑まなければ撃破は不可能だろう。
「今回の作戦はすべて海上での戦いとなります。地上戦とは勝手が違うでしょうが、うまく適応できれば逆に有利にもなるでしょう」
特に弥助アレキサンダーとの戦いにおいては、メガリスの力が生んだ『関門海峡の大渦』が戦場の中心となる。これを利用すれば戦闘を有利に運べるかもしれない。
「相手は強敵。利用できるものは全て利用して、勝利を掴み取ってください」
そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、関門海峡への道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
織田信長に従いし魔軍将、第六に現れしは大帝剣『弥助アレキサンダー』そして隠し将『豊臣秀吉』!
未知なる将の出現に加え、今回は関門海峡に展開する毛利水軍までもが猟兵たちの前に立ち塞がります。困難な戦いが予想されますので、覚悟の上でご参加ください。
大帝剣『弥助アレキサンダー』および隠し将『豊臣秀吉』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
第一章では『大帝の剣』に洗脳された毛利水軍の突破が目的となります。
エンパイアの今後を考えれば、なるべく犠牲者を出さないよう立ち回るのがベストでしょう。
水軍の突破に成功すれば、第二章では弥助を守る隠し将『豊臣秀吉』との戦闘。
そして第三章では大帝剣『弥助アレキサンダー』との決戦になります。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『毛利水軍を突破せよ』
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POW : 邪魔する船をひっくり返すなど、力任せに毛利水軍を突破します。
SPD : 毛利水軍の間隙を縫うように移動し、戦う事無く突破します。
WIZ : 毛利水軍の配置、天候、潮の流れ、指揮官の作戦などを読み取り、裏をかいて突破します。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メンカル・プルモーサ
うーん、強引に切り抜けようとすると被害出そうだな……
一般兵士は洗脳されてるだけだから傷つけたくないし、ここはゆっくりこっそり……
事前に【戯れ巡る祝い風】を使用、見つからないような偶然が起きたり他の猟兵の手助けになればいいな……と思いつつ
箒に載って海上移動……事前に陣容を調べて手薄なルートで……迷彩術式でバレないように……
どうしても回避できない場所は【消え去りし空色のマリー】で姿を消して通過……疲れるから最小限にしたい所……
万一見つかったら連絡される前に【世界鎮める妙なる調べ】で眠らせるよ……
アリス・フォーサイス
操られてるだけの一般人なら、なるべく傷つけたくないな。
兵糧がなくなれば戦を続けることはできなくなるはず。
こっそり忍び込んで、兵糧を燃やすよ。
忍び込む時は迷彩魔法を自分にかけて、音をたてず、目立たないよう、そうっと潜入するよ。もちろん道に迷わないよう、事前に場所の情報はつきとめておくよ。
さすがに見張りがいるだろうから追い払わないとね。恐怖を与える幻覚を見せようかな。仲間を呼んだとしても、ぼくの火の矢が兵糧を燃やす方が、かけつけるより速いだろうからね。
さらに新たに兵糧を運び込めないよう、情報収集で補給線をつきとめてそこを断つように兵を配置するよ。
まあ、兵糧を燃やされたらさすがに撤退するでしょ。
「うーん、強引に切り抜けようとすると被害出そうだな……」
関門海峡の海上に現れた巨大な大渦。その周辺海域に展開された毛利水軍を見渡しながら、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はそう呟いた。
軍船にて猟兵を待ち構えるのは精強なる長州武士たち。だが彼らは本来ならば敵ではなく、魔軍将が所有するメガリス『大帝の剣』に洗脳された被害者に過ぎない。
「操られてるだけの一般人なら、なるべく傷つけたくないな」
そう言ったのはアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)。
ここで無用な血を流せば、戦後に余計な禍根を残しかねない。なるべく交戦を避けて突破しようという提案には、メンカルも頷くところだった。
「一般兵士は洗脳されてるだけだから傷つけたくないし、ここはゆっくりこっそり……」
飛行式箒【リントブルム】に乗って、上空から船団の陣容を把握したメンカルは、警備のなるべく手薄なルートを味方に伝えて移動を開始する。
電脳魔術師にしてウィザードである彼女たちが纏うのは、科学と魔法による迷彩の術式。水面に沿うように低く海上を飛行する彼女たちの姿を捉えることは、常人の目には困難だろう。
「遙かなる祝福よ、巡れ、廻れ、汝は瑞祥、汝は僥倖。魔女が望むは蛇の目祓う天の風」
加えてメンカルは【戯れ巡る祝い風】を吹かせ、幸運を自らの味方につけている。
水上を見張る兵士がたまたまよそ見をしたり、高く上がった波しぶきが都合よく姿を隠してくれたりといった、様々な偶然も彼女たちの有利に働いていた。
「これなら全然見つかりそうにないね」
メンカルの起こす祝い風の後押しを受けたアリスは、迷彩魔法を使ったまま適当な軍船に近付くと、誰にも気付かれることなく船内へと忍び込む。
音を立てず、目立たないよう、ふわふわと宙を浮かびながら彼女が目指すのは、海上の兵士たちの糧を保管した食料庫。その所在を突き止める程度のことは、情報妖精たる彼女には造作もない。
「ちょっと向こうに行っててね」
「うわっ!? 何だっ、敵襲かっ!?」
倉庫の見張りに立っていた兵士は、恐怖をかき立てるような怪物の幻覚を見せて追い払う。慌てた兵士は逃げ惑いながら仲間を呼ぶが、ここまで来ればもうアリスが目的を果たすほうが速い。
「兵糧がなくなれば戦を続けることはできなくなるはず」
【ウィザード・ミサイル】の火矢が放たれ、たちまち食糧庫は真っ赤な炎に包まれた。
「火事だー!!」
「食糧庫が燃えているぞ!」
突如として船内で燃え上がった火の手に、武士も兵士もたちまち大慌てとなる。
この世界の船舶とは基本的に木造である。そこで火災が起これば問題は食糧庫だけの話では済まず、最悪船そのものが沈没する恐れも高い。
「速く消せ、消すんだ!」
こうなれば彼らはもう戦うどころではない。付近にいた船からの助けも借りて、消火作業にてんやわんやとなる。
「思ったよりちょっと大事になったかな?」
「おかげで楽に突破できるけどね……」
騒ぎに乗じてひょっこりと船内から脱出してきたアリスに、メンカルは軽く手を振りながら答え。敵の意識がこちらから完全に外れた隙を突いて、船団の防衛網をくぐり抜ける。
「これなら疲れないで済む……」
どうしても避けられない場合は【消え去りし空色のマリー】で透明化することや、【世界鎮める妙なる調べ】で敵を眠らせることも考えていたメンカルだったが、この分ならその必要もない。
魔軍将と戦う前に魔力と体力を温存できるなら、それに越したことは無いだろう。
最小限の負担のみで毛利水軍を突破したメンカルは、そのまま大渦へと向かう。
「まあ、兵糧を燃やされたらさすがに撤退するでしょ」
メンカルの後に続いてするりと船団を突破しながら、アリスは燃える船を見やる。
このまま船自体が沈むことは無さそうだが、彼女が燃やした食糧庫は、この付近の軍船用の食糧を纏めて積み込んでいた。彼女は事前にそれも織り込んだ上で、敵の補給線を断ったのである。
狙い通りに離脱していく船を見届けて、アリスもまた大渦へと接近していく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
光・天生
……正直、サムライエンパイアにいい思い出はあまりありませんが。
だからといって、ここで彼らを殺める理屈にはならない。
UCでもって全身に薄く氣を行き渡らせて【防御力重視】の強化。
多少の攻撃は無理矢理に耐え抜く狙い。
ですが氣を最も重点的に送るのは脚。
八艘飛びと言うには荒々しすぎますが……
強化された脚力に任せ、【ダッシュ】からの【ジャンプ】!
水軍どもには目もくれずひたすら高速で船から船へと飛び移っての突破。
船首、船の縁、何なら櫂一つでも
【地形の利用】として足場にしてみせましょう。
あまりに攻撃が激しいなら
【怪力】任せに船の一つ程度引っくり返して脅かしてやります。
この密集度なら落ちた船員も救助されるはず。
「敵襲か!!」
船団の一角で上がった火の手を見て、毛利水軍は即座に厳戒態勢となる。
だがその時には既に、次なる猟兵は彼らの船上にまで近付いてきていた。
「押し通らせてもらいます」
だん、と力強い足音を響かせて、甲板上に着地した光・天生(鈍色の天蓋に神は座す・f05971)は、鋭い眼差しで長州の武士たちを睨め付ける。
「おのれ、賊め!」
剣呑な殺気を放ちながら、刀や弓矢を向ける武士と兵士。これを蹴散らすのは容易いことだが、天生はぐっと拳を握ってそれを思い留まる。
(……正直、サムライエンパイアにいい思い出はあまりありませんが。だからといって、ここで彼らを殺める理屈にはならない)
彼らは大帝の剣の力によって猟兵を"敵"と認識させられているに過ぎない。咎なき者の敵意に、憎悪と怨嗟を以て応じるは容易いが、それは天生の強く戒める事。
故に彼はすぅとひと呼吸すると握った拳を開き、たんっと力強く甲板を蹴った。
「なんと!!」
瞠目する武士たちの頭上を軽々と越えて、その隣に浮かぶ軍船に飛び移る天生。
彼のユーベルコード【龍氣一極】は、特殊な呼吸法によって氣を肉体に行き渡らせ、自らを強化する技。特に脚に重点的に氣を送れば、その脚力はカモシカの如し。
「八艘飛びと言うには荒々しすぎますが……」
船上に着地すればすぐさま再び助走をつけて、次なる船に向かって跳躍。船首、船の縁、櫂一つに至るまで、足を置ける場所があれば何でも足場にして、敵の布陣を突破していく。
「ぐぬぬ、止めよ、止めよっ!」
そうはさせじと攻撃を仕掛けてくる武士たちには目もくれず。脚部のみならず全身に薄く行き渡らせた氣は、彼の肉体を俊敏なだけではなく、頑強に強化している。
嵐のように放たれる矢の雨を強引に耐え抜きながら、天生が見据えるのは常に魔軍将の居座る大渦の方角だ。
「……しかし、思ったより攻撃が激しいですね」
先に進めば進むほど軍船の密度も増し、敵の攻撃もより苛烈さを増す。
毛利水軍は一般人なれども精強な武士団。このまま強行突破を続けるのは思ったより負担が大きいかもしれない。
そう考えた天生は、ひとつ脅かしてやろうと近くの軍船に狙いを定め――跳躍しながら、その横腹に強烈な蹴撃を叩き込んだ。
「ぬおおおおおおっ!?!?」
とても人間業とは思えない――砲弾の直撃を受けたような衝撃が軍船を揺らし、復元可能な傾斜を超えた船はそのまま横倒しにひっくり返る。
(この密集度なら落ちた船員も救助されるはず)
怪我人は出たかもしれないが、溺れ死ぬ者まではいないだろう。むしろ付近の船が海に落ちた者の救助に向かうなら、それが突破のための好機となる。
動揺する船団の間を飛び回り、天生は一気に毛利水軍の防衛網を突破していった。
成功
🔵🔵🔴
ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブ歓迎
○連携ご自由に
はてさて、史実通りなら毛利水軍の船の動力は風…帆やオールじゃろな。
帆はともかく、オールは数も多いか…ちっと手数の多い奴にでも手を借りるかのぅ。
○戦闘
できりゃ人は傷つけたかねーしな、直せる範囲で船を使えんくしようかの。
【選択したUC】にて【装備10】の槍翼の揮士(以下槍翼)を呼びだし、協力を仰ぐ。
わしは【装備9】の宇宙バイクに跨って【空中戦】を、槍翼の奴は自身で空中戦できるしの。
槍翼の【ランスチャージ】やわしのバイクでの【捨て身の一撃】で粗方帆を破り船が鈍ったら、槍翼に合図じゃ。
【選択したUC】で残る動力、全てのオールを千の槍頭で【スナイパー】してもらうわい。
「できりゃ人は傷つけたかねーしな、直せる範囲で船を使えんくしようかの」
超未来変形屋台バイク【IZAKAYA:げんちゃん】に跨り、ゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)は関門海峡を駆ける。
待ち受けるのは毛利水軍の大船団。常識的に見れば圧倒的な戦力差であるが、猟兵である彼らにすれば蹴散らして進むに苦労はない。
問題は、いかにして被害を抑えながら突破するかということ。ここで水軍と猟兵が潰し合っても、笑うのはオブリビオンだけなのだから。
「はてさて、史実通りなら毛利水軍の船の動力は風……帆やオールじゃろな」
ゲンジロウの見立てる限り、エンパイアの軍船もその点は同様らしい。であればそこを破壊してしまえば、動力を失った船は戦力外となる。
「帆はともかく、オールは数も多いか……ちっと手数の多い奴にでも手を借りるかのぅ」
そう言って空を見上げた彼の視線の先には、大きな一羽の鳥が――いや違う。
それは空を翔ける一人の揮士。この戦いに助力すべく舞い降りた、ゲンジロウの頼もしき後進である。
「ゲンジロウさん、援護させて頂きます!」
「お! 悪ぃな槍翼の揮士! んじゃ行くか!」
「はい!」
アリスランス《翼槍》を片翼から突撃槍に変化させた揮士は、飛燕の如き勢いで敵船団へと翔んでいき。遅れてはいられないとばかりに、ゲンジロウも宇宙バイクのエンジンを吹かして突撃する。
「何だこやつらは?! 鉄の鳥の妖怪か?!」
「物の怪だろうと構うな! ええい撃て、撃ち落せ!」
空から襲来する猟兵たちの攻撃を受けた敵船団は、大きな動揺に見舞われる。
サイボーグである槍翼の揮士が装着したパワードスーツも、ゲンジロウの駆る宇宙バイクも、この世界の技術水準を遥かに超えた産物。それが自在に空中を飛び回る様は、彼らの常識を遥かに超えていた。
「別にお前さんらに恨みはないが、まあちっと大人しくしといてくれ」
射掛けられる矢をかいくぐりながら、ゲンジロウは宇宙バイクのエンジン全開のまま敵船の帆に突撃。そのど真ん中に大きな風穴を開けながら空中を爆走する。
その一方では槍翼の揮士も、自在な空中機動で長州の武士たちを翻弄しながら、巧みな槍さばきで次々と帆に穴を開けていく。
それまで風を受けて膨らんでいた帆は、二人の攻撃によってその役割を果たせなくなり、風という重要な推進力を失った船団の動きはたちまち鈍っていく。
「そろそろ頃合いじゃな。槍翼の揮士、遠慮なくぶっ放してくれや!」
「ええ、任せて下さい――全ターゲットロックオン! 翼槍……展開!」
付近に浮かんでいた船の帆を粗方破ってから、ゲンジロウは揮士に合図を送る。
頷く彼の《翼槍》は、使い手の想いに応えて再び姿を変え、空中に浮かぶ千の槍頭と化して敵船団へと矛先を向ける。
「穿て、一揮槍千!!」
勇ましき号令と共に放たれた千の槍頭が狙うのは、敵船団を動かすオール。
嵐の如く降り注いだ槍は、武士や漕ぎ手を一人も傷つけることなく、船の動力源のみを貫いていく。
「お、おのれぇっ!!!」
帆もオールも失ってしまった船は、波に任せて海を漂うだけの巨大な木箱に過ぎない。他船からの救援が来るか、なんとか自力で修理するまで、そこで立ち往生だ。
「そんじゃ、今のうちじゃな」
「ええ、行きましょう!」
槍翼の揮士とごつんと拳を突き合わせると、動けない敵船を尻目にゲンジロウは先に進むのであった。
成功
🔵🔵🔴
ステラ・アルゲン
弥助に秀吉……かの信長という者には優秀な臣下がいたのですね
とにかく彼らも倒さねばならぬ相手
