エンパイアウォー⑰~冥府魔道を根絶せよ
●鳥取城内
――エンパイアの戦も、佳境の趣でありましょうか。
此度の私の目的は、ただ「持ち帰る」事のみ。
この世界はよく「似て」おりますゆえ、「業(カルマ)」の蒐集も興が乗りませぬ。
……いえ、そうではありませぬな。
不死で、繁殖もできて、生存の為のエナジーも必要としない。
それは、賽も振らずに勝つようなもの。
斯様な存在に成り果てた私に、私自身が飽いているのでありましょう。
戯れに、山陰を屍人で埋めてみましょうか。
それとも、コルテスが崇める神の偽物でもこしらえて、信長の後釜に据えましょうか。
はてさて、それらを全て行ったとして。
猟兵とやらの怒りは、果たして、どれほど私の心を動かすものやら……。
●冥府魔道の元を根絶せよ
「……成程、これは確かに腸煮えくり返るような所業だな」
グリモア内の音符が奏でるメッセージを読み取ったグリモア猟兵藤崎・美雪は、こめかみを軽く指でほぐしながら呟く。
「未だ陰陽師『安倍晴明』は健在なようだ。……しぶといな」
美雪の呟きを聞きつけてか、猟兵らが次々と集まってくるのを見て、美雪は皆の方を向き、良く通る声で告げる。
「……聞いての通りだ。山陰や奥羽地方に『水晶屍人』を撒いた陰陽師『安倍晴明』の討伐を願いたい」
美雪の頼みに、猟兵らはそれぞれの想いを持って頷いた。
「晴明がいるのは鳥取城だ。おそらく居場所は天守台だろうな」
ボスと何とやらは高いところにいる、という法則では決してない。単に部屋の広さの問題だろう。
「ただ、どうも……妙でな。この戦に賭ける熱量を全く感じない」
倦んでいる、と言い換えてもいいのかもしれない。
「それでも、これまでの所業を考慮すると、到底放置しておくわけにはいかないだろうな。ここで確実に討伐しておきたいところだ」
ただし、皆に気を付けてほしいことがある、と美雪は告げる。
「晴明への質問は『ナシ』だ。おそらく聞いてもはぐらかされるだけだろう」
その上で、と前置きし、さらに美雪の警告は続く。
「どこか妙なズレというか違和感と言うか……言葉にできない何かを感じ取ってはいる。だが、おそらくこれを問い正しても何の意味もないだろう」
だから、何か妙なズレを感じたとしても、それは決して問い正さない方がいい、と美雪は強く警告した。
「もっとも、質問をする余裕はないと思われる。何せ必ず皆に先んじて攻撃をしてくるのだからな」
初撃を凌いでからでないと、猟兵側には攻撃する機会すら生じない。対応が甘ければ初撃で弾き飛ばされてそれで終わりだ。
しかも倦んでいるとは言え、晴明の強さは軍神『上杉謙信』に匹敵する。油断は決してできない相手であることに変わりはない。
「そろそろ幕府軍本体も魔空安土城に到着しそうな状況で、このようなことを頼む無茶を許してほしい」
――だが、放置が許される相手でもないから。
「必ず撃退して、戻って来てくれ。頼んだぞ」
美雪はグリモア内の音符を展開し転送ゲートを開くと、猟兵らを送り出した。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
安倍晴明は、未だ鳥取城内で『水晶屍人』量産計画を進めているようです。
これ以上の犠牲を生まぬためにも、彼の討伐を願います。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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●特殊ルール:先制攻撃
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
概要・詳細はオープニングの通り。
プレイングはオープニング公開後から受け付けます。
受付締め切りは別途北瀬のマスターページ及びTwitterで告知します。
有力敵ですので、判定は厳しく行います。
シナリオ失敗の可能性もございますこと、予めご了承くださいませ。
今回は【これまで1度も「エンパイアウォー⑰(安倍晴明戦)」に参加したことのない方】を優先し採用致します。
既に1度何れかの晴明戦に参加された方は、可能なら参加をお控え頂けると幸いです。
●本シナリオにおけるNG事項
「晴明への質問は一切NG」です。無理やり質問してものらりくらりと躱されて答えてもらえません。
