エンパイアウォー⑨~気分だけでも涼しさを
●水着でも水に入る予定はありません……
「暑さに強い人募集中でーす!」
グリモアベースを訪れた猟兵達に呼びかけるロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)は、どういうわけか水着姿だった。
「ここは快適ですが、これから皆さんに向かってもらう場所は凄く暑いところなので、気分だけでも涼しげな感じで向かってほしいんです! 頑張りました!」
と、ロザリアの弁。恥ずかしさ耐性もちゃんとある。技能の無駄遣いかもしれない。
「場所は山陽道になりますね。幕府軍が行軍を続けているところですが、その先には侵略渡来人・コルテスの手先となるオブリビオンが儀式を進めながら待ち構えているんです」
ちょっと最近頑張りすぎてオーバーヒートしちゃったかな、という導入だったが、説明は至極全うだった。
「儀式は山陽道周辺の気温を極限まで上昇させるもので、それにより幕府軍を熱波で茹で殺してしまう、というのが狙いのようですね。しかも、南米原産の風土病も蔓延させて、確実に全滅させようという用意周到ぶりです。許せませんね!」
当然、現実のものとなれば幕府軍に未来はない。
「皆さんには、儀式を行うオブリビオンを倒して、これを阻止してほしいんです。私がお連れする場所で儀式を行うオブリビオンは『異国の少女剣士』になりますね。高くジャンプしたり、瞬間移動したりと機動力が高い相手のようですので、翻弄されないように気を付けてください」
そして最後に、儀式に使われている『富士の噴火のエネルギーを蓄えた霊玉』を破壊して任務完了となる。霊玉自体は適当な高さから地面に落とすだけでも壊れる代物で、オブリビオンさえ倒してしまえば破壊は容易。そのため、まずはオブリビオンを倒すことに専念しておけばよい。
「魔空安土城までの道のりも、おそらく半分を過ぎているのではないかと思います。ですが、辿り着くまで気は抜けません。他の魔軍将の居場所も次々に判明して大変な時期になりますが、是非、力を貸してください! よろしくお願いします!」
沙雪海都
●このシナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
沙雪海都(さゆきかいと)です。
成功を貪欲に稼いでいくスタイル。
あと依頼TOPに水着イラストを使いたかっただけです。
●概要
『異国の少女剣士』との集団戦です。
場所は山陽道道中。障害物なし! 場所広い!
つまり地形をあーだこーだ考える必要はないってことです。
地形依存の技を使う場合はちょっと考えてください。
風土病は熱波がなくなると勝手に死滅するので本シナリオで対策の必要はありません。
●霊玉の破壊について
異国の少女剣士を全て倒しきったら(🔵が成功数に達したら)特にプレイングに明記されていなくとも破壊描写が入ります。地面に叩きつけるとか簡単なものです。
そのため、プレイング自体は異国の少女剣士を倒すことのみで問題ありません。
霊玉の破壊を優先する行動をとってしまうと、大量の異国の少女剣士に殺到され対処不能に陥るため失敗、もしくは不採用になりますのでご注意下さい。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『異国の少女剣士』
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POW : 跳躍飛翔
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
SPD : 縮地法
【瞬間移動】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【至近距離からの斬撃】で攻撃する。
WIZ : 憑呪宿奪
対象のユーベルコードに対し【その属性や特性を奪い取る斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:ちーと
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アーサー・ツヴァイク
※何でも歓迎、🔵過多なら不採用可
異国からホイホイやって来て、やる事が地元民皆殺しの儀式か…
許゛せ゛ん゛!゛
親分共々空の果てまでぶっ飛ばしてやるぜ!
ぴょんぴょん跳ねながら攻撃してくるようだが…【空中戦】がしたいのか? だったら付き合ってやるよ…マッハでな!
【フルスピード・スカイドライブ】を発動して、最高速度マッハ4の体当たりをぶちかます! 跳ね回っている少女剣士を片っ端から空の果てまで【吹き飛ばし】だ!