戦場において有能な指揮官を潰すのは勝利に繋がりますから
一先ず水軍をなんとかしましょう
移動手段は船の上を渡り歩いて行います
立ち回る私の【存在感】で敵の注意を引きつつ、風【属性攻撃】で海水を海から運び甲板にいる敵にぶち撒ける
甲板を水浸しにしたら【凍星の剣】を発動
冷気によって敵を船ごと凍りつかせましょう
あぁ、あくまで敵の動きを止めるだけです
人を傷つけることはないでしょうがけして簡単には溶けない魔法の氷ですよ
これでしばらく大人しくしてもらいましょうか
「弥助に秀吉……かの信長という者には優秀な臣下がいたのですね」
そう呟いたステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)の視線の先に見えるのは、魔軍将によって生み出された関門海峡の大渦。
この距離からでも感じられる強大な力の波動。メガリスなる秘宝を操り、主君への忠誠心も深い彼らは、魔軍将の中でも特に困難な相手とみて間違いはないだろう。
「とにかく彼らも倒さねばならぬ相手。戦場において有能な指揮官を潰すのは勝利に繋がりますから」
船から船へと渡り歩きながら先へ進む彼女の手には、ヤドリガミの本体である流星剣が鋭い輝きを放っていた。
「ええい、これ以上貴様らを行かせるわけにはいかん!」
猟兵の襲来によって混乱の渦中にある毛利水軍は、それでも士気を挫けさせることなく、殺意と敵意を剥き出しにして行く手を阻む。
「一先ず水軍をなんとかしましょう」
踏み込んでくる武士の一太刀を、ステラは流星剣で鮮やかに受け流す。
その流麗な剣技と、凛々しい騎士としての立ち居振る舞いは、戦場においても一番星のような存在感を放っていた。
敵兵はその輝きに引きつけられるようにステラの元に殺到し、気がつけば彼女は船上で大量の武士たちに取り囲まれていた。
「もう逃げ場はないぞ」
油断のない所作で刀を構え、じりじりと包囲を狭めていく毛利水軍。
しかし追い詰められたはずのステラの表情に焦りはなく、むしろ余裕さえあった。
「逃げるつもりはありません」
そう告げた彼女の直上には、巨大な水の球体が。剣戟で武士たちの相手をしながら、密かに風の魔法を操って、周りの海から海水をここまで巻き上げてきたのだ。
パチンとステラが指を鳴らした途端に風は止み、解き放たれた海水は甲板上へとぶち撒けられる。
「ぬおわっ!?」
甲板はたちまち水浸し、武士たちも頭から水飛沫を被ってずぶ濡れに。
思わず彼らが怯んだ隙に、ステラは【凍星の剣】を振るう。
「凍てつき輝け、我が星よ」
剣身から放たれた凍てつく冷気が、海水の撒かれた船ごと敵兵を氷結させていく。
傷つけるのではなく、あくまで動きを止めるだけ。しかしその効果は絶大だった。
「くっ、動けん……なんだこれは!?」
「けして簡単には溶けない魔法の氷ですよ」
海上に浮かぶ氷塊と化した船は、舵も利かないまま海を漂うのみ。
そして敵は屈強なれどあくまで一般人、常識外の魔法の力に対抗する術もない。
「これでしばらく大人しくしてもらいましょうか」
無力化された敵船を後にして、ステラは軽やかに近くの船へと飛び移るのだった。
成功
🔵🔵🔴
ナーシャ・シャワーズ
大渦の中心に浮かんでるたぁ、ずいぶんと大層な演出だ。
こいつは一つ、私も絵になる戦いって奴を見せてやりたいね。
その為にも、お前さんたちにかかずらう暇も理由もないってこった。
白波と共に駆け抜けさせてもらおう。
さて、それじゃあ行こうか、スペースサーファー。
宇宙の波を越えてきたお前さんならこの荒波だって越えられるさ。
数えきれないほどの敵に囲まれたって、私とお前は切り抜けてきた。
後は私の目と、勘と、技でぶっちぎる。
さあさ、毛利水軍とやら。矢でも鉄砲でも撃ってきな。
右へ左へ、時に宙を舞い、どんな隙間だって抜けて見せる。
宇宙海賊の神髄って奴をお見せしよう。
こちとら光よりも早い世界で戦ってきたんだ。
「大渦の中心に浮かんでるたぁ、ずいぶんと大層な演出だ。こいつは一つ、私も絵になる戦いって奴を見せてやりたいね」
彼方にて待ち受ける魔軍将、その力の一端を前にして、ナーシャ・シャワーズ(復活の宇宙海賊【スペースパイレーツ】・f00252)は愉快そうににやりと笑う。
「その為にも、お前さんたちにかかずらう暇も理由もないってこった」
余裕ぶって飄々と、しかし頭の中は冷静に冷徹に――眼前に立ちはだかる毛利水軍の大船団を突破するのが、まず第一の関門だ。
「さて、それじゃあ行こうか、スペースサーファー」
愛用の宇宙バイクの名を呼んで、ナーシャはエンジンの出力を上げる。
大渦と戦闘の影響か、本日の関門海峡の波は荒れ模様。そして水軍もこちらの接近には気付いているようで、弓矢と火縄銃を構えて迎撃の構えを取っている。
しかしナーシャは狼狽えるどころか、スリルを楽しむように愛機のハンドルを握りしめる。
「宇宙の波を越えてきたお前さんならこの荒波だって越えられるさ。数えきれないほどの敵に囲まれたって、私とお前は切り抜けてきた」
たとえ昔ほどのスピードは出せなくとも、信頼に足る経験と"魂"がこのマシンには詰まっている。後は自分の目と、勘と、技でぶっちぎるだけだ。
「さあさ、毛利水軍とやら。矢でも鉄砲でも撃ってきな。宇宙海賊の神髄って奴をお見せしよう」
そう勢いよく突っ込んでくるナーシャへと、歓迎の矢弾が大雨のように降り注ぐ。
ナーシャはバイクのハンドルを右へ左へ巧みに操り、僅かな弾幕の隙間を滑り込むように抜けていく。
「こやつ、海の上でなんという騎馬術を……!! ええい、行かせるな!」
驚愕する水軍の武者たちは、ならばと軍船そのものを障害にして、その進路を阻まんとする。しかしナーシャは速度を緩めるどころか逆に再加速。波の勢いを利用した大ジャンプで、立ちはだかる敵船を飛び越えてみせる。
「何とッ!?」
宙を舞うナーシャのスペースサーファーを見上げ、武士たちはあんぐりと驚嘆。
そんな彼らにウィンクをひとつ送りながら、邪魔者を突破したナーシャはそのまま敵船を置き去りにしていく。
「――ハッ! いかん、撃て撃て!」
背後から響く発砲音。必死に追い縋るような弾丸を、振り返りすらせず避けていくナーシャ。熱線銃に比べれば、この世界の銃弾などハエが止まるような遅さだ。
「こちとら光よりも早い世界で戦ってきたんだ」
ハートは熱く、思考は冷静に。敵の攻撃を掠めすらさせない見事な技量と判断力で、ナーシャは戦場を白波と共に駆け抜けていった。
大成功
🔵🔵🔵
月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<誘惑の呪詛>宿し呪詛/呪操る
魔軍将相手に連戦…ね
この戦争で初めて信長に忠義を抱く将が出てきたのかしら。
連戦に加え敵の士気が高い、厳しい戦いになりそうです
[コメット]バイク:騎乗操縦、空中を移動
<念動:オーラ>バイクごと包み飛行補助と耐性・防御力強化。
機動力の差で振り切る事も出来るでしょうが、
魔軍将の戦いや渦に近づかれては危険ですか
《縛鎖》虚空より召喚する鎖で船全体を覆う様縛りその場に固定
鎖の力でメガリス『大帝の剣』の影響弱め、
破邪<破魔の呪>広げ洗脳に対抗可能かも試す。
洗脳解ければ最良。解除不能なら、
鎖に<呪詛:カウンターでマヒ・気絶攻撃>仕込む
鎖への対処を困難にし時間稼ぎ
「魔軍将相手に連戦……ね。この戦争で初めて信長に忠義を抱く将が出てきたのかしら」
バトルバイク『コメット』に跨がり海上の空を駆けながら、月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)は戦況分析を行う。
前方に立ちはだかるのは洗脳された毛利水軍。それを超えた先では主君への忠義に燃える豊臣秀吉、そして弥助アレキサンダーが待つ。
「連戦に加え敵の士気が高い、厳しい戦いになりそうです」
それでもここで退けば、エンパイアの未来に大きな惨禍を残すことになる。
覚悟を決めた少女はその身に呪詛の力を纏うと、勢いよく戦域へと突入する。
「来たぞ、迎え撃て!」
植え付けられた猟兵への敵意を剥き出しにして、一斉に攻撃を仕掛ける毛利水軍の兵士たち。
対するユイは自らの念動力で『コメット』を包み、まさしく彗星の如き機動力で矢の雨をくぐり抜けていく。敵船の速力、そして攻撃の威力や射程はこちらを脅かすほどのものでは無いことを、彼女はすでに見切っていた。
「機動力の差で振り切る事も出来るでしょうが、魔軍将の戦いや渦に近づかれては危険ですか」
魔軍将との戦いに横槍を入れられれば猟兵も危険だが、猟兵とオブリビオンの戦闘に巻き込まれれば毛利水軍の命の保証もない。
今のうちにできる限り彼らを傷つけず無力化しておく。それがユイの判断だった。
(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。概念制御、情報収集、縛鎖強化更新最適化)
執拗な毛利水軍の攻撃を躱しながら、ユイが起動するのは概念兵装『縛鎖』。万物を喰らい封じる拘束用の武装である。
「永久の縛りを……」
虚空より召喚された黒、銀、金の三色の鎖は、武士たちの乗る軍船を覆うように縛り上げ、船ごと彼らをその場に固定する。
「何だこれは……っ、頭が……私達は、何を……?」
縛鎖の力は単に毛利水軍の動きを止めただけではなく、彼らを支配するメガリス『大帝の剣』の影響力をも減衰させる。洗脳が弱まった隙を突いて、ユイは自らの破魔の力と呪力を船に向けて放ち、武士たちを完全に正気に戻そうと試みる。
だが、その時――広がっていく破邪の力をかき消すように、大渦から放たれた力の波動が関門海峡を覆う。
「……猟兵……我らの敵……絶対にこの先には通さぬぞ!!!」
一度は理性の戻りかけた武士たちの瞳は再び敵意に濁り、全身に殺気を漲らせる。
この海には大帝の剣の所有者、弥助アレキサンダーがいる。大本たるメガリスの使い手を倒さないことには、彼らにかけられた洗脳を解除することは困難だろう。
「洗脳が解ければ最良でしたが……」
失敗を悟ったユイは即座に次善の策へと切り替え、縛鎖に非致死性の呪いを仕込む。命に別状はないが全身がマヒして意識を失う、無力化を目的とした呪詛だ。
「こんなもの……ぐがぁっ?!」
船を拘束する縛鎖を断ち切ろうと刀を振り下ろした武士は、仕込まれた呪いを反動で受け、ばたりと甲板に倒れ伏す。
一般人である彼らには、概念の鎖も呪いも、対処するのは困難を極めるだろう。
「これで当分の時間は稼げたるしょう」
一定の成果を確認したユイは再び『コメット』を駆ると、この戦場の中心たる大渦へと迫っていく。
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
【念動力】で周囲の空気を圧縮して自身に纏わせ、念と空気の潜水服(潜水球)を形成。
その状態で海中に潜り、潜った後は水の流れを【サイコキネシス】で操作して水軍の真下まで移動するわ。
そのまま海中から様々な属性の魔力弾【属性攻撃】を放ったり、【サイコキネシス】で船底や竜骨、舵を破壊して船を沈没させたり航行不能にして無力化して制圧するわ。
この世界の水軍なら海中に対する武器や戦力なんて持って無いでしょうし、空とかから行くよりも効果的そうよね♪
まぁ、溺れそうな兵士は【念動力】で近くの木片にしがみつかせたり、念で作った空気の浮輪を作ったり、極力命は助かる様にはしようかしらね。
水上で、そして空中で猟兵と毛利水軍の戦いが繰り広げられる中、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)はただ一人、他の猟兵たちとは別のルートを進んでいた。
そのルートとは、水中。念動力で圧縮した空気を自らの周囲に纏い、念と空気による潜水球を作り上げた彼女は、大きな泡に包まれるようにして海の中を漂っていた。
(この世界の水軍なら海中に対する武器や戦力なんて持って無いでしょうし、空とかから行くよりも効果的そうよね♪)
その目論見の通り、【サイコキネシス】で水の流れを操り水中を進むフレミアの姿は誰にも捉えられることはなく、敵の水軍の真下まで安々とたどり着く。
「少し手荒になるけど、我慢しなさい」
潜水球の中から敵船を見上げたフレミアがさっと手をかざすと、風や岩、氷に光といった様々な属性の魔力弾が撃ち放たれ、船底へと直撃する。
「ぐおッ?!」
「何が起こった!!」
巨大な軍船がぐらりと揺さぶられ、乗っていた武士たちから驚きの声が上がる。
破壊された船底の大穴からは浸水が発生し、たちまち船は沈没の危機に陥った。
「岩礁にでもぶつけたか……? いや、まさかこれも攻撃?!」
潜水艦や魚雷といった兵器の存在は、エンパイアの水軍にとって未知のもの。だが喫水線下への攻撃は、あらゆる船舶にとって深刻な被害をもたらしうる脅威だ。
フレミアは矢継ぎ早にに魔力弾を連射して、船の後部にある舵、そして船底中央を通る竜骨を立て続けに破壊する。
船の足と命を折られた軍船は完全に航行不能に陥り、そのままゆっくりと海の底を目指して沈んでいく。
「これでよし……とはいえ、このまま死なれるのは後味悪いわね」
沈みゆく船から必死に脱出していく兵士たちを見やりながら、フレミアは破壊した船の残骸や空気を念動力で操作する。
「た、助けてくれぇっ! ……あ、あれ?」
溺れそうになっている兵士には、念で作った空気の浮き輪を。あるいは近くに浮いている木片にしがみつかせ、極力命は助かるように努める。これだけしておけば、彼らも海のプロだ。味方に救助されるまで命を繋ぐだけの訓練は受けているだろう。
「今のうちね」
突然の味方の沈没に動揺している水軍の隙を突き、海中のフレミアは魔軍将の待つ大渦へと近付いていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
一緒に参加してる他の猟兵に術式完成までの時間稼ぎ等の援護をお願い…。
【九尾化・魔剣の巫女媛】の封印解除…。
莫大な呪力の使用と海上でも自在に動ける様に飛行能力を得るよ…。
更に【狐九屠雛】を展開し、自身の周囲の空間に呪力を込めた呪符を配置して、【全力魔法、高速詠唱】で呪力による強化術式を構成…。
【九尾化】による呪力と【呪詛】を【狐九屠雛】に注ぎ込み、極限まで強化し、敵水軍に一気に解き放つ事で海ごと敵船団を凍結させて身動きを封じ、戦闘力を奪いつつ、海を凍結させる事で猟兵のみんなの足場を確保するよ…。
後は戦闘不能にした毛利水軍を死なない様に救出・確保(ついでに呪力の鎖で捕縛)して、敵将の下へ急ぐよ…。
ヴィクティム・ウィンターミュート
あぁ?隠し将の豊臣秀吉…?オイオイ、まだ隠し玉があるとはな
しかも弥助アレキサンダーとの連戦か…骨が折れるな、まったく
まぁいいさ──今更一人幹部が増えたところで、やることは同じだ
全ての禍根を断ち、戦争に勝利する
忠義も何もかも、踏み越えてな
ではまず一つ、仕込みから
セット『Sanctuary』
海上に投下、地形情報変更完了
【ハッキング】で書き換え、足場を出現させる
足場を渡って海上を移動しつつ、降りかかる妨害は障壁を出現させたり、波を発生させたりして対処
あんまり激しいようなら、船に乗り込んで気絶させて回るのもいいな
暇があれば、次の戦いに向けて足場を増やしておこう
この戦い、必ず勝って終わらせてやる
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
洗脳って、思考の方向を誘導されてるだけでちゃんと「自分で考えた結果の行動」だから最悪にタチ悪いのよねぇ…
纏めてぶっ潰れせば楽なんだけど、そうもいかないし。
水軍が泳げない、なんてことないでしょうし、船のほう潰せば大丈夫かしらねぇ。
●禁殺で船を跳び移りながら潰してくわぁ。燃やしちゃえばいいかしらねぇ?