また、旧作(TW4)に絡めた質問・会話等は【厳禁】とします。ぼかして書いてもダメです。記されていた場合例外なく不採用とします。
※心情程度なら考慮しますが、描写の確約は一切致しません。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
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POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:草彦
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
諏訪野・啓太郎
「昔の話などどうでもいい。俺が守りたいのは、現在だ! だから晴明、お前を倒す!」
【エレクトロレギオン】をあらかじめ使って、半数を前に出して、相手の先制攻撃を交わす囮にします。
相手の動きを確かめて、機械人形の半数と啓太郎本人で戦います。「クイックドロウ」や「零距離攻撃」を使います。
「今度は逃がさないぜ」
アドリブ、共闘歓迎です。
●「現在」と「未来」を守る覚悟
真っ先に天守台に駆け付けた諏訪野・啓太郎(さすらいのライダー・f20403)にとって、昔の話などどうでもいいこと。大切なのは「過去」ではなく「今」、そして「未来」なのだから。
「俺が守りたいのは、現在だ! だから晴明、お前を倒す!!」
右腕にはめた銃・スーパークラッシャーの銃口を晴明に向け、大声で宣言するも、晴明はわずかに眉を上げただけ。
「その熱量、何処から零れるのか、興味がございます」
「これ以上口を聞くな!!」
晴明の熱量乏しい慇懃無礼な口調がどうにも苛立ちを募らせる。啓太郎は無理やり会話を打ち切り、戦闘準備に移った。
晴明が先手を打って水晶屍人を召喚してくることは、既に判明している。啓太郎はそれに対抗すべく【エレクトロレギオン】で機械人形を召喚し、囮として活用しようとしたが……召喚する寸前、晴明にちらりと目をやり、大きく目を見開いた。
啓太郎の目の前には、既に晴明の召喚した水晶屍人が蠢いている。その数、少なく見積もっても100。それらが一斉に啓太郎向けてゆっくりと迫っていた。
(「これでは機械人形を囮にするのは間に合わない!」)
それでも啓太郎は諦めることなく、175体の機械人形を召喚。そのうちの半数を急いで水晶屍人の前に向かわせるが、あっという間に水晶屍人の持つ鍬や棒でなぎ払われ、瞬く間に消滅していく。
「チッ……晴明、今度は逃がさないぜ!」
あっという間に半減した機械人形の残りに水晶屍人を攻撃させ、啓太郎自身もスーパークラッシャーで迫り来る水晶屍人を撃ち抜いて道を切り開こうとするが、如何せん機械人形は攻撃されると一撃で消滅する故、物量で有利になろうとしてもあっという間に覆されてしまう。結果、残りの機械人形すべてが瞬く間に水晶屍人に蹴散らされ、全滅した。
晴明がくるり、と身を翻し、啓太郎に背を向ける。
「他愛ない……熱量だけで私に手を届かせようなぞ」
「晴明、待て……!」
啓太郎に興味を失った晴明は背を向け、天守台の奥へと消える。啓太郎はスーパークラッシャーで迫り来る水晶屍人を撃ち抜き道を開こうとするが、未だ大量に残る水晶屍人の厚い壁に遮られ、ただそれを見送るしかできなかった。
苦戦
🔵🔴🔴
ファラン・ウルフブラッド
☆アドリブ・絡み歓迎です。
…チッ、コイツが噂に名高き陰陽の天才、安部晴明か。
術者としてだけでなく近接戦の心得もあるとはな。厄介なヤツめ、腹立たしい程に殺し甲斐があるというものだ。
【行動:POW】
先制攻撃への対処は、最初の攻撃を『見切り・武器受け』で受け流すかポイントをずらし、二回目の攻撃は当たる前に此方から更に踏み込み、体当たりをして直撃を避けます。受けた呪詛は『呪詛耐性』と裂帛の気合(『破魔』)で対処します。
攻撃ターンが回ってきたら『残像・ダッシュ・フェイント』で動きを読ませないように動き、間合いに入ったら『早業・二回攻撃・見切り』を合わせたUC:居合い斬りを叩き込みます。
●斬り上げ斬り捨て斬られ合い
「……チッ、コイツが噂に名高き陰陽の天才、安倍晴明か」
ファラン・ウルフブラッド(深淵を歩く剣王・f03735)は、安倍晴明の姿を認めるや、いきなり吐き捨てる。
