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エンパイアウォー㉑~重ね海峡、関門三景

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #弥助アレキサンダー

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「皆、魔軍将が発見できた」
 集った猟兵たちへ告げられる、静かな報告。
「これ以上隠し玉が無ければこれで最後のはずなのだけれど」
 穏やかな声音は彼らへ過度の緊張を与えないためだろうか。徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)は尻尾を宙で気ままに揺蕩わせて。
 しかしながら、さらりと口にされた『隠し玉』という言葉を聞き逃さなかった猟兵が、疑問を口にする。
「ん? ああ、実はね」
 応じるとわが彼らに告げたのは、
「見つかった魔軍将はさ、二人なんだ」
 これまでにない、異例の事態についてだった。

「大帝剣『弥助アレキサンダー』、及び隠し将『豊臣秀吉』。この二人が今回キミたちに倒してもらいたい魔軍将さ」
 一所に見つかった二人の魔軍将。一方は『第六天魔軍将図』に記された名であったが、もう一方は……。
 しかし今は順を追う事を優先し、とわは仔細の説明を先送りして。
「陣取るは長門と豊前を隔てる海峡、関門海峡だ。壇ノ浦や巌流島と、この辺りは名立たる戦いに所縁があるねえ、本当に」
 その地勢的宿命から様々な戦いの舞台となった関門海峡。再び戦いの場となったのもまた宿命か。
「弥助アレキサンダーはこの海峡で発生した渦潮、そうだね、便宜上『関門海峡の大渦』とでも呼ぼうか、その大渦の中心で浮遊している。……いや、或いは浮遊している彼を中心とするように大渦が発生している、と言った方が正確なのかもしれない」
 渦潮の発生には潮流が密接に関わるが、この『関門海峡の大渦』それを無視して突如生まれたものなのだという。
「彼が持つめがりす、『闘神の独鈷杵』という道具の力のようでね。ここに構えているのもめがりすの力を高めるためらしい」
 渡来人の至宝、『メガリス』。アレキサンダーを相手取るならば、これの存在は間違いなく戦いに影響を与えるだろう。
「力の一端だけで潮流を捻じ曲げる程だからね、この上まだ力を引き出そうというのなら放置などできようはずもない。……しかしながら相手もそれを百も承知さ。故にこそ、豊臣秀吉もこの場に居るのだろう」
 これまで秘匿され続けてきた存在が姿を現す、その事実がこの戦いの重要性を物語っているようだった。

「それでこの、豊臣秀吉なのだけれど……何と形容したらいいか」
 サムライエンパイアは勿論UDCアースの出身者、またそれらの世界の歴史に興味のある者なら知らない者は居ないだろう名。戦国三英傑の一人、豊臣秀吉。
「『逆賊の十字架』というめがりすの力で異形化、更に素早さと反応速度の強化が施されているらしい。結果、アレキサンダーを守るように海峡の海上を跳ねまわっているよ。毬のようにさ」
 その姿はしかし、丸い胴に長い手足と尻尾を持つ、さながら毬の怪物。名前と姿の観念的不一致にとわは額を押さえ、一息つく。
「先んじて遠距離からアレキサンダーへ仕掛けようにも尽くが受け止められてしまう。だから秀吉の対処から」
 ……或いはこの一息は、続いて説明する状況に対して零れた溜息だったのかもしれない。
「……と言いたいのだけれど、あちらはそれに加えて水軍まで揃えてきているようでね」
 何故ならこの海峡には、
「めがりす、『大帝の剣』の力によって洗脳された長州藩の者たち、『毛利水軍』がキミたちを軍船で待ち受けている」
 更なる関門が存在するのだから。

「洗脳、と言ったようにね、彼らはオブリビオンじゃあない。紛うことなき人間さ。……だから、大変なのは承知で言う。出来る限り彼らを命を守る形でこれを突破してほしい」
 アレキサンダーの所有する三つのメガリス。その一つ、『大帝の剣』。所有者の敵を周囲の存在にも敵と認識させる至宝。その力は対象を選ばず、彼らはこの世界で生まれ活きる罪なき人々だった。
「手段はキミたちに委ねる。何らかの手段で彼らを無力化したり、徹底して突破だけを考えて戦いを避けたり。各々の得手を活かせばきっと策は立つはずさ」
 尻尾は揺れても、瞳は揺れず。とわは猟兵たちを真っ直ぐに見つめ、願いを託す。
「その後秀吉を倒し、最後にアレキサンダーを打倒する。いつも通りあちらからの先制攻撃には十分留意するとして、ここまで聞けば既に分かっているだろうが、今回は全て海上での戦いになるから、そのつもりでね」
 翼や翅のある者はそれを活かせるだろう。泳ぎが得手と言うならそれも手段だ。水軍から船を奪ったり、船の破片を利用したりも叶うだろう。水上で戦う事への備えをくれぐれも忘れないようにと、少女は猟兵たち念を押す。

「……ああ、海上といえばなのだけれど。アレキサンダーは大渦の中心で浮遊していると言ったろう? それはそう高い位置じゃあない。対空戦闘まで考える必要はなさそうだ」
 語り終えたかと思えば、思い出したように付け加えられる一つの戦場の情報。
「それに付随してだが。状況だけ見れば彼と渦とはとても近い位置にあると言える。……ともすれば彼との戦いで何か利用ができるかもしれない。現場判断に任せるが、頭の片隅くらいには残しておいてくれたまえ」
 それは猟兵たちにとって戦局を好転させる知識となり得るだろうか。
 グリモアでさえ見通せない未来だが、少女は微かでも彼らの力になるようにと祈り、
「……今回は戦うべき強敵が多く、考える事も多い。だがキミたちならきっとやってくれるととわは信じている。吉報を頼むよ」
 情報と知識を託し、転移の準備へ取り掛かるのだった。


芹沢
 隠し将の存在に仰天しました、芹沢です。
 ここにきての今までにない形式の強敵戦、エンパイアウォーは楽しいで溢れていますね。

●特記事項
 大帝剣『弥助アレキサンダー』および隠し将『豊臣秀吉』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

●各章について
 第一章:『毛利水軍』を突破せよ(冒険)
 第二章:隠し将『豊臣秀吉』との戦闘(ボス戦)
 第三章:大帝剣『弥助アレキサンダー』との戦闘(ボス戦)

 という流れで進行します。
 今回はボス戦での先制攻撃対策に加え、海上移動手段が必須になります。
 移動手段については第一章のプレイングに記載頂いたものを以降も継続するという形で、第二、第三章のプレイングでは省いて頂いても構いません。移動手段を変える、或いは移動手段を利用して何かをする、といった場合意外は文字数の温存にご活用ください。