いつもならもう少し長く戦闘に付き合ってやるが…今日の俺は超短期決戦タイプな気分なんでね、女子だろうが容赦なくぶっ飛ばすぜ!
星にでもなって、汚れた魂を少しでも浄化してこいってんだ!
●超音速の戦士
悪の軍団の前に、勇敢な戦士が一人。アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)は怒りを燃やす。
「異国からホイホイやって来て、やる事が地元民皆殺しの儀式か……」
「侵略とはそういうものでしょう。何か問題でも?」
先頭に立つ異国の少女剣士は悪びれる様子もなく言い放ち、短剣を傾げた。片目を隠した容貌からは大した感情が読み取れない。
少女剣士達は侵略者としての矜持もなく、意志もなく。
生み出され、そう命令されたから実行する。その結果何万という人間の命が失われることは、頭の片隅にもありはしない。
彼女達は悪ですらない。世界の癌だ。
「……許゛せ゛ん゛!゛」
爆発した感情を無理矢理声にして押し出した。それでも発散しきれなかったものが体の熱を上げていく。
「親分共々空の果てまでぶっ飛ばしてやるぜ!」
アーサーは『ライドラン』に騎乗し、ずらりと並ぶ少女剣士達へとアクセル全開で突っ込んだ。目の前の敵全て、そしてコルテスをもそのまま吹っ飛ばすという気迫が風にビリビリ響いていた。
少女剣士はアーサーを片目で捉える。
「……暑苦しいですね」
わずかに体を沈み込ませ、そして跳躍。アーサーのバイクが跳んだ少女剣士達の真下に。突進が空を切る。
ブレーキをかけ、後輪をドリフトさせながら反転すると、少女剣士達はジャンプで空を駆け上がっていく。十分な高さを得たところでくるりと振り向き、短剣を携え降ってきた。
「空中戦か……だったら付き合ってやるよ……マッハでな!」
アクセルを一気に最大まで入れた。タイヤが空回りして白い煙を上げながら地面を噛み、弾丸のように走り出す。
ライドランの出力限界点まで、わずか二秒で到達し、
――【Select……FLYING ACTION!!】
車体から噴き出した蒸気が包み込み、ライドランはアーサーを乗せたまま空へ。
「行くぜ、ライドラン! 大空でも宇宙でも、どこまでも飛んで行くぜえええ!!」
地上の加速を遥かに超える超加速で前方、宙に見える少女剣士達の雨の中へと躊躇なく爆進した。音速を凌駕し、アーサーの周囲に衝撃波が生まれる。最高速度マッハ4。いかに空中戦に長けていようと、このスピードの物体を捉えることはできない。
ライドランが少女剣士に突き刺さり、計り知れない衝撃に少女剣士は声も上げることなく空の彼方へ消滅した。アーサーは速度を維持しながら巧みな操作で空中を行く少女剣士達を追い回した。
「は――」
一文字、声を漏らすのがやっとだった。
短剣を一ミリずらした時には体のど真ん中にピンポイントの爆撃を受けたような衝撃が走り、刹那、景色がバグのように引き延ばされ意識が果てのない闇に落ちた。
真正面から向かってこようと、少女剣士達は全く対処ができずにいた。
残像すら追えない。何かが一瞬動くたびに仲間が消える。
「何です……あれは……!?」
新たな少女剣士が跳び、アーサーの領域へ踏み込む――と同時に上方からライドランが衝突し、地面へ頭から墜落させた。ズドン、と隕石が落下したかのような衝撃が大地に走り、人型に近いクレーターが出来上がる。
「いつもならもう少し長く戦闘に付き合ってやるが……今日の俺は超短期決戦タイプな気分なんでね、女子だろうが容赦なくぶっ飛ばすぜ! 星にでもなって、汚れた魂を少しでも浄化してこいってんだ!」
存在の誇示。一度停止し咆哮したアーサーが、空に君臨し再びライドランで音速の壁を突き抜ける。
新たに生まれた数多の星は、織田軍を滅ぼす猟兵と、幕府軍の、未来の象徴だ。
大成功
🔵🔵🔵
ユエイン・リュンコイス
戦術上、炎熱を操るからね。熱気にはそれなりに耐性はあるけど…それでも、不快に思う程度は嫌な気温だね。
気休め程度だけど【火炎耐性】で体力の消耗を抑えつつ戦闘開始。
機人を前衛に【グラップル、カウンター、フェイント】で格闘戦を行いつつ、ボクは後方から『観月』による【スナイパー、援護射撃、先制攻撃】で攻撃の出掛りを潰していこう。
ただ、相手は機動力に優れるようだからね。死角から距離を詰められる危険もある。その際はUCを起動させ、相手の拘束を狙おう。無力化までとまでは言わずとも、動きが鈍れば十分。
向こうから来てくれたんだ、『焔刃煉獄』にてお相手しよう。
こちらの扱いにも慣れてきたんだ、遅れは取らないよ?