小舟はカノのルーン刻んだ火炎〇属性攻撃の弾丸で。
大きめのは焼夷手榴弾の○投擲で。
もっと大きいのは喫水線近くに爆弾付きシャフトでも撃ちこめばいいかしらねぇ。
あたし水上を移動する方法って禁殺位しかないし、途中で船ぶんどろうかしらねぇ。
誰か相乗りさせてくれると楽なんだけど…
「あぁ? 隠し将の豊臣秀吉……? オイオイ、まだ隠し玉があるとはな。しかも弥助アレキサンダーとの連戦か……」
やれやれと言いたげな調子でふうとため息を吐いたのはヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)。「骨が折れるな、まったく」と呟く少年は、しかしすぐに気を取り直すと、自らの周囲にプログラムを展開する。
「まぁいいさ――今更一人幹部が増えたところで、やることは同じだ」
全ての禍根を断ち、戦争に勝利する。忠義も何もかも、踏み越えて。
それが、彼の決断だった。
「術式完成までの時間稼ぎと援護をお願い……」
「おう。ではまず一つ、仕込みから――セット『Sanctuary』」
呪力を練り上げて大技の準備をしている雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)の要請に応え、ヴィクティムは海上に自らのプログラムを投下する。
起動した【Rewrite Code『Sanctuary』】は地形情報そのものを書き換え、水面に浮かぶ足場を出現させる。それは彼だけでなく、水上や空中を移動する手段に乏しい味方にとっても恩恵となる。
「あたし水上を移動する方法って禁殺位しかないし、途中で船ぶんどろうかと思ってたけど。こっちのほうが楽そうね」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は作られた足場にひょいと相乗りさせてもらうと、愛用のリボルバー拳銃と手榴弾を取り出す。
その前方からは猟兵の接近に気付いた毛利水軍の船団が、白波を上げて迫っていた。
「撃て撃て!! 撃ち殺せ!!」
長州武者の号令一下、船団から矢と銃弾の雨がこれでもかとばかりに降り注ぐ。
この関門海峡は我らが海。洗脳によって歪められた武士としての矜持が、猟兵たちに牙を剥く。
「そっちの事情は分かってるが、こっちも退けなくてな。通してもらうぜ」
だが、この戦域の情報はすでに電脳魔術師たるヴィクティムによって掌握されている。彼は生成した足場を渡って海上を駆けながら、ハッキングによって障壁や大波を出現させて毛利水軍の攻撃を阻んでいく。
「洗脳って、思考の方向を誘導されてるだけでちゃんと『自分で考えた結果の行動』だから最悪にタチ悪いのよねぇ……纏めてぶっ潰れせば楽なんだけど、そうもいかないし」
執念すら感じられる敵の猛攻にぼやきながら、ティオレンシアはヴィクティムの作った障壁の陰に身を隠す。そして矢弾の勢いが弱まったタイミングを見計らって、【禁殺】によって空に跳び上がった。
彼女のそれは何十歩か空中を蹴ってジャンプするのが限界で、自由に空を飛べるわけではない。しかし一時的に敵の真上という生物最大の死角を取るには十分だ。
「水軍が泳げない、なんてことないでしょうし、船のほう潰せば大丈夫かしらねぇ」
大きめの軍船に狙いをつけて、焼夷手榴弾を投擲。うまく甲板のど真ん中で炸裂した榴弾は、慌てた兵士たちが消火に努めても手のつけようの無いほどの勢いで、たちまち火の手を広げていく。
「駄目だ、脱出しろ!」
炎上する船を捨て、海に飛び込んでいく兵士たち。やはり水兵らしく泳ぎは達者なようだが、救助されるまで戦闘に復帰するのは不可能だろう。
「うん、大丈夫そうねぇ」
ティオレンシアは禁殺の使用回数が切れる前に足場に着地し、すぐさま再び跳躍。今度は大型船の周囲の小舟へと、カノのルーンを刻んだ炎の銃弾を撃ち込み、炎上させる。
「くっ、いかん……!」
このままでは船をすべて燃やされかねないと、焦った毛利水軍はティオレンシアの射程から離れようと船団を移動させはじめる。
「お待たせ……」
だが、転身した船団の進路上には、ふわりと宙に浮かんだ璃奈が待ち構えていた。
味方が敵の注意を引きつけている間に【九尾化・魔剣の巫女媛】を発動させた彼女は、莫大な呪力を身に纏いながら自在に空を飛翔し、毛利水軍を驚かせる。
「なんという妖術……!」
「これだけじゃないよ……」
璃奈はさらに自らの周囲の空間に呪符を配置し、術の力を高める強化術式を構成。
加えて九尾化によって解放された呪力を注ぎ込み、九尾炎・最終地獄【狐九屠雛】を展開する。
「魂をも凍てつかせる地獄の霊火……」
熱ではなく冷気を発しながら煌々と燃え盛る狐火が、戦場の空を覆い尽くす。
その光景は幻想的であり、この世ならざる恐怖を感じさせるものでもあった。
「い、いかん、避け――」
敵が再び進路を変えようとした時にはもう遅く。術式と呪力で極限まで強化された【狐九屠雛】は、炎の嵐となって一斉に毛利水軍に襲い掛かった。
「なんとぉぉぉぉぉッ!??!」
絶対零度の炎は船団を凍りつかせて身動きを封じるばかりか、周辺の海さえも凍結させて、海原を分厚い氷の地平へと一変させる。
「ずいぶん歩きやすくなったな」
いちいち足場を書き換える手間が省け、一気に行動範囲の広がったヴィクティムは氷上を駆けると敵船へと乗り込み、凍える兵士たちを手刀や蹴りで気絶させて回る。
「的が動かないのは楽でいいわねぇ」
ティオレンシアもまた、この辺りの船団を指揮していると思しき最も大きい船に狙いを定めると、爆弾付きシャフトを装填したクレインクィン・クロスボウを構える。
放たれた太矢は見事に敵船の喫水線近くに突き刺さると、爆発炎上。海が凍結しているため沈没はしないが、もはや氷が溶けても航行は不能だろう。
「これくらいすれば、もう追って来れないかな……」
戦闘不能となった敵兵が命を落とさないよう、璃奈は上空から救出と確保を行う。そして呪力の鎖による捕縛まで手早く済ませると、急いで敵将の下へと飛んでいく。
「これからが本番なのよね」
「ああ。この戦い、必ず勝って終わらせてやる」
凍りついた海と空中を蹴りながら駆けるティオレンシア。そしてそれに続くヴィクティムは、大渦を見据えながら次の戦いに向けて、新たな足場を増やしていく。
かくして毛利水軍の無力化と突破に成功した猟兵たち。
ここからは猟兵とオブリビオンの激突が――本当の戦いが始まる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『隠し将『豊臣秀吉』』
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POW : 墨俣一夜城
自身の身長の2倍の【墨俣城型ロボ】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : 猿玉变化
自身の肉体を【バウンドモード】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : グレイズビーム
【腹部のスペードマーク】から【漆黒の光線】を放ち、【麻痺】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:フジキチ
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「とうとう来たか! 猟兵よ!」
毛利水軍の妨害を突破した猟兵たちを待ち受けていたのは、鍛え上げられた肉体を持つアフロヘアーの黒人男性。
関門海峡に出現した巨大な渦の中心に浮かぶ彼の手には、尋常ならざる力を発する剣と独鈷杵が。そして胸には十字架が輝いている。
「俺は第六天魔軍将が一人、『大帝剣』弥助アレキサンダー。侍として、お前たちのような強者と立ち会えるのは光栄に思うぜ」
猟兵たちを見据えるその力強い眼光には、確かな誇りと武人としての自信。
そして――主君に対する深い忠義の心が感じられた。
「だが、信長様の為に俺達は負けられねぇ。万にひとつの負けも無いように、正々堂々の戦いとはいかねぇ。――秀吉殿、頼んだ」
「フェンフェン、フェーン!」
ぴょんとゴム毬のような勢いで飛び跳ねながら、猟兵と弥助の間に立ちはだかったのは、黒い毛並みに覆われた猿のような異形の獣。
「フェン、フェフェフェン、フェンフェン」
我こそは『隠し将』豊臣秀吉――猟兵たちの耳には、彼の鳴き声がそのような名乗りに聞こえた。
弥助アレキサンダーの操るメガリスの力が高まるまで、その身を盾にして猟兵の足止めをすることが、彼の役目。それは誰かに強制されたのではなく、彼自身の覚悟が自らに任じた使命であり、この戦いに賭ける意気込みの証。
「フェンフェン、フェン……フェンフェン!!」
今の我が身には『逆賊の十字架』の加護もある。弥助殿の準備が整うまで、決してここは通さぬ。
その身から放たれる気迫は凄まじく、この秀吉もまた、弥助や他の魔軍将に劣らぬ力を持つことを肌で実感できる。だが彼を撃破しなければ、メガリスによる殲滅攻撃を準備する弥助に猟兵の刃は届かない。
忠の剣を守る義の魔猿。
隠し将『豊臣秀吉』との戦いの火蓋は、ここに切って落とされた。
メンカル・プルモーサ
む、あの毛玉……秀吉?を倒さないと先には進めないか……
あのお腹ビームを凌がないとね……お腹野マークから発射って狙いにくくないのかな?
…取り合えず、海面すれすれを箒で飛んで……爆破術式を海面に放つことで水柱と水蒸気を発生させる…
…その水蒸気や水柱で光線を分散させて凌ぐ…ついでに迷彩術式を使って目立たないように離脱…
…遅発連動術式【クロノス】を交えて周囲の海面をどんどん爆破して術式の発射元を特定できないように…
…そして、水蒸気や水、波飛沫の地形を利用して【煌めき踊る銀の月】を発動…花びらをそれらに隠して秀吉に向かわせて攻撃するよ…
…フェンフェン言ってるのに何となく言葉判るのは不思議だな…
「む、あの毛玉……秀吉? を倒さないと先には進めないか……」
ぽんぽんと海上を跳ね回る敵の動きを観察しながら、メンカルは海面すれすれを箒に乗って飛翔する。
どの角度や高度から大渦の中心に近付こうとしても、秀吉は確実にこちらの前に立ちはだかってくる。そのスピードと反応速度を凌駕するのは猟兵であっても困難だ。
「フェンフェンフェン!」
弥助殿を倒したくばまずは我を討ってみせよ――そんな意志を発しながら、秀吉は腹部のスペードマークを輝かせる。怪光線【グレイズビーム】発射の構えだ。
「あのお腹ビームを凌がないとね……お腹のマークから発射って狙いにくくないのかな?」
「フェフェン……!」
警戒を強めながらもふとそんな疑問を抱くメンカルに、侮ってもらっては困る――と不敵に鳴く秀吉。マークの照準は飛び回る魔女にピタリと合わせられている。
こちらのスピードや機動力で狙いを逸らすことは困難。ならばと彼女は愛杖「シルバームーン」を手に術式を紡ぎはじめる。
「フェェェェェェェンッ!!!」
秀吉が漆黒の光線が放つ直前、メンカルは海面に向かって爆破術式を放つ。
水中で起動した爆発は大きな水柱と水蒸気の霧を発生させ、彼我の間を遮った。
「フェンッ?!」
何だと?! と驚く秀吉の前で、グレイズビームは空中に撒き散らされた水蒸気と水柱によって分散されてしまう。大きく威力の減衰した光線を防ぎながら、この間にメンカルは迷彩術式を起動すると蒸気に紛れて秀吉の視界から離脱する。
「フェン、フェフェン……」
おのれ、どこへ行った――と飛び跳ねながら魔女の姿を探す秀吉。そんな彼の索敵を妨害するように、戦場の海域のあちこちで散発的な爆発と水柱が起こる。
メンカルは遅発連動術式【クロノス】を交えた時限式の爆破術式を海面のあちこちに放ち、発射元の特定を困難としながら戦場をかき乱していく。
「そろそろいいかな……我が愛杖よ、舞え、踊れ。汝は銀閃、汝は飛刃。魔女が望むは月の舞い散る花嵐」
頃合いを見計らってメンカルが次に唱えたのは【煌めき踊る銀の月】。彼女の手の中で「シルバームーン」がはらはらと分解され、無数の単分子の花びらに変化する。
爆破術式の連発によって戦場に撒き散らされた水飛沫や水蒸気、かき乱された波模様は、全てこの攻撃のための布石。
「フェンッ?!」
秀吉は爆発に翻弄され、その中に隠されていた銀の飛刃の接近に気付けなかった。
いつの間にか彼の周りを包囲していた無数の花びらは、全方位から一斉に攻撃を仕掛ける。
「フェンフェンフェンフェンッ?!?!」
いかん、迂闊であった――! と嘆いている余裕さえなく、逃げ場をなくした秀吉は、美しくも剣呑に舞い散る花の嵐に巻き込まれ、ズタズタに切り刻まれていく。
「……フェンフェン言ってるのに何となく言葉判るのは不思議だな……」
どういった理屈なのだろう、と嵐の中心から聞こえてくる鳴き声に首を傾げながら、メンカルは水蒸気と迷彩で姿を隠したまま銀の月を操るのだった。
成功
🔵🔵🔴
ナーシャ・シャワーズ
よーお、お猿さん。ぴょんぴょん跳ねて楽しんでるかい?
はは、笑うなよってか。
そうだな、忠義、覚悟……お前さん、そういうもののために戦ってるんだ。
それじゃあ始めようか。
スペースサーファー、渦に逆らうな、渦の流れに乗れ。
お前さんが上手く波を乗りこなしてくれれば私がお前を乗りこなす。
伸縮、弾力……確かにそいつは読みづらい。
だが物理の法則に逆らっている訳じゃあない。
私の勘と経験をもってすれば先読みできる。
それ、すれ違いざまにソウルガンを一発お見舞いしてやろう。
言っただろう?楽しんでるか、って。
私はいつだって命をチップにしてる。
スリルとロマン、忠義と覚悟……天秤にかけてみよう。
さあ、どっちに傾くかな!