●その他
 公開され次第第一章のプレイング募集中となります。
 また、プレイングを8月17日22時頃までに(勿論それ以降、システム上締め切られるまでは大丈夫ですが)送って頂けますとスケジュールの都合上大変ありがたいです。同じくスケジュールの都合で採用人数は4名前後になる見通しです。
 続く第二、第三章も芹沢からの特別なアナウンスがない限り、進行し次第プレイング募集中となります。
 募集期間内であれば先着順ではありませんが、送っていただいたプレイングを流してしまう可能性があります。何卒ご了承いただければ幸いです。

 以上、芹沢でした。
 皆様のらしさ溢れるプレイングをお待ちしております。
100




第1章 冒険 『毛利水軍を突破せよ』

POW   :    邪魔する船をひっくり返すなど、力任せに毛利水軍を突破します。

SPD   :    毛利水軍の間隙を縫うように移動し、戦う事無く突破します。

WIZ   :    毛利水軍の配置、天候、潮の流れ、指揮官の作戦などを読み取り、裏をかいて突破します。

👑3
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

祇条・結月
つくづく、飛ぶ能力って便利だよな……
少し無茶をしなきゃいけないか

最初は【水泳】と【忍び足】で接近して【投擲】【ロープワーク】で銀の糸を軍船に引っ掛けて取りつく
ここからは可能な限り、軍船を足場に跳んだり銀の糸を使って移動する

……当然見つかるよね
向かってくる兵士には応戦
傷つけないように反撃は控えて【敵を盾にする】ように移動して包囲されないように動いて
≪君の時間を≫で洗脳されてる兵を解呪していく
無傷でしのぎ続けられるとは思ってないけど【激痛耐性】で動きを鈍らせないまま、できるだけ多くの人を解呪しながら進む

……わかってる、甘いのは
まだ弥助や秀吉とやりあうんだもの
少しでも場を整えとく価値はあるでしょ


クロエ・ウィンタース
めがりすというものはよく判らんが…
効果を聞くに禄でもないし
オブリビオンが使うものであれば良いものでもないのだろう
全て砕いてしまおう

毛利水軍に関しては…了解した
幕府軍の妨げになるのなら最悪排した方が良いが幸いまだ猶予がある
幕府軍に到達する前にオブリビオンをふたつ斬ってしまえば良いだけだ
任せろ

【SPD】アレンジ、共闘歓迎
>行動
UC【天狗八艘】を使用
船の縁を蹴り隙間を縫うように船を伝い【ジャンプ】で跳んで行く
なるべく【目立たない】ようにし、【忍び足】【ダッシュ】を駆使して
穏当に通り過ぎていく

見つかって騒がれそうなら中空から【踏みつけ】るか
峰打ちで殴打して昏倒させる
バレたら速度優先で目的地に向かうぞ



 関門海峡。
 東の口から西の口まで、海峡として指定される区域は凡そ二十三.五キロ。UDCアースのこの地に架かる、或いは後世のこの世界にも架かるかもしれない関門橋、その長さ約一キロ。最大水深部でも四十七メートル程の、長くもあり短くもある海峡。
 今はその海面に数多の軍船が浮かび、
「(……めがりすというものはよく判らんが)」
 海面下を二人の猟兵が泳いでいた。
「(聞いた通り、碌でもない効果だな)」
 時折息継ぎに浮上するクロエ・ウィンタース(刃狼・f15418)の目に映るのは、鬼気迫る表情で本州方面を警戒する毛利水軍――『大帝の剣』によって洗脳された、長州藩の武士たち。
 彼女は空気を飲むようにたっぷりと肺に貯め、再び海中に潜り、そこから見える一つの船底を指さす。
 それに頷くのは祇条・結月(キーメイカー・f02067)。クロエと共に海峡を行くもう一人の猟兵。彼は示された船の船尾へ接近、そっと浮上し、先端にクナイの取り付けられた銀糸を鍵縄のように投げ、船上への道を作る。
 国内第三位の流速を誇るこの海峡は、足場にする船へと泳ぐ事とて生半なことではない。船に上がるためにも手間をかけねばならず、
「(つくづく飛ぶ能力って便利だよな……)」
 魔竜に跨って大空を飛ぶ藤色の髪を思い浮かべてしまうのは、致し方なしか。
 糸を登り静かに船上を確認すれば、船首で警戒を続ける武士の背中。結月はクロエに合図を送り、
「助かる」
 糸を手繰って彼女を引き上げる。
「どういたしまして」
 そっと表情を変え、そっと言葉を交わす二人。
 次なる行動も、そっと。
 クロエは船の縁に足を掛け、跳ぶ。
 その跳躍は音もなく……水飛沫一つ、水音さえ上がらない。
 彼女が行くのは空の道。空気を足場に音もなく翔ける天狗の歩法。
 漸くの船上で船の配置や乗組員を備に観察し、警戒する武士たちの視界を避けて次なる船へと乗り込む。その手には結月の苦無。船上に突き立てれば彼の為の道。括られた糸を引いて合図をすれば、船と船を繋ぐ糸を一つ跳ね、結月がクロエの後に追いつのだった。

 繰り返し、繰り返し、幾つの船を渡っただろうか。
「(そろそろ限界……)」
 進むにつれて気にしなければならない視線の数は増え、
「か」
 遂には宙を行くクロエの姿が捉えられてしまう。
 彼女は船に乗り込みがてらに大声を上げる武士の顔面を踏みつけ、蹴倒し、昏倒させると――、
「結月! ここからは急ぎだ!」
 最早隠すこともなく後続を呼び、船内からわらわらと姿を現す武士たちに太刀を構え、少年の着地点を確保するために振るう。
 洗脳されているとはいえ相手は一般人。恐怖心もないのだろう動きから繰り出される攻撃は鋭くはあるが、
「彼らの命を守る形で……だったな」
 刃の触れる刹那に柄を返して峰打ちする余裕さえあるクロエには到底届かない。
「おまたせ」
「ん」
 背後に着地する靴音。結月の礼に少女は小さく頷き、
「数だけは少し厄介だが、早々に次へ行くか」
 再び宙に躍り出る。
「それなんだけど――」
 しかし少年は彼女の後を追わず、クナイも、糸も続かず。
「すぐに追いつくから、クロエは先へ行っていて」
「どうした、何か問題か!」
 後にした船を見やれば武士たちの隙間を縫うように船上を駆ける結月の姿。
 しかし返ってくる言葉はなく、程なく静かになる船上。
「……甘いのは、わかってるんだけどさ」
 クロエの耳に届いたのは、クナイと糸とを用いて追いついた結月が零したそんな言葉。
 そして、
「…………いいじゃないか。そうしたかったんだろう?」
 二人が後にした船の上から届く困惑と狼狽の声。洗脳から解放され、我に返った者たちのざわめき。
 話している間にも襲い掛かって来る新たな武士の刀をクロエは太刀で受け、
「……うん」
 結月は刃を躱し、武士の懐に潜り込んで掌を胸元にそっと当てる。
 彼の掌から放たれるのは心を保護する力。外部からの影響を阻む、堅牢な錠。メガリスによる洗脳を断ち、彼らの正気を呼び覚ましていく。
「ただ、率が悪い」
 一人、二人、三人。徐々に増えていく正気の武士たち。だが対象となる者の多さだけかかる時間は増えてしまい、越えるべき船も未だ多い。
 結月の背後から響く剣戟も増えていく。……大きくなっていく。
 それは峰打ちの為でなく、刃を受ける為でもなく、
「一人ではな」
 クロエが自身の太刀捌きを武士たちの刀を弾き落とすためのものへと変化させたために起きた音。
「急ごう」
 彼女は結月の行動が可能な限り簡略に進められるようにと、次々と武士たちを無力化していった。
「…………うん!」
 感謝の言葉を今は飲み込んで、結月はクロエの後を駆け、洗脳を解いて回る。
 二人は与えられた猶予を存分に使い、着実に関門海峡を進んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
ったく、魔軍将2人に海上を突破しろってか?
畜生、これまでよりヘビーだな…だがやるしかねぇ
大丈夫だ、必ず勝って──帰ってくるさ

