エンパイアウォー⑱~甦る軍神
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サムライエンパイアでの大規模な作戦『エンパイア・ウォー』が始まり、八月のグリモアベースは異様な熱気に包まれていた。オブリオンフォーミュラ・織田信長軍の動きを予知したグリモア猟兵は忙しなく走り回り、猟兵たちは今日もサムライエンパイアへと転移していく。
「……やあ、よく来てくれたな。サムライエンパイアを救うため、君たちの力を貸してほしい」
八月の強い日差しの下、いつもの広場に集まった猟兵達の前で、ガーネット・グレイローズが口を開いた。
「第六天魔王『織田信長』の配下『魔軍将』の一人、『上杉謙信』を知っているか? 自身を毘沙門天の生まれ変わりと称する、サムライエンパイアでも屈指の名将だ。君たちには、その上杉謙信の討伐に向かってもらう」
信長の居城『魔空安土城』に向かう徳川幕府軍が江戸を出発して、はや二週間あまりが経過した。幕府軍は苦難を乗り越えて無事関ヶ原に合流したが、そこで待ち受けているのは上杉謙信が率いる上杉軍精鋭部隊。
「上杉の軍勢が得意とする戦法は、『車懸かりの陣』とよばれるものだ。どういうものかというと……」
そう言ってガーネットは掌のグリモアを操作し、予知した関ヶ原の映像を投影する。
「これを見てくれ。まずは上杉謙信の本陣を中心に、オブリビオンが円陣を組んで敵陣に突入する。すると全軍が風車が回転するように動き……前線の兵士を迅速に交代させる。敵は矢継ぎ早に襲い来る上杉軍との戦いを強いられるが、下がった上杉の兵士はその間に十分な回復を行うことができるというわけだ」
そして面倒なことに、謙信自身も復活の時間を稼ぐためにこの戦法を用いる。つまり、
「謙信を撃破するためには、周囲の上杉軍に十分なダメージを与えて戦力を削っていかなければならないわけだが、そちらの対処には既に別動隊が向かっている。なので、君たちは上杉謙信の本隊へ斬り込んで彼との直接対決に臨んで欲しい。当然だが、強敵だぞ」
ガーネットがグリモアから映し出したのは、戦場を駆けながら十二本もの刀剣を操る甲冑姿の男。彼こそが越後の龍、上杉謙信だ。
「彼の最大の武器は、彼の周囲に展開する『毘沙門刀』という特殊な剣だ。これらはそれぞれが火・水・土……といった12属性の力を有しており、またバラバラに操って遠隔操作したり、天変地異を引き起こす能力も持っている。両手に持つひときわ長い白と黒の太刀は、ディアブロホワイトとアンヘルブラックというらしい。名前から察するに、光と闇属性かな……? 詳しい力はこれ以上予知できなかったが、これらの多彩な武器を操る相手は、正攻法で撃破するのはなかなか骨が折れるぞ」
そこまで説明すると、ガーネットはグリモアの力を増幅させて世界テレポートの準備を始めた。
「上杉謙信だけでなく、他の魔軍将の所在地も明らかになり、エンパイア各地で連日激しい戦いが繰り広げられている。戦況は厳しいが……それでも君たちなら、きっと成し遂げてくれると信じているぞ。それでは……よろしく頼む」
弥句
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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こんにちは、弥句です。今回はサムライエンパイアの戦争シナリオをお届けします。
本シナリオは、【ボス戦】一章のみの構成となっております。8月20日までに上杉謙信を撃破できなかった場合、徳川軍は関ヶ原で上杉軍の総攻撃を受け、5万人の兵士を失います。上杉謙信は他のボス敵のように先制攻撃能力こそ持ちませんが、『車懸かりの陣』による超回復能力を備えており、撃破するためには、⑦と⑱の両方を攻略する必要があります。
リプレイは上杉謙信の本隊まで攻め込み、謙信本人と対峙する場面から始まります。なので、彼の周囲のオブリビオンについて留意する必要は特にありません。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『軍神『上杉謙信』』