(術者としてだけでなく近接戦の心得もあるとはな、厄介なヤツめ。)
―――しかし、厄介だからこそ。
(「腹立たしいほどに殺し甲斐があると言うものだ」)
「殺し合い」への高揚感からか、知らぬうちにファランの口端がわずかに釣り上がっていた。
「参ります」
ファランの姿を認めた晴明が滑るように接近し、優雅にかつ大胆に、右手のチェーンソー剣を無造作に振り抜く。
ファランはチェーンソー剣の軌道を見切り、右手の剣で受け流す。続けざまに来るはずの本命の左のチェーンソーの上段からの振り下ろしは、大きく1歩踏み込み、晴明に体当たりをして避けようとした。
「その程度の策略、お見通しでございます」
しかし晴明は体当たりしようとするファランに先んじて、ファランの右肩から背中にかけてチェーンソー剣を豪快に叩き込む。
「が…………はっ…………!!」
右肩に生じた激痛と、徐々に侵蝕する呪詛に、ファランは悶絶した。呪詛は持ち前の耐性と気合である程度相殺できるが、深く抉られた右肩の傷は如何ともしがたい。
晴明の2本のチェーンソー剣による連撃「双神殺」は、「初撃を外すと次も当たらない」という特性がある。ファランは剣で受け流そうとはしたが、1度チェーンソー剣に触れていることに変わりはなかったため、高威力高命中の二撃目が肩を深々と抉ることになった。もし体当たりしていなければ右肩から真っ二つに斬られていただろう。
肩から背中を深く斬られてもファランは諦めない。体当たりしようと接近したため、既に剣の間合いには飛び込んでいる。ファランはいったん剣を鞘に納め、晴明に右手の動きを悟らせないよう軽くフェイントで幻惑しながら、肩の痛みをこらえ再度抜刀、晴明の胴を一気に逆袈裟に斬り上げる。
「ぬ!?」
晴明が一瞬動きを止めた隙に剣の向きを変え、袈裟斬り。続けざまに左から右へ、右から左へ水平に薙ぎ、合計四連撃の【居合い斬り】で晴明を斬り裂く。
「油断も隙もあったものではありません」
「殺し切れなかったのが口惜しいわ」
腹を押さえながら尚も他人事のような口調の晴明にファランは思わず毒づくが、右肩の負傷は思ったより深く、撤退せざるを得なかった。
苦戦
🔵🔴🔴
コトト・スターチス
えたいのしれない敵に……体がふるえそうです
でも、今ぼくは辻ヒーラーとしてすごくおこです!
「生命をもてあそぶあなたを、ぜったいにゆるしませんっ!」
敵の攻撃には【ハッキング】の技術と魔力を組み合わせて魔力で【残像】を作り出し、少しでもまどわします
場所がばれても、敵の行動パターンを【情報収集】して【見切り】、できる限りダメージをおさえたいです
そして敵が強化のため怨霊の所に移動するように、位置どりを気をつけます
敵が怨霊に移動しはじめたらチャンス!
たどりつく寸前で、しろにゃんさんの防壁を展開して進路をふさぎ、すぐそまその背後からくろにゃんさんの炎【属性攻撃】弾をあびせますっ!
「これで倒れてくださいっ!」
●怒りの辻ヒーラー、ダブルにゃんこで罠にかけろ
(「えたいのしれない敵に……身体がふるえそうです。でも……」)
熱量乏しき晴明を見て、コトト・スターチス(バーチャルネット辻ヒーラー・f04869)は身体の震えを必死に止めつつ、それでも叫ぶ。
「今、ぼくは辻ヒーラーとしてすごくおこです!」
「はて、怒っているようには見えませぬが」
キマイラフューチャーで人気のMMORPGで、見かけたけが人に回復魔法をかけて回る辻ヒーラーとして活動しているコトトにとって、生命を無為に散らす存在は許しておけないのかもしれない。
「生命をもてあそぶあなたを、ぜったいにゆるしませんっ!」
びしっと指を突き付け、コトトは晴明を挑発……するに見せかけて強がった。
「その怒り、一瞬で消して差し上げましょう」
先んじて晴明から放たれる五芒符(セーマン印)を、コトトはハッキングの技術と魔力を組み合わせて虚空に生み出した残像で翻弄し、避けようとする。
「わざと受けた方が幸せかもしれませんよ」
「そんな引っかけにはのりませんっ!」
晴明の挑発には乗らず、コトトは行動パターンを具に記録し、蓄積した情報を元に予測して見切り、五芒符を避けきる。目標を見失った五芒符はコトトの背後の床に落下した後床を斬り裂き、周囲を業(カルマ)の怨霊で埋め尽くした。
「受けた方が幸せ、と申し上げた理由、納得いただけましたでしょうか?