「よーお、お猿さん。ぴょんぴょん跳ねて楽しんでるかい?」
スペースサーファーで海上を駆けながら、飛び跳ねる秀吉に声をかけるナーシャ。まるで波遊びを楽しんでいるかのような気楽な調子に、秀吉は不快げに目を細める。
「フェンフェンッ」
「はは、笑うなよってか。そうだな、忠義、覚悟……お前さん、そういうもののために戦ってるんだ」
その生き様を理解できるとはナーシャは言わない。
だが、覚悟を決めている相手には相応の態度で応じるのが筋というものだ。
「それじゃあ始めようか」
「フェン!」
笑みを浮かべたまま真剣な目つきでスペースサーファーを駆るナーシャに、秀吉は弾力性と伸縮性を強化した【猿玉变化】で迎え撃つ。
海上を巨大なゴム毬のように飛び跳ねる様は一見すると愉快だが、変幻自在かつ縦横無尽な機動力、そしてスピードを活かした体当たりは見た目以上の脅威だ。
「スペースサーファー、渦に逆らうな、渦の流れに乗れ」
対するナーシャの策は、敵のメガリスが発生させている大渦を利用すること。渦が作り出す海流にあえて巻かれることで、機体のスピードに上乗せしようというのだ。
「お前さんが上手く波を乗りこなしてくれれば私がお前を乗りこなす」
宇宙の荒波を越えてきた歴戦の宇宙バイクは、乗り手の期待と信頼を決して裏切らない。荒れ狂う渦の流れを完璧に読み切りながら、ナーシャとスペースサーファーは加速する。
「フェン……! フェン、フェフェン!」
速い! だがそれだけでは勝てぬ! と気迫を漲らせながら、自らも渦の中を跳ね回る秀吉。海流を物ともしないその跳躍力はやはり驚嘆に値するが、ナーシャはその動きの中に一定の法則性を見出しはじめていた。
(伸縮、弾力……確かにそいつは読みづらい。だが物理の法則に逆らっている訳じゃあない。私の勘と経験をもってすれば先読みできる)
勝敗を決めるのは一瞬。互いがすれ違う際に秀吉のボディがナーシャにめり込むか、ナーシャのソウルガンが秀吉を撃ち抜くか、だ。
「フェンッ!!」
ここだというタイミングを見計らい、先に仕掛けたのは秀吉の方だった。
だが、その瞬間に彼は異変に気づく。自らの動きがまるでスローモーションのように鈍く、遅くなっていることに。
「フェフェンッ?!」
「言っただろう? 楽しんでるか、って。私はいつだって命をチップにしてる」
お前さんはどうだい? と、驚愕する秀吉にナーシャは告げる。
【おお! 命の鼓動よ!】――それはスリルとロマンを愛するナーシャの魂が生み出したユーベルコード。確実な勝利を欲するがゆえにスリルを求めない秀吉は、それゆえに彼女の術中に嵌っていたのだ。
「スリルとロマン、忠義と覚悟……天秤にかけてみよう。さあ、どっちに傾くかな!」
「フェン、フェンフェンフェン……ッ!!!」
思うように動かぬ身体を必死に動かして一撃を見舞おうとする忠義の徒、秀吉。
だが、勝利の天秤が傾いたのはスリルとロマンの申し子――伸張する秀吉の体当たりの軌道を見切ったナーシャの左腕のソウルガンが、すれ違いざまに光を放つ。
「フェェェェェェェンッ!!!!?」
魂の力を変換した破壊エネルギーの奔流が、秀吉の身体を撃ち抜く。
大きな傷を負った猿玉は、悲鳴を上げながら渦の外側まで吹き飛ばされていった。
成功
🔵🔵🔴
月宮・ユイ
連携アドリブ◎
*器に<呪詛>宿し呪詛/呪操る
人の身さえ捨てますか。
[コスモス]飛行付与外套
《捕食形態》武装圧縮成形:<生命力吸収の呪>上乗せ
衣:<念動:オーラ>全身に重ね纏い行動補助と耐性
剣槍:二刀流や投擲も
<第六感>併用全知覚強化<情報収集・学習・見切り>
初手、反撃は考えず感知能力全開で回避
避けきるのが最良ですが被弾も覚悟し念動:オーラ集中
時間稼ぎ<早業:高速詠唱>UC起動、重ね防御力確保。
以降も受け止め防御しつつ接触毎に呪とUCで相手の力を捕食
相手の速さを喰らい、自分の速度を上げる。
速度が上がるごとにカウンターも織り交ぜていく。
互いに引けぬ以上、
私が倒れるのが先か刃が届くのが先か勝負です。
「フェン、フェンフェン、フェン……!」
流石だな猟兵達よ。だが我もここで退くわけにはいかぬ――傷ついた身体を震わせながら、なおも闘志には一片の衰えもない隠し将・秀吉。
その有様を見たユイは、外套に変身した精霊『コスモス』を纏うことで宙に浮かびながら、冷たい眼差しを向ける。
「人の身さえ捨てますか」
人間からはあまりにかけ離れたそのサルともつかぬ異形の姿は、彼を強化するメガリス『逆賊の十字架』の作用によるものか、他の要因や生来のものかは分からない。
少なくとも現在の豊臣秀吉は、この世界に仇なすオブリビオン――それだけが確かな事実であった。
「フェンフェン。フェフェン」
重要なのはこの身がヒトであるかどうかではない。信長様の為に尽くす心である――揺らがぬ忠義を示しながら、秀吉は【猿玉变化】を維持したまま襲い掛かる。
ユイは即座に自らの全知覚能力を強化し、柔軟かつ複雑に飛び跳ねる秀吉の動きを予測し回避することに全力を費やす。
「フェンッ!」
驚くほどの弾力性で死角へと回り込み、伸縮性を活かした鞭のような一撃。
辛くもそれに反応できたユイは被弾部位に念動力とオーラを集中させ、最小限のダメージで攻撃を受け流す。
(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。無限連環強化術式起動。捕食吸収能力制御、圧縮成形)
秀吉の猛攻を凌ぎ続けながら詠唱を紡ぐユイの手には、剣槍の形を取った【捕食形態】の武装が。交差させ重ねた刃が猿玉を受け止めた瞬間、"何か"を吸われるような感覚が秀吉を襲う。
「フェン……?」
違和感を覚えながらも、攻め手を緩めるという選択は秀吉には無かった。敵が何かを仕掛けて来るならそれまでに削り切ろうと、より激しく飛び跳ねて攻め立てる。
「喰らえ……」
一方のユイはただひたすらに、剣槍で秀吉の攻撃を受け続ける。
【捕食形態】武装とそれに上乗せされた呪いには、接触するたびに少しずつ敵の力と命を捕食して自らの力に還元する機能がある。
相手の速さを喰らい、自分の速度を上げるのがユイの狙い。戦いが長引くにつれて双方の相対速度は徐々に縮まり、最初は防戦一方だった彼女は今や秀吉の攻撃にカウンターを合わせられるまでになった。
「互いに引けぬ以上、私が倒れるのが先か刃が届くのが先か勝負です」
「フェフェン……ッ」
防御の上からでもじわじわと蓄積してきた痛みが、明確なダメージとなって彼女の動きを鈍らせだした頃。ついに二人の速度は完全に拮抗する。
逆賊の十字架の加護を受けたこの身に、まさか追いついてくるものがいようとは――動揺を隠せない秀吉の隙を突いて、ユイは剣槍を二刀流の構えから投擲の構えに持ち替え、投げ放つ。
「フェンッッ?!!?」
標的の力と命を喰らう剣槍が、ぐさりと猿玉のど真ん中に突き刺さる。
秀吉はすぐさま刃を引き抜いて後退するが、多くの力を奪われてしまった彼の動きは、これまでよりも精細を欠きはじめていた。
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
あの人、一応天下人よね?天下人が猿で良いのかしら…?
まぁ、良いわ…油断できる相手では無いしね…!
1章から引き続き【念動力】の空気球で接近。
水中に迎撃に来るのを想定し、自身を囮に敵を水中へ引き込んで機動力を封じ、光線の威力を減衰。
更に水流を【念動力】で操って敵の動きを阻害しながら、氷属性の魔力弾【属性攻撃、誘導弾】で凍結。
UC発動の時間稼ぎと水中へ拘束を行うわ。
【ブラッディ・フォール】で「決行、集団人質解放作戦」の「神鳴りのフランチェスカ」の服装へ変化。
【雷帝の誇り】で戦闘力を増強しつつ一気に海上へ飛び出し、海中に拘束した秀吉に【雷神の見る夢】や【エレクトロニック・インフェルノ】で仕掛けるわ
「あの人、一応天下人よね? 天下人が猿で良いのかしら……?」
海面上で戦いが繰り広げられる中、フレミアは念動力の空気球を纏ったまま水中から渦に近付きながら、ふとした疑問に首を傾げていた。
過去の時代のエンパイアの人々はあの姿の豊臣秀吉に疑問を抱かなかったのか。それとも他に事情があるのか。推測しようにも情報が足りていない。
「まぁ、良いわ……油断できる相手では無いしね……!」
海上からこちらに向けられる鋭い視線と殺気を感じて、彼女は気を引き締める。
「フェンフェン、フェフェン。フェン!」
海中から近付くとは考えたものだな。だが、この秀吉の目は誤魔化せぬ――水の中のフレミアを迎撃するために、ざぶん、と波音を立てて海に潜る秀吉。
「フェンフェーン!」
喰らうがいい! と胸のスペードマークを輝かせ、渾身の【グレイズビーム】を放つ――しかしその威力は水上で放つものと比べれば明らかに弱い。
フレミアは空気球を維持する念動力の膜を防壁として、漆黒の光線を弾き返す。
「かかったわね」
彼女があえて海中からの接近を試みたのは敵の目を誤魔化すためではなく、自らを囮として秀吉を水中に引き込むためだったのだ。
「お返しよ」
空気球の中で魔力を練り上げ、フレミアが放つは氷属性の誘導弾。海上の秀吉であればこの程度は避けられたろうが、足場のない海中では自慢の機動力も半減である。
「フェン……ッ!」
それでも秀吉は懸命に水を蹴って氷の弾丸から逃れようとするが、周囲の海水が不自然な流れで渦を巻くせいで思うように泳げない。
フレミアの念動力ならば、水流を操作して敵の動きを阻害するのもお手のものだ。
「―――ッ!!?」
着弾する魔力弾に籠められた氷の魔力は、周囲の海水ごと標的を凍結させていく。水と氷の中に閉じ込められた秀吉は、叫ぶことさえできずに目を見開く。
敵の拘束に成功したフレミアは、ここに至って全力での攻勢を仕掛ける。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
UDCアースで交戦したオブリビオン『神鳴りのフランチェスカ』の力を【ブラッディ・フォール】で宿し、フランチェスカの衣服と雷電をその身に纏う。
【雷帝の誇り】によって戦闘力の増強と飛行能力を得た彼女は、一気に海上へ飛び出しながら【雷神の見る夢】と【エレクトロニック・インフェルノ】を発動。
その瞳は稲妻を宿したように爛々と輝き、関門海峡の空は雷雲に覆われていく。
「喰らいなさい!」
フレミアの想像力から具現化されたのは、天より降り注ぐ9本の雷の槍。
その全てが狙い過たず、海中に拘束された秀吉を刺し貫いた。
「フェフェフェフェッ、フェェェェェェンッ?!?!」
あまりの威力に氷の拘束も砕け散ってしまったが、その成果は十分だろう。
ぷかりと海上に浮かんできた秀吉はすぐには起き上がれない様子で、蓄積されたダメージの甚大さは明らかであった。
成功
🔵🔵🔴
ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブ歓迎
○連携ご自由に
○準備
引き続き槍翼の揮士(以後槍翼)を装備として引き連れておくぞぅ
○先制対応
秀吉が墨俣城型ロボを喚び出したのを確認したら、大声で槍翼に
「今だ槍翼!ここはわしが、ひきつける!弥助の方へ向かえ!!!」っと高らかに伝えるぞ!
槍翼は打ち合わせ通り、【空中戦】で弥助のいる方向へランスを構え突撃させる。
これで秀吉の注意も逸れるじゃろ、反撃開始じゃ!
○戦闘
槍翼に意識を奪われる秀吉を尻目に、【選択したUC】を使用するぜ!
元宇宙バイクじゃからな、【空中戦】いけるぜ?
怪力押しよりこっちじゃろ、腕パーツに組み込んだ【装備1】で蒼炎の【属性攻撃】パンチでその邪魔くさい体毛、燃やしてやんぜ!
「フェフェン……フェン、フェン……!」
やはり我一人では厳しいか。かくなる上はこの身が朽ち果てるまで戦うまで――と、呻くような声を上げながら傷ついた身体を起こし、再び戦闘態勢を取る秀吉。
そこに現れたのは宇宙バイクに跨るゲンジロウと、空を翔ける槍翼の揮士だった。 「おうおう、威勢のいいやつじゃな」
「油断はできませんね」
追い詰められた手負いの獣ほど危険であることを、彼らはよく知っている。
警戒心を強めながら間合いを計る二人の前で、秀吉はカッと目を見開いた。
「フェンフェン、フェンフェンフェンッ!!」
見るが良い、我が【墨俣一夜城】を――秀吉の咆哮と共に海中よりざぁっと姿を現したのは、彼の倍はあろうかという巨大な墨俣城型ロボ。
信長配下の秀吉と言えば、墨俣城を一夜で築いたという逸話は確かに有名だが、まさかそれをロボとするとはどういう発想なのだろうか。答えは本人のみぞ知る。
しかし歴戦の戦場傭兵たるゲンジロウの判断は常に現実的で冷静であった。
「今だ槍翼! ここはわしが、ひきつける! 弥助の方へ向かえ!!!」
「はいっ!!」
合図を受けた槍翼の揮士は突撃槍に変化した《翼槍》を構えると、墨俣城型ロボをスルーして矢のような勢いで大渦の中心に突撃していく。
「フェン、フェンフェン!」
「邪魔ですっ!」
行かせはせぬぞ――! と揮士の前に跳び上がってきたのは秀吉。猛禽を思わせる揮士のランスチャージを、弾力のある強靭なボディでがっしりと受け止める。
そして秀吉の跳躍の動きと連動して、墨俣城型ロボもまた跳び上がった。
「ぬおっ!」
正面で相対していたゲンジロウが思わず唸るほどの機敏な挙動。その巨体に関わらず、本体の動きをトレースする墨俣城型ロボのスピードと機動性は非常に高い。
「フェンッ!!」
「ぐあっ!?」
猿と城の拳に打ちのめされ、流星のように海面に叩きつけられる槍翼の揮士。
魔軍将の一人たる秀吉に真っ向から戦う羽目になっては、流石の彼でも荷が重かったようだ。
――だが、槍翼の揮士の本当の役目は、弥助の元に先行することではない。
「ゲンジロウさん……あとは、任せました……」
「おう」
辛うじて意識のあった若者の言葉に、低い声で応えるゲンジロウ。秀吉が槍翼の揮士に意識を奪われている間に、彼のユーベルコードは発動準備を整えていた。
「バトルアーマーモード! 超爆装屋台、コード【IZAKAYA:げんちゃん】!!」
屋台に積んであったラジカセから闘志を燃え滾らせるような音楽が流れだし、ゲンジロウの乗るバイクが搭乗者を包みこむように変形していく。
「フェフェ、フェンッ?!」
なん、だと――ッ?! と驚愕する秀吉の前に姿を現したのは、ゲンジロウと【IZAKAYA:げんちゃん】が一つになって誕生した巨大ロボ。
その名も【超爆装屋台ゲンチャンダー】である!!!
「さあ行くぞ秀吉!」
宇宙バイクと一体となったゲンジロウ、いやゲンチャンダーは空へと舞い上がり秀吉に襲い掛かる。
「フェンフェン!」
その前に咄嗟に立ちはだかった墨俣城型ロボが、主の身代わりとなってゲンチャンダ―の拳を受ける。さすがに城の名を関するだけあってその装甲は強固。だがゲンチャンダーには操縦者のゲンジロウと同様の豊富な武装が搭載されている。
「怪力押しよりこっちじゃろ」
殴りつけた腕パーツに組み込まれていた〝劫火〟のスティレットがまるで杭のように勢いよく射出され、墨俣城型ロボの装甲を貫通する。
「フェフェン……ッ!!?」
さらにゲンチャンダ―のサイズに合わせて拵えられた長大な刃は、墨俣城型ロボの背後にいた秀吉をも同時に刺し貫いていた。
「その邪魔くさい体毛、燃やしてやんぜ!」
「フェンッ?! フェンフェンフェンフェーンッ!!!?」
〝劫火〟の刃が纏うのは、万象を灰燼に帰す蒼炎。そのひと刺しを喰らった秀吉の身体はたちまち火の玉のように燃え上がり、苦痛に満ちた絶叫が戦場に轟く。
そしてゲンチャンダ―のパンチと刺突を喰らった墨俣城型ロボもまた、炎に包まれ崩れ落ちていく。一夜城の名を関するロボは、一夜と保たずに陥落したのであった。
成功
🔵🔵🔴
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
なんで言ってること理解できるのか、はこの際どーでもいいから置いといて。
いざ尋常に、とはいかないってのは同感ねぇ。あたし、大物食い苦手なのよぉ。
…だから。徹底的に根性悪くいかせてもらうわぁ。
伸縮と弾力っていうなら、銃弾も矢も通りが悪いわよねぇ。
…それじゃ、固めちゃいましょうか。
先制攻撃は動体○視力と〇第六感フル活用で○見切って回避。〇カウンターで●的殺を撃ち込むわぁ。
セメントや接着剤を充填したグレネード、イサ(氷)とソーン(茨)のルーンを刻んだ○呪殺弾、○目潰しやら○マヒ攻撃やらその他諸々思いつく限り全弾○一斉発射。
洗い浚い撃ちこめば多分どれか一つくらいは効くでしょ。
ヴィクティム・ウィンターミュート
邪魔だ、退け──なんて言っても無駄なんだろ?