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POW : 毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 毘沙門刀車懸かり
自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
イラスト:色
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
八月の熱風に乗って、濃密な血の匂いが漂ってくる。かつてサムライエンパイアを二分する決戦が行われた因縁の地、関ヶ原。そこに、武装した一団が陣を敷いている。天を突くように掲げられた幟に描かれているのは、竹に二羽の飛び雀の家紋。天下に名高い上杉家の旗印である。しかし大地を埋め尽くす軍勢から発せられるのは、禍々しい滅びの気配である。
亡霊騎馬隊。悪鬼羅刹の足軽隊。魑魅魍魎。切支丹。滅んだ筈の忍軍。そして渡来人。それはもはや上杉軍とは名ばかりの、オブリビオンの軍団だった。そして、その大軍を率いて陣の中枢に立つ男もまた、骸の海より甦りし戦国の亡霊。
「猟兵達よ。わが『車懸かりの陣』を突破するとは、見事なり!」
激突する猟兵とオブリビオンの雄叫び。そして甲高い馬の嘶きが混ざり合ってここまで届いてくる。地鳴りのごとく響くは、騎馬が駆ける蹄の音。雷鳴のごとく轟くは、耳をつんざく砲声。戦の音だ。その中でもよく通る、凜とした声が猟兵達の耳朶を打った。白銀の甲冑に身を包んだ美丈夫――彼こそが軍神と呼ばれた武将、上杉謙信その人である。
「その実力に敬意を表し……毘沙門天の御加護の下、この謙信全霊で参ろう」
謙信がその右手を高々と掲げると、天から光り輝く抜き身の剣が次々と舞い降りてきた。その数、十二。森羅万象の力を有する宝剣、『毘沙門刀』である。
「いざ、尋常に勝負!!」
謙信がその中の二振り――白と黒の光を発する太刀を両手に掴むと、彼の全身から圧倒的な闘気が迸った。ヒリヒリと、肌が焦げ付くような感覚。ここからは、雑兵の助太刀が入る余地もない。『越後の龍』との、死闘の始まりだ。
明石・鷲穂
鹿糸(f00815)と連携
※アドリブ・連結お任せ
上杉謙信かぁ…ひたすらに強さだけがある敵ってのもやり辛いな。
故郷のためにも、油断は出来ないがなあ。
敵からの刀は、鹿糸が土の壁で防いでくれるからな。
俺は敵の高速移動と、UCの発動に気をつけよう。
【野生の勘】を頼りに相手の動きを見切り、防ぎ漏らした刀には【武器受け】で対処。
相手が大技を発動する前に空中から攻撃。
剛翼で攻撃しつつ、飛びながら相手を槍で切りつけて撹乱。
弱点攻撃には要注意しつつ【オーラ防御】を展開だ。
鹿糸のUCの準備が出来たら離れるぞ。
飛翔能力で鹿糸を回収だ。
過ぎる無茶は止めろよ。助けられるのも限度があるからなあ。
氏神・鹿糸
鷲穂(f02320)と
故郷を戦火に沈めるわけにいかないのよ。
過去の英雄は、現代の敵ね。
お帰り願うわ。
相手の攻撃は[高速詠唱]で土属性の壁を作って適宜防いでいくわ。
防げなかった刀や攻撃、死角は鷲穂に任せるわよ。
私、これ以上ヒビが入ると割れてしまうもの。
しっかり守って頂戴ね。
鷲穂の飛翔攻撃の最中に、UCを発動。
故郷を荒らす、軍神に制裁を。
炎の精霊を乗せた土流で敵を囲むわ。
これだけじゃ、軍神には足りないわよね。
敵が土流を破る前に[高速詠唱]で、氷の竜巻を発生。燃える土流にぶつけるわ。
発生するのは水蒸気爆発。
爆風への対処は鷲穂に任せたわ。
もちろん、信じているわよ。
(アドリブ他おまかせ)
月鴉・湊
軍神か。お相手出来て光栄だ。正々堂々、全力やらせてもらうよ。
いざ、尋常に勝負、なんてね。
奴が動くよりも先にUCを使用して透明化し姿を消す。
殺気を抑え気配を消し、忍び足で音も消す。
悪いがこれが俺の正々堂々とした戦いなんだ。
その12本の刀で俺をしらみつぶしに探してくるだろう。
だがその技、使えば寿命を削るんだろう?