「ひ、ひぃ……オバケはこわいです!!」
コトトは怨霊を避けるように、晴明から離れるように移動する。
「さて、精一杯利用させていただきましょう……」
晴明が虚空を滑るようにコトトに接近、怨霊で埋め尽くす床に立ち、己の力をさらに高めようとする。
――しかし、コトトの思惑に既にはまっていることに、晴明は気づかない。
(「狙った通りです、チャンスです!」)
「くろにゃんさん、しろにゃんさん、お願いしますっ!」
晴明が怨霊埋め尽くす床に足を踏み入れた瞬間、コトトは【ねこきゅーと】で黒猫型ドローン・くろにゃんさんと、白猫型ドローン・しろにゃんさんを同時召喚。
「しろにゃんさん、壁を作っちゃってください!」
コトトに命じられたしろにゃんさんは、晴明の行く手を遮るように防壁を展開。
「む? これは……」
突如せり上がった防壁に、晴明の足が止まる。
――それこそがコトトが作り出した、晴明を一方的に攻撃できる策が成就した瞬間。
「くろにゃんさん、炎でやっちゃってください!」
「にゃーん!」
晴明の真後ろに立ったくろにゃんさんが、コトトの命を受け炎の属性弾を至近距離から晴明に打ち込む。
「ぐおお……っ、まさか……まさか!!」
「最初からこのつもりだったのです! 燃え尽きるのです!!」
ようやくコトトの手の上で全て転がっていただけだと悟っても時すでに遅し。晴明は全身を火達磨にし悶えるしかできなかった。
大成功
🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
クリスタリアンの恥さらしが……ボコボコにしてくれる!
大量の水晶屍人を呼び出してくるならこっちだって大量の武器を用意しますよ。あなたが呼び出した人の壁は私の兵器で真っ向からぶっ壊させてもらう。
さぁ、召喚した物がぶつかりあってる間、呼び出した側も呼び出した側で一戦交えましょうや。鉱石は鉱石らしく砕かれて逝きなさい!
●自作の兵器で真っ向勝負!
「このクリスタリアンの恥さらしが……!!」
カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの咎人殺し・f12355)は、晴明の姿を一瞥するなり怒りを露わにした。
「はて、くりすたりあん、とは」
カーバンクルの怒りを受け流しつつ、首を傾げる晴明。惚けているのではなく、本当に知らなさそうな素振り。カーバンクルの脳裏に、ひとつの疑問が過る。
――果たして彼は、本当にクリスタリアンなのか?
確かに焼け焦げた服の隙間から見える胴は水晶の塊にも見える。しかし一方で晒している顔は人間のそれにも見える。本当にクリスタリアンなのか否かは判別がつかぬのだ。
だが、確実なのは、このクリスタリアンか否かが分からぬオブリビオンが、大量の水晶屍人を生み出し、奥羽を、山陰を蹂躙したこと。
「ボコボコにしてくれる! スクラップビルダーの手際をなめんな!!」
目の前で水晶屍人を召喚する晴明を見上げながら、カーバンクルは【高速組立】で次々と武器を組み立て始めた。
即興で組み上げ用意したのは、剣や拷問具、槍や片手斧など、計43個の武具。それを念力で虚空に浮かべ、水晶屍人らに狙いを定める。
「あなたが呼び出した人の壁は、私の武器で真っ向からぶっ壊させてもらう」
「どうぞ」
涼しげに受け流す晴明の意を受け、水晶屍人がカーバンクルに殺到する。カーバンクルは武具を操り、水晶屍人の壁をぶち抜こうとするが、適当に武具を用意したのが仇となり、水晶屍人の壁に穴を開けることができない。カーバンクルも超巨大金槌を振り回すも、それだけでは水晶屍人の壁を押し戻すだけで精一杯。
(「呼び出した側同士で一戦交えたいのに、届かない……!!」)
カーバンクルの脳裏に焦りが過る。適当過ぎたのが仇になったか?