●刹那を捉えよ
「熱気にはそれなりに耐性はあるけど……それでも、不快に思う程度は嫌な気温だね」
ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)はふひゅうと息を細く吐き出し、手のひらを滑らせていく。しかし清涼感は捕まえられず、幻となって消えてしまった。
この世界の熱が、だんだんと体に染み入ってくるのを感じる。
「……行って」
『黒鉄機人』を前に出し、戦いの陣形を築く。絹糸に操られた機甲人形が単独で敵陣へ突き進む後ろで、ユエインは『多用途支援蒸気機甲具『観月』』の支援機構を起動させた。
少女剣士が飛び出す。くん、とわずかに体を前へ倒したかと思うと、機人の眼前へ出現し短剣で斬りつけにかかった。
「瞬間移動……っ!」
ピンと張った絹糸を細かく操作し、剣を左腕で受けさせ右拳をカウンターで叩きつける。顔面にモロに受けた少女剣士が吹き飛ばされ、手足を不自然に曲げて転がっていく。
じっくり構えてはいられない。瞬間移動直後の一瞬を狙うべくユエインは神経を研ぎ澄ませる。
まるで射撃ゲームだ。機人の周囲に現れる少女剣士をわずか0コンマ何秒かの間に撃ち抜く。
ゲームなら負けたところで失われるのはせいぜい多少の時間とコインだが、この場は違う。
何万という命が、手から零れ落ちていく。
「そこ!」
空中にひゅんと姿を現す少女剣士を捉え、腕が痙攣したかのように観月を操作し弾丸を放った。機人の肩越しに少女剣士の短剣が弾かれたところへ機人が腕を掴み、強引に地面へ叩きつける。
少女剣士が絶え間なく機人に襲い掛かる。それを機人のみで捌き続けては潰れてしまう。ユエインが先制で少女剣士の攻撃を狩り、それが間に合わなければ機人がフェイントをかけつついなし、反撃に回る。
機人は踊り狂うように腕を、脚を振り回す。引いた糸が目まぐるしく上下した。
「機械人形……後ろが本体、ということですか」
機人の攻撃に仲間が倒されていく中で、絡繰りに気づく者が出てきた。ユエインの姿を視界に捉え、瞬間移動で背後に回り刃を突き出した。
「……っ!」
気配だけを感じ取りユエインは咄嗟に横へ身を投げた。切っ先が一瞬前までユエインがいた空間を突く。受け身を取った先に今度は真上から刃が降ってきた。ユエインは『焔刃『煉獄』』でそれを受け、体を横に回転させながら押し返し逃れた。
気づけばそこにある刃を身のこなしで避ける。警戒はしていたが、それでも間一髪のタイミング。機動力と言うには反則気味な瞬間移動に舌を巻くも、反撃の手立ても考えている。
『世を憎まず、他者を恨まず。これは、ただ然るべき報いだけを願った者達の祈りだ』
少女剣士達に向き合い、世界に溜まった死者の痕跡を引き上げた。虐げられた者の想念の残滓、死したる者の武具の残骸、散っていった者の嘆きの残響。それらを今この時だけ現実と変え、少女剣士達に放つ。
悍ましい念に精神が蝕まれる。どこからともなく響く声が脳を狂わせる。少女剣士達は表情を歪ませながらもなお襲い掛かる。
動きのキレがいくらか欠けた。真一文字に振るわれた短剣に刀を交差させて止め、
「君達相手でも、ボクは後れを取るつもりはないよ……!」
ユエインの熱が刃に移る。立ち上がった焔が少女剣士の視界を赤く覆った。押し切る。剣ごと斬り伏せる。ユエインは踏み込みながら刀を振り抜いた。短剣を断ち、焔刃が少女剣士を裂いた。焔柱に呑まれ少女剣士は燃え尽きる。