呑気に探していて自分の首を絞めることになるぞ?
そして奴は範囲攻撃を仕掛ける瞬間、隙を見つけ奴の首を俺の暗殺技で捕って見せる。
軍神さんよ。お前の宿敵はあの世にいるんだ。
俺が送り届けてやるよ。
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「上杉謙信かぁ……ひたすらに強さだけがある敵ってのもやり辛いな。故郷のためにも、油断は出来ないがなあ。なあ、鹿糸?」
襲い来る上杉軍の精鋭たちを叩き伏せ、明石・鷲穂(門前の山羊・f02320)はついに上杉謙信の本隊まで到達した。その傍らには、彼が強い信頼を置くヤドリガミの女性が居る。
「ええ……そうね。故郷を戦火に沈めるわけにいかないのよ。過去の英雄は、現代の敵ね。お帰り願うわ」
穏やかな口調ながら、不退転の決意で目の前の武人を静かに見据える氏神・鹿糸(四季の檻・f00815)。軍神・上杉謙信は左右の手にそれぞれ白と黒の太刀を携えている。そして、彼の周囲に浮遊するのは残り十の毘沙門刀。
「『仏に逢うては、仏を殺せ』って云うだろう? さあ、いくぜ……鹿糸!」
愛用の錫杖『地精礼賛』を握りしめ、鷲歩が前へ進み出る。
「私、これ以上ヒビが入ると割れてしまうもの。しっかり守って頂戴ね?」
鹿糸の本体は、青磁花瓶。前を征く獣人の青年に、己の運命を託している。笑みを浮かべながら、鷲穂は任せておけと背中で応えた。
「打ちつけよ――」
謙信の手の動きに合わせ、毘沙門刀の群れがユラリと浮かび上がる。その切っ先が鷲穂へと向けられ、
「梵天を駆ける赦しを……!」
鷲穂が【偽悟・神足通】の術を唱え、その背に生やした翼を巨大化させる。彼が空へ高く舞い上がると同時に、毘沙門刀が一斉に投射された。
「軍神か……。お相手出来て光栄だ。正々堂々、全力やらせてもらうよ」
正々堂々という言葉と裏腹に、草むらに身をかがめて戦闘の様子を窺う者がいた。ほっそりとした長身に黒い着流しを纏ったその男の名は、月鴉・湊(染物屋の「カラス」・f03686)。裏社会では「染物屋のカラス」で通っている、名うての咎人殺しである。
「いざ、尋常に勝負、なんてね……」
湊は、自身の存在を相手に認識される前にユーベルコードを発動させる。『咎の代償は命で払うべし』と決まり文句を唱えれば、たちまち湊の身体は透けてゆき、やがて完全に透明化した。さらに音と気配までも遮断し、彼は完全に『ここにはいない者』となる。
(悪いなあ。これが、俺の正々堂々とした戦いなんだ)
心血を注いで磨き上げた暗殺の技、誰にも笑われる謂れなど無い。影さえも消え失せた湊は懐に暗器を忍ばせ、草を揺らすこともなく真っ直ぐに軍神の元を目指す。
謙信の神通力に操られて空中を疾走し、毘沙門刀が次々と鷲穂へ襲い掛かる。鹿糸は鷲穂への攻撃を防ぐべく、呪文を高速詠唱して土の防壁を作り出す。轟音と共に即席の土塁が築き上げられ、そこへ毘沙門刀が風を切りながら勢いよく突き刺さった。
「ほう、面妖な術を使うな。後ろの女か」
すかさず土塁から刃を引き抜く謙信。だが、追撃よりも早く鷲穂が動く。強靭な鷲の翼を羽ばたかせ、高速で滑空しながら羽を矢のように撃ち出す。
「フンッ!」
謙信は両手の二刀で羽を切り払いながら突進。そして浮遊する『毒』と『火』の剣を鹿糸へと放つ。
「おっと……鹿糸はやらせねえ!」
錫杖を振るい、鷲穂は鹿糸へ放たれた攻撃を叩き落す。
「女を守りながら、私を斬れるのか?」
間髪を入れず、帯電した『雷』の剣が鷲穂へと放たれる。空中で宙返りを打ち、鷲穂はこれをぎりぎりで回避。翼で強く空気を叩き身体を反転させ、急降下しながら錫杖を振りかぶって猛然と謙信に打ち掛かる。
「鹿糸を守る。そしてお前も倒す!」
「むッ……!」
甲高い金属音を立てて、双刀と錫杖がぶつかり合った。想定以上に重い打ち込みに、謙信の足が一歩後退する。