もし【高速組立】で用意した武具の中に、両手で扱う大きな斧があれば、刃先の重さで斬り払うと同時に吹き飛ばせたであろう。常にカーバンクルが手にしている超巨大金槌のような大き目のハンマーが2つ3つあれば、単に振り回すだけでも片っ端から吹き飛ばし、叩き潰すことができたはず。
武具は適材適所――必要な場で必要な武具を用意し、生かしてこそ最大の効果を発揮する。大量の水晶屍人がいるなら、大量の武器で応戦すればいい。それで事足りると考え、具体的に必要な武具を考えて来なかった彼女の、明らかなミスだった。
「せい、めい……っ!!」
壁を破ることは叶わずとも、かろうじて1本だけ槍を晴明に届かせたカーバンクルは、念力で右肩の水晶を砕きながら強引に押し込み、貫く。しかし同時に武具の壁が水晶屍人の波に耐え切れなくなり、消滅した。
「ぐっ……くりすたりあんとやらの意地、ですか」
武具の壁を失い水晶屍人の波に呑まれるカーバンクルをわずかに一瞥した後、晴明は槍を抜き、その場に打ち捨てた。
苦戦
🔵🔴🔴
ブイバル・ブランドー
屍人を量産してこの世界を荒らし、あの哀れな連中(㉙のオブリビオン達)が持つ感情すらも利用する。
それ相応のリスクを覚悟してやっているのか?
先制対策
武器をTWINSModeに変形し、どちらから攻められても凌げるようにする。
そして次に来る強力な呪詛攻撃は【ブランドライバー】のハッキング機能で、チェーンソーに呪詛を流す経路の様なものを阻害出来ればいいが…こればかりは賭けになる
そして反撃をする直前に【ATブランショルダーホイール】の機能を発動。攻撃を当てる度に加速できるからその間にTWINSModeを使い、敵の反撃を警戒しつつ多段攻撃を狙う。
後一走り付き合ってもらうぞ。10秒間だけな
●怒りと共に外道を砕け
アーマー姿のブイバル・ブランドー(の中身//自由すぎるアーマー・f05082)の脳裏に過るは、現在サムライエンパイア各地に潜伏しているという『偽神降臨の邪法』を施された女性オブリビオン達の存在。
「屍人を量産してこの世界を荒らし、あの哀れな連中が持つ感情すらも利用する」
「ほう、彼女たちは哀れ、と」
怒りに任せ指摘するブイバルの言に、わずかにクスクスと笑う晴明。
「何がおかしい?」
「彼女たちは喜んでその胎を捧げたというのに、それを哀れと申されましても」
――神の子を宿す、皆そう信じて喜んで協力してくれましたよ。
クスクスと笑う晴明に、ブイバルの怒りが募る。
「邪法に伴う、それ相応のリスクを覚悟してやっているのか?」
「ええ、もちろん」
声を震わすブイバルにさも当然とばかりに嘯く晴明の声に、表情に、罪悪感は微塵も見られない。
ヒトを、オブリビオンを、己の野望成就の為に利用する。
――それがこの男、安倍晴明の本質なのかもしれない。
(「この外道には問いただすだけ無駄か」)
ブイバルは会話を打ち切ると、普段使用している武器・甲型多目的兵装VALZA³をTWINSModeに変形、双剣と化した得物を握り、左右どちらから攻められても凌げるようにする。
「貴方の纏う具足、徹底的に壊して差し上げましょう」
晴明は右手のチェーンソー剣を無造作に振り上げ、これまた無造作にブイバルに振り下ろす。ブイバルも左手の双剣1本で受けようとしたが、双方が噛み合った瞬間、ブイバルの双剣があっさりと叩き落された。
(「見誤った……一撃が重すぎる!!」)
晴明が軽々と振り回した故威力を誤認したが、チェーンソー剣そのものの重量にそれを軽々と振るえる膂力が加わればどうなるか……その答えは床に叩き落された双剣の片割れと左腕を深く抉られたブイバルが示していた。
左があっさりと跳ね返されたとなると、高威力高命中となる右からの一撃は間違いなく受け切れない。悟ったブイバルは二撃目が来るまでのわずかな時間でウォーマギアを噛み合わせVVブランドライバーを起動し、右手の双剣で受けたその一瞬でチェーンソー剣に籠められた呪詛を流し込む経路を阻害した。しかし受け止めたのは一瞬のみで、右手の双剣も叩き落され、右腕だけでは済まず胴をも深々と斬り裂かれる。