忠義の将の相手をするには、ちょいと俺はダーティーすぎるが…
一手、お相手願おう
まずは先制攻撃の対処から
肉体がバウンドモードになるってことは…機動力と射程距離が大きく伸びるってことだな?
なら俺も機動力を上げる
【ハッキング】で全サイバネ、出力限界突破
【ダッシュ】【見切り】【早業】【第六感】で初撃をギリギリで回避
すかさずUCを起動──セット『VenomDancer』
機動力がさらに向上、ヘイトプログラム起動
高速移動しながら鈍化と猛毒のパルスで引き撃ち
攻撃の瞬間だけは奴も隙を晒しやすいだろう
──時間稼ぎでいいのさ
段々とお前を毒が蝕む
あとは主役の仕事ってな?
「なんで言ってること理解できるのか、はこの際どーでもいいから置いといて」
6連装リボルバー拳銃「オブシディアン」に銃弾を装填しながら、ティオレンシアはいつもと変わらぬように口元に微笑みを浮かべる。
「いざ尋常に、とはいかないってのは同感ねぇ。あたし、大物食い苦手なのよぉ」
ぽえぽえと間延びした穏やかな口調もいつもの通り。
しかして異なるのは、まるで研ぎ澄まされたナイフのような剣呑な気配。
「……だから。徹底的に根性悪くいかせてもらうわぁ」
水上に創り上げられた足場に立ち、リボルバーの銃口を秀吉に向ける。
そこに並び立つのは、皮肉げな笑みを口元に貼り付けたヴィクティム。
「邪魔だ、退け――なんて言っても無駄なんだろ? 忠義の将の相手をするには、ちょいと俺はダーティーすぎるが……」
全身に仕込んだサイバネをフル稼働させ、思考を、反応を、研ぎ澄ませながら。
踏み越えると決めた覚悟を胸に、拳を握りしめる。
「一手、お相手願おう」
「フェンッ!!」
望むところだと、傷ついた秀吉もまた、二人の敵意に奮い立つように身を震わせ。
ぼよんっ、と勢いよく跳ね上がると、再び【猿玉变化】を発動した。
「フェンフェンフェン、フェフェン!」
我が最速にして全力の機動、貴様らに見切れるか――追い詰められつつある秀吉は、ありったけの力を振り絞りながら戦場を所狭しと跳ね回る。その目にも留まらぬ俊敏さと変幻自在の機動は、まさにマシラの如くという言葉が相応しい。
「肉体がバウンドモードになるってことは……機動力と射程距離が大きく伸びるってことだな?」
「厄介ねぇ。でもどうしようもないってわけじゃ無いわぁ」
目で追うことすら難しい敵のスピードを前に、ヴィクティムは己のボディにハッキングを行い、全サイバネの出力を限界突破。自らの機動力を上げることで対抗する。
一方のティオレンシアが頼みとするのは、研ぎ澄ませた自らの感覚。糸のように細められた瞼の奥の瞳で秀吉の動きを見極め、直感的に攻撃のタイミングを読む。
「フェンッ!!」
死角より襲いかかる鞭のような拳。ゆうに音速を超えているであろう一撃を、極限まで高めた反応速度と瞬発力、あるいは動体視力と第六感を駆使して躱す二人。
刹那のうちに交わされた紙一重の攻防。僅かでも反応が遅れていれば、二人の脳天は叩きのめされていただろう。
「――セット『VenomDancer』」
初撃を避けた直後の僅かな空隙を利用して、ヴィクティムはユーベルコードを起動。さらなる機動力向上に加えてヘイトプログラムを作動させ、秀吉の注意を引き付ける。
「フェン、フェンフェンッ!!」
咆哮を上げながら縦横無尽に跳躍と攻撃を繰り返す秀吉。だが、その拳や爪がヴィクティムを捉えることはない。一方で敵の注意が偏ったことで、ティオレンシアへの攻撃の手は自然と薄くなり、より正確に動きを見切る余裕も生まれた。
回避に徹しながらも二人は待っている。反撃に転じる好機を。秀吉が隙を晒す、その一瞬を。
「フェンフェン、フェフェフェン――!!」
ええい、ちょこまかと――業を煮やした秀吉が長い尻尾を振り回し、二人を薙ぎ払わんとする。しかしこの大振りな一撃こそが、彼らが待っていた瞬間だった。
「攻撃の瞬間だけはお前も隙を晒しやすいだろう」
「攻撃=防御の解除。そこを崩せばハイこの通り、なぁんてね?」
相手の攻撃の起こりを見切ったティオレンシアによる【的殺】の銃撃が、秀吉を撃ち抜き行動の起点を潰す。動きが止まった瞬間にヴィクティムの身体から放射されたパルスが、猿玉の全体を包み込んだ。
「フェフェンッ!!?」
ダメージはそれほど大きいものではない。だが完璧にカウンターを合わせられた精神的動揺と、それ以上の肉体的な異常が、秀吉の動きを鈍らせる。
「伸縮と弾力っていうなら、銃弾も矢も通りが悪いわよねぇ。……それじゃ、固めちゃいましょうか」
ティオレンシアが撃ち込んだのはイサ(氷)とソーン(茨)のルーンを刻んだ呪殺弾。弾痕から伸びる氷の茨が秀吉に絡みつき、その身を束縛する。
さらに彼女はオブシディアンに装填した全弾を一斉発射。閃光弾に麻酔弾、セメントや接着剤を充填したグレネードまで、思いつく限りの拘束手段を叩き込んでいく。
「洗い浚い撃ちこめば多分どれか一つくらいは効くでしょ」
「フェフェフェン……!」
小癪な手を、と憤る秀吉だが、事実それは彼の機動力を奪う有効な戦術だ。
なんとかして弾丸を避けようにも、身体が痺れてうまく力が入らない。
それはヴィクティムの放った、速度鈍化と猛毒のパルスの影響だった。
「――時間稼ぎでいいのさ」
そう呟きながらヴィクティムはパルスを連続放射し、速度鈍化と猛毒の効果を累積させていく。それ自体に秀吉を殺傷するほどの力は無いが、効果は十分。
「段々とお前を毒が蝕む。あとは主役の仕事ってな?」
「フェン、フェフェ……ッ!!!!」
にやりと笑う少年の前で、血を吐いた猿玉のバウンドモードが解除される。
ありとあらゆる手段を尽くされ、速度と機動力を徹底的に封じられた秀吉に、もはや本来のように海上を俊敏に飛び跳ねることは不可能だった。
ティオレンシアとヴィクティムが撃ち込んだのは、この戦いを勝利に導く布石。
隠し将・豊臣秀吉との決着の時は、もう間近に迫りつつあった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アリス・フォーサイス
秀吉って、猿って呼ばれてたっていうのはライブラリで見たけど、猿みたいな魔獣だったんだね。
光線を避けるっていうのはさすがに難しそうかな。アナロジーメタモルフォーゼでビー玉を光線を防ぐ盾に変えて防ぐよ。特別製だから持ち手に麻痺の効果は伝盤しない。
もふもふしたいけど、その余裕はなさそうだね。
盾で光線を防ぎつつ、魔力を貯めて、全力魔法を放つよ。
すべてを凍りつかせる、氷属性の魔法だ。
足止めが目的だったみたいだけど、通らせてもらうよ。
雛菊・璃奈
元天下人が隠し玉だったなんてね…見た目、人には見えないけど…。
お猿…?
敵のビームは触れない様に【見切り、第六感】で回避しつつ、黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い】で広範囲に呪力を放出して牽制・迎撃…。
更に【呪詛、高速詠唱】呪縛の鎖を放って敵の動きを制限するよ…。
敵の先制後は【九尾化】解放…。
空中から黒桜の広範囲攻撃と無限の魔剣による一斉斉射で面制圧を行い、敵の機動力を潰させて貰うよ…。
後は隙を見て凶太刀の高速化で一気に懐に飛び込み、その首、落として仕留めさせて貰う…。
…首、どこだろう…?とりあえず、急所っぽいところに一撃で大丈夫そうかな…。
「元天下人が隠し玉だったなんてね……見た目、人には見えないけど……。お猿……?」
「秀吉って、猿って呼ばれてたっていうのはライブラリで見たけど、猿みたいな魔獣だったんだね」
かくんと首を傾げる璃奈と、好奇心に満ちた目でしげしげと見つめるアリス。
かの高名なる豊臣秀吉の正体がまさかの異形という事実は、彼女たちにとっても少なからぬ驚きだったらしい。
だが、例えそれがかつての天下人だろうと、異形であろうと人外であろうと、オブリビオンとしてここで立ちはだかった以上、成すべきことは一つだった。
「フェン……フェン……」
墨俣城型ロボは陥落し、猿玉变化による機動力も封じられた。もはや満身創痍の秀吉に勝機が無いこと明らかだが、それでも彼は膝を屈しようとはしない。
「フェン……フェフェフェン……フェェェェェェンッ!!!!!!!!」
全ては、信長様の為に。
残された命の灯を燃やし尽くす覚悟で、漆黒のグレイズビームが放たれる。
「これは触れるとまずそう……」
その危険性を直感的に察知した璃奈は、呪槍・黒桜を手に味方が作った海上の足場を駆け、漆黒の光線を間一髪のところで回避する。
「光線を避けるっていうのはさすがに難しそうかな」
一方で彼女ほどの機動力を持たないアリスは【アナロジーメタモルフォーゼ】を発動し、取り出したビー玉の情報を分解・再構成。光線を防ぐための盾を創造する。
出現した特別製の大盾は、鏡のように磨かれた表面で光線を反射・拡散させてアリスを守る。付加されていた麻痺効果も持ち手には伝播していないようだ。
「フェンッ!! フェンフェンフェンフェンッ!!」
しかし第一射を凌がれても、秀吉は矢継ぎ早にビームを発射し続ける。
最期の瞬間まで時間を稼ごうというのだろう。決死の覚悟で放たれるビームの嵐を前にしては、猟兵たちも迂闊には踏み込めない。
「向こうも本気だね……だけど、わたしも……」
黒桜の呪力を解放し、黒い花吹雪のように巻き起こる呪力の衝撃波で光線を迎撃しながら、璃奈は【九尾化・魔剣の巫女媛】を発動。莫大な呪力をその身に纏い、重力の軛から解き放たれた少女は、空に舞い上がりながら呪術の詠唱を紡ぐ。
「フェン……ッ!!」
放たれた呪縛の鎖が秀吉の腕に絡みつく。ただでさえ全快時より機動力の低下している今の彼にとって、それは余りにも重い枷であった。
「もふもふしたいけど、その余裕はなさそうだね」
相手の動きが鈍っている間に、アリスは全力の魔法を放つために魔力を貯める。
なおも激しく襲ってくる光線を盾で防ぎながら、宝石型魔力情報デバイスで魔力を情報として組み上げ、ウィザードロッド型情報端末でそれを操作。
完成するのはすべてを凍りつかせる氷の魔法。プログラムのようにも呪文のようにも見える、電脳魔術士にしてウィザードたるアリス独自の魔法。
「さあ、いくよ」
「ん……」
上空にて合図を受け取った璃奈は静かにこくりと頷くと、無数の魔剣を空中に顕現させ、アリスの魔法の発動と同時に魔剣の一斉斉射と黒桜の呪力放出を放つ。
海上を吹き荒れる氷と雪の嵐。上空より降り注ぐ魔剣と呪力の嵐。
広範囲を一掃する二重の面制圧攻撃は、万全の状態の秀吉にも回避は困難だったことだろう。ましてや負傷の蓄積に加えて機動力を大きく制限された彼には。
「フェフェフェ……!!」
呪縛の鎖を引きずりながら海上を跳ねる秀吉に、呪力の花吹雪と魔剣の刃が容赦なく突き刺さり、氷と冷気の魔力が包み込んだ。
やがて氷と魔剣と呪力の嵐が収まった時、魔猿は全身を魔剣に貫かれながら氷の檻に封じられ、完全に動きを止めていた。
「足止めが目的だったみたいだけど、通らせてもらうよ」
「フェン、フェ……ッ!!!!」
海上を浮遊しながら滑るように大渦の中心に向かうアリス。それを止めることさえ今の彼にはできない。
そろそろ決着をつけようと璃奈は妖刀・九尾乃凶太刀を抜き放ち、その呪力を解放しながら上空より急降下する。
(……首、どこだろう……? とりあえず、急所っぽいところに一撃で大丈夫そうかな……)
逡巡は一瞬。狙いを付けたのは秀吉の腹の中心にある、特徴的なスペードマーク。
凶太刀の力で音速を超える速度を手にした魔剣の巫女媛は、一気に敵の懐に飛び込むと、最高速の刺突を放った。
「仕留めさせて貰う……」
「フェン……ッ!!!!」
秀吉の腹を深々と貫いた妖刀の刃は真っ赤な血に染まり。
見事なり、と彼女たちの武勇を称える猿の鳴き声が、海上に響く。
――大帝剣の盾としてその身を賭した隠し将・秀吉は、そのまま関門海峡の海を赤く染めながら、海中へと没していった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『大帝剣『弥助アレキサンダー』』
|
POW : 大帝の剣
単純で重い【両手剣型メガリス『大帝の剣』】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 逆賊の十字架
自身の身体部位ひとつを【触れた者の闘志を奪う超巨大肉塊『視肉』】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 闘神の独鈷杵
自身からレベルm半径内の無機物を【無尽蔵に破壊の雷槌を放つ『闘神の渦潮』】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:みやこなぎ
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「秀吉殿……!! すまねぇ、とは言わねぇ。侍として、見事な最期だったぜ」
猟兵と豊臣秀吉の戦いの一部始終を見届けた大帝剣・弥助アレキサンダー。
同じ主君を戴く戦友として、その死を悼みながらも決して涙は見せない。
そして秀吉を討ち取った猟兵たちは、遂に彼と正面から対峙することになる。
「残ったのは俺一人、か……秀吉殿の後で無様な戦いは見せられないな」
百面鬼、大悪災、軍神、侵略渡来人、陰陽師、隠し将。
この戦争で数々の強敵を撃破してきた猟兵たちの前に立ちはだかる、第六天魔軍将最後の一人――大帝剣・弥助アレキサンダー。
その主君への揺るがぬ忠義の心はもはや疑いようがない。だが同時に彼は、主君に勝利を捧げるためなら数多の一般人を洗脳し犠牲にするような手段も辞さない、非道なるオブリビオンでもあるのだ。
もしもここで彼を討ち損じれば、戦後のエンパイアで何が起こるのか――野に下った彼が『信長様の為に』一体どのような事件を引き起こすのか、想像もつかない。
「こうなってはもはや小細工はない。俺の生命が尽きるのが先か、メガリスの力がお前たちを吹き飛ばすのが先か――」
激しさを増す大渦の中心で、両手剣型メガリス『大帝の剣』を抜き放ち。
全身に闘志を漲らせながら猟兵と対峙するその立ち居振る舞いは、まさしく侍。
「――勝負だ、猟兵よ!! 大帝剣『弥助アレキサンダー』参る!!!」
関門海峡の戦いのクライマックスの火蓋は、ここに切って落とされた。
ステラ・アルゲン
大帝の剣……ふふ、見事な剣だな
ならば流星剣たる私と勝負と行こうか!