「故郷を荒らす、軍神に制裁を……!」
鷲穂が空中から攻撃をかけている間に、鹿糸がユーベルコードの詠唱を完成させる。関ヶ原の大地が隆起し、大量の土流となって謙信へと押し寄せる。更にその土流に炎の精霊力を上乗せした、エレメンタルファンタジアの奥義。
「これは……!」
赤熱した土の奔流が、謙信を包囲していく。鷲穂は謙信を抑えつけるように、上空から錫杖を叩きつける。
「調子に乗るな!」
謙信の瞳が青く輝くと、先ほど彼が空中へ放った『雷』の剣が切っ先を反転させ、鷲穂の背中に狙いをつけた。
「!」
首筋に感じた鋭い殺気。鷲穂は野生の勘を働かせ、瞬時に謙信から距離を取る。すると上空から紫電が迸り、轟音と共に鷲穂が居た場所へ雷撃が叩き込まれた。
「ふぅ、危なかったぜ……」
「鷲穂、離れて。派手なのいくわよ!」
警告を発した鹿糸が、さらに呪文を詠唱する。エレメンタルファンタジアを連続使用し、生み出したのは氷の竜巻。炎の力だけでは、軍神には及ばないだろうと考えた苦肉の策。大変な危険を伴うが、効果は絶大だろう。熱と冷気。相反する二つの力が及ぼすものは――
「水蒸気爆発かっ!」
鷲穂は翼を羽ばたかせ、咄嗟に上空へ逃れる。反発し合うエネルギーが、暴力的な破壊の力を生み出した。大地を揺るがすほどの轟音と共に爆発が発生。その中心にいた謙信は、マトモに喰らっているとするならばひとたまりもないだろう。
やがて、立ち昇った煙の中から巨大な水の龍が姿を現した。その体の上に乗っているのは、紛れもない上杉謙信だ。『水』の毘沙門刀の力を解き放ち、十九女池の水を操って龍を作り出したのだ。
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ、オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ――」
水の龍は、口に毘沙門刀を咥えて空を舞う。謙信は爆発の衝撃を受けて火傷を負いながらも、毘沙門天に捧げる真言を一心不乱に唱えていた。
額に珠の汗を流し、深く息をつく青髪の娘。鹿糸を抱きかかえた鷲穂が、ゆっくりと地上に降り立つ。
「……過ぎる無茶は止めろよ。助けられるのも限度があるからなあ」
「……私は鷲穂を信じていたわよ」
ありがとう、と腕の中で呟く鹿糸を、ゆっくりと地面に降ろす鷲穂。そして水の龍を駆る謙信を静かに見上げ、ゆっくりと地精礼賛を構える。
「その女、素晴らしい能力だ。ここで殺すには惜しい。そしてお前も、私の前で勇気と誇りを示した。私も、奥義を以てそれに答えよう」
白と黒の双刃を構え、奥義の発動準備にかかる謙信。
だが。
「いいや……残念ながら、今回はここまで、だ」
不意に、謙信の背後から男の声がした。
「な……に?」
莫迦な。お前は誰だ。今までどこに居た。謙信のそれらの疑問に、湊は血の糸で以て答える。傷口を深く抉った次の瞬間、謙信の身体から鮮血が盛大に噴き出した。
「これだけ立派な水の龍だ。アンタといえど、制御するにはかなりの集中力を要するんだろう。おかげで、悟られずに近づけたよ。ここまでうまくいったのは奇跡的だ」
「伏兵か、見事だ――」
謙信本体がダメージを受けたことで、水の龍が姿を崩して瓦解していく。地上へ落下していく謙信を見届け、湊は大きく跳躍した。
「お前の死に様は、この染物屋のカラスが見届けてやる」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
オリヴィア・ローゼンタール
色々と訳知りのようですが、思い通りにはさせません
白き翼の真の姿を解放
【属性攻撃】【破魔】で聖槍と四肢に聖なる炎を纏う
空を駆けるように飛ぶ(ダッシュ・空中戦)
あなたが毘沙門天の化身なら、私は万軍の主の使い
いざ勝負!