「ぐ……は…………っ!!」
それでもブイバルは一矢報いんとばかりに、両肩のATブランショルダーホイールを起動、痛みをこらえつつ床に落ちた双剣を拾い上げ、チェーンソー剣を振り降ろして隙が生じている晴明に連続して突き出す。
「後一走り付き合ってもらうぞ。10秒間だけな……!!」
晴明の左腕を徹底的に攻めるブイバルに、晴明は不敵な笑みを浮かべる。
「いいえ、貴方如き、後一撃で十分」
――瞬くほどの時間も、要しませぬ。
ブイバルの視界の外から緩やかに袈裟に振り下ろされた右手のチェーンソー剣が再度ブイバルを吹き飛ばし、その意識を断ち切った。
苦戦
🔵🔴🔴
秋穂・紗織
業の蒐集は、つまり、罪咎の集積
凶災や不幸を呼び寄せるモノなのでしょう
厭いているといいながら、戯れに命を弄ぶのは
「――ああ、つまり、アナタの魂こそが罪なのです」
ならば、斬らねばなりませんね
先制攻撃が確定ならば、狙うは後の先を確実にと
召喚された水晶屍人たちの群れの布陣を見切りで注視し
最も布陣薄い部分へとダッシュと早業で一気に切り込み、突破しましょう
安倍に肉薄して、ようやく本番
妖刀の天峰白雪に加え、斬絃奏鳴「紅葉」での二刀流となり2回攻撃で手数を更に増加
斬り結ぶ中で阿部の動き出しを見切り、振りかぶるチェーンソーの刃へと鋼糸を絡ませて、隙作りましょう
妖刀の刃で身体、魂を斬り散らす為に
私の命を燃やしても
●命を弄びし陰陽師と舞い斬ろう
ふわりと優雅に天守台に姿を現した秋穂・紗織(木花吐息・f18825)が晴明に投げかける言葉は、辛辣の一言。
「業の蒐集は、つまり、罪咎の集積。凶災や不幸を呼び寄せるモノなのでしょう」
「凶災や不幸、ですか」
「厭いていると言いながら、戯れに命を弄ぶのは……」
――ああ、つまり、アナタの魂こそが罪なのです。
「面白いことを言いなさる。私の魂、私の存在そのものが罪と」
クックック、と喉の奥を鳴らすような不気味な笑いを零す晴明。
「ならば、斬らねばなりませんね」
「ええ、私もなぜか貴女を殺めねばならない。そんな気がしております」
わずかに言の葉に憎悪を籠め、紗織を睨む晴明。
――それは倦んでいた陰陽師が、わずかに熱を持った証でもあった。
大量の水晶屍人達が召喚されていくのを見て、紗織が選んだのは、剣術で言う「後の先」。
群れるとは言え必ず布陣が薄い部分があるはず。そこを見極め、一気に突破する構え。
しかし、水晶屍人達はなぜか合体を繰り返し、その数を減らして行く。晴明が紗織を殺めるために個々の攻撃力を高めようとして合体を繰り返し、肩の水晶の数を増やして力を高めているのだが、それは同時に手駒の数自体を減らし、壁を薄くする行為に他ならない。
肩の水晶の刻印が「5」となり、20体程度にまで減った時……紗織が動いた。
紗織は大きく踏み出し群れへ一気に斬り込み、布陣の薄い箇所を狙い天峰白雪で一閃。水晶屍人たちが怯んだその隙に一気に駆け抜け、晴明に接敵。
「これは……!」
晴明が驚く。数を減らしたのが仇となり、布陣の薄い箇所が増えた結果、紗織に容易に接敵を許したのだから。
「最初から数で押し潰してしまえばよかったのです」
冷ややかに告げつつ紗織が新たに手にしたのは、鮮やかな赤の鋼糸・斬絃奏鳴「紅葉」。至近距離から天峰白雪で斬り結びつつ、チェーンソー剣に赤の鋼糸を絡め、その回転を鈍くする。刃の回転で威力を増すなら、鈍くしてしまえばいい。それだけの話。実際、チェーンソー剣が腕に触れるが、回転が鈍っているからか思ったより傷は深くならない。
チェーンソー剣への対処を終えた紗織は、天峰白雪を構える。
「この刃でアナタの身体を、魂を斬り散らすために」
――私の命を燃やしても
――詠うならば、奏でる刃を響かせて
天峰白雪を輝かせて、舞い踊り斬り狂おう【斜陽斬奏】。