セット『Sanctuary』
海にこいつをぶち込むことで、俺の支配下とする
海上を進むのに十分な足場を【ハッキング】で作って進もう
邪魔する連中には遮蔽の作成、大砲を作って撃ち込む等で妨害する
船に乗り込んでやって暴れて、奪っちまってもいいな
そしたら他の連中だって乗れるだろうさ

あとは秀吉戦と弥助アレキサンダー戦に向けて、戦いやすい場所を作るだけだ
強敵二連戦だからな…用意は出来るだけしとくに越したことはない

このエンパイウォーは俺達が勝つ
メガリスだの隠し将だの関係ねぇ
──退けよ


非在・究子
こ、今度の、ステージは、ボス連戦、か。
た、ただでさえ、難儀だって、言うのに、な…….ぐひひっ。な、なかなか、楽しそうじゃ、ないか。
さ、最初は、操られた、NPCの水軍の、突破、か。
……え、NPCに、被害を、出すと、スコアが、下がるやつ、だろ?
め、面倒な、話だ。
せ、戦力も、温存したい、ところだし。
ゆ、UCで、得た、飛行能力で、ステージそのものを、スルーさせて、もらう、ぞ。
じ、時速260km、最大速度で、駆け抜ける、ぞ。
……な、なるべく、人気のない、とこに、転移して、もらっても、いいか? ……へ、変身、モーションとか、口上が、自動再生で、な……あ、あんまり、人には、見られたく、ないんだ。



「ったく、魔軍将2人に海上を突破しろってか?」
 その声は水面を滑り、飛沫を上げて。
「畜生、これまでよりヘビーだな……」
 その声音は言葉とは裏腹に、波浪に乗っては朗々と。
 ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は、
「だが、何の問題もねえ!」
 軍船犇めく関門海峡を滑走していた。
 彼が乗るのは海水のサーフボード。潮流を無視して起こる白波。
 Rewrite Code『Sanctuary』。敵を、環境さえも己が支配下に置くためのプログラム。ヴィクティムはその力を以って海水を自在に操り、波を切って海を行く。
 毛利水軍らの軍船から射掛けられる矢も自由気ままな動きを簡単には捉えられず、仮に運よく彼へ当たる軌道を描いても、
「ハッ! 那須与一でも連れて来るんだな!」
 真っ当な力で射られた矢はヴィクティムが海を操って巻き起こす水柱に飲み込まれて藻屑と消えていった。
「……しっかし、流体操作する演算は色々面倒くせえな」
 船体そのもので彼の進行を阻もうと動く船もあるが、ヴィクティムは水流を砲撃のように放って圧し返し、道を作る。
 エアーリバースで身を捻り矢を躱す僅かの間、ちらと視線を送るのは長門の岸部。
 転移してきてすぐに辿り着いた場所であり、
「あいつ、どこで油売ってんだ?」
 演算、そしてハッキングに関して当てにしていた一人の猟兵と別れた場所だった。

「み、見晴らし、良すぎだ、ろ……」
 非在・究子(非実在少女Q・f14901)は走っていた。
 右を見れば広い海原。左を見ればなだらかな浜。
「も、もっとビルとか、モールとか、建てるべき、だ」
 彼女が探しているのは遮蔽物。口を突いて出て来るのはFPSやTPSのマップで御用達な建造物であったが、それほど大きい必要はない。ただ少しの間、姿を隠せるだけの。第三者からの視線を阻めるだけの。
「……だ、だめ、か。詰んだ、か」
 しかしそのどれもこのエンパイアにはありはしないし、浜辺の植生では茂みさえ見当たらない。
「………………だ、誰も、居ないよ、な。見てない、よな」
 右を見て、左を見て。
 最も近い人の気配が海峡の水上、軍船に乗る数多の武士たち。その視線は今ヴィクティムへと向けられており、白砂の上の小柄な少女に気付いている者は居なかった。
「ひっ……ひひっ、かひ、ひっ」
 笑い声が掠れているのは、喉が渇いているせいだろうか。
 やけに汗ばむのは、日差しのせいだろうか。
 ……一つの決断を下そうとしているのは、下せてしまえそうなのは、夏のせいだろうか。
 少女は意を決し、ステータス画面から一つのアイテムを選ぶ。
「『ラジカル・エクステンション!』」
 それはアイテム選択に連動して鳴ったボイスではなく、究子の口から出た彼女の声であり言葉。変身の為の、口上。
 少女の纏う衣服が眩い光を放ち、浜を包む。
 それはたとえ視線があったとしても瞼を降ろさずにはいられない極光の防御壁。変身ヒーロー、ヒロインの素性を守る防衛機構/お約束。
「『魔砲の力でなんでも壊決! ラジカルQ子、ただ今、惨状!』」
 一瞬の閃光を抜け、魔砲少女が浜辺から飛び立つ――。