足場を氷【属性攻撃】で作りながら進む
そして【真の姿】を開放し、先制攻撃を受ける!
我が剣では悔しいがあの剣を真っ向から受けるのは恐ろしい、下手をすれば折れるだろう
だから【高速詠唱】【全力魔法】で【オーラ防御】を剣に纏わせる
さらに鉄【属性攻撃】で剣の硬度を上げておく
大きな力を受け流すように【武器受け】しよう
あの一撃を耐えたとして足場は崩されるな
だが崩された氷の破片の影から不意を付くように近づき、今度はこちらから攻撃しよう
我が流星の一撃、受けてみよ!
「大帝の剣……ふふ、見事な剣だな」
弥助アレキサンダーの構える大剣を見て、感嘆するような口ぶりでステラは呟く。氷の魔法で凍結させた足場の上を駆け、壮麗に輝く自らの本体を構えながら。
剣のヤドリガミである彼女だからこそ分かる、そのメガリスとやらに秘められた絶大な力。同じ剣としての敬意と、そして対抗心が心の奥から湧き上がってくる。
「ならば流星剣たる私と勝負と行こうか!」
「応! 相手にとって不足なしよ!」
剣として騎士としての挑戦に、侍たる弥助は真っ向から受けて立つ構えを見せ。
豪快にして壮絶。まさに"大帝"の名を冠するに相応しき気迫の一太刀が放たれる。
(我が剣では悔しいがあの剣を真っ向から受けるのは恐ろしい、下手をすれば折れるだろう)
ならばこそ、持てる全ての技量と力を駆使してその一太刀を凌いでみせようと、ステラは真の姿を解放し、亡き主との記憶から美しき白銀の全身鎧を現界させる。
憧れであり、目指すべき騎士の象徴でその身を覆った彼女は、流星剣に刻まれた彩紋の刻印を輝かせ、魔力のオーラを剣身に纏わせる。
「オオオオオッ!!!!」
大上段より振り下ろされる弥助アレキサンダーの剛の一撃。その勢いを受け流す柔の構えにて迎え撃つステラ。二人の大帝の剣と流星剣が接触する。
その瞬間、感じたのは海を割らんばかりの衝撃。単純な"重さ"を極めた一撃に流星剣が軋みを上げ、兜の下でステラの表情が苦痛に歪む。
それでも剣が折れなかったのは、オーラによる保護と鉄の魔法による硬度の強化、そして彼女自身の巧みな技の賜物によるもの。
「――これよりもっと鋭い剣技を、私は知っている」
大きな力に正面から逆らうのではなく、水のように受け流す。ステラと流星剣を両断するはずだった大帝の剣は力の軌道を逸らされ、海上に巨大な水柱を起こした。
「見事!! おお、見事なり!!」
渾身の一撃を凌いだ敵を称賛しながらも、弥助の眼は鋭い。大帝の剣が粉砕したのはステラが立っていた氷の足場のみ。即座に反撃が来るであろうことは確実だった。
そして彼の予想通り、崩れて散った氷の破片の影に隠れた白銀の騎士は、既に弥助を自らの剣の間合いの内に捉えていた。
威風にたなびく青いマントを翻し、放つは渾身の【流星撃】――数多の願いと想いを託されてきたこの剣の重さ、人々の希望の未来を斬り開くこの刃の鋭さは、大帝の剣にも決して劣りはしない。
「我が流星の一撃、受けてみよ!」
先の攻防を鏡写しにしたかのような展開――だが、大帝の剣で流星剣を受け止めた弥助アレキサンダーの表情には、驚愕と苦渋が浮かぶ。
「これは……まるで、星を受け止めているようだ……!!」
まるで天より墜ちる隕石衝突の破壊力にも匹敵するかという衝撃。耐えきれなかったのは大帝の剣ではなく、その使い手の方だった。
「――墜ちろ!」
裂帛の気魄と共に振り切られた流星剣が弥助の胴体を深々と斬り裂き、鮮血の混ざった水柱が戦場に立ち上った。
成功
🔵🔵🔴
メンカル・プルモーサ
…禍根を残す訳にはいかないからね…ここで倒れて貰うよ…
…『闘神の渦潮』から放たれる雷槌…強力ではあるけど雷という事が弱点…
箒に乗って海面すれすれを飛びつつ…(残っていれば)船を盾にしたり…
…術式で操った海水を盾にして雷を海に流して防いでUC発動までの時間を稼ぐ…
…【尽きる事なき暴食の大火】が発動したらそれを操って雷槌を飲み込ませつつ発生源である『闘神の渦潮』へ辿らせて…
渦潮も燃料にして充分に『育った』白い炎を弥助へとぶつけるよ…
…敗因があるとすれば…作戦を優先しすぎて秀吉と一緒に戦わなかったことだね…
…二人一度に掛かられたら勝てなかった…
「……禍根を残す訳にはいかないからね……ここで倒れて貰うよ……」
箒に乗って海面すれすれを滑るように飛びながら、メンカルは術式を詠唱する。その視線の先では水柱の中から現れた手負いの弥助が、金の独鈷杵を握りしめている。
「はいそうですかと、倒れる訳にはいかないな……闘神の独鈷杵よ、力を示せ!」
掲げられた独鈷杵を中心として、出現するのは『闘神の渦潮』。
メガリスの力が生み出したエネルギーの塊が、破壊の雷槌を戦場に解き放った。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ……」
メンカルは銀月の杖を振って周囲の海水を操り、雷槌を防ぐ盾とする。
口元で紡がれるのは反撃のための術式詠唱。その完成までの時間が勝負所だった。
「まだメガリスの力は満ちてはいないが……それでも、これだけあれば十分だ!」
弥助の咆哮と共に襲い掛かる破壊の雷槌は、海水の盾を通して海に流れていく。
だが『闘神の渦潮』に溜め込まれたエネルギーの量は、不十分と言えども無尽蔵に近い。止むことのない雷槌の嵐は、メンカルを徐々に追い詰めていく。
「汝は焦熱、汝は劫火……」
水盾だけでは防ぎ切れない。窮した少女の目にふと飛び込んできたのは、壊れた軍船の残骸だった。猟兵との戦闘で破壊されて放棄されたものが、大渦の流れに巻かれてここまで引き込まれて来たらしい。
これ幸いとばかりにメンカルは船の影に飛び込むと、降り注ぐ雷槌から身を隠す。
長くは保たないだろうが、彼女に必要なのはその僅かな時間だけだった。
「……魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
発動する【尽きる事なき暴食の大火】。メンカルの杖先に灯った白い炎は、またたく間に船の残骸に燃え移ると、雷槌を防ぐ新たな壁となった。
かの白炎にとってはこの世の如何なる存在も燃料に過ぎない。可燃物は言うに及ばず、不燃性の物質から更にはエネルギーに至るまで。それは雷さえも例外ではない。
「雷を喰らう……炎だと……!!」
驚愕する弥助の目の前で、白炎は破壊の雷槌の持つエネルギーを飲み込んでさらに激しく燃え上がる。そればかりか雷の流れを導火線のように辿って、その発生源である『闘神の渦潮』にまで燃え移らんとしていた。
「まずいっ!!」
慌てた弥助が独鈷杵の力を解除しようとした時には既に遅く、暴食の大火は渦潮に溜め込まれていた力を燃料に変え、もはや取り返しもつかないほど『育って』いた。
「ここまで大きくなるのも珍しい……それじゃあ、返すね……」
「う、おぉぉぉぉぉぉっ?!」
海上に浮かぶ巨大な白炎の塊が次に襲うのは弥助アレキサンダー。
咄嗟に白波を蹴立てて飛び退こうと、その凄まじい熱量と規模から逃れられるものではない。暴食の大火は情けも容赦もなく、弥助の全身を焼き焦がしていく。
「……敗因があるとすれば……作戦を優先しすぎて秀吉と一緒に戦わなかったことだね……二人一度に掛かられたら勝てなかった……」
メンカルは淡々と告げる。絶叫する大帝剣に、その戦術的なミスを。
当初の計画に固執したあまり、彼らはこうして順次撃破される危機に陥っている。
もし最初から、あるいは秀吉が危機に陥った時点で加勢していれば、戦いの天秤はあるいは反対に傾いたかもしれない。
「耳が痛いな……策に溺れるとはこの事か。だが、まだ策そのものが潰えたわけではないぜ……!!」
大火傷を負った弥助は苦い顔をしながらも、大剣と独鈷杵を再び構える。
たとえ勝てずとも、あと僅かな時間だけ猟兵の攻撃を耐え凌げば、彼の逆転の一手は成るのだから。
成功
🔵🔵🔴
ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブ歓迎
お待ちかねの決戦だ、気合い入れていくかの。
○先制対応
腕に自信もあるなら小細工せずつっこんでくるじゃろ。
【オーラ防御】を展開し、ガントレットにスコップも重ねて【盾受け】じゃ、真正面から受け止めてみるか。
受けに成功したら、ダメ元で【カウンター】で【気絶攻撃】を打ち込もう。
○攻撃
隙を見て【超ド級爆操店舗ゲンチャンダイナー】を召喚。
できりゃ弥助の上からでビビらせたいな。
喚び出し早々わしとのリンクは切り、足場になってもらおう!
海上での決戦だしな、これで弥助にわしの打撃を当てられるじゃろ。
【選択したUC】で真の姿を開放、さらに強化!
ありったけの【怪力】を【捨て身の一撃】でぶちこんでやるわい。
「お待ちかねの決戦だ、気合い入れていくかの」
超重鋼パイプ柄ロングスコップを振り回しながら、宇宙バイクを駆るゲンジロウ。
その目標たる大帝剣は、手痛い傷を負いながらも、大渦の中心で今だ健在である。
「気合いなら負けていないぜ……ここが俺の正念場、意地の見せ所だ!」
大帝の剣を大上段に構え、正面から突っ込んでくる弥助アレキサンダー。
その瞳には覚悟と、剣にかける自らの技量への自信が強く感じられた。
「セイヤァッ!!!」
怒号と共に繰り出される、大帝の一太刀。
海すら砕く重い一撃を、ゲンジロウはスコップとガントレットを重ねて受ける。
宇宙船の外装にも使われる超重鋼製のスコップは、盾としての強度も十分。さらにシールドガントレットに搭載された蒸気機関には、敵の打撃を押し返す機能もある。
――それでもなお、正面から受け止めた大帝の剣の威力は想像以上だった。
「名前負けはしとらんようじゃな……!」
ピシリと音を立ててスコップの柄とガントレットに亀裂が入る。初撃はどうにか凌いだものの、次は防具もゲンジロウ自身も保ちそうにない。
追撃を放つ暇を与えまいと、ダメ元上等で反撃の拳を打ち込む。咄嗟にのけぞるように身を躱した弥助だったが、罅割れたガントレットの拳が顎を微かに掠める。
「ぐ……っ」
脳を揺らされ、意識が散る。弥助が前後不覚に陥った時間はほんの数秒だったが、ゲンジロウが反撃に転じるには十分な隙だ。
「バトルトレースモード! 超ド級爆操店舗、コード【IZAKAYA:げんちゃんforDINER】!」
ゲンジロウの叫びと共に、ラジカセから臨場感を煽り立てるようなイカしたBGMが流れ始める。何事だと立ち直った弥助の頭上に、巨大な何かの影が落ちる。
「こ、これは……何だッ!!?!?」
慌てて飛び退いた彼のいた水面に、バッシャァン!! とド派手な水飛沫を上げて降り立ったのは、城塞のごとき威容を誇る鉄の巨人であった。
全長37.52m。重量不明。ゲンジロウの意志と動作に呼応して駆動する超巨大ロボ。
「これぞ【超ド級爆操店舗ゲンチャンダイナー】じゃ!」
「店舗とは一体何なんだ……!!!?」
想像の埒外にある存在を見せつけられて、弥助は驚愕でぽかんと口を開けている。
その間にゲンジロウはゲンチャンダイナーの掌に飛び乗り機体とのリンクを切る。
ロボの召喚は海上で自由に動ける足場を作るため。ケリをつけるのは己自身の拳。
巨人の上を駆けるゲンジロウの身体が、紫色の炎のオーラに包まれていく。
「小うるせぇ怨嗟共を焚べて、燃え上がれ……もっと、もっとだ」
余計な武器も防具も捨てて、真の姿を解放したゲンジロウ。
その身に帯びる紫苑色の炎は、彼を攻め立てる怨嗟の感情の発露。
俺達はお前が死ぬ事を許さぬ――数多の死線を潜り抜けながら重ねてきた罪と業が、償いを求めて彼を責め苛む。
それは彼が、無自覚なまま自身に科した呪いであり、罪悪感であり、願いだった。
「まだだ、まだ足りん……もっと燃えろ!」
燃え立つ激情を【怨嗟の炉】に焚べながら、握りしめた拳を振りかぶる。
だが――それが叩き込まれる刹那、体勢を立て直した弥助が再び先手を打つ。
「それがお前の戦う理由か。ならば俺は――信長様の為に、この剣を振るう!」
オブリビオンと化してなお、決して揺らがぬ主君への忠義。
信念を籠めた一太刀が、無防備なゲンジロウの身体を捉えた。
「殺った――ッ!!?」
肉を断ち骨を砕く、確かな手応え。弥助の振るった大帝の剣は、紛れもなくゲンジロウに致命的な深手を与えていた。
にも関わらず、彼の胸に訪れるのは勝利の喜びではない――その逆であった。
「傷跡が疼くんだ……まだ死なせねぇよってな」
ほとばしる自分自身の血で全身を赤く染め上げながら、ゲンジロウが薄く笑う。
身を守るつもりなど端からない。ただ一撃、叩き込めればそれでいい。
傷の痛みなど、怨嗟の叫びと炎の熱さに比べれば、何とでもなかった。
「こいつで……お返しじゃ!」
ありったけの膂力と怨嗟の力を籠めた拳が、音を立てて弥助の胸板にめり込む。
その一撃きりで、深手を負ったゲンジロウは崩れるようにその場に倒れ伏したが、最後に彼が見せた意地の威力は絶大だった。
「がは……ッ!!!」
肋骨を粉砕され、血反吐を吐きながら、大帝剣が膝をついた。
苦戦
🔵🔴🔴
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
あなた個人には恨みもなんにもないけれど。
放っといたらどう考えてもロクでもない未来しか見えないのよねぇ。
…ここで潰させてもらうわぁ。せいぜい悪く思ってちょうだいな?
さっきのお猿さんと同じく、むこうのUCの効果は「体を変異させる」まで。
なら、攻撃自体にはなんとか反撃を合わせられる…はず。
チャンスは一瞬・一度きり。さっき見せた的殺だと多分間に合わない。
…なら、あたしにできる最速の一閃。○クイックドロウから●封殺の全弾○一斉発射を叩き込むわぁ。
刻むルーンはペオース・ダエグ・ティール。
「運否天賦」ではあるけれど、これがあたしの「打開策」。あたしが選んだ「勝利」への道筋よぉ?