一の刃を九の刃に増し、それを只々目の前の罪深き魂を斬り刻むために踊り狂おう。
紗織の命と魂を糧に、優雅に舞うように神速で振るわれる十八連撃の斬撃の嵐は、確実に晴明の身体を斬り刻む。
「ぐ……は……っ!!」
衣服と共に水晶の身体すら斬り刻まれ、晴明は思わず膝をついていた。
成功
🔵🔵🔴
鈴城・有斗
両手のバリアリアクターを全開稼働して初撃を受け止めてからが本番だ。
UCダークハンドで影をバリアの表面に這わせてウニの様に放射状に棘を出して牽制、あるいは縫い止めて動きを鈍らせてから距離を取る。
両手足に影を纏わせ、腰の後ろからも影で細長いトカゲ状の尻尾を形成
脚の影は弾力を利用しての機動力と着地時の制御
腕の影は鉤爪状の獣人の腕みたいな形
尻尾はバランサーや鞭、また、脚の代わりに地面を打って跳ぶ等に利用
尻尾以外にも四肢の影を鞭状に伸ばし振るって打ち据えたり
敵に絡みついて拘束や伸縮を利用しての高速接近
相手の攻撃はバリアや影で積層状の壁を構築して時間稼ぎ
お前は邪魔だ
永遠に骸の海に沈んでろ
アドリブ・連携歓迎
宇迦野・兵十
生まれは狐みたいなもんだって聞いてたんだが…まぁいいか。
やぁ元ご同輩、随分と世の中に飽きたって顔してるねぇ。
―【誘惑/コミュ力】で語りかけながら近づく。
【双神殺】を【見切り/早業/残像】で回避しようか。
当たった場合には【破魔/激痛耐性】で耐え、【武器受け】で受け止めるよ。
それで負けちまったら…まぁその時はその時さ。
―無事生きていれば相手の動きを【見切り】
なぁお前さん、月夜の蟹って知ってるかい?
―剣の間合いまで【暗殺/早業】で踏み込み、その一方で【早業】で笑狐を引き抜く。
何にもない、空っぽな…お前さんみたいなヤツの事だよ。
―【三狐新陰流・常世還】
[アドリブ歓迎、諸々お任せいたします]
●狐の呪縛と弾力ある影で、陰陽師を海に戻せ
天守台に足を踏み入れた宇迦野・兵十(きつねさん・f13898)は、晴明を一瞥しため息をつく。
(「生まれは狐みたいなもんだって聞いてたんだが……まぁいいか」)
ご同類ではないかとの淡い期待を抱いていたのかどうかは定かではないが、兵十が多少落胆したのは否めない。それでも気を惹くために、兵十は大声で晴明に呼びかける。
「やぁ元ご同輩、随分と世の中に飽きたって顔してるねぇ」
「ええ、もう私の役目は終わりになりそうですからね」
兵十の呼びかけに熱籠りし声で反応しつつも、晴明は水晶屍人を召喚する手を止めない。既にかなりの痛手を受けているはずなのに、それでもなお、あれだけの水晶屍人を召喚する余力を残しているのか。
しかし水晶屍人を避け接近するためにどうしたものか。考え込む兵十に背後から呼びかけられる声。
「アレは気にするな。僕に考えがある」
兵十が振り向くと、そこに立っていたのは鈴城・有斗(未来を導く意志は今ここに・f18440)。
「へぇ、お前さんに考えが」
「ああ。少し任せてもらえないだろうか」
両手にバリアリアクターを装備した有斗を認めた兵十は、軽く頷いて後ろへ下がった。
「さあて……来い!」
バリアリアクターを展開し水晶屍人を挑発する有斗に、水晶屍人が殺到。しかし有斗は全開稼働したバリアリアクターで水晶屍人の拳をがっちりと受け止め、押し返す。
「影よ」
有斗は拳を受けながら【ダークハンド(改)】を起動、自身の肉体を基点に影を収束し、物理干渉出来る任意の形に変化させ、バリアリアクターの表面と四肢、そして腰に纏う。
両腕の影は鍵爪を備えた獣の腕に。
両脚の影は弾力を利用した機動制御に適したブーツ状に。
そして腰の影は細長いトカゲの尻尾状に。
「ウガアアアア!!」
「邪魔だ」
さらにバリアリアクターの表面を覆った影は有斗の意に応じ、瞬時に雲丹のような無数の棘へと変化し、殴りかかった水晶屍人を悉く貫いてゆく。その間に腰の影が別の水晶屍人の足を掬い、鞭のように打ち据えて動きを止める。