機人が躍る。ユエインが躍る。いつしか互いの動きを合わせるように、波のように押し寄せる少女剣士達を倒し続けていた。
成功
🔵🔵🔴
レパル・リオン
とりあえず水着を着ていくわ。
暑い!めんどい!しつこい!
教えてよロザリアちゃん、あたし達は(オブリビオンを)あと何人倒せばいいの?
そんな事言ってても始まらないわよね、相手が瞬間移動するって言っても、あたし達猟兵はそれを知ってる!なら、恐るるに足らずってもんよ!
シュクチって、要はすごく速く走るんでしょ?なら、瞬間移動の前に構えや動きがあるはず!それを【見切る】!
そして、【カウンター】の【瞬打】を顔面にブチ込むっ!
●誰も知らないその終わり
「暑い!」
開口一番、レパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)は澄んだ空に叫んでいた。
暑さに対抗するためか、レパルはつい先月新調した水着を着ていた。なかなかに露出度が高く涼しそうにも見えたが、それだけで解決するほど儀式による熱波は優しくない。
声に気づいた少女剣士が瞬間移動するが、その初動を見切ったレパルは反射的に身構えた。現れたところからぶぅんと熱波を裂いて襲い掛かる刃に、レパルはしゃがんで回避する。頭上を銀色の閃きが通過したのを確認し、溜め込んだ力を一気に開放して跳んだ。
「やああっ!」
広げた掌にジャンプの勢いを乗せて少女剣士の顔面へ叩きつけた。焦点の合わない瞳、ぽっかり開いた口を晒し、少女剣士の体が頭に引っ張られて飛んでいく。
「瞬間移動するってことくらい、あたし達猟兵は知ってるの! だから、そんな攻撃は恐るるに足らずってもんよ!」
レパルは少女剣士達へ啖呵を切った。グリモア猟兵から得た情報を有効に使い、レパルは少女剣士に立ち向かう。
瞬間移動の初動は、その後の攻撃に繋ぐための初動だ。走り出す時の体重移動にも似ているが、攻撃を繰り出すための踏み込みのようにも見える。
レパルの戦いはタイミングとの勝負だった。瞬間移動後の斬撃のタイミングを計り、かわしてカウンターを見舞う。四方八方から雪崩れ込む刃に、レパルは飛び跳ね、走り、時に這うように避けた。
「めんどい! しつこい!」
愚痴をこぼしながら掌底。これでもう何人目だろう。顔を潰された少女剣士が向日葵の花びらのように辺りへ広がっていた。
集団の相手であるため休まらない戦いが続くのは致し方ない。しかし、どこかで新たに湧いているのではないかと思いたくなるほどに、レパルへと殺到していた。
「教えてー! あたし達はあと何人倒せばいいのー!?」
パン! とまた一つ少女剣士の顔を潰しながら、レパルは飾らない心情を空に吐き出していた。
成功
🔵🔵🔴
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【SPD】(連携・アドリブ可)
「さすがに水着でどうにかなるレベルの暑さではないわね」
■作戦
フォルセティの氷系のUCで少女剣士の動きを制限し各個撃破する
(相殺を意識して、WIZ系のUCは極力使用しない。)
■行動
「まずは動きを制限した方がよさそうね。」
弟にUCで氷の迷宮を創出するように促し、少女剣士達を閉じ込め待ち伏せする。
「ここだと得意のジャンプは使えないわよ」