「お、ッら!」
 海が割れるように波が起き、軍船を掻き分けた。
 海を操るとはつまり、船を操るのと同義。大雑把且つ効率的な手段を模索し、最適化を果たしたヴィクティムは悠々と波間を行く。
「これでちっとは楽に進んで……ん?」
 そんな折、日光を照り返すだけだった海面が眩い光を映した。
 出所に思い当たりがあるのは一つ。少年が背後へ振り返れば、砂浜に小さな粒が一つ。
 粒は海を裂き、三秒もすれば人の姿であることがわかる程に近くまで飛んでくる。
「随分時間かかったじゃねえか」
「も、もともとアタシは、飛んで、スルーする予定、だった、し」
「へいへい。人が苦労したっつーのに」
 数分ぶりに再会したヴィクティムと究子は速力を適当に揃え、阻む者ない海上を行く。
「こ、こっちにも、事情が、ある。わ、詫び石は、ないけど
 からかうように軽口を叩く少年に少女は頬を膨らませ、彼に操られる海の操作権限に介入し、
「これで我慢、しろ」
 海上に水の路を引く。
 ……路と言うには些か曲がりくねった、アップダウンも存在するそれは、或いは一つのレースサーキット。究子は既プレイ済みのレースゲームから一つの――恐らくは彼女が理論値最速タイムを達成するまで昼夜問わず走り続けた、細部までもを容易く再現できるだろうコースを作り出す。
「ヒュウ、さっすが。こっからは楽していけそうだ」
 但しそのコースは半ばまで。この海峡にはまだ越えるべき関門が二つある。一つ所をぐるりと周回していては終れない。
 ヴィクティムは波に乗ってコースに乗って、究子は高度を上げて風を切って、豊臣秀吉の待つ海域へと前進するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『隠し将『豊臣秀吉』』

POW   :    墨俣一夜城
自身の身長の2倍の【墨俣城型ロボ】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    猿玉变化
自身の肉体を【バウンドモード】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    グレイズビーム
【腹部のスペードマーク】から【漆黒の光線】を放ち、【麻痺】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:フジキチ

👑4
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヴィクティム・ウィンターミュート
──あくまで立ちふさがるか、秀吉
退けよ、テメェの先にある道は…俺達の勝利の道だ
退かねえなら──押し通る

秀吉の攻撃はどれも分かりやすい
特に麻痺のビームは…腹部のスペードマークを注視してやりゃいい
【見切り】と【第六感】で先制攻撃を確認、光線の軌道を瞬時に確認
【ハッキング】で一時的に全サイバネをオーバーロード
知覚能力と反射神経を重点工場、【武器受け】と【早業】で瞬時にナイフを構え、ナイフで正確に受け止める

構成情報コピー、アップデート
弾速向上、麻痺効果時間増大
『Rise』セット──さぁお返しだ、テメェの光線の上位版を食らえ!
後は動けない間に、ナイフでざくり…だ

俺は勝つまで止まらない
もう一度言う──退け



 風を切り飛沫を上げ、降り注ぐ陽射しを縫って波に乗り。ヴィクティムは周囲の海そのものを制御化に置いてのサーフィンで『関門の大渦』を目指す。
 しかし彼の元に降り注ぐのは陽射しだけではない。日差しと共に降り来たる黒い球は、太陽から零れ落ちた黒点か。
「――フェンっ!」
 球――隠し将『豊臣秀吉』は海峡の荒波を着水の衝撃で起きた波紋によって押し退け、ヴィクティムのサーフライドにも力技でブレーキを掛ける。
 聞きしに及ぶ異形。怪物を豊臣秀吉と名付けただけなのではないかと疑りたくもなる、人ならざるモノの姿。黒い毛並みを濡らすことなく水上で小刻みに跳ねるそれを見てしかし、
「あくまで立ち塞がるか、秀吉」
 ヴィクティムの心は緩まず、弛まず。
「退けよ、テメェの先にある道は……俺達の勝利の道だ」
「フェン、フェンフェン」
 柔らかそうな身体から発せられる、刺すような殺気。もとより戦いを避けられるなどと微塵も思ってはいない少年であったが、
「退かねえなら──押し通る」
 獣の四肢が水面を固く掴む様を見れば、この敵が梃子でも動きそうにない事を察せざるを得ない。
「フェン……!!」
「っ!!」
 ナイフを引き抜き、波に乗って接近を試みるヴィクティムに見舞われたのは、秀吉の身体を包む毛並より尚黒い漆黒の光条。
 しかし少年の洞察力は――網膜による情報解析能力はその機先を確かに捉える。水面を掴む動作さえ、遠距離攻撃の為に踏ん張りを効かせる為のものだと推測を立てさせていた。
 直進する光ならば阻めばいい。少年は瞬時に決断し、光条の軌道を予測。UDC由来の反射神経ブースターを作動させ、一切の無駄のない動きで磨き抜かれたナイフを光と身体との間に割り込ませる。
 それは上がった波飛沫が水面へ還るまでの、ほんの一瞬の出来事。
 ……しかしヴィクティムの一瞬は、終わらない。
「(そういう、性質か)」
 防御姿勢を取った一瞬が引き伸ばされたように彼の身体は動かず、海峡の波に揺れる。
 麻痺。それこそが秀吉の放った光の持つ力。ナイフを介して伝播したその力が彼の動きを止め、
「フェンッ!」
 弾丸のような秀吉の体当たりを対処不能のものへ変えてしまう。
「やってくれるじゃ……っ、ねぇか……!」
 衝撃のままに吹き飛ばされ、水面を切って滑るヴィクティム。或いは彼が光を躱す選択を取っていれば、事態はまた違った局面を見せたかもしれない。
 ……だが同時に、
「構成情報コピー……アップデート。弾速向上、収束率増加、効果時間増大」
 防御を選択したことによって、反撃が叶う。
 麻痺の解けた身体で翳すは人の身ならざる機械の黒腕。銃口のように伸ばした指から放たれるは細き黒光。
「こいつは……返すぜ……!」
 より先鋭化させた敵の力で以って、少年は獣を停滞の檻に閉じ込める――。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

非在・究子
と、豊臣秀吉、って、言えば、サルだけど……め、めがりす、とやらで、変身した姿、か? な、なんとも、けったいな、やつだ。

せ、先制で、バウンドモードに、なられる……任意の、速度で戻る、
弾力性って、めちゃくちゃ、早く、跳ね回れるし、防御力も、ましましって、ことだよ、な。
……は、【ハッキング】で、自分の、反応速度の、パラメータを、最大限にブースト、して、何とか、初撃を、かわす、ぞ。
そ、そのままUCを、起動する。TASさんの、力を借りて、す、スピードの向こう側……物理限界を、チートで超えた、速さで、勝負、だ。
《ゲームウエポン》を、チェーンソー、に、切り替えて、弾力を無視して、引きちぎって、やる。