水晶屍人の数が多い故、有斗も無傷では済まない。しかし両腕の影を伸ばして迫り来る水晶屍人をなぎ払い、着実に水晶屍人の群れに穴を開けて行った。
やがて、有斗の一騎当千の奮闘で、群れの一部に穴が開く。
「行け!」
この機を逃さず、有斗は両腕の影を伸ばし無理やり群れを押しとどめることでさらに穴を広げ、兵十を促す。
「行かしてもらいますかね」
兵十はゆらりゆらりと隙間を抜け、晴明へと近づく。その背後では、両腕の影を戻した有斗が再び迫り来る水晶屍人を薙いでいた。
「随分と余裕の表情ですね」
「えぇ、元ご同輩」
余裕の表情で晴明に近づく兵十。
「態々無防備を装わなくてもよろしいのですよ……!」
晴明は無造作に右手のチェーンソー剣を兵十に振り下ろし、これまで退けられた猟兵と同様に退けようとする。受けようとすればその膂力で刀は撥ね飛ばされ、たとえ怪力の持ち主でも長くは持たない。その間に左手のチェーンソー剣に呪詛を籠め叩き斬るのみだ。
しかし兵十の取った初手対策は、他の猟兵と大きく異なっていた。
「先達のおかげで、対策は練ってきているのさ」
兵十は無造作に振り下ろされるチェーンソー剣を受けるのではなく、その軌道を素早く見切り、その場に残像が残る程の速さで少し身体をずらし避けたのだ。
「何ですと?」
晴明の驚愕と共に勢い余って振り下ろされた左手のチェーンソーは、兵十を捕らえず床を抉るにとどまった。
(「あのチェーンソー剣を受けるのが俺じゃなくて正解だったか」)
バリアリアクターに纏わせた影を雲丹の如く無数の棘に変化させ、迫る水晶屍人らを貫きながら、有斗は思う。
もし、有斗がバリアリアクターで強引にチェーンソー剣を受け、押し通ろうとしていたら。
もし、兵十が水晶屍人の群れを先程見せたような変わり身の速さで避けていこうとしていたのなら。
――今頃、2人とも晴明か水晶屍人に蹂躙されていたであろう。
グリモア猟兵から、そして先達から得られていた敵の情報を元に戦術を練り上げた結果、お互いが適切な相手に適切な初手を選択していた。
だからこそ双方とも初撃を受けて尚、無事に立っている。
――初撃を凌いだなら、後はお互いの仕事を果たすのみだ。
兵十はするりと刀1本分の間合いまで踏み込み、晴明の耳元で囁く。
「なぁお前さん、月夜の蟹って知ってるかい?」
「ハテ……何でございましょう」
その一方で兵十は晴明の見えぬ所で鈍刀・笑狐の黒紐を解き、その刃を引き抜いて赫い刃を晒し、へらりと笑いながら晴明の耳元で告げた。
「何にもない、空っぽな……」
――お前さんみたいなヤツの事だよ。
【三狐新陰流・常世還】で封を解かれた笑狐の刃が、至近距離から晴明の腹部を深々と斬り裂く。
「ぐ、ぐぅ……狐……が……!!」
晴明が大きく体制を崩したのを見て、有斗は右腕の影を手近な水晶屍人に絡めて飛び、さらに左腕の影を晴明の胴に絡めて瞬時に距離を詰める。
晴明の目前まで飛んだ有斗は、右手のバリアリアクターを晴明の胴に押し付け、冷ややかに告げた。
「お前は邪魔だ」
――骸の海に沈んでろ。
押し付けられたバリアリアクターの表面を覆う影が、有斗の意に従い無数の棘に変化。そのすべてが晴明を貫く。
「ぐ、あ、あ、が……」
無数の棘で貫かれてもなお、身を捩る晴明。だがその背後にいるのは、いつの間にか回り込んでいた抜身の笑狐を手にした兵十。
「往生際の悪い御仁だな。でもこれで……」
――骸の海に、還ってくれよ。
兵十がへら、と笑いながら至近距離から閃めかせる笑狐の一撃。
それは確実に背後から晴明の首を貫き、致命傷を与えていた。
「く、口惜しや……!! しかしまた、何れ私は……!」
断末魔の悲鳴と共に、地に伏した後晴明は消滅する。
消滅した後には……何も残らなかった。
かくして陰陽師『安倍晴明』は再び討ち取られる。
彼の残せし負の遺産はあれども、それも掃討される日は、遠くない。
成功
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