【偽槍展開】で周囲に51本の複製槍を出現させ【念動力】で随伴させる
飛来する毘沙門刀1本に対し4本の複製槍で対抗(カウンター・武器受け)
一対一なら弱点属性で押し負けても4本ならば!
残り3本の複製槍を上杉謙信へ【投擲】【槍投げ】しつつ、本物の聖槍を【怪力】で叩きつける
空を飛びながら斬り打ち穿ち【なぎ払い】、縦横無尽に畳み掛ける
私たちですら知らなかった【Q】、それを知るあなたは……何者ですか
六代目・松座衛門
「なかなか厄介だな、この『車懸かりの陣』ってのは…。こちらも使わせてもらうぞ! 錬成カミヤドリ!」
陣を脅威に感じつつも、UC「錬成カミヤドリ」を発動。40個の十字型の操作板を自分と人形「暁闇」の周囲に回転させ、即席の『車懸かりの陣』を形成し、上杉謙信へ突進する。
。〇(この器物の嵐で、攻撃を防ぎ、防御を崩す!)
上杉謙信を中心に回転、もしくは射出される『毘沙門刀』に対し、横合いから複製した操作板をぶつけ、軌道を逸らすことで、相手の刀による「陣」に穴を開ける!
「そこだ! 「角砕き」!」
タイミングを見計らい、UC「一ノ型「角砕き」」を発動。人形による攻撃を喰らわせる!
アドリブ、連携歓迎
上泉・祢々
さて、12本も刀を使っている贅沢者とどう戦いましょうか
12本同時に動かせると言っても動かしているのは本人
癖と呼吸を盗ませてもらいましょうか
まずは情報収集も兼ねて回避に専念
どういったタイミングでこちらを狙い
どう斬りつけてくるのか見切ります
緩急をつけた歩法で翻弄し避けきれないなら拳や膝で弾きましょう
さて、動きを把握しても触れたくない物もちらほら
ではこうしましょうか
こちらへ迫る刀を袖で巻き取り私の背後へ投げ捨てましょう
他にもこちらへ向かってくる刀は同様に投げ捨てて
そのまま刀が追いつく前に全力で距離を詰めます
接敵したら加速しきる前の両手を手刀で受け止め
右足と左足の連撃で顎を蹴りあげるとしましょう
●
「猟兵の力、これ程とは」
謙信は頭上から『薬』の力を持つ剣を召喚し、降り注ぐ癒しの光を浴びて傷の回復を図る。属性と自然現象を操り、地形までも変える『毘沙門刀天変地異』は制御が難しく、集中力を要する。その隙を暗殺者に狙われたのは、己自身の油断に他ならない。
「戒めとせねばなるまいな……!」
応急処置を施した謙信の元に、さらに増援の猟兵が迫る。ここからは第2ラウンドだ。
「色々と訳知りのようですが、思い通りにはさせません」
黄金の穂先を持つ槍を携え現れた修道女の名は、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。オブリビオンを狩り殺すことを己が使命とするオリヴィアにとって、かつて英雄と呼ばれた目の前の男も討つべき標的に過ぎない。オリヴィアが真の姿を解放すると、彼女の背に白き翼が現れ、その四肢は神聖なる破邪の炎を帯びる。
「……異国の尼か。私を神の敵とみなし、調伏に参ったか」
「チョウブク……あなた方の言葉では、神敵を討つことをそう表現するのですね。ですが、神の敵というのは誤りです」
オリヴィアは力強く羽ばたくと空へ舞い上がり、槍の穂先を真っ直ぐ謙信に突きつけた。
「あなたは、世界の敵です」
オリヴィアの敵意に呼応し、毘沙門刀が主を守る侍のように謙信の周囲に集まり、全方位の守りを固める。彼自身を中心とした『車懸かりの陣』だ。
「さて、12本も刀を使っている贅沢者とどう戦いましょうか……」
「なかなか厄介だな、この『車懸かりの陣』ってのは」