剣士達が現れたら狭い通路を利用して、[高速詠唱]から【トールの雷鎚】で一網打尽
「こっちはビリビリするわよ!」
縮地法の斬撃は[高速詠唱&咄嗟の一撃]で【アイギスの盾】を放って回避
「危ない所だったわ」
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【SPD】(連携・アドリブ可)
「こんなに暑いと砂漠になっちゃうよ」
フィオ姉ちゃんと一緒に異国の少女剣士を撃退だね
【行動】()内は技能
「とりあえず、クールダウンしてもらうよ!」
(先制攻撃)でラビリント・ネプトゥノだよ。
氷壁の迷宮で戦場を覆って、少女剣士達を閉じ込めるんだ。
さらに迷宮の通路で待ち伏せすることで、剣士達の動きを制限だね
「暑さもやわらいで一石二鳥だね!」
迷宮を抜けようとする少女剣士達には(高速詠唱)でクラロ・デ・ルーナを放つんだ。
ジャンプできないから狙い撃ち(スナイパー)
縮地法には(ダッシュ)で後ろに跳んで、グアルディアン・サトゥルノで相殺だよ。
●絶対零度の熱波攻略
「さすがに水着でどうにかなるレベルの暑さではないわね」
「うん……こんなに暑いと砂漠になっちゃうよ」
熱波を肌で感じ、フィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)とフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)が感想を口にする。この暑さがさらに強烈に、そして長く続けば、いずれこの場所は死の大地となる。
止めなければならない。
「とりあえず、クールダウンしてもらうよ!」
フォルセティは熱波が襲う戦場へ冷気を呼び寄せる。
『凍結を抱きし冷雪の英霊よ。彼の者に封縛の柩を捧げよ』
フォルセティの足元に渦を作った風の中から極低温の霧が噴き出し、戦場全体に広がり覆っていく。一面真っ白な視界の中に絶対零度の氷壁で出来た迷路が現れ、全ての少女剣士をその中に閉じ込めた。
「まずは動きを制限……ここだと得意のジャンプは使えないわよ」
「暑さもやわらいで一石二鳥だね!」
上からの攻撃はこれで防げる。二人は通路の中で少女剣士を待ち伏せた。
少女剣士はぴたと迷路の壁に手を触れ、その性質を確かめる。天井もあり、壁も強固。確かにジャンプを使った動きは不可能そうだが。
氷の奥に二人の姿を見る。見えれば瞬間移動の射程だ。何重もの壁を無視して少女剣士達は二人が待つ通路の中へ飛び込み襲い掛かった。
「ジャンプを封じたから、何だと言うんです?」
少女剣士はフィオリナを睨み、正面から袈裟斬りを放つ。
「出てくる場所を制限しただけでも十分!」
狭い通路では瞬間移動先が限られ、死角を狙われる可能性が減る。一瞬で詰め寄られる移動能力は脅威だが、出てくる場所を特定できれば対処もできる。
「そんな攻撃当たらないわよ!」
短剣の前へ光り輝く魔法の盾を押し出すようにして飛ばし、攻撃を止めた。そこから流れるようにフィオリナは攻撃を繋ぐ。
「七界へ轟け、雷神の鎚よ!」
防御の暇を与えない高速詠唱で魔法の網を生み出し、通路内に出現した少女剣士達を次々に絡めとっていく。そこへ召喚した雷撃の鎚を両手でしっかりと握り、
「こっちはビリビリするわよ!」
大きく振りかぶって手近な少女剣士を殴りつけた。
「ぁぐぅっ!!」