 ころりころり、毛玉が波間を転がる。
 思い出したかのように――硬直が解け――四肢と尾が伸びれば、それは異質な獣の姿。
「と、豊臣秀吉、って、言えば、サルだけど……な、なんとも、けったいな、やつだ」
 水上を飛ぶ究子にはその姿が猿に見えた。豊臣秀吉と聞いてそれを想起するのは勿論の事、『逆賊の十字架』によって異形化した手足や体毛、それがとる姿勢や細かな動きにさえ猿らしさを感じてしまう。
「フェン……フェン…………フェンっ!」
 ……だからと言って、秀吉は猿の能力で猿のように戦うわけもない。
 水を蹴ってひと跳ね。宙で身体を丸めて落下すれば揺らぐ波間の傾斜で不規則に弾み、水面に触れる度に加速して縦横無尽に黒い軌跡を描いていく。
「ひ、ひひっ、どういう動きだ、それ。ゲーム、じゃ、処理落ち、必至だ、ろ」
 凡そ現実離れした秀吉の動き。可能にするのは伸縮性と弾力性。その身体はあらゆる衝撃を逃がさず受け入れ、貯め込み、微細な身体の動きで速力へと変じさせていた。
 不規則且つ高速の動きに翻弄/処理落ちさせられないため、
「Agi」
 究子は自身のステータスを弄る、
「Per」
 弄る、
「DV」
 弄る。
「よ、よっしゃ、こ――」
 凡そ回避に纏わるステータスを上限近くまで引き上げるがしかし、秀吉の動きは尚速い。弾丸の如き黒が少女の腕を掠め、小さく裂いた肌から赤い尾が引かれる。
「(ま、まだ足りない、のか。く、クソゲーの、におい……)」
 現実の頸木に繋がれたままでは、今はよくともいずれ加速していく攻撃の前に限界を迎えるだろう。
「げ、限界……」
 それは技量と技量ではなく、数値と数値の鬩ぎ合い。……シンプル且つ、究子にとって慣れ親しみ過ぎた土俵。勝つには数値で上回る他ないと、ゲーマーの本能が結論付けるのに瞬く間も必要なかった。
「越えてやる、よ」
 究子の動きが変わる。
 それは人の身では成し得ない、究極にして幻想。コンマ数秒のズレなく取られる挙動は避けるべくして黒を避ける。……否、その瞬間その挙動をすることで回避が確定するからこそその挙動を選び取り、身体に動作させる。
 『Tool Assisted Speedrunner』、理論の極点を目指す機構。
「回避、します。空振り、させます」
 異形の姿を見るまでもなく、黒い身体を弾ませる水音を聞くまでもなく、僅かに身体を動かせばその横を秀吉が通り過ぎていく上、最適化された動作で加速し、悠々と追い縋って隣り合ってさえ見せた。
「ふ、ふししっ、防御は、させません、って、な」
 唸りを上げるチェーンソーを黒に這わせれば細かな歯が柔らかな毛と皮を噛む。そのままゴムを引き千切るように秀吉の身体を裂き、海上に獣の――と呼ぶには些かファンシーな悲鳴をグロテスクに響き渡らせるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロエ・ウィンタース
信長がそうしたのか本人が望んでその異形になり果てたのか
…詮無き事か。いずれにせよ弥助共々斬り捨てるだけだ

【SPD】共闘、アレンジ歓迎
>行動
飛び来る猿玉は妖気で感覚強化した【視力】で見極め【見切り】で避ける
返す刀で一撃入れるが手応えに眉をひそめ
「…なるほど。そういう力か。衝撃を上手く逃がしている」

ち、と舌打ち。
要は衝撃を逃がさなければ良いわけだ

帆柱を背に【フェイント】で攻撃を誘う
【見切り】で回避した後
上空から甲板に、
横合いから船壁に、
背面から帆柱に、
狙い易い場所へ【カウンター】でUC【奈落】(自傷、味方へ攻撃無し)を【2回攻撃】。
妖気の負荷に歯軋りしつつ多くの斬撃で壁に床に秀吉を縫い止め切り裂く


祇条・結月
見た目はファンシーだけどだいぶ厄介だよね
豊臣秀吉、か……ここまでして尽くす、信長って存在がどれだけの者かは知らないけど
負けて帰るつもりは、ないんだ

初手で弾性を得るっていうんじゃ苦無じゃどうにもならないよね
だったら防げない攻撃で仕掛けるしかない、か
銀の鍵の力で加速して、光の刃で削っていく
【スナイパー】で観察して、【第六感】を信じて敵の軌道を少しでも予想して少しでも機会を捉えて無駄にしないように

……最悪、ある程度軌道が読めてとらえきれないなら、思い切ってこっちから敵の軌道に体ごと割り込む
衝突狙い
当たる【覚悟】と【激痛耐性】で堪えて、至近距離から光で削る
捕まえれそうなら【ロープワーク】も忘れずに