「やはり……強いな、猟兵。秀吉殿や魔軍将が倒されるわけだ……」
骨の砕けた胸の傷を押さえながら、血を吐きながら呟く弥助アレキサンダー。
猟兵がまだ十分な戦力を残しているのに対し、此方の余力は僅か。たとえ個の力では相手を凌駕していようとも、旗色の悪さは明らかだった。
「だが……万に一つでも勝機が残されているのなら、俺は……!」
天変地異の大渦の発動までの時間に全てを賭けて、歯を食いしばりながら立ち上がる男の胸で、金の十字架が怪しく輝いた。
「あなた個人には恨みもなんにもないけれど。放っといたらどう考えてもロクでもない未来しか見えないのよねぇ」
再び闘志を燃やす弥助を見ながら、ティオレンシアはホルスターに収めた拳銃に手を当てる。敵は主君のために非道も辞さぬ強大なオブリビオン。野放しにするのは余りに危険だと、経験と直感が告げていた。
「……ここで潰させてもらうわぁ。せいぜい悪く思ってちょうだいな?」
「いいさ、戦いとはそういうものだ……恨めよ!」
メガリス『逆賊の十字架』を発動した弥助の肉体が泡立ち、片腕が巨大な肉塊へと変異していく。それは、触れた者から闘志を奪う『視肉』の塊だ。
殺傷力という面では大帝の剣や闘神の独鈷杵には劣るが、こと時間稼ぎという目的においては最適の能力だろう。
「こいつで大人しくしてもらうぜ!!」
弥助は手負いとは思えぬ身のこなしで水上を駆け、視肉化し肥大した拳を握る。
その攻撃の「起こり」をティオレンシアは見逃さない。彼女が狙っていたのはこのタイミング。敵が攻撃に移る瞬間の隙にカウンターを合わせる事。
(チャンスは一瞬・一度きり。さっき見せた的殺だと多分間に合わない)
――なら、放つのは自らにできる最速の一閃。
稲妻のような早業で拳銃を抜き、刹那のうちに全弾を叩き込む、神速の早撃ち【封殺】。その銃弾に刻むルーンは、ペオース・ダエグ・ティールの三文字。
(「運否天賦」ではあるけれど、これがあたしの「打開策」。あたしが選んだ「勝利」への道筋よぉ?)
轟く銃声。唸る豪腕。
銃弾が弥助を撃ち抜くのと、視肉がティオレンシアを捉えるのはほぼ同時だった。
「がは……ッ!!」
6発のルーンの銃弾に全身を射抜かれ、よろよろと後退する弥助アレキサンダー。
しかしティオレンシアもまた、視肉によって闘志を奪い尽くされていた。
「身体が重いわぁ……」
戦意が沸かない。拳銃のトリガーにかけた指が鉛のように重い。
それでも彼女の口元には、どこか満足げな笑みが浮かんでいた。
勝利への道筋は繋がれた。ならば後に続く誰かがきっと、この戦いに決着をつけてくれるだろう。
苦戦
🔵🔴🔴
ナーシャ・シャワーズ
視肉とやらは本来土に埋まってるもんだろう?
こんな海の上で……いや、骸の海こそ我が大地、ってか?
埋め戻してやるさ。木星よりも遠くからやってきた私がね。
スペースサーファー、もう少し頑張ってくれよ。
闘志を奪うなんて言ってるが宇宙海賊が小銭一つだって奪わせるものかよ。
この魂から生まれ出る力を食らわせてはやるがね。
迫りくる視肉を迎撃するソウル弾に紛れさせて本命も撃たせてもらう。
こいつはお前さんの魂が潰えるまで追い続ける……
たとえ私が捕らえられようとその魂は消えない。
お前さんの魂の力が強ければ強いほど、逃げられはしないさ。
そこまで思わせる信長ってやつは大した男なんだろうがね。
私は気に入らない。だから倒す。
「視肉とやらは本来土に埋まってるもんだろう? こんな海の上で……いや、骸の海こそ我が大地、ってか?」
肥大化した肉塊を見やりながら、傷ついた敵に追撃を仕掛けるのはナーシャ。
視肉とは異国の伝承に記される、食べても決して尽きない肉の怪異。それと同じ名が冠されている理由は不明だが、何れにせよ為すべきことはひとつ。
「埋め戻してやるさ。木星よりも遠くからやってきた私がね」
「やってみな……こいつに闘志を奪われずに済んだならな!」
ソウル・ガンの銃口を向ける女に、異形化した弥助は血を吐きながら襲い掛かる。
「スペースサーファー、もう少し頑張ってくれよ」
大渦の波に乗る相棒に跨りながら、ナーシャは魂の力を奮い立たせる。
ソウル・ガンは魂で撃つ銃。その破壊力は彼女自身の心の強さに比例する。
「闘志を奪うなんて言ってるが宇宙海賊が小銭一つだって奪わせるものかよ。この魂から生まれ出る力を食らわせてはやるがね」
迫りくる巨大な肉塊の拳を迎撃すべく、反骨心と闘志を籠めてトリガーを引く。
放たれたソウル弾は無数の閃光の礫となって、視肉を削り拳の勢いを削いでいく。
「ぐ……っ!」
弥助の表情が苦痛に歪む。だが、それでも彼の拳は止まらない。
侍が持つ忠義の魂の力もまた、宇宙海賊のそれに決して劣らぬとばかりに。
「受け取ったぞ、お前の魂……次は俺の魂の力も喰らえ!」
ソウルの弾幕を突き破り、巨大な肉の塊が、ナーシャの身体を叩きのめした。
「くっ……」
視肉に触れられた瞬間、ナーシャの中から急速に闘志が萎んでいくのが分かる。
左腕のソウル・ガンの銃口から放たれていた光が次第に弱くなり、そして消える。
「俺も負けられないのさ……信長様の為にな」
勝負ありとみた弥助はそこで彼女から目を逸らし、次なる敵の姿を探しだす。
だが――闘志を奪われたはずのナーシャの目は、まだ死んではいなかった。
「そこまで思わせる信長ってやつは大した男なんだろうがね。私は気に入らない。だから倒す」
「どうやってだ? お前はもう……ッ!?」
その瞬間、弥助の身体を掠めたのは蛇のような軌跡を描く一発のソウル弾。
先程の弾幕の中にナーシャが紛れ込ませていた本命――【星に紛れて】だった。
「こいつはお前さんの魂が潰えるまで追い続ける……たとえ私が捕らえられようとその魂は消えない」
視肉に闘志を奪われようとも、先んじてソウル・ガンに籠めて放った闘志と魂の力までは失われはしない。
彼女の魂は視肉の一撃を受ける直前、弥助に宿る魂の位置を確かに見出していた。
「お前さんの魂の力が強ければ強いほど、逃げられはしないさ」
「くそ……っ!」
ぐったりとスペースサーファーに寄りかかりながらも、勝ち誇るように笑うナーシャの言葉通り、放たれた魂の力はまるで吸い寄せられるように目標を追跡する。
そして遂に――避けきれなくなった弥助の肉体と魂を、ソウル弾が貫いた。
「がはぁ……ッ! こいつが、お前の魂、か……俺には眩しすぎるぜ……!」
破壊エネルギーの塊をその身に受けて、血反吐を吐きながらも皮肉げに口を歪め。
男の表情には、強敵に対する惜しみなき称賛が宿っていた。
苦戦
🔵🔴🔴
光・天生
毛利水軍から強奪……もとい拝借した船を足場としましょう。
例え宙に浮いていようとも
剣を振るうなら奴もこちらに接近する必要がある
大帝の剣の先制攻撃で船はまず砕ける……と、敵も思っているではず
だから……先制攻撃の対策として、
奴が剣を振るう瞬間を【見切り】、UCの手刀を振るい……
俺が立つ船そのものを、真っ二つに切り裂く
着地、あるいは直撃の手応えのなさで奴のバランスを崩すんです
【カウンター】を叩き込むべきは、そこです
沈みゆく船とて事前に予測して【地形の利用】をすれば
高く【ジャンプ】して攻撃を回避する余裕はある
宙で身を翻し【怪力】任せの踵落としを奴に見舞う!
元より捨て身、一撃入れられればそれでいい――!
「やはり一筋縄ではいきませんか」
劣勢に追い込まれながらも奮戦する敵将・弥助アレキサンダーの戦いの様子を、天生は毛利水軍から強奪――もとい拝借した船の上から観察していた。
水兵ではない彼の技術では自在に船を動かすことはできないが、足場としては十分。ある程度近付けばあとは流れに吸い寄せられて、船は渦の中心に向かっていく。
「はぁ……はぁ……やれやれ、千客万来だな!」
これまでの戦いで弥助も既に多くの深手を負い、流石に疲れが見え始めている。
それでも一度剣を握ればその構えに隙はなく、水上を滑る足取りは疾風の如し。
天生の乗る船など、彼と大帝の剣の力を以てすれば木っ端も同然だろう。
(大帝の剣の先制攻撃で船はまず砕ける……と、敵も思っているはず。だから……)
船ごと敵を両断せんとする弥助の行動と心理を、天生は読んだ上で意表を突く。
大帝の剣が振りかぶられた瞬間、彼の手が目にも留まらぬ速さで動いた。
「―――何をっ!?」
【我が手は祈りを為し得ない】――天生の渾身の手刀は弥助ではなく、自らが立っている船を真っ二つに切り裂く。斬るはずだった対象が失われた結果、弥助の一撃は大きく空を切り、水面に巨大な水柱を上げるのみに留まった。
「くっ!?」
想定していたのとは違う手応えのなさに、勢い余った弥助の体勢が崩れる――。
(カウンターを叩き込むべきは、そこです)
手刀を繰り出した直後に跳躍して斬撃を回避していた天生は、宙で身を翻し踵落としの構えを取る。剣を振り下ろしたばかりでがら空きになった男の頭上を狙って。
敵の隙を作るために自ら足場を破壊するという、一度限りの奇策。沈みゆく船にもう戻ることはできない以上、攻撃を叩き込むチャンスはこれが最初で最後になる。
だが、それをプレシャーに感じるような軟な心など、彼は持ち合わせていない。
「元より捨て身、一撃入れられればそれでいい――!」
足に氣を集中させ、裂帛の気合を漲らせる天生の身体には、禍々しい紋が浮かび。
この瞬間この一撃に全てを賭けた、羅刹の怪力に任せた渾身の蹴撃が見舞われる。
「お前に捧げる祈りは、無い」
「ご、がはぁッ!!!!?」
寸前で首を捻り、脳天を砕かれることだけは回避した弥助であったが、羅刹の踵落としは戦鎚のような破壊力を以て彼の右肩を粉砕する。
骨と肉を砕いた手応えに、もはや二度とその腕で剣は振れまいと確信する天生。
絶叫する『大帝剣』の手から、大帝の剣が零れ落ちた。
成功
🔵🔵🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
その忠義、称賛を送りたくなるね
秀吉といい、テメェといい…信長は随分なカリスマなようだ
だが殺す
どんな心意気でも、上から潰すだけだ
勝利の邪魔だ──退けよ
破壊の雷槌──つまりは渦潮から放たれる飛び道具か
まずは初撃の雷槌を、ナイフを投げて避雷針代わりにして防ぐ
【ダッシュ】【見切り】【早業】【第六感】で雷槌の軌道を読み、足場を高機動で渡って避ける
避けながらUCセット──『Reflect』
船の残骸、壊れた足場…なんでもいい、障壁を作成
飛び道具ならこいつで弾ける…反射、反射!
跳ね返しながら反射板を操作、雷槌をいくつも乱反射させる
気付いたかい?弥助アレキサンダー
既にお前の雷槌が…お前自身に殺到してることに!
「ぐ、うぅぅぅ……まだ、だ、まだ俺は……」
血を吐くように呻きながら、砕けた肩をかばいつつ身構える弥助アレキサンダー。
剣を握ることすらままならないその腕の状態では、もはや『大帝剣』の称号は名乗れまい。それでもまだ、彼の魂は屈してはいなかった。
「俺の全ては……信長様の為に……!」
主君への妄執にも等しいほどの忠義が彼を支え、戦いへと衝き動かしていた。
「その忠義、称賛を送りたくなるね。秀吉といい、テメェといい……信長は随分なカリスマなようだ」
剣を失おうとも戦意を失わない弥助の態度に、ヴィクティムは皮肉げな笑みを浮かべながら呟き――。
「だが潰す」
直後、まるで氷のように冷たい眼差しへと変わる。
弥助の信念の軸が"忠義"であるならば、彼の執着は"勝利"。勝利に向かって只管走り続けることが、彼の生きるということ。その前に立ちはだかる者に容赦はしない。
「どんな心意気でも、上から潰すだけだ。勝利の邪魔だ――退けよ」
「はいそうですかと通すものかよ――力尽くで退かせてみせろ!」
応じる弥助の左手に握られた闘神の独鈷杵が光り輝く。
海上に再び出現した『闘神の渦潮』は、蓄積された無尽蔵のエネルギーを解き放ち、破壊の雷槌を戦場に降り注がせた。
「破壊の雷槌――つまりは渦潮から放たれる飛び道具か」
敵のユーベルコードを冷静に分析しながら、ヴィクティムは所持していた生体機械ナイフを避雷針代わりに投げ放つ。
目論見通りに雷槌の狙いは逸れ、身代わりとなったナイフは一瞬で黒焦げに。しかし初撃を凌いでも、すべての雷槌を同じ手段で迎撃するにはナイフが足りない。
ヴィクティムは全身に搭載した電脳デバイスをフル稼働させ、雷槌の軌道を演算。海上に作り上げた足場を機敏に渡って直撃を回避していく。
「やはりこいつも凌ぐか……だが逃げているだけじゃ勝利は近付いてこないぜ!」
独鈷杵を握り締め、なおも激しく闘神の渦潮から雷槌を放ち続ける弥助。
毛利水軍との戦いから仕掛けておいた足場も残り少ない。この戦況が長引けばいずれ追い詰められるのは自分の方だということは、ヴィクティムも理解している。
だからこそ、彼は回避に徹しながら反撃の為のユーベルコードを準備していた。
「セット――『Reflect』」
船の残骸、壊れた足場――戦場に散らばっている無機物をかき集め、変換し、自らの周囲に障壁を作成。その挙動は『Sanctuary』にも似ているが実態はまるで違い、こちらはより用途を限定されたプログラムである。
「飛び道具ならこいつで弾ける……反射、反射!」
空中に浮かぶ反射板を操り、破壊の雷槌を跳ね返す。飛び道具に対して特化された防御障壁の性能は極めて高く、どれだけの雷槌の嵐を浴びようともビクともしない。
「ちいっ……だが、完全無欠の防御など、この世にあるはずがない!」
障壁と障壁の隙間を撃ち抜こうと、より激しく破壊の雷槌を解き放つ弥助。
だが、それはヴィクティムの思う壺だった。『Reflect』の障壁によって雷槌はことごとく跳ね返され、障壁の間を乱反射し、彼の意のままに軌道を変更される。
弥助が違和感を覚えた時には、彼の「反撃準備」はもう完全に整っていた。
「これは……?!」
「気付いたかい? 弥助アレキサンダー。既にお前の雷槌が……お前自身に殺到してることに!」
反射板によって跳ね返された雷槌の全てが、全方位から一点に収束する。
それは、ヴィクティムの演算が編み出した、避けることの能わぬ巨大な稲妻の檻。
「があああああああああああああああッ!!!!!??!」
数十発分もの雷のエネルギーが、弥助の身体を芯まで焼き焦がしていった。
成功
🔵🔵🔴
アリス・フォーサイス
メガリス?が何かは知らないけど、ものすごい力を感じるね。
でも負けないよ。
全力魔法で極限まで強化したオーラ防御で防ぐよ。
ポイントは雷槌は受け止めるんじゃなく、受け流すってことかな。
電気は流れを止めなければ、そのエネルギーを発揮することはないからね。
オーラ防御を維持しつつ。迷彩で大渦にまぎれて接近していくよ。
接近したら剣を振る間もあたえない、魔力をこめた全力のパンチをお見舞いするよ。
ここまで派手な戦い、撮らない手はないよね。グッドナイス・ブレイヴァーで召喚したドローンで撮影して幕府軍のみんなに応援してもらうよ。
「く、そ……だが、時が満ちるまであと少し……あと少し、ここを耐えれば……!」
もはや満身創痍の弥助アレキサンダーは、気力を振り絞りながら立ち上がる。
あとひと押しで彼の命脈が尽きるのは明らかだろう。だが彼を中心にして荒れ狂う『大渦』も、いつの間にか開戦時より大きく規模を増している。
そこに満たされていく力の規模を感じ取り、アリスは残された猶予が僅かしかないことを察した。
「メガリス? が何かは知らないけど、ものすごい力を感じるね。でも負けないよ」
「上等だ!」
最後に天秤が傾くのがどちらになるにせよ、決着の時はもう間近に迫っていた。
「認めるぜ、お前達は強い! だからこそ俺も限界以上の力でお前達に挑む!」
咆哮する弥助の気魄に応えるように『闘神の渦潮』が稲光を上げ、凄まじい威力を秘めた破壊の雷槌がアリスを襲う。
その性質を瞬時に把握した情報の妖精は、自らの全力を以てオーラの防壁を展開。まさに神の怒りと呼ぶに相応しき雷撃を、殻に籠もるようにして凌ぐ。
真っ向から防ぎ止めようとしていれば、力負けしていたかもしれない。アリスが巧みだったのは雷槌の力を受け流すように防壁を調整したことだ。抵抗によって電流が止まらなければ、電気のエネルギーが発揮されることはない。
アリスのオーラの表面を滑るように流れていった雷槌は、空中や海上で眩い稲光を散らした。
「ここまで派手な戦い、撮らない手はないよね」
闘神の渦潮が荒れ狂い、破壊の雷槌が嵐となる、壮絶な戦場を見渡して、アリスは【グッドナイス・ブレイヴァー】を発動する。
動画撮影ドローンの配信先は、エンパイア中にいる江戸幕府軍の兵士たちだ。
「何をしてる、戦いの最中だぜ!」
再び放たれる破壊の雷槌。オーラの防壁によってアリスにダメージはないが、直撃を受けるたび彼女の力は失われていき、いずれはオーラを維持できなくなるだろう。
消耗を強いられる防戦一方。だが、どんな苦境に立たされようともアリスは決して屈しない。ドローンの向こう側にいる数多の人々の声が、彼女を支えているから。
『頑張ってくれ!』
『あともう少しだ!』
第六天魔軍将の恐るべき力、そしてそれに立ち向かう猟兵の勇姿を目に焼き付けた人々からの応援の声が、彼方からこの関門海峡に集まってきていた。
「みんな、ありがとう」
アリスが身に纏う可変衣装レイヤーが眩い光を放ち、オーラの強度が回復する。
力を取り戻した情報妖精は迷彩魔法をかけると、荒れ狂う大渦の中に飛び込んだ。
「ちぃっ、どこへ行った……!」
渦の流れの中で敵の姿を見失った弥助は、周囲に無差別な雷槌を放つ。
だがそのような闇雲な攻撃では、応援を受けた彼女の防御を貫くことはできない。
アリスは大渦に紛れて渦の中心に接近すると、幼い拳をぎゅっと握り締めて、弥助に勢いよく飛び掛かった。
「これがぼくの全力だよ」
繰り出すのはありったけの魔力を籠めた全身全霊のパンチ。迷彩によりギリギリまで接近を悟らせなかったその一撃は、剣を振るう間すら与えぬ完全な奇襲となった。
「ご、がはぁッ!!!!」
見た目の何倍もの魔力と、幕府軍のみんなの声援による力が宿った、小さな拳。
アリスの全力と人々の想いを叩きつけられた弥助は、絶叫を上げながら吹き飛んでいく。
成功
🔵🔵🔴
雛菊・璃奈
その武将らしい義に篤いのは好感が持てるけど…一般の人達まで巻き込む様な戦い方は許さない…。
ここで止める…!