ズドン、と超重量級の衝撃が少女剣士を通路の奥までピンボールの玉のように弾き出し、背後に控える他の少女剣士達も巻き込んでいく。接触の瞬間、鎚から流れ込んでいた電撃が伝播しダメージを与え、通路に溜まった少女剣士を一掃した。
フォルセティは瞬間移動し通路へ侵入する少女剣士達へ高エネルギー波を発射していた。
「ジャンプもできないし、逃げ場はないよね!」
通路を埋め尽くす閃光が走り、わずかに遅れて衝撃が駆け抜け少女剣士を襲う。短剣で受け止められるものではなく、光の中で少女剣士の体がじゅっ、と焼ける音を発して消滅していく。
「狭い場所ですが、やりようはありますよ」
不意に耳に触れた声。フィオリナのものではない。背筋がぞくりと震えた。
「わっ!」
瞬間移動した別の少女剣士が背後から剣を向けていた。細身の体格でありながら強引に叩きつける豪快な一撃。フォルセティは防御姿勢を取りつつ、後方に体を預け踵で跳んだ。
『暁闇を統べる星刻の大神。七界を照らすは虹鱗の彩光!』
少女剣士が振るう短剣に向けて両手を突き出し、詠唱した。掌の前に虹色の輝きが現れ、盾となって少女剣士の短剣を弾く。
「伏せて!」
鋭い声が飛んだ。聞き慣れた声だ。フォルセティは着地と同時に頭を抱えて伏せた。バチンと雷が弾け、背後から殴打された少女剣士が角度をつけて飛んでいく。しかし天井に阻まれ、同じ角度で通路に墜落しそのまま滑っていった。
「フィオ姉ちゃん! ありがとう!」
「瞬間移動も全て封じたわけじゃないわ! 気を付けて!」
「うん!」
再び前を見据え、二人は背中を合わせる。通路にはまだ溢れんばかりに少女剣士がやってくるが、一度に対処すべき数はそこまで多くはない。
フィオリナは何度も鎚で少女剣士を殴り飛ばした。右へ左へ、とにかく振り回す。
「何度来たって……同じよ!」
出現から撃破までの流れがパターン化されていった。勢い余って壁や床に鎚が突き刺さる振動だけが不規則に響く。
フォルセティもまた、同じようにひたすら魔法を撃ち込んだ。照準はそこまで合わせなくてもいい。そして、何かが起こっても、姉のフィオリナが助けてくれる。
余計なことは考えず、ただ魔力を高め、撃ち込むだけ。時に盾を張り、押し返す。
「はあああっ!!」
「やあああっ!!」
通路に二人の声が重なって響き渡った。フィオリナの鎚が一撃で地面へ打ち込み、少女剣士を頭から潰す。後ろではフォルセティが一際強いエネルギー波を発射し、通路の奥まで焼き尽くした。
通路の先に現れる少女剣士は、もう無い。
「今ので終わりのようね」
「そうみたいだねー……じゃあ、迷路を解除するね」
フォルセティが床に手をつき目を閉じると、氷の迷路は一瞬で霧へ変化し消滅した。熱波が戻り再び暑さが襲ってくる。敵を倒したとはいえ、迷路の中の涼しさをフォルセティは少し名残惜しく感じる。
しかしそれも、霊玉を破壊すれば終わるはずだ。
「……これかしら」
元に戻った戦場を歩き、フィオリナは地面に転がる水晶玉のような球体を見つけた。赤い輝きの中に、炎のような流体が渦巻いている。
見ているだけで暑苦しい。
「これがなくなれば、儀式も止まるんだよね?」
「そうね……こんなもの……っ!」
フィオリナは鎚を思い切り霊玉へ振り下ろした。ドン、と地面を走る衝撃の中で霊玉は手ごたえ無く粉砕された。
成功
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