 数隻の軍船が海峡を行く。
 舵を取る者が居なければ船を漕ぐものも居ない船、また船。しかしてその進路は一様に、一隻たりとも逸れることなく前進している。
 それは『関門海峡の大渦』の影響か、
「見た目はファンシーだけど大分厄介そうだよね」
「信長がそう命じたのか、本人が望んで異形になり果てたのか」
 或いは戦いの場に吸い寄せられてか。
 遭遇した毛利水軍の洗脳を解いて回った結月とクロエは水上の足として彼らから軍船を託され、今は無数の無人船の一つに乗り合わせていた。
「ここまでして尽くす……信長っていうのは彼にとって、どれだけの存在なんだろう」
 波に揺られ臨むは黒球、異形の豊臣秀吉。黒い毛並みを漆黒の血潮に染め、傷ついた身体で立ち塞がる怪物。
「まあ、今となっては詮無き事。弥助共々斬り捨てるだけだ」
「……うん。負けて帰るつもりは、ないものね」
 ベルトに携えた苦無を構え、黒い鞘から太刀を抜き放ち臨戦態勢を整える結月とクロエへ――、
「フェンっ!」
 二人が乗る軍船へ、己が身を弾丸とした秀吉が飛び込む。
「っ……船が!」
 自在の伸縮と弾力を活かした高速突撃。その柔軟性故に威力を犠牲にしているかに思えるが、秀吉は衝突の瞬間にその身の弾力を変える事で速く、そして重い一撃を実現させていた。
 力任せに船首を砕かれる軍船。結月は隣の船に飛び移り、
「そこだ」
 クロエは尚も船体に暴力を振り撒く秀吉をギリギリまで引き付け、身を捩って躱しながら太刀を振るう。
 ……しかし。
「――……なるほど。そういう力か」
 彼女の太刀は擦れ違う刹那に確かに秀吉を届くが、手にはゴムの塊を叩いたように鈍い感触が残るばかり。
「衝撃が逃がされている……面倒だな」
 怪訝そうに眉を顰めたのも束の間の事、攻撃手段と合わせて秀吉の身体が持つ性質を見抜き、
「沈む前にこっちへ!」
 結月の声の方へと少女は跳ぶ。
 その背には帆柱が海面を叩く水音。悲鳴にも似た軋みと共に沈む軍船。託された船を沈められたことにか、一閃を御されたことへの苛立たしさにか、クロエは小さく舌を打って秀吉の動向を注視する。
「あの様子だと苦無じゃどうにもならない、か」
「何とか動きを止めたいところだが……」
 戦場での刹那の攻防を観察していた結月にも秀吉の持つ能力は予測の立つところ。太刀と同じ道筋を辿るばかりと苦無を仕舞い、
「触れられるなら、何とかできるかもしれない」
 代わりに握るのは、首から下げた一つの鍵。
「本当か? ……だが無茶はするなよ」
「……言ったよね、負けて帰るつもりはないって。その為に必要なことを、するだけだよ」
「…………くるぞ」
 僅かの間視線を合わせ、それを切る事で了承としたのだろう、クロエは結月に用意を促す。
 秀吉の行動は明快だった。目立った追撃が無い事から自由に水上を移動する手段が二人に無いと判断した彼は二人の乗る船諸共に――つまりは先だってと同じように、強引な突撃を選ぶ。
「怖い物なし、って感じか。でもね――」
 しかしそれは、結月には好都合なこと。同じ攻撃が繰り返されるというのならその工程は、軌道は、読みやすい。
 少年は自ら秀吉の進む軌道に身を晒し、衝撃を甘んじて受け入れる。
 結月にとってその突撃は、避けてはならない攻撃。
「防げない攻撃っていうのも、あるんだよ」
 肉を切らせて骨を断つ。鈍く激しい痛みと引き換えに彼が得たのは、秀吉との密着状態。正面から突撃を受けることで彼と同方向に飛ぶ事となり、
「フェ、フェンっ!?」
 反撃は必中に変ずる。
 それは黒を飲む光。触れたものを彼方の時空へと削る呪わしき力。結月は至近から淡く輝く刃を放ち、秀吉の身体を抉りさる。
「これで――……!?」
 しかし、二激目を放とうとする少年の背中に、重い衝撃。軍船に聳え立つ帆柱が彼らの行く手を、結月の追撃を阻む。
「ぐッ……」
 それでも尚結月は手を伸ばすが、有り余る弾力で弾む秀吉の身体に届かない。
 少年の表情に影が降りる。
「――十二分だ」
 声は頭上から。
 帆柱を蹴って跳んだクロエの影が結月を追い越し、黒球と重なる。
「直上、取ったぞ」
 重力に従い落下する身体で放つのは、鋭い斬撃。秀吉の身体の前にそれは無力化され、弾むことで再び距離を取られてしまう――、
「もう逃がさん」
 筈だった。
 真上からの攻撃故に、真下に広がる甲板が秀吉の逃走ルートを阻む。弾んで戻れば、再びの刃。微細な角度のズレを太刀捌きで補正し、壁打ちの如く黒球を往復させるクロエ。
 少女の身体が下降すれば往復距離は狭まっていき、
「フェンフェンっ!!」
 九度の斬撃の果て、遂には秀吉の身体が前にも後ろにも進めなくなる。
「結月!」
 渾身の突き。再びの九度。太刀を振るう度に妖気が身体を苛むが、この機を逃すわけにはいかないと吠え、力任せに捻じ伏せる。
 体重を乗せでもやはり刃を通すことはできないが、伸縮する秀吉の上から甲板を貫き、亀裂を走らせ、隙間に捩じ込むことで異形の身体を船に縫い止めていった。
「わかって、る……無茶の……し所、だよね……っ!」
 身体の内で響き続ける痛みを堪え、結月が光の刃を放つ。
「行先は、海の底だ……!」
「フェン、フェ……――」
 閃光の後、沈みゆく船の上に黒はなく、一体のオブリビオンが骸の海へ還ったことを示していた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『大帝剣『弥助アレキサンダー』』

POW   :    大帝の剣
単純で重い【両手剣型メガリス『大帝の剣』】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    逆賊の十字架
自身の身体部位ひとつを【触れた者の闘志を奪う超巨大肉塊『視肉』】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ   :    闘神の独鈷杵
自身からレベルm半径内の無機物を【無尽蔵に破壊の雷槌を放つ『闘神の渦潮』】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:みやこなぎ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

祇条・結月
けほっ、と一度咳き込んで
結構、きつい
でもまだやることも、できることも残ってる

弥助の攻撃は最初からもらう【覚悟】
闘争心は……うん、大丈夫。1番、僕を支えてるのは罪悪感だから
一撃貰って弾かれた勢いのまま海へ落ちて溺れないよう【水泳】と【激痛耐性】から
……≪鍵ノ悪魔≫を降ろす
【目立たない】【忍び足】で気配を絶って近づいて
隙をついて仕掛ける
浮遊してるってことは渦に落ちるのは不都合なはず
足を引きずりこむなりロープワークなりで渦の中へ落とすつもりで
絶対、離さない……!


……最初に思い浮かべたせいかな
きつい
声が聞きたい
顔が見たいって、一瞬想って
そぐ振り払う
……そんな風に頼っていいのは、僕じゃないんだから


非在・究子
せ、先制攻撃への、対策、だけど、な。と、闘神の、独鈷杵と、やらに、全身全霊の、【ハッキング】を、仕掛ける。せ、制御を、奪うとかは、考えない。た、溜め込んだ、力を、全力で、暴走、させて、やる。さ、すがに、それだけ溜め込んだ、力が、暴走、したら、お前も、困るだ、ろ?
……そ、その上で、魔砲少女モードの、飛行能力を、駆使して、空から、逆落としを、仕掛ける。ね、狙いは、ぼ、暴走する、闘神の渦潮、に、叩き落として、やる事だ。魔砲を、連射しつつ、突撃して、最後は、斥力障壁を、利用した、体当たりに、アイテムの、ボムを、重ねて、駄目押し、だ。
じ、自分で、用意した、力に、呑まれて、消え失せろ。


クロエ・ウィンタース
忠義や大義を口にしても
民を、人を無差別に害するものに与するモノである事には変わりはない
斬るには十分だ
秀吉であったものは斬った。貴様も此処で果てろ。オブリビオン

【SPD】アレンジ、共闘歓迎
>行動
妖刀「黒」を解放し黒雷めいた妖気を迸らせ一気に接敵
視肉は【野生の勘】【見切り】【早業】で咄嗟にUC【妖剣解放】を使い
【カウンター】気味に妖気の衝撃波で視肉を弾き飛ばす
…秀吉が異形になり果てたメガリスとやらか
以降視肉は可能な限り妖気の衝撃波で弾き、両手剣は刀で弾き逸らす
隙が出来たら【フェイント】を織り交ぜ妖刀で【2回攻撃】

メガリスは全て砕く
骸の海に還りいずれまた出るやもしれんが
今は水軍の洗脳が解ければ良い


ヴィクティム・ウィンターミュート
テメェの忠義と、俺の勝利への意志
どっちが上か…ここで決めようぜ

触れた者の闘志を奪うか…下手な接近戦はできないか…?
──いや
アイツの業なら、あるいは

逆賊の十字架による変異を確認後、霊符を握りしめる
【オーラ防御】と【破魔】による、霊的な防護を得ることで闘志を奪わせない
そのまま近接戦闘に持ち込み、打ち合う

頃合いを見て霊符をナイフに巻き付け、破魔の力を纏わせる
奴に攻撃に合わせて【カウンター】
【激痛耐性】で耐え、【捨て身の一撃】で──
胸の十字架ごと、テメェを刺し貫く!