敵の攻撃を凶太刀の高速化と【見切り、第六感】で回避しつつ、回避し切れない攻撃をアンサラーの【呪詛、オーラ防御、武器受け。カウンター】で反射…。
呪力を高めながら【九尾化】の封印を解放するよ…。
無限の魔剣で敵の独鈷杵を破壊しつつ神速で接近し、速度を活かして凶太刀と神太刀によるヒット&アウェイで攻撃…。
遠間では魔剣を放ち、接近では斬撃を繰り返す事で削り、斬り捨て仕留めるよ…!
信長も貴方も元はこの世界の人間だったのに…何故この世界を破壊し、多くの人々を苦しめる…!絶対に許さない…!
フレミア・レイブラッド
忠義心の強い人ね…良いわ、この世界の武将に相応しいとっておきで相手してあげる!
【念動力】による防御膜と地属性の魔力【属性攻撃】で姿を覆い隠す程の巨大な土の壁を生成し、独鈷杵からの雷槌を防御。
姿を見えなくした隙に地形を利用して隠れ、隙を見てUCを発動するわ。
【ブラッディ・フォール】で「天使と悪魔携える軍神」の「上杉謙信」の服装(フレミアにアレンジした感じ)に変化。
【毘沙門刀天変地異】で「大地」の「津波」を巻き起こして雷槌ごと敵を飲み込むように放ち、敵が対処してる隙に接近。
【毘沙門刀車懸かり】による高速移動で接近しながら12本の毘沙門刀の攻撃で敵の手を封じ、【毘沙門刀連斬】で討ち取らせて貰うわ!
月宮・ユイ
アドリブ◎
*器に<呪詛>宿し呪詛/呪操る
気になる点は多けれど問答の時間はなさそうね。
最後の魔軍将、その首貰い受けます
<早業:高速詠唱>秀吉相手に起動していた力を変換
《捕食兵装》武装圧縮成形:<破魔の呪>上乗せ
衣:<念動:オーラ>に重ね纏い行動補助と耐性
剣槍:二刀流も
鉄杭:[ステラ]利用、捕食能力乗せ多数生成
<属性攻撃:雷>雷寄せる避雷針化し射出<誘導弾>
雷槌無尽蔵に放たれる以上遠距離戦は不利故近接戦
<第六感>併用全知覚強化<情報収集・学習・見切り>
UC照準機能の知覚拡大と併せ雷を読み杭で迎撃捕食力溜め
得物の大剣には手数と速さで対抗攻撃重ねる
破魔の呪で相手の力乱した隙つき
全力込め渾身の一撃を
「いよいよ……俺も限界か……」
猟兵たちと幾度となく刃と技と力を交えながら耐えてきた弥助アレキサンダー。
尋常ではないタフネスを見せつけた彼にも、いよいよ限界は迫っていた。
「だが……ここで諦めたら、秀吉殿に合わせる顔がねえ……」
とうに限界を迎えているはずの身体が動く。
砕かれたはずの右腕で大帝の剣を構え。
闘神の独鈷杵で渦潮を操りながら。
「全ては……信長様の為に……!」
完成間近の大渦の中心で、忠義の魔軍将は最期の勝負に挑む。
「その武将らしい義に篤いのは好感が持てるけど……一般の人達まで巻き込む様な戦い方は許さない……」
右手には妖刀、左手には魔剣の二刀流の構えを取って、弥助と対峙するは璃奈。
恐らくこの男は、これまでも、これからも。信長のためならばどのような非道にも手を染めるのだろう。ならば、この世界の平和を望む彼女が為すべきことは一つ。
「ここで止める……!」
「止めてみろ……猟兵!」
高々と掲げられた独鈷杵を中心に、闘神の渦潮から破壊の雷槌が解き放たれる。
目を覆いたくなるほどの凄まじい閃光と雷撃の嵐が、戦場を一掃せんと荒れ狂う。
「気になる点は多けれど問答の時間はなさそうね」
そう静かに呟きながら、ユイは秀吉との戦いで起動していた力を変換する。
先ずは自らを構成するコアの一つ、星剣『ステラ』から避雷針として無数の鉄杭を創生し、ユーベルコード【捕食兵装】に組み込まれた照準機能を起動。
全知覚を強化して雷の軌道を予測すると、杭で的確に雷槌の軌道を逸らす。
その迎撃精度は非常に高いものだったが、これだけではいずれ限界が来る。
「雷槌が無尽蔵に放たれる以上、遠距離戦は不利ね」
止むことのない雷槌の嵐を凌ぎながら、ユイは接近戦を挑む好機を窺う。
「呪力解放……!」
一方の璃奈は右手の妖刀・九尾乃凶太刀の呪力をその身に帯びて加速し、水上の足場を超音速で駆けながら雷槌の嵐をくぐり抜ける。
超高速の戦闘では、一瞬一瞬の判断が明暗を分ける。見切りのセンスと第六感を研ぎ澄ませ、避けきれないと悟った雷撃は、左手の魔剣アンサラーで受け止める。
「返すよ……」
「ぐぅッ!!」
報復の魔剣に籠められた魔力が、破壊の雷槌を反射する。自らの放った雷に打たれた弥助は、苦悶の呻きを上げるものの、決して独鈷杵を手放しはしない。
「この、程度……!! 闘神の独鈷杵よ、貴様に秘められた力を出し切れ!!」
彼の気魄に応えるように、渦潮から放たれる雷槌の勢いが収まる気配はない。
璃奈はユーベルコードを発動するための呪力を高めながらも、反撃に転じるための隙をなかなか見いだせずにいた。
「例えこの身が朽ち果てようと……俺の全ては、最期の瞬間まで信長様の為に……!」
肉体の限界を魂の力で凌駕し、荒れ狂う雷槌によって猟兵を寄せ付けない弥助。
大渦の完成までの時間も刻一刻と迫っている――このままでは不味いかと猟兵たちが考えはじめた、その時。
「忠義心の強い人ね……良いわ、この世界の武将に相応しいとっておきで相手してあげる!」
高らかにそう宣言したのはフレミア。念動力による防御膜に身を包みながら、この状況を打開するユーベルコードの詠唱を始める。
「やらせるかよ!」
そうはさせじと弥助が独鈷杵を振りかざせば、破壊の雷槌が殺到する。
そう来ることを読んでいたフレミアは地属性の魔力を練り上げ、自身の姿を覆い隠す程の巨大な土の壁を生成する。
「小癪な!」
電流を通さない地の力は雷槌とは相性が悪い。顔をしかめながらも、弥助は大量の雷槌を叩き付けることで強引に防壁を突破しようとする。
だが、雷槌の嵐が土壁を粉砕した時には、フレミアの姿はもうそこにはなかった。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
フレミアは土壁で姿を見えなくした隙に、雷槌の閃光や大渦の起こす波に紛れて身を隠し、ユーベルコードを発動するまでの時間を稼いでいたのだ。
【ブラッディ・フォール】により彼女が身に帯びるのは、凛々しい青と白の戦装束と、森羅万象の属性を宿す12本の刀。それを見た瞬間、弥助は目を見開いて叫んだ。
「その力は……まさか、謙信公の!!!!」
第六天魔軍将が一人、軍神『上杉謙信』。このエンパイアウォーで打ち破った強敵の力こそが、フレミアの「とっておき」だった。
「さあ、いくわよ……!」
両手に構えた純白と漆黒の毘沙門刀、そして周囲に浮かぶ10本の毘沙門刀を振るい、フレミアは【毘沙門刀天変地異】を放つ。
現出するのは「大地」の「津波」。まるで海の底がひっくり返ったかのような土砂と岩石の濁流が巻き起こり、弥助と闘神の渦潮を呑み込まんと襲いかかる。
「仮初とはいえ、まさかこのような形で謙信公と手合わせが叶うとは……!」
窮地に立たされながらも、武人としての昂りを抑えきれないのか。
弥助は渦潮のエネルギーを限界まで放出して、大地の津波を押し留める。
彼が天変地異の対処に専念せざるを得なくなれば、猟兵に対する攻撃の手は緩む。
――反撃に転じるのは今。言葉を交わすまでもなく、三人の意思は共通していた。
「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
全身から莫大な呪力を放ちながら、璃奈は【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解く。
妖しくも美しい九尾の妖狐へと変化した彼女は、無数の終焉の魔剣を自らの周囲に展開すると、これまでのお返しとばかりに一斉に射出する。
慌てて回避に徹する弥助だったが、降り注いだ魔剣の雨の一振りが、彼の手から闘神の独鈷杵を叩き落とす。
「しま……っ!!」
拾い上げる暇など与えない。雷槌の止んだ隙に肉迫したユイが、破魔の呪を籠めた【捕食兵装】――二振りの剣槍にて挑み掛かる。
「喰らいつけ……」
「ぐぁッ!?」
弥助の身体に突き刺さった兵装は彼の力を喰らうのと同時に破魔の呪を注ぎ込む。
もはや気力ひとつで立っているに等しい今の彼に、その影響は絶大だった。
「このまま一気に……」
秀吉との戦いで捕食した力。それを速度と手数に変換した彼女は、畳み掛けるように攻撃を重ね、呪いと捕食によって弥助を侵していく。
「凄まじい……力だ……だが、まだだ……!」
だが、猟兵たちの猛攻に晒されながらも、弥助アレキサンダーの闘志は萎えない。
その右手には彼の象徴たる両手剣のメガリス――『大帝の剣』がある。
「喰らえ―――ッ!!」
「やらせないわよ」
渾身の一太刀が振り下ろされる寸前、【毘沙門刀車懸かり】の構えを取って急接近したのはフレミア。回転する12本の毘沙門刀が大帝の剣を盾のように受け止め、その破壊力を完全に封じ込める。
「ちぃ……っ、ぐあッ!!!?」
仕損じたことを弥助が悟った直後、その背中から鮮血が上がる。
媛神化によって神速の領域へと達した璃奈が、光の如き速さで斬撃を放ったのだ。
「信長も貴方も元はこの世界の人間だったのに……何故この世界を破壊し、多くの人々を苦しめる……!」
目にもとまらぬ勢いで戦場を駆けながら、璃奈は弥助を糾弾する。
その手には凶太刀・神太刀の二振りの妖刀。神速を活かして間合いに踏み込み、斬撃を繰り出しては即座に離脱するヒット&アウェイで、敵の命脈を確実に削る。
万全ならばまだしも、今の弥助に彼女のスピードに対抗する術はない。
「この俺ごときに、信長様の御考えが分かる筈もない……俺はただ、信長様の命じるままに……信長様の覇道の為にこの剣を振るう、ただそれだけだ……!」
その返答は紛れもなく忠臣のそれであったが、同時に思考停止の極みでもあった。
真の忠臣であるならば、主君の過ちを正すのもまた、臣下の務めであろうに。
「絶対に許さない……!」
怒りを籠めて放たれた終焉の魔剣が、盲目の忠臣の胸を深々と貫いた。
「がはぁッ……!」
ごぼり、と口から溢れ出すおびただしい量の血。積み重ねられた負傷、そしてユイから与えられた破魔の呪に、とうとう弥助の肉体と精神が屈する時が来た。
「これで討ち取らせて貰うわ!」
敵の動きが乱れた隙を突いて、フレミアが放つのは【毘沙門刀連斬】。
12本の毘沙門刀を次々に持ち替えながら繰り出される斬撃の連鎖。それはひと繋がりの舞いを見ているかのように洗練された『軍神』の剣技の再現であった。
「終わらせるよ……!」
毘沙門刀連斬と交差するように同時に放たれたのは、璃奈による神速の斬撃。
磨き上げた剣技と九尾の呪力、そして心に秘めた想いを籠めた、終焉の一太刀。
そして正面からはユイが、剣槍を構えて迫る。その刃に纏った雷は、破壊の雷槌より避雷針の鉄杭が捕食吸収し溜めこまれたメガリスのエネルギー。
「最後の魔軍将、その首貰い受けます」
抑揚のない静かな宣言と共に、ユイは全力を込めた渾身の一撃を放つ。
――軍神、終焉、捕食。
刹那のうちに閃いた三つの斬撃は狙い過たず、弥助アレキサンダーの命脈を断つ。
己の死を悟った彼は、骸の海へと還る最期の瞬間に、微かに目を細め。
「ああ……無念だが、良い戦いだった。……申し訳ありません、信長様」
刎ね飛ばされ宙を舞った首は、水中に没することなく虚空に消える。
同時に、大帝の剣、逆賊の十字架、闘神の独鈷杵――彼の所持していた三種のメガリスとそれが生み出した大渦も、跡形もなく消滅していく。
後に残ったのは、これまでの激闘が嘘のように穏やかな、関門海峡の水面のみ。
かくして猟兵たちは第六天魔軍将最後の2人――『隠し将』豊臣秀吉と、『大帝剣』弥助アレキサンダーを討ち取ったのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