人形遣いの六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)と無刀の女剣士、上泉・祢々(百の華を舞い散らす乙女・f17603)は、謙信の周囲に展開された霊刀を注意深く観察する。謙信のメインウェポンである毘沙門刀は、その一本一本が対応属性の現象を自在に操ることが出来る。それらを敵の弱点に応じて使い分け、時に防御にも用いる。人軍一体の戦術を応用した戦闘法に、寸分の死角もない。
「数には数だ。こちらも使わせてもらうぞ! 錬成カミヤドリ!」
松座衛門がユーベルコードの力を以て複製したのは、己の本体である人形の操作板『志操』だ。41もの器物が、松座衛門と彼の操り人形『暁闇』の周囲に浮かび上がる。
「顕現せよ、我が聖槍の写し身。無窮の威光で闇を斬り裂き、天地を照らせ――!」
松座衛門と同様、愛用する破邪の聖槍を【偽槍展開(ロンギヌス・オルタナティブ)】で複製するオリヴィア。こちらが生み出した槍の本数、51。
「――武装を分裂させたか。面白い能力だ」
謙信の闘気の高ぶりに呼応するように、毘沙門刀が刀身に帯びたオーラの輝きを強めていく。それらの切っ先が、一斉に猟兵達に向けられた。
「あなたが毘沙門天の化身なら、私は万軍の主の使い。いざ勝負!」
オリヴィアが槍を構え、謙信に向かって空から突撃したことで戦端が開かれた。彼女に追随する聖槍を迎え撃つべく、毘沙門刀が一斉に投射される。
「一対一なら弱点属性で押し負けても……4本ならば!」
オリヴィアは毘沙門刀一本に聖槍を四本ぶつける計算で戦力を分割。数ならば、オリヴィアが優位の筈だ。
無数の刀と槍が空中を疾走し、激しくぶつかり合って火花を散らす。
「12本同時に動かせると言っても、動かしているのは本人。……癖と呼吸を盗ませてもらいましょうか」
聖槍を叩き斬り、包囲網をかいくぐった毘沙門刀が祢々に迫る。祢々はまず刃がどう斬ってくるか癖を見切るべく、回避に専念する。毘沙門刀が繰り出してくる技そのものは、きわめて真っ当な剣技といっていい。恐らく、謙信本人が生前に習得していた剣術が反映されているのだろう。そのため、太刀筋自体を見切り、捌くのであればある程度の本数までは困難ではない。祢々は百華流の型『梅』と『蓮』を駆使して斬撃を躱しながら、その剣の使い手――謙信の姿を頭の中で思い描く。
「見えた――!」
迫りくる『光』の刃を衣の袖に巻き取り、後方へ投げ飛ばす。姿こそ無いものの、斬撃への対処は人間の剣士と同じだ。続く『闇』と『土』を拳と蹴りで弾きながら、祢々はひたすら前進する。刀に追い付かれる前に、全力で距離を詰めなければならない。彼女にとっての刀とは、己の四肢なのだ。
「私たちですら知らなかった【Q】、それを知るあなたは……何者ですか!」
三本の聖槍を従え、オリヴィアが空中から電光石火の突きを繰り出す。謙信はその問いに応えようとはしない。『アンヘルブラック』と『ディアブロホワイト』の二刀で怒涛の連撃を捌き、すかさず斬閃を繰り出して反撃に転じる。
「異国の娘よ、この世界の真実にたどり着きたくば――まずは私を斃してゆけ!」
謙信の瞳が妖しい輝きを放つとともに、斬撃が加速する。それに呼応するように、毘沙門刀も攻勢を強めていく。オリヴィアの複製槍がたちどころに荒ぶる『風』の刃に切り刻まれ、紫電を帯びた『雷』の剣が一直線に彼女自身に迫る。
「させるか!」
松座衛門は滞空する操作板を次々と飛ばし、刀に直接ぶつけることで妨害を試みた。『志操』のコピーは雷電に打たれて燃え尽きたが、オリヴィアの命を守れたならば御の字だ。
「この手、この足が私の刀です。上杉謙信、お覚悟!!」