驚いたか?安倍晴明なんか足元にも及ばない、サムライエンパイア最高の陰陽師──徒梅木・とわの業さ
たかがメガリスなんかに、負けるわけねーんだよ



 陸と陸を繋ぐ橋も、巨大な遊覧船も、この世界にはありはしない。
 関門海峡。
 視界阻むものなき海。
「――後のことは任せてくれよ、秀吉殿」
 その男は事の一部始終を目にしていた。
「あんたの覚悟はしかと刻ませてもらった……!」
 幕府軍の行軍を阻むでもなく、権謀を巡らすでもなく、彼はこの地でメガリスの力を高める事に終始し続けた。
 存在を隠匿し続けてきた将の一人、それを守りに置く周到さ。
 突き動かすは忠。万難を全力で捻じ伏せるという覚悟。
 果たされる時は、目と鼻の先。
 ……しかしこの海には、その意志を阻む者が居る。
「忠義や大義を口にしても民を、人を無差別に害するものに与するモノである事には変わりはない」
 言葉は刃、視線は太刀筋。海さえ断とうかという気迫を以って、クロエの海色の瞳が真っ直ぐに弥助アレキサンダーを捉える。
「何とでも言え。全ては信長様の為にだ。秀吉殿も――」
「御託はいい。テメェらの忠義と、俺たちの勝利への意志、どっちが上か……ここで決めようぜ」
 水気を多分にはらんだ海風の中でしかし、男は乾いていた。勝利への渇望を隠しもせず、ヴィクティムはギラついた瞳でナイフを握り締める。
「やらなくちゃならない事があるのは、こっちも同じなんだ。立ちはだかるなら……っ、越えていくよ」
「……そ、そういう、ことだ。る、ルート分岐も、しなさそうだし、お前もさくさく倒して、次に行く、ぞ」
 未だ鈍く、じわりと残る痛みを抑え込みむ結月。小さく咳き込む少年の姿をパーティメンバーの体力ゲージでも確認するように一瞥し、究子の視線も弥助へと向いた。
「秀吉は斬った。貴様も此処で果てろ……オブリビオン!」
 晴天に黒雷が迸る。
 妖刀を抜き放ったクロエが波間を跳ね、ナイフは海上を走り、クナイが宙を翔ける。
「万に一つも負ける気はねぇ! 来いッ!!」
 丸太のような弥助の腕がどくりと脈を打った――。

「お、おいおい、おい、いきなり、半壊かっ」
「……秀吉が異形になり果てたメガリスとやらか」
 三種の刃が弥助に届くことはなかった。
 ……厳密に言えば、触れる事は叶ったと言えるだろう。
 阻んだのは弥助の巨腕。今や腕と言うには余りにも膨大な質量を持つ、壁の如き肉塊。メガリス、『逆賊の十字架』によって変異した腕が海上を、猟兵諸共水平に薙ぎ払ったのだ。
 一閃とそれに伴う衝撃波で薙ぎ払いを弾いたクロエは尚も巨腕と相対し、究子も魔砲による砲撃の雨を宙から降り注がせる。
 衝撃の瞬間に霊符――防護結界を発生させる札を握り締め、起動させたヴィクティムは水上を駆けて間合いを見計らうが、
「おい結月っ! あいつ何処に飛ばされた!?」
 巡らせた視界の中に結月の姿が見当たらない。
「た、多分、海。お、落ちたっぽ――」
 最も広い視界を持つ究子の視界でも見つける事が出来ず、少年を乗せていた、今は大小様々な破片と化した軍船を見て判断する。
「いっ!?」
 クロエの纏う雷とは相反する白い光。青海に霹靂が響く。
「余所見などッ! してェッ! 俺に勝てると思うなァァァッ!!」
 それは空へと駆け昇る稲妻。晴天を砕く雷の槌。弥助の足元で渦を巻く海、そこから究子目掛けて雷撃が放たれたのだ。
「ぶ、物理法則も、あったもんじゃ、ないな……! ど、どんなエンジンだ、メガリス、ってやつは……!」
 寸での所で躱すものの、しかし弥助がその手に持つ『闘神の独鈷杵』を握り締めて念じれば、海上には見る間に小規模な渦が数多生まれ、破壊の光を明滅させていく。
「力を蓄えていただけのことは、ぐっ……あるな……!」
 宙を跳ね、滴を蹴り、木片の上を走り。思索を切り捨て、感覚を頼りにクロエが駆ける。目につく渦を片端から斬り裂いて回る。……しかし瞬くうちに海水は渦の形へと戻り次なる光を灯し、少女の身体を射貫くのだった。
「究子! これどうにか出来ねぇか! クッソ、これじゃ結月の奴を助けにも……!」
「か、回避で、手一杯、だ! それでも……っ、ちょい、運ゲー……!」
「その程度で俺に、信長様に勝つつもりか! 聞いて! 呆れるッ!」
 縦に雷、横に肉塊。メガリスの力を惜しみなく振るい、弥助は猟兵たちを攻め立てる――。

「(……痛い)」
 その腕は水を掻かない。
「(……苦しい)」
 そこは人の身に呼吸を許さない。
「(だめ、か……)」
 ぼやけた視界で見上げる先には、明滅する幾つもの光。
 肉塊に弾き飛ばされ海へ投げ出された結月は手招かれるままに海底へと向かっていた。
「(顔が見たい……声だけでも……)」
 一瞬、藤色に染まる視界。
 しかし少年はかぶりを振り、
「(そんな風に頼るのは、だめだ)」
 残り少ない肺の中の空気と共に想いを払う。
「(僕の力で、出来る事を、やるんだ)」
 自分自身に、鍵を掛ける――。

「っ!?」
 それは弥助の――彼ならず、海上で奮戦する者たち全員の意識の外から。
「勝手に……呆れないで、もらえるかな……」
 大渦の中心から伸びた腕が弥助の足を掴み、もう一方の腕がクナイを突き立て、獰猛に渦巻く海に血の滴を吸わせる。
「無事だったか、結月! しかしいい加減無茶が過ぎるぞ!」
 纏う妖気の影響で染まった己が髪色と同じ黒の髪を――結月の姿を見つけ、クロエは安堵とも危惧ともつかない声を上げた。
「まだ息があったとはなぁ! だがその程度ッ!」
 弥助の首に下げられた十字架が禍々しい光を放てば、瞬く間に彼の足が異形化し、のたうち暴れまわる。
「離すつもりはない……! お前も、勝ちも……っ!」
 自身に掛けた鍵――悪魔の力によってその身体は海面や渦潮を透過し、少年は掴まる事にのみ注力することで弥助の足を離さない。出鱈目に揺れる視界の中で銀糸を絡ませ、クナイと自身の手指を縛りつける。
「(こいつ……! 効いていないのか!?)」
 逆賊の十字架、それによって変異した肉体。それは大質量による力任せの攻撃のみならず、『触れた者の闘志を奪う』という特性を有していた。
 結月はそれと接触し続けながらしかし、瞳に闘志を宿し続ける。勝利のためにと、猛烈に勢いを増す雷へ抗い続けている。
 戦場で彼を支える物。それは罪悪感。……或いは何かを為せているだろうかという不安感と、何かを為さねばならないという脅迫感か。彼を縛る錠のようなそれが、今は少年を戦場に留めていた。
「――そ、その程度、じゃあ、ない」
 弥助の意識が足元に向いた、十秒にも満たない時間。それが空からの声に寸断される。
「あ、値千金、だ」
「お前……何をした!?」
 束ねた光は幹か、蛇行する軌跡は枝葉か。大樹の如く天を突く雷たちは、ただ漫然と渦から吐き出されているかのように滅茶苦茶に放たれていた。
「た、貯めに貯めた、力、制御も楽じゃ、ないだろ」
 ――楽させて、やる。
 にたりと、究子が悪魔のように口端を上げる。
 彼女は弥助の意識が結月へと向いた一瞬の内に『闘神の独鈷杵』へのハッキングを敢行、弥助がこの地にて高め続けた力を暴走させることに全てを費やし、それを成功させたのだ。
 堰を切ったように漏出していく力/雷。放置すれば、例えこの戦いに勝ったとしてもこれまでとこれからが水泡に帰すことは明白。
「小癪な真似を……!」
 故に弥助はこれ以上の損失を防ぐために、雷による――『闘神の独鈷杵』による攻撃を止めざるを得ない。
 腕を肉塊へと変じ、一矢報いるべくと飛行する究子へ向けて伸ばすが、
「させるか」
「んな見え透いた攻撃、通らねぇよ」
 クロエが放つ衝撃波とヴィクティムの蹴撃がその軌道を逸らす。
「どうしてお前にも効かない!? この至宝、俺がその扱いを――」
「へっ、やっぱり何か小細工があるのか。……だがなぁ」
 本来起きるはずの、闘争心の減退。しかしそれが二度までも不発に終われば、最後の魔将軍にも動揺の色。
「アイツの業が……安倍晴明なんざ足元にも及ばない、俺の知る限り最高の陰陽師の業が……」
 ヴィクティムが起動した結界は物理的な攻撃のみならず霊的、魔導的攻撃まで、遍く脅威から使用者を防護する破邪結界。
「たかがメガリスなんかに負けるわけねぇんだよッ!」
 纏うままに肉塊の上を駆け弥助の喉元に迫る。
 雷を封じられ、肉塊を現在進行形で破られ、弥助に残された手は、携えた大剣――最後のメガリス、『大帝の剣』による一撃。
 ……しかし接近することで肉塊のリーチを封じれば、そこに辿り着くことは、
「そうするしか、ねぇよなァ?」
 必然。
 それは整えられた舞台上を脚本通りに踊らされた一撃に過ぎない。
 ヴィクティムは肉塊上でスライディングして迫る刃を潜り、擦れ違いざまにその柄を握る掌にナイフを――霊符を巻きつけたナイフを突き立てる。
「こいつは勝利を望む者からの一撃だ、遠慮なく取っとけ」
 発動する、邪を破る力。ナイフを起点に展開した結界は弥助の傷を内側から広げ、裂き、風穴を穿った。
「結月! 括れ! そいつに!」
「…………わかった!」
 吹き飛ばされた手から零れ落ちる大剣。飛ばされる端的な支持。結月はすぐさま意図を察し、弥助の足に食いこませたクナイから伸びる銀糸、その続く先を海へと落ち行く剣に繋ぐのだった。
 浮遊することで影響を受ける事のなかった、大渦の力。周囲を飲み込む貪欲な咢。その牙が剣を介して弥助の身体に喰い込み、海中へ引きずり込まんと手繰り寄せる。
「俺達の至宝を……っ、よくもこんなことに!」
 痛みに悶え、渦の力に踠く弥助に影が降りる。
「――至宝至宝と五月蠅い奴だ」
 否、黒雷が落ちる。
「所詮は無辜の人々を操り、人を人ならざるモノへ変じさせる禍つ力」
 天狗が如く宙を駆けるクロエにとって、願えば全てが足場となる。突き抜ける蒼空さえ今は天蓋足り得る。空を蹴って弥助の元に飛び込み、
「そして、ここで砕かれる程度のものだ」
 見舞うは天から地に降る、正しく雷の一閃。太刀は弥助の胸元を深々斬り裂き、十字架を両断して海中に没しせしめる。
「こ、これで、チートアイテムは、全部機能停止、だな」
「よくも……っ! よくも俺の、俺達のメガリスをォ……!!」
 空からは高笑い。……調子を外した、やに高い声。ボス格攻略の始終に高揚した究子が傲岸に嗤う。
「そ、そんなに大事なら」
 降り注ぐ、滝の如き魔砲撃。渦巻く咢さえ満足させられるだろう一撃を究子は弥助目掛けて放つ。
「一緒に沈め」
 続けて――少女の身体を宙へ押し上げる力の源――斥力フィールドを足元に最大展開。上空からのキックで渦へと押しみ、弥助の身体を蹴って宙返り。離れざまにはボムの置き土産。
「がッ……――」
 爆ぜれば遂には弥助の意識を刈り取り、
「じ、自分で、用意した、力に、呑まれて、消え失せろ」
 大渦がオブリビオンの命を――魔軍将二人の計画を飲み込み、骸の海/水泡へと還すのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月26日


挿絵イラスト