謙信の姿は既に眼前に迫っている。彼の首を刎ねるべく、祢々は走りながら渾身の一撃を繰り出す体勢に入る。
「甘いな――!」
秘技・毘沙門刀車懸かり。高速回転して祢々の前に現れたのは、『毒』の毘沙門刀。掠めただけで致命的な毒を受ける、きわめて殺傷力の高い剣だ。これを素手で捌くのは、大変なリスクを伴うだろう。
「暁闇! 祢々を頼む!」
松座衛門の叫びに応じ、横合いから操り人形の暁闇が祢々を庇うべく飛び出した。暁闇の巨体に、猛毒の刃が深々と突き刺さる。人間ならば、即死だっただろう。だが、毒は無機物である絡繰り人形さえも腐食させ始めている。
「貴様、人形遣いか!」
「鬼猟流六代目・松座衛門だ! 覚えておけ!」
松座衛門は疾走しながら、暁闇の操り糸を動かした。まだ暁闇が動けるうちに、必殺の一撃を叩き込まねばならない。
「そこだ! 一ノ型・角砕き!」
謙信に目掛けて、暁闇が猛烈な勢いで体当たりをかます。双刀で受ける謙信だが、勢いを完全に殺しきれなかった。体をのけ反らせた謙信に、暁闇が巨大な右手を引き絞り、正拳を叩き込む――!
「まだだ!!」
両者の間に突き刺さったのは、『樹』の毘沙門刀。緑色の光を帯びた刀身が、地中から植物を生成する。爆発的なスピードで成長したその樹木は、
「――竹かっ!」
「いかにも」
上杉家の家紋にも描かれている竹だ。一瞬で発生した竹が幾重にも重なり、強固な防壁と化す。竹は暁闇が繰り出した豪打を受け止めて尚、折れることなく激しくしなる。
「ハアアアアッ!」
裂帛の雄叫びと共に、オリヴィアが頭上から謙信を襲う。念動力を以て、三本の槍を謙信へ投擲する。そこへタイミングを合わせ、祢々が肉迫。謙信は『氷』の剣をオリヴィアへ、更に『火』の剣を祢々へと飛ばす。氷の刃と交錯し、冷気に包まれた複製槍がガラスのように砕け散る。祢々は烈火を噴き上げる刃を左手刀で弾くが、それと引き換えに左手は炎に焼かれる。熱さに思わず叫び声を上げそうになるが、歯を食いしばって耐える。
「ぐっ……ゴフッ!」
車懸かりによって高速戦闘を可能とする謙信だが、寿命を削って戦い続けた代償か、激しく咳き込むと同時に血を吐き出した。その隙を見逃さず、翼を羽ばたかせて加速したオリヴィアがオリジナルの槍を構えて突撃する。
「最後に、この一本さえあればいい。上杉謙信、この一撃で仕留める!」
「白と黒よ。我に、毘沙門天の御加護を……!!」
双刃を上段に構え、オリヴィアを迎え撃つ謙信。だが、その二刀が振り下ろされる直前に、祢々がぎりぎりのタイミングで割り込んだ。
「我が百華流は、天下無双なり!!」
二人の間を走り抜けると同時に右の手刀を逆袈裟に振り抜き、白と黒の剣を勢いよく撥ね上げる。そこへ、全体重をかけたオリヴィアの剛槍が謙信の胸に突き込まれた。怪力を以て繰り出された渾身の一撃は、30メートルあまりも謙信を吹き飛ばし、その体を関ヶ原の大地に縫い留めた。
血の塊を吐き出した謙信は、槍に貫かれたまま右手を高く掲げる。しかし既に力を使い果たしたのか、ばらばらに散らばった毘沙門刀は彼の元へ集まろうとはしない。
「……よくぞ、この謙信の技を破った。貴様たちの勝利だ、猟兵よ。さあ……ゆくがいい」
三人の猟兵が見守る中、軍神と呼ばれた武人の身体は青白い炎に包まれる。滅びの時がやって来たのだ。やがて謙信の肉体もその愛刀も、灰になって崩れ落ち、骸の海へと還っていった。後に残されたのは、大地に突き刺さったオリヴィアの槍だけだ。
成